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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20240906BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F03D13/25
F03D7/04 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021190548
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077287
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2023-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月7日、ダイキン工業株式会社ワイガヤ研修、ダイキン工業株式会社テクノロジー・イノベーションセンター(大阪府摂津市西一津屋1番1号)
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】北尾 裕一
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-041477(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179637(JP,U)
【文献】特開2021-062705(JP,A)
【文献】特開2011-207467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の発電装置と、
移動可能に構成され、前記発電装置と接続される、1つ、又は複数の移動装置と、
前記移動装置の動作を制御する制御装置と、
前記発電装置の傾きを検知する姿勢検知部と、
を具備し、
前記制御装置は、
前記発電装置の傾きに応じて前記移動装置の動作を制御することで、前記発電装置の傾きを所定の基準状態に戻す、
発電システム。
【請求項2】
自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の発電装置と、
移動可能に構成され、前記発電装置と接続される、1つ、又は複数の移動装置と、
前記移動装置の動作を制御する制御装置と、
風向きを検知する風向検知部と、
を具備し、
前記制御装置は、
風上側へ向かって前記発電装置に力を加える前記移動装置の数が、風下側へ向かって前記発電装置に力を加える前記移動装置の数よりも多くなるように、前記移動装置の動作を制御する、
発電システム。
【請求項3】
自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の複数の発電装置と、
移動可能に構成され、複数の前記発電装置とそれぞれ接続され、複数の前記発電装置を個別に移動させることが可能な複数の移動装置と、
複数の前記移動装置の動作を制御する制御装置と、
を具備し、
前記制御装置は、
複数の前記発電装置の発電量に基づいて、複数の前記発電装置のうち少なくとも1つの前記発電装置の近傍に、他の前記発電装置を配置することを決定する決定部と、
前記決定部により決定された配置となるように前記移動装置を移動させる移動指令部と、
を具備する、
発電システム。
【請求項4】
前記移動装置は、
アンカーを具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記移動装置は、
流体を移送する移送機構と、
前記移送機構を用いて所定の方向に流体を流通させることが可能な流通機構と、
前記移送機構を用いて所定の方向への推進力を得ることが可能な推進機構と、
を具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記発電装置の発電効率が向上する方向に前記発電装置が向くように、前記移動装置の動作を制御する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項7】
風向きを検知する風向検知部をさらに具備し、
前記発電装置は、
風力を利用して発電可能な風力発電装置であり、
前記制御装置は、
前記発電装置が風上側を向くように、前記移動装置の動作を制御する、
請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
気象情報に基づいて、前記発電装置の配置を決定する決定部と、
前記決定部により決定された配置となるように前記移動装置を移動させる移動指令部と、
を具備する、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上に浮かべられた状態で発電を行う浮体式洋上発電装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、浮力室を有するイカダ型浮体と、イカダ型浮体に設けられた風力発電装置と、を具備する洋上風力発電装置が開示されている。特許文献1に記載の洋上風力発電装置は、係留索を介してアンカーに係留されている。これによって洋上風力発電装置は、波や風の影響で移動することなく、ほぼ定点で発電を行うことができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、自然エネルギーを利用して発電を行う場合、周囲の環境によって発電量が増減する。例えば特許文献1に記載のように風力発電を行う場合、風速や風向きによって発電量が増減する。このため、より大きな発電量を得るためには、適切な場所や向きに風力発電装置を移動させることが好ましい。しかし、特許文献1に記載の技術では、イカダ型浮体はアンカーに係留されているため、発電装置を任意に移動させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-172211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、発電装置を移動させることが可能な発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の発電装置と、移動可能に構成され、前記発電装置と接続される、1つ、又は複数の移動装置と、前記移動装置の動作を制御する制御装置と、前記発電装置の傾きを検知する姿勢検知部と、を具備し、前記制御装置は、前記発電装置の傾きに応じて前記移動装置の動作を制御することで、前記発電装置の傾きを所定の基準状態に戻すものである。
【0009】
請求項2においては、自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の発電装置と、移動可能に構成され、前記発電装置と接続される、1つ、又は複数の移動装置と、前記移動装置の動作を制御する制御装置と、風向きを検知する風向検知部と、を具備し、前記制御装置は、風上側へ向かって前記発電装置に力を加える前記移動装置の数が、風下側へ向かって前記発電装置に力を加える前記移動装置の数よりも多くなるように、前記移動装置の動作を制御するものである。
【0010】
請求項3においては、自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の複数の発電装置と、移動可能に構成され、複数の前記発電装置とそれぞれ接続され、複数の前記発電装置を個別に移動させることが可能な複数の移動装置と、複数の前記移動装置の動作を制御する制御装置と、を具備し、前記制御装置は、複数の前記発電装置の発電量に基づいて、複数の前記発電装置のうち少なくとも1つの前記発電装置の近傍に、他の前記発電装置を配置することを決定する決定部と、前記決定部により決定された配置となるように前記移動装置を移動させる移動指令部と、を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記移動装置は、アンカーを具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記移動装置は、流体を移送する移送機構と、前記移送機構を用いて所定の方向に流体を流通させることが可能な流通機構と、前記移送機構を用いて所定の方向への推進力を得ることが可能な推進機構と、を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御装置は、前記発電装置の発電効率が向上する方向に前記発電装置が向くように、前記移動装置の動作を制御するものである。
【0014】
請求項7においては、風向きを検知する風向検知部をさらに具備し、前記発電装置は、風力を利用して発電可能な風力発電装置であり、前記制御装置は、前記発電装置が風上側を向くように、前記移動装置の動作を制御するものである。
【0015】
請求項8においては、前記制御装置は、気象情報に基づいて、前記発電装置の配置を決定する決定部と、前記決定部により決定された配置となるように前記移動装置を移動させる移動指令部と、を具備するものである。
【0016】
請求項9においては、前記発電装置を複数具備し、前記制御装置は、複数の前記発電装置の発電量に基づいて、複数の前記発電装置の配置を決定する決定部と、前記決定部により決定された配置となるように前記移動装置を移動させる移動指令部と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、移動装置を移動させることで、発電装置を任意に移動させることができる。また、移動装置を移動させて発電装置を所望の方向に引っ張る(又は、押す)ことで、発電装置を所定の場所に留めたり、発電装置の姿勢を安定させたりすることができる。また、発電装置の姿勢に応じて移動装置の動作を制御することにより、発電装置の姿勢をより安定させることができる。
【0019】
請求項2においては、移動装置を移動させることで、発電装置を任意に移動させることができる。また、移動装置を移動させて発電装置を所望の方向に引っ張る(又は、押す)ことで、発電装置を所定の場所に留めたり、発電装置の姿勢を安定させたりすることができる。また、風に逆らう方向に多くの移動装置を動作させることで、複数の移動装置にかかる負荷の均一化を図ることができる。
【0020】
請求項3においては、移動装置を移動させることで、発電装置を任意に移動させることができる。また、移動装置を移動させて発電装置を所望の方向に引っ張る(又は、押す)ことで、発電装置を所定の場所に留めたり、発電装置の姿勢を安定させたりすることができる。また、発電装置の発電量に基づいて、発電し易い場所に発電装置を配置することができる。
【0021】
請求項4においては、アンカーが利用可能な深さではアンカーを利用して発電装置を所定の場所に留めることで、省エネを図ることができる。
【0022】
請求項5においては、移動装置を用いて流体を所定の方向に流通させ、水(海水等)を移送することができる。
【0023】
請求項6においては、発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0024】
請求項7においては、風力発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0025】
請求項8においては、気象情報に基づいて、発電し易い場所に発電装置を配置することができる。
【0026】
請求項9においては、発電装置の発電量に基づいて、発電し易い場所に発電装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態に係る流体装置を海面水温抑制モードで使用している状態を示した図。
図2】(a)流体装置の本体部を示した図。(b)本体部の開口部が開放された状態を示した図。(c)本体部の内部を示した斜視図。(d)本体部の内部を示した断面図。
図3】(a)移送機構を縦に向けた状態の流体装置を示した図。(b)移送機構を横に向けた状態の流体装置を示した図。
図4】流体装置を淀み解消モードで使用している状態を示した側面図。
図5】(a)第二実施形態に係る流体装置の本体部を示した図。(b)本体部の開口部が開放された状態を示した図。(c)移送機構の鉛直方向上下の開口部が開放された状態を示した図。
図6】(a)移送機構の斜め方向の開口部が開放された状態で、移送機構を正転させた状態を示した図。(b)移送機構を逆転させた状態を示した図。
図7】第三実施形態に係る流体装置を示した図。
図8】海水移送システム、及び、海面水温に応じて流体装置が配置された海面を示した平面図。
図9】河口付近の淀みを解消する際の流体装置の配置を示した平面図。
図10】発電システムを示した模式図。
図11】発電ユニットを示した図。
図12】(a)気象情報に基づいて配置された発電ユニットを示した平面図。(b)発電量に基づいて発電ユニットが移動する様子を示した平面図。
図13】(a)風力発電装置が風上を向いていない状態を示した平面図。(b)流体装置によって風力発電装置が風上側へ回転する様子を示した平面図。
図14】(a)発電ユニットが風を受けて流される様子を示した平面図。(b)流体装置によって発電ユニットが風に流されるのを抑制している様子を示した平面図。
図15】流体装置によって発電部の姿勢を安定させる様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、第一実施形態に係る流体装置120について説明する。
【0029】
図1及び図2に示す流体装置120は、水上を任意に移動可能であり、かつ、流体(本実施形態では、海水)を移送することが可能なものである。流体装置120は、主として本体部121、移送機構122、可変機構123、開閉機構124及び第一配水部材125を具備する。
【0030】
図2(a)及び図2(b)に示す本体部121は、後述する移送機構122等を収容する部材である。本体部121は、中空の球体状に形成される。本体部121は、水に浮かぶことができる程度の浮力を得られるように形成される。本体部121には、流体(海水)が流通可能な複数の開口部が形成される。具体的には、本体部121には、側部大型開口部121a、側部小型開口部121b及び底部開口部121cが形成される。
【0031】
側部大型開口部121aは、本体部121の側部(側面)に形成される比較的大きな開口部である。側部大型開口部121aは、本体部121の中心を挟んで1対(合計2つ)形成される。
【0032】
側部小型開口部121bは、本体部121の側部に形成される比較的小さな開口部である。側部小型開口部121bは、側部大型開口部121aよりも小さく形成される。側部小型開口部121bは、本体部121の側部に、全周にわたって複数形成される。
【0033】
底部開口部121cは、本体部121の底部(底面)に形成される開口部である。上記本体部121の各開口部は、後述する開閉機構124によって個別に開閉することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、側部大型開口部121aの方が側部小型開口部121bよりも大きく形成される例を示しているが、各開口部の大小関係や形状は特に限定するものではない。
【0035】
図2(c)及び図2(d)に示す移送機構122は、流体を移送するためのものである。移送機構122は、主として原動機122a及びプロペラ122bを具備する。
【0036】
原動機122aは、後述するプロペラ122bを回転させるための駆動源である。原動機122aとしては、駆動力を発生させることが可能な各種機器(例えば、モータ、エンジン等)を用いることが可能である。
【0037】
プロペラ122bは、回転することで所定の方向に流体を送るものである。プロペラ122bは、原動機122aの出力軸に連結され、原動機122aの駆動力によって回転することができる。プロペラ122bを回転させると、当該プロペラ122bの回転軸方向(図2(d)においては、紙面左右方向)に流体を送ることができる。
【0038】
可変機構123は、移送機構122の向きを変更するものである。可変機構123は、主としてフレーム123a、回転軸123b及びアクチュエータ123cを具備する。
【0039】
フレーム123aは、移送機構122を外側から囲むものである。フレーム123aは、原動機122aの出力軸を中心とする円筒状に形成される。フレーム123aは、例えば後述する回転軸123b等を介して移送機構122を支持する。
【0040】
回転軸123bは、移送機構122の回転中心となるものである。回転軸123bは、フレーム123aを貫通するように設けられる。回転軸123bは、フレーム123a及び移送機構122と相対回転不能となるように設けられる。
【0041】
アクチュエータ123cは、移送機構122を回転させるための駆動源である。アクチュエータ123cは、回転軸123bを任意に回転させることで、移送機構122を任意の方向に向けることができる。アクチュエータ123cとしては、駆動力を発生させることが可能な各種機器(例えば、モータ、エアシリンダ等)を用いることが可能である。
【0042】
上述の移送機構122及び可変機構123は、本体部121の内部に収容される。アクチュエータ123cを駆動することで、本体部121に対する移送機構122の向きを任意に変更することができる。なお以下の説明では、「移送機構122の向き」とは、移送機構122のプロペラ122bが向く方向を意味するものとする。
【0043】
開閉機構124は、本体部121に形成された各開口部を個別に開閉するためのものである。開閉機構124は、主として開閉蓋124a及びアクチュエータ(不図示)を具備する。
【0044】
開閉蓋124aは、本体部121に形成された各開口部を閉塞することが可能な部材である。開閉蓋124aは、各開口部に応じた形状に形成され、各開口部に設けられる。開閉蓋124aは、アクチュエータ(不図示)によって開閉駆動されることで、本体部121の各開口部を個別に開閉することができる。開閉蓋124aを駆動するためのアクチュエータ(不図示)としては、駆動力を発生させることが可能な各種機器(例えば、モータ、エアシリンダ等)を用いることが可能である。
【0045】
図1及び図3(a)に示す第一配水部材125(図2においては便宜上図示を省略している)は、移送機構122によって移送される流体を案内するためのものである。第一配水部材125は、中空の円筒状に形成される。第一配水部材125は、可撓性を有する素材で形成したり、蛇腹状に形成したりすることで、伸縮可能に形成される。第一配水部材125の一端部(上端部)は、本体部121の底部開口部121cに接続される。
【0046】
第一配水部材125には、当該第一配水部材125を伸縮させるためのケーブル125aが設けられる。ケーブル125aを図示せぬアクチュエータで引っ張ることで、第一配水部材125を収縮させることができる。このように第一配水部材125を収縮させることで、第一配水部材125を使用しない場合には、当該第一配水部材125をコンパクトに収納することができる。また第一配水部材125を使用する場合には、ケーブル125aの引っ張りを解除することで、第一配水部材125を下方に向かって伸長させることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように構成された本体部121及び第一配水部材125によって、海水が流通する経路(流通機構)が形成されている。
【0048】
なお、流体装置120には通信装置(不図示)が設けられ、外部の機器(例えば、後述する移送制御サーバ110)と相互に通信することができる。また、流体装置120は自身の現在位置を検出する位置情報検出部を備え、当該位置情報を外部の機器と共有することも可能である。
【0049】
以上のように構成された流体装置120を適宜制御することによって、流体装置120を水上の任意の位置に移動させることができる。また流体装置120を用いて、任意の位置で流体を移送することができる。以下では、流体装置120の動作について説明する。なお、本実施形態では、流体装置120は洋上に設置されているものとする。
【0050】
まず、流体装置120を移動させる方法について説明する。
【0051】
図3(b)に示すように、可変機構123によって移送機構122を横(本体部121の側部大型開口部121aを向く方向)に向け、側部大型開口部121aを開放した状態で、移送機構122を作動させると、一対の側部大型開口部121aを介して海水を流通させることができる。これによって、流体装置120は、洋上を移動するための推進力を得ることができる。
【0052】
また本実施形態では図示していないが、流体装置120には、任意の方向へ移動するための操舵装置が設けられる。これによって流体装置120は、任意の方向に移動することができる。操舵装置の例としては、板状の舵を任意の方向に操作する装置や、移送機構122を水平方向に回転させて海水の流通方向を変更する装置等が挙げられる。
【0053】
次に、流体装置120を用いて海底近傍の海水を海面近傍へと移送する方法について説明する。
【0054】
図1及び図3(a)に示すように、可変機構123によって移送機構122を縦(本体部121の底部開口部121cを向く方向)に向け、側部小型開口部121b及び底部開口部121cを開放し、第一配水部材125を下方へと伸長させる。この状態で、下方から上方へと海水を流通させるように移送機構122を作動させる。これによって、海水を第一配水部材125の下端から吸い込み、側部小型開口部121bから放出することができる。
【0055】
このように流体装置120を動作させることで、第一配水部材125の下端部近傍(海底付近)の深さに位置する海水を、水面近傍(海面)まで届けることができる。これによって、海底付近の比較的低温の海水で、海面水温を低下させることができる。
【0056】
なお、以下では説明の便宜上、図1等に示すように海底近傍の海水を海面まで届ける流体装置120の使用状態を、海面水温抑制モードと称する。
【0057】
次に、流体装置120を用いて海水を移送する他の方法(海面近傍において移送する方法)について説明する。
【0058】
図1等に示した例では、海底付近の海水を海面まで移送する例を示したが、図4に示すように、流体装置120を用いて、海面近傍のある場所から、海面近傍の他の場所まで、海水を移送することもできる。
【0059】
図4には、本体部121に形成された側部大型開口部121aに、海水を本体部121へと案内する吸込口126と、海水を本体部121から離れた場所へと案内する第二配水部材127を設けた例を示している。
【0060】
吸込口126は、海水を本体部121へと案内するように、中空状に形成される。
【0061】
第二配水部材127は、海水を本体部121から離れた場所へと案内するように、所定の長さを有する円筒状に形成される。また、第二配水部材127の中途部には、内部を流通する海水の一部を外部へと放出するように、放出口127aが形成される。第二配水部材127は、第一配水部材125と同様に、伸縮可能に形成することも可能である。これによって、第二配水部材127をコンパクトに収納することができる。
【0062】
また本体部121には、アンカー128が設けられる。アンカー128を海底に落すことで、流体装置120を一定の場所に留めることができる。適宜のアクチュエータを用いて、アンカー128を本体部121から任意に出し入れできるように構成することも可能である。
【0063】
なお、第一配水部材125(図1参照)の下端部に爪やおもりを付けて、アンカー128として利用することも可能である。この場合、ケーブル125aを用いて、アンカー128(第一配水部材125)を出し入れすることができる。第一配水部材125をアンカー128として利用する場合、第一配水部材125の先端部が海底に接触するまで第一配水部材125が下方へと伸長される。このように第一配水部材125をアンカー128として利用することで、部材を兼用することができ、流体装置120の部材点数やコストの低減を図ることができる。
【0064】
図4に示す状態で、移送機構122を横に向け、側部大型開口部121aを開放し、図の紙面左方から右方へと海水を流通させるように移送機構122を作動させる。これによって、海水を吸込口126から吸い込み、第二配水部材127の先端部や放出口127aから放出することができる。
【0065】
このように流体装置120を動作させることで、海面近傍のある場所(吸込口126近傍)の海水を、離れた他の場所(第二配水部材127の先端付近)まで届けることができる。これによって、海面付近での海水の移動を促して、海水の淀みを解消することができる。
【0066】
なお、以下では説明の便宜上、図4に示すように海面近傍のある場所から他の場所まで海水を届ける流体装置120の使用状態を、淀み解消モードと称する。
【0067】
なお、上述の流体装置120に設けられた各部(例えば、第一配水部材125、吸込口126、第二配水部材127、アンカー128等)は、本体部121に対して自動的に(又は、手動で)脱着可能に構成して、必要な場合にだけ本体部121に設けることも可能である。
【0068】
次に、図5及び図6を用いて、第二実施形態に係る流体装置130について説明する。第一実施形態に係る流体装置120(図3参照)は、移送機構122の向きを変更することによって、流体の流通方向を制御し、流体装置120の動作(流体装置120の移動と、海水の移送)を切り替える構成とした。これに対して第二実施形態に係る流体装置130は、移送機構132の向きを変更することなく、開閉機構134で本体部131の開口部を適宜開閉することで、流体の流通方向を制御している。以下、具体的に説明するが、第一実施形態と類似の構成については適宜説明を省略する。
【0069】
流体装置130は、主として本体部131、移送機構132及び開閉機構134を具備する。
【0070】
図5(a)及び図5(b)に示す本体部131は、中空の球体状に形成される。本体部131には、流体が流通可能な複数の開口部131aが形成される。開口部131aは、本体部131の外周面の任意の場所に形成される。なお、図示の便宜上、図面では本体部131の周囲10箇所に開口部131aを形成した例を図示しているが、開口部131aが形成される場所はこれに限るものではない。流体装置130を細かく制御する観点からは、できるだけ多数の方向に向かって開口するように開口部131aを形成することが好ましい。
【0071】
移送機構132は、流体を移送するためのものである。移送機構132の構成は、第一実施形態に係る移送機構122(図2参照)と概ね同様であるため、詳細な説明を省略する。移送機構132は、プロペラ122bの回転軸が上下方向を向くように、本体部131に取り付けられる。なお、第二実施形態に係る移送機構132は、本体部131に対して相対的に回転することはない。
【0072】
開閉機構134は、本体部131に形成された各開口部131aを個別に開閉するためのものである。開閉機構134は、各開口部131aを閉塞することが可能な開閉蓋134a、及び、開閉蓋134aを開閉駆動するアクチュエータ(不図示)を具備する。
【0073】
なお、図示は省略するが、第二実施形態に係る流体装置130にも、第一実施形態と同様に第一配水部材125(図1等参照)が設けられる。
【0074】
以上のように構成された流体装置130を適宜制御することによって、流体装置130を水上の任意の位置に移動させることができる。また流体装置130を用いて、任意の位置で流体を移送することができる。以下では、流体装置130の動作について説明する。
【0075】
まず、流体装置130を移動させる方法について説明する。
【0076】
図6(a)に示すように、移送機構132を挟んで相反する位置に形成された開口部131aを開放する。この際、開放される開口部131aは、移送機構132の中心軸線から偏った位置に形成された開口部131aが選択される。図6(a)の例では、紙面において移送機構132の右上方の開口部131aと、左下方の開口部131aが解放される。この状態で、移送機構132を作動(正転)させ、下方から上方に向かって海水を送ると、図6(a)の紙面左側から右側へと向かって海水を流通させることができる。これによって、流体装置130は、洋上を左方へと移動するための推進力を得ることができる。
【0077】
また図6(b)に示すように、移送機構132を逆転させ、上方から下方に向かって海水を送ると、紙面右側から左側へと向かって海水を流通させることができる。これによって、流体装置130は、洋上を右方へと移動するための推進力を得ることができる。このように、移送機構132の回転方向を切り替えることで、流体装置130の移動方向を切り替えることができる。
【0078】
また、開放する開口部131aを適宜選択することで、任意の方向に海水を流通させ、任意の方向への推進力を得ることができる。このように、移送機構132の回転方向の制御と、開閉機構134による開口部131aの開閉の制御を組み合わせることによって、流体装置130は任意の方向に移動することができる。
【0079】
次に、流体装置130を用いて海水を移送する方法について説明する。
【0080】
図5(c)に示すように、移送機構132の鉛直上方及び鉛直下方に形成された開口部131aを開放した状態で、下方から上方へと海水を流通させるように移送機構132を作動させる。この際、第一実施形態と同様に、第一配水部材125(図1等参照)を海底まで伸長させておくことで、海底付近の海水を、海面まで届けることができる。これによって、海底付近の比較的低温の海水で、海面水温を低下させることができる。
【0081】
なお、図5(c)では移送機構132の鉛直上方の開口部131aを開放した例を示したが、開放する開口部131aはこれに限るものではなく、任意の開口部131aを開放して海底から届けられた海水を放出することが可能である。
【0082】
また流体装置130は、移動する場合(図6参照)と同様に開口部131aを開放した状態で、吸込口126、第二配水部材127及びアンカー128(図4参照)を用いることで、海面近傍のある場所から、海面近傍の他の場所まで、海水を移送することもできる。
【0083】
次に、図7を用いて、第三実施形態に係る流体装置140について説明する。第三実施形態に係る流体装置140が、第一実施形態に係る流体装置120と異なる点は、スタビライザー141、太陽光発電装置142及び蓄電装置143をさらに備えている点である。従って以下では主に上記相違点について説明し、第一実施形態に係る流体装置120と同様の構成(本体部121、移送機構122等)については同様の符号を付して説明を適宜省略する。
【0084】
スタビライザー141は、流体装置140の姿勢を安定させるためのものである。スタビライザー141は、本体部121から側方や斜め下方へ突出するように設けられる羽状の部材である。スタビライザー141を設けることによって、本体部121が揺れる方向と反対の方向への揚力を得ることができ、本体部121の姿勢を安定させることができる。
【0085】
太陽光発電装置142は、自然エネルギーである太陽光を利用して発電するものである。太陽光発電装置142は、本体部121又はスタビライザー141の上面に設けられる。図例では、水面と略平行に配置されたスタビライザー141の上面に、太陽光発電装置142を設けた例を示している。
【0086】
蓄電装置143は、電力を蓄えることが可能なものである。蓄電装置143は、本体部121又はスタビライザー141に設けられる。図例では、蓄電装置143を本体部121に設けた例を示している。蓄電装置143は、太陽光発電装置142で発電された電力を蓄えることができる。
【0087】
このように構成された流体装置140において、太陽光発電装置142で発電された電力は、蓄電装置143に蓄えられる。蓄電装置143に蓄えられた電力は、種々の用途に利用することができる。例えば、蓄電装置143の電力を、流体装置140を動作させるための電力(例えば、原動機122a等を動作させるための電力)として利用することができる。また、蓄電装置143の電力を外部の機器へと供給して利用することも可能である。
【0088】
なお、流体装置140には太陽光発電装置142が設けられるものとしたが、その他、自然エネルギーを利用して発電可能な各種の発電装置(風力発電装置、波力発電装置等)を用いることも可能である。
【0089】
次に、上述の流体装置120等を用いた海水移送システム100について説明する。なお、海水移送システム100には、上述の流体装置120、流体装置130及び流体装置140のいずれも用いることが可能であるが、以下では説明の便宜上、流体装置120を用いるものとする。
【0090】
図8に示す海水移送システム100は、流体装置120を用いて海水を移送することで、海面水温を低下させるなどの環境改善を図るためのシステムである。海水移送システム100は、主として移送制御サーバ110及び複数の流体装置120を具備する。
【0091】
移送制御サーバ110は、流体装置120の動作を制御するものである。移送制御サーバ110は、演算処理を実行可能な演算装置、プログラム等が記憶された記憶装置等を具備する。移送制御サーバ110は、例えば海水移送システム100を管理する管理会社が自社内に保有するオンプレミス型のサーバでも、クラウドサーバでもよい。移送制御サーバ110は、有線通信又は無線通信によって流体装置120と通信することができる。なお、流体装置120は移動するため、移送制御サーバ110と流体装置120は各種の無線通信(例えば、衛星通信等)により通信することが好ましい。移送制御サーバ110は、機能的に、主として配置決定部111及び指令部112を具備する。
【0092】
配置決定部111は、流体装置120の配置を決定するものである。配置決定部111は、外部から取得した洋上の気象情報、水質情報等に基づいて流体装置120の配置を決定することができる。洋上の気象情報には、例えば海面水温、海上の気温、海流の流向や流量、水深等が含まれる。水質情報には、例えば海水中の植物プランクトンの量、濁度(透明度)、富栄養化の有無等が含まれる。
【0093】
指令部112は、流体装置120に対して動作に関する指令を送信するものである。指令部112は、通信装置(不図示)を介して流体装置120に対して適宜の信号を送信することにより、流体装置120を任意の位置に移動させたり、海水の移送を実行させたりすることができる。
【0094】
移送制御サーバ110は、上記以外にも、通信装置(不図示)を介して流体装置120との間で各種の情報をやり取りすることができる。
【0095】
流体装置120は、洋上に複数設置される。各流体装置120は個別に移送制御サーバ110と通信可能である。流体装置120は、移送制御サーバ110によって個別に動作が制御される。
【0096】
次に、海水移送システム100を用いた海面水温の抑制方法について説明する。
【0097】
移送制御サーバ110は、各種機器(例えば、気象衛星等)によって観測された海面水温の実測値に関する情報を取得する。図8には、観測された海面水温の一例をハッチングによって示している。図8では、ハッチングの間隔が密なほど、海面水温が高いことを示している。本例では、4つのエリアA1~A4で、比較的高い海面水温が観測された例を示している。移送制御サーバ110は、配置決定部111によって海面水温が高い場所により多くの流体装置120を配置するように決定し、指令部112によって各流体装置120を決定された場所へと移動させる。
【0098】
図8の例では、エリアA1~A4の中で海面水温が最も低いエリアA1に、1台の流体装置120を配置している。また、エリアA1~A4の中で海面水温が最も高いエリアA4に、4台の流体装置120を配置している。また、エリアA1~A4の中で海面水温が中程度のエリアA2及びA3に、それぞれ2台の流体装置120を配置している。なお、各エリアに配置する流体装置120の数は、エリアの面積、海面水温等に応じて任意に決定することができる。例えば、エリアの面積が広いほど当該エリアに多くの流体装置120が配置され、かつ、エリアの海面水温が高いほど当該エリアに多くの流体装置120が配置されるように、流体装置120の配置を決定することができる。
【0099】
移送制御サーバ110は、各エリアに流体装置120を移動させた後、流体装置120を海面水温抑制モード(図1参照)で運転させる。これによって、各流体装置120は、海底付近の比較的低温の海水を海面まで届けることで、海面水温を低下させることができる。特に本実施形態のように複数の流体装置120を連係させて使用することで、海面水温の差異に応じて適切に流体装置120を配置することができる。このように海面水温を低下させることで、例えば台風の発生を抑制したり、発生した台風の発達を抑制することができる。このように台風の発生や発達を抑制することで、台風による各種の被害を抑制することができる。台風の発生や発達を抑制することで、農産物や各種インフラ(水道、電気等)の供給の安定化、自然災害(河川氾濫等)の抑制、人や生物の安全な生活環境の確保等を図ることができる。
【0100】
次に、海水移送システム100を用いた海水の淀みの解消方法について説明する。
【0101】
移送制御サーバ110は、各種機器によって観測された海面水温の実測値、濁度(透明度)、富栄養化の有無、プランクトンの量等に関する情報を取得する。本実施形態では、移送制御サーバ110は、図9に示すように、赤潮が発生し易いと考えられる内海の河口近傍をメッシュ状のエリアに区切って、各エリアごとの上記海面水温等の情報を取得する。
【0102】
移送制御サーバ110は、取得した情報から、海水が淀んでいる場所を特定する。例えば、海面水温が比較的高い場所、透明度が高い場所、海水が富栄養化している場所、植物プランクトンの量が多い場所では、海水が淀んでいるものと推認される。またこのような場所では、植物プランクトンが増殖し易く、赤潮が発生し易いと考えられる。
【0103】
図9には、海水が淀んでいると判定された場所をエリアBで示している。移送制御サーバ110は、海水が淀んでいるエリアBが判定された場合、当該エリアBの海水を他の場所へと移送するように、流体装置120の配置を決定する。
【0104】
本実施形態では、図9に示すように、複数(2つ)の流体装置120がエリアBから外海に向かって直線状に並ぶように、各流体装置120の配置を決定している。移送制御サーバ110は、決定された場所に各流体装置120を移動させた後、それぞれの流体装置120が沖に向かって海水を移送するように、淀み解消モード(図4参照)で運転させる。これによって、エリアBの海水を外海へと移送することができ、エリアBの海水の淀みを解消することができる。特に本実施形態のように複数の流体装置120を連係させて使用することで、より遠く、かつ、広い範囲へとエリアBの海水を移送することができる。このように海水の淀みを解消することで、赤潮の発生を抑制することができる。赤潮の発生を抑制することで、赤潮による養殖産業への被害の防止や、海の環境改善等を図ることができる。
【0105】
次に、上述の流体装置120等の他の使用例として、発電システム200について説明する。なお、発電システム200には、上述の流体装置120、流体装置130及び流体装置140のいずれも用いることが可能であるが、以下では説明の便宜上、流体装置120を用いるものとする。
【0106】
図10に示す発電システム200は、流体装置120を用いて発電部250を任意の場所へと移動させ、自然エネルギーを利用して発電を行うものである。発電システム200は、複数の発電ユニットU及び発電制御サーバ210を具備する。
【0107】
図11に示す発電ユニットUは、洋上に配置され、自然エネルギーを利用して発電を行うものである。発電ユニットUは、主として発電部250、複数の流体装置120及び各種センサ(姿勢検出センサ261、風向検出センサ262)を具備する。
【0108】
発電部250は、主として浮体251、風力発電装置252及び蓄電装置253を具備する。
【0109】
浮体251は、後述する風力発電装置252を支持した状態で、洋上に浮かぶものである。浮体251は、風力発電装置252を支持した状態で安定した姿勢で洋上に浮かぶことができるように、形状や重心位置等が適宜設定される。
【0110】
風力発電装置252は、風力を利用して発電を行うものである。風力発電装置252は、浮体251の上部に設置される。なお、本実施形態では一例として風力発電装置252を例示しているが、その他、自然エネルギーを利用して発電可能な各種の発電装置(太陽光発電装置、波力発電装置等)を用いることも可能である。
【0111】
蓄電装置253は、風力発電装置252によって発電された電力を蓄えるものである。蓄電装置253は、例えば浮体251の内部に配置される。
【0112】
流体装置120は、発電部250を移動させるためのものである。すなわち本実施形態では、流体装置120を、発電部250を移動させるための移動装置として使用している。流体装置120の構成は前述しているため、詳細な説明は省略する。
【0113】
流体装置120は、1つの発電部250に対して複数(図例では、4つ)設けられる。流体装置120は、発電部250を周囲から囲むように配置される。流体装置120は、可撓性を有するワイヤーWで発電部250と接続される。流体装置120は、発電部250から離れる方向(外側)に常時移動することで、ワイヤーWを介して発電部250を引っ張ることができる。このように、流体装置120によって複数方向から発電部250を引っ張ることで、発電部250の姿勢を安定させることができる。ワイヤーWには配電線が設けられ、発電部250で発電された電力を流体装置120に供給し、流体装置120を動作させるために用いることも可能である。
【0114】
姿勢検出センサ261は、発電部250の姿勢(傾き)を検出するものである。姿勢検出センサ261としては、発電部250の姿勢を検出可能な各種のセンサ(例えば、傾斜センサ、ジャイロセンサ等)を用いることができる。
【0115】
風向検出センサ262は、風向きを検出するものである。風向検出センサ262としては、各種の方式のセンサ(例えば、風を受けて回動する羽の向きを検出する方式、風による超音波の伝播時間の変化を検出する方式等)を用いることができる。
【0116】
図10に示す発電制御サーバ210は、発電ユニットUの動作を制御するものである。発電制御サーバ210の物理的な構成は、前述の移送制御サーバ110と概ね同様に構成することが可能である。発電制御サーバ210は、機能的に、主として配置決定部211、動作決定部212及び指令部213を具備する。
【0117】
配置決定部211は、発電ユニットUの配置を決定するものである。配置決定部111は、外部から取得した洋上の気象情報や、発電ユニットUの状態(例えば、風力発電装置252の発電量)等に基づいて発電ユニットUの配置を決定することができる。洋上の気象情報には、例えば洋上の風力、天気、日照量等が含まれる。
【0118】
動作決定部212は、流体装置120の動作を決定するものである。動作決定部212は、各種の情報(例えば、姿勢検出センサ261及び風向検出センサ262の検出結果等)に基づいて流体装置120の動作(移動方向、移動量等)を決定することができる。
【0119】
指令部213は、流体装置120に対して動作に関する指令を送信するものである。指令部213は、通信装置(不図示)を介して流体装置120に対して適宜の信号を送信することにより、流体装置120を任意の方向に任意の速度で移動させることができる。
【0120】
発電制御サーバ210は、上記以外にも、通信装置(不図示)を介して発電ユニットUとの間で各種の情報をやり取りすることができる。
【0121】
次に、発電システム200における発電ユニットUの制御方法について説明する。
【0122】
複数の発電ユニットUは、洋上に設置される。発電制御サーバ210(配置決定部211)は、各種機器によって観測された洋上の気象情報を取得し、風力発電装置252が効率的に発電可能な場所を、風力発電装置252の配置場所として決定する。具体的には、風速が所定の閾値以上となることが予測されるエリアを、風力発電装置252(発電ユニットU)の配置場所として決定する。なお、この場合、1つのエリアに複数の発電ユニットUを集中して配置する必要はなく、所定の閾値以上の風速が得られる複数のエリアに発電ユニットUを分散して配置することが可能である。
【0123】
指令部213は、配置決定部211によって決定された場所に発電ユニットUが配置されるように、各流体装置120を移動させる。このようにして洋上に配置された複数(図例では、4つ)の発電ユニットUの一例を、図12(a)に示している。このように、気象情報(本実施形態では、風速)に基づいて発電ユニットUを配置することで、風力発電装置252による発電を効果的に行うことができる。
【0124】
また配置決定部211は、各発電ユニットU(風力発電装置252)における発電量に基づいて、風力発電装置252の配置場所を変更することができる。例えば、図12(a)に示した4つの発電ユニットU1~U4のうち、発電ユニットU4では目標値の発電量が得られているのに対して、他の発電ユニットU1~U3では目標値以上の発電量が得られていない場合、発電ユニットU4が配置されたエリアが風力発電を行うのに好ましいと考えられる。そこで配置決定部211は、他の発電ユニットU1~U3の配置場所を、発電ユニットU4と同じエリア(発電ユニットU4の近傍)に変更する。また指令部213は、配置決定部211によって決定された場所に、発電ユニットU1~U3を移動させる(図12(b)参照)。このように、実際の発電量に基づいて発電ユニットUの配置を決定することで、風力発電装置252による発電をより効果的に行うことができる。
【0125】
なお、上記例では発電ユニットUが目標値以上の発電量を得られているか否かによって配置を決定するものとしたが、配置を決定する基準は任意に設定することが可能である。例えば、複数の発電ユニットUのうち、最大の発電量が得られているエリアに発電ユニットUを集中して配置すること等も可能である。
【0126】
なお、発電制御サーバ210は、上記の例に限らず、各種の情報に基づいて発電ユニットUの配置を適宜更新することが可能である。例えば、外部から取得した気象情報に基づいて、洋上が荒れそうな場合には、発電ユニットUをその場所から退避するように移動させることも可能である。
【0127】
また、発電制御サーバ210は、風向きや風力発電装置252の姿勢に応じて流体装置120を制御することもできる。以下、具体的に説明する。
【0128】
図13(a)に示すように、風力発電装置252が風上を向いていない場合、効率的に風力発電を行うことができないものと考えられる。図例では、紙面左から右へと風が吹いている状態を示している。そこで発電制御サーバ210(動作決定部212)は、風向検出センサ262の検出結果に基づいて、風力発電装置252が風上を向いていないと判断した場合、当該風力発電装置252が風上を向くように流体装置120を移動させることを決定する。具体的には、動作決定部212は図13(b)に示すように、風力発電装置252に接続された複数の流体装置120を、風力発電装置252を中心とする円周方向(図例では、平面視反時計回り)に移動させることを決定する。
【0129】
指令部213は、動作決定部212の決定に基づいて、各流体装置120を移動させる。このように複数の流体装置120を互いに連係させて移動させることで、風力発電装置252を風上に向けることができ、風力発電を効果的に行うことができる。
【0130】
また、図14(a)に示すように、発電ユニットUが風を受けると、その風に押されて発電ユニットU自体が風下に流されるおそれがある。図例では、紙面左から右へと風が吹いている状態を示している。そこで発電制御サーバ210(動作決定部212)は、風向検出センサ262の検出結果に基づいて、流体装置120が風上により多く配置されるように流体装置120を移動させることを決定する。例えば図14(b)に示すように、4つの流体装置120のうち、3つを発電部250の風上側(図例では、左側)に移動させることを決定する。
【0131】
指令部213は、動作決定部212の決定に基づいて、各流体装置120を移動させる。このように風上からより多くの流体装置120で発電部250を引っ張ることで、発電ユニットUが風下に流されるのを抑制することができる。またこのように風上側の流体装置120の数を増やすことで、風上側の流体装置120の出力と、風下側の流体装置120の出力の均一化を図ることができる。
【0132】
なお、アンカー128が使用できる場所(推進が比較的浅い海域)では、流体装置120が備えるアンカー128を用いることで、発電部250をその場に留めることができる。アンカー128を利用することで、発電部250を留めるために流体装置120の推進力を用いる必要がなくなるため、省エネを図ることができる。
【0133】
また、図15に示すように、風や波の影響で、発電部250の姿勢が傾斜することが考えられる。図例では、発電部250が紙面右方へと傾いている様子を示している。発電部250の傾斜が大きくなると、発電部250が転覆するおそれがあり、好ましくない。そこで発電制御サーバ210(動作決定部212)は、姿勢検出センサ261の検出結果に基づいて、発電部250が傾斜している方向と反対側(図例では、紙面左側)からより大きな力で発電部250を引っ張るように、各流体装置120を動作させることを決定する。流体装置120の動作として、例えば、発電部250の左側に配置された流体装置120の出力を上げてワイヤーWの張力を上げる方法や、発電部250の左側により多くの流体装置120を移動させ、多数の流体装置120で発電部250を引っ張る方法が考えられる。
【0134】
指令部213は、動作決定部212の決定に基づいて、各流体装置120を移動させる。これによって、傾斜した発電部250を元の姿勢(直立に近い姿勢)に戻すことができ、発電部250の姿勢を安定させることができる。なお、発電部250に力を加える方向(引っ張る方向)は上記の例に限るものではなく、ワイヤーWの連結位置と発電部250の重心位置との関係等に応じて任意に決定することができる。
【0135】
以上の如く、第一実施形態に係る流体装置120は、
流体を移送する移送機構122と、
前記移送機構122を用いて所定の方向に流体を流通させることが可能な流通機構(本体部121、第一配水部材125及び第二配水部材127等)と、
前記移送機構122を用いて所定の方向への推進力を得ることが可能な推進機構(可変機構123)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、流体装置120を任意の位置に移動させ、水(海水等)を移送することができる。例えば、海底付近の低温の海水を水面近くまで汲み上げることで、海面水温を低下させ、ひいては台風の発生や発達を抑制することができる。また、淀んだ海水を移送することで、赤潮の発生を抑制することができる。
なお、第二実施形態に係る流体装置130においては、本体部131及び第一配水部材125等が流通機構に相当し、開閉機構134が推進機構に相当する。
【0136】
また、前記流通機構(本体部121及び第一配水部材125等)は、
水面から所定の深さに位置する水中の流体を水面近傍へと流通させることが可能なものである(図1等参照)。
このように構成することにより、水中の流体を水面近傍まで汲み上げることで、水面温度を低下させることができる。本実施形態のように流体装置120を海で使用した場合には、海面温度を低下させることができる。
【0137】
また、前記流通機構(本体部121及び第二配水部材127等)は、
水面近傍の第一の位置の流体を、水面近傍の前記第一の位置とは異なる第二の位置へと流通させることが可能なものである(図4等参照)。
このように構成することにより、水面近傍の水を他の場所へと移送することができる。これによって、水の淀みを解消することができる。海で使用した場合には、赤潮の発生を抑制することができる。
【0138】
また、前記流通機構は、
伸縮可能に構成され、流体を案内することが可能な第一配水部材125(配水部材)を具備するものである。
このように構成することにより、水を任意の位置へと容易に移送することができる。また第一配水部材125を使用しない場合には収縮させることで、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0139】
また、前記第一配水部材125は、
アンカーとして利用することが可能なものである。
このように構成することにより、第一配水部材125を用いて、流体装置120を所定の位置に留めておくことができる。また、第一配水部材125をアンカーとして兼用できるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0140】
また、前記推進機構は、
前記移送機構122を収容する本体部121(本体)に対する前記移送機構122の向きを変更可能な可変機構123を具備するものである。
このように構成することにより、移送機構122の向きを任意に変更することで、任意の方向への推進力を得ることができる。
【0141】
また、前記推進機構は、
前記移送機構122を収容する本体部131(本体)に設けられた複数の開口部131aを個別に開閉可能な開閉機構134を具備するものである。
このように構成することにより、任意の開口部131aを開閉することで、流体の流通方向を調節し、任意の方向への推進力を得ることができる。
【0142】
また、流体装置140は、
自然エネルギーを利用して発電可能な太陽光発電装置142(発電装置)と、
前記太陽光発電装置142により発電された電力を蓄える蓄電装置143と、
をさらに具備するものである。
このように構成することにより、自然エネルギーを利用して発電された電力を利用することができる。例えば、流体装置140の各部を自然エネルギーに基づく電力によって作動させることができる。
【0143】
また、上記実施形態に係る海水移送システム100(流体装置制御システム)は、
前記流体装置120と、
前記流体装置120の動作を制御することが可能な移送制御サーバ110(制御装置)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、流体装置120を任意の位置に移動させ、水(海水等)の移送を行うことができる。
【0144】
また、前記移送制御サーバ110は、
気象情報、及び、水質情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記流体装置120の配置を決定する配置決定部111(決定部)と、
前記配置決定部111により決定された配置となるように前記流体装置120を移動させる指令部112(移動指令部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、流体装置120を適切に配置することができる。
【0145】
また、前記配置決定部111は、
気象情報、及び、水質情報の少なくともいずれか一方に基づいて赤潮の発生し易い場所を判定し、当該判定結果に基づいて前記流体装置120の配置を決定するものである。
このように構成することにより、赤潮の発生し易い場所に流体装置120を配置することで、赤潮の発生を抑制することができる。
【0146】
また、海水移送システム100は、
前記流体装置120を複数具備し、
前記配置決定部111は、
複数の前記流体装置120を互いに連係させるように複数の前記流体装置120の配置を決定するものである。
このように構成することにより、複数の流体装置120を連係させて、水の移送を効率的に行うことができる。例えば上記実施形態(図9参照)のように、複数の流体装置120を並べて配置することで、流体装置120単体では移送できないような広範囲まで水を移送することができる。
【0147】
また、以上の如く、上記実施形態に係る発電システム200は、
自然エネルギーを利用して発電可能な浮体式の発電部250(発電装置)と、
移動可能に構成され、前記発電部250と接続される、1つ、又は複数の流体装置120(移動装置)と、
前記流体装置120の動作を制御する発電制御サーバ210(制御装置)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、流体装置120を移動させることで、発電部250を任意に移動させることができる。また流体装置120を移動させて発電部250を所望の方向に引っ張る(又は、押す)ことで、発電部250を所定の場所に留めたり、発電部250の姿勢を安定させたりすることができる。
【0148】
また、前記流体装置120は、
アンカー128を具備するものである。
このように構成することにより、アンカー128が利用可能な深さ(水深が比較的浅い海域)ではアンカー128を利用して発電部250を所定の場所に留めることで、省エネを図ることができる。
【0149】
また、前記流体装置120(移動装置)は、
流体を移送する移送機構122と、
前記移送機構122を用いて所定の方向に流体を流通させることが可能な流通機構(本体部121、第一配水部材125及び第二配水部材127等)と、
前記移送機構122を用いて所定の方向への推進力を得ることが可能な推進機構(可変機構123)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、流体装置120を用いて流体を所定の方向に流通させ、水(海水等)を移送することができる。
【0150】
また、前記発電部250の姿勢を検知する姿勢検出センサ261(姿勢検知部)をさらに具備し、
前記発電制御サーバ210は、
前記発電部250の姿勢に応じて前記流体装置120の動作を制御するものである。
このように構成することにより、発電部250の姿勢に応じて流体装置120の動作を制御することにより、発電部250の姿勢をより安定させることができる。例えば、発電部250が傾いた場合には、発電部250の傾きが戻るように流体装置120を制御することができる。
【0151】
また、前記発電制御サーバ210は、
前記発電部250の発電効率が向上する方向に前記発電部250が向くように、前記流体装置120の動作を制御するものである。
このように構成することにより、発電部250の発電効率を向上させることができる。
例えば発電部250として風力発電装置を用いる場合には、風力発電装置を風上に向けることで発電効率の向上を図ることができる。また発電装置として太陽光発電装置を用いる場合には、太陽光発電装置を太陽に向けることで発電効率の向上を図ることができる。
【0152】
また、風向きを検知する風向検出センサ262(風向検知部)をさらに具備し、
前記発電部250は、
風力を利用して発電可能な風力発電装置であり、
前記発電制御サーバ210は、
前記発電部250が風上側を向くように、前記流体装置120の動作を制御するものである。
このように構成することにより、風力発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0153】
また、発電システム200は、
風向きを検知する風向検出センサ262をさらに具備し、
前記発電制御サーバ210は、
風上側へ向かって前記発電部250に力を加える前記流体装置120の数が、風下側へ向かって前記発電部250に力を加える前記流体装置120の数よりも多くなるように、前記流体装置120の動作を制御するものである(図14参照)。
このように構成することにより、風に逆らう方向に多くの流体装置120を動作させることで、複数の流体装置120にかかる負荷の均一化を図ることができる。
【0154】
また、前記発電制御サーバ210は、
気象情報に基づいて、前記発電部250の配置を決定する配置決定部211(決定部)と、
前記配置決定部211により決定された配置となるように前記流体装置120を移動させる指令部213(移動指令部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、気象情報に基づいて、発電し易い場所に発電部250を配置することができる。
例えば発電部250として風力発電装置を用いる場合には、風速の高い場所に風力発電装置を配置することで発電効率の向上を図ることができる。また発電部250として太陽光発電装置を用いる場合には、日射量の多い場所に太陽光発電装置を配置することで発電効率の向上を図ることができる。
【0155】
また、発電システム200は、
前記発電部250を複数具備し、
前記発電制御サーバ210は、
複数の前記発電部250の発電量に基づいて、複数の前記発電部250の配置を決定する配置決定部211(決定部)と、
前記配置決定部211により決定された配置となるように前記流体装置120を移動させる指令部213(移動指令部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、発電部250の発電量に基づいて、発電し易い場所に発電部250を配置することができる。
例えば、発電量の高い発電部250がある場合、その発電部250の近くへと他の発電部250を移動させることで、発電効率の向上を図ることができる。
【0156】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0157】
例えば、上記実施形態で示した海水移送システム100及び発電システム200の構成部材の形状、個数等は一例であり、任意に変更することが可能である。例えば、流体装置120の本体部121の形状は球体状に限るものではなく、任意の形状とすることが可能である。また、海水移送システム100及び発電システム200が具備する流体装置120、発電ユニットU等の個数は特に限定するものではなく、海水の移送や発電部250の移動等に必要な能力に応じて変更することが可能である。例えば、上記実施形態では発電ユニットUに複数の流体装置120を設け、1つの発電部250を複数の流体装置120で移動させる例を示したが、例えば発電部250を1つの流体装置120で移動させることも可能である。
【0158】
また、上記実施形態では、流体装置120と発電部250とを可撓性を有するワイヤーWで接続した例を示したが、流体装置120と発電部250の接続方法はこれに限るものではなく、例えば可撓性を有さない部材(フレーム等)で接続することも可能である。このように可撓性を有さない部材で連結することで、流体装置120は発電部250を引っ張るだけでなく、押すことも可能になる。
【0159】
また、上記海水移送システム100及び発電システム200の管理(充電、通信、その他メンテナンス等)を行うことが可能な基地を、別途洋上に設けることも可能である。
【0160】
また、上記実施形態では、流体装置120、海水移送システム100、発電システム200等を洋上で使用する例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば湖や河川で使用することも可能である。
【0161】
また、流体装置120による流体の移送の用途としては、上記実施形態(海水の移送)に限るものではなく、任意の用途に利用することが可能である。例えば流体装置120を、水害が発生した際の水の排出等に利用することも可能である。
【0162】
また、上記実施形態では、海水移送システム100と発電システム200を個別に例示したが、両者を1つのシステムとして構成することも可能である。すなわち、海水を移送するシステムと、自然エネルギーを用いて発電するシステムを、両立することも可能である。例えば、発電システム200に用いられる流体装置120を用いて、必要に応じて海水の移送を行うように構成することも可能である。これによって、発電を行いながら海水の移送を行うなど、システムを効率的に活用することができる。
【0163】
また、上記実施形態では、流体装置120を、発電部250を移動させるための移動装置として利用した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、流体装置120をその他種々の装置の移動装置として利用することが可能である。例えば、流体装置120を、養殖に用いられる生けす(養殖場)や、海水等を浄化するための浮体式の浄化処理装置等の移動装置として利用することも可能である。
【0164】
また、上記実施形態で例示した海水移送システム100及び発電システム200の制御の態様は一例であり、その他種々の情報(例えば、海流及び潮流の強さや向き、ワイヤーWに加わる張力、他の船舶等との位置関係等)に基づいて各装置(流体装置120等)を適宜制御することが可能である。また、海水移送システム100及び発電システム200、又は外部のシステムのAI(人工知能)を用いて気象情報等の高精度予測(シミュレーション)を行い、その結果に基づいて流体装置120等を制御することも可能である。
【0165】
また、上記実施形態では、複数の流体装置120を互いに連係させるように配置し、広範囲に海水を移送する例(図9参照)を示したが、流体装置120の連係方法はこれに限るものではなく、任意に連係させることが可能である。例えば、複数の流体装置120が環状に並ぶように連係させることで、海水が流通する環状の経路を形成することができ、海水の循環を効率的に行うことができる。また流体装置120同士が互いに所定距離以上近づかないように連係させることで、流体装置120同士の接触による破損等を防止することができる。
【0166】
また、上記実施形態では、移送制御サーバ110及び発電制御サーバ210を用いて流体装置120等の制御を行う例を示したが、本発明は制御の主体を移送制御サーバ110等に限るものではない。例えば、流体装置120自身に制御装置を設け、流体装置120を単体で動作させることも可能である。また、このように単体で動作可能な複数の流体装置120同士を連係させて制御することも可能である。
【符号の説明】
【0167】
100 海水移送システム
110 移送制御サーバ
111 配置決定部
112 指令部
120 流体装置
121 本体部
122 移送機構
123 可変機構
125 第一配水部材
127 第二配水部材
128 アンカー
130 流体装置
140 流体装置
142 太陽光発電装置
143 蓄電装置
200 発電システム
210 発電制御サーバ
211 配置決定部
213 指令部
250 発電部
261 姿勢検出センサ
262 風向検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15