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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】割れ目評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20240906BHJP
   G06T 7/55 20170101ALI20240906BHJP
【FI】
G01B11/26 H
G06T7/55
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021126841
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021770
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】戸邉 勇人
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181271(JP,A)
【文献】特開2018-004389(JP,A)
【文献】特開2021-025900(JP,A)
【文献】特開2021-077003(JP,A)
【文献】特開2019-082443(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
G06V 10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の画像を取得する工程と、
前記対象物の前記画像を二値化処理し、二値化された前記画像から前記割れ目の走向情報を取得する工程と、
前記対象物の前記画像に基づいて前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記走向情報を取得する工程では、前記画像から前記割れ目の二次元の位置情報を取得し、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
前記割れ目の二次元の前記位置情報に対応する位置にある前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項2】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目を特定し、特定した前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
前記ユニット面の連続性に基づいて複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された複数の前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項3】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の画像を取得する工程と、
前記対象物の前記画像を二値化処理し、二値化された前記画像から前記割れ目の走向情報を取得する工程と、
前記対象物の前記画像に基づいて前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
前記ユニット面の連続性に基づいて複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された複数の前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項4】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目を特定し、特定した前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
複数の前記ユニット面のうち所定の傾斜基準値との傾斜角の差が所定の閾値よりも小さい前記ユニット面を除外して複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項5】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の画像を取得する工程と、
前記対象物の前記画像を二値化処理し、二値化された前記画像から前記割れ目の走向情報を取得する工程と、
前記対象物の前記画像に基づいて前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
複数の前記ユニット面のうち所定の傾斜基準値との傾斜角の差が所定の閾値よりも小さい前記ユニット面を除外して複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項6】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目を特定し、特定した前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
複数の前記ユニット面のうち所定の面積基準値よりも面積が大きい前記ユニット面、又は、面積が小さい前記ユニット面のいずれかを除外して複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【請求項7】
対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、
前記対象物の画像を取得する工程と、
前記対象物の前記画像を二値化処理し、二値化された前記画像から前記割れ目の走向情報を取得する工程と、
前記対象物の前記画像に基づいて前記対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、
前記三次元情報から前記割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、
前記三次元情報は、三次元点群データであり、
前記傾斜情報を取得する工程では、
三次元空間を複数のセルに分割し、
前記セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、
複数の前記ユニット面のうち所定の面積基準値よりも面積が大きい前記ユニット面、又は、面積が小さい前記ユニット面のいずれかを除外して複数の前記ユニット面から前記割れ目を特定し、前記割れ目として特定された前記ユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する、
割れ目評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に生じた割れ目を評価する割れ目評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地質調査においては、地盤等の対象物に生じた割れ目の傾斜の測定が行われる。従来、傾斜の測定は、作業者がクリノメーターによって割れ目の傾斜を直接測定することで行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】小松田精吉、西尾潤四郎、忠岡志善、橋川邦武著 「わかりやすい岩盤調査の基礎知識」鹿島出版会 1985年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現場で作業者が手作業で傾斜を測定する従来の方法では、作業者の熟練度によって測定精度にばらつきが生じる。また、作業者による手作業では、多くの作業時間や労力を要する。
【0005】
本発明は、対象物に生じた割れ目を簡易かつ精度よく評価することができる割れ目評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の画像を取得する工程と、対象物の画像を二値化処理し、二値化された画像から前記割れ目の走向情報を取得する工程と、対象物の画像に基づいて対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、走向情報を取得する工程では、画像から割れ目の二次元の位置情報を取得し、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、割れ目の二次元の位置情報に対応する位置にあるユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目を特定し、特定した割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、ユニット面の連続性に基づいて複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定された複数のユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の画像を取得する工程と、対象物の画像を二値化処理し、二値化された画像から割れ目の走向情報を取得する工程と、対象物の画像に基づいて対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、ユニット面の連続性に基づいて複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定された複数のユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目を特定し、特定した割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、複数のユニット面のうち所定の傾斜基準値との傾斜角の差が所定の閾値よりも小さいユニット面を除外して複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定されたユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の画像を取得する工程と、対象物の画像を二値化処理し、二値化された画像から割れ目の走向情報を取得する工程と、対象物の画像に基づいて対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、複数のユニット面のうち所定の傾斜基準値との傾斜角の差が所定の閾値よりも小さいユニット面を除外して複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定されたユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目を特定し、特定した割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、複数のユニット面のうち所定の面積基準値よりも面積が大きいユニット面、又は、面積が小さいユニット面のいずれかを除外して複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定されたユニット面の傾斜角を割れ目の傾斜情報として取得する。
また、本発明は、対象物に生じる割れ目を評価する割れ目評価方法であって、対象物の画像を取得する工程と、対象物の画像を二値化処理し、二値化された画像から割れ目の走向情報を取得する工程と、対象物の画像に基づいて対象物の表面形状を三次元情報として取得する工程と、三次元情報から割れ目の傾斜情報を取得する工程と、を備え、三次元情報は、三次元点群データであり、傾斜情報を取得する工程では、三次元空間を複数のセルに分割し、セルに含まれるデータ点によって規定されるユニット面を取得し、複数のユニット面のうち所定の面積基準値よりも面積が大きいユニット面、又は、面積が小さいユニット面のいずれかを除外して複数のユニット面から割れ目を特定し、割れ目として特定されたユニット面の傾斜角を前記割れ目の前記傾斜情報として取得する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物に生じた割れ目を簡易かつ精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】割れ目評価の対象物を模式的に示した概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る割れ目評価システムの各構成を示すブロック図である。
図3】二次元評価画像を二値化処理したものを示す画像図である。
図4】SfMを説明するためのモデルを示す概略図である。
図5】ユニット面を規定する方法を説明するためのモデル図である。
図6】三次元のユニット面を二次元モデルで表現したモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る割れ目評価システム100及び割れ目評価方法について、図面を参照して説明する。
【0010】
割れ目評価システム100(以下、単に「評価システム100」と称する。)は、地盤や岩盤等の対象物Tに生じる割れ目CRを評価するためのシステムである。具体的には、評価システム100は、対象物Tに生じる割れ目CRの走向傾斜を自動で取得する。本実施形態では、図1に示すように略平坦な地盤を対象物Tとし、地盤に生じた割れ目CRを評価する場合を例に説明する。
【0011】
割れ目CRの走向とは、割れ目CRと仮想水平面との交差によりできる交線が延びる方向である。また、割れ目CRの傾斜とは、当該交線と直交し割れ目CRに沿って延びる垂線の方向である。本実施形態では、傾斜は、当該垂線と仮想水平面との間の角度として表される。
【0012】
図2に示すように、評価システム100は、対象物Tの表面形状を三次元情報として取得するためのカメラ10(形状取得装置)と、カメラ10が取得した情報を処理する情報処理装置30と、を備える。
【0013】
カメラ10は、例えばドローン等の移動体(図示省略)に搭載されて、対象物Tを異なる位置・角度から複数撮像する。カメラ10による複数の画像の撮像は、静止画を間欠的に撮像することで行ってもよいし、連続した動画を撮影して動画から複数の静止画を抜き出すことで行ってもよい。カメラ10が撮像した画像は、情報処理装置30に入力される。
【0014】
情報処理装置30は、例えば、入出力装置、通信装置、演算装置等を備えるコンピュータである。情報処理装置30は、一つのコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0015】
情報処理装置30は、対象物Tの表面形状を三次元情報として取得する画像処理部31(三次元情報取得部)と、取得した三次元情報から割れ目CRの走向傾斜を取得して割れ目CRの評価を行う評価部32と、を有する。なお、画像処理部31及び評価部32は、情報処理装置30の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0016】
本実施形態では、画像処理部31は、カメラ10が撮像する複数の画像から三次元形状を復元するSfM(Structure from Motion)を利用して、割れ目CRを含む対象物Tの表面形状を取得する。画像処理部31は、カメラ10が撮像した複数の画像に対してSfMによる画像処理を実行して、対象物Tの表面形状の三次元情報として三次元点群データを取得する。また、画像処理部31は、カメラ10が撮像した複数の画像に基づいて得られる二次元評価画像に対して画像処理を施す。
【0017】
評価部32は、画像処理された二次元評価画像に基づいて割れ目CRの走向情報を含む二次元情報を取得すると共に、SfMによって得られた三次元点群データに基づいて割れ目CRの傾斜情報(傾斜角)を取得する。
【0018】
以下、図3から図6を参照して、本実施形態の割れ目評価方法について説明する。以下に説明する割れ目評価方法は、評価システム100の情報処理装置30によって実行される。つまり、情報処理装置30は、本明細書に記載の方法を実行可能にプログラムされている。
【0019】
割れ目評価方法は、対象物Tの画像を取得する工程(画像取得工程)と、対象物Tの画像を画像処理し、走向情報を含む割れ目CRの二次元情報を取得する工程(二次元情報取得工程)と、対象物Tの画像に基づいて対象物Tの表面形状を三次元情報として取得する工程(形状取得工程)と、三次元情報から割れ目CRの傾斜情報を取得する工程(傾斜取得工程)と、を含む。
【0020】
[画像取得工程]
対象物Tの画像を取得する工程では、カメラ10が撮像した画像が情報処理装置30によって取得される。対象物Tの画像が取得されると、情報処理装置30は、対象物Tの画像に基づいて、割れ目CRの二次元情報と三次元情報とを取得する。情報処理装置30は、有線又は無線の通信によってカメラ10から画像を自動で取得してもよいし、カメラ10が撮像した画像を記憶媒体に記憶し、記憶媒体を読み取ることで画像を取得してもよい。
【0021】
[二次元情報取得工程]
二次元情報取得工程では、まず、カメラ10が撮像した対象物Tの複数の画像に基づいて、画像処理の対象となる二次元評価画像が取得される。本実施形態では、二次元評価画像は、カメラ10を通じて取得した複数の対象物Tの画像から作成されるオルソ画像である。なお、二次元評価画像はオルソ画像に限定されるものではなく、例えば、単にカメラ10が撮像した複数の画像から選択される一の画像であってもよい。複数の画像からのオルソ画像の作成は、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
次に、二次元評価画像に対して画像処理として二値化処理が施される。二値化処理は、公知の技術であるため詳細な説明は省略するが、例えば、輝度に対して閾値を設定し、画素の輝度が閾値以上であるかに基づいて、画像の各画素を白及び黒のいずれかに変換する。二値化処理における閾値は、対象物Tと当該対象物Tに生じる割れ目CRとが区別されるように設定される。本実施形態では、図3に示すように、対象物Tに生じる割れ目CRを表す画素PX1には白色が割り当てられ、対象物Tの割れ目CRが生じていない部分を表す画素PX2には黒色が割り当てられる。なお、対象物Tに生じる割れ目CRを表す画素PX1には黒色が割り当てられ、対象物Tの割れ目CRが生じていない部分を表す画素PX2には白色が割り当てられてもよい。
【0023】
また、二次元評価画像に対する画像処理としては、上記のものに限定されず、例えば、二次元評価画像に対して画像処理してRGB表色系やL×a×b表色系等へデータ変換して、対象物Tと当該対象物Tの割れ目CRを区別するように設定してもよい。
【0024】
次に、二値化処理した画像(以下、単に「二値化画像」と称する。)から、割れ目CRの二次元情報を取得する。二次元情報とは、割れ目CRの二次元の位置情報と走向情報とが含まれる。ここでいう二次元の位置情報とは、カメラ10が撮像した画像平面上の位置である。二次元の位置情報は、対象物Tを撮像したカメラ10の位置及び姿勢に基づいて算出することができる。
【0025】
位置情報を表す座標系は、例えば、三次元の位置情報が既知のマーカーをカメラ10で複数撮像し、カメラ10の位置及び姿勢とマーカーの位置情報とに基づくことで、設定することができる。本実施形態では、座標系として、画像の縦横を示す二軸と、画像に垂直な軸と、の直交三軸系座標が設定される。二値化画像から算出した二次元の位置情報及び後述する三次元点群データの座標(三次元位置情報)は、この座標系によって表される。
【0026】
また、二値化画像からの割れ目CRの走向情報の取得は、公知の技術を採用できるが、以下に一例を説明する。一例による割れ目CRの走向情報の取得では、二値化した画像に対して基準方向を設定し、基準方向に対して二値化した画像を回転させる。基準方向に対する回転角度ごとに、二値化した画像に含まれる割れ目CRを示す画素の基準方向に対する延在方向の一致度合を算出する。そして、当該一致度合が高い回転角度を特定し、特定した回転角度だけ基準方向から反対方向に回転させた方向を割れ目CRが延びている方向(走向方向)と判定する。このような方法によって、割れ目CRの走向情報を取得することができる。
【0027】
[形状取得工程]
形状取得工程では、上述のように、SfMによって対象物Tの表面形状が三次元点群データとして取得される。
【0028】
SfMは、公知の技術であるため詳細な説明は省略し、以下簡潔に説明する。SfMでは、同一の対象物Tを撮像した異なる複数の画像から共通する特徴点を特定し、その特定点の画像中の位置と、各画像を撮影したときのカメラ10の位置及び姿勢(言い換えると撮影角度)と、に基づいて、各特徴点の三次元位置情報(座標)を取得するものである。特徴点の座標の取得は、異なる画像における視差を利用した三角測量の原理に基づいて算出される。特徴点は、取得された座標に基づいて三次元空間上の点群データ(三次元点群データ)として表現され、対象物Tの表面形状が三次元形状として復元される。
【0029】
[傾斜取得工程]
複数の画像から割れ目CRの二次元情報と三次元情報とが取得されると、二次元情報及び三次元情報に基づいて、割れ目CRの傾斜情報が取得される。
【0030】
以下、図4及び図5を参照して、割れ目CRの傾斜情報の取得工程について説明する。図4は、三次元空間上に表現された点群データの一例である。具体的には、まず、図4に示すように、点群データが存在する三次元空間を複数のセルCL(メッシュ)に分割する。図4で薄墨を施した部分が一つのセルCLであり、図4では、単一のセルCLのみを詳細に表示している。
【0031】
次に、図5に示すように、セルCLに含まれるデータ点Dによって規定されるユニット面SをセルCLごとに取得する。本実施形態では、セルCLに含まれる各データ点Dとの距離の二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)が所定の閾値以下となる面を演算し、当該セルCLのユニット面Sとして規定する。このように規定されるユニット面Sは、大きさ(面積)と傾斜角の情報をそれぞれ有する。なお、RMSが閾値以下となる面が複数ある場合には、RMSが最も小さくなる面がユニット面Sとして規定される。
【0032】
セルCLにおいてRMSが閾値以下となるユニット面Sが規定できない場合には、当該セルCLをさらに細かいセルCLに分割して、分割したセルCLでユニット面Sが規定できるかを演算する。セルCLの大きさが所定の分割下限値まで達してもユニット面Sが規定できない場合には、当該セルCLはユニット面Sの情報を持たないセル(空のセル)として設定される。三次元空間をセルCLに分割する大きさ及びRMSにおける閾値は、任意に設定することができる。
【0033】
次に、各セルCLによって規定されたユニット面Sの結合処理を行う。結合処理は、隣接するセルCLのユニット面Sのずれ、具体的には傾斜角の差が所定の大きさ以下である場合には、隣接するユニット面Sは連続するものとして結合し、一つのユニット面Sを規定する処理である。結合したユニット面Sは、結合前のいずれか一方のセルCLのユニット面Sと同一の傾斜を持つ面としてもよいし、隣接する二つのセルCLのユニット面Sの傾斜角を平均したものとしてもよい。このように、異なるユニット面Sを連続するものとして一つに結合することで、処理するデータ容量を削減することができる。なお、ユニット面Sの結合処理は、必須ものではなく、実行されなくてもよい。
【0034】
このようにして各セルCLに対してユニット面Sを規定することで、大きさ及び傾斜情報を有する複数のユニット面Sによって対象物Tの表面形状を表すことができる。
【0035】
次に、三次元空間上のユニット面Sを図6に示すような二次元モデルに変換する。図6に示す二次元モデルは、図3に示す二値化画像と対応する二次元平面を示す。つまり、図3における画像と図6における二次元モデルとは、対象物Tを同一方向から見た画像(モデル)に相当する。図6のメッシュは、三次元空間のセルCLに対応する。図6のメッシュにおける濃淡は、そのメッシュ(セルCL)のユニット面Sの傾斜の大きさを表現したものであり、白色が平坦を示し、色が濃くなるにつれて平坦に対する傾斜が大きくなることを示す。本実施形態では、対象物Tは、略平坦な地盤であるため、対象物Tにおいて割れ目CRが生じていない部分は、基本的に白色で表されている。
【0036】
次に、二値化画像から取得した割れ目CRの二次元情報(位置情報)に基づいて、割れ目CRの傾斜情報を取得する。具体的には、二値化画像から取得した割れ目CRの位置に対応する位置にある二次元モデル上のセルCLを抽出し、当該セルCLに含まれるユニット面Sの傾斜角を割れ目CRの傾斜情報として取得する。換言すれば、二値化した画像から取得した割れ目CRの位置情報に基づいて、三次元空間上に存在する複数のユニット面Sから割れ目CRを構成するユニット面Sを特定し、当該ユニット面Sの傾斜角を割れ目CRの傾斜情報として取得する。図6の例では、図3の二値化画像において白色で表される割れ目CRに対応する位置にある、実線で囲まれた範囲内のセルCLが割れ目CRとして特定され、これらのセルCLのユニット面Sの傾斜角が取得される。一方、図3の二値化画像において黒色で表される位置に対応するセルCL内のユニット面Sの傾斜角は実際の割れ目CRの傾斜情報としては選択されない。このようにして割れ目CRが存在するセルCLを選択して、割れ目CRの傾斜情報が取得される。
【0037】
なお、本実施形態の割れ目評価方法では、対象物Tの表面形状を撮像した画像から点群データを取得してユニット面Sを規定することから、画像上に現れない形状は点群データとして取得されない。このため、基本的には、ユニット面Sが規定された複数のセルCLが同一の二次元上の位置情報を持つことはない。つまり、同じ二次元上の位置に複数のユニット面Sが重複して存在することはない。よって、画像から取得した割れ目CRの位置情報から、三次元空間内で対応するセルCLを一意に特定することができる。
【0038】
以上によって、割れ目CRの走向情報と傾斜情報とが取得される。なお、割れ目CRの評価方法においては、走向情報と傾斜情報との少なくとも一方が取得されればよく、両方を取得することに限定されるものではない。
【0039】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0040】
本実施形態によれば、評価システム100によって、対象物Tに生じる割れ目CRの表面形状を取得し、割れ目CRの表面形状から取得した三次元情報に基づいて割れ目CRの傾斜情報を取得することができる。このように、割れ目CRの傾斜情報を自動的に取得することができるため、作業者の熟練度によるばらつきもなく、割れ目CRの傾斜情報を簡易に取得することができる。したがって、対象物Tに生じた割れ目CRを簡易かつ精度よく評価することができる。
【0041】
また、本実施形態では、二次元評価画像を画像処理して割れ目CRの走向情報と二次元位置情報を取得し、二次元位置情報に基づいて三次元情報から割れ目CRを特定して、割れ目CRの傾斜情報を取得する。これにより、割れ目CRの位置を容易に特定することができ、割れ目CRの傾斜情報をより正確に取得することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る割れ目評価方法について、説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態に係る割れ目評価方法は、第1実施形態と同様の評価システム100によって実行される。
【0043】
上記第1実施形態では、二値化画像から割れ目CRの二次元の位置を特定し、特定した位置に対応する三次元空間上のセルCLのユニット面Sを割れ目CRとして抽出して、割れ目CRの傾斜情報を取得する。
【0044】
これに対し、第2実施形態では、三次元空間上のユニット面Sから割れ目CRを特定する方法が第1実施形態とは異なる。第2実施形態では、対象物Tの表面形状を表す複数のユニット面Sから、対象物Tにおいて割れ目CRが生じていない部分の表面形状を表す基準面を除外することで、割れ目CRを特定する。以下、第2実施形態の割れ目評価方法について具体的に説明する。
【0045】
第2実施形態では、第1実施形態のように二値化画像から割れ目CRの二次元の位置情報を取得しなくてよい。第2実施形態では、上記第1実施形態のように二値化画像から走向情報を取得してもよいし、取得しなくてもよい。
【0046】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の方法により、対象物Tの表面形状の三次元情報が取得される。また、傾斜取得工程では、上記第1実施形態と同様に、点群データからユニット面Sが規定される。
【0047】
第2実施形態では、傾斜取得工程において、ユニット面Sが規定されると、複数のユニット面Sから基準面が抽出される。
【0048】
基準面とは、対象物Tにおいて割れ目CRが形成されていない部分の表面形状を表す面である。基準面の抽出は、予め定められる傾斜角の基準となる値(以下、「傾斜基準値」と称する。)と各セルCLのユニット面Sの傾斜角とを比較することで行われる。セルCLのユニット面Sの傾斜角と傾斜基準値との差分が所定の角度閾値以下であれば、当該ユニット面Sは基準面として抽出される。
【0049】
割れ目評価において、対象物Tである地盤等の傾斜角は、既知であったり、予め容易に把握可能であったりする。このように事前に把握可能な対象物Tの傾斜角に基づいて傾斜基準値が設定される。ユニット面Sの傾斜角と傾斜基準値との差が小さければ、当該ユニット面Sは、割れ目CRではなく対象物Tの表面形状を表す面であるとして、基準面として抽出される。複数のユニット面Sから対象物Tを表す基準面を除外することで、残されたユニット面Sが割れ目CRとして特定される。このように、第2実施形態では、点群データから規定された複数のユニット面Sから基準面を除外して残ったユニット面Sを割れ目CRとして特定する。
【0050】
図6の例でいえば、白色のセルCLに含まれるユニット面Sが基準面として除外されて、実線で囲まれる残りのセルCLが割れ目CRとして特定される。
【0051】
複数のユニット面Sから割れ目CRが特定されると、割れ目CRに対応するユニット面Sの傾斜角を割れ目CRの傾斜情報として取得する。
【0052】
以上の第2実施形態においても、割れ目CRの傾斜情報を自動的に取得することができ、割れ目CR面の傾斜情報を簡易に取得することができる。したがって、対象物Tに生じた割れ目CRを簡易かつ精度よく評価することができる。
【0053】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
【0054】
第2実施形態では、基準傾斜角との傾斜角の差が角度閾値よりも小さいユニット面Sが、基準面として抽出される。これに対し、基準面を抽出するには、傾斜角に限定されず、例えば、ユニット面Sの面積を利用してもよい。
【0055】
具体的には、基準面を抽出するための基準値として面積基準値を予め設定し、面積基準値とユニット面Sの面積とを比較することによって基準面を抽出する。例えば、割れ目CRには、分布に規則性がなく凹凸な面を持つ亀裂と呼ばれるものがある。このような場合、対象物Tが相対的に平滑となり、割れ目CR(亀裂)が相対的に凸凹となる。相対的に平滑な対象物Tでは、より多くのユニット面Sが連続するものとして結合されて、一つのユニット面Sの面積が大きくなりやすい。よって、面積基準値よりも面積が大きいユニット面Sを基準面として抽出し、複数のユニット面Sから基準面を除外することで、残ったユニット面Sを割れ目CRとして特定することができる。
【0056】
反対に、割れ目CRには、分布に規則性があり比較的平滑な節理と呼ばれるものがある。この場合、対象物Tが相対的に凸凹となり、割れ目CRが相対的に平滑となる場合がある。よって、このような場合には、面積基準値よりも面積が小さいユニット面Sを基準面として抽出して複数のユニット面Sから除外することで、残ったユニット面Sを割れ目CRとして特定することができる。面積基準値は、撮影する対象物Tや割れ目CRの形状に応じて適宜設定することができる。また、面積基準値は、複数設定されてもよく、第1の面積基準値よりも面積が大きいユニット面Sと、第2の面積基準値よりも面積が小さいユニット面Sと、の両方を基準面として抽出し、残りを割れ目CRとして特定してもよい。面積基準値を調整することによって、割れ目CR面の特定精度が調整される。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る割れ目評価方法について、説明する。以下では、第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態に係る割れ目評価方法は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の評価システム100によって実行される。
【0058】
第3実施形態は、第2実施形態と同様に、三次元空間上のユニット面Sから割れ目CRを特定する方法において第1実施形態とは異なる。
【0059】
第2実施形態では、対象物Tの表面形状を表す複数のユニット面Sから、対象物Tにおいて割れ目CRが生じていない部分の表面形状を表す基準面を除外することで、残ったユニット面Sを割れ目CRとして特定する。
【0060】
これに対し、第3実施形態では、基準面が除外されて残ったユニット面Sから、隣接するユニット面S間の連続性に基づいて割れ目CRが特定される。連続性とは、ユニット面Sが連続しているとみなせるセルCLの数によって定義される。ユニット面Sが連続しているとは、隣接するユニット面Sのずれが所定の閾値よりも小さい状態を示す。
【0061】
具体的には、ユニット面Sを規定する複数のセルCLから基準面を規定するセルCLを除外して残ったセルCLに対して、自身のユニット面Sと隣接するセルCLのユニット面Sとが連続するかを判定する。上述のように、隣接するユニット面Sのずれ(傾斜角の差)が所定の閾値以下であれば、ユニット面Sが連続していると判定する。このようにして、隣接するセルCLの連続性を算出し、連続するセルCLの数が最も多い一群のセルCLによって規定されるユニット面Sを割れ目CRとして特定する。
【0062】
複数のユニット面Sから割れ目CRが特定されると、割れ目CRに対応するユニット面Sの傾斜角を割れ目CRの傾斜情報として取得する。
【0063】
このような第3実施形態では、基準面が除外されて残ったユニット面Sに対して、さらにユニット面Sの連続性に基づいた特定を行うため、より精度よく割れ目CRを特定することができる。特に、対象物Tの表面形状の凹凸が大きく基準面として除外されるユニット面Sが少なくなるような場合であっても、精度よく割れ目CRを特定することができる。
【0064】
以上の第3実施形態によっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
次に、第3実施形態の変形例について説明する。
【0066】
上記第3実施形態では、複数のユニット面Sから基準面を除外したうえで、ユニット面Sの連続性に基づいて割れ目CRを特定した。割れ目CRの特定精度を向上させるには、複数のユニット面Sから基準面を除外したうえで、連続性に基づいて割れ目CRを特定することが望ましいが、必須のものではない。基準面を抽出・除外せずに、複数のユニット面Sの連続性から割れ目CRを特定してもよい。また、基準面の抽出は、上記第2実施形態の変形例として記載のように、ユニット面Sの面積に基づいて行ってもよい。
【0067】
また、ユニット面Sの連続性に基づいて割れ目CRを特定する方法は、隣接するユニット面Sの結合処理を前提とするものではない。隣接するユニット面Sが連続すると判定されてもユニット面Sは結合せず、割れ目CRを特定する連続性を算出し連続性に基づいて割れ目CRを特定する構成でもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0069】
上記各実施形態では、形状取得装置であるカメラ10によって撮像した画像から、対象物Tの表面形状の三次元点群データを取得する。これに対し、対象物のT表面形状の取得は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、レーザースキャナ(形状取得装置)によって対象物Tの表面形状の三次元情報を取得してもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 割れ目評価システム
10 カメラ(形状取得装置)
30 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6