IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

特許7550675医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム
<>
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図1
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図2
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図3
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図4
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図5
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図6
  • 特許-医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0362 20130101AFI20240906BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20240906BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240906BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20240906BHJP
【FI】
G06F3/0362 461
A61M5/145 508
G06F3/041 422
G06F3/0354 453
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021027876
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129244
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】筒井 裕一
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/044689(WO,A1)
【文献】特開2013-050866(JP,A)
【文献】特開2011-023043(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083815(WO,A1)
【文献】特許第6736981(JP,B2)
【文献】特開2005-082086(JP,A)
【文献】米国特許第05159159(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/033-3/039
G06F 3/041-3/047
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける、円形状の操作受付部と、
前記操作受付部に対するタッチ操作に基づいて制御を実行する制御部と、
を備え、
前記操作受付部は、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、
前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成され、
前記制御部は、前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出することにより、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定し、前記操作受付部に対する複数のタッチ操作を検出した場合、実行する制御の内容を変更する、
医療機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置の変化に基づき、前記タッチ操作による角度変化量を算出する、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記制御部は、単位時間当たりの前記角度変化量が所定量を超えた場合、実行する制御の内容を変更する、請求項2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記制御部は、隣り合う3枚の電極それぞれの前記検出強度に基づいて前記加重平均値を算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記3枚以上の電極は、大きさ及び形状が同一である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項6】
前記操作受付部が備える電極の枚数は、10枚以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
当該医療機器は医療用ポンプである、請求項1からのいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける円形状の操作受付部であって、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成された、操作受付部を備える医療機器が実行する、医療機器の制御方法であって、
前記3枚以上の電極における前記タッチ操作を検出するステップと、
前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出するステップと、
前記加重平均値の算出結果から、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定するステップと、
前記操作受付部に対する複数のタッチ操作を検出した場合、実行する制御の内容を変更するステップと、
を含む、医療機器の制御方法。
【請求項9】
検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける円形状の操作受付部であって、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成された、操作受付部を備える医療機器に、
前記3枚以上の電極における前記タッチ操作を検出するステップと、
前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出するステップと、
前記加重平均値の算出結果から、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定するステップと、
前記操作受付部に対する複数のタッチ操作を検出した場合、実行する制御の内容を変更するステップと、
を実行させる、医療機器の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
操作者による入力操作を受け付ける入力デバイスを備え、受け付けた入力操作に基づいて設定値の設定を行い、設定された設定値に基づいて動作する医療機器が知られている。このような医療機器としては、例えば、薬液等の液体が収容されたシリンジが載置され、載置されたシリンジの押子を押し出す速度を、操作者により設定された設定値に従って制御することで、流量を制御しながら患者等の生体内に液体を送液するシリンジポンプが挙げられる。シリンジポンプ等の医療機器は、例えば投与速度などの所定の設定値の設定に用いる入力デバイスとして、タッチパネルを備え、当該タッチパネルに対して行われたタッチ操作に基づいて、設定値を変更することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6736981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシリンジポンプが備えるタッチパネルは、内周操作部と外周操作部との2つの操作部を備え、タッチ操作が行われた操作部に応じて、設定値を異なる変化量分変化させる。しかしながら、操作者にとっては、2つの操作部の操作を使い分けることは煩雑である。
【0005】
本開示は、より簡便かつ正確に操作者の入力操作を実行可能な医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての医療機器は、検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける、円形状の操作受付部と、前記操作受付部に対するタッチ操作に基づいて制御を実行する制御部と、を備え、前記操作受付部は、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成され、前記制御部は、前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出することにより、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定する。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置の変化に基づき、前記タッチ操作による角度変化量を算出する。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、単位時間当たりの前記角度変化量が所定量を超えた場合、実行する制御の内容を変更する。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、隣り合う3枚の電極それぞれの前記検出強度に基づいて前記加重平均値を算出する。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記3枚以上の電極は、大きさ及び形状が同一である。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記操作受付部が備える電極の枚数は、10枚以下である。
【0012】
本開示の1つの実施形態として、前記制御部は、前記操作受付部に対する複数のタッチ操作を検出した場合、実行する制御の内容を変更する。
【0013】
本開示の1つの実施形態として、当該医療機器は医療用ポンプである。
【0014】
本開示の第2の態様としての医療機器の制御方法は、検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける円形状の操作受付部であって、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成された、操作受付部を備える医療機器が実行する、医療機器の制御方法であって、前記3枚以上の電極における前記タッチ操作を検出するステップと、前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出するステップと、前記加重平均値の算出結果から、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定するステップと、を含む。
【0015】
本開示の第3の態様としての医療機器の制御プログラムは、検出対象によるタッチ操作による入力を受け付ける円形状の操作受付部であって、前記タッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備え、前記電極のうち隣り合う電極同士の境界は、前記操作受付部の中心から径方向に延びる直線に対して交差するように構成された、操作受付部を備える医療機器に、前記3枚以上の電極における前記タッチ操作を検出するステップと、前記タッチ操作を検出した複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出するステップと、前記加重平均値の算出結果から、前記タッチ操作における、前記検出対象の前記操作受付部上での周方向の位置を決定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラムによれば、より簡便かつ正確に操作者の入力操作を実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の医療機器としてのシリンジポンプの斜視図である。
図2図1に示すシリンジポンプの構成を示すブロック図である。
図3図1の操作受付部が備える電極の一例を示す図である。
図4】操作者が指先等の検出対象を操作受付部に接触した場合の接触領域の一例を示す図である。
図5図2のシリンジポンプの制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6】操作者が指先等の検出対象を操作受付部に接触した場合の接触領域の他の一例を示す図である。
図7図1の操作受付部に対する複数のタッチ操作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。
【0019】
[シリンジポンプの構成]
図1は、本発明の一実施形態の医療機器としてのシリンジポンプ1の斜視図である。図1は、シリンジ50を載置した状態のシリンジポンプ1を示す。図1に示すように、シリンジポンプ1は、シリンジ50の中空部52に収容された液体を送液するポンプとして構成されている。図2は、シリンジポンプ1の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、シリンジポンプ1は、載置部11と、スライダ12と、クランプ14と、シリンダフランジ押さえ15と、回路部20と、入力ボタン群31と、表示部32と、スライダ駆動部36と、操作受付部40と、ハウジング49と、を備える。
【0021】
図1に示すように、載置部11には、シリンジ50を載置可能である。載置部11に載置されるシリンジ50は、内部に中空部52を区画する円筒状のシリンダ51と、シリンダ51の基端側から中空部52内に挿入され、シリンダ51の内周面の周方向に隙間なく密着しながらシリンダ51の延在方向A(以下、単に「延在方向A」と記載する。)に沿って中空部52を移動可能な押子55と、を有する。シリンダ51は、基端部にシリンダフランジ53を有し、先端部に中空部52と外部とを連通する出口孔54を区画している。シリンダ51の先端部には、可撓性を有するチューブが接続可能である。シリンダ51の先端部にチューブが接続されると、出口孔54がチューブにより区画された流路と連通する。シリンジ50の中空部52には、薬液等の液体が収容されている。以下、延在方向Aのうち、シリンダ51の先端側を「延在方向Aの先端側」と記載し、シリンダ51の基端側を「延在方向Aの基端側」と記載する。
【0022】
図1に示すように、載置部11は、シリンジ50のシリンダ51を載置可能である。また、図1に示すように、シリンダフランジ押さえ15は、載置部11にシリンジ50のシリンダ51が載置されると、シリンダフランジ53の一部を収納する。これにより、シリンダ51のシリンジポンプ1に対する位置が、固定される。
【0023】
図1に示すように、スライダ12は、押子固定部13を有する。スライダ12は、載置部11に載置されるシリンジ50の押子55と係合するように移動可能である。具体的には、スライダ12は、載置部11に載置されるシリンジ50の押子55よりも延在方向Aの基端側の位置で、延在方向Aに沿って移動可能である。スライダ12は、押子固定部13により、載置部11に載置されたシリンジ50の押子55を固定する。押子55は、押子固定部13によりスライダ12に固定された状態では、スライダ12の延在方向Aに沿う移動に伴ってスライダ12と一体的に移動する。このとき、載置部11に載置されたシリンダ51は、シリンダフランジ押さえ15によって、シリンジポンプ1に対して延在方向Aにおいて固定されている。従って、スライダ12がシリンジ50の先端側に移動すると、押子55がシリンダ51に対して先端側に移動し、中空部52に収容された液体が出口孔54から排出される。そのため、中空部52に収容された液体を、シリンダ51の先端部に接続可能なチューブにより区画された流路を通じて生体内に向かって送液することができる。
【0024】
図1に示すように、クランプ14は、延在方向Aに直交する方向Bに沿って移動可能であり、載置されたシリンジ50のシリンダ51を載置部11との間で挟み込むようにして固定することが可能である。また、クランプ14でシリンダ51を固定することで、シリンダフランジ53の一部がシリンダフランジ押さえ15から外れにくくなるため、シリンダ51はシリンジポンプ1に対して強固に固定される。
【0025】
図2に示すように、回路部20は、通信部21と、計時部22と、記憶部23と、制御部24と、を備える。
【0026】
通信部21は、無線通信又は有線通信により、外部のコンピュータ等の情報処理装置との間で情報の送受信を行うインターフェースを含む。
【0027】
計時部22は、時間を測定し、また時刻を刻む。計時部22は、例えば、RTC(Real Time Clock:リアルタイムクロック)により実現され得る。計時部22は、制御部24の一機能として実現されてもよい。
【0028】
記憶部23は、例えば記憶装置を含んで構成され、種々の情報及びプログラムを記憶する。具体的には、記憶部23は、制御部24が実行する設定値増減処理、各種の入力支援処理等を実行するためのプログラムを記憶する。また、記憶部23は、シリンジポンプ1により送液される液体の流量及び投与量等の所定の設定値の情報、及び所定の設定値に基づいてスライダ駆動部36を駆動させて送液するための制御プログラム等を記憶する。
【0029】
制御部24は、例えば記憶部23に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサを含み、シリンジポンプ1全体の動作を制御する。制御部24は、後述するように、操作者の指先等の検出対象により操作受付部40から入力された操作を特定する。具体的には、制御部24は、記憶部23に記憶された所定の情報及びプログラムを読み込み、タッチ操作による検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を決定する処理を実行する。また、制御部24は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の変化から、タッチ操作による角度変化量を検出する処理を実行する。制御部24は、検出したタッチ操作に基づいて、例えば設定値を変更する等の制御を実行する。制御部24が実行するこれらの処理の詳細については後述する。
【0030】
また、制御部24は、通信部21を介して、外部の情報処理装置との間で情報の送受信を行う。制御部24は、入力ボタン群31及び操作受付部40から入力された情報に基づいて各種の処理を実行し、各種の処理の実行に伴う情報を表示部32から出力する。
【0031】
図1に示すように、入力ボタン群31は、ハウジング49の表面に配置され、操作者による入力操作を受け付け可能な各種の操作ボタンで構成される。入力ボタン群31は、例えば、シリンジポンプ1の動作電源のオンオフを切り替えるための電源ボタン、送液を開始するための開始ボタン、送液を停止するための停止ボタンを含む。入力ボタン群31は、入力された情報を、制御部24に出力する。
【0032】
図1に示すように、表示部32は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを含む。表示部32は、制御部24からの信号に基づいて、送液される液体の流量の設定値や実測値、送液される液体の投与量の設定値や実測値、及び各種の警報情報等を表示する。
【0033】
スライダ駆動部36は、例えばモータを含み、制御部24からの信号に基づいて、スライダ12を延在方向A(図1参照)に沿って移動させる。
【0034】
図1に示すように、操作受付部40は、シリンジポンプ1の外部に少なくとも一部が露出するように配置される。操作受付部40は、操作受付部40に接触する操作者の指先等の検出対象を検出することにより、入力を受け付ける。具体的には、操作受付部40は、操作者のタッチ操作による入力を受け付ける。操作受付部40は、例えば、静電容量式タッチパネルにより構成されている。操作受付部40は、電極を備え、操作者の検出対象が電極に接触した場合の静電容量の変化を検出する。制御部24は、操作受付部40が検出した静電容量の変化に基づき、検出対象が電極に接触したことを検出する。
【0035】
操作受付部40は、操作者のタッチ操作を検出可能な3枚以上の電極を備える。図3は、操作受付部40が備える電極の一例を示す図であり、本実施形態における操作受付部40が備える電極を示す図である。
【0036】
図3に示すように、操作受付部40は、円形状を有する。図3に示すように、本実施形態では、操作受付部40は、第1電極41、第2電極42、第3電極43、第4電極44、第5電極45、第6電極46、第7電極47及び第8電極48の、8枚の電極を備える。各電極は、指先等の検出対象の接触を検出した場合、接触された領域の大きさ(面積)に応じた検出強度を示す信号を制御部24に出力する。
【0037】
8枚の電極は、全て、大きさ及び形状が同一であってよい。8枚の電極は、互いに重ならないように、且つ、8枚の電極で、操作受付部40の周方向全体にわたって存在するように、配置されている。操作受付部40が備える電極のうち、隣り合う電極同士の境界は、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して交差するように構成されている。例えば、図3に示すように、中心Oから、径方向である図3の上方向に延びる仮想的な直線Lを想定した場合、隣り合う第1電極41と第8電極48との境界は、直線Lに対して交差している。このことは、例えば、隣り合う第1電極41と第2電極42との境界についても同様であり、その他の隣り合う電極同士の境界についても同様である。8枚の電極は、このように、隣り合う電極同士の境界が、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して交差するように構成されている。
【0038】
特に図3に示す例では、隣り合う第1電極41と第8電極48との境界は、直線Lに対して複数回交差している。つまり、本実施形態では、隣り合う電極同士の境界が操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して複数回交差するように、各電極は、操作受付部40の周方向Cにおける両端部がジグザグに形成されている。各電極は、隣り合う電極同士において、このような両端部のジグザグの形状が互いにかみ合うように形成されている。
【0039】
ただし、電極の周方向Cにおける両端部は、必ずしもジグザグに形成されていなくてもよい。各電極は、隣り合う電極同士の境界が操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して複数回交差するように構成されていればよいため、両端部の形状は、図3で示した例に限られない。
【0040】
本実施形態において、第1電極41から第8電極48までの8枚の電極は、電極の操作受付部40の最も周方向反時計回り方向の端(つまり最も左側の端)から、電極の操作受付部40の最も周方向時計回り方向の端(つまり最も右側の端)までの中心角が、それぞれ90度となるように形成されている。
【0041】
図3には、参考として、第1電極41の最も左側の端から最も右側の端までの中心角が、90度であることが図示されている。具体的には、図3における上方向(つまり直線Lが延びる方向)を0度とし、周方向時計回りの方向を正方向、周方向反時計回りの方向を負方向とした場合に、第1電極41の最も左側の端は、-22.5度に位置し、最も右側の端は、67.5度に位置する。本明細書において、第1電極41の最も左側の端と最も右側の端との中間を、第1電極41の中央を称する。つまり、第1電極41の中央は、22.5度の位置にある。
【0042】
同様に、第2電極42の最も左側の端は、22.5度に位置し、最も右側の端は、112.5度に位置する。第2電極42の中央は、67.5度の位置にある。このことから、第1電極41の中央から最も右側の端までの範囲は、第2電極42の最も左側の端から中央までの範囲と一致する。つまり、22.5度から67.5度の範囲には、第1電極41と第2電極42とが、互いに入り組んで配置されている。この22.5度から67.5度の範囲では、第1電極41と第2電極42との境界が、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して複数回交差する。
【0043】
同様に、第3電極43の最も左側の端は、67.5度に位置し、最も右側の端は、157.5度に位置する。第3電極43の中央は、112.5度の位置にある。従って、67.5度から112.5度の範囲には、第2電極42と第3電極43とが、互いに入り組んで配置されている。この67.5度から112.5度の範囲では、第2電極42と第3電極43との境界が、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して複数回交差する。
【0044】
第4電極44から第8電極48についても、それぞれ同様にして、最も左側の端、最も右側の端及び中央の位置を算出することができる。隣り合う電極同士は、上記第1電極41から第3電極43について説明したのと同様に、境界が操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して複数回交差するように構成されている。
【0045】
このように、隣り合う電極同士の境界が、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して交差するように構成されていることにより、制御部24は、操作者の検出対象が操作受付部40において接触している、操作受付部40上の周方向の位置を、従来と比較して高い精度で検出することができる。ここで、制御部24が実行する、タッチ操作における検出対象の操作受付部40上の周方向の位置の決定処理方法について、詳細に説明する。
【0046】
[検出対象の位置の決定処理]
図4は、操作者が指先等の検出対象を操作受付部40に接触した場合の接触領域D1の一例を示す図である。接触領域D1は、操作受付部40において検出対象が接触している領域を示す。
【0047】
操作者が、例えばシリンジポンプ1における設定を変更するために指先等で操作受付部40に触れるタッチ操作を行った場合、指先が操作受付部40に触れる箇所は、例えば図4の接触領域D1として例示的に示すように、一定の広がりを持った領域となる。このとき、本実施形態のように操作受付部40が3枚以上の電極を備え、隣り合う電極同士の境界が中心Oから径方向に延びる直線Lに対して交差するように構成されている場合、指先等の検出対象は、複数の電極により検出される。具体的には、検出対象は、隣り合う3枚の電極により検出される。例えば、図4に示す例では、接触領域D1は、第1電極41、第2電極42及び第3電極43に広がっている。つまり、指先等の検出対象は、第1電極41、第2電極42及び第3電極43により検出される。
【0048】
第1電極41、第2電極42及び第3電極43は、このように検出対象による接触を検出した場合、接触された領域の大きさ(面積)に応じた検出強度を示す信号を制御部24に出力する。図4に示す例では、第1電極41、第2電極42及び第3電極43という3つの電極のうち、第2電極42が最も接触領域D1と重なっている面積が大きい。そのため、第2電極42からは、第1電極41及び第3電極43よりも大きな検出強度を示す信号が、制御部24に出力される。第1電極41及び第3電極43からも、検出対象が接触している面積、つまり図4で言えば接触領域D1と重なっている面積に応じた検出強度を示す信号が制御部24に出力される。
【0049】
制御部24は、タッチ操作を検出した電極の検出強度に基づいて、加重平均値を算出することにより、タッチ操作によりタッチしている検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を決定する。具体的には、制御部24は、隣り合う3枚の電極(つまりここでの例では第1電極41、第2電極42及び第3電極43という3枚の電極)の検出強度に基づいて、加重平均値を算出することにより、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を決定する。
【0050】
ここで、図5を参照しながら、制御部24による、タッチ操作における検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の決定方法の詳細について説明する。図5は、図2の制御部24が実行する処理の一例を示すフローチャートである。具体的には、図5は、制御部24が、検出対象がタッチ操作によりタッチしている操作受付部40上での周方向の位置を決定するための処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローは、例えば、制御部24が、電極から検出強度を示す信号を取得した場合に開始される。
【0051】
上述したように、本実施形態に係る操作受付部40では、検出対象によるタッチ操作が行われると、隣り合う3枚の電極により検出対象が検出される。つまり、隣り合う3枚の電極から制御部24に検出強度を示す信号が出力される。
【0052】
まず、制御部24は、取得した信号のうち、検出強度が最も高い電極を決定する(ステップS11)。図4に示す例では、制御部24は、第2電極42を、検出強度が最も高い電極として決定する。
【0053】
次に、制御部24は、ステップS11において決定した電極(ここでは第2電極42)と、当該電極に隣り合う2枚の電極(ここでは第1電極41及び第3電極43)との検出強度に基づいて、加重平均値を算出する(ステップS12)。なお、当該電極に隣り合う2枚の電極は、操作受付部40の周方向において、当該電極の左右に位置する電極である。ステップS12において、制御部24は、次の式(1)に示す数式を用いて、加重平均値を算出する。
【0054】
【数1】
【0055】
式(1)において、AngleXは、加重平均値である。式(1)において、Δchmaxは、検出強度が最も高い電極の検出強度であり、すなわち、図4に示す例では、第2電極42の検出強度である。式(1)において、Δchdecは、検出強度が最も高い電極に対し、操作受付部40の周方向反時計回り側(つまり左側)で隣り合う電極の検出強度であり、すなわち、図4に示す例では、第1電極41の検出強度である。式(1)において、Δchincは、検出強度が最も高い電極に対し、操作受付部40の周方向時計回り側(つまり右側)で隣り合う電極の検出強度であり、すなわち、図4に示す例では、第3電極43の検出強度である。
【0056】
式(1)において、数値67.5は、検出強度が最も高い電極に対する重みづけの係数であり、すなわち、図4に示す例では、第2電極42に対する重みづけの係数である。この重みづけの係数67.5は、本実施形態において、検出強度が最も高い電極の左側で隣り合う電極の最も左側の端と中央の位置との中間を0とした場合に、検出強度が最も高い電極の中央の位置を示す値である。つまり、重みづけの係数67.5は、仮に第2電極42が検出強度が最も高い電極であるとした場合、図3に示すように、第2電極42の中央の位置を示す値である。
【0057】
式(1)において、数値22.5は、検出強度が最も高い電極の左側で隣り合う電極に対する重みづけの係数であり、すなわち、図4に示す例では、第1電極41に対する重みづけの係数である。この重みづけの係数22.5は、本実施形態において、検出強度が最も高い電極の左側で隣り合う電極の最も左側の端と中央の位置との中間を0とした場合に、当該左側の電極の中央の位置を示す値である。つまり、重みづけの係数22.5は、仮に第2電極42が検出強度が最も高い電極であるとした場合、図3に示すように、第1電極41の中央の位置を示す値である。
【0058】
同様に、式(1)において、数値112.5は、検出強度が最も高い電極の右側で隣り合う電極に対する重みづけの係数であり、すなわち、図4に示す例では、第3電極43に対する重みづけの係数である。この重みづけの係数112.5は、本実施形態において、検出強度が最も高い電極の右側で隣り合う電極の最も左側の端と中央の位置との中間を0とした場合に、当該右側の電極の中央の位置を示す値である。つまり、重みづけの係数112.5は、仮に第2電極42が検出強度が最も高い電極であるとした場合、図3に示すように、第3電極43の中央の位置を示す値である。
【0059】
制御部24は、3枚の電極から取得した検出強度を式(1)に代入することにより、加重平均値AngleXを算出することができる。この加重平均値AngleXは、検出強度が最も高い電極と、当該検出強度が最も高い電極の左右で隣り合う電極との、合計3枚の電極における、周方向の位置を示す値である。すなわち、加重平均値AngleXは、3枚の電極における、周方向の相対的な位置を示す値である。
【0060】
そして、制御部24は、ステップS12で算出した加重平均値AngleXから、操作者によるタッチ操作における検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を算出する(ステップS13)。ステップS13において、制御部24は、次の式(2)に示す数式を用いて、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を算出する。
【0061】
【数2】
【0062】
式(2)は、検出対象の操作受付部40上での周方向の絶対的な位置を算出するための数式である。すなわち、ステップS12で算出された加重平均値AngleXは、3枚の電極における周方向の相対的な位置を示す値であるため、この加重平均値に対し、検出強度が最も高い電極の位置を示す角度の値を加える演算を行うことにより、検出対象の操作受付部40上での周方向の絶対的な位置が算出される。
【0063】
式(2)において、Angleは、検出対象の操作受付部40上での周方向の絶対的な位置を示す値である。つまり、Angleは、図3及び図4における上方向(つまり直線Lが延びる方向)を0度とした場合における、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を示す値である。
【0064】
式(2)において、Nは、検出強度が最も高い電極の番号を示す値である。例えば、検出強度が最も高い電極が第1電極41である場合、N=1である。例えば、検出強度が最も高い電極が第2電極42である場合、N=2である。例えば、検出強度が最も高い電極が第3電極43である場合、N=3である。このようにして、Nは正の整数であり、本実施形態では、1から8のいずれかの数である。
【0065】
仮に、図4の例のように、検出強度が最も高い電極が第2電極42である場合、N=2であるから、これを上記式(2)に当てはめて計算すると、Angle=AngleXとなる。つまり、加重平均値AngleXが、そのまま検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を示す値Angleとなる。
【0066】
しかしながら、例えば、図6に例示的に示すように、指先が操作受付部40に触れる箇所が接触領域D2のようになっている場合、指先等の検出対象は、第5電極45、第6電極46及び第7電極47により検出される。また、検出強度が最も高い電極は、接触された領域の大きさ(面積)が最も大きい第6電極46となる。
【0067】
この場合、制御部24は、図5に示すフローのステップS11において、第6電極46を、検出強度が最も高い電極として決定する。
【0068】
次に、ステップS12において、制御部24は、式(1)を用いて、第5電極45、第6電極46及び第7電極47という3枚の電極における、検出対象の周方向の相対的な位置を示す加重平均値AngleXを算出する。この場合、Δchmaxは、第6電極46の検出強度であり、Δchdecは、第5電極45の検出強度であり、Δchincは、第7電極47の検出強度である。
【0069】
そして、ステップS13において、制御部24は、式(2)を用いて、検出対象の周方向の相対的な位置を算出する。この場合、検出強度が最も高い電極は第6電極46であるため、N=6である。つまり、制御部24は、Angle=AngleX+(6-2)×45という演算を行うことにより、ステップS12で算出した検出対象の周方向の相対的な位置を示す加重平均値AngleXから、検出対象の周方向の絶対的な位置を示すAngleを算出する。
【0070】
制御部24は、このようにして算出されたAngleを、検出対象の周方向の位置として決定する。
【0071】
制御部24は、電極から検出強度を示す信号を取得している間、継続的に図5のフローで説明した処理を実行してよい。つまり、制御部24は、操作者によるタッチ操作が行われている間、当該タッチ操作による検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を決定する処理を継続的に実行する。
【0072】
制御部24は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の変化を検出すると、検出した検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の変化に基づき、操作者のタッチ操作による角度変化量を算出する。角度変化量は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の角度変化量である。制御部24は、変化後の検出対象の操作受付部40上での周方向の位置(Angle)から、変化前の検出対象の操作受付部40上での周方向の位置(Angle)を差し引く演算を行うことにより、タッチ操作による角度変化量を算出することができる。
【0073】
制御部24は、このようにして算出した角度変化量に基づき、例えば設定値の変更等の処理を行う。
【0074】
このように、本実施形態に係るシリンジポンプ1によれば、制御部24が、複数の電極それぞれの検出強度に基づいて加重平均値を算出することにより、タッチ操作における、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を決定する。そのため、操作者が指先等の検出対象を操作受付部40に接触させた位置に関わらず、制御部24は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置(Angle)を、正確に検出することができる。また、操作者にとっては、操作受付部40上の電極が配置されている場所にタッチ操作を行うことで、シリンジポンプ1において、検出対象を移動させた角度に応じた制御が実行されるため、例えば操作受付部40が2つの領域に分割されている場合と比較して、操作が簡便である。そのため、本実施形態に係るシリンジポンプ1によれば、より簡便かつ正確に操作者の入力操作を実行可能である。
【0075】
また、制御部24は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の変化に基づき、操作者のタッチ操作による角度変化量を算出する。制御部24は、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置(Angle)を正確に検出することができるため、角度変化量も正確に検出し、角度変化量に応じた制御を実行する。そのため、シリンジポンプ1は、操作者が行ったタッチ操作にスムーズに追従して、タッチ操作を正確に反映した制御を行うことができるので、操作者の感覚と合致した、タッチ操作に基づく制御を実行することができる。
【0076】
上記実施形態において、操作受付部40は、8枚の電極を備えると説明したが、操作受付部40が備える電極の枚数は8枚に限られない。操作受付部40は、3枚以上の電極を備えていればよい。操作受付部40が備える電極は、互いに重ならないように、且つ、複数の電極全体で、操作受付部40の周方向全体にわたって存在するように、配置されて入ればよい。各電極は、上記実施形態と同様に、隣り合う電極同士の境界が、操作受付部40の中心Oから径方向に延びる直線に対して交差するように構成されている。これにより、シリンジポンプ1は、電極の枚数が少なくとも、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を正確に検出することができる。また、操作受付部40が備える電極の枚数が少ないほど、シリンジポンプ1における狭い箇所にも、複数の電極を備える操作受付部40を設置することが可能である。
【0077】
操作受付部40が備える電極の枚数は、10枚以下であることが好ましい。操作受付部40は、11枚以上の電極を備えていてもよいが、電極の枚数が多すぎる場合には、検出対象を検出する電極の枚数が増え、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置の算出精度が下がる恐れがあるためである。
【0078】
上記実施形態で説明した式(1)における重みづけの係数は、操作受付部40が備える電極の枚数に応じて、適宜定められる。また、上記実施形態で説明した式(2)についても、操作受付部40が備える電極の枚数に応じて、適宜定められる。
【0079】
上記実施形態において、操作受付部40は、静電容量式タッチパネルにより構成されていると説明した。しかしながら、操作受付部40は、必ずしも静電容量式でなくてもよい。操作受付部40は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、超音波表面弾性波方式、投影型静電容量方式又は投影型赤外線方式など、他の方式のタッチパネルであってもよい。この場合も、上記実施形態で説明した方法により、検出対象の操作受付部40上での周方向の位置を正確に検出することができる。
【0080】
上記実施形態で説明した操作受付部40へのタッチ操作に応じて、制御部24は、多様な制御を実行することができる。例えば、制御部24は、単位時間当たりの角度変化量に応じて異なる制御を実行することができる。具体的には、制御部24は、単位時間当たりの角度変化量が所定量を超えた場合、実行する制御の内容を変更することができる。一例を挙げて説明すると、制御部24は、上記実施形態で説明した方法でタッチ操作の角度変化量を算出する。制御部24は、角度変化量に応じて、設定値の数値のうち最も小さい桁の数値を変更する制御を行っていたとする。制御部24は、単位時間当たりの角度変化量が所定量を超えた場合、例えば、より上位の桁の数値を変更する制御を行ってよい。例えば、制御部24は、角度変化量に応じて、設定値の1の位の数値を変更する制御を行っているとする。単位時間当たりの角度変化量が所定量を超えた場合、例えば、10の位又は100の位等、より上位の桁の数値を変更する制御を行ってよい。この制御の変更を行うか否かを判定するために使用される所定量は、例えば予め定められ、記憶部23に記憶されていてよい。このような制御は、言い換えれば、タッチ操作が低速の操作である場合には、より下位の桁の数値を変更し、タッチ操作が高速の操作である場合には、より上位の桁の数値を変更する、という制御である。このように高速のタッチ操作が行われている場合に、より上位の桁の数値を変更する制御を行うなど、制御の内容を変更することにより、操作者のタッチ操作の意図に応じた制御を実現することができ、操作者の利便性が向上する。
【0081】
上記実施形態で説明したシリンジポンプ1において、制御部24は、操作受付部40への複数(2か所以上)のタッチ操作を同時に検出することができる。この場合、制御部24は、上記実施形態で説明した方法を用いて、検出対象が操作受付部40に接触している複数の箇所を、それぞれ検出し、操作受付部40上での周方向の位置を決定する。制御部24は、このように複数のタッチを同時に検出した場合、実行する制御の内容を変更することができる。
【0082】
例えば、図7に例示的に示すように、操作受付部40に対し、一方のタッチ操作T1は、1点で固定され、他方のタッチ操作T2は、操作受付部40の周方向又は接線方向に沿って動かす操作が行われているとする。この場合、制御部24は、実行する操作の内容を変更する。例えば、図4又は図6に示すような、1つのタッチ操作のみを検出している場合、制御部24は、設定値の変更を行う制御を実行しているとする。制御部24は、図7に示すような、2つのタッチ操作を検出した場合、例えば、設定値において、数値を変更する桁を指定(変更)する制御を実行することができる。つまり、操作者は、図7に示すような2つのタッチ操作により、数値を変更する桁数を指定した後、図4又は図6に示すような1つのタッチ操作によって、指定した桁の設定値(数値)を変更する、という操作を行うことができる。このような制御により、操作者のタッチ操作の意図に応じた制御を実現することができ、操作者の利便性が向上する。
【0083】
上記実施形態で説明したシリンジポンプ1において、制御部24は、操作受付部40に対するタップ操作を検出することができる。タップ操作は、操作受付部40に検出対象をタッチさせた後、すぐに検出対象を操作受付部40から離す操作である。制御部24は、例えば、操作受付部40に対し、予め定められた短い設定時間内に、2回タップ操作が行われた場合、所定の制御を行うことができる。例えば、制御部24は、予め定められた短い設定時間内に、2回タップ操作が行われた場合、設定値において数値を変更する桁を指定(変更)する制御を実行することができる。あるいは、制御部24は、予め定められた短い設定時間内に、2回タップ操作が行われた場合、表示部32に表示された画面を、他の画面に遷移させる制御を実行することができる。
【0084】
制御部24が実行する制御は、上記説明したものに限られず、シリンジポンプ1で実行され得る任意の制御を含んでよい。例えば、制御部24が実行する制御は、上述した数値を変更する桁を指定する制御の他、表示部32に表示される画面を切り換える制御、シリンジポンプ1に対して設定されたロックを解除する制御、又は、シリンジポンプ1における通信設定を切り換える制御等を含んでよい。
【0085】
また、制御部24は、上述した多様なタッチ操作の組合せを検出することもできる。例えば、制御部24は、操作受付部40にタッチさせた検出対象を所定以上の速度で回転させる高速回転操作、操作受付部40に複数のタッチ操作を行うマルチタッチ操作、及び、予め定められた短い設定時間内に2回タップ操作を行うダブルタップ操作の組合せを検出することができる。制御部24は、ここで説明した操作以外にも、操作受付部40に対するタッチ操作を伴う任意の操作を検出してよい。制御部24は、検出した操作に応じた制御を実行する。
【0086】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0087】
本実施形態では、医療機器がシリンジポンプであるとして説明したが、医療機器はこれに限定されない。医療用機器は、例えば輸液ポンプ、栄養ポンプ、血液ポンプ等の医療用ポンプであってよい。また、医療用機器は、例えば、超音波画像診断装置又は光画像診断装置等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラムに関し、特に操作者による入力操作を受け付ける医療機器、医療機器の制御方法及び医療機器の制御プログラムに関する。
【符号の説明】
【0089】
1:シリンジポンプ
11:載置部
12:スライダ
13:押子固定部
14:クランプ
15:シリンダフランジ押さえ
20:回路部
21:通信部
22:計時部
23:記憶部
24:制御部
31:入力ボタン群
32:表示部
36:スライダ駆動部
40:操作受付部
41:第1電極
42:第2電極
43:第3電極
44:第4電極
45:第5電極
46:第6電極
47:第7電極
48:第8電極
49:ハウジング
50:シリンジ
51:シリンダ
52:中空部
53:シリンダフランジ
54:出口孔
55:押子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7