(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】メタノール製造システムおよびメタノール製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/152 20060101AFI20240906BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20240906BHJP
C07C 51/12 20060101ALI20240906BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20240906BHJP
C01B 15/027 20060101ALI20240906BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240906BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240906BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240906BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240906BHJP
C07B 31/00 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
C07C29/152
C07C31/04
C07C51/12
C07C53/08
C01B15/027
B01D53/14 200
B01D71/02 500
B01D53/047
C25B9/00 Z
C07B31/00
(21)【出願番号】P 2020200403
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔一
(72)【発明者】
【氏名】田島 英彦
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150254(JP,A)
【文献】特開2017-101005(JP,A)
【文献】特開2017-178810(JP,A)
【文献】特開平04-364142(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105836707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス中のメタンを改質し、COとH
2とを含有する改質ガスを生成する反応炉を備える改質器と、
CO
2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成器と、
前記反応炉で生成された改質ガスと前記還元後ガス生成器で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成器と、
排ガスから前記CO
2
を分離する二酸化炭素分離器と、を備え
、
前記改質器が、燃料ガスを燃焼することで発生する熱を前記反応炉に供給し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する、燃焼炉をさらに備え、
前記メタノール含有ガス生成器から前記燃焼炉にH
2
を導入するための水素供給路を備える、メタノール製造システム。
【請求項2】
前記反応炉から前記還元後ガス生成器に前記改質ガス中のH
2を導入するための改質ガス導入路を備える、請求項
1に記載のメタノール製造システム。
【請求項3】
前記メタノール含有ガス生成器から前記還元後ガス生成器に前記メタノール含有ガスを導入するためのメタノール導入路を備える、請求項
1に記載のメタノール製造システム。
【請求項4】
前記還元後ガス生成器が、さらに、エタノールを用いる、請求項
1に記載のメタノール製造システム。
【請求項5】
前記還元後ガス生成器が、H
2Oと前記CO
2とから、COとH
2O
2とを生成する、請求項
1に記載のメタノール製造システム。
【請求項6】
前記メタノール含有ガス生成器で生成されたメタノール含有ガス中のメタノールと前記還元後ガス中のCOとから、酢酸を生成する酢酸生成器を備える、請求項1~
5のいずれか1項に記載のメタノール製造システム。
【請求項7】
前記還元後ガス生成器が電解装置である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のメタノール製造システム。
【請求項8】
原料ガス中のメタンを酸化して、COとH
2とを含有する改質ガスを生成する反応工程と、
CO
2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成工程と、
前記反応工程で生成された改質ガスと前記還元後ガス生成工程で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成工程と、
排ガスから前記CO
2
を分離する二酸化炭素分離工程と、
を備え
、
燃料ガスを燃焼することで、前記反応工程に用いる熱を発生し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する燃焼工程をさらに備え、
前記燃焼工程において、さらに、前記メタノール含有ガスの生成で余ったH
2
を燃焼に用いる、メタノール製造方法。
【請求項9】
前記還元後ガス生成工程において、さらに、前記反応工程で生成された前記改質ガス中のH
2の一部を用いる、請求項
8に記載のメタノール製造方法。
【請求項10】
前記還元後ガス生成工程において、さらに、前記メタノール含有ガス生成工程で生成された前記メタノール含有ガスの一部を用いる、請求項
8に記載のメタノール製造方法。
【請求項11】
前記還元後ガス生成工程において、さらに、エタノールを用いる、請求項
8に記載のメタノール製造方法。
【請求項12】
前記還元後ガス生成工程において、H
2Oと前記CO
2とから、COとH
2O
2とを生成する、請求項
8に記載のメタノール製造方法。
【請求項13】
前記メタノール含有ガス生成工程で生成された前記メタノール含有ガス中のメタノールと前記還元後ガス中のCOとから、酢酸を生成する酢酸生成工程をさらに備える、請求項
8~
12のいずれか1項に記載のメタノール製造方法。
【請求項14】
前記還元後ガス生成工程が電解還元反応を用いる、請求項
8~
13のいずれか1項に記載のメタノール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メタノール製造システムおよびメタノール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンを含有する天然ガスからメタノールを製造する方法としては、天然ガス中のメタンを水蒸気法などで改質し、水素、一酸化炭素および二酸化炭素を含有する改質ガスを生成し、その改質ガスからメタノールを合成する方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、メタンを含有する原料ガスを酸素を用いて部分酸化改質し、改質ガスを得る改質ガス工程と、改質ガス中のCO/CO2比を下げるCO/CO2比低下工程と、CO/CO2比低下工程後の改質ガスでメタノールを含有する生成ガスを得る生成工程と、を備えるメタノール製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、特許文献1に記載の発明および従来の水蒸気改質法よりも、CO2の排出量を低減することが求められている。また、特許文献1に記載の発明では、メタノールを増産するために、改質器を大きくする必要があった。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、改質器を拡張をせずに、メタノール製造能力を向上することができ、CO2排出量低減が可能なメタノール製造システムおよびメタノール製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るメタノール製造システムは、原料ガス中のメタンを改質し、COとH2とを含有する改質ガスを生成する反応炉を備える改質器と、CO2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成器と、前記反応炉で生成された改質ガスと前記還元後ガス生成器で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成器と、排ガスから前記CO
2
を分離する二酸化炭素分離器と、を備え、前記改質器が、燃料ガスを燃焼することで発生する熱を前記反応炉に供給し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する、燃焼炉をさらに備え、
前記メタノール含有ガス生成器から前記燃焼炉にH
2
を導入するための水素供給路を備える。
【0008】
本開示に係るメタノール製造方法は、原料ガス中のメタンを酸化して、COとH2とを含有する改質ガスを生成する反応工程と、CO2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成工程と、前記反応工程で生成された改質ガスと前記還元後ガス生成工程で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成工程と、排ガスから前記CO
2
を分離する二酸化炭素分離工程と、を備え、燃料ガスを燃焼することで、前記反応工程に用いる熱を発生し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する燃焼工程をさらに備え、前記燃焼工程において、さらに、前記メタノール含有ガスの生成で余ったH
2
を燃焼に用いる。
【発明の効果】
【0009】
本開示のメタノール製造システムおよびメタノール製造方法の上記態様によれば、改質器を拡張せずにメタノールの製造能力を向上でき、かつCO2の排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【
図3】第2の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図4】第2の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【
図5】第3の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図6】第3の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【
図7】第4の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図8】第4の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【
図9】第5の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図10】第5の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【
図11】第6の実施形態に係るメタノール製造装置の模式図である。
【
図12】第6の実施形態に係るメタノール製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1に示すように、第1の実施形態に係るメタノール製造システム10は、燃焼炉1および反応炉2を備える改質器3、還元後ガス生成器4、メタノール含有ガス生成器5、二酸化炭素分離器6および水素分離器7Aを備える。以下、各部について説明する。
【0013】
(燃焼炉)
燃焼炉1は、ラインL1を介して供給された燃料ガスおよびメタノール含有ガスの生成で余ったH2を燃焼し、得られた熱を反応炉2に供給する。具体的には、燃焼炉1中のバーナーで燃料ガスおよびH2を燃焼した時に発生する輻射熱によって反応炉2内部を加熱する。また、燃焼炉1は、燃料ガスおよびH2の燃焼で発生した排ガスをラインL3を介して二酸化炭素分離器6に送る。燃焼炉1は、燃焼炉1に燃料ガスを導入するためのラインL1と、CO2含有ガス(排ガス)を二酸化炭素分離器6に送るラインL3と、メタノール含有ガスの生成で余ったH2を導入するためのライン(水素供給路)L8と、それぞれ連結している。
【0014】
燃料ガスとしては、燃焼によって熱を供給できるのであれば、特に限定されない。燃料ガスとしては、例えば、天然ガス、石炭ガス、石炭コークスガスなどが挙げられる。
【0015】
(反応炉)
反応炉2は、ラインL2を介して送られたメタンを含有する原料ガスを改質し、COとH2とを含有する改質ガスを生成する。ここで、メタン(CH4)を含有する原料ガスを改質するとは、原料ガス中のメタンから化学反応で少なくともCOとH2とを生成することをいう。反応炉2内には、例えば、Ni系触媒などの触媒が配置される。第1の実施形態に係る反応炉2には、ラインL2を介して原料ガスおよびH2Oが供給される。H2Oは、ラインL2Aを介してラインL2に供給される。反応炉2で生成されたCOとH2とを含有する改質ガスはラインL6を介し、メタノール含有ガス生成器5に送られる。反応炉2は、反応炉2に原料ガスおよびH2Oを導入するためのラインL2と、COとH2とを含有する改質ガスをメタノール含有ガス生成器5に送るラインL6と、それぞれ連結している。
【0016】
(二酸化炭素分離器)
二酸化炭素分離器6は、ラインL3上に設けられる。二酸化炭素分離器6は、燃焼炉1で発生した排ガス中のCO2を分離する。生成したCO2は、ラインL3を介して還元後ガス生成器4に送られる。
【0017】
CO2の分離方法としては、特に限定されず、例えば、化学吸収法、膜分離法、圧力変動吸着法などが挙げられる。化学吸収法では、排ガス中のCO2をアミン吸収液に吸収させた後、加熱してCO2をアミン吸収液から分離する。膜分離法では、排ガスを無機分離膜に透過して選択的にCO2を分離する。圧力変動吸着法では、吸着されるガスの分圧に応じて吸着容量が異なることを利用し、圧力を上下させることで吸着しやすいガスを除去するなどして、CO2を分離する。
【0018】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4は、ラインL3を介して送られたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。第1の実施形態の還元後ガス生成器4は、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4は、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。また、還元後ガス生成器4は、COを含有する還元後ガスとともに生成されたO2をラインL4を介し大気中に放出する。還元後ガス生成器4は、CO2を導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4で生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5に導入するためのラインL5と、生成されたO2を排出するためのラインL4と、それぞれ連結している。
【0019】
陽極では、O2を生成する。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-Oなどの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体が挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0020】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0021】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0022】
CO2の還元後ガス生成器4への導入方法は、特に限定されず、気体の状態で導入してもよいし、CO2を吸収液に吸収させた状態で導入してもよい。吸収液に吸収させた場合は、還元後吸収液からCOを取り出してもよい。
【0023】
(メタノール含有ガス生成器)
メタノール含有ガス生成器5は、改質器3中の反応炉2で生成された改質ガスと、還元後ガス生成器4で生成された還元後ガスとから、メタノールを含有するメタノール含有ガスとを生成する。生成されたメタノールは、ラインL7を介し、貯蔵タンク(図示しない)に運ばれ貯蔵される。メタノール含有ガス生成器5は、改質ガスを導入するためのラインL6と、還元後ガスを導入するためのラインL5と、メタノールを貯蔵するためのラインL7と、メタノール含有ガス生成で余ったH2を燃焼炉1に導入するためのライン(水素供給路)L8と、それぞれ連結している。
【0024】
メタノール含有ガス生成器5は、改質ガスおよび還元後ガスとからメタノールを合成できる装置であればよい。メタノール含有ガス生成器5としては、例えば、固定床型、流動床型、噴流床型などの反応器、マイクロチャンネルリアクタ、等温反応器などが挙げられる。これらのうち、流動床型反応器、噴流床型反応器、マイクロチャンネルリアクタ、および等温反応器が好ましく、より好ましくは等温反応器が好ましい。等温反応器であれば、装置内部での局所的な高温の発生を制御して熱を均一化し、装置自体、メタノールを合成するためのメタノール合成触媒などへの負荷を軽減できる。
【0025】
(水素分離器)
水素分離器7Aは、ライン(水素供給路)L8の途中に設けられ、メタノール含有ガス生成器5で生成されたメタノール含有ガスの生成で余ったH2を分離し、燃焼炉1にH2を供給する。水素分離器としては、例えばPd合金膜や多孔質のセラミック膜などが挙げられる。
【0026】
「メタノール製造方法」
次に、第1の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図2に示すようにメタノール製造方法S10は、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3、反応工程S4、メタノール含有ガス生成工程S5および水素分離工程S6を備える。以下、各工程について説明する。
【0027】
(燃焼工程)
燃焼工程S1では、燃焼炉1において燃料ガスおよびメタノール含有ガス生成で余ったH2を燃焼することで、反応工程S4に用いる熱を発生する。また、燃焼工程S1では、燃料ガスの燃焼で排ガスを生成する。燃料ガスがメタンを含有する天然ガスである場合、燃焼反応としては下記(1)式となる。ここで、O2の供給源としては、例えば、大気中の空気が挙げられる。また、H2の燃焼としては下記(2)式となる。ここで発生した熱は、反応工程S4で用いられる。また、燃料ガスの燃焼で発生した排ガスは、ラインL3を通し、二酸化炭素分離器6に送られる。
CH4+2O2→CO2+2H2O+802kJ/mol・・・(1)
H2+1/2O2→H2O+240kJ/mol・・・(2)
【0028】
燃焼工程S1で用いられる燃料ガスは、原料ガスと燃料ガスの合計を100質量%としたときに、10質量%~20質量%であることが好ましい。燃料ガスが上記の範囲であれば、CO2の発生量を抑制しつつ、メタノール生産を効率よく行うことができる。また、メタノール含有ガス生成工程S5で余ったH2は、生成される水素に対して25質量%~35質量%であることが好ましい。H2がこの範囲であれば、燃料ガス量を低減しつつ、反応に必要な熱を供給することができる。
【0029】
(二酸化炭素分離工程)
二酸化炭素分離工程S2では、燃焼工程S1で発生した排ガスから、CO2を分離する。分離したCO2は、ラインL3を通り、還元後ガス生成器4に送られる。
【0030】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3では、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4では、CO2を電解還元反応でCOに還元する。具体的な反応は下記(3)式となる。
CO2→CO+1/2O2・・・(3)
上記(3)式の電解電圧(vs.SHE)は、1.29Vとなる。ここで、vs.SHEは、水素電極(0V)を基準とする電位を意味する。この反応で発生したCOは陰極で生じ、O2は、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。陽極で発生したO2は、ラインL4を介し、大気中に放出される。
【0031】
還元後ガス生成工程S3で生成された還元後ガスは、全量がメタノール含有ガス生成工程S5で用いられる。還元後ガスがメタノール含有ガス生成工程S5で用いられることで、反応速度を大きくすることができる。
【0032】
(反応工程)
反応工程S4では、改質器3の反応炉2の入り口温度は450~650℃、出口温度は700~950°である。反応圧力は1~2MPaである。燃焼炉1から供給される熱は、反応炉2の出口温度の上昇と反応熱の維持に用いられる。水蒸気を用いてメタンを改質する場合の反応式は下記(4)および(5)式となる。
CH4+H2O→CO+3H2-205.9kJ/mol・・・(4)
CH4+2H2O→CO2+4H2+165.1kJ/mol・・・(5)
ここで、発生したCOとH2とを含有する改質ガスは、ラインL6を介し、メタノール含有ガス生成器5に送られる。
【0033】
反応工程S4で用いられる原料ガスは、原料ガスと燃料ガスの合計を100質量%としたときに、80質量%~90質量%であることが好ましい。原料ガスが上記の範囲であれば、CO2の発生量を抑制しつつ、メタノール生産を効率よく行うことができる。
【0034】
(メタノール含有ガス生成工程)
メタノール含有ガス生成工程S5では、反応工程S4で生成した改質ガスと、還元後ガス生成工程S3で生成した還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成する。メタノール合成の式は、下記(6)式および(7)式のようになる。下記(6)式と上記(4)式に示されるように、還元後ガス生成工程S3で生成されたH2は、メタノール合成後も余る。この余った余剰H2は、ライン(水素供給路)L8を介し、水素分離器7Aに送られる。合成されたメタノールは、ラインL7を介し、貯蔵される。
CO+2H2→CH3OH・・・(6)
CO2+3H2→CH3OH+H2O・・・(7)
【0035】
メタノール含有ガス生成器5が等温反応器である場合、装置内での局所的な温度上昇を防ぎ、温度を均一化して好ましい範囲に制御することができる。これによって、合成反応の熱による触媒などに与える負荷を低減することができる。メタノール合成に要する温度は、100℃~300℃であり、150℃~250℃が好ましい。
【0036】
(水素分離工程)
水素分離工程S6では、メタノール含有ガス生成工程S5のメタノール合成で余った余剰水素を分離する。分離したH2は、ライン(水素供給路)L8を介し、燃焼炉1に送られる。
【0037】
(作用効果)
以上説明した第1の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、メタノール合成で余った余剰水素を燃焼に用いることで、さらにCO2を低減しつつ、メタンの改質に必要な熱を供給することができる。また、原料ガス、燃料ガス、および余剰水素の曽率を調整することで、大気中にCO2を放出することなく、メタノールを生産することができる。
【0038】
第1の実施形態では、原料ガスをそのまま反応炉2に導入していたが、反応炉2の上流側に硫黄除去設備(図示しない)を設け、原料ガスから触媒の反応を抑制する硫黄化合物を除去した後に、反応炉2に原料ガスを導入してもよい。
【0039】
第1の実施形態では、メタノール含有ガスをそのまま貯蔵していたが、ラインL7を介しメタノール分離装置(図示しない)にメタノール含有ガスを送り、蒸留することで、高純度のメタノールを生成してもよい。
【0040】
第1の実施形態では、還元後ガス生成器4にセパレータを用いていなかったが、セパレータを用いてもよい。セパレータとしては、多孔質膜や電解質膜などを用いることができる。
【0041】
第1の実施形態では、反応炉2では、水蒸気改質を用いていたが、メタンの改質反応は水蒸気改質に限定されない。例えば、メタンの改質反応としては、CO2改質法、逆シフト反応法、直接的接触部分酸化法、自己熱改質法、および無触媒部分酸化法などを用いることができる。
【0042】
第1の実施形態では、還元後ガスを生成する原料として燃焼炉1の排ガスを用いていたが、第1の実施形態のメタノール製造システム10は、燃焼炉1の排ガスに限定されない。例えば、スチーム(H2O)を発生させるための補助設備、電力供給用のGTG(Gas Turbine Generator)などで発生した排ガスでもよい。
【0043】
第1の実施形態の還元後ガス生成器には、電解装置を用いていたが、還元後ガス生成器4は電解装置に限定されない。例えば、還元後ガス生成器は、固体酸化物電解質を用いた固体酸化物型電解セル、光触媒を備える人口光合成装置であってもよい。
【0044】
第1の実施形態では、メタノール含有ガスの生成で余ったH2を燃焼に用いていたが、H2の代わりに再生エネルギーなどの別のエネルギーで反応炉2に熱を供給してもよい。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、
図3を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るメタノール製造システム10Aは、燃焼炉1および反応炉2Aを備える改質器3、還元後ガス生成器4A、メタノール含有ガス生成器5、二酸化炭素分離器6、水素分離器7A、および水素分離器7Bを備える。以下、第1の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0046】
(反応炉)
反応炉2Aは、ラインL2を介して送られたメタンを含有する原料ガスを改質し、COとH2とを含有する改質ガスを生成する。反応炉2内には、例えば、Ni系触媒などの触媒が配置される。第2の実施形態に係る反応炉2Aには、ラインL2を介して原料ガスおよびH2Oが供給される。H2Oは、ラインL2Aを介してラインL2に供給される。反応炉2Aで生成されたCOとH2とを含有する改質ガスはラインL6を介し、メタノール含有ガス生成器5に送られる。また、ライン(改質ガス導入路)L9を介し、改質ガスの一部は水素分離器7Bに送られる。反応炉2Aは、反応炉2Aに原料ガスおよびH2Oを導入するためのラインL2と、COとH2とを含有する改質ガスをメタノール含有ガス生成器5に送るラインL6と、改質ガスの一部を水素分離器7Bに送るライン(改質ガス導入路)L9とそれぞれ連結している。
【0047】
(水素分離器)
水素分離器7Bは、ライン(改質ガス導入路)L9の途中に設けられ、反応炉2Aで生成された改質ガス中のH2を分離し、還元後ガス生成器4AにH2を供給する。水素分離器としては、例えばPd合金膜や多孔質のセラミック膜などが挙げられる。
【0048】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4Aは、ラインL3を介して送られたCO2とライン(改質ガス導入路)L9を介して送られたH2とから、COを含有する還元後ガスおよびH2Oを生成する。第2の実施形態の還元後ガス生成器4Aは、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4Aは、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。また、還元後ガス生成器4Aは、COを含有する還元後ガスとともに生成されたH2OをラインL4Aを介し廃液として放出する。還元後ガス生成器4Aは、CO2を導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4Aで生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5に導入するためのラインL5と、生成されたH2Oを排出するためのラインL4Aと、H2を導入するためのライン(改質ガス導入路)L9と、それぞれ連結している。
【0049】
陽極では、水素分離器7Bから送られたH2を酸化してH2Oを生成する。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-Oなどの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体が挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0050】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、例えば、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0051】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0052】
「メタノール製造方法」
次に、第2の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図4に示すようにメタノール製造方法S10Aは、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3A、反応工程S4A、メタノール含有ガス生成工程S5、水素分離工程S6、および水素分離工程S6Aを備える。以下、第1の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各工程について説明する。
【0053】
(反応工程)
反応工程S4Aでは、改質器3の反応炉2Aの入り口温度は450~650℃、出口温度は700~950°である。反応圧力は1~2MPaである。燃焼炉1から供給される熱は、反応炉2Aの出口温度の上昇と反応熱の維持に用いられる。水蒸気を用いてメタンを改質する場合の反応式は上記(4)および(5)式となる。
ここで、発生したCOとH2とを含有する改質ガスは、ラインL6を介し、メタノール含有ガス生成器5に送られ、改質ガスの一部は、ライン(改質ガス導入路)L9を介し水素分離器7Bに送られる。
【0054】
反応工程S4Aで用いられる原料ガスは、原料ガスと燃料ガスの合計を100質量%としたときに、80質量%~90質量%であることが好ましい。原料ガスが上記の範囲であれば、CO2の発生量を抑制しつつ、メタノール生産を効率よく行うことができる。還元後ガス生成器4Aに送られる改質ガスの一部に含まれるH2は、生成されたH2全体の10%であると、還元後ガス生成器4Aの電解反応を効率よく進めることができる。
【0055】
(水素分離工程)
水素分離工程S6Aでは、反応工程S4Aで生成した改質ガスの一部からH2を分離する。分離したH2は、ライン(改質ガス導入路)L9を介し、還元後ガス生成器4Aに送られ、CO2の還元反応に用いられる。
【0056】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3Aでは、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4Aの場合は、H2とCO2とから、COおよびH2Oを生成する。具体的な反応は下記(8)式となる。
CO2+H2→CO+H2O・・・(8)
上記(8)式の電解電圧は、-0.31Vとなる。したがって、第2の実施形態に係るメタノール製造システム10Aは、第1の実施形態に係るメタノール製造システム10よりも低い電圧で、還元後ガスを製造することができる。この反応で発生したCOは陰極で生じ、H2Oは、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。陽極で発生したH2Oは、ラインL4Aを介し、廃液として排出される。
【0057】
(作用効果)
以上説明した第2の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、反応工程S4Aで余った余剰水素を還元後ガス生成工程S3Aに用いることで、第1の実施形態よりも低い消費電力で還元後ガスを生成することができる。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、
図5を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係るメタノール製造システム10Bは、燃焼炉1および反応炉2を備える改質器3、還元後ガス生成器4B、メタノール含有ガス生成器5B、二酸化炭素分離器6、水素分離器7Aを備える。以下、第1の実施形態および第2の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0059】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4Bは、ラインL3を介して送られたCO2とメタノール含有ガス生成器5Bから送られたメタノール含有ガスとから、COを含有する還元後ガスおよびH2Oを生成する。第3の実施形態の還元後ガス生成器4Bは、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4Bは、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。還元後ガス生成器4Bに送られるメタノール含有ガスは、生成したメタノール含有ガスの10~20質量%が好ましい。また、還元後ガス生成器4Bは、COを含有する還元後ガスとともに生成されたH2OをラインL4Aを介し廃液として放出する。還元後ガス生成器4Bは、CO2を還元後ガス生成器4Bに導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4Bで生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5Bに導入するためのラインL5と、生成されたH2Oを排出するためのラインL4Aと、メタノール含有ガスを還元後ガス生成器4Bに導入するためのライン(メタノール導入路)L10と、それぞれ連結している。
【0060】
陽極では、メタノール含有ガス生成器5Bから送られたメタノール含有ガス中のメタノールを酸化してH2OおよびCO2を生成する。生成されたCO2は陰極に送られる。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化白金、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-Oなどの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体が挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0061】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、例えば、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0062】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0063】
(メタノール含有ガス生成器)
メタノール含有ガス生成器5Bは、改質器3中の反応炉2で生成された改質ガスと、還元後ガス生成器4Bで生成された還元後ガスとから、メタノールを含有するメタノール含有ガスとを生成する。生成されたメタノールは、ラインL7を介し、貯蔵タンク(図示しない)に運ばれ貯蔵される。また、メタノール含有ガス生成器5Bは、生成したメタノール含有ガスの一部をライン(メタノール導入路)L10を介し、還元後ガス生成器4Bに送る。メタノール含有ガス生成器5は、改質ガスを導入するためのラインL6と、還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5Bに導入するためのラインL5と、メタノールを貯蔵するためのラインL7と、メタノール含有ガス生成で余ったH2を燃焼炉1に導入するためのライン(水素供給路)L8と、生成したメタノール含有ガスの一部を還元後ガス生成器4Bに導入するためのライン(メタノール導入路)L10と、それぞれ連結している。
【0064】
「メタノール製造方法」
次に、第3の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図6に示すようにメタノール製造方法S10Bは、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3B、反応工程S4、メタノール含有ガス生成工程S5B、水素分離工程S6を備える。以下、第1の実施形態および第2の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0065】
(メタノール含有ガス生成工程)
メタノール含有ガス生成工程S5Bでは、反応工程S4で生成した改質ガスと、還元後ガス生成工程S3Bで生成した還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成する。メタノール合成の式は、上記(6)式および(7)式のようになる。上記(6)式と上記(4)式に示されるように、還元後ガス生成工程S3で生成されたH2は、メタノールを合成後も一部が余る。この余った余剰H2は、ライン(水素供給路)L8を介し、水素分離器7Aに送られる。また、生成されたメタノール含有ガスは、ラインL7を介し、貯蔵されるが、メタノール含有ガスの一部はライン(メタノール導入路)L10を介し、還元後ガス生成器4Bに送られる。
【0066】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3Bでは、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4Bの場合は、メタノール含有ガスおよびCO2とからCOおよびH2Oを生成する。具体的な反応は下記(9)式となる。なお、陽極の反応は下記(10)式、陰極での反応は下記(11)式となる。
2CO2+CH3OH→3CO+2H2O・・・(9)
CH3OH+6OH-→CO2+5H2O+6e-・・・(10)
H2O+CO2+2e-→CO+2OH-・・・(11)
上記(9)式の電解電圧は、0.12Vとなる。したがって、第3の実施形態に係るメタノール製造システム10Bは、第1の実施形態に係るメタノール製造システム10よりも低い電圧で、還元後ガスを製造することができる。この反応で発生したCOは陰極で生じ、H2Oは、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。陽極で発生したH2Oは、ラインL4Aを介し、廃液として排出される。
【0067】
(作用効果)
以上説明した第3の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、メタノール含有ガス生成器5Bで生成したメタノール含有ガスの一部を還元後ガス生成工程S3Bに用いることで、第1の実施形態よりも低い消費電力で還元後ガスを製造することができる。
【0068】
<第4の実施形態>
次に、
図7を用いて第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係るメタノール製造システム10Cは、燃焼炉1および反応炉2を備える改質器3、還元後ガス生成器4C、メタノール含有ガス生成器5、二酸化炭素分離器6、水素分離器7Aを備える。以下、第1の実施形態,第2の実施形態および第3の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0069】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4Cは、ラインL3を介して送られたCO2とラインL11を介して送られたエタノールとから、COを含有する還元後ガスおよびH2Oを生成する。ラインL11から導入されるエタノールはバイオエタノールが好ましい。第4の実施形態の還元後ガス生成器4Cは、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4Cは、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。また、還元後ガス生成器4Cは、COを含有する還元後ガスとともに生成されたH2OをラインL4Aを介し廃液として放出する。還元後ガス生成器4Cは、CO2を還元後ガス生成器4Cに導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4Cで生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5に導入するためのラインL5と、生成されたH2Oを排出するためのラインL4Aと、エタノールを還元後ガス生成器4Cに導入するためのラインL11と、それぞれ連結している。
【0070】
陽極では、ラインL11を介し導入されるエタノールを酸化してH2OおよびCO2を生成する。生成されたCO2は陰極に送られる。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、ロジウム、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化白金、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-Oなどの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体が挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0071】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、例えば、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0072】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0073】
「メタノール製造方法」
次に、第4の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図8に示すようにメタノール製造方法S10Cは、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3C、反応工程S4、メタノール含有ガス生成工程S5、水素分離工程S6を備える。以下、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各工程について説明する。
【0074】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3Cでは、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4Cの場合は、エタノールおよびCO2とからCOおよびH2Oを生成する。具体的な反応は下記(12)式となる。なお、陽極での反応は下記(13)式、陰極での反応は下記(14)式となる。
4CO2+C2H5OH→6CO+3H2O・・・(12)
C2H5OH+12OH-→2CO2+9H2O+12e-・・・(13)
H2O+CO2+2e-→CO+2OH-・・・(14)
上記(12)式の電解電圧は、0.19Vとなる。したがって、第4の実施形態に係るメタノール製造システム10Cは、第1の実施形態に係るメタノール製造システム10よりも低い電圧で、還元後ガスを製造することができる。この反応で発生したCOは陰極で生じ、H2Oは、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。陽極で発生したH2Oは、ラインL4Aを介し、廃液として排出される。
【0075】
(作用効果)
以上説明した第4の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、エタノールを還元後ガス生成工程S3Cに用いることで、第1の実施形態よりも低い消費電力で還元後ガスを製造することができる。
【0076】
<第5の実施形態>
次に、
図9を用いて第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係るメタノール製造システム10Dは、燃焼炉1および反応炉2を備える改質器3、還元後ガス生成器4D、メタノール含有ガス生成器5、二酸化炭素分離器6、水素分離器7Aを備える。以下、第1の実施形態,第2の実施形態、第3の実施形態および第4の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0077】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4Dは、ラインL3を介して送られたCO2とH2Oとから、COを含有する還元後ガスおよびH2O2を生成する。第5の実施形態の還元後ガス生成器4Dは、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4Dは、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。還元後ガス生成器4Dは、CO2を還元後ガス生成器4Dに導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4Dで生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5に導入するためのラインL5と、H2O2を貯蔵するためのラインL4Bと、それぞれ連結している。
【0078】
陽極では、H2O2を生成する。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-O、CaSnO3、BiVO4などの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体、ダイヤモンド電極などが挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0079】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、例えば、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0080】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0081】
「メタノール製造方法」
次に、第5の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図10に示すようにメタノール製造方法S10Dは、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3D、反応工程S4、メタノール含有ガス生成工程S5、水素分離工程S6を備える。以下、第1の実施形態,第2の実施形態,第3の実施形態、および第4の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各工程について説明する。
【0082】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3Dでは、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4Dの場合は、H2OおよびCO2とからCOおよびH2O2を生成する。具体的な反応は下記(15)式となる。
CO2+H2O→CO+H2O2・・・(15)
上記(11)式の電解電圧(vs.SHE)は、1.76Vとなる。本実施形態では、H2O2を生成することができる。この還元反応で発生したCOは陰極で生じ、H2O2は、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。陽極で発生したH2O2は、ラインL4Bを介し、貯蔵される。
【0083】
(作用効果)
以上説明した第5の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、価値の高いH2O2を生成することができる。
【0084】
<第6の実施形態>
次に、
図11を用いて第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係るメタノール製造システム10Eは、燃焼炉1および反応炉2を備える改質器3、還元後ガス生成器4E、メタノール含有ガス生成器5、二酸化炭素分離器6、水素分離器7A、酢酸生成器8を備える。以下、第1の実施形態,第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態および第5の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各部について説明する。
【0085】
(還元後ガス生成器)
還元後ガス生成器4Eは、ラインL3を介して送られたCO2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する。第4の実施形態の還元後ガス生成器4Dは、陽極(図示しない)と陰極(図示しない)と電解質体(図示しない)とを備える電解装置である。還元後ガス生成器4Eは、COを含有する還元後ガスをラインL5を介し、メタノール含有ガス生成器5に送る。また、還元後ガス生成器4Eは、O2をラインL4を介し廃棄する。還元後ガス生成器4Eは、CO2を還元後ガス生成器4Eに導入するためのラインL3と、還元後ガス生成器4Eで生成した還元後ガスをメタノール含有ガス生成器5に導入するためのラインL5と、生成されたO2を廃棄するためのラインL4と、生成したCOの一部を酢酸生成器8に導入するためのL12と、それぞれ連結している。
【0086】
陽極では、O2を生成する。陽極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陽極に用いられる触媒の材料としては、白金、パラジウム、ニッケルなどの金属およびこれらを含む合金、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化錫、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウムなどの二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-Oなどの三元系金属酸化物、Ru錯体などの金属錯体が挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陽極に接するようにしてもよい。
【0087】
陰極では、CO2の還元反応によりCOを含有する還元後ガスが生成される。陰極には、電解反応を促進するために、触媒を用いてもよい。陰極に用いられる触媒としては、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムなどの金属およびこれらの金属を含有する合金、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料、Ru錯体などの金属錯体などが挙げられる。また、金属錯体などを溶かした触媒溶液を陰極に接するようにしてもよい。
【0088】
電解装置に用いられる電解質体としては、任意の電解質を含む水溶液、イオン液体、有機溶媒、有機電解液、あるいは、イオン伝導性膜やイオン伝導セラミックを含む固体電解質であることが好ましい。電解質を含む水溶液としては、例えば、水酸化物イオン、水素イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどのうち1種以上を含む水溶液であることが好ましい。
【0089】
(酢酸生成器)
酢酸生成器8は、メタノール含有ガス生成器5で生成されたメタノール含有ガス中のメタノールと還元後ガス生成器4Eから送られたCOとから、酢酸を生成する。生成された酢酸はラインL13を介し、貯蔵される。酢酸の製造に用いられるメタノールは、ラインL7の途中にある蒸留塔(図示しない)等で、高純度化されている。酢酸生成器8は、メタノールを導入するためのラインL7と、還元後ガス生成器4Eで生成されたCOを導入するためのラインL12と、酢酸生成器8で生成した酢酸を貯蔵するためのラインL13と、それぞれ連結している。
【0090】
「メタノール製造方法」
次に、第6の実施形態におけるメタノール製造方法について、説明する。
図12に示すようにメタノール製造方法S10Eは、燃焼工程S1、二酸化炭素分離工程S2、還元後ガス生成工程S3E、反応工程S4、メタノール含有ガス生成工程S5、水素分離工程S6、酢酸生成工程S7を備える。以下、第1の実施形態,第2の実施形態,第3の実施形態、および第4の実施形態、および第5の実施形態に類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、類似する構成要素のうち、説明を行った構成要素と実質的に同一の機能構成を有する場合は、その構成要素についての説明を省略する。以下、各工程について説明する。
【0091】
(還元後ガス生成工程)
還元後ガス生成工程S3Eでは、二酸化炭素分離工程S2で分離されたCO2を還元して、COを含有する還元後ガスを生成する。還元後ガス生成器4Eの場合は、具体的な反応は上記(3)式となる。この還元反応で発生したCOは陰極で生じ、O2は、陽極で生じる。陰極で発生したCOはラインL5を介してメタノール含有ガス生成器5に送られる。また、一部のCOは、ラインL12を介し、酢酸生成器8に送られる。陽極で発生したO2は、ラインL4を介し、廃棄される。
【0092】
(酢酸生成工程)
酢酸生成工程S7では、メタノール含有ガス生成工程S5で生成されたメタノールと、還元後ガス生成工程S3Eで生成されたCOとから酢酸を生成する。なお、メタノール含有ガス生成工程S5で生成されたメタノールは蒸留などで高純度化されている。メタノールとCOとから酢酸を製造する方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、モンサント法を用いることができる。モンサント法ではメタノールおよびCOをヨウ化コバルトを触媒として反応させ、適宜精製することで酢酸を生成することができる。
【0093】
(作用効果)
以上説明した第6の実施形態においては、燃焼で発生した排ガス中のCO2をメタノールの原料にすることで、大気中に放出するCO2を低減しつつ、改質器を拡張せずに、メタノールを増産することができる。また、価値の高い酢酸を生成することができる。
【0094】
なお、上記で説明した各実施形態に係るメタノール製造システムは、単独で用いてもよいし、各実施形態で説明した構成を組み合わせてもよい。また、上記で説明した構成に代えて公知の構成を適用してもよいし、上記の各実施形態で説明した構成に対して公知の構成を追加的に適用してもよい。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
第1の実施形態のメタノール製造システムを用意した。水蒸気改質法を用い、原料ガスである天然ガス1500tの改質を行った。改質のための燃焼反応で燃料ガスである天然ガス200tを用いた。得られたメタノールは3400tであった。また、排出された二酸化炭素は0tであった。
【0097】
(実施例2)
酢酸プラントを追設した第6の実施形態のメタノール製造システムを用意した。原料ガスである天然ガス1500tの改質を行った。改質のための燃焼反応で、燃料ガスである天然ガス200tを用いた。得られたメタノールは1300tであり、酢酸は2400tであった。また,排出された二酸化炭素は0tであった。
【0098】
(実施例3)
第5の実施形態のメタノール製造システムを用意した。原料ガスである天然ガス1500tの改質を行った。改質のための燃焼反応で、燃料ガスである天然ガス200tを用いた。得られたメタノールは3400tであった。また、得られた過酸化水素は900tであった。排出された二酸化炭素は0tであった。
【0099】
(比較例1)
第1の実施形態のメタノール製造システムにおいて還元後ガス生成器を取り除いた装置を用意した。水蒸気改質法を用い、天然ガス1500tの改質を行った。改質のための燃焼反応で天然ガス200tを用いた。得られたメタノールは3400tであった。排出された二酸化炭素を計算したところ、1000tであった。
【0100】
以上より、本実施形態に係る実施例1は従来よりもCO2の排出量を低減することができ、かつ、メタノールの生産量を増やすことができた。
【0101】
<付記>
上記の実施形態に記載のメタノール製造システムおよびメタノール製造方法は以下のように把握され得る。
【0102】
(1)本開示の第1の態様に係るメタノール製造システム10は、原料ガス中のメタンを改質し、COとH2とを含有する改質ガスを生成する反応炉2を備える改質器3と、CO2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成器4と、反応炉2で生成された改質ガスと還元後ガス生成器4で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成器5と、を備える。
【0103】
このようにすることで、改質器を拡張せずにメタノールの製造能力を向上でき、かつCO2の排出量を低減することができる。
【0104】
(2)本開示の第2の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)のメタノール製造システム10であって、排ガスからCO2を分離する二酸化炭素分離器6を備える。
【0105】
このようにすることで、よりCO2の排出量を削減することができる。
【0106】
(3)本開示の第3の態様に係るメタノール製造システム10は、(2)のメタノール製造システム10であって、改質器3が、燃料ガスを燃焼することで発生する熱を反応炉2に供給し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する、燃焼炉1をさらに備える。
【0107】
このようにすることで、燃焼炉で発生した熱を反応炉に供給しつつ、発生したCO2をメタノールの製造に用いることで、CO2の排出量をより低減することができる。
【0108】
(4)本開示の第4の態様に係るメタノール製造システム10は、(3)のメタノール製造システム10であって、メタノール含有ガス生成器5から燃焼炉1にH2を導入するための水素供給路L8を備える。
【0109】
このようにすることで、メタノール含有ガスの生成で余った余剰H2を燃焼炉の燃焼に用いることができるので、CO2の排出量をより低減することができる。
【0110】
(5)本開示の第5の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(4)のいずれか1つのメタノール製造システム10であって、反応炉2から還元後ガス生成器4に前記改質ガス中のH2を導入するための改質ガス導入路L9を備える。
【0111】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0112】
(6)本開示の第6の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(4)のいずれか1つのメタノール製造システムで10あって、前記メタノール含有ガス生成器から前記還元後ガス生成器に前記メタノール含有ガスを導入するためのメタノール導入路を備える。
【0113】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0114】
(7)本開示の第7の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(4)のいずれか1つのメタノール製造システム10であって、還元後ガス生成器4が、さらに、エタノールを用いる。
【0115】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0116】
(8)本開示の第8の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(4)のいずれか1つのメタノール製造システム10であって、還元後ガス生成器4が、H2Oと前記CO2とから、COとH2O2とを生成する。
【0117】
このようにすることで、メタノールとともにH2O2を生成することができる。
【0118】
(9)本開示の第9の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(4)のいずれか1つのメタノール製造システム10であって、メタノール含有ガス生成器5で生成されたメタノール含有ガス中のメタノールと前記還元後ガス中のCOとから、酢酸を生成する酢酸生成器8を備える。
【0119】
このようにすることで、メタノールとともに酢酸を生成することができる。
【0120】
(10)本開示の第10の態様に係るメタノール製造システム10は、(1)~(9)のいずれか1つのメタノール製造システム10であって、還元後ガス生成器4が電解装置である。
【0121】
このようにすることで、効率よくCO2からCOを得ることができる。
【0122】
(11)本開示の第11の態様に係るメタノール製造方法S10は、原料ガス中のメタンを酸化して、COとH2とを含有する改質ガスを生成する反応工程S4と、CO2を還元してCOを含有する還元後ガスを生成する還元後ガス生成工程S3と、反応工程S4で生成された改質ガスと還元後ガス生成工程S3で生成された還元後ガスとからメタノールを含有するメタノール含有ガスを生成するメタノール含有ガス生成工程S5と、を備える。
【0123】
このようにすることで、改質器を拡張せずにメタノールの製造能力を向上でき、かつCO2の排出量を低減することができる。
【0124】
(12)本開示の第12の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)のメタノール製造方法S10であって、排ガスからCO2を分離する二酸化炭素分離工程S2をさらに備える。
【0125】
このようにすることで、よりCO2の排出量を削減することができる。
【0126】
(13)本開示の第13の態様に係るメタノール製造方法S10は、(12)のメタノール製造方法S10であって、燃料ガスを燃焼することで、反応工程S4に用いる熱を発生し、前記燃料ガスの燃焼で前記排ガスを生成する燃焼工程S1をさらに備える。
【0127】
このようにすることで、燃焼工程で発生した熱を反応工程に用いることができ、発生した排ガス中のCO2をメタノールの製造に用いることで、CO2の排出量をより低減することができる。
【0128】
(14)本開示の第14の態様に係るメタノール製造方法S10は、(13)のメタノール製造方法S10であって、燃焼工程S1において、さらに、前記メタノール含有ガスの生成で余ったH2を燃焼に用いる。
【0129】
このようにすることで、メタノール含有ガスの生成で余った余剰H2を燃焼炉の燃焼に用いることができるので、CO2の排出量をより低減することができる。
【0130】
(15)本開示の第15の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(14)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、還元後ガス生成工程S3において、さらに、反応工程S4で生成された前記改質ガス中のH2の一部を用いる。
【0131】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0132】
(16)本開示の第16の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(14)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、還元後ガス生成工程S3において、さらに、メタノール含有ガス生成工程S5で生成された前記メタノール含有ガスの一部を用いる。
【0133】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0134】
(17)本開示の第17の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(14)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、還元後ガス生成工程S3において、さらに、エタノールを用いる。
【0135】
このようにすることで、より低いエネルギーでCO2からCOを生成することができる。
【0136】
(18)本開示の第18の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(14)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、還元後ガス生成工程S3において、H2Oと前記CO2とから、COとH2O2とを生成する。
【0137】
このようにすることで、メタノールとともにH2O2を生成することができる。
【0138】
(19)本開示の第19の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(14)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、メタノール含有ガス生成工程S5で生成された前記メタノール含有ガス中のメタノールと前記還元後ガス中のCOとから、酢酸を生成する酢酸生成工程S7をさらに備える。
【0139】
このようにすることで、メタノールとともに酢酸を生成することができる。
【0140】
(20)本開示の第20の態様に係るメタノール製造方法S10は、(11)~(19)のいずれか1つのメタノール製造方法S10であって、還元後ガス生成工程S3が電解還元反応を用いる。
【0141】
このようにすることで、効率よくCO2からCOを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示のメタノール製造システムおよびメタノール製造方法は、改質器を拡張せずに、メタノール製造能力を向上することができ、CO2排出量低減することができるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0143】
1 燃焼炉、2 反応炉、3 改質器、4 還元後ガス生成器、5 メタノール含有ガス生成器、6 二酸化炭素分離器、7A 水素分離器、10 メタノール製造システム、L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7 ライン