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特許7550755向上された嗜好性を有する多価不飽和脂肪酸含有食品成分及びそれを製造する方法
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  • 特許-向上された嗜好性を有する多価不飽和脂肪酸含有食品成分及びそれを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】向上された嗜好性を有する多価不飽和脂肪酸含有食品成分及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/158 20160101AFI20240906BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20240906BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20240906BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20240906BHJP
   A23K 10/22 20160101ALI20240906BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20240906BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20240906BHJP
【FI】
A23K20/158
C11C3/00
A23D9/00 516
A23D9/02
A23K10/22
A23K10/16
A23K50/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021528445
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2019066265
(87)【国際公開番号】W WO2020123965
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】62/779,660
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マクギリブレイ, タニヤ フランシス
(72)【発明者】
【氏名】メイ, ジェニファー イヴォンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ステファンスキー, マイケル エル.
(72)【発明者】
【氏名】タバイエーネジャド, ナスリン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, ジョナサン, ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】カスナー, ステファニー ラヌー
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/156596(WO,A1)
【文献】特表2002-540221(JP,A)
【文献】特表2009-500022(JP,A)
【文献】特開平08-302382(JP,A)
【文献】特表2008-541765(JP,A)
【文献】特開2015-037393(JP,A)
【文献】特開2005-278650(JP,A)
【文献】国際公開第01/041582(WO,A1)
【文献】HARLES F. LIN, THOMAS C.-Y. HSIEH, JANE B. CROWTHER, ANTHONY P. BIMBO,Efficiency of Removing Volatiles from Menhaden Oils by Refining, Bleaching, and Deodorization,JOURNAL OF FOOD SCIENCE ,第55巻第6号,1990年,第1669-1672頁,https://ift.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/j.1365-2621.1990.tb03596.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/158
C11C 3/00
A23D 9/00
A23D 9/02
A23K 10/22
A23K 10/16
A23K 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパニオンアニマルに対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の嗜好性を向上させるための方法であって、
a)粗製PUFA油を入手するステップと;
)ステップa)からの前記PUFA油を、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はステップa)からの前記PUFA油を脱ガムすることと、SPEを使用して精製することとの両方を行うステップと;
c)ステップb)からの前記PUFA油を脱臭するステップと
を含み、ステップa)で出発された前記粗製油の重量を100%として計算されるステップc)後の前記PUFA油の収率は、85%以上であり、前記嗜好性は、動物食物嗜好性試験によって測定され、ステップc)後に入手された前記PUFA油の嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも10%ポイント高く、
ステップc)後の前記PUFA油に含まれる1つ又は複数のメイラード反応化合物の総量が、ステップa)で出発された前記粗製油に含まれる前記メイラード反応化合物の総量よりも低下しており、
前記メイラード反応化合物が、トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドールからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記脱臭ステップc)は、VTA脱臭装置を使用することによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用することによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用して連続条件で実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の収率を、同じ油であるが、精製、漂白、脱ろう及び脱臭された対照油(RBWD油)よりも増加させる方法であって、
a)粗製PUFA油を入手するステップと;
)ステップa)からの前記PUFA油を、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はステップa)からの前記PUFA油を脱ガムすることと、SPEを使用することによって精製することとの両方を行うステップと;
c)ステップb)からの前記PUFA油を脱臭するステップと
を含み、ステップc)後の前記PUFA油の収率は、前記RBWD油の収率よりも5%ポイント超高く、
ステップc)後の前記PUFA油の前記収率及び前記RBWD油の前記収率は、それぞれステップa)で出発された前記粗製PUFA油の重量を100%として計算され、
ステップc)後の前記PUFA油に含まれる1つ又は複数のメイラード反応化合物の総量が、ステップa)で出発された前記粗製油に含まれる前記メイラード反応化合物の総量よりも低下しており、
前記メイラード反応化合物が、トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドールからなる群から選択される、方法。
【請求項6】
前記脱臭ステップc)は、VTA脱臭装置を使用することによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用することによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用して連続条件で実施される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、多価不飽和脂肪酸を含有する一方、改善された嗜好性のペットフード及びヒト用食品に関する。本発明は、上記の食品成分を製造する方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
[0002]動物用食品のメーカーには、栄養価が高く、嗜好性が高く、製造コストが低いという3つの基準を満たす食品を製造するというビジネス上のインセンティブがある。
【0003】
[0003]ω-3脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)の栄養価は、当技術分野で周知である。PUFAは、細胞膜に存在することにより細胞生理学に影響を与え、生物学的に活性な化合物の遺伝子発現の生成を調節し、生合成基質として機能する、生物学的に重要な分子である。例えば、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、動物の脳内脂質のおよそ15%~20%及び網膜内脂質のおよそ30%~60%を占めている。ω-3脂肪酸は、陸上の動物が新たに合成することができないため、栄養源から得なければならない。
【0004】
[0004]多価不飽和脂肪酸は、微細藻類及び真菌などの微生物によって合成される。魚は、このような微生物を食べることにより、多価不飽和脂肪酸を取得する。商業的には、多価不飽和脂肪酸は、魚からの抽出により且つ発酵及び抽出を通した微細藻類又は真菌からの収穫により得られる。化学反応を通した抽出工程を促進するために、PUFA油の抽出工程では多くの化学物質が使用される。このような反応では、揮発性副産物が発生する。抽出工程では、脂質酸化産物及びメイラード反応産物などの多くの揮発性副産物が生成する。
【0005】
[0005]PUFA油が最初に魚又は微細藻類から抽出され、さらなる精製なしにそのまま使用される場合、粗製油と称される。粗製油は、不快な臭い及び味を有し、したがってヒト及び動物に受け入れられず、拒絶されることすらある。
【0006】
[0006]ヒト並びに猫及び犬などのコンパニオンアニマルのための食品を設計する場合、大量の栄養を供給することが重要な目標である。しかし、食物が口に合わないと判断したためにヒト又は動物が食物を食べることを拒否した場合、そのような食物は、前記ヒト又は動物にとって価値がないであろう。また、その食品は、市場がないため、作り手にとっても価値がない。したがって、口当たりが良いPUFA含有食品成分を製造する強い動機がある。
【0007】
[0007]粗製油は、ヒトが消費できるようにする前に精製する必要がある。一般的に、精製工程は、精製、漂白、脱ろう及び脱臭のステップを伴う。精製は、遊離脂肪酸、リン脂質、油溶性物質、微量金属及び水溶性分子の除去を伴う。漂白は、顔料、二次酸化生成物、微量金属、ビタミン、環境汚染物質及び他の極性成分を除去する。脱ろうは、低温で油中に出現する沈殿物を除去する工程に与えられた名称である。脱臭は、揮発性構成要素、二次酸化生成物、遊離脂肪酸、モノ-及びジグリセリド、アルデヒド、ケトン、塩素化炭化水素、顔料及び残留性有機汚染物質の除去を指す。上記の工程は、4つのステップの頭文字をとってRBWD工程とも称される。
【0008】
[0008]それに伴う機器、エネルギー、労力及び時間のコストのために、精製、漂白、脱ろう、脱臭の4つの全ステップをRBWD工程で実行することは、コストがかかる。さらに、完全なRBWD工程を実行した場合、55%~60%ものPUFA油が失われ得る。したがって、粗製PUFA油の不快な臭気及び味は、完全なRBWD工程によって除去され得るが、このような油を製造するコストは、高くなる。したがって、それは、ヒトが消費するための精製PUFA油を製造するためにのみ一般的に実行される。これは、口当たりが良く、栄養的にかなりの量のPUFAを含有するペットフードを製造及び販売することを経済的に困難にする。
【0009】
[0009]したがって、栄養価が高く、嗜好性が高く、同時に低コストで製造されるPUFA油に対する必要性がある。
【0010】
[0010]歴史的に、低コストでありながら、適度な嗜好性を有するPUFA含有食品成分を製造するために行われた努力は、嗜好性向上剤の作成に重点を置いてきた。例えば、米国特許出願公開第12/442,828号明細書は、ペットフードの食感及び風味を改善することができると主張された藻類バイオミールベースの嗜好性向上剤を開示している。米国特許出願公開第15/038545号明細書は、食品に適切な脂肪源及び食用剤を含めることにより、嗜好性向上剤を調製する方法を開示している。しかし、別個の嗜好性向上剤を作り、それを食品にブレンドすることは、高価であることが証明されている。さらに、嗜好性向上剤は、基礎となるペットフードの栄養価又は他の特性に悪影響を及ぼすか又はそれを損なうことがある。したがって、この問題を解決するための新しいアプローチを見出すことに対する必要性がなおもある。本発明の目標は、嗜好性が高いが、製造コストが低いPUFA油を製造する方法を見出すことである。
【0011】
[発明の概要]
[0011]本発明は、コンパニオンアニマルに対して多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の嗜好性を向上させるための方法であって、a)粗製PUFA油を入手するステップと;b)任意選択的に、ステップa)からの前記PUFA油を脱ガムするか、若しくはそれを、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はそれを脱ガムすることと、SPEを使用することによって精製することとの両方を行うステップと;c)ステップb)からのPUFA油を脱臭するステップとを含み、ステップc)後のPUFA油の収率は、ステップa)で出発された粗製油の量の85%以上であり、前記嗜好性は、動物食物嗜好性試験によって測定され、ステップc)後に入手されたPUFA油の嗜好性スコアは、ステップa)で出発された粗製油よりも少なくとも10%ポイント高い、方法を対象とする。
【0012】
[0012]一実施形態では、PUFA油の収率は、ステップa)で出発された粗製油の90%以上である。一実施形態では、上記の動物食物嗜好試験は、2ボウル試験である。他の実施形態では、ステップc)後に入手されたPUFA油の嗜好性スコアは、ステップa)で出発された粗製油よりも少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40又は少なくとも45%ポイント高い。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、ステップc)の脱臭は、VTA脱臭装置又はDeSmet脱臭装置を使用することによって実施される。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、PUFA油は、魚、微生物又は植物に由来する。一実施形態では、微生物は、藻類である。別の実施形態では、藻類は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)又はスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)である。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、PUFA油は、DHA、EPA、ARA及びDPAの1つ又は複数の化合物を含む。
【0016】
[0016]本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)油であって、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、10ppb未満の1つ又は複数のメイラード反応化合物と、1.5ppbを超える1つ又は複数の脂質酸化生成物とを含む多価不飽和脂肪酸(PUFA)油も対象とする。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、PUFA油は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、1ppb未満、0.5ppb未満又は0.3ppb未満のメイラード反応化合物を含む。
【0018】
[0018]一実施形態では、前記PUFA油中のメイラード反応化合物の量は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、検出不能である。
【0019】
[0019]一実施形態では、メイラード反応化合物は、トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドールからなる群から選択される。別の実施形態では、脂質酸化生成物は、1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール及び2,6-ノナジエナールからなる群から選択される。
【0020】
[0020]本発明は、コンパニオンアニマルのための食品組成物であって、上記の方法によって製造されるPUFA油を含む食品組成物も対象とする。本発明は、コンパニオンアニマルのための食品組成物であって、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、10ppb未満の1つ又は複数のメイラード反応化合物と、1.5ppb超える1つ又は複数の脂質酸化生成物とを含むPUFA油とを含む食品組成物も対象とする。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、上記のコンパニオンアニマルは、犬又は猫である。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態では、上記の食品組成物は、ドッグフード、キャットフード、犬用おやつ又は猫用おやつである。一実施形態では、食品組成物は、栄養補給剤である。
【0023】
[0023]本発明は、ヒトが消費するための食品組成物であって、上記の方法によって製造されるPUFA油を含む食品組成物も対象とする。本発明は、ヒトが消費するための食品組成物であって、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、10ppb未満の1つ又は複数のメイラード反応化合物と、1.5ppb超える1つ又は複数の脂質酸化生成物とを含むPUFA油を含む食品組成物も対象とする。
【0024】
[0024]本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の収率を、同じ油であるが、精製、漂白、脱ろう及び脱臭された対照油(RBWD油)よりも増加させる方法であって、a)粗製PUFA油を入手するステップと;b)任意選択的に、ステップa)からの前記PUFA油を脱ガムするか、若しくはステップa)からの前記PUFA油を、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はステップa)からの前記PUFA油を脱ガムすることと、SPEを使用することによって精製することとの両方を行うステップと;c)ステップb)からのPUFA油を脱臭するステップとを含み、ステップc)後のPUFA油の収率は、RBWD油の収率よりも5%ポイント超高い、方法をさらに対象とする。
【0025】
[0025]いくつかの実施形態では、ステップc)後のPUFA油の収率は、RBWD油の収率よりも10%ポイント又は20%ポイント超高い。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態では、ステップc)後のPUFA油とRBWD油との嗜好性スコア間の差は、共通の対照サンプル油が使用される動物食物嗜好性試験において10%未満である。別の実施形態では、ステップc)後のPUFA油は、共通の対照サンプル油が使用される動物嗜好性試験においてRBWD油よりも高い嗜好性スコアを有する。一実施形態では、動物食物嗜好試験は、2ボウル試験である。
【0027】
[0027]一実施形態では、脱臭ステップc)は、VTA脱臭装置又はDeSmet脱臭装置を使用することによって実施される。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態では、PUFA油は、魚、微生物又は植物に由来する。一実施形態では、微生物は、藻類である。別の実施形態では、藻類は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)又はスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)である。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態では、PUFA油は、DHA、EPA、ARA及びDPAの1つ又は複数の化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】脱臭藻類油及び未脱臭藻類油の香りスコア並びに同じ油の口当たりスコアが示される、藻類PUFA油サンプルのヒト官能結果を示すグラフである。
【0031】
[発明の詳細な説明]
[0031]本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者によってより容易に理解され得る。明確にするために、別個の実施形態に関連して上及び下に記載されている本発明の特定の特徴も、それらの部分組み合わせを形成するように組み合わされ得るものと理解されたい。
【0032】
[0032]本明細書で具体例として同定される実施形態は、例示を意図するものであり、限定するものではない。
【0033】
[0033]本発明の目的は、ペット及び/又はヒトの消費のための、口当たりが良く、同時に最小限の処理を必要とし、したがって低コストで製造され得るPUFA油を提供することである。
【0034】
[0034]本発明の別の目的は、従来の精製、漂白、脱ろう及び脱臭の加工ステップを用いた方法よりも効率的に、口当たりが良いPUFA油を製造する方法を開発することである。
【0035】
[0035]本発明の別の目的は、ペットに対する異臭及び異味の主な原因である化合物の群又は個々の化合物を同定することであり、それらを粗製PUFA油から除去すると、PUFA油の嗜好性が大幅に改善される。
【0036】
[0036]上記の目的は、本発明により達成される。
【0037】
[0037]粗製微生物PUFA油及び粗製魚油は、多価不飽和脂肪酸、特にDHA及びEPAなどのω-3多価不飽和脂肪酸が豊富である。ω-3多価不飽和脂肪酸、特にDHA及びEPAは、動物にとって不可欠な栄養素であることが広く認識されている。ヒト及びペットなどの哺乳類は、体内でω-3多価不飽和脂肪酸を合成できないため、外部供給源から得なくてはならない。しかし、未加工の粗製微生物PUFA油及び粗製魚油は、強い不快な臭い及び味を有し、ヒト及びペットの消費に適したものにするためにこれを除去しなければならない。従来、精製工程は、複雑であり、精製、漂白、脱ろう及び脱臭をはじめとする少なくとも4つのステップを伴うため、非常にコストがかかり、収率が低くなる。そのため、価格競争力を維持しながら、十分なPUFAを含有するペットフードを製造することは、経済的に困難である。その結果、PUFAなどの有益な栄養素が豊富な食餌を摂取できるペットは、ほとんどいない。
【0038】
[0038]驚くべきことに、本発明において、精製、漂白、脱ろう及び脱臭の4つの油加工ステップのうち、脱臭は、コンパニオンアニマルに対するPUFA油の嗜好性を向上させるのに最も効果的なステップであることが見出された。さらに、脱ガムステップ又は精製ステップのいずれかを追加することにより、油製造における収率を大きく損なうことなく、PUFA油の嗜好性がさらに向上されることが見出された。したがって、口当たりが良いPUFA油は、粗製PUFA油を脱臭ステップ及び任意選択的に追加の脱ガムステップ若しくは追加の精製ステップ又はその両方で処理することにより、低コストで製造され得る。
【0039】
[0039]嗜好性の変化は、動物食物嗜好性試験によって測定される。本発明で使用される動物食物嗜好性試験は、2ボウル試験である。2ボウル試験(又はペア刺激若しくは対比試験)では、同時に提示された2つの食品が、定義された期間内にどの程度食べられたかが比較される。これは、犬及び猫の嗜好性評価研究の専門家パネルで使用される一般的な試験である。本発明では、それぞれ異なるPUFA油を含有する2つのペットフードサンプルが互いに比較される。第1の食品は、対照PUFA油を含有する。第2の食品は、試験PUFA油を含有する。対照PUFA油は、粗製油又は加工油のいずれかの任意のPUFA油サンプルであり得る。本発明で一般的に使用される対照PUFA油は、精製、漂白及び脱臭のステップによって処理されている市販の魚油である。別の実施形態では、対照PUFA油は、精製、漂白、脱ろう及び脱臭のステップによって処理されている市販の魚油である。一実施形態では、試験PUFA油は、その嗜好性が対照PUFA油に対して測定されるサンプルPUFA油である。このような試験PUFA油は、未加工の粗製藻類油であっても、脱ガム、短行程蒸発、精製、漂白、脱ろう及び脱臭などの1つ又は複数のステップで処理された藻類油であり得る。
【0040】
[0040]試験PUFA油の嗜好性スコアが50%を上回る場合、2ボウル試験で対にされた他のPUFA油よりも嗜好性が改善されていると見なされる。これは、試験PUFA油が、50%を超える確率で、実験動物によって対照PUFA油よりも好まれることを意味する。2ボウル試験及びそのスコア方法については、本出願の実施例2に詳述される。2ボウル試験は、動物食物嗜好性試験の一種であり、動物による餌の好みの定量的測定を提供する。比較されている2つのサンプルの嗜好性スコアの合計は、常に100%である。例えば、試験PUFA油の嗜好性スコアが56%である場合、他のPUFA油の嗜好性スコアは、44%である。
【0041】
[0041]複数の異なる試験PUFA油を同一のPUFA油(この場合には対照PUFA油又は単に対照油と称される)に対して測定すると、試験PUFA油サンプル間の相対的な好みが観察され得る。例えば、PUFA油サンプルA、B及びCを試験した場合の嗜好性スコアがそれぞれ56%、64%及び74%であり、全て対照に対するものである場合、サンプルCは、3つのサンプルの中で最も口当たりが良いと結論付けられ得る。この場合、対照油の同一性は、無関係になる。この方法は、本発明において、嗜好性の改善に対する異なる加工ステップの効果を評価するために使用される。
【0042】
[0042]第1の試験PUFA油の嗜好性スコアが第2の試験PUFA油より20%ポイント以上高い場合、第1の試験PUFAの嗜好性は、第2の試験PUFA油よりも有意に改善されていると見なされる。例えば、精製、漂白及び脱ろうされた試験PUFA油の嗜好性スコアが46%であり、精製、漂白、脱ろう及び脱臭された別の試験PUFA油の嗜好性スコアが74%である場合、嗜好性スコアの増加分が38%であることから、試験PUFA油の嗜好性は、追加の臭気化ステップによって有意に改善されたと見なされる。
【0043】
[0043]PUFA油の収率は、工程開始時の量に対する、1つ又は複数の加工ステップ後に残るPUFA油の百分率として定義される。各加工ステップでは、除去するように設計された不純物と共にいくらかの量の油が除去されるため、一般的に、精製工程に加工ステップが追加されると、PUFA油の収率が低下すると予想される。
【0044】
[0044]本発明において、脱臭ステップが、精製、漂白、脱ろうステップのいずれか又は3つのステップの組み合わせよりも、コンパニオンアニマルに対するPUFA油の嗜好性を向上させるのにはるかに効果的であることは、驚くべきことである。脱ガムステップ又は精製ステップのいずれか又は両方のステップを加えることにより、これらの加工ステップ後に粗製油の90%以上の高収率が達成されることは、さらに驚くべきことである。得られた油は、粗製油の嗜好性スコアよりも少なくとも45%ポイント嗜好性が向上している。加工油及び粗製油の嗜好性スコアの測定には、共通の対照油サンプルが使用される。
【0045】
[0045]一実施形態では、本発明は、コンパニオンアニマルに対して多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の嗜好性を向上させるための方法であって、a)粗製PUFA油を入手するステップと;b)任意選択的に、ステップa)からの前記PUFA油をl若しくは精製するか、又はそれを脱ガムすることと、精製することとの両方を行うステップと;c)ステップb)からのPUFA油を脱臭するステップとを含み、ステップc)後のPUFA油の収率は、ステップa)で出発された粗製油の量の85%以上であり、前記嗜好性は、動物食物嗜好性試験によって測定され、ステップc)後に入手されたPUFA油の嗜好性スコアは、ステップc)後に入手されたPUFA油よりも少なくとも10%ポイント以上高い、方法を対象とする。別の実施形態では、ステップc)後に入手されたPUFA油の量を、ステップa)で出発された粗製油の量と比較した場合、PUFA油の収率は、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上又は95%以上である。別の実施形態では、ステップc)後に入手されたPUFA油の量を、ステップa)で出発された粗製油の量と比較した場合、PUFA油の収率は、85%~99%、85%~95%、87%~93%、90%~95%及び92%~95%である。
【0046】
[0046]別の実施形態では、上記の収率レベルでのPUFA油の嗜好性スコアの増加は、加工前の粗製油の嗜好性スコアよりも少なくとも10%ポイント高い、少なくとも15%ポイント高い、少なくとも25%ポイント高い、少なくとも30%ポイント高い、少なくとも35%ポイント高い、少なくとも40%ポイント高い、少なくとも45%ポイント高い、少なくとも50%ポイント高い、少なくとも55%ポイント高い、少なくとも60%ポイント高い又は少なくとも65%ポイント高い。別の実施形態では、上記の収率レベルでのPUFA油の嗜好性スコアの増加は、加工前の粗製油の嗜好性スコアよりも20%~65%、30%~65%、40%~65%、20%~65%、30%~50%、40%~50%、30%~60%、40%~60%、20%~30%、10%~20%又は30%~40%ポイント高い。
【0047】
[0047]また、本発明において、従来の精製、漂白及び脱ろうのステップ(RBWD油)を、脱臭ステップを残したまま、脱ガムステップ又は短行程蒸発ステップのいずれか又は両方のステップによって置き換えることで、得られる油の収率がRBDW油よりも20%ポイント超高くなることも驚くべきことである。得られた油は、RBWD油の嗜好性スコアよりも少なくとも10%ポイント嗜好性が向上している。脱臭油及びRBWD油の嗜好性スコアの測定には、共通の対照油サンプルが使用される。
【0048】
[0048]一実施形態では、本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の収率を、同じ油であるが、精製、漂白、脱ろう及び脱臭された対照油(RBWD油)よりも増加させる方法であって、a)粗製PUFA油を入手するステップと;b)任意選択的に、前記PUFA油を脱ガム若しくは精製するか、又はそれを脱ガムすることと、精製することとの両方を行うステップと;c)ステップb)からのPUFA油を脱臭するステップとを含み、ステップc)後のPUFA油の収率は、RBWD油の収率よりも30%ポイント超高い、方法を対象とする。RBWD油の収率は、ステップa)の粗製油が精製、漂白、脱ろう及び脱臭によって加工された後に残った油の量と、ステップa)の粗製油の量とのパーセンテージ比として計算される。他の実施形態では、ステップc)後のPUFA油の収率は、RBWD油の収率よりも25%ポイント超高く、20%ポイント超高く、19%ポイント超高く、18%ポイント超高く、15%ポイント超高く、13%ポイント超高く、又は10%ポイント超高く、5%ポイント超高い。一実施形態では、ステップc)後の上記油と対照油との嗜好性スコアは、同じである。一実施形態では、上記油と対照油との嗜好性スコアの差は、10%以下である。別の実施形態では、嗜好性スコアの差は、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下又は1%以下である。別の実施形態では、嗜好性スコアの差は、1%~10%、2%~10%、3%~10%、4%~10%、5%~10%、6%~10%、7%~10%及び4%~7%である。別の実施形態では、ステップc)後のPUFA油は、共通の対照サンプル油が使用される動物嗜好性試験においてRBWD油よりも高い嗜好性スコアを有する。別の実施形態では、ステップc)後のPUFA油は、共通の対照サンプル油が使用される動物嗜好性試験においてRBWD油よりも1~10、5~10又は7~10%ポイント高い嗜好性スコアを有する。別の実施形態では、ステップc)後のPUFA油は、RBWD油よりも1%~10%、2%~10%、3%~10%、4%~10%、5%~10%、6%~10%、7%~10%、4%~7%高い嗜好性スコアを有する。
【0049】
[0049]一実施形態では、上記の目的は、前記油を脱臭装置で処理するステップを含む、PUFA油の嗜好性を向上させる方法によって達成される。好ましい実施形態では、脱臭装置は、VTA脱臭装置である。別の好ましい実施形態では、脱臭装置は、DeSmet脱臭装置である。別の実施形態では、上記の方法は、脱ガムステップ及び/又は短行程蒸発ステップをさらに含む。なおも別の好ましい実施形態では、方法は、精製、漂白又は脱ろうのステップのいずれも含まず、したがって加工中のPUFA油の収率を著しく向上させ、製造コストを削減させる。脱ガムステップ及びSPEステップでは、油の収率損失は、ほとんどない。精製、漂白及び脱ろうのステップは、著しい収率損失をもたらす。
【0050】
[0050]理論により拘束されることなく、脱臭装置は、メイラード反応化合物を除去し、したがってPUFA油の異臭及び異味を除去し、その嗜好性を向上させるのに役立つという仮説が立てられる。また、脱ガムは、後続の脱臭ステップで脱臭装置を詰まらせることもあるリン脂質及び他の化合物などの物質をPUFA油から除去するという仮説も立てられる。また、短行程蒸発(SPE)ステップは、PUFA油から遊離脂肪酸を除去し、得られたPUFA油の酸化が回避されるという仮説も立てられる。本発明において、脱ガム及び精製のステップは、これらのステップの適用が加工される粗製油の品質に依存するため、任意である。出発粗製PUFA油に遊離脂肪酸がほとんど含まれていない場合、精製ステップが省かれ得る。同様に、出発粗製油がリン脂質又は他の不純物をほとんど含まず、したがって油が脱臭装置を詰まらせる可能性が低い場合、脱ガムステップも省かれ得る。
【0051】
[0051]藻類又は魚のいずれかの供給源からPUFA油を抽出する工程中に生じる揮発物は、一般的に異臭及び臭気を引き起こすことが知られていた。異臭をもたらす揮発物の例としては、これらに限定されるものではないが、1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール、2,6-ノナジエナールなどの脂質酸化生成物と、トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、エチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドールなどのメイラード反応化合物とが挙げられる。驚くべきことに、本発明において、脂質酸化生成物ではなく、メイラード反応生成物の除去は、PUFA油の嗜好性を著しく向上させ得ることが見出された。脱臭装置は、粗製PUFA油からメイラード反応生成物を除去するのに非常に効果的であり、したがってこれらの油の嗜好性を向上させることが見出されている。
【0052】
[0052]一実施形態では、粗製PUFA油が処理されて、全ての又は実質的に全てのメイラード反応化合物が除去され、得られた油は、粗製PUFA油よりも有意に高い嗜好性スコアを有する。一実施形態では、上記のメイラード反応化合物は、以下のリストに絞り込まれた:トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドール。本発明において、粗製藻類油又は粗製魚油からの上記の7つの化合物の除去は、コンパニオンアニマルに対するこのような油の嗜好性を著しく増加させ得ることが見出されている。さらに、本発明において、PUFA油中の脂質酸化生成物のレベルは、油の嗜好性に有意に影響を及ぼさないことが見出されている。脂質酸化生成物の例としては、これらに限定されるものではないが、1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール及び2,6-ノナジエナールが挙げられる。
【0053】
[0053]一実施形態では、PUFA油の嗜好性は、メイラード反応化合物を粗製PUFA油から検出不可能なレベルまで除去することによって著しく改善される。一実施形態では、メイラード反応化合物及び脂質酸化生成物を検出するための方法は、SPME-GCMS分析方法である。別の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、PUFA油中のメイラード反応化合物のレベルを10ppb未満のメイラード反応化合物に低減することによって著しく改善される。別の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、PUFA油中のメイラード反応化合物のレベルを10ppb未満のメイラード反応化合物に低減することによって著しく改善される一方、PUFA油中の脂質酸化生成物は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、1.5ppbを超えるレベルである。別の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルを1ppb未満のメイラード反応化合物に低減することによって著しく改善される。別の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルを0.5ppb未満のメイラード反応化合物に低減することによって著しく改善される。別の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルを0.3ppb未満のメイラード反応化合物に低減することによって著しく改善される。他の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルを500ppb未満、200ppb未満、100ppb未満、50ppb未満、20ppb未満、5ppb未満、2ppb未満、0.2ppb未満、0.1ppb未満に低減することによって著しく改善される。他の実施形態では、ヒト及びペットに対するPUFA油の嗜好性は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルを500~0.1ppb、200~0.1、100~0.1、50~0.1、10~0.1、2~0.1、1~0.1、20~1、10~1に低減することによって著しく改善される。
【0054】
[0054]本出願で言及されるメイラード反応化合物及び脂質酸化生成物のレベルの数値(ppb単位)は、個々のメイラード反応化合物及び脂質酸化生成物のレベルとして特に言及されない限り、PUFA油中で検出されたメイラード反応化合物及び脂質酸化生成物の総量である。
【0055】
[0055]別の実施形態では、ヒト及びペット動物に対するPUFA油の嗜好性は、PUFA油のメイラード反応化合物のレベルを10ppb未満に低減することによって著しく改善される一方、PUFA油は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、1.5ppbを超える1つ又は複数の脂質酸化生成物を含む。一実施形態では、脂質酸化生成物は、1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール及び2,6-ノナジエナールからなる群から選択される。他の実施形態では、PUFA油中の脂質酸化生成物は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、1ppb超、2ppb超、3ppb超、4ppb超又は5ppb超、20ppb超、50ppb超又は100ppb超のレベルである。他の実施形態では、PUFA油中の脂質酸化生成物は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、100~1ppb、50~1ppb、20~1ppb及び15~1ppbのレベルである。他の実施形態では、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルは、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、500ppb未満、200ppb未満、100ppb未満、50ppb未満、20ppb未満、5ppb未満、2ppb未満、0.2ppb未満、0.1ppb未満である。
【0056】
[0056]別の実施形態では、PUFA油の嗜好性は、粗製PUFA油から、メイラード反応化合物を低レベル又は検出不可能なレベルまで除去するだけでなく、全て又は実質的に全ての遊離脂肪酸も除去することによって著しく改善される。別の実施形態では、PUFA油の嗜好性は、粗製PUFA油から、メイラード反応化合物を低レベル又は検出不可能なレベルまで除去するだけでなく、全ての又は実質的に全てのリン脂質とカチオンも除去することによって著しく改善される。別の実施形態では、粗製油が処理されて、メイラード反応化合物、遊離脂肪酸、リン脂質及びカチオンの全て又は実質的に全てが除去される。一実施形態では、PUFA油から遊離脂肪酸が油の0.1重量%未満のレベルまで除去される。いくつかの実施形態では、粗製油中のメイラード反応化合物のレベルは、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、500ppb未満、200ppb未満、100ppb未満、50ppb未満、20ppb未満、5ppb未満、2ppb未満、0.2ppb未満、0.1ppb未満である。一実施形態では、PUFA油から遊離脂肪酸が油の1重量%~0.01重量%のレベルまで除去される。別の実施形態では、PUFA油から遊離脂肪酸が油の0.01重量%未満のレベルまで除去される。一実施形態では、PUFA油からリン脂質が油の0.1重量%未満のレベルまで除去される。一実施形態では、PUFA油からリン脂質が油の1重量%~0.01重量%のレベルまで除去される。別の実施形態では、PUFA油からリン脂質が油の0.01重量%未満のレベルまで除去される。一実施形態では、PUFA油からカチオンが油の0.1重量%未満のレベルまで除去される。別の実施形態では、PUFA油からカチオンが油の0.01重量%未満のレベルまで除去される。一実施形態では、PUFA油からカチオンが油の1重量%~0.01重量%のレベルまで除去される。
【0057】
[0057]PUFA油が脱臭装置によって処理される、PUFA油の嗜好性を向上させるための方法も本明細書で開示される。一実施形態では、脱臭装置は、DeSmet脱臭装置である。別の実施形態では、脱臭装置は、VTA脱臭装置である。さらに別の実施形態では、脱臭装置は、メイラード反応化合物を効果的に除去し得る任意のタイプの装置であり得る。なおも別の実施形態では、脱臭装置は、以下を含むメイラード反応化合物のリストを効果的に除去し得る任意のタイプの装置であり得る:トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドール。PUFA油が短行程蒸発器によって処理される、PUFA油の嗜好性を向上させるための方法も本明細書で開示される。PUFA油が脱ガム工程によって処理される、PUFA油の嗜好性を向上させるための方法もさらに本明細書で開示される。
【0058】
[0058]一般的に、PUFA含有ペットフードは、ペットフードの成分をPUFA油又はPUFA粉末と混合することによって製造される。同様に、ヒトが消費するためのPUFA含有食品は、ヒト用食品成分をPUFA油又はPUFA粉末と混合することによって製造される。本発明は、ペットフードの成分を上記の脱臭PUFA油と混合することにより、嗜好性が向上されたペットフードを提供する。本発明は、ヒト用食品の成分を上記の脱臭PUFA油と混合することにより、嗜好性が向上されたヒト用食品も提供する。本発明は、ヒト栄養補給剤の成分を上記の脱臭PUFA油と混合することにより、嗜好性が向上されたヒト栄養補給剤組成物も提供する。
【0059】
[0059]本明細書に記載のPUFA油は、PUFAを含む油を指す。一実施形態では、本明細書に記載のPUFA油は、かなりの量のPUFAを含む油を指す。いくつかの実施形態では、油は、重量比で少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも5%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも80%のPUFAを含む。このようなPUFA油中のPUFA源は、魚又は微生物のいずれかに由来し得る。いくつかの実施形態では、微生物は、藻類、細菌、真菌、酵母、原生生物である。かなりの量のPUFAが微生物に由来する場合、それは、微生物油と称される。かなりの量のPUFAが微細藻類に由来する場合、それは、微細藻類油と称される。かなりの量のPUFAが魚に由来する場合、それは、魚油と称される。
【0060】
[0060]多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、脂肪酸のメチル末端からの最初の二重結合の位置に基づいて分類され;ω-3(n-3)脂肪酸は、3番目の炭素に最初の二重結合を含有し、ω-6(n-6)脂肪酸は、6番目の炭素に最初の二重結合を含有する。例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、22個の炭素及び6個の二重結合の鎖長を有するω-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)であり、多くの場合、「22:6n-3」と称される。一実施形態では、PUFAは、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸及びそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、PUFAは、LC-PUFAから選択される。なおもさらなる実施形態では、PUFAは、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、アラキドン酸酸(ARA)、γ-リノレン酸(GLA)、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)、ステアリドン酸(SDA)及びそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、PUFAは、DHA、EPA、DPA、ARA及びそれらの混合物から選択される。さらなる実施形態では、PUFAは、DHAである。なおもさらなる実施形態では、PUFAは、EPAである。なおもさらなる実施形態では、PUFAは、ARAである。
【0061】
[0061]PUFAは、遊離脂肪酸、塩、脂肪酸エステル(例えば、メチル又はエチルエステル)、モノアシルグリセロール(MAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、トリアシルグリセロール(タグ)及び/又はリン脂質(PL)の形態であり得る。
【0062】
[0062]遊離脂肪酸は、トリアシルグリセリド主鎖から失われた又は油分子から分離した多価不飽和脂肪酸である。PUFA油中の遊離脂肪酸の減少は、長期的に酸化を減少させ、したがってPUFA油の貯蔵寿命を延長することが期待される。
【0063】
[0063]粗製微生物PUFA油は、通常、微生物細胞から抽出される。本明細書の用法では、「細胞」は、油性微生物に由来する生体材料などの含油生体材料を指す。一実施形態では、粗製微生物油は、さらなる処理なしに微生物のバイオマスから抽出された粗製油を指す。粗製微生物油は、通常、ペットフード及びヒト用食品で使用される前に処理される。
【0064】
[0064]本明細書の用法では、「微生物細胞」又は「微生物」は、例えば、単細胞生物など、藻類、細菌、真菌、酵母、原生生物及びそれらの組み合わせなどの生物を指す。いくつかの実施形態では、微生物細胞は、真核細胞である。微生物細胞としては、これらに限定されるものではないが、黄金藻類(例えば、ストラメノパイル界の微生物);緑藻;珪藻;渦鞭毛藻類(例えば、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)又はC.コーニイ(C.cohnii)などの クリプテコジニウム(Crypthecodinium)属のメンバーをはじめとする渦鞭藻綱群目の微生物);トラウストキトリアレス(Thraustochytriales)群目の微細藻類;酵母(子嚢菌類(Ascomycetes)又は担子菌類(Basidiomycetes));及びケカビ属(Mucor);これらに限定されるものではないが、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)及びモルティエラ節のモルティエラ・シュムッケリ(Mortierella sect.schmuckeri)をはじめとするモルティエラ属(Mortierella);及びこれらに限定されるものではないが、ピシウム・インシジオスム(Pythium insidiosum)をはじめとするピシウム属(Pythium)の真菌が挙げられる。
【0065】
[0065]一実施形態では、微生物細胞は、モルティエラ属(Mortierella)、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)属又はトラウストキトリアレス(Thraustochytriales)群目に由来する。なおもさらなる実施形態では、微生物細胞は、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)に由来する。なおもさらなる実施形態では、微生物細胞は、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、スラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)及びそれらの混合物から選択される。
【0066】
[0066]粗製魚油は、通常、さらなる処理なしに魚から抽出される。一実施形態では、このような魚は、イワシ、カタクチイワシ、サバ及び/又はマグロであり得る。粗製魚油は、通常、ペットフード及びヒト用食品で使用される前に処理される。
【0067】
[0067]植物油は、通常、植物の種子から抽出される。油産生植物の例としては、キャノーラ、大豆、ヒマワリ、亜麻及びカメリナが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明において言及される植物は、PUFA油を産生するように遺伝子改変された植物である。
【0068】
[0068]本明細書の用法では、「コンパニオンアニマル」は、肉体的、感情的、行動的及び社会的ニーズが家庭内のコンパニオンとして又はヒトとの密接な日常関係において容易に満たされ得る、家畜化されるか又は飼いならされた動物を指す。コンパニオンアニマルの例は、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス又は馬である。これは、本出願において、「ペット」又は「ペット動物」という用語と同義的に使用される。
【0069】
[0069]本出願で使用される「処理PUFA油」若しくは「加工PUFA油」又は単に「処理油」若しくは「加工油」は、粗製PUFA油から加工されたPUFA油を指す。一実施形態では、このような処理は、精製、漂白、脱ろう、脱臭、脱ガム又は短行程蒸発の1つ又は複数のステップを含む。一実施形態では、このような処理は、脱臭ステップのみを含む。
【0070】
[0070]本発明の処理PUFA油は、ドライペットフード又は動物用食品などのベースペットフード製品に配合され得る。本意図のペットフード組成物には、様々な湿性、油性、粉末又は粒状のフレーバー添加剤組成物が含まれる。一実施形態では、処理PUFA油は、製造工程の一部としてペットフードに組み込まれ得る。
【0071】
[0071]本方法では、ペットフード製品は、微生物又は魚からの処理PUFA油を含む。
【0072】
[0072]本発明は、本発明の微生物油のいずれかを含む、非ヒト動物又はヒトのための食品組成物を対象とする。いくつかの実施形態では、食品は、非ヒト動物又はヒト用食品のための添加剤である。いくつかの実施形態では、食品は、栄養補給剤である。いくつかの実施形態では、食品は、動物飼料である。いくつかの実施形態では、動物飼料は、ペットフードである。
【0073】
[実施例]
[実施例1]
[PUFA油サンプル及び加工方法]
[0073]本発明で使用した粗製藻類油は、さらなる処理なしにスキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCCPTA-10208のバイオマスから抽出した。このタイプの粗製藻類油の異なるバッチを製造し、本発明で使用した。
【0074】
[精製工程]
[0074]上記の粗製藻類油を後述の精製ステップの1つ又は複数で加工した。
【0075】
[精製]
[0075]この精製ステップでは、粗製藻類PUFA油を窒素下で50~55℃に加熱した。次に、約2%のリン酸を添加し、次に15分間混合した。粗製藻類油中の粗製遊離脂肪酸(粗製FFA)の量に基づいて、苛性/HO溶液を作るための50%苛性溶液と軟水の量を以下の式を用いて計算した。リン酸の中和を補償するために、過剰な腐食性因子を増加させた。
【0076】
[0076]50%苛性=[(0.142×粗製FFA)+3.7]×粗製藻類PUFA油重量(kg)/50
【0077】
[0077]HO=0.05×粗製藻類PUFA油重量(kg)
【0078】
[0078]苛性/HO溶液を藻類油/リン酸混合物に添加し、30分間保持した。2.5%鹹水溶液及び2.5%HOを添加した。その後、得られた溶液を80~85℃に加熱し、次に遠心分離した。得られた油を単離し、嗜好性を試験するか又は追加的なステップでさらに加工した。
【0079】
[漂白]
[0079]窒素下において、精製ステップなどの先行する加工ステップからの藻類PUFA油を50~55℃に加熱した。0.25~1.4%のTrisyl(登録商標)(米国のWR Grace Co.による製造)ベースの石鹸を加熱した溶液に添加し、溶液を15分間保った。2%のF-72FFタイプの漂白土を真空下で添加した。油を90~95℃に加熱し、油が設定点に達したら60分間保持した。保持後、残りの油を、垂直葉状濾過器(VLF)を使用して91~95℃で濾過した。得られた油を単離し、嗜好性を試験するか又は追加的なステップでさらに加工した。
【0080】
[脱ろう]
[0080]漂白ステップなどの先行する加工ステップからの藻類PUFA油が45℃未満であれば、60℃に加熱した。次に、油を19℃又は7℃に冷却し、その温度で4時間保持した。次に、1%のCelpure(登録商標)を添加し(米国のImerys Filtration Minerals Inc.からの濾過助剤)、油を15分間混合した。このステップで使用されるフィルターは、メンブレンフィルタープレスである。得られた油を単離し、嗜好性を試験するか又は追加的なステップでさらに加工した。
【0081】
[脱ガム]
[0081]窒素下において、先行する加工ステップからの藻類PUFA油を90~95℃に加熱した。3%のクエン酸(50%溶液)及び10%のHOを添加し、4時間混合した。保持時間が完了した後、油溶液をさらに4時間デカントした。脱ガム油重量の10%の水で油を洗浄した。4時間混合し、4時間デカントする。水分が0.5%未満になるまで、50~60℃で真空及び窒素下で油を乾燥させる。このステップで使用されるフィルターは、メンブレンフィルタープレスである。得られた油を単離し、嗜好性を試験するか又は追加的なステップでさらに加工した。
【0082】
[短行程蒸発]
[0082]短行程蒸発又はSPEは、特定タイプの精製である。これは、米国のLCI Corporationから購入した市販の短行程蒸発器内で実施した。
【0083】
[0083]この短行程蒸発器内では、ローターケージアセンブリが内部凝縮器を囲み、適度な速度で回転する。供給物は、装置上部のノズルを通して供給され、ローターブレードを介してシェルの内面上に薄膜として広げられる。
【0084】
[0084]ケージタイプの構造及び内部凝縮器の位置により、短い蒸気流路又は「短行程」が形成される。動作圧力は、比較で0.1mbarに設定した。加熱媒体温度は、240℃に設定した。流量は、13L/時であった。
【0085】
[0085]留出物及び残留液体濃縮液は、ユニットの下部にある別個の出口から排出された。得られた油を単離し、嗜好性を試験するか又は追加的なステップでさらに加工した。
【0086】
[脱臭]
[0086]脱臭は、以下の表1に示すように、VTA脱臭装置又はDeSmet脱臭装置内において連続条件又はバッチ条件のいずれかで実行した。
【0087】
【表1】
【0088】
[0087]VTA脱臭装置は、独国のVTA Verfahrenstechnische Anlagen GmbH&Co.KGによって製造された。DeSmet脱臭装置剤は、ベルギー国のDesmet Ballestra Groupによって製造された。脱臭加工は、製造が指定した条件で実行した。
【0089】
[0088]得られた油を脱臭装置から収集し、嗜好性について試験した。
【0090】
[実施例2]
[ペットフード嗜好性動物試験]
[0089]飼い犬及び飼い猫などのペットは、栄養要件が異なり、多くの味覚的要因に敏感である。ここで使用された動物食物嗜好性試験は、試験された動物によるPUFA含有食品の好みを特定するように設計された。
【0091】
[0090]選好性試験では、動物は、同時に提示される2つの異なる食餌を選択する。これは、2ボウル試験とも称される。この2ボウル試験では、同時に提示された2つの食品が、定義された期間内にどの程度食べられたかを比較する。これは、犬及び猫の嗜好性評価研究の専門家パネルで使用される最も一般的な試験である。これは、2つの製品を比較し、消費量の違いに基づいて好みを確立する。このような試験では、2つの同一のボウルが試験動物に同時に配送され、各ボウルには、試験される2つの製品(A又はB)の1つが含まれていた。動物は、事前に設定された期間、ボウルに自由にアクセスできる。各ボウル内の利用できる量は、エネルギー要件をカバーするのに十分すぎるほどである。給餌時間の終了時又は1つのボウルが空になったら、ボウルを回収し、再度計量して消費量を測定した。
【0092】
[0091]本発明で実施された2ボウル試験毎に合計30匹の犬が登録された。各試験は、2日間続いた。試験では、食餌Aと食餌Bとの2つの食餌を調製した。食餌Aは、試験PUFA油サンプルを混合したKibbleブランドのペットフードである。食餌Bは、対照PUFA油サンプルを混合した同一のKibbleブランドのペットフードである。Kibbleブランドのペットフードは、試験を実施する動物種に応じて、ドッグフード又はキャットフードのいずれでもあり得る。試験では、各犬又は猫の各食餌A及びBの1日の平均消費量を測定した。2日間にわたって30匹の犬のそれぞれによって消費された食餌A及び食餌Bの量を測定した。30匹の犬のそれぞれについて、食餌Aと食餌Bとの間の個別摂取量比を計算した。各食餌A及びBの30の個別摂取量比の平均を計算し、2つの食餌の1つの嗜好性の優位性の指標として使用した。
【0093】
[0092]上記と同じプロトコルに従い、猫に対して同じ2ボウル試験を実施した。各食餌A及びBの個別摂取量比の平均を計算し、2つの食餌の1つの嗜好性の優位性の指標として使用した。
【0094】
[実施例3]
[0093]PUFA油精製工程における各ステップの影響を特定するために、実施例1に記載される精製、漂白、脱ろう及び脱臭の1つ又は複数のステップで処理された藻類油サンプルを収集した。これらの油サンプルの嗜好性は、実施例2に記載された試験プロトコルを使用して測定した。試験サンプルには、実施例1に記載された未加工の粗製藻類油並びに精製、及び/又は漂白、及び/又は脱ろうされた油が含まれる。
【0095】
[0094]市販の魚油サンプルは、ペットフード製造業者から購入され、「RC魚油」と標識した。この油は、購入前に製造によって精製、漂白及び脱臭された。
【0096】
[0095]「RC魚油」を対照油として使用し、上記の試験油サンプルと比較した。試験結果を表2に要約する。
【0097】
【表2】
【0098】
[0096]表2のデータは、例えば、粗製藻類油に対する22.9%(対照油サンプルRC魚油と比較した場合)から、精製後の26.8%、精製及び漂白の両方後の31.8%、精製、漂白及び脱ろう後の46.4%への摂取量比など、未加工の粗製藻類油が精製、漂白、脱ろうされたが、依然として脱臭されていない場合、油の嗜好性の改善が漸進的であることを示す。対照油サンプルRC魚油は、依然として、精製、漂白及び脱ろうの各ステップで3回加工された試験サンプルよりも試験中の犬に好まれている。しかし、脱臭の追加のステップを実行すると、油の嗜好性スコアは、46.4%から74%に27.6%ポイント増加した。この増加は、精製、漂白及び脱ろうの3つのステップの全てを合わせた23.5%ポイントよりも高い。これは、藻類PUFA油の嗜好性を改善する上で脱臭ステップが精製、漂白、脱ろうステップよりもはるかに効果的であることを示す。
【0099】
[実施例4]
[0097]次の実験では、各処理ステップによる収率損を調べ、処理ステップの最適な組み合わせを特定した。
【0100】
[0098]精製、漂白、脱ろう及び脱臭ステップの1つ又は複数の加工ステップを精製工程に追加した後、粗製藻類PUFA油の収率を調べた。さらに、他の2つの加工ステップ(脱ガムステップ及び短行程蒸発(SPE)ステップ)を実行した後の油の収率も調べた。上記の加工油の嗜好性スコアを測定し、比較した。油加工は、実施例1に記載される方法に基づいて実施した。嗜好性試験は、対照油としてRC魚油を使用して、実施例2に記載されるように実施した。実施例で使用される粗製藻類油は、実施例1に記載されているような未加工の粗製藻類油である。試験結果を表3に要約する。
【0101】
【表3】
【0102】
[0001]試験結果は、粗製藻類油の精製において、精製、漂白及び脱ろうなどの一般的な油加工ステップを使用した場合、元の粗製藻類油の最大25.5%が工程全体を通して失われることを示した(実験番号1)。脱ろうステップなどの加工ステップの1つ又は複数を除去すると、油の収率は、改善するが、油の嗜好性は、悪化する(実験番号2)。しかし、脱臭ステップを維持したまま、精製、漂白及び脱ろうの3つのステップの全てを脱ガムステップ及び/又はSPEステップで置き換えた場合、90%を超える収率が達成される一方、RBWD油と同等以上の嗜好性スコアが維持された(実験番号7~10)。驚くべきことに、脱ガム、SPE及び脱臭された油の収率は、92.2%(実験番号9)であり、RBWD油の74.5%の収率(実験番号1)から約24%増加していることが分かった。この油の嗜好性は、73.2%(実験番号9)であり、RBWD油の63.6%の嗜好性スコア(実験番号1)よりも9%超高い。
【0103】
[実施例5]
[PUFA油サンプル中の揮発物のSPME-GCMS分析]
[0002]脱臭工程によって藻類のPUFA油サンプルから除去され、したがって嗜好性の改善を引き起こしたとされる化合物を特定し定量化するために、ヘプタン酸エチルを内標準として使用して、SPME-GCMS分析を実施した。その結果、藻類PUFA油又は魚PUFA油の臭気に関連する特定の揮発物について、およそ10億分の1(ppb)の濃度が特定された。
【0104】
[0003]粗製魚PUFA油及び粗製藻類PUFA油中で一般的に検出される10種類の揮発物の一覧を表4に記載する。1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール及び2,6-ノナジエナールなどの脂質酸化生成物は、粗製魚油中に一般的に見られ、不快な風味を引き起こす。表4のメイラード反応生成物は、水抽出された藻類油に一般的に見られ、不快な風味を引き起こす。PUFA油サンプル中の9個の脂質酸化生成物及びメイラード反応生成物の量を定量化するために、内標準としてヘプタン酸エチルの11番目のサンプルを対象揮発物リストに追加した。
【0105】
【表4】
【0106】
[0004]表4の10種類の揮発物について、粗製の又は精製された10個の藻類PUFA油及び魚PUFA油のサンプルを分析した。10個のPUFA油サンプルのそれぞれを二連で試験した。各反復試験では、3gの油を20mLのヘッドスペースバイアルに入れ、ミグリオール中の123ppbの0.05gのヘプタン酸エチルの内標準溶液を加えた。サンプルをボルテックス処理して徹底的に混合し、各油サンプル中の最終的な内標準濃度は、約2ppbであった。サンプル及び内標準の重量は、各反復試験について正確に記録した。2cmのマニュアルSPME「トリプルフェーズ」ファイバー(PDMS(ポリジメチルシロキサン)/カルボキシン/DVB(ジビニルベンゼン))をバイアル内で2分間の平衡化後、75℃で30分間露光した。使用した装置及び方法は、GCO装置であるが、質量分析データのみを記録した。測定された揮発物を表4に列挙する。
【0107】
[0005]イオンピーク面積、記録されたサンプル及び内標準の重量及び内標準の濃度を使用して、対象の各揮発物のおよその濃度を計算した(式1を参照されたい)。これは、ヘプタン酸エチルの内標準に対する同等の応答を前提としている。したがって、これらのおよその濃度は、ヘプタン酸エチルとしてppb(10億分の1)で報告される。
式1:
濃度(ppb)揮発物=揮発物イオンピーク面積/イオンピーク面積ISサンプル中のIS濃度
式中、イオンピーク面積IS=ヘプタン酸エチルの88m/zイオンのピーク面積であり、及び
揮発物イオンピーク面積=各対象揮発物の選択されたイオンのピーク面積であり(表1に列挙される)、及び
サンプル中の濃度IS=濃度ISスパイク(123ppb)ISスパイク重量/(サンプル重量+ISスパイク重量)である。
【0108】
[0006]各揮発性物質及び各サンプルのppb(ヘプタン酸エチルとして)の平均濃度を、既知の場合には嗜好性データと共に以下の表5に示す。いくつかのピークが0.1ppbまで測定された一方、他のピークは、検出されたが、さらに低いレベルで確実に定量化できなかったため、<0.1ppbとして報告する。検出限界(ヘプタン酸エチルとして0.01ppb)を下回るピークは、検出されず(nd)と標識した。
【0109】
[0007]「藻類油サンプル1粗製」サンプルは、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCC PTA-10208から抽出された未加工の粗製藻類油を指す。
【0110】
[0008]「藻類油サンプル1 RBWD deo VTA」サンプルは、粗製藻類油サンプル「藻類油サンプル1粗製」が精製、漂白、脱ろう及びVTA脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0111】
[0009]「藻類油サンプル1 RBWD deo demet」サンプルは、粗製藻類油サンプル「藻類油サンプル2粗製」が精製、漂白、脱ろう及びDeSmet脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0112】
[0010]「藻類油サンプル1 BWD deo demet」サンプルは、粗製藻類油サンプル「藻類油サンプル1粗製」が漂白、脱ろう及びDeSmet脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0113】
[0011]「藻類油サンプル2 BWD deo demet」サンプルは、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCC PTA-10208から抽出された未加工の粗製藻類油の第2のサンプルが漂白、脱ろう及びDeSmet脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0114】
[0012]2ボウル食物嗜好性試験では、上記の5つの藻類油サンプルの対照油サンプルとしてRC魚油を使用した。
【0115】
[0013]市販の魚油サンプルは、Ocean Nutrition Corp.から購入し、「魚油サンプル3」と標識した。この油を精製、漂白、脱臭した。この油は、2ボウル食物嗜好性試験の「魚油サンプル3 RBWD」の対照油サンプルとして使用した。
【0116】
[0014]「魚油サンプル3 RBWD」サンプルは、「魚油サンプル3」が精製、漂白、脱ろう及びDeSmet脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0117】
[0015]「藻類油サンプル4粗製」サンプルは、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCC PTA-10208から抽出された未加工の粗製藻類油を指す。
【0118】
[0016]「藻類油サンプル4 RBWD deo demet」サンプルは、粗製藻類油サンプル「藻類油サンプル4粗製」が精製、漂白、脱ろう及びDeSmet脱臭装置によって脱臭された後に続く油を指す。
【0119】
[0017]粗製藻類油サンプル1、2及び4は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCC PTA-10208から抽出された粗製藻類油の別々のバッチからのものである。
【0120】
[0018]表5に示すように、粗製油は、魚油と藻類油との両方について、それらの対応する脱臭油と明らかに異なる。脱臭により、それらの粗製状態と比較して全ての揮発物のおよその濃度がいくらか低下した。「藻類油サンプル1粗製」藻類油、「藻類油サンプル4粗製」藻類油で示されるような粗製藻類油は、「藻類油サンプル2 BWD deo desmet」藻類油及び「藻類油サンプル4 RBWD deo desmet」藻類油などのそれらの脱臭された相当物に比べて、メイラード反応生成物の濃度がはるかにより高い。ピラジンの濃度は、濃度が数百~数千ppb(ヘプタン酸エチルとして)に達する場合、特に高い。脱臭油では、これらのピラジンは、検出されないか又は0.3ppb未満で検出される(ヘプタン酸エチルとして)。他のメイラード反応生成物も、粗製藻類油中で有意に高濃度(10~100ppbの範囲)である一方、ほとんどの脱臭油で検出されない。
【0121】
[0019]脱臭藻類油は、粗製藻類油と比較して、ほとんどの化合物ではるかにより小さいピークを示し、メイラード反応生成物の多くが脱臭後にもはや検出されなくなった。脱臭藻類油サンプル中において、VTA脱臭を使用した場合(「藻類油サンプル1 RBWD deo VTA」)、Desmet脱臭を使用した場合(「藻類油サンプル1 RBWD deo desmet」)と比較してメイラード反応生成物のピークの検出数が少なく、いくつかの脂質酸化生成物のレベルが低いなど、さらなる改善を示す。このデータに基づき、検出された目標揮性質が少なくなると、食味評価が改善(増加)する傾向がある。
【0122】
[0020]脂質酸化生成物は、粗製油と比較して、脱臭油中において低濃度で検出されたが、脂質酸化生成物の全体的な濃度範囲は、比較的低く(<0.3ppb~約20ppbの範囲)、ほとんど脱臭によって完全に除去されなかった。各サンプルの上記揮発物のピーク面積は、上記の条件下で測定した。
【0123】
[0021]各揮発性物質の臭気への影響は、その濃度だけでなく、化合物ごとに異なる臭気閾値にも依存する。したがって、匂いの改善を判断するには、各化合物の相対的なピークサイズの変化及びそれが嗜好性の結果にどのように関連しているかを考慮する必要がある。このデータから、脱臭は、比較的高濃度のメイラード反応生成物を辛うじて検出可能なレベルまで100~1000倍減少させる劇的な効果を有し、嗜好性結果に対するより劇的な効果に対応することが観察された。脱臭サンプルは、同様のレベルの脂質酸化生成物が存在する場合さえも、メイラード反応生成物のさらなる減少は、嗜好性結果の対応する改善を実証することを示す(すなわちサンプル「藻類油サンプル1 RBWD deo desmet」をサンプル「藻類油サンプル1 RBWD deo VTA」と比較して又はサンプル「藻類油サンプル1 BWD deo desmet」を「藻類油サンプル2 BWD deo desmet」を比較して)。
【0124】
[0022]サンプル「魚油サンプル3」は、「魚油サンプル3 RBWD」の対照である。いずれの魚油サンプルも脱臭されており、したがってメイラード反応生成物が少ない。しかし、サンプル「魚油サンプル3 RBWD」は、VTA脱臭装置を使用して脱臭したため、メイラード反応生成物の濃度がさらに低い。サンプル「魚油サンプル3 RBWD」は、VTA脱臭装置を使用した場合、すでに脱臭された「魚油サンプル3」よりも嗜好性スコアが改善された。
【0125】
[0023]サンプル「藻類油サンプル4粗製」は、2ボウル試験における「藻類油サンプル4粗製」の対照である。「藻類油サンプル4粗製」は、メイラード反応生成物が多いことをもう一度示した粗製藻類油の別のバッチである。粗製藻類油は、精製、漂白、脱ろう及び脱臭の各ステップで加工された後、メイラード反応生成物が少なく、対照サンプルよりも嗜好性が向上していた。
【0126】
【表5】
【0127】
[実施例6]
[精製藻類PUFA油サンプルのヒト官能評価]
[0024]脱臭された又は脱臭されていない藻類PUFA油のヒトの知覚を識別するために、このような油の記述的知覚プロファイルを得て、測定した。
【0128】
[0025]「1099粗製」は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)株ATCC PTA-10208から抽出された未加工粗製藻類油である。これは、精製、漂白、冷却濾過及び脱臭の出発油として使用した。2ボウル嗜好性試験の対照油には、実施例3で言及された「RC魚油」を使用した。
【0129】
[0026]「1099精製」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」を精製した後に続くが、漂白、脱ろう又は脱臭されていない油を指す。
【0130】
[0027]「1099漂白」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」を漂白した後に続くが、精製、脱ろう又は脱臭されていない油を指す。
【0131】
[0028]「1099A冷却濾過」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」を7℃でビル濾過した後に続くが、精製、漂白、脱ろう又は脱臭されていない油を指す。
【0132】
[0029]「1099B冷却濾過」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」を19℃でビル濾過した後に続くが、精製、漂白、脱ろう又は脱臭されていない油を指す。
【0133】
[0030]「1099A Deod」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」をVTA脱臭装置によって脱臭し、精製、漂白及び7℃で脱ろうした後に続く油を指す。
【0134】
[0031]「1099B Deod」サンプルは、粗製藻類油サンプル「1099粗製」をVTA脱臭装置によって脱臭し、精製、漂白及び19℃で脱ろうした後に続く油を指す。
【0135】
[0032]焦げ、生臭い複合体、青臭い複合体、肉のタンパク質、腐敗臭、化学物質/溶剤、モルト臭/穀物臭、卵の複合体、スカンク、ココア、ペンキ様の不快な臭いをはじめとする多くのヒトの感覚特性を調べて測定した。上記の5つの油サンプルのそれぞれについて、対応する嗜好性試験も実施し、「RC魚油」を参照食餌として使用した。
【0136】
[0033]実験の結果を図1に示す。
【0137】
[0034]脱臭藻類油は、最も低い不快臭の強度を示す。比較すると、未脱臭藻類油は、全て少なくとも5倍又はさらに高い強度の不快臭を示している。このような違いは、脱臭藻類油及び脱臭されていない藻類油の嗜好性スコアと逆相関する。換言すれば、脱臭油は、脱臭されていない藻類油よりも嗜好性スコアが高く、不快臭の強度が低い。脱臭されていない藻類油は、全て嗜好性スコアが低く、不快臭が強い。
本発明は、以下の態様であってもよい。
項目1
コンパニオンアニマルに対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の嗜好性を向上させるための方法であって、
a)粗製PUFA油を入手するステップと;
b)任意選択的に、ステップa)からの前記PUFA油を脱ガムするか、若しくはそれを、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はそれを脱ガムすることと、SPEを使用して精製することとの両方を行うステップと;
c)ステップb)からの前記PUFA油を脱臭するステップと
を含み、ステップc)後の前記PUFA油の収率は、ステップa)で出発された前記粗製油の量の85%以上であり、前記嗜好性は、動物食物嗜好性試験によって測定され、ステップc)後に入手された前記PUFA油の嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも10%ポイント高い、方法。
項目2
前記PUFA油の前記収率は、ステップa)で出発された前記粗製油の90%以上である、項目1に記載の方法。
項目3
前記動物食物嗜好性試験は、2ボウル試験である、項目1又は2に記載の方法。
項目4
ステップc)後に入手された前記PUFA油の前記嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも20%ポイント高い、項目3に記載の方法。
項目5
ステップc)後に入手された前記PUFA油の前記嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも30%ポイント高い、項目3に記載の方法。
項目6
ステップc)後に入手された前記PUFA油の前記嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも40%ポイント高い、項目3に記載の方法。
項目7
ステップc)後に入手された前記PUFA油の前記嗜好性スコアは、ステップa)で出発された前記粗製油よりも少なくとも45%ポイント高い、項目3に記載の方法。
項目8
前記脱臭ステップc)は、VTA脱臭装置を使用することによって実施される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
項目9
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用することによって実施される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
項目10
前記PUFA油は、魚に由来する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目11
前記PUFA油は、微生物に由来する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目12
前記微生物は、藻類である、項目11に記載の方法。
項目13
前記藻類は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)又はスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)である、項目12に記載の方法。
項目14
前記PUFA油は、植物に由来する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目15
前記PUFA油は、DHA、EPA、ARA及びDPAの1つ又は複数の化合物を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
項目16
多価不飽和脂肪酸(PUFA)油であって、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、10ppb未満の1つ又は複数のメイラード反応化合物と、1.5ppbを超える1つ又は複数の脂質酸化生成物とを含む多価不飽和脂肪酸(PUFA)油。
項目17
ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、1ppb未満のメイラード反応化合物を含む、項目16に記載のPUFA油。
項目18
ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、0.5ppb未満のメイラード反応化合物を含む、項目17に記載のPUFA油。
項目19
ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、0.3ppb未満のメイラード反応化合物を含む、項目18に記載のPUFA油。
項目20
前記PUFA油中のメイラード反応化合物の量は、ヘプタン酸エチルとして評価されるとき、検出不能である、項目19に記載のPUFA油。
項目21
前記メイラード反応化合物は、トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2-エチル-3,6-ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチル-1H-ピロール-2-カルボキサルデヒド及びインドールからなる群から選択される、項目15~20のいずれか一項に記載のPUFA油。
項目22
前記脂質酸化生成物は、1-ペンテン-3-オン、4-ヘプテナール及び2,6-ノナジエナールからなる群から選択される、項目15~21のいずれか一項に記載のPUFA油。
項目23
コンパニオンアニマルのための食品組成物であって、項目1~15のいずれか一項に記載の方法によって製造されるPUFA油を含む食品組成物。
項目24
コンパニオンアニマルのための食品組成物であって、項目16~22のいずれか一項に記載のPUFA油を含む食品組成物。
項目25
前記コンパニオンアニマルは、犬である、項目23又は24に記載の食品組成物。
項目26
前記コンパニオンアニマルは、猫である、項目23又は24に記載の食品組成物。
項目27
ドッグフード又はキャットフードである、項目23~26のいずれか一項に記載の食品組成物。
項目28
犬用おやつ又は猫用おやつである、項目23~26のいずれか一項に記載の食品組成物。
項目29
栄養補給剤である、項目23~26のいずれか一項に記載の食品組成物。
項目30
ヒトが消費するための食品組成物であって、項目1~15のいずれか一項に記載の方法によって処理されるPUFA油を含む食品組成物。
項目31
ヒトが消費するための食品組成物であって、項目16~22のいずれか一項に記載のPUFA油を含む食品組成物。
項目32
多価不飽和脂肪酸(PUFA)油の収率を、同じ油であるが、精製、漂白、脱ろう及び脱臭された対照油(RBWD油)よりも増加させる方法であって、
a)粗製PUFA油を入手するステップと;
b)任意選択的に、ステップa)からの前記PUFA油を脱ガムするか、若しくはステップa)からの前記PUFA油を、短行程蒸発器(SPE)を使用することによって精製するか、又はステップa)からの前記PUFA油を脱ガムすることと、SPEを使用することによって精製することとの両方を行うステップと;
c)ステップb)からの前記PUFA油を脱臭するステップと
を含み、ステップc)後の前記PUFA油の収率は、前記RBWD油の収率よりも5%ポイント超高い、方法。
項目33
ステップc)後の前記PUFA油の前記収率は、前記RBWD油の前記収率よりも10%ポイント超高い、項目32に記載の方法。
項目34
ステップc)後の前記PUFA油の前記収率は、前記RBWD油の前記収率よりも20%ポイント超高い、項目32に記載の方法。
項目35
ステップc)後の前記PUFA油と前記RBWD油との嗜好性スコア間の差は、共通の対照サンプル油が使用される動物食物嗜好性試験において10%未満である、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
項目36
ステップc)後の前記PUFA油は、共通の対照サンプル油が使用される動物嗜好性試験において前記RBWD油よりも高い嗜好性スコアを有する、項目35に記載の方法。
項目37
前記動物食物嗜好性試験は、2ボウル試験である、項目35又は36に記載の方法。
項目38
前記脱臭ステップc)は、VTA脱臭装置を使用することによって実施される、項目32~37のいずれか一項に記載の方法。
項目39
前記脱臭ステップc)は、DeSmet脱臭装置を使用することによって実施される、項目32~37のいずれか一項に記載の方法。
項目40
前記PUFA油は、魚に由来する、項目32~39のいずれか一項に記載の方法。
項目41
前記PUFA油は、微生物に由来する、項目32~39のいずれか一項に記載の方法。
項目42
前記微生物は、藻類である、項目41に記載の方法。
項目43
前記藻類は、スキゾキトリウム属(Schizochytrium)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)又はスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)である、項目42に記載の方法。
項目44
前記PUFA油は、植物に由来する、項目32~39のいずれか一項に記載の方法。
図1