(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】汲み上げポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/046 20060101AFI20240906BHJP
F04D 29/047 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F04D29/046 A
F04D29/047 Z
(21)【出願番号】P 2021099477
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修平
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197140(JP,A)
【文献】特開2021-028479(JP,A)
【文献】実開平02-013197(JP,U)
【文献】特開平07-229499(JP,A)
【文献】特開2003-042159(JP,A)
【文献】特開2015-183568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/046
F04D 29/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、
該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、
前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、
前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、
を備え、
前記ポンプロータは、
前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、
これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、
を有し、
前記スラスト軸受は、
前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、
前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、
を有し、
前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され
、
前記供給流路は、
前記ポンプシャフトの内部に設けられ、前記軸線上で前記軸線方向に延びる主流路と、
該主流路から径方向外側に延びるとともに前記軸受面と前記スラストパッドとの間に開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第一吐出流路と、
を有する汲み上げポンプ。
【請求項2】
上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、
該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、
前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、
前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、
を備え、
前記ポンプロータは、
前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、
これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、
を有し、
前記スラスト軸受は、
前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、
前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、
を有し、
前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され、
前記供給流路は、
前記スラストパッドの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状の環状流路と、
該環状流路に連通し、前記パッド面に開口するパッド内部流路と、
前記ポンプシャフトの内部で前記軸線方向に延びる主流路と、
該主流路から径方向外側に延びるとともに前記環状流路に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第二吐出流路と、
を有
し、
前記スラスト軸受は、動圧軸受であり、
前記パッド内部流路の中途位置には、前記パッド面における凹溝の位置に設けられた複数の開口部が形成されている汲み上げポンプ。
【請求項3】
上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、
該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、
前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、
前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、
を備え、
前記ポンプロータは、
前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、
これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、
を有し、
前記スラスト軸受は、
前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、
前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、
を有し、
前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され、
前記供給流路は、
前記スラストカラーの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状のカラー環状流路と、
該カラー環状流路に連通し、前記軸受面に開口するカラー内部流路と、
前記ポンプシャフトの内部で前記軸線方向に延びる主流路と、
該主流路から径方向外側に延びるとともに前記カラー環状流路に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第三吐出流路と、
を有
し、
前記スラスト軸受は、動圧軸受であり、
前記カラー内部流路の中途位置には、前記軸受面における凹溝の位置に設けられた複数の開口部が形成されている汲み上げポンプ。
【請求項4】
前記液体は、温度・成分の変化に基づいて粘度が変化する特性を有する請求項1から
3のいずれか一項に記載の汲み上げポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汲み上げポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
油井から原油を汲み上げるための装置として、これまでESP(Electrical Submersible Pump:人工採油電動ポンプ)と呼ばれるポンプが広く用いられてきた。この種のポンプは、回転軸回りに回転する回転軸と、この回転軸に一体に設けられた複数のインペラと、回転軸及びインペラを外周側から覆うケーシングと、を備えている。このポンプは、井戸(油田)に挿入された配管内に配置され、電動機によって回転軸を回転させることで、地下の石油を上方にくみ上げる。
【0003】
回転軸は、ケーシングに対して複数の軸受装置によって回転可能に支持されている。軸受装置には、径方向の荷重を支持するラジアル軸受と、回転軸方向の荷重を支持するスラスト軸受とが含まれる。このうち、スラスト軸受の一種として下記特許文献1に記載されたテーパーランド軸受が知られている。この種の軸受は、軸受面に供給された作動流体(原油)によって動圧を確保することで軸受性能(負荷性能)を発揮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したESPにテーパーランド軸受を適用する場合、原油の粘度が水分の含有量の変化に伴って変わるために軸受面の動圧が変化し、安定的に軸受性能を維持できないという課題がある。その結果、装置の安定的な運用に影響が及ぶ虞があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より安定的に運用することが可能な汲み上げポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る汲み上げポンプは、上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、を備え、前記ポンプロータは、前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、を有し、前記スラスト軸受は、前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、を有し、前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され、前記供給流路は、前記ポンプシャフトの内部に設けられ、前記軸線上で前記軸線方向に延びる主流路と、該主流路から径方向外側に延びるとともに前記軸受面と前記スラストパッドとの間に開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第一吐出流路と、を有する。
本開示に係る汲み上げポンプは、上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、を備え、前記ポンプロータは、前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、を有し、前記スラスト軸受は、前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、を有し、前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され、前記供給流路は、前記スラストパッドの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状の環状流路と、該環状流路に連通し、前記パッド面に開口するパッド内部流路と、前記ポンプシャフトの内部で前記軸線方向に延びる主流路と、該主流路から径方向外側に延びるとともに前記環状流路に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第二吐出流路と、を有し、前記スラスト軸受は、動圧軸受であり、前記パッド内部流路の中途位置には、前記パッド面における凹溝の位置に設けられた複数の開口部が形成されている。
本開示に係る汲み上げポンプは、上下方向に延びる軸線に沿う筒状をなすケーシングと、該ケーシング内で前記軸線方向に延びるポンプロータと、前記ケーシングと前記ポンプロータとの間で該ポンプロータを囲うポンプステータと、前記ポンプロータを前記ポンプステータに対して回転可能に支持するスラスト軸受と、を備え、前記ポンプロータは、前記軸線方向に順次接続された複数のポンプシャフトと、これらポンプシャフトにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフトとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラと、を有し、前記スラスト軸受は、前記ポンプシャフトの外周面に取り付けられ、前記軸線を中心とする円環状をなすとともに、前記軸線方向を向く軸受面を有するスラストカラーと、前記ポンプステータに設けられ、前記スラストカラーに対して前記軸線方向両側から対向するパッド面を有するスラストパッドと、を有し、前記ポンプシャフトには、前記インペラによって昇圧された前記液体を前記軸受面に供給する供給流路が形成され、前記供給流路は、前記スラストカラーの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状のカラー環状流路と、該カラー環状流路に連通し、前記軸受面に開口するカラー内部流路と、前記ポンプシャフトの内部で前記軸線方向に延びる主流路と、該主流路から径方向外側に延びるとともに前記カラー環状流路に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第三吐出流路と、を有し、前記スラスト軸受は、動圧軸受であり、前記カラー内部流路の中途位置には、前記軸受面における凹溝の位置に設けられた複数の開口部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より安定的に運用することが可能な汲み上げポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る汲み上げポンプの構成を示す縦断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るスラスト軸受の拡大断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るスラスト軸受の変形例を示す拡大断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るスラスト軸受の他の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(汲み上げポンプの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る汲み上げポンプについて、
図1と
図2を参照して説明する。本実施形態に係る汲み上げポンプ100は、温度・成分の変化に基づいて粘度が変化する特性を有する液体(一例として原油や重油)をくみ上げるための装置である。
図1に示すように、この汲み上げポンプ100は、ポンプ本体90と、モータ80と、掘削管9と、スラスト軸受10と、を備えている。ポンプ本体90は、モータ80から供給された動力によって駆動する。掘削管9は、これらポンプ本体90、モータ80、スラスト軸受10を外周側から覆うとともに、上下方向に延びる軸線Oを中心とする筒状をなしている。
【0011】
ポンプ本体90は、ケーシング本体1aと、ポンプロータ21と、ポンプステータ3と、を有している。ケーシング本体1aは、掘削管9と同軸をなすとともに、掘削管9の内周側に配置される筒状の部材である。ポンプロータ21は、軸線O方向に接続された複数のポンプシャフト21sと、ポンプシャフト21s同士を接続するカップリングスリーブ(不図示)と、これらポンプシャフト21sに固定された複数のインペラ5と、を有している。
【0012】
さらに、ポンプロータ21の外周面であって、最も下方に位置するインペラ5の下方には、径方向外側に向かって張り出すとともに、軸線Oを中心とする円環状のスラストカラー10aが設けられている。このスラストカラー10aは、ポンプステータ3の内周面に設けられたスラストパッド10bによって上方、及び下方から支持されている。これらスラストカラー10a、及びスラストパッド10bは、スラスト軸受10を形成している。このスラスト軸受10によって、ポンプステータ3に対してロータ2(ポンプロータ21、及びモータロータ22)が軸線O回りに回転可能に支持されている。ポンプシャフト21sの内部には、軸線Oに沿って延びる流路(供給流路21a)が形成されている。供給流路21aは、インペラ5によって昇圧された原油をスラスト軸受10に供給するために設けられている。供給流路21aの上方の端部は、最も下方に位置するインペラ5の下流側(上方)に連通している。
【0013】
ポンプステータ3は、インペラ5を外周側から覆うステータ本体3hと、ステータ延長部3eと、を有する。ステータ本体3hは、下方から上方に向かうに従って拡径と縮径を繰り返すことでインペラ5を収容するとともに、原油が流通するためのステータ流路Fsを画成する。ステータ延長部3eは、ステータ本体3hの下方に一体に設けられるとともに、軸線Oを中心とする筒状をなしている。
【0014】
モータ80は、ケーシング先端部1bと、モータロータ22と、コイル81と、磁性部材22mと、を有している。ケーシング先端部1bは、上述のケーシング本体1aの下方に一体に設けられた筒状をなしている。ケーシング本体1aと、ケーシング先端部1bは、全体としてケーシング1(生産管)を形成する。ケーシング先端部1bの内周面には、周方向に配列された複数のコイル81が設けられている。このコイル81は、外部から供給された電流によって電磁力を発生させる。モータロータ22は、これらコイル81の内周側に配置され、軸線Oに沿って延びる円柱状をなしている。モータロータ22は、上述のポンプロータ21をなす複数のポンプシャフト21sのうち、最も下方に位置するポンプシャフト21sに対して下端スプラインカップリング30dを介して接続されている。これら複数のポンプシャフト21s、及びモータロータ22は、全体としてロータ2を形成している。モータロータ22の外周面には、磁性部材22mとしての永久磁石が設けられている。コイル81に通電することで発生した磁界と磁性部材22mの磁界との間で生じる電磁力によって、ロータ2に回転力が与えられる。
【0015】
なお、ケーシング先端部1bは、掘削管9の内周面から径方向内側に向かって張り出す円環状の支持部4によって下方から支持されている。支持部4の内周側の開口は、原油を取り込むための開口部Hとされている。モータロータ22の下端は、この開口部H中に挿通されている。モータロータ22の内部には、上記の開口部Hに加えて原油を吸込むための吸込流路Fが形成されている。この吸込流路Fは、ポンプステータ3の内周側に形成されているステータ流路Fsに連通している。
【0016】
(スラスト軸受の構成)
次に、
図2を参照して、スラスト軸受10の構成について説明する。同図に示すように、スラスト軸受10のスラストカラー10aは、ポンプシャフト21sの外周面に対して締り嵌め、又は中間嵌めされた状態で固定されている。スラストカラー10aは、軸線Oを中心とする円環状をなしている。スラストカラー10aの軸線O方向を向く一対の面は、それぞれ軸受面32とされている。この軸受面32は、スラストパッド10bのパッド面31に軸線O方向にわずかな隙間をあけて対向している。つまり、スラストパッド10bは、一対の軸受面32に対して軸線O方向両側からそれぞれ対向するように一対設けられている。
【0017】
詳しくは図示しないが、スラスト軸受10は動圧軸受であり、テーパーランド軸受やティルティングパッド軸受を含む。したがって、スラストパッド10bのパッド面31には凹溝が形成されている。
【0018】
上述した供給流路21aは、インペラ5によって昇圧された原油をインペラ5の前後における圧力差によって下方に導いた後、軸受面32とパッド面31との間に供給するための流路である。供給流路21aは、主流路41と、第一吐出流路42と、を有している。主流路41は、ポンプシャフト21sの内部で軸線Oに沿って延びている。第一吐出流路42は、主流路41から径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。第一吐出流路42の径方向外側の端部は、軸受面32とパッド面31との間に開口している。また、第一吐出流路42は、上下一対のスラストパッド10bに対応して、軸線O方向に間隔をあけて一対形成されている。
【0019】
(作用効果)
次に、上記の汲み上げポンプ100の動作について説明する。汲み上げポンプ100を稼動させるに当たっては、まず上述のモータ80に電力を供給することによって、ロータ2を回転させる。ロータ2が回転すると、掘削管9の下端に形成された開口部Hから油井内の原油がポンプ本体90によって上方に吸い上げられる。また、この時、原油はモータロータ22内に形成された吸込流路Fによっても吸い上げられる。その後、原油はステータ流路Fsに流れ込み、インペラ5によって順次昇圧されながら上方へ流れる。
【0020】
この時、スラスト軸受10は、ステータ流路Fsを通過してきた原油によって潤滑された状態となっている。ところで、スラスト軸受10として動圧軸受を適用する場合、原油の粘度が水分の含有量の変化に伴って変わるために軸受面32の動圧が変化する。このため、安定的に軸受性能を維持できないという場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、上述のように供給流路21aによって、昇圧後の原油をスラスト軸受10に供給する構成を採っている。上記構成によれば、供給流路21aを通じて供給された原油によって、軸受面32とパッド面31との間に静圧を発生させることができる。これにより、動圧軸受としてのスラスト軸受10本来の動圧に加えて、静圧が作用することになるため、スラスト軸受10の負荷能力を向上させることができる。また、動圧が変化した場合であっても、その変化量を静圧によって補うことができることから、負荷能力の変動を小さく抑えることが可能となる。
【0022】
さらに、上記構成によれば、第一吐出流路42によって、原油を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。また、構造が簡素であるため、製造コストやメンテナンスコストの増大を抑えることもできる。
【0023】
加えて、上記構成によれば、スラスト軸受10が、テーパーランド軸受や、ティルティングパッド軸受を含む動圧軸受である。これにより、供給流路21aからの原油の供給による静圧に加えて、スラスト軸受10本来の動圧が軸受面32に作用する。これにより、スラスト軸受10の負荷能力をさらに向上させることができる。
【0024】
また、上記構成によれば、汲み上げ対象の液体として原油を用いた場合であっても、スラスト軸受10の負荷能力を確保することができる。特に、例えば原油に水が混入して粘度が下がった場合であっても、供給流路21aを通じて昇圧後の原油がスラスト軸受10の軸受面32に供給されることによって、軸受面32に静圧が発生する。これにより、スラスト軸受10としての性能を向上させることが可能となる。
【0025】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0026】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図3を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0027】
図3に示すように、本実施形態に係る供給流路21aは、主流路41と、第二吐出流路43と、環状流路44と、パッド内部流路45と、を有している。第二吐出流路43は、主流路41から径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。また、第二吐出流路43は、軸線O方向において、スラストパッド10bと対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0028】
スラストパッド10bの内周面には、環状流路44が形成されている。環状流路44は、スラストパッド10bの内周面から径方向外側に向かって凹むとともに、軸線Oを中心とする円環状をなしている。環状流路44は、上記の第二吐出流路43に連通している。
【0029】
パッド内部流路45は、環状流路44から径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列されている。パッド内部流路45の中途位置には、パッド面31上に開口する開口部hが連通している。開口部hは、テーパーランド軸受の凹溝の位置に対応して複数設けられることが望ましい。
【0030】
上記構成によれば、スラストパッド10bの内部に形成されたパッド内部流路45によって、原油を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。また、開口部hが複数形成されていることから、軸受面32の全域にわたって均一に原油を供給することが可能となる。
【0031】
さらに、上記構成によれば、放射状に延びる第二吐出流路43に対して、円環状をなす環状流路44が連通している。このため、静止側である環状流路44に向かって回転側である第二吐出流路43の流体を円滑に流し込むことができる。これにより、製造やメンテナンスに要する工数を削減することが可能となる。
【0032】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0033】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、本実施形態に係る供給流路21aは、主流路41と、第三吐出流路46と、カラー環状流路47と、カラー内部流路48と、を有している。第三吐出流路46は、主流路41から径方向外側に延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0035】
カラー環状流路47は、スラストカラー10aの内周面に形成されている。カラー環状流路47は、スラストカラー10aの内周面から径方向外側に向かって凹むとともに、軸線Oを中心とする円環状をなしている。カラー環状流路47は、上記の第三吐出流路46に連通している。
【0036】
カラー内部流路48は、カラー環状流路47から径方向外側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて複数配列されている。カラー環状流路47の中途位置には、開口部h´が形成されている。開口部h´は、軸受面32上に開口している。開口部h´は、テーパーランド軸受の凹溝の数に対応して複数設けられることが望ましい。
【0037】
上記構成によれば、スラストカラー10aの内部に形成されたカラー内部流路48によって、原油を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。また、開口部h´が複数形成されていることから、軸受面32の全域にわたって均一に原油を供給することが可能となる。
【0038】
さらに、上記構成によれば、放射状に延びる第三吐出流路46に対して、円環状をなすカラー環状流路47が連通している。このため、スラストカラー10aをポンプシャフト21sに取り付けるに当たって、周方向の位置合わせをする必要がない。これにより、製造やメンテナンスに要する工数を削減することが可能となる。
【0039】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0040】
例えば、上記の各実施形態では、供給流路21aの上方の端部が最も下方のインペラ5の下流側に連通している例について説明した。しかしながら、供給流路21aの上方の端部は、さらに上方(下流側)のインペラ5の下流側に連通していてもよい。これにより、より高い圧力の原油を供給流路21a内に導くことが可能となる。
【0041】
また、設計と仕様に応じて、スラスト軸受10をインペラ5同士の間に設けることも可能である。さらに、スラスト軸受10を軸線O方向に間隔をあけて複数設けることも可能である。
【0042】
加えて、上記の各実施形態では、汲み上げ対象の液体として原油を例に説明をした。しかしながら、原油以外の液体にも汲み上げポンプ100を好適に用いることが可能である。
【0043】
<付記>
各実施形態に記載の汲み上げポンプ100は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)第1の態様に係る汲み上げポンプ100は、上下方向に延びる軸線Oに沿う筒状をなすケーシング1と、該ケーシング1内で前記軸線O方向に延びるポンプロータ21と、前記ケーシング1と前記ポンプロータ21との間で該ポンプロータ21を囲うポンプステータ3と、前記ポンプロータ21を前記ポンプステータ3に対して回転可能に支持するスラスト軸受10と、を備え、前記ポンプロータ21は、前記軸線O方向に順次接続された複数のポンプシャフト21sと、これらポンプシャフト21sにそれぞれ複数段が設けられて、前記ポンプシャフト21sとともに回転することで上方に液体を汲み上げるインペラ5と、を有し、前記スラスト軸受10は、前記ポンプシャフト21sの外周面に取り付けられ、前記軸線Oを中心とする円環状をなすとともに、前記軸線O方向を向く軸受面32を有するスラストカラー10aと、前記ポンプステータ3に設けられ、前記スラストカラー10aに対して前記軸線O方向両側から対向するパッド面31を有するスラストパッド10bと、を有し、前記ポンプシャフト21sには、前記インペラ5によって昇圧された前記液体を前記軸受面32に供給する供給流路21aが形成されている。
【0045】
上記構成によれば、供給流路21aを通じて供給された液体によって、軸受面32に静圧を発生させることができる。これにより、スラスト軸受10の負荷能力を向上させることができる。
【0046】
(2)第2の態様に係る汲み上げポンプ100では、前記供給流路21aは、前記ポンプシャフト21sの内部で前記軸線O方向に延びる主流路41と、該主流路41から径方向外側に延びるとともに前記軸受面32と前記スラストパッド10bとの間に開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第一吐出流路42と、を有する。
【0047】
上記構成によれば、第一吐出流路42によって、液体を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る汲み上げポンプ100では、前記供給流路21aは、前記スラストパッド10bの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状の環状流路44と、該環状流路44に連通し、前記パッド面31に開口するパッド内部流路45と、前記ポンプシャフトの内部で前記軸線方向に延びる主流路41と、該主流路41から径方向外側に延びるとともに前記環状流路44に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第二吐出流路43と、を有する。
【0049】
上記構成によれば、スラストパッド10bの内部に形成されたパッド内部流路45によって、液体を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。
【0050】
(4)第4の態様に係る汲み上げポンプ100では、前記供給流路21aは、前記スラストカラー10aの内周面に形成され、径方向外側に向かって凹む円環状のカラー環状流路47と、該カラー環状流路47に連通し、前記軸受面32に開口するカラー内部流路48と、前記ポンプシャフト21sの内部で前記軸線O方向に延びる主流路41と、該主流路41から径方向外側に延びるとともに前記カラー環状流路47に向かって開口し、周方向に間隔をあけて配列された複数の第三吐出流路46と、を有する。
【0051】
上記構成によれば、カラー内部流路48によって、液体を軸受面32とスラストパッド10bとの間に直接的に導くことができる。これにより、軸受面32の静圧がさらに高まり、スラスト軸受10の負荷能力をより一層向上させることができる。
【0052】
(5)第5の態様に係る汲み上げポンプ100では、前記スラスト軸受10は、動圧軸受である。
【0053】
上記構成によれば、スラスト軸受10が、テーパーランド軸受や、ティルティングパッド軸受を含む動圧軸受である。これにより、供給流路21aからの液体の供給による静圧に加えて、スラスト軸受10本来の動圧が軸受面32に作用する。これにより、スラスト軸受10の負荷能力をさらに向上させることができる。
【0054】
(6)第6の態様に係る汲み上げポンプ100では、前記液体は、温度・成分の変化に基づいて粘度が変化する特性を有する。
【0055】
上記構成によれば、液体として例えば原油を用いた場合であっても、スラスト軸受10の負荷能力を確保することができる。特に、例えば原油に水が混入して粘度が下がった場合であっても、供給流路21aを通じて昇圧後の原油がスラスト軸受10の軸受面に供給されることによって、軸受面32に静圧が発生する。これにより、スラスト軸受10としての性能を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
100 汲み上げポンプ
1 ケーシング
1a ケーシング本体
1b ケーシング先端部
2 ロータ
3 ポンプステータ
3e ステータ延長部
3h ステータ本体
4 支持部
5 インペラ
9 掘削管
10 スラスト軸受
10a スラストカラー
10b スラストパッド
21 ポンプロータ
21a 供給流路
21s ポンプシャフト
22m 磁性部材
30d 下端スプラインカップリング
31 パッド面
32 軸受面
41 主流路
42 第一吐出流路
43 第二吐出流路
44 環状流路
45 パッド内部流路
46 第三吐出流路
47 カラー環状流路
48 カラー内部流路
80 モータ
81 コイル
90 ポンプ本体
F 吸込流路
h,h´ 開口部
O 軸線