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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】炉解体機
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240906BHJP
   E02F 3/36 20060101ALI20240906BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20240906BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04G23/08 C
E02F3/36 A
F27D25/00
F27D1/16 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021050111
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148433
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】五木田 修
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-049010(JP,A)
【文献】特開2006-292227(JP,A)
【文献】特開2017-082497(JP,A)
【文献】特開2013-096161(JP,A)
【文献】実開昭59-051853(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E02F 3/36
F27D 25/00
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体に対して傾動可能にアウタブームを連結し、前記アウタブームに対して軸周りに回転可能にインナブームを連結すると共に、前記インナブームに対して軸方向に伸縮可能にアームを挿通し、前記アームの先端に、エアブレーカを装着したアタッチメントを傾動可能に連結してなる作業フロントを備えた炉解体機において、
前記アウタブームと前記インナブームとの間に設けられて、前記インナブームが軸周りに回転したときの前記インナブーム側の部位と前記アウタブーム側の部位との相対変位を許容可能に構成され、前記アウタブーム側の部位に接続されたコンプレッサ側エア配管を介してコンプレッサからエアが供給されるスイベルジョイントと、
前記インナブームに画成されたキャリア室内に折返し部を形成した姿勢で配設され、一端をブーム側固定端として前記インナブーム側に固定されると共に、折返し部を経た他端をアーム側固定端として前記アーム側に固定され、前記アームが軸方向に伸縮したときの前記ブーム側固定端と前記アーム側固定端との相対変位を、前記折返し部の移動を伴う形状変化により許容可能に構成されたケーブルキャリアと、
前記アームに設けられ、互いに連通する流入口と2つの流出口とを有する分岐部材と、
前記スイベルジョイントのインナブーム側の部位に一端を接続され、前記ケーブルキャリアのブーム側固定端から折返し部を経てアーム側固定端まで挿通されて支持されると共に、他端を前記分岐部材の流入口に接続されたフロント側エア配管と、
前記分岐部材の一方の流出口に一端を接続され、前記アーム内を先端側へと延設されて、他端を前記エアブレーカ側に接続されて、前記分岐部材を経たエアを前記エアブレーカに供給するブレーカ駆動用エア配管と、
前記アーム内に配設され、前記分岐部材の他方の流出口に対し開閉バルブを介して接続され、前記開閉バルブの開弁時に、前記分岐部材を経たエアを前記アーム内に噴射する冷却ノズルと、
を備えたことを特徴とする炉解体機。
【請求項2】
前記分岐部材は、前記アームの基端に配設されて、前記他方の流出口に冷却用エア配管の一端が接続され、
前記冷却用エア配管は、前記アーム内を先端側へと延設されて、他端が前記開閉バルブを介して前記冷却ノズルに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の炉解体機。
【請求項3】
前記分岐部材は、前記冷却ノズル及び前記開閉バルブと一体化されて前記アーム内に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の炉解体機。
【請求項4】
前記アームは、前記開閉バルブを操作するための内外を連通する開口部が形成され、
前記開口部は、カバー部材により閉塞されている
ことを特徴とする請求項1に記載の炉解体機。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記アームの開口部に対して脱着可能とされ、
前記冷却ノズル及び前記開閉バルブは、前記カバー部材に連結された状態で前記アーム内に配設され、前記開口部からの前記カバー部材の取外しに伴って前記開口部を経て前記アームの外部に取り出される
ことを特徴とする請求項4に記載の炉解体機。
【請求項6】
前記アタッチメントは、前記エアブレーカに代えて油圧ブレーカを装着可能に構成され、
前記スイベルジョイントの前記アウタブーム側の部位に接続され、前記車体に搭載された油圧パワーユニットのコントロールバルブからの作動油を供給するバルブ側油圧配管と、
前記スイベルジョイントのインナブーム側の部位に一端を接続され、前記ケーブルキャリアのブーム側固定端から折返し部を経てアーム側固定端まで挿通されて支持されると共に、前記アーム内を先端側へと延設されて、他端を前記アタッチメントに装着される前記油圧ブレーカに接続可能とされたブレーカ駆動用油圧配管と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の炉解体機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉解体機に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等における溶融炉、転炉或いは焼却炉等の炉は、内部に高温の溶融金属を貯留したり、内部が高温の燃焼ガスに晒されたりするため、その内壁が耐火物(例えば、耐火煉瓦等)により覆われている。炉の稼働に伴って耐火物は次第に劣化・損耗するため、使用限界に達する前に耐火物の張替え作業が実施されている。この張替え作業は、内壁の耐火物を破砕・撤去した上で、新たな耐火物を設置する手順で行われており、従来は、炉の内部に作業者が乗り込んで実施していた。炉の稼働をいち早く再開するには、炉の稼働の中止直後に張替え作業を開始することが望ましく、この時点では、耐火物に付着した金属が未だ溶融状態のため破砕・撤去も行い易い。しかしながら、このときの炉の内部は高温のため、温度低下するまで作業者は作業を開始できない。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、熱害を緩和する耐熱運転室に作業者が搭乗して耐火物の破砕・撤去作業を実施可能とした炉解体機が開示されている。この炉解体機は、クローラにより走行可能な車体の前部に作業フロントを設け、作業フロントの先端にブレーカを備えたアタッチメントを設けてなる。アタッチメントを自由に移動させて所望の位置の耐火物をブレーカで破砕するために、作業フロントは、車体に対して傾動可能なアウタブーム、アウタブームに対して軸周りに回転可能なインナブーム、及びインナブーム内に対して軸方向に伸縮可能なアームからなり、アームの先端にアタッチメントが傾動可能に設けられている。
【0004】
ブレーカとしてはエアまたは油圧を駆動源とする2種のものが存在し、作業環境等を考慮して何れかのブレーカが選択的に使用される。それぞれのブレーカに車体側からのエアまたは作動油を供給するために作業フロントは専用品として製作されており、例えばエアブレーカ用の作業フロントは以下のように構成されている。
【0005】
まず、作業フロント内には、アタッチメントを傾動させるアタッチメント傾動油圧シリンダやアームを伸縮させるアーム伸縮油圧シリンダが設けられると共に、各油圧シリンダに車体側からの作動油を供給する計4本のシリンダ用油圧配管が敷設されている。これに加えてエアブレーカ用の作業フロント内には、車体側からのエアをエアブレーカに供給するためのブレーカ駆動用エア配管が敷設され、さらに車体側からのエアをアーム内に配設された冷却ノズルに供給する冷却用エア配管が敷設されている。炉解体機の稼働中において、冷却ノズルから噴射されるエアはアーム内の冷却作用を奏し、これにより油圧シリンダや油圧配管が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5286685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炉解体機の稼働中には、耐火物の破砕位置に応じて作業フロントのアタッチメントが適宜移動され、それに応じてアウタブームに対してインナブームが軸周りに回転し、インナブームに対してアームが軸方向に伸縮する。従って、これらの動作を作業フロント内の油圧配管(シリンダ用油圧配管)及びエア配管(ブレーカ駆動用エア配管、冷却用エア配管)が許容する必要があり、そのために、作業フロントにはスイベルジョイント及びケーブルキャリアが設けられている。車体側からの油圧配管及びエア配管はスイベルジョイントを介してインナブーム内に引き込まれ、このスイベルジョイントにより、インナブームの軸周りの回転が許容される。
【0008】
インナブームの上部に形成されたキャリア室内には、ケーブルキャリアが折返し部を形成した姿勢で配設されている。ケーブルキャリアの一端はインナブームの内壁に固定され、他端はアームの外壁に固定され、インナブーム内に引き込まれた油圧配管及びエア配管は、ケーブルキャリアの一端から折返し部を経て他端まで挿通されてアーム内に引き込まれている。このケーブルキャリアにより、アームの軸方向の伸縮が許容される。アーム内に引き込まれた油圧配管及びエア配管はアームの先端側へと延設され、油圧配管はアーム伸縮油圧シリンダやアタッチメント傾動油圧シリンダに接続され、エア配管はアタッチメントのエアブレーカ及び冷却ノズルに接続されている。
【0009】
作業フロント内に設けられたスイベルジョイント及びケーブルキャリアは、車体側から作業フロント内に引き込まれる油圧配管やエア配管の本数(以下、配管数と称する)が増えるほど大型化する。熱害を避けるために油圧シリンダや油圧及びエア配管と共に、スイベルジョイントやケーブルキャリアも作業フロント内に設置されているため、これらの機構の大型化は、単なる配管数の増加以上の重大な影響を作業フロント、ひいては炉解体機に及ぼしてしまう。
【0010】
例えばケーブルキャリアは、油圧配管やエア配管を左右方向に並べた配置で挿通・支持しているため、配管数が増加するとケーブルキャリアの特に左右幅が増加してしまう。左右幅が増加したケーブルキャリアを収容するには、インナブームの左右幅を拡大する等の対処が必要になる。インナブームの大型化は作業フロント全体の大型化、ひいては重量増加につながるため、稼働中の炉解体機の安定性を保つ対策が必要になる。例えば、作業フロントの重量軽減のためにアーム長を短縮すると、ブレーカの移動範囲が縮小して作業性が悪化しまうため、従来は、作業フロントの重量増加に対応して車体側も大型化する対策を採らざるを得なかった。結果として炉解体機全体が大型化するため、製造コストが高騰してしまう上に、現場での稼働に大きなスペースを要するため炉解体機の機動性が悪化してしまうという問題が発生した。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、作業フロントのアタッチメントに備えられたエアブレーカにエア配管を経てエアを供給可能とした上で、作業フロント内に設けられたスイベルジョイント及びケーブルキャリアの大型化を未然に防止して、車体全体の小型化を達成することができる炉解体機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の炉解体機は、走行可能な車体に対して傾動可能にアウタブームを連結し、前記アウタブームに対して軸周りに回転可能にインナブームを連結すると共に、前記インナブームに対して軸方向に伸縮可能にアームを挿通し、前記アームの先端に、エアブレーカを装着したアタッチメントを傾動可能に連結してなる作業フロントを備えた炉解体機において、前記アウタブームと前記インナブームとの間に設けられて、前記インナブームが軸周りに回転したときの前記インナブーム側の部位と前記アウタブーム側の部位との相対変位を許容可能に構成され、前記アウタブーム側の部位に接続されたコンプレッサ側エア配管を介してコンプレッサからエアが供給されるスイベルジョイントと、前記インナブームに画成されたキャリア室内に折返し部を形成した姿勢で配設され、一端をブーム側固定端として前記インナブーム側に固定されると共に、折返し部を経た他端をアーム側固定端として前記アーム側に固定され、前記アームが軸方向に伸縮したときの前記ブーム側固定端と前記アーム側固定端との相対変位を、前記折返し部の移動を伴う形状変化により許容可能に構成されたケーブルキャリアと、前記アームに設けられ、互いに連通する流入口と2つの流出口とを有する分岐部材と、前記スイベルジョイントのインナブーム側の部位に一端を接続され、前記ケーブルキャリアのブーム側固定端から折返し部を経てアーム側固定端まで挿通されて支持されると共に、他端を前記分岐部材の流入口に接続されたフロント側エア配管と、前記分岐部材の一方の流出口に一端を接続され、前記アーム内を先端側へと延設されて、他端を前記エアブレーカ側に接続されて、前記分岐部材を経たエアを前記エアブレーカに供給するブレーカ駆動用エア配管と、前記アーム内に配設され、前記分岐部材の他方の流出口に対し開閉バルブを介して接続され、前記開閉バルブの開弁時に、前記分岐部材を経たエアを前記アーム内に噴射する冷却ノズルと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の炉解体機によれば、作業フロントのアタッチメントに備えられたエアブレーカにエア配管を経てエアを供給可能とした上で、作業フロント内に設けられたスイベルジョイント及びケーブルキャリアの大型化を未然に防止して、車体全体の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の炉解体機を示す側面図である。
図2】作業フロントを示す模式的な断面図である。
図3】ケーブルキャリア、アーム及びガイドローラを示す図2のIII-III線断面図である。
図4】アタッチメントに油圧ブレーカを装着した状態を示す油圧及び空圧回路図である。
図5】アタッチメントにエアブレーカを装着した状態を示す油圧及び空圧回路図である。
図6】油圧ブレーカを装着したアタッチメントを示す図2のA矢視図である。
図7】エアブレーカを装着したアタッチメントを示す図2のA矢視図である。
図8】アームに対する冷却ノズル及び開閉バルブの取付状態を示す図2のB部詳細図である。
図9】冷却ノズル及び開閉バルブをカバー部材と共にアームから取り外した状態を示す斜視図である。
図10】分岐ブロックを開閉バルブ及び冷却ノズルと一体化した別例を示す図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した炉解体機の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の炉解体機を示す側面図であり、以下の説明では、炉解体機に搭乗したオペレータを主体として前後、左右及び上下方向を規定する。
[車体の構成]
【0016】
炉解体機1の下部走行体2には左右一対のクローラ3が設けられ、これらのクローラ3が図示しない走行油圧モータに駆動されて下部走行体2が走行するようになっている。下部走行体2上には図示しない旋回装置を介して上部旋回体4が連結され、旋回装置に備えられた旋回油圧モータに駆動されて上部旋回体4が旋回するようになっている。
【0017】
本実施形態では、下部走行体2及び上部旋回体4が本発明の車体に相当し、以下の説明では、これらを車体と総称する場合もある。上部旋回体4上の前部左側には耐熱運転室5が設けられ、耐熱運転室5の後側には機械室6が画成されている。耐熱運転室5の前面及び左右両側面の窓5aには高温の炉からの輻射熱を遮る耐熱ガラスが使用されると共に、前面の窓5aには破砕した耐火物の破片の衝突を防止するガード7が設けられている。
【0018】
図示はしないが、機械室6内には油圧パワーユニットを構成するエンジン、油圧ポンプ及び後述するコントロールバルブ23(図4,5に示す))が搭載され、エンジンにより油圧ポンプが駆動され、吐出された作動油がコントロールバルブ23に供給される。耐熱運転室5に搭乗したオペレータの操作に応じてコントロールバルブ23により作動油の流路が切り換えられ、上記した走行及び旋回油圧モータ、或いは以下に述べる作業フロント9の各種油圧アクチュエータ14,16,18,19に供給される。これによりオペレータは、炉解体機1の走行、上部旋回体4の旋回、作業フロント9の動作等を任意に実行可能となる。
【0019】
[背景技術]で述べたように、炉解体機1は、転炉等の炉の内壁を覆っている劣化・損耗した耐火物を破砕する作業機械である。そのために、作業フロント9の先端にブレーカ20,21を備えたアタッチメント13が設けられており、以下、作業フロント9の詳細を説明する。
【0020】
[作業フロントの構成]
図2は作業フロントを示す模式的な断面図であり、油圧系統の図示は省略し、主として機械的な構造及びエア系統を示している。図1,2に示すように作業フロント9は、アウタブーム10、インナブーム11、アーム12及びアタッチメント13から構成されている。上部旋回体4上の耐熱運転室5の右側には図示しない軸受けフレームが設けられてアウタブーム10の基端が軸支され、アウタブーム10は前後方向に延びる形状をなしている。アウタブーム10は上部旋回体4に設けられたブーム傾動油圧シリンダ14により駆動され、軸受フレームの軸支箇所を中心として上下方向に傾動するようになっている。
【0021】
アウタブーム10内には先端側からインナブーム11が挿通され、インナブーム11は前後方向に延びる形状をなしている。インナブーム11はアウタブーム10の2倍程度の前後長を有しているため、その長手方向の約半分の領域がアウタブーム10内から前方に突出している。アウタブーム10の前部及び後部にはそれぞれ支持ローラ15f,15rが設けられ、軸C周り(図1に示す)に回転可能に支持されている。アウタブーム10の前部にはブーム回転油圧モータ16が設けられ、その駆動力によりインナブーム11は支持ローラ15f,15rに案内されながら軸C周りに回転する。
【0022】
図3はケーブルキャリア、アーム12及びガイドローラを示す図2のIII-III線断面図である。インナブーム11内には先端側からアーム12が挿通され、アーム12は前後方向に延びる形状をなしている。アーム12の前後長はインナブーム11よりも若干長いため、図2に示すアーム12の縮退時には、アーム12の基端がインナブーム11内に基端付近に位置し、アーム12の先端がインナブーム11内から前方に突出している。
【0023】
インナブーム11内においてアーム12の基端には計4個のガイドローラ17rが設けられ、アーム12の軸C方向への位置変位に伴って各ガイドローラ17rがインナブーム11の内壁を転動する。また、アウタブーム10の先端には計4個のガイドローラ17fが設けられ、アーム12の軸C方向への位置変位に伴って各ガイドローラ17fがアーム12の外壁を転動する。
【0024】
アーム12内にはアーム伸縮油圧シリンダ18が配設され、図示はしないが、そのシリンダ本体18aはインナブーム11側に固定され、ロッド18bはアーム12側に連結されている。アーム伸縮油圧シリンダ18の駆動力により、アーム12はガイドローラ17f,17rに案内されながら軸C方向に伸縮する。結果としてアーム12は、図2に示す縮退状態と、アウタブーム10内から前方に突出した図示しない伸長状態との間で任意に伸縮可能となっている。
【0025】
インナブーム11内から突出したアーム12の先端には、ブレーカを備えたアタッチメント13が図示しないリンク機構を介して傾動可能に連結されている。アーム12内にはアタッチメント傾動油圧シリンダ19のシリンダ本体19aが固定され、そのロッド19aからの駆動力によりリンク機構を介してアタッチメント13が傾動する。詳細は後述するが本実施形態のアタッチメント13には、油圧の供給により駆動される油圧ブレーカ20と、エアの供給により駆動されるエアブレーカ21とを任意に装着可能となっている。
【0026】
以上のブーム傾動油圧シリンダ14、ブーム回転油圧モータ16、アーム伸縮油圧シリンダ18及びアタッチメント傾動油圧シリンダ19についても、コントロールバルブ23の切換に応じて油圧パワーユニットから作動油を供給されて作動する。
【0027】
[油圧回路]
図4はアタッチメント13に油圧ブレーカ20を装着した状態を示す油圧及び空圧回路図、図5はアタッチメント13にエアブレーカ21を装着した状態を示す油圧及び空圧回路図であり、以下、これらの図に基づき、作業フロント9内に設けられた油圧系統及びエア系統について説明する。
【0028】
まず、油圧系統について述べる。図4に示すように、作業フロント9内には、作動油の供給を要するアーム伸縮油圧シリンダ18及びアタッチメント傾動油圧シリンダ19が設けられており、アタッチメント13に油圧ブレーカ20が装着される場合もある。一方で、作動油の供給源である油圧パワーユニットは車体側に搭載されているため、作業フロント9内には、車体側からの作動油を各油圧シリンダ18,20や油圧ブレーカ20に供給するために油圧配管が敷設されている。
【0029】
詳しくは、アウタブーム10とインナブーム11との間には、スイベルジョイント22が設けられている。車体側に搭載された油圧パワーユニットのコントロールバルブ23からの計6本のバルブ側油圧配管24は、スイベルジョイント22を介してインナブーム11側の計6本の油圧配管25a,25b~27a,27bとそれぞれ接続されている。以下、各配管の内の2本を伸縮シリンダ用油圧配管25a,25bと称し、他の2本を傾動シリンダ用油圧配管26a,26bと称し、残りの2本をブレーカ駆動用油圧配管27a,27bと称する。
【0030】
インナブーム11が軸C周りに回転すると、スイベルジョイント22のアウタブーム10側の部位及びこれに接続されているバルブ側油圧配管24と、インナブーム11側の部位及びこれに接続されている伸縮シリンダ用、傾動シリンダ用、ブレーカ駆動用油圧配管25a,25b~27a,27bとが軸C周りに相対変位するが、この相対変位がスイベルジョイント22により許容される。なお、スイベルジョイント22や後述するケーブルキャリア28に対応する箇所では、油圧配管に可撓性が要求されるためゴムホースが使用され、それ以外の箇所では鋼管が使用されており、この点は、エア配管についても同様である。
【0031】
インナブーム11内において各伸縮シリンダ用油圧配管25a,25bはアーム伸縮油圧シリンダ18に接続され、伸縮シリンダ要油圧配管25a,25bを経た作動油の給排に応じてロッド18bが出没して上記のようにアーム12を伸縮させる。残りの傾動シリンダ用及びブレーカ駆動用油圧配管26a,26b,27a,27bは、ケーブルキャリア28を介してアーム12内に引き込まれている。
【0032】
詳しくは、インナブーム11は上方に拡張されてキャリア室11aが画成され、キャリア室11a内には、ケーブルキャリア28が折返し部28cを形成した姿勢で配設されている。ケーブルキャリア28の一端はインナブーム11の内壁に固定され(以下、ブーム側固定端28aと称する)、折返し部28cを経た他端はアーム12の外壁に固定されている(以下、アーム側固定端28bと称する)。インナブーム11内において傾動シリンダ用及びブレーカ駆動用油圧配管26a,26b,27a,27bは、ケーブルキャリア28のブーム側固定端28aから折返し部28cを経てアーム側固定端28bまで挿通されてアーム12内に引き込まれている。
【0033】
例えば、図2に示す縮退状態からアーム12を伸長させると、ケーブルキャリア28のブーム側固定端28aに対してアーム側固定端28bが軸C方向に接近する。このときケーブルキャリア28は、折返し部28cを先端側に移動させるように形状変化して、ブーム側固定端28aとアーム側固定端28bとの相対変位を許容する。図示はしないが、逆に伸長状態のアーム12を縮小させると、ブーム側固定端28aに対してアーム側固定端28bが軸C方向に離間し、この相対変位をケーブルキャリア28が形状変化して許容する。
【0034】
アーム12内において各傾動シリンダ用油圧配管26a,26bはアタッチメント傾動油圧シリンダ19に接続され、傾動シリンダ用油圧配管26a,26bを経た作動油の給排に応じてロッド19bが出没して上記のようにアタッチメント13を傾動させる。各ブレーカ駆動用油圧配管27a,27bは、アーム12内を経てアタッチメント13のブレーカ接続ポート29に接続されている。図4に示すように、アタッチメント13に油圧ブレーカ20が装着されている場合には、各ブレーカ駆動用油圧配管27a,27bがブレーカ接続ポート29を介して油圧ブレーカ20に接続されるが、この接続状態の詳細は後述する。そして、各ブレーカ駆動用油圧配管27a,27bを経た作動油の給排に応じて、油圧ブレーカ20の先端のチゼル20aが往復運動を生起して耐火物を破砕可能となる。
【0035】
[空圧回路]
次いで、エア系統について述べる。図5に示すように、作業フロント9内にはエアの供給が必要な後述する冷却ノズル38が設けられており、アタッチメント13にエアブレーカ21が装着される場合もある。一方で、エアの供給源であるコンプレッサは、車体に搭載された機器(以下、車載コンプレッサ30と称する)、或いは作業現場に設置された機器(以下、工場コンプレッサ31と称する)を使用するため、作業フロント9内には、車体側からのエアを冷却ノズル38やエアブレーカ21に供給するためにエア配管が敷設されている。
【0036】
詳しくは、上部旋回体4の外面の一側には外部接続ポート44が設けられ、工場コンプレッサ31を接続可能となっている。機械室6内にはエア切換バルブ32が設置され、外部接続ポート44と車載コンプレッサ30とが接続されている。エア切換バルブ32の切換位置に応じて、車載コンプレッサ30または外部接続ポート44に接続された工場コンプレッサ31が選択的にコンプレッサ側エア配管33と連通する。
【0037】
コンプレッサ側エア配管33はアウタブーム10へと延設され、スイベルジョイント22を介してインナブーム11側のフロント側エア配管34と接続されている。インナブーム11内においてフロント側エア配管34は、ケーブルキャリア28のブーム側固定端28aから折返し部28cを経てアーム側固定端28bまで挿通されて、アーム12の基端に設けられた分岐ブロック35の流入口35aに接続されている。なお、各エア配管33,34に対するスイベルジョイント22及びケーブルキャリア28の機能は、油圧配管に対するものと同様のため、重複する説明は省略する。
【0038】
分岐ブロック35には流入口35aと共に2つの流出口35b,35cが開口形成され、流入口35aと各流出口35b,35cとは分岐ブロック35内で互いに連通している。従って、フロント側エア配管34から流入口35aに案内されたエアは、分岐ブロック35内で各流出口35b,35cへと2つに分岐される。一方の流出口35bには冷却用エア配管36の一端が接続されて、アーム12内を先端側へと延設され、その他端はアーム12内に配設された開閉バルブ37に接続されている。
【0039】
開閉バルブ37には冷却ノズル38が装着され、開閉バルブ37の閉弁時にはエアが遮断されるため、冷却ノズル38からエアは噴射されない。開閉バルブ37の開弁時には、分岐ブロック35及び開閉バルブ37を経て供給されるエアが冷却ノズル38から噴射され、作業フロント9内に設置されている機器、例えばアタッチメント傾動油圧シリンダ19や傾動シリンダ用油圧配管26a,26b等が冷却される。なお、アーム12内での冷却ノズル38及び開閉バルブ37の配設状態については後述する。
【0040】
また、分岐ブロック35の他方の流出口35cにはブレーカ駆動用エア配管39の一端が接続されて、アーム12内を先端側へと延設され、その他端はアタッチメント13のブレーカ接続ポート29に接続されている。図5に示すように、アタッチメント13にエアブレーカ21が装着されている場合には、ブレーカ駆動用エア配管39がブレーカ接続ポート29を介してエアブレーカ21に接続される。そして、ブレーカ駆動用エア配管39を経てエアブレーカ21にエアが供給され、エアブレーカ21から断続的にエアが大気開放されることにより、エアブレーカ21の先端のチゼル21aが往復運動を生起して耐火物を破砕可能となる。
【0041】
[ブレーカ接続ポート29に対するブレーカ20,21の接続状態]
次いで、ブレーカ接続ポート29を介した油圧ブレーカ20及びエアブレーカ21の接続状態について述べる、
図6は油圧ブレーカ20を装着したアタッチメント13を示す図2のA矢視図である。図4,6に示すように油圧ブレーカ20からは、2本のブレーカ側油圧配管40及び1本のブレーカ側エア配管41が上方に向けて延設されて、それぞれブレーカ接続ポート29に接続されている。なお、アーム12に対するアタッチメント13の傾動を許容するために、各配管40,41はゴムホースにより製作されており、この点はエアブレーカ21のブレーカ側エア配管42についても同様である。
【0042】
各ブレーカ側油圧配管40は、ブレーカ接続ポート29を介して作業フロント9側のブレーカ駆動用油圧配管27a,27bと連通している。このため、ブレーカ駆動用油圧配管27a,27bからブレーカ側油圧配管を経て油圧ブレーカ20に作動油が供給されて、上記のようなチゼル20aの往復運動が生起される。
【0043】
また、ブレーカ側エア配管41は、ブレーカ接続ポート29を介して作業フロント9側のブレーカ駆動用エア配管39と連通している。ブレーカ駆動用エア配管39を経て供給されるエアは、油圧ブレーカ20内を流通した後に外部に排出される。このときの油圧ブレーカ20内にはエアカーテンが形成されて外部からの熱を遮断する作用が奏され、これにより油圧ブレーカ20の温度上昇が抑制される。
【0044】
図7はエアブレーカ21を装着したアタッチメント13を示す図2のA矢視図である。図5,7に示すようにエアブレーカ21からは、1本のブレーカ側油エア配管42が上方に向けて延設されてブレーカ接続ポート29に接続されている。これによりブレーカ側エア配管42は、ブレーカ接続ポート29を介して作業フロント9側のブレーカ駆動用エア配管39と連通している。
【0045】
このため、ブレーカ駆動用エア配管39からブレーカ側エア配管42を経てエアブレーカ21にエアが供給されて、上記のようなチゼル21aの往復運動が生起される。また、エアブレーカ21の駆動には作動油の供給が不要なため、ブレーカ接続ポート29のブレーカ駆動用油圧配管27a,27bが接続されている2箇所のポートは、プラグ43が装着されて封止されている。
【0046】
[アーム12内での冷却ノズル38及び開閉バルブ37の配設状態]
図8はアーム12に対する冷却ノズル38及び開閉バルブ37の取付状態を示す図2のB部詳細図、図9は冷却ノズル38及び開閉バルブ37をカバー部材と共にアーム12から取り外した状態を示す斜視図である。
【0047】
これらの図に示すように、アーム12内に配設された冷却ノズル38及び開閉バルブ37に対応して、アーム12の上面12aには前後に長い小判型をなす開口部45が形成されている。開口部45の周囲全体にはアーム12内に向けて立設する周壁45aが形成され、周壁45aの前部及び後部には、アーム12の上面に対し段差をなして若干下側に位置する固定ベース45bがそれぞれ形成されている。各固定ベース45bにはそれぞれ雌ネジ45cが形成され、互いの固定ベース45bの間には、アーム12の内外を連通させる挿脱孔45dが形成されている。
【0048】
開口部45内には上方よりカバー部材46が配設され、カバー部材46は、開口部45の周壁45aよりも若干小さい小判型の板状をなしている。カバー部材46の前部及び後部はボルト孔46aが貫設され、開口部45の固定ベース45b上に重ねられている。各固定ベース45bの雌ネジ45cにはカバー部材46のボルト孔46aを介してボルト47が螺合し、これによりカバー部材46が開口部45に対して脱着可能に締結されている。カバー部材46の上面には前後方向に延びる3条の把手46bが溶接され、ボルト47の螺合が解除された状態では、把手46bを把持してカバー部材46を開口部45から上方に取り外すことができる。なお、アーム12の伸縮を妨害しないように、把手46bを含めたカバー部材46の全体が開口部45内に収められて、上面12aからの突出が防止されている。
【0049】
アーム12内に露出したカバー部材46の下面にはブラケット46cが溶接され、ブラケット46cには開閉バルブ37がナット48により締結され、開閉バルブ37の前端には冷却ノズル38が固定されている。結果として、カバー部材46に連結された状態で開閉バルブ37及び冷却ノズル38がアーム12内に配設され、開閉バルブ37には分岐ブロック35から延設された冷却用エア配管36が接続されている。開閉バルブ37はノブ37aの回転に応じて開閉され、上記のように開弁時には冷却ノズル38からエアが噴射される。
【0050】
炉解体機1の稼働中には、開口部45にカバー部材46が締結されて挿脱孔45dを閉鎖している。アーム12上には破砕した耐火物の破片が降り注ぐが、カバー部材46により開閉バルブ37や冷却ノズル38への破片の直接的な衝突、ひいては衝突に起因する故障等のトラブルを未然に防止することができる。
【0051】
一方、詳細は後述するが開閉バルブ37の開閉操作は、アーム12内から冷却ノズル38と共に開閉バルブ37を外部に取り出して実施される。このため挿脱孔45dは、開閉バルブ37及び冷却ノズル38を外部に取出し可能な大きさに設定され、且つ取出し操作を妨げないように、アーム12内で冷却用エア配管36には弛みを有する余長領域が形成されている。
【0052】
次に、以上のように構成された炉解体機1を、作業現場の諸条件に応じて仕様変更して稼働させる場合について説明する。
下表1は、12tクラスの炉解体機1を前提として、作業現場の環境温度、装着すべきブレーカ20,21の種類、油圧ブレーカ20及び作業フロント9内の冷却の要否、コンプレッサ30,31に要求される吐出空気量、及び他のCASEと比較したときの特徴を、CASE1~4としてまとめたものであり、以下に順次説明する。無論、各条件は一例であり、炉解体機1の仕様等に応じて相違する。
【表1】
基本的にエアを消費しない油圧ブレーカ20が優先して選択され、環境温度の上昇に応じて冷却対策が講じられる。また、高い環境温度の下では油圧ブレーカ20に油漏れの可能性が生じるため、エアブレーカ21を駆動可能な大容量のコンプレッサを使用できることを条件として、エアブレーカ21が選択される。
【0053】
CASE1は、炉が十分に冷えて常温の環境温度の下で炉解体機1を稼働させる場合であり、油圧ブレーカ20が選択されて、図4,6に基づき説明したようにアタッチメント13に装着される。従って、コントロールバルブ23からの作動油の給排に応じて、油圧ブレーカ20が駆動されて耐火物を破砕可能となる。また、油圧ブレーカ20及び作業フロント9内の冷却が不要なことから、冷却のためのエアの供給源も不要となる。このため、車載コンプレッサ30及び工場コンプレッサ31は共に稼働せず、必然的に車体側から開閉バルブ37にエアが供給されないため、このときの開閉バルブ37の開閉状態は何れであっても問題ない。
【0054】
仮に本実施形態とは異なり車載コンプレッサ30を搭載していない炉解体機1を稼働させる場合には、冷却のためのエアが必要なときには、供給源として工場コンプレッサ31を利用することになる。しかし、CASE1では元々エアの供給を必要としないため、工場コンプレッサ31が備えない作業現場においても何ら問題なく作業を実施できる。
【0055】
CASE2は、炉がある程度冷えて100℃程度の環境温度の下で炉解体機1を稼働させる場合であり、CASE1と同じく油圧ブレーカ20が選択される。但し、このときには油圧ブレーカ20の冷却が必要になるため、エアの供給源として工場コンプレッサ31を稼働させたり、或いは作業現場に工場コンプレッサ31がない場合には車載コンプレッサ30を稼働させたりする。このため、使用するコンプレッサ30,31に応じてエア切換バルブ32を切り換えておく。コンプレッサ30,31からのエアは、コンプレッサ側エア配管33及びフロント側エア配管34を経て分岐ブロック35に供給され、さらにブレーカ駆動用エア配管39及びブレーカ側エア配管41を経て油圧ブレーカ20の冷却に供される。
【0056】
また、作業フロント9内の冷却が不要なことを鑑みて、開閉バルブ37を閉弁して冷却ノズル38へのエアの供給を中止する。従って、コンプレッサ30,31からのエアは油圧ブレーカ20側のみに供給され、冷却ノズル38からの無駄なエア噴射が防止されるため、全体としてのエア消費を低減できる。このため表1の例では、必要空気量を0.8m3/min程度に抑制できることから、小型コンプレッサでも十分に要求に応じることができる。
【0057】
CASE3は、炉の稼働中止の直後で100℃以上の環境温度の下で炉解体機1を稼働させる場合である。例えば、車載コンプレッサ30或いは作業現場に備えられた工場コンプレッサ31では、容量が不足してエアブレーカ21を駆動できない場合等には、CASE1,2と同じく油圧ブレーカ20が選択される。但し、このときには油圧ブレーカ20の冷却と共に、熱害対策として作業フロント9内の冷却も必要になるため、開閉バルブ37を開弁する。これにより、コンプレッサ30,31からのエアは油圧ブレーカ20に供給されて冷却作用を奏すると共に、冷却ノズル38から噴射されたエアにより、作業フロント9内に設置されている機器が冷却される。結果として表1の例では、必要空気量を2.8m3/min程度に抑制できることから、中型コンプレッサでも十分に要求に応じることができる。
【0058】
CASE4は、CASE3と同じく100℃以上の環境温度の下で炉解体機1を稼働させる場合であるが、例えば、作業現場にエアブレーカ21を駆動可能な大容量の工場コンプレッサ31が備えられて使用可能な点が相違する。この場合にはエアブレーカ21が選択されて、図5,7に基づき説明したようにアタッチメント13に装着されると共に、ブレーカ接続ポート29の2箇所のポートがプラグ43により封止される。従って、コンプレッサ31からのエアの供給により、エアブレーカ21が駆動されて耐火物を破砕可能となる。
【0059】
表1の例では、このときの必要空気量が7.2 m3/min程度まで増加するが、大容量のコンプレッサ31により要求に応じることができる。なお、作業フロント9内を冷却するか否かはコンプレッサ31の容量を鑑みて決定され、エアブレーカ21の駆動以外に余裕分がない場合には開閉バルブ37を閉弁して冷却を実施せず、余裕分がある場合には開閉バルブ37を開弁して冷却を実施すればよい。
【0060】
そして、フロント側エア配管34を経て分岐ブロック35に導かれたエアは、CASE3では油圧ブレーカ20の冷却及び作業フロント9内の冷却のために消費され、CASE4ではエアブレーカ21の駆動のために消費され、双方の同時消費は起こり得ない。CASE3の必要空気量(2.8m3/min)よりもCASE4の必要空気量(7.2 m3/min)の方が大であるため、CASE4の必要空気量に対応してフロント側エア配管34の口径が設定されている。結果として共通のフロント側エア配管34を経たエアの供給により、CASE3とCASE4との何れも実現可能となっている。
【0061】
以上詳述したように本実施形態の炉解体機1では、コンプレッサ30,31からのエアをコンプレッサ側エア配管33及びフロント側エア配管34を経て分岐ブロック35に供給し、この分岐ブロック35で2つに分岐させて、一方はブレーカ駆動用エア配管39を経てエアブレーカ21に供給し、他方は冷却用エア配管36を経て開閉バルブ37及び冷却ノズル38に供給している。このため、例えば特許文献1の炉解体機1と同様に、エアブレーカ21の駆動及び作業フロント9内に冷却を何ら問題なく実現できる。
【0062】
そして、車体側から作業フロント9内に引き込まれて分岐ブロック35に接続されるフロント側エア配管34、換言するとスイベルジョイント22及びケーブルキャリア28を介するフロント側エア配管34が、特許文献1の場合の2本から1本に減少するため、それぞれの機構をより小型化できる。
【0063】
例えば図3に示すように、ケーブルキャリア28は、油圧配管やエア配管を左右方向に並べた配置で挿通・支持しているため、エア配管が1本減少することで左右幅が減少する。スイベルジョイント22についても、そのアウタブーム10側及びインナブーム11側に接続される配管数が減少するため、接続箇所の面積が縮小して小型化する。結果として、ケーブルキャリア28やスイベルジョイント22を収容している作業フロント9全体を小型化でき、例えばアーム12長の短縮等のように作業フロント9の操作性を犠牲にすることなく、作業フロント9の重量を軽減することができる。
【0064】
そして、作業フロント9の軽量化は、これを支持している車体側の負担、即ち下部走行体2や上部旋回体4の負担軽減につながる。作業フロント9が重量増加すれば、稼働中の炉解体機1の安定性を保つために車体側を大型化する必要があるが、このような対策が不要となるため、炉解体機1全体を小型化できる。これにより、炉解体機1の製造コストを低減できると共に、現場での稼働に要するスペースが縮小するため、良好な機動性を実現することができる。
【0065】
また、ケーブルキャリア28は多数の部品をベルト状に連結してなり、油圧配管やエア配管の重量を受けながら、アーム12の伸縮に応じて絶えず形状を変化させている。従って、稼働中に何らかの故障を発生する場合もあり、その負担軽減のためにも配管数の減少が求められる。エア配管が2本から1本に減少したことは、このような観点からも有利に働き、炉解体機1の信頼性を向上できるという別の利点が得られる。
【0066】
一方、上記したCASE1~4に応じて炉解体機1の仕様を変更する際には、作業フロント9内の冷却の要否に応じて開閉バルブ37の開閉操作を要する場合がある。また、アーム12の挿脱孔45dはカバー部材46で閉塞されているものの微細な煤等が侵入・堆積するため、冷却ノズル38の清掃等も必要になる。これらの作業は、アーム12の開口部45からカバー部材46を脱着して実施されるため、その手順を図8,9に基づき説明する。
【0067】
まず、カバー部材46を固定しているボルト47の螺合を解除し、把手46bを把持してカバー部材46を開口部45から上方に取り出す。カバー部材46に連結された状態で、開閉バルブ37及び冷却ノズル38が挿脱孔45dを介してアーム12の外部に取り出される。開閉バルブ37の開閉操作或いは冷却ノズル38の清掃等の目的とする作業を実施した後、カバー部材46を開口部45の正規位置に戻してボルト47で締結すると、一連の作業が完了する。
【0068】
このようにカバー部材46と共に開閉バルブ37及び冷却ノズル38がアーム12の外部に取り出され、冷却用エア配管36には弛みを有する余長領域が形成されている。このため、開閉バルブ37及び冷却ノズル38をアーム12の上面12aから引き離して所望の姿勢に保つことができ、目的とする作業を容易に実施できるという利点が得られる。
【0069】
また、CASE1~3とCASE4との間の炉解体機1の仕様変更は、ブレーカ20,21の交換作業を伴う。特許文献1の炉解体機1では、ブレーカに車体側からのエアまたは作動油を供給するために作業フロントが専用品として製作され、エアまたは油圧の何れか一方の配管だけが敷設されていた。このため、例えば油圧ブレーカからエアブレーカへの交換では、ブレーカ自体の交換作業だけでなく、作業フロント内に敷設されている油圧配管をエア配管に交換する必要があり、作業フロントの分解(詳しくは、アウタブームからのインナブームの取外し)という大掛かりな作業が発生した。無論、逆のブレーカ交換も同様である。
【0070】
これに対して本実施形態の炉解体機1では、油圧ブレーカ20に作動油を供給するためのブレーカ駆動用油圧配管27a,27b、及びエアブレーカ21にエアを供給するためのブレーカ駆動用エア配管39が共に作業フロント9内に敷設され、それぞれアタッチメント13のブレーカ接続ポート29まで導かれている。このためアタッチメント13のブレーカ20,21を交換する際には、アタッチメント13へのブレーカ20,21の脱着と共に、必要に応じてブレーカ側油圧配管40やブレーカ側エア配管41,42或いはプラグ43をブレーカ接続ポート29に接続するだけの簡単な作業で完了できる。
【0071】
このように作業フロント9を分解することなく、アタッチメント13周辺の作業だけでブレーカ20,21を交換できるため、炉解体機1の保守性を大幅に向上することができる。加えて作業現場では、大掛かりな作業フロント9の分解作業は実施できないものの、アタッチメント13周辺の作業であれば実施可能な場合もあり得る。何らかの事情により作業現場でブレーカ20,21の交換が必要になった場合であっても、本実施形態の炉解体機1であれば対応することができる。
【0072】
ところで本実施形態では、アーム12の基端に分岐ブロック35を設け、コンプレッサ30,31からのエアを分岐ブロック35で2つに分岐させて、個別のエア配管(ブレーカ駆動用エア配管39、冷却用エア配管36)を介してエアブレーカ21と開閉バルブ37及び冷却ノズル38とに供給した。このようにアーム12の基端に分岐ブロック35を設けた場合には、作業フロント9の良好な組立性及び保守性を実現できるが、本発明はこれに限るものではない。
【0073】
例えば図10に示すように、分岐ブロック35をアーム12の基端からアーム12内の開閉バルブ37及び冷却ノズル38の位置に移設した上で、開閉バルブ37及び冷却ノズル38と一体化してもよい。ケーブルキャリア28からのフロント側エア配管34はアーム12内で先端へと延設されて分岐ブロック35に接続され、分岐ブロック35にはブレーカ駆動用エア配管39が接続されると共に、この別例では冷却用エア配管36が省略されて、分岐ブロック35内で開閉バルブ37が直接的にフロント側エア配管34と連通する。従って、アーム12内に敷設されるエア配管36,39が2本から1本に減少し、作業フロント9の構成を簡素化できるという別の利点が得られる。
【0074】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば上記実施形態では、アタッチメント13周辺の作業だけでブレーカ20,21を交換可能とするために、作業フロント9内にブレーカ駆動用油圧配管27a,27b及びブレーカ駆動用エア配管39を共に敷設したが、これに限るものではない。例えば、作業フロント9内にブレーカ駆動用エア配管39だけを敷設してエアブレーカ21の専用品としてもよい。
【0075】
また上記実施形態では、カバー部材46に連結された状態で開閉バルブ37及び冷却ノズル38をアーム12の外部に取り出したが、開閉バルブ37を操作可能であれば、これに限ることはない。例えば、カバー部材46に代えて開閉可能な扉(本発明のカバー部材に相当)を設けて開口部45を閉鎖すると共に、開閉バルブ37及び冷却ノズル38をアーム12内に固定し、扉を開いて挿脱孔45dを介して開閉バルブ37を操作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 炉解体機
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
9 作業フロント
10 アウタブーム
11 インナブーム
11a キャリア室
12 アーム
13 アタッチメント
20 エアブレーカ
21 油圧ブレーカ
22 スイベルジョイント
23 コントロールバルブ
24 バルブ側油圧配管
27a,27b ブレーカ駆動用油圧配管
28 ケーブルキャリア
28a ブーム側固定端
28b アーム側固定端
28c 折返し部
30 車載コンプレッサ
31 工場コンプレッサ
33 コンプレッサ側エア配管
34 フロント側エア配管
35 分岐ブロック(分岐部材)
35a 流入口
35b,35c 流出口
36 冷却用エア配管
37 開閉バルブ
38 冷却ノズル
39 ブレーカ駆動用エア配管
45 開口部
46 カバー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10