(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】眼用レンズ用の多重曲率エッジ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240906BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/04
(21)【出願番号】P 2021533559
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 IB2019052823
(87)【国際公開番号】W WO2020128647
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】カマル ケー.ダス
(72)【発明者】
【氏名】リウ チエン
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04504982(US,A)
【文献】米国特許第05800532(US,A)
【文献】米国特許第05098444(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0003162(US,A1)
【文献】特表2017-505702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0010477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学軸の周りに配置された前側光学面及び後側光学面を有する光学部品と、
前記光学部品を取り囲み前記前側光学面を前記後側光学面に接続する多重曲率光学エッジであって、陽性の異常光視症を軽減するように構成された複数の曲面を備える、多重曲率光学エッジと、を備える眼用レンズであって、
前記複数の曲面は、第1の曲率を有する第1の曲面及び第2の曲率を有する第2の曲面を備え、
前記第1の曲面は、前記第1の曲面の第1のエッジにおいて前記前側光学面に接線方向に接続され、
前記第1の曲面は、前記第1の曲面の第2のエッジにおいて前記第2の曲面に接線方向に接続されており、
前記多重曲率光学エッジの前記複数の曲面のそれぞれは、凸形状であり、
前記複数の曲面は、前記第1の曲率及び前記第2の曲率とは異なる第3の曲率を有する第3の曲面を更に備え、前記第3の曲面は前記第2の曲面に接線方向に接続されており、
前記第1の曲率、前記第2の曲率及び前記第3の曲率のうち、前記第2の曲率が最も大きい、眼用レンズ。
【請求項2】
前記多重曲率光学エッジの前記曲面のうちの少なくとも1つが、前記多重曲率光学エッジに入射する光を患者の中心窩から遠ざけるように方向を変えるように構成されている、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記多重曲率光学エッジの前記曲面のうちの少なくとも1つが、前記多重曲率光学エッジに入射する光を患者の中心窩から遠ざけるように拡散するように構成されている、請求項1又は2に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記多重曲率光学エッジは、前記後側光学面に接続して角部エッジを形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記複数の曲面のそれぞれが、0.01~1.50mmの範囲の曲率半径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記複数の曲面のそれぞれが、異なる曲率半径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
少なくとも前記複数の曲面は、同じ曲率半径を有する少なくとも2つの隣接していない曲面を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記眼用レンズは眼内レンズを備え、
前記前側光学面の直径が、4.5mm~7.5mmの範囲にあり、
前記後側光学面の直径が、5.0mm~8.0mmの範囲にあり、
前記後側光学面の前記直径は、前記前側光学面の前記直径よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記前側光学面の前記直径は、少なくとも6.5mmである、請求項8に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
前記前側光学面の前記直径は、少なくとも7.0mmである、請求項8に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
前記眼用レンズはコンタクトレンズを備え、
前記前側光学面の直径が、13.5mm~15mmの範囲にあり、
前記後側光学面の直径が、13.5mm~15mmの範囲にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
光学軸の周りに配置された前側光学面及び後側光学面を有する光学部品と、
前記光学部品を取り囲む多重曲率光学エッジであって、前記多重曲率光学エッジに入射する光を患者の中心窩から遠ざけるように伝達して、陽性の異常光視症を軽減するように構成された、接線方向に接続された複数の曲面を含む、多重曲率光学エッジと、を備える眼内レンズであって、
前記複数の曲面のうちの少なくとも2つは、異なる曲率半径を有し、
前記多重曲率光学エッジの前記複数の曲面のそれぞれは、凸形状であり、
前記多重曲率光学エッジの前記複数の曲面は、厳密に3つの曲面を含み、
前記3つの曲面のうち、真ん中の曲面の曲率が最も大きい、眼内レンズ。
【請求項13】
前記複数の曲面のそれぞれが、前記複数の曲面のうちの少なくとも1つの隣接する曲面に接線方向に接続されている、請求項12に記載の眼内レンズ。
【請求項14】
前記複数の曲面のうちの第1の曲面が、前記前側光学面に接線方向に接続されている、請求項12又は13に記載の眼内レンズ。
【請求項15】
前記多重曲率光学エッジの前記複数の曲面のそれぞれが、0.01mm~2.0mmの範囲の曲率半径を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項16】
前記前側光学面の直径が4.5mm~7.5mmの範囲にあり、前記後側光学面の直径が5.0mm~8.0mmの範囲にあり、前記後側光学面の前記直径は前記前側光学面の前記直径よりも大きい、請求項12~15のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
少なくとも6.5mmの前側光学直径を有する前側光学面、及び前記前側光学直径よりも大きい後側光学直径を有する後側光学面を含む光学部品と、
前記光学部品を取り囲み前記前側光学面を前記後側光学面に接続する多重曲率光学エッジであって、前記多重曲率光学エッジに入射した光を患者の中心窩から遠ざけるように伝達することにより、陽性の異常光視症を軽減するように構成された、接線方向に接続された複数の曲面を備える、多重曲率光学エッジと、を備え、
前記多重曲率光学エッジの前記複数の曲面のそれぞれは、凸形状であり、
前記多重曲率光学エッジは、厳密に3つの、接線方向に接続された曲面を備え、
前記3つの曲面のうち、真ん中の曲面の曲率が最も大きい、眼内レンズ。
【請求項18】
前記多重曲率光学エッジの第1の曲面が前記前側光学面に接線方向に接続されている、
請求項17に記載の眼内レンズ。
【請求項19】
前記多重曲率光学エッジの、接線方向に接続された前記複数の曲面のそれぞれが、0.01mm~2.0mmの範囲の曲率半径を有する、請求項17又は18に記載の眼内レンズ。
【請求項20】
前記多重曲率光学エッジは、光学軸に沿って測定して、0.15mm~0.45mmの範囲のエッジ厚さを有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項21】
前記前側光学面の直径が少なくとも7.0mmである、請求項17~20のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼には、眼の瞳孔に入る光の焦点を網膜上に合わせることが意図される角膜及び水晶体が含まれる。しかしながら、眼は種々の屈折異常を示す場合があり、その結果、光の焦点が正確に網膜上に合わせられなくなり、そして視力が低下する場合がある。眼球収差は、近眼、遠視、又は正乱視を引き起こす比較的単純な球面及び円柱異常から、例えばヒトの視界にハロー及びスターバーストを引き起こす可能性のある、より複雑な屈折異常までの範囲に及び得る。
【0003】
種々の眼球収差を補正するために、長年にわたって多くの治療介入が開発されてきた。これらとしては、眼鏡、コンタクトレンズ、レーザー角膜切削形成術(LASIK)、又は角膜移植などの角膜屈折手術、及び眼内レンズ(IOL)が挙げられる。近眼、遠視及び乱視の診断、並びにその治療のための球面円柱眼鏡及びコンタクトレンズの仕様は十分に確立されている。
【0004】
コンタクトレンズ又は埋め込まれたIOLのエッジ部分は、望ましくない影響を伴う複雑な屈折異常を引き起こし得ることが観察されている。グレア(陽性の異常光視症としても知られている)、シャドー(陰性の異常光視症としても知られている)、及び他の望ましくない視覚障害などの光現象(Photic phenomena)が、特に問題となる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による眼用レンズは、異常光視症及び他の望ましくない光現象を低減又は排除できる1つ以上の多重曲率光学エッジ(MCOE)を含む。例示的なIOL又はコンタクトレンズは、MCOEによって取り囲まれMCOEに接続された前側光学面及び後側光学面を備える光学部品を含む。MCOEは、互いに接線方向に接続された複数の別個の曲面を含み得る。MCOEの各曲面は、異なる曲率半径を有し得る。特定の実施形態では、前側光学面は、MCOEに接線方向に接続されている。後側光学面もまた、MCOEの曲面に接線方向に接続されてもよく、又は代わりに、後側光学面は、後嚢混濁(PCO)を抑制するように構成されたエッジ又は角部を形成するための角度でMCOEの表面に接続されてもよい。
【0006】
本開示による例示的な眼用レンズは、光学軸の周りに配置された前側光学面及び後側光学面を有する光学部品を含む。光学部品は、患者の網膜の前側光学面に入射する光を導くように構成されてもよい。光学部品は、任意の好適な球面若しくは非球面の単焦点、多焦点、又は焦点深度拡張の設計を含み得る。MCOEは光学部品を取り囲み、前側光学面を後側光学面に接続する。MCOEは、グレア及び/又は異常光視症(陽性及び/又は陰性)を軽減又は排除するように構成された複数の曲面を含む。特定の実施例では、これは、MCOEに入射する光を患者の中心窩から遠ざけるように伝達する(例えば、方向を変える及び/又は拡散する)ように、MCOEの曲面を構成することによって実現されてもよい。MCOEの複数の曲面は、第1の曲率を有する第1の曲面及び第2の曲率を有する第2の曲面を含む。第1の曲面は、第1の曲面の第1のエッジにおいて前側光学面に接線方向に接続され、また第1の曲面の第2のエッジにおいて第2の曲面に接線方向に接続されている。
【0007】
眼用レンズは追加の特徴を含んでもよく、これらを、明らかに相互排他的ではない任意の形態で互いに組み合わせてもよい。そのような特徴の例は以下を含む。
MCOEの一部が、後側光学面に接続して、PCOを抑制するように構成された角部を形成する。
MCOEの第2の曲面は、後側光学面に接続されて、2重曲率光学エッジを形成する。
MCOEの複数の曲面は、第1の曲率及び第2の曲率とは異なる第3の曲率を有する第3の曲面を含み、第3の曲面は、第2の曲面に接線方向に接続されている。
MCOEの複数の曲面は、第1の曲率、第2の曲率、及び第3の曲率とは異なる第4の曲率を有する第4の曲面を含み、第4の曲面は、第3の曲面に接線方向に接続されている。
MCOEの複数の曲面の隣接する全ての曲面が接線方向に接続されている。
MCOEの複数の曲面の隣接する曲面のサブセットが接線方向に接続されている。
MCOEの複数の曲面のそれぞれが、0.01mm~2.0mm、0.05mm~1.5mm、0.10mm~1.0mm、及び0.25mm~0.27mmの範囲の曲率半径を有する。
MCOEの複数の曲面はそれぞれ、異なる曲率半径を有する。
複数の曲面は、同じ曲率半径を有する少なくとも2つの隣接していない曲面を備える。
MCOEは、光学軸に沿って測定して、0.15mm~0.45mmの範囲のエッジ厚さを有する。
眼用レンズは眼内レンズを備え、前側光学面の直径が4.5mm~7.5mmの範囲にあり、後側光学面の直径が5.0mm~8.0mmの範囲にあり、後側光学面の直径は前側光学面の直径よりも大きい。
眼用レンズはコンタクトレンズを備え、前側光学面の直径が13.5mm~15mmの範囲にあり、後側光学面の直径が13.5mm~15mmの範囲にある。
【0008】
本開示による別の例示的な眼用レンズは、光学軸の周りに配置された前側光学面及び後側光学面を有する光学部品を含む眼内レンズ(IOL)を備える。光学部品は、任意の好適な球面若しくは非球面の単焦点、多焦点、又は焦点深度拡張の設計を含み得る。IOLは、光学部品を取り囲み前側光学面を後側光学面に接続するMCOEを更に含む。MCOEは、グレア及び/又は異常光視症(陽性及び/又は陰性)を軽減又は排除するように構成された複数の曲面を含む。特定の実施例では、これは、MCOEに入射する光を患者の中心窩から遠ざけるように伝達する(例えば、方向を変える及び/又は拡散する)ように、MCOEの曲面を構成することによって実現されてもよい。MCOEの複数の曲面のそれぞれが、MCOEの少なくとも1つの隣接する曲面に接線方向に接続されており、MCOEの複数の曲面のうちの少なくとも2つは異なる曲率半径を有する。
【0009】
更に、IOLは追加の特徴を含んでもよく、これらを、明らかに相互排他的ではない任意の形態で互いに組み合わせてもよい。そのような特徴の例は以下を含む。
複数の曲面のそれぞれが、複数の曲面のうちの少なくとも1つの隣接する曲面に接線方向に接続されている。
多重曲率光学エッジの複数の曲面は、厳密に2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの曲面を含む。
多重曲率光学エッジの複数の曲面は、少なくとも3つの曲面を含む。
複数の曲面の第1の曲面が、前側光学面に接線方向に接続されている。
複数の曲面のうちの第2の曲面が、後側光学面に非接線方向に接続されて、PCOを抑制するように構成された角部を形成する。
MCOEの複数の曲面のそれぞれが、0.01mm~2.0mmの範囲の曲率半径を有する。
MCOEは、光学軸に沿って測定して、0.15mm~0.45mmの範囲のエッジ厚さを有する。
前側光学面の直径が4.5mm~7.5mmの範囲にあり、後側光学面の直径が5.0mm~8.0mmの範囲にあり、後側光学面の直径は前側光学面の直径よりも大きい。
【0010】
本開示による別の例示的な眼用レンズは、少なくとも6.5mmの前側光学直径を有する前側光学面と、前側光学直径よりも大きい後側光学直径を有する後側光学面とを有する光学部品を含む眼内レンズを備える。IOLは、光学部品を取り囲み前側光学面を後側光学面に接続する多重曲率光学エッジを更に含む。多重曲率光学エッジは、多重曲率光学エッジに入射した光を患者の中心窩から遠ざけるように方向を変える又は拡散することにより、陽性の異常光視症を軽減するように構成された、接線方向に接続された複数の曲面を含む。
【0011】
更に、IOLは追加の特徴を含んでもよく、これらを、明らかに相互排他的ではない任意の形態で互いに組み合わせてもよい。そのような特徴の例は以下を含む。
多重曲率光学エッジの第1の曲面が、前側光学面に接線方向に接続されている。
多重曲率光学エッジの第2の曲面が、後側光学面に非接線方向に接続されて、PCOを抑制するように構成された角部を形成する。
多重曲率光学エッジは、少なくとも3つの、接線方向に接続された曲面を備える。
多重曲率光学エッジは、厳密に3つの、接線方向に接続された曲面を備える。
多重曲率光学エッジは、厳密に4つの、接線方向に接続された曲面を備える。
MCOEの、接線方向に接続された複数の曲面のそれぞれが、0.01mm~2.0mmの範囲の曲率半径を有する。
多重曲率光学エッジは、光学軸に沿って測定して、0.15mm~0.45mmの範囲のエッジ厚さを有する。
前側光学面の直径は少なくとも7.0mmである。
【0012】
上述した例は、本質的に例示的なものであり、限定的であることを意図しないことに留意されたい。本発明は、開示された特徴の追加の変形及び組み合わせを包含する。本発明の眼用レンズの特定の実施形態は、明らかに相互排他的ではない、開示された特徴の任意の組み合わせを含み得る。
【0013】
本開示の実施形態は、以前の解決策では実現されなかったいくつかの利点及び長所を提供する。例えば、本明細書に記載されるようなMCOEを含む眼用レンズは、MCOE光学エッジに入射した光を患者の中心窩から遠ざけるように方向を変える又は拡散することにより、陽性の異常光視症を排除又は軽減することができる。加えて、オーバーサイズの光学部品(例えば、IOLの場合は6.0mmを超える)を使用すると、MCOEに入射する光量を減らし、患者の網膜により多くの光を集束させることにより、陰性の異常光視症を排除又は軽減するという、更なる利点を生むことができる。これら及び他の利点は、本開示を考慮すれば当業者によって認識されるであろう。
【0014】
本開示、及びその特徴と利点をより完全に理解するために、ここで本開示の様々な実施形態を示す以下の説明を添付の図面と併せて参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A-1B】多重曲率光学エッジを備えるレンズの概略図である。
【
図2】レンズの多重曲率光学エッジの概略図である。
【
図3】第1の例示的な半径のセットを有する、レンズの多重曲率光学エッジの概略図である。
【
図4】第2の例示的な半径のセットを有する、レンズの多重曲率光学エッジの概略図である。
【
図5】第3の例示的な半径のセットを有する、レンズの多重曲率光学エッジの概略図である。
【
図6】第4の例示的な半径のセットを有する、レンズの多重曲率光学エッジの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、開示されている主題の議論を容易にするために、詳細が例として述べられている。しかしながら、開示された実施形態は例示的であり、全ての可能な実施形態を網羅するものではなく、更には、開示された実施形態の構成要素の特徴を互いに組み合わせることが、明らかに相互排他的ではない限り、たとえその組み合わせのそれぞれが明示的に記載されていなくても可能であることが、当業者には明らかなはずである。図面は縮尺通りに描かれていないことに更に留意されたい。
【0017】
患者がコンタクトレンズを装着している又はIOLを埋め込まれている場合、レンズは患者の視界に望ましくない光現象を引き起こす場合がある。レンズの鋭角の、真っ直ぐな、正方形の、又は更にはいくつかの湾曲したエッジが、エッジで受け取った光を、網膜の中心窩領域へと反射及び屈折させ得る。異常光視症及び他の望ましくない光現象を防止又は低減させるために、本発明者らは、1つ以上の多重曲率光学エッジ(MCOE)を有するレンズを開発した。本明細書で開示されるレンズは、MCOEを使用して、陽性の異常光視症及び他の望ましくない光現象が低減又は排除されるように、エッジに入射する光を導く又は拡散する。MCOEは、接線方向に接続された曲面を有して、他のエッジ設計に関連する望ましくない屈折及び光の誘導を防止し得る。接線方向での接続により、望ましくない角度で光を導くことなく、光をMCOEのある表面から別の表面にスムーズに伝達できる。
【0018】
加えて、瞳孔が大きな患者は、より大きなグレアの様な異常光視症及び他の視覚障害を被る場合があることが知られている。MCOE及び拡大された光学直径を有するレンズは、グレアの様な異常光視症(陽性及び/又は陰性)、及び場合によっては他の視覚障害を更に低減又は排除できる。特に、拡大された光学直径は、より鮮明な集束された画像を伴って、より大きな瞳孔により多くの使用可能な光を提供することができ、更に、MCOEで受け取られた不要な光をレンズが眼の中心窩領域に導くことを防止するように、MCOEを手助けできる。
【0019】
それに応じて、本開示によるレンズ設計は、MCOEで受け取られた光を患者の網膜の中心窩領域から遠ざけるように伝達(例えば、方向を変える又は拡散する)することにより陽性の異常光視症を低減させるためのMCOE、並びに、MCOEを補完して陰性の異常光視症を更に低減させるための拡大された光学直径、を含み得る。したがって、全体的なレンズ性能は大幅に改善され得る。
【0020】
本明細書に記載される表面間の特定の接続は、接線方向であってもよく、そうでなくてもよいことに留意されたい。本開示の目的のために、そして特に明記しない限り、ある表面が別の表面に「接線方向に」接続される場合、その2つの表面間の接続は滑らかである。接続が接線方向であることが特に示されていない場合、その接続は、接線接続、又は角部を形成する角度接続などの他の接続、を含み得る接続を含むものとして解釈されるべきである。
【0021】
図1Aは、例示的な眼内レンズ(IOL)100の前面図を示す。IOL100は、光学軸の周りに配置され多重曲率光学エッジ(MCOE)102によって接続された前面106及び後面(図示せず)を備える光学部品を含む。図示するように、MCOE102は、レンズ100の光学部品を取り囲み、前面106を後面112に接続する。IOL100は、任意選択で、光学部品に結合され埋め込まれた後に光学部品を安定させる複数のハプティック120a及び120bを含んでもよい。前面106及び/又は後面112は、任意の好適な球形、非球面、屈折、回折、又は位相シフトのフィーチャを含んで、光を集束し且つ導き、患者の視力を改善させてもよい。
【0022】
図1Bは、
図1Aの点線122に沿って見たレンズ100の側面又はプロファイルを示す。
図1Bでは、前側光学面106及び後側光学面112は凸面として示されているが、前側光学面106及び後側光学面112の他の実施形態が、凹面、凸面、又は平面のプロファイルの任意の好適な組み合わせを含んでもよい。
【0023】
レンズ100の前側光学面106が、前側光学面端部108においてMCOE102に接続され、後側光学面112が、後側光学面端部114においてMCOE102に接続されている。MCOE102は、接線方向に接続された複数の湾曲した外面を含み、その結果、MCOE102上に又はその近くに入射した光が、患者の網膜の中心窩領域から遠ざかるように屈折、反射、拡散、及び/又は他の形態で伝達され、それにより、陽性の異常光視症を含む視覚障害が低減又は排除され得る。
【0024】
眼内レンズを備えるレンズ100の例では、前側光学面106は、4.5mm~7mmの範囲の前側光学直径(AOD)124を有し得る。レンズ100のIOL実施形態におけるMCOEの厚さ(レンズ100の光学軸に沿って測定される)は、0.15mm~0.45mmの範囲にあってもよく又はこれより大きくてもよい。レンズ100のコンタクトレンズの実施形態では、AOD124は、13.5mm~15mmの範囲にあり得る。
図1Bに示すように、AOD124は、MCOE102の直径方向に対向するエッジ間の前側光学面106の長さである。
【0025】
眼内レンズを備えるレンズ100の例では、後側光学面は、5.0mm~8.5mmの範囲の後側光学直径(POD)126を有し得る。所与の例におけるPOD126はAOD124に依存することになり、特定の実施形態では、POD126はAOD124よりも大きい。レンズ100のコンタクトレンズの実施形態では、POD126は、13.5mm~15mmの範囲にあり得る。
図1Bに示すように、POD126は、MCOE102の直径方向に対向するエッジ間の後側光学面112の長さである。
【0026】
AOD及びPODは、患者の眼又は瞳孔のサイズに基づいて選択されてもよい。例えば、レンズ100のIOL実施形態では、陽性及び陰性の異常光視症などの視覚障害は、より大きな瞳孔サイズを有する患者において、より頻繁に発生し得る。比較的大きなAOD124及びPOD126(例えば、6mmを超えるAOD)は、レンズ光学部品がより多くの光を受け取って網膜に集束させることを可能にすることにより、レンズのグレア及び他の視覚障害を低減又は排除し、それにより、陽性の異常光視症を低減又は排除できる。その上、上述したように、MCOE201に入射した光を網膜の中心窩領域から遠ざけるように導くことが、陰性の異常光視症を低減又は排除する。それに応じて、より大きな前側光学直径及び後側光学直径は、レンズ100の実施形態の多重曲率光学エッジと連携して機能して、陽性及び陰性の両方の異常光視症を軽減又は排除し得る。
【0027】
図2は、レンズ100の例示的なMCOE102の拡大図を示す。この例のMCOE102は、接線方向に接続された3つの曲面を含む。具体的には、MCOEは、前側光学面106に接続された第1の曲面204を含む。この例では、第1の曲面204は、前側光学面106に接線方向に接続されているが、他の実施形態では、この接続は接線方向ではない場合がある。MCOE200の第2の曲面208は、第1の曲面204に接線方向に接続されている。第3の曲面210は、第2の曲面208に接線方向に接続されている。第3の曲面210は、後側光学面112に非接線方向に接続されて、角部又はエッジを形成する。特定の実施形態では、そのような角部又はエッジは、IOLの埋め込み後にPCOを抑制する場合がある。このように、レンズ100には、複数の曲率半径を有する滑らかなエッジを有するMCOE200が設けられる。
【0028】
前側光学面206に入射する光は、光学面(前側及び後側)によって集束されて、患者の視力を高める。しかしながら、MCOE200に入射する光は中心窩から遠ざかるように導かれて、陽性の異常光視症(例えば、グレア)が排除又は軽減される。より具体的には、MCOE200に入射する光の経路は、光が遭遇する表面の形状に部分的に依存する。第1の曲面204、第2の曲面208、及び第3の曲面210は、それぞれが異なる曲率半径を有し、その結果、光は、患者の網膜の中心窩領域から離れた所望の場所に導かれ得る。第1の曲面204は、第2の曲面208の第2の曲率とは等価でない第1の曲率を有するように示されている。第3の曲面210は、第2の曲面208又は第1の曲面204の曲率とは等価でない第3の曲率を有する。各曲率を変更して、入射光が導かれる場所と拡散される場所を調整できる。
【0029】
光がどのように導かれるかを制御するために、レンズ100の様々な実施形態が、異なる数の曲面を有するMCOE200を含んでもよい。すなわち、MCOE200が3つの曲面を有することが示されているが、レンズ100の他の実施形態が、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の曲面を有するMCOE200を有してもよい。いくつかの実施形態では、MCOE200の各曲面は、隣接する曲面に接線方向に接続されている。例えば、レンズは、第1の曲面204、第2の曲面208、及び第3の曲面210に加えて、追加の複数の曲面を有し得る。第3の曲面210と後側光学面212との間に、1つ以上の追加の曲面を形成することができる。そのような追加の曲面は、追加の曲面の第1の端部において第3の曲面210に接線方向に接続され得る。別の例として、加えて又は代わりに、1つ以上の追加の曲面が、追加の曲面の第2の端部において後側光学面212に接続され得る。代替的実施形態は、前面206と後面212との間で接線方向に接続された任意の好適な数の曲面を備えるMCOEを有するレンズを含んでもよい。
【0030】
異なる曲率と異なる数の曲面により、MCOEの異なる方向特性と拡散特性が可能になり、目の形状、目のサイズ、特定の患者のニーズ、又はそれらの組み合わせに基づいて、異常光視症又は他の望ましくない光現象の低減及び排除が最適化される。特定の実施形態では、MCOEの任意の2つ以上の曲率も等価であってもよい。
【0031】
図3~
図6は、MCOEが、様々なレンズの様々な曲面によってどのように形成され得るかの例を示す。
図3~
図6の図示した例のそれぞれでは、各曲面が、それに隣接する別の1つ又は2つの曲面に接線方向に接続されている。図示した例のそれぞれは、3つの曲面を有するMCOEについて示しているが、MCOEは、2つの曲面又は3つを超える曲面を有してもよい。
【0032】
図3は、レンズ302のMCOE300の例を示す。レンズ302の一部が示されている。MCOEは、第1の曲面304、第2の曲面306、及び第3の曲面308を有する。第1の曲面304は、半径0.25mmの第1の曲率を有する。第2の曲面306は、半径0.22mmの第2の曲率を有する。第3の曲面308は、半径0.27mmの第3の曲率を有する。前面310は、6.0mmの前側光学直径(AOD)を有する。後側光学面312は、6.38mmの後側光学直径(POD)を有する。
【0033】
図4は、レンズ402のMCOE400の例を示す。レンズ402の一部が示されている。MCOEは、第1の曲面404、第2の曲面406、及び第3の曲面408を有する。第1の曲面404は、半径1.0mmの第1の曲率を有する。第2の曲面406は、半径0.10mmの第2の曲率を有する。第3の曲面408は、半径0.40mmの第3の曲率を有する。前面410は、6.0mmの前側光学直径(AOD)を有する。後側光学面412は、6.38mmの後側光学直径(POD)を有する。
【0034】
図5は、レンズ502のMCOE500の例を示す。レンズ502の一部が示されている。MCOEは、第1の曲面504、第2の曲面506、及び第3の曲面508を有する。第1の曲面504は、半径0.40mmの第1の曲率を有する。第2の曲面506は、半径0.10mmの第2の曲率を有する。第3の曲面508は、半径1.0mmの第3の曲率を有する。前面510は、6.0mmの前側光学直径(AOD)を有する。後側光学面512は、6.25mmの後側光学直径(POD)を有する。
【0035】
図6は、レンズ602のMCOE600の例を示す。レンズ602の一部が示されている。MCOEは、第1の曲面604、第2の曲面606、及び第3の曲面608を有する。第1の曲面604は、半径0.848mmの第1の曲率を有する。第2の曲面606は、半径0.05mmの第2の曲率を有する。第3の曲面608は、半径1.191mmの第3の曲率を有する。前面610は、6.0mmの前側光学直径(AOD)を有する。後側光学面612は、6.38mmの後側光学直径(POD)を有する。
【0036】
上記の開示された発明の主題は、例示的と見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内にあるそのような全ての修正、強化、及び他の実施形態を包含することが意図されている。したがって、法律によって許容される最大範囲まで、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物の最も広範な認可可能な解釈によって判断されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されないものとする。