(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】IL2アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C12N 15/26 20060101AFI20240906BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240906BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240906BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20240906BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240906BHJP
C07K 14/79 20060101ALI20240906BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240906BHJP
C12N 15/14 20060101ALI20240906BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240906BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240906BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240906BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240906BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240906BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240906BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240906BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240906BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C12N15/26
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C07K14/765
C07K16/00
C07K14/79
C12N15/13
C12N15/14
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/20
A61K48/00
A61K35/12
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/7088
(21)【出願番号】P 2021503723
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019069541
(87)【国際公開番号】W WO2020020783
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/070068
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】フォルメール, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】クランツ, レナ マレーン
(72)【発明者】
【氏名】フェラーマイヤー-コップフ, ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ミューク, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジーゼケ, フリードリケ
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン, ボード
(72)【発明者】
【氏名】ウィッツェル, ソニヤ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/091003(WO,A1)
【文献】特表2014-506793(JP,A)
【文献】特表2007-528728(JP,A)
【文献】特表2017-518361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 14/00
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン-2(IL2)のムテインを含むポリペプチドであって、前記ヒトIL2が、
(i)IL2Rαβγに対する親和性を低下させる、配列番号17に示す、ヒトIL2のアミノ酸配列
の43位および61位
、または
(ii)それぞれ配列番号17に示す、ヒトIL2のアミノ酸配列の、IL2Rαβγに対する親和性を低下させる43位および61位、ならびに、Q74、L80、R81、L85、I86およびI92からなる群より選択されるIL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上の位置
からなる位置で置換されており、43位での前記置換はK43Eであり61位での前記置換はE61Kである、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、制御性T細胞よりもエフェクタT細胞を選択的に活性化する、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
IL2Rβγに対する親和性を増強する前記1つ以上のアミノ酸置換は、74R、74H、74N、74S、80F、81D、85V、86V、および92Fより選択される、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
当該ポリペプチドが、80F、81D、85V、86V、92Fの置換のセットを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記置換されたIL2に融合した前記IL2に対して異種であるアミノ酸配列をさらに含む延長薬物動態(PK)IL2である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記IL2に対して異種であるアミノ酸配列が、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン
およびFn
3からなる群より選択される、請求項
5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、請求項
6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項
6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
RNAである、請求項
9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項
9または
10に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項
9もしくは
10に記載のポリヌクレオチド、または請求項
11に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項13】
a.請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求
9もしくは
10に記載のポリヌクレオチド、請求項
11に記載の宿主細胞、または請求項
12に記載の医薬組成物
を含む医薬製剤。
【請求項14】
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
をさらに含む、請求項
13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
各成分a.およびb.を別々の容器内に含む、請求項
14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
医薬組成物である、請求項
13または
14に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記抗原が腫瘍関連抗原である、癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含む、請求項
14に記載の医薬製剤。
【請求項18】
医薬用途のための、請求項
13~
17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的治療を含む、請求項
18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための、請求項
14に記載の医薬製剤
であって、前記癌が腫瘍関連抗原を発現している、医薬製剤。
【請求項21】
前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、請求項
17または
20に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-2(IL2)の変異体に関する。特に、本発明は、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドに関し、ヒトIL2またはその機能的変異体は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の少なくとも酸性または塩基性アミノ酸残基を有する位置で置換されている。一実施形態では、置換は、IL2Rαβγに対する親和性を、好ましくはβγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性よりも大幅に低下させる。一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞よりもエフェクタT細胞を活性化する。本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞、前記ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは宿主細胞を含む医薬組成物、前記ポリペプチド、ポリヌクレオチド、宿主細胞または医薬組成物を使用する治療的または予防的治療方法、ならびに前記ポリペプチド、ポリヌクレオチド、宿主細胞または医薬組成物を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、病原体関連疾患だけでなく癌、自己免疫、アレルギーにおいても重要な役割を果たす。T細胞およびNK細胞は、抗腫瘍免疫応答の重要なメディエータである。CD8+T細胞およびNK細胞は、腫瘍細胞を直接溶解することができる。一方、CD4+T細胞は、CD8+T細胞およびNK細胞を含む様々な免疫サブセットの腫瘍への流入を媒介することができる。CD4+T細胞は、樹状細胞(DC)が抗腫瘍CD8+T細胞応答をプライミングするのを許可することができ、IFNγを介したMHCの上方制御と増殖阻害によって腫瘍細胞に直接作用することができる。CD8+およびCD4+腫瘍特異的T細胞応答は、ワクチン接種またはT細胞の養子移入によって誘導することができる。mRNAに基づくワクチンプラットフォームの文脈において、mRNAは、免疫刺激のための追加のアジュバントを必要とせずに、リポソーム製剤(RNA‐リポプレックス、RNA-LPX)によって二次リンパ器官に位置する抗原提示細胞に送達され得る(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016))。
【0003】
サイトカインは免疫において重要な役割を果たす。例えば、インターロイキン‐2(IL2)は強力な免疫刺激因子であり、T細胞、B細胞、単球およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む免疫系の多様な細胞を活性化する。IL2は、T細胞およびNK細胞の分化、増殖、生存およびエフェクタ機能を支持することが公知であり(Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003))、何十年にもわたって後期悪性黒色腫の治療において使用されてきた(Maas,R.A.,Dullens,H.F.&Den Otter,W.Cancer Immunol.Immunother.36,141-8(1993))。したがって、T細胞ワクチンまたは(ナイーブもしくはT細胞受容体トランスジェニックまたはキメラ抗原受容体トランスジェニック)T細胞もしくはNK細胞の養子移入などの免疫療法は、IL2のようなサイトカインの同時投与から恩恵を受けることができる。しかしながら、組換えIL2の1つの難点は、その短い血漿半減期である(Lotze,MT et al.JAMA 1986,256,3117-24.;West,W.H.et al.N.Engl.J.Med.316,898-905(1987))。これにより、大量のIL2を頻繁に注入する必要が生じ、血管漏出症候群(VLS)などの重篤な副作用につながる(Rosenberg,S.A.et al.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987))。VLSは、肺と肝臓に血管内液の蓄積をもたらし、肺水腫および肝障害を生じさせる。最近まで、VLSはIL2活性化NK細胞からの炎症性サイトカインの放出によって引き起こされると考えられていた。しかし、最近の報告では、VLSの原因として、IL2が肺内皮細胞に直接結合することが指摘されている(Krieg et al,PNAS USA 107(26)11906-11911(2010))。IL2の2番目の難点は、制御性T細胞(Treg)を刺激するその固有の能力である。Tregは、抗腫瘍エフェクタT細胞およびNK細胞の機能を抑制することができるため、癌患者の生存率の低下と相関する(Nishikawa,H.&Sakaguchi.Curr.Opin.Immunol.27,1-7(2014))。IL2は、高親和性および中親和性型として存在するIL2受容体を介してシグナル伝達する。高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)は、CD25(IL2Rα)、CD122(IL2Rβ)およびCD132(IL2Rγ)で構成され、Tregならびに活性化CD4+およびCD8+T細胞で発現される。Tregの活性化は免疫抑制を増悪させ、意図される治療応答を潜在的に損ない得る。中親和性受容体(IL2Rβγ)はCD25を欠いており、ナイーブT細胞とメモリT細胞およびNK細胞に多く見られる。その結果、IL2は、CD25を発現するTreg(Todd,J.A.et al.PLoS Med.13,e1002139(2016))ならびに活性化CD4+およびCD8+T細胞を選択的に刺激する。さらに、ナイーブT細胞とメモリT細胞およびNK細胞を活性化するには高用量のIL2が必要である。CD25発現細胞に対する選択性を失うような方法でIL2を改変し、それによってナイーブT細胞とメモリT細胞およびNK細胞の刺激能を相対的に増加させる試みは、その抗腫瘍能を改善することが示された(Arenas-Ramirez,N.et al.Sci.Transl.Med.8,1-13(2016))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015)
【文献】Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)
【文献】Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003)
【文献】Maas,R.A.,Dullens,H.F.&Den Otter,W.Cancer Immunol.Immunother.36,141-8(1993)
【文献】Lotze,MT et al.JAMA 1986,256,3117-24
【文献】West,W.H.et al.N.Engl.J.Med.316,898-905(1987)
【文献】Rosenberg,S.A.et al.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987)
【文献】Krieg et al,PNAS USA 107(26)11906-11911(2010)
【文献】Nishikawa,H.&Sakaguchi.Curr.Opin.Immunol.27,1-7(2014)
【文献】Todd,J.A.et al.PLoS Med.13,e1002139(2016)
【文献】Arenas-Ramirez,N.et al.Sci.Transl.Med.8,1-13(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワクチン、特に癌ワクチン、および他の免疫療法、特に癌免疫療法、例えば(ナイーブもしくはT細胞受容体トランスジェニックまたはキメラ抗原受容体トランスジェニック)T細胞およびNK細胞の養子移入の有効性を高めるための新しい戦略が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明人は、高親和性IL2受容体IL2Rαβγを発現する細胞と比較して、中親和性IL2受容体IL2Rβγを発現する細胞を選択的に活性化するヒトIL2の変異体を発見した。
【0007】
IL2の結合表面上の特異的結合残基の適切な修飾によるIL2とIL2Rαとの相互作用の破壊は、IL2Rαβγを発現する細胞への有効な結合(したがって活性化)を妨げると仮定された。しかし、IL2Rβγを発現している細胞では、細胞への結合が依然として起こる。制御性T細胞上の高親和性IL2受容体よりも、メモリT細胞、ナイーブT細胞およびエフェクタT細胞などの特定のT細胞ならびにNK細胞上の中親和性IL2受容体を選択的に活性化できるIL2変異体は、野生型IL2よりも改善された治療指数と減少した毒性プロフィールを有すると予想される。改善された治療指数を有するIL2変異体は、免疫系の刺激を必要とする障害の治療、例えば癌の治療(直接および/または補助療法として)における使用範囲が有意に拡大する。特に、IL2変異体RNAの投与は、複数のT細胞およびNK細胞に基づく(癌)免疫療法の治療効果を高めるための有望なアプローチである。
【0008】
本開示は、新規IL2変異体を提供する。具体的には、CD25結合に影響を及ぼす変異(「mutCD25」)を含み、任意でIL2Rβγ結合を増強する変異(「mutβγ」)をさらに含み、それによってTreg増殖を減少させ、エフェクタT細胞およびNK細胞の刺激を増加させるIL2の変異体が記載される。インビトロで、mRNAにコードされたIL2 mutCD25変異体は、野生型IL2よりも弱いIL2Rαβγ陽性T細胞の増殖を誘導し、CD25への結合の減少を明らかにした。mutCD25変異を含まないmutβγ変異体は、すべてのT細胞を増殖させる効力を強力に増加させたが、野生型IL2と比較してTregの選択的な増殖も増加させた。重要な点として、mutCD25とmutβγの変異の組合せは、CD8+T細胞およびFoxP3-CD4+T細胞を増殖させる効果を維持しながら、IL2を介したTreg増殖の大幅な減少をもたらした。インビボでは、全身アベイラビリティのためにマウスの肝臓を標的とする、IL2 mutCD25変異体をコードするナノ粒子製剤化mRNAは、Tregと比較してRNA-LPXワクチン接種によって誘導されるエフェクタT細胞応答を選択的にまたはもっぱら増強した。mutCD25とmutβγの変異の組合せは、mutCD25 IL2変異体の効力をさらに増強し、野生型IL2と比較して有意に少ないTreg増殖および高いCD8対Treg比を有する抗原特異的T細胞の選択的な増殖をもたらした。
【0009】
一実施形態では、ヘテロトリマーIL2受容体複合体、IL2Rαβγのアルファ(α)サブユニットと接触するIL2の領域にアミノ酸置換を有し、ヘテロトリマーに結合して活性化するその能力を低下させる(本明細書では「mutCD25」変異とも称される)IL2変異体が本明細書に記載される。IL2Rαβγ複合体は、制御性T細胞(Treg)上で構成的に発現される。したがって、本明細書に記載のIL2置換は、IL2Rαβγに対する親和性を、ナイーブT細胞とメモリT細胞およびNK細胞上に優勢な受容体複合体であるIL2Rβγに対する親和性よりも大幅に低下させる。インビボで本明細書に記載のIL2変異体を使用する治療は、腫瘍微小環境においてTregよりもCD8 T細胞などのT細胞の活性化に有利に働いて、抗腫瘍効果を提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL2)またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドに関し、ヒトIL2またはその機能的変異体は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の少なくとも酸性または塩基性アミノ酸残基を有する位置で置換されており、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基(グルタミン酸(Glu/E)またはアスパラギン酸(Asp/D)、特にグルタミン酸)である場合、置換は塩基性アミノ酸残基(リジン(Lys/K)またはアルギニン(Arg/R)、特にリジン)によるものであり、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基(リジン(Lys/K)またはアルギニン(Arg/R)、特にリジン)である場合、置換は酸性アミノ酸残基(グルタミン酸(Glu/E)またはアスパラギン酸(Asp/D)、特にグルタミン酸)によるものである。異なる実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の酸性または塩基性アミノ酸残基を有する1つ以上、例えば2つ以上または3つ以上、例えば2、3、4、5、6、7または8つのそのような位置で置換されている。
【0011】
一実施形態では、野生型ヒトIL2は、配列番号17に従うアミノ酸配列を有する。
【0012】
一実施形態では、野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基は、IL2Rαβγのアルファサブユニットの塩基性アミノ酸残基と接触する。一実施形態では、野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基は、IL2Rαβγのアルファサブユニットの酸性アミノ酸残基と接触する。
【0013】
一実施形態では、置換は、IL2Rαβγに対する親和性を低下させる。一実施形態では、置換は、IL2Rαβγに対する親和性を、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性よりも大幅に低下させる。
【0014】
一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞(例えばCD4+CD25+FoxP3+T細胞)よりもエフェクタT細胞(例えばCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞、例えばCD25-および/またはFoxP3-であるCD4+T細胞)を選択的に活性化する。
【0015】
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位(リジン)、43位(リジン)、61位(グルタミン酸)および62位(グルタミン酸)の少なくとも1つで置換されている。
【0016】
異なる実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、少なくとも以下の位置で置換されている:
-35位、
-43位、
-61位、
-62位、
-35位および43位、
-35位および61位、
-35位および62位、
-43位および61位、
-43位および62位、
-61位および62位、
-35位、43位および61位、
-35位、43位および62位、
-35位、61位および62位、
-43位、61位および62位、または
-35位、43位、61位および62位。
【0017】
一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0018】
一実施形態では、35位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。
【0019】
一実施形態では、43位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。
【0020】
一実施形態では、61位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。
【0021】
一実施形態では、62位が置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0022】
一実施形態では、43位および61位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0023】
一実施形態では、35位、43位および61位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換され、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0024】
一実施形態では、61位および62位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換され、62位がリジンで置換されている。
【0025】
一態様では、本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL2)またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドに関し、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位(リジン)、43位(リジン)、61位(グルタミン酸)および62位(グルタミン酸)の少なくとも1つにおいて置換されている。一実施形態では、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基である場合、置換は塩基性アミノ酸残基によるものであり、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基である場合、置換は酸性アミノ酸残基によるものである。
【0026】
異なる実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、少なくとも以下の位置で置換されている:
-35位、
-43位、
-61位、
-62位、
-35位および43位、
-35位および61位、
-35位および62位、
-43位および61位、
-43位および62位、
-61位および62位、
-35位、43位および61位、
-35位、43位および62位、
-35位、61位および62位、
-43位、61位および62位、または
-35位、43位、61位および62位。
【0027】
一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0028】
一実施形態では、35位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。
【0029】
一実施形態では、43位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。
【0030】
一実施形態では、61位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。
【0031】
一実施形態では、62位が置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0032】
一実施形態では、43位および61位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0033】
一実施形態では、35位、43位および61位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換され、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0034】
一実施形態では、61位および62位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換され、62位がリジンで置換されている。
【0035】
一実施形態では、野生型ヒトIL2は、配列番号17に従うアミノ酸配列を有する。
【0036】
一実施形態では、置換は、IL2Rαβγに対する親和性を低下させる。一実施形態では、置換は、IL2Rαβγに対する親和性を、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性よりも大幅に低下させる。
【0037】
一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞(例えばCD4+CD25+FoxP3+T細胞)よりもエフェクタT細胞(例えばCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞、例えばCD25-および/またはFoxP3-であるCD4+T細胞)を選択的に活性化する。
【0038】
一実施形態では、上記の置換されたIL2またはその機能的変異体(IL2ムテイン)は、他の非置換残基では野生型IL2と同一のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、上記のIL2ムテインは、野生型ヒトIL2内の1つ以上の部位または他の残基においてアミノ酸置換などのアミノ酸修飾を有する。一実施形態では、そのようなアミノ酸置換は、野生型IL2と比較した場合、IL2Rβγに対する相対的に増加した親和性をもたらす(本明細書では「mutβγ」変異とも称される)。そのような変異体は、強力なIL2シグナル伝達アゴニストである。一実施形態では、そのようなアミノ酸置換は、IL2Rβおよび/またはIL2Rγと接触するアミノ酸残基に存する。
【0039】
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けられた、24位、65位、74位、80位、81位、85位、86位、89位、92位、および93位の少なくとも1つで置換されている。置換されたアミノ酸残基(1つまたは複数)は、必ずというわけではないが、保存的置換であり得る。例えば、変異は、I24V、P65H、Q74R、Q74H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D、L85V、I86V、I89V、I92F、V93Iであり得る。
【0040】
一実施形態では、IL2ムテインは、以下のアミノ酸置換のセットを含む:80F/81D/85V/86V/92F。IL2ムテインは、アミノ酸置換42Aをさらに含み得る。IL2ムテインは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上をさらに含み得る:24V、65H、74R、74H、74N、74S、89V、93I。
【0041】
いくつかの実施形態では、IL2ムテインは、以下からなる群より選択されるアミノ酸置換のセットを含む:
(i)74N、80F、81D、85V、86V、89V、92F;
(ii)74H、80F、81D、85V、86V、92F;
(iii)74S、80F、81D、85V、86V、92F;
(iv)74N、80F、81D、85V、86V、92F;
(v)80F、81D、85V、86V、92F;
(vi)80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I;
(vii)18R、22E、80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I、126T;
(viii)18R、22E、74S、80F、81T、85V、86V、89V、92F、93I、126T。
【0042】
一態様では、本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL2)またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドに関し、ヒトIL2またはその機能的変異体は、少なくとも(i)IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換(本明細書では「mutCD25」変異とも称される)および(i)IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換(本明細書では「mutβγ」変異とも称される)を含む。
【0043】
一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞(例えばCD4+CD25+FoxP3+T細胞)よりもエフェクタT細胞(例えばCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞、例えばCD25-および/またはFoxP3-であるCD4+T細胞)を選択的に活性化する。
【0044】
一実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、IL2Rαと接触するIL2またはその機能的変異体のアミノ酸残基に存する。一実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、IL2Rαβγに対する親和性を、IL2Rβγに対する親和性よりも大幅に低下させる。
【0045】
一実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、K35、T37、R38、T41、F42、K43、F44、Y45、E61、E62、K64、P65、E68、L72、およびY107からなる群より選択されるIL2またはその機能的変異体の1つ以上の位置における置換を含む。
【0046】
一実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、IL2Rαβγのアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の酸性または塩基性アミノ酸残基を有するIL2またはその機能的変異体の1つ以上の位置に存し、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基(グルタミン酸(Glu/E)またはアスパラギン酸(Asp/D)、特にグルタミン酸)である場合、置換は塩基性アミノ酸残基(リジン(Lys/K)またはアルギニン(Arg/R)、特にリジン)によるものであり、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基(リジン(Lys/K)またはアルギニン(Arg/R)、特にリジン)である場合、置換は酸性アミノ酸残基(グルタミン酸(Glu/E)またはアスパラギン酸(Asp/D)、特にグルタミン酸)によるものである。異なる実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、IL2Rαβγのアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の酸性または塩基性アミノ酸残基を有する1つ以上、例えば2つ以上または3つ以上、例えば2、3、4、5、6、7または8つのそのような位置で置換されている。
【0047】
一実施形態では、野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基は、IL2Rαβγのアルファサブユニットの塩基性アミノ酸残基と接触する。一実施形態では、野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基は、IL2Rαβγのアルファサブユニットの酸性アミノ酸残基と接触する。
【0048】
一実施形態では、野生型ヒトIL2は、配列番号17に従うアミノ酸配列を有する。
【0049】
一実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位(リジン)、43位(リジン)、61位(グルタミン酸)および62位(グルタミン酸)の少なくとも1つにおける置換を含む。
【0050】
異なる実施形態では、IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、以下からなる群より選択される、IL2またはその機能的変異体の1つ以上の位置に存する:
-35位、
-43位、
-61位、
-62位、
-35位および43位、
-35位および61位、
-35位および62位、
-43位および61位、
-43位および62位、
-61位および62位、
-35位、43位および61位、
-35位、43位および62位、
-35位、61位および62位、
-43位、61位および62位、または
-35位、43位、61位および62位。
【0051】
一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0052】
一実施形態では、35位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。
【0053】
一実施形態では、43位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。
【0054】
一実施形態では、61位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。
【0055】
一実施形態では、62位が置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
【0056】
一実施形態では、43位および61位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0057】
一実施形態では、35位、43位および61位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換され、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
【0058】
一実施形態では、61位および62位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換され、62位がリジンで置換されている。
【0059】
一実施形態では、IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換は、IL2Rβおよび/またはIL2Rγと接触するIL2のアミノ酸残基に存する。
【0060】
一実施形態では、IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換は、K9、L12、Q13、E15、H16、D20、Q74、L80、R81、D84、L85、I86、N88、I92、L94、およびE95からなる群より選択されるIL2の1つ以上の位置における置換を含む。
【0061】
一実施形態では、IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、24位、65位、74位、80位、81位、85位、86位、89位、92位、および93位の少なくとも1つにおける置換を含む。置換されたアミノ酸残基(1つまたは複数)は、必ずというわけではないが、保存的置換であり得る。例えば、変異は、I24V、P65H、Q74R、Q74H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D、L85V、I86V、I89V、I92F、V93Iであり得る。
【0062】
一実施形態では、IL2ムテインは、以下のアミノ酸置換のセットを含む:80F/81D/85V/86V/92F。IL2ムテインは、アミノ酸置換42Aをさらに含み得る。IL2ムテインは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上をさらに含み得る:24V、65H、74R、74H、74N、74S、89V、93I。
【0063】
いくつかの実施形態では、IL2ムテインは、以下からなる群より選択されるアミノ酸置換のセットを含む:
(i)74N、80F、81D、85V、86V、89V、92F;
(ii)74H、80F、81D、85V、86V、92F;
(iii)74S、80F、81D、85V、86V、92F;
(iv)74N、80F、81D、85V、86V、92F;
(v)80F、81D、85V、86V、92F;
(vi)80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I;
(vii)18R、22E、80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I、126T;
(viii)18R、22E、74S、80F、81T、85V、86V、89V、92F、93I、126T。
【0064】
本明細書に記載のIL2ムテインは、薬物動態修飾基に結合することができ、したがって、「延長薬物動態(PK)IL2」であり得る。
【0065】
一態様では、本発明は、IL2またはIL2ムテインに融合したその機能的変異体に対して異種であるアミノ酸配列をさらに含む延長薬物動態(PK)IL2である、本明細書に記載のポリペプチドに関する。
【0066】
一実施形態では、IL2またはその機能的変異体に対して異種であるアミノ酸配列は、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される。一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
【0067】
一態様では、本発明は、配列表の配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16などの配列番号2~16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0068】
上記のポリペプチドは、本明細書では「IL2変異体ポリペプチド」または単に「IL2変異体」とも称される。
【0069】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。一実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。
【0070】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0071】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む医薬組成物に関する。
【0072】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象を治療する方法に関する。一実施形態では、対象は癌を有する。
【0073】
一実施形態では、対象は、1つ以上の免疫療法を使用して、例えばワクチン接種またはT細胞の養子移入、例えばT細胞ワクチンまたは(ナイーブもしくはT細胞受容体トランスジェニックまたはキメラ抗原受容体トランスジェニック)T細胞もしくはNK細胞の養子移入を使用してさらに治療される。
【0074】
抗原が、それ自体でまたはポリヌクレオチドとして、特に抗原をコードするRNA(例えば、本明細書では「抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質」とも称される、ワクチン接種に使用されるペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)として送達されるワクチンの有効性は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドを同時投与することによって増加させることができ、IL2変異体ポリペプチドは、それ自体でまたはポリヌクレオチド、特にIL2変異体ポリペプチドをコードするRNAとして送達される。ワクチンは、IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAが全身アベイラビリティのために肝臓を標的とする場合に特に有効である。肝細胞は効率的にトランスフェクトすることができ、大量のタンパク質を産生できる。抗原をコードするmRNAは、好ましくは二次リンパ器官を標的とする。さらに、ワクチンは、抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤がさらに投与される場合に特に有効である。
【0075】
一態様では、本発明は、対象に以下のものを投与することを含む、対象において免疫応答を誘導するための方法に関する:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物;および
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0076】
一実施形態では、前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0077】
一実施形態では、対象において免疫応答を誘導するための方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA;および
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA。
【0078】
一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞(例えばCD4+CD25+FoxP3+T細胞)よりもエフェクタT細胞(例えばCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞、例えばCD25-および/またはFoxP3-であるCD4+T細胞)を選択的に活性化する。
【0079】
一実施形態では、方法は、対象における癌を治療または予防するための方法であり、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0080】
一態様では、本発明は、対象に以下のものを投与することを含む、対象における癌を治療または予防するための方法に関する:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物;および
b.対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0081】
一実施形態では、前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0082】
一実施形態では、対象における癌を治療または予防するための方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA;および
b.対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA。
【0083】
一実施形態では、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0084】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に免疫チェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86との間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0085】
一実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA、対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、および任意で免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する。
【0086】
一態様では、本発明は、以下のものを含む医薬製剤に関する:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書の記載の医薬組成物。
【0087】
一実施形態では、医薬製剤は、以下のものをさらに含む:
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0088】
一実施形態では、前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0089】
一実施形態では、医薬製剤は、以下のものを含む:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA;および
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA。
【0090】
医薬製剤の一実施形態では、RNAは、液体形態、固体形態、またはそれらの組合せから選択される形態で存在する。一実施形態では、固体形態は、凍結形態または脱水形態である。一実施形態では、脱水形態は、凍結乾燥形態または噴霧乾燥形態である。
【0091】
一実施形態では、医薬製剤は、免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86との間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0092】
一実施形態では、医薬製剤はキットである。一実施形態では、医薬製剤は医薬組成物である。
【0093】
一実施形態では、医薬製剤は、各成分aおよびbを別々の容器内に含む。
【0094】
一実施形態では、医薬製剤は医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
【0095】
一実施形態では、医薬製剤は、癌を治療または予防するための医薬製剤の使用説明書をさらに含み、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0096】
一態様では、本発明は、医薬用途のための本明細書に記載の医薬製剤に関する。
【0097】
一実施形態では、医薬用途は、疾患または障害の治療的または予防的治療を含む。
【0098】
一態様では、本発明は、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための本明細書に記載の医薬製剤に関し、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0099】
一実施形態では、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0100】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象を治療する方法で使用するための前記ポリペプチド、前記ポリヌクレオチド、前記宿主細胞、または前記医薬組成物に関する。
【0101】
一実施形態では、対象は癌を有する。
【0102】
さらなる態様では、本発明は、対象において免疫応答を誘導するための方法で使用するための本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物に関し、前記方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.前記ポリペプチド、前記ポリヌクレオチド、前記宿主細胞、または前記医薬組成物;および
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0103】
一実施形態では、前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0104】
一実施形態では、対象において免疫応答を誘導するための方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA;および
b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA。
【0105】
一実施形態では、ポリペプチドは、制御性T細胞(例えばCD4+CD25+FoxP3+T細胞)よりもエフェクタT細胞(例えばCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞、例えばCD25-および/またはFoxP3-であるCD4+T細胞)を選択的に活性化する。
【0106】
一実施形態では、方法は、対象における癌を治療または予防するための方法であり、抗原は腫瘍関連抗原である。
【0107】
さらなる態様では、本発明は、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物に関し、前記方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.前記ポリペプチド、前記ポリヌクレオチド、前記宿主細胞、または前記医薬組成物;および
b.対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質、または前記ペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0108】
一実施形態では、前記ペプチドまたはタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドはRNAである。
【0109】
一実施形態では、対象における癌を治療または予防するための方法は、対象に以下のものを投与することを含む:
a.本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA;および
b.対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA。
【0110】
一実施形態では、癌は、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される。
【0111】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象に免疫チェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(i)PD-1とPD-L1、または(ii)CTLA-4とCD80もしくはCD86との間の相互作用を標的とする。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体または抗体断片である。一実施形態では、抗体または抗体断片は、PD-1、PD-L1、またはCTLA-4を標的とする。
【0112】
一実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA、対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、および任意で免疫チェックポイント阻害剤を同時にまたは連続的に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】RNAにコードされたIL2変異体のインビトロ発現とIL2Rβγ結合。1.2×10
6のHEK293T/17細胞を6ウェルプレートに播種し、約80%の集密度に達した後、総量3.25mLのDMEM+10%FBS中、3μg mRNAでリポフェクトした(Lipofectamine MessengerMAX 1μLあたり400ngの複合体化mRNA)。37°C、5%CO
2で20時間インキュベートした後、上清を収集し、その段階希釈液を、ヒト細胞株TF-1_IL2Rβγを発現する中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)と共にインキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assayを使用してATP量で生細胞を定量することによって、3日後に増殖応答を測定した。示されているデータは、n=2の技術的複製物の平均±標準偏差(SD)である。RLU=相対発光単位。
【
図2】IL2 mutCD25変異体のCD25結合。100ngのプレートに結合した組換えヒトCD25(A)またはマウスCD25(B)を、HEK293T/17のリポフェクションからの1:2に希釈したIL2変異体含有上清と共にインキュベートし、結合タンパク質をHRP結合抗ヒト血清アルブミン抗体によって検出した。hAlbのみをコードするmRNAでリポフェクトしたHEK293T/17細胞の上清を陰性対照として使用した。示されているデータは、n=2の技術的複製物の平均±SDである。
【
図3】高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)依存性細胞培養物におけるIL2 mutCD25変異体の生物活性。CD25highマウスT細胞株CTLL-2の増殖応答を示す。細胞をIL2変異体含有上清の段階希釈液と共に3日間インキュベートし、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assayを使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。示されているデータは、EC
50値を計算するための4つのパラメータの対数近似を適用したn=2~3の技術的複製物の平均±SDである。RLU=相対発光単位。
【
図4A】IL2を介した抗原非特異的増殖の増強によって測定したヒトPBMCの様々なT細胞サブセットでのIL2変異体の生物活性。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)およびIL2変異体含有上清の段階希釈液と共に4日間インキュベートした。CD4+T細胞(AとD)、CD8+T細胞(BとE)、およびCD56+NK細胞(CとF)の増殖をフローサイトメトリによって測定した。1例の代表的なドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを使用して計算し、4つのパラメータの対数近似を適用した増殖指数の平均値として示す。エラーバー(SD)は、実験内の変動を示す(1例のドナーからの細胞を使用した3つの複製物)。
【
図4D】IL2を介した抗原非特異的増殖の増強によって測定したヒトPBMCの様々なT細胞サブセットでのIL2変異体の生物活性。CFSE標識PBMCを、最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)およびIL2変異体含有上清の段階希釈液と共に4日間インキュベートした。CD4+T細胞(AとD)、CD8+T細胞(BとE)、およびCD56+NK細胞(CとF)の増殖をフローサイトメトリによって測定した。1例の代表的なドナーからのデータを、FlowJo v10.4ソフトウェアを使用して計算し、4つのパラメータの対数近似を適用した増殖指数の平均値として示す。エラーバー(SD)は、実験内の変動を示す(1例のドナーからの細胞を使用した3つの複製物)。
【
図5】中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)および高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)依存性細胞培養物における様々なIL2変異体の相対的生物活性。(A~B)ヒト細胞株TF-1_IL2Rβγを発現する中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)および(C~D)高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)を発現するマウスT細胞株CTLL-2の増殖応答を示す。細胞培養物を、IL2変異体含有上清の段階希釈液と共に3日間インキュベートし、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assayを使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。示されているデータは、EC
50値を計算するための4つのパラメータの対数近似を適用したn=2~3の技術的複製物の平均±SDである。RLU=相対発光単位
【
図6】STAT5のIL2を介したリン酸化によって測定したヒトPBMCの様々なT細胞サブセットでのIL2変異体の機能的特性。CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞(A)、CD4+CD25-Tエフェクタ細胞およびメモリ細胞(B)、ならびにCD8+細胞傷害性T細胞(C)でのSTAT5リン酸化(pSTAT5)の用量反応曲線。PBMCをIL2変異体含有上清の段階希釈液と共にインキュベートし、続いてSTAT5のリン酸化を様々なT細胞サブセットにおいてフローサイトメトリによって分析した。示されているデータは、EC
50値を計算するための4つのパラメータの対数近似を適用したn=2の技術的複製物の平均±SDである。
【
図7A】インビボでのT細胞ワクチン接種に対するIL2 mutCD25変異体の効果 A、BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)または脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されたhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A6 RNAの漸増用量を静脈内投与した。肝臓重量(B);血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)活性(C);血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性細胞(D)、CD8陽性細胞(E)、CD45陽性細胞(F)、またはCD4 FoxP3 CD25陽性細胞(G);およびCD8 T細胞対Tregの比率(H)を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。I、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+平均の標準誤差(SEM))。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~H)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(I)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図7D】インビボでのT細胞ワクチン接種に対するIL2 mutCD25変異体の効果 A、BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)または脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されたhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A6 RNAの漸増用量を静脈内投与した。肝臓重量(B);血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)活性(C);血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性細胞(D)、CD8陽性細胞(E)、CD45陽性細胞(F)、またはCD4 FoxP3 CD25陽性細胞(G);およびCD8 T細胞対Tregの比率(H)を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。I、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+平均の標準誤差(SEM))。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~H)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(I)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図7G】インビボでのT細胞ワクチン接種に対するIL2 mutCD25変異体の効果 A、BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)または脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されたhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A6 RNAの漸増用量を静脈内投与した。肝臓重量(B);血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)活性(C);血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性細胞(D)、CD8陽性細胞(E)、CD45陽性細胞(F)、またはCD4 FoxP3 CD25陽性細胞(G);およびCD8 T細胞対Tregの比率(H)を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。I、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+平均の標準誤差(SEM))。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~H)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(I)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図7I】インビボでのT細胞ワクチン接種に対するIL2 mutCD25変異体の効果 A、BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)または脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されたhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A6 RNAの漸増用量を静脈内投与した。肝臓重量(B);血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)活性(C);血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性細胞(D)、CD8陽性細胞(E)、CD45陽性細胞(F)、またはCD4 FoxP3 CD25陽性細胞(G);およびCD8 T細胞対Tregの比率(H)を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。I、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+平均の標準誤差(SEM))。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~H)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(I)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図8A】mutβγ変異の追加によるIL2 mutCD25変異体の効果の改善 BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)またはLNPとして製剤化された異なる用量のhAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A4s、hIL2_A6-hAlbおよびhAlb-hIL2_A6s RNAを静脈内投与した。gp70抗原特異的CD8陽性細胞(A)、CD4 FoxP3 CD25陽性細胞(B)およびCD4 CD8陰性CD49b陽性NK細胞(D)の頻度を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。C、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+SEM)。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(A、B、D)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(C)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図8D】mutβγ変異の追加によるIL2 mutCD25変異体の効果の改善 BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内(i.v.)ワクチン接種した。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)またはLNPとして製剤化された異なる用量のhAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A4s、hIL2_A6-hAlbおよびhAlb-hIL2_A6s RNAを静脈内投与した。gp70抗原特異的CD8陽性細胞(A)、CD4 FoxP3 CD25陽性細胞(B)およびCD4 CD8陰性CD49b陽性NK細胞(D)の頻度を示す。点は個々のマウスを表し、線は群平均を表す。C、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+SEM)。統計的有意性は、一元配置分散分析とダネットの多重比較検定(A、B、D)、または二元配置分散分析とそれに続くシダックの多重比較検定(C)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図9A】mutCD25とmutβγの変異を組み合わせたIL2変異体は、野生型IL2およびmutβγ IL2変異体よりも優れている BALB/cマウス(群あたりn=5)に、0日目と7日目に20μgのgp70 RNA-LPXを、3日目と10日目にサイトカインRNA-LNP(図に示されている用量)を静脈内ワクチン接種した。フローサイトメトリによる血液リンパ球の分析(実施例8参照)を7日目と14日目に実施した(A)。B、血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性T細胞数(平均±SEM)。C、CD4 CD25 FoxP3陽性Treg/μl血液(平均±SEM)。D、血液1μlあたりのCD8陽性T細胞数(平均±SEM)。抗原特異的T細胞(E)またはCD8+T細胞(F)対Tregの比率を示す(平均±SEM)。G、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+SEM)。H、CD127陰性KLRG1テトラマーCD8陽性T細胞の平均(±SEM)割合を示す。I、血液1μlあたりのCD49陽性CD4 CD8陰性NK細胞数(平均±SEM)。H、マウスあたりのKLRG1陽性NK細胞の割合を示す(線は群平均を表す)。統計的有意性は、二元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~F、H、I)またはシダック検定(G)、または一元配置分散分析とそれに続くテューキーの多重比較検定(J)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図9E】mutCD25とmutβγの変異を組み合わせたIL2変異体は、野生型IL2およびmutβγ IL2変異体よりも優れている BALB/cマウス(群あたりn=5)に、0日目と7日目に20μgのgp70 RNA-LPXを、3日目と10日目にサイトカインRNA-LNP(図に示されている用量)を静脈内ワクチン接種した。フローサイトメトリによる血液リンパ球の分析(実施例8参照)を7日目と14日目に実施した(A)。B、血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性T細胞数(平均±SEM)。C、CD4 CD25 FoxP3陽性Treg/μl血液(平均±SEM)。D、血液1μlあたりのCD8陽性T細胞数(平均±SEM)。抗原特異的T細胞(E)またはCD8+T細胞(F)対Tregの比率を示す(平均±SEM)。G、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+SEM)。H、CD127陰性KLRG1テトラマーCD8陽性T細胞の平均(±SEM)割合を示す。I、血液1μlあたりのCD49陽性CD4 CD8陰性NK細胞数(平均±SEM)。H、マウスあたりのKLRG1陽性NK細胞の割合を示す(線は群平均を表す)。統計的有意性は、二元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~F、H、I)またはシダック検定(G)、または一元配置分散分析とそれに続くテューキーの多重比較検定(J)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図9H】mutCD25とmutβγの変異を組み合わせたIL2変異体は、野生型IL2およびmutβγ IL2変異体よりも優れている BALB/cマウス(群あたりn=5)に、0日目と7日目に20μgのgp70 RNA-LPXを、3日目と10日目にサイトカインRNA-LNP(図に示されている用量)を静脈内ワクチン接種した。フローサイトメトリによる血液リンパ球の分析(実施例8参照)を7日目と14日目に実施した(A)。B、血液1μlあたりのgp70抗原特異的CD8陽性T細胞数(平均±SEM)。C、CD4 CD25 FoxP3陽性Treg/μl血液(平均±SEM)。D、血液1μlあたりのCD8陽性T細胞数(平均±SEM)。抗原特異的T細胞(E)またはCD8+T細胞(F)対Tregの比率を示す(平均±SEM)。G、処置されたマウスのそれぞれの平均hAlb対照値に対するgp70特異的または非特異的CD8陽性T細胞の倍率変化を示す(平均+SEM)。H、CD127陰性KLRG1テトラマーCD8陽性T細胞の平均(±SEM)割合を示す。I、血液1μlあたりのCD49陽性CD4 CD8陰性NK細胞数(平均±SEM)。H、マウスあたりのKLRG1陽性NK細胞の割合を示す(線は群平均を表す)。統計的有意性は、二元配置分散分析とダネットの多重比較検定(B~F、H、I)またはシダック検定(G)、または一元配置分散分析とそれに続くテューキーの多重比較検定(J)を使用して決定した。すべての分析は両側であり、GraphPad Prism 6を使用して実施した。n.s.:P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図10】mutCD25とmutβγの変異を組み合わせたIL2変異体の投与はCD4+T細胞応答を促進する C57BL/6マウス(群あたりn=7)に、0日目、7日目および14日目に20μgのB16_M30(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))RNA-LPXおよび3μgのhAlb、hAlb-hIL2またはhAlb-hIL2_A4s RNA-LNPを静脈内投与した。19日目に血液リンパ球をフローサイトメトリによって分析した(A)。B16_M30は、CD4+T細胞によって認識されるB16F10腫瘍細胞株のMHCクラスII拘束性ネオエピトープである(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))。hAlb-hIL2_A4sの同時投与のみが、CD4+エフェクタT細胞/非Treg(CD25-FoxP3-CD4+)およびB16_M30特異的テトラマー+CD4+T細胞の数をそれぞれ増加させ(B、C)、hAlb-hIL2は増加させなかった。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本開示を以下で詳細に説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0115】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Koelbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0116】
本開示の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0117】
以下において、本開示の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および実施形態は、本開示を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素と組み合わせた実施形態を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、この説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0118】
「約」という用語はおよそまたはほぼを意味し、本明細書に記載の数値または範囲の文脈において、一実施形態では、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%、または±3%を意味する。
【0119】
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個々に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をより良く説明することを意図しており、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に必須の特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0120】
特に明記されない限り、「含む」という用語は、「含む」によって導入されたリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意に存在し得ることを示すために本文書の文脈で使用される。しかし、「含む」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが本開示の特定の実施形態として企図され、すなわちこの実施形態の目的のためには、「含む」は「からなる」の意味を有すると理解されるべきである。
【0121】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有さなかったことの承認と解釈されるべきではない。
【0122】
以下において、本開示のすべての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。定義されていない用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
定義
【0123】
本明細書で使用される「低減する」、「減少させる」または「阻害する」とは、レベル、例えば結合レベルの、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少または全体的な減少を生じさせる能力を意味する。
【0124】
「増加させる」または「増強する」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、またはさらにそれ以上の増加または増強に関する。
【0125】
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、約2以上、約3以上、約4以上、約6以上、約8以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上、および最大約50、約100または約150までの、ペプチド結合によって互いに連結された連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約50アミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では通常、同義語として使用される。
【0126】
「治療用タンパク質」は、治療有効量で対象に提供された場合、対象の状態または病状に対してプラスのまたは有利な作用を及ぼす。一実施形態では、治療用タンパク質は治癒的または緩和的特性を有し、疾患または障害の1つ以上の症状を改善する、緩和する、和らげる、逆転させる、発症を遅延させる、または重症度を軽減するために投与され得る。治療用タンパク質は予防特性を有し、疾患の発症を遅延させるため、またはそのような疾患もしくは病的状態の重症度を軽減するために使用され得る。「治療用タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチド全体を含み、治療的に活性なその断片を指すこともできる。それはまた、タンパク質の治療的に活性な変異体を含み得る。治療的に活性なタンパク質の例には、サイトカインが含まれるが、これに限定されない。
【0127】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列である配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えばオープンリーディングフレームの3'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得られる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始させるように働く開始コドンを含む限り、例えばオープンリーディングフレームの5'末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得られる。アミノ酸配列の断片は、例えばアミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくはアミノ酸配列からの少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0128】
本明細書における「変異体」または「変異体タンパク質」または「変異体ポリペプチド」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって野生型タンパク質とは異なるタンパク質を意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するもしくは野生型(WT)ポリペプチドであり得るか、または野生型ポリペプチドの改変型であり得る。好ましくは、変異体ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば親と比較して1~約20のアミノ酸修飾、好ましくは1~約10または1~約5のアミノ酸修飾を有する。
【0129】
本明細書で使用される「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、または「前駆体タンパク質」とは、その後修飾されて変異体を生じる未修飾ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、野生型ポリペプチド、または野生型ポリペプチドの変異体もしくは操作型であり得る。
【0130】
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界に見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型タンパク質またはポリペプチドは、意図的に修飾されていないアミノ酸配列を有する。
【0131】
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、すべてのスプライス変異体、翻訳後修飾変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体および種ホモログ、特に細胞によって天然に発現されるものを含む。
【0132】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置き換えることが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。一実施形態では、保存的アミノ酸置換には、以下の群内の置換が含まれる:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リジン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
【0133】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸について与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最適な配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0134】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0135】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことが意図されており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違はそれらの全長にわたってランダムに分布している。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手動のほかに、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0136】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0137】
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98、または少なくとも99%の同一性を示す。
【0138】
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、当業者によって、例えば組換えDNA操作によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
【0139】
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片または変異体は、好ましくは「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価の任意の断片または変異体に関する。サイトカインに関して、1つの特定の機能は、断片もしくは変異体が由来するアミノ酸配列によって、および/または断片もしくは変異体が由来するアミノ酸配列が結合する受容体(1つまたは複数)への結合によって示される1つ以上の免疫調節活性である。
【0140】
指定されたアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。
【0141】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では広く解釈されるように使用され、修飾されたDNAおよびRNAを含む、DNAおよびRNAを含む。
【0142】
本開示では、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基のすべてまたは大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されることなく、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端(1つまたは複数)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書ではまた、RNA中のヌクレオチドは、化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることが企図される。本開示では、これらの改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と見なされる。
【0143】
本開示の特定の実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは一般に、5'非翻訳領域(5'-UTR)、ペプチドコード領域および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。一実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写によって生成され、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を指す。
【0144】
一実施形態では、RNAはインビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
【0145】
一実施形態では、RNAは修飾リボヌクレオチドを有し得る。修飾リボヌクレオチドの例には、限定されることなく、5-メチルシチジン、プソイドウリジンおよび/または1-メチルプソイドウリジンが含まれる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは5'キャップを含む。一実施形態では、本開示のRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。一実施形態では、RNAは5'キャップ類似体によって修飾され得る。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められる構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、5'キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写によって達成され得るか、またはキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに付加され得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5'-UTRおよび/または3'-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5'側(上流)(5'-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3'側(下流)(3'-UTR)に存在し得る。5'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の、5'末端に位置する。5'-UTRは、5'キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5'キャップに直接隣接している。3'-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終結コドンの下流の、3'末端に位置するが、「3'-UTR」という用語は、好ましくはポリ(A)尾部を含まない。したがって、3'-UTRは、ポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)配列に直接隣接している。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは3'-ポリ(A)配列を含む。「ポリ(A)配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関する。本開示によれば、一実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約80、または少なくとも約100、および最大約500、最大約400、最大約300、最大約200、または最大約150個までのAヌクレオチド、特に約120個のAヌクレオチドを含む。
【0149】
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
【0150】
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖が、ペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列の集合体に指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0151】
本開示によれば、「RNAがコードする」という用語は、RNAが、標的組織の細胞内などの適切な環境に存在する場合、翻訳過程中にそれがコードするペプチドまたはタンパク質を産生するようにアミノ酸の集合体に指令できることを意味する。一実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質の翻訳を可能にする細胞翻訳機構と相互作用することができる。細胞は、コードされたペプチドもしくはタンパク質を細胞内で(例えば細胞質内および/もしくは核内で)産生し得るか、コードされたペプチドもしくはタンパク質を分泌し得るか、またはそれを表面上で産生し得る。
【0152】
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
【0153】
本明細書で使用される場合、「半減期」は、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の血清または血漿濃度が、例えば分解および/または天然の機構によるクリアランスもしくは隔離のために、インビボで50%減少するのに要する時間を指す。本明細書での使用に適した延長PKインターロイキン(IL)は、インビボで安定化されており、その半減期は、例えば血清アルブミン(例えばHSAまたはMSA)への融合によって増加し、分解および/またはクリアランスもしくは隔離に抵抗する。半減期は、薬物動態分析などによる、それ自体公知の任意の方法で決定することができる。適切な技術は当業者に明らかであり、例えば一般に、適切な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適切に投与する工程;前記対象から定期的な間隔で血液試料または他の試料を収集する工程;前記血液試料中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定する工程;およびこのようにして得られたデータ(のプロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する工程を含み得る。さらなる詳細は、例えばKenneth,A.et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacistsなどの標準的なハンドブックおよびPeters et al.,Pharmacokinetic Analysis:A Practical Approach(1996)に提供されている。Gibaldi,M.et al.,Pharmacokinetics,2nd Rev.Edition,Marcel Dekker(1982)も参照されたい。
【0154】
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要である小さなタンパク質(約5~20kDa)のカテゴリである。サイトカインの放出は、それらの周りの細胞の挙動に影響を及ぼす。サイトカインは、免疫調節剤として自己分泌シグナル伝達、パラ分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれるが、一般にホルモンまたは成長因子は含まれない(用語が一部重複しているにもかかわらず)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球およびマスト細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞および様々な間質細胞を含む、幅広い細胞によって産生される。所与のサイトカインは、複数の種類の細胞によって産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系において特に重要である;サイトカインは体液性免疫応答と細胞性免疫応答のバランスを調整し、特定の細胞集団の成熟、成長および応答性を調節する。一部のサイトカインは、他のサイトカインの作用を複雑な方法で増強または阻害する。
【0155】
インターロイキン-2(IL2)は、抗原活性化T細胞の増殖を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞を刺激するサイトカインである。IL2の生物学的活性は、細胞膜にまたがる3つのポリペプチドサブユニットのマルチサブユニットIL2受容体複合体(IL2R)を介して媒介される:p55(IL2Rα、アルファサブユニット、ヒトではCD25としても知られる)、p75(IL2Rβ、ベータサブユニット、ヒトではCD122としても知られる)およびp64(IL2Rγ、ガンマサブユニット、ヒトではCD132としても知られる)。IL2に対するT細胞応答は、(1)IL2の濃度;(2)細胞表面上のIL2R分子の数;および(3)IL2が占有するIL2Rの数(すなわちIL2とIL2Rの間の結合相互作用の親和性)を含む様々な因子に依存する(Smith,「Cell Growth Signal Transduction is Quantal」In Receptor Activation by Antigens,Cytokines,Hormones,and Growth Factors 766:263-271,1995))。IL2:IL2R複合体はリガンド結合時に内在化され、様々な成分が異なる選別を受ける。静脈内(i.v.)ボーラスとして投与された場合、IL2は急速な全身クリアランスを有する(半減期が12.9分の初期クリアランス期、続いて半減期が85分のより緩やかなクリアランス期)(Konrad et al.,Cancer Res.50:2009-2017,1990)。
【0156】
真核細胞では、ヒトIL2は153アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから20アミノ酸が除去されて成熟した分泌型IL2が生成される。組換えヒトIL2は、大腸菌(E.coli)、昆虫細胞および哺乳動物COS細胞において産生されている。
【0157】
癌患者におけるIL2の全身投与の結果は理想からほど遠い。患者の15~20%は高用量のIL2に客観的に応答するが、大多数は応答せず、多くが、吐き気、錯乱、低血圧、および敗血症性ショックを含む重篤で生命を脅かす副作用を経験する。用量を減らし、投与レジメンを調整することによって血清濃度を低下させる試みがなされており、毒性は低くなるが、そのような治療は有効性も低かった。
【0158】
本開示によれば、特定の実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、薬物動態学的修飾基を含む。一実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体部分またはムテインは、薬物動態学的修飾基に結合される。以下、「延長薬物動態(PK)IL2」と称される、得られた分子は、遊離IL2と比較して延長された循環半減期を有する。延長PK IL2の延長された循環半減期は、インビボで血清IL2濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的に、T細胞を含む多くの種類の免疫細胞の活性化の増強につながる。その有利な薬物動態プロフィールのために、非修飾IL2と比較した場合、延長PK IL2はより少ない頻度で、より長期間投与することができる。
【0159】
本明細書で使用される場合、「ヒトIL2」または「野生型ヒトIL2」は、天然または組換えのいずれであるかにかかわらず、タンパク質が大腸菌において細胞内画分として発現される場合に必然的に含まれる追加のN末端メチオニンを伴うまたは伴わない、天然ヒトIL2の通常発生する133アミノ酸配列(追加の20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)を有するIL2を意味し、そのアミノ酸配列は、Fujita,et.al,PNAS USA,80,7437-7441(1983)に記載されている。一実施形態では、ヒトIL2は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒトIL2の機能的変異体は、配列番号17と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるであるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒトIL2の機能的変異体は、IL2受容体、特にIL2受容体のアルファサブユニットに結合する。
【0160】
本明細書に記載の特定の実施形態では、IL2変異体部分またはムテインは、異種ポリペプチド(すなわちIL2ではなく、好ましくはIL2の変異体ではないポリペプチド)に融合される。異種ポリペプチドは、IL2の循環半減期を増加させることができる。以下でさらに詳細に論じるように、循環半減期を増加させるポリペプチドは、ヒトまたはマウス血清アルブミンなどの血清アルブミンであり得る。
【0161】
本明細書で使用される場合、「IL2ムテイン」は、IL2の変異体(その機能的変異体を含む)、特にIL2タンパク質への特定の置換が行われているポリペプチドを意味する。一実施形態では、ヒトIL2タンパク質への置換は、少なくともαβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のアルファサブユニットと接触する位置で行われている。一実施形態では、そのような位置は、野生型ヒトIL2において酸性または塩基性アミノ酸残基を有し、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基である場合、置換は塩基性アミノ酸残基によるものであり、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基である場合、置換は酸性アミノ酸残基によるものである。特に好ましい実施形態は、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位のリジン(Lys)残基、43位のリジン(Lys)残基、61位のグルタミン酸(Glu)残基および62位のグルタミン酸(Glu)残基、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0162】
IL2ムテインは、他の非置換残基では野生型IL2と同一のアミノ酸配列を有し得る(すなわち、IL2ムテインは、「mutCD25」変異、例えば配列番号2~6のいずれか1つの配列が配列番号17の配列とは異なる変異を含む)。しかしながら、IL2ムテインはまた、天然のIL2ポリペプチド鎖の中または他の残基における1つ以上の部位でのアミノ酸の挿入、欠失、置換および修飾によっても特徴付けられ得る。本発明に従って、そのような挿入、欠失、置換および修飾は、IL2Rαβγに対する親和性を低下させながら、IL2Rβγに対する親和性を保持するIL2ムテインをもたらし得る。
【0163】
例えば、IL2ムテインはまた、例えば、野生型IL2と比較した場合、IL2Rβγに対する相対的に増加した親和性をもたらす、天然のIL2ポリペプチド鎖内の1つ以上の部位または他の残基におけるアミノ酸置換によっても特徴付けられ得、そのためIL2を介した刺激はもはやIL2Rαの係合を必要としない(すなわちIL2ムテインは、mutCD25変異に加えて「mutβγ」変異、例えば配列番号18の配列が配列番号17の配列とは異なる変異も含む)。そのような変異体は、強力なIL2シグナル伝達アゴニストである。これらの変異は、IL2Rβおよび/またはIL2Rγと接触するアミノ酸残基に存在し得る。
【0164】
様々な実施形態では、本明細書に記載のIL2ムテインは、野生型IL2の24位、65位、74位、80位、81位、85位、86位、89位、92位、および93位の残基の1つ以上の置換によって野生型IL2とは異なり得る。置換されたアミノ酸残基(1つまたは複数)は、必ずというわけではないが、保存的置換であり得る。
【0165】
例えば、変異は、I24V、P65H、Q74R、Q74H、Q74N、Q74S、L80F、L80V、R81I、R81T、R81D、L85V、I86V、I89V、I92F、V93Iであり得る。
【0166】
一実施形態では、IL2ムテインが提供され、ムテインは以下のアミノ酸置換のセットを含む:80F/81D/85V/86V/92F。ムテインは、アミノ酸置換42Aをさらに含み得る。ムテインは、以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上をさらに含み得る:24V、65H、74R、74H、74N、74S、89V、93I。
【0167】
いくつかの実施形態では、IL2ムテインが提供され、ムテインは、以下からなる群より選択されるアミノ酸置換のセットを含む:
(i)74N、80F、81D、85V、86V、89V、92F;
(ii)74H、80F、81D、85V、86V、92F;
(iii)74S、80F、81D、85V、86V、92F;
(iv)74N、80F、81D、85V、86V、92F;
(v)80F、81D、85V、86V、92F;
(vi)80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I;
(vii)18R、22E、80F、81D、85V、86V、89V、92F、93I、126T;
(viii)18R、22E、74S、80F、81T、85V、86V、89V、92F、93I、126T。
【0168】
「野生型IL2に従って番号付けされた」とは、選択されたアミノ酸を、そのアミノ酸が野生型IL2の成熟配列において通常生じる位置を参照して同定することを意味する。IL2ムテインに挿入または欠失が行われる場合、当業者は、特定の位置で通常生じるアミノ酸がムテイン内の位置でシフトされ得ることを理解するであろう。しかしながら、シフトされたアミノ酸の位置は、隣接するアミノ酸と野生型IL2のアミノ酸に隣接するアミノ酸との精査および相関によって容易に決定することができる。
【0169】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドおよびそれをコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって生成することができる。そのような方法は、IL2をコードする核酸に適切なヌクレオチド変化を導入すること、またはIL2ポリヌクレオチドまたはタンパク質のインビトロ合成によるものを含む。例えば、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドをコードするDNA配列を構築し、それらの配列を、適切に形質転換された宿主または任意の他の適切な発現系において発現させ得る。この方法は、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドおよび/またはそれをコードするRNAを生成する。しかしながら、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドおよびそれをコードするポリヌクレオチドはまた、あまり好ましくはないが、化学合成によっても生成され得る。
【0170】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、野生型IL2がIL2Rαβγに結合する親和性よりも低い親和性でIL2Rαβγに結合し得る。一実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、野生型IL2がIL2Rβγに結合する親和性よりも高い親和性でIL2Rβγに結合し得る。
【0171】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドのIL2Rαβγに対する親和性は、野生型IL2がIL2Rαβγに結合する親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍低い可能性がある。さらに、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドのIL2Rβγに対する親和性は、野生型IL2がIL2Rβγに結合する親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い可能性がある。
【0172】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、IL2Rβγに対して、IL2Rαβγに対する親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍高い親和性を有し得る。
【0173】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、特にエフェクタT細胞および/またはNK細胞を刺激する能力と比較した場合、制御性T細胞を刺激する能力が野生型IL2よりも低下している可能性がある。
【0174】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、野生型IL2と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のアミノ酸残基の変異(例えば欠失、付加、または置換)を有し得る。
【0175】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、野生型IL2と少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0176】
一実施形態では、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、以下の特性の1つ以上、好ましくはすべてを有する:
1)IL2Rβγにおけるアゴニスト作用。この特性は、IL2に依存する細胞株を用いたインビトロ増殖アッセイで直接評価することができる。
【0177】
2)野生型IL2と比較して、制御性T細胞のインビトロおよび/またはインビボ集団を刺激する能力の喪失。この特性は、例えば、制御性T細胞の増殖を誘導するムテインの能力を、野生型IL2の能力と比較して検討することによって評価できる。
【0178】
3)動物モデルでの天然IL2に関する治療効果の増加。この特性は、例えば、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドと野生型IL2の抗腫瘍または抗転移効果を、移植可能な腫瘍モデル(例えばB16黒色腫)における単剤療法として比較することによって評価できる。また、目的のワクチンに対する細胞性および/または体液性応答の増強作用を通して評価することもできる。
【0179】
多くの免疫細胞は、活性化時にIL2Rαβγを一過性に上方制御して、CD8 T細胞のプライミングを含む免疫応答を開始する際のIL2感受性を高める。IL2によるいくらかのIL2Rαβγ結合が必要であり得るため、本発明は、野生型IL2などのIL2Rβγに対して選択的な親和性を示さないIL2(その機能的変異体を含む)と組み合わせた、本明細書に記載のIL2Rβγ選択的IL2変異体ポリペプチドの混合物の使用を想定する。特定の実施形態では、IL2Rβγに対して選択的な親和性を示さないIL2に対する本明細書に記載のIL2Rβγ選択的IL2変異体ポリペプチドのモル比は、50:1~1:1、20:1~2:1、10:1~5:1、または5:1~3:1である。
【0180】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、IL2変異体部分と異種ポリペプチド(すなわちIL2またはその変異体ではないポリペプチド)を含む融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドとして調製することができる。IL2変異体は、循環半減期を増加させる延長PK基に融合し得る。延長PK基の非限定的な例を以下で説明する。サイトカインまたはその変異体の循環半減期を増加させる他のPK基もまた、本開示に適用可能であることが理解されるべきである。特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミンドメイン(例えばマウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
【0181】
本明細書で使用される場合、「PK」という用語は、「薬物動態」の頭字語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝、および排泄を含む化合物の特性を包含する。本明細書で使用される場合、「延長PK基」は、生物学的に活性な分子に融合されるかまたは一緒に投与された場合、生物学的に活性な分子の循環半減期を増加させるタンパク質、ペプチド、または部分を指す。延長PK基の例には、血清アルブミン(例えばHSA)、FcまたはFc断片およびその変異体、トランスフェリンおよびその変異体、ならびにヒト血清アルブミン(HSA)結合剤(米国特許出願公開第2005/0287153号および同第2007/0003549号に開示されている)が含まれる。他の例示的な延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kontermann,Current Opinion in Biotechnology 2011;22:868-876およびKontermann,Expert Opin Biol Ther.2016;16:903-15に開示されている。本明細書で使用される場合、「延長PK IL」は、延長PK基と組み合わせたインターロイキン(IL)部分(IL変異体部分を含む)を指す。一実施形態では、延長PK ILは、IL部分が延長PK基に連結または融合されている融合タンパク質である。例示的な融合タンパク質は、IL2部分がHSAと融合されているHSA/IL2融合物である。
【0182】
特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独(すなわち延長PK基に融合されていないIL)と比較して増加している。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独の血清半減期と比較して少なくとも20、40、60、80、100、120、150、180、200、400、600、800、または1000%長い。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、IL単独の血清半減期より少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍、または50倍長い。特定の実施形態では、延長PK ILの血清半減期は、少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間、または200時間である。
【0183】
特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミン、またはその断片、または血清アルブミンもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、そのすべてが「アルブミン」という用語に含まれる)を含む。本明細書に記載されるポリペプチドは、アルブミン(またはその断片もしくは変異体)に融合されてアルブミン融合タンパク質を形成し得る。そのようなアルブミン融合タンパク質は、米国特許出願公開第20070048282号に記載されている。
【0184】
本明細書で使用される場合、「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子のアルブミン(またはその断片もしくは変異体)と、治療用タンパク質、特にIL2(またはその変異体)などの少なくとも1分子のタンパク質との融合によって形成されるタンパク質を指す。アルブミン融合タンパク質は、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、アルブミンをコードするポリヌクレオチドとインフレームで結合している核酸の翻訳によって生成され得る。治療用タンパク質およびアルブミンは、ひとたびアルブミン融合タンパク質の一部になると、それぞれ、アルブミン融合タンパク質の「一部」、「領域」、または「部分」(例えば「治療用タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と称され得る。非常に好ましい実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療用タンパク質(治療用タンパク質の成熟形態を含むがこれに限定されない)および少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むがこれに限定されない)を含む。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、投与されたRNAの標的器官の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞によってプロセシングされ、循環に分泌される。RNAの発現に使用される宿主細胞の分泌経路で起こる新生アルブミン融合タンパク質のプロセシングには、シグナルペプチド切断、ジスルフィド結合の形成、適切な折り畳み、炭水化物の付加とプロセシング(例えばN-結合型およびO-結合型グリコシル化など)、特異的タンパク質分解切断、ならびに/または多量体タンパク質へのアセンブリが含まれ得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にそのN末端にシグナルペプチドを有するプロセシングされていない形態のRNAによってコードされ、細胞による分泌後、好ましくは、特にシグナルペプチドが切断されているプロセシングされた形態で存在する。最も好ましい実施形態では、「プロセシングされた形態のアルブミン融合タンパク質」は、本明細書では「成熟アルブミン融合タンパク質」とも称される、N末端シグナルペプチド切断を受けたアルブミン融合タンパク質産物を指す。
【0185】
好ましい実施形態では、治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合されていない場合の同じ治療用タンパク質の血漿安定性と比較して、より高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、典型的には、治療用タンパク質がインビボで投与され、血流に運ばれたときから、治療用タンパク質が分解され、血流から腎臓または肝臓などの器官へとクリアランスされ、最終的に治療用タンパク質が体内からクリアランスされるときまでの期間を指す。血漿安定性は、血流中の治療用タンパク質の半減期に関して計算される。血流中の治療用タンパク質の半減期は、当技術分野で公知の一般的なアッセイによって容易に決定することができる。
【0186】
本明細書で使用される場合、「アルブミン」は、アルブミンの1つ以上の機能的活性(例えば生物学的活性)を有する、アルブミンタンパク質もしくはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくは変異体を集合的に指す。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンまたはその断片もしくは変異体、特にヒトアルブミンの成熟形態、または他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の変異体を指す。アルブミンは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンには、雌鶏およびサケが含まれるが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療用タンパク質部分とは異なる動物由来であり得る。
【0187】
特定の実施態様では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはその断片もしくは変異体、例えば米国特許第5,876,969号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2013/075066号、および国際公開第2011/0514789号に開示されているものである。
【0188】
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という用語は、本明細書では互換的に使用される。「アルブミンおよび「血清アルブミン」という用語はより広範であり、ヒト血清アルブミン(およびその断片と変異体)ならびに他の種由来のアルブミン(およびその断片と変異体)を包含する。
【0189】
本明細書で使用される場合、治療用タンパク質の治療活性または血漿安定性を延長するのに十分なアルブミンの断片は、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分の血漿安定性が非融合状態での血漿安定性と比較して延長または拡大されるように、タンパク質の治療活性または血漿安定性を安定化または延長するのに十分な長さまたは構造のアルブミン断片を指す。
【0190】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の全長を含み得るか、または治療活性もしくは血漿安定性を安定化もしくは延長することができるその1つ以上の断片を含み得る。そのような断片は、10個以上のアミノ酸の長さであり得るか、またはアルブミン配列からの約15、20、25、30、50個もしくはそれ以上の連続するアミノ酸を含み得るか、またはアルブミンの特定のドメインの一部もしくは全部を含み得る。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにわたるHSAの1つ以上の断片を使用し得る。好ましい実施形態では、HSA断片は、HSAの成熟形態である。
【0191】
一般的に言えば、アルブミン断片または変異体は、少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
【0192】
本開示によれば、アルブミンは、天然に存在するアルブミンまたはその断片もしくは変異体であり得る。アルブミンは、ヒトアルブミンであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。一実施形態では、アルブミンは、配列番号21のアミノ酸配列または配列番号21と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0193】
好ましくは、アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンを含み、C末端部分として治療用タンパク質を含む。あるいは、C末端部分としてアルブミンを含み、N末端部分として治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質も使用し得る。他の実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端とC末端の両方に融合した治療用タンパク質を有する。好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、同じ治療用タンパク質である。別の好ましい実施形態では、N末端およびC末端で融合した治療用タンパク質は、異なる治療用タンパク質である。一実施形態では、異なる治療用タンパク質は、同じまたは関連する疾患、障害、または状態を治療または予防するために有用であり得る。一実施形態では、異なる治療用タンパク質は両方ともサイトカインであり、異なる治療用タンパク質の一方はIL2変異体であり、他方は、好ましくはIFNβなどのインターフェロンである。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端に融合したIFNβおよびC末端に融合したIL2変異体を有する。
【0194】
一実施形態では、治療用タンパク質(1つまたは複数)は、ペプチドリンカー(1つまたは複数)を介してアルブミンに結合される。融合部分の間のリンカーペプチドは、部分間の、より大きな物理的分離を提供し、したがって、例えばその同族受容体に結合するための治療用タンパク質部分のアクセス可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかまたはより剛性であるようにアミノ酸で構成され得る。リンカー配列は、プロテアーゼによってまたは化学的に切断可能であり得る。
【0195】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの2本の重鎖のそれぞれのFcドメイン(またはFc部分)によって形成される天然免疫グロブリンの部分を指す。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」という用語は、FcドメインがFvドメインを含まない単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の一部または断片を指す。特定の実施形態では、Fcドメインは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ(例えば上部、中間および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはその変異体、部分もしくは断片の少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわちヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えばCH2ドメインの全部または一部)を欠く。本明細書におけるFcドメインは、一般に、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全部または一部を含むポリペプチドを指す。これには、CH1、ヒンジ、CH2、および/またはCH3ドメイン全体を含むポリペプチド、ならびに、例えばヒンジ、CH2、およびCH3ドメインのみを含むそのようなペプチドの断片が含まれるが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体を含むがこれらに限定されない、任意の種および/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは、天然のFcおよびFc変異体分子を包含する。本明細書に記載されるように、任意のFcドメインを、アミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子の天然のFcドメインとは異なるように修飾し得ることは、当業者に理解されるであろう。特定の実施形態では、Fcドメインは、エフェクタ機能(例えばFcγR結合)が低下している。
【0196】
本明細書に記載されるポリペプチドのFcドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子に由来するCH2および/またはCH3ドメイン、ならびにIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含むことができる。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0197】
特定の実施形態では、延長PK基は、Fcドメインもしくはその断片、またはFcドメインもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、そのすべてが「Fcドメイン」という用語に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本開示での使用に適したFcドメインは、いくつかの異なる供給源から入手し得る。特定の実施形態では、Fcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。特定の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1定常領域に由来する。しかしながら、Fcドメインは、例えばげっ歯動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)種または非ヒト霊長動物(例えばチンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることが理解される。
【0198】
さらに、Fcドメイン(またはその断片もしくは変異体)は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
【0199】
様々なFcドメイン遺伝子配列(例えばマウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)は、公的にアクセス可能な寄託物の形で入手可能である。特定のエフェクタ機能を欠く、および/または免疫原性を低下させるための特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、適切なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその断片もしくは変異体)は、当技術分野で広く認められている技術を使用してこれらの配列から導くことができる。
【0200】
特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2005/0287153号、米国特許出願第2007/0003549号、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2007/0269422号、米国特許出願第2010/0113339号、国際公開第2009/083804号、および国際公開第2009/133208号に記載されているものなどの血清アルブミン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,176,278号および米国特許第8,158,579号に開示されているように、トランスフェリンである。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2007/0178082号に開示されているものなどの血清免疫グロブリン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2012/0094909号に開示されているものなどの、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質を作製する方法もまた、米国特許出願第2012/0094909号に開示されている。Fn3ベースの延長PK基の非限定的な例は、Fn3(HSA)、すなわちヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
【0201】
特定の態様では、本開示による使用に適した延長PK ILは、1つ以上のペプチドリンカーを使用することができる。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列中の2つ以上のドメイン(例えば延長PK部分およびIL2などのIL部分)を接続するペプチドまたはポリペプチド配列を指す。例えば、ペプチドリンカーを使用して、IL2部分をHSAドメインに接続し得る。
【0202】
例えばIL2に延長PK基を融合するのに適したリンカーは、当技術分野で周知である。例示的なリンカーには、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、グリシン-プロリンポリペプチドリンカー、およびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーが含まれる。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、すなわちグリシンおよびセリン残基からなるペプチドである。
【0203】
上記の異種ポリペプチドに加えて、またはその代わりに、本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、「マーカ」または「レポータ」をコードする配列を含むことができる。マーカまたはレポータ遺伝子の例には、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスフォトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、β-ガラクトシダーゼ、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が含まれる。
【0204】
本開示による使用に適したペプチドおよびタンパク質抗原は、典型的には、免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質を含む。ペプチドまたはタンパク質またはエピトープは、標的抗原、すなわちそれに対して免疫応答が誘発されるべき抗原に由来し得る。例えば、ペプチドもしくはタンパク質抗原またはペプチドもしくはタンパク質抗原内に含まれるエピトープは、標的抗原または標的抗原の断片もしくは変異体であり得る。
【0205】
本開示に従って(それ自体で、またはペプチドおよびタンパク質抗原をコードするRNAとして)投与されるペプチドおよびタンパク質抗原、すなわちワクチン抗原は、好ましくは、抗原を投与される対象においてT細胞の刺激、プライミングおよび/または増殖をもたらす。前記刺激された、プライミングされたおよび/または拡大されたT細胞は、好ましくは標的抗原、特に疾患細胞、組織および/または器官によって発現される標的抗原、すなわち疾患関連抗原に対して向けられる。したがって、ワクチン抗原は、疾患関連抗原、またはその断片もしくは変異体を含み得る。一実施形態では、そのような断片または変異体は、疾患関連抗原と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、「抗原の断片」または「抗原の変異体」という用語は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす作用物質を意味し、刺激、プライミングおよび/または拡大されたT細胞は、特に疾患細胞、組織および/または器官によって提示された場合、抗原、すなわち疾患関連抗原を標的とする。したがって、本開示に従って投与されるワクチン抗原は、疾患関連抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る、疾患関連抗原の断片に対応し得るかもしくはそれを含み得る、または疾患関連抗原もしくはその断片に相同である抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る。本開示に従って投与されるワクチン抗原が、疾患関連抗原の断片または疾患関連抗原の断片に相同であるアミノ酸配列を含む場合、前記断片またはアミノ酸配列は、疾患関連抗原のT細胞エピトープなどのエピトープ、または疾患関連抗原のT細胞エピトープなどのエピトープに相同である配列を含み得る。したがって、本開示によれば、投与される抗原は、疾患関連抗原の免疫原性断片、または疾患関連抗原の免疫原性断片に相同であるアミノ酸配列を含み得る。本開示による「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞を刺激、プライミングおよび/または拡大することができる抗原の断片に関する。ワクチン抗原は(疾患関連抗原と同様に)、T細胞による結合のための関連エピトープを提供するために、抗原提示細胞などの細胞によって提示され得ることが好ましい。本開示に従って投与されるワクチン抗原は、組換え抗原であり得る。
【0206】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または、例えば免疫学的作用の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的作用を発揮することを意味する。本開示の文脈において、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化のために使用される抗原または抗原変異体の免疫学的作用または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が、参照アミノ酸配列に結合するT細胞または参照アミノ酸配列を発現する細胞などの対象の免疫系に暴露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。したがって、抗原と免疫学的に等価である分子は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大に関して、T細胞が標的とする抗原と同じもしくは本質的に同じ特性を示し、および/または同じもしくは本質的に同じ作用を発揮する。
【0207】
「プライミング」という用語は、T細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞への分化を引き起こす過程を指す。
【0208】
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫学的応答の文脈で使用される。好ましくは、クローン拡大はリンパ球の分化をもたらす。
【0209】
「抗原」という用語は、免疫応答を生じさせることができるエピトープを含む作用物質に関する。「抗原」という用語には、特にタンパク質およびペプチドが含まれる。一実施形態では、抗原は、樹状細胞またはマクロファージのような抗原提示細胞などの免疫系の細胞によって提示される。抗原またはT細胞エピトープなどのそのプロセシング産物は、一実施形態では、T細胞もしくはB細胞受容体によって、または抗体などの免疫グロブリン分子によって結合される。したがって、抗原またはそのプロセシング産物は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応し得る。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
【0210】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患に関連する任意の抗原を指すためにその最も広い意味で使用される。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して、疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原またはそのエピトープは、治療目的に使用され得る。疾患関連抗原は、微生物、典型的には微生物抗原による感染に関連し得るか、または癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
【0211】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分を指す。特に、この用語は、細胞内でまたは腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。腫瘍抗原は、典型的には癌細胞によって選択的に発現され(例えば非癌細胞上よりも癌細胞においてより高いレベルで発現される)、いくつかの場合には、癌細胞によってのみ発現される。腫瘍抗原の例には、限定されることなく、p53、ART-4、BAGE、β‐カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディン-6、クローディン-18.2およびクローディン-12などのクローディンファミリーの細胞表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap 100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90マイナーBCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、およびWT-1が含まれる。
【0212】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0213】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち個体において免疫応答を誘発することができる任意の細菌成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞質膜に由来し得る。
【0214】
「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約10~約25アミノ酸の長さであり得、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の長さであり得る。一実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含む。
【0215】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、T細胞に対して自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)と非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方を表示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドも有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドも有効であり得る。
【0216】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」という用語または類似の用語は、特にMHC分子に関連して抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面に提示された場合、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。T細胞が抗原を発現する標的細胞を死滅させる場合、T細胞は抗原に特異的であると見なされる。T細胞の特異性は、例えばクロム放出アッセイまたは増殖アッセイ内で、様々な標準的技術のいずれかを使用して評価し得る。あるいは、リンホカイン(インターフェロンγなど)の合成を測定することができる。
【0217】
「制御性T細胞」または「Treg」は、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患を防止するT細胞の亜集団である。Tregは免疫抑制性であり、一般にエフェクタT細胞の誘導と増殖を抑制または下方制御する。Tregは、バイオマーカであるCD4、FoxP3、およびCD25を発現する。
【0218】
本明細書で使用される場合、「ナイーブT細胞」という用語は、活性化またはメモリT細胞とは異なり、末梢内でそれらの同族抗原に遭遇していない成熟T細胞を指す。ナイーブT細胞は一般に、L-セレクチン(CD62L)の表面発現、活性化マーカCD25、CD44またはCD69の非存在、およびメモリCD45ROアイソフォームの非存在を特徴とする。
【0219】
本明細書で使用される場合、「メモリT細胞」という用語は、以前にそれらの同族抗原に遭遇し、それに応答したT細胞のサブグループまたは亜集団を指す。抗原との2回目の遭遇時に、メモリT細胞は、免疫系が最初に抗原に応答したときよりも速く、より強い免疫応答を開始するように再生され得る。メモリT細胞はCD4+またはCD8+のいずれかであり得、通常はCD45ROを発現し得る。
【0220】
本明細書で使用される場合、「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体(CD3)の非存在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書で提供されるように、NK細胞はまた、幹細胞または前駆細胞から分化させることもできる。
【0221】
一実施形態では、標的抗原は腫瘍抗原であり、エピトープを含むペプチドもしくはタンパク質またはその断片(例えばエピトープ)は、腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、様々な癌で発現されることが一般的に公知の「標準」抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、個体の腫瘍に特異的であり、それまで免疫系によって認識されていなかった「ネオ抗原」であり得る。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化をもたらす癌細胞のゲノムにおける1つ以上の癌特異的変異から生じ得る。腫瘍抗原がネオ抗原である場合、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、1つ以上のアミノ酸変化を含む前記ネオ抗原のエピトープまたは断片を含む。
【0222】
癌の変異は各個人によって異なる。したがって、新規エピトープ(ネオエピトープ)をコードする癌変異は、ワクチン組成物および免疫療法の開発における魅力的な標的である。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内で強力な免疫応答を誘導することができる癌特異的抗原およびエピトープの選択に依存する。RNAは、患者特異的腫瘍エピトープを患者に送達するために使用できる。脾臓に存在する樹状細胞(DC)は、腫瘍エピトープなどの免疫原性エピトープまたは抗原のRNA発現のための特に興味深い抗原提示細胞である。複数のエピトープの使用は、腫瘍ワクチン組成物における治療効果を促進することが示されている。腫瘍ミュータノームの迅速な配列決定は、本明細書に記載のRNAによってコードされ得る個別化ワクチンのための複数のエピトープを、例えばエピトープが任意にリンカーによって分離されている単一のポリペプチドとして提供し得る。本開示の特定の実施形態では、RNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、または少なくとも10のエピトープをコードする。例示的な実施形態には、少なくとも5つのエピトープ(「ペンタトープ」と称される)をコードするRNAおよび少なくとも10のエピトープ(「デカトープ」と称される)をコードするRNAが含まれる。
【0223】
ペプチドおよびタンパク質抗原は、例えば5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、または50アミノ酸を含む、2~100アミノ酸の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、50個を超えるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、100個を超えるアミノ酸であり得る。
【0224】
ペプチドまたはタンパク質抗原は、ペプチドまたはタンパク質に対する抗体およびT細胞応答を生じさせる免疫系の能力を誘導または増加させることができる任意のペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0225】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載される他の治療薬(例えば、インターロイキン(IL)-2変異体ポリペプチドをコードするRNA、および任意でエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)と組み合わせて使用される。
【0226】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、抗原のT細胞受容体認識の大きさおよび質を調節する共刺激および阻害シグナルを指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD28結合を置き換えるCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、LAG3とMHCクラスII分子との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、TIM3とガレクチン9との間の相互作用である。
【0227】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を完全にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げるまたは調節する分子を指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害性シグナル伝達を妨害する抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性シグナル伝達を妨害する小分子である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントブロッカータンパク質間の相互作用を妨げる抗体、その断片、または抗体模倣物、例えばPD-1とPD-L1との間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用を防げる抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3とそのリガンド、またはTIM-3とそのリガンドとの間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。チェックポイント阻害剤はまた、分子(またはその変異体)自体の可溶性形態、例えば可溶性PD-L1またはPD-L1融合物の形態であってもよい。
【0228】
「プログラム死1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、PD-L1とPD-L2の2つのリガンドに結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0229】
「プログラム死リガンド1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞の活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(もう1つはPD-L2)である。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0230】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)」は、T細胞表面分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、CD80およびCD86に結合することによって免疫系を下方制御する。本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCTLA-4と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0231】
「リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)」は、MHCクラスII分子に結合することによるリンパ球活性の阻害に関連する阻害性受容体である。この受容体は、Treg細胞の機能を高め、CD8+エフェクタT細胞の機能を阻害する。本明細書で使用される「LAG3」という用語は、ヒトLAG3(hLAG3)、hLAG3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0232】
「T細胞膜タンパク質3(TIM3)」は、TH1細胞応答の阻害によるリンパ球活性の阻害に関与する阻害性受容体である。そのリガンドは、様々な種類の癌で上方制御されるガレクチン9である。本明細書で使用される「TIM3」という用語は、ヒトTIM3(hTIM3)、hTIM3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。
【0233】
「B7ファミリー」は、未定義の受容体との阻害性リガンドを指す。B7ファミリーはB7-H3およびB7-H4を包含し、どちらも腫瘍細胞および腫瘍浸潤細胞で上方制御される。
【0234】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法での使用に適した免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、B7-H3、B7-H4、またはTIM3を標的とする抗体である。これらのリガンドと受容体は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012で総説されている。
【0235】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する抗体またはその抗原結合部分である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性免疫調節因子からのシグナル伝達を妨害または阻害する小分子である。
【0236】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、PD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンドであるPD-L1との間の相互作用を妨害する抗体は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それによって免疫活性を増加させる。
【0237】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CTLA4シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CTLA4を標的とし、CD80およびCD86とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0238】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、LAG3を標的とし、MHCクラスII分子とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0239】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、B7ファミリーシグナル伝達経路の成分である。特定の実施形態では、B7ファミリーメンバーは、B7-H3およびB7-H4である。したがって、本開示の特定の実施形態は、B7-H3またはB7-H4を標的とする抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。B7ファミリーは定義された受容体を有さないが、これらのリガンドは腫瘍細胞または腫瘍浸潤細胞で上方制御される。前臨床マウスモデルは、これらのリガンドの遮断が抗腫瘍免疫を増強できることを示している。
【0240】
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TIM3(T細胞膜タンパク質3)シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TIM3を標的とし、ガレクチン9とのその相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。
【0241】
標的化が、例えばT細胞増殖の増加、T細胞活性化の増強、および/またはサイトカイン産生の増加(例えばIFN-γ、IL2)に反映されるような抗腫瘍免疫応答などの免疫応答の刺激をもたらすことを条件として、他の免疫チェックポイント標的もまた、アンタゴニストまたは抗体によって標的化され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0242】
本開示によれば、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体およびキメラ抗体が含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0243】
抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない、様々な種に由来し得る。
【0244】
本明細書に記載される抗体には、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、およびIgD抗体が含まれる。様々な実施形態では、抗体は、IgG1抗体、より特定するとIgG1、カッパもしくはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
【0245】
抗体の「抗原結合部分」(もしくは単に「結合部分」)または抗体の「抗原結合断片」(もしくは単に「結合断片」)という用語または同様の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab')2断片;(iii)VHドメインとCHドメインからなるFd断片;(iv)抗体の1本の腕のVLドメインとVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)任意で合成リンカーによって連結されていてもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLとVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)として作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて連結することができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号にさらに開示されている。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0246】
本明細書に記載のペプチド、タンパク質またはポリペプチド、特にIL2変異体ポリペプチドおよび/または抗原が、本明細書に記載のペプチド、タンパク質またはポリペプチドをコードするRNAの形態で投与されることは、本発明によれば特に好ましい。一実施形態では、本明細書に記載の異なるペプチド、タンパク質またはポリペプチドは、異なるRNA分子によってコードされる。
【0247】
本開示によれば、本明細書に記載のRNAの投与後、RNAの少なくとも一部が標的細胞に送達される。一実施形態では、RNAの少なくとも一部は、標的細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態では、RNAは標的細胞によって翻訳されて、コードされたペプチドまたはタンパク質を生成する。
【0248】
本開示のいくつかの態様は、本明細書に開示されるRNA(IL2変異体ポリペプチドをコードするRNA、および任意でエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)の特定組織への標的化送達を含む。
【0249】
一実施形態では、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることを含む。投与されるRNAが、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAである場合、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることが特に好ましい。
【0250】
一実施形態では、標的細胞は脾臓細胞である。一実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施形態では、標的細胞は脾臓の樹状細胞である。
【0251】
「リンパ系」は循環系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の伝導ネットワーク、および循環リンパからなる。一次または中枢リンパ器官は、未成熟な前駆細胞からリンパ球を生成する。胸腺および骨髄は一次リンパ器官を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始する。
【0252】
RNAは、カチオン性脂質および任意でさらなる脂質またはヘルパー脂質を含むリポソームに結合して注射可能なナノ粒子製剤を形成する、いわゆるリポプレックス製剤によって脾臓に送達され得る。リポソームは、エタノール中の脂質の溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームをRNAと混合することによって調製され得る。脾臓標的化RNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子は、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的化するために使用し得ることが見出された。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓においてRNAを発現するために使用され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現は、全く起こらないかまたは本質的に起こらない。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓内のプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞においてRNAを発現するために使用され得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0253】
本開示の文脈において、「RNAリポプレックス粒子」という用語は、脂質、特にカチオン性脂質、およびRNAを含む粒子に関する。正に帯電したリポソームと負に帯電したRNAとの間の静電相互作用は、RNAリポプレックス粒子の複合体化と自発的形成をもたらす。正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質とDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成し得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0254】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」は、正味の正電荷を有する脂質を指す。カチオン性脂質は、静電相互作用によって負に帯電したRNAを脂質マトリックスに結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシルまたはジアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭基は、典型的には正電荷を担持する。カチオン性脂質の例には、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)が含まれるが、これらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、およびDOSPAが好ましい。特定の実施形態では、カチオン性脂質は、DOTMAおよび/またはDOTAPである。
【0255】
RNAリポプレックス粒子の正電荷と負電荷の全体的な比率および物理的安定性を調整するために、さらなる脂質を組み込んでもよい。特定の実施形態では、さらなる脂質は中性脂質である。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、ゼロの正味電荷を有する脂質を指す。中性脂質の例には、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、およびセレブロシドが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、さらなる脂質は、DOPE、コレステロールおよび/またはDOPCである。
【0256】
特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0257】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質とのモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質とのモル比は、約2:1である。
【0258】
本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、一実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250nm~約700nm、約400nm~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0259】
本開示のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する電荷とRNAに存在する電荷との合計である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の比である。少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷の電荷比は、以下の式によって計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(mol))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(mol))*(RNA中の負電荷の総数)]。
【0260】
生理的pHでの本明細書に記載の脾臓標的化RNAリポプレックス粒子は、好ましくは、正電荷と負電荷の電荷比が約1.9:2~約1:2などの正味の負電荷を有する。特定の実施形態では、生理的pHでのRNAリポプレックス粒子における正電荷と負電荷の電荷比は、約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。
【0261】
RNA送達システムは、肝臓への固有の選択性を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性のナノ粒子、特にリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲートの親油性リガンドなどの脂質ナノ粒子に関係する。肝臓蓄積は、肝血管系の不連続な性質または脂質代謝(リポソームおよび脂質またはコレステロールコンジュゲート)によって引き起こされる。
【0262】
本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドの標的送達の一実施形態では、標的器官は肝臓であり、標的組織は肝臓組織である。そのような標的組織への送達は、特に、この器官または組織におけるIL2変異体ポリペプチドの存在が望ましい場合、および/または大量のIL2変異体ポリペプチドを発現することが望ましい場合、および/またはIL2変異体ポリペプチドの全身的な存在、特に有意の量での存在が望ましいかもしくは必要とされる場合に好ましい。
【0263】
一実施形態では、IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAは、肝臓を標的とするための製剤中で投与される。そのような製剤は、本明細書で上記に記載されている。
【0264】
肝臓へのRNAのインビボ送達のために、薬物送達システムを使用して、その分解を防止することによってRNAを肝臓に輸送し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面とmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルは、ナノミセルが生理的条件下でRNAの卓越したインビボ安定性を提供するため、有用なシステムである。さらに、密なPEGパリセードで構成されるポリプレックスナノミセル表面によって提供されるステルス特性は、宿主の免疫防御を有効に回避する。
【0265】
本明細書に記載されるペプチド、タンパク質、ポリペプチド、RNA、RNA粒子およびさらなる作用物質、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、治療的または予防的治療のための医薬組成物または薬剤中で投与されてもよく、任意の適切な医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0266】
「医薬組成物」という用語は、治療上有効な作用物質を、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む製剤に関する。前記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を軽減するのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても公知である。本開示の文脈において、医薬組成物は、本明細書に記載されるペプチド、タンパク質、ポリペプチド、RNA、RNA粒子および/またはさらなる作用物質を含む。
【0267】
本開示の医薬組成物は、1つ以上のアジュバントを含み得るか、または1つ以上のアジュバントと共に投与され得る。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激複合体などの不均一な化合物の群を含む。アジュバントの例には、限定されることなく、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、およびモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインなどのサイトカインが含まれる。ケモカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示で使用するための他の適切なアジュバントには、Pam3Cysなどのリポペプチドが含まれる。
【0268】
本開示による医薬組成物は、一般に「薬学的に有効な量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0269】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0270】
「薬学的に有効な量」または「治療有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、特に疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される実質的により高い用量)を使用し得る。
【0271】
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤、および任意で他の治療薬を含み得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
【0272】
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤には、限定されることなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0273】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例には、限定されることなく、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤が含まれる。
【0274】
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする作用物質に関する。さらに、「希釈剤」という用語には、流体、液体もしくは固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上が含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロールおよび水が含まれる。
【0275】
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体には、限定されることなく、滅菌水、リンガー液、乳酸リンガー液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが含まれる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0276】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0277】
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準製薬法に関して選択することができる。
【0278】
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、胃腸管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与を含み得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈内注射などによる、胃腸管を介する以外の任意の方法での投与を指す。好ましい実施形態では、医薬組成物は全身投与用に製剤化される。別の好ましい実施形態では、全身投与は静脈内投与による。
【0279】
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、異なる化合物または組成物(例えばIL2変異体ポリペプチドをコードするRNA、エピトープおよび任意で免疫チェックポイント阻害剤を含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNA)が同じ患者に投与される過程を意味する。IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAとエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同時に、本質的に同時に、または連続的に投与され得る。投与が連続的に行われる場合、IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAは、エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAの投与の前または後に投与され得る。投与が同時に行われる場合、IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAとエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同じ組成物内で投与される必要はない。IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、1回以上投与されてもよく、各成分の投与回数は同じであっても異なっていてもよい。さらに、IL2変異体ポリペプチドをコードするRNAおよびエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAは、同じ部位に投与される必要はない。
【0280】
IL2変異体ポリペプチド、IL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、IL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、本明細書に記載の医薬組成物および治療方法は、様々な疾患、特に癌、自己免疫疾患、感染症などの対象へのIL2、特に本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドの提供が治療または予防効果をもたらす疾患の治療的または予防的治療において、高齢者または免疫無防備状態の個体における免疫刺激のための癌ワクチンおよび従来のワクチン療法のワクチンアジュバントにおいて、ならびにHIVまたはヒトSCID患者において、または任意の適切な動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける免疫系の一般的な刺激を必要とする他の治療用途において使用され得る。IL2は多くの作用を有する。これらのいくつかは、T細胞、特にメモリT細胞、ナイーブT細胞および/もしくはエフェクタT細胞、ならびに/またはNK細胞の刺激である。本明細書に記載のIL2変異体ポリペプチドは、メモリT細胞、ナイーブT細胞および/またはエフェクタT細胞などの中親和性IL2受容体のみを発現する細胞型に対して活性を有するが、制御性T細胞などの高親和性IL2受容体には活性を有さない。したがって、IL2が、そのT細胞活性により、有効な治療法を提供すると期待される疾患の治療における、IL2変異体ポリペプチド、IL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、IL2変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、本明細書に記載の医薬組成物および治療方法の使用が企図される。
【0281】
あるいは、または患者への直接投与の方法に加えて、いくつかの実施形態では、IL2変異体ポリペプチドをエクスビボの方法で使用することができる。例えば、細胞(例えば患者から単離され、培養物中に配置または維持される末梢血リンパ球または精製されたリンパ球の集団)は、培養培地にてインビトロで培養することができ、接触工程は、IL2変異体ポリペプチドおよび/またはそれらをコードするポリヌクレオチドを培養培地に添加することによって影響され得る。培養工程は、例えば増殖を刺激するため、または目的の抗原(例えば癌抗原もしくはウイルス抗原)に反応性である細胞の集団を拡大するために、細胞を刺激するかまたは他の薬剤で処理するさらなる工程を含み得る。次いで、細胞は、処理された後、患者に投与される。
【0282】
「疾患」という用語は、個体の身体を侵す異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部からの要因によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能不全、苦痛、社会問題、もしくは死を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型のバリエーションを含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリーと見なされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的にだけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
【0283】
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした、対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことを意図しており、予防は、疾患、状態または障害と闘う目的での個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
【0284】
「治療的治療」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長(増加)させる任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体における症状の頻度もしくは重症度を減少させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0285】
「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的治療」または「防止的治療」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0286】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害(例えば癌)に罹患し得るかまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有していてもよくまたは有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、子供、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0287】
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に罹患した個体または対象を意味する。
【0288】
本開示の一実施形態では、目的は、腫瘍抗原を発現する癌細胞などの抗原を発現する疾患細胞に対する免疫応答を提供し、腫瘍抗原などの抗原を発現する細胞が関与する癌疾患などの疾患を治療することである。
【0289】
エピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを含む医薬組成物を対象に投与して、治療的であり得るかまたは部分的もしくは完全に保護的であり得る、対象における前記エピトープを含む抗原に対する免疫応答を誘発し得る。当業者は、免疫療法およびワクチン接種の原理の1つが、治療される疾患に関して免疫学的に関連する抗原またはエピトープで対象を免疫することによって疾患に対する免疫防御反応が生じるという事実に基づくことを理解するであろう。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を誘導または増強するために適用可能である。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的治療において有用である。
【0290】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。細胞性免疫応答には、限定されることなく、抗原を発現し、クラスIまたはクラスII MHC分子による抗原の提示を特徴とする細胞に向けられる細胞応答が含まれる。細胞応答はTリンパ球に関連し、Tリンパ球は、免疫応答を制御することによって中心的な役割を果たすヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称される)、または感染した細胞もしくは癌細胞におけるアポトーシスを誘導するキラー細胞(細胞傷害性T細胞、CD8+T細胞、もしくはCTLとも称される)として分類され得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物を投与することは、1つ以上の腫瘍抗原を発現する癌細胞に対する抗腫瘍CD8+T細胞応答の刺激を含む。特定の実施形態では、腫瘍抗原はクラスI MHC分子と共に提示される。
【0291】
本開示は、保護的、防御的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を企図する。本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」は、特定の抗原に対する免疫応答が誘導前に存在しなかったことを示し得るか、または誘導前に特定の抗原に対する基礎レベルの免疫応答があり、これが誘導後に増強されたことを示し得る。したがって、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」には、「免疫応答を増強する(または増強すること)」が含まれる。
【0292】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導または増強することによる疾患または状態の治療に関する。「免疫療法」という用語は、抗原免疫または抗原ワクチン接種を含む。
【0293】
「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、例えば治療的または予防的理由により、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する過程を表す。
【0294】
本明細書に記載されるペプチド、タンパク質、ポリペプチド、RNA、RNA粒子およびさらなる作用物質、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはタンパク質を前記対象に提供することが治療効果または予防効果をもたらす疾患の治療的または予防的治療に使用され得る。例えば、ウイルスに由来する抗原またはエピトープを提供することは、前記ウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患の治療に有用であり得る。腫瘍抗原またはエピトープを提供することは、癌細胞が前記腫瘍抗原を発現する癌疾患の治療に有用であり得る。
【0295】
一実施形態では、本開示は、脾臓組織を標的とする本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子などのRNA製剤が投与される実施形態を想定する。RNAは、例えば本明細書に記載されるような、例えばエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードする。RNAは、樹状細胞などの脾臓内の抗原提示細胞によって取り込まれ、ペプチドまたはタンパク質を発現する。抗原提示細胞による任意のプロセシングおよび提示に続いて、エピトープに対する免疫応答が生じ、エピトープまたはエピトープを含む抗原が関与する疾患の予防的および/または治療的治療がもたらされ得る。一実施形態では、本明細書に記載のRNAによって誘導される免疫応答は、樹状細胞および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞による抗原またはエピトープなどのその断片の提示、ならびにこの提示による細胞傷害性T細胞の活性化を含む。例えば、RNAによってコードされるペプチドもしくはタンパク質またはそのプロセシング産物は、抗原提示細胞上に発現される主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質によって提示され得る。次に、MHCペプチド複合体はT細胞またはB細胞などの免疫細胞によって認識され、それらの活性化をもたらすことができる。
【0296】
したがって、本開示は、抗原が関与する疾患、好ましくは癌疾患の予防的および/または治療的治療に使用するための、本明細書に記載されるRNAに関する。
【0297】
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によって産生される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物によって活性化されるマクロファージは、マクロファージ内に外来病原体を非特異的に飲み込み、病原体の分解をもたらす加水分解および酸化攻撃によって死滅させる。分解されたタンパク質からのペプチドは、T細胞によって認識され得るマクロファージ細胞表面に表示され、B細胞表面の抗体と直接相互作用して、T細胞およびB細胞の活性化と免疫応答のさらなる刺激をもたらすことができる。マクロファージは抗原提示細胞のクラスに属する。一実施形態では、マクロファージは脾臓マクロファージである。
【0298】
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。一実施形態では、樹状細胞は造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初は未成熟な樹状細胞に変化する。これらの未成熟細胞は、高い食作用と低いT細胞活性化能を特徴とする。未成熟な樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体の周囲環境を絶えずサンプリングしている。それらは、提示可能な抗原と接触すると、活性化されて成熟樹状細胞となり、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、それらのタンパク質を小さな断片に分解し、成熟すると、MHC分子を使用してそれらの断片を細胞表面に提示する。同時に、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化の共受容体として機能する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化するそれらの能力を大幅に増強する。それらはまた、樹状細胞が血流を通って脾臓に、またはリンパ系を通ってリンパ節に移動するように誘導する走化性受容体であるCCR7を上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として機能し、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞、ならびに非抗原特異的共刺激シグナルと共に抗原を提示することによってB細胞も活性化する。したがって、樹状細胞は、T細胞またはB細胞関連の免疫応答を積極的に誘導することができる。一実施形態では、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
【0299】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、その細胞表面上に(またはその細胞表面で)少なくとも1つの抗原または抗原性断片を表示、獲得、および/または提示することができる様々な細胞の1つである。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と非プロフェッショナル抗原提示細胞とに区別することができる。
【0300】
「プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用する場合、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0301】
「非プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロンγなどの特定のサイトカインによる刺激を受けると発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞には、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞が含まれる。
【0302】
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセシング産物への分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特定のT細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0303】
「抗原が関与する疾患」または「エピトープが関与する疾患」という用語は、抗原またはエピトープが関係する任意の疾患、例えば抗原またはエピトープの存在によって特徴付けられる疾患を指す。抗原またはエピトープが関与する疾患は、感染症、または癌疾患もしくは単に癌であり得る。上記のように、抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり得、エピトープはそのような抗原に由来し得る。
【0304】
「感染症」という用語は、個体から個体へ、または生物から生物へと伝染する可能性があり、微生物因子によって引き起こされる任意の疾患(例えば普通の風邪)を指す。感染症は当技術分野で公知であり、例えばウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患が含まれ、これらの疾患は、それぞれウイルス、細菌、および寄生虫によって引き起こされる。これに関して、感染症は、例えば肝炎、性感染症(例えばクラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、およびインフルエンザであり得る。
【0305】
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする個体の生理学的状態を指すかまたは表す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれる。本開示による「癌」という用語は、癌転移も含む。
【0306】
癌治療における併用戦略は、結果として生じる相乗効果のために望ましい場合があり、これは単剤療法アプローチの影響よりもかなり強力であり得る。一実施形態では、医薬組成物は免疫療法剤と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法剤」は、特定の免疫応答および/または免疫エフェクタ機能(1つまたは複数)の活性化に関与し得る任意の作用物質に関する。本開示は、免疫療法剤としての抗体の使用を企図する。理論に拘束されることを望むものではないが、抗体は、アポトーシスを誘導する、シグナル伝達経路の成分をブロックする、または腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、様々な機構を通して癌細胞に対する治療効果を達成することができる。特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して細胞死を誘導し得るか、または補体タンパク質に結合して、補体依存性細胞傷害(CDC)として知られる直接的な細胞傷害性をもたらし得る。本開示と組み合わせて使用し得る抗癌抗体および潜在的な抗体標的(括弧内)の非限定的な例には、アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴル(VEGFR2)、アルツモマブペンテテート(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトクス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、アテゾリズマブ(PD-L1)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(CD44 v6)、ブリナツモマブ(CD19)、ブレンツキシマブベドチン(CD30 TNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブラブタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNT0888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブボガトクス(EpCAM)、シクスツムマブ(IGF-1受容体)、クローディキシマブ(クローディン)、クリバツズマブテトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様増殖因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(Bリンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンανβ3)、ファルレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH 900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-I)、ゲムツズマブオゾガマイシン(CD33)、ゲボキズマブ(ILΙβ)、ギレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブベドチン(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマ(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブオゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レクサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(CD22)、ナコロマブタフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(5T4)、ナマツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-R a)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブモナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマ(MUC1)、ペルツズマ(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチンエクストラドメインB)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シルツキシマブ(IL6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(α-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(CD19)、テナツモマブ(テネイシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、ティガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650(IL13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブセルモロイキン(EpCAM)、ウブリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1 BB)、ボロキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA 16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、およびザノリムマブ(CD4)が含まれる。
【0307】
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認を意図するものではない。これらの文書の内容に関するすべての記述は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さについての承認を構成しない。
【0308】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の機器、技術、および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書で説明され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ヒトインターロイキン-2(IL2)またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドであって、前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のアルファサブユニットと接触する野生型ヒトIL2内の少なくとも酸性または塩基性アミノ酸残基を有する位置で置換されており、前記アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の酸性アミノ酸残基である場合、前記置換は塩基性アミノ酸残基によるものであり、および前記アミノ酸残基が野生型ヒトIL2内の塩基性アミノ酸残基である場合、前記置換は酸性アミノ酸残基によるものである、ポリペプチド。
2. 野生型ヒトIL2が、配列番号17に従うアミノ酸配列を有する、1.に記載のポリペプチド。
3. 野生型ヒトIL2内の前記酸性アミノ酸残基が、IL2Rαβγのアルファサブユニットの塩基性アミノ酸残基と接触する、1.または2.に記載のポリペプチド。
4. 野生型ヒトIL2内の前記塩基性アミノ酸残基が、IL2Rαβγのアルファサブユニットの酸性アミノ酸残基と接触する、1.~3.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
5. 前記置換がIL2Rαβγに対する親和性を低下させる、1.~4.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
6. 前記置換が、IL2Rαβγに対する親和性をβγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性よりも大幅に低下させる、1.~5.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
7. 前記ポリペプチドが、制御性T細胞よりもエフェクタT細胞を選択的に活性化する、1.~6.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
8. 前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、野生型ヒトIL2と比較して、および野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位(リジン)、43位(リジン)、61位(グルタミン酸)および62位(グルタミン酸)の少なくとも1つで置換されている、1.~7.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
9. 35位が置換されている、8.に記載のポリペプチド。
10. 35位がグルタミン酸で置換されている、8.または9.に記載のポリペプチド。
11. 43位が置換されている、8.~10.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
12. 43位がグルタミン酸で置換されている、8.~11.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
13. 61位が置換されている、8.~12.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
14. 61位がリジンで置換されている、8.~13.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
15. 62位が置換されている、8.~14.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
16. 62位がリジンで置換されている、8.~15.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
17. 43位および61位が置換されている、8.~16.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
18. 43位がグルタミン酸で置換され、および61位がリジンで置換されている、8.~17.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
19. 35位、43位および61位が置換されている、8.~18.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
20. 35位がグルタミン酸で置換され、43位がグルタミン酸で置換され、および61位がリジンで置換されている、8.~19.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
21. 61位および62位が置換されている、8.~20.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
22. 61位がリジンで置換され、および62位がリジンで置換されている、8.~21.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
23. 前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む、1.~22.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
24. ヒトインターロイキン-2(IL2)またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むポリペプチドであって、前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、少なくとも(i)IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換および(i)IL2Rβγに対する親和性を増強する1つ以上のアミノ酸置換を含む、ポリペプチド。
25. IL2Rαβγのアルファサブユニットに対する親和性を低下させる前記1つ以上のアミノ酸置換が、K35、T37、R38、T41、F42、K43、F44、Y45、E61、E62、K64、P65、E68、L72、およびY107からなる群より選択されるIL2またはその機能的変異体の1つ以上の位置における置換を含む、24.に記載のポリペプチド。
26. IL2Rβγに対する親和性を増強する前記1つ以上のアミノ酸置換が、K9、L12、Q13、E15、H16、D20、Q74、L80、R81、D84、L85、I86、N88、I92、L94、およびE95からなる群より選択されるIL2の1つ以上の位置における置換を含む、23.~25.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
27. IL2Rβγに対する親和性を増強する前記1つ以上のアミノ酸置換が、80F、81D、85V、86V、92Fの置換のセットを含む、23.~26.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
28. 前記IL2または前記置換されたIL2もしくはその機能的変異体に融合した前記IL2の機能的変異体に対して異種であるアミノ酸配列をさらに含む延長薬物動態(PK)IL2である、1.~27.のいずれか一つに記載のポリペプチド。
29. 前記IL2またはその機能的変異体に対して異種であるアミノ酸配列が、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、およびFn3、またはそれらの変異体からなる群より選択される、28.に記載のポリペプチド。
30. 前記血清アルブミンがマウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む、29.に記載のポリペプチド。
31. 前記免疫グロブリン断片が免疫グロブリンFcドメインを含む、29.に記載のポリペプチド。
32. 1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
33. RNAである、32.に記載のポリヌクレオチド。
34. 32.または33.に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
35. 1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチド、32.もしくは33.に記載のポリヌクレオチド、または34.に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
36. 1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチド、32.もしくは33.に記載のポリヌクレオチド、34.に記載の宿主細胞、または35.に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記対象を治療する方法。
37. 前記対象が癌を有する、36.に記載の方法。
38. 対象において免疫応答を誘導するための方法であって、前記対象に、
a.1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチド、32.もしくは33.に記載のポリヌクレオチド、34.に記載の宿主細胞、または35.に記載の医薬組成物;および
b.前記対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を投与することを含む方法。
39. 前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドがRNAである、38.に記載の方法。
40. 前記治療が制御性T細胞よりもエフェクタT細胞を活性化する、36.~39.のいずれか一つに記載の方法。
41. 前記抗原が腫瘍関連抗原である、対象における癌を治療または予防するための方法である、36.~40.のいずれか一つに記載の方法。
42. 対象における癌を治療または予防するための方法であって、前記対象に、
a.1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチド、32.もしくは33.に記載のポリヌクレオチド、34.に記載の宿主細胞、または35.に記載の医薬組成物;および
b.前記対象において腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を投与することを含む方法。
43. 前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、37.、および40~42.のいずれか一つに記載の方法。
44. a.1.~31.のいずれか一つに記載のポリペプチド、32.もしくは33.に記載のポリヌクレオチド、34.に記載の宿主細胞、または35.に記載の医薬組成物
を含む医薬製剤。
45. b.対象において抗原に対する免疫応答を誘導するためのエピトープを含むペプチドまたはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
をさらに含む、44.に記載の医薬製剤。
46. 各成分aおよびbを別々の容器内に含む、45.に記載の医薬製剤。
47. 医薬組成物である、44.または45.に記載の医薬製剤。
48. 前記抗原が腫瘍関連抗原である、癌を治療または予防するための前記医薬製剤の使用説明書をさらに含む、44.~46.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
49. 医薬用途のための、44.~48.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
50. 前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的治療を含む、49.に記載の医薬製剤。
51. 前記抗原が腫瘍関連抗原である、対象における癌を治療または予防するための方法で使用するための、44.~48.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
52. 前記癌が、黒色腫、白血病、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、中皮腫、腎細胞癌、および脳の癌からなる群より選択される、48.~51.のいずれか一つに記載の医薬製剤。
【実施例】
【0309】
(実施例1)
構築物の設計およびmRNAの作製
サイトカインをコードするmRNAのインビトロ転写は、pST1-T7-AGA-dEarI-hAg-MCS-FI-A30LA70プラスミド骨格および誘導体DNA構築物に基づいた。これらのプラスミド構築物は、5'UTR(非翻訳領域、ホモサピエンス(homo sapiens)ヘモグロビンサブユニットα1(hAg)の5'-UTRの誘導体)、3'FIエレメント(Fはスプリットのアミノ末端エンハンサの136ヌクレオチド長の3´-UTR断片であるmRNAであり、Iはミトコンドリアにコードされた12S RNAの142ヌクレオチド長の断片であり、両方ともホモサピエンスにおいて同定されている;国際公開第2017/060314号)、および100ヌクレオチドのポリ(A)尾部と、70ヌクレオチドの後にリンカーを含む。サイトカインおよび血清アルブミン(hAlb)をコードする配列はホモサピエンスに由来し、以下で説明するmutIL2変異体の意図した変異を除いて、結果として生じるアミノ酸配列の変化は導入しなかった(hIL2:NP_000577.2;NCBIタンパク質リソース;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/)。hAlbを、IL2変異体のN末端またはC末端のいずれかに、インビトロおよびインビボで同様に有効である両方の配向で付加した(データは示していない)。コードされるタンパク質は、それぞれのタンパク質の天然シグナルペプチドであるN末端シグナルペプチド(SP)を備える。融合タンパク質の場合、N末端部分のSPのみを維持し、さらなる部分については成熟部分(SPのないタンパク質)のみをコードした。終止コドンは、ほとんどのC末端部分についてのみ導入した。サイトカインおよびhAlb融合構築物の異なるタンパク質部分は、グリシンおよびセリン残基をコードする30ヌクレオチド長のリンカー配列によって分離した。hIL2配列の変異を導入して、CD25結合を改変し(「mutCD25」変異と称し、それぞれの構築物をhIL2_Axと命名し、xは以下で定義される)、およびIL2Rβγへの結合を改変した(「mutβγ」変異と称し、それぞれの構築物を追加の「s」で表示し、例えばhIL2sまたはhIL2_A4sと表示する)。hIL2_A1の場合、成熟ドメインの4つのアミノ酸残基置換を導入し、38位のアルギニンをアラニンに変更し(R38A)、42位のフェニルアラニンをアラニンに変更し(F42A)、45位のチロシンをアラニンに変更し(Y45A)、62位のグルタミン酸をアラニンに変更した(E62A)(Carmenate,T.et al.J.Immunol.190,6230-6238(2013))。hIL2_A2については、成熟ドメインのアミノ酸残基置換は、K35A、K43AおよびE61Aである。hIL2_A3については、置換K35E、K43EおよびE61Kを導入し、hIL2_A4にはK43EおよびE61K、hIL2_A5にはE61K、およびhIL2_A6にはE62K変異を導入した。hIL2 mutβγ変異体の生成のために、それぞれのhIL2変異体の成熟ドメインのアミノ酸残基を、L80F、R81D、L85V、I86VおよびI92Fの方法で置換した(Levin,A.M.et al.Nature 484,529-533(2012))。mRNAは、通常のヌクレオシドであるウリジンを1-メチルプソイドウリジンに置き換えて、Kreiter et al.(Kreiter,S.et al.Cancer Immunol.Immunother.56,1577-87(2007))によって記述されているようにインビトロ転写によって生成した。得られたmRNAはキャップ1構造を備えており、二本鎖(dsRNA)分子を枯渇させた。精製したmRNAをH2Oで溶出し、さらに使用するまで-80°Cで保存した。記載されているすべてのmRNA構築物のインビトロ転写は、BioNTech RNA Pharmaceuticals GmbHで実施された。その後の実験で使用したすべての構築物のリストを表1に示す。
【0310】
【0311】
(実施例2)
RNAにコードされたIL2変異体のインビトロ発現およびIL2Rβγ結合
生成されたmRNAのインビトロ発現を、HEK293T/17細胞へのmRNAのリポフェクションと、それに続くIL2 mutCD25変異体によるIL2Rβγ発現レポータ細胞のCD25非依存性活性化の分析によって分析した(
図1)。リポフェクションの1日前に、1.2x10
6個のHEK293T/17細胞を、6ウェルプレート中の3mL DMEM(Life Technologies GmbH、カタログ番号31966-021)+10%ウシ胎仔血清(FBS、Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)に播種した。リポフェクションのために、3μgのmRNAを無菌のRNアーゼ不含条件下で、Lipofectamine MessengerMax(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号LMRNA015)1μLあたり400ngのmRNAを使用して製剤化し、10cm
2の培養皿ごとに約80%の集密度でHEK293T/17細胞に適用した。20時間の発現後に、上清を無菌条件下で収集し、さらに使用するまで-20℃で保存した。IL2 mutCD25変異体のIL2Rβγ依存性生物活性を、中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)を発現するTF-1_IL2Rβγ細胞の特異的増殖応答を測定することによって評価した。この細胞株は、IL2R共通γ鎖を天然に発現するヒト赤白血病細胞株であるTF-1細胞株(ATCC CRL-2003)から、Farner,N.L.et al.Blood 86,4568-4578(1995)と同様に、ヒトIL2Rβ鎖の配列をコードするレトロウイルスベクター(遺伝子ID:3560)による形質導入によって生成した。手短に言うと、TF-1_IL2Rβγ細胞をD-PBSで2回洗浄し、10%ウシ胎仔血清(FBS;Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)および1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies GmbH、カタログ番号11360070)を添加したRPMI 1640(Life Technologies GmbH、カタログ番号61870010)に再懸濁した。合計5,000細胞/ウェルを白色96ウェル平底プレート(Fisher Scientific GmbH、カタログ番号10072151)に播種し、IL2変異体含有上清の4倍段階希釈液と共にインキュベートした。3日間の培養後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assay(Promega、カタログ番号G9242)を使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。発光をTecan Infinite(登録商標)F200 PROリーダ(Tecan Deutschland GmbH)で記録し、GraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットした。
【0312】
(実施例3)
RNAにコードされたIL2 mutCD25変異体の組換えCD25(IL2Rα)への結合
mRNAにコードされたIL2 mutCD25変異体の組換えCD25への結合をELISAによって分析した(
図2)。ここで、1μg/mLの組換えヒトまたはマウスCD25(C-Fc、Novoproteinカタログ番号CJ78、CK32)を、100μLのDPBS中で高タンパク質結合96ウェルプレート(Nunc MaxiSorp(商標)、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号439454)に被覆した。HEK-293-T-17のリポフェクションによって生成されたIL2変異体含有上清(実施例2に記載)を、被覆したCD25に適用し、結合したタンパク質をHRP結合抗ヒト血清アルブミン抗体(Abcam、カタログ番号ab8941)によって検出した。一般的なELISA試薬と手順を、DuoSet ELISA Ancillary Reagent Kit 2(R&D Systems、カタログ番号DY008)のプロトコルに従って適用した。
【0313】
図2に示すように、野生型hAlb-hIL2はヒトとマウスの両方のCD25に強く結合した。ヒトCD25に関しては、mutCD25変異体A1、A3、A4およびA6の結合は完全に失われたが、変異体A2およびA5は、ヒトCD25へのいくらかの残留結合を示した(
図2A)。対照的に、すべてのmutCD25変異体がマウスCD25に結合する能力を喪失した(
図2B)。
【0314】
(実施例4)
RNAにコードされたIL2 mutCD25変異体のCD25依存性CTLL-2増殖に対する生物活性。
IL2 mutCD25変異体の生物学的活性を、CD25を高発現するマウスCTLL-2細胞(マウスC57BL/6 T細胞株、ATCC TIB-214)のサイトカイン依存性増殖を分析することによって評価した(
図3)。手短に言うと、CTLL-2細胞を回収し、DPBSで2回洗浄して残留IL2を除去し、10%ウシ胎仔血清(FBS;Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)および1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies GmbH、カタログ番号11360070)を添加したRPMI 1640(Life Technologies GmbH、カタログ番号61870010)に再懸濁した。合計5,000細胞/ウェルを白色96ウェル平底プレート(Fisher Scientific GmbH、カタログ番号10072151)に播種し、4倍に段階希釈したIL2変異体含有上清(実施例2に記載)と共にインキュベートした。3日間の培養後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assay(Promega、カタログ番号G9242)を使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。発光をTecan Infinite(登録商標)F200 PROリーダ(Tecan Deutschland GmbH)で記録し、GraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットした。
【0315】
野生型hALb-hIL2は、用量依存的にCTLL-2細胞の増殖を誘導し、50%効果濃度(EC50)は0.2144%上清であった(
図3)。mutCD25変異体A2およびA5は、野生型hAlb-hIL2と同等に機能し、それぞれ0.1933%上清および0.2127%上清の範囲のEC50値にも反映された。対照的に、IL2変異体A1はEC50値の約1000倍の減少を示し、CTLL-2細胞に対する生物学的活性をほぼ欠如していた。しかし、変異体A3、A4、およびA6は、A3では15.10%上清、A4では11.43%上清、およびA6では7.785%上清の範囲のEC50値でCTLL-2細胞の増殖を誘導し、それにより、野生型hAlb-hIL2と比較して約50倍減少した中間の生物学的活性を示した(
図3)。
【0316】
(実施例5)
RNAにコードされたIL2変異体のヒトPBMC増殖に対する生物活性。
末梢血単核細胞(PBMC)の増殖を測定するために、PBMCを最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1)およびIL2変異体をコードするmRNAを含むHEK293T/17のリポフェクションに由来する上清または対照上清と共にインキュベートした。手短に言うと、PBMCを、Ficoll-Paque(VWR International、カタログ番号17-1440-03)密度勾配分離によって健常ドナーのバフィコートから得た。1.6μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Thermo Fisher、カタログ番号C34564)を使用してPBMCを標識した。ウェルあたり75,000個のCFSE標識PBMCを、96ウェル丸底プレート(Costar、カタログ番号734-1797)中の5%血漿由来ヒト血清(PHS;One Lambda lnc.、カタログ番号A25761)を添加したlscoveの改変ダルベッコ培地(IMDM;Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-053)に播種し、各ドナーについて事前に決定された最適以下の濃度の抗CD3抗体(クローンUCHT1;R&D Systems、カタログ番号MAB100;最終濃度0.03~0.09μg/mL)と共にインキュベートした。並行して、IL2変異体含有上清の4倍段階希釈液(実施例2を参照)を、5%PHSを添加したIMDMで生成した。播種した細胞をIL2変異体上清と1:1で混合し(播種した細胞の培地の容量を参照)、37℃、5%CO2で4日間刺激した。PBMCを回収し、フローサイトメトリで分析した。細胞を、FACS緩衝液(5%FBSおよび5mM EDTAを含むD-PBS)ですべて1:100に希釈した以下の試薬で染色した:抗ヒトCD4-PE(TONBO Bioscience、カタログ番号50-0049)、抗ヒトCD8-PE(TONBO Bioscience、カタログ番号50-0088)、抗ヒトCD56-APC(eBioscience、カタログ番号17-0567-42)および7-AAD(Beckman Coulter、カタログ番号A07704)。フローサイトメトリ分析を、増殖読み出しとしてCFSE希釈を用いてBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメータ(Becton Dickinson)で実施した。取得した増殖データを、FlowJo 10.4ソフトウェアを使用して分析し、エクスポートした拡張指数値を使用してGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットした。
【0317】
高親和性IL2Rαβγ依存性CTLL-2増殖アッセイにおいて野生型IL2と同一に機能する変異体hAlb-hIL2_A2およびhAlb-hIL2_A5に加えて、他のすべての変異体を、ヒトバルクPBMCを用いた抗原非特異的増殖アッセイで分析した。野生型hAlb-hIL2は、CD4+T細胞(
図4A)、CD8+T細胞(
図4B)、およびCD56+NK細胞(
図4C)のCD3誘導増殖を強力に増強することによって、他のすべてのIL2変異体と比較して優れた生物学的活性を示した。CD25結合能力が低下した、試験したすべての変異体は、中間表現型を示した。変異体hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6は、野生型hAlb-hIL2と比較して約50倍の効力の低下に匹敵する機能を示したが、hAlb-hIL2_A1およびhAlb-hIL2_A3は、生物学的活性の低下に向けてさらに強いシフトを伴う重ね合わせ可能な用量反応曲線を示し、すなわちhAlb-hIL2よりも約75倍低い生物活性を示した。記載した変異体について観察された差異は、評価した3つのリンパ球サブセットすべての間で同等であったが、NK細胞の増殖は、一般にT細胞の増殖ほど顕著ではなかった。
【0318】
中間表現型を有するhAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6を、IL2Rβγ複合体への結合を増加させると記載したmutβγ変異を追加で含む変異体とさらに比較した(実施例1も参照)。CD4+およびCD8+T細胞の両方で、hAlb-hIL2は、mutβγ変異の追加によってブーストされない優れた生物学的活性を示し、計算されたEC50値にも反映された(表2)。mutCD25変異体hAlb-hIL2_A4は、hAlb-hIL2と比較して、CD4+T細胞で約50倍、CD8+T細胞で約100倍の生物学的活性の低下を示した。他のmutCD25変異体hAlb-hIL2_A6の効力は、hAlb-hIL2_A4と比較して、両方のT細胞サブセットでさらに2倍減少した。しかし、mutβγ変異の追加は、CD4+およびCD8+T細胞に対する両方のmutCD25変異体(すなわちhAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6)の生物学的活性をブーストし、その結果、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2sと比較して、hAlb-hIL2_A4sの生物活性を4~7倍だけ低下させ、hAlb-hIL2_A6sの生物活性を9~16倍低下させた(
図4DおよびE、表2)。CD56+NK細胞では、mutβγ変異体hAlb-hIL2が最も高い生物活性を示し、野生型hAlb-hIL2の生物活性をわずかに上回った(それぞれ0.6084%上清および1.662%上清のEC50値、表2を参照)。CD4+およびCD8+T細胞とは対照的に、CD56+NK細胞では、mutCD25変異体hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6の効力は、hAlb-hIL2と比較して3~8倍だけ減少した。hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6へのmutβγ変異の追加は、変異体hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sの生物学的活性を野生型hAlb-hIL2のレベルに回復させた(
図4F)。
【0319】
【0320】
(実施例6)
中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)対高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)を発現するIL2依存性レポータ細胞株における様々なIL2変異体の相対的生物活性の比較。
様々なIL2変異体の生物学的活性の決定因子としてのIL2Rα鎖(CD25)の役割を分析するために、高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)を発現するマウスT細胞株CTLL-2の特異的増殖応答を、IL2Rβ鎖も発現するように形質導入された、IL2R共通γ鎖を天然に発現するヒト赤白血病細胞株である、中親和性IL2受容体(IL2Rβγ)を発現するTF-1_IL2Rβγ細胞と比較した(実施例2を参照)。手短に言うと、CTLL-2およびTF-1_IL2Rβγ細胞をD-PBSで2回洗浄し、10%ウシ胎仔血清(FBS;Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)および1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies GmbH、カタログ番号11360070)を添加したRPMI 1640(Life Technologies GmbH、カタログ番号61870010)に再懸濁した。合計5,000細胞/ウェルを白色96ウェル平底プレート(Fisher Scientific GmbH、カタログ番号10072151)に播種し、IL2変異体含有上清の5つの4倍段階希釈液(実施例2に記載)と共にインキュベートした。3日間の培養後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0 Assay(Promega、カタログ番号G9242)を使用してATP量で生細胞を定量することによって増殖を測定した。発光をTecan Infinite(登録商標)F200 PROリーダ(Tecan Deutschland GmbH)で記録し、GraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で用量反応曲線をプロットし、EC50値を計算した。
【0321】
hAlb-hIL2およびCD25結合親和性が低下したhAlb-hIL2 mutCD25変異体(すなわちhAlb-hIL2_A4および_A6)は、CD25非依存性のIL2Rβγ発現TF-1_IL2Rβγ細胞で同等に機能し、用量反応曲線はほぼ重ね合わせ可能であった(
図5A、B)。これは、hAlb-hIL2での2.352%上清からhAlb-hIL2_A6での3.657%上清の範囲の計算されたEC50値にも反映されている(表3)。さらに、IL2Rβへの結合親和性が増強したmutβγ変異体(すなわちhAlb-hIL2s、hAlb-hIL2_A4s、hAlb-hIL2_A6s)は、予想されたように生物学的活性の増加に向けて10~30倍のシフトを示し、hAlb-hIL2sおよびhAlb-hIL2_A4sについては同等のEC50値(それぞれ0.080%上清および0.107%上清)ならびにhAlb-hIL2_A6sではわずかに低い活性(EC50=0.338%上清)であった。
【0322】
極めて対照的に、hAlb-hIL2とhAlb-hIL2変異体の間の大きな違いは、CD25依存性のIL2Rαβγ発現CTLL-2培養物で見ることができる(
図5C、D)。ここで、hAlb-hIL2は、mutβγ変異の追加によってさらにブーストすることができなかった最も高い生物学的活性を示した(表4;hAlb-hIL2とhAlb-hIL2sについて0.115%上清対0.240%上清のEC50)。hAlb-hIL2と比較して、hAlb-hIL2_A4の活性は約19倍減少したが(EC50=2.19%上清)、hAlb-hIL2_A6の場合は約300倍減少した(EC50=33.72%上清)。対応するmutβγ変異体、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、増強された生物学的活性を示したが、それぞれ0.517および1.575のEC50値で、依然としてhAlb-hIL2よりも活性が低かった。
【0323】
【0324】
【0325】
(実施例7)
STAT5リン酸化を読み出しとして使用した、ヒトPBMCにおける様々なT細胞サブセットに対するhAlb-hIL2変異体の活性の比較。
CD25が欠損しているかまたは発現される様々なT細胞サブセットに対するhAlb-hIL2変異体の活性を評価するために、ヒトPBMC全体をhAlb-hIL2変異体で刺激し、様々なサイトカイン希釈でSTAT5リン酸化をアッセイした。手短に言うと、PBMCを、Ficoll-Paque(VWR International、カタログ番号17-1440-03)密度勾配分離によって健常ドナーのバフィコートから得た。PBMCをD-PBS(Life Technologies GmbH、カタログ番号14190250)で2回洗浄し、室温で300×g、5分間の遠心分離によって収集した。PBMCを、10%ウシ胎仔血清(FBS;Biochrom GmbH、カタログ番号S0115)を添加したlscoveの改変ダルベッコ培地(IMDM;Life Technologies GmbH、カタログ番号12440-053)に再懸濁し、37°Cおよび5%CO2で1時間静置した。次に、96ウェルV底プレート(Greiner Bio-One GmbH、カタログ番号651101)のウェルあたり100,000個のPBMCを、10%FBSおよび2倍のPhosSTOP(商標)ホスファターゼ阻害剤(Sigma-Aldrich、カタログ番号04906845001)を添加したIMDMに播種した。並行して、hAlb-hIL2変異体含有上清の5つの4倍段階希釈液(実施例2に記載)を、10%FBSを添加したIMDMで生成した。播種した細胞をhAlb-hIL2変異体上清と1:1で混合し(播種した細胞の培地の容量を参照)、37℃および5%CO2で10分間刺激した。次に、1:1,000の固定可能な生存率色素eFluor(商標)780を添加し、細胞を37°Cおよび5%CO2でさらに5分間刺激した。ホルムアルデヒド(Carl Roth GmbH+Co.KG、カタログ番号P087.4)を2%まで添加して細胞を固定し、氷上で10分間インキュベートした。固定したPBMCを氷冷D-PBSで洗浄し、100%氷冷メタノールを用いて氷上で30分間透過処理した。透過処理したPBMCを1倍の透過処理緩衝液(eBioscience Inc.、カタログ番号00-8333-56)で2回洗浄し、その後1倍の透過処理緩衝液中で遮光して2~8°Cで30分間、1:5のAlexa Fluor(登録商標)488抗Stat5(pY694)(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号612598)、1:25のPerCP-C(商標)5.5マウス抗ヒトCD25(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号560503)、1:25のAPCラット抗FOXP3(eBioscience Inc.、17-4776-41)、1:25のBV421マウス抗ヒトCD4(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号565997)、および1:25のBV510マウス抗ヒトCD8(Becton Dickinson GmbH、カタログ番号563256)で染色した。染色したPBMCを氷冷した1倍透過処理緩衝液で2回洗浄し、最後に2%FBSおよび2mM EDTA(Sigma-Aldrich、カタログ番号03690-100ML)を添加したD-PBSに再懸濁した。フローサイトメトリ分析をBD FACSCanto(商標)IIフローサイトメータ(Becton Dickinson GmbH)で実施し、取得したデータをFlowJoソフトウェアバージョン10.3を使用して分析した。用量反応曲線およびEC50値をGraphPad Prismバージョン6.04(GraphPad Software,Inc.)で計算した。
【0326】
CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞では、hAlb-hIL2は、CD25結合親和性が低下したすべてのIL2 mutCD25変異体(hAlb-hIL2_A4/_A6)およびそのそれぞれのmutβγ変異体(hAlb-hIL2_A4s、hAlb-hIL2_A6s)よりも優れた効力を示した(
図6および表5、6)。詳細には、hAlb-hIL2_A6の生物学的活性はhAlb-hIL2と比較して約320倍大幅に低下したが、hAlb-hIL2_A4は中間の表現型を示した(hAlb-hIL2と比較して約170倍低い活性)。両方のmutCD25変異体の生物活性はmutβγ変異の追加によってブースト可能であり、hAlb-hIL2_A4sはhAlb-hIL2_A6sより優れ、hAlb-hIL2と比較してそれぞれ約6倍および約21倍低い活性を示した。最も活性な変異体はhAlb-hIL2sであり、その生物学的活性はhAlb-hIL2と比較して約15倍も増強されていた。CD25の発現がない場合、hAlb-hIL2の効力は40倍を超えて大幅に低下した(
図6、表5、CD4+CD25+FoxP3+T
regと比較してCD4+CD25-Tヘルパー細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を参照)が、依然としてmutCD25変異体hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6よりも優れていた。同じことが、対応するmutβγ変異を含む変異体にも当てはまる:hAlb-hIL2sは、CD25陰性CD4+およびCD8+T細胞サブセットの両方で最も高い生物学的活性を示し(表7~8を参照、hAlb-hIL2と比較して約5~10倍増加した効力)、続いてhAlb-hIL2_A4sは、CD4+CD25-Tヘルパー細胞ではhAlb-hIL2と同等に機能し、CD8+細胞傷害性T細胞ではhAlb-hIL2よりさらに優れていた(表7~8を参照;hAlb-hIL2と比較して約2倍増加した生物学的活性)。hAlb-hIL2_A4sと比較すると、hAlb-hIL2_A6sの生物学的活性はわずかに低下しており、CD8+細胞傷害性T細胞ではまだhAlb-hIL2とほぼ同じように機能するが、CD4+CD25-Tヘルパー細胞では活性が低下していた。最も重要な点として、CD4+CD25-Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性T細胞で個々のhAlb-hIL2変異体ごとに決定したEC50値と、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞で決定したEC50値の比率を使用すると(表5)、各hAlb-hIL2変異体の「制御性T細胞バイアス」を計算することが可能になる(表9)。hAlb-hIL2は、CD4+CD25-Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性T細胞に対する効力と比較して、制御性CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞に対して40~60倍のバイアスを示す。極めて対照的に、mutCD25変異体hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6を見ると、この制御性T細胞のバイアスはわずかに1.2~1.9倍に減少している。対応するmutβγ変異体hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、4.4~7.1倍のわずかに増加した制御性T細胞バイアスを伴う。hAlb-hIL2sは、CD4+CD25-Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性T細胞に対する効力と比較すると、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞に対して63~182倍の最も強いバイアスを示す。
【0327】
【0328】
【0329】
【0330】
【0331】
【0332】
(実施例8)
インビボでのT細胞ワクチン接種に対するIL2 mutCD25変異体の作用
その後、IL2 mutCD25変異体hIL2_A4およびhIL2_A6がインビボでRNAワクチンによって誘導されるT細胞応答に及ぼす影響を特徴付けた。Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)に記載されているように、BALB/cマウス(群あたりn=5)に、CD8
+T細胞抗原gp70(SPSYAYHQF)をコードする20μgのRNA-LPXを静脈内ワクチン接種した。Gp70は、例えば結腸癌細胞株CT26に認められる腫瘍抗原である。gp70標的ワクチンの抗腫瘍効果は、誘導されるgp70特異的T細胞の数が増えるにつれて増加する(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)および未発表)。ワクチン接種の3日後、hAlb(陰性対照)またはLNPとして製剤化された漸増用量のhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4、hAlb-hIL2_A6 RNAを、
図7に示すように静脈内投与した。7日目に、フローサイトメトリ(BD FACSCelesta)による血液リンパ球サブセットおよびgp70特異的T細胞(MHCテトラマー、MBL)の免疫表現型検査を含む分析を実施した(Kranz,L.M.et al.Nature 534,396-401(2016)に記載されている染色)。
【0333】
実施例4および実施例6に記載されているように、mutCD25変異体は、IL2Rαβγ陽性CTLL-2細胞を刺激する効力が低下している。このため、CD8対Tregの比率を改善しつつ、gp70特異的エフェクタT細胞に対してhAlb-hIL2と同等の効果を誘導できるように、野生型hAlb-hIL2より約3倍高い用量のmutCD25変異体を試験した。hAlb-hIL2のみがIL2媒介毒性の指標としての肝臓重量の有意な増加を示し、より高用量にもかかわらず、hAlb-hIL2 mutCD25変異体は有意な増加を示さなかった(
図7B)。同様に、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)(
図7C)、アラニンアミノトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼまたはリパーゼ活性(Indiko(商標)、Thermo Fischer Scientific)および肺重量の増加は観察されなかった(データは示していない)。野生型hAlb-hIL2および両方のhAlb-hIL2 mutCD25変異体は、フローサイトメトリによって決定されたように、血中のgp70特異的T細胞の用量依存的な増加をもたらし、hAlb-hIL2_A4の最高用量で最も強いブーストおよびhAlb-hIL2_A6で最も弱いブーストが観察された(
図7D)。興味深いことに、特にhAlb-hIL2_A4は、CD8+T細胞およびCD45+白血球の非常に強力な増加をもたらした(
図7E、F)。hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2_A4と比較して、hAlb-hIL2_A6の投与はTregの増加をもたらさなかった(
図7G)。重要な点として、両方のhAlb-hIL2変異体がCD8+T細胞対Tregの比率の増加を媒介し、腫瘍を促進するTregよりもCD8+T細胞の選択的な拡大を明らかにした(
図7H)。比較すると、hAlb-hIL2は、CD8+T細胞対Tregの比率を用量依存的に低下させた。hAlb対照に対するgp70特異的または非特異的CD8+T細胞の倍率変化を比較すると、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2_A4はgp70特異的T細胞の選択的な拡大をもたらすが、hAlb-hIL2_A6は拡大をもたらさない(
図7I)。総合すると、これらの結果は、hAlb-hIL2_A6およびhAlb-hIL2_A4変異体がCD25結合能を有さないかまたは低下しており、CD8+T細胞対Tregの比率の増加などの癌免疫療法に有益な効果をもたらすことを示す。
【0334】
(実施例9)
mutβγ変異の追加によるIL2 mutCD25変異体の有効性の改善
変異体hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6は、CD8+T細胞対Tregの比率を大幅に増加させたが、抗原特異的T細胞の強力な増殖には、活性化T細胞上の高親和性IL2Rαβγへの結合が減少するため、hAlb-hIL2と比較してはるかに高い用量が必要であった。したがって、インビボでのhAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6の効力が、インビトロですべてのIL2Rβγ陽性細胞への結合を改善することが示されたmutβγ変異の導入によってさらに改善できるかどうかを試験した(実施例5~7;Levin,A.M.et al.Nature 484,529-533(2012))。実施例8と同様に、BALB/cマウス(群あたりn=5)に20μgのgp70 RNA-LPXを静脈内ワクチン接種し、3日後にサイトカインRNA-LNPを注射した(
図7A)。この実験では、mutβγ変異による改善が十分にカバーされることを確認し、治療用量の下限を試験するために、サイトカインRNA-LNP用量を大幅に低減した。ワクチン接種の7日後、gp70特異的T細胞、NK細胞、およびCD25 FoxP3陽性Tregを分析した(
図8)。
【0335】
実施例8に示すように、抗原特異的T細胞およびTregの頻度は、hAlb-hIL2_A4の投与によって増加したが、hAlb-hIL2_A6の投与によっては増加しなかった(
図8A、B)。驚くべきことに、両方ともmutβγ変異を含む変異体hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、Tregの頻度(または細胞数、データは示していない)の検出可能な増加を伴わずに抗原特異的T細胞の頻度をさらに増加させた。hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、hAlb-hIL2_A4およびhAlb-hIL2_A6を超える、抗原非特異的CD8 T細胞よりも抗原特異的CD8 T細胞の選択的な増加をもたらした(
図8C)。さらに、すべての構築物は、末梢リンパ球のほぼ50%までNK細胞の頻度(および細胞数、データは示していない)を強力に拡大した(
図8D)。ここで、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、高用量ではhAlb-hIL2_A4と同様の有効性を示したが、低用量ではより優れていた。要約すると、これは、mutβγ変異がTregの頻度を増加させることなくhAlb-hIL2 mutCD25変異体の有効性をさらに改善できることを示す。
【0336】
(実施例10)
mutCD25とmutβγ変異の両方の変異を含むhAlb-hIL2変異体は、mutβγ変異を含むIL2および野生型hAlb-hIL2と比較して優れている
実施例9では、mutCD25変異体へのmutβγ変異の導入が、Tregの頻度を増加させることなく抗原特異的T細胞を刺激する効力を高めることを示した。次に、mutCD25とmutβγの両方の変異を含むIL2変異体が、mutβγを含むIL2変異体(hAlb-hIL2s)よりも優れているかどうかを試験したいと考えた。BALB/cマウス(群あたりn=5)に、0日目と7日目に20μgのgp70 RNA-LPXを、3日目と10日目にサイトカインRNA-LNP(図に示されている用量)を静脈内ワクチン接種した。フローサイトメトリによる血液リンパ球の分析(実施例8を参照)を7日目と14日目に実施した(
図9A)。抗原特異的T細胞数は、hAlb対照と比較してすべてのIL2変異体でブーストされた(
図9B)。重要な点として、hAlb-hIL2およびより低い程度でhAlb-hIL2sはTregを拡大したが、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sで処置した群では、Treg数は増加しなかった(
図9C)。hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sによるTreg増殖の欠如は、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2s変異体の効果を上回る、2回目の処置後の抗原特異的T細胞の強力なブーストを説明し得る(
図9B)。比較すると、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2sの場合、抗原特異的T細胞の拡大は、おそらく誘導されたTregによるエフェクタT細胞の抑制に起因して、2回目の処置後に減速する(
図9B、C)。同様に、CD8+T細胞数は、mutCD25およびmutβγ変異を含むhAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6s変異体によって最も強力に増加した(
図9D)。結果として、抗原特異的T細胞対Treg比(
図9E)およびCD8+T細胞対Treg比(
図9F)は両方とも、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2sと比較して、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6s変異体の投与によって大幅に増加した。すべてのhAlb-hIL2変異体、特にhAlb-hIL2_A4sとhAlb-hIL2_A6sは、非特異的CD8+(テトラマー-/CD8+)T細胞と比較して抗原特異的T細胞(テトラマー+/CD8+)を選択的に拡大した(
図9G)。興味深いことに、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sは、hAlb-hIL2およびhAlb-hIL2sよりも低い頻度のKLRG1+CD127-短命エフェクタT細胞(SLEC)を誘導した(
図9H)。SLECの高い頻度は、記憶形成の可能性の低下のために、T細胞応答の寿命にマイナスの影響を及ぼす(Joshi,N.S.et al.Immunity 27,281-295(2007))。さらに、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6s変異体は、hAlb-hIL2よりもはるかに強力に、およびhAlb-hIL2sよりもわずかに強力にNK細胞を拡大した(
図9I)。mutβγ変異を含むすべての変異体は、hAlb-hIL2と比較して有意に高い割合のKLRG1発現NK細胞を生じさせ、エフェクタ表現型が活性化されていることを示した(
図9J)。KLRG1陽性NK細胞は、肺転移性疾患から保護することが示された(Renner,P.et al.Oncoimmunology 3,e28328(2014))。活性化されたNK細胞の短命な性質のために、mutβγ変異を含むすべての変異体で最初の処置後にNK細胞数が減少するが、依然としてhAlb対照群より高いままである(
図9I)。
【0337】
要約すると、mutCD25変異とmutβγの変異の組合せは、hAlb-hIL2の有効性を有意にブーストして、Tregの拡大を伴わずに抗原特異的T細胞およびNK細胞を増加させ、(抗原特異的)CD8+T細胞対Tregの比率の強力な増加をもたらす。
【0338】
(実施例11)
hAlb-hIL2_A4sの投与はCD4+T細胞応答をブーストする
以前の実験で、本発明人は、mutCD25とmutβγの両方の変異を含むIL2変異体の投与が抗原特異的CD8
+T細胞の誘導を増強することを明らかにした。CD4+T細胞がこれらのIL2変異体から恩恵を受けるかどうかをさらに試験するために、C57BL/6マウス(群あたりn=7)に、0日目、7日目および14日目に20μgのB16_M30(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))RNA-LPXおよび3μgのhAlb、hAlb-hIL2またはhAlb-hIL2_A4s RNA-LNPを静脈内投与した。フローサイトメトリによる血液リンパ球の分析(実施例8を参照)を19日目に実施した(
図10A)。B16_M30は、CD4+T細胞によって認識されるB16F10腫瘍細胞株のMHCクラスII拘束性ネオエピトープである(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))。
【0339】
図10Bおよび10Cに示すように、hAlb-hIL2_A4sの同時投与のみが、CD4+エフェクタT細胞/非Treg(CD25-FoxP3-CD4+)およびB16_M30特異的テトラマー+CD4+T細胞の数をそれぞれ増加させ、hAlb-hIL2は増加させなかった。
【0340】
(実施例12)
mutCD25変異とmutβγ変異を組み合わせたIL2変異体は、癌ワクチン接種の抗腫瘍効果を増強する
ワクチン接種によって誘導される腫瘍抗原特異的T細胞は腫瘍増殖を制御することができ、一方TregはエフェクタT細胞の作用を阻害する(Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015))。本発明人は以前に、hAlb-hIL2がCT26腫瘍担持マウスにおけるgp70 RNAワクチン接種の抗腫瘍効果を有意に改善できることを示した。したがって、hAlb-hIL2_A4sおよびhAlb-hIL2_A6sなどのTregを増加させないhAlb-hIL2の改善された変異体は、治療上さらにより有効であると予想される。
【配列表】