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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A45D33/00 615C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215742
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101270
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-081766(JP,A)
【文献】実開平06-076108(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された中皿を収容するための収容部を備えた容器本体と、
前記収容部の底部に配置される容器本体側磁石と、
前記中皿に設けられた磁性体に対して、引き合う方向の磁力生じさせる第一位置と、当該引き合う方向の磁力が解除される第二位置とに、前記容器本体側磁石を移動可能に保持する磁石位置移動手段と、
を備え、
前記容器本体側磁石を前記第一位置に配置することで、前記中皿を磁力により前記収容部に保持させ
前記磁性体は中皿側磁石であり、前記第一位置から前記第二位置に前記容器本体側磁石を移動させたとき、前記中皿側磁石と前記容器本体側磁石との間で反発する方向の磁力が生じ、
前記磁石位置移動手段により、前記容器本体側磁石は前記第二位置から第三位置まで移動可能に構成され、
前記第二位置を超えた後、前記第三位置までの間、前記中皿側磁石と前記容器本体側磁石との間で引き合う方向の磁力が生じるコンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体は、その一側部において蝶番構造を介して開閉可能に蓋体が設けられており、
前記磁石位置移動手段は、前記容器本体に対して前記第一位置から前記第二位置を超えて前記第三位置までスライド移動可能に設けられた所定長の板状片を有し、
前記板状片の端部は前記第三位置において前記蝶番構造に当接する請求項に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
内容物が充填された中皿を収容するための収容部を備えた容器本体と、
前記収容部の底部に配置される容器本体側磁石と、
前記中皿に設けられた磁性体に対して、引き合う方向の磁力を生じさせる第一位置と、当該引き合う方向の磁力が解除される第二位置とに、前記容器本体側磁石を移動可能に保持する磁石位置移動手段と、
を備え、
前記容器本体側磁石を前記第一位置に配置することで、前記中皿を磁力により前記収容部に保持させ、
前記容器本体は、その一側部において蝶番構造を介して開閉可能に蓋体が設けられており、
前記磁石位置移動手段は、前記容器本体に対して前記第一位置から前記第二位置を超えて第三位置までスライド移動可能に設けられた所定長の板状片を有し、
前記板状片の端部は前記第三位置において前記蝶番構造に当接するコンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等の内容物が充填された中皿が容器本体に着脱可能に収容されるコンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダリーファンデーション、チーク等の化粧料が充填された中皿を収容するコンパクト容器が知られている。例えば、特許文献1等に開示されるように、この種のコンパクト容器では、容器本体に中皿を収容するための中皿収容部を設け、中皿収容部に嵌合用の爪などにより中皿を嵌合させることが行われている。また、例えば、特許文献2に開示されるように、容器本体の収容部の底部に磁石を配置し、中皿の底面に強磁性体部材を貼り付け、磁力により中皿を収容部に固定保持されるようにしたコンパクト容器も知られている。
【0003】
中皿を取り外すための構造として、上記特許文献1に開示のコンパクト容器では、中皿収容部に併設される塗布具収容部との隔壁に凹部を設け、塗布具収容部側からユーザの指を凹部に挿入し、中皿を上方に押し上げることができるようにされている。また、特許文献2に開示のコンパクト容器では、収容部の底部に小さな貫通孔を設け、この孔に細棒状のものを挿入して中皿を上方に押し上げることで、中皿を取り外すことができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-137207号公報
【文献】特開2020-81766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンパクト容器には種々の装飾が施され、デザイン性の高いものも多い。しかしながら、特許文献1に記載のコンパクト容器では、嵌合用の爪や、収容部と塗布具収容部との間の隔壁に設けられる凹部などは、コンパクト容器の蓋体を開けたときの美観を損なう要素ともなり得る。
【0006】
一方、特許文献2に記載のコンパクト容器のように磁力により中皿を収容部に固定保持する方法を採用すれば、嵌合用の爪等が不要になる。しかしながら、底面といえども収容部の底部に設けられる貫通孔は美観を損なう要素となり、貫通孔に汚れが溜まりやすいという問題もある。また、中皿を取り外す際に、細棒状のものを貫通孔に挿入する作業は困難である。中皿を押し上げる際の力加減の調整も難しく、力を入れすぎてしまうと中皿が飛び出してしまうこともある。その場合、衝撃により中皿内に残った化粧料が粉々に飛び散り、周囲を汚してしまうこともある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、中皿の着脱操作を簡易に行うことができ、美観を損なう要素を削減することのできるコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンパクト容器は、内容物が充填された中皿を収容するための収容部を備えた容器本体と、前記収容部の底部に配置される容器本体側磁石と、前記中皿に設けられた磁性体に対して、引き合う方向の磁力生じさせる第一位置と、当該引き合う方向の磁力が解除される第二位置とに、前記容器本体側磁石を移動可能に保持する磁石位置移動手段とを備え、前記容器本体側磁石を前記第一位置に配置することで、前記中皿を磁力により前記収容部に保持させ、前記磁性体は中皿側磁石であり、前記第一位置から前記第二位置に前記容器本体側磁石を移動させたとき、前記中皿側磁石と前記容器本体側磁石との間で反発する方向の磁力が生じ、前記磁石位置移動手段により、前記容器本体側磁石は前記第二位置から第三位置まで移動可能に構成され、前記第二位置を超えた後、前記第三位置までの間、前記中皿側磁石と前記容器本体側磁石との間で引き合う方向の磁力が生じることを特徴とする。
【0011】
本件発明に係るコンパクト容器において、前記容器本体は、その一側部において蝶番構造を介して開閉可能に蓋体が設けられており、前記磁石位置移動手段は、前記容器本体に対して前記第一位置から前記第二位置を超えて前記第三位置までスライド移動可能に設けられた所定長の板状片を有し、前記板状片の端部は前記第三位置において前記蝶番構造に当接することが好ましい。
また本発明に係るコンパクト容器は、内容物が充填された中皿を収容するための収容部を備えた容器本体と、前記収容部の底部に配置される容器本体側磁石と、前記中皿に設けられた磁性体に対して、引き合う方向の磁力を生じさせる第一位置と、当該引き合う方向の磁力が解除される第二位置とに、前記容器本体側磁石を移動可能に保持する磁石位置移動手段と、を備え、前記容器本体側磁石を前記第一位置に配置することで、前記中皿を磁力により前記収容部に保持させ、前記容器本体は、その一側部において蝶番構造を介して開閉可能に蓋体が設けられており、前記磁石位置移動手段は、前記容器本体に対して前記第一位置から前記第二位置を超えて第三位置までスライド移動可能に設けられた所定長の板状片を有し、前記板状片の端部は前記第三位置において前記蝶番構造に当接することを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンパクト容器によれば、内容物が充填された中皿を容器本体の収容部に収容させたとき、第一位置において収容部の底部に配置される容器本体側磁石と中皿の底部に設けられた磁性体との間で引き合う方向の磁力を生じさせ、中皿を磁力により収容部に固定保持することができる。そのため、嵌合用の爪等が不要になり、コンパクト容器の蓋体を開けたときの美観を損なう要素を減らすことができる。また、本発明のコンパクト容器では、磁石位置移動手段により、第一位置から容器本体側磁石を第二位置に移動させることで、中皿の磁性体との間の引き合う磁力を解除することができる。そのため、従来のように、収容部と塗布具収容部との間の隔壁に凹部を設けたり、収容部の底部に小さな貫通孔を設けたりする必要がなく、コンパクト容器の美観を損なう要素を減らすことができる。これと同時にデザイン上の自由度も増し、デザイン性のより高いコンパクト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態のコンパクト容器の概略構成を説明するための図であり、(a)は当該コンパクト容器の断面図であり、(b)は容器本体部分の平面図である。
図2図1に示すコンパクト容器におけるパレット40(中皿)の脱着機構について説明するための図であり、(a)は容器本体の背面図であり、(b)は当該コンパクト容器の底面図である。
図3】(a)は図2(b)のA-A矢視断面図であり、(b)は変形例を示す模式図である。
図4】パレットの脱着操作の手順を説明するための図である。
図5】(a)は図4(b)の部分拡大図であり、(b)は図4(c)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るコンパクト容器の実施の形態を説明する。図1を参照しながら本実施の形態のコンパクト容器100の概略構成を説明する。図1(a)に示すように当該コンパクト容器100は容器本体10と、蓋体20とを備えている。蓋体20は、容器本体10の一側部10a側に設けられた蝶番構造30(図3(a)等参照)を介して、容器本体10に対して開閉可能に取り付けられている。また、蓋体20の裏面には鏡21が設けられている。
【0015】
図1(b)はコンパクト容器100の蓋体20よりも下方を示した平面視である。コンパクト容器100は平面視において略矩形に形成されている。当該コンパクト容器100を使用する際、図1(b)に示すように容器本体10の一側部10a側を奥側に配置し、その反対側(以下、他側部10b側)を手前にして使用する。よって、容器本体10の容器本体10の一側部10a側を「奥」、他側部10b側を「手前」と称する場合がある。また、図1(a)等に示すように容器本体10の底面部10cが水平面に載置される状態で、容器本体10の底面部10cが位置する側を「下」、容器本体10の開口面(以下、上面10d)、すなわち蓋体20により覆われる面が位置する側を「上」と称する。このとき容器本体10の「上下方向」に対して直交すると共に、容器本体10の一側部10aと他側部10bとを結ぶ方向を「奥行方向」と称し、上下方向及び奥行方向に直交する方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0016】
図1(b)に示すように、容器本体10には、化粧料等の内容物が充填されたパレット(中皿)40を収容するためのパレット収容部(収容部)11と、化粧料を塗布するためのパフ等の塗布具(図示略)を収容するための塗布具収容部12とが設けられている。パレット収容部11と塗布具収容部12とは上面10dに設けられた略矩形の凹部として構成されている。パレット収容部11と塗布具収容部12との間には隔壁11aが設けられている。パレット収容部11と塗布具収容部12とは幅方向に並んで配置されている。パレット40に充填される内容物として、例えば、ファンデーション、チーク、アイシャドー、アイブロー、口紅等の粉体等を固形化又は半固形化した化粧料を挙げることができる。
【0017】
容器本体10の他側部10b側、つまり容器本体10の手前側には蓋体20を容器本体10に係止するためのロック部13が設けられている。ロック部13に蓋体20の他側部側に設けられた係止爪22(図3参照)を挿入することで、蓋体20が容器本体10に係止される。また、ロック部13を容器本体10の一側部10a側、すなわち奥側に押し込むことで、ロック状態が解除され、蓋体20を開けることができる。
【0018】
蝶番構造30はいわゆるフリーストップ機構を成し、容器本体10に対して蓋体20を開けたとき、その回動操作を止めると、そのときの角度で蓋体20を保持することができる。利用者は化粧料を塗布する際に、鏡21を確認しやすい角度に調整することができる。
【0019】
当該コンパクト容器100はパレット40内の内容物がなくなると、新たなパレット40と交換しながら繰り返し使用することができる。本実施の形態では、パレット40をパレット収容部11に対して磁力により脱着させ、パレット40の脱着操作を簡易に行うことを可能にした。以下、パレット40の脱着操作に関する構成を説明する。
【0020】
まず、パレット40の脱着操作に関する容器本体10側の構成を説明する。図2(a)は容器本体10の背面図であり、図2(b)は当該コンパクト容器100の底面図である。また、図3(a)は図2(b)のA-A断面図である。図2(b)は及び図3(a)に示すように、容器本体10の底面部10cには容器本体側磁石Mcが設けられる。容器本体側磁石Mcは容器本体10の奥行方向に短尺な略矩形形状を呈する板状の永久磁石よりなる。永久磁石として、例えば、フェライト磁石やネオジウム磁石等が挙げられる。容器本体10の底面部10cには、容器本体10の奥行方向にスライド操作可能なスライド操作部50(磁石位置移動手段)が設けられている。容器本体側磁石Mcはこのスライド操作部50に取り付けられている。スライド操作部50を容器本体10の奥行方向にスライド操作すると、容器本体側磁石Mcもスライド操作部50の移動に伴い容器本体10の奥行方向に移動する。
【0021】
本実施の形態では、図3(a)の拡大図に模式的に示すように当該容器本体側磁石Mcは短尺方向に着磁されており、容器本体10の奥行方向と着磁方向が同じ方向を向くように容器本体10の底面部10cに設けられる。つまり、スライド操作部50の移動方向と容器本体側磁石Mcの着磁方向が一致するように、スライド操作部50に容器本体側磁石Mcが取り付けられている。なお、図3(a)等の拡大図において「A」は磁極であり、S極又はN極を意味する。「B」はA極とは異種の磁極であり、A極がS極であればB極はN極であり、A極がN極であればB極はS極である。ここで、便宜的に、容器本体側磁石Mcは容器本体10の奥行方向において手前側(他側部10b側)がA極、奥側(一側部10a側)がB極となるように配置されるものとする。なお、図3図5において、容器本体側磁石Mc及び後述するパレット側磁石Mpにおいて、「A」、「B」の表示を行ってない場合も、網掛け模様を付した側はA極を表し、網掛け模様を付していない側はB極を表すものとする。
【0022】
次にスライド操作部50について説明する。スライド操作部50は、図2(b)に示すように、容器本体10の底面部10cにおいて、パレット収容部11の下方に容器本体10の一側部10aと他側部10bとを結ぶ方向に延びる案内溝51と、この案内溝51に挿入される操作片52とを有する。案内溝51は容器本体10の奥行方向の長さよりも短くなるように容器本体10の底面部10cに設けられている。案内溝51の一端51aは容器本体10の一側部10aに位置し、その他端51bは容器本体10の他側部10bよりも容器本体10の奥側に位置する。図2(a)に示すように案内溝51の一端51aは開口している。一方、他端51bは閉じている。操作片52は案内溝51の一端51aから挿入することができ、案内溝51の一端51aと他端51bとの間で移動可能とされている。
【0023】
図2(b)及び図3(a)に示すように、蓋体20を容器本体10に取り付けると、案内溝51の一端51aは蝶番構造30により閉塞される。操作片52が案内溝51に沿って最も奥側まで移動すると、操作片52の一端52aは蝶番構造30に当接し、蝶番構造30により案内溝51から抜止される。なお、操作片52が奥側に移動したときにその一端52aが蝶番構造30の一部に当接し、操作片52が案内溝51から抜止めされるように構成されていれば、蝶番構造30の具体的な態様は特に限定されるものではない。従って、従来公知の蝶番構造他、容器本体10に対して蓋体20を開閉可能に取り付ける際に採用可能な構造を全て採用することができる。このように、案内溝51の一端51aを容器本体10の一側部10aに位置させることで、蝶番構造30を抜止機構として用いることができ、別途、抜止部材を用意して案内溝51の一端51aを閉塞する必要がなくなるため、部品点数の削減、組立工数の削減を図ることができるため好ましい。
【0024】
次に、操作片52の構成を説明する。操作片52は平面視において略矩形を呈する所定長の板状片である。操作片52は案内溝51の長尺方向と同じ方向に長尺である。操作片52の上面に容器本体側磁石Mcが埋設されている。ここで、図2(b)において、パレット収容部11にパレット40が収容されたときのパレット40の中心位置を符号Pで示す。操作片52の他端52bが案内溝51の他端51bに当接するとき、すなわち操作片52の他端52bが最も手前側に位置するとき、容器本体側磁石Mcはパレット40の中心位置Pよりも手前側に位置するように、操作片52に埋設されている。このときの容器本体側磁石Mcの位置が本発明にいう第一位置に相当する。第一位置については後述する。
【0025】
一方、操作片52の下面には滑止部53が設けられている。図2(b)には、滑止部53が、スライド操作部50の移動方向に直交する方向に設けられた複数の長尺な凸条部53aから構成された例を示した。しかしながら、滑止部53は、図3(a)に示す態様に限らず、製品名等を表すロゴなどの形状を表す凸部により構成してもよいし、どのような形状であってもよい。また、凸条部53aの数やその他の形状の凸部の数なども特に限定されるものではない。
【0026】
次に、パレット40の脱着操作に関するパレット40側の構成を説明する。図1及び図3(a)に示すようにパレット40は、容器本体10のパレット収容部11の内形状と略同形の外形状を有する。図1(a)、(b)に示すように、パレット40は略矩形の底壁部41と、底壁部41の周囲を取り囲むように立設された周壁部42とにより浅い皿状に形成されている。また、パレット40の外形状はパレット収容部11の内形状よりも僅かに小さく形成されている。底壁部41の底壁部41の上面側には内容物をパレット40内に固定保持するための複数の凹み部43、44が設けられ、底壁部41の略中心位置には下面側からパレット側磁石Mpが埋設されている。
【0027】
パレット側磁石Mp(磁性体、中皿側磁石)は容器本体側磁石Mcと同じものを用いることができる。パレット40を容器本体10のパレット収容部11に所定の向きで収容したときに、パレット側磁石Mpの着磁方向と容器本体側磁石Mcの着磁方向とが同じ向きになるように、パレット側磁石Mpがパレット40に埋設される。なお、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpは必ずしも同じ種類の磁石でなくてもよいのは勿論である。
【0028】
ここで、図3(b)は容器本体側磁石Mc及びパレット側磁石Mpの着磁方向と配置される向きを説明するための模式図である。図3(a)、(b)に示すように、容器本体10の奥行方向において容器本体側磁石Mcの磁極は容器本体10の一側部10a側からB極、A極の順で配置されるとき、パレット側磁石Mpの磁極も容器本体10の一側部10a側からB極、A極の順で配置される。また、本実施の形態では、図3(a)、(b)に示すように、パレット40がパレット収容部11に収容されているとき、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとは上下方向に互いに重なり合わないが、容器本体側磁石McのB極とパレット側磁石MpのA極との間で互いに引き合う方向の磁力が生じる位置に両磁石が位置決めされている。
【0029】
また、図1(a)、図3(a)及び図5に示すように、パレット40では、底壁部41と周壁部42とによる角部45の外側は斜めに面取りされたような形状、つまり、いわゆるC面取りされたような形状を呈する。
【0030】
さらに、パレット40をパレット収容部11に収容する際にパレット側磁石Mpの着磁方向が、容器本体側磁石Mcの着磁方向と同じ向きとなるように、パレット40は奥行方向において手前側と奥側とを認識可能にされていることが好ましい。例えば、パレット40に充填された内容物に文字や模様等を表す刻印を行うなど、パレット40の向きを表す何らかの目印となるマークを付与することが好ましい。
【0031】
次に、図4及び図5を参照しながら、パレット40の脱着操作について説明する。図4はスライド操作部50を容器本体10の一側部10a側(奥行方向奥側)へ向けて移動させたときの操作片52の位置及びパレット40の状態の変化を示す図である。図4(a)は操作片52が最も他側部10b側に位置する状態を示す。このとき、容器本体側磁石Mcは本発明にいう第一位置に位置する。図4(b)は容器本体側磁石Mcを上記第一位置から本発明にいう第二位置に移動させた状態を示す。第二位置では、パレット側磁石Mpの下方に容器本体側磁石Mcが位置し、それぞれ同種の磁極同士が上下方向に重なり合っている。図4(c)は容器本体側磁石Mcが第二位置を超えた直後の状態を示し、図4(d)は操作片52をさらに容器本体10の一側部10a側に移動させた状態を示す。図4(d)に示す状態からさらに操作片52を容器本体10の一側部10a側に移動させると、操作片52の一端52aが蝶番構造30に当接し、容器本体側磁石Mcは本発明にいう第三位置(終点)に移動する。以下、図4(a)から(d)の順に説明する。
【0032】
図4(a)は容器本体10のパレット収容部11にパレット40を収容した状態を示す。パレット収容部11にパレット40が収容されていないとき、スライド操作部50は案内溝51内を自由に移動可能なフリーな状態にある。パレット収容部11にパレット40を所定の向きに収容すると、パレット側磁石Mpと容器本体側磁石Mcとの間に作用する磁力により、操作片52がその他端52bが案内溝51の他端51bに当接する位置まで移動し、容器本体側磁石Mcは第一位置に配置される。容器本体側磁石Mcが第一位置に配置されたとき、図3(a)を参照しながら説明したように、容器本体側磁石McのB極とパレット側磁石MpのA極との間に引き合う方向の磁力が生じ、パレット収容部11にパレット40が磁力により固定保持される。
【0033】
図4(a)に示す状態からスライド操作部50を容器本体10の一側部10a側(白抜き矢印の示す方向)へ移動させると、操作片52の移動に伴い容器本体側磁石Mcも容器本体10の一側部10a側へ移動する。容器本体側磁石McのA極及びB極がそれぞれパレット側磁石MpのA極及びB極の下方に移動する(図4(b)参照)と、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間の引き合う方向の磁力は解除され、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間で反発する方向の磁力が生じる。
【0034】
ここで、図4(a)に示す第一位置から図4(b)に示す第二位置に容器本体側磁石Mcが移動するまでの間、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間に生じる引き合う方向の磁力により、パレット側磁石Mpも容器本体10の一側部10a側に移動しようとする力が作用する。そのため、容器本体側磁石Mcが第二位置に移動したとき、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間で反発する方向の磁力により浮き上がったパレット40にも容器本体10の一側部10a側に移動する方向に力が作用する。この状態を図5(a)に拡大して示す。図5(a)において、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間の矢印は、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間に作用する反発する方向の磁力を表している。
【0035】
図4(b)の位置から、スライド操作部50をさらに容器本体10の一側部10a側に移動させると(図4(c)参照)、パレット側磁石MpのA極が容器本体側磁石McのB極との間の引き合う方向の磁力が作用し、パレット40に対して容器本体10の一側部10a側に移動する方向に力が作用する。この状態を図5(b)に示す。図5(b)に示す容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間の矢印は、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間に作用する引き合う方向の磁力を示している。上述したようにパレット40の角部45は面取りされているため、パレット40の一側部側は容器本体10の上面10dに乗り上げたような状態となる。
【0036】
図4(c)及び図5(b)に示す状態で、スライド操作部50をさらに容器本体10の一側部10a側に移動させると、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間に作用する引き合う方向の磁力により、パレット40が容器本体10から落下することなく、スライド操作部50の移動に伴ってパレット40がさらに容器本体10の一側部10a側に移動する(図4(d)参照)。
【0037】
このときパレット40の一側部側は容器本体10の一側部10a側に突出した状態となっており、ユーザが指で突出した部分を簡単に掴むことができるようになっている。また、パレット側磁石MpのA極と容器本体側磁石McのB極との間の距離も大きくなるため、パレット側磁石MpのA極と容器本体側磁石McのB極の間に作用する磁力の影響も小さくなり、パレット40をパレット収容部11から簡易に取り外すことができる。そして、図4(d)に示す状態からさらにスライド操作部50を移動させると、操作片52が案内溝51の一端51aにおいて蝶番構造30に当接し、容器本体10の一側部10a側方向へのスライド操作部50の移動が抑制される。
【0038】
上記作用を得る上で、容器本体10、蓋体20及びパレット40はそれぞれ非磁性体からなるものとする。所望の形状に容易に成形することができるという観点から、容器本体10、蓋体20及びパレット40はそれぞれ熱可塑性樹脂材料からなることが好ましい。容器本体10及び蓋体20は耐衝撃性や剛性が求められることから、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)等の硬度が高く、耐衝撃性や剛性に優れた材料を用いることが好ましい。パレット40を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ASやポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂を用いて、例えば、射出成形等により所定形状に成形される。また、図示は省略したが、蓋体20の天壁部の外面には凹凸などによる立体的な装飾を施してもよい。
【0039】
以上説明した本実施の形態のコンパクト容器100によれば、内容物が充填されたパレット40を容器本体10のパレット収容部11に収容させたとき、図4(a)に示す第一位置においてパレット収容部11の底部に配置される容器本体側磁石Mcとパレット40の底壁部41に設けられたパレット側磁石Mpとの間で引き合う方向の磁力を生じさせ、パレット40を磁力によりパレット収容部11に固定保持することができる。そのため、従来のようにパレット収容部11に嵌合用の爪等を設ける必要がなく、コンパクト容器100の蓋体20を開けたときの美観を損なう要素を減らすことができる。また、上記コンパクト容器100では、磁石位置移動手段により、第一位置から容器本体側磁石Mcを第二位置に移動させることで、中皿の磁性体との間の引き合う磁力を解除することができる。そのため、従来のように、パレット収容部11の周囲を取り囲む隔壁11aに凹部を設けたり、パレット収容部11の底部に小さな貫通孔を設けたりする必要がなく、コンパクト容器100の美観を損なう要素を減らすことができる。これと同時にデザイン上の自由度も増し、デザイン性のより高いコンパクト容器100を提供することができる。
【0040】
また、上記実施の形態のコンパクト容器100によれば、本発明にいう第二位置において、容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間で反発する方向の磁力を作用させ、さらにスライド操作部50を容器本体10の一側部10a側に移動させることで磁力を利用してパレット40を容器本体10の一側部10a側において上面10dに乗り上げたような状態とすることができる。そのため、パレット収容部11からパレット40を簡易に取り外すことができる。
【0041】
本発明に係るコンパクト容器は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。例えば、上記実施の形態では、容器本体側磁石Mcの着磁方向がスライド操作部50の移動方向と一致するようにして、スライド操作部50に容器本体側磁石Mcを取り付けた。そして、パレット40を容器本体10のパレット収容部11に所定の向きで収容したときに、パレット側磁石Mpの着磁方向と容器本体側磁石Mcの着磁方向とが同じ向きになるように、パレット側磁石Mpがパレット40に埋設した。しかしながら、本発明に係るコンパクト容器はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、図3(b)に示す態様を採用してもよい。図3(b)に示すように、例えば、容器本体側磁石Mcとして、スライド操作部50の移動方向に対して着磁方向が直交する向きとなるように2つの磁石を配置してもよい。このとき、一側部10a側の磁石と他側部10b側の磁石の着磁方向の向きを逆向きに配置する。図3(b)に示す例では、一側部10a側は上方がA極、下方がB極となるようにし、他側部10b側は上方にB極、下方がA極となるようにそれぞれの磁石を配置している。そして、パレット側磁石Mpについては、容器本体側磁石Mcのうち一側部10a側に配置された磁石と着磁方向の向きが同じになるように配置する。このようにすれば、パレット40がパレット収容部11に収容されたときは、上記実施の形態と同様に容器本体側磁石Mcの一側部10a側の磁石と、パレット側磁石Mpとの間の引き合う方向の磁力により、パレット40をパレット収容部11に固定保持することができる。一方、スライド操作部50を容器本体10の一側部10a側に移動させれば、上記実施の形態と同様に、容器本体側磁石Mcの他側部10b側の磁石がパレット側磁石Mpの下方に位置すると、両磁石の間で反発する方向の磁力が働き、パレット40を浮かせることができる。その後、スライド操作部50をさらに容器本体10の一側部10a側に移動させることで、上記実施の形態で述べた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
さらに、容器本体側磁石Mc及びパレット側磁石Mpの位置やスライド操作部50の移動方向等は特に限定されるものではなく、パレット40がパレット収容部11に収容されたときに容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間で引き合う方向の磁力が作用し、スライド操作部50を移動させることで容器本体側磁石Mcとパレット側磁石Mpとの間で引き合う方向の磁力が解除される位置に容器本体側磁石Mcが移動されればよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、パレット40の底壁部41にパレット側磁石Mpを設けたが、永久磁石に変えて例えば鉄板等の磁性体に置換してもよい。この場合も、パレット40側に配置された磁性体と、容器本体側磁石Mcとの間に作用する磁力により、パレット40をパレット収容部11に固定保持することができる。また、上記実施の形態と同様に容器本体側磁石Mcをスライド操作部50により位置を移動させることで、磁性体と容器本体側磁石Mcとの間に作用する引き合う方向の力を解除すれば、例えば、蓋体20を開いた状態で容器本体10の上面10dを下方に向ければ、パレット40が自重により落下し、パレット40をパレット収容部11から簡易に取り外すことができる。当該方法によれば、上記実施の形態とは異なり、パレット40をパレット収容部11から磁力により浮かせる効果は得られないが、コンパクト容器の蓋体20を開いたときの美観を損なう要素を減らすことができる。
【符号の説明】
【0044】
10 :容器本体
10a :一側部
10b :他側部
10c :底面部
10d :上面
11 :パレット収容部
11a :隔壁
12 :塗布具収容部
13 :ロック部
20 :蓋体
21 :鏡
30 :蝶番構造
40 :パレット(中皿)
41 :底壁部
42 :周壁部
43、44:凹み部
45 :角部
50 :スライド操作部(磁石位置移動手段)
51 :案内溝
51a :一端
51b :他端
52 :操作片(板状片)
52a :一端
52b :他端
53 :滑止部
53a :凸条部
100 :コンパクト容器
Mc :容器本体側磁石
Mp :パレット側磁石(磁性体)
P :(パレットの)中心位置
図1
図2
図3
図4
図5