(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電気機械用の絶縁体
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240906BHJP
H02K 1/20 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K1/20 C
(21)【出願番号】P 2021526351
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081747
(87)【国際公開番号】W WO2020104425
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102018219821.7
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルマイダ イー シルバ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンバッハ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】コックス テリー
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クル ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】メイル ティム
(72)【発明者】
【氏名】ピーセク ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ マーティン
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135818(JP,A)
【文献】特開2006-042500(JP,A)
【文献】特開2017-163666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(1)用の絶縁体(100)であって、
本体内部(104)を区画し、内部にステータ巻線(6)を受け入れるための少なくとも1つの巻線ゾーン(106a,106b)と冷却流路(10)を受け入れるための少なくとも1つの流路ゾーン(107a,107b)とが設けられる、プラスチック(K)で構成された外壁(101a,101b,101c,101d)を備え、
さらに、外壁(101a,101b,101c,101d)の内面に巻線ゾーン(106a,106b)用の第1伝熱層(112a)と流路ゾーン(107a,107b)用の第2伝熱層(112b)とを有し、外壁(101a,101b,101c,101d)の外面に電気機械用の第3伝熱層(112c)を有する
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は、上記本体内部(104)を、上記少なくとも1つの巻線ゾーン(106a,106b)と上記少なくとも1つの流路ゾーン(107a,107b)とに細分化する
、電気絶縁性を有するプラスチック(K)で構成された少なくとも1つの分離壁(105a,105b,105c)を備えている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の絶縁体(100)において、
上記外壁(101a~101d)及び上記少なくとも1つの分離壁(105a~150c)は、軸方向(a)に沿って延び、
上記軸方向(a)に垂直な断面において、上記少なくとも1つの巻線ゾーン(106a,160b)及び上記流路ゾーン(107a,107b)は、互いに隣接して配置されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
第1及び第2冷却流路(10,10)を受け入れるための2つの流路ゾーン(107a,107b)が存在し、
上記軸方向(a)に垂直な断面において、上記少なくとも1つの巻線ゾーン(106a,106b)は、上記2つの流路ゾーン(107a,107b)の間に配置され、2つの分離壁(105a,105b)によってそれから分離されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記軸方向(a)に垂直な断面において、互いに隣接して配置された2つの巻線ゾーン(106a,106b)が設けられ、
上記巻線ゾーン(106a,160b)は、上記プラスチック(K)で構成された位相絶縁体(108)によって互いに分離されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項6】
請求項5に記載の絶縁体(100)において、
上記位相絶縁体(108)は、上記絶縁体(100)の分離壁(105c)によって形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は、射出成形部品であり、又
は
上記絶縁体(100)は、一体成形体であり、又
は
上記絶縁体(100)は、押出成形体である
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は、平行六面体の幾何学的形状を有し、又は/及び
上記絶縁体(100)は、上記軸方向(a)に垂直な断面において、台
形の外形を有している
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)の軸方向端部(111)において少なくとも1つの外壁(101a~101d)には、軸方向停止部(109)が形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記軸方向停止部(109)は、上記絶縁体(100)の少なくとも1つの外壁(101a~101d)において
、一体的に成形された外向きに突出する壁カラー(110)として形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
少なくとも2つの外壁(101b~101d)には、スペーサ構造(113)が設けられ、該スペーサ構造により、上記外壁(101a~101d)は、電気機械(1)のステータ(2)のステータスロット(54)に規定の距離で挿入可能である
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項12】
請求項11に記載の絶縁体(100)において、
上記スペーサ構造(113)は、上記本体内部(104)から離れる方向を向いた上記各外壁(101b~101d)の外側に配置された突起(114)によって形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項13】
請求項12に記載の絶縁体(100)において、
上記突起(114)は、関連する上記外壁(101a~101d)に一体に形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項14】
請求項
11~13のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は、上記軸方向(a)に沿って上記ステータスロット(54)に挿入可能なように形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項15】
請求項14に記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は
、絞まり嵌め又は中間嵌めの方法で、上記ステータスロット(54)に挿入可能なように形成されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記絶縁体(100)は、上記分離壁(105a,105b,105c)によって補強されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記軸方向(a)に垂直に規定された上記絶縁体(100)の上記本体内部(104)の断面は、上記軸方向(a)に沿って延びる上記絶縁体(100)の範囲に亘って一定である
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項18】
請求項
17に記載の絶縁体(100)において、
上記軸方向(a)に垂直に規定された上記絶縁体(100)の断面は、上記絶縁体(100)の上記範囲に亘って軸対称及び点対称の両方である
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか1つに記載の絶縁体(100)において、
上記外壁(101a,101b,101c,101d)は
、継目なし及び/又は継手なしで、互いに接続されている
ことを特徴とする絶縁体。
【請求項21】
請求項
20に記載の電気機械(1)において、
上記絶縁体(100)は、上記間隙(9)に挿入される
ことを特徴とする電気機械。
【請求項22】
請求項
20又は
21に記載の電気機械(1)において、
上記絶縁体(100)の上記軸方向(a)は、上記電気機械(1)の上記軸方向(A)に平行に延びている
ことを特徴とする電気機械。
【請求項23】
請求項
20~
22のいずれか1つに記載の電気機械(1)を備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械用の絶縁体、及びそのような絶縁体を備える電気機械、特に、車両用の電気機械に関するものである。また、本発明は、そのような電気機械を備える車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気機械は、一般に、電気モータ又は発電機であり得る。電気機械は、外部ロータ又は内部ロータとして具体化され得る。
【0003】
一般的な機械は、例えば、特許文献1で知られている。この機械は、内部を取り囲むハウジングを備えている。ハウジングは、該ハウジングの周方向において周方向に延び、上記内部を径方向に区画するケーシングと、軸方向の一方側において上記内部を軸方向に区画する後側壁と、軸方向の他方側において上記内部を軸方向に区画する前側壁とを有している。上記機械のステータは、上記ケーシングに固定的に接続されている。上記機械のロータは、上記ステータ内に配置され、上記ロータの回転軸は、前軸受を介して上記前側壁に回転可能に取り付けられている。
【0004】
従来の電気機械のステータは、一般的に、該電気機械の作動中に電圧が印加されるステータ巻線を備えている。これにより熱が発生するが、過熱及び過熱に伴う損傷、さらにはステータの破壊を回避するために、生じる熱を放散させる必要がある。この目的のために、従来の電気機械では、ステータ、特にステータ巻線を冷却するための冷却装置を備え付けることが知られている。そのような冷却装置は、ステータ内(通常、上記ステータの周方向に隣接する2つのステータティースの間においてステータスロットを形成し、上記ステータ巻線を受け入れる間隙内)のステータ巻線の近傍に配置され、内部に冷却剤が流れる1つ以上の冷却流路を備えている。ステータ巻線から冷却剤への熱伝達により、ステータから熱を逃がすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の場合、ステータから各冷却流路を流れる冷却剤への効率のよい熱伝達が、多大な構造上の複雑さを伴わなければ実現できないという欠点があることがわかっている。このことは、電気機械の製造コストに不利な影響を及ぼす。
【0007】
さらに、従来の機械の場合において問題となるのは、特定の状況下で、ステータ巻線が間隙に導入された後、ステータ巻線が、例えば、組立の際に、冷却流路又は冷却剤又はステータティースに接触してステータ巻線の巻線絶縁が損傷すると(例えば、製造上の理由で又は組立の過程で生じると)、ステータ巻線と上記冷却流路を流れる冷却剤との間、及びステータ巻線と該ステータのステータティースとの間において、望ましくない電気的短絡が発生する可能性があることである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上述の不利な点が大部分又は完全に排除された電気機械の改良された実施形態を提供するにことにある。特に、ステータのステータ巻線の改善された冷却によって特徴付けられる電気機械の改良された実施形態を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0010】
そこで、本発明の基本的な概念は、電気機械のステータの2つのステータティース間の間隙(所謂、ステータスロット)にプレハブ構造ユニットとして挿入され得る電気絶縁体を提供することである。絶縁体を上述のスペース又はステータスロットに挿入した後、ステータ巻線をスペースに導入することができる。この場合、絶縁体は、第1に、各間隙におけるステータ巻線の配置を容易にし、第2に、電気機械の作動中における冷却流路又は冷却流路を通過する冷却剤(つまり、特に熱伝達媒体として機能する)に対するステータ巻線の必要な電気絶縁性を確保することができる。つまり、ステータ巻線で発生した廃熱は、プラスチックを介して、間隙にあり、電気機械の作動中に冷却剤が流れる冷却流路に伝達され得る。この効果は、高い熱伝導率を持つ適切なプラスチックを選択することで改善できる。プラスチックは、一般的に電気絶縁性を有しているため、絶縁体内に配置されたステータ巻線をステータティースから電気的に絶縁することも可能である。このようにして、巻線絶縁が損傷している場合であっても、ステータ巻線の導体要素間の望ましくない電気的短絡を防止することができる。
【0011】
電気機械のための本発明による電気絶縁体は、本体内部を部分的に区切るプラスチックで構成された外壁を備えている。好ましくは、プラスチックは、電気絶縁方式で具現化される。さらに、プラスチックは、熱伝達のために使用され得る。本体内部には、ステータ巻線を受容するための少なくとも1つの巻線ゾーンと、冷却流路を受容するための少なくとも1つの流路ゾーンとが存在する。
【0012】
好ましい一実施形態では、絶縁体は、好ましくは電気絶縁性を有するプラスチックで構成された少なくとも1つの分離壁を有しており、該少なくとも1つの分離壁は、上記本体内部を少なくとも1つの巻線ゾーンと少なくとも1つの流路ゾーンとに細分化する。絶縁体がステータスロットに取り付けられた後、ステータの組み立ての過程で、ステータ巻線が絶縁体の巻線ゾーンに配置され、冷却流路が絶縁体の流路ゾーンに配置された場合、このようにして、巻線絶縁が損傷した場合であっても、ステータ巻線と冷却剤を伴う冷却流路との間の望ましくない電気的短絡を防止することができる。
【0013】
好ましい一実施形態では、外壁及び少なくとも1つの分離壁は、軸方向に沿って延びている。この実施形態では、軸方向に垂直な断面において、少なくとも1つの巻線ゾーンと流路ゾーンとが互いに隣接して配置されている。これにより、ステータ巻線と該ステータ巻線を冷却するための冷却流路とを互いに直接隣接させて配置することができる。このようにして、ステータ巻線から冷却流路への特に効果的な熱伝達を実現することができる。同時に、分離壁により、ステータ巻線と冷却流路との間の望ましい電気的絶縁が確保される。
【0014】
好ましい一発展例では、第1冷却流路及び第2冷却流路を受け入れるための2つの流路ゾーンが本体内部に設けられている。この発展例では、軸方向に垂直な断面において、少なくとも1つの巻線ゾーンが2つの流路ゾーンの間に配置され、該少なくとも1つの巻線ゾーンは、2つの分離壁によってこれら2つの流路ゾーンから分離されている。2つの冷却流路に対するステータ巻線のこのような幾何学的配置により、ステータ巻線からの廃熱を両側の2つの冷却流路に伝達することが可能になる。このようにして、ステータ巻線の特に強力な冷却を実現することができる。
【0015】
さらに有利な発展例では、単一の巻線ゾーンではなく、2つの巻線ゾーンが設けられ、これらは、軸方向に垂直な断面において互いに隣接して配置されている。この有利な発展例では、巻線ゾーンは、プラスチックで構成された位相絶縁体によって互いに分離されている。このようにして、2つの異なる巻線ゾーンに配置された導体要素間の望ましくない電気的短絡が防止される。これは、分離壁の材料として電気絶縁性を有するプラスチックを選択した場合に特に当てはまる。これにより、2つの巻線ゾーンに導体素子を配置することができ、これらの導体素子は、互いに電気的に絶縁された状態で、電源の異なる電気位相に接続することができる。これは、例えば、電気機械が二相機械として動作することを意図している場合に必要となることがある。
【0016】
好ましくは、上記位相絶縁体は、絶縁体のさらなる分離壁によって形成することができる。特に好ましくは、上記分離壁は、絶縁体の外壁に材料的に均一に又は一体的に形成される。この変形例は、特に低い製造コストに関連する。
【0017】
好ましくは、絶縁体は、射出成形部品とすることができる。このような射出成形部品は、技術的に簡単な方法で製造することができ、したがって、特に費用効率が高く、特に大量に製造することができる。代替的に又は追加的に、絶縁体は、一体成形体とすることができる。これも同様に、製造コストに有利な効果をもたらす。代替として又はそれに加えて、絶縁体は、押出成形体とすることができる。
【0018】
好ましくは、絶縁体は、平行六面体の幾何学的形状を有することができる。さらに、絶縁体は、軸方向に垂直な断面において、台形、好ましくは長方形の幾何学的形状を有することができる。これは、絶縁体が、電気機械のステータを組み立てる際に、該絶縁体が挿入されるステータスロットの形状に通常対応する形状を備えていることを意味する。変形例では、他の形状も考えられ、そのような代替形状の場合にも、絶縁体は、該絶縁体が挿入される関連するステータスロットの形状に実質的に対応することが特に好ましいということが当てはまる。
【0019】
別の有利な発展例によれば、軸方向に対する絶縁体の軸方向端部において、少なくとも1つの外壁に軸方向停止部を形成することができる。このような軸方向停止部は、軸方向に沿った各間隙内への絶縁体の挿入を容易にする。特に、間隙内での絶縁体の正しい軸方向の位置決めが保証される。
【0020】
技術的に簡単な方法で実施可能であるので特に好ましい1つの発展例によれば、軸方向停止部は、絶縁体の少なくとも1つの外壁に、好ましくは一体的に形成された外向きに突出する壁カラーとして形成することができる。この実施形態は、特に低い製造コストに関連する。
【0021】
有利な一発展例では、少なくとも2つの外壁にスペーサ構造が設けられており、このスペーサ構造により、外壁が電気機械のステータのステータスロットに規定の距離で挿入可能となっている。このようにして、ステータスロットを形成する各間隙内への絶縁体の挿入が容易になる。したがって、絶縁体を間隙内に特に正確に配置することができる。外壁とステータティース及び/又はステータ本体との間のギャップは、絶縁体が2つのステータティース及び/又はステータ本体から距離を置いて配置されているために生じる可能性があるが、上記ギャップは、プラスチックで構成された伝熱層で充填することができ、これにより、冷却流路を流れる冷却剤への熱伝達が容易になる。
【0022】
特に好ましくは、上記スペーサ構造は、各外壁の外周側に配置された、本体内部から離れる方向を向いた突起によって形成される。
【0023】
この実施形態は、技術的に特に容易に実施可能であり、製造時のコスト面でも有利である。
【0024】
有利な発展例の1つによれば、上記突起は、外壁に一体的に形成することができる。この実施形態も、特に費用効果が高いことが分かる。
【0025】
さらに有利な発展例は、軸方向に沿ってステータスロットに挿入可能に形成された絶縁体を提供することができる。これにより、絶縁体をステータスロットに特に簡単に取り付けることができ、そのような絶縁体を備えた電気機械の製造を特に費用効果の高い方法で実施することができる。
【0026】
好ましくは、絶縁体は、ステータスロットに正確にフィットする方法で挿入可能なように形成されている。この場合、絶縁体が、絞まり嵌め又は中間嵌めの方法でステータスロットに挿入可能であるように形成されていると、特に有利であることが分かる。このように形成された絶縁体は、有利なことに、絶縁体をステータスロットに固定するための追加の手段を必要としない。
【0027】
絶縁体のさらに好ましい発展例によれば、絶縁体は、寸法的に剛性の高い方法で形成されている。特に好ましくは、この場合、絶縁体は、寸法的に剛性の高い材料で形成されている。これにより、絶縁体がステータスロットに絞まり嵌めの方法で挿入された場合に、絶縁体が損傷することなく取り付け力を吸収できるという利点がある。
【0028】
さらに有利な発展例では、絶縁体は、分離壁によって補強されている。これは、分離壁が、本体内部を細分化することに加え、絶縁体を機械的に補強する役割も果たすことを意味する。したがって、取り付け中に絶縁体が損傷することなく吸収できる取り付け力を、有利にはさらに増加することができる。
【0029】
絶縁体のさらに好ましい発展例では、絶縁体は非成形方式で製造される。このような絶縁体は、特に、半製品の曲げ及び/又は拡張なしに製造される。従って、有利なことに、成形プロセス中に通常生じる絶縁体の内部応力は、効果的に回避されるか、少なくとも低減されたレベルにまで減少させることができる。
【0030】
さらなる好ましい発展例によれば、軸方向に垂直に規定された絶縁体の本体内部の断面は、軸方向に沿って延びる絶縁体の範囲に亘って一定である。このような絶縁体は、有利には、押出成形法によって、特に大量に、特に費用効率よく生産することができる。
【0031】
絶縁体のさらに有利な発展例は、軸方向に垂直に規定された絶縁体の断面が、絶縁体の範囲に亘って軸対称及び点対称の両方であることを提供する。絶縁体のそのような実施形態は、有利には、そのような絶縁体を有する電気機械の冷却流路及び/又はステータ巻線のような本体内部に配置可能な構成要素の特に均一な分布を可能にする。このような均一な分布は、本体内部に収容可能なステータ巻線を冷却流路によって特に均一に冷却することができるので好ましい。
【0032】
好ましくは、絶縁体の外壁は互いに接続されている。特に好ましくは、絶縁体の外壁は、継目なし及び/又は継手なしで互いに接続されている。これは、絶縁体の機械的特性に有利な効果をもたらす。
【0033】
本発明は、特に車両用の電気機械にも関する。この電気機械は、該電気機械の軸方向を規定する回転軸を中心に回転可能なロータと、導電性を有するステータ巻線を有するステータとを備える。さらに、この電気機械は、ステータ巻線を冷却するために冷却剤が流れる少なくとも1つの冷却流路を備えている。この場合、ステータは、軸方向に延び、ロータの周方向に沿って互いに距離を置いて配置され、ステータのステータ本体から好ましくは径方向内側に突出してステータ巻線を支持するステータティースを有している。周方向に隣接する2つのステータティースの間には、それぞれ間隙が形成されている。
【0034】
本発明によれば、上述したような絶縁体が、少なくとも1つの間隙に配置又は収容される。したがって、絶縁体の上述の効果は、本発明による電気機械にも当てはまる。好ましくは、そのような絶縁体は、ステータの複数の間隙に配置され、特に好ましくは、すべての間隙に配置される。本発明によれば、ステータ巻線は、この場合、絶縁体の少なくとも1つの巻線ゾーンに配置される。同様に、冷却剤が流れるための冷却流路が、絶縁体の少なくとも1つの流路ゾーンに配置される。
【0035】
好ましい一実施形態では、絶縁体は、間隙に挿入される。このような絶縁体の間隙への挿入は、各間隙への予め作成された(プレハブの)絶縁体の取り付けを容易にし、ひいては電気機械のステータの組み立てを容易にする。
【0036】
好ましくは、絶縁体の軸方向は、電気機械の軸方向に平行に延びている。
【0037】
特に好ましくは、間隙に配置された絶縁体は、機械の軸方向に沿って測定された間隙の長さ全体に沿って延びる。
【0038】
特に好ましくは、絶縁体は、軸方向に垂直な断面において、間隙の径方向内側端部と径方向外側端部に配置された2つの流路ゾーンを備える。この変形例では、第1流路ゾーンには第1冷却流路が配置され、第2流路ゾーンには第2冷却流路が配置されている。このようにして、2つの流路ゾーン間又は2つの端部間の領域に、多数の導体要素を有するステータ巻線を受け入れるのに十分な構造スペースが確保される。同時に、これらのステータ巻線の効果的な冷却は、同時に2つの冷却流路によって確保される。
【0039】
好ましくは、第1冷却流路を有する第1流路ゾーンは、間隙の径方向内側端部に配置することができ、第2冷却流路を有する第2流路ゾーンは、間隙の径方向外側端部に配置することができる。ステータ巻線は、径方向に関して2つの冷却流路の間に配置されており、その結果、ステータ巻線から2つの冷却流路を通過する冷却剤への効果的な熱伝達が可能になる。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つの巻線ゾーンは、ステータの径方向に沿って2つの流路ゾーンの間に配置されている。特に好ましくは、両方の巻線ゾーン、即ち、第1及び第2巻線ゾーンが、径方向に沿って2つの流路ゾーンの間に、好ましくは互いに直接隣接して配置される。したがって、この変形例では、径方向に沿って、第1流路ゾーン、第1巻線ゾーン、第2巻線ゾーン、及び第2流路ゾーンが、径方向内側から径方向外側に向かって互いに隣接して配置される。
【0041】
さらに有利な発展例では、絶縁体は、軸方向に垂直な断面において互いに隣接して配置される2つの巻線ゾーンを備える。この発展例では、2つの巻線ゾーンは、プラスチックで構成された位相絶縁体によって互いに分離されている。これにより、間隙に設けられたステータ巻線の導体要素を、電源の異なる電気位相に接続することを目的とする2つの巻線ゾーンに配置することができる。これは、機械が二相機械として動作することを目的とする場合に必要となることがある。
【0042】
別の好ましい実施形態によれば、ステータ巻線は、分布巻線の一部である。この実施形態では、絶縁体は、径方向内側に向かって、即ち、間隙又はステータスロットの開口部に向かって開くように形成されている。
【0043】
有利な一発展例によれば、巻線は、第1及び第2導体要素を備えている。この発展例では、第1導体要素は、第1巻線ゾーンに配置され、電源の共通の第1位相に接続するために互いに電気的に接続されている。同様に、この発展例では、第2導体要素は、第2巻線ゾーンに配置され、電源の共通の第2位相に接続するために互いに電気的に接続されている。これにより、電気機械を、高い動作信頼性を有する二相電気機械として動作させることができる。
【0044】
特に好ましくは、軸方向に垂直な断面において、間隙に配置されたステータ巻線の少なくとも1つの第1又は/及び第2導体要素が、プラスチックによって囲まれている。特に好ましくは、このことは、ステータ巻線の全ての第1又は/及び第2導体要素に当てはまる。このようにして、冷却流路を流れる冷却剤によるステータ巻線の望ましくない電気的短絡が発生しないことが保証される。
【0045】
好ましくは、第1又は/及び第2導体要素は、導電性材料で構成された巻線バーとして形成することができる。特に好ましくは、特に機械的に剛性の高い材料で構成された巻線バーのような導体要素の実施形態のように、機械的に剛性の高い方法で形成されたこれらの導体素子は、電気機械の組み立てのためにステータの間隙に配置された絶縁体への導体要素の導入を容易にする。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、軸方向に垂直な断面において、少なくとも1つの巻線バー、好ましくは全ての巻線バーが、2つの短辺と2つの長辺とを有する長方形の形状を有している。このことにより、特に構造的に省スペースであることが分かる。
【0047】
特に好ましくは、第1導体要素は、位相絶縁体によって第2導体要素から電気的に絶縁されている。このようにして、電源の異なる電気位相に接続された又は接続されることが意図された2つの導体要素間の望ましくない電気的短絡を回避することができる。
【0048】
さらに有利な発展例によれば、プラスチックで構成された第1伝熱層が、ステータ巻線と絶縁体との間に配置されている。このようにして、ステータ巻線からの熱放散を増進することができる。特に、ステータ巻線からの熱放散を減少させる望ましくないエアギャップ又は空気包含物の形成を回避することができる。
【0049】
さらに、第1伝熱層は、少なくとも2つの隣接する導体要素の間に配置することができる。このようにして、2つの隣接する導体要素間の望ましくない電気的短絡を防止することができる。
【0050】
さらに好ましい実施形態によれば、プラスチックで構成された第2伝熱層が、冷却流路と絶縁体との間に配置されている。これにより、冷却流路又は冷却流路を流れる冷却剤への熱伝達を増進することができる。特に、冷却流路への熱伝達を減少させる望ましくないエアギャップや空気包含物の形成を回避することができる。
【0051】
第1及び/又は第2伝熱層の代替又は追加として、プラスチックで構成された第3伝熱層を、絶縁体と2つの隣接するステータティースを有するステータ本体との間に配置することができる。このようにして、ステータティース又はステータ本体からの熱伝達の放散を増進することができる。特に、ステータティース又はステータ本体からの熱伝達の放散を減少させる望ましくないエアギャップ又は空気包含物の形成を回避することができる。
【0052】
好ましくは、第1導体要素は、径方向内側の巻線ゾーンに配置することができ、電源の共通の第1位相に接続する目的で互いに電気的に接続することができる。この変形例では、第2導体要素は、径方向外側の巻線ゾーンに配置され、電源の共通の第2位相に接続する目的で、互いに電気的に接続される。この変形例では、わずかな構造的スペースしか必要とせずに、二相機械としての機械の実現又は動作が可能となる。特に、この方法では、ステータ巻線の特に多数の導体要素を各間隙に配置することができ、電気機械の性能を向上させることができる。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、軸方向に垂直な断面において、少なくとも1つの第1又は第2導体要素、好ましくは全ての第1又は第2導体要素が、プラスチックによって囲まれている。このようにして、導体素子の電気絶縁性、特に冷却流路に対する電気絶縁性が著しく向上する。
【0054】
好ましくは、絶縁体のスペーサ構造は、ステータティースに支持され、代替的に又は追加的に、ステータ本体に支持され得る。このようにして、絶縁体は、間隙に機械的に安定して固定される。
【0055】
さらに有利な発展例として、2つのステータティース又は/及びステータ本体の表面部分であって間隙に面する部分に支持構造を設けることができ、絶縁体の外壁は、上記外壁がステータティース又は/及びステータ本体からそれぞれ距離を置いて配置されるように、上記支持構造に支持される。このようにすることで、ステータスロットを形成する各間隙への絶縁体の挿入が容易になる。特に、絶縁体は、このようにして間隙に特に正確に配置することができる。外壁とステータティース及び/又はステータ本体との間のギャップ又は空気包含物は、絶縁体が2つのステータティース及び/又はステータ本体から距離を置いて配置されているために生じる可能性があるが、プラスチックからなる伝熱層で充填することができる。これにより、機械の作動中にステータ巻線及びステータ本体で発生する熱の冷却流路を流れる冷却剤への伝達が増進する。
【0056】
好ましくは、支持構造は、ステータティース又は/及びステータ本体から各間隙に向かって突出する突起によって形成されている。この実施形態は、技術的に特に容易に実施可能であり、したがって、製造時のコスト面でも有利である。
【0057】
有利な一発展例によれば、突起部は、ステータティース又は/及びステータ本体にそれぞれ一体的に形成されている。この実施形態は、特に費用効果が高いことが分かる。
【0058】
別の好ましい実施形態では、追加の冷却流路がステータ本体に、特に、該ステータ本体の間隙を区切る2つのステータティースの間の領域に形成されている。そのような追加の冷却流路は、例えば、各ステータ本体に設けられた穿孔又は穴の形で具現化することができる。特に好ましくは、追加の冷却流路は、ステータ本体のうち、径方向外側で間隙を区切り、該間隙の径方向内側で該間隙に隣接する領域に配置される。このようにして、間隙に追加の冷却効果をもたらすことができ、これは、上記間隙に配置されたステータ巻線からの熱の放散の向上に繋がる。
【0059】
別の好ましい実施形態では、第1伝熱層のプラスチックは、好ましくは電気絶縁性を有する第1プラスチック材料によって形成される。代替的に又は追加的に、この実施形態では、第2伝熱層のプラスチックは、好ましくは電気絶縁性を有する第2プラスチック材料によって形成することができる。代替的に又は追加的に、この実施形態では、第3伝熱層のプラスチックは、好ましくは電気絶縁性を有する第3プラスチック材料によって形成することができる。代替的に又は追加的に、この実施形態では、絶縁体のプラスチック、特に絶縁体の外壁のプラスチックは、好ましくは電気絶縁性を有する第4プラスチック材料によって形成することができる。
【0060】
好ましくは、第1プラスチック材料又は/及び第2プラスチック材料又は/及び第3プラスチック材料又は/及び第4プラスチック材料は、熱可塑性プラスチックであり得る。代替的に又は追加的に、第1プラスチック材料又は/及び第2プラスチック材料又は/及び第3プラスチック材料又は/及び第4プラスチック材料は、熱硬化性プラスチックであり得る。この場合、熱硬化性プラスチックと熱可塑性プラスチックの両方の熱伝導率が、材料組成の選択によって設定できる。その結果、熱可塑性プラスチックの熱伝導率は、熱硬化性プラスチックの熱伝導率以上になり得、その逆にもなり得る。熱可塑性プラスチックの使用は、熱硬化性プラスチックの使用に比べて様々な利点がある。例えば、熱可塑性プラスチックは、熱硬化性プラスチックと比較して、可逆的な成形プロセスを採用しているため、リサイクル性に優れ又は脆性が低く、減衰特性が向上している。しかしながら、熱可塑性プラスチックは、通常、熱硬化性プラスチックより調達コストが高いため、コスト上の理由から、熱可塑性プラスチックを選択的に使用することが推奨される。熱伝導率が低減された熱硬化性プラスチックを、熱伝達の重要度が低い領域に使用することは、電気機械の製造コストの削減に繋がる。
【0061】
好ましくは、第1又は/及び第2又は/及び第3又は/及び第4プラスチック材料は、同一の熱伝導率を有する。代替的に又は追加的に、第1又は/及び第2又は/及び第3又は/及び第4プラスチック材料は、異なる熱伝導率を有することができる。
【0062】
好ましくは、第1又は/及び第2又は/及び第3又は/及び第4プラスチック材料は、同一の材料であり得る。同様に、第1又は/及び第2又は/及び第3又は/及び第4プラスチック材料は、しかしながら、異なる材料であり得る。
【0063】
好ましくは、プラスチックの熱伝導率、特に第1又は第2又は第3又は第4プラスチック材料の熱伝導率は、少なくとも0.5W/mK、好ましくは少なくとも1W/mKである。
【0064】
特に好ましい一実施形態によれば、ステータ巻線は分布巻線の一部である。
【0065】
また、本発明は、上述の電気機械を備える自動車に関するものである。したがって、電気機械の上述した利点は、本発明による自動車にも当てはまる。
【0066】
本発明のさらに重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面を参照した図の関連する説明から明らかになる。
【0067】
上述した特徴及び以下説明する特徴は、それぞれ示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用可能であることは言うまでもない。
【0068】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面に示されており、以下の説明でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図面では、それぞれ模式的に描かれている。
【
図1】
図1は、本発明に係る絶縁体の一例を示す等角図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2の絶縁体を備える本発明に係る電気機械の一例を示すものである。
【
図4】
図4は、
図3の電気機械のステータをロータの回転軸に垂直な断面で示すものである。
【
図5】
図5は、
図4のステータの詳細図であり、周方向に隣接する2つのステータティース間の間隙の領域で示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1及び
図2は、電気機械のステータ用のプラスチック11で構成された本発明に係る絶縁体100の一例を示している。好ましくは、絶縁体100は射出成形部品である。絶縁体100は、さらに、一体成形体であってもよく、代替的に又は追加的に、押出成形体であってもよい。
【0071】
図1は、絶縁体100を示す等角図であり、
図2は、絶縁体100を示す断面図である。絶縁体100は、本体内部104を区切っている。
図1によれば、絶縁体100は、平行六面体の幾何学的形状を有している。この平行六面体は、プラスチック11で構成された4つの外壁101a,101b,101dによって形成されている。4つの外壁101a~101dは、軸方向aに沿って延びている。
図2に示すように、軸方向aに垂直な断面において、外壁101a~101dは、2つの短辺102a,102bと、2つの長辺103a,103bとを形成している。2つの短辺102a,102bは、互いに対向している。同様に、2つの長辺103a,103bは、互いに対向している。2つの短辺102a,102bは、好ましくは、2つの長辺103a,103bに対して直交して配置される。
【0072】
図1及び
図2から明らかなように、本体内部104は、同様に軸方向aに沿って延びるプラスチック11からなる分離壁105a,105b,105cによって、第1及び第2巻線ゾーン106a,106bと、第1及び第2流路ゾーン107a,107bとに細分化されている。第1分離壁105aは、第1巻線ゾーン106aと第1流路ゾーン107aとの間に配置されている。また、第2分離壁105bは、第2巻線ゾーン106bと第2流路ゾーン107bとの間に配置されている。
【0073】
第3分離壁105cは、第1及び第2巻線ゾーン106a,106bの間に配置されている。
図2に示す断面において、3つの分離壁105a,105b,105cは、それぞれ互いに平行に延び、さらに、2つの外壁101c,101dと平行に延びている。従って、3つの分離壁105a,105b,105cは、2つの外壁101a,101bに対して直交して延びている。
【0074】
2つの流路ゾーン107a,107bは、第1及び第2冷却流路(
図1及び
図2に図示しない)を受容する機能を有する。同様に、2つの巻線ゾーン106a,106bは、ステータ巻線の導体要素(
図1及び
図2に図示しない)を受容する機能を有する。
【0075】
図1及び
図2によって明らかにされるように、2つの巻線ゾーン106a,106bは、互いに隣接して互いに隣り合うように配置されている。また、2つの巻線ゾーン106a,106bは、2つの流路ゾーン107a,107bの間にさらに配置されている。さらに、2つの巻線ゾーン106a,106bは、プラスチック11で構成された位相絶縁体108によって、互いに電気的に絶縁され、互いに空間的に分離されている。位相絶縁体108は、既に提示した分離壁105cによって形成されている。
【0076】
図1によれば、絶縁体100の4つの外壁101a~101dの軸方向端部111には、軸方向停止部109を形成することができる。
【0077】
軸方向停止部109は、絶縁体100の4つの外壁101a~101dの全てに一体的に形成された、外向きに突出した部分的に又は完全に周方向の壁カラー110として形成することができる。
【0078】
以下では、
図3及び4を参照しながら上述の絶縁体100を備える電気機械1について説明する。電気機械1は、車両、好ましくは道路車両で使用できるような寸法になっている。
図3は、電気機械1を縦断面で示し、
図4は、電気機械1を横断面で示している。
【0079】
電気機械1は、
図3に概略的に示されたロータ3と、ステータ2とを備えている。説明のために、
図4は、
図3から切断線II-IIに沿って切断した回転軸Dに垂直なステータ2の断面を別図で示すものである。
図3によれば、ロータ3は、ローターシャフト31を有し、磁気分極が周方向Uに沿って交互に変化する複数の磁石(
図3には具体的に図示せず)を有することができる。ロータ3は、ローターシャフト31の中心長手方向軸Mによってその位置が規定される回転軸Dを中心に回転可能である。回転軸Dは、該回転軸Dに平行に延びる軸方向Aを規定する。径方向Rは、軸方向Aに垂直な方向である。周方向Uは、回転軸Dを中心に回転する方向である。
【0080】
図3に示すように、ロータ3は、ステータ2の内側に配置されている。そのため、ここで示した電気機械1は、所謂インナーロータ型と呼ばれるものである。しかしながら、ロータ3がステータ2の外側に配置された、所謂アウターロータ型での実現も考えられる。ローターシャフト31は、第1軸受32aとその軸方向に距離を空けて配置された第2軸受32bとにおいて、回転軸Dを中心に回転可能にステータ2に取り付けられている。
【0081】
さらに、ステータ2は、既知の方法で、磁界を発生させるために電圧が印加され得る複数のステータ巻線6を備えている。ロータ3は、該ロータ3の磁石によって生成される磁界と、導電性を有するステータ巻線6によって生成される磁界との磁気相互作用によって回転する。
【0082】
図2の断面図から、ステータ2は、例えば鉄製の環状のステータ本体7を有し得ることがわかる。特に、ステータ本体7は、軸方向Aに沿って互いに積層され、互いに接着された複数のステータ本体プレート(図示せず)から形成することができる。ステータ本体7の内側には、複数のステータティース8が一体的に放射状に形成されている。複数のステータティース8は、軸方向Aに沿って延びている。複数のステータティース8は、ステータ本体7から径方向内側に突出し、周方向Uに沿って互いに間隔を空けて配置されている。各ステータティース8は、ステータ巻線6を支持している。個々のステータ巻線6は、共に巻線配列を形成する。ステータ巻線6によって形成されるべき磁極の数に応じて、巻線配列全体の個々のステータ巻線6は、対応して互いに電気的に接続され得る。
【0083】
電気機械1の作動中、電圧が印加されたステータ巻線6は、過熱や過熱に伴う電気機械1の損傷又は破壊さえも防止するためには電気機械1から放散されなければならない廃熱を発生させる。そのため、ステータ巻線6は、ステータ2を通って導かれ、ステータ巻線6によって生成された廃熱を熱伝達によって吸収する冷却剤Kによって冷却される。
【0084】
ステータ2を通して冷却剤Kを導くために、電気機械1は、冷却剤入口33を介して冷却剤Kが導入される冷却剤分配室4を備える。冷却剤収集室5は、軸方向Aに沿って、冷却剤分配室4から距離を置いて配置されている。冷却剤分配室4は、複数の冷却流路10(
図3では、そのうちの1つのみ識別可能)によって冷却剤収集室5と流体的に連絡している。冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5はそれぞれ、軸方向Aに垂直な図示しない断面において環状の形状を有し得る。複数の冷却流路10は、周方向Uに沿って互いに間隔を空けて配置され、それぞれが環状の冷却剤分配室4から環状の冷却剤収集室5へと軸方向Aに沿って延びている。したがって、冷却剤入口33を介して冷却剤分配室4に導入された冷却剤Kを、個々の冷却流路10に分配することができる。冷却剤Kは、冷却流路10を流れてステータ巻線6から熱を吸収した後、冷却剤収集室5に集められ、ステータ2に設けられた冷却剤出口34を介して電気機械1の外部へ再び導かれる。
【0085】
図3及び
図4の図からわかるように、周方向Uにおいて隣接する2つのステータティース8の各間には、間隙9が形成されている。上記間隙9は、ステータティース8と同様に軸方向Aに沿って延びる「ステータスロット」又は「ステータスリット」としても当業者に知られている。各間隙9には、ステータ巻線6及び冷却流路10を受け入れるためのプラスチック11で構成された絶縁体100が挿入されている。この場合、絶縁体100は、該絶縁体100の軸方向が電気機械1又はステータ2の軸方向Aに平行に延びるように、各間隙9に配置されている。
【0086】
好ましくは、各間隙9に配置された絶縁体100は、電気機械1の軸方向Aに沿って測定された間隙の長さl全体に沿って延びている(この点に関しては、
図3も参照)。
【0087】
以下、
図5の例示について説明する。
図5は、周方向Uにおいて隣接する2つのステータティース8(以下、上記ステータティース8は、ステータティース8a,8bとも呼ばれる)の間において具現化される間隙9の詳細図である。
図5は、軸方向Aに垂直な断面における間隙9を示している。
【0088】
図5によれば、間隙9は、径方向内側に開口部52を有している、即ち、間隙9は、径方向内側が開口するように形成されている。間隙9は、軸方向Aに垂直な断面において、台形、特に長方形の外形を有し得る。上記断面において上記絶縁体100の外形にも同じことが当てはまる。特に好ましくは、間隙9及び絶縁体100は、同じ外形又は輪郭を有する。
図5の例では、第1冷却流路10は、間隙9又はステータスロット54の径方向内側端部56aの領域、即ち、開口部52の領域に配置されている。さらに、第2冷却流路10は、間隙9の径方向外側端部56bの領域、即ち、径方向外側で間隙9を区切るステータ本体7の近くに配置されている。
【0089】
図5から明らかなように、間隙9又は本体内部104に配置されたステータ巻線6は、第1及び第2導体素子60a,60bを備えている。第1導体要素60aは、絶縁体100の第1巻線ゾーン59aに配置され、電源(図示せず)の共通の第1位相に接続する目的で、互いに電気的に接続され得る。この電気的接続は、間隙9又はステータスロット54の軸方向の外側でなされ得る。第2導体要素60bは、絶縁体100の第2巻線ゾーン59bに配置され、電源の共通の第2位相に接続する目的で、互いに電気的に接続され得る。この電気的接続も、間隙9又はステータスロット54の軸方向の外側でなされ得る。したがって、第1導体要素60aは、位相絶縁体108によって第2導体要素60bから電気的に絶縁されている。
【0090】
図5に示すように、第1及び第2導体要素60a,60bは、それぞれの場合において、導電性材料で構成された巻線バー65a,65bとして具現化され、また、その棒状の実施形態により、機械的な剛性も備えている。軸方向Aに垂直な断面において、巻線バー65a,65bは、それぞれ2つの短辺67と2つの長辺68を有する長方形66の形状を有している。
【0091】
第1冷却流路10を有する第1流路ゾーン107aは、径方向Rに関して間隙9の径方向内側端部56aに配置されている。それに応じて、第2冷却流路10を有する第2流路ゾーン107bは、径方向Rに関して間隙9の径方向外側端部56bに配置されている。したがって、2つの巻線ゾーン106a,106bは、径方向Rに沿って、2つの流路ゾーン107a,107bの間に配置されている。そのため、径方向内側から径方向外側へ径方向Rに沿って、第1冷却流路10を有する第1流路ゾーン107aの後には、第1導体要素60aを有する第1巻線ゾーン106aが続く。また、第1巻線ゾーン106aの後には、第2導体素子60bを有する第2巻線ゾーン106bが続き、該第2巻線ゾーン106bの後には、径方向Rに沿って、第2冷却流路10を有する第2流路ゾーン107bが順に続く。
【0092】
図5によって追加的に明らかにされるように、軸方向Aに垂直な断面において、ステータ巻線6の第1及び/又は第2導体素子60a,60bと絶縁体100との間に、プラスチック11で構成された第1伝熱層112aを配置することができる。また、
図5に示されるように、第1伝熱層112aは、2つの隣接する導体素子60a,60bの間に配置することもできる。好ましくは、軸方向Aに垂直な断面において、全ての第1及び第2導体素子60a,60bは、プラスチック11によって囲まれている。
【0093】
第1伝熱層112aの代替として又は第1伝熱層112aに加えて、プラスチック11からなる(第2)伝熱層112bを、軸方向Aに垂直な断面において、各冷却流路10と絶縁体100との間に配置することができる。
【0094】
図5によって追加的に明らかにされるように、絶縁体100の外壁101a,101c,101dには、スペーサ構造113が形成されている。このスペーサ構造により、間隙9において、外壁101a,101c,101dを、ステータティース8a,8b及び/又はステータ本体7から距離を置いて配置することができる。スペーサ構造113は、好ましくは、各外壁101b,101c,101dの外側に配置されて絶縁体100の本体内部104とは反対側向きの突起部114によって形成されている。特に好ましくは、突起部114は、各外壁101a,101c,101dに一体的に形成することができる。このようにして、スペーサ構造体113は、ステータティース8a,8b上及びステータ本体7上で支持される。本実施例の簡略化された変形例では、スペーサ構造体113を省略することができる。
【0095】
外壁101b,101c,101dとステータティース8a,8b及び/又はステータ本体7との間に生じるギャップ61は、プラスチック11で構成された第3伝熱層112cで充填することができる。つまり、第1及び/又は第2伝熱層112a,112bに代えて又は第1及び/又は第2伝熱層112a,112bに加えて、プラスチック11からなる第3伝熱層112cを、軸方向Aに垂直な断面において、絶縁体100と2つの隣接するステータティースを有するステータ本体7との間に配置することができる。
【0096】
また、
図5に破線の図示で示すように、ステータ本体7には、径方向内側で間隙9に隣接するさらなる冷却流路10'を形成して配置することができる。そのような追加の冷却流路10'は、穴又は穿孔の形態で実現することができる。
【0097】
図6は、
図5の例の1つの変形例を示す。以下では、2つの例の相違点のみを説明する。
図6によれば、2つのステータティース8a,8b及びステータ本体7の間隙9に面する表面部分には、絶縁体100の外壁101b,101c,101dを支持し得る支持構造体120を形成することができる。絶縁体100のスペーサ構造113と類似した方法で、支持構造120は、ステータティース8a,8b及び/又はステータ本体7から間隙9に突出する突起121によっても形成することができる。支持構造体120の突起121は、2つのステータティース8a,8b及び/又はステータ本体7に一体的に形成することができる。
【0098】
図7は、
図5の例のさらなる変形例を示している。以下では、2つの例の相違点のみを説明する。
図7の例では、軸方向a,Aに垂直な断面において、絶縁体100は、隣接する2つの外壁101a,101b,101c,101dのそれぞれの間に非直角の中間角を有する台形の形状を有している。さらに、唯一の巻線ゾーン106aに、可撓性導体素子60cを有するステータ巻線6が配置されている。
図7の例では、2つの冷却流路10が設けられている。第1冷却流路10は、間隙9の径方向内側端部56aに配置され、第2冷却流路10は、間隙9の径方向外側端部56bに配置されている。その結果、第1冷却流路10を有する絶縁体100の第1流路ゾーン107aは、径方向内側端部56aの領域に配置されている。それに応じて、第2冷却流路10を有する第2流路ゾーン107bは、間隙9の径方向外側端部56bの領域に配置される。
図7の変形例では、絶縁体100は、径方向内側に、即ち、間隙9又はステータスロット54の開口部52に向かって、開口するように形成されている。これは、絶縁体100の外壁101aが省略されていることを意味する。
【0099】
また、
図7により明らかなように、巻線ゾーン106aと第2流路ゾーン107bとの間にのみ分離壁105bが設けられている。対照的に、このような分離壁は、巻線ゾーン106aと第1流路ゾーン107aとの間には設けられていない。一変形例では、このような分離壁をここにも設けることができる。それに応じて、さらなる変形例では、
図7に示す外壁105cを省略することができる。さらなる組み合わせの可能性が出てくるが、これは関連技術の当業者には
図7からまさに明らかであり、したがって、明示的には説明しない。
【0100】
例示的なシナリオでは、第1伝熱層112aのプラスチック11は、電気絶縁性を有する第1プラスチック材料K1によって形成され、第2伝熱層112bのプラスチック11は、電気絶縁性を有する第2プラスチック材料K2によって形成され、第3伝熱層112cのプラスチック11は、電気絶縁性を有する第3プラスチック材料K3によって形成されている。また、電気絶縁体100のプラスチック11、特に電気絶縁体100の外壁101a~101dのプラスチック11は、同様に電気絶縁性を有する第4プラスチック材料K4によって形成されている。
【0101】
図の例では、絶縁体100の第4プラスチック材料K4は、熱硬化性プラスチックであり、一方、3つの伝熱層112a,112b,112cの第1,第2,第3プラスチック材料K1,K2,K3は、熱可塑性プラスチックである。その点に関する変形例では、4つのプラスチック材料K1,K2,K3,K4への熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックの他の割り当ても可能であることは言うまでもない。例示的なシナリオでは、第1、第2及び第4プラスチック材料K1、K2、K4は、それぞれ第3プラスチック材料K3よりも高い熱伝導率を有する。このようにして、ステータ巻線6から冷却流路10への効果的な熱伝達が確保される。図の例では、4つのプラスチック材料K1,K2,K3,K4は、異なる材料である。この場合の4つのプラスチック材料K1,K2,K3,K4の全ての熱伝導率は、少なくとも0.5W/mK、好ましくは少なくとも1W/mKである。
【0102】
以下では、再び
図3を参照する。さらに、
図1によれば、ステータ本体7及びステータティース8を有するステータ2は、第1及び第2エンドシールド25a,25bの間に軸方向に配置されている。
【0103】
図3に示されるように、冷却剤分配室4の一部は、第1エンドシールド25aに配置され、冷却剤収集室5の一部は、第2エンドシールド25bに配置されている。そのため、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、それぞれプラスチック構成物11に設けられた空洞41a,41bによって部分的に形成されている。第1の空洞41aは、ここでは、冷却剤分配室4を形成するために第1エンドシールド25aに具現化された空洞42aによって補完されている。これに対応して、第2の空洞41bは、冷却剤収集室5を形成するために第2エンドシールド25bに具現化された空洞42bによって補完されている。したがって、上述した変形実施形態では、プラスチック11は、少なくとも部分的に冷却剤分配器室4及び冷却剤収集室5を区画する。
【0104】
さらに、冷却剤供給部35は、第1エンドシールド25aにおいて具現化され得る。特に、
図1に示すように、冷却剤供給部35は、冷却剤分配室4を第1エンドシールド25aの外周側に設けられた冷却剤入口33に流体的に接続する。これに対応して、冷却剤排出部36は、第2エンドシールド25bにおいて具現化され得る。特に、
図1に示すように、冷却剤排出部36は、冷却剤収集室5を第2エンドシールド25bの外周側に設けられた冷却剤出口34に流体的に接続する。これにより、それぞれの場合において、冷却剤分配室4及び/又は冷却剤収集室5を、関連するステータ巻線6の第1及び第2の端部14a,14bの径方向外側であって該第1及び第2の端部14a,14bの延長線上に軸方向Aに沿って配置することができる。この手段によっても、電気機械1の作動中に特に熱負荷がかかるステータ巻線6の端部14a,14bが、特に効果的に冷却される。
【0105】
図3によれば、プラスチック11は、ステータ本体7の外周面30にも配置することができ、これにより、外周面30にプラスチックコーティング11.1を形成することができる。したがって、典型的には導電性を有するステータプレートから形成されるステータ2のステータ本体7を、周囲から電気的に絶縁することができる。したがって、ステータ本体7を受け入れるための別個のハウジングの提供を省略することができる。
【0106】
図1,2,4,5,6,7は、さらに、絶縁体100が、軸方向aに沿ってステータ2のステータスロット54に挿入可能に形成されていることを明らかにしている。この場合、絶縁体100は、図示の例によれば、ステータスロット54に正確に嵌め込み可能に形成されている。この場合、絶縁体100は、絞まり嵌め又は中間嵌めの方法でステータスロット54に挿入可能であるように形成される。これはもちろん、
図4,5,6の例では、絶縁体100と、該絶縁体100が挿入可能又は挿入されるステータスロット54との間の対応する調整を前提としている。絶縁体100は、寸法的に硬く形成されている。この場合、絶縁体100は、好ましくは、寸法的に剛性の高い材料から形成されている。絶縁体100は、隔壁105a,105b,105cによって補強されている。つまり、分離壁105a,105b,105cは、本体内部104を細分化することに加えて、絶縁体100を機械的に補強するという役割も果たしている。絶縁体100は、図示された実施例に従って、非成形方式で製造される。さらに、軸方向aに垂直に規定された絶縁体100の本体内部104の断面は、絶縁体100の範囲に亘って一定であることが明らかである。この場合、絶縁体100の範囲は、軸方向aに沿って延びる。
【0107】
図1,2,4,5,6は、さらに、軸方向aに垂直に規定された絶縁体100の断面が、軸対称及び点対称の両方であることを示している。絶縁体の外壁101a,101b,101c,101dは、互いに連結されている。図示の例によれば、絶縁体100の外壁101a,101b,101c,101dは、継目なし及び/又は継手なしで互いに接続されている。