IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリスパー セラピューティクス アーゲーの特許一覧 ▶ バイエル・ヘルスケア・エルエルシーの特許一覧

特許7550648新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用
<>
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図1
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図2A
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図2B
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図2C
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図3
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図4
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図5
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図6
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図7
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図8
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図9
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図10
  • 特許-新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ系およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/22 20060101AFI20240906BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C12N9/22 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/55
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020550714
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019023044
(87)【国際公開番号】W WO2019183150
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】18172625.8
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18181680.2
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18162683.9
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/745,246
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/745,240
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18162681.3
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/745,238
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18174707.2
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/745,239
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516145518
【氏名又は名称】クリスパー セラピューティクス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コーネン, アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ココ, ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ガマリンダ, マイケル ビアグ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】ピッツラー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リヒター, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】テッベ, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】タケウチ, リョウ
(72)【発明者】
【氏名】ライス, キャロライン ダブリュー.
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048969(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/153780(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/002812(WO,A1)
【文献】特表2015-523856(JP,A)
【文献】国際公開第2015/077318(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/039145(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
C12N 15/00- 15/90
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むGib11ポリペプチド、
b)配列番号2のアミノ酸配列を含むGib11Spa-1ポリペプチド、
c)配列番号3のアミノ酸配列を含むGib11Spa-2ポリペプチド、
d)配列番号4のアミノ酸配列を含むGib11Spa-3ポリペプチド、
e)配列番号5のアミノ酸配列を含むP2H12ポリペプチド、
f)配列番号6のアミノ酸配列を含むE2ポリペプチド、
g)配列番号7のアミノ酸配列を含むE2+K741D+L743Kポリペプチド、
h)配列番号8のアミノ酸配列を含むE2+S670T+N675Dポリペプチド、
i)配列番号9のアミノ酸配列を含むE2+K741N+L743Nポリペプチド、
j)配列番号10のアミノ酸配列を含むF8ポリペプチド;
k)配列番号11のアミノ酸配列を含むF8+K737D+L739Kポリペプチド、および
l)配列番号12のアミノ酸配列を含むF8+K737N+L739Nポリペプチド
からなる群から選択されるsRGNポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のsRGNポリペプチドをコードする核酸。
【請求項3】
宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項2に記載の核酸。
【請求項4】
(a)請求項1に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードする核酸と
を含み、前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、組成物。
【請求項5】
(a)請求項1に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードする核酸と
を含む、標的遺伝子座における標的DNAを標的化、編集、改変または操作する方法において使用するための組成物であって、
前記gRNAが前記sRGNポリペプチドを前記標的遺伝子座へとガイドすることができ、前記方法は、前記組成物を前記標的DNAに提供するステップを含む、組成物。
【請求項6】
前記方法が、異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を前記標的DNAに提供するステップをさらに含み、前記異種ポリヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子座に挿入され得る、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、および/または前記異種ポリヌクレオチド配列が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されており、ここで、前記宿主細胞は、ヒト胎児細胞でも、ヒト胚細胞でも、ヒト生殖細胞でもない、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リボ核酸(RNA)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記sRGNポリペプチドをコードするRNAが、mRNAである、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記ドナー鋳型が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにコードされる、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記sRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リポソームまたは脂質ナノ粒子内に製剤化されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
前記リポソームまたは脂質ナノ粒子が、前記gRNA、または前記gRNAをコードする核酸も含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記方法が、RNP複合体として前記gRNAと予め複合体化されたsRGNポリペプチドを標的DNAに提供するステップを含む、請求項5~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(a)請求項1に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸と
を含み、前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、改変された細胞であって、ヒト胎児細胞でも、ヒト胚細胞でも、ヒト生殖細胞でもない、改変された細胞
【請求項16】
(a)請求項1に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸と
を含むキットであって、
前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年3月19日に出願した欧州特許出願第18162681.3号、2018年3月19日に出願した欧州特許出願第18162683.9号、2018年5月16日に出願した欧州特許出願第18172625.8号、2018年5月16日に出願した欧州特許出願第18174707.2号、2018年7月4日に出願した欧州特許出願第18181680.2号、2018年10月12日に出願した米国特許出願第62/745,238号、2018年10月12日に出願した米国特許出願第62/745,239号、2018年10月12日に出願した米国特許出願第62/745,240号、および2018年10月12日に出願した米国特許出願第62/745,246号に対する優先権を主張し、これらの特許出願の各々の内容は、全図面を含むその全体が明確に参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般的には、分子生物学の分野に関し、これは、RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼ、関連するガイドRNAおよび/または標的配列を含む新規の系に関する組成物および方法、ならびに転写を調節するための方法ならびに細胞におけるDNAを標的化、編集および/または操作するための方法を含む、様々な適用においてこれらを産生および使用するための方法を含む。
【背景技術】
【0003】
ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびリボヌクレアーゼ等のエンドヌクレアーゼは、ゲノム標的化、ゲノム編集、遺伝子サイレンシング、転写調節、組換え促進、および他の分子生物学的技法のための部位特異的ヌクレアーゼとして利用されてきた。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-CRISPR関連タンパク質(Cas)系は、新規ヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼの供給源を提供するものであり、これにはCRISPR-Cas9が含まれる。
【0004】
CRISPR系は、原核生物にファージなどの外来遺伝子エレメントに対する耐性を与える原核細胞系である。Streptococcus pyogenesにおいて実証される通り、成熟活性化tracr RNAおよび標的化crRNAの間に形成された二重鎖によってガイドされるCas9は、侵入同族DNAにおいて部位特異的な二本鎖DNA(dsDNA)切断を導入する。Cas9は、HNHヌクレアーゼドメインを使用して標的鎖(crRNAのスペーサー配列に対して相補的として定義)を切断し、RuvC様ドメインを使用して非標的鎖を切断するマルチドメイン酵素であり、選択的モチーフ不活性化によるdsDNA切断Cas9からニッカーゼへの変換を可能にする。DNA切断特異性は、2種のパラメーターによって決定される:プロトスペーサー配列(crRNAのスペーサーに対して非相補的なDNA標的における配列)を標的とするcrRNAの可変的なスペーサー由来配列と、非標的DNA鎖におけるプロトスペーサーのすぐ3’(下流)に位置する、短い配列、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)。
【0005】
WO2013/176722に記載されているCRISPR-Casの、RNAガイドDNA標的化原理を使用したゲノムの編集は、過去数年間にわたって広く活用されてきた。研究により、RNAガイドCas9を、ヒト細胞、マウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、虫、植物、酵母および細菌、ならびに様々な他の種においてゲノム編集ツールとして用いることができることが実証された。この系は、多用途であり、複数のガイドRNAを使用することによりゲノムにおけるいくつかの部位を同時に編集するようにCas9をプログラミングすることにより、マルチプレックスゲノム操作を可能にする。Cas9からニッカーゼへの変換は、変異原性活性を低下しつつ、哺乳動物ゲノムにおける相同性により導かれる修復を容易にすることが示された。加えて、Cas9触媒不活性突然変異体のDNA結合活性は、例えば、RNAプログラム可能転写サイレンシングおよび活性化デバイスまたはエピジェネティックモディファイヤーを操作するように活用されてきた。
CRISPR-Cas9系は遺伝子編集に有望であるにもかかわらず、この系の使用にはいくつかの問題が付随する。例えば、それらは、次の不利益のうち1つまたは複数を有する:
a)そのサイズは、アデノ随伴ウイルス(AAV)等の確立された治療に適したウイルストランスフェクション系のゲノム内に運ばれるには大き過ぎる。
b)異種環境におけるその活性は、一般に、これらの環境における使用にとって低過ぎ、例えば、真核生物、特に、哺乳動物環境における効率的な使用にとって低過ぎる。
c)そのヌクレアーゼ活性は、忠実度を欠き、望まれないオフ標的効果をもたらし、このことは、この系を、例えば、高い精度を要求する遺伝子療法での使用または他の適用に不適なものとするであろう。
d)哺乳動物におけるin vivo適用のためのその使用を限定し得る、免疫応答を誘発することがある。
e)DNA標的化セグメントのための標的選択を制限する、複雑なおよび/または長いPAMを要求する。
f)プラスミドまたはウイルスベクターからの不良な発現を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/176722号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本セクションは、本開示の一般概要を示し、その全範囲またはその特色の全てを網羅するものではない。
【0008】
一部の実施形態では、新規RNAプログラム可能エンドヌクレアーゼに関する組成物および方法、ならびにそのようなヌクレアーゼを使用するための系が、本明細書に提供される。本発明は、ガイドRNAおよび/または標的配列を含む他の構成成分、ならびに様々な適用においてそれらを産生および使用するための方法にも関する。そのような適用の例は、新規ヌクレアーゼならびに他の構成成分、例えば核酸および/またはポリペプチドを使用してDNAを標的化、編集および/または操作するための方法はもちろん転写を調節するための方法も含む。本開示の一部の実施形態はまた、本明細書に開示されている系のエレメントのうち1つまたは複数を含む、組換え細胞およびキットに関する。
【0009】
一態様では、N末端からC末端に向かって、1)配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号34~37のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1と、2)配列番号38~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号38~41のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2と、3)配列番号42~45のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号42~45のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3と、4)配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号46~49のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4と、5)配列番号50~53のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号50~53のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5と、6)配列番号54~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号54~57のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6と、7)配列番号58~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号58~61のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7と、8)配列番号62~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号62~65のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8とを含み、ミニドメインのうちの少なくとも2つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、合成RNAガイドヌクレアーゼ(sRGN)ポリペプチドが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、ミニドメインのうちの少なくとも3つは、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する。一部の実施形態では、ミニドメイン8は、配列番号62のアミノ酸配列、または配列番号62に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン8は、配列番号63のアミノ酸配列、または配列番号63に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン1は、配列番号34のアミノ酸配列、または配列番号34に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0010】
別の態様では、N末端からC末端に向かって、1)配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号66~69のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1と、2)配列番号70~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号70~73のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2と、3)配列番号74~77のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号74~77のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3と、4)配列番号78~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号78~81のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4と、5)配列番号82~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号82~85のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5と、6)配列番号86~89のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号86~89のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6と、7)配列番号90~93のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号90~93のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7と、8)配列番号94~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号94~97のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8と、9)配列番号98~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号98~101のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン9と、10)配列番号102~105のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号102~105のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン10と、11)配列番号106~109のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号106~109のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン11と、12)配列番号110~113のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号110~113のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン12とを含み、ミニドメインのうちの少なくとも2つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、sRGNポリペプチドが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、ミニドメインのうちの少なくとも3つは、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する。一部の実施形態では、ミニドメイン12は、配列番号110のアミノ酸配列、または配列番号110に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン12は、配列番号111のアミノ酸配列、または配列番号111に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、(i)ミニドメイン1は、配列番号66のアミノ酸配列、または配列番号66に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含み、(ii)ミニドメイン2は、配列番号70のアミノ酸配列、または配列番号70に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0011】
別の態様では、a)配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号1に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11ポリペプチド、b)配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号2に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-1ポリペプチド、c)配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号3に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-2ポリペプチド、d)配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号4に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-3ポリペプチド、e)配列番号5のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号5に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むP2H12ポリペプチド、f)配列番号6のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号6に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2ポリペプチド、g)配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+K741D+L743Kポリペプチド、h)配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+S670T+N675Dポリペプチド、i)配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+K741N+L743Nポリペプチド、j)配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8ポリペプチド;k)配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8+K737D+L739Kポリペプチド;およびl)配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8+K737N+L739Nポリペプチド、からなる群から選択されるsRGNポリペプチドが、本明細書に提供される。
【0012】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、a)配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号1に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11ポリペプチド、b)配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号2に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-1ポリペプチド、およびc)配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号4に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-3ポリペプチドからなる群から選択される。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、a)配列番号1のアミノ酸配列を含むGib11ポリペプチド、b)配列番号2のアミノ酸配列を含むGib11Spa-1ポリペプチド、およびc)配列番号4のアミノ酸配列を含むGib11Spa-3ポリペプチドからなる群から選択される。
【0013】
別の態様では、上に記載されている実施形態のいずれかに記載のsRGNポリペプチドをコードする核酸が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、核酸は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、核酸は、配列番号13~29のいずれか1つのヌクレオチド配列、または配列番号13~29のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0014】
別の態様では、(a)請求項1~11のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と、(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸とを含み、gRNAがsRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、系は、異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、異種ポリヌクレオチド配列は、標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る。
【0015】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、および/または異種ポリヌクレオチド配列が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0016】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)である。
【0017】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、リボ核酸(RNA)である。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードするRNAは、mRNAである。
【0018】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、ドナー鋳型は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにコードされる。
【0019】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、sRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸は、リポソームまたは脂質ナノ粒子内に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームまたは脂質ナノ粒子は、gRNA、またはgRNAをコードする核酸も含む。
【0020】
一部の実施形態では、上に記載されている系のいずれかに従って、系は、gRNAと予め複合体化されてリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を形成しているsRGNポリペプチドを含む。
【0021】
別の態様では、標的遺伝子座における標的DNAを標的化、編集、改変または操作する方法であって、(a)上に記載されている実施形態のいずれかに記載のsRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と、(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸とを標的DNAに提供するステップを含み、gRNAがsRGNポリペプチドを標的遺伝子座へとガイドすることができる、方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、方法は、異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を標的DNAに提供するステップをさらに含み、異種ポリヌクレオチド配列は、標的遺伝子座に挿入され得る。
【0022】
一部の実施形態では、上に記載されている方法のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、および/または異種ポリヌクレオチド配列が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0023】
一部の実施形態では、上に記載されている方法のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)である。
【0024】
一部の実施形態では、上に記載されている方法のいずれかに従って、sRGNポリペプチドをコードする核酸は、リボ核酸(RNA)である。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードするRNAは、mRNAである。
【0025】
一部の実施形態では、上に記載されている方法のいずれかに従って、ドナー鋳型は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにコードされる。
【0026】
一部の実施形態では、上に記載されている方法のいずれかに従って、sRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸は、リポソームまたは脂質ナノ粒子内に製剤化されている。一部の実施形態では、リポソームまたは脂質ナノ粒子は、gRNA、またはgRNAをコードする核酸も含む。一部の実施形態では、方法は、RNP複合体としてgRNAと予め複合体化されたsRGNポリペプチドを標的DNAに提供するステップを含む。
【0027】
別の態様では、(a)上に記載されている実施形態のいずれかに記載のsRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と、(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸とを含み、gRNAがsRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、改変された細胞が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、改変された細胞は、異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、異種ポリヌクレオチド配列は、標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る。
【0028】
別の態様では、細胞のゲノムが、上に記載されている実施形態のいずれかに記載の方法によって編集されている、遺伝子改変された細胞が、本明細書に提供される。
【0029】
別の態様では、(a)請求項1~11のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と、(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸とを含み、gRNAがsRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、キットが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、キットは、異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、異種ポリヌクレオチド配列は、標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
N末端からC末端に向かって:
1)配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号34~37のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1と、
2)配列番号38~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号38~41のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2と、
3)配列番号42~45のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号42~45のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3と、
4)配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号46~49のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4と、
5)配列番号50~53のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号50~53のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5と、
6)配列番号54~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号54~57のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6と、
7)配列番号58~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号58~61のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7と、
8)配列番号62~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号62~65のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8と
を含み、
前記ミニドメインのうちの少なくとも2つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、
合成RNAガイドヌクレアーゼ(sRGN)ポリペプチド。
(項目2)
前記ミニドメインのうちの少なくとも3つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、項目1に記載のsRGNポリペプチド。
(項目3)
ミニドメイン8が、配列番号62のアミノ酸配列、または配列番号62に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目1または2に記載のsRGNポリペプチド。
(項目4)
ミニドメイン8が、配列番号63のアミノ酸配列、または配列番号63に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目1または2に記載のsRGNポリペプチド。
(項目5)
ミニドメイン1が、配列番号34のアミノ酸配列、または配列番号34に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目1~4のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド。
(項目6)
N末端からC末端に向かって:
1)配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号66~69のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1と、
2)配列番号70~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号70~73のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2と、
3)配列番号74~77のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号74~77のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3と、
4)配列番号78~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号78~81のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4と、
5)配列番号82~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号82~85のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5と、
6)配列番号86~89のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号86~89のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6と、
7)配列番号90~93のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号90~93のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7と、
8)配列番号94~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号94~97のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8と、
9)配列番号98~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号98~101のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン9と、
10)配列番号102~105のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号102~105のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン10と、
11)配列番号106~109のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号106~109のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン11と、
12)配列番号110~113のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号110~113のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン12と
を含み、
前記ミニドメインのうちの少なくとも2つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、
sRGNポリペプチド。
(項目7)
前記ミニドメインのうちの少なくとも3つが、Staphylococcus lugdunensis Cas9(配列番号30)、Staphylococcus pasteuri Cas9(配列番号31)、Staphylococcus microti Cas9(配列番号33)およびStaphylococcus hyicus Cas9(配列番号32)からなる群から選択される異なる親Cas9エンドヌクレアーゼに由来する、項目6に記載のsRGNポリペプチド。
(項目8)
ミニドメイン12が、配列番号110のアミノ酸配列、または配列番号110に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目6または7に記載のsRGNポリペプチド。
(項目9)
ミニドメイン12が、配列番号111のアミノ酸配列、または配列番号111に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目6または7に記載のsRGNポリペプチド。
(項目10)
(i)ミニドメイン1が、配列番号66のアミノ酸配列、または配列番号66に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含み、(ii)ミニドメイン2が、配列番号70のアミノ酸配列、または配列番号70に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目6~9のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド。
(項目11)
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号1に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11ポリペプチド、
b)配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号2に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-1ポリペプチド、
c)配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号3に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-2ポリペプチド、
d)配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号4に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-3ポリペプチド、
e)配列番号5のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号5に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むP2H12ポリペプチド、
f)配列番号6のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号6に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2ポリペプチド、
g)配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+K741D+L743Kポリペプチド、
h)配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+S670T+N675Dポリペプチド、
i)配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むE2+K741N+L743Nポリペプチド、
j)配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8ポリペプチド;
k)配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8+K737D+L739Kポリペプチド、および
l)配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むF8+K737N+L739Nポリペプチド
からなる群から選択されるsRGNポリペプチド。
(項目12)
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号1に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11ポリペプチド、
b)配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号2に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-1ポリペプチド、および
c)配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号4に対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含むGib11Spa-3ポリペプチド
からなる群から選択される、項目11に記載のsRGNポリペプチド。
(項目13)
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むGib11ポリペプチド、
b)配列番号2のアミノ酸配列を含むGib11Spa-1ポリペプチド、および
c)配列番号4のアミノ酸配列を含むGib11Spa-3ポリペプチド
からなる群から選択される、項目12に記載のsRGNポリペプチド。
(項目14)
項目1~13のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチドをコードする核酸。
(項目15)
宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、項目14に記載の核酸。
(項目16)
配列番号13~29のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むかまたは配列番号13~29のいずれか1つに対して少なくとも約90%配列同一性を有するそのバリアントを含む、項目14または15に記載の核酸。
(項目17)
(a)項目1~13のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードする核酸と
を含み、前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系。
(項目18)
異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、前記異種ポリヌクレオチド配列が、前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る、項目17に記載の系。
(項目19)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、および/または前記異種ポリヌクレオチド配列が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、項目17または18に記載の系。
(項目20)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、項目17~19のいずれか一項に記載の系。
(項目21)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リボ核酸(RNA)である、項目17~19のいずれか一項に記載の系。
(項目22)
前記sRGNポリペプチドをコードするRNAが、mRNAである、項目21に記載の系。
(項目23)
前記ドナー鋳型が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにコードされる、項目17~22のいずれか一項に記載の系。
(項目24)
前記sRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リポソームまたは脂質ナノ粒子内に製剤化されている、項目17~23のいずれか一項に記載の系。
(項目25)
前記リポソームまたは脂質ナノ粒子が、前記gRNA、または前記gRNAをコードする核酸も含む、項目24に記載の系。
(項目26)
前記gRNAと予め複合体化されてリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を形成しているsRGNポリペプチドを含む、項目17~23のいずれか一項に記載の系。
(項目27)
標的遺伝子座における標的DNAを標的化、編集、改変または操作する方法であって、
(a)項目1~13のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、または前記gRNAをコードする核酸と
を前記標的DNAに提供するステップを含み、
前記gRNAが前記sRGNポリペプチドを前記標的遺伝子座へとガイドすることができる、方法。
(項目28)
異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を前記標的DNAに提供するステップをさらに含み、前記異種ポリヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子座に挿入され得る、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、および/または前記異種ポリヌクレオチド配列が、宿主細胞における発現のためにコドン最適化されている、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、項目27~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リボ核酸(RNA)である、項目27~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記sRGNポリペプチドをコードするRNAが、mRNAである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記ドナー鋳型が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにコードされる、項目27~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記sRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸が、リポソームまたは脂質ナノ粒子内に製剤化されている、項目27~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記リポソームまたは脂質ナノ粒子が、前記gRNA、または前記gRNAをコードする核酸も含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
RNP複合体として前記gRNAと予め複合体化されたsRGNポリペプチドを標的DNAに提供するステップを含む、項目27~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
(a)項目1~13のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸と
を含み、前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、改変された細胞。
(項目38)
異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、前記異種ポリヌクレオチド配列が、前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る、項目37に記載の改変された細胞。
(項目39)
細胞のゲノムが、項目27~36のいずれか一項に記載の方法により編集されている、遺伝子改変された細胞。
(項目40)
(a)項目1~13のいずれか一項に記載のsRGNポリペプチド、または前記sRGNポリペプチドをコードする核酸と、
(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸と
を含むキットであって、
前記gRNAが、前記sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、キット。
(項目41)
異種ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型をさらに含み、前記異種ポリヌクレオチド配列が、前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入され得る、項目40に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、Gib11、P2H12、E2およびF8を作出するために使用される遺伝子ファミリーシャフリング技法のグラフィック表示を示す。
【0031】
図2A図2Aは、Gib11についての蛍光偏光アッセイである、破壊アッセイにおける蛍光偏光に基づく生化学的活性の結果(一部の場合では、SluCas9などの野生型Cas9のものを超える活性)を示す。菱形は、sgRNAを用いた条件を描写し、四角形は、sgRNAなしの対照条件を描写する。
【0032】
図2B図2Bは、SluCas9についての蛍光偏光に基づく生化学的切断アッセイの結果を示す。菱形は、sgRNAを用いた条件を描写し、四角形は、sgRNAなしの対照条件を描写する。
【0033】
図2C図2Cは、図2Aおよび図2Bにそれぞれ示されているsgRNAを用いた条件についての曲線の初期勾配により判定された、切断アッセイにおけるGib11およびSluCas9の相対活性を示す。
【0034】
図3図3は、液体培養での「live-dead」アッセイにより判定された、Gib11による「NNGG」PAMモチーフの認識についての結果を示す。
【0035】
図4図4は、P2H12についての蛍光偏光に基づく生化学的切断アッセイの結果を示す。菱形は、sgRNAを用いた条件を描写し、四角形は、sgRNAなしの対照条件を描写する。
【0036】
図5図5は、E2についてのBFP破壊に基づく切断アッセイの結果を示す。
【0037】
図6図6は、Staphylococcus aureusタンパク質のドメイン構成に基づくGib11Spa-1、Gib11Spa-2およびGib11Spa-3の予測ドメイン構造を示す。角括弧に付いている名称PIは、基礎Gib11配列のPIドメインを示す。対応するcRGN-A部分は、斜線の入った四角形として(この場合はGib11について)示されており、cRGN-B Staphylococcus pasteuri部分は、白い四角形として示されている。アミノ酸位置は、Gib11タンパク質(配列番号1)に準拠している。
【0038】
図7図7は、Gib11Spa-1、Gib11Spa-2およびGib11Spa-3についてのBFP破壊に基づく切断アッセイの結果を示す。
【0039】
図8図8は、F8についてのBFP破壊に基づく切断アッセイの結果を示す。
【0040】
図9図9は、生化学的切断アッセイを使用して評価された、Gib11、Gib11Spa-1、Gib11Spa-3、E2およびF8の特異性プロファイルを示す。
【0041】
図10図10は、Gib11、Gib11Spa-1、Gib11Spa-3、E2およびF8についてのそれらの特異性プロファイルに基づく全体的特異性を示す。
【0042】
図11図11は、生化学的切断アッセイを使用して評価された、Gib11、Gib11Spa-1、Gib11Spa-3、E2およびF8の活性プロファイルの分布を示す。x軸上には、左から右に見て、示されているヌクレアーゼごとに活性の降順によりソートした標的DNA基質がある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
大部分の現存するII型CRISPR Cas系は、Streptococcus pyogenes由来の酵素に基づき、これは、AAVとしてのウイルスベクターへのパッケージングにとって大き過ぎる(1638アミノ酸)という特定の不利益を有する。Staphylococcus aureus由来のヌクレアーゼに基づく代替のII型CRISPR Cas系が存在し(EP2898075)、これは、サイズが有意により小さい。しかし、このヌクレアーゼは、複雑なPAMを要求し、これにより、遺伝子編集適用のためのその使用が大いに制限される。さらに、小さいヌクレアーゼのほうが遺伝子編集法に有用であり得るが、同定されているそのような小さいヌクレアーゼの数は限られており、遺伝子編集のためのそれらの最適な特徴は、少なくとも殆どの場合、遺伝子編集における使用について十分に定義されていない。
【0044】
4つの異なるStaphylococcus種(Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microti、およびStaphylococcus hyicus)のCRISPR-Casエンドヌクレアーゼの人工的に規定されたミニドメインに由来する新規の合成CRISPR-Casポリペプチド(本明細書では「sRGNポリペプチド」とも称される)、ならびに異なるかつ有利な特徴および機能性を有するそれらのバリアントが、本明細書に提供される。これらのsRGNは、以前には存在していなかったゲノム編集のさらなる機会を提供する。Casヌクレアーゼは、それらが使用される系に依存して異なる活性を有することができる。本発明の1つの特徴は、遺伝子編集に利用可能なヌクレアーゼのツールボックスを増加させるさらなる操作されたヌクレアーゼ、および関連する方法を提供することである。
【0045】
多くの場合、天然に存在する公知のCasヌクレアーゼは、NNAAAAなどの、より長いPAMを標的とし、これによりそれらのヌクレアーゼの有用性が制限され得る。本発明は、天然に存在する小さいヌクレアーゼに由来するがNNGG PAMを認識することができる合成ヌクレアーゼ(例えば、小さいヌクレアーゼ)を提供する。
【0046】
本発明は、さらに、原核生物、真核生物およびin vitro環境における使用に適したPAM配列および適したガイド、例えば単一ガイドRNA(sgRNA)など、を提供する。
【0047】
本明細書に提供されるsRGNポリペプチドは、例えば、原核生物、真核生物および/もしくはin vitro環境におけるより高い活性、ならびに/または例えばヒト宿主細胞などの真核生物環境における核酸からのsRGNポリペプチドのより多い発現などの、既に報告されているCRISPR-Casエンドヌクレアーゼよりも有利な特徴を示すことができる。一部の場合では、sRGNは、小さいサイズ、高い編集活性、および短いPAM配列のみを要求することのうちの1つまたは複数を併せ持つ。RNAガイドヌクレアーゼに関する小さいサイズは、長さが約1100アミノ酸以下であるヌクレアーゼを意味する。
【0048】
細胞におけるDNAを標的化、編集または操作するための系であって、sRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と、1つもしくは複数のガイドRNA(gRNA)、例えば1つもしくは複数の単一ガイドRNA(sgRNA)、または1つもしくは複数のgRNAをコードする核酸とを含む系も、提供される。
【0049】
次の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面の参照が為される。図面において、文脈がそれ以外を指示しない限り、同様の記号は、典型的に、同様の構成成分を同定する。詳細な説明、図面および特許請求の範囲に記載されている説明的な代替は、限定を意味するものではない。本明細書に提供されている主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の代替を使用することができ、他の変化を為すことができる。本明細書に全般的に記載され図中に説明されている態様は、全て明快に企図されて本願の一部を為す多種多様な異なる構成において、配置、置換、組合せおよび設計することができることが容易に理解されるであろう。
【0050】
他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる専門用語、表示法および他の科学用語または用語法は、本願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意義を有することが意図される。一部の事例では、一般的に理解されている意義を有する用語は、明瞭さおよび/または即時参照のために本明細書で定義されており、本明細書における斯かる定義の包含は、本技術分野で一般に理解されているものからの大幅な差を表すものと必ずしも解釈するべきではない。本明細書に記載または参照されている技法および手順の多くは、十分に理解されており、当業者によって従来の方法論を使用して一般的に用いられている。
【0051】
定義
本明細書で同義的に使用される用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」とは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態を指す。したがって、この用語には、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、もしくは多鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド/3重ヘリックス、またはプリンおよびピリミジン塩基もしくは他の天然の、化学的もしくは生化学的に改変された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む重合体が含まれる。
【0052】
「オリゴヌクレオチド」とは、一般的に、一本鎖または二本鎖DNAの、約5~約100ヌクレオチドの間のポリヌクレオチドを指す。しかし、本開示の目的上、オリゴヌクレオチドの長さには上限はない。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」または「オリゴ」としても公知であり、当技術分野において公知の方法によって、遺伝子から単離、または化学的に合成することができる。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」には、記載されている実施形態に適用可能な場合、一本鎖ポリヌクレオチド(センスまたはアンチセンスなど)および二本鎖ポリヌクレオチドが含まれるものと理解すべきである。
【0053】
「ゲノムDNA」とは、限定はされないが、細菌、真菌、古細菌(archea)、原生生物、ウイルス、植物または動物のゲノムのDNAを含む、生物のゲノムのDNAを指す。
【0054】
DNAを「操作すること」は、結合すること、DNAの一方の鎖をニッキングすること、もしくは両方の鎖を切断すること(すなわち、カッティングすること)を包含、またはDNAもしくはDNAと会合しているポリペプチドを改変することもしくは編集することを包含する。DNAを操作することで、DNAによりコードされたRNAまたはポリペプチドの発現をサイレンシング、活性化、または調節する(増加するまたは減少するのことのいずれか)こと、あるいは、ポリペプチドのDNAへの結合を防止または増強することができる。
【0055】
「ステムループ構造」とは、主に一本鎖のヌクレオチド(ループ部分)の領域によって一方の端で連結されている二本鎖(ステム部分)を形成することが公知であるまたは予想される、ヌクレオチド領域を含む二次構造を有する核酸を指す。用語「ヘアピン」および「フォールドバック」構造も、ステムループ構造を指すために、本明細書で使用される。そのような構造は、当技術分野において周知であり、これらの用語は当技術分野において公知のそれらの意味と共に、一貫して使用される。当技術分野で公知であるように、ステムループ構造は正確な塩基対合を必要としない。したがって、ステムは1つまたは複数の塩基ミスマッチを含む場合がある。あるいは、塩基対合は正確であり、すなわち、いかなるミスマッチも含まない場合がある。
【0056】
「ハイブリッド可能な」または「相補的」または「実質的に相補的」とは、核酸(例えばRNA)が、温度および溶液イオン強度が適切なin vitroおよび/またはin vivo条件下で、配列特異的、逆平行的に、別の核酸に、非共有結合的に結合すること、すなわち、ワトソン・クリック塩基対および/もしくはG/U塩基対を形成する、「アニール」、または「ハイブリダイズ」することを可能にするヌクレオチド配列を含む(すなわち、核酸が相補的核酸に特異的に結合する)ことを意味する。当技術分野で公知であるように、標準的なワトソン・クリック塩基対合には、アデニン(A)とチミジン(T)の対合、アデニン(A)とウラシル(U)の対合、およびグアニン(G)とシトシン(C)の対合[DNA、RNA]が含まれる。加えて、2つのRNA分子間の(例えば、dsRNA)ハイブリダイゼーションにおいては、グアニン(G)とウラシル(U)との塩基対も当技術分野において公知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNA内のコドンとのtRNAのアンチコドン塩基対合に関連して、遺伝コードの縮重(すなわち、冗長性)に部分的に関与している。本開示に照らして、ガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であるとみなされ、逆の場合も同じである。したがって、G/U塩基対がガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)の所与のヌクレオチド位置で作製できる場合、位置は非相補的であるとはみなされず、代わりに、相補的であるとみなされる。
【0057】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrook, J. and Russell, W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (2001);およびGreen, M. R., and Sambrook, J., Molecular cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (2012)に例示されている。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0058】
ハイブリダイゼーションには、2つの核酸が相補配列を含有することが必要であるが、塩基間のミスマッチの可能性がある。2つの核酸の間のハイブリダイゼーションに適した条件は、当技術分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補の程度によって異なる。2つのヌクレオチド配列の間の相補の程度が高い程、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値はより高くなる。短いストレッチの相補性(例えば、35もしくはそれ未満、30もしくはそれ未満、25もしくはそれ未満、22もしくはそれ未満、20もしくはそれ未満、または18もしくはそれ未満のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置が重要となる(Sambrook et al.、上記、11.7~11.8を参照)。一般的に、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の例示的な最小の長さは、少なくとも15ヌクレオチド;少なくとも20ヌクレオチド;少なくとも22ヌクレオチド;少なくとも25ヌクレオチド;および少なくとも30ヌクレオチドである。さらに、温度および洗浄液の塩濃度が、相補の領域の長さおよび相補の程度などの要素に応じ、必要に応じて調整することができることは当業者であれば認識している。
【0059】
ポリヌクレオチド配列が、特異的にハイブリッド可能であるように、その標的核酸のポリヌクレオチド配列に対して100%相補的である必要はないことは、当技術分野において理解されている。さらに、ポリヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に含まれないように(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)、1つまたは複数のセグメントにわたってハイブリダイズさせることができる。ポリヌクレオチドは、標的化される標的核酸配列内の標的領域に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の配列相補性を含み得る。例えば、アンチセンス化合物の20中18のヌクレオチドが標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸は、90パーセントの相補性を示し得る。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスター化しているか、または相補的ヌクレオチドと共に散在している場合があり、互いに、または相補的ヌクレオチドに近接している必要はない。核酸内の特定のストレッチの核酸配列間の相補性パーセントは、当技術分野において公知のBLASTプログラム(基本的な局所的アライメント検索ツール)およびPowerBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol. 1990,215, 403-410;Zhang and Madden, Genome Res., 1997,7, 649-656)を使用して、またはGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix(登録商標)、Genetics Computer Group、University Research Park、Madison Wis.)を使用することによって、Smith and Waterman(Adv. Appl. Math. 1981(2) 482-489)のアルゴリズムを使用するデフォルト設定を使用して、慣例的に決定することができる。
【0060】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」とは、本明細書で同義的に使用され、任意の長さである、アミノ酸の重合体形態を指し、これは、コードされたおよびコードされていないアミノ酸、化学的または生化学的に改変または誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。
【0061】
「結合」とは、本明細書で使用される場合(例えばポリペプチドのRNA結合ドメインに関連して)、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の非共有結合の相互作用を指す。非共有結合の相互作用の状態において、高分子は、「会合」または「相互作用」または「結合」していると言われる(例えば、分子Xが分子Yと相互作用すると言われる場合、分子Xが非共有結合で分子Yに結合することを意味する)。結合性相互作用の全ての構成成分が配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格内のリン酸残基と接触する)が、結合性相互作用の一部の部分は配列特異的である場合がある。結合性相互作用は、一般的に、10~6M未満、10~7M未満、10~8M未満、10~9M未満、10~10M未満、10~11M未満、10~12M未満、10~13M未満、10~14M未満、または10~15M未満の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」とは結合の強さを指し、結合親和性の増加はより低いKdと相関する。
【0062】
「結合ドメイン」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質ドメインを意味する。結合ドメインは、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合し得る。タンパク質ドメイン結合タンパク質の場合、これは、それ自体に結合することができ(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)、かつ/または、異なるタンパク質(単数または複数)の1つまたは複数の分子に結合することができる。
【0063】
用語「保存的アミノ酸置換」とは、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のタンパク質における互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンからなる;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびスレオニンからなる;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンからなる;芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンからなる;塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンからなる;酸性側鎖を有するアミノ酸群はグルタメートおよびアスパルテートからなる;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンからなる。例示的な保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0064】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対してある特定の「配列同一性」パーセントを有し、このことは、アライメントされた場合、2つの配列を比較すると、塩基またはアミノ酸のパーセンテージが、同一であり、かつ、同一の相対位置にあることを意味する。配列同一性は、いくつかの異なる様式で決定することができる。配列同一性を決定するために、種々の方法およびncbi.nlm.nili.gov/BLAST、ebi.ac.uk/Tools/msa/tcoffee、ebi.Ac.Uk!Tools/msa/muscle、mafft.cbrc/alignment/softwareを含むサイトにてワールドワイドウェブにおいて利用可能なコンピュータプログラム(例えば、BLAST、T-COFFEE、MUSCLE、MAFFTなど)を使用して、配列をアライメントすることができる。例えば、Altschul et al. (1990), J. Mol. Biol. 215:403-10を参照されたい。当技術分野において標準の配列アラインメントを本発明に従って使用して、別のsRGNバリアントのアミノ酸残基に「対応する」1つのsRGNバリアントのアミノ酸残基を決定する。他のsRGNバリアントのアミノ酸残基に対応するsRGNバリアントのアミノ酸残基は、配列のアラインメントの同一の位置に現れる。
【0065】
特定のRNAを「コードする」DNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードする場合もあり、あるいはDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えばtRNA、rRNA、またはガイドRNA;「非コード」RNAまたは「ncRNA」とも称される)をコードする場合もある。「タンパク質コード配列」または特定のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、in vitroまたはin vivoにおいて、(DNAの場合)mRNAに転写され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される、核酸配列である。コード配列の境界は、5’末端(N末端)での開始コドンおよび3’末端(C末端)での翻訳終止ナンセンスコドンによって決定される。コード配列には、限定はされないが、原核または真核mRNA由来のcDNA、原核または真核DNA由来のゲノムDNA配列、および合成核酸が含まれ得る。転写終結配列は通常、コード配列の3’に位置する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」または「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼを結合する、および下流(3’方向)のコードまたは非コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を定義するために、プロモーター配列を、転写開始部位によりその3’末端で結合し、上流(5’方向)に伸長して、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な塩基またはエレメントの最小数を含む。プロモーター配列内には、転写開始部位、およびRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出される。真核生物のプロモーターはしばしば、常にではないが、「TATA」ボックスおよび「CAAT」ボックスを含有する。誘導性プロモーターを含む、種々のプロモーターを使用して、本発明の種々のベクターを駆動させることができる。プロモーターは、恒常的活性型プロモーター(すなわち、恒常的に活性「ON」状態であるプロモーター)とすることができ、誘導性プロモーター(すなわち、その状態、活性/「ON」または不活性/「OFF」が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)であってもよく、空間限定型プロモーター(すなわち、転写制御エレメント、エンハンサーなど)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であってもよく、時間限定型プロモーター(すなわち、プロモーターは、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセスの特定の段階、例えば、マウスにおける毛包周期の間、「ON」状態または「OFF」状態にある)であってもよい。適切なプロモーターは、ウイルス由来であってもよく、したがってウイルスプロモーターと称されてもよく、または原核もしくは真核生物を含む任意の生物に由来することができる。適切なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol Ill)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、限定はされないが、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス長い末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV超初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)(Miyagishi et al., Nature Biotechnology 20, 497- 500 (2002))、強化されたU6プロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)などが挙げられる。誘導性プロモーターの例としては、限定はされないが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなどが挙げられる。したがって誘導性プロモーターは、限定はされないが、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合物などを含む、分子によって調節することができる。
【0067】
一部の実施形態では、プロモーターは、多細胞生物においてプロモーターが特定の細胞のサブセット内で活性(すなわち、「ON」)であるような、空間限定型プロモーター(すなわち、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーターなど)である。空間限定型プロモーターは、エンハンサー、転写制御エレメント、制御配列などとも称され得る。好都合な任意の空間限定型プロモーターを使用することもでき、適切なプロモーター(例えば、脳特異的プロモーター、ニューロンのサブセットにおける発現を駆動するプロモーター、生殖細胞系列における発現を駆動するプロモーター、肺における発現を駆動するプロモーター、筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を駆動するプロモーターなど)の選択は、生物によって異なる。例えば、植物、ハエ、虫、哺乳動物、マウスなどについて、種々の空間限定型プロモーターが公知である。したがって、空間限定型プロモーターを使用して、生物に応じて、種々様々な異なる組織および細胞型においてsRGNポリペプチドをコードする核酸の発現を調節することができる。一部の空間限定型プロモーターはまた、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間、「ON」状態または「OFF」状態にあるように、時間限定型である。例示を目的として、空間限定型プロモーターの例としては、限定はされないが、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーターなどが挙げられる。ニューロン特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSENO2、X51956);芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)プロモーター;神経フィラメントプロモーター(例えば、GenBank HUMNFL、L04147);シナプシンプロモーター(例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301);thy-1プロモーター(例えば、Chen et al. (1987) Cell 51:7-19;およびLlewellyn, et al. (2010) Nat. Med. 16(10):1161-1166);セロトニン受容体プロモーター(例えば、GenBank S62283);チロシン水酸化酵素プロモーター(TH)(例えば、Oh et al. (2009) Gene Ther. 16:437;Sasaoka et al. (1992) Mol. Brain Res. 16:274;Boundy et al. (1998) J. Neurosci. 18:9989;およびKaneda et al. (1991) Neuron 6:583-594);GnRHプロモーター(例えば、Radovick et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3402-3406);L7プロモーター(例えば、Oberdick et al. (1990) Science 248:223-226);DNMTプロモーター(例えば、Bartge et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3648-3652);エンケファリンプロモーター(例えば、Comb et al. (1988) EMBO J. 17:3793-3805);ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+-カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ11-アルファ(CamKIM)プロモーター(例えば、Mayford et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:13250;およびCasanova et al. (2001) Genesis 31:37);CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子-pプロモーター(例えば、Liu et al. (2004) Gene Therapy 11:52-60)などが挙げられる。
【0068】
脂肪細胞特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、aP2遺伝子プロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の-5.4kb~+21bpの領域(例えば、Tozzo et al. (1997) Endocrinol. 138:1604;Ross et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:9590;およびPavjani et al. (2005) Nat. Med. 11:797);グルコーストランスポーター-4(GLUT4)プロモーター(例えば、Knight et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:14725);脂肪酸トランスロカーゼ(FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kuriki et al. (2002) Biol. Pharm. Bull. 25:1476;およびSato et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:15703);ステアロイル(stearoyi)CoA不飽和酵素-1(SCD1)プロモーター(Taboret al. (1999) J. Biol. Chem. 274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Mason et al. (1998) Endocrinol. 139:1013;およびChen et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Comm. 262:187);アディポネクチンプロモーター(例えば、Kita et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Comm. 331:484;およびChakrabarti (2010) Endocrinol. 151:2408);アディプシンプロモーター(例えば、Platt et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7490);レジスチンプロモーター(例えば、Seo et al. (2003) Molec. Endocrinol. 17:1522)などが挙げられる。
【0069】
心筋細胞特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、以下の遺伝子に由来する制御配列が挙げられる:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心筋トロポニンC、心筋アクチンなど。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35:560-566;Robbins et al. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 752:492-505;Linn et al. (1995) Circ. Res. 76:584591;Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:1870-1885;Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;および Sartorelli et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047-4051.
【0070】
平滑筋特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、SM22aプロモーター(例えば、Akyiirek et al. (2000) Mol. Med. 6:983;および米国特許第7,169,874号);スムーセリンプロモーター(例えば、WO2001/018048);a-平滑筋アクチンプロモーターなどが挙げられる。例えば、SM22aプロモーターの0.4kb領域は、その中に2つのCArGエレメントが存在しており、血管平滑筋細胞特異的な発現を媒介することが示されている(例えば、Kim, et al. (1997) Mol. Cell. Biol. 17, 2266-2278; Li, et al., (1996) J. Cell Biol. 132, 849-859;およびMoessler, et al. (1996) Development 122, 2415-2425)。
【0071】
光受容器特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、ロドプシンプロモーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al. (2003) Ophthalmol. Vis. Sci. 44:4076);ベータホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007) J. Gene Med. 9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007)、上記);光受容器間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud et al. (2007)、上記);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. (1992) Exp Eye Res. 55:225)などが挙げられる。
【0072】
本明細書で同義的に使用される用語「DNA調節配列」、「制御エレメント」、および「調節エレメント」とは、例えば、非コード配列(例えば、ガイドRNA)もしくはコード配列(例えば、sRGNポリペプチド)の転写をもたらしかつ/もしくは調節する、ならびに/またはコードされるポリペプチドの翻訳を調節する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの、転写および翻訳の制御配列を指す。
【0073】
核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用されて本明細書で使用される場合、用語「天然に存在する」または「未改変の」とは、天然に見出される核酸、ポリペプチド、細胞、または生物を指す。例えば、天然源から単離することができ、実験室でヒトによって意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列が、天然に存在するものである。
【0074】
核酸またはポリペプチドに適用されて本明細書で使用される場合、用語「キメラ」とは、異なる供給源に由来する構造から構成される1つの実体を指す。例えば、「キメラ」が、キメラポリペプチド(例えば、キメラsRGNポリペプチド)に関連して使用される場合、キメラポリペプチドは、例えば、DNA改変活性、転写因子活性および/またはDNA関連ポリペプチド改変活性を有するポリペプチドを含む、Casヌクレアーゼ以外の機能を有するポリペプチドなどの、異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。キメラポリペプチドは、改変された、または天然に存在するポリペプチド配列のいずれかを含んでもよい(例えば、改変または未改変sRGNタンパク質由来の第1のアミノ酸配列;およびsRGNタンパク質以外の第2のアミノ酸配列)。同様に、キメラポリペプチドをコードする核酸に関連して「キメラ」は、異なるコード領域に由来するヌクレオチド配列を含む(例えば、改変または未改変sRGNタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列;およびsRGNタンパク質以外のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列)。
【0075】
用語「キメラポリペプチド」とは、天然に存在しない、例えば、ヒトの介在によるアミノ配列の、本来なら別々の2つまたはそれより多いセグメントの人工的な組合せ(すなわち、「融合」)によって、作製される、ポリペプチドを指す。キメラアミノ酸配列を含むポリペプチドは、キメラポリペプチドである。一部のキメラポリペプチドを「融合バリアント」と称することができる。
【0076】
「異種」とは、本明細書で使用される場合、それぞれ、本来の核酸またはタンパク質に見出されないヌクレオチドまたはペプチドを意味する。例えば、キメラsRGNタンパク質では、天然に存在する細菌sRGNポリペプチド(またはそのバリアント)のRNA結合ドメインは、異種ポリペプチド配列(すなわち、sRGN以外のタンパク質由来のポリペプチド配列または別の生物由来のポリペプチド配列)に融合されている場合がある。異種ポリペプチドは、キメラsRGNタンパク質によっても示される活性(例えば、酵素活性)を示すことができる(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)。異種核酸を天然に存在する核酸(またはそのバリアント)に連結して(例えば、遺伝子操作によって)、キメラポリペプチドをコードするキメラ核酸を作出することができる。別の例として、融合バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドでは、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドを、異種ポリペプチド(すなわち、sRGN以外のポリペプチド)に融合することができ、これにより、融合バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドによっても示される活性が示される。異種核酸をバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドに連結して(例えば、遺伝子操作によって)、融合バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードする核酸を作出することができる。「異種」とは、本明細書で使用される場合、その本来の細胞ではない細胞中の、ヌクレオチドまたはポリペプチドをさらに意味する。
【0077】
用語「同族の」とは、通常、天然において相互作用または共存する、2つの生体分子を指す。
【0078】
「組換え」とは、本明細書で使用される場合、特定の核酸(DNAまたはRNA)またはベクターが、天然系に見出される内在性核酸と区別可能な構造コードまたは非コード配列を有する構築物をもたらす、クローニング、拘束、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/またはライゲーションのステップの種々の組合せの産物であることを意味する。ポリペプチドをコードするDNA配列を、cDNA断片からまたは一連の合成オリゴヌクレオチドから組み立てて、細胞内または無細胞の転写および翻訳系内に含有される組換え転写単位からの発現が可能な合成核酸を提供することができる。関連配列を含むゲノムDNAは、組換え遺伝子または転写単位の形成においても使用することができる。非翻訳DNAの配列はオープンリーディングフレームからの5’または3’に存在することができ、そのような配列は、コード領域の操作または発現に干渉せず、実際には、種々の機構による所望の産物の産生を調節するように作用することができる(下記の「DNA調節配列」を参照)。あるいは、翻訳されないRNA(例えば、ガイドRNA)をコードするDNA配列も、組換えとみなすことができる。したがって、例えば、用語「組換え」核酸とは、天然に存在しない、例えば、ヒトの介在による配列の、本来なら別々の2つのセグメントの人工的な組合せによって、作製されるものを指す。この人工的な組合せは、化学合成手段によって、または核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えば、遺伝子操作技法によって達成される。通常、そのような人工的組合せを行って、コドンを、同一のアミノ酸、保存的アミノ酸、または非保存的アミノ酸をコードするコドンに置き換える。あるいは、人工的な組合せを行って、所望の機能の核酸セグメントと共に接合させて、所望の機能の組合せを作出する。この人工的な組合せは、化学合成手段によって、または核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えば、遺伝子操作技法によって達成される。組換えポリヌクレオチドがポリペプチドをコードする場合、コードされるポリペプチドの配列は、天然に存在しても(「野生型」)よいし、天然に存在する配列のバリアント(例えば、突然変異体)であってもよい。したがって、用語「組換え」ポリペプチドとは、必ずしも、その配列が天然に存在しないポリペプチドを指すわけではない。むしろ、「組換え」ポリペプチドは組換えDNA配列によってコードされるが、ポリペプチドの配列は、天然に存在しても(「野生型」)、天然に存在しなくても(例えば、バリアント、突然変異体など)よい。したがって、「組換え」ポリペプチドは、ヒトの介在の結果であるが、天然に存在するアミノ酸配列であってもよい。用語「天然に存在しない」には、化学的に改変したまたは突然変異させた分子を含む、その天然に存在するカウンターパートとは顕著に異なる分子が含まれる。
【0079】
「ベクター」または「発現ベクター」とは、別のDNAセグメント、すなわち「インサート」が付加され、その結果、細胞内で、付加されたセグメントの複製を引き起こし得る、プラスミド、ファージ、ウイルス、またはコスミドなどのレプリコンである。
【0080】
「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結されているDNAコード配列を含む。「作動可能に連結されている」とは、そのように記載された構成成分が、それらの意図される様式でそれらが機能することを可能とする関係にある、並置を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼしている場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。用語「組換え発現ベクター」、または「DNA構築物」とは、本明細書で同義的に使用されて、ベクターおよび少なくとも1つのインサートを含むDNA分子を指す。組換え発現ベクターは通常、インサートを発現させるおよび/もしくは増やすため、または他の組換えヌクレオチド配列の構築のために、作出される。核酸は、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもいなくてもよく、DNA調節配列に作動可能に連結されていてもいなくてもよい。
【0081】
細胞は、外来性DNA、例えば、組換え発現ベクターが細胞内に導入されている場合、そのようなDNAによって「遺伝子改変されている」または「形質転換されている」または「トランスフェクトされている」。外来性DNAの存在は、恒久的または一過性の遺伝子変化をもたらす。形質転換DNAは、細胞のゲノムに組み込まれ(共有結合的に連結し)ていてもいなくてもよい。
【0082】
例えば、原核生物、酵母、および哺乳動物細胞では、形質転換DNAはプラスミドなどのエピソームエレメント上に維持されている場合がある。真核細胞について、安定に形質転換された細胞とは、染色体複製を通じて娘細胞に遺伝されるように形質転換DNAが染色体内に組み込まれた細胞である。この安定性は、真核細胞の、形質転換DNAを含有する娘細胞集団を含む細胞系またはクローンを樹立する能力によって実証される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一細胞または共通の祖先に由来する細胞集団である。「細胞系」とは、何世代にもわたってin vitroで安定な成長が可能な初代細胞のクローンである。
【0083】
遺伝子改変(「形質転換」とも称される)の適切な方法としては、限定はされないが、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、原形質融合、リポフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注射、ナノ粒子媒介性核酸送達(例えば、Panyam et al., Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pp: S0169-409X(12)00283-9. doi:10.1016/j.addr.2012.09.023)などが挙げられる。
【0084】
遺伝子改変の方法の選択は一般に、形質転換される細胞の種類および形質転換が行われている状況(例えば、in vitro、ex vivo、またはin vivo)に左右される。これらの方法の一般的な議論は、Ausubel,et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995に見出すことができる。
【0085】
「宿主細胞」とは、本明細書で使用される場合、in vivoまたはin vitroにおける真核細胞、原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)、または単細胞の実体として培養される多細胞生物由来の細胞(例えば、細胞系)を示し、その真核細胞または原核細胞は核酸のレシピエントとして使用することができ、または使用されており、核酸によって形質転換された原細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫は、自然の、偶発的、または意図的な突然変異に起因して、モルホロジーにおいて、またはゲノムもしくは全DNA補体において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝子改変宿主細胞」とも称される)とは、異種核酸、例えば、発現ベクターを導入された宿主細胞である。例えば、細菌宿主細胞とは、適切な細菌宿主細胞への外来性核酸(例えば、プラスミドまたは組換え発現ベクター)の導入による遺伝子改変された細菌宿主細胞であり、真核宿主細胞とは、適切な真核宿主細胞への外来性核酸の導入による遺伝子改変された真核宿主細胞(例えば、哺乳動物生殖細胞)である。
【0086】
本明細書で使用される場合「標的DNA」とは、「標的部位」または「標的配列」を含むDNAポリヌクレオチドである。用語「標的部位」、「標的配列」、「標的プロトスペーサーDNA」または「プロトスペーサー様配列」とは、本明細書では同義的に使用されて、結合に十分な条件が存在する場合にガイドRNAのDNA標的化セグメントが結合する標的DNA内に存在する核酸配列を指す。例えば、標的DNA内の標的部位(または標的配列)5’-GAGCATATC-3’は、RNA配列5’-GAUAUGCUC-3’によって標的化される(またはこれによって結合される、またはこれとハイブリダイズする、またはこれに相補的である)。適切なDNA/RNA結合条件には、細胞に通常存在する生理的条件が含まれる。他の適切なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当技術分野において公知である;例えば、Sambrook、上記。ガイドRNAに相補的であり、これとハイブリダイズする標的DNA鎖は「相補鎖」と称され、「相補鎖」に相補的である(したがってガイドRNAに相補的でない)標的DNA鎖は「非相補鎖(non-complementary strand)」または「非相補鎖(noncomplementary strand)」と称される。「部位指向型修飾ポリペプチド」または「RNA結合部位指向型ポリペプチド」または「RNA結合部位指向型改変ポリペプチド」または「部位指向型ポリペプチド」とは、RNAを結合し、特定のDNA配列に標的化されるポリペプチドを意味する。本明細書に記載の部位指向型改変ポリペプチドは、それが結合しているRNA分子によって特定のDNA配列に標的化される。RNA分子は、標的DNA内の標的配列を結合、これにハイブリダイズ、またはこれに相補的である配列を含み、したがって、結合したポリペプチドを標的DNA内の特定の位置(標的配列)に標的化する。「切断」とは、DNA分子の共有結合の骨格の破壊を意味する。切断は、限定はされないが、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解を含む、いろいろな方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断は両方とも可能であり、二本鎖切断を別々の2つの一本鎖切断事象の結果として行うことができる。DNA切断は平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。ある特定の実施形態では、ガイドRNAおよび部位指向型改変ポリペプチドを含む複合体が標的化二本鎖DNAの切断のために使用される。
【0087】
「ヌクレアーゼ」および「エンドヌクレアーゼ」とは、本明細書で同義的に使用されて、ポリヌクレオチド切断用のヌクレオチド鎖切断の触媒活性を保有する酵素を意味する。
【0088】
ヌクレアーゼの「切断ドメイン」または「活性ドメイン」または「ヌクレアーゼドメイン」とは、DNA切断用の触媒活性を保有するヌクレアーゼ内のポリペプチド配列またはドメインを意味する。単一ポリペプチド鎖が切断ドメインを含有する場合もあり、切断活性が2つの(またはこれより多い)ポリペプチドの会合によってもたらされる場合もある。単一のヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内の1つよりも多い単離されたアミノ酸のストレッチからなり得る。
【0089】
「部位指向型ポリペプチド」または「RNA結合部位指向型ポリペプチド」または「RNA結合部位指向型ポリペプチド」とは、RNAを結合し特定のDNA配列に標的化されるポリペプチドを意味する。本明細書に記載の部位指向型ポリペプチドは、それが結合しているRNA分子によって特定のDNA配列に標的化される。RNA分子は、標的DNA内の標的配列に相補的である配列を含み、したがって、結合したポリペプチドを標的DNA内の特定の位置(標的配列)に標的化する。
【0090】
「ガイド配列」またはDNA標的化セグメント(または「DNA標的化配列」)は、本明細書で「プロトスペーサー様」配列と指定される、標的DNA内の特定の配列に相補的であるヌクレオチド配列(標的DNAの相補鎖)を含む。タンパク質結合セグメント(または「タンパク質結合配列」)は、部位指向型改変ポリペプチドと相互作用する。部位指向型改変ポリペプチドがsRGNまたはsRGN関連ポリペプチド(下でより詳細に記載)である場合、標的DNAの部位特異的切断は、(i)ガイドRNAと標的DNAとの間の塩基対合の相補性;および(ii)標的DNAの短いモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される)の両方によって決定される位置で起こる。
【0091】
ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは、一部、互いにハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成する、ヌクレオチドの2つの相補的ストレッチを含む。
【0092】
一部の実施形態では、核酸(例えば、ガイドRNA、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;部位指向型ポリペプチドをコードする核酸など)は、追加的な望ましい特徴(例えば、改変または調節された安定性;細胞内標的化;追跡、例えば、蛍光標識;タンパク質またはタンパク質複合体に対する結合部位など)をもたらす改変または配列を含む。非限定的な例としては、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(すなわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節、ならびに/またはタンパク質および/もしくはタンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする);安定性制御配列;dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する改変または配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)をもたらす改変または配列;タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素などを含む、DNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する改変または配列;およびそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
一部の実施形態では、ガイドRNAは、上記の特徴のうちのいずれかをもたらす追加的なセグメントを5’または3’末端のいずれかに含む。例えば、適切な第3のセグメントは、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(すなわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節、ならびに/またはタンパク質およびタンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする);安定性制御配列;dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)をもたらす改変または配列;タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素などを含む、DNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する改変または配列;およびそれらの組合せを含み得る。
【0094】
ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドは、複合体を形成する(すなわち、非共有結合の相互作用によって結合する)。ガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的であるヌクレオチド配列を含むことによって、標的特異性を複合体に提供する。複合体のsRGNポリペプチドは、部位特異的活性を提供する。言い換えれば、sRGNポリペプチドは、そのガイドRNAのタンパク質結合セグメントとの会合によって、標的DNA配列(例えば、染色体核酸の標的配列;染色体外核酸、例えば、エピソーム核酸、ミニサークルなどの標的配列;ミトコンドリア核酸の標的配列;葉緑体核酸の標的配列;プラスミドの標的配列など)に誘導される。RNAアプタマーは、当技術分野において公知であり、一般的にリボスイッチの合成バージョンである。用語「RNAアプタマー」および「リボスイッチ」は本明細書で同義的に使用されて、それらが一部であるRNA分子の構造(および、したがって、特定の配列の利用能)の誘導性調節をもたらす合成核酸配列および天然核酸配列の両方を包含する。RNAアプタマーは通常、特定の構造(例えば、ヘアピン)に折り畳まれる配列を含み、その配列が特定の薬物(例えば、小分子)を特異的に結合する。薬物の結合は、RNAの折り畳みにおける構造変化を起こし、このことによって、アプタマーが一部である核酸の特徴が変化する。非限定的な例として、(i)アプタマーを有する活性化因子-RNAは、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同族のターゲター-RNAに結合することができない場合があり;(ii)アプタマーを有するターゲター-RNAは、アプタマーが適切な薬物によって結合されない限り、同族の活性化因子-RNAに結合することができない場合があり;(iii)異なる薬物を結合する異なるアプタマーをそれぞれ含むターゲター-RNAおよび活性化因子-RNAは、両方の薬物が存在しない限り、互いに結合することができない場合がある。これらの例によって例示される通り、2分子ガイドRNAを誘導性となるように設計することができる。
【0095】
アプタマーおよびリボスイッチの例は、例えば、Nakamura et al., Genes Cells. 2012 May;17(5):344-64;Vavalle et al., Future Cardiol. 2012 May;8(3):371-82;Citartan et al., Biosens Bioelectron. 2012 Apr 15;34(1):1-11;およびLiberman et al., Wiley lnterdiscip Rev RNA. 2012 May-Jun;3(3):369-84に見出すことができ、これらは全てそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0096】
用語「幹細胞」とは、自己再生し、分化細胞型を発生させる両方の能力を有する細胞(例えば、植物幹細胞、脊椎動物幹細胞)を指して本明細書で使用される(Morrison et al. (1997) Cell 88:287-298を参照)。細胞の個体発生に関連して、形容詞「分化型の」、または「分化中の」とは、相対語である。「分化細胞」は、比較されている細胞よりも発生経路をさらに進行した細胞である。したがって、多能性幹細胞(下記)は、系統が限定された始原細胞(例えば、中胚葉幹細胞)に分化することができ、系統が限定された始原細胞はその後、さらに限定された細胞(例えば、ニューロン前駆細胞)に分化することができ、さらに限定された細胞は最終段階の細胞(すなわち、最終分化型細胞、例えば、ニューロン、心筋細胞など)に分化することができ、最終段階の細胞はある特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持していてもしていなくてもよい。幹細胞は、特定のマーカー(例えば、タンパク質、RNAなど)の存在および特定のマーカーの非存在の両方によって特徴付けることができる。また幹細胞は、in vitroおよびin vivoの両方の機能アッセイ、特に、複数の分化した子孫を生じさせる幹細胞の能力に関したアッセイによって同定することができる。
【0097】
目的の幹細胞には多能性幹細胞(PSC)が含まれる。用語「多能性幹細胞」または「PSC」とは、生物の全ての細胞型を産生することが可能な幹細胞を意味して、本明細書では使用される。したがって、PSCは、生物の全ての胚葉(例えば、脊椎動物の内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の細胞を生じさせることができる。多能性細胞は、生存生物において、奇形腫を形成する、および外胚葉、中胚葉、または内胚葉の組織に寄与することが可能である。植物の多能性幹細胞は、植物の全ての細胞型(例えば、根、茎、葉などの細胞)を生じさせることが可能である。
【0098】
動物のPSCはいくつかの様々な方式で導出することができる。例えば、胚性幹細胞(ESC)は胚の内部細胞塊に由来し(Thomson et. al, Science. 1998 Nov 6;282(5391):1145-7)、一方、誘導多能性幹細胞(iPSC)は体細胞に由来する(Takahashi et. al, Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72;Takahashi et. al, Nat Protoc. 2007;2(12):3081-9;Yu et. al, Science. 2007 Dec 21;318(5858):1917-20. Epub 2007 Nov 20)。
【0099】
用語PSCとはそれらの由来にかかわらず多能性幹細胞を指すので、用語PSCは、用語ESCおよびiPSC、ならびにPSCの別の例である用語胚性生殖幹細胞(EGSC)を包含する。PSCは株化細胞系の形態であってもよいし、一次胚組織から直接得てもよいし、体細胞に由来していてもよい。PSCは本明細書に記載の方法の標的細胞であり得る。
【0100】
「胚性幹細胞」(ESC)とは、胚から、通常、胚盤胞の内部細胞塊から単離されたPSCを意味する。ESC系は、NIH Human Embryonic Stem Cell Registryに列挙されており、例えば、hESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen,Inc.);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ES Cell International);Miz-hES1(MizMedi Hospital-Seoul National University);HSF-1、HSF-6(University of California at San Francisco);およびH1、H7、H9、H13、H14(Wisconsin Alumni Research Foundation(WiCell Research Institute))。目的の幹細胞には、アカゲザル幹細胞およびマーモセット幹細胞などの他の霊長類由来の胚性幹細胞も含まれる。幹細胞は、任意の哺乳動物種、例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、霊長類などから得られてもよい(Thomson et al. (1998) Science 282:1145;Thomson et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844;Thomson et al. (1996) Biol. Reprod. 55:254;Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)。培養では、ESCは通常、大きな核-細胞質比、明確な境界および顕著な核小体を有する平坦なコロニーとして成長する。加えて、ESCは、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、およびアルカリホスファターゼを発現するが、SSEA-1は発現しない。ESCを作出および特徴付けする方法の例は、例えば、米国特許第7,029,913号、米国特許第5,843,780号、および米国特許第6,200,806号に見出すことができ、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。未分化型のhESCを増殖させるための方法は、WO99/20741、WO01/51616、およびWO03/020920に記載されている。「胚性生殖幹細胞」(EGSC)または「胚性生殖細胞」または「EG細胞」とは、生殖細胞および/または生殖細胞前駆細胞、例えば始原生殖細胞、すなわち、精子および卵子になるであろうものに由来するPSCを意味する。胚性生殖細胞(EG細胞)は、上記の胚性幹細胞と類似した特性を有すると考えられている。EG細胞を作出および特徴付けする方法の例は、例えば、米国特許第7,153,684号;Matsui, Y., et al., (1992) Cell 70:841;Shamblott, M., et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 113;Shamblott, M., et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:13726;およびKoshimizu, U., et al. (1996) Development, 122:1235に見出すことができ、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0101】
「誘導多能性幹細胞」または「iPSC」とは、PSCではない細胞(すなわち、細胞であってPSCと比べて分化した細胞由来)に由来するPSCを意味する。iPSCは、最終分化型細胞を含む、複数の様々な細胞型に由来し得る。iPSCはES細胞様モルホロジーを有し、大きな核-細胞質比、明確な境界および顕著な核を有する平坦なコロニーとして成長する。加えて、iPSCは、当業者に公知の、1つまたは複数の重要な多能性マーカーを発現し、限定はされないが、これには、アルカリホスファターゼ、SSEA3、SSEA4、Sox2、Oct3/4、Nanog、TRA160、TRA181、TDGF1、Dnmt3b、Fox03、GDF3、Cyp26a1、TERT、およびzfp42が含まれる。
【0102】
iPSCを作出および特徴付けする方法の例は、例えば、米国特許出願公開第US20090047263号、第US20090068742号、第US20090191159号、第US20090227032号、第US20090246875号、および第US20090304646号に見出すことができ、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。一般的に、iPSCを作出するために、体細胞は、当技術分野において公知の再プログラム化因子(例えば、Oct4、SOX2、KLF4、MYC、Nanog、Lin28など)を具備しており、多能性幹細胞になるように体細胞を再プログラムする。
【0103】
「体細胞」とは、実験的操作の非存在下では、生物における全細胞型を通常生じさせない、生物における任意の細胞を意味する。言い換えれば、体細胞とは、体の3つ全ての胚葉、すなわち、外胚葉、中胚葉および内胚葉、の細胞を自然には発生しない程十分に分化した細胞である。例えば、体細胞はニューロンおよび神経前駆細胞の両方を含み得、その後者は、中枢神経系の全てまたは一部の細胞型を自然に生じさせることが可能性であり得るが、中胚葉または内胚葉系統の細胞を生じさせることはできない。
【0104】
「有糸分裂細胞」とは、有糸分裂を受けている細胞を意味する。有糸分裂とは、真核細胞が、その核中の染色体を2つの別個の核において同一の2つのセットに分離するプロセスである。通常、その直後に細胞質分裂が起こり、これによって、核、細胞質、細胞小器官および細胞膜が、これらの細胞構成成分のおおよそ等しい取分を含有する2つの細胞に分割される。
【0105】
「分裂終了細胞」とは、有糸分裂から脱出した、すなわち、「静止」にある、すなわち、もはや分裂を受けていない細胞を意味する。この静止状態は一時的、すなわち可逆的な場合もあり、恒久的な場合もある。
【0106】
「減数分裂細胞」とは、減数分裂を受けている細胞を意味する。減数分裂とは、細胞が配偶子または胞子を産生することを目的としてその核内物質を分割する、プロセスである。有糸分裂と異なり、減数分裂では、染色体は染色体間で遺伝物質をシャッフルする組換えステップを受ける。さらに、有糸分裂から産生される2個の(遺伝的に同一の)二倍体細胞と比較して、減数分裂の成果は4個の(遺伝的に特有の)一倍体細胞である。
【0107】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを意味する。本明細書で使用される場合、「相同組換え修復(HDR)」とは、例えば、細胞における二本鎖切断の修復中に起こる、特殊な形態のDNA修復を指す。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「ドナー」分子を「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の鋳型修復に使用し、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらす。相同組換え修復は、ドナーポリヌクレオチドが標的分子と異なり、ドナーポリヌクレオチド配列の一部または全てが標的DNA内に組み込まれた場合に、標的分子配列の変更(例えば、挿入、欠失、突然変異)をもたらし得る。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部分が、標的DNAに組み込まれる。
【0108】
「非相同末端結合(NHEJ)」とは、相同的鋳型を必要とせずに(修復を誘導するために相同配列を必要とする相同組換え修復とは対照的)、切断末端を互いに直接ライゲーションすることによる、DNAの二本鎖切断の修復を意味する。NHEJは多くの場合、二本鎖切断部位の近くのヌクレオチド配列の喪失(欠失)をもたらす。
【0109】
用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを概して意味して、本明細書では使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全にまたは部分的に防止するという点から予防的であってもよく、および/または、疾患および/もしくは疾患に起因する有害効果の部分的もしくは完全な治癒という点から治療的であってもよい。本明細書で使用される場合「処置」は、哺乳動物における疾患または症状の任意の処置をカバーし、(a)疾患または症状にかかりやすい傾向があるが、まだそれを有しているとは診断されていない対象において、疾患または症状が発症することを防止すること;(b)疾患または症状を抑制すること、すなわち、その発生を止めること;あるいは(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすこと、を含む。治療剤は、疾患または傷害の発生の前、発生中、または発生後に投与されてもよい。進行中の疾患の処置であって、患者の望ましくない臨床症状を安定化または低下させる処置は、特に興味深いものである。そのような処置は、患部組織における完全な機能喪失の前に行われることが望ましい。治療は、疾患の症状段階の間、および一部の場合では疾患の症状段階の後に、投与されることが望ましい。
【0110】
用語「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」とは、本明細書で同義的に使用され、診断、処置、または治療が望ましい任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。
【0111】
分子および細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., Harboor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999);Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999);Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995);Immunology Methods Manual (1. Lefkovits ed., Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)のような標準的な教科書に見出すことができ、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0112】
値の範囲が与えられた場合、その範囲の上限値と下限値の間の、文脈によって特に明示されない限りは下限値の単位の10分の1までの、間に挟まれた各値、およびその記載の範囲内の任意の他の記載された、または間に挟まれた値は、本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、そのより小さい範囲内に独立して含まれてもよく、また、記載範囲に何らかの具体的に除外された境界値がある場合も本発明に含まれる。記載範囲が一方または両方の境界値を含む場合、それらの含まれる境界値の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0113】
「から本質的になる」という句は、本明細書では、系の指定された活性構成成分(単数または複数)ではないあらゆるもの、または分子の指定された活性部分(単数または複数)ではないあらゆるものを除外することを意味する。
【0114】
ある特定の範囲は、「約」という用語に先行された数値を用いて、本明細書で提供される。本明細書において「約」という用語は、それに続く正確な数、および用語に続く数に近いまたは近似した数のための字義通りのサポートを提供するのに使用される。ある数が具体的に記載された数に近いまたは近似しているかどうかを決定する際、近いまたは近似している未記載の数は、それが示された文脈において、具体的に記載された数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0115】
明確化のために別々の実施形態に関連して記載される本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わされて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記載される本発明の種々の特徴は、別々に、または任意の適切な副組合せで提供されてもよい。本発明に関連する全ての実施形態の組合せは、それぞれおよび全ての組合せがあたかも個々にかつ明示的に開示されたかの如く、本発明により具体的に包含され、本明細書で開示される。加えて、種々の実施形態およびその要素の全ての副組合せも、それぞれおよび全てのそのような副組合せがあたかも個々にかつ明示的に本明細書で開示されたかの如く、本発明に具体的に包含され、本明細書で開示される。
【0116】
合成RNAガイドヌクレアーゼ(sRGN)
合成RNAガイドヌクレアーゼ(sRGN)は、例えば、異なる種、例えば4つの異なるStaphylococcus種(Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microti、およびStaphylococcus hyicus)、のCRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼの人工的に規定されたミニドメインの相同性に基づく遺伝子ファミリーシャフリングを使用して、作出することができる。1つのそのような遺伝子ファミリーシャフリングプロトコールが図1に模式的に描かれている。手短に述べると、異なるCas9エンドヌクレアーゼの配列を比較して、Cas9エンドヌクレアーゼの各々を複数(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれより多く)の対応するミニドメインに分割するアンカーポイントとして役立つ高度な相同性を有する領域を同定する。元のCas9エンドヌクレアーゼのうちの1つに由来する各々のミニドメインをランダムに割り当てることにより、遺伝子ファミリーシャフリングされたsRGNのライブラリーを調製する。一部の事例では、単一PAM配列がライブラリー構築物の各々により認識されるように固定された状態にPAM相互作用(PI)ドメインを保つことが望ましい。例えば、Cas9エンドヌクレアーゼの各々を、固定されたC末端ミニドメインを保持して8つのミニドメインに切断することにより、ライブラリーを調製することができ、この結果として、理論的複雑度は8192になる。別の例では、Cas9エンドヌクレアーゼの各々を、固定されたC末端ミニドメインを保持して12のミニドメインに切断することにより、ライブラリーを調製することができ、この結果として、理論的複雑度は1.3×10になる。細菌live/deadアッセイおよびレポーター遺伝子破壊アッセイなどの、RNAガイドエンドヌクレアーゼの活性についての公知のアッセイを使用してライブラリーをスクリーニングして、高い活性を有するsRGNを同定することができる。
【0117】
一態様では、相同性に基づく遺伝子ファミリーシャフリングプロコールに従って設計された候補sRGNが、本明細書に提供される。候補sRGNは、いかなる活性を有することもまだ示されていない。少なくとも1つの活性を有することが実証されているsRGNも提供される。一部の実施形態では、少なくとも1つの活性は、例えば、切断アッセイ、例えば蛍光偏光に基づく生化学的切断アッセイ、遺伝子編集アッセイ、例えばGFPからBFPへの変換(Glaser et al., 2016、下記)、遺伝子挿入アッセイ、または他の好適なパラメーターのアッセイにおける活性を含む。一部の実施形態では、オン標的カッティングがアッセイされ、オフ標的カッティングがアッセイされ、および/またはオン標的編集(例えば、遺伝子または遺伝子の部分の突然変異または挿入の矯正)がアッセイされ、これがオフ標的編集と比較され得る。一部の場合では、活性は、野生型Cas9などの参照または対照ヌクレアーゼと比較される。アッセイは、当技術分野で説明されており、商業資源から入手可能である。生物、例えば、有害な突然変異を有する動物において適切なアッセイを行うことができ、sRGN系が投与された動物における突然変異に関連する1つまたは複数の症状の改善により、sRGNの有効性がアッセイされる。一部の実施形態では、少なくとも1つの活性は、sRGNが由来する親Cas9エンドヌクレアーゼのうちの1つまたは複数における対応する活性より大きい。一部の実施形態では、少なくとも1つの活性は、SluCas9などの別の野生型Cas9における対応する活性より大きい。
【0118】
一部の実施形態では、8つのミニドメインを含む候補sRGNであって、ミニドメインが、N末端からC末端に向かって、1)配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号34~37のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1、2)配列番号38~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号38~41のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2、3)配列番号42~45のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号42~45のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3、4)配列番号46~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号46~49のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4、5)配列番号50~53のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号50~53のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5、6)配列番号54~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号54~57のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6、7)配列番号58~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号58~61のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7、および8)配列番号62~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号62~65のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8である、候補sRGNが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、候補sRGNは、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microtiおよびStaphylococcus hyicus Cas9からのミニドメインを含む。一部の実施形態では、候補sRGNは、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microtiおよびStaphylococcus hyicusの4つ全て未満(例えば、2つまたは3つ)のCas9からのミニドメインを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン8は、配列番号62のアミノ酸配列、または配列番号62に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン8は、配列番号63のアミノ酸配列、または配列番号63に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン1は、配列番号34のアミノ酸配列、または配列番号34に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0119】
一部の実施形態では、12のミニドメインを含む候補sRGNであって、ミニドメインが、N末端からC末端に向かって、1)配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号66~69のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン1、2)配列番号70~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号70~73のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン2、3)配列番号74~77のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号74~77のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン3、4)配列番号78~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号78~81のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン4、5)配列番号82~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号82~85のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン5、6)配列番号86~89のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号86~89のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン6、7)配列番号90~93のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号90~93のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン7、8)配列番号94~97のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号94~97のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン8、9)配列番号98~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号98~101のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン9、10)配列番号102~105のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号102~105のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン10、11)配列番号106~109のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号106~109のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン11、および12)配列番号110~113のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号110~113のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むミニドメイン12である、候補sRGNが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、候補sRGNは、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microtiおよびStaphylococcus hyicus Cas9からのミニドメインを含む。一部の実施形態では、候補sRGNは、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microtiおよびStaphylococcus hyicusの4つ全て未満(例えば、2つまたは3つ)のCas9からのミニドメインを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン12は、配列番号110のアミノ酸配列、または配列番号110に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、ミニドメイン12は、配列番号111のアミノ酸配列、または配列番号111に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、(i)ミニドメイン1は、配列番号66のアミノ酸配列、または配列番号66に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含み、(ii)ミニドメイン2は、配列番号70のアミノ酸配列、または配列番号70に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0120】
本明細書で開示されるsRGNポリペプチドGib11(配列番号1)、P2H12(配列番号5)、E2(配列番号6)、およびF8(配列番号10)は、遺伝子ファミリーシャフリングプロトコールを使用して同定され、Gib11Spaバリアント(配列番号2~4)は、一般に、Gib11の異なるC末端部分をStaphylococcus pasteuri Cas9の対応する部分に置き換えることにより作出された。
【0121】
本明細書で開示されるsRGNポリペプチドは、Streptococcus pyogenesからのCas9(本明細書では「SpCas9」または「SpyCas9」とも称される)と比較して小さく、NNGG PAM配列と相互作用する。
【0122】
一態様では、配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたは配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含むsRGNポリペプチドが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、配列番号1~12のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0123】
一部の実施形態では、配列番号1~12のいずれか1つの部分配列に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するアミノ酸配列を含むsRGNポリペプチドであって、部分配列が1つまたは複数の機能的sRGNドメインを含む、sRGNポリペプチドが、本明細書に提供される。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つの部分配列を含む(またはこれからなる)。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、ヌクレアーゼドメイン(例えば、HNHまたはRuvCドメイン)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、RNA結合ドメイン(例えば、Rec Iドメイン)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、PAM相互作用ドメインを含む。
【0124】
一部の実施形態では、以下のものを含むGib11バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号1のその全長にわたってのアミノ酸配列に対してまたは配列番号1の787位~1057位の配列にわたってのアミノ酸配列に対し少なくとも90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、Gib11 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)Gib11ならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号1に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0125】
一部の実施形態では、以下のものを含むP2H12バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号5のその全長にわたってのアミノ酸配列に対してまたは配列番号5の784位~1055位の配列にわたってのアミノ酸配列に対し少なくとも90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、P2H12 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)P2H12ならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号5に関して10位(例えば、D10A)、559位(例えば、H559A)および/または582位(例えば、N582A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0126】
一部の実施形態では、以下のものを含むE2バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号6のその全長にわたってのアミノ酸配列に対してまたは配列番号6の1位~789位の配列にわたってのアミノ酸配列に対し少なくとも90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、E2 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)E2ならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号6に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0127】
一部の実施形態では、以下のものを含むF8バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号10のその全長にわたってのアミノ酸配列に対してまたは配列番号10の1位~789位の配列にわたってのアミノ酸配列に対し少なくとも90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、F8 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)F8ならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号10に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0128】
一部の実施形態では、以下のものを含むGib11Spa-1バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、Gib11Spa-1 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)Gib11Spaならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号2に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0129】
一部の実施形態では、以下のものを含むGib11Spa-2バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、Gib11Spa-2 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)Gib11Spaならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号3に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0130】
一部の実施形態では、以下のものを含むGib11Spa-3バリアントが、本明細書に提供される:
(I)配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するバリアント;
(II)無細胞反応でまたは原核細胞でのみならず、例えば植物または動物のような生存生物などの真核細胞環境でも、Gib11Spa-3 CRISPR系の適切な活性を得るための、例えば核局在化シグナルなどの、構成成分をさらに含む、(I)に記載のバリアント;
(III)Gib11Spaならびに(I)および(II)に記載のバリアントをコードする対応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化されたバリアント;
(IV)(I)~(III)のいずれかに記載のバリアントであって、
(a)有意に低下したまたは検出不能なヌクレアーゼ活性を有する、例えば、配列番号4に関して10位(例えば、D10A)、562位(例えば、H562A)および/または585位(例えば、N585A)に、アラニン、または有意に低下したヌクレアーゼ活性をもたらす他の任意の交換を有する、sRGNを生じさせる結果となる、1つまたは複数の改変または突然変異と、
(b)ヌクレオチド塩基編集活性またはデアミナーゼ活性を有し、例えばリンカーペプチドを介して、CまたはN末端に結合しているポリペプチドと
をさらに含むバリアント。
【0131】
例えば、酵素活性の文脈において使用される「有意に低下された」という用語は、斯かる酵素活性が、参照タンパク質(例えば、配列番号1~12のいずれか1つ)の活性の約10%よりも低い、例えば、斯かる参照酵素活性の5%よりも低い、2%よりも低い、1%よりも低いまたは0.1%よりも低いことを意味する。
【0132】
(IV)(b)における適したポリペプチド、ならびに(I)、(II)および(III)におけるsRGNのC末端ドメインへのその結合は、例えば、WO2017/070632、Gaudelli et al., Nature 551(23 November 2017), 464-471;Komor et al., Sci. Adv. 2017; 3eaao4774;Kim et al., Nature Biotechnol. 2017 April; 35(4) 371-376;Komor et al., Nature 533(7603); 420-424に記載されている。
【0133】
標的DNA配列に二本鎖切断を導入する代わりに、(IV)におけるsRGN変異体は、いずれかの塩基対からいずれか可能な他の塩基対への変換を可能にすることができる。1つの非限定的な例は、シトシン、グアニンまたはアデニン塩基に作用し得るデアミナーゼ活性、脱アミノ化された部位を通してのそれらをその後の複製、および細胞内でグアニン、チミンおよびグアニンをそれぞれ生じさせるための修復である。
【0134】
他に指定がなければ、sRGNという用語は、配列番号1~12のいずれか1つのsRGNポリペプチド、ならびに本明細書に記載されるあらゆるバリアント、例えば、(I)、(II)、(III)および(IV)において指定されたものを含む。
【0135】
一部の実施形態では、配列番号6に関して、a)741位にアスパラギン酸残基および743位にリシン残基を含む、E2の突然変異体(E2+K741D+L743K、配列番号7);またはb)670位にスレオニン残基および675位にアスパラギン酸残基を含む、E2の突然変異体(E2+S670T+N675D、配列番号8);またはc)741位にアスパラギン残基および743位にアスパラギン残基を含む、E2の突然変異体(E2+K741N+L743N、配列番号9);またはd)上記(a)~(c)の任意の組合せが本明細書に提供される。
【0136】
一部の実施形態では、i)配列番号6に記載の配列に対してその全長にわたって、または配列番号6の1位~789位の配列に対して、少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)アミノ酸同一性;およびii)表1のa1の5つ前の位置で始まってa1の5つ後の位置で終わる連続ストレッチにアラインメントされたときに、表1に示されているようなa1位のアミノ酸残基を示す;およびiii)表1のa2の5つ前の位置で始まってa2の5つ後の位置で終わる連続ストレッチにアラインメントされたときに、表1に示されているようなa2位のアミノ酸残基を示す、E2の突然変異体が、本明細書に提供され、この場合、アラインメントされたとは、例えば、標準的なパラメーターを使用してProtein BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov、the National Center for Biotechnology[2018年5月17日に引用]Information;Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, D.J. (1990) "Basic local alignment search tool." J. Mol. Biol. 215:403-410.)を含む、標準的な局所的アラインメントツールまたはアルゴリズムを使用する、配列番号6に記載の配列への11アミノ酸残基のストレッチのアラインメントを意味し、a1またはa2に先行する5つのアミノ酸のうちの少なくとも4つ、およびa1またはa2の後の5つのアミノ酸のうちの4つは、同一である。
【表1】
【0137】
他に指定がなければ、E2という用語は、E2+K741D+L743K;E2+S670T+N675D;およびE2+K741N+L743Nを含む、E2突然変異体を含む。
【0138】
一部の実施形態では、配列番号10に関して、a)737位にアスパラギン酸残基および739位にリシン残基を含む、F8の突然変異体(F8+K737D+L739K、配列番号11);またはb)737位にアスパラギン残基および739位にアスパラギン残基を含む、F8の突然変異体(F8+K737N+L739N、配列番号12)が、本明細書に提供される。
【0139】
一部の実施形態では、i)配列番号10に記載の配列に対してその全長にわたって、または配列番号10の1位~787位の配列に対して、少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)アミノ酸同一性;およびii)表2のa1の5つ前の位置で始まってa1の5つ後の位置で終わる連続ストレッチにアラインメントされたときに、表2に示されているようなa1位のアミノ酸残基を示す;およびiii)表2のa2の5つ前の位置で始まってa2の5つ後の位置で終わる連続ストレッチにアラインメントされたときに、表2に示されているようなa2位のアミノ酸残基を示す、F8の突然変異体が、本明細書に提供され、この場合、アラインメントされたとは、例えば、標準的なパラメーターを使用してProtein BLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov、the National Center for Biotechnology[2018年5月17日に引用]Information;Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, D.J. (1990) "Basic local alignment search tool." J. Mol. Biol. 215:403-410.)を含む、標準的な局所的アラインメントツールまたはアルゴリズムを使用する、配列番号10に記載の配列への11アミノ酸残基のストレッチのアラインメントを意味し、a1またはa2に先行する5つのアミノ酸のうちの少なくとも4つ、およびa1またはa2の後の5つのアミノ酸のうちの4つは、同一である。
【表2】
【0140】
他に指定がなければ、F8という用語は、F8+K737D+L739K;およびF8+K737N+L739Nを含む、F8突然変異体を含む。
【0141】
所与のライブラリーを使用して遺伝子ファミリーシャフリングにより作出された高活性sRGNにおいてミニドメインの対での組合せを同定すること、および残りのsRGNミニドメインがライブラリーから選択される合理的に設計されたsRGNにこれらの対での組合せのうちの少なくとも1つを含めることにより、さらなるsRGNを作出することができる。残りのミニドメインは、対での組合せのミニドメインと同じ親Cas9に由来するものから選択することができる。合理的に設計されたsRGNは、高活性sRGN中のミニドメインの1つまたは複数のさらなる対での組合せをさらに含むことができる。例えば、合理的に設計されたsRGNは、高活性sRGN中に存在するミニドメインの2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くの対での組合せを含むことができる。
【0142】
キメラRNAガイドヌクレアーゼ(cRGN)
A)StaphylococcusのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9、または本明細書に記載されているsRGNのいずれかなどの、2つもしくはそれより多くのStaphylococcus II型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Casタンパク質の配列のDNAシャフリングにより作出された合成RNAガイドヌクレアーゼのどちらかから得られる、N末端部分(cRGN-A)と、b)Staphylococcus pasteuri(NCBI Refseq WP_023374365.1)からのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9から得られるC末端部分(cRGN-B)とを含む、キメラRNAガイドヌクレアーゼ(cRGN)であって、cRGN-Bが、i)NCBI Refseq WP_023374365.1に記載の配列の905アミノ酸位から始まって1054アミノ酸位で終わる配列である、Staphylococcus pasteuri(NCBI Refseq WP_023374365.1)からのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9の全PIドメインを含むか、またはii)Staphylococcus pasteuri(NCBI Refseq WP_023374365.1)からのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9の全PIドメインと、NCBI Refseq WP_023374365.1に記載の配列の784アミノ酸位~904アミノ酸位に位置する全WEDドメインとを含み;cRGN-Aが、Staphylococcus pasteuriからのNCBI Refseq WP_023374365.1のそれぞれの部分とアミノ酸レベルで99.9%を超えて同一、一部の場合には、99.5%を超えて同一である配列を除いて、最初の739アミノ酸または最初の783アミノ酸などの、それぞれのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9配列の最初の700アミノ酸を含み;cRGN-Aが、直接的にせよ、リンカーペプチド配列によるにせよ、cRGN-Bに結合されている、キメラRNAガイドヌクレアーゼ(cRGN)も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、cRGN-Aは、それぞれのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9配列の最初の700より多くのアミノ酸、例えば、最初の739アミノ酸、または最初の783アミノ酸を含む。
【0143】
Staphyrococcus aureusのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9についてのPIドメインおよびWEDドメインは、Nishimasu et al., Cell. 2015 August 27; 162(5): 1113-1126に記載されている。両方のドメインの潜在的局在は、さらに図6に示されている。
【0144】
本特許出願の中でのNCBI Refseqデータベースへのいずれの言及も、次の引用を参照する:National Center for Biotechnology Information(NCBI)[インターネット]。Bethesda(MD):National Library of Medicine(US)、National Center for Biotechnology Information;[1988]-[2018年5月11日に引用]。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/proteinから入手可能。例えば、NCBI Refseq WP_048803085については、これは、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_048803085である。
【0145】
単独でのStaphylococcusへのいずれの言及も、Staphylococcus属を意味する。
【0146】
本発明に関してDNAシャフリングは、II型CRISPR Cas9エンドヌクレアーゼの活性などの、RNAガイドエンドヌクレアーゼの活性を有する合成タンパク質をコードするキメラDNA配列を生じさせるための、異なる(例えば、異なるStaphylococcus種からの)II型CRISPR Cas9エンドヌクレアーゼDNA配列間の配列断片の交換を意味する。そのような技法は、とりわけ、Joern J.M. (2003) DNA Shuffling. In: Arnold F.H., Georgiou G. (eds) Directed Evolution Library Creation. Methods in Molecular BiologyTM, vol 231. Humana Press, as well as in Gibbs et al., Gene. 2001 Jun 13;271(1):13-20に記載されている。
【0147】
一部の実施形態では、StaphylococcusからのII型CRISPR RNAガイドエンドヌクレアーゼ Cas9は、NCBI Refseqデータベースの以下の登録のうちの1つにより特定される:WP_053019794、WP_071859985、WP_049437627、WP_081329738、WP_081330634、WP_088922804、WP_061854099、WP_096792116、WP_107588422、WP_107543406、WP_105966910、WP_083326931、WP_105977729、WP_107578657、WP_107533955、WP_107597066、WP_105980293、WP_105978400、WP_107539784、WP_083326835、WP_096754380、WP_107580550、WP_107530431、WP_107597643、WP_107596301、WP_082732265、WP_083310250、WP_082709447、WP_105994700、WP_107568091、WP_107544007、WP_103361957、WP_001573634、WP_107576310、WP_107571611、WP_107593728、WP_103167028、WP_107532850、WP_002460848、WP_107506206、WP_104681501、WP_107546539、WP_058710220、WP_075777761、WP_050331073、WP_050345681、WP_053017934、WP_049415449、WP_060829977、WP_070855141、WP_107641154、WP_107392933、WP_107389582、WP_107390356、WP_107378401、WP_107378676、WP_060552032、WP_107376447、WP_039643679、WP_101457364、WP_104039168、WP_104052030、WP_085237539、WP_103357343、WP_044361501、WP_107366415、WP_107393309、WP_107633689、WP_107397003、WP_107386954、WP_107371508、WP_107538271、WP_107642914、WP_107536061、WP_107605852、WP_107547877、WP_107634675、WP_107532082、WP_107604007、WP_103356745、WP_107642811、WP_103298901、WP_107611983、WP_107623815、WP_107522281、WP_107560076、WP_107368542、WP_081502240、WP_107604002、WP_107377516、WP_016424980、WP_009382362、WP_001573633、WP_016424981、WP_103298687、WP_103361956、WP_107637979、WP_107612621、WP_107642817、WP_103356723、WP_107593719、WP_070592992、WP_107536245、WP_103209613、WP_063284667、WP_101457463、WP_105503156、WP_096548249、WP_096536567、WP_014613259、WP_063278948、WP_096601671、WP_103863320、WP_096559644、WP_019167918、WP_086428210、WP_096665615、WP_105976295、WP_107576302、WP_105977863、WP_107544006、WP_107538330、WP_070848771、WP_096605716、WP_095105824、WP_105966809、WP_070469119、WP_096589032、WP_105996442、WP_107552556、WP_060803934、WP_107549437、WP_107579080、WP_107547813、WP_107591747、WP_105978348、WP_096598476、WP_107587102、WP_107533825、WP_107588308、WP_107567989、WP_096544347、WP_023015764、WP_103322053、WP_060803559、WP_048803085、WP_107530433、WP_107580731、WP_107368971、WP_107559912、WP_107371387、WP_107571609、WP_107559911、WP_107571610、WP_107530436、WP_107580472、WP_017000597、WP_023374365、WP_062197343、WP_035512507、WP_079708828、WP_101040307、WP_053216997、WP_106588293、WP_107585021、WP_082099322、WP_017185731、WP_101662761、WP_084780162、WP_016837331、WP_084781893、WP_106494556、WP_088825434、WP_088816271、WP_059140148、WP_007547525、WP_084347835、WP_070710475、WP_077907981、WP_035723552、WP_058095017、WP_006446566、WP_074693676、WP_050980543、WP_001271093、WP_001271092、WP_087971021、WP_061668060、WP_016119566、WP_016106885、WP_088031364、WP_088038716、WP_007476473、WP_003343632、WP_088049424、WP_003354196、WP_066148467、WP_082806588、WP_087094968、WP_048723014、WP_033844707、WP_055358891、WP_081209836、WP_033018780、WP_023633350、WP_046580811、WP_081157433、WP_087959824、WP_041267823、WP_018922791、WP_063577905、WP_066227285、WP_044736072、WP_033016936、WP_100664518、WP_064213580、WP_053532223、WP_042224718、WP_084138993、WP_010632729、WP_018130201、WP_088027793、WP_065212529、WP_048539452、WP_001105083、WP_001105082、WP_086397116、WP_086390158、WP_070006567、WP_003739838、WP_070034634、WP_075702521、WP_029090905、WP_038409211、WP_069125601、WP_046323366、WP_069887401、WP_069134523、WP_061665472、WP_070294293、WP_003749665、WP_070784981、WP_031669209、WP_106787163、WP_077287021、WP_085392451、WP_023548323、WP_061108493、WP_101152964、WP_101143843、WP_101143453、WP_101140817、WP_066465432、WP_033920898、WP_069001072、WP_085400884、WP_101057368、WP_088838826、WP_072240946、WP_033838504、WP_010991369、WP_072218760、WP_072238933、WP_070227966、WP_061663015、WP_003733029、WP_101142252、WP_070031693、WP_070785826、WP_003730785、WP_070274575、WP_003727705、WP_069890501、WP_070233243、WP_070039312、WP_031665337、WP_070222802、WP_070264592、WP_103682188、WP_070299153、WP_070307355、WP_061395959、WP_070764199、WP_061128889、WP_070283519、WP_069009724、WP_070228842、WP_014601172、WP_103757671、WP_070293394、WP_060587936、WP_070238603、WP_070215465、WP_003723650、WP_070214481、WP_058876445、WP_060567941、WP_029499861、WP_027129613、WP_003145379、WP_080151624、WP_021752441、WP_069132012、WP_084038511、WP_004632196、WP_066230975、WP_072520207、WP_082729137、WP_080149038、WP_072233091、WP_072240445、WP_072218465、WP_072239624、WP_080151670、WP_077914265、WP_080151712、WP_052025682、WP_077914264、WP_100353964、WP_046517046、WP_008341324。
【0148】
一部の実施形態では、cRGN-Aは、Gib11(配列番号1)からのものである。一部の実施形態では、cRGNは、Gib11Spa-1(配列番号2)、Gib11Spa-2(配列番号3)、またはGib11Spa-3(配列番号4)である。
【0149】
他の小さいCasヌクレアーゼ
一態様では、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus microti、またはStaphylococcus hyicusからのCas9が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、Cas9は、Staphylococcus pasteuriからのものであり、配列番号31のアミノ酸配列、または配列番号31に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。Staphylococcus pasteuri Cas9、または「SpaCas9」は、PAM配列NNGGを認識する。一部の実施形態では、Cas9は、Staphylococcus microtiからのものであり、配列番号33のアミノ酸配列、または配列番号33に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。Staphylococcus microti Cas9、または「SmiCas9」は、PAM配列NNGGを認識する。一部の実施形態では、Cas9は、Staphylococcus hyicusからのものであり、配列番号32のアミノ酸配列、または配列番号32に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアントを含む。Staphylococcus hyicus Cas9、または「ShyCas9」は、PAM配列NNAAAAを認識する。一部の場合では、これらの小さいCas9を、本明細書に記載されている系、組成物および方法のいずれかにおいてsRGNの代替として使用することができる。
【0150】
sRGNポリペプチドに基づくCRISPR-Cas系
一部の実施形態では、(a)sRGNポリペプチド、もしくは配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するそのバリアント、またはsRGNポリペプチドもしくはそのバリアントをコードする核酸と、(b)ガイドRNA(gRNA)、またはgRNAをコードする核酸とを含む系であって、gRNAが、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、系は、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを含む。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含む(またはこれからなる)。一部の実施形態では、系は、sRGNをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、核酸は、配列番号13~29に対して少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有する。一部の実施形態では、核酸は、配列番号13~29の配列を含む(またはこれからなる)。一部の実施形態では、系は、gRNAを含む。一部の実施形態では、系は、gRNAをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、gRNAは、単一ガイドRNA(sgRNA)である。一部の実施形態では、系は、1つもしくは複数のさらなるgRNA、または1つもしく複数のさらなるgRNAをコードする核酸をさらに含む。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているsRGNポリペプチドまたはそのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸のいずれかに従って、ポリヌクレオチド配列は、(i)細胞環境もしくはin vitro環境での発現に適したプロモーターに、および/または(ii)適した核局在化シグナルに作動可能に連結されている。
【0152】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているgRNAをコードする核酸のいずれかに従って、核酸は、(i)細胞環境もしくはin vitro環境での発現に適したプロモーターに、および/または(ii)適した核局在化シグナルに作動可能に連結されている、gRNAをコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0153】
一部の実施形態では、(a)配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むsRGNポリペプチド、または配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントと、(b)gRNAとを含む系であって、gRNAが、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、gRNAは、sgRNAである。
【0154】
一部の実施形態では、(a)配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むsRGNポリペプチド、または配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントと、(b)gRNAをコードする核酸とを含む系であって、gRNAが、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、gRNAは、sgRNAである。
【0155】
一部の実施形態では、(a)配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むsRGNポリペプチドをコードするかまたは配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸と、(b)gRNAとを含む系であって、gRNAが、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、核酸は、配列番号13~29のいずれか1つのポリヌクレオチド配列、または配列番号13~29のいずれか1つのポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、gRNAは、sgRNAである。
【0156】
一部の実施形態では、(a)配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むsRGNポリペプチドをコードするかまたは配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントをコードする核酸と、(b)gRNAをコードする核酸とを含む系であって、gRNAが、sRGNポリペプチドまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列へとガイドすることができる、系が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、核酸は、配列番号13~29のいずれか1つのポリヌクレオチド配列、または配列番号13~29のいずれか1つのポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、gRNAは、sgRNAである。一部の実施形態では、系は、(i)sRGNポリペプチドをコードするかまたはそのバリアントをコードする核酸、および(ii)gRNAをコードする核酸を含む核酸を含む。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている系のいずれかに従って、系は、ドナー鋳型をさらに含む。一部の実施形態では、ドナー鋳型は、標的ポリヌクレオチド配列への挿入のためのドナー配列を含む。一部の実施形態では、ドナー配列は、標的における発現のための導入遺伝子などの、外因性配列である。一部の実施形態では、ドナー鋳型は、標的ポリヌクレオチド配列中の1つまたは複数の塩基を改変するためのドナー配列を含む。一部の実施形態では、系は、1つまたは複数のさらなるドナー鋳型をさらに含む。一部の実施形態では、ドナー鋳型は、系内のgRNAに物理的に連結されている。
【0158】
本発明に係る一実施形態は、
(a)sRGNポリペプチドまたは斯かるsRGNをコードする核酸;
(b)単一異種ガイドRNA(sgRNA)またはin situでの斯かるsgRNAの作製を可能にする核酸(例えば、DNA)(例えば、sgRNAをコードする核酸)であって、sgRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)が、5’から3’への方向で配置されている、sgRNAまたは核酸
を含む組成物を提供する。
【0159】
sgRNA内で、tracrメイト配列およびtracr配列は、一般に、適したループ配列によって接続され、ステムループ構造を形成する。
【0160】
さらに、一部の実施形態では、sRGNポリペプチドおよび/またはsgRNAをコードする核酸は、細胞もしくはin vitro環境における発現に適したプロモーター、および/または適した核局在化シグナルを含有する。
【0161】
本発明に係る別の実施形態は、細胞またはin vitroにおける、1つまたは複数の位置における標的DNAを標的化、編集、改変または操作する方法であって、
(a)異種sRGNポリペプチドまたはsRGNポリペプチドをコードする核酸を、細胞またはin vitro環境に導入するステップと、
(b)単一異種ガイドRNA(sgRNA)またはin situでの斯かるsgRNAの作製に適した核酸(例えば、DNA)(例えば、sgRNAをコードする核酸)を導入するステップであって、sgRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)が、5’から3’への方向で配置されている、ステップと、
(c)標的DNAに1つまたは複数のカット、ニックまたは編集を創出するステップであって、sRGNポリペプチドが、そのプロセシングされたまたはプロセシングされていない形態でのgRNAによって、標的DNAに方向付けられる、ステップと
を含む方法を提供する。
【0162】
本発明に係る別の実施形態は、細胞(例えば、in vitroまたはin vivo)または無細胞系における、1つまたは複数の位置における標的DNAの標的化、編集、改変または操作のための、
(a)sRGNポリペプチドまたは斯かるsRGNをコードする核酸と;
(b)単一異種ガイドRNA(sgRNA)またはin situでの斯かるsgRNAの作製に適した核酸(例えば、DNA)(例えば、sgRNAをコードする核酸)であって、sgRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における斯かる標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)が、5’から3’への方向で配置されている、sgRNAまたは核酸
を含む組成物の使用である。
【0163】
本発明に係る別の実施形態は、
(a)異種sRGNポリペプチド、またはこれをコードする核酸、
(b)単一異種ガイドRNA(sgRNA)またはin situでの斯かるsgRNAの作製に適した核酸(例えば、DNA)(例えば、sgRNAをコードする核酸)であって、sgRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における斯かる標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)が、5’から3’への方向で配置されている、sgRNAまたは核酸
を含む、ex vivoまたはin vitroにおける細胞
または、そのゲノムが、上述の(a)および(b)を使用して標的化、編集、改変または操作された、斯かる細胞である。
【0164】
本発明に係る追加的な実施形態は、
(a)sRGNポリペプチドをコードする核酸であって、プロモーターまたはリボソーム結合部位に作動可能に連結されている核酸と;
(b)単一異種ガイドRNA(sgRNA)またはin situでの斯かるsgRNAの作製に適した核酸(例えば、DNA)(例えば、sgRNAをコードする核酸)であって、sgRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における斯かる標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)が、5’から3’への方向で配置されている、sgRNAまたは核酸と
または
(a)sRGNポリペプチドと;
(b)1つまたは複数の単一異種ガイドRNA(sgRNA)であって、sgRNAのそれぞれが、
iv.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における斯かる標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
v.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
vi.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列が、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(iv)、(v)および(vi)が、5’から3’への方向で配置されている、sgRNAと
を含む、キットを含む。
【0165】
本発明に係るさらに別の実施形態は、細胞(例えば、in vitroまたはin vivo)または無細胞系における、1つまたは複数の位置における1つまたは複数の標的DNAを標的化、編集、改変または操作するための組成物および方法であって、
(a)sRGNポリペプチド、またはsRGNポリペプチドをコードする核酸と;
(b)ガイドRNA(gRNA)またはin situでの斯かるgRNAの作製に適した核酸(例えば、DNA)(例えば、gRNAをコードする核酸)であって、gRNAが、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における斯かる標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメント、
ii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、(i)および(ii)が単一のRNA分子上に存在し、(iii)が別のRNA分子上に存在する、gRNAまたは核酸と
を含む組成物および方法を含む。
【0166】
突然変異体
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、変更されたエンドリボヌクレアーゼ活性、またはプレcrRNA、中間体crRNAもしくは成熟crRNAの関連する半減期を有する突然変異体ポリペプチドである。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、実質的に縮小もしくは増強されたエンドリボヌクレアーゼ活性またはDNAに対する結合親和性がない、変更または抑止されたDNAエンドヌクレアーゼ活性を有する突然変異体ポリペプチドである。斯かる改変は、転写調節、活性化もしくは抑圧;メチル化、脱メチル化、アセチル化もしくは脱アセチル化によるエピジェネティック改変もしくはクロマチン改変、または当技術分野で公知のDNA結合および/またはDNA改変タンパク質の他のいずれかの改変の目的での、sRGNポリペプチドの配列特異的DNA標的化を可能にすることができる。
【0167】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、DNAエンドヌクレアーゼ活性がない突然変異体ポリペプチドである。
【0168】
一部の実施形態では、細胞は、細菌細胞、真菌細胞、古細菌細胞、原生生物、植物細胞または動物細胞である。
【0169】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドおよび単一異種ガイドRNA(sgRNA)等の1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)は、ポリペプチドおよび核酸をコードする同じまたは異なる組換えベクターによって、細胞に導入される。
【0170】
一部の実施形態では、ポリペプチド、核酸、またはポリペプチドおよび核酸の両方をコードする核酸は、改変される。
【0171】
一部の実施形態では、方法または系は、ドナーDNA配列を付加するステップをさらに含み、標的DNA配列は、相同性により導かれる修復によって編集される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドドナー鋳型は、crRNAまたはガイドRNAに物理的に連結される。
【0172】
別の態様では、一本鎖RNA(ssRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、またはRNAおよびDNAのヘテロ二重鎖に対する活性を持たない、二本鎖DNAまたは一本鎖標的DNAを改変または編集するための方法が本明細書に提供される。
【0173】
マルチプレックス化
別の態様では、細胞における複数の位置におけるDNAを編集または改変するための方法であって、i)sRGNポリペプチドまたはsRGNポリペプチドをコードする核酸を細胞に導入するステップと、ii)RNAとしての、またはDNAとしてコードされ1つのプロモーターの制御下に置かれた、2つまたはそれよりも多いプレCRISPR RNA(プレcrRNA)を含む単一の異種核酸を細胞に導入するステップであって、各プレcrRNAが、リピート-スペーサーアレイまたはリピート-スペーサーを含み、スペーサーが、DNAにおける標的配列に相補的な核酸配列を含み、リピートが、ステムループ構造を含み、sRGNポリペプチドが、ステムループ構造の上流の2つまたはそれよりも多いプレcrRNAを切断して、2つまたはそれよりも多い中間体crRNAを作製し、2つまたはそれよりも多い中間体crRNAが、2つまたはそれよりも多い成熟crRNAへとプロセシングされ、2つまたはそれよりも多い成熟crRNAのそれぞれが、DNAに2つまたはそれよりも多い二本鎖切断(DSB)をもたらすようにsRGNポリペプチドをガイドする、ステップとから本質的になる方法が本明細書に提供される。例えば、sRGNポリペプチドの利点の1つは、いくつかのリピート-スペーサー単位を含む1つのみのプレcrRNAを導入することが可能であることであり、このいくつかのリピート-スペーサー単位は、導入後に、sRGNポリペプチドによって、DNAにおけるいくつかの異なる配列を標的とする活性リピート-スペーサー単位へとプロセシングされる。
【0174】
一部の実施形態では、単一の異種核酸におけるプレcrRNA配列は、特異的な位置、方向、配列で、または特異的な化学的連結により一体に結合されて、異なるcrRNA配列によって指定される部位のそれぞれにおけるsRGNポリペプチドのエンドヌクレアーゼ活性を方向付けるまたは差次的に調節する。
【0175】
別の態様では、細胞における複数の位置におけるDNAの構造または機能を編集または改変するための一般方法であって、i)ポリペプチドとしてまたはRNAガイドエンドヌクレアーゼをコードする核酸として、sRGN等のRNAガイドエンドヌクレアーゼを細胞に導入するステップと、ii)RNAとしての、またはDNAとしてコードされ1つまたは複数のプロモーターの制御下に置かれた、2つまたはそれよりも多いガイドRNAを含むまたはコードする単一の異種核酸を導入するステップであって、RNAガイドエンドヌクレアーゼの活性または機能が、単一の異種核酸におけるガイドRNA配列によって方向付けられる、ステップとから本質的になる一般方法の例が本明細書に提供される。
【0176】
sRGNポリペプチドのコドン最適化されたDNA配列
本方法の一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードする核酸配列は、改変された核酸である、例えば、コドン最適化されている。本方法の一部の実施形態では、単一の異種核酸は、改変された核酸である。本方法の一部の実施形態では、本方法は、細胞にポリヌクレオチドドナー鋳型を導入するステップをさらに含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドドナー鋳型は、crRNAまたはガイドRNAに物理的に連結される。本方法の一部の実施形態では、DNAは、相同性により導かれる修復、非相同末端結合またはマイクロホモロジー媒介性末端結合のいずれかによって、DSBにおいて修復される。
【0177】
本方法の一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、局所的環境において成熟crRNAとより容易に複合体形成し、よって、局所的環境においてプレcrRNAから同sRGNポリペプチドによってプロセシングされたcrRNAの帰結として、DNAエンドヌクレアーゼ活性を方向付けるためにより容易に利用できる。
【0178】
本方法の一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、RNAオリゴヌクレオチドまたはDNA発現構築物内で1つまたは複数のcrRNA配列に対し5’または3’に異種配列が取り込まれている、改変されたプレcrRNAオリゴヌクレオチド配列からの、1つまたは複数の成熟crRNA配列の切断、単離または精製に使用される。異種配列は、安定性、半減期、発現レベルもしくはタイミング、sRGNポリペプチドもしくは標的DNA配列との相互作用、または当技術分野で公知の他のいずれかの物理的もしくは生化学的特徴を改変するために取り込むことができる。
【0179】
本方法の一部の実施形態では、プレcrRNA配列は、プレcrRNA配列内の2つまたはそれよりも多い成熟crRNA配列の差次的調節を提供するために改変されて、安定性、半減期、発現レベルもしくはタイミング、sRGNポリペプチドもしくは標的DNA配列との相互作用、または当技術分野で公知の他のいずれかの物理的もしくは生化学的特徴を差次的に改変する。
【0180】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチド(またはその核酸コード変異体)は、機能、活性、反応速度、半減期またはその他等、所望の特徴を改善するために改変される。斯かる改変の斯かる非限定的な例の1つは、sRGNポリペプチドの「切断ドメイン」を、II型CRISPR関連ヌクレアーゼCas9由来のRuvCまたはHNHドメイン等の異なるヌクレアーゼ由来の相同または異種切断ドメインに置き換えることである。
【0181】
一態様では、細胞におけるDNAを標的化、編集または操作するための方法であって、インタクトなまたは部分的にもしくは完全に欠損したsRGNポリペプチドまたはプレcrRNAもしくはcrRNA部分を二量体FOK1ヌクレアーゼに連結して、1つまたは複数のcrRNA分子によって1つまたは複数の特異的DNA標的部位に方向付けられるように、エンドヌクレアーゼ切断を方向付けるステップを含む方法が本明細書に提供される。別の実施形態では、FOK1ヌクレアーゼ系は、ニッカーゼもしくは温度感受性突然変異体または当技術分野で公知の他のいずれかの変異体である。
【0182】
一部の実施形態では、二量体FOK1ヌクレアーゼと連結されたsRGNポリペプチドは、RNAとしての、またはDNAとしてコードされ1つのプロモーターの制御下に置かれた、2つまたはそれよりも多いプレCRISPR RNA(プレcrRNA)を含む単一の異種核酸と共に、細胞に導入され、各プレcrRNAは、リピート-スペーサーアレイを含み、スペーサーは、DNAにおける標的配列に相補的な核酸配列を含み、リピートは、ステムループ構造を含み、sRGNポリペプチドは、ステムループ構造の上流の2つまたはそれよりも多いプレcrRNAを切断して、2つまたはそれよりも多い中間体crRNAを作製する。
【0183】
一態様では、細胞におけるDNAを標的化、編集または操作するための方法であって、インタクトなまたは部分的にもしくは完全に欠損したsRGNポリペプチドまたはプレcrRNA、中間体crRNA、成熟crRNA部分もしくはgRNA(crRNAとまとめて称される)をドナー一本または二本鎖DNAドナー鋳型に連結して、1つまたは複数のガイドRNAまたはcrRNA分子によって1つまたは複数の特異的DNA標的部位に方向付けられるように、外因性DNA配列の相同組換えを容易にするステップを含む方法が本明細書に提供される。
【0184】
さらに別の態様では、相同組換えまたは相同性により導かれる修復のために、DNA鋳型を、遺伝子編集の特異的部位に方向付けるための方法が本明細書に提供される。この点に関して、一本鎖または二本鎖DNA鋳型は、化学的にまたは当技術分野で公知の他の手段によって、crRNAまたはガイドRNAに連結される。一部の実施形態では、DNA鋳型は、crRNAまたはガイドRNAに連結されたままである;さらに他の例では、sRGNポリペプチドは、crRNAまたはガイドRNAを切断し、DNA鋳型を遊離させて、相同組換えを可能にするまたは容易にする。
【0185】
さらに別の態様では、細胞におけるDNAを標的化、編集または操作するための方法であって、1つまたは複数のcrRNA分子によって1つまたは複数の特異的DNA標的部位に方向付けられるように、インタクトなまたは部分的にもしくは完全に欠損したsRGNポリペプチドまたはプレcrRNAもしくはcrRNA部分を、転写活性化因子もしくは抑圧因子、またはメチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼもしくはデアセチラーゼ等のエピジェネティックモディファイヤー、またはシグナル伝達もしくは検出分子に連結するステップを含む方法が本明細書に提供され、これらの全態様は、Cas9系に関して以前に記載された。
【0186】
別の態様では、crRNAまたはガイドRNAに連結されたポリヌクレオチドドナー鋳型を含む組成物が本明細書に提供される。細胞におけるDNAを標的化、編集または操作するための方法であって、1つまたは複数のガイドRNAまたはcrRNA分子によって1つまたは複数の特異的DNA標的部位に方向付けられるように、ドナー鋳型が、sRGNポリペプチドによってプレcrRNAまたはcrRNAまたはガイドRNAから切断され、これにより、ドナー鋳型による相同性により導かれる修復を容易にするように、プレcrRNAまたはcrRNAまたはガイドRNAをドナー一本または二本鎖ポリヌクレオチドドナー鋳型に連結するステップを含む方法。
【0187】
sRGNポリペプチドを使用して、他のドメインおよび活性が導入された、キメラ結合タンパク質を形成することもできる。説明として、Foklドメインは、触媒活性があるエンドヌクレアーゼドメインを含有し得るsRGNタンパク質に融合させることができる、またはFoklドメインは、sRGNポリペプチドエンドヌクレアーゼドメインを不活性にするように改変されたsRGNタンパク質に融合させることができる。sRGNポリペプチドとのキメラタンパク質を作製するために融合され得る他のドメインは、転写モジュレーター、エピジェネティックモディファイヤー、タグおよび他の標識または造影剤、ヒストン、および/または遺伝子配列の構造もしくは活性を調節もしくは改変する当技術分野で公知の他のモダリティを含む。
【0188】
核酸および/またはアミノ酸改変
一部の実施形態では、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、さらに本明細書に記載され、当技術分野で公知の通り、例えば、活性、安定性もしくは特異性の増強、送達の変更、宿主細胞における自然免疫応答の低下、タンパク質サイズのさらなる低下、または他の増強のために使用することができる1つまたは複数の改変を含む。
【0189】
ある特定の実施形態では、改変されたポリヌクレオチドは、sRGNに基づくCRISPR-Cas系において使用され、この場合、細胞に導入されるガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするDNAもしくはRNAは、下に記載および説明されている通りに改変することができる。斯かる改変されたポリヌクレオチドをCRISPR-Cas系において使用して、いずれか1つまたは複数のゲノム遺伝子座を編集することができる。
【0190】
CRISPR-Cas系の構成成分
A.ガイドRNA/sgRNA
本発明の態様では、用語「キメラRNA」、「キメラガイドRNA」、「ガイドRNA」、「単一ガイドRNA」および「合成ガイドRNA」は、互換的に使用され、DNA標的化セグメント、tracr配列およびtracrメイト配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。用語「ガイド配列」または「DNA標的化配列」は、標的部位を指定する、ガイドRNA内の約20bp配列を指し、用語「ガイド」または「スペーサー」と互換的に使用することができる。用語「tracrメイト配列」は、用語「ダイレクトリピート」と互換的に使用することもできる。
【0191】
一部の態様では、本発明に係る単一ガイドRNA(sgRNA)は、
i.RNAで構成され、ポリヌクレオチド遺伝子座における標的配列にハイブリダイズすることができる、DNA標的化セグメントまたはDNA標的化配列、
ii.RNAで構成されたtracrメイト配列、および
iii.RNAで構成されたtracr RNA配列
を含み、tracrメイト配列は、tracr配列にハイブリダイズすることができ、(i)、(ii)および(iii)は、5’から3’への方向で配置されている。一部の実施形態では、構成成分(i)、(ii)および(iii)は、単一のキメラRNAに存在する。
【0192】
sgRNA内で、tracrメイト配列およびtracr配列は、適したループ配列によって接続され、ステムループ構造を形成することができる。
【0193】
一般に、tracrメイト配列は、tracr配列と、次のうち1つまたは複数を促進するのに十分な相補性を有するいずれかの配列を含む:(1)対応するtracr配列を含有する細胞におけるtracrメイト配列に隣接するDNA標的化セグメントの切除;および(2)標的配列におけるCRISPR複合体の形成であって、CRISPR複合体が、tracr配列にハイブリダイズされたtracrメイト配列を含む、形成。一般に、相補性の程度は、2配列の短い方の長さに沿った、tracrメイト配列およびtracr配列の最適アラインメントの参照による。最適アラインメントは、いずれか適したアラインメントアルゴリズムによって決定することができ、tracr配列またはtracrメイト配列のいずれかの内の自己相補性等の二次構造をさらに説明することができる。一部の実施形態では、最適にアライメントされた場合の2配列の短い方の30ヌクレオチドの長さに沿ったtracr配列およびtracrメイト配列の間の相補性の程度は、約25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%もしくはそれを超える値またはそれよりも高い。一部の実施形態では、tracr配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50もしくはそれを超える値またはそれよりも多いヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、tracr配列およびtracrメイト配列は、両者の間のハイブリダイゼーションが、ヘアピン等の二次構造を有する転写物を産生するように、単一の転写物内に含有される。本発明のある実施形態では、転写物または転写されたポリヌクレオチド配列は、少なくとも2個またはそれよりも多いヘアピンを有する。
【0194】
一部の実施形態では、転写物は、2、3、4または5個のヘアピンを有する。本発明のさらなる実施形態では、転写物は、多くても5個のヘアピンを有する。ヘアピン構造において、最終の「N」の5’およびループの上流の配列の部分は、tracrメイト配列に対応し、ループの3’の配列の部分は、tracr配列に対応する。DNA標的化セグメント、tracrメイト配列およびtracr配列を含む単一のポリヌクレオチドのさらなる非限定的な例は、次の通りであり(5’から3’に収載)、「N」は、DNA標的化セグメントの塩基を表し、小文字の第1のブロックは、tracrメイト配列を表し、小文字の第2のブロックは、tracr配列を表し、最終ポリT配列は、転写ターミネーターを表す:
【0195】
ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。換言すると、ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)による配列特異的様式で、標的DNAと相互作用する。そのようなものとして、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変動する場合があり、ガイドRNAおよび標的DNAが相互作用するであろう標的DNA内の位置を決定する。ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のいずれか所望の配列にハイブリダイズするように改変することができる(例えば、遺伝子操作により)。
【0196】
DNA標的化セグメントは、10ヌクレオチド~30ヌクレオチドの長さを有することができる。
【0197】
一部の実施形態では、DNA標的化セグメントは、13ヌクレオチド~25ヌクレオチドの長さを有する。
【0198】
一部の実施形態では、DNA標的化セグメントは、15ヌクレオチド~23ヌクレオチドの長さを有する。
【0199】
一部の実施形態では、DNA標的化セグメントは、20~22ヌクレオチド等、18ヌクレオチド~22ヌクレオチドの長さを有する。
【0200】
DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間のパーセント相補性は、20~22ヌクレオチドにわたり、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)となることができる。
【0201】
標的DNAにおける標的配列に相補的なプロトスペーサー配列は、その3’末端におけるsRGNポリペプチドに適したPAM配列に隣接し得る、または斯かるPAM配列は、DNA標的化セグメントの3’部分の一部となることができる。
【0202】
斯かる使用の非限定的な説明目的のためにCRISPR-Cas系を使用して、ガイドRNAの改変を使用して、ガイドRNAおよびsRGN等のCasエンドヌクレアーゼを含むCRISPR-Casゲノム編集複合体の形成または安定性を増強することができる。ガイドRNAの改変は、同様にまたはその代わりに、ゲノムにおける標的配列とゲノム編集複合体との間の相互作用の開始、安定性または反応速度の増強に使用することができ、これは、例えば、オン標的活性の増強に使用することができる。ガイドRNAの改変は、同様にまたはその代わりに、特異性、例えば、他の(オフ標的)部位における効果と比較したオンターゲット部位におけるゲノム編集の相対的比率の増強に使用することができる。
【0203】
改変は、同様にまたはその代わりに、例えば、細胞に存在するリボヌクレアーゼ(RNase)による分解に対するその耐性を増加させ、これにより、細胞におけるその半減期を増加させることにより、ガイドRNAの安定性の増加に使用することができる。エンドヌクレアーゼをコードするRNAと同時に導入されるガイドRNAの半減期の増加は、ガイドRNAおよびコードされるCasエンドヌクレアーゼが細胞において共存する時間の増加に使用することができるため、ガイドRNA半減期を増強する改変は、sRGNポリペプチドを作製するために翻訳されることが必要なRNAにより編集されるべき細胞にsRGNポリペプチド等のCasエンドヌクレアーゼが導入される実施形態において、特に有用となることができる。
【0204】
B.プロトスペーサー隣接モチーフ(PAMまたはPAM配列)
sRGNポリペプチドに適したプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、「ANGG」および「NNGG」を含む。
【0205】
切断の部位は、一般に、PAM配列の上流1もしくは3塩基対内、PAM配列の3塩基対内、またはPAM配列「NNGG」の上流3塩基対内等、PAM配列の上流1~3塩基対内に発生する。他のPAMは当技術分野で公知であり、斯かるPAMを標的化するようにsRGNを操作することができる。
【0206】
C.真核細胞における使用
本発明に係る一実施形態では、本明細書に記載されているsRGN系は、哺乳動物細胞等、真核細胞において使用することができる。一部の実施形態では、細胞は、ヒト胎児細胞ではなく、ヒト胎児細胞に由来もしない。一部の実施形態では、細胞は、ヒト胚細胞ではなく、ヒト胚細胞に由来もしない。一部の実施形態では、本明細書で開示される組成物および方法は、ヒト胎児またはヒト胚の破壊を含まない。一部の実施形態では、対象(または個体、本明細書中の何を使用することになるにせよ)は、ヒト胎児でもヒト胚でもない。
【0207】
本発明の他の特色
改変は、細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を惹起する可能性または程度を低下させるために、同様にまたは代替的に、使用することができる。斯かる応答は、下で説明されるようなおよび当技術分野で説明されているような、低分子干渉RNA(siRNA)を含む、RNA干渉(RNAi)に関して十分に特徴付けられており、RNAの半減期減少および/またはサイトカインもしくは免疫応答に関連する他の因子の惹起を伴う傾向がある。
【0208】
細胞に導入されるsRGNポリペプチドなどのエンドヌクレアーゼをコードするRNAに、1つまたは複数のタイプの改変を加えることもでき、そのような改変には、限定ではないが、RNAの安定性を(例えば、細胞に存在するRNaseによるその分解を減少させることにより)増強する改変、結果として生じる産物(すなわち、エンドヌクレアーゼ)の翻訳を増進する改変、および/または細胞に導入されたRNAが自然免疫応答を惹起する可能性もしくは程度を低下させる改変が含まれる。前述のものおよび他のものなどの改変の組合せを同様に使用することができる。CRISPR-Casの場合、例えば、1つもしくは複数のタイプの改変をガイドRNA(上で例示したものを含む)に加えることができ、および/または1つもしくは複数のタイプの改変を、CASエンドヌクレアーゼをコードするRNA(上で例示したものを含む)に加えることができる。
【0209】
実例として、CRISPR-Cas系において使用されるガイドRNAまたは他のより小さいRNAを、下で例証されるようなおよび当技術分野で説明されているような、いくつかの改変の容易な組み込みを可能する化学的手段によって、容易に合成することができる。化学合成手順は増え続けているが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、これはPAGEなどのゲルの使用を回避する)などの手順による斯かるRNAの精製は、ポリヌクレオチド長がおよそ100ヌクレオチドを超えて有意に増加するとより困難になる傾向がある。より長い長さの化学的に改変されたRNAを作出するために使用される1つの手法は、互いにライゲーションされる2つまたはそれより多くの分子を産生する手法である。sRGNポリペプチドをコードするものなどの、よりいっそう長いRNAは、より容易に酵素的に作出される。酵素的に産生されるRNAにおいて使用するための利用可能な改変のタイプは一般により少ないが、それでも、下でさらに説明されるようにおよび当技術分野で説明されているように、例えば、安定性を増強するために、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低下させるために、および/または他の特質を増強するために、使用することができる改変があり、新しいタイプの改変が定期的に開発され続けている。様々なタイプの改変、特に、より小さい化学合成RNAで頻繁に使用されているものの実例として、改変は、糖の2’位が改変された1つまたは複数のヌクレオチド、一部の実施形態では、2’-O-アルキル、2’-O-アルキル-O-アルキルまたは2’-フルオロ改変ヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、RNA改変は、RNAの3’末端のピリミジン、塩基性残基または逆方向塩基のリボースに対する2’-フルオロ、2’-アミノおよび2’O-メチル改変を含む。斯かる改変は、オリゴヌクレオチドに日常的に組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して2’-デオキシオリゴヌクレオチドより高いTm(すなわち、高い標的結合親和性)を有することが示されている。
【0210】
いくつかのヌクレオチドおよびヌクレオシド改変は、それらが組み込まれるオリゴヌクレオチドを、ネイティブオリゴヌクレオチドよりもヌクレアーゼ消化に対する耐性を高くすることが示されており、これらの改変オリゴヌクレオチドは、未改変オリゴヌクレオチドより長時間にわたって存在し続ける。改変オリゴヌクレオチドの具体的な例としては、改変された骨格、例えば、ホスホロチオエート、リン酸トリエステル、ホスホン酸メチル、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合を含むものが挙げられる。一部のオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド、ヘテロ原子骨格、特に、CH-NH-O-CH、CH、-N(CH)-O-CH(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格としても公知)、CH-O-N(CH)-CH、CH-N(CH)-N(CH)-CHおよびO-N(CH)-CH-CH骨格;アミド骨格[De Mesmaeker et al., Ace. Chem. Res., 28:366-374 (1995)を参照];モルホリノ骨格構造(Summerton and Weller、米国特許第5,034,506号を参照);ペプチド核酸(PNA)骨格(オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格がポリアミド骨格に置き換えられており、ヌクレオチドがポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接もしくは間接的に結合している;Nielsen et al., Science 1991, 254, 1497を参照)を有するものである。リン含有結合は、ホスホロチオエート;キラルホスホロチオエート;ホスホロジチオエート;リン酸トリエステル;アミノアルキルリン酸トリエステル;メチルホスホネート、ならびに3’アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含む他のアルキルホスホネート;ホスフィネート;3’-アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含む、ホスホロアミデート;チオノホスホロアミデート;チオノアルキルホスホネート;チオノアルキルリン酸トリエステル;ならびに通常の3’-5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’結合アナログ;ならびにヌクレオシド単位の隣接対が3’-5’と5’-3’または2’-5’と5’-2’で結合されている、逆の方向性を有するものを含むが、それらに限定されない;米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、および同第5,625,050号を参照されたい。
【0211】
モルホリノに基づくオリゴマー化合物は、Braasch and David Corey, Biochemistry, 41(14): 4503-4510 (2002);Genesis, Volume 30, Issue 3, (2001);Heasman, Dev. Biol., 243:209-214 (2002);Nasevicius et al., Nat. Genet., 26:216-220 (2000);Lacenra eta!., Proc. Nat/. Acad. Sci., 97: 9591-9596 (2000);および1991年7月23日に発行された米国特許第5,034,506号に記載されている。シクロへキシル核酸オリゴヌクレオチド模倣体は、Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 122: 8595-8602 (2000)に記載されている。
【0212】
リン原子を内部に含まない改変オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルの混合型ヌクレオシド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホネートおよびスルホンアミド骨格、アミド骨格を有するもの、ならびに混合N、O、SおよびCH2構成成分部分を有する他のものを含む。米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号、および同第5,677,439号を参照されたく、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0213】
1つまたは複数の置換糖部分、例えば、以下のもののうちの1つを2’位に含むものも、含むことができる:OH、SH、SCH、F、OCN、OCH、OCHO(CH)nCH、O(CH)nNHもしくはO(CHCH(式中、nは、1~10である);C~C10低級アルキル、アルコキシアルコキシ、置換低級アルキル、アルカリル(alkaryl)もしくはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル:SOCH;SOCH;ONO;NO;N;NH;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;挿入剤;オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基および同様の特性を有する他の置換基。一部の実施形態では、改変は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、これは2’-O-(2-メトキシエチル)としても公知)(Martin et al., Helv.Chim.Acta, 1995, 78, 486)を含む。他の改変は、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-プロポキシ(2’-OCH2 CH2CH3)および2’-フルオロ(2’-F)を含む。オリゴヌクレオチドの他の位置、特に、3’末端ヌクレオチドにおける糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位に、同様の改変を加えることもできる。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣体を有することもある。一部の実施形態では、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間結合の両方、すなわち骨格が、新規の基に置き換えられる。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つの斯かるオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物の場合、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、例えばアミノエチルグリシン骨格、に置き換えられる。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合されている。PNA化合物の調製が教示されている代表的な米国特許は、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号および同第5,719,262号を含むが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al, Science, 254: 1497-1500 (1991)に見出すことができる。
【0214】
ガイドRNAは、加えてまたは代わりに、核酸塩基(代わりに「塩基」とも称される)改変または置換も含み得る。本明細書で使用される場合、「無改変」または「天然」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変された核酸塩基は、天然核酸にはまれにしかまたは一時的にしか見られない核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に、5-メチルシトシン(5-メチル-2’デオキシシトシンとも称され、当技術分野では5-Me-Cとも称されることもある)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMCおよびゲンチオビオシル(gentobiosyl)HMC、ならびに合成核酸塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、および2,6-ジアミノプリンを含む。Kornberg, A, DNA Replication, W. H. Freeman & Co., San Francisco, pp75-77 (1980); Gebeyehu et al., Nucl. Acids Res. 15:4513 (1997)。当技術分野で公知の「ユニバーサル」塩基、例えばイノシンも、含むことができる。5-Me-C置換は、核酸の二重鎖安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi, Y. S., in Crooke, S. T. and Lebleu, B., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、塩基置換の実施形態である。
【0215】
改変された核酸塩基は、他の合成および天然核酸塩基、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C);5-ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン;5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニルウラシルおよびシトシン;6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン;5-ウラシル(シュードウラシル);4-チオウラシル;8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他のa-置換アデニンおよびグアニン;5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン;7-メチルグアニン(methylquanine)および7-メチルアデニン;8-アザグアニンおよび8-アザアデニン;7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン;ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンを含む。
【0216】
さらに、核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、'The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering', pages 858-859, Kroschwitz, J.l., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されているもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition', 1991, 30, page 613により開示されているもの、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications', pages 289- 302, Crooke, S.T. and Lebleu, B. ea., CRC Press, 1993により開示されているものを含む。これらの核酸塩基のうちのいくつかは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃増大させることが示されており(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T. and Lebleu, B., eds, 'Antisense Research and Applications', CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、塩基置換の、よりいっそう詳細には2’-O-メトキシエチル糖改変と組み合わせられる場合の、実施形態である。改変された核酸塩基は、米国特許第3,687,808号、ならびに同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,681,941号、同第5,750,692号、同第5,763,588号、同第5,830,653号、同第6,005,096号、および米国特許出願公開第20030158403号に記載されている。
【0217】
所与のオリゴヌクレオチドにおける全ての位置が均一に改変される必要はなく、実際、前述の改変のうち1つより多くが、単一のオリゴヌクレオチドにまたはさらにはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込まれることもある。
【0218】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドなどのエンドヌクレアーゼをコードする、ガイドRNAおよび/またはmRNA(もしくはDNA)は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを増強する1つまたは複数の部分またはコンジュゲートに化学的に連結される。斯かる部分は、コレステロール部分などの脂質部分[Letsinger et al., Proc. Nat/. Acad. Sci. USA, 86: 6553-6556 (1989)];コール酸[Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 4: 1053-1060 (1994)];チオエーテル、例えば、ヘキシル(hexyi)-S-トリチルチオール[Manoharan eta/, Ann. N. Y Acad. Sci., 660: 306-309 (1992)およびManoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 3. 2765-2770 (1993)];チオコレステロール[Oberhauser et al.,Nucl. Acids Res., 20: 533-538 (1992)];脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基[Kabanov et al., FEBS Lett., 259: 327-330 (1990)およびSvinarchuk et al., Biochimie, 75: 49- 54 (1993)];リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート[Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 36:3651-3654 (1995)およびShea et al., Nucl. Acids Res., 18: 3777-3783 (1990)];ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖[Mancharan et al., Nucfeosides & Nucleotides, 14: 969-973 (1995)];アダマンタン酢酸[Manoharan et at., Tetrahedron Lett., 36: 3651-3654 (1995)];パルミチル部分[(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1264: 229-237 (1995)];またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-tオキシコレステロール部分[Crooke et al., J. Pharmacal. Exp. Ther., 277: 923-937 (1996)]を含むが、これらに限定されない。米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、同第5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号および同第5,688,941号も参照されたい。
【0219】
糖および他の部分を使用して、タンパク質、ならびにヌクレオチドを含む複合体、例えばカチオン性ポリソームおよびリポソームを、特定の部位に標的化することができる。例えば、肝細胞に方向づけられた移入は、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)によって媒介され得る;例えば、Hu, et al., Protein Pept Lett. 21(1 0):1025-30 (2014)。当技術分野で公知であり、定期的に開発されている他の系を使用して、本件に使用される生体分子および/またはその複合体を、目的の特定の標的細胞に標的化することができる。
【0220】
これらの標的化部分またはコンジュゲートは、一級または二級ヒドロキシル基などの官能基と共有結合しているコンジュゲート基を含み得る。本発明のコンジュゲート基は、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、およびオリゴマーの薬物動態学的特性を増強する基を含む。典型なコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素が挙げられる。本発明に関して、薬力学的特性を増強する基は、取込みを改善する、分解に対する耐性を増強する、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本発明に関して、薬物動態学的特性を増強する基は、本発明の化合物の取込み、分布、代謝または排泄を改善する基を含む。代表的なコンジュゲート基は、参照により本明細書に組み込まれる、1992年10月23日に出願された国際特許出願番号PCT/US92/09196、および米国特許第6,287,860号に開示されている。コンジュゲート部分は、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分を含むが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,828,979号、同第4,948,882号、同第5,218,105号、同第5,525,465号、同第5,541,313号、同第5,545,730号、同第5,552,538号、同第5,578,717号、同第5,580,731号、同第5,580,731号、同第5,591,584号、同第5,109,124号、同第5,118,802号、同第5,138,045号、同第5,414,077号、同第5,486,603号、同第5,512,439号、同第5,578,718号、同第5,608,046号、同第4,587,044号、同第4,605,735号、同第4,667,025号、同第4,762,779号、同第4,789,737号、同第4,824,941号、同第4,835,263号、同第4,876,335号、同第4,904,582号、同第4,958,013号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,082,830号、同第5,112,963号、同第5,214,136号、同第5,245,022号、同第5,254,469号、同第5,258,506号、同第5,262,536号、同第5,272,250号、同第5,292,873号、同第5,317,098号、同第5,371,241号、同第5,391,723号、同第5,416,203号、同第5,451,463号、同第5,510,475号、同第5,512,667号、同第5,514,785号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,595,726号、同第5,597,696号、同第5,599,923号、同第5,599,928号および同第5,688,941号を参照されたい。
【0221】
化学合成にあまり適しておらず、一般に酵素合成により産生される、より長いポリヌクレオチドを、様々な手段により改変することができる。斯かる改変は、例えば、ある特定のヌクレオチドアナログの導入、分子の5’もしくは3’末端への特定の配列もしくは他の部分の組み込み、および他の改変を含み得る。実例として、sRGNポリペプチドをコードするmRNAは、長さおよそ3kb~3.3kbであり、これをin vitro転写により合成することができる。mRNAに対する改変を適用して、例えば、その翻訳もしくは安定性を増大させることができ(例えば、細胞での分解に対するその耐性を増大させることにより)、または外因性RNAの導入後に現れる自然免疫応答を惹起する、RNA、特に、sRGNをコードするものなどのより長いRNAの傾向を、低減させることができる。
【0222】
非常に多くの斯かる改変、例えば、ポリA尾部、5’キャップアナログ(例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)もしくはm7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))、改変5’もしくは3’非翻訳領域(UTR)、改変塩基(例えば、シュード-UTP、2-チオ-UTP、5-メチルシチジン-5’-三リン酸(5-メチル-CTP)もしくはN6-メチル-ATP)の使用、または5’末端リン酸を除去するためのホスファターゼでの処理が、当技術分野で説明されている。これらおよび他の改変は当技術分野で公知であり、RNAの新しい改変が開発され続けている。
【0223】
改変RNAは、例えば、Trilink Biotech、Axolabs、Bio-Synthesis Inc.、Dharmaconおよび多くの他の会社を含む、供給業者から得ることができる。Trilinkにより説明されているように、例えば、5-メチル-CTPを使用して、ヌクレアーゼ安定性の増大、翻訳の増加、または自然免疫受容体とin vitro転写RNAとの相互作用の低減などの、望ましい特徴を付与することができる。5’-メチルシチジン-5’-三リン酸(5-メチル-CTP)、N6-メチル-ATP、ならびにシュード-UTPおよび2-チオ-UTPは、下で言及するKonmannらおよびWarrenらによる公表文献において例証されているように、培養下およびin vivoで自然免疫刺激を低減させる一方で翻訳を増進することも示されている。
【0224】
in vivoで送達される化学的に改変されたmRNAを使用して治療効果の改善を達成することができることが示されている;例えば、Kormann et al., Nature Biotechnology 29, 154-157 (2011)。斯かる改変を使用して、例えば、RNA分子の安定性を増大させることおよび/またはその免疫原性を低下させることができる。化学的改変、例えば、シュード-U、N6-メチル-A、2-チオ-U、および5-メチル-Cを使用して、ウリジンおよびシチジン残基の4分の1だけを2-チオ-Uおよび5-メチル-Cでそれぞれ置換することで、マウスにおけるmRNAのtoll様受容体(TLR)媒介性認識が著しく減少することになることが判明した。したがって、自然免疫系の活性化を低減させることにより、これらの改変を使用してin vivoでmRNAの安定性および寿命を効果的に増加させることができる;例えば、Konmann et al.、上記。
【0225】
先天的な抗ウイルス応答を回避するように設計された改変を含んでいる合成メッセンジャーRNAの反復投与は、分化したヒト細胞を多能性に再プログラムすることができることも示されている。例えば、Warren, et al., Cell Stem Cell, 7(5):618-30 (2010)を参照されたい。主要な再プログラミングタンパク質として作用する斯かる改変mRNAは、複数のヒト細胞型を再プログラムする有効な手段であり得る。斯かる細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)と称され、5-メチル-CTP、シュード-UTPおよびアンチリバースキャップアナログ(ARCA)を含んでいる酵素的に合成されたRNAを使用して、細胞の抗ウイルス応答を効果的に逃れることができることが判明した;例えば、Warren et al.、上記。当技術分野で説明されているポリヌクレオチドの他の改変は、例えば、ポリA尾部の使用、5’キャップアナログ(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(mCAP))の付加、5’もしくは3’非翻訳領域(UTR)の改変、または5’末端リン酸-を除去するためのホスファターゼによる処理を含み、新しい手法が定期的に開発され続けている。
【0226】
本明細書で使用される改変RNAの作出に適用可能ないくつかの組成物および技法が、低分子干渉RNA(siRNA)を含むRNA干渉(RNAi)の改変に関連して開発されてきた。siRNAは、in vivoでは特定の課題を提示する。なぜなら、mRNA干渉による遺伝子サイレンシングに対するそれらの効果が一般に一時的なものであり、これにより反復投与が必要とされ得るからである。加えて、siRNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であり、哺乳動物細胞は、ウイルス感染の副産物であることが多いdsRNAを検出および中和するように進化した免疫応答を有する。それ故、PKR(dsRNA応答性キナーゼ)などの哺乳動物酵素、および潜在的にdsRNAへの細胞応答を媒介することができるレチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)、ならびに斯かる分子に応答してサイトカインの誘導を誘発することができるToll様受容体(例えば、TLR3、TLR7およびTLR8)がある;例えば、Angart et al., Pharmaceuticals (Basel) 6(4): 440-468 (2013);Kanasty et al., Molecular Therapy 20(3): 513-524 (2012);Burnett et al., Biotechnol J. 6(9):1130-46 (2011);Judge and Maclachlan, Hum Gene Ther 19(2):111-24 (2008)による概説、およびそこに引用されている参考文献。
【0227】
当技術分野で説明されている改変は、RNA安定性を増強するために、自然免疫応答を低減させるために、および/または本明細書に記載されているようなヒト細胞へのポリヌクレオチドの導入に関連して有用であり得る他の恩恵を得るために開発され、適用されてきた;例えば、Whitehead KA et al., Annual Review of Chemical and Biomolecular Engineering, 2:77-96 (2011);Gaglione and Messere, Mini Rev Med Chem, 10(7):578-95 (2010);Chernolovskaya et al, Curr Opin Mol Ther., 12(2):158-67 (2010);Deleavey et al., Curr Protoc Nucleic Acid Chem Chapter 16:Unit 16.3 (2009);Behlke, Oligonucleotides 18(4):305-19 (2008); Fucini et al., Nucleic Acid Ther 22(3): 205-210 (2012);Bremsen et al., Front Genet 3:154 (2012)による概説。
【0228】
前述の通り、改変RNAのいくつかの供給業者があり、これらの多くは、siRNAの有効性を改善するように設計された改変を専門にしている。文献で報告された様々な発見に基づいて、様々な手法が提案されている。例えば、Dharmaconは、硫黄(ホスホロチオエート、PS)での非架橋酸素の置き換えが、Kale, Nature Reviews Drug Discovery 11:125-140 (2012)により報告されたように、siRNAのヌクレアーゼ耐性を改善するために広範に使用されてきたことに注目している。リボースの2’位の改変は、ヌクレオチド間リン酸結合のヌクレアーゼ耐性を改善する一方で二重鎖安定性(Tm)を増大させることが報告されており、これは、免疫活性化からの保護をもたらすことも示されている。適度なPS骨格改変と、良好な耐容性を示した小さい2’置換(2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロ)との組合せは、Soutschek et al. Nature 432:173-178 (2004)により報告されているように、in vivoでの適用のための安定性の高いsiRNAに関連付けられており;2’-O-メチル改変は、Volkov, Oligonucleotides 19:191-202 (2009)により報告されているように、安定性の改善に有効であると報告されている。自然免疫応答の誘導を減少させることに関して、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-ヒドロで特定の配列の改変は、TLR7/TLR8相互作用を減少させるが一般にサイレンシング活性を維持することが報告されている;例えば、Judge et al., Mol. Ther. 13:494-505 (2006);およびCekaite et al., J Mol Biol. 365:90-108 (2007)。2-チオウラシル、シュードウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシルおよびN6-メチルアデノシンなどの、さらなる改変は、TLR3、TLR7およびTLR8により媒介される免疫効果を最小限に抑えることも示されている;例えば、Kariko, K. et al., Immunity 23:165-175 (2005)。
【0229】
当技術分野でも公知であり、市販されているような、いくつかのコンジュゲートを、RNAなどのポリヌクレオチドに、細胞によるそれらの送達および/または取込みを増進することができる本明細書での使用のために、適用することができ、そのようなコンジュゲートには、例えば、コレステロール、トコフェロールおよび葉酸、脂質、ペプチド、ポリマー、リンカーおよびアプタマーが含まれる;例えば、Winkler, Ther Deliv. 4:791-809 (2013)による概説、およびそこに引用されている参考文献。
【0230】
模倣体
核酸は、核酸模倣体となることができる。用語「模倣体」は、ポリヌクレオチドに適用される場合、フラノース環のみまたはフラノース環とヌクレオチド間連結の両方が非フラノース基に置き換えられたポリヌクレオチドを含むことが意図され、フラノース環のみの置換えは、当技術分野では、糖代理であるとも称される。複素環塩基部分または改変された複素環塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリダイゼーションのために維持される。斯かる核酸の1つである、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたポリヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNAにおいて、ポリヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格に置き換えられる。ヌクレオチドは、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的にまたは間接的に結合される。
【0231】
優れたハイブリダイゼーション特性を有することが報告されたポリヌクレオチド模倣体の1つは、ペプチド核酸(PNA)である。PNA化合物における骨格は、2つまたはそれよりも多い連結されたアミノエチルグリシン単位であり、これは、PNAにアミド含有骨格を与える。複素環塩基部分は、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的にまたは間接的に結合される。PNA化合物の調製について記載する代表的な米国特許として、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が挙げられるがこれらに限定されない。
【0232】
研究されてきたポリヌクレオチド模倣体の別のクラスは、モルホリノ環に結合した複素環塩基を有する連結されたモルホリノ単位(モルホリノ核酸)に基づく。モルホリノ核酸においてモルホリノ単量体単位を連結するいくつかの連結基が報告された。連結基のクラスの1つが、非イオン性オリゴマー化合物を生じるように選択された。非イオン性モルホリノに基づくオリゴマー化合物は、細胞タンパク質との間に望まれない相互作用を有する可能性が低い。モルホリノに基づくポリヌクレオチドは、細胞タンパク質との間に望まれない相互作用を形成する可能性が低い、オリゴヌクレオチドの非イオン性模倣物である(Braasch, D. A., and Corey, D. R., Biochemistry, 2002, 41(14), 4503-4510)。モルホリノに基づくポリヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号に開示されている。単量体サブユニットを結合する種々の異なる連結基を有する、ポリヌクレオチドのモルホリノクラス内の種々の化合物が調製された。
【0233】
ポリヌクレオチド模倣体のさらに別のクラスは、シクロヘキセニル核酸(GeNA)と称される。DNA/RNA分子に正常に存在するフラノース環は、シクロヘキセニル(cydohexenyl)環に置き換えられる。GeNA DMT保護ホスホラミダイト単量体は、古典的ホスホラミダイト化学に続くオリゴマー化合物合成のために調製および使用された。完全に改変されたGeNAオリゴマー化合物、およびGeNAにより改変された特異的な位置を有するオリゴヌクレオチドが、調製および研究された(Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8595-8602を参照)。一般に、DNA鎖へのGeNA単量体の取込みは、そのDNA/RNAハイブリッド安定性を増加させる。GeNAオリゴアデニル酸塩は、ネイティブ複合体と同様の安定性を有するRNAおよびDNA相補体と複合体を形成した。天然核酸構造へのGeNA構造の取込みの研究は、容易な立体構造適応を進めることがNMRおよび円二色性によって示された。
【0234】
さらに別の改変は、2’-ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に連結され、これにより2’-C,4’-C-オキシメチレン連結を形成し、これにより二環式糖部分を形成した、ロックド核酸(LNA)を含む。連結は、2’酸素原子および4’炭素原子を架橋するメチレン(-CHz-)基となることができ、式中、nは1または2である(Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4, 455-456)。LNAおよびLNAアナログは、相補的DNAおよびRNAと非常に高い二重鎖熱安定性(T=+3~+10℃)、3’-エキソヌクレアーゼ的分解に対する安定性、および良好な溶解性特性を呈する。LNAを含有する強力で無毒性のアンチセンスオリゴヌクレオチドについて記載された(Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 2000, 97, 5633-5638)。
【0235】
LNA単量体、アデニン、シトシン、グアニン、5-メチル-シトシン、チミンおよびウラシルの合成および調製は、それらのオリゴマー形成、また、核酸認識特性と共に記載されている(Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630)。LNAおよびその調製は、WO98/39352およびWO99/14226にも記載されている。
【0236】
改変された糖部分
核酸は、1つまたは複数の置換された糖部分を含むことができる。適したポリヌクレオチドは、OH;F;O-、S-もしくはN-アルキル;O-、S-もしくはN-アルケニル;O-、S-もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルから選択される糖置換基を含み、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換C~C10アルキルまたはC~C10アルケニルおよびアルキニルとなることができる。O((CH)nO)mCH、O(CHz)nOCH3、O(CHz)nNH、O(CH)CH、O(CH)nONHおよびO(CH)nON((CH)nCHが特に適しており、ここで、nおよびmは、1~約10である。他の適したポリヌクレオチドは、C~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基から選択される糖置換基を含む。適した改変は、-2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOE)としても公知の、2’-メトキシエトキシ2’-O-CH2 CHzOCH3(Martin et al., Hely. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわち、アルコキシアルコキシ基を含む。さらに適した改変は、下文の例に記載されている、2’-DMAOEとしても公知の、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CHz)zON(CH3)z基、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野では、2’-O-ジメチルアミノ-エトキシ-エチルまたは2’-DMAEOEとしても公知)、すなわち、2’-O-CHz-O-CHz-N(CH3)zを含む。
【0237】
他の適した糖置換基は、メトキシ(-O-CH)、アミノプロポキシ(-O-CHCHCHNH)、アリル(-CH-CH=CH)、-O-アリル(-O-CH-CH=CH)およびフルオロ(F)を含む。2’-糖置換基は、アラビノ(上(up))位またはリボ(下(down))位に存在し得る。適した2’-アラビノ改変は、2’-Fである。同様の改変は、オリゴマー化合物における他の位置、特に、3’末端ヌクレオシドまたは2’-5’連結オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位に為すこともできる。オリゴマー化合物は、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分等の糖模倣体を有することもできる。
【0238】
塩基改変および置換
核酸は、核酸塩基(当技術分野では、単純に「塩基」と称される場合もある)改変または置換を含むこともできる。本明細書で使用される場合、「無改変」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変された核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH)ウラシルおよびシトシン、ならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンおよび3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン等、他の合成および天然核酸塩基を含む。さらに改変された核酸塩基は、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3’,2’:4,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン-2-オン)等、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、G-クランプ(clamp)等の三環系ピリミジンを含む。
【0239】
複素環塩基部分は、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジンおよび2-ピリドンに置き換えられた部分を含むこともできる。さらに別の核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されている核酸塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. 1., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されている核酸塩基、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613によって開示されている核酸塩基、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993によって開示されている核酸塩基を含む。これらの核酸塩基のうちある特定は、オリゴマー化合物の結合親和性の増加に有用である。これらは、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃増加させることが示され(Sanghvi et al., eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、例えば、2’-O-メトキシエチル糖改変と組み合わせた場合に、適した塩基置換である。
【0240】
「相補的」は、天然に存在するもしくは天然に存在しない(例えば、上に記載されている通りに改変された)塩基(ヌクレオシド)またはそのアナログを含む2配列の間の、塩基積み重ねおよび特異的水素結合による、対形成のための能力を指す。例えば、核酸のある1つの位置における塩基が、標的の対応する位置における塩基と水素結合することができる場合、塩基は、当該位置において互いに相補的であると考慮される。核酸は、水素結合に肯定的な寄与も否定的な寄与ももたらさない、ユニバーサル塩基または不活性脱塩基スペーサーを含むことができる。塩基対形成は、カノニカルのワトソン・クリック塩基対形成および非ワトソン・クリック塩基対形成(例えば、ゆらぎ塩基対形成およびフーグスティーン塩基対形成)の両方を含むことができる。
【0241】
相補的塩基対形成に関して、アデノシン型塩基(A)は、チミジン型塩基(T)またはウラシル型塩基(U)に相補的であり、シトシン型塩基(C)は、グアノシン型塩基(G)に相補的であり、3-ニトロピロールまたは5-ニトロインドール等のユニバーサル塩基は、いずれかA、C、UまたはTとハイブリダイズすることができ、これと相補的であると考慮されることが理解される。Nichols et al., Nature,
【0242】
1994;369:492-493およびLoakes et al., Nucleic Acids Res., 1994;22:4039-4043。イノシン(I)も、当技術分野で、ユニバーサル塩基であると考慮されており、いずれかA、C、UまたはTに相補的であると考慮される。Watkins and Santalucia, Nucl. Acids Research, 2005; 33 (19): 6258-6267を参照されたい。
【0243】
コンジュゲート
核酸の別の可能な改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを増強する1つまたは複数の部分またはコンジュゲートをポリヌクレオチドへと化学的に連結することが関与する。このような部分またはコンジュゲートは、一級または二級ヒドロキシル基等の官能基へと共有結合により結合されるコンジュゲート基を含むことができる。コンジュゲート基として、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を増強する基、およびオリゴマーの薬物動態学的特性を増強する基が挙げられるがこれらに限定されない。適したコンジュゲート基として、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素が挙げられるがこれらに限定されない。薬力学的特性を増強する基は、取込みを改善する、分解に対する耐性を増強する、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。薬物動態学的特性を増強する基は、核酸の取込み、分布、代謝または排泄を改善する基を含む。
【0244】
コンジュゲート部分として、コレステロール部分等の脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994,4, 1053-1060)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール(dodecandiol)もしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 36513654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacal. Exp. Ther., 1996,277, 923-937)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0245】
コンジュゲートは、脂質二重層、ミセル、細胞膜、オルガネラ膜または小胞膜の横断を容易にするポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物または有機もしくは無機化合物を指すことができる、「タンパク質形質導入ドメイン」またはPTD(CPP-細胞膜透過ペプチドとしても公知)を含むことができる。小型極性分子から大きい巨大分子および/またはナノ粒子に及び得る、別の分子に結合したPTDは、例えば、細胞外空間から細胞内空間へと、またはサイトゾルからオルガネラ内へと、分子が膜を横断することを容易にする。一部の実施形態では、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば、sRGNポリペプチド)のアミノ末端に共有結合により連結される。一部の実施形態では、PTDは、外因性ポリペプチド(例えば、sRGNポリペプチド)のC末端またはN末端に共有結合により連結される。一部の実施形態では、PTDは、核酸(例えば、ガイドRNA、ガイドRNAをコードする核酸、sRGNポリペプチドをコードする核酸等)に共有結合により連結される。例示的なPTDとして、最小ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(例えば、YGRKKRRQRRR(配列番号126)モチーフ(同定のためであって、本願内の開示を目的とするものではない)を含むHIV-1 TATの残基47~57に対応);細胞への進入を方向付けるのに十分ないくつかのアルギニンを含むポリアルギニン配列(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10または10~50個のアルギニン);VP22ドメイン(Zender et al. (2002) Cancer Gene Ther. 9(6):489-96);ショウジョウバエアンテナペディアタンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al. (2003) Diabetes 52(7):1732-1737);トランケートされたヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al. (2004) Pharm. Research 21:1248-1256);ポリリシン(Wender et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA97:13003-13008)が挙げられるがこれらに限定されない;一部の実施形態では、PTDは、活性化可能なCPP(ACPP)である(Aguilera et al. (2009) Integr Biol (Camb) June; 1(5-6): 371-381)。ACPPは、マッチするポリアニオン(例えば、Glu9または「E9」)に切断可能なリンカーを介して接続されたポリカチオン性CPP(例えば、Arg9または「R9」)を含み、この構成は、正味電荷をほとんどゼロに低下させ、これにより、接着および細胞への取込みを阻害する。リンカーの切断後に、ポリアニオンが放出され、ポリアルギニンおよびその固有の接着性を局所的にアンマスクし、これにより、膜を横断するようにACPPを「活性化」する。一部の実施形態では、PTDは、PTDのバイオアベイラビリティを増加させるために化学的に改変される。例示的な改変は、Expert Opin Drug Deliv. 2009 6(11):1195-205に開示されている。
【0246】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードする核酸
本開示は、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、ガイドRNAコード核酸は、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターである。
【0247】
一部の実施形態では、方法は、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の核酸を、標的DNAと接触させるステップまたは細胞(または細胞の集団)に導入するステップが関与する。一部の実施形態では、標的DNAを含む細胞は、in vitroにある。一部の実施形態では、標的DNAを含む細胞は、in vivoにある。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適した核酸は、発現ベクターを含み、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、「組換え発現ベクター」である。
【0248】
一部の実施形態では、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物、組換えレトロウイルス構築物等である。[00248]適した発現ベクターとして、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994;Borras et al., Gene Ther 6:515 524, 1999;Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995;Sakamoto et al., H Gene Ther 5:1088 1097, 1999;WO94/12649、WO93/03769;WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene Ther 9:81 86, 1998、Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997;Bennett et al., Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997;Jomary et al., Gene Ther4:683 690, 1997、Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999;Ali et al., Hum Mol Genet 5:591 594, 1996;Srivastava、WO93/09239、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822-3828;Mendelson et al., Viral. (1988) 166:154-165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613-10617);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997;Takahashi et al., J Viral 73:7812 7816, 1999)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳房腫瘍ウイルス等のレトロウイルスに由来するベクター);およびその他が挙げられるがこれらに限定されない。
【0249】
多数の適した発現ベクターが当業者にとって公知であり、その多くが市販されている。次のベクターを例として提示する;真核生物宿主細胞のために:pXT1、pSGS(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLSV40(Phanmacia)。しかし、宿主細胞と適合性である限り、他のいずれかのベクターを使用してもよい。利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含む、いくつかの適した転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクターにおいて使用することができる(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544)。
【0250】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーター等の転写制御エレメントに作動可能に連結される。転写制御エレメントは、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞;または原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的となることができる。一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核および真核細胞の両方におけるガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御エレメントに作動可能に連結される。
【0251】
適した真核生物プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の非限定的な例として、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列(LTR)、ならびにマウスメタロチオネイン-1由来のプロモーターが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者の技能水準内にある。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターを含有することもできる。発現ベクターは、発現の増幅に適切な配列を含むこともできる。発現ベクターは、sRGNポリペプチドに融合され、これによりキメラポリペプチドをもたらす、タンパク質タグ(例えば、6×Hisタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質等)をコードするヌクレオチド配列を含むこともできる。
【0252】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。
【0253】
核酸を宿主細胞に導入する方法は、当技術分野で公知であり、斯かる方法を使用して、核酸(例えば、発現構築物)を細胞に導入することができる。適した方法は、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達(例えば、Panyam et al., Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pii: S0169-409X(12)00283-9.doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023)およびその他を含む。
【0254】
キメラポリペプチド
本開示は、sRGNポリペプチドに由来する配列を含むキメラ部位指向型(site-directed)改変ポリペプチドを提供する。キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、ガイドRNA(上に記載されている)と相互作用する(例えば、これに結合する)。ガイドRNAは、標的DNA内の標的配列(例えば、染色体配列または染色体外配列、例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列、無細胞ポリヌクレオチド等)へと、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをガイドする。キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、標的DNA(例えば、標的DNAの切断またはメチル化)および/または標的DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストンテイルのメチル化またはアセチル化)を改変する。キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、本明細書において、「キメラ部位指向型ポリペプチド」または「キメラRNA結合部位指向型改変ポリペプチド」とも称される。
【0255】
キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、2種の部分、RNA結合部分および活性部分を含む。キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、少なくとも2種の異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、改変されたおよび/または天然に存在するポリペプチド配列を含むことができる(例えば、改変されたまたは無改変のsRGNタンパク質由来の第1のアミノ酸配列;およびsRGNタンパク質以外の第2のアミノ酸配列)。
【0256】
RNA結合部分
一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドのRNA結合部分は、配列番号1~12のいずれか1つに表記されているポリペプチドのRNA結合部分に対し少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0257】
活性部分
RNA結合部分に加えて、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、「活性部分」を含む。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、部位指向型改変ポリペプチド(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはsRGN)の活性部分を含む。他の実施形態では、対象キメラ部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、部位指向型改変ポリペプチドの天然に存在する活性部分の改変されたアミノ酸配列(例えば、置換、欠失、挿入)を含む。目的の天然に存在する活性部分は、当技術分野で公知の部位指向型改変ポリペプチドに由来する。キメラ部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、可変的であり、本明細書に開示されている方法において有用となり得る、いずれかの異種ポリペプチド配列を含むことができる。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、配列番号1~12のいずれか1つの活性部分と少なくとも90%同一であるsRGNポリペプチドの部分を含む。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、(i)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分であって、ガイドRNAが、標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、RNA結合部分;(ii)部位指向型酵素活性(例えば、RNA切断のための活性)を示す活性部分であって、酵素活性の部位が、プレcrRNAのリピートによって形成されたパリンドロームヘアピン構造によって決定され、ヘアピンの4nt上流でプレcrRNAを切断し、リピートスペーサー(5’-3’)で構成されるcrRNAの中間体形態を作製する、活性部分;および(iii)部位指向型酵素活性(例えば、DNA切断のための活性)を示す活性部分であって、酵素活性の部位が、ガイドRNAによって決定される、活性部分を含む。
【0258】
例示的なキメラ部位指向型改変ポリペプチド
一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、sRGNオルソログのいずれかの改変形態を含む、sRGNタンパク質の改変形態を含む。一部の実例では、sRGNタンパク質の改変形態は、sRGNタンパク質の天然に存在するヌクレアーゼ活性を低下または増加させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入または置換)を含む。例えば、一部の実例では、sRGNタンパク質の改変形態は、対応する野生型sRGNポリペプチドのヌクレアーゼ活性の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満を有する。一部の事例では、sRGNポリペプチドの改変形態は、実質的なヌクレアーゼ活性がない。他の事例では、sRGNポリペプチドの改変形態は、50%、2倍、4倍または最大で10倍超大きいヌクレアーゼ活性を有することができる。
【0259】
一部の事例では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つに対し少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、部位指向型改変ポリペプチドの活性部分は、DNA改変活性および/または転写因子活性および/またはDNA関連ポリペプチド改変活性を有する異種ポリペプチドを含む。一部の事例では、異種ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性をもたらすsRGNポリペプチドの部分を置き換える。他の実施形態では、部位指向型改変ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性を正常にもたらすsRGNポリペプチドの部分(また、当該部分は、完全に活性となり得る、またはその代わりに、対応する野生型活性の100%未満を有するように改変され得る)、および異種ポリペプチドの両方を含む。換言すると、一部の事例では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性を正常にもたらすsRGNポリペプチドの部分、および異種ポリペプチドの両方を含む融合ポリペプチドである。他の事例では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、sRGNポリペプチドの活性部分の改変された変異体(例えば、アミノ酸変化、欠失、挿入)、および異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。さらに他の事例では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドは、異種ポリペプチド、および天然に存在するまたは改変された部位指向型改変ポリペプチドのRNA結合部分を含む融合ポリペプチドである。
【0260】
例えば、キメラsRGNタンパク質において、天然に存在する(または改変された、例えば、突然変異、欠失、挿入)sRGNポリペプチドは、異種ポリペプチド配列(すなわち、sRGN以外のタンパク質由来のポリペプチド配列、または別の生物由来のポリペプチド配列)に融合することができる。異種ポリペプチド配列は、活性(例えば、酵素活性)を示すことができ、これは、キメラsRGNタンパク質によっても示されるであろう(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性等)。異種核酸配列を別の核酸配列に連結して(例えば、遺伝子操作により)、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を作製することができる。一部の実施形態では、キメラsRGNポリペプチドは、sRGNポリペプチド(例えば、野生型sRGNまたはsRGN変異体、例えば、低下もしくは不活性化されたヌクレアーゼ活性を有するsRGN)を、細胞下局在化をもたらす異種配列(例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するための葉緑体局在化シグナル:ER保留シグナル;およびその他)と融合することにより作製される。一部の実施形態では、異種配列は、追跡または精製し易くするためのタグ(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoおよびその他;HISタグ、例えば、6×Hisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;およびその他)を提供することができる。一部の実施形態では、異種配列は、増加または減少された安定性を提供することができる。一部の実施形態では、異種配列は、結合ドメイン(例えば、別の目的のタンパク質(例えば、DNAまたはヒストン改変タンパク質、転写因子または転写抑圧因子、リクルートタンパク質等)または目的のヌクレオチド(例えば、アプタマーまたはヌクレオチド結合タンパク質の標的部位)に結合するキメラsRGNポリペプチドの能力をもたらすための)を提供することができる。
【0261】
キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードする核酸
本開示は、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターである。
【0262】
一部の実施形態では、方法は、キメラ部位指向型改変ポリペプチドを含む1つまたは複数の核酸を、標的DNAと接触させるステップまたは細胞(または細胞の集団)に導入するステップが関与する。キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適した核酸は、発現ベクターを含み、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、「組換え発現ベクター」である。
【0263】
一部の実施形態では、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物等である。適した発現ベクターとして、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994;Borras et al., Gene Ther 6:515 524, 1999;Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995;Sakamoto et al., H Gene Ther 5:1088 1097, 1999;WO94/12649、WO93/03769:WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene Ther 9:81 86, 1998、Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997;Bennett et al., Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997;Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997、Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999;Ali et al., Hum Mol Genet 5:591 594, 1996;Srivastava、WO93/09239、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822-3828;Mendelson et al., Viral. (1988) 166:154-165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613-10617);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et a1., PNAS 94:10319 23, 1997;Takahashi et al., J Virol73:7812 7816, 1999)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳房腫瘍ウイルス等のレトロウイルスに由来するベクター);およびその他が挙げられるがこれらに限定されない。
【0264】
多数の適した発現ベクターが当業者にとって公知であり、その多くが市販されている。次のベクターを例として提示する;真核生物宿主細胞のために:pXT1、pSGS(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、宿主細胞と適合性である限り、他のいずれかのベクターを使用してもよい。
【0265】
利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含む、いくつかの適した転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクターにおいて使用することができる(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。
【0266】
一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーター等の転写制御エレメントに作動可能に連結される。転写制御エレメントは、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞;または原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的となることができる。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核および真核細胞の両方におけるキメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御エレメントに作動可能に連結される。
【0267】
適した真核生物プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の非限定的な例は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列(LTR)、ならびにマウスメタロチオネイン-1由来のプロモーターを含む。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者の技能水準内にある。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターを含有することもできる。発現ベクターは、発現の増幅に適切な配列を含むこともできる。発現ベクターは、キメラ部位指向型改変ポリペプチドに融合されたタンパク質タグ(例えば、6×Hisタグ、ヘマグルチニン(HA)タグ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)等)をコードするヌクレオチド配列を含むこともできる。
【0268】
一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等)に作動可能に連結される。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、空間的に制限および/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)に作動可能に連結される。一部の実施形態では、キメラ部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。
【0269】
核酸を宿主細胞に導入する方法は、当技術分野で公知であり、いずれか公知の方法を使用して、核酸(例えば、発現構築物)を幹細胞または前駆細胞に導入することができる。適した方法は、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pp: 50169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023)およびその他を含む。
【0270】
方法
本開示は、標的DNAおよび/または標的DNA関連ポリペプチドを改変するための方法を提供する。一般に、方法は、標的DNAを複合体(「標的化複合体」)と接触させるステップが関与し、この複合体は、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドを含む。
【0271】
上に記す通り、gRNAまたはsgRNAおよびsRGNポリペプチドは、複合体を形成する。ガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を含むことにより、複合体に標的特異性を提供する。複合体のsRGNポリペプチドは、部位特異的活性を提供する。一部の実施形態では、複合体は、標的DNAを改変し、例えば、DNA切断、DNAメチル化、DNA損傷、DNA修復等をもたらす。他の実施形態では、複合体は、標的DNAに関連する標的ポリペプチド(例えば、ヒストン、DNA結合タンパク質等)を改変し、例えば、ヒストンメチル化、ヒストンアセチル化、ヒストンユビキチン化およびその他をもたらす。標的DNAは、例えば、in vitroにおけるネイキッド(すなわち、DNA関連タンパク質に結合されていない)DNA、in vitroの細胞における染色体DNA、in vivoの細胞における染色体DNA等となることができる。
【0272】
様々な種由来のsRGNタンパク質は、標的DNAにおける異なるPAM配列を要求することができる。よって、最適な特定のsRGNタンパク質のために、PAM配列要件は、上に記載されているPAM配列とは異なる場合がある。
【0273】
次のものを含むsRGNオルソログの特徴を活用する、例示的な方法が提供される。
【0274】
ヌクレアーゼ活性は、標的DNAを切断して、二本鎖切断を産生する。次に、このような切断は、2種の仕方:非相同末端結合および相同性により導かれる修復のうち一方において細胞によって修復される。非相同末端結合(NHEJ)において、二本鎖切断は、互いに対する切断末端の直接的ライゲーションによって修復される。このプロセスにおいて、切断部位において数塩基対を挿入または欠失させることができる。相同性により導かれる修復において、切断された標的DNA配列に対し相同性を有するドナーポリヌクレオチドが、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用され、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の移入をもたらす。そのようなものとして、部位に新たな核酸材料を挿入/コピーすることができる。一部の事例では、標的DNAは、ドナーポリヌクレオチドと接触される。一部の事例では、ドナーポリヌクレオチドは、細胞に導入される。NHEJおよび/または相同性により導かれる修復による標的DNAの改変は、例えば、遺伝子矯正、遺伝子置換え、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入、遺伝子破壊、遺伝子突然変異、配列置換え等をもたらす。したがって、標的DNA配列を切断し、細胞に、外因的に提供されたドナーポリヌクレオチドの非存在下で配列を修復させることにより、sRGNポリペプチドによるDNAの切断を使用して、標的DNA配列から核酸材料を欠失させることができる(例えば、細胞を感染に対し感受性にする遺伝子を破壊するために(例えば、T細胞をHIV感染に対し感受性にするCCRSまたはCXCR4遺伝子)、ニューロンにおける疾患を引き起こすトリヌクレオチドリピート配列を除去するために、研究における疾患モデルとして遺伝子ノックアウトおよび突然変異を創出するために、等)。よって、本方法を使用して、遺伝子をノックアウトすることができる(転写の完全な欠如または変更された転写をもたらす)、または標的DNAにおける最適な遺伝子座に遺伝的材料をノックインすることができる。
【0275】
その代わりに、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドが、標的DNA配列に対し相同性を有する少なくともセグメントを含むドナーポリヌクレオチド配列と共に、細胞に同時投与される場合、対象方法を使用して、標的DNA配列に核酸材料を付加、すなわち、挿入または置き換えることができる(例えば、タンパク質、siRNA、miRNA等をコードする核酸を「ノックイン」する)、タグ(例えば、6×His、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)、ヘマグルチニン(HA)、FLAG等)を付加することができる、遺伝子に調節配列を付加することができる(例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、配列内リボソーム進入配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、停止コドン、スプライスシグナル、局在化シグナル等)、核酸配列を改変する(例えば、突然変異を導入する)ことができる、およびその他ができる。そのようなものとして、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドを含む複合体は、例えば、疾患を処置するための、または抗ウイルス、抗病原性もしくは抗がん療法としての遺伝子療法、農業における遺伝子改変された生物の産生、治療、診断または研究目的での細胞によるタンパク質の大規模産生、iPS細胞の誘導、生物学的研究、欠失または置換えのための病原体の遺伝子の標的化等において例えば使用されるように、部位特異的な、すなわち「標的化された」仕方でDNAを改変することが望ましい、いずれかのin vitroまたはin vivo適用、例えば遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺伝子編集、遺伝子タグ付け、配列置換え等において有用である。
【0276】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、sRGNタンパク質の改変形態を含む。一部の実例では、sRGNタンパク質の改変形態は、sRGNタンパク質の天然に存在するヌクレアーゼ活性を低下させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入または置換)を含む。例えば、一部の実例では、sRGNタンパク質の改変形態は、対応する野生型sRGNポリペプチドのヌクレアーゼ活性の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満を有する。一部の事例では、sRGNポリペプチドの改変形態は、実質的なヌクレアーゼ活性がない。sRGNポリペプチドが、実質的なヌクレアーゼ活性がないsRGNタンパク質の改変形態である場合、「dsRGN」と称することができる。
【0277】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、異種配列を含む(例えば、融合)。一部の実施形態では、異種配列は、sRGNポリペプチドの細胞下局在化を提供することができる(例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するための葉緑体局在化シグナル;ER保留シグナル;およびその他)。一部の実施形態では、異種配列は、追跡または精製し易くするためのタグ(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoおよびその他;hisタグ、例えば、6×Hisタグ;ヘマグルチニン(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;およびその他)を提供することができる。一部の実施形態では、異種配列は、増加または減少した安定性を提供することができる。
【0278】
ある特定の実施形態では、ガイドRNA、および/またはsRGNポリペプチドもしくはそのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を含むDNAもしくはRNAを、下で説明および例証されるように改変することができる、本明細書に記載されているCRISPR-sRGN系において、改変ポリヌクレオチドが使用される。斯かる改変ポリヌクレオチドをCRISPR-sRGN系において使用して、例えば、任意の1つまたは複数のゲノム遺伝子座を編集することができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドの斯かる改変は、コドン最適化、例えば、コードされているポリペプチドが発現されることになる特定の宿主細胞に基づくコドン最適化によって、達成される。本開示の任意のヌクレオチド配列および/または組換え核酸を、目的の任意の種における発現のためにコドン最適化することができることは、当業者には理解されるであろう。コドン最適化は、当技術分野で周知であり、種特異的コドン使用頻度表を使用するコドン使用頻度の偏りのためのヌクレオチド配列の改変を含む。コドン使用頻度表は、目的の種について最も高度に発現される遺伝子の配列解析に基づいて作成される。非限定的な例では、ヌクレオチド配列が宿主細胞において翻訳されることになったとき、目的の種について高度に発現される核遺伝子の配列解析に基づいてコドン使用頻度表が作成される。ヌクレオチド配列の改変は、種特異的コドン使用頻度表とネイティブポリヌクレオチド配列中に存在するコドンとを比較することにより決定される。例えば、意図される標的細胞がヒト細胞である場合、sRGN(またはsRGNバリアント、例えば、酵素的に不活性なバリアント)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチド配列が適するであろう。別の非限定的な例として、意図される宿主細胞がマウス細胞である場合には、sRGN(またはsRGNバリアント、例えば、酵素的に不活性なバリアント)をコードするマウスコドン最適化ポリヌクレオチド配列が適するであろう。
【0279】
コドン最適化のための戦略および方法論は、当技術分野で公知であり、酵母(Outchkourov et al., Protein Expr Purif, 24(1):18-24 (2002))およびE.coli(Feng et al., Biochemistry, 39(50):15399-15409 (2000))を含むがこれらに限定されない様々な系について記載されている。一部の実施形態では、コドン最適化は、GeneGPS(登録商標)Expression Optimization Technology(ATUM)を使用することおよび製造業者の推奨発現最適化アルゴリズムを使用することにより行われる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現増加のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、E.coli細胞における発現増加のためコドン最適化されている。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、昆虫細胞における発現増加のためコドン最適化されている。一部の実施形態では、コドン最適化手順において使用される発現最適化アルゴリズムは、推定的ポリAシグナル(例えば、AATAAAおよびATTAAA)を回避するように、およびポリメラーゼスリッページにつながり得るAの長い(4を超える)ストレッチを回避するように、定義される。ポリアデニル化シグナルが、意図される宿主における発現を最適化するために選択されることもある。ポリアデニル化シグナルが、意図される宿主における発現を最適化するために選択されることもある。
【0280】
当技術分野で十分に理解されているように、ヌクレオチド配列のコドン最適化によって、ネイティブヌクレオチド配列に対して100%未満の同一性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%未満)を有するヌクレオチド配列であって、しかしそれでもなお、元のネイティブヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと同じ機能を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が得られる。したがって、本開示の代表的実施形態では、本開示のヌクレオチド配列および/または組換え核酸を、目的の特定の種における発現のためにコドン最適化することができる。
【0281】
一部の実施形態では、sRGNをコードするコドン最適化されたポリヌクレオチド配列は、配列番号15、18、20、22および27のいずれか1つに対して少なくとも90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.8%、99.9%、または100%配列同一性を有する。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、標的細胞におけるコードされたsRGNポリペプチドの発現増加のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現増加のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、E.coli細胞における発現増加のためコドン最適化されている。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、昆虫細胞における発現増加のためコドン最適化されている。
【0282】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、コドン最適化することができる。この種類の最適化は、当技術分野で公知であり、同じタンパク質をコードしたまま、意図される宿主生物または細胞のコドン優先度を模倣する外来起源のDNAの突然変異を伴う。よって、コドンは変化されるが、コードされるタンパク質は、未変化のままである。例えば、意図される標的細胞がヒト細胞である場合、ヒトにコドン最適化されたsRGN(または変異体、例えば、酵素的に不活性な変異体)が適するであろう。いずれか適したsRGNポリペプチド(例えば、配列番号1~12のいずれか1つに表記されている配列等、いずれかのsRGN)をコドン最適化することができる。別の非限定的な例として、意図される宿主細胞がマウス細胞である場合、マウスにコドン最適化されたsRGN(または変異体、例えば、酵素的に不活性な変異体)が適するであろう。
【0283】
一態様では、sRGNポリペプチド(例えば、配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド)または配列番号1~12のいずれか1つに対し少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有するその変異体をコードするコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書に提供される。sRGNまたはその変異体をコードする斯かるコドン最適化された核酸は、本明細書において、「コドン最適化されたsRGNポリペプチド」または「コドン最適化されたsRGN」とも称される。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、配列番号1~12のいずれか1つのsRGNポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、細菌細胞等の原核細胞における発現のためにコドン最適化される。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、昆虫または哺乳動物細胞等の真核細胞における発現のためにコドン最適化される。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。一部の実施形態では、コドン最適化は、GeneGPS(登録商標)最適化(ATUM)に従って行われる。一部の実施形態では、コドン最適化は、GeneOptimizerプロセス(ThermoFisher Scientific)に従って行われる。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つに対し少なくとも約90%(少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかまたはそれよりも多い等)配列同一性を有する。一部の実施形態では、コドン最適化されたsRGNは、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つの配列を含む(またはこれからなる)。
【0284】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドまたはその変異体をコードするコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む本明細書に記載されている核酸のいずれかに従って、核酸は、gRNAをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、核酸は、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターである。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドまたはその変異体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列、または配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列に対し少なくとも90%配列同一性を有するその変異体を含む。
【0285】
一部の実施形態では、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つに対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、本明細書に記載されているsRGNポリペプチドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書に提供される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む(またはこれからなる)。
【0286】
一部の実施形態では、配列番号15、18、20、22および27のいずれか1つの部分配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、ポリヌクレオチド配列が1つまたは複数の機能的sRGNドメインをコードする、核酸が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つの部分配列を含む(またはこれからなる)。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、ヌクレアーゼドメイン(例えば、HNHまたはRuvCドメイン)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、RNA結合ドメイン(例えば、Rec Iドメイン)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のsRGNドメインは、PAM相互作用ドメインを含む。
【0287】
一部の実施形態では、コドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む本明細書に記載されている核酸のいずれかに従って、核酸からのsRGNポリペプチドまたはその変異体の宿主細胞における発現は、コドン最適化されたポリヌクレオチド配列が由来する参照ポリヌクレオチド配列を含む対応する核酸からのsRGNポリペプチドまたはその変異体の宿主細胞における発現と比較して増加される。一部の実施形態では、コドン最適化されたポリヌクレオチド配列は、配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列、または配列番号15、18,20、22および27のいずれか1つのコドン最適化されたポリヌクレオチド配列に対し少なくとも90%配列同一性を有するその変異体を含む。一部の実施形態では、参照ポリヌクレオチド配列は、配列番号13、14,16、17、19、21、23~26、28および29のいずれか1つ由来のsRGNコードポリヌクレオチド配列、または配列番号13、14,16、17、19、21、23~26、28および29のいずれか1つ由来のsRGNコードポリヌクレオチド配列に対し少なくとも90%配列同一性を有するその変異体を含む。一部の実施形態では、宿主細胞におけるコドン最適化されたポリヌクレオチド配列からのsRGNポリペプチドまたはその変異体の発現は、参照ポリヌクレオチド配列からのsRGNポリペプチドまたはその変異体の宿主細胞における発現と比較して、少なくとも約10%(少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%のいずれかまたはそれよりも多い等)増加される。
【0288】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドは、細菌細胞における遺伝子発現を停止するための誘導性の系として使用される。一部の事例では、適切なガイドRNAおよび/または適切なsRGNポリペプチドをコードする核酸は、標的細胞の染色体に取り込まれ、誘導性プロモーターの制御下にある。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドが誘導されると、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドの両方が存在し複合体を形成する場合、標的DNAは、目的の位置(例えば、別々のプラスミドにおける標的遺伝子)において切断される(そうでなければ改変される)。そのようなものとして、一部の事例では、細菌発現系統は、細菌ゲノムにおいて適切なsRGNポリペプチドを、および/またはプラスミドにおいて(例えば、誘導性プロモーターの制御下における)適切なガイドRNAをコードする核酸配列を含むように操作され、いずれかの標的化された遺伝子の発現(系統に導入された別々のプラスミドから発現される)が、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドの発現を誘導することにより制御され得る、実験を可能にする。一部の事例では、sRGNポリペプチドは、二本鎖切断導入以外の仕方で標的DNAを改変する酵素活性を有する。標的DNAの改変に使用され得る(例えば、酵素活性を有する異種ポリペプチドをsRGNポリペプチドに融合し、これにより、キメラsRGNポリペプチドを作製することによる)目的の酵素活性として、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性またはグリコシラーゼ活性が挙げられるがこれらに限定されない。メチル化および脱メチル化は、エピジェネティック遺伝子調節の重要な機序として当技術分野で認識されている一方、DNA損傷および修復活性は、細胞生存および環境ストレスに応答した適正なゲノム維持に必須である。そのようなものとして、本明細書における方法は、標的DNAのエピジェネティック改変における用途を見出し、ガイドRNAのDNA標的化セグメントに所望の相補的核酸配列を遺伝子操作することにより、標的DNAにおけるいずれかの位置における標的DNAのエピジェネティック改変の制御に用いることができる。本明細書における方法は、また、標的DNA内のいずれか所望の位置におけるDNAの意図的かつ制御された損傷における用途を見出す。本明細書における方法は、また、標的DNA内のいずれか所望の位置におけるDNAの配列特異的かつ制御された修復における用途を見出す。標的DNAにおける特異的位置にDNA改変酵素活性を標的化する方法は、研究および臨床適用の両方における用途を見出す。
【0289】
一部の事例では、sRGNポリペプチドは、標的DNAの転写を調節する活性を有する(例えば、キメラsRGNポリペプチドの場合等)。一部の事例では、転写を増加または減少させる能力を示す異種ポリペプチド(例えば、転写活性化因子または転写抑圧因子ポリペプチド)を含むキメラsRGNポリペプチドは、ガイドRNAのDNA標的化セグメントによってガイドされる、標的DNAにおける特異的位置における標的DNAの転写の増加または減少に使用される。転写調節活性を有するキメラsRGNポリペプチドを提供するための供給源ポリペプチドの例として、光誘導性転写調節因子、小分子/薬物応答性転写調節因子、転写因子、転写抑圧因子等が挙げられるがこれらに限定されない。一部の事例では、本方法は、標的化されたコードRNA(タンパク質コード遺伝子)および/または標的化された非コードRNA(例えば、tRNA、rRNA、snoRNA、siRNA、miRNA、長いncRNA等)の発現の制御に使用される。一部の事例では、sRGNポリペプチドは、DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性を有する。一部の実施形態では、酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性(すなわち、ユビキチン化活性)、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、脱ミリストイル化活性、グリコシル化活性(例えば、GlcNAcトランスフェラーゼ由来の)または脱グリコシル化活性である。本明細書に収載されている酵素活性は、タンパク質に対する共有結合改変を触媒する。斯かる改変は、標的タンパク質の安定性または活性を変更することが当技術分野で公知である(例えば、キナーゼ活性によるリン酸化は、標的タンパク質に応じてタンパク質活性を刺激またはサイレンシングすることができる)。ヒストンがタンパク質標的として特に興味深い。ヒストンタンパク質は、DNAに結合し、ヌクレオソームとして公知の複合体を形成することが当技術分野で公知である。ヒストンは、周囲のDNAに構造変化を誘発し、これにより、転写因子、ポリメラーゼおよびその他等の相互作用因子へのDNAの潜在的に大きい部分の到達性を制御するように改変することができる(例えば、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、リン酸化による)。単一のヒストンは、多くの異なる仕方で、多くの異なる組合せにおいて改変することができる(例えば、ヒストン3のリシン27のトリメチル化、H3K27は、抑圧された転写のDNA領域に関連する一方、ヒストン3のリシン4のトリメチル化、H3K4は、活性な転写のDNA領域に関連する)。よって、ヒストン改変活性を有する部位指向型改変ポリペプチドは、DNA構造の部位特異的制御における用途を見出し、標的DNAの選択された領域におけるヒストン改変パターンの変更に使用することができる。斯かる方法は、研究および臨床適用の両方における用途を見出す。
【0290】
一部の実施形態では、複数のガイドRNAは、同時に使用されて、同じ標的DNAまたは異なる標的DNAにおける異なる位置を同時に改変する。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多いガイドRNAは、同じ遺伝子または転写物または遺伝子座を標的とする。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多いガイドRNAは、異なる無関係の遺伝子座を標的とする。一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多いガイドRNAは、異なるが関係する遺伝子座を標的とする。
【0291】
一部の事例では、sRGNポリペプチドは、タンパク質として直接的に提供される。非限定的な一例として、真菌(例えば、酵母)は、スフェロプラスト形質転換を使用して、外因性タンパク質および/または核酸により形質転換することができる(両者共にそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kawai et al., Bioeng Bugs. 2010 Nov- Dec;1(6):395-403 : 'Transformation of Saccharomyces cerevisiae and other fungi: methods and possible underlying mechanism";およびTanka et al., Nature. 2004 Mar 18;428(6980):323-8: "Conformational variations in an infectious protein determine prion strain differences";を参照)。よって、sRGNポリペプチドをスフェロプラストに取り込むことができ(ガイドRNAをコードする核酸ありまたはなしで、ドナーポリヌクレオチドありまたはなしで)、スフェロプラストを使用して、内容物を酵母細胞に導入することができる。sRGNポリペプチドは、いずれか簡便な方法によって細胞に導入することができる(細胞に提供される);斯かる方法は、当業者にとって公知である。別の非限定的な例として、sRGNポリペプチドは、細胞、例えば、ゼブラフィッシュ胚の細胞、受精したマウス卵母細胞の前核等に直接的に注射することができる(例えば、ガイドRNAをコードする核酸ありまたはなしで、ドナーポリヌクレオチドありまたはなしで)。
【0292】
目的の標的細胞
上述の適用の一部では、本方法を用いて、in vivoおよび/またはex vivoおよび/またはin vitroで、有糸分裂または有糸分裂後細胞においてDNA切断、DNA改変および/または転写調節を誘導することができる(例えば、個体に再導入することができる遺伝子改変された細胞を産生するために)。ガイドRNAは、標的DNAにハイブリダイズすることにより特異性を提供するため、開示されている方法における目的の有糸分裂および/または有糸分裂後細胞は、いずれかの生物由来の細胞(例えば、細菌細胞、古細菌細胞、単一細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻類細胞、例えば、Botryococcus braunii、Chlamydomonas reinhardtii、Nannochloropsis gaditana、Chlorella pyrenoidosa、Sargassum patens、C.Agardhおよびその他、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、動物細胞、無脊椎動物(例えば、ミバエ、刺胞動物、棘皮動物、線形動物等)由来の細胞、脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)由来の細胞、哺乳動物由来の細胞、齧歯類由来の細胞、霊長類由来の細胞、ヒト由来の細胞等)を含むことができる。
【0293】
いかなる型の細胞が、目的の細胞となってもよい(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、胚細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニューロン、筋肉細胞、骨細胞、肝細胞、膵細胞;いずれかのステージの胚、例えば、1細胞期、2細胞期、4細胞期、8細胞期等のゼブラフィッシュ胚のin vitroまたはin vivo胚性細胞;等)。細胞は、確立された細胞系に由来することができる、または初代細胞となることができ、「初代細胞」、「初代細胞系」および「初代培養物」は、生物に由来し、限られた数の継代、すなわち、培養物の分割においてin vitroで成長させた、細胞および細胞培養物を指すように本明細書で互換的に使用される。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回または15回継代されていてよいが、クライシスステージを経験するのに十分な回数継代されていない培養物である。一般に、本発明の初代細胞系は、in vitroにおいて10回よりも少ない継代に維持される。標的細胞は、多くの実施形態では、単細胞生物である、または培養において成長させられる。
【0294】
細胞は、初代細胞である場合、いずれか簡便な方法によって個体から収集することができる。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス(leukocytapheresis)、密度勾配分離等によって簡便に収集することができる一方、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃等の組織由来の細胞は、生検によって最も簡便に収集される。適切な溶液を、収集された細胞の分散または懸濁のために使用することができる。斯かる溶液は、一般に5~25mMの低濃度の許容される緩衝剤と併せて、ウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子を簡便に補充した、一般に、平衡塩類溶液、例えば、規定生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液等となるであろう。簡便な緩衝剤は、HEPES、リン酸塩緩衝剤、乳酸塩緩衝剤等を含む。細胞は、直ちに使用することができる、または長期間、凍結した状態で貯蔵することができ、解凍し、再使用することができる。斯かる事例では、細胞は、通常、10%DMSO、50%血清、40%緩衝培地または斯かる凍結温度での細胞の保存に一般的に当技術分野で使用されるような一部の他の斯かる溶液において凍結され、凍結した培養細胞を解凍するための一般的に当技術分野で公知の様式で解凍されるであろう。
【0295】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードする核酸
一部の実施形態では、方法は、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の核酸を、標的DNAと接触させるステップまたは細胞(または細胞の集団)に導入するステップが関与する。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適した核酸は、発現ベクターを含み、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、「組換え発現ベクター」である。
【0296】
一部の実施形態では、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物等である。
【0297】
適した発現ベクターとして、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994;Borras et al., Gene Ther 6:515 524, 1999;Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995;Sakamoto et al., H Gene Ther 5:1088 1097, 1999;WO94112649、WO93/03769;WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene Ther 9:81 86, 1998、Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997;Bennett et al., Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997;Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997、Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999;Ali et al., Hum Mol Genet 5:591 594, 1996;Srivastava、WO93/09239、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822-3828;Mendelson et al., Viral. (1988) 166:154-165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613-10617);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997;Takahashi et al., J Virol73:7812 7816, 1999)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳房腫瘍ウイルス等のレトロウイルスに由来するベクター);およびその他が挙げられるがこれらに限定されない。
【0298】
多数の適した発現ベクターが当業者にとって公知であり、その多くが市販されている。次のベクターを例として提示する;真核生物宿主細胞のために:pXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、宿主細胞と適合性である限り、他のいずれかのベクターを使用してもよい。
【0299】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーター等の転写制御エレメントに作動可能に連結される。転写制御エレメントは、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞または原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的となることができる。一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核および真核細胞の両方におけるガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御エレメントに作動可能に連結される。
【0300】
利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含む、いくつかの適した転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクターにおいて使用することができる(例えば、U6プロモーター、H1プロモーター等;上述を参照)(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。
【0301】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドは、RNAとして提供することができる。斯かる事例では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするRNAは、直接的化学合成によって産生することができる、またはガイドRNAをコードするDNAからin vitroで転写することができる。DNA鋳型からRNAを合成する方法は、当技術分野で周知である。一部の事例では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドをコードするRNAは、RNAポリメラーゼ酵素(例えば、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ等)を使用したin vitroで合成されるであろう。合成されると、RNAは、標的DNAに直接的に接触させることができる、または核酸を細胞に導入するための周知技法(例えば、マイクロインジェクション、電気穿孔、トランスフェクション等)のいずれかによって細胞に導入することができる。
【0302】
ガイドRNA(DNAまたはRNAのいずれかとして導入)および/またはsRGNポリペプチド(DNAまたはRNAとして導入)および/またはドナーポリヌクレオチドをコードするヌクレオチドは、十分に開発されたトランスフェクション技法を使用して細胞に提供することができる;例えば、Angel and Yanik (2010) PLoS ONE 5(7): e 11756、ならびにQiagen製の市販のTransMessenger(登録商標)試薬、Stemgent製のStemfect(商標)RNAトランスフェクションキット、およびMims Bio製のTransiT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット。Beumer et al. (2008) Efficient gene targeting in Drosophila by direct embryo injection with zinc-finger nucleases. PNAS 105(50):19821-19826も参照されたい。その代わりに、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸は、DNAベクターにおいて提供することができる。標的細胞への核酸の移入に有用な多くのベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルス等が利用できる。核酸を含むベクターは、エピソームにより、例えば、プラスミド、ミニサークルDNA、サイトメガロウイルス、アデノウイルス等のウイルス等として維持することができる、または相同組換えもしくはランダム組込みを介して標的細胞ゲノムに組み込むことができる、例えば、MMLV、HIV-1、ALV等のレトロウイルス由来ベクター等。
【0303】
ベクターは、細胞に直接的に提供することができる。換言すると、ベクターが細胞によって取り入れられるように、細胞は、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を含むベクターと接触させられる。電気穿孔、塩化カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクションおよびリポフェクションを含む、プラスミドである核酸ベクターと細胞を接触させるための方法は、当技術分野で周知である。ウイルスベクター送達のため、細胞は、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を含むウイルス粒子と接触させられる。レトロウイルス、例えば、レンチウイルスは、本発明の方法に特に適する。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠損」している、すなわち、増殖性感染に要求されるウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞系における成長を要求する。目的の核酸を含むウイルス粒子を作製するために、核酸を含むレトロウイルス核酸が、パッケージング細胞系によってウイルスカプシド中にパッケージングされる。異なるパッケージング細胞系は、カプシド中に取り込まれる、異なるエンベロープタンパク質(同種指向性、両種指向性または異種指向性)を提供し、このエンベロープタンパク質は、細胞に対するウイルス粒子の特異性を決定する(マウスおよびラットに対する同種指向性;ヒト、イヌおよびマウスを含む大部分の哺乳動物細胞型に対する両種指向性;ならびにマウス細胞を除く大部分の哺乳動物細胞型に対する異種指向性)。適切なパッケージング細胞系を使用して、細胞が、パッケージングされたウイルス粒子によって標的化されることを確実にすることができる。再プログラミング因子をコードする核酸を含むレトロウイルスベクターをパッケージング細胞系に導入するための方法、およびパッケージング系列によって作製されたウイルス粒子を採取する方法は、当技術分野で周知である。核酸は、直接的マイクロインジェクション(例えば、ゼブラフィッシュ胚へのRNAの注射)によって導入することもできる。
【0304】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸の細胞への提供に使用されるベクターは、一般に、目的の核酸の発現の駆動、すなわち、転写活性化に適したプロモーターを含むであろう。換言すると、目的の核酸は、プロモーターに作動可能に連結されるであろう。これは、遍在性に作用するプロモーター、例えば、CMV-13-アクチンプロモーター、または特定の細胞集団において活性である、もしくはテトラサイクリン等の薬物の存在に応答するプロモーター等の誘導性プロモーターを含むことができる。転写活性化とは、転写が、標的細胞において基底レベルを上回って、少なくとも10倍、少なくとも100倍、より通常は、少なくとも1000倍増加されるであろうことが意図される。加えて、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの細胞への提供に使用されるベクターは、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを取り入れた細胞を同定することができるように、標的細胞における選択可能なマーカーをコードする核酸配列を含むことができる。
【0305】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはキメラsRGNポリペプチドは、その代わりに、DNAの接触に使用することができる、またはRNAとして細胞に導入することができる。細胞にRNAを導入する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、直接的注射、トランスフェクション、またはDNAの導入に使用される他のいずれかの方法を含むことができる。
【0306】
sRGNポリペプチドは、ポリペプチドとして細胞に提供することができる。斯かるポリペプチドは、必要に応じて、産物の溶解性を増加させるポリペプチドドメインに融合することができる。ドメインは、定義されるプロテアーゼ切断部位、例えば、TEVプロテアーゼによって切断されるTEV配列を介してポリペプチドに連結することができる。リンカーは、1つまたは複数の可動性配列、例えば、1~10個のグリシン残基を含むこともできる。一部の実施形態では、融合タンパク質の切断は、産物の溶解性を維持する緩衝剤中で、例えば、0.5~2M尿素の存在下で、溶解性を増加させるポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの存在下で、ならびにその他で行われる。目的のドメインは、エンドソーム溶解性(endosomolytic)ドメイン、例えば、インフルエンザHAドメイン;ならびに産生に役立つ他のポリペプチド、例えば、IF2ドメイン、GSTドメイン、GRPEドメインおよびその他を含む。ポリペプチドは、安定性改善のために製剤化することができる。例えば、ペプチドは、ペグ化することができ、ポリエチレンオキシ基は、血流中の寿命増強を提供する。
【0307】
その上またはその代わりに、sRGNポリペプチドは、ポリペプチド浸透性ドメインに融合して、細胞による取込みを促進することができる。いくつかの浸透性ドメインが当技術分野で公知であり、ペプチド、ペプチド模倣体および非ペプチド担体を含む、本発明の非組込みポリペプチドにおいて使用することができる。例えば、浸透性ペプチドは、J. Biol. Chem., 271 (1996), pp. 18188-18193にも開示されているアミノ酸配列RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号127)モチーフ(同定するためであって、本願内の開示を目的とするものではない)を含む、ペネトラチンと称されるDrosophila melanogaster転写因子アンテナペディアの第3のアルファヘリックスに由来することができる。別の例として、浸透性ペプチドは、例えば、天然に存在するtatタンパク質のアミノ酸49~57を含むことができる、HIV-1 tat塩基性領域アミノ酸配列を含む。
【0308】
他の浸透性ドメインは、ポリアルギニンモチーフ、例えば、HIV-1 revタンパク質のアミノ酸34~56の領域、ノナアルギニン、オクタアルギニンおよびその他を含む(例えば、転位置ペプチドおよびペプトイドの教示のために特に参照により本明細書に組み込まれる、Futaki et al. (2003) Curr Protein Pept Sci. 2003 Apr; 4(2): 87-9 and 446;およびWender et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2000 Nov. 21; 97(24):13003-8;公開された米国特許出願公開第20030220334号;同第20030083256号;同第20030032593号;および同第20030022831号を参照)。ノナアルギニン(R9)配列は、特徴付けされた、より効率的なPTDの1つである(Wender et al. 2000;Uemura et al. 2002)。融合が為される部位は、ポリペプチドの生物活性、分泌または結合特徴を最適化するために選択することができる。最適部位は、ルーチン実験法によって決定されるであろう。一部の実施形態では、ポリペプチド浸透性ドメインは、PTDのバイオアベイラビリティを増加させるために化学的に改変される。例示的な改変は、Expert Opin Drug Deliv. 2009 Nov;6(11):1195-205に開示されている。
【0309】
sRGNポリペプチドは、in vitroで、または真核細胞によって、原核細胞によって、またはin vitro転写および翻訳(IVTT)によって産生することができ、アンフォールディング、例えば、熱変性、OTT還元等によってさらにプロセシングすることができ、当技術分野で公知の方法を使用してさらにリフォールディングさせることができる。
【0310】
一次配列を変更しない目的の改変は、ポリペプチドの化学的誘導体化、例えば、アシル化、アセチル化、カルボキシル化、アミド化等を含む。グリコシル化の改変、例えば、その合成およびプロセシング中にまたはさらなるプロセシングステップにおいてポリペプチドのグリコシル化パターンを改変することによって為される改変も含まれる;例えば、哺乳動物グリコシル化または脱グリコシル化酵素等、グリコシル化に影響を及ぼす酵素にポリペプチドを曝露することによる。リン酸化されたアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリンまたはホスホスレオニンを有する配列も包含される。
【0311】
タンパク質分解性の分解に対するそれらの耐性を改善することができるように、標的配列特異性を変化させることができるように、溶解性特性を最適化することができるように、タンパク質活性(例えば、転写調節活性、酵素活性等)を変更することができるように、またはそれらを治療剤としてより適したものとすることができるように、通常の分子生物学的技法および合成化学を使用して改変されたガイドRNAおよびsRGNポリペプチドも本発明に含まれる。斯かるポリペプチドのアナログは、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えば、O-アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸を含有するアナログを含む。D-アミノ酸を、アミノ酸残基の一部または全てに代えて置換することができる。sRGNポリペプチドは、当技術分野で公知の通りに従来方法を使用したin vitro合成によって調製することができる。様々な商業的合成装置、例えば、Applied Biosystems、Inc.、Beckman等による自動合成機を利用できる。合成機を使用することにより、天然に存在するアミノ酸を、非天然アミノ酸に置換することができる。特定の配列および調製様式は、要求される利便性、経済、純度およびその他によって決定されるであろう。
【0312】
所望に応じて、合成または発現の際に、様々な基をペプチドに導入することができ、これにより、他の分子または表面への連結が可能となる。よって、システインを使用して、チオエーテルを作製することができ、ヒスチジンを、金属イオン錯体への連結に、カルボキシル基を、アミドまたはエステルの形成に、アミノ基を、アミドの形成に、およびその他に使用することができる。
【0313】
sRGNポリペプチドを、公知の組換え合成方法に従って単離および精製することもできる。ライセートは、発現宿主から調製することができ、ライセートは、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィーまたは他の精製技法を使用して精製される。大半では、使用される組成物は、産物の調製方法およびその精製に関係する夾雑物に関して、少なくとも約75重量%または少なくとも約95重量%等、少なくとも20重量%の所望の産物を含み、治療目的では、少なくとも99.5重量%を含むであろう。通常、パーセンテージは、総タンパク質に基づくであろう。DNA切断および組換え、または標的DNAに対するいずれか所望の改変、または標的DNAに関連するポリペプチドに対するいずれか所望の改変を誘導するために、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、核酸として導入されるのであれポリペプチドとして導入されるのであれ、約30分間~約24時間、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、または約30分間~約24時間の他のいずれかの期間、細胞に提供され、これは、約毎日~約4日毎の頻度で、例えば、1.5日毎、2日毎、3日毎、または約毎日~約4日毎の他のいずれかの頻度でリピートすることができる。薬剤は、1または複数回、例えば、1回、2回、3回または3回超、細胞に提供することができ、細胞は、各接触事象後にある時間量、例えば、16~24時間、薬剤と共にインキュベートされ、この時間の後に、培地は新鮮培地に置き換えられ、細胞はさらに培養される。2種またはそれよりも多い異なる標的化複合体が細胞に提供される(例えば、同じまたは異なる標的DNA内の異なる配列に相補的な2種の異なるガイドRNA)場合、複合体は、同時に提供することができる(例えば、2種のポリペプチドおよび/または核酸として)、または同時に送達することができる。その代わりに、これらは、連続的に提供することができ、例えば、当該標的化複合体が先ず提供され、続いて、第2の標的化複合体が提供される、等、またはその逆もまた同じである。
【0314】
一般に、有効量のガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドが、標的DNAまたは細胞に提供されて、標的改変を誘導する。有効量のガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、陰性対照、例えば、空ベクターまたは無関係ポリペプチドと接触された細胞と比べて、2種の相同配列の間に観察される標的改変の量の2倍またはそれよりも多い増加を誘導する量である。すなわち、有効量または用量のガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、標的DNA領域に観察される標的改変の量の2倍増加、3倍増加、4倍またはそれよりも多い増加、一部の実例では、観察される組換えの量の5倍増加、6倍またはそれよりも多い増加、時には、観察される組換えの量の7倍もしくは8倍またはそれよりも多い増加、例えば、10倍、50倍もしくは100倍またはそれよりも多い増加、一部の実例では、200倍、500倍、700倍もしくは1000倍またはそれよりも多い増加、例えば、5000倍もしくは10,000倍増加を誘導するであろう。標的改変の量は、いずれか簡便な方法によって測定することができる。例えば、組換えを行うときに活性レポーターをコードする核酸を再構成するであろう、リピート配列に挟まれたガイドRNAの標的化セグメント(標的化配列)に対する相補配列を含むサイレントレポーター構築物を、細胞に同時トランスフェクトすることができ、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触後に、例えば、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触から2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間またはそれよりも多い時間の後に、レポータータンパク質の量が評価される。別の、より高感度のアッセイとして、例えば、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触後に、例えば、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触から2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間またはそれよりも多い時間の後に、標的DNA配列を含む目的のゲノムDNA領域における組換えの程度を、領域のPCRまたはサザンハイブリダイゼーションによって評価することができる。
【0315】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドと細胞との接触は、細胞の生存を促進するいずれかの培養培地においていずれかの培養条件下で、発生することができる。例えば、細胞は、ウシ胎仔血清または熱不活性化ヤギ血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に、2-メルカプトエタノール、ならびに抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充した、イスコフ改変DMEMまたはRPMI1640等、簡便ないずれか適切な栄養培地に懸濁することができる。培養物は、細胞が応答性である増殖因子を含有することができる。本明細書に定義されている増殖因子は、培養物またはインタクトな組織のいずれかにおいて、膜貫通受容体における特異的な効果を介して、細胞の生存、成長および/または分化を促進することができる分子である。増殖因子は、ポリペプチドおよび非ポリペプチド因子を含む。細胞の生存を促進する条件は、一般に、非相同末端結合および相同性により導かれる修復を許容する。ポリヌクレオチド配列を標的DNA配列に挿入することが望ましい適用において、挿入されるべきドナー配列を含むポリヌクレオチドも、細胞に提供される。「ドナー配列」または「ドナーポリヌクレオチド」とは、sRGNポリペプチドによって誘導された切断部位に挿入されるべき核酸配列を意味する。ドナーポリヌクレオチドは、切断部位におけるゲノム配列に対し十分な相同性、例えば、例えば、切断部位の約50塩基またはそれ未満内、例えば、約30塩基内、約15塩基内、約10塩基内、約5塩基内で、または切断部位をすぐに接して挟む、切断部位を挟むヌクレオチド配列と70%、80%、85%、90%、95%または100%相同性を含有して、ドナーポリヌクレオチドと、ドナーポリヌクレオチドが相同性を有するゲノム配列との間の相同性により導かれる修復を支持するであろう。ドナーおよびゲノム配列の間の配列相同性のおよそ25、50、100もしくは200ヌクレオチドまたは200ヌクレオチド超(または10~200ヌクレオチドの間のいずれかの整数値またはそれよりも多く)は、相同性により導かれる修復を支持するであろう。ドナー配列は、いずれかの長さ、例えば、10ヌクレオチドまたはそれよりも多い、50ヌクレオチドまたはそれよりも多い、100ヌクレオチドまたはそれよりも多い、250ヌクレオチドまたはそれよりも多い、500ヌクレオチドまたはそれよりも多い、1000ヌクレオチドまたはそれよりも多い、5000ヌクレオチドまたはそれよりも多い等となることができる。
【0316】
ドナー配列は、一般に、それが置き換わるゲノム配列と同一ではない。むしろ、相同性により導かれる修復を支持するのに十分な相同性が存在する限りにおいて、ドナー配列は、ゲノム配列に関して、少なくとも1つまたは複数の単一塩基変化、挿入、欠失、逆位または再編成を含有することができる。一部の実施形態では、標的DNA領域および2つの挟む配列の間の相同性により導かれる修復が、標的領域における非相同配列の挿入をもたらすように、ドナー配列は、2つの相同性の領域に挟まれた非相同配列を含む。ドナー配列は、目的のDNA領域と相同でない、目的のDNA領域への挿入に意図されない配列を含有するベクター骨格を含むこともできる。一般に、ドナー配列の相同領域は、組換えが所望されるゲノム配列に対し少なくとも50%配列同一性を有するであろう。ある特定の実施形態では、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または99.9%配列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに応じて、1%~100%配列同一性の間のいずれかの値が存在し得る。ドナー配列は、ゲノム配列と比較して、ある特定の配列の差、例えば、切断部位におけるドナー配列の挿入成功の評価に使用することができる、または一部の事例では、他の目的(例えば、標的化されたゲノム遺伝子座における発現を知らせるため)のために使用することができる、制限部位、ヌクレオチド多型、選択可能なマーカー(例えば、薬物耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素等)等を含むことができる。一部の事例では、コード領域に位置する場合、斯かるヌクレオチド配列の差は、アミノ酸配列を変化させないであろう、またはサイレントなアミノ酸変化(すなわち、タンパク質の構造または機能に影響を及ぼさない変化)を作製するであろう。その代わりに、このような配列の差は、マーカー配列の除去のためにその後に活性化され得る、FLP、loxP配列またはその他等、隣接する組換え配列を含むことができる。
【0317】
ドナー配列は、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNAまたは二本鎖RNAとして細胞に提供することができる。ドナー配列は、直鎖状または環状形態で細胞に導入することができる。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者にとって公知の方法によって保護されていてよい(例えば、エキソヌクレアーゼ的分解から)。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が、直鎖状分子の3’末端に付加される、および/または自己相補的オリゴヌクレオチドが、一方または両方の末端にライゲーションされる。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4959-4963;Nehls et al. (1996) Science 272:886-889を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加的な方法として、末端アミノ基の付加、ならびに例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート(phosphoramidate)および0-メチルリボースまたはデオキシリボース残基等の改変されたヌクレオチド間連結の使用が挙げられるがこれらに限定されない。直鎖状ドナー配列の末端の保護の代替として、追加的な長さの配列が相同性の領域の外側に含まれてよく、これは、組換えに影響することなく分解され得る。ドナー配列は、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生物質耐性をコードする遺伝子等の追加的な配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入することができる。さらに、ドナー配列は、ネイキッド(すなわち、無改変)核酸として、リポソームもしくはポロクサマー等の薬剤と複合体形成した核酸として導入することができる、またはガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸について上に記載されている通り、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV)によって送達することができる。
【0318】
上に記載されている方法に従って、目的のDNA領域を切断および改変することができる、すなわち、ex vivoで「遺伝子改変」することができる。一部の実施形態では、選択可能なマーカーが目的のDNA領域に挿入されると、遺伝子改変された細胞を残りの集団から分離することにより、細胞の集団は、遺伝子改変を含む細胞を濃縮することができる。濃縮に先立ち、「遺伝子改変された」細胞は、細胞集団の約1%またはそれよりも多く(例えば、2%またはそれよりも多く、3%またはそれよりも多く、4%またはそれよりも多く、5%またはそれよりも多く、6%またはそれよりも多く、7%またはそれよりも多く、8%またはそれよりも多く、9%またはそれよりも多く、10%またはそれよりも多く、15%またはそれよりも多く、または20%またはそれよりも多く)のみを構成することができる。「遺伝子改変された」細胞の分離は、使用されている選択可能なマーカーに適切ないずれか簡便な分離技法によって達成することができる。例えば、蛍光マーカーが挿入された場合、細胞は、蛍光標識細胞分取によって分離することができ、一方で、細胞表面マーカーが挿入された場合、細胞は、固体マトリックスに取り付けられた親和性試薬を用いた、親和性分離技法、例えば、磁気分離、親和性クロマトグラフィー、「パニング」、または他の簡便な技法によって不均一集団から分離することができる。正確な分離を提供する技法は、変動する程度の精密化を有することができる、蛍光標示式細胞分取器を含む。複数の色チャネル、低角度および鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネル等。細胞は、死細胞に関連する色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を用いることにより、死細胞に対して選択することができる。遺伝子改変された細胞の生存率にとって過度に有害でない、いずれかの技法を用いることができる。改変されたDNAを含む細胞が高度に濃縮された細胞組成が、この様式で達成される。「高度に濃縮された」とは、遺伝子改変された細胞が、細胞組成の70%またはそれよりも多く、75%またはそれよりも多く、80%またはそれよりも多く、85%またはそれよりも多く、90%またはそれよりも多く、例えば、細胞組成の約95%もしくはそれよりも多く、または98%もしくはそれよりも多くなるであろうことを意味する。換言すると、組成は、遺伝子改変された細胞の実質的に純粋な組成となることができる。
【0319】
本明細書に記載されている方法によって産生された遺伝子改変された細胞は、直ちに使用することができる。その代わりに、細胞は、液体窒素温度で凍結し、長期間貯蔵することができ、解凍して、再使用することができる。斯かる事例では、細胞は、通常、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、40%緩衝培地、または斯かる凍結温度での細胞の保存に一般的に当技術分野で使用されるような一部の他の斯かる溶液中で凍結され、凍結した培養細胞を解凍するための一般的に当技術分野で公知の様式で解凍されるであろう。
【0320】
遺伝子改変された細胞を、当技術分野で公知の方法を使用してin vitroで培養することができる。細胞は、培養において増やすことができる、すなわち、その増殖を促進する条件下で成長させることができる。培養培地は、例えば、寒天、メチルセルロース等を含有する、液体または半固体となることができる。細胞集団は、ウシ胎仔血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に、2-メルカプトエタノール、ならびに抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンを通常補充した、イスコフ(lscove)改変DMEMまたはRPMI1640等、適切な栄養培地に懸濁することができる。培養物は、それぞれの細胞が応答性である増殖因子を含有することができる。本明細書に定義されている増殖因子は、培養物またはインタクトな組織のいずれかにおいて、膜貫通受容体における特異的な効果を介して、細胞の生存、成長および/または分化を促進することができる分子である。増殖因子は、ポリペプチドおよび非ポリペプチド因子を含む。このような仕方で遺伝子改変された細胞は、例えば、疾患を処置するための、または抗ウイルス、抗病原性もしくは抗がん療法としての遺伝子療法、農業における遺伝子改変された生物の産生のため、または生物学的研究のため等の目的で、対象に移植することができる。一部の場合では、ヒトにおける使用のための細胞は、ゼノフリー培地で培養される。対象は、新生児、若年または成人となることができる。哺乳動物対象が特に興味深い。本方法で処置することができる哺乳動物種は、イヌおよびネコ;ウマ;ウシ;ヒツジ;等、ならびに霊長類、特にヒトを含む。動物モデル、特に小型哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ目動物(例えば、ウサギ)等)を実験調査に使用することができる。
【0321】
細胞は、単独で、または例えば、移植される組織におけるその成長および/または組織化を支持するための適した基材またはマトリックスと共に、対象に提供することができる。通常、少なくとも1×10個の細胞、例えば5×10個の細胞、1×10個の細胞、5×10個の細胞、1×10個の細胞、1×10個の細胞またはそれよりも多くが投与されるであろう。細胞は、次の経路のいずれかを介して対象に導入することができる:非経口的、皮下、静脈内、頭蓋内、脊髄内、眼内、または髄液中。細胞は、注射、カテーテルまたはその他によって導入することができる。局所的送達、すなわち、傷害の部位への送達のための方法の例として、例えば、くも膜下腔内送達のための、例えば、Ommayaリザーバーによる(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,222,982号および同第5,385,582号);例えば、関節への、例えば、シリンジによるボーラス注射による;例えば、対流を用いた、例えば、カニューレ処置による、持続注入による(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20070254842号);または細胞が可逆的に貼られたデバイスの植込みによる(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20080081064号および同第20090196903号)方法が挙げられる。細胞は、トランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)を作製する目的で、胚(例えば、胚盤胞)に導入することもできる。
【0322】
sRGN系の送達
ガイドRNAポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)および/またはsRGNポリペプチド(RNAまたはDNA)は、当技術分野で公知のウイルスまたは非ウイルス送達媒体によって送達することができる。
【0323】
ポリヌクレオチドを、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正荷電ペプチド、小分子RNA-コンジュゲート、アプタマー-RNAキメラ、およびRNA-融合タンパク質複合体を含むがこれらに制限されない、非ウイルス送達媒体により送達することができる。一部の例示的な非ウイルス送達媒体は、Peer and Lieberman, Gene Therapy, 18: 1127-1133 (2011)に記載されている(これは、他のポリヌクレオチドの送達にも有用であるsiRNAのための非ウイルス送達媒体に焦点を当てている)。
【0324】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを送達に使用することができる。送達すべきポリヌクレオチドを含むパッケージされるAAVゲノムとrepおよびcap遺伝子とヘルパーウイルス機能とを細胞に提供するrAAV粒子を産生する技法は、当技術分野では標準的である。rAAVの産生は、次の構成成分:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別の(すなわち、rAAVゲノムに存在しない)AAV repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一細胞(本明細書ではパッケージング細胞と表示される)内に存在することを必要とする。AAV repおよびcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得るいずれのAAV血清型からのものであってもよく、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13およびAAV rh.74を含むがこれらに制限されない、rAAVゲノムのITRとは異なるAAV血清型からのものであってもよい。偽型rAAVの産生は、例えば、WO01/83692に開示されている。
【表3】
【0325】
パッケージング細胞を作出する方法は、AAV粒子産生に必要な構成成分全てを安定的に発現する細胞系の創出である。例えば、AAV repおよびcap遺伝子を欠いているrAAVゲノムを含むプラスミド(または複数のプラスミド)、rAAVゲノムとは別のAAV repおよびcap遺伝子、ならびに選択可能なマーカー、例えばネオマイシン耐性遺伝子を、細胞のゲノムに組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al., 1982, Proc. Natl. Acad. S6. USA, 79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al., 1983, Gene, 23:65-73)などの手順により、または直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter, 1984, J. Biol. Chem., 259:4661-4666)により、細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞系にアデノウイルスなどのヘルパーウイルスを感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大量生産に適していることである。適切な方法の他の例は、rAAVゲノムおよび/またはrepおよびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するために、プラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを利用する。
【0326】
rAAV産生の一般的原理は、例えば、Carter, 1992, Current Opinions in Biotechnology, 1533-539;およびMuzyczka, 1992, Curr. Topics in Micro Biol. and Immunol., 158:97-129において概説されている。様々な手法が、Ratschin et al., Mol. Cell. Bio. 4:2072 (1984);Hermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6466 (1984);Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251 (1985);Mclaughlin et al., J. Virol., 62:1963 (1988);およびLebkowski et al., 1988 Mol. Cell. Biol., 7:349 (1988);Samulski et al. (1989, J. Virol., 63:3822-3828);米国特許第5,173,414号;WO95/13365および対応米国特許第5,658,776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764;Perrin et al.(1995) Vaccine 13:1244-1250;Paul et al.(1993) Human Gene Therapy 4:609-615;Clark et al.(1996) Gene Therapy 3:1124-1132;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;および米国特許第6,258,595号に記載されている。
【0327】
AAVベクター血清型を標的細胞型に対応させることができる。例えば、数ある中でも特に示されているAAV血清型によって形質導入される、以下の例示的細胞型。
【表4】
【0328】
対象への処置の投与数は、変動し得る。対象への遺伝子改変された細胞の導入は、1回限りの事象となることができるが;ある特定の状況では、斯かる処置は、限られた期間での改善を誘発することができ、進行中の一連のリピートされる処置を要求する。他の状況では、効果が観察される前に、遺伝子改変された細胞の複数の投与が要求され得る。正確なプロトコールは、疾患または状態、疾患のステージ、および処置されている個々の対象のパラメーターに依存する。
【0329】
本開示の他の態様では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、in vivoでの細胞DNAの改変に用いられ、例えば、例えば、疾患を処置するための、または抗ウイルス、抗病原性もしくは抗がん療法としての遺伝子療法、農業における遺伝子改変された生物の産生のため、または生物学的研究のため等を目的とする。このようなin vivo実施形態では、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、個体に直接的に投与される。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを、対象へのペプチド、小分子および核酸の投与のための当技術分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれかにより、投与することができる。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、種々の製剤へと取り込むことができる。より具体的には、本発明のガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤との組合せによって、医薬組成物へと製剤化することができる。一部の場合では、ガイドRNAおよびsRGNは、ex vivo送達用に製剤化されている。
【0330】
医薬調製物は、薬学的に許容される媒体中に存在する1つまたは複数のガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを含む組成物である。「薬学的に許容される媒体」は、ヒト等の哺乳動物における使用のための、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認された、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に収載された媒体となることができる。用語「媒体」は、本発明の化合物が、それと共に哺乳動物への投与のために製剤化される、希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。斯かる医薬品媒体は、脂質、例えば、リポソーム、例えば、リポソームデンドリマー;ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油およびその他等、石油、動物、植物または合成起源の油を含む、水および油等の液体、生理食塩水;アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素、ならびにその他となることができる。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤を使用することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入剤、ゲル、マイクロスフェアおよびエアロゾル等、固体、半固体、液体または気体の形態の調製物へと製剤化することができる。そのようなものとして、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの投与は、経口、頬側、直腸、非経口的、腹腔内、皮内、経皮、気管内、眼内等の投与を含む、様々な仕方で達成することができる。活性薬剤は、投与後に全身性となることができる、または領域性投与、壁内投与の使用によって、もしくは植込み部位に活性用量を保持するように作用するインプラントの使用によって局在化することができる。活性薬剤は、即時活性のために製剤化することができる、または徐放のために製剤化することができる。
【0331】
一部の状態、特に、中枢神経系状態に関して、血液脳関門(BBB)を通過するように薬剤を製剤化することが必要となる場合がある。BBBを通る薬物送達のための戦略の1つは、マンニトールもしくはロイコトリエン等の浸透圧的手段による、またはブラジキニン等の血管作動性物質の使用による生化学的な、BBBの破壊を伴う。特異的薬剤を脳腫瘍に標的化するためのBBB開通の使用の潜在力も、オプションである。組成物が、血管内注射によって投与される場合、BBB破壊剤は、本発明の治療組成物と同時投与することができる。BBBを通る送達のための他の戦略は、カベオリン-1媒介性トランスサイトーシス、グルコースおよびアミノ酸担体等の担体媒介性トランスポーター、インスリンまたはトランスフェリンのための受容体媒介性トランスサイトーシス、ならびにp-糖タンパク質等の活性排出トランスポーターを含む、内因性輸送系の使用を伴う場合がある。活性輸送部分は、本発明における使用のための治療化合物にコンジュゲートして、血管の内皮壁を越えた輸送を容易にすることもできる。その代わりに、BBBの裏側で、治療剤の薬物送達は、例えば、Ommayaリザーバーによる、例えば、くも膜下腔内送達による(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,222,982号および同第5385582号を参照);例えば、硝子体内もしくは頭蓋内に、例えば、シリンジによるボーラス注射による;例えば、対流を用いた、例えば、カニューレ処置による、持続注入による(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20070254842号を参照);または薬剤が可逆的に貼られたデバイスの植込みによる(例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20080081064号および同第20090196903号を参照)、局所的送達によって為すことができる。
【0332】
一般に、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効量が提供される。ex vivo方法に関して上に記す通り、in vivoにおけるガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効量または有効用量は、陰性対照、例えば、空ベクターまたは無関係ポリペプチドと接触された細胞と比べて、2種の相同配列の間に観察される組換えの量に2倍またはそれよりも多い増加を誘導する量である。組換えの量は、例えば、上に記載されており当技術分野で公知の、いずれか簡便な方法によって測定することができる。投与されるべきガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効量または有効用量の計算は、当業者の技能範囲内にあり、当業者にとってルーチンとなるであろう。投与されるべき最終量は、投与経路、および処置されるべき障害または状態の性質に依存するであろう。
【0333】
特定の患者に与えられる有効量は、種々の因子に依存し、これらの因子のうちいくつかは、患者間で異なるであろう。適格な臨床医であれば、要求に応じて疾患状態の進行を停止または反転するために患者に投与する、治療剤の有効量を決定することができるであろう。LD50動物データおよび薬剤に利用できる他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体の最大安全用量を決定することができる。例えば、静脈内投与される用量は、くも膜下腔内投与される用量より、治療組成物が投与されている流体の量が多いことを考慮すると、多い量の治療剤を有し得る。同様に、身体から急速に排除される組成物は、治療濃度を維持するために、より高用量で、またはリピートされる用量で投与することができる。通常の技能を利用して、適格な臨床医であれば、ルーチン臨床試験の経過において特定の治療薬の投薬量を最適化することができるであろう。
【0334】
医薬中に包含するため、ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、適した商業的供給源から得ることができる。一般命題として、用量当たりの、非経口的に投与されるガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの総薬学的有効量は、用量応答曲線によって測定され得る範囲内にあるであろう。
【0335】
ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドに基づく治療法、すなわち、治療的投与に使用されるべきガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの調製物は、滅菌されていなければならない。滅菌性は、滅菌濾過膜(例えば、0.2 1-1m膜)を通した濾過によって容易に達成される。治療組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能な(pierceable)ストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルの中に置かれる。ガイドRNAおよび/またはsRGNポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドに基づく治療法は、単位または複数用量容器、例えば、封着されたアンプルまたはバイアル内に、水溶液または再構成のための凍結乾燥された製剤として貯蔵することができる。凍結乾燥された製剤の例として、10mlバイアルに、5mlの滅菌濾過された、化合物の1%(w/v)水溶液を充填し、その結果得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、静菌的な注射用の水を使用して、凍結乾燥された化合物を再構成することにより調製される。
【0336】
医薬組成物は、所望の製剤に応じて、動物またはヒト投与のための医薬組成物の製剤化に一般的に使用される媒体として定義される、薬学的に許容される無毒性担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤は、組合せの生物活性に影響を及ぼさないように選択される。斯かる希釈剤の例は、蒸留水、緩衝した水、生理的食塩水、PBS、リンゲル溶液、デキストロース溶液およびハンクス溶液である。加えて、医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または無毒性で、非治療的で、非免疫原性の安定剤、賦形剤およびその他を含むことができる。組成物は、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、ならびに洗剤等、生理的条件に近似するための追加的な物質を含むこともできる。
【0337】
組成物は、例えば、抗酸化剤等、種々の安定化剤のいずれかを含むこともできる。医薬組成物が、ポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのin vivo安定性を増強する、さもなければ、その薬理学的特性を増強する(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる、その毒性を低下させる、溶解性または取込みを増強する)様々な周知化合物と複合体形成することができる。斯かる改変または複合体形成剤の例として、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩が挙げられる。組成物の核酸またはポリペプチドは、そのin vivo特質を増強する分子と複合体形成することもできる。斯かる分子は、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)および脂質を含む。
【0338】
様々な種類の投与に適している製剤に関するさらなるガイダンスは、当技術分野、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, Pa., 21st ed. (2006)にて公知である。薬物送達のための方法の短い総説については、Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい。
【0339】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。活性成分の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)の決定を含む、細胞培養物および/または実験動物において標準医薬品手順に従って決定することができる。毒性および治療効果の間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表現することができる。大きい治療指数を示す治療法が、好まれ得る。
【0340】
細胞培養および/または動物研究から得られるデータは、ヒトのためのある範囲の投薬量の製剤化において使用することができる。活性成分の投薬量は、一般に、低毒性によるED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。医薬組成物の製剤化に使用される構成成分は、一部の実施形態では、高純度であり、潜在的に害を及ぼす夾雑物を実質的に含まない(例えば、少なくとも国の食品(NF)グレード、一般に、少なくとも分析グレード、これは少なくとも医薬品グレードを含む)。さらに、in vivo使用に意図される組成物は通常、滅菌されている。使用前に所与の化合物が合成される必要がある程度まで、その結果得られる産物は、一般に、合成または精製プロセスの際に存在し得る、いかなる潜在的に毒性の薬剤、特に、いかなるエンドトキシンも実質的に含まない。非経口的(parental)投与のための組成物もまた、滅菌されており、実質的に等張性であり、GMP条件下で作製される。
【0341】
特定の患者に与えられるべき治療組成物の有効量は、種々の因子に依存し、これらの因子のうちいくつかは、患者間で異なるであろう。適格な臨床医であれば、要求に応じて疾患状態の進行を停止または反転するために患者に投与する、治療剤の有効量を決定することができるであろう。LD50動物データおよび薬剤に利用できる他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体の最大安全用量を決定することができる。例えば、治療組成物が投与されている流体の量が多いことを考慮すると、静脈内投与される用量は、くも膜下腔内投与される用量を超えることができる。同様に、身体から急速に排除される組成物は、治療濃度を維持するために、より高用量で、またはリピートされる用量で投与することができる。通常の技能を利用して、適格な臨床医であれば、ルーチン臨床試験の経過において特定の治療薬の投薬量を最適化することができるであろう。
【0342】
遺伝子改変された宿主細胞
本開示は、単離された遺伝子改変された宿主細胞を含む遺伝子改変された宿主細胞であって、次のものを含む(これにより遺伝子改変された)、遺伝子改変された宿主細胞を提供する:
【0343】
1)外因性ガイドRNA;2)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;3)外因性sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等);4)sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;または5)上述のいずれかの組合せ。遺伝子改変された細胞は、例えば:1)外因性ガイドRNA;2)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;3)外因性sRGNポリペプチド;4)sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸;または5)上述のいずれかの組合せにより宿主細胞を遺伝子改変することにより作製される。
【0344】
標的細胞に適したあらゆる細胞は、遺伝子改変された宿主細胞にも適する。例えば、目的の遺伝子改変された宿主細胞は、いずれかの生物由来の細胞(例えば、細菌細胞、古細菌細胞、単一細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻類細胞、例えば、Botryococcus braunii、Chlamydomonas reinhardtii、Nannochloropsis gaditana、Chlorella pyrenoidosa、Sargassum patens、C.Agardhおよびその他、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、動物細胞、無脊椎動物(例えば、ミバエ、刺胞動物、棘皮動物、線形動物等)由来の細胞、脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)由来の細胞、哺乳動物(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、齧歯類、ラット、マウス、非ヒト霊長類、ヒト等)由来の細胞等となることができる。
【0345】
一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸により遺伝子改変された。遺伝子改変された宿主細胞のDNAは、ガイドRNA(または改変されるべきゲノム位置/配列を決定する、ガイドRNAをコードするDNA)および必要に応じてドナー核酸を細胞に導入することにより、改変のために標的化することができる。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等)に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、空間的に制限および/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター、細胞周期特異的プロモーター)に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結されている。
【0346】
一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、in vitroにある。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、in vivoにある。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、原核細胞である、または原核細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、細菌細胞である、または細菌細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、古細菌細胞である、または古細菌細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、真核細胞である、または真核細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、植物細胞である、または植物細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、動物細胞である、または動物細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、無脊椎動物細胞である、または無脊椎動物細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、脊椎動物細胞である、または脊椎動物細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、哺乳動物細胞である、または哺乳動物細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、齧歯類細胞である、または齧歯類細胞に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、ヒト細胞である、またはヒト細胞に由来する。
【0347】
本開示は、さらに、遺伝子改変された細胞の後代であって、これが由来する遺伝子改変された細胞と同じ外因性核酸またはポリペプチドを含むことができる、後代を提供する。本開示は、さらに、遺伝子改変された宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0348】
遺伝子改変された幹細胞および遺伝子改変された前駆細胞
一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、遺伝子改変された幹細胞または前駆細胞である。適した宿主細胞は、例えば、幹細胞(成体幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞等)および前駆細胞(例えば、心臓前駆細胞、神経前駆細胞等)を含む。適した宿主細胞は、例えば、齧歯類幹細胞、齧歯類前駆細胞、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞等を含む、哺乳動物幹細胞および前駆細胞を含む。適した宿主細胞は、in vitro宿主細胞、例えば、単離された宿主細胞を含む。
【0349】
一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、外因性ガイドRNA核酸を含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、外因性sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)を含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、1)ガイドRNAおよび2)sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。
【0350】
一部の事例では、sRGNポリペプチドは、配列番号1~12における配列のいずれかに対し少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%もしくは100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、または少なくとも100、150、200、300、350、400もしくは500アミノ酸長であるその活性部分を含む。一部の実施形態では、活性部分は、RNaseドメインを含む。他の実施形態では、活性部分は、DNaseドメインを含む。
【0351】
組成物
本開示は、ガイドRNAおよび/または部位指向型改変ポリペプチドを含む組成物を提供する。一部の事例では、sRGNポリペプチドは、キメラポリペプチドである。組成物は、本開示の方法、例えば、標的DNAの部位特異的改変のための方法;標的DNAに関連するポリペプチドの部位特異的改変のための方法;等の実行に有用である。
【0352】
ガイドRNAを含む組成物
本開示は、ガイドRNAを含む組成物を提供する。組成物は、ガイドRNAに加えて、次のうち1つまたは複数を含むことができる:塩、例えば、NaCl、MgCl、KCl、MgSO、等;緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、MESナトリウム塩、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル(methy1)-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、等;可溶化剤;洗剤、例えば、Tween(登録商標)20等の非イオン性洗剤、等;ヌクレアーゼ阻害剤;およびその他。例えば、一部の事例では、組成物は、ガイドRNAおよび核酸を安定化するための緩衝剤を含む。
【0353】
一部の実施形態では、組成物中に存在するガイドRNAは、純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または99%超純粋であり、「%純度」は、ガイドRNAが、列挙されているパーセントだけ、ガイドRNAの産生の際に存在し得る他の巨大分子または夾雑物を含まないことを意味する。
【0354】
キメラポリペプチドを含む組成物
本開示は、キメラポリペプチドの組成物を提供する。組成物は、ガイドRNAに加えて、次のうち1つまたは複数を含むことができる:塩、例えば、NaCl、MgCl、KCl、MgSO、等;緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤、HEPES、MES、MESナトリウム塩、MOPS、TAPS、等;可溶化剤;洗剤、例えば、Tween(登録商標)20等の非イオン性洗剤、等;プロテアーゼ阻害剤;還元剤(例えば、ジチオスレイトール);およびその他。
【0355】
一部の実施形態では、組成物中に存在するキメラポリペプチドは、純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または99%超純粋であり、「%純度」は、部位指向型改変ポリペプチドが、列挙されているパーセントだけ、キメラポリペプチドの産生の際に存在し得る他のタンパク質、他の巨大分子または夾雑物を含まないことを意味する。
【0356】
ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドを含む組成物
本開示は、(i)ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;および(ii)sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む組成物を提供する。一部の事例では、sRGNポリペプチドは、キメラsRGNポリペプチドである。他の事例では、sRGNポリペプチドは、天然に存在するsRGNポリペプチドである。一部の実例では、sRGNポリペプチドは、標的DNAを改変する酵素活性を示す。他の事例では、sRGNポリペプチドは、標的DNAに関連するポリペプチドを改変する酵素活性を示す。また他の事例では、sRGNポリペプチドは、標的DNAの転写を調節する。
【0357】
本開示は、(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、上に記載されているガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含む、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む組成物であって、酵素活性の部位が、ガイドRNAによって決定される、組成物を提供する。
【0358】
一部の実例では、組成物は、(i)(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNA;ならびに(ii)(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含む、sRGNポリペプチドを含み、酵素活性の部位は、ガイドRNAによって決定される。
【0359】
他の実施形態では、組成物は、(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)部位指向型改変ポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAをコードする核酸;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含む、sRGNポリペプチドをコードする核酸を含み、酵素活性の部位は、ガイドRNAによって決定される。
【0360】
本開示は、(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含む、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む組成物であって、標的DNA内の調節される転写の部位が、ガイドRNAによって決定される、組成物を提供する。
【0361】
例えば、一部の事例では、組成物は、(i)(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNA;ならびに(ii)(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含む、sRGNポリペプチドを含み、標的DNA内の調節される転写の部位は、ガイドRNAによって決定される。
【0362】
別の例として、一部の事例では、組成物は、(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAをコードするDNA核酸;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含む、部位指向型改変ポリペプチドをコードする核酸を含み、標的DNA内の調節される転写の部位は、ガイドRNAによって決定される。組成物は、i)ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;およびii)sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸に加えて、次のうち1つまたは複数を含むことができる:塩、例えば、NaCl、MgCl、KCl、MgSO、等;緩衝剤、例えば、トリス緩衝剤、HEPES、MES、MESナトリウム塩、MOPS、TAPS、等;可溶化剤、洗剤、例えば、Tween-20等の非イオン性洗剤、等;プロテアーゼ阻害剤;還元剤(例えば、ジチオスレイトール);およびその他。
【0363】
一部の事例では、組成物の構成成分は、個々に純粋である、例えば、構成成分のそれぞれは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99%純粋である。一部の事例では、組成物の個々の構成成分は、組成物に添加される前に純粋である。
【0364】
例えば、一部の実施形態では、組成物中に存在するsRGNポリペプチドは、純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または99%超純粋であり、「%純度」は、sRGNポリペプチドが、列挙されているパーセントだけ、sRGNポリペプチドの産生の際に存在し得る他のタンパク質(例えば、sRGNポリペプチド以外のタンパク質)、他の巨大分子または夾雑物を含まないことを意味する。
【0365】
キット
本開示は、方法を実行するためのキットを提供する。キットは、次のうち1つまたは複数を含むことができる:sRGNポリペプチド;部位指向型改変ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸;ガイドRNA;ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。キットは、次のうち2つまたはそれよりも多くを含む複合体を含むことができる:sRGNポリペプチド;sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸;ガイドRNA;ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。一部の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドは、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含み、ガイドRNAは、標的DNA内の調節される転写の部位を決定する。一部の事例では、sRGNポリペプチドの活性部分は、低下または不活性化されたヌクレアーゼ活性を示す。一部の事例では、sRGNポリペプチドは、キメラsRGNポリペプチドである。
【0366】
一部の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸、ならびにsRGNポリペプチドを再構成および/または希釈するための試薬を含む。他の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸(例えば、DNA、RNA)を含む。一部の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸(例えば、DNA、RNA);ならびにsRGNポリペプチドを再構成および/または希釈するための試薬を含む。
【0367】
sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含むキットは、1つまたは複数の追加的な試薬をさらに含むことができ、斯かる追加的な試薬は、細胞にsRGNポリペプチドを導入するための緩衝剤;洗浄緩衝剤;対照試薬;対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド;DNAからのsRGNポリペプチドのin vitro産生のための試薬、およびその他から選択することができる。一部の事例では、キット中に含まれる部位指向型改変ポリペプチドは、上に記載されているキメラsRGNポリペプチドである。
【0368】
一部の実施形態では、キットは、ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸を含み、ガイドRNAは、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)部位指向型改変ポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む。一部の実施形態では、キットは、(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含む、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含み、酵素活性の部位は、ガイドRNAによって決定される。一部の実施形態では、sRGNポリペプチドの活性部分は、酵素活性を示さない(例えば、突然変異により、不活性化されたヌクレアーゼを含む)。一部の事例では、キットは、ガイドRNAおよびsRGNポリペプチドを含む。他の事例では、キットは、(i)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;および(ii)sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。別の例として、キットは、
【0369】
(i)(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAまたはこれをコードするDNA核酸;ならびに(ii)(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含む、sRGNポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含むことができ、標的DNA内の調節される転写の部位は、ガイドRNAによって決定される。一部の事例では、キットは、(i)ガイドRNA;およびsRGNポリペプチドを含む。他の事例では、キットは、(i)ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;および(ii)sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。本開示は、(1)(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含む、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換え発現ベクターであって、酵素活性の部位が、ガイドRNAによって決定される、組換え発現ベクター;ならびに(2)発現ベクターの再構成および/または希釈のための試薬を含むキットを提供する。
【0370】
本開示は、(1)(i)ガイドRNAが、(a)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(b)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列;ならびに(ii)sRGNポリペプチドが、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含む、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換え発現ベクターであって、標的DNA内の調節される転写の部位が、ガイドRNAによって決定される、組換え発現ベクター;ならびに(2)組換え発現ベクターの再構成および/または希釈のための試薬を含むキットを提供する。
【0371】
本開示は、(1)(i)標的DNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;および(ii)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントを含む、DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組換え発現ベクター;ならびに(2)組換え発現ベクターの再構成および/または希釈のための試薬を含むキットを提供する。本キットの一部の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを含み、sRGNポリペプチドは、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)部位指向型酵素活性を示す活性部分を含み、酵素活性の部位は、ガイドRNAによって決定される。本キットの他の実施形態では、キットは、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを含み、sRGNポリペプチドは、(a)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含み、標的DNA内の調節される転写の部位は、ガイドRNAによって決定される。
【0372】
上述のキットのいずれかの一部の実施形態では、キットは、単一分子ガイドRNAを含む。上述のキットのいずれかの一部の実施形態では、キットは、2種またはそれよりも多い単一分子ガイドRNAを含む。上述のキットのいずれかの一部の実施形態では、ガイドRNA(例えば、2種またはそれよりも多いガイドRNAを含む)は、アレイ(例えば、RNA分子のアレイ、ガイドRNAをコードするDNA分子のアレイ、等)として提供することができる。斯かるキットは、例えば、sRGNポリペプチドを含む上に記載されている遺伝子改変された宿主細胞と併せた使用に有用となることができる。上述のキットのいずれかの一部の実施形態では、キットは、所望の遺伝子改変をもたらすためのドナーポリヌクレオチドをさらに含む。キットの構成成分は、別々の容器内に存在することができる;または単一の容器内で組み合わせることができる。
【0373】
一部の事例では、キットは、野生型sRGNと比べて低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す、1つまたは複数の変異体sRGN部位指向型ポリペプチドをさらに含む。
【0374】
一部の事例では、キットは、野生型sRGNと比べて低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す、変異体sRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の核酸をさらに含む。
【0375】
上に記載されているキットのいずれかは、1つまたは複数の追加的な試薬をさらに含むことができ、斯かる追加的な試薬は、希釈緩衝剤;再構成溶液;洗浄緩衝剤;対照試薬;対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド;DNAからのsRGNポリペプチドのin vitro産生のための試薬、およびその他から選択することができる。
【0376】
前述の構成成分に加えて、キットは、キットの構成成分を使用して、本方法を実施するための使用説明書をさらに含むことができる。本方法を実施するための使用説明書は、一般に、適した記録媒体に記録される。例えば、使用説明書は、紙またはプラスチック等の基材に印刷することができる。そのようなものとして、使用説明書は、添付文書として、キットまたはその構成成分の容器の標識において(すなわち、パッケージまたはパッケージの一部と関連付けて)、等で、キット中に存在することができる。他の実施形態では、使用説明書は、適したコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等に存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の使用説明書は、キット中に存在しないが、例えば、インターネット経由で、遠隔にある供給源から使用説明書を得るための手段が提供される。本実施形態の例は、使用説明書を閲覧することができる、および/または使用説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。使用説明書と同様に、このような、使用説明書を得るための手段は、適した基材に記録されている。
【0377】
非ヒトの遺伝子改変された生物
一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸により遺伝子改変された。斯かる細胞が、真核単一細胞生物である場合、改変された細胞は、遺伝子改変された生物と考慮することができる。一部の実施形態では、非ヒトの遺伝子改変された生物は、sRGNトランスジェニック多細胞生物である。
【0378】
一部の実施形態では、遺伝子改変された非ヒト宿主細胞(例えば、部位指向型改変ポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸により遺伝子改変された細胞)は、遺伝子改変された非ヒト生物(例えば、マウス、魚類、カエル、ハエ、虫等)を作製することができる。例えば、遺伝子改変された宿主細胞が、多能性幹細胞(すなわち、PSC)または胚細胞(例えば、精子、卵母細胞等)である場合、遺伝子改変された宿主細胞から遺伝子改変された生物全体を得ることができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、遺伝子改変された生物を生じることができる、in vivoまたはin vitroのいずれかにおける、多能性幹細胞(例えば、ESC、iPSC、多能性植物幹細胞等)または胚細胞(例えば、精子細胞、卵母細胞等)である。一部の実施形態では、遺伝子改変された宿主細胞は、脊椎動物PSC(例えば、ESC、iPSC等)であり、遺伝子改変された生物の作製に使用される(例えば、PSCを胚盤胞に注射して、キメラ/モザイク動物を産生することによる;次いでこの動物を交配して、非キメラ/非モザイクの遺伝子改変された生物を作製することができる;植物の場合は接木;等)。本明細書に記載されている方法を含む、遺伝子改変された生物を産生するためのいずれか簡便な方法/プロトコールは、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む遺伝子改変された宿主細胞の産生に適する。遺伝子改変された生物を産生する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Cho et al., Curr Protoc Cell Biol. 2009 Mar; Chapter 19:Unit 19.11:Generation of transgenic mice; Gama et al., Brain Struct Funct. 2010 Mar; 214(2-3):91-109. Epub 2009 Nov 25:Animal transgenesis: an overview; Husaini et al., GM Crops. 2011 Jun-Dec;2(3):150-62. Epub 2011 Jun 1: Approaches for gene targeting and targeted gene expression in plantsを参照されたい。
【0379】
一部の実施形態では、遺伝子改変された生物は、本発明の方法のための標的細胞を含み、よって、標的細胞の供給源と考慮することができる。例えば、部位指向型改変ポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む遺伝子改変された細胞が、遺伝子改変された生物の作製に使用される場合、遺伝子改変された生物の細胞は、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む。一部の斯かる実施形態では、細胞(単数または複数)にガイドRNA(またはガイドRNAをコードするDNA)および必要に応じてドナー核酸を導入することにより、遺伝子改変された生物の細胞(単数または複数)のDNAを、改変のために標的化することができる。例えば、遺伝子改変された生物の細胞(例えば、脳細胞、腸細胞、腎臓細胞、肺細胞、血液細胞等)のサブセットへのガイドRNA(またはガイドRNAをコードするDNA)の導入は、改変のために斯かる細胞のDNAを標的とすることができ、そのゲノム位置は、導入されるガイドRNAのDNA標的化配列に依存するであろう。
【0380】
一部の実施形態では、遺伝子改変された生物は、本発明の方法のための標的細胞の供給源である。例えば、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸により遺伝子改変された細胞を含む遺伝子改変された生物は、遺伝子改変された細胞、例えば、PSC(例えば、ESC、iPSC、精子、卵母細胞等)、ニューロン、前駆細胞、心筋細胞等の供給源を提供することができる。
【0381】
一部の実施形態では、遺伝子改変された細胞は、sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含むPSCである。そのようなものとして、PSCにガイドRNA(またはガイドRNAをコードするDNA)および必要に応じてドナー核酸を導入することにより、PSCのDNAを改変のために標的化することができるように、PSCは、標的細胞となることができ、改変のゲノム位置は、導入されるガイドRNAのDNA標的化配列に依存するであろう。よって、一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法を使用して、遺伝子改変された生物に由来するPSCのDNAを改変する(例えば、いずれか所望のゲノム位置を欠失させるおよび/または置き換える)ことができる。次に、斯かる改変されたPSCを使用して、(i)sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸、および(ii)PSCに導入されたDNA改変の両方を有する生物を作製することができる。
【0382】
sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸は、未知のプロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい(例えば、核酸が、宿主細胞ゲノムにランダムに組み込む場合)、または公知プロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい。適した公知プロモーターは、いかなる公知プロモーターであってもよく、構成的に活性があるプロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等)、空間的に制限および/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)等を含む。
【0383】
遺伝子改変された生物(例えば、その細胞が、sRGNポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列を含む、生物)は、例えば、植物;藻類;無脊椎動物(例えば、刺胞動物、棘皮動物、虫、ハエ等);脊椎動物(例えば、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、フグ、キンギョ等)、両生類(例えば、サンショウウオ、カエル等)、爬虫類、鳥類、哺乳動物等);有蹄動物(例えば、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ等);齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット);ウサギ目動物(例えば、ウサギ);等を含む、いずれかの生物となることができる。
【0384】
一部の事例では、sRGNポリペプチドは、配列番号1~12に対し少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0385】
トランスジェニック非ヒト動物
上に記載されている通り、一部の実施形態では、核酸(例えば、sRGNポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列)または組換え発現ベクターが、導入遺伝子として使用されて、sRGNポリペプチドを産生するトランスジェニック動物を作製する。よって、本開示は、さらに、トランスジェニック非ヒト動物であって、上に記載されている通り、部位指向型改変ポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む導入遺伝子を含む動物を提供する。一部の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物のゲノムは、sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、遺伝子改変に関してホモ接合型である。一部の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、遺伝子改変に関してヘテロ接合型である。一部の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物は、脊椎動物、例えば、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、キンギョ、フグ、洞窟魚等)、両生類(カエル、サンショウウオ等)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ等)、爬虫類(例えば、ヘビ、トカゲ等)、哺乳動物(例えば、有蹄動物、例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等;ウサギ目動物(例えば、ウサギ);齧歯類(例えば、ラット、マウス);非ヒト霊長類;等)等である。
【0386】
sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸は、未知のプロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい(例えば、核酸が、宿主細胞ゲノムにランダムに組み込む場合)、または公知プロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい。適した公知プロモーターは、いかなる公知プロモーターであってもよく、構成的に活性があるプロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等)、空間的に制限および/または時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)等を含む。
【0387】
トランスジェニック植物
上に記載されている通り、一部の実施形態では、核酸(例えば、sRGNポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列)または組換え発現ベクターが、導入遺伝子として使用されて、sRGNポリペプチドを産生するトランスジェニック植物を作製する。よって、本開示は、さらに、トランスジェニック植物であって、上に記載されている通り、sRGNポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む導入遺伝子を含む植物を提供する。一部の実施形態では、トランスジェニック植物のゲノムは、核酸を含む。一部の実施形態では、トランスジェニック植物は、遺伝子改変に関してホモ接合型である。一部の実施形態では、トランスジェニック植物は、遺伝子改変に関してヘテロ接合型である。
【0388】
外因性核酸を植物細胞に導入する方法は、当技術分野で周知である。斯かる植物細胞は、上に定義される通り、「形質転換された」と考慮される。適した方法は、ウイルス感染(二本鎖DNAウイルス等)、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、電気穿孔、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクション、シリコンカーバイドウィスカー技術、アグロバクテリウム媒介性形質転換およびその他を含む。方法の選択は、一般に、形質転換されている細胞の型、および形質転換が行われる状況(すなわち、in vitro、ex vivoまたはin vivo)に依存する。土壌細菌Agrobacterium tumefaciensに基づく形質転換方法が、維管束植物への外因性核酸分子の導入に特に有用である。アグロバクテリウムの野生型形態は、宿主植物における腫瘍原性クラウンゴール成長の産生を方向付ける、Ti(腫瘍誘導性)プラスミドを含有する。植物ゲノムへのTiプラスミドの腫瘍誘導性T-DNA領域の移入は、Tiプラスミドコードビルレンス遺伝子と共に、移入されるべき領域を描写するダイレクトDNAリピートのセットであるT-DNA境界を要求する。アグロバクテリウムに基づくベクターは、腫瘍誘導性機能が、植物宿主に導入されるべき目的の核酸配列によって置き換えられた、Tiプラスミドの改変形態である。
【0389】
アグロバクテリウム媒介性形質転換は、一般に、同時組込みベクターまたはバイナリーベクター系を用い、この系において、Tiプラスミドの構成成分は、アグロバクテリウム宿主に恒久的に存在しビルレンス遺伝子を保有するヘルパーベクターと、T-DNA配列によって囲まれた目的の遺伝子を含有するシャトルベクターとの間に分割されている。種々のバイナリーベクターが、当技術分野で周知であり、例えば、Clontech(Palo Alto、Calif.)から市販されている。アグロバクテリウムを、培養植物細胞、または例えば葉組織、根外植片、胚軸片もしくは塊茎等の傷のついた組織と共培養する方法も、当技術分野で周知である。例えば、Glick and Thompson, (eds.), Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Boca Raton, Fla.: CRC Press (1993) を参照されたい。
【0390】
マイクロプロジェクタイル媒介性形質転換を使用して、トランスジェニック植物を産生することもできる。Klein et al. (Nature 327:70-73 (1987))によって最初に記載されたこの方法は、塩化カルシウム、スペルミジンまたはポリエチレングリコールによる沈殿によって所望の核酸分子でコーティングされた金またはタングステン等のマイクロプロジェクタイルに頼る。マイクロプロジェクタイル粒子は、BIOLISTIC PD-1000(Biorad;Hercules Calif.)等のデバイスを使用して、被子植物組織へと高速で加速される。
【0391】
核酸は、例えば、in vivoまたはex vivoプロトコールにより、核酸が植物細胞中に進入することができるような様式で植物に導入することができる。「in vivo」とは、核酸が、植物の生体に投与されること、例えば、浸潤を意味する。「ex vivo」とは、細胞または外植片が、植物の外側で改変され、次いで、斯かる細胞または臓器が、植物へと再生されることを意味する。Weissbach and Weissbach, (1989) Methods for Plant Molecular Biology Academic PressおよびGelvin et al., (1990) Plant Molecular Biology Manual, Kluwer Academic Publishersに記載されているもの含む、植物細胞の安定した形質転換またはトランスジェニック植物の確立に適したいくつかのベクターが記載されている。具体例として、Agrobacterium tumefaciensのTiプラスミドに由来するものと共に、Herrera-Estrella et al. (1983) Nature 303: 209、Bevan (1984) Nucl Acid Res. 12: 8711-8721、Klee (1985) Bio/Technolo 3: 637-642によって開示されているものが挙げられる。その代わりに、非Tiベクターを使用して、遊離(free)DNA送達技法を使用することにより、DNAを植物および細胞に移入することができる。これらの方法を使用することにより、コムギ、イネ(Christou (1991) Bio/Technology 9:957-9 and 4462)およびトウモロコシ(Gordon-Kamm (1990) Plant Cell 2: 603-618)等のトランスジェニック植物を産生することができる。未成熟胚も、パーティクルガンを使用することによる直接的DNA送達技法(Weeks et al. (1993) Plant Physiol 102: 1077-1084;Vasil (1993) Bio/Technolo 10: 667-674;Wan and Lemeaux (1994) Plant Physiol104: 37-48)および
【0392】
アグロバクテリウム媒介性DNA移入(Ishida et al. (1996) Nature Biotech 14: 745-750)のために、単子葉植物にとって良好な標的組織となることができる。葉緑体へのDNAの導入のための例示的な方法は、微粒子銃(biolistic bombardment)、プロトプラストのポリエチレングリコール形質転換、およびマイクロインジェクションである(Daniell et al. Nat. Biotechnol 16:345-348, 1998;Staub et al. Nat. Biotechnol 18: 333-338, 2000;O’Neill et al. Plant J. 3:729-738, 1993;Knoblauch et al. Nat. Biotechnol17: 906-909;米国特許第5,451,513号、同第5,545,817号、同第5,545,818号および同第5,576,198号;国際(Inti.)出願番号WO95/16783;ならびにBoynton et al., Methods in Enzymology 217: 510-536 (1993)、Svab et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 913-917 (1993)およびMcBride et al., Proc. Nati. Acad. Sci. USA 91: 7301-7305 (1994))。微粒子銃、プロトプラストのポリエチレングリコール形質転換、およびマイクロインジェクションの方法に適したいずれかのベクターは、葉緑体形質転換のための標的化ベクターとして適するであろう。特に、導入方法がアグロバクテリウムを利用しない場合、いずれかの二本鎖DNAベクターを形質転換ベクターとして使用することができる。
【0393】
遺伝子改変することができる植物は、子実、飼料作物、果実、野菜、油糧種子作物、ヤシ、林業およびブドウの木(vine)を含む。改変することができる植物の具体例を次に示す:トウモロコシ、バナナ、ピーナッツ、フィールドピー、ヒマワリ、トマト、キャノーラ、タバコ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ジャガイモ、ダイズ、ワタ、カーネーション、ソルガム、ルピナスおよびイネ。
【0394】
本開示によって、形質転換された植物細胞、形質転換された植物細胞を含有する組織、植物および産物も提供される。形質転換された細胞、ならびにこれを含む組織および産物の特色は、ゲノムに組み込まれた核酸の存在、および植物細胞による、sRGNポリペプチド、例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等の産生である。本発明の組換え植物細胞は、組換え細胞の集団として、または組織、種子、全草(whole plant)、茎、果実、葉、根、花、茎、塊茎、子実、動物飼料、植物の圃場、およびその他として有用である。
【0395】
sRGNポリペプチド(例えば、天然に存在するsRGN;改変された、すなわち、突然変異したまたは変異体のsRGN;キメラsRGN;等)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、未知のプロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい(例えば、核酸が、宿主細胞ゲノムにランダムに組み込む場合)、または公知プロモーターの制御下に置かれて(すなわち、これに作動可能に連結されて)よい。適した公知プロモーターは、いかなる公知プロモーターであってもよく、構成的に活性があるプロモーター、誘導性プロモーター、空間的に制限および/または時間的に制限されたプロモーター等を含む。
【0396】
本開示は、宿主細胞における標的核酸の転写を調節する方法を提供する。本方法は、一般に、酵素的に不活性なsRGNポリペプチドおよびガイドRNAと標的核酸とを接触させるステップが関与する。本方法は、種々の適用において有用であり、これらの適用もまた提供される。
【0397】
本開示の転写調節方法は、RNAiが関与する方法の弱点のいくつかを克服する。本開示の転写調節方法は、研究適用、創薬(例えば、ハイスループットスクリーニング)、標的検証、産業適用(例えば、作物操作;微生物操作等)、診断適用、治療適用およびイメージング技法を含む、多種多様な適用における用途を見出す。
【0398】
転写を調節する方法
本開示は、宿主細胞における標的DNAの転写を選択的に調節する方法を提供する。本方法は、一般に、a)宿主細胞に、i)ガイドRNA、またはガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;およびii)変異体sRGN部位指向型ポリペプチド(「変異体sRGNポリペプチド」)、または変異体sRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入するステップが関与し、変異体sRGNポリペプチドは、低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す。
【0399】
ガイドRNA(本明細書において、「ガイドRNA」;または「gRNA」とも称される)は、i)標的DNAにおける標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;ii)sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメント;およびiii)転写ターミネーターを含む。標的DNAにおける標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメントは、本明細書において、「標的化セグメント」と称される。sRGNポリペプチドと相互作用する第2のセグメントは、本明細書において、「タンパク質結合配列」または「dsRGN結合ヘアピン」または「dsRGNハンドル」とも称される。「セグメント」とは、分子のセグメント/セクション/領域、例えば、RNAにおけるヌクレオチドの近接した区間を意味する。「セグメント」の定義は、特定の文脈で特に他の定義がされていない限り、特異的な数の総塩基対に限定されるものではなく、いずれかの長さ総計のRNA分子の領域を含むことができ、他の分子に対し相補性を有する領域を含んでも含まなくてもよい。変異体sRGN部位指向型ポリペプチドは、i)ガイドRNAと相互作用するRNA結合部分;および低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す活性部分を含む。
【0400】
ガイドRNAおよび変異体sRGNポリペプチドは、宿主細胞において複合体を形成する;複合体は、宿主細胞において標的DNAの転写を選択的に調節する。
【0401】
一部の事例では、本開示の転写調節方法は、宿主細胞における標的核酸の選択的調節(例えば、低下または増加)を提供する。例えば、標的核酸の転写の「選択的」低下は、ガイドRNA/変異体sRGNポリペプチド複合体の非存在下における標的核酸の転写のレベルと比較して、標的核酸の転写を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または90%超低下させる。標的核酸の転写の選択的低下は、標的核酸の転写を低下させるが、非標的核酸の転写を実質的に低下させない、例えば、非標的核酸の転写は、ガイドRNA/変異体sRGNポリペプチド複合体の非存在下における非標的核酸の転写のレベルと比較して、仮にあるとしても、10%未満低下される。
【0402】
増加された転写
標的DNAの「選択的に」増加された転写は、ガイドRNA/変異体sRGNポリペプチド複合体の非存在下における標的DNAの転写のレベルと比較して、標的DNAの転写を、少なくとも1.1倍(例えば、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍または少なくとも20倍)増加させることができる。標的DNAの転写の選択的増加は、標的DNAの転写を増加させるが、非標的DNAの転写を実質的に増加させない、例えば、非標的DNAの転写は、ガイドRNA/変異体sRGNポリペプチド複合体の非存在下における非標的DNAの転写のレベルと比較して、仮にあるとしても、約5倍未満(例えば、約4倍未満、約3倍未満、約2倍未満、約1.8倍未満、約1.6倍未満、約1.4倍未満、約1.2倍未満または約1.1倍未満)増加される。
【0403】
非限定的な例として、増加された転写は、dsRGNを異種配列に融合することにより達成することができる。適した融合パートナーとして、標的DNAまたは標的DNAに関連するポリペプチド(例えば、ヒストンまたは他のDNA結合タンパク質)に直接的に作用することにより転写を間接的に増加させる活性を提供するポリペプチドが挙げられるがこれらに限定されない。適した融合パートナーとして、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、クロトニル化(crotonylation)、脱クロトニル化、プロピオニル化(propionylation)、脱プロピオニル化、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性を提供するポリペプチドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0404】
追加的な適した融合パートナーとして、標的核酸の増加された転写を直接的に提供するポリペプチド(例えば、転写活性化因子またはその断片、転写活性化因子をリクルートするタンパク質またはその断片、小分子/薬物応答性転写調節因子等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0405】
原核生物における転写を増加させるためにdsRGN融合タンパク質を使用した方法の非限定的な例として、細菌ワンハイブリッド(one-hybrid)(B1H)またはツーハイブリッド(B2H)系の改変が挙げられる。B1H系において、DNA結合ドメイン(BD)は、細菌転写活性化ドメイン(AD、例えば、Escherichia coli RNAポリメラーゼのアルファサブユニット(RNAPa))に融合される。よって、dsRGNは、ADを含む異種配列に融合させることができる。dsRGN融合タンパク質が、プロモーターの上流領域に到達すると(ガイドRNAによって当該箇所に標的化される)、dsRGN融合タンパク質のAD(例えば、RNAPa)は、RNAPホロ酵素をリクルートし、転写活性化をもたらす。B2H系において、BDは、ADに直接的に融合されない;代わりに、それらの相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用(例えば、GAL11P-GAL4相互作用)によって媒介される。本方法における使用のために斯かる系を改変するために、dsRGNは、タンパク質-タンパク質相互作用を提供する第1のタンパク質配列(例えば、酵母GAL11Pおよび/またはGAL4タンパク質)に融合させることができ、RNAaは、タンパク質-タンパク質相互作用を完成させる第2のタンパク質配列(例えば、GAL11PがdsRGNに融合される場合はGAL4、GAL4がdsRGNに融合される場合はGAL11P、等)に融合させることができる。GAL11PおよびGAL4の間の結合親和性は、結合効率および転写発射率(firing rate)を増加させる。
【0406】
真核生物における転写を増加させるためにdsRGN融合タンパク質を使用した方法の非限定的な例として、活性化ドメイン(AD)(例えば、GAL4、ヘルペスウイルス活性化タンパク質VP16またはVP64、ヒト核内因子NF-KB p65サブユニット等)へのdsRGNの融合が挙げられる。系を誘導性にするため、dsRGN融合タンパク質の発現は、誘導性プロモーター(例えば、Tet-ON、Tet-OFF等)によって制御することができる。ガイドRNAは、公知転写応答エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー等)、公知上流活性化配列(UAS)、標的DNAの発現を制御することができると疑われる未知または公知機能の配列、等を標的化するように設計することができる。
【0407】
追加的な融合パートナー
増加または減少された転写を達成するための融合パートナーの非限定的な例として、転写活性化因子および転写抑圧因子ドメイン(例えば、クルッペル関連ボックス(KRABまたはSKD);Mad mSIN3相互作用ドメイン(SID);ERF抑圧因子ドメイン(ERD)等)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の斯かる事例では、dsRGN融合タンパク質は、ガイドRNAによって、標的DNAにおける特異的位置(すなわち、配列)へと標的化され、プロモーターへのRNAポリメラーゼ結合の遮断(これは、転写活性化因子機能を選択的に阻害する)、および/または局所的クロマチン状態の改変(例えば、標的DNAを改変する、または標的DNAに関連するポリペプチドを改変する融合配列が使用される場合)等、遺伝子座特異的調節を発揮する。一部の事例では、変化は、一過性である(例えば、転写抑圧または活性化)。一部の事例では、変化は、遺伝性である(例えば、エピジェネティック改変が、標的DNAに、または標的DNAに関連するタンパク質、例えば、ヌクレオソームヒストンに為される場合)。一部の実施形態では、異種配列は、dsRGNポリペプチドのC末端に融合させることができる。一部の実施形態では、異種配列は、dsRGNポリペプチドのN末端に融合させることができる。一部の実施形態では、異種配列は、dsRGNポリペプチドの内側部分(すなわち、NまたはC末端以外の部分)に融合させることができる。dsRGN融合タンパク質を使用した方法の生物学的効果は、いずれか簡便な方法(例えば、遺伝子発現アッセイ;クロマチンに基づくアッセイ、例えば、クロマチン免疫沈降(ChIP)、クロマチンin vivoアッセイ(CiA)等)によって検出することができる。
【0408】
一部の事例では、方法は、2種またはそれよりも多い異なるガイドRNAの使用が関与する。例えば、2種の異なるガイドRNAを、単一の宿主細胞において使用することができ、2種の異なるガイドRNAは、同じ標的核酸における2種の異なる標的配列を標的化する。よって、例えば、転写調節方法は、宿主細胞に、第2のガイドRNA、または第2のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入するステップをさらに含むことができ、第2のガイドRNAは、i)標的DNAにおける第2の標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;ii)部位指向型ポリペプチドと相互作用する第2のセグメント;およびiii)転写ターミネーターを含む。一部の事例では、同じ標的核酸における2種の異なる標的配列を標的化する2種の異なるガイドRNAの使用は、標的核酸の転写における増加された調節(例えば、低下または増加)を提供する。
【0409】
別の例として、2種の異なるガイドRNAを、単一の宿主細胞において使用することができ、2種の異なるガイドRNAは、2種の異なる標的核酸を標的化する。よって、例えば、転写調節方法は、宿主細胞に、第2のガイドRNA、または第2のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入するステップをさらに含むことができ、第2のガイドRNAは、i)少なくとも第2の標的DNAにおける標的配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメント;ii)部位指向型ポリペプチドと相互作用する第2のセグメント;およびiii)転写ターミネーターを含む。
【0410】
一部の実施形態では、核酸(例えば、ガイドRNA、例えば、単一分子ガイドRNA;ドナーポリヌクレオチド;sRGNポリペプチドをコードする核酸;等)は、追加的な望ましい特色(例えば、改変または調節された安定性;細胞下標的化;追跡、例えば、蛍光標識;タンパク質またはタンパク質複合体に対する結合部位;等)を提供する改変または配列を含む。非限定的な例として、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化テイル(すなわち、3’ポリ(A)テイル);リボスイッチ配列またはアプタマー配列(例えば、タンパク質および/またはタンパク質複合体による調節された安定性および/または調節された到達性を可能にするための);ターミネーター配列;dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列);RNAを細胞下位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体、およびその他)に標的化する改変または配列;追跡を提供する改変または配列(例えば、蛍光分子への直接的コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列、等);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑圧因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼおよびその他を含む、DNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する改変または配列;RNA自身、結果的に、sRGNリボヌクレオタンパク質の構造を変更するRNAの改変;ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0411】
DNA標的化セグメント
ガイドRNAのDNA標的化セグメント(または「DNA標的化配列」)は、標的DNA内の特異的配列に相補的なヌクレオチド配列(標的DNAの相補的鎖)を含む。
【0412】
換言すると、ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)による配列特異的様式で、標的DNAと相互作用する。そのようなものとして、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変動する場合があり、ガイドRNAおよび標的DNAが相互作用するであろう標的DNA内の位置を決定する。ガイドRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のいずれか所望の配列にハイブリダイズするように改変することができる(例えば、遺伝子操作により)。
【0413】
安定性制御配列(例えば、転写ターミネーターセグメント)
安定性制御配列は、RNA(例えば、ガイドRNA)の安定性に影響する。適した安定性制御配列の一例は、転写ターミネーターセグメント(すなわち、転写終結配列)である。ガイドRNAの転写ターミネーターセグメントは、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、例えば、約10ヌクレオチド(nt)~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90ntまたは約90nt~約100ntの長さ総計を有することができる。例えば、転写ターミネーターセグメントは、約15ヌクレオチド(nt)~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30ntまたは約15nt~約25ntの長さを有することができる。
【0414】
一部の事例では、転写終結配列は、真核細胞において機能的な配列である。一部の事例では、転写終結配列は、原核細胞において機能的な配列である。
【0415】
安定性制御配列に(例えば、転写終結セグメント、または増加された安定性を提供するためのガイドRNAのいずれかのセグメントに)含まれ得るヌクレオチド配列は、例えば、Rho非依存性trp終結部位を含む。
【0416】
追加的な配列
一部の実施形態では、ガイドRNAは、5’または3’末端のいずれかに少なくとも1つの追加的なセグメントを含む。例えば、適した追加的なセグメントは、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化テイル(すなわち、3’ポリ(A)テイル);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質およびタンパク質複合体による調節された安定性および/または調節された到達性を可能にするための);dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン))を形成する配列;RNAを細胞下位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体およびその他)に標的化する配列;追跡を提供する改変または配列(例えば、蛍光分子への直接的コンジュゲーション、蛍光検出を容易にする部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列、等);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑圧因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼおよびその他を含む、DNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を提供する改変または配列、増加された、減少されたおよび/または制御可能な安定性を提供する改変または配列;ならびにこれらの組合せを含むことができる。
【0417】
複数の同時ガイドRNA
一部の実施形態では、複数のガイドRNAが、同じ細胞において同時に使用されて、同じ標的DNAまたは異なる標的DNAにおける異なる位置における転写を同時に調節する。一部の実施形態では、2種またはそれよりも多いガイドRNAは、同じ遺伝子または転写物または遺伝子座を標的とする。一部の実施形態では、2種またはそれよりも多いガイドRNAは、異なる無関係の遺伝子座を標的とする。一部の実施形態では、2種またはそれよりも多いガイドRNAは、異なるが関係する遺伝子座を標的とする。
【0418】
ガイドRNAは、小型かつ頑強であるため、それを望むのであれば、同じ発現ベクターに同時に存在することができ、同じ転写制御下に置くことさえできる。一部の実施形態では、2種またはそれよりも多い(例えば、3種もしくはそれよりも多い、4種もしくはそれよりも多い、5種もしくはそれよりも多い、10種もしくはそれよりも多い、15種もしくはそれよりも多い、20種もしくはそれよりも多い、25種もしくはそれよりも多い、30種もしくはそれよりも多い、35種もしくはそれよりも多い、40種もしくはそれよりも多い、45種もしくはそれよりも多いまたは50種もしくはそれよりも多い)ガイドRNAは、標的細胞において同時に発現される(同じまたは異なるベクターから/同じまたは異なるプロモーターから)。一部の事例では、複数のガイドRNAは、ターゲターRNAの天然に存在するCRISPRアレイを模倣するアレイにおいてコードされ得る。標的化セグメントは、およそ30ヌクレオチド長配列(約16~約100ntとなり得る)としてコードされ、CRISPRリピート配列によって分離される。アレイは、RNAをコードするDNAによって、またはRNAとして細胞に導入することができる。
【0419】
複数のガイドRNAを発現させるために、Csy4エンドリボヌクレアーゼによって媒介される人工RNAプロセシング系を使用することができる。例えば、複数のガイドRNAは、前駆体転写物(例えば、U6プロモーターから発現される)においてタンデムアレイへと連鎖状にし、Csy4特異的RNA配列によって分離することができる。同時発現されたCsy4タンパク質は、前駆体転写物を複数のガイドRNAへと切断する。RNAプロセシング系を使用するための利点は、次のものを含む:第一に、複数のプロモーターを使用する必要がないこと;第二に、全てのガイドRNAが、前駆体転写物からプロセシングされるため、それらの濃度が、同様のdsRGN結合に対し正規化されること。
【0420】
Csy4は、細菌Pseudomonas aeruginosaに由来する小型のエンドリボヌクレアーゼ(RNase)タンパク質である。Csy4は、最小17bp RNAヘアピンを特異的に認識し、急速(<1分間)かつ高度に効率的な(>99.9%)RNA切断を示す。大部分のRNaseとは異なり、切断されたRNA断片は、安定しており機能的に活性なままである。Csy4に基づくRNA切断は、人工RNAプロセシング系において別の目的で使うことができる。この系において、17bp RNAヘアピンは、単一のプロモーターから前駆体転写物として転写された複数のRNA断片の間に挿入される。Csy4の同時発現は、個々のRNA断片の作製において有効である。
【0421】
バリアントsRGN部位指向型ポリペプチド
上で言及したように、ガイドRNAおよびバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは複合体を形成する。ガイドRNAは、標的DNAの配列に相補的であるヌクレオチド配列を含むことにより、複合体に対する標的特異性を提供する。バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、低下したエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を有する。例えば、本開示の転写調節法で使用するのに適したバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、参照sRGNポリペプチド、例えば、配列番号1~12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む参照sRGNポリペプチドのエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性の、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、または約0.1%未満を示す。一部の実施形態では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、検出可能なエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性(dsRGN)を実質的に有さない。一部の実施形態では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドが低下した触媒活性を有する場合、ポリペプチドは、ガイドRNAと相互作用する能力を保持している限り、部位特異的様式で標的DNAに依然として結合することができる(ポリペプチドはガイドRNAによって標的DNA配列に依然として誘導されるため)。一部の場合では、適切なバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%またはそれよりも多いアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0422】
一部の場合では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖を切断することができるが、標的DNAの非相補鎖を切断する能力が低下しているニッカーゼである。
【0423】
一部の場合では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、標的DNAの非相補鎖を切断することができるが、標的DNAの相補鎖を切断する能力が低下しているニッカーゼである。
【0424】
一部の場合では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖と非相補鎖の両方を切断する能力が低下している。例えば、アラニン置換が企図されている。
【0425】
一部の場合では、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、融合ポリペプチド(「バリアントsRGN融合ポリペプチド」)、すなわち、i)バリアントsRGN部位指向型ポリペプチド;およびii)共有結合的に連結された異種ポリペプチド(「融合パートナー」とも称される)を含む融合ポリペプチドである。
【0426】
異種ポリペプチドは、バリアントsRGN融合ポリペプチドによっても示される活性(例えば、酵素活性)を示すことができる(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性など)。異種核酸配列を別の核酸配列に連結して(例えば、遺伝子操作によって)、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を作出することができる。一部の実施形態では、バリアントsRGN融合ポリペプチドは、バリアントsRGNポリペプチドを、細胞内局在化をもたらす異種配列(すなわち、異種配列は、細胞内局在化配列、例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミトコンドリアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するための葉緑体局在化シグナル;ER保留シグナルなどである)と融合することによって作出される。一部の実施形態では、異種配列は、追跡および/または精製を容易にするためのタグ(すなわち、異種配列は検出可能な標識である)を提供し得る(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、tdTomatoなど;ヒスチジンタグ、例えば、6XHisタグ;赤血球凝集素(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグなど)。一部の実施形態では、異種配列は、安定性の増加または減少をもたらし得る(すなわち、異種配列は安定性制御ペプチド、例えば、一部の場合では制御可能なデグロン(例えば、温度感受性のまたは薬物により制御可能なデグロン配列、下を参照)である)。一部の実施形態では、異種配列は、標的DNAからの転写の増加または減少をもたらし得る(すなわち、異種配列は、転写調節配列、例えば、転写因子/活性化因子またはその断片、転写因子/活性化因子をリクルートするタンパク質またはその断片、転写抑制因子またはその断片、転写抑制因子をリクルートするタンパク質またはその断片、小分子/薬物応答性転写調節因子などである)。一部の実施形態では、異種配列は、結合ドメインを提供し得る(すなわち、異種配列は、例えば、キメラdsRGNポリペプチドを目的の別のタンパク質、例えば、DNAまたはヒストン修飾タンパク質、転写因子または転写抑制因子、リクルートタンパク質など、に結合する能力を提供する、タンパク質結合配列である)。
【0427】
安定性の増加または減少をもたらす適切な融合パートナーには、限定はされないが、デグロン配列が含まれる。デグロンとは、それらが一部であるタンパク質の安定性を制御するアミノ酸配列であることが、当業者に理解される。例えば、デグロン配列を含むタンパク質の安定性は、デグロン配列によって少なくとも部分的に制御される。一部の場合では、適切なデグロンは、デグロンが実験的制御に関係なくタンパク質安定性にその影響を及ぼすように、恒常性である(すなわち、デグロンは薬物誘導性、温度誘導性などではない)。一部の場合では、デグロンは、バリアントsRGNポリペプチドが所望の条件に依存して「オン」(すなわち、安定な)または「オフ」(すなわち、不安定な、低下した)を切り替えることができるように、バリアントsRGNポリペプチドに制御可能な安定性を提供する。例えば、デグロンが温度感受性デグロンである場合、バリアントsRGNポリペプチドは、閾値温度(例えば、42℃、41℃、40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃など)未満では機能的(すなわち、「オン」、安定)であるが、閾値温度を超えると非機能的(すなわち、「オフ」、低下した)であり得る。別の例として、デグロンが薬物誘導性デグロンである場合、薬物の存在または非存在によって、タンパク質を「オフ」(すなわち、不安定な)状態から「オン」(すなわち、安定な)状態へ、またはその逆に切り替えることができる。例示的な薬物誘導性デグロンはFKBP12タンパク質に由来する。デグロンの安定性はデグロンに結合する小分子の存在または非存在によって制御される。
【0428】
適切なデグロンの例としては、限定はされないが、Shield-1、DHFR、オーキシン、および/または温度によって制御されるデグロンが挙げられる。適切なデグロンの非限定的な例は当技術分野において公知である(例えば、Dohmen et al., Science, 1994. 263(5151): p. 1273-1276: Heat-inducible degron: a method for constructing temperature-sensitive mutants;Schoeber et al., Am J Physiol Renal Physiol. 2009 Jan;296(1):F204-11 :Conditional fast expression and function of multimeric TRPV5 channels using Shield-1;Chu et al., Bioorg Med Chem Lett. 2008 Nov 15;18(22):5941-4: Recent progress with FKBP-derived destabilizing domains;Kanemaki, Pflugers Arch. 2012 Dec 28: Frontiers of protein expression control with conditional degrons;Yang et al., Mol Cell. 2012 Nov 30;48(4):487-8: Titivated for destruction: the methyl degron;Barbour et al., Biosci Rep. 2013 Jan 18;33(1).: Characterization of the bipartite degron that regulates ubiquitin-independent degradation of thymidylate synthase;およびGreussing et al., J Vis Exp. 2012 Nov 10;(69): Monitoring of ubiquitin-proteasome activity in living cells using a Degron (dgn)-destabilized green fluorescent protein (GFP)-based reporter protein;これらは全て、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0429】
例示的なデグロン配列は、細胞および動物の両方において十分に特徴付けされ、試験されている。したがって、sRGNをデグロン配列に融合することにより、「調整可能」かつ「誘導性」のsRGNポリペプチドが産生される。本明細書に記載の融合パートナーのいずれも、望ましい任意の組合せで使用することができる。この点を例示するための1つの非限定的な例として、sRGN融合タンパク質は、検出のためのYFP配列、安定性のためのデグロン配列、および標的DNAの転写を増加させる転写活性化因子配列を含み得る。さらに、sRGN融合タンパク質中で使用することができる融合パートナーの数は無制限である。一部の場合では、sRGN融合タンパク質は、1つまたは複数(例えば、2つもしくはそれよりも多い、3つもしくはそれよりも多い、4つもしくはそれよりも多い、または5つもしくはそれよりも多い)の異種配列を含む。
【0430】
適切な融合パートナーとしては、限定はされないが、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、クロトニル化活性、脱クロトニル化活性、プロピオニル化活性、脱プロピオニル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性をもたらすポリペプチドが挙げられ、これらの活性はいずれも、DNAの直接改変(例えば、DNAのメチル化)に、またはDNA会合ポリペプチドの改変(例えば、ヒストンまたはDNA結合タンパク質)に当てることができる。さらに、適切な融合パートナーとしては、限定はされないが、境界エレメント(例えば、CTCF)、末梢動員を提供するタンパク質およびその断片(例えば、ラミンA、ラミンBなど)、ならびにタンパク質ドッキングエレメント(例えば、FKBP/FRB、Pil1/Aby1など)が挙げられる。
【0431】
一部の実施形態では、sRGNポリペプチドはコドン最適化することができる。この種の最適化は、当技術分野において公知であり、同一のタンパク質をコードしたまま意図される宿主生物または細胞のコドン選択を模倣するために、外来性DNAの突然変異を必要とする。したがって、コドンは変化されるが、コードされるタンパク質は未変化のままである。例えば、意図される標的細胞がヒト細胞である場合、ヒトコドン最適化dsRGN(またはdsRGNバリアント)が適切な部位指向型改変ポリペプチドであろう。別の非限定的な例として、意図される宿主細胞がマウス細胞である場合には、マウスコドン最適化sRGN(またはバリアント、例えば、酵素的に不活性なバリアント)が適切なsRGN部位指向型ポリペプチドであろう。コドン最適化は必要なものではないが、ある特定の場合では受け入れられるものであり、好ましい場合がある。
【0432】
ポリアデニル化シグナルも、意図される宿主における発現を最適化するように選択することができる。
【0433】
宿主細胞
転写を調節するための本開示の方法は、in vivoおよび/またはex vivoおよび/またはin vitroにおいて有糸分裂または分裂終了細胞内の転写調節を誘導するために用いることができる。ガイドRNAは標的DNAにハイブリダイズすることにより特異性を提供するので、有糸分裂および/または分裂終了細胞は、いろいろな宿主細胞のいずれかであってよく、適切な宿主細胞としては、限定はされないが、細菌細胞;古細菌細胞;単細胞真核生物;植物細胞;藻類細胞、例えば、Botryococcus braunii、Chlamydomonas reinhardtii、Nannochloropsis gaditana、Chlorella pyrenoidosa、Sargassum patens(C.Agardh)など;真菌細胞;動物細胞;無脊椎動物(例えば、昆虫、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)由来の細胞;真核原虫(例えば、マラリア原虫、例えば、Plasmodium fakiparum;蠕虫など);脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類動物、鳥類、哺乳動物)由来の細胞;哺乳動物細胞、例えば、げっ歯動物細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞などが挙げられる。適切な宿主細胞としては、天然に存在する細胞;遺伝子改変細胞(例えば、実験室で、例えば、「ヒトの手」によって遺伝子改変された細胞);および任意の方法でin vitroで操作された細胞が挙げられる。一部の場合では、宿主細胞は単離されている。
【0434】
いかなる種類の細胞も目的になり得る(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニューロン、筋細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;in vitroまたはin vivoにおける、あらゆる段階の胚の胚細胞、例えば、1細胞、2細胞、4細胞、8細胞などの段階のゼブラフィッシュ胚など)。細胞は株化細胞系由来でもよいし、あるいは初代細胞であってもよく、「初代細胞」、「初代細胞系」、および「初代培養物」とは、本明細書で同義的に使用されて、対象に由来し、培養物の、限定された回数の継代、すなわち、分裂に対してin vitroにおいて成長が可能となった、細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されている場合があるが、危機期を経験するには十分な回数継代されていない、培養物を含む。初代細胞系はin vitroにおいて10継代未満に維持することができる。標的細胞は、多くの実施形態では、単細胞生物であるか、または培養で成長させる。
【0435】
細胞が初代細胞である場合、そのような細胞は任意の好都合な方法によって個体から採取することができる。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離などによって好都合に採取され得るが、例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃などの組織由来の細胞は、生検によって最も好都合に採取される。適切な溶液を、採取した細胞を分散または懸濁させるために使用してもよい。そのような溶液は、一般的に、低濃度、例えば5~25mMでの許容可能な緩衝液と共に、ウシ胎仔血清または他の天然に存在する因子を好都合に補充されている、平衡塩類溶液、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液などである。好都合な緩衝液には、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが含まれる。細胞は直ちに使用してもよいし、長期間保存、凍結し、解凍し、再使用することが可能であってもよい。そのような場合、細胞を、通常、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、40%緩衝培地、または細胞をそのような凍結温度において保存するために当技術分野において一般的に使用されるいくつかの他のそのような溶液中で凍結し、凍結培養細胞を解凍するための当技術分野において一般に公知の様式で解凍する。
【0436】
宿主細胞への核酸の導入
ガイドRNA、またはそれをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、いろいろな周知の方法のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。同様に、方法が、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を宿主細胞に導入するステップを含む場合、そのような核酸は、いろいろな周知の方法のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。
【0437】
核酸を宿主細胞に導入する方法は当技術分野において公知であり、任意の公知の方法を使用して核酸(例えば、発現構築物)を幹細胞または始原細胞に導入することができる。適切な方法としては、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、原形質融合、リポフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注射、限定はされないが、エキソソーム送達を含む、ナノ粒子媒介性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pii: 50169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023)などが挙げられる。
【0438】
核酸
本開示は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。一部の場合では、核酸は、バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も含む。
【0439】
一部の実施形態では、方法は、ガイドRNAおよび/またはバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の核酸を宿主細胞(または宿主細胞の集団)に導入するステップを含む。一部の実施形態では、標的DNAを含む細胞はin vitroである。一部の実施形態では、標的DNAを含む細胞はin vivoである。ガイドRNAおよび/またはバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸は、発現ベクターを含み、発現ベクターはガイドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0440】
発現ベクター
一部の実施形態では、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号)、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物、組換えレトロウイルス構築物などである。適切な発現ベクターとしては、限定はされないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスに基づくウイルスベクター;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994;Borras et al., Gene Ther 6:515 524, 1999;Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995;Sakamoto et al., H Gene Ther 5:10881097, 1999;WO94/12649、WO93/03769;WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene Ther 9:81 86,1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997;Bennett et al., Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997;Jomary et al., Gene Ther 4:683-690, 1997, Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999;Ali et al., Hum Mol Genet 5:591 594, 1996;WO93/09239のSrivastava, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822-3828;Mendelson et al., Viral. (1988) 166:154-165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613-10617);SV40;単純疱疹ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997;Takahashi et al., J Virol 73:7812 7816, 1999);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳房腫瘍ウイルスなどのレトロウイルス由来のベクター)などが挙げられる。
【0441】
多数の適切な発現ベクターが当業者に公知であり、多くは市販されている。例として以下のベクターを提示する;真核宿主細胞の場合:pXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)。しかし、宿主細胞に適合している限り、他の任意のベクターを使用してもよい。
【0442】
利用される宿主/ベクター系に応じて、恒常性および誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、いくつかの適切な転写および翻訳制御エレメントのいずれかを、発現ベクター内で使用してもよい(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。
【0443】
一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント、例えば、プロモーターなどの転写制御エレメントに作動可能に連結されている。転写制御エレメントは、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞;または原核細胞(例えば、細菌または古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的であり得る。一部の実施形態では、ガイドRNAおよび/またはバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞および真核細胞の両方においてガイドRNAおよび/またはバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御エレメントに作動可能に連結されている。
【0444】
プロモーターは、恒常的活性型プロモーター(すなわち、恒常的に活性/「ON」状態であるプロモーター)であり得、誘導性プロモーター(すなわち、その状態、活性/「ON」または不活性/「OFF」が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタンパク質の存在によって制御されるプロモーター)であってもよく、空間限定型プロモーター(すなわち、転写制御エレメント、エンハンサーなど)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーターなど)であってもよく、時間限定型プロモーター(すなわち、プロモーターは、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセスの特定の段階、例えば、マウスにおける毛包周期の間、「ON」状態または「OFF」状態にある)であってもよい。
【0445】
適切なプロモーターは、ウイルス由来であってもよく、したがってウイルスプロモーターと称されてもよく、または原核もしくは真核生物を含む任意の生物に由来することができる。適切なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、限定はされないが、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス長い末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV超初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6)(Miyagishi et al., Nature Biotechnology 20, 497- 500 (2002))、強化されたU6プロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)などが挙げられる。
【0446】
誘導性プロモーターの例としては、限定はされないが、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、T3 RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター(例えば、Tet-ON、Tet-OFFなど)、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなどが挙げられる。したがって誘導性プロモーターは、限定はされないが、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合物などを含む分子によって調節することができる。
【0447】
一部の実施形態では、プロモーターは、多細胞生物においてプロモーターが特定の細胞のサブセット内で活性(すなわち、「ON」)であるような、空間限定型プロモーター(すなわち、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーターなど)である。空間限定型プロモーターは、エンハンサー、転写制御エレメント、制御配列などとも称され得る。好都合な任意の空間限定型プロモーターを使用することもでき、適切なプロモーター(例えば、脳特異的プロモーター、ニューロンのサブセットにおける発現を駆動するプロモーター、生殖細胞系列における発現を駆動するプロモーター、肺における発現を駆動するプロモーター、筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を駆動するプロモーターなど)の選択は、生物によって異なる。例えば、植物、ハエ、虫、哺乳動物、マウスなどについて、種々の空間限定型プロモーターが公知である。したがって、空間限定型プロモーターを使用して、生物に応じて、種々様々な異なる組織および細胞型においてバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドをコードする核酸の発現を調節することがでる。一部の空間限定型プロモーターはまた、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間、「ON」状態または「OFF」状態にあるように、時間限定型である。
【0448】
例示を目的として、空間限定型プロモーターの例としては、限定はされないが、ニューロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、平滑筋特異的プロモーター、光受容器特異的プロモーターなどが挙げられる。ニューロン特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSENO2、X51956);芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)プロモーター;神経フィラメントプロモーター(例えば、GenBank HUMNFL、L04147);シナプシンプロモーター(例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301);thy-1プロモーター(例えば、Chen et al. (1987) Ce/151:7-19;およびLlewellyn, et al. (2010) Nat. Med. 16(10):1161-1166);セロトニン受容体プロモーター(例えば、GenBank S62283);チロシン水酸化酵素プロモーター(TH)(例えば、Oh et al. (2009) Gene Ther 16:437;Sasaoka et al. (1992) Mol. Brain Res. 16:274;Boundy et al. (1998) J. Neurosci. 18:9989;およびKaneda et al. (1991) Neuron 6:583-594);GnRHプロモーター(例えば、Radovick et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3402-3406);L7プロモーター(例えば、Oberdick et al. (1990) Science 248:223-226);DNMTプロモーター(例えば、Bartge et al. (1988) Proc. Nat/. Acad. Sci. USA 85:3648-3652);エンケファリンプロモーター(例えば、Comb et al. (1988) EMBO J. 17:3793-3805);ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+-カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ11-アルファ(CamKIIa)プロモーター(例えば、Mayford et al. (1996) Proc. Nat/. Acad. Sci. USA 93:13250;およびCasanova et al. (2001) Genesis 31:37);CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子-0プロモーター(例えば、Liu et al. (2004)Gene Therapy 11:52-60)などが挙げられる。
【0449】
脂肪細胞特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、aP2遺伝子プロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の-5.4kb~+21bpの領域(例えば、Tozzo et al. (1997) Endocrinol. 138:1604; Ross et al. (1990) Proc. Nat!. Acad. Sci. USA 87:9590; and Pavjani et al. (2005) Nat. Med. 11:797);グルコーストランスポーター-4(GLUT4)プロモーター(例えば、Knight et al. (2003) Proc. Nat/. Acad. Sci. USA 100:14725);脂肪酸トランスロカーゼ(FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kuriki et al. (2002) Biol. Pharm. Bull. 25:1476;およびSato et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:15703);ステアロイルCoA不飽和酵素-1(SCD1)プロモーター(Taboret al. (1999) J. Biol. Chem. 274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Mason et al. (1998) Endocrinol. 139:1013;およびChen et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Comm. 262:187);アディポネクチンプロモーター(例えば、Kita et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Comm. 331:484;およびChakrabarti (2010) Endocrinol. 151:2408);アディプシンプロモーター(例えば、Platt et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7490);レジスチンプロモーター(例えば、Seo et al. (2003) Malec. Endocrinol. 17:1522)などが挙げられる。
【0450】
心筋細胞特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、以下の遺伝子に由来する制御配列が挙げられる:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心筋トロポニンC、心筋アクチンなど。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35:560-566;Robbins et al. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 752:492-505;Linn et al. (1995) Circ. Res. 76:584591;Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:1870-1885;Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;および Sartorelli et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047-4051.
【0451】
平滑筋特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、SM22aプロモーター(例えば、Akyilrek et al. (2000) Mol. Med. 6:983;および米国特許第7,169,874号);スムーセリンプロモーター(例えば、WO2001/018048);a-平滑筋アクチンプロモーターなどが挙げられる。例えば、SM22aプロモーターの0.4kb領域は、その中に2つのCArGエレメントが存在しており、血管平滑筋細胞特異的な発現を媒介することが示されている(例えば、Kim, et al. (1997) Mol. Cell. Biol. 17, 2266-2278;Li, et al., (1996) J. Cell Biol. 132, 849-859;およびMoessler, et al. (1996) Development 122, 2415-2425)。
【0452】
光受容器特異的空間限定型プロモーターとしては、限定はされないが、ロドプシンプロモーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al. (2003) Ophthalmol. Vis. Sci. 44:4076);ベータホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007) J. Gene Med. 9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007)、上記);光受容器間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud et al. (2007)、上記);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. (1992) Exp Eye Res. 55:225)などが挙げられる。
【0453】
使用
本開示による転写を調節するための方法は、同様に提供されるいろいろな用途における使用を見出す。用途には、研究用途;診断用途;産業的用途;および治療用途が含まれる。
【0454】
研究用途には、例えば、例えば発生、代謝、下流遺伝子の発現などに対する、標的核酸の転写を低下または増加する効果を決定することが含まれる。ハイスループットゲノム解析は転写調節法を使用して実行することができ、ガイドRNAのDNA標的化セグメントのみを変化させる必要がある一方、タンパク質結合セグメントおよび転写終結セグメントは(一部の場合では)一定に保つことができる。ゲノム解析に使用される複数の核酸を含むライブラリー(例えば、ライブラリー)は、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されているプロモーターを含み、各核酸は、共通のタンパク質結合セグメント、異なるDNA標的化セグメント、および共通の転写終結セグメントを含み得る。チップは、5×104個を超える独特なガイドRNAを含有し得る。用途としては、大規模表現型検査、遺伝子-機能マッピング、およびメタゲノム解析が挙げられ得る。
【0455】
本明細書で開示の方法は、代謝工学の分野に使用を見出す。転写レベルを、本明細書に開示のように、適切なガイドRNAを設計することによって効率的かつ予想通りに制御することができるため、代謝経路(例えば、生合成経路)の活性は、目的の代謝経路内の特定の酵素のレベルを(例えば、転写の増加または減少を介して)制御することによって、正確に制御および調整することができる。目的の代謝経路としては、化学物質(精密化学製品、燃料、抗生物質、毒素、アゴニスト、アンタゴニストなど)および/または薬物製造に使用される経路が挙げられる。
【0456】
目的の生合成経路としては、限定はされないが、(1)メバロン酸経路(例えば、HMG-CoAレダクターゼ経路)(アセチル-CoAを、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)およびイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換し、これらは、テルペノイド/イソプレノイドを含む種々様々な生体分子の生合成に使用される)、(2)非メバロン酸経路(すなわち、「2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸/1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸経路」または「MEP/DOXP経路」または「DXP経路」)(これも、メバロン酸経路の代替経路によって、ピルビン酸およびグリセルアルデヒド3-リン酸をDMAPPおよびIPPに変換することにより、代わりにDMAPPおよびIPPを産生する)、(3)ポリケチド合成経路(種々のポリケチド合成酵素により種々のポリケチドを産生する)(ポリケチドには、化学療法に使用される天然に存在する小分子(例えば、テトラサイクリン、およびマクロライド)が含まれ、産業上重要なポリケチドとしては、ラパマイシン(免疫抑制剤)、エリスロマイシン(抗生物質)、ロバスタチン(抗コレステロール薬)、およびエポシロンB(抗がん薬)が挙げられる)、(4)脂肪酸合成経路、(5)DAHP(3-デオキシ-D-アラビノ-ヘプツロン酸7-リン酸)合成経路、(6)有望なバイオ燃料(例えば、短鎖アルコールおよびアルカン、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪アルコール、イソプレノイドなど)を産生する経路などが挙げられる。
【0457】
ネットワークおよびカスケード
本明細書で開示の方法は、制御の統合ネットワーク(すなわち、1つのカスケードまたは複数のカスケード)を設計するために使用することができる。例えば、ガイドRNA I バリアントsRGN部位指向型ポリペプチドは、別のDNA標的化RNAまたは別のバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドの発現を制御する(すなわち、調節する、例えば、増加する、低下する)ために使用することができる。例えば、第1のガイドRNAは、第1のバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドと異なる機能(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性など)を有する第2のキメラdsRGNポリペプチドの転写の調節を標的化するように設計することができる。加えて、異なるdsRGNタンパク質(例えば、異なる種に由来する)は異なるsRGNハンドル(すなわち、タンパク質結合セグメント)を必要とする場合があるため、第2のキメラdsRGNポリペプチドは、上記の第1のdsRGNポリペプチドとは異なる種に由来し得る。したがって、一部の場合では、第2のキメラdsRGNポリペプチドは、第1のガイドRNAと相互作用できないように、選択することができる。他の場合において、第2のキメラdsRGNポリペプチドは、第1のガイドRNAと相互作用するように、選択することができる。一部のそのような場合では、2つ(またはこれよりも多い)dsRGNタンパク質の活性は、競合する(例えば、ポリペプチドが逆の活性を有する場合)場合もあり、相乗的に作用する(例えば、ポリペプチドが類似の、または相乗的な活性を有する場合)場合もある。同様に、上記のように、ネットワーク内の複合体(すなわち、ガイドRNA I dsRGNポリペプチド)のいずれも、他のガイドRNAまたはdsRGNポリペプチドを制御するように設計することができる。ガイドRNAおよびバリアントsRGN部位指向型ポリペプチドを所望の任意のDNA配列に標的化することができるため、本明細書に記載の方法は、所望の任意の標的の発現を制御および調節するために使用することができる。設計することができる統合ネットワーク(すなわち、相互作用のカスケード)は、非常に単純なものから非常に複雑なものまで幅があり、限定されない。
【0458】
2つまたはそれより多い構成成分(例えば、ガイドRNAまたはdsRGNポリペプチド)がそれぞれ別のガイドRNA/dsRGNポリペプチド複合体の調節制御下にあるネットワークでは、ネットワークの1つの構成成分の発現レベルは、ネットワークの別の構成成分の発現レベルに影響を及ぼすことができる(例えば、発現を増加または減少させ得る)。この機構を通して、1つの構成成分の発現は、同一ネットワーク内の異なる構成成分の発現に影響を及ぼす場合があり、ネットワークは、他の構成成分の発現を増加させる構成成分ならびに他の構成成分の発現を減少させる構成成分の混成物を含み得る。当業者には理解されるように、1つの構成成分の発現レベルが1つまたは複数の異なる構成成分の発現レベルに影響を及ぼし得る上記の例は、説明を目的としたものであって、限定するものではない。必要に応じて、1つまたは複数の構成成分が操作可能となるように(すなわち、実験制御、例えば、温度制御;薬物制御、すなわち、薬物誘導性制御;光制御下などで)、(上記のように)改変される場合には追加的な層での複雑性をネットワークに導入することができる。
【0459】
1つの非限定的な例として、第1のガイドRNAは、標的の治療/代謝遺伝子の発現を制御する、第2のガイドRNAのプロモーターに結合することができる。そのような場合、第1のガイドRNAの条件付き発現は、治療/代謝遺伝子を間接的に活性化する。このタイプのRNAカスケードは、例えば、抑制因子を活性化因子に変換するのに有用であり、標的遺伝子の発現の論理またはダイナミクスを制御するために使用することができる。
【0460】
転写調節法は、創薬およびターゲットバリデーションに使用することもできる。
【0461】
本発明の種々の態様は、以下の材料および方法を使用し、以下の非限定的な例によって例示される。
【0462】
ゲノム編集
ゲノム編集とは概して、正確なまたは所定の様式でなどの、ゲノムのヌクレオチド配列を改変するプロセスを指す。本明細書で記載されるゲノム編集の方法の例には、部位指向型ヌクレアーゼを使用して、ゲノム内の正確な標的位置においてDNAをカットし、それによってゲノム内の特定の位置において二本鎖または一本鎖DNA切断を創出する方法が含まれる。そのような切断は、Cox et al., Nature Medicine 21(2), 121-31 (2015)において近年概説されている通り、相同組換え修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)などの天然の内因性細胞プロセスによって修復することができ、また通常それらによって修復される。NHEJは、ヌクレオチド配列の喪失または付加を有することもある二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接合し、これは、遺伝子発現を破壊または強化し得る。HDRは、切断点において定義されたDNA配列を挿入するための鋳型として、相同配列、またはドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体などの内因性ゲノム内にあり得る。あるいは、ドナーは、ヌクレアーゼ切断遺伝子座と高相同性の領域を有するが、切断された標的遺伝子座内に組み込まれ得る追加的な配列または欠失を含む配列変化も含有し得る外因性核酸、例えば、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスとであり得る。第3の修復機構は、「代替NHEJ」とも称される、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)であり、遺伝的成果が、小さい欠失および挿入を切断部位において行うことができるという点でNHEJに類似している。MMEJは、DNA切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を使用してより好ましいDNA末端結合修復成果を駆動し、近年の報告によって、このプロセスの分子機構がさらに解明されている;例えば、Cho and Greenberg, Nature 518, 174-76 (2015) ;Kent et al., Nature Structural and Molecular Biology, Adv. Online doi:10.1038/nsmb.2961(2015);Mateos-Gomez et al., Nature 518,254-57 (2015);Ceccaldi et al., Nature 528, 258-62 (2015)を参照されたい。一部の場合では、DNA切断の部位における潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づき、起こり得る修復成果を予測することができる。
【0463】
これらのゲノム編集機構はそれぞれ、所望のゲノム変更を創出するために使用することができる。ゲノム編集プロセスは、意図される突然変異の部位に可能な限り近くの標的遺伝子座内に1つまたは2つのDNA切断を一般には創出する。これは、本明細書に説明および例示される通り、部位指向型ポリペプチドの使用を介して達成することができる。
【0464】
部位指向型ポリペプチドによって、核酸内(例えば、ゲノムDNA)に、二本鎖切断または一本鎖切断を導入することができる。二本鎖切断は、細胞の内因性DNA修復経路(例えば、相同性依存性修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)または代替非相同末端結合(A-NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ))を刺激することができる。NHEJは、相同鋳型を必要とすることなく切断した標的核酸を修復することができる。これは、切断部位における標的核酸内に小さい欠失または挿入(インデル)をもたらすことができる場合があり、遺伝子発現の破壊または変更を導くことができる。HDRは、相同修復鋳型、またはドナーが利用可能である場合に行うことができる。相同ドナー鋳型は、標的核酸切断部位に隣接する配列に相同である配列を含む。姉妹染色分体は、一般に、修復鋳型として細胞によって使用される。しかし、ゲノム編集の目的のために、修復鋳型は、プラスミド、二重鎖オリゴヌクレオチド、一本鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルス核酸などの外因性核酸として供給されることが多い。外因性ドナー鋳型を用いて、隣接する相同領域間に追加的な核酸配列(導入遺伝子など)または改変(単一の塩基変化または欠失など)を導入することは一般的であり、したがって、追加的なまたは変化された核酸配列もまた標的遺伝子座内に組み込まれるようになる。MMEJは、小さい欠失および挿入を切断部位で行うことができるという点でNHEJに類似した遺伝的成果をもたらす。MMEJは、切断部位に隣接するいくつかの塩基対の相同配列を使用して、好ましい末端結合DNA修復成果を駆動する。一部の場合では、ヌクレアーゼ標的領域における潜在的なマイクロホモロジーの分析に基づき、起こり得る修復成果を予測する可能性があり得る。したがって、一部の場合では、相同の組換えを使用して、標的核酸切断部位に外因性ポリヌクレオチド配列を挿入する。外因性ポリヌクレオチド配列は、本明細書では、ドナーポリヌクレオチドと名付けられている。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部分、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部分が、標的核酸切断部位に挿入される。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチド配列、すなわち、標的核酸切断部位において天然には存在しない配列である。
【0465】
NHEJおよび/またはHDRによる標的DNAの改変によって、例えば、突然変異、欠失、変更、統合、遺伝子修正、遺伝子置換え、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、転座、および/または遺伝子突然変異を導くことができる。ゲノムDNAを欠失させるおよび非ネイティブ核酸をゲノムDNAへ統合するプロセスは、ゲノム編集の例である。
【実施例
【0466】
(実施例1A)
sRGNポリペプチドGib11の活性の確認
Gib11およびSluCas9を蛍光偏光に基づく生化学的切断アッセイで試験した。
プロトコール蛍光偏光アッセイ:
【0467】
オリゴヌクレオチド二重鎖を10mM Tris(pH=7.8)50mM NaCl中で10μM溶液として調製し(100μMストックから)、95℃で5分間アニールし、次いで、サーモサイクラー(毎分6℃)でゆっくりと冷却した。続いて、ストックを、10mM Tris(pH=7.8)50mM NaCl+0.05%プルロニック(登録商標)に希釈した。20nMオリゴ(20μL)をストレプトアビジンコーティングプレートに固定化し、5分後に2回洗浄し、次いで、試料20μLと一緒に60分の反応速度でインキュベートした(励起波長:635nm、発光波長:670nm)。切断の前に、反応RNPを形成した。ヌクレアーゼと、pCas606(配列番号118)から転写したsgRNAVEGFA(配列番号114)とを、1×PBS MgCl 817.6μlに添加し、37℃で10分間インキュベートした。RNP 20μlを各ウェルに添加し、偏光を37℃で60分間測定した。例えば、Methods Enzymol.2014;546:1-20を参照されたい。
【0468】
タンパク質の量をsgRNAの一定レベルに対してタイトレーションした。VEGFAオリゴヌクレオチド配列を標的化するGib11-またはSluCas9-RNP複合体のインキュベーション後に、蛍光偏光および蛍光強度シグナルの変化(切断成功に基づく経時的な偏光値の減少および蛍光強度の増大)により、切断を観察することができる。切断反応の定量的推定量として、グラフの初期勾配を解析した。結果(図2Aおよび2Bに表示されている)は、Gib11およびSluCas9がオリゴヌクレオチド基質を首尾よく切断することを示す。切断反応速度を図2Cに示す。
【0469】
(実施例1B)
Gib11「NNGG」PAMモチーフの確認
Gib11の活性を液体培養でおよび寒天プレート上で確認した。
液体培養では:
【0470】
毒素レポータープラスミド(VEGFA標的部位と「NNGG」PAMとを有するアラビノース誘導性ccdB毒素遺伝子をコードするpCas634、配列番号119)と、VEGFAを標的化するsgRNAをコードするプラスミド(pCas606、配列番号118)とを内包するBL21DE3 origami細胞を、IPTG誘導性Trcプロモーターの下で、キメラ構築物1(配列番号122に記載の、PI/WEDGEドメイン交換したpCas889)またはキメラ構築物2(配列番号121に記載の、PIドメイン交換したpCas888)をコードするプラスミドで、形質転換した。形質転換後、細胞懸濁液をSOC 1mlでレスキューし、1000rpmで振とうしながら37℃でインキュベートした(Eppendorf Thermomix)。200μlを使用してLB培地(カナマイシン、クロラムフェニコールおよびアンピシリンを補充)に接種し、液体培養物を190rpmで振とうしながら37℃で一晩インキュベートした。この一晩の培養物200μlを使用して、0.5%L-アラビノース有り/無しで、0.05mM IPTG有り/無しで、カナマイシンおよびアンピシリンを補充した、LB培地5mlに接種した。190rpmで振とうしながら37℃で一晩(18時間)インキュベートした後、OD600を決定した。
【0471】
Gib11、SluCas9および陰性対照について得たOD600値を用いて、OD600測定を図3に棒グラフで視覚化する。
プレート上:
【0472】
毒素レポータープラスミド(VEGFA標的部位と「NNGG」PAMとを有するアラビノース誘導性ccdB毒素遺伝子をコードするpCas634、配列番号119)と、VEGFAを標的化するsgRNAをコードするプラスミド(pCas606、配列番号118)とを内包するBL21DE3 origami細胞を、IPTG誘導性Trcプロモーター(pCas81、配列番号120)の下で、キメラ構築物1(配列番号122に記載の、PI/WEDGEドメイン交換したpCas889)またはキメラ構築物2(配列番号121に記載の、PIドメイン交換したpCas888)をコードするプラスミドで、形質転換した。形質転換後、細胞懸濁液をSOC培地1mlでレスキューし、1000rpmで振とうしながら37℃でインキュベートした(Eppendorf Thermomix)。200μlをカナマイシン、アンピシリン、0.05mM IPTGおよび0.5%L-アラビノースを補充したLB寒天プレートにプレーティングした。37℃で18時間インキュベーション後、コロニーを数えた。
【0473】
Gib11をコードするプラスミドを内包するBL21DE3 origami細胞は、毒素レポータータンパク質ccdBの誘導後、毒素レポータープラスミドを首尾よく切断し、インキュベーションを生き延びた。生存を、液体培養でのOD600値増加によりおよび寒天プレート上でのコロニー形成により測定する。
【表5】
【0474】
(実施例1C)
哺乳動物細胞におけるGib11媒介ゲノム編集の確認
哺乳動物細胞におけるGib11の活性を、以下のアッセイで実証した:
ガイド標的化BFP遺伝子を使用するBFP破壊アッセイ:
【0475】
記載の通りに、AAVS1遺伝子座に青色蛍光タンパク質(BFP)をコードする遺伝子を内包するHEK293T細胞に、記載通りに、Gib11とBFPゲノム配列のリバース鎖を標的化するsgRNA(BFP標的化ガイドRNA[配列番号117]およびSluCas9 tracr RNA[配列番号123])とを発現するプラスミドを、トランスフェクトした。プラスミドのトランスフェクションは、供給元による記載の通りに、Lipofectamine3000(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L3000015)を使用して行った。トランスフェクションの7日後に、BFPシグナル破壊のフローサイトメトリー解析を実行した。細胞は、1×PBSで洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(2%FCSを補充した1×PBS)200μlに再懸濁することにより調製した。10,000個の細胞からのBFPシグナルを、BD FACS Canto(登録商標)IIにセットされたV450フィルターを使用してアッセイした(Glaser et al., 2016)。
【0476】
HEK293T細胞に、Gib11とBFP遺伝子を標的化するsgRNAとをコードするプラスミドを、トランスフェクトした。青色蛍光の有意な減少が観察された(BFP破壊の%として定量化した)。Cas9タンパク質の機能に沿って、これの考えられる理由は、Gib11促進のDNA切断と、これに続く、BFPオープンリーディングフレーム(ORF)での挿入/欠失、その結果として生じるBFP ORFの破壊である。Gib11は、34.35%±7.15%BFP破壊をもたらす。
【表6】
【0477】
(実施例2A)
sRGNポリペプチドP2H12の活性の確認
プロトコール蛍光偏光アッセイ:
オリゴヌクレオチド二重鎖を10mM Tris(pH=7.8)50mM NaCl中で10μM溶液として調製し(100μMストックから)、95℃で5分間アニールし、次いで、サーモサイクラー(毎分6℃)でゆっくりと冷却した。続いて、ストックを、10mM Tris(pH=7.8)、50mM NaCl+0.05%プルロニック(登録商標)に希釈した。20nMオリゴ(20μL)をストレプトアビジンコーティングプレートに固定化し、5分後に2回洗浄し、次いで、試料20μLと一緒に60分の反応速度でインキュベートした(励起波長:635nm、発光波長:670nm)。切断の前に、反応RNPを形成した。ヌクレアーゼと、pCas606(配列番号118)から転写したsgRNAVEGFA(配列番号114)とを、1×PBS MgCl 817.6μlに添加し、37℃で10分間インキュベートした。RNP 20μlを各ウェルに添加し、偏光を37℃で60分間測定した。例えば、Methods Enzymol.2014;546:1-20を参照されたい。
【0478】
VEGFAオリゴヌクレオチド配列を標的化するP2H12-RNP複合体のインキュベーション後に、図4に表示されているように、蛍光偏光および蛍光強度シグナルの著しい変化(切断成功に基づく経時的な偏光値の減少および蛍光強度の増大)により切断が観察された。
【0479】
(実施例2B)
哺乳動物細胞におけるP2H12媒介ゲノム編集の確認
哺乳動物細胞におけるP2H12の活性を、以下のアッセイで実証した:
ガイド標的化BFP遺伝子を使用するBFP破壊アッセイ:
【0480】
記載の通りに、AAVS1遺伝子座にBFPをコードする遺伝子を内包するHEK293T細胞に、P2H12とBFPゲノム配列のリバース鎖を標的化するsgRNA(BFP標的化ガイドRNA[配列番号117]およびSluCas9 tracr RNA[配列番号123])とを発現するプラスミドを、トランスフェクトした。プラスミドのトランスフェクションは、供給元による記載の通りに、Lipofectamine3000(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L3000015)を使用して行った。トランスフェクションの7日後に、BFPシグナル破壊のフローサイトメトリー解析を実行した。細胞は、1×PBSで洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(2%FCSを補充した1×PBS)200μlに再懸濁することにより調製した。10,000個の細胞からのBFPシグナルを、BD FACS Canto IIにセットされたV450フィルターを使用してアッセイした(Glaser et al., 2016)。
【0481】
HEK293T細胞に、P2H12とBFP遺伝子を標的化するsgRNAとをコードするプラスミドを、トランスフェクトした。青色蛍光の有意な減少が観察された(BFP破壊の%として定量化した)。Cas9タンパク質の機能に沿って、これの考えられる理由は、P2H12促進のDNA切断と、これに続く、BFPオープンリーディングフレーム(ORF)での挿入/欠失で、その結果として生じるBFP ORFの破壊である。P2H12は、22.9%±4.4%BFP破壊をもたらす。
【表7】
【0482】
(実施例3)
哺乳動物細胞におけるE2媒介ゲノム編集の確認
哺乳動物細胞におけるE2の活性を、以下のアッセイで実証した:
ガイド標的化BFP遺伝子を使用するBFP破壊アッセイ:
【0483】
記載の通りに、AAVS1遺伝子座にBFPをコードする遺伝子を内包するHEK293T細胞に、E2とBFPゲノム配列のリバース鎖を標的化するsgRNA(BFP標的化ガイドRNA[配列番号117]およびSluCas9 tracr RNA[配列番号123])とを発現するプラスミドを、トランスフェクトした。プラスミドのトランスフェクションは、供給元による記載の通りに、Lipofectamine3000(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L3000015)を使用して行った。トランスフェクションの7日後に、BFPシグナル破壊のフローサイトメトリー解析を実行した。細胞は、1×PBSで洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(2%FCSを補充した1×PBS)200μlに再懸濁することにより調製した。10,000個の細胞からのBFPシグナルを、BD FACS Canto IIにセットされたV450フィルターを使用してアッセイした(Glaser et al., 2016)。
【0484】
E2、3つのE2突然変異体、陰性対照でのこの実験の三反復の結果、および参照SluCas9(配列番号125)についての結果を、表8に示し、図5に描く。これらの結果は、E2および3つの突然変異体が標的DNA切断を媒介することができることを示す。
【表8】
【0485】
(実施例4)
哺乳動物細胞におけるGib11Spa媒介ゲノム編集の確認
哺乳動物細胞におけるGib11Spa-1、Gib11Spa-2およびGib11Spa-3の活性を、以下のアッセイで実証した:
ガイド標的化BFP遺伝子を使用するBFP破壊アッセイ:
【0486】
記載の通りに、AAVS1遺伝子座にBFPをコードする遺伝子を内包するHEK293T細胞に、Gib11Spa-1、Gib11Spa-2またはGib11Spa-3とBFPゲノム配列のリバース鎖を標的化するsgRNA(BFP標的化ガイドRNA(配列番号117)およびSluCas9 tracr RNA(配列番号123))とを発現するプラスミドを、トランスフェクトした。プラスミドのトランスフェクションは、供給元による記載の通りに、Lipofectamine3000(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L3000015)を使用して行った。トランスフェクションの7日後に、BFPシグナル破壊のフローサイトメトリー解析を実行した。細胞は、1×PBSで洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(2%FCSを補充した1×PBS)200μlに再懸濁することにより調製した。10,000個の細胞からのBFPシグナルを、BD FACS Canto IIにセットされたV450フィルターを使用してアッセイした(Glaser et al., 2016, Molecular Therapy Nucleic Acids 5, e334)。
【0487】
Gib11Spa-1、Gib11Spa-2およびGib11Spa-3を使用する哺乳動物細胞における編集
Gib11Spa-1、Gib11Spa-2またはGib11Spa-3とBFP遺伝子を標的化するsgRNAとをコードするプラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトすると、青色蛍光の有意な減少が観察された(BFP破壊の%として定量化した)。Cas9タンパク質の機能に沿って、これの考えられる理由は、Gib11Spa促進のDNA切断、これに続く、BFPオープンリーディングフレーム(ORF)での挿入/欠失、および結果として生じるBFP ORFの破壊である。結果を表9におよび棒グラフで図7に示す。
【表9】
【0488】
(実施例5)
哺乳動物細胞におけるF8媒介ゲノム編集の確認
哺乳動物細胞におけるF8の活性を、以下のアッセイで実証した:
ガイド標的化BFP遺伝子を使用するBFP破壊アッセイ:
【0489】
記載の通りに、AAVS1遺伝子座にBFPをコードする遺伝子を内包するHEK293T細胞に、F8とBFPゲノム配列のリバース鎖を標的化するsgRNA(BFP標的化ガイドRNA[配列番号117]およびSluCas9 tracr RNA[配列番号123])とを発現するプラスミドを、トランスフェクトした。プラスミドのトランスフェクションは、供給元による記載の通りに、Lipofectamine3000(Thermo Fischer Scientific、カタログ番号L3000015)を使用して行った。トランスフェクションの7日後に、BFPシグナル破壊のフローサイトメトリー解析を実行した。細胞は、1×PBSで洗浄し、トリプシン処理し、FACS緩衝液(2%FCSを補充した1×PBS)200μlに再懸濁することにより調製した。10,000個の細胞からのBFPシグナルを、BD FACS Canto IIにセットされたV450フィルターを使用してアッセイした(Glaser et al., 2016)。
【0490】
F8、2つのF8突然変異体、陰性対照でのこの実験の三反復の結果、および参照SluCas9(配列番号125)についての結果を、表10に示し、図8に描く。これらの結果は、F8および2つの突然変異体が標的DNA切断を媒介することができることを示す。
【表10】
【0491】
(実施例6)
sRGNについての生化学的特異性プロファイルの判定
Gib11、Gib11Spa-1、Gib11Spa-3、E2およびF8の特異性プロファイルを評価するために、オン標的配列、および全60の単一ヌクレオチドミスマッチdsDNA由来の基質(対として使用した配列番号129~250に記載のもの、例えば、配列番号129および130をそれぞれ有するR01-1-AおよびR01-1-Bが1つの二重鎖対を表す)の、生化学的切断を判定した。オリゴヌクレオチド二重鎖を10mM Tris(pH7.8)50mM NaCl中で10μM溶液として調製し(100μMストックから)、95℃で5分間アニールし、次いで、サーモサイクラー(毎分6℃)でゆっくりと冷却した。続いて、ストックを、10mM Tris(pH7.8)、50mM NaCl、および0.05%プルロニック(登録商標)に希釈した。20μlの各オリゴヌクレオチド(20nM)をストレプトアビジンコーティングプレートに固定化し、10分後に2回洗浄し、次いで、試料20μLと一緒に60分の反応速度でインキュベートした(励起波長:635nm、発光波長:670nm)。切断の前に、反応RNPを形成した。sgRNA(配列番号128;最終濃度60nM)を含有するおよび含有しない、1×PBS+5mM MgCl2 3200μl中で、それぞれのsRGNタンパク質(1.21μg/μl)の12.03μlを混合することにより、RNPを組み立て、反応の前に5分間、37℃でRNPをインキュベートした。RNP 20μlを各ウェルに添加し、偏光を37℃で60分間測定した。
【0492】
切断反応速度を、オリゴヌクレオチド切断反応の初期勾配を計算することにより解析した。勾配を、61の基質各々について計算し、オン標的基質の値(1として定義した)に正規化した。次いで、全60のオフ標的基質についての正規化切断値をそれらの位置に従って分類した。標的配列内の20のヌクレオチド位置ごとに3つの単一ヌクレオチドミスマッチについての正規化切断値をブロットして、試験したヌクレアーゼに対する位置特異的ヌクレオチド許容度を示した。
【0493】
結果を図9に示す。このガイド/標的の組合せを使用して、E2の特異性プロファイルは、SluCas9のものと同等であった。Gib11、Gib11Spa-1およびGib11Spa-3は、SpaCas9と同等の特異性プロファイルを有していた。
sRGNの全体的特異性:
【0494】
a)Gib11、b)Gib11Spa-1、c)Gib11Spa-2、d)E2、e)F8、f)SluCas9、g)Staphylococcus pyogenes野生型(New England Biolabs)、およびh)Staphylococcus aureusについての切断反応速度を、オリゴヌクレオチド切断反応の初期勾配を計算することにより解析した。勾配を、61の基質各々について計算し、オン標的基質の値(1として定義した)に正規化した。60のオフ標的基質の全パネルにわたっての全ての正規化値を合算して、全体的特異性値(図10に棒グラフで描いた通り)を得た。このガイド/標的の組合せを使用して、sRGNは、SpyCas9より特異性が高かった。
【0495】
(実施例7)
sRGNについての活性プロファイルの判定
Gib11、Gib11Spa-1、Gib11Spa-3、E2およびF8の活性プロファイルを評価するために、様々なGC含量を有する96のオン標的DNA基質(対として使用した配列番号347~538に記載のもの、例えば、配列番号347および348をそれぞれ有するExt-A-P-1-AおよびExt-A-P-1-Bが1つの二重鎖対を表す)の生化学的切断を判定した。
プロトコール蛍光偏光アッセイ:
【0496】
オリゴヌクレオチド二重鎖を10mM Tris(pH=7.8)50mM NaCl中で10μM溶液として調製し(100μMストックから)、95℃で5分間アニールし、次いで、サーモサイクラー(毎分6℃)でゆっくりと冷却した。続いて、ストックを、10mM Tris(pH=7.8)50mM NaCl+0.05%プルロニック(登録商標)に希釈した。20nMオリゴ(20μL)をストレプトアビジンコーティングプレートに固定化し、5分後に2回洗浄し、次いで、試料20μLと一緒に60分の反応速度でインキュベートした(励起波長:635nm、発光波長:670nm)。切断の前に、反応RNPを形成した。配列番号251~346の各ガイド配列について、ヌクレアーゼと、ガイド配列を含有するsgRNAとを、1×PBS MgCl 817.6μlに添加し、37℃で10分間インキュベートした。RNP中のsgRNAについてのそれぞれのDNA基質を含有するウェルにRNP 20μlを添加し、偏光を37℃で60分間測定した。例えば、Methods Enzymol.2014;546:1-20を参照されたい。
【0497】
示したバリアントを、蛍光偏光に基づく生化学的切断アッセイで試験した。タンパク質の量をsgRNAの一定レベルに対してタイトレーションした。VEGFAオリゴヌクレオチド配列を標的化するバリアント-RNP複合体のインキュベーション後に、蛍光偏光および蛍光強度シグナルの変化(切断成功に基づく経時的な偏光値の減少および蛍光強度の増大)により、切断を観察することができる。切断反応の定量的推定量として、グラフの初期勾配を解析した。1つの、RNAガイドヌクレアーゼについての、最も活性が高い基質に、データを正規化した。結果を図11に示す。Gib11Spa1/3およびGib11は、他のsRGNおよびSpyCas9と比較して、より広範囲の標的にわたってより高い活性を呈した。
配列表
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【表11-6】
【表11-7】
【表11-8】
【表11-9】
【表11-10】
【表11-11】
【表11-12】
【表11-13】
【表11-14】
【表11-15】
【表11-16】
【表11-17】
【表11-18】
【表11-19】
【表11-20】
【表11-21】
【表11-22】
【表11-23】
【表11-24】
【表11-25】
【表11-26】
【表11-27】
【表11-28】
【表11-29】
【表11-30】
【表11-31】
【表11-32】
【表11-33】
【表11-34】
【表11-35】
【表11-36】
【表11-37】
【表11-38】
【表11-39】
【表11-40】
【表11-41】
【表11-42】
【表11-43】
【表11-44】
【表11-45】
【表11-46】
【表11-47】
【表11-48】
【表11-49】
【表11-50】
【表11-51】
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
0007550648000001.app