(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/06 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A45D40/06 C
(21)【出願番号】P 2021076039
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰紀
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-054486(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0060820(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0216203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00~40/30
B65D 83/00
B43K 21/08~21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の操作筒部と、
前記操作筒部の内側に容器軸回りに回転可能に設けられたスリーブと、
前記スリーブの内側に容器軸回りの回転が規制された状態で、容器軸方向に移動可能に支持されるとともに、内容物を保持する中皿本体と、
前記操作筒部の底壁から容器軸方向に延びる伝達軸を有し、前記伝達軸に螺旋溝が形成された繰出部材と、
前記中皿本体から容器軸方向に延び、前記螺旋溝に係合する係合突起を有する可動軸と、を備え、
前記操作筒部は、前記底壁に設けられるとともに、前記繰出部材に設けられた係合部が容器軸方向に乗り越えることで、前記繰出部材が容器軸方向に係合する被係合部を備え、
前記繰出部材及び前記操作筒部のうち
何れか一方の部材である第1部材には、
前記繰出部材及び前記操作筒部のうち他方の部材である第2部材に向けて容器軸方向に突出する突部が設けられ、
前記第2部材には、前記係合部が前記被係合部に係合された状態で前記突部が収容される凹部を有する位置決め部が設けられ、
前記位置決め部のうち前記第1部材と容器軸方向で向かい合う面は、前記凹部の開口縁から容器軸回りに螺旋状に延びるとともに、前記操作筒部と前記繰出部材との容器軸回りの相対回転に伴い前記突部が摺動可能な摺動面を備えている繰出容器。
【請求項2】
前記第1部材は、前記突部から容器軸回りに螺旋状に延びるスロープ部を備え、
前記スロープ部は、前記係合部と前記被係合部が係合した状態において、前記摺動面に容器軸方向で向かい合う対向面を備えている請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記摺動面は、容器軸回りの一方側から他方側に向かうに従い、容器軸方向において前記第1部材から離れる方向に向けて前記位置決め部の全周に亘って延び、
前記凹部の内面のうち、容器軸回りの一方側を向く第1内側面は、容器軸回りの他方側を向く第2内側面よりも前記第1部材に向けて突出している請求項1又は請求項2に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記螺旋溝は、前記伝達軸の外周面に形成され、
前記可動軸は、前記伝達軸を径方向の外側から取り囲む筒状に形成され、
前記係合突起は、前記可動軸の内周面から径方向の内側に突出している請求項1から請求項3の何れか1項に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
繰出容器は、有底筒状の操作部と、操作部の内側に容器軸回りに回転可能に支持されたスリーブと、スリーブの内側に設けられて内容物を保持する中皿と、を備えている。中皿は、スリーブに対して容器軸回りの回転が規制された状態で、容器軸方向に移動可能に設けられている。
【0003】
特許文献1には、操作部が、筒状の外側部材と、外側部材の内側に嵌合された内側部材と、により全体として有底筒状に形成された構成が開示されている。内側部材は、外側部材の内側を容器軸方向に延びるとともに、外周面に螺旋溝が形成された柱状部を備えている。繰出容器では、操作部に対してスリーブを容器軸回りに回転させることで、中皿に設けられた係合突起が螺旋溝内を移動する。これにより、スリーブ内で中皿が上下動することで、スリーブを通じて内容物を繰り出したり、収容したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、繰出容器では、商品性や操作性を向上させるために、例えば中皿が下降端位置(初期位置)にあるとき、操作部とスリーブとが周方向で所望の位置に合わされていることが好ましい。すなわち、中皿が下降端位置にある際に操作部とスリーブとを位置合わせするためには、螺旋溝の下端位置を操作部に対して所望の位置に設定する必要がある。
【0006】
しかしながら、従来の構成では、外側部材と内側部材とを、周方向の位置を合わせた状態で嵌合させることが難しかった。一方、外側部材と内側部材とを嵌合させた後、位置合わせのために外側部材と内側部材とを相対回転させようとすると、外側部材と内側部材との間で発生する摺動抵抗が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明は、操作筒部と繰出部材との組付性を向上させつつ、スリーブと操作筒部とを所望の位置に配置させ易い繰出容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係る繰出容器は、有底筒状の操作筒部と、前記操作筒部の内側に容器軸回りに回転可能に設けられたスリーブと、前記スリーブの内側に容器軸回りの回転が規制された状態で、容器軸方向に移動可能に支持されるとともに、内容物を保持する中皿本体と、前記操作筒部の底壁から容器軸方向に延びる伝達軸を有し、前記伝達軸に螺旋溝が形成された繰出部材と、前記中皿本体から容器軸方向に延び、前記螺旋溝に係合する係合突起を有する可動筒と、を備え、前記操作筒部は、前記底壁に設けられるとともに、前記繰出部材に設けられた係合部が容器軸方向に乗り越えることで、前記繰出部材が容器軸方向に係合する被係合部を備え、前記繰出部材及び前記操作筒部のうち、第1部材には、第2部材に向けて容器軸方向に突出する突部が設けられ、前記第2部材には、前記係合部が前記被係合部に係合された状態で前記突部が収容される凹部を有する位置決め部が設けられ、前記位置決め部のうち前記第1部材と容器軸方向で向かい合う面は、前記凹部の開口縁から容器軸回りに螺旋状に延びるとともに、前記操作筒部と前記繰出部材との容器軸回りの相対回転に伴い前記突部が摺動可能な摺動面を備えている。
本態様によれば、操作筒部に対して繰出部材を組み付けるにあたり、突部が摺動面に当接した状態で、操作筒部と繰出部材とを相対回転させる。これにより、突部が摺動面上を摺動することで、操作筒部に対する繰出部材の回転に伴い、繰出部材及び操作筒部同士が容器軸方向で接近する。その後、凹部と突部とが容器軸方向に向かい合った状態で、突部を凹部内に進入させることで、繰出部材と操作筒部との容器軸回り(周方向)の位置を合わせた状態で、係合部と被係合部とを係合させることができる。これにより、螺旋溝の終端位置を操作筒部に対して所望の位置に設定することができるので、操作筒部に対してスリーブを周方向で所望の位置に配置させ易い。その結果、繰出容器の商品性や操作性を向上させることができる。
しかも、本態様では、係合部と被係合部との係合が完了する前に位置合わせ工程を行うことで、係合部と被係合部との係合が完了した状態で位置合わせ工程を行う場合に比べ、位置合わせに要する摺動抵抗を軽減できる。その結果、操作筒部と繰出部材との組付性を向上させることができる。
【0009】
上記態様の繰出容器において、前記第1部材は、前記突部から容器軸回りに螺旋状に延びるスロープ部を備え、前記スロープ部は、前記係合部と前記被係合部が係合した状態において、前記摺動面に容器軸方向で向かい合う対向面を備えていることが好ましい。
本態様によれば、スロープ部が突部に連なることで、突部を補強することができる。これにより、例えば突部が摺動面上を摺動する際、突部の変形等を抑制し、位置合わせ後に突部を凹部内に進入させ易い。
また、繰出部材が操作筒部に組み付けられた状態において、摺動面が対向面に向かい合うことで、操作筒部に対する繰出部材のがたつきを抑制できる。
【0010】
上記態様の繰出容器において、前記摺動面は、容器軸回りの一方側から他方側に向かうに従い、容器軸方向において前記第1部材から離れる方向に向けて前記位置決め部の全周に亘って延び、前記凹部の内面のうち、容器軸回りの一方側を向く第1内側面は、容器軸回りの他方側を向く第2内側面よりも前記第1部材に向けて突出していることが好ましい。
本態様によれば、位置合わせ工程において、突部が凹部の第1内側面のうち第2内側面よりも突出した部分に当接することで、操作筒部に対する繰出部材の周方向の他方側への回転が規制される。これにより、突部と凹部とを向かい合わせることができ、繰出部材と外装体との周方向位置を合わせ易い。
【0011】
上記態様の繰出容器において、前記螺旋溝は、前記伝達軸の外周面に形成され、前記可動軸は、前記伝達軸を径方向の外側から取り囲む筒状に形成され、前記係合突起は、前記可動軸の内周面から径方向の内側に突出していてもよい。
本態様によれば、可動軸が伝達軸の外側に配置されるので、繰出操作時における中皿の移動を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作筒部と繰出部材との組付性を向上させつつ、スリーブと操作筒部とを所望の位置に配置させ易い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に対応する位置決め機構の展開図である。
【
図3】本実施形態に係る繰出容器の使用時における動作説明図である。
【
図4】本実施形態に係る繰出容器の組付時における断面図である。
【
図5】繰出容器の組付時における位置決め機構の展開図である。
【
図6】繰出容器の組付時における位置決め機構の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す繰出容器1は、棒状内容物(不図示)を繰り出して使用する。棒状内容物は、例えば化粧料(口紅やリップクリーム、スティックアイシャドー等)や薬剤、糊等が挙げられる。
【0015】
繰出容器1は、操作部10と、スリーブ11と、中皿12と、キャップ13と、を備えている。操作部10、スリーブ11及び中皿12は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配置されている。なお、繰出容器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0016】
以下、共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向(容器軸方向)という。上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。この場合、繰出容器1のうち、上下方向におけるキャップ13の頂壁側を上方といい、操作部10の底壁(外装体21の底壁21a)側を下方という。また、周方向のうち、内容物を上昇させる方向を繰出方向といい、内容物を下降させる方向を収容方向という。
【0017】
操作部10は、繰出容器1下部の外装部分を構成する。操作部10は、全体として容器軸Oと同軸に配置された有底筒状に形成されている。操作部10は、外装体(操作筒部、第1部材)21と、中具(操作筒部)22と、繰出部材(第2部材)23と、を備えている。
【0018】
外装体21は、有底筒状に一体形成されている。外装体21の底壁21aには、上方に向けて延びる取付筒21bが形成されている。取付筒21bは、容器軸Oと同軸に配置されている。取付筒21bの上端部には、径方向の外側に突出する係合部21cが形成されている。本実施形態において、取付筒21bには、上方に向けて開口するスリット21dが周方向に間隔をあけて形成されている。取付筒21bは、周方向で隣り合うスリット21d間に位置する部分が径方向に弾性変形可能に構成されている。なお、外装体21は、底壁21aと周壁21fとが別体であってもよい。
【0019】
中具22は、外装体21と同軸に配置された筒状に形成されている。中具22は、外装体21の内側に上方から嵌合されている。中具22は、上端部が外装体21から上方に突出した状態で、外装体21に対して周方向に回転不能に設けられている。なお、中具22は、外装体21と一体に形成されていてもよい。また、操作部10は、中具22の内周面が平面視で円形状に形成されていれば、周壁21fの平面視形状は円形状以外の形状であってもよい。
【0020】
繰出部材23は、外装体21の内側において、中皿12を上下動可能に支持する。繰出部材23は、固定軸部材23aと、外側伝達軸23bと、を備えている。
固定軸部材23aは、外装体21に対して周方向に回転不能に設けられている。具体的に、固定軸部材23aは、嵌合筒24と、台座部25と、内側伝達軸(伝達軸)26と、を備えている。
【0021】
嵌合筒24は、容器軸Oと同軸に配置されている。嵌合筒24の内側には、取付筒21bがアンダーカット嵌合されている。具体的に、嵌合筒24のうち、上下方向の中間部分には、径方向の内側に突出する被係合部24aが形成されている。被係合部24aは、係合部21cに下方から係合されている。嵌合筒24の下端縁は、被係合部24aが係合部21cに係合された状態において、底壁21aに上方から近接又は当接している。これにより、繰出部材23は、外装体21に対する上下方向の移動が規制されている。
【0022】
嵌合筒24の下端部には、径方向の外側に張り出す張出部24bが形成されている。嵌合筒24の上部には、周溝24cが形成されている。周溝24cは、嵌合筒24の外周面上で開口するとともに、嵌合筒24の外周面上を周方向の全周に亘って延びている。なお、周溝24c内には、周溝24cの底面から径方向の外側に突出するリブ24dが周方向に間隔をあけて形成されている。
【0023】
台座部25は、嵌合筒24の上端開口縁から径方向に張り出している。台座部25は、容器軸Oと同軸に配置された円環状に形成されている。台座部25の外周縁は、嵌合筒24に対して径方向の外側に張り出している。台座部25の内周部分は、取付筒21bの上端縁が下方から近接又は当接している。
【0024】
内側伝達軸26は、台座部25の内周縁から上方に延びている。内側伝達軸26は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。内側伝達軸26の外周面には、内側螺旋溝26aが形成されている。内側螺旋溝26aは、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、内側螺旋溝26aは、二条形成されている。但し、内側螺旋溝26aは、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0025】
外側伝達軸23bは、内側伝達軸26の外側で内側伝達軸26の周囲を取り囲んでいる。外側伝達軸23bの下端部には、径方向の内側に突出する第1係合突起31が形成されている。第1係合突起31は、内側伝達軸26の内側螺旋溝26a内に収容(係合)されている。外側伝達軸23bは、内側伝達軸26に対する周方向の回転に伴い、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、内側伝達軸26に対して上下動する。本実施形態において、第1係合突起31は、内側螺旋溝26aの条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第1係合突起31は、内側螺旋溝26aに沿って傾斜して延びている。
【0026】
外側伝達軸23bの外周面には、外側螺旋溝32が形成されている。外側螺旋溝32は、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、外側螺旋溝32は、二条形成されている。但し、外側螺旋溝32は、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0027】
スリーブ11は、操作部10の内側において、操作部10に対して周方向に回転可能に設けられている。スリーブ11は、容器軸Oと同軸に配置された二重筒状に形成されている。具体的に、スリーブ11は、外スリーブ11aと、内スリーブ11bと、を備えている。
【0028】
外スリーブ11aは、中具22の内側において、中具22と台座部25との間を通じて操作部10に挿入されている。したがって、外スリーブ11aは、内側伝達軸26の周囲を取り囲んでいる。外スリーブ11aの下端縁は、張出部24bに下方から支持されている。外スリーブ11aの上端縁は、操作部10よりも上方において、容器軸Oに対して傾斜している。なお、外スリーブ11aは、金属材料等により形成されていてもよい。
【0029】
外スリーブ11aには、下突部11c及び上突部11dが形成されている。
下突部11cは、外スリーブ11aの下端部において径方向の内側に突出している。下突部11cは、周溝24c内に収容された状態で、台座部25の外周縁に下方から係合している。これにより、外スリーブ11aは、操作部10に対する上方への移動が規制された状態で、周方向に回転可能に構成されている。
上突部11dは、外スリーブ11aの中間部分(中具22の上端縁よりも下方であって、下突部11cよりも上方に位置する部分)から径方向の内側に突出している。
【0030】
内スリーブ11bは、外スリーブ11aに対して周方向の回転が規制された状態で、外スリーブ11aに対して上下動可能に設けられている。内スリーブ11bの上下寸法は、外スリーブ11aの上下寸法よりも短い。内スリーブ11bは、最下端位置にあるとき、台座部25の外周部に上方から近接又は当接している。図示の例において、内スリーブ11bの上端縁は、中具22の上端縁よりも下方に位置している。
【0031】
内スリーブ11bには、外周面上で開口する第1規制溝11fが形成されている。第1規制溝11fは、内スリーブ11bのうち上突部11dと径方向で向かい合う位置に上下方向に延びている。第1規制溝11f内には、上突部11dが収容されている。内スリーブ11は、第1規制溝11f内において上突部11dの周方向への移動を規制しつつ、上下方向への移動を案内する。本実施形態において、第1規制溝11fは、内スリーブ11bの上端縁で開放される一方、内スリーブ11bの下端縁では開放されていない。したがって、内スリーブ11bが上昇した際、上突部11dが第1規制溝11fの下端面に上方から当接することで、上突部11dが第1規制溝11fから脱落するのを規制する。
【0032】
内スリーブ11bの上端部には、径方向の内側に突出するストッパ突部11gが形成されている。
内スリーブ11bにおいて、ストッパ突部11gと周方向で異なる位置には、内スリーブ11bの内周面上で開口する第2規制溝11hが形成されている。第2規制溝11hは、上下方向に延びるとともに、内スリーブ11bの上下両端縁上で開放されている。
【0033】
中皿12は、スリーブ11内において、スリーブ11(内スリーブ11b)に対する周方向の回転が規制された状態で、スリーブ11に対して上下方向に移動可能に設けられている。中皿12は、中皿本体51と、可動筒(可動軸)52と、を備えている。
中皿本体51は、容器軸Oと同軸の有底筒状に形成されている。中皿本体51は、外スリーブ11aの内側において、内側伝達軸26の上方に位置する部分に収容されている。中皿本体51には、内容物が充填される。内容物は、中皿本体51から上方に突出した状態で充填される。
【0034】
可動筒52は、中皿本体51に一体形成されている。可動筒52は、中皿本体51の底壁から下方に延びている。可動筒52は、内スリーブ11bの内側に挿入されて、外側伝達軸23bの周囲を取り囲んでいる。可動筒52には、径方向の外側に突出する突条部52aが形成されている。突条部52aは、可動筒52の外周面上を上下方向に延びている。突条部52aは、第2規制溝11h内に収容されている。中皿12は、突条部52aが第2規制溝11hの内面に周方向で当接することで、内スリーブ11bに対する上下動が許容された状態で、内スリーブ11bに対する回転が規制されている。
【0035】
可動筒52の下端部において、突条部52aと周方向で異なる位置には、径方向の外側に突出するストッパ突部52bが形成されている。ストッパ突部52bは、内スリーブ11bのストッパ突部11gと上下方向で向かい合っている。中皿12は、ストッパ突部52bが内スリーブ11bのストッパ突部11gに下方から当接することで、内スリーブ11bに対する上方への移動が規制されている。
【0036】
可動筒52の下端部には、径方向の内側に突出する第2係合突起(係合突起)52cが形成されている。第2係合突起52cは、外側螺旋溝32内に収容(係合)されている。可動筒52は、外側伝達軸23bに対する周方向の回転に伴い、第2係合突起52cが外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bに対して上下動する。本実施形態において、第2係合突起52cは、外側螺旋溝32の条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第2係合突起52cは、外側螺旋溝32に沿って傾斜して延びている。
【0037】
ここで、
図1、
図2に示すように、底壁21a及び繰出部材23には、位置決め機構61が設けられている。位置決め機構61は、繰出部材23に設けられた第1位置決め部(位置決め部)62と、底壁21aに設けられた第2位置決め部63と、を備えている。
【0038】
第1位置決め部62は、台座部25の内周縁から下方に突出している。第1位置決め部62は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。第1位置決め部62における周方向の一部には、第1位置決め部62を周方向に分断する凹部62aが形成されている。凹部62aは、第1位置決め部62を径方向に貫通するとともに、第1位置決め部62の下端面上で開放されている。
【0039】
第1位置決め部62は、周方向の一方側から他方側に向かうに従い台座部25からの突出高さが漸次低くなっている。具体的に、第1位置決め部62の下端面は、凹部62aにおける周方向の他方側に位置する下端開口縁を最下端とし、凹部62aにおける周方向の一方側に位置する下端開口縁を最上端として、螺旋状に延びている。第1位置決め部62の下端面は、周方向の一方側から他方側に向かうに従い上方に延びる摺動面62bを構成している。本実施形態において、摺動面62bの最上端は、台座部25の下面に対して下方に位置している。
【0040】
凹部62aの内面のうち、周方向の一方側を向く第1内側面62cは、周方向の他方側を向く第2内側面62dに比べて下方に突出している。凹部62aにおいて、第1内側面62cの下部は、摺動面62bの最上端(第2内側面62dの下端縁)に対して下方に突出する回り止め部62fを構成している。
【0041】
第2位置決め部63は、突部67と、スロープ部68と、を備えている。
突部67は、底壁21aのうち凹部62aと上下方向で向かい合う位置から上方に突出している。突部67は、凹部62a内に下方から収容されている。外装体21は、突部67が第1内側面62c又は第2内側面62dに当接することで、繰出部材23に対する周方向の移動が規制されている。突部67が凹部62a内に収容された状態において、突部67の上端面は、台座部25に下方から近接又は当接している。
【0042】
スロープ部68は、周方向の一方側から他方側に向かうに従い底壁21aからの突出高さが漸次高くなるように容器軸Oを中心として螺旋状に延びている。スロープ部68における周方向の他方側に位置する端部は、突部67における周方向の一方側を向く第1外側面67aに対して上下方向の中間部分に連なっている。一方、スロープ部68における周方向の一方側に位置する端部は、突部67における周方向の他方側を向く第2外側面67bと底壁21aとの境界部分に接続されている。スロープ部68の上端面は、突部67が凹部62a内に収容された状態において、摺動面62bの全体に亘って上下方向で向かい合う対向面68aを構成している。図示の例において、対向面68aは、摺動面62bに倣って延びるとともに、摺動面62bの全域に亘って近接又は当接している。
【0043】
キャップ13は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成されている。キャップ13には、スリーブ11(外スリーブ11a)の上部が挿通された状態で、中皿12が着脱可能に装着される。
【0044】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。以下の説明では、まず繰出容器1の使用方法について説明し、その後繰出容器1の組付方法について説明する。
繰出容器1を使用する際には、まずキャップ13を操作部10から取り外す。次に、外スリーブ11a及び外装体21(周壁21f)をそれぞれ把持し、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させる。このとき、中具22及び固定軸部材23aは、外装体21にそれぞれ相対回転不能に取り付けられているため、外装体21、中具22及び固定軸部材23aが一体に回転する。一方、外スリーブ11a及び内スリーブ11b同士、並びに内スリーブ11b及び中皿12同士は、それぞれ相対回転不能に取り付けられているため、スリーブ11及び中皿12が一体に回転する。
【0045】
操作部10及びスリーブ11を相対回転させると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、の少なくとも一方の動作が生じる。
【0046】
内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転する場合には、第2係合突起52cが外側螺旋溝32内に係合した状態で、外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、可動筒52(中皿12)が繰出部材23に対して上昇する。このように、繰出部材23と可動筒52とが繰出方向に相対回転することで中皿12が上昇する動作を、本明細書では「第1動作」という。
【0047】
内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転する場合には、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内に係合した状態で、内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bが内側伝達軸26に対して上昇する。このとき、外側螺旋溝32の内面を介して第2係合突起52cが押し上げられることで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する。このように、内側伝達軸26と外側伝達軸23bとが繰出方向に相対回転することで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する動作を、本明細書では「第2動作」という。
【0048】
つまり、
図1、
図3に示すように、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させると、第1動作及び第2動作の少なくとも一方の動作により中皿12が上昇する。これにより、内容物がスリーブ11から上方に繰り出される。第1動作及び第2動作のうちどちらが生じるかは、各部材間の摩擦抵抗等によって変動する。但し、何れの動作が優先的に行われるとしても、内容物が繰り出されるため、使用者は内容物を使用することができる。なお、第1動作及び第2動作の双方が同時に生じてもよい。
【0049】
第1動作又は第2動作によって中皿12が上昇する初期段階において、中皿12は内スリーブ11bに対して上昇する(第1上昇過程)。具体的に、第1上昇過程では、突条部52aが第2規制溝11hに案内されることで、内スリーブ11bに対する中皿12の回転が規制された上で、中皿12が内スリーブ11bに対して上昇する。第1上昇過程において、中皿12のストッパ突部52bが内スリーブ11bのストッパ突部11gに下方から当接する。これにより、内スリーブ11bに対する中皿12の上昇が規制される。
【0050】
第1上昇過程の後、第1動作又は第2動作により、さらに中皿12が上昇しようとすると、ストッパ突部11g,52bを介して内スリーブ11bが上方に押し上げられる。これにより、中皿12は、内スリーブ11bとともに外スリーブ11aに対して上昇する(第2上昇過程)。第2上昇過程では、規制溝11f内に上突部11dが収容されていることから、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの回転が規制された上で、内スリーブ11bが外スリーブ11aに対して上昇する。第2上昇過程において、規制溝11fの下端面が上突部11dに下方から当接することで、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの上昇が規制される。これにより、中皿12が最上端位置に到達する。なお、本実施形態では、第1上昇過程の後に第2上昇過程が生じる構成について説明したが、第2上昇過程の後に第1上昇過程が生じてもよく、第1上昇過程と第2上昇過程が同時に生じてもよい。
【0051】
中皿12を下降させる際には、操作部10及びスリーブ11を収容方向に相対回転させる。すると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、によってスリーブ11に対して中皿12が下降する。中皿12の下降に伴い、内スリーブ11bが自重によって中皿12とともに下降する。そして、内スリーブ11bの下端縁が台座部25に当接することで、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの下降が規制される。その後、中皿12がさらに下降することで、中皿12は外スリーブ11a及び内スリーブ11bに対して下降する。
【0052】
続いて、繰出容器1の組立方法を説明する。以下の説明では、外装体21及び中具22が組み合わされた外装モジュールと、スリーブ11、中皿12及び繰出部材23が組み合わされた中皿モジュールと、を位置決め機構61を介して組み合わせる際の作用について説明する。但し、繰出部材23を単独で外装体21に組み付けてもよい。
【0053】
図4、
図5に示すように、外装モジュールと中皿モジュールを組み合わせるにあたって、まず中具22の上端開口部を通じて外装モジュール内に中皿モジュールを挿入する。すると、外装モジュール内に中皿モジュールが進入することで、突部67の上端面が第1位置決め部62の摺動面62b(下端面)において周方向の何れかの位置に当接するとともに、嵌合筒24の内側に取付筒21bが下方から進入する。この状態で、中皿モジュールを下方に押し付けた状態で、例えば周方向の他方側から一方側に向けて中皿モジュールと外装モジュールとを相対回転させる(位置決め工程)。すると、突部67が摺動面62b上を凹部62aに向けて摺動することで、外装モジュールに対する中皿モジュールの周方向の一方側への回転に伴い、中皿モジュールが外装モジュールに対して下降する。なお、中皿モジュールを下降する際の回転方向は、収容方向に一致していることが好ましい。これにより、外装モジュールと中皿モジュールとの相対回転に伴い、中皿12が上昇するのを抑制できる。
【0054】
その後、
図6に示すように、突部67の第2外側面67bが凹部62aの第1内側面62c(回り止め部62f)に当接することで、外装モジュールに対する中皿モジュールの周方向の他方側への回転が規制される。これにより、突部67と凹部62aとが上下方向で向かい合う。
【0055】
図2、
図6に示すように、突部67と凹部62aとが上下方向で向かい合った状態で、中皿モジュールを外装モジュールに対して下方に押し込むことで、突部67が凹部62a内に進入する(押込み工程)。突部67が凹部62a内に進入する過程において、嵌合筒24が取付筒21bに対して下方に移動する。この際、被係合部24aが係合部21cを下方に乗り越えることで、被係合部24aが係合部21cに対して下方から係合する。また、被係合部24aが係合部21cを下方に乗り越えることで、摺動面62b及び対向面68aが上下方向に近接又は当接した状態で突部67が凹部62a内に収容される。これにより、繰出部材23(固定軸部材23a)が外装体21に組み付けられる。すなわち、繰出部材23は、嵌合筒24及び取付筒21bを介して外装体21に対する上下方向の移動が規制されるとともに、位置決め機構61を介して外装体21に対する周方向の移動が規制される。
【0056】
なお、本実施形態では、突部67と凹部62aとが上下方向で向かい合った後、突部67が凹部62a内に進入する過程(押込み工程)で、被係合部24aが係合部21cを乗り越える構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、突部67が摺動面62b上を摺動する過程(位置決め工程)で、外装モジュールに対して中皿モジュールが回転しながら被係合部24aが係合部21cを乗り越え始める構成であってもよい。
【0057】
このように、本実施形態では、外装体21(底壁21a)には、繰出部材23(固定軸部材23a)に向けて上方に突出する突部67が設けられ、繰出部材23には、係合部21cが被係合部24aに係合された状態で突部67が収容される凹部62aを有する位置決め部62が設けられ、位置決め部62の下面に螺旋状に延びる摺動面62bを備える構成とした。
この構成によれば、外装体21に対して繰出部材23を組み付けるにあたり、突部67が摺動面62bに当接した状態で、外装体21と繰出部材23とを相対回転させる。これにより、突部67が摺動面62b上を摺動することで、外装体21に対する繰出部材23の回転に伴い、繰出部材23が外装体21に対して下降する。その後、凹部62aと突部67とが上下方向に向かい合った状態で、突部67を凹部62a内に進入させることで、繰出部材23と外装体21との周方向位置を合わせた状態で、係合部21cと被係合部24aとを係合させることができる。これにより、螺旋溝26a,32の下端位置を外装体21に対して所望の位置に設定することができるので、外装体21に対してスリーブ11を周方向で所望の位置に配置させ易い。その結果、繰出容器1の商品性や操作性を向上させることができる。
しかも、本実施形態では、係合部21cと被係合部24aとの係合が完了する前に位置合わせ工程を行うことで、係合部21cと被係合部24aとの係合が完了した状態で位置合わせ工程を行う場合に比べ、位置合わせに要する摺動抵抗を軽減できる。その結果、外装体21と繰出部材23との組付性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態において、外装体21は、突部67から周方向に延びるスロープ部68を備え、スロープ部68は、係合部21cと被係合部24aとが係合した状態において、摺動面62bに向かい合う対向面68aを備えている構成とした。
この構成によれば、スロープ部68が突部67に連なることで、突部67を補強することができる。これにより、例えば突部67が摺動面62b上を摺動する際、突部67の変形等を抑制し、位置合わせ後に突部67を凹部62a内に進入させ易い。
また、繰出部材23が外装体21に組み付けられた状態において、摺動面62bが対向面68aに向かい合うことで、外装体21に対する繰出部材23のがたつきを抑制できる。
【0059】
本実施形態において、摺動面62bは、第1位置決め部62の全周に亘って延び、凹部62aの内面のうち、第1内側面62cは第2内側面62dよりも下方に突出している構成とした。
この構成によれば、位置合わせ工程において、突部67が凹部62aの第1内側面62c(回り止め部62f)に当接することで、外装体21に対する繰出部材23の周方向の他方側への回転が規制される。これにより、突部67と凹部62aとが上下方向で向かい合わせることができ、繰出部材23と外装体21との周方向位置を合わせ易い。
【0060】
本実施形態において、螺旋溝26a,32は、伝達軸26,23bの外周面に形成され、可動筒52は伝達軸26,23bを径方向の外側から取り囲む筒状に形成され、第2係合突起52cは可動筒52の内周面から径方向の内側に突出している構成とした。
この構成によれば、可動筒52が伝達軸26,23bの外側に配置されるので、繰出操作時における中皿12の移動を安定させることができる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、繰出部材23に凹部62aが設けられ、外装体21に突部67が設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。繰出部材23に突部が設けれ、外装体21に凹部が設けられていてもよい。
上述した実施形態では、突部67にスロープ部68が連なる構成について説明したが、スロープ部68を有しない構成であってもよい。
上述した実施形態では、摺動面62bが第1位置決め部62の全周に亘って螺旋状に延びる構成について説明したが、この構成に限られない。摺動面62bは、第1位置決め部62における周方向の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0062】
上述した実施形態では、繰出部材23が内側伝達軸26及び外側伝達軸23bを備える構成について説明したが、この構成に限られない。繰出部材23は、内側伝達軸26を少なくとも有していればよい。
上述した実施形態では、嵌合筒24や取付筒21bの内側に位置決め機構61が設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。位置決め機構61は、嵌合筒24や取付筒21bの外側に設けられていてもよい。
上述した実施形態では、操作筒部として外装体21及び中具22を備える構成について説明したが、この構成に限られない。操作筒部は、外装体21のみを備えていてもよい。
上述した実施形態では、伝達軸の外周面に螺旋溝が形成され、可動軸が伝達軸の外側を取り囲む構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、筒状の伝達軸の内周面に螺旋溝が形成され、係合突起を有する可動軸が伝達軸の内側に配置される構成であってもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:繰出容器
11:スリーブ
21:外装体(操作筒部、第1部材、第2部材)
21a:底壁
21c:係合部
22:中具(操作筒部)
23:繰出部材(第2部材、第1部材)
24a:被係合部
26:内側伝達軸(伝達軸)
26a:内側螺旋溝(螺旋溝)
32:外側螺旋溝(螺旋溝)
51:中皿本体
52:可動筒(可動軸)
52c:第2係合突起(係合突起)
62:第1位置決め部(位置決め部)
62a:凹部
62b:摺動面
62c:第1内側面
62d:第2内側面
67:突部
68:スロープ部
68a:対向面
O:容器軸