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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】一本鎖DNAの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021534996
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2019128948
(87)【国際公開番号】W WO2020135651
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】201811624165.0
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521263157
【氏名又は名称】チャンスー ジェンスクリプト バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエ,ルーモン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ハイエ
(72)【発明者】
【氏名】リ,イーファン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジョンシーエン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108060191(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103255227(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102296065(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第1の鎖及びそれに逆相補的な第2の鎖からなる二本鎖DNA鋳型分子を得る工程であって、第1の鎖の配列構造が式(I)に示され、
5’左の適応配列-標的一本鎖DNA配列-右の適応配列3’ (I)
ここで、左の適応配列の配列構造は式:XTXに示され、右の適応配列の配列構造は式:X’Xn-mに示され、
式中、Xはn個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、5’ヌクレオチドはAであり、nは4~10の任意の整数であり、
はタイプII制限エンドヌクレアーゼの認識部位配列であり、Xは標的一本鎖DNA配列に存在しておらず、X’はXの逆相補配列であり、X、Xはそれぞれ任意の0個~複数個のヌクレオチドであり、かつ、X 、X’はそれぞれこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成し、X配列の3’末端及びX’配列の5’末端におけるこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断が許容されるように、X 、X はそれぞれ選択され
n-mはXの5’からn-m個のヌクレオチドの配列であり、mは1~3の整数であり、
Aはアデニル酸を示し、Tはチミジル酸を示す工程と、
(2)二本鎖DNA鋳型分子を鋳型とし、フォワードプライマーとリバースプライマーでPCR増幅を行い、標的一本鎖DNA配列を含む第1の鎖及びそれに逆相補的な第2の鎖を含む生成物である二本鎖DNA分子を得る工程であって、
前記フォワードプライマーはXUXの配列を含み、前記リバースプライマーはXn-m’X’の配列を含み、ここで、X、X、X、Xは(1)におけるそれらと同じであり、Xn-m’は前記Xn-mの逆相補配列であるが、そのうちの3’末端のTはUに置き換えられ、X’は前記Xの逆相補配列であり、Uはウリジル酸である工程と、
(3)生成物である二本鎖DNA分子の二本の鎖に含まれるUをウラシル特異的切除試薬でそれぞれ切断することにより、生成物である二本鎖DNA分子の二つの末端に粘着末端を生成する工程と、
(4)リガーゼの存在下で、生成物である二本鎖DNA分子の二つの粘着末端を互いに
接続させることにより、第1の鎖がギャップを含む環状二本鎖DNAを形成する工程と、
(5)工程(4)で得られたギャップを含む環状二本鎖DNAに対して、生成物である二本鎖DNA分子の第1鎖(センス鎖)のギャップを開始点とし、第2の鎖を鋳型とし、ローリングサークル複製を行うことにより、直列に連続される複数の次の式(II)に示される配列構造を含むレプリコンを得る工程と、
5’-XTX-標的一本鎖DNA配列-X -3’ (II)
(6)レプリコンにアニーリングを行うことにより、レプリコンにおける隣接する二つの標的一本鎖DNA配列の間にヘアピン構造を形成する工程と
(7)前記タイプII制限エンドヌクレアーゼでレプリコンを処理し、隣接する標的一本鎖DNA配列の間のX’XTX配列の5’末端と3’末端でそれぞれ切断することにより、複数の標的一本鎖DNA配列を放出させる工程と、
を含む、標的一本鎖DNAの調製方法。
【請求項2】
前記ヘアピン構造はX ’X TX の配列からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タイプII制限エンドヌクレアーゼはAlwI、BbsI、BbvI、BceAI、BCIVI、BfuAI、BmrI、BpmI、BpuEI、BsaI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspMI、BspQI、HphI、HpyAV、FokI、FauI、HgaIから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウラシル特異的切除試薬はウラシル特異的切除酵素(USERTM)である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リガーゼはT4 DNAリガーゼである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(3)と(4)は同一の反応系で、ウラシル特異的切除試薬とリガーゼの同時存在下で行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ローリングサークル複製は連続複製能を有するDNAポリメラーゼを用いて行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
DNAポリメラーゼがphi29 DNAポリメラーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タイプII制限エンドヌクレアーゼはBspQIである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
の配列はGCTCTTCNであり、NはA、T、C又はGであり、X ’の配列はNGAAGAGCであり、N、N、N、Nは独立にA、T、C又はGから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
NはAである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
’の配列はCCTTGAAGAGCである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
nは6~である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
nは8である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
mは1である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
の配列はAACTATACであり、Xn-mの配列はAACTATAである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的一本鎖DNAの長さは150~2500ntである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
二本鎖DNA鋳型分子を調製する前に標的一本鎖DNA配列に配列分析を行い、標的一本鎖DNA配列には切断部位がないタイプII制限エンドヌクレアーゼを選択することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
標的DNA配列を増幅するためのキットであって、
配列が式:XTXに示される左の適応配列、及び配列が式:X’Xn-mに示される右の適応配列を含み、
式中、Xはn個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、5’ヌクレオチドはAであり、nは4~10の任意の整数であり
はタイプII制限エンドヌクレアーゼの認識部位配列であり、Xは標的一本鎖DNA配列に存在しておらず、X’はXの逆相補配列でありX、Xはそれぞれ任意の0個~複数個のヌクレオチドであり、かつ、X 、X’はそれぞれこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成し、Xの3’末端及びXの5’末端におけるこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断が許容されるように、X 、X はそれぞれ選択され
n-mはXの5’からn-m個のヌクレオチドのサブシーケンスであり、mは1~3の整数であり、
Aはアデニル酸を示し、Tはチミジル酸を示す、キット。
【請求項20】
nは6~8である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
nは8である、請求項19又は20に記載のキット。
【請求項22】
UXの配列を含むフォワードプライマー、及びXn-m’X’の配列を含むリバースプライマーを更に含み、
ここで、X、X、X、Xは前記適応配列におけるそれらと同じであり、
n-m’は前記Xn-mの逆相補配列であるが、そのうちの3’末端のTはUに置き換えられ、X’は前記Xの逆相補配列であり、Uはウリジル酸であり、
フォワードプライマーとリバースプライマーは標的DNA配列を鋳型としてPCR増幅を行うことを許容する、請求項19~21のいずれか一項に記載のキット。
【請求項23】
一本鎖DNAを調製するためのキットであって、
ポリメラーゼ連鎖反応に適したDNAポリメラーゼと、
DNAリガーゼと
ウラシル特異的切除試薬と
ローリングサークル増幅に適したDNAポリメラーゼと
タイプII制限エンドヌクレアーゼと
請求項19に記載の左の適応配列と右の適応配列、及び請求項22に記載のフォワードプライマーとリバースプライマーと、を含む、キット。
【請求項24】
前記DNAリガーゼはT4 DNAリガーゼである、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記ウラシル特異的切除試薬はウラシル特異的切除酵素である、請求項23又は24に記載のキット。
【請求項26】
前記ローリングサークル増幅に適したDNAポリメラーゼはphi29 DNAポリメラーゼである、請求項23~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
DNAリガーゼとウラシル特異的切除試薬は同一の容器に入れられる、請求項23~26のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物工学分野に関し、具体的には、塩基変異のない一本鎖DNAの調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子修復と外来機能遺伝子挿入に関して、一本鎖DNA鋳型は様々な面で二本鎖DNA鋳型に比べて多くの利点があり、例えば、編集効率がより高く、脆弱な哺乳動物細胞に対する細胞毒性がより低く、編集エラー/オフターゲット率がより低い。編集エラー/オフターゲット率がより低いことは、遺伝子治療に対して極めて重要である。
【0003】
しかし、現在、技術が難しく、コストが高く、収量が少ないため、一本鎖DNA鋳型が極めて高価であり、この方法により研究するコストが大幅に制限されている。化学合成された一本鎖の長さは200塩基に制限され、通常のマッチング下流精製方法では、製品に含まれる間違った配列を除去することができない。一本鎖DNAサンプルを調製するために一般的に使用される方法には、エキソヌクレアーゼ消化法、非対称PCR法、及び磁気ビーズ吸着法が含まれている。但し、以上のこれらの方法はいずれも欠点がある。例えば、エキソヌクレアーゼはアンチセンス鎖を消化すると同時に標的バンドを非特異的に分解するため、要求に完全に一致する製品を提供することができない。非対称PCR法は低コストの生産方法であるが、その生産効率の配列に対する要求はまだ明確ではなく、その生産効果が制御できず、安定した生産には適していない。ビオチン-ストレプトアビジン磁気ビーズ吸着法は操作が簡単で収量が安定しているが、外国から輸入された高品質の磁気ビーズは高価であり、購入するには長い時間がかかるため、外国製品をコア生産技術とすると、リスクが高いおそれがある。
【発明の概要】
【0004】
純度がより高く、使用量が十分で、価格が低い一本鎖DNA鋳型サンプルを開発するために、発明者は、ウラシル特異的切除酵素(USER)を介した二本鎖DNAの自動環化方法、特殊な配列設計により達成された一本鎖DNAのアニーリング過程における自動折り畳み、標的一本鎖フラグメントを正確に切断できるタイプII制限エンドヌクレアーゼ、及び等温増幅された一本鎖DNAのローリングサークル複製を組み合わせることにより、汎用で効率的な長い一本鎖DNAの調製プロセスを開発した。
【0005】
本発明の目的は、このような製品の高価及び低収量の問題を解決するために、用量が高く、純度が高く、配列忠実度が高い一本鎖DNAの調製プロセスを開発することである。このプロセスにより、200ntより長い一本鎖DNAの収量を数μgから数百μgに増加させ、nmolレベルに到達させることができ、長さが1350ntの一本鎖DNAの収量を数μgから数十μgに増加させることもできる。
【0006】
例として、本発明のフローは以下の工程を含んでもよい。
【0007】
工程一(配列分析フロー):標的DNA配列(例えば長さが150~2500ntの任意のDNA配列)に生物情報学的分析を行い、配列に含まれるタイプII制限エンドヌクレアーゼの認識切断部位を観察する。一般的に使用されているが標的配列に含まれていないタイプII制限エンドヌクレアーゼ、例えばBsaIを選択し、標的配列の両側の適応配列とユニバーサルプライマーを設計するためにその酵素切断部位配列を決定する。
【0008】
工程二(プライマー設計フロー):標的配列の両端にそれぞれ左の適応配列と右の適応
配列を付加し、一斉に遺伝子合成を行う。ここで、左の適応配列は、5’末端から3’末端まで、ホモロジーアーム(少なくとも4個のヌクレオチドであり、好ましくは6~10個のヌクレオチド、例えば8個のヌクレオチドである)、Tヌクレオチド、選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼ認識部位、及び任意の1個又は複数個のヌクレオチドの付加配列をこの順で含み、この付加配列は、選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼ認識部位と共にこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成する(幾つかの実施形態では、タイプII制限エンドヌクレアーゼ認識部位とその切断部位が同じであり、この場合に付加配列がない)ため、このタイプII制限エンドヌクレアーゼはこの付加残基配列の3’末端で切断できる。右の適応配列は、5’末端から3’末端まで、選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼ認識部位の逆相補配列及びホモロジーアームをこの順で含み、このホモロジーアームは左の適応配列のホモロジーアームと同じであるが、3’末端に1~3個のヌクレオチドが欠失している。また、前記認識部位の逆相補配列の5’末端に任意の一個又は複数個のヌクレオチドの付加配列があり、この付加配列は、この認識部位の逆相補配列と共にこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成する(幾つかの実施形態では、タイプII制限エンドヌクレアーゼ認識部位とその切断部位が同じであり、この場合に付加配列がない)。好ましくは、左右の適応配列の長さは1~4個の塩基の差がある。
【0009】
工程三(鋳型増幅による調製-自動環化):プライマー配列におけるホモロジーアームに対応する配列の3’に位置するウラシル(U)修飾をそれぞれ含むフォワードプライマーとリバースプライマーにより、両端に左右の適応配列を含む遺伝子合成フラグメントにPCR増幅を行い、生成物を精製し、USER酵素(New England BioLabs Inc.)により精製された生成物を消化し、前記ウラシルを切断して粘着末端を生成し、更にT4 DNAリガーゼ(New England BioLabs Inc.)により二つの粘着末端を接続させ、増幅生成物自体を環化させることにより、ギャップ付dsDNAサイクルをローリングサークル複製用の基質として生成する。
【0010】
鋳型増幅は通常のPCR操作フローであり、反応系は具体的に使用されるDNAポリメラーゼ及びそのマッチング緩衝液により決定され、PCR反応のアニーリング温度は具体的なプライマー配列により決定され、PCR反応の延長時間は具体的な鋳型配列の長さにより決定される。
【0011】
USER酵素とT4 DNAリガーゼでギャップ付環状二本鎖DNAを調製する自己環化反応系としては、精製された二本鎖DNA鋳型生成物100ng、10x T4 DNAリガーゼ反応緩衝液1μl、USER酵素1μl、T4 DNAリガーゼ1μlを添加し、最終総反応系が10μlになるまでddHOを補足し、37℃で30minインキュベートし、20℃で30minインキュベートし、続いて降温して4℃で保存する。
【0012】
工程四(ローリングサークル複製):200μlのPCRチューブに、工程三で調製されたギャップ付環状DNAサンプル100ngに、10x増幅緩衝液(500mM Tris-HCl、50mM MgCl、750mM KCl、40mM DTT、pH 8.2、25℃)10μl、BSA(2mg/ml)10.0μl、dNTP(10mM)1.0μl、phi29 DNAポリメラーゼ(5U/μl)5μlを添加し、最終総反応系が100μlになるまでddHOを補足し、30℃で4~8時間増幅し、65℃で10分間処理し、4℃まで冷却する。
【0013】
工程五(アニーリング-自動折り畳み):ローリングサークル複製を行ったPCRチューブにPCRを添加し、80℃で5min維持し、0.1℃/sで65℃まで降温し、65℃で5min維持し、0.1℃/sで42℃まで降温し、42℃で5min維持し、37℃で5min維持し、0.1℃/sで4℃まで降温し、続いて4℃で保存するようにア
ニーリング手順を行うことにより、ヘアピン構造を形成する。
【0014】
工程六(制限エンドヌクレアーゼ切断-標的フラグメントである長い一本鎖モノマーの放出):上記反応生成物に10x制限エンドヌクレアーゼ緩衝液を15μl、前記で選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼを2μl添加し、ddHOを容量150μlになるまで添加し、制限エンドヌクレアーゼの最適な反応温度で60min静置し、続いて熱変性により不活性化する。
【0015】
工程七(精製、濃縮):制限エンドヌクレアーゼ切断生成物は標的フラグメントである一本鎖DNA生成物、ヘアピン構造を含み、標的フラグメントが300ntより大きい場合、他の不明なDNAフラグメントを更に含み、メーカーは実際の生産と使用状況により磁気ビーズ回収又はアガロースゲル電気泳動による切断回収を行い、回収後、凍結乾燥又はイソプロパノール沈殿により濃縮することができる。
【0016】
具体的には、本願は以下の技術方案を提供する。
1.1.(1)第1の鎖及びそれに逆相補的な第2の鎖からなる二本鎖DNA鋳型分子を得る工程であって、第1の鎖の配列構造が式(I)に示され、
5’左の適応配列-標的一本鎖DNA配列-右の適応配列3’ (I)
ここで、
左の適応配列の配列構造は式:XTXに示され、右の適応配列の配列構造は式:X’Xn-mに示され、
式中、Xはn個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、5’ヌクレオチドはAであり、nは4以上の任意の整数であり、
はタイプII制限エンドヌクレアーゼの認識部位配列であり、Xは標的一本鎖DNA配列に存在しておらず、X’はXの逆相補配列であり、X、Xはそれぞれ任意の0個~複数個のヌクレオチドであり、X、X’はそれぞれこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成し、X配列の3’末端及びX’配列の5’末端におけるこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断が許容され、
n-mはXの5’からn-m個のヌクレオチドの配列であり、mは1~3の整数であり、
Aはアデニル酸を示し、Tはチミジル酸を示す工程と、
(2)二本鎖DNA鋳型分子を鋳型とし、フォワードプライマーとリバースプライマーでPCR増幅を行い、標的一本鎖DNA配列を含む第1の鎖及びそれに逆相補的な第2の鎖を含む生成物である二本鎖DNA分子を得る工程であって、
前記フォワードプライマーはXUXの配列を含み、前記リバースプライマーはXn-m’X’の配列を含み、ここで、X、X、X、Xは(1)におけるそれらと同じであり、Xn-m’は前記Xn-mの逆相補配列であるが、そのうちの3’末端のTはUに置き換えられ、X’は前記Xの逆相補配列であり、Uはウリジル酸である工程と、
(3)生成物である二本鎖DNA分子の二本の鎖に含まれるUをウラシル特異的切除試薬でそれぞれ切断することにより、生成物である二本鎖DNA分子の二つの末端に粘着末端を生成する工程と、
(4)リガーゼの存在下で、生成物である二本鎖DNA分子の二つの粘着末端を互いに接続させることにより、第1の鎖がギャップを含む環状二本鎖DNAを形成する工程と、
(5)工程(4)で得られた環状二本鎖DNAに対して、生成物である二本鎖DNA分子の第1の鎖のギャップを開始点とし、第2の鎖を鋳型とし、ローリングサークル複製を行うことにより、直列に連続される複数の次の式(II)に示される配列構造を含むレプリコンを得る工程と、
-XTX-標的一本鎖DNA配列-X - (II)
(6)レプリコンにアニーリングを行うことにより、レプリコンにおける隣接する二つ
の標的一本鎖DNA配列の間にヘアピン構造を形成する工程であって、好ましくは、前記ヘアピン構造はX’XTXの配列からなる工程と、
(7)前記タイプII制限エンドヌクレアーゼでレプリコンを処理し、隣接する標的一本鎖DNA配列の間のX’XTX配列の5’末端と3’末端でそれぞれ切断することにより、複数の標的一本鎖DNA配列を放出させる工程と、
を含む、標的一本鎖DNAの調製方法。
【0017】
2.前記タイプII制限エンドヌクレアーゼはAlwI、BbsI、BbvI、BceAI、BCIVI、BfuAI、BmrI、BpmI、BpuEI、BsaI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspMI、BspQI、HphI、HpyAV、FokI、FauI、HgaIから選択される、前記1に記載の方法。
【0018】
3.前記ウラシル特異的切除試薬はウラシル特異的切除酵素(USERTM)である、前記1~2のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
4.前記リガーゼはT4 DNAリガーゼである、前記1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
5.前記工程(3)と(4)は同一の反応系で、ウラシル特異的切除試薬とリガーゼの同時存在下で行われる、前記1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
6.ローリングサークル複製は連続複製能を有するDNAポリメラーゼを用い、好ましくはphi29 DNAポリメラーゼを用いて行われる、前記1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
7.前記タイプII制限エンドヌクレアーゼはBspQIである、前記1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
8.Xの配列はGCTCTTCNであり、NはA、T、C又はGであり、好ましくはAであり、X’の配列はNGAAGAGCであり、N、N、N、Nは独立にA、T、C又はGから選択され、より好ましくは、X’の配列はCCTTGAAGAGCである、前記7に記載の方法。
【0024】
9.nは6~10である、前記1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
10.nは8である、前記1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
11.mは1である、前記1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
12.Xの配列はAACTATACであり、Xn-mの配列はAACTATAである、前記1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
13.前記標的一本鎖DNAの長さは150~2500ntである、前記1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
14.二本鎖DNA鋳型分子を調製する前に標的一本鎖DNA配列に配列分析を行い、標的一本鎖DNA配列には切断部位がないタイプII制限エンドヌクレアーゼを選択することを含む、前記1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
15.標的DNA配列を増幅するためのキットであって、
配列が式:XTXに示される左の適応配列、及び配列が式:X’Xn-mに示される右の適応配列を含み、
式中、Xはn個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、5’ヌクレオチドはAであり、nは4以上の任意の整数であり、好ましくは6~8であり、より好ましくは8であり、
はタイプII制限エンドヌクレアーゼの認識部位配列であり、Xは標的一本鎖DNA配列に存在しておらず、X’はXの逆相補配列であり、X、Xはそれぞれ任意の0個~複数個のヌクレオチドであり、X、X’はそれぞれこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断部位を構成し、Xの3’末端及びXの5’末端におけるこのタイプII制限エンドヌクレアーゼの切断が許容され、
n-mはXの5’からn-m個のヌクレオチドのサブシーケンスであり、mは1~3の整数であり、
Aはアデニル酸を示し、Tはチミジル酸を示す、キット。
【0031】
15.XUXの配列を含むフォワードプライマー、及びXn-m’X’の配列を含むリバースプライマーを更に含み、
ここで、X、X、X、Xは前記適応配列におけるそれらと同じであり、
n-m’は前記Xn-mの逆相補配列であるが、そのうちの3’末端のTはUに置き換えられ、X’は前記Xの逆相補配列であり、Uはウリジル酸であり、
フォワードプライマーとリバースプライマーは標的DNA配列を鋳型としてPCR増幅を行うことを許容する、前記14に記載のキット。
【0032】
16.一本鎖DNAを調製するためのキットであって、
ポリメラーゼ連鎖反応に適したDNAポリメラーゼと、
DNAリガーゼ、好ましくはT4 DNAリガーゼと、
ウラシル特異的切除試薬、好ましくはウラシル特異的切除酵素と、
ローリングサークル増幅に適したDNAポリメラーゼ、好ましくはphi29 DNAポリメラーゼと、
タイプII制限エンドヌクレアーゼと、を含む、キット。
【0033】
17.前記14に記載の左の適応配列と右の適応配列、及び前記15に記載のフォ
ワードプライマーとリバースプライマーを更に含む、前記16に記載のキット。
【0034】
18.DNAリガーゼとウラシル特異的切除試薬は同一の容器に入れられる、前記16又は17に記載のキット。
【発明の効果】
【0035】
本発明で開発された一本鎖DNAの調製プロセスは、一連の高品質の一本鎖DNA鋳型に係る方法を形成する。ほとんどの操作工程は、等温でインキュベートするという条件で行われるため、このプロセスは生産設備に対しても、スケールアップに対しても高い適応性を有する。また、調製原料は通常のプライマーと酵素製剤であり、輸入された高価なストレプトアビジン修飾磁気ビーズを必要とせず、一本鎖DNAを大量(数十μg)調製する場合、そのコストが大幅に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1においてウラシル修飾されたプライマーで合成された両端コネクタ付フラグメントにPCR増幅を行うことにより得られた生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。
図2】実施例1においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に放出された標的フラグメントである長い一本鎖モノマーのアガロースゲル電気泳動結果である。
図3】実施例1においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に得られた生成物に磁気ビーズ精製を行う前後における生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。レーン1は精製前の粗生成物であり、レーン2は磁気ビーズ精製後の生成物である。
図4】実施例2においてウラシル修飾されたプライマーで合成された両端コネクタ付フラグメントにPCR増幅を行うことにより得られた生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。
図5】実施例2においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に放出された標的フラグメントである長い一本鎖モノマーのアガロースゲル電気泳動結果である。
図6】実施例2においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に得られた生成物に磁気ビーズ精製を行った後における生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。
図7】実施例3においてウラシル修飾されたプライマーで合成された両端コネクタ付フラグメントにPCR増幅を行うことにより得られた生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。
図8】実施例3においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に放出された標的フラグメントである長い一本鎖モノマーのアガロースゲル電気泳動結果である。
図9】実施例3においてBspQI制限エンドヌクレアーゼでヘアピン構造を切断した後に得られた生成物に磁気ビーズ精製を行った後における生成物のアガロースゲル電気泳動結果である。
図10】実施例1で調製された生成物をハイスループットシーケンシング技術(NGS)により測定した配列である。
図11】実施例2で調製された生成物をハイスループットシーケンシング技術(NGS)により測定した配列である。
図12】実施例3で調製された生成物をハイスループットシーケンシング技術(NGS)により測定した配列である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明で説明された方法をより明らかにするために、以下に図面及び実施例を参照して本発明を更に説明する。
【0038】
実施例1:
本実施例では、このプロセスにより長さが253ntの長い一本鎖DNAを48μg調製し、純度が91%であり、配列正確度が100%であった。
テストサンプルは長さが253ntのDNA配列(SEQ ID NO:1)であった。
【0039】
本実施例の一本鎖DNAの調製過程は以下のとおりである。
【0040】
1)工程一(配列分析フロー):生物情報学的ソフトウェアで分析したところ、配列にBspQI酵素切断部位が含まれていないため、この酵素を最終切断酵素として選択した。
【0041】
2)工程二(プライマー設計フロー):標的配列の両端にそれぞれ配列5’-AACTATACTGCTCTTCA-3’(SEQ ID NO:4)と5’-CCTTGAAGAGCAACTATA-3’(SEQ ID NO:5)を付加して遺伝子合成を行い、PCR増幅プライマーとしてフォワードプライマーPf:5’-AACTATACUGCTCTTCA-3’(SEQ ID NO:)とリバースプライマーPr:5’-TATAGTUGCTCTTCAAGG-3’(SEQ ID NO:)を用い、上記プライマーを合成した。
【0042】
3)工程三(鋳型増幅による調製-自動環化):ウラシル修飾されたプライマー(Pf、Pr)で合成された両端コネクタ付フラグメントに増幅を行った。PCR反応系は以下のとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
PCR反応手順は以下のとおりである。
【0045】
【表2】
【0046】
PCR生成物の電気泳動図は図1に示される。
【0047】
続いてこのPCR生成物を回収し、自己環化反応を行った。USER酵素とT4 DNAリガーゼでギャップ付環状二本鎖DNAを調製する自己環化反応系は以下のとおりである。
【0048】
【表3】
【0049】
反応条件として、37℃で30min維持し、20℃で30min維持し、4℃まで降温して保存した。
【0050】
4)工程四(ローリングサークル複製):200μlのPCRチューブに、工程三で調製されたギャップ付環状DNAサンプル100ngに対して、30℃で4~8時間インキュベートし、続いて80℃で20min維持して酵素を不活性化することにより、ローリングサークル複製を行った。ローリングサークル複製の反応系は以下のとおりである。
【0051】
【表4】
【0052】
5)工程五(アニーリング-自動折り畳み):上記ローリングサークル複製生成物に対して、80℃で5min維持し、0.1℃/sで65℃まで降温し、65℃で5min維持し、0.1℃/sで42℃まで降温し、42℃で5min維持し、37℃で5min維持し、0.1℃/sで4℃まで降温し、続いて4℃で保存するように降温(アニーリング)を行うことにより、設計されたヘアピン構造を生成させた。
【0053】
6)工程六(制限エンドヌクレアーゼ切断-標的フラグメントである長い一本鎖モノマーの放出):上記反応生成物に10x制限エンドヌクレアーゼ緩衝液を15μl、前記で選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼを2μl添加し、ddHOを容量150μlになるまで添加し、制限エンドヌクレアーゼの最適な反応温度で60min静置し、続いて熱変性により不活性化した。反応粗生成物の電気泳動図は図2に示される。
【0054】
7)工程七(精製、濃縮):制限エンドヌクレアーゼ切断生成物は標的フラグメントである一本鎖DNA生成物、ヘアピン構造を含む。この標的配列の長さが300ntより短いため、磁気ビーズにより効率よく精製した。精製前後の比較は図3に示される。レーン1は粗生成物であり、レーン2は磁気ビーズ精製後の生成物であり、ヘアピン構造が効果的に除去され、純度が91%であった。ハイスループットシーケンシング技術(NGS)
でシーケンシング検証を行うことにより得られた配列結果は図10に示され、SEQ ID NO:1と一致した。
【0055】
実施例2:
本実施例では、このプロセスにより長さが1350ntの長い一本鎖DNA(SEQ ID NO:2)を40μg調製し、純度が97%であり、配列正確度が100%であった。
【0056】
テストサンプルは長さが1350ntのDNA配列であった。
本実施例の長い一本鎖DNAの調製過程は以下のとおりである。
【0057】
1)工程一(配列分析フロー):生物情報学的ソフトウェアで分析したところ、配列にBspQI酵素切断部位が含まれていないため、この酵素を最終切断酵素として選択した。
【0058】
2)工程二(プライマー設計フロー):標的配列の両端にそれぞれ配列5’-AACTATACTGCTCTTCA-3’と5’-CCTTGAAGAGCAACTATA-3’を付加して遺伝子合成を行い、PCR増幅プライマーとしてフォワードプライマーPf:5’-AACTATACUGCTCTTCA-3’とリバースプライマーPr:5’-TATAGTUGCTCTTCAAGG-3’を用い、プライマー合成を行った。
【0059】
3)工程三(鋳型増幅による調製-自動環化):ウラシル修飾されたプライマー(Pf、Pr)で合成された両端コネクタ付フラグメントに増幅を行った。PCR反応系は以下のとおりである。
【0060】
【表5】
【0061】
PCR反応手順は以下のとおりである。
【0062】
【表6】
【0063】
PCR生成物の電気泳動図は図5に示される。
【0064】
続いてこのPCR生成物を回収し、自己環化反応を行った。USER酵素とT4 DNAリガーゼでギャップ付環状二本鎖DNAを調製する自己環化反応系は以下のとおりである。
【0065】
【表7】
【0066】
反応条件として、37℃で30min維持し、20℃で30min維持し、4℃まで降温して保存した。
【0067】
4)工程四(ローリングサークル複製):1.5mlの遠心管に、工程三で調製されたギャップ付環状DNAサンプル100ngに対して、30℃で4~8時間インキュベートし、続いて80℃で20min維持して酵素を不活性化することにより、ローリングサークル複製を行った。ローリングサークル複製の反応系(8mlの反応系)は以下のとおりである。
【0068】
【表8】
【0069】
5)工程五(アニーリング-自動折り畳み):上記ローリングサークル複製生成物に対して、80℃で5min維持し、0.1℃/sで65℃まで降温し、65℃で5min維持し、0.1℃/sで42℃まで降温し、42℃で5min維持し、37℃で5min維持し、0.1℃/sで4℃まで降温し、続いて4℃で保存するように降温(アニーリング)を行うことにより、設計されたヘアピン構造を生成させた。
【0070】
6)工程六(制限エンドヌクレアーゼ切断-標的フラグメントである長い一本鎖モノマーの放出):上記反応生成物に10x制限エンドヌクレアーゼ緩衝液を150μl、前記で選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼを20μl添加し、ddHOを容量1500μlになるまで添加し、制限エンドヌクレアーゼの最適な反応温度で60min静置し、続いて熱変性により不活性化した。反応粗生成物の電気泳動図は図5に示される。
【0071】
7)工程七(精製、濃縮):制限エンドヌクレアーゼ切断生成物は標的フラグメントである一本鎖DNA生成物、ヘアピン構造を含む。この標的配列の長さが300ntより長いため、アガロースゲル電気泳動により切断、回収、精製した。精製後の最終生成物の電気泳動図は図6に示される。レーン1は精製後の生成物であり、ヘアピン構造と二本鎖DNAの汚染がいずれも効果的に除去され、純度が97%であり、配列正確度が100%であった。ハイスループットシーケンシング技術(NGS)でシーケンシング検証を行うことにより得られた配列結果は図11に示され、SEQ ID NO:2と一致した。
【0072】
実施例3:
本実施例では、このプロセスにより長さが2350ntの長い一本鎖DNA(SEQ ID NO:3)を10μg調製し、純度が93%であり、配列正確度が100%であった。
【0073】
テストサンプルは長さが2350ntのDNA配列であった。
本実施例の長い一本鎖DNAの調製過程は以下のとおりである。
【0074】
1)工程一(配列分析フロー):生物情報学的ソフトウェアで分析したところ、配列にBspQI酵素切断部位が含まれていないため、この酵素を最終切断酵素として選択した。
【0075】
2)工程二(プライマー設計フロー):標的配列の両端にそれぞれ配列5’-AACTATACTGCTCTTCA-3’と5’-CCTTGAAGAGCAACTATA-3’を付加して遺伝子合成を行い、PCR増幅プライマーとしてフォワードプライマーPf:5’-AACTATACUGCTCTTCA-3’とリバースプライマーPr:5’-TATAGTUGCTCTTCAAGG-3’を用い、プライマー合成を行った。
【0076】
3)工程三(鋳型増幅による調製-自動環化):ウラシル修飾されたプライマー(Pf、Pr)で合成された両端コネクタ付フラグメントに増幅を行った。PCR反応系は以下のとおりである。
【0077】
【表9】
【0078】
PCR反応手順は以下のとおりである。
【0079】
【表10】
【0080】
PCR生成物の電気泳動図は図7に示される。
【0081】
続いてこのPCR生成物を回収し、自己環化反応を行った。USER酵素とT4 DNAリガーゼでギャップ付環状二本鎖DNAを調製する自己環化反応系は以下のとおりである。
【0082】
【表11】
【0083】
反応条件として、37℃で30min維持し、20℃で30min維持し、4℃まで降温して保存した。
【0084】
4)工程四(ローリングサークル複製):1.5mlの遠心管に、工程三で調製されたギャップ付環状DNAサンプル100ngに対して、30℃で4~8時間インキュベートし、続いて80℃で20min維持して酵素を不活性化することにより、ローリングサークル複製を行った。ローリングサークル複製の反応系(最終反応系は4mlであり、1ml/管で反応させた)は以下のとおりである。
【0085】
【表12】
【0086】
5)工程五(アニーリング-自動折り畳み):上記ローリングサークル複製生成物に対して、80℃で5min維持し、0.1℃/sで65℃まで降温し、65℃で5min維持し、0.1℃/sで42℃まで降温し、42℃で5min維持し、37℃で5min維持し、0.1℃/sで4℃まで降温し、続いて4℃で保存するように降温(アニーリング)を行うことにより、設計されたヘアピン構造を生成させた。
【0087】
6)工程六(制限エンドヌクレアーゼ切断-標的フラグメントである長い一本鎖モノマーの放出):上記反応生成物に10x制限エンドヌクレアーゼ緩衝液を150μl、前記で選択されたタイプII制限エンドヌクレアーゼを20μl添加し、ddHOを容量1500μlになるまで添加し、制限エンドヌクレアーゼの最適な反応温度で60min静置し、続いて熱変性により不活性化した。反応粗生成物の電気泳動図は図9に示される。
【0088】
7)工程七(精製、濃縮):制限エンドヌクレアーゼ切断生成物は標的フラグメントである一本鎖DNA生成物におけるヘアピン構造を含む。この標的配列の長さが300ntより長いため、アガロースゲル電気泳動により切断、回収、精製した。精製後の最終生成物の電気泳動図は図9に示される。レーン1は精製前の粗生成物であり、レーン2は精製後の生成物であり、ヘアピン構造と二本鎖DNAの汚染がいずれも効果的に除去され、純度が95%であり、配列正確度が100%であった。ハイスループットシーケンシング技術(NGS)でシーケンシング検証を行うことにより得られた配列結果は図12に示され、SEQ ID NO:3と一致した。
【0089】
上記三つの実施例に示されるように、本方法は、長さが150~2500ntの長い一本鎖DNAを生産するために用いることができる。この方法は様々な長さの配列に共通であり、機器設備に対する要求が低く、スケールアップが容易である。精製後の長い一本鎖DNAは、純度が高く、配列忠実度が100%であり、CRISPR遺伝子編集の効率的な遺伝子ノックイン鋳型としての使用に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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