(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240906BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240906BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20240906BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20240906BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240906BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B60K1/00
H02G3/16
H02G3/14
H05K5/00 A
H05K5/03 H
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2021211636
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆之介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203504423(CN,U)
【文献】国際公開第2013/175651(WO,A1)
【文献】特開2003-069275(JP,A)
【文献】特開2021-000953(JP,A)
【文献】特開2021-057398(JP,A)
【文献】実開平07-027238(JP,U)
【文献】中国実用新案第204290754(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 1/04
H02G 3/08- 3/20
H05K 1/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成さ
れ、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記縦リブは、前記ケース本体に対して前記ケース蓋をネジ止めするために前記周壁部に形成されたネジ孔と側面視で重複する位置に形成されている電動作業車。
【請求項2】
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成さ
れ、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記斜め格子状のリブは、前記ケース蓋の矩形周辺部に形成されたボルト挿通用の連結孔同士を結ぶ方向に沿って形成されている電動作業車。
【請求項3】
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成さ
れ、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記ケース蓋の内面には、前記空間側へ突出する前記斜め格子状のリブの一部が存在していない領域を設けて、前記領域と対向する箇所で前記ケース本体に取り付けられた部品との間に、絶縁距離確保用スペースが形成されている電動作業車。
【請求項4】
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成さ
れ、
前記基板止め部が、前記基板を受け止め状態でネジ止めするための複数の突出台座を備え、
隣り合う位置の前記突出台座同士が、連結リブで互いに接続されている電動作業車。
【請求項5】
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブである
請求項4記載の電動作業車。
【請求項6】
前記周壁部は、当該周壁部の上端の外周縁よりも外方へ突出しないように前記縦リブが形成され、
隣り合う前記縦リブ同士の間に位置する外壁面が、前記縦リブを形成された箇所よりも、前記ケース本体の内壁面に近づくように凹入する凹入壁面に形成されている
請求項1,2,3,5のいずれか一項記載の電動作業車。
【請求項7】
前記底板部の下面に、平面視で前記周壁部の延設方向に沿って前後方向及び左右方向に向かう格子状のリブが形成されている請求項1~6のいずれか一項記載の電動作業車。
【請求項8】
前記ケース本体の周壁部上端面と、前記ケース蓋の周辺部内面と、の間に、防振用のクッション材が挟み込まれている請求項1~7のいずれか一項記載の電動作業車。
【請求項9】
前記基板止め部は、前記インバータ回路を装備した前記基板の周辺部、及び中央部付近、を前記底板部の上面に固定支持可能に構成されている請求項1~8のいずれか一項記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリと、バッテリから供給される電力により駆動するモータと、モータにより駆動される走行装置と、を備える電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電動作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この電動作業車(特許文献1では「トラクタ」)は、バッテリから電動モータへの電力供給経路にインバータ装置(特許文献1では「インバータ」)を介装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される構造のものでは、左右の機体フレームに掛け渡された大きなインバータ支持部と、大きなバッテリを支持するために比較的頑丈に構成されたバッテリ支持台とが一体的に構成された、かなり頑丈な支持構造物となっている。この頑丈な支持構造物となったインバータ支持部にインバータ装置が取り付けられることにより、インバータ装置に対する揺れや振動が極力制限されるように工夫されている。
しかしながら、各種作業を伴う電動作業車では、静油圧式無段変速装置の振動や使用される各種作業装置からの振動、あるいは不整地走行の際の揺れや振動など、各種の外的要因でインバータ装置に様々な揺れや振動が伝わることがある。このため、インバータ装置を搭載する箇所の支持強度を向上させるだけでは、インバータ装置にまで伝わった揺れや振動は、回避し難いという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、インバータ装置自体に耐振動機能を持たせて、インバータ装置にまで伝わった揺れや振動の影響を低減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成され、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記縦リブは、前記ケース本体に対して前記ケース蓋をネジ止めするために前記周壁部に形成されたネジ孔と側面視で重複する位置に形成されていることにある。
【0007】
本発明によれば、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケース自体の剛性が、ケース本体の周壁部外面、及びケース蓋の内面に補強リブを形成することによって高められている。これによって、インバータ装置に伝わる揺れや振動の低減を図ることができる。
【0008】
さらに、外装ケースに形成される補強リブは、ケース本体の周壁部外面に形成されることにより、外気との接触による放熱効果を高め得る点で有利である。そして、ケース蓋の内面に形成される補強リブは、外装ケース全体の強度アップに貢献しながら、上方への突起物となる補強リブが蓋上面側に存在しないことで、塵埃の堆積を避け易く、また、車体フレームとバッテリ搭載台との狭い空間に配設し易くなる。
この発明によれば、周壁部に形成された上下方向に沿う縦リブと、ケース蓋の内面に形成されたケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブとの併用によって、上下方向、及び水平方向での強度を高く維持し易い。
この発明によれば、周壁部のうちの強度の高い箇所である縦リブの存在箇所にネジ孔を形成することにより、ケース本体とケース蓋とをネジ止めして連結したとき、ケース本体とケース蓋との連結強度を高く維持し易くなる。
本発明の特徴は、
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成され、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記斜め格子状のリブは、前記ケース蓋の矩形周辺部に形成されたボルト挿通用の連結孔同士を結ぶ方向に沿って形成されていることにある。
本発明によれば、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケース自体の剛性が、ケース本体の周壁部外面、及びケース蓋の内面に補強リブを形成することによって高められている。これによって、インバータ装置に伝わる揺れや振動の低減を図ることができる。
さらに、外装ケースに形成される補強リブは、ケース本体の周壁部外面に形成されることにより、外気との接触による放熱効果を高め得る点で有利である。そして、ケース蓋の内面に形成される補強リブは、外装ケース全体の強度アップに貢献しながら、上方への突起物となる補強リブが蓋上面側に存在しないことで、塵埃の堆積を避け易く、また、車体フレームとバッテリ搭載台との狭い空間に配設し易くなる。
この発明によれば、周壁部に形成された上下方向に沿う縦リブと、ケース蓋の内面に形成されたケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブとの併用によって、上下方向、及び水平方向での強度を高く維持し易い。
この発明によれば、ケース蓋の斜め格子状のリブがボルト挿通用の連結孔同士を結ぶ方向に沿って形成されていることにより、ケース本体とケース蓋とをネジ止めして連結したとき、斜め格子状のリブが筋交いのように作用して、外装ケース全体の強度を高め易い。
本発明の特徴は、
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成され、
前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであり、
前記ケース蓋の内面には、前記空間側へ突出する前記斜め格子状のリブの一部が存在していない領域を設けて、前記領域と対向する箇所で前記ケース本体に取り付けられた部品との間に、絶縁距離確保用スペースが形成されていることにある。
本発明によれば、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケース自体の剛性が、ケース本体の周壁部外面、及びケース蓋の内面に補強リブを形成することによって高められている。これによって、インバータ装置に伝わる揺れや振動の低減を図ることができる。
さらに、外装ケースに形成される補強リブは、ケース本体の周壁部外面に形成されることにより、外気との接触による放熱効果を高め得る点で有利である。そして、ケース蓋の内面に形成される補強リブは、外装ケース全体の強度アップに貢献しながら、上方への突起物となる補強リブが蓋上面側に存在しないことで、塵埃の堆積を避け易く、また、車体フレームとバッテリ搭載台との狭い空間に配設し易くなる。
この発明によれば、周壁部に形成された上下方向に沿う縦リブと、ケース蓋の内面に形成されたケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブとの併用によって、上下方向、及び水平方向での強度を高く維持し易い。
この発明によれば、外装ケースを導電可能な部材で構成した場合に、ケース内の空間へ突出する斜め格子状のリブの一部が存在していない領域を設けることによって、その領域と対向する箇所に存在する部品との間に絶縁距離確保用スペースを形成することができる。
本発明の特徴は、
バッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動モータと、
前記バッテリから前記電動モータへの電力供給経路に介装されたインバータ装置と、
前記電動モータにより駆動される走行装置と、が備えられ、
前記インバータ装置は、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケースを備え、
前記外装ケースが、底板部及び周壁部に囲まれた空間の上方に開口を備える矩形箱状のケース本体と、前記開口を開閉可能なケース蓋と、を備え、
前記底板部の上面に、前記基板を固定するための基板止め部が備えられ、
前記ケース本体の周壁部外面、及び前記ケース蓋の内面に、補強リブが形成され、
前記基板止め部が、前記基板を受け止め状態でネジ止めするための複数の突出台座を備え、
隣り合う位置の前記突出台座同士が、連結リブで互いに接続されていることにある。
本発明によれば、インバータ回路を備える基板が内装された外装ケース自体の剛性が、ケース本体の周壁部外面、及びケース蓋の内面に補強リブを形成することによって高められている。これによって、インバータ装置に伝わる揺れや振動の低減を図ることができる。
さらに、外装ケースに形成される補強リブは、ケース本体の周壁部外面に形成されることにより、外気との接触による放熱効果を高め得る点で有利である。そして、ケース蓋の内面に形成される補強リブは、外装ケース全体の強度アップに貢献しながら、上方への突起物となる補強リブが蓋上面側に存在しないことで、塵埃の堆積を避け易く、また、車体フレームとバッテリ搭載台との狭い空間に配設し易くなる。
この発明によれば、基板止め部の突出台座同士を連結リブで互いに接続して、その突出台座部分の揺れや振動を抑制し易くなる。
【0009】
本発明において、前記周壁部に形成された前記補強リブは上下方向に沿う縦リブであり、前記ケース蓋の内面に形成された前記補強リブは、前記ケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブであると好適である。
【0010】
この構成によれば、周壁部に形成された上下方向に沿う縦リブと、ケース蓋の内面に形成されたケース蓋の対角方向に沿う斜め格子状のリブとの併用によって、上下方向、及び水平方向での強度を高く維持し易い。
【0011】
本発明において、前記周壁部は、当該周壁部の上端の外周縁よりも外方へ突出しないように前記縦リブが形成され、
隣り合う前記縦リブ同士の間に位置する外壁面が、前記縦リブを形成された箇所よりも、前記ケース本体の内壁面に近づくように凹入する凹入壁面に形成されていると好適である。
【0012】
この構成によれば、縦リブの存在によって外装ケースの上下方向強度を高く保ちながら、縦リブ同士の間に位置する外壁面が、縦リブを形成された箇所よりも、ケース本体の内壁面に近づくように凹入する凹入壁面に形成されていることにより、周壁部の表面積を大きく確保し得る。これによって、効率良く放熱を行い易く、同時に軽量化を図り易い。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明において、前記底板部の下面に、平面視で前記周壁部の延設方向に沿って前後方向及び左右方向に向かう格子状のリブが形成されていると好適である。
【0020】
この構成によれば、底板部の下面に前後方向及び左右方向に向かう格子状のリブが形成されているので、さらに外装ケースの剛性を大きくし易い。
【0021】
本発明において、前記ケース本体の周壁部上端面と、前記ケース蓋の周辺部内面と、の間に、防振用のクッション材が挟み込まれていると好適である。
【0022】
この構成によれば、ケース本体の周壁部上端面と、ケース蓋の周辺部内面と、の間に、防振用のクッション材が挟み込まれることで、ケース本体からケース蓋への振動の伝播を抑制し易い。
【0023】
本発明において、前記基板止め部は、前記インバータ回路を装備した前記基板の周辺部、及び中央部付近、を前記底板部の上面に固定支持可能に構成されていると好適である。
【0024】
この構成によれば、基板の周辺部、及び中央部付近、を底板部の上面に固定支持可能にしたことにより、基板自体の撓みを生じ難くして、揺れや振動をより抑制し易くなる。
【0025】
【0026】
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】バッテリから走行装置及び作業装置等への動力伝達機構を示す説明図である。
【
図3】モータから走行装置等への動力伝達系統を示すブロック図である。
【
図4】インバータの取付箇所を示す一部切り欠き側面図である。
【
図5】機体フレーム及びバッテリ搭載台を断面で示し、インバータの取付箇所を示す正面図である。
【
図6】バッテリ搭載台を断面で示し、インバータの取付箇所を示す平面図である。
【
図7】インバータの外装ケースにおけるケース本体を示す平面図である。
【
図10】外装ケースのケース本体を示す底面図である。
【
図11】外装ケースのケース蓋を示す底面図である。
【
図12】
図6におけるXII-XII線断面図である。
【
図13】
図6におけるXIII-XIII線断面図である。
【
図14】ケース蓋の返し部を示す上下方向断面での拡大断面図である。
【
図15】呼吸孔を示す平面視での拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0029】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態のトラクタについて説明する。
図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0030】
また、トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0031】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0032】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータは、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0033】
トラクタは、走行用バッテリ4を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。
【0034】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14(インバータ装置に相当する)及びモータMを備えている。走行用バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0035】
図2及び
図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。
図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0036】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0037】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0038】
また、
図2及び
図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0039】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、
図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
〔バッテリ及びインバータの取付構造〕
【0040】
図4及び
図5に示すように、機体フレーム2は、左右の前後フレーム2Aと横フレーム2Bとを有する。左右の前後フレーム2Aは機体の前後方向に沿って延び、横フレーム2Bは左右の前後フレーム2A同士を繋ぐ。横フレーム2Bは、左右の前後フレーム2Aの下部において左右の前後フレーム2Aの夫々と連結し、かつ、平面視においてインバータ14の前端部の位置する領域とモータMの前端部の位置する領域とに亘って前後に延びる。
【0041】
横フレーム2Bに車軸ユニット10Fが連結され、車軸ユニット10Fは機体の左右に延びる。車軸ユニット10Fの左右両端部に前車輪10が回転可能に支持されている。また、トランスミッション16と車軸ユニット10Fとにプロペラシャフト13が連結され、プロペラシャフト13は横フレーム2Bの下方において機体の前後方向に延びる。
【0042】
インバータ14とモータMとが前後方向において互いに隣り合う状態で配置されている。換言すると、インバータ14とモータMとの夫々は、機体の前後方向に沿って並ぶ状態で配置されている。モータMとインバータ14との夫々は、機体の前後方向に沿って並ぶ状態、かつ、左右の前後フレーム2Aの間に位置する状態で左右の前後フレーム2Aに支持されている。インバータ14はモータMの前方に位置する。
【0043】
インバータ14とモータMとが給電ケーブル21で接続されている。給電ケーブル21の一端部21Aがインバータ14の出力コネクタ14Cに対して脱着可能に接続され、給電ケーブル21の反対側の端部21BがモータMの受電コネクタ22に対して脱着可能に接続されている。
出力コネクタ14Cは、外装ケース5のうち、モータMの位置する側と反対側の領域に位置する状態で設けられている。給電ケーブル21は、横フレーム2Bよりも上側に位置し、左右の前後フレーム2Aの間の空間に収容されている。つまり、給電ケーブル21は、左右の前後フレーム2Aと横フレーム2Bと外装ケース5の底板部50とによって囲まれた空間内を前後に延ばされている。これにより、出力コネクタ14Cと給電ケーブル21が異物と接触する虞が回避され、また出力コネクタ14Cと給電ケーブル21が異物と接触することにより外れる虞を軽減できる。
【0044】
走行用バッテリ4は、インバータ14の真上に位置する状態で、左右の前後フレーム2Aに支持されている。具体的には、
図4~
図6に示すように、左右の前後フレーム2Aの夫々の上端部に左右夫々の支持面部23が形成されている。左右の支持面部23にバッテリ搭載台24が載置され、バッテリ搭載台24に走行用バッテリ4が載置される。
【0045】
左右の支持面部23は左右の前後フレーム2Aの夫々の上端部において機体の横方向に延出する。尚、
図4及び
図5に示すように、左右の支持面部23の夫々が左右の前後フレーム2Aに対して撓まないように、支持面部23と前後フレーム2Aとに亘って三角リブ27,27が介在している。この三角リブ27,27は、当接端辺を前後フレーム2A及び支持面部23に溶接固定されており、これによって支持面部23は三角リブ27,27を介して前後フレーム2Aと一体化され、機体フレーム2の一部を構成している。インバータ14の底部と支持面部23とが取付ボルト28で連結されている。このことから、インバータ14は、機体フレーム2に着脱可能に支持されている。
【0046】
バッテリ搭載台24は左右の支持面部23の夫々とボルト連結されている。
図4~
図6に示すように、バッテリ搭載台24は、左右の支持面部23の一部に重なる取付プレート24Cと、取付プレート24Cに立設されるC型鋼の縦フレーム24Aと、左右の縦フレーム24Aの上端部において機体の前後方向に延びる左右のアングル鋼24Bと、機体の前後方向に延びる左右のアングル鋼24B同士を繋ぐ横アングル鋼(不図示)と、を溶接によって組み合わせた部材である。
【0047】
取付プレート24Cには、取付プレート24Cと支持面部23とをボルト連結するためのボルト挿通孔24Caが形成されており、連結ボルト26を介して取付プレート24Cと支持面部23とを連結固定することができる。バッテリ搭載台24は機体の前後方向視において門形に形成されている。バッテリ搭載台24は、インバータ14を上方及び左右側方から覆う。
【0048】
アングル鋼24Bの上部における左右両側部と、連結プレート25の下部と、がボルト連結されている。また、走行用バッテリ4の下部における左右両側部と、連結プレート25の上部と、がボルト連結されている。これにより、走行用バッテリ4とバッテリ搭載台24とが連結プレート25を介して連結されている。
【0049】
〔インバータについて〕
本実施形態のインバータ14を、
図4~
図15に基づいて説明する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電流を交流電流に変換してモータMへ供給する。
【0050】
図7、及び
図12、
図13に示すように、インバータ14は、ケース本体5Aとケース蓋5Bを備えた外装ケース5に、インバータ回路6を備える基板60、及びコンデンサ61等が内装されたものである。
インバータ回路6は、走行用バッテリ4からの直流電流を交流電流に変換する回路本体であって、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)で構成されたインバータモジュールと、上位の電子制御ユニット(ECU)と通信してインバータモジュールを制御するインバータ制御モジュールと、を備えている。コンデンサ61は、インバータモジュールに対する供給電圧を一定に保持する。
【0051】
基板60は、インバータモジュールを設けた第一基板60Aと、インバータ制御モジュールを設けた第二基板60Bと、を備えている。
図12、
図13に示すように、ケース本体5Aの底板部50に、第一基板60Aを固定するための第一基板止め部51が設けられている。そして、第一基板60Aの上方に重なる箇所に、第一基板60Aとは別の基板60であるところの第二基板60Bを固定するための第二基板止め部52と、が設けられている。
【0052】
第一基板止め部51は、第一基板60Aの周辺部と中央部とを受け止めて底板部50に連結固定するための突出台座53を備えている。この突出台座53を、第一基板60Aの周辺部及び中央部に対向する箇所に位置させた状態で、突出台座53に備えたネジ穴、及び止めネジを用いて、第一基板60Aの周辺部と中央部とを底板部50に対して固定できるように構成されている。
【0053】
第二基板止め部52は、第二基板60Bの周辺部と中央部とを支持可能な取付板62と、その取付板62の周辺部を受け止めて底板部50に連結固定するための突出台座53と、を備えている。第二基板60Bの周辺部と中央部とを取付板62に支持させた状態で、突出台座53を、取付板62の周辺部に対向する箇所に位置させた状態で、突出台座53に備えたネジ穴、及び止めネジを用いて、取付板62を底板部50に固定することにより、第二基板60Bの周辺部と中央部とを底板部50に対して固定できるように構成されている。
【0054】
図7、及び
図15に示されるように、突出台座53のうち、一部では、隣り合う位置の突出台座53同士が、連結リブ54で互いに接続されている。連結リブ54は、突出台座53のうち、取付板62を底板部50に固定するための、底板部50から上方への突出高さの高い突出台座53同士、及び、その突出台座53と、後述するケース本体5Aの内面と、を接続するように形成されている。これにより、底板部50からの突出高さの高い突出台座53の揺れを効果的に抑制し易い。その結果、取付板62、及び取付板62に固定された第二基板60Bに対する揺れや振動を軽減し易い。
【0055】
走行用バッテリ4とインバータ14とは電源ケーブル20(入力用ハーネスに相当する)によって通電接続されている。電源ケーブル20に直流電流が通電する。
図4及び
図6に示すように、インバータ14に入力コネクタ14B(入力接続部に相当する)が備えられている。入力コネクタ14Bは外装ケース5の前面部よりも前側に突出するとともに電源ケーブル20の接続口20Aと通電接続する。
【0056】
このように、インバータ14は、電源ケーブル20と通電接続する入力コネクタ14Bと、直流電流を交流電流に変換するインバータ回路6と、給電ケーブル21(出力用ハーネスに相当する)と通電接続する出力コネクタ14C(出力接続部)と、を有する。
【0057】
〔外装ケース〕
外装ケース5は、矩形箱状のケース本体5Aと、矩形板状のケース蓋5Bと、を備えたアルミダイカスト製品である。
矩形箱状のケース本体5Aは、底板部50及び周壁部55を備え、その底板部50及び周壁部55に囲まれた空間の上方が開放されて上向きの開口となっている。ケース蓋5Bは、ケース本体5Aの開口を開閉可能であるように、ケース本体5Aの上端部に対して連結及び連結解除可能に構成されている。
【0058】
基板60を固定するための第一基板止め部51及び第二基板止め部52は、ケース本体5Aの底板部50に設けられている。この第一基板止め部51及び第二基板止め部52に、第一基板60A及び第二基板60Bを取り付けた状態で、ケース本体5Aの開口をケース蓋5Bで閉塞することにより、インバータ回路6が外装ケース5に内装された状態となる。
【0059】
〔ケース本体〕
図8及び
図9に示すように、ケース本体5Aの周壁部55の外壁面には、上下方向に沿う縦リブ55aと水平方向に沿う横リブ55bと、からなる格子状の補強リブ56が形成されている。
この補強リブ56は、
図7に示すように、縦リブ55a及び横リブ55bが、周壁部55の上端の外周縁よりも外方へ突出しないように形成されている。そして、隣り合う縦リブ55a同士の間に位置する外壁面は、縦リブ55aが存在する箇所よりも、ケース本体5Aの内壁面に近づくように凹入する凹入部55cを各所に備えた凹入壁面に形成されている。
つまり、
図7~
図9、
図12、及び
図13に示すように、縦リブ55a及び横リブ55bは、周壁部55の上端の外周縁よりも外方へ突出させて形成したのではなく、逆に、凹入部55cを設けて外壁面の一部が凹入するように周壁部55を形成したことによって、補強リブ56として残されたものである。
【0060】
図7及び
図13に示されているように、周壁部55の上端部には、ケース蓋5Bをケース本体5Aの開口に対向させた状態でネジ止めするための連結ボルト57を螺合可能なネジ孔55dが形成されている。このネジ孔55dは、
図7及び
図8に示されるように、側面視で前記縦リブ55aと重複する位置に形成されている。
このようにネジ孔55dが縦リブ55aの存在する箇所に形成されることにより、ケース本体5Aの周壁部55における水平方向での肉厚が厚い箇所であるところの縦リブ55aの存在箇所を有効利用して、ケース蓋5Bとケース本体5Aとの連結箇所での強度を高めている。
【0061】
図7、
図12、及び
図13に示されているように、凹入部55cの凹入深さは、縦リブ55aの外端から内端までの距離d1に相当する深さを有している。その結果、凹入部55cの内奥部は、連結ボルト57の存在箇所よりも周壁部55の内壁面に近くなるように形成されている。このように凹入部55cの凹入深さを深くすることにより、凹入部55cの存在箇所における周壁部55の肉厚を薄くして、ケース本体5Aの軽量化が図られている。
【0062】
格子状の補強リブ56は、ケース本体5Aの周壁部55において、
図8に示す左側面、
図9に示す後面、のみならず、
図5に示す前面、及び、図示はしないが右側面にも、同様に形成されている。
【0063】
図10に示すように、ケース本体5Aの底板部50の下面には、前後方向に沿う前後リブ50aと、左右方向に沿う左右リブ50bと、からなる補強リブ56が形成されている。
底板部50の左右両端部には、前後フレーム2Aの支持面部23に対してケース本体5Aを固定するための取付座50dが設けられている。この取付座50dには、取付ボルト28を介して固定するための取付穴50eが設けられている。
【0064】
前後リブ50a及び左右リブ50bも、底板部50の外周縁の下端に備えた取付座50dの下面よりも下方へ突出して形成されたものではなく、前後リブ50aと左右リブ50bとで囲まれた箇所に、上向きの凹入部50cを設けることによって形成されている。
この上向きの凹入部50cの凹入深さは、前後リブ50a及び左右リブ50bの下端から上端までの距離d2に相当する凹入深さを有している。この距離d2は、前述した周壁部55における凹入部55cの凹入深さに相当する距離d1(
図13参照)よりも短くて、凹入部50cは凹入部55cよりも浅く形成されている。
【0065】
〔呼吸孔〕
ケース本体5Aの周壁部55のうち、機体後方側に向く後向き壁部55Rには、外装ケース5の内部空気を排出可能な通気用の呼吸孔7が設けられている。
この呼吸孔7には、インバータ回路6での発熱などにより外装ケース5内の空気圧が上昇するに伴って、内部空気の排出を許容し得るように、かつ外部からの塵埃や雨水等の侵入は制限し得るように、フィルター70が備えられている。
【0066】
外装ケース5は、
図5及び
図9に示すように、左右の前後フレーム2Aの左右方向での中心位置、つまり、機体の左右方向での中心位置を通る鉛直線CLの左右に振り分けられた状態で前後フレーム2Aに搭載されている。鉛直線CLは、機体の前後方向視で、前車輪10の車軸ユニット10Fにおける前後方向軸心(不図示)と交差する鉛直線である。したがって、前車輪10が前後方向軸心回りでローリングした場合における前後フレーム2Aの左右方向での揺れが最も少ない箇所の付近において、前後フレーム2A上に外装ケース5が搭載されている。
【0067】
図4及び
図5に示されるように、外装ケース5の上方には走行用バッテリ4が位置しており、外装ケース5の上側は走行用バッテリ4、及び走行用バッテリ4を搭載するバッテリ搭載台24で覆われている。外装ケース5の下方には、左右の前後フレーム2A同士を繋ぐ横フレーム2Bと、前後フレーム2Aの上縁に設けられた支持面部23と、が存在している。これにより、外装ケース5の下側は、左右の横フレーム2Bと支持面部23とで塞がれている。
外装ケース5の左右横外方では、バッテリ搭載台24の縦フレーム24Aが存在してはいるものの、外装ケース5の左右横外方における広範囲の部分が横外方に開放されている。
【0068】
後向き壁部55Rに設けられる呼吸孔7は、左右方向で、左右の前後フレーム2A同士の間に位置している。さらに云えば
図9に示されるように、前記鉛直線CLと右側の前後フレーム2Aとの間に位置している。
【0069】
〔ケース蓋〕
ケース本体5Aの上端部に対して連結及び連結解除可能なケース蓋5Bは、次のように構成されている。
【0070】
図11に示すように、ケース蓋5Bは、矩形板状の蓋板材58の周辺部に多数のボルト挿通孔58a(連結孔に相当する)が形成されている。このボルト挿通孔58aと、ケース本体5Aの周壁部55の上端部に形成されている多数のネジ孔55dと、にわたって連結ボルト57を挿通し、ケース蓋5Bをケース本体5Aの開口に対向させた状態でネジ止めすることができる。
【0071】
蓋板材58の外周端部には、
図11~
図14に示すように、蓋板材58の外周縁に沿って下向きに突出するリブ状の返し部58bが形成されている。
この返し部58bは、周壁部55の上端部に外嵌し得るように、返し部58bの内周面における前後方向長さ、及び左右方向長さが、周壁部55の上端部の外周面における前後方向長さ、及び左右方向長さよりも、少し大きく形成されている。
【0072】
これによって、ケース本体5Aの周壁部55の上側に蓋板材58を載せた状態で、
図12~
図14に示すように、周壁部55の上端部に対して、上下方向で返し部58bが部分的に重複する状態に嵌合する。このようにケース蓋5Bがケース本体5Aの周壁部55外嵌した状態では、ケース本体5Aの周壁部55の上端と、その上端に対向する位置におけるケース蓋5Bの下面との当接箇所が、ケース蓋5Bの周辺下部に相当する返し部58bの下端よりも高い位置にある。
この状態で蓋板材58のボルト挿通孔58a及び周壁部55のネジ孔55dに連結ボルト57を挿入して締め付けることにより、ケース蓋5Bがケース本体5Aの周壁部55の上端部に外嵌した状態で連結固定される。
【0073】
ケース本体5Aの周壁部55の上端と蓋板材58の返し部58bよりも内側の外周端部との間には、
図11及び
図14に示すように、クッション材を兼ねるシール材として、樹脂製のガスケット8が介装されている。
上述したように、ケース本体5Aの周壁部55の上端と、その上端に対向する位置におけるケース蓋5Bの下面との当接箇所が、ケース蓋5Bの周辺下部に相当する返し部58bの下端よりも高い位置にあるので、この箇所に介装されるガスケット8の位置も、ケース蓋5Bの周辺下部に相当する返し部58bの下端よりも高い位置にある。
【0074】
ガスケット8には、
図11に示すように、蓋板材58のボルト挿通孔58aと同じ位置に、連結ボルト57を挿通可能な透孔8aが形成されている。このガスケット8を、周壁部55の上端と蓋板材58の返し部58bよりも内側の外周端部との間に介装させた状態で連結ボルト57による連結固定が行われると、返し部58bの存在による、外部からの塵埃や雨水の入り込みを抑制することと、ガスケットによるシール効果との相乗効果により、外装ケース5内への塵埃や雨水の入り込みを、確実に抑制し易い。
また、ガスケット8は、ケース本体5Aからケース蓋5B側への振動伝播や、逆にケース蓋5Bからケース本体5A側への振動伝播を抑制する上でも有効である。
【0075】
ケース蓋5Bとなる蓋板材58の上面は、
図6に示すように、ボルト挿通孔58aの周辺を除くほぼ全体が平坦な面に形成されているが、蓋板材58の下面は、
図11に示されているように、多数の補強リブ56が形成された面となっている。この補強リブ56は、蓋板材58の対角方向に沿う斜め格子状のリブ59a,59bである。
【0076】
図11において、斜め格子状のリブ59a,59bに囲まれた部分が、ケース蓋5Bの上面側へ凹入する上向きの凹入部59cとなっている。
つまり、斜め格子状のリブ59a,59bの間に位置する蓋板材58の下面は、
図12、及び
図13に示すように、返し部58bの下端よりも下方へ突出させて形成したのではなく、逆に、蓋板材58の上面へ近づく側へ凹入する凹入部59cを各所に備えた凹入壁面に形成されている。このように、斜め格子状のリブ59a,59bは、凹入部59cを設けて蓋板材58の下面の一部が凹入するように形成したことによって、補強リブ56として残されたものである。
【0077】
上向きの凹入部59cの凹入深さは、斜め格子状のリブ59a,59bの下端から上端までの距離d3に相当する凹入深さを有している。この距離d3は、前述した周壁部55における凹入部55cの凹入深さに相当する距離d1(
図13参照)よりも短くて、凹入部50cは凹入部55cよりも浅く形成されている。
【0078】
上記の斜め格子状のリブ59a,59bは、ケース蓋5Bの矩形周辺部に形成されたボルト挿通孔58a同士を結ぶ方向に沿って形成されている。
【0079】
図11に示すように、ケース蓋5Bの下面(外装ケース5の内面)の一部には、外装ケース5内の空間に向けて突出する斜め格子状のリブ59a,59bが存在していない領域S1がある。
この領域S1は、ボルト挿通孔58a同士を結ぶ方向へ向けて延出された斜め格子状のリブ59a,59bが、一方のボルト挿通孔58aから他方のボルト挿通孔58aへ向かう途中で途切れた状態に形成されたものである。この領域S1では、斜め格子状のリブ59a,59bが存在していないことで、斜め格子状のリブ59a,59bの突出高さ分だけ、領域S1の内奥の面(ケース蓋5Bの下面)がケース蓋5Bの上面に近くなり、凹入部59cの凹入深さと同程度の位置にある。
この領域S1は、ケース蓋5Bと、前記領域S1の存在箇所に対向する箇所でケース本体5Aに取り付けられている部品と、の間に、絶縁のための距離を確保し易くするための絶縁距離確保用スペースが形成されるように設けられている。
【0080】
ケース蓋5Bには、蓋板材58の外周縁から部分的に外方へ突出する打撃用突起部58cが一体に鋳込み成型されている。
打撃用突起部58cは、蓋板材58の外周部の周辺に形成されたボルト挿通孔58a(ボルト孔に相当する)同士の間から、水平方向外方に向けて突出している。この打撃用突起部58cにも、当該打撃用突起部58cの突出方向に沿うリブ58d(補強リブ56に相当する)が形成されている(
図6,9参照)。
【0081】
打撃用突起部58cは、ケース本体5Aに対してケース蓋5Bを連結ボルト57の締め込みで強く連結し、長い期間開閉を行わなかった場合などに、連結ボルト57を外してもケース蓋5Bがケース本体5Aの上端に張り付いた状態となって、開放し難いことがある。
このとき、打撃用突起部58cを外部から打撃することで、ケース蓋5Bとケース本体5Aとの密着状態を解消し、ケース蓋5Bの開放作業を行い易くなる。打撃用突起部58cを外部から打撃すると、アルミダイカスト製品であるため、打撃の程度によっては、多少の変形や損傷を与える可能性もあるが、打撃用突起部58c以外の外装ケース5の主要部品であるケース蓋5B部分には、変形や損傷を与える虞は少なくて済む。
【0082】
また、打撃用突起部58cを外部から打撃することによるケース蓋5Bへの密着解消作用を有効に発揮させるためには、ケース蓋5Bと周壁部55の上端部との嵌合箇所が、次のように構成されているとよい。つまり、ケース蓋5Bの外周辺部分に形成される返し部58bの内周面と、周壁部55の上端部の外周面との間には、
図12~
図14に示すように、僅かでも水平方向の隙間が存在するように、返し部58bの内周面が周壁部55の上端部の外周面から離間し得る大きさに設定されているのが望ましい。
【0083】
〔別実施形態〕
以下に、別実施形態を示す。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の範囲は、これらの実施形態の内容に限定されるものではない。
【0084】
(1)上述した実施形態においては、外装ケース5がアルミダイカスト製品で構成されたものを例示したが、必ずしもアルミダイカスト製品である必要はなく、例えば鋳鉄製品であったり、他の素材で構成されたものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0085】
(2)上述した実施形態では、外装ケース5内にインバータ回路として二枚の基板60を納めた構造のものを例示したが、基板60の枚数は、二枚に限らず、一枚だけのものでも、三枚以上のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0086】
(3)上述した実施形態では、外装ケース5が、矩形箱状のケース本体5Aと、矩形板状のケース蓋5Bで構成された構造のものを例示したが、外装ケース5の形状としては、矩形状のものに限らず、各種のものを採用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0087】
(4)上述した実施形態では、ケース本体5Aの周壁部55、及び底板部50の全体に格子状の補強リブ56を形成した構造のものを例示したが、必ずしも、この構造である必要はなく、補強リブ56がケース本体5Aの周壁部55、及び底板部50のうちの一部のみに形成されたものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0088】
(5)上述した実施形態では、ケース本体5Aの周壁部55、及び底板部50の全体に、同様な格子状の補強リブ56を形成した構造のものを例示したが、必ずしも、この構造である必要はなく、例えば、左右両側の周壁部55では縦リブ55aが形成され、前後の周壁部55では横リブ55bが形成され、底板部50の下面には前後リブ50aが形成されているなど、適宜の組み合わせで補強リブ56を形成してもよい。
また、補強リブ56の延出方向は、上下や、水平方向、あるいは、前後や左右方向に限らず、対角方向や任意の方向に向けるなど、適宜設定することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0089】
(6)上述した実施形態では、補強リブ56として、周壁部55上端の外周縁などの基準となる壁面から凹入する方向への凹入部55cを形成することによって現れた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。例えば、周壁部55上端の外周縁などの基準となる壁面から横外方へ突出する補強リブ56を備えたものであってもよい。
また、外装ケース5として、補強リブ56が存在していない壁面を一部に備える構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0090】
(7)上述した実施形態では、蓋板材58の下面に形成される補強リブ56として、蓋板材58の対角方向に沿う斜め格子状のリブ59a,59bを設けた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。例えば、対角方向ではなく、蓋板材58の周辺に沿う前後方向と左右方向とが交差する格子状の補強リブ56であってもよい。また、格子状ではなく、蓋板材58の対角方向に沿う斜め方向の補強リブ56であったり、蓋板材58の周辺に沿う前後方向の補強リブ56であったり、蓋板材58の周辺に沿う左右方向の補強リブ56であったり、してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0091】
(8)上述した実施形態では、補強リブ56を蓋板材58の下面にだけ形成した構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。例えば、補強リブ56を蓋板材58の上面にだけ形成したもの、あるいは、補強リブ56を蓋板材58の下面と上面の両方に形成したもの、など適宜の構造のものを採用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0092】
(9)上述した実施形態では、基板止め部として用いられる複数の突出台座53のうち、上方への突出高さの高い突出台座53同士をつなぐ連結リブ54を用いた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではなく、例えば、突出高さの低い突出台座53同士を連結する、あるいは高いものと低いものとをつなぐものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、トラクタだけではなく、コンバイン、田植機、建設作業機等の種々の電動作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
2 機体フレーム
4 バッテリ
5 外装ケース
5A ケース本体
5B ケース蓋
6 インバータ回路
8 クッション材(ガスケット)
10,11 走行装置
14 インバータ
50 底板部
50a,50b 格子状のリブ
51 第一基板止め部(基板止め部)
52 第二基板止め部(基板止め部)
53 突出台座
54 連結リブ
55 周壁部
55a 縦リブ
55d ネジ孔
56 補強リブ
58a 連結孔
59a,59b 斜め格子状のリブ
60 基板
M 電動モータ
S1 領域