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特許7550763金属基材および金属基材中のチャネルを含む物品、ならびにその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】金属基材および金属基材中のチャネルを含む物品、ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/352 20140101AFI20240906BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61L 27/06 20060101ALI20240906BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20240906BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B23K26/352
C22C14/00 Z
A61L27/06
A61L27/04
A61L27/54
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021536355
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2019086112
(87)【国際公開番号】W WO2020127594
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】102018133553.9
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521269506
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲゼルシャフト ツール フェルドルンク デル アンゲヴァントテン フォルシュンク アインゲトラゲナー フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】シュペヒト ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ザルツ ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ルカスツィック トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウィルケン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ボルヒェルディング カイ
(72)【発明者】
【氏名】ガテン リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデック ティム ホイジンガー フォン
(72)【発明者】
【氏名】ノルティ ナーネ
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051041(JP,A)
【文献】特開2015-142960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材、および表面に完全にまたは部分的に開口している、金属基材中のチャネルを有する物品であって、チャネルの断面が、接触面に平行に、かつ表面に垂直な断面にある縦方向チャネル軸に対して直角で測定される、チャネル底部(7)と接触面(1)との間の局所最大幅(5)を有しており、接触面は、チャネル開口部が存在するチャネル断面において、チャネル開口部の上に挿入された半径3mmを有する円と基材との2つの接触点を通る割線により構成され、チャネル表面の領域にある金属基材と比べて、改変された粒子サイズ構造を有する熱影響部が存在し、物品が、最大で1:2の比の、金属基材に対するより小さな平均統計学的粒子サイズを有する、チャネルの開口部領域における第1の熱影響部と、0.1μm~3000μmの厚さを有するチャネルまたはチャネル断面の最低点の領域における第2の熱影響部とを有し、チャネル断面における最低点から垂直方向の第2の熱影響部が、金属基材に比較して、≦1:1.2となるより小さな平均統計学的粒子サイズを有する、物品。
【請求項2】
接触面(1)の下の局所最大幅(5)が、≧0.5μmである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
縦方向チャネル軸に対して直角で測定される局所最大幅(5)が、≧1μmある、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
チャネルが、≦1:3ある、縦方向チャネル軸に対して直角で測定される局所最大幅(5)のチャネル長さに対するアスペクト比を有しており、かつ/またはチャネルが、≧3μm長さを有しており、チャネル長さが各場合において、物品表面に平行に測定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項5】
接触面()に対して直角で測定すると、チャネルが、0.1μm~10000μmなる深さ(3)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
チャネルの開口部が、縦方向チャネル軸に対して直角で接触面()において測定すると、0.05μm~2000μmの幅を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の局所最大幅(5)により形成される面に対して、≧30%範囲まで被覆されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の局所最大幅(5)により形成される面に対して、≧50%の範囲まで被覆されている、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の局所最大幅(5)により形成される面に対して、≧90%の範囲まで被覆されている、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の局所最大幅(5)により形成される面に対して、≧99%の範囲まで被覆されている、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
最大で1:10の比の、金属基材に対するより小さな平均統計学的粒子サイズを有する、チャネルの開口部領域における第1の熱影響部、および.2μm~1000μm範囲の厚さを有するチャネルまたはチャネル断面の最低点の領域における第2の熱影響部を有、チャネル断面における最低点から垂直方向の第2の熱影響部が、金属基材に比較して、1:5となるより小さな平均統計学的粒子サイズ、および第1の熱影響部に比べて、2:1.2となるより大きな平均統計学的粒子サイズを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
金属基材が、チタン、アルミニウム、バナジウム、マグネシウム、銅、銀、鉛、金、相互のまたはさらなる金属とのその合金、および鋼からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項13】
チャネル壁に沿う基材に比べて酸素に富む層であって、50nm深さで測定される酸素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる酸素に富む層、および/またはチャネル壁に沿う基材に比べて窒素に富む層であって、50nm深さにおいて測定される窒素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる窒素に富む層を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の物品。
【請求項14】
活性物質の貯蔵層として、細胞の栄養培地の貯蔵層として、細胞、真菌、胞子および/もしくは細菌の生息地として、ならびに/またはオッセオインテグレーションを改善するためのもしくは骨芽細胞との過成長を可能にするための基材として使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の物品。
【請求項15】
a)金属基材を有する物品を用意するステップ、および
b)パルス状レーザーを金属基材に照射するステップであって、照射を、少なくとも0.1kHzのパルス繰り返し周波数で、なくとも5パルス同じ部位に行い、使用されるレーザー照射が、400nm~30μmの範囲の波長を有しており、パルスのパルス長さが、500ps~100sの範囲にある、ステップ
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の金属基材を有する物品を製造する方法。
【請求項16】
使用されるレーザー照射が、950nm~12μmの範囲の波長を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
パルス繰り返し周波数が、0.1kHz~4MHzの範囲ある、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
パルスのパルス長さが、1ns~1μsの範囲にある、請求項1517のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レーザービーム焦点における集電センサーによる、試料位置で測定されたエネルギー密度が、0.1J/cm2~100J/cm2 ある、請求項1518のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
レーザースポットにおけるエネルギー分布が、ガウスプロファイルまたはフラットトッププロファイルまたはトップホットプロファイルを有する、請求項1519のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップb)が、少なくとも0.01s~0.25μsの時間間隔で2~1000サイクルで行われる、請求項1520のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップb)において、金属基材にCWまたはQCWレーザーが照射されスポットサイズに対応する表面領域におけるレーザーパルスの局所滞留時間が、少なくとも5nsある、請求項1521のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ステップb)の繰り返しで、集合的に生成した細孔が、完全にまたは部分的に表面に開口したチャネルとなるように、ステップb)の後にレーザーを移動させる、請求項1522のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材および完全にまたは部分的に表面に開口している、該金属基材中のチャネルを有する物品であって、チャネルが、非常に特異的な幾何学形状を有する、物品に関する。本発明は、パルス状レーザー照射を使用する、本発明の物品を製造する方法にさらに関する。本発明はまた、本発明の方法により製造される、または製造可能な、金属基材および金属基材中のチャネルを有する物品、ならびに本発明の物品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体物質、粘度の高い物質または溶媒中に溶解もしくは懸濁した物質の、金属製ワークピースの界面への吸収は、物質が浸透して吸収され得る表面構造を必要とする。このような構造は、操作中に接触表面に徐々に放出される潤沢剤、流動促進剤またはシーラントを吸収させるため、移動性の構成成分中に、接触表面、例えばシールまたはベアリングに利用することができる。医療技術の分野でも、このような構造化は、インプラント表面の修飾に利用することができる。抗生物質、または他の活性な抗細菌性成分、BMP(「骨形成タンパク質」)、細胞増殖抑制剤または生物(例えば、ファージ)のインターカレーションおよび制御放出により、感染が起こる部位において、インプラントに関連する感染を一層効果的に予防および処置することが可能となる。
金属性原料表面におけるこのような貯蔵可能な層の生成または堆積は、様々な方法により行われ得る。物質の吸収能およびその放出速度に及ぼす主要な影響は、構造体の形状およびサイズ、ならびに構造化層の厚さによって握られている。
金属性原料表面における構造化された表面および貯蔵可能な表面は、先行技術では、生産工程の早い段階に特定の回転方法によって導入され得る。代替的に、それらは、続いて、コーティング剤の堆積によって、または界面層の材料除去もしくは構造上の変化によって原料それ自体から製造することができる。高い貯蔵能に関すると、良好な好適性があることが見出されている細孔構造体は、本方法により、様々な層厚さおよび細孔密度で製造され得る細孔構造となることが見出されている。
例えば、熱的噴霧方法(例えば、フレーム噴霧方法または光アーク噴霧方法)によって、細孔構造を有する層を生成することが可能である。コーティング材料およびパラメーターにより、このようにして、3%~15%の多孔度を有する層を生成することが可能である(Oerlikon Metco. Einfuhrung Thermisches Spritzen [Introduction to Thermal Spraying] - 6th edition. July 2016を参照されたい)。熱的噴霧方法により、他の形態の構造を製造することは可能ではない。これらの技法は、通常、基材表面に明らかな熱投入をもたらすので、これらの技法は、熱感受性原料に好適ではない。
【0003】
さらなる方法は、ゾル-ゲル方法である。反応パラメーターを好適に調整することによって、50%~85%の多孔度を有する、基材表面に多孔質層を生成する浸漬ゾルを生成することが可能である(Heidenau, Frank, et al., et al. Offenporige, bioaktive Oberflachenbeschichtungen auf Titan [Open-Pore Bioactive Surface Coatings on Titanium]. Biomaterialien. 2001, vol. 2, 1.を参照されたい)。
コーティング剤における限定因子は、一般に、とりわけ機械応力下で、原料への良好な層結合がなければならないことである。対照的に、塩基性材料から直接製造される構造体が、有利であることが見出されている。原料に応じて、様々な材料がこの場合、使用可能である。
【0004】
MAO方法(「マイクロアーク酸化」または代替として「プラズマ電解酸化(PEO)」では、酸化層は、金属性表面、例えばチタンまたはチタン合金に構築される。この場合、工程パラメーターを好適に選択することによって、大きなアスペクト比を有する細孔構造体を製造することが可能である。この方法における欠点は、金属に応じて化学物質が必要であり、その一部は、健康に高い有害性があることである。
【0005】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合、エロキサル方法がさらに知られている。この場合、電解酸化により、最上部の金属層は、酸化物または水酸化物の開口細孔へと変換される。細孔の閉塞は、その後の、例えば熱蒸気または熱水中での高密度化によって可能となる。しかし、エロキサル方法の適用は、アルミニウムに限定される。
ペースト状材料の吸収に恐らく好適な特定の湿式洗線方法によって構造化表面を製造することもさらに可能である。しかし、この構造体は、通常、規則的な形態を有さない。この方法はさらに、個々の基材材料(例えば、アルミニウム合金)にかなり限定される。
【0006】
金属性表面を局所構造化する場合、レーザー方法は、とりわけ、フェムト秒またはピコ秒の範囲の超短パルスレーザーによって、さらに確立されている。この技法は、塩基性材料に大きな熱投入なしに材料を除去することが可能である。
US2008216926は、フェムト秒レーザーによるナノ構造体の生成について記載している。しかし、ナノ構造化表面は、物質または活性成分の貯蔵および放出には不適切であることが分かっている。
WO10130528は、ピコ秒範囲のパルス状レーザーを用いて反復処理することによるマイクロ構造体の製造を記載している。この方法は、細孔開口部の直径の低下した細孔(「キーホール」)、または細孔開口部における部分突出部を有する細孔の生成が可能となる。医療用インプラント(成長挙動および強度が改善されている)または接着剤における機械的固定にこのような構造体を利用することが可能である。
US2016059353には、材料に特有の摩耗閾値(材料除去に必要なエネルギー密度)より小さなレーザー処理による微多孔質の生成方法が記載されている。この場合、レーザー処理は、細孔構造体が形成されるまで(1000回または2000回を超える)行われる。このタイプの工程レジメは、処理の単位面積あたり、低いレベルの成績がもたらされる。この方法は、1つのタイプのレーザーに特に縛られない。しかし、摩耗閾値未満の処理は、非常に明白ではなく、構造深さの浅い構造体しか形成し得ない(材料除去の欠如)。したがって、それらの構造体は、液状媒体またはペースト状媒体の場合、低い貯蔵容量しか有さない。
CN105798454では、表面近傍領域に割れ目を生成するための、ナノ秒レーザーを用いる表面の処理を行うための装置が記載されている。
【0007】
レーザーセクターにおける上記の文献は、ピコ秒またはフェムト秒範囲の超短パルスを有するレーザーに主に関するものである。これらのシステムは、周囲材料にいかなる大きな熱投入もなしに、画定した構造体を生成するために利用することができる。この場合の欠点は、資本費用が比較的高額になること、および実現可能な面積速度が小さいことである。塩基性金属材料から生成された表面近傍および高度に構造化された層はさらに、通常、低い機械的安定性しか有していない。
【発明の概要】
【0008】
このような背景に対して、本発明の目的は、個別の、複数のまたは可能な限り多くの、先行技術の記載されている欠点を軽減する物品を提供することであった。このような課題を解決する物品を製造するための対応する方法を説明することもまた、当然ながら目的の一部であった。
本物品に関すると、本発明の目的は、表面に完全にまたは部分的に開口している、金属基材中のチャネルを有する物品であって、チャネルの断面が、接触面に並行して、かつ表面に垂直な断面にある縦方向チャネル軸に対して直角で測定される、チャネル底部(7)と接触面(1)との間の局所最大幅(5)を有しており、チャネル表面の領域にある金属基材と比べて、粒子サイズ構造の改変した熱影響部が存在する、物品により実現される。
本発明の物品では、金属基材は、好ましくは物品自体が主にまたは全体が金属からなる、少なくとも1つの表面に設けられている。本発明により提供されるチャネルの特定の幾何学形状(当然ながら、複数のチャネルもまた設けられ得る可能性も含む)は、最初に、特定の生産方法に向けられ、次に、多数の適用を可能にする。
本発明の状況における、とりわけ断面(断面調製)における接触面は、以下の通り画定される:検査される部位にチャネル開口部が存在する場合、半径3mmを有する円が、このチャネル開口部の上にグラフにより挿入され、こうして、この円は、本発明により想起される基材を正確に2回、接触する(チャネルの片面ずつに1回)。この状況を、図1bの右側に概略的に示されている。次に、これらの2つの接触点を通る割線が、接触面を構成する。
【0009】
この文章の文脈における「熱影響部」とは、基材材料と比べて、物理的に異なる領域のことであり、この差異は、基材の加熱処理によって、生成可能であるか、または好ましくは実際に生成された。特に、この文章の文脈の熱影響部は、金属基材に比べて、粒子サイズの構造の変化を特徴とする。明確にするために記すと、粒子サイズ構造の変化は、熱影響部における、金属基材(熱によって影響を受けない)の粒子サイズに比べて、平均統計学的粒子サイズに変化があることを意味する。
チャネルがその断面に関して閉塞している場合、一般に、半径3mmを有する円に2つの位置が考えられる場合があり得る(図1bの左側を参照されたい)。この場合、それは、前述の条件下で、半径3mmの対応する円と交差する割線であり、こうして、接触面の定義にとって重要な円の内側に一層長い距離が存在する。
明確にするために記すと、重要なことは、基材の視点から、半径3mmを有する円に接触する2つの点は、凸曲線「上にある」ということである。
【0010】
本発明の状況では、縦方向チャネル軸は、明確にするために記すと、チャネルの最大幅の≦10分の1の距離で、縦方向チャネル軸に対して直角でそれぞれが通る、複数の断面のチャネル底部から生じるラインである。
既に上で示した通り、本発明の物品のチャネルの特有の幾何学形状は、本発明の新規製造方法により得ることができる(さらに以下を参照されたい)。原理的に、これは、パルス状レーザー照射による処理を含み、パルスが、金属基材表面の同じ部位に繰り返し衝突する。詳細には、本説明の文脈において、さらなる情報は以下にある。
【0011】
本発明の方法においてレーザーを誘導することによって、チャネルの縦方向軸に沿って、様々な方法でチャネルを構成することが可能である。直線および複数の平行したチャネルを構成することが可能であり、これが、多数の場合に好ましい。例えば、代替的に、本発明により提供されるチャネルを蛇行線で構成すること、または交差部をやはり有することがある複数のチャネルを設けることが可能である。
【0012】
チャネルの幾何学的形状の説明に関しては、図も参照される。図では、参照番号は、以下の意味を有する:
1 接触面
3 チャネル深さ
5 最大チャネル幅
6 チャネル長さ
7 チャネル底部
9 チャネル縁部
11 完全なチャネルの被覆
13 部分的なチャネルの被覆
15 交差チャネル
17 蛇行チャネル
19 物品表面に平行な断面
21 表面に垂直な断面
23 開口部領域中の熱影響部
25 チャネルの最低点の領域にある熱影響部
27 基材の粒子サイズ
29 基材
31 開口部の幅
図は、この場合、以下の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】断面において閉鎖されている中央部において、チャネルと同一空間を占める、金属基材に沿った断面の概略図を示す一方、右側のチャネルは、断面で開口している。
図1b図1aの概略図を示しており、各場合において、円は、図示されている接触面の画定部に対して半径3mmを有する。
図2】基材表面に平行な断面の概略図であり、それぞれが概略図の形態で、左側に蛇行チャネル、中央に平行チャネル、および右側に交差チャネルを示している。
図3】次に、金属基材に沿った概略断面図であり、原理的に相互融合チャネルからなるチャネル構造体を示しているが、本発明の目的の場合、これらはそれぞれ、1つのチャネルと見なされる。
図4】次に、個々に示されている本発明の方法の結果である、熱影響部を含む、チャネルの領域における金属基材に沿った概略断面図である。
図5】X方向、すなわち実施例1で製造された表面修飾基材の場合のレーザーの動く方向に垂直な断面の顕微鏡による特徴付けを示す。
図6】可視試料領域において、被覆部分領域(B)および開口部分領域(C)を有する、完全に透過性のチャネルであることを示している。
図7】基材-チタン標的距離の関数としての透過率を示している。
図8】既知濃度のメチレンブルーを有する溶液の濃度に対する吸収量のプロット。
図9】時間の関数として放出されたメチレンブルーの量の曲線進行を示す。
図10】ロールブランクのチタン表面、および様々な時間での本発明のチタン表面での骨芽細胞のSEM画像を示す。
図11】アラルダイト2011で接合した後の重ねせん断強度を示す。
図12】ノンアンダーカットレーザー構造体、およびL1によりレーザー照射してTCPを充填した鋼表面の非構造化シートの比面積質量変化を示している。
図13】上面図(左側)および側面図(右側)において、L14により製造した表面構造の顕微鏡画像を示している。
図14】レーザー構造化Al99.5表面におけるプラズマポリマーコーティング(右側;L14)、および摩耗試験前、および10サイクルまたは20サイクルでの摩耗試験後に構造化されていないAl99.5表面(左側)の水接触角を示している。
図15】レーザー法により製造したアルミニウム(AlZnMgCu1.5)のチャネル構造体の顕微鏡画像および模式図を示す。
図16】様々な事前処理によるキャスト法により組み込みされたアルミニウム製シートインサートの重ねせん断強度を示す。
図17】様々な事前処理によるキャスト法により組み込みされた鋼製シートの重ねせん断強度を示す。
図18】本発明のアンダーカットチャネル構造体からなるマイクロ反応器の概略機器、ならびに個々の区域および例示的なチャネル断面図の顕微鏡画像を示している。
図19】流入区域AおよびA*を有するマイクロスケール反応器、フルオロセインと水酸化ナトリウム溶液との反応の証拠としての反応区域Bにおける白色蛍光、および区域Cでの吸収布への生成物の流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の文脈では、接触面(1)の下の局所最大幅(5)が、≧0.5μmである、本発明の物品が好ましい。
多数の用途に任意の特定の構造が好適である。
チャネルが、1:3、好ましくは1:10、より好ましくは1:100である、縦方向チャネル軸に対して直角で測定される局所最大幅(5)のチャネル長さに対するアスペクト比を有しており、かつ/またはチャネルが、≧3μm、好ましくは≧100μm、より好ましくは≧500μmの長さを有しており、チャネル長さが各場合において、物品表面に平行に測定される、本発明の物品が同様に好ましい。
同様に、本発明によれば、接触面(5)に対して直角で測定すると、チャネルが、0.1μm~10000μm、好ましくは0.2μm~1000μm、より好ましくは0.5μm~500μmの範囲となる深さ(3)を有する、本発明の物品が好ましい。
同様に、本発明によれば、チャネルの開口部が、縦方向チャネル軸に対して直角で接触面(5)において測定すると、0.05μm~2000μmの幅を有する、本発明の物品が好ましい。
これらの構造的な構成体のすべてが、さらに以下に記載されている本発明の方法によって、好適かつ再現可能にまず作製され得る。次に、これらの構成体は、同様に以下にさらに記載されている使用の分野に特に好適な方法で、本発明のチャネルまたは物品の使用を可能にする多数の特性をもたらす。
【0015】
本発明によれば、チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の最大幅(5)により形成される面に対して、≧30%、好ましくは≧50%の範囲まで、および各場合において、さらに好ましくは≧70%、≧80%、≧90%、≧95%および≧99%の範囲まで被覆されている、本発明の物品が好ましい。
【0016】
本発明によれば、好適な方法制御によって、個々のチャネルの被覆のレベルを制御することが可能である。この場合、常に、本発明の文脈では、各チャネルが少なくとも1つの表面への開口部を有する。最終使用によれば、被覆されていないチャネルの領域は一層大きく、または一層小さくするのが望ましいことがある。このように、チャネルの内容物の放出速度を制御することが可能である。同時に、チャネルに2つの異なる場所の間で物質の移動を実質的に必要とする最終用途が意図される場合、チャネルを主に閉塞管として構成することが可能である。とりわけ、そのような目的だけではなく、チャネルの内容物の緩徐放出が望ましい目的の場合にも、チャネルは、かなり実質的にまたは完全に被覆されていることが望ましい。
【0017】
で1:2、より好ましくは最で1:10の比の、金属基材に対するより小さな平均統計学的粒子サイズを有する、チャネルの開口部領域における第1の熱影響部、および0.1μm~3000μm、好ましくは0.2μm~1000μmの範囲、より好ましくは0.5μm~500μmの範囲の厚さを有するチャネルまたはチャネル断面の最低点の領域に第2の熱影響部を有する、本発明の物品であって、チャネル断面における最低点から垂直方向の第2の熱影響部が、金属基材に比較して、好ましくは≦1:1.2、より好ましくは≦1:5となるより小さな平均統計学的粒子サイズ、および第1の熱影響部に比べて、好ましくは≧2:1.2となるより大きな平均統計学的粒子サイズを有する、本発明の物品が好ましい。
合金のレーザー処理の場合、第1の熱影響部は、融解後に急速に固化させることにより形成されるマルテンサイトマイクロ構造体を特徴とすることができる。例として、マルテンサイトマイクロ構造体を形成するためのTi6Al4Vの場合には、固化速度は、少なくとも640℃/秒でなければならない。したがって、本発明の物品では、第1の熱影響部にマルテンサイトマイクロ構造体が認められることが好ましいことがある。
熱影響部のこのような構成は、本発明の方法が本発明の物品を生成するために使用されることを最初に示す。第2に、対応する熱影響部が、様々な可能な構成体をもたらす。例えば、チャネルの被覆は、第1の熱影響部の領域から構成されることが可能である。さらに、本発明による特に好ましく設けられる熱影響部は、特に、その後の処理によるチャネル表面の表面特性の制御にとって良好な適合性がある。
金属基材は、チタン、アルミニウム、バナジウム、マグネシウム、銅、銀、鉛、金、その相互のまたはさらなる金属との合金、および鋼からなる群から選択される本発明の物品が好ましい。
これらの材料には、本発明の方法にとって適切なチャネル構造が特に効果的に設けることができる(以下を参照されたい)。それらの材料は、さらに多数の最終使用に特に好適である。
【0018】
本発明によれば、チャネル壁に沿う基材に比べて酸素に富む層であって、50nm、好ましくは500nmの深さで測定される酸素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる酸素に富む層、および/またはチャネル壁に沿う基材に比べて窒素に富む層であって、深さ50nm、好ましくは500nmの深さにおいて測定される窒素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる窒素に富む層を有する本発明の物品が好ましい。
まず、窒素または酸素の富化は、本発明の方法が行われたことを示唆する(明確にするために記すと、酸素雰囲気または窒素に富む雰囲気下で行われ、本発明によれば、これらの元素は基材に比べて富んでいる)。次に、改変されたチャネル表面の元素組成および粒子サイズはまた、後処理のため、例えば表面特性の調整のためにさらなる手法をやはり提供する。
【0019】
本発明の物品は、酸素濃度が、≧0.5原子%、好ましくは≧5原子%となり、かつ/または窒素濃度は、≧0.5原子%、好ましくは≧5原子%となる、≧50mm、好ましくは≧500mmの深さを有するチャネル周囲の(完全に取り囲んでいる)界面層を有していることが、本発明によれば好ましい。
言及されている原子百分率は、それぞれ、XPSにより検出可能なすべての元素の全体を基準としている。
明確にするために記すと、XPS測定は、空気に感受性の高い試料を取り扱うため、上流がアルゴンのグローブボックスを用いて行われる。パラメーター:XPSによる深さ測定に関すると、材料は、例えば、アルゴンイオンスパッタリング源によって表面から除去される。スパッタリングは、高分解能スペクトルによれば、合金の主な元素(すなわち、合金中の最高濃度を有する元素、または純粋な金属の場合、その金属)は、金属元素形態(≧95原子%)にあるまで実施される。次に、この点における酸素濃度または窒素濃度のXPS測定は、好ましくは、上述の値をもたらす。
【0020】
本発明の物品は、好ましくは、とりわけ、表面エネルギーまたは湿潤特性に関して、チャネルの領域の特性を特異的に調整する。この場合、チャネル全体またはすべてのチャネルの全体にわたり対応する表面特性を均質にすることが可能である。代替として、段階的に異なるまたは局部的に異なる表面特性を確立することが可能である。例えば、異なるチャネルは、異なる表面特性、例えば、親水性、親油性、両親媒性または親油性領域を有することができる。この調整は、例えば、以下の方法:CVDまたはPVD方法、例えばチタンのスパッタリング、またはPECVD方法によるプラズマ-ポリマー層の堆積により行うことができる。表面エネルギーは、DE102005052409(B3)に準拠し、プラズマポリマーコーティングによって好ましくは調整され得る。
【0021】
本発明により設けられるチャネルの表面は、とりわけ、表面が親水性、親油性または両親媒性構成体を有することになる場合、好ましくは少なくとも局部的に、≦60°、より好ましくは≦30°、最も好ましくは0°の接触角を有する。本発明により設けられてもよい疎水性表面および親油性表面は、好ましくは、≧90°、より好ましくは≧120°の接触角を有しており、表面エネルギーおよび接触角は、DIN55660-2:2011-12に準拠して、静的接触角測定により測定される。
【0022】
本発明の文脈において、所望の最終使用のため、とりわけ本文においてこの場合に好ましいものとして記載されている使用の目的のため、本発明のこのような物品の表面特性をさらに最適化することが好ましいことがある。この目的の場合、とりわけ生体適合性の改善のため、(目標)親水性特性の改善のため、トライポロジー特性の改善のため、腐食保護の改善のため、または接着特性の改善のため、さらなるコーティング剤が塗布されることが好ましいことがある。
一部の場合、本発明によれば、本発明の金属基材に追加のコーティングが存在しないことがやはり好ましいことがある。同様に、さらなるコーティングが存在する場合、このコーティングは、縦方向チャネル軸に対して直角で接触面において測定すると、さらなるコーティングが存在しない状況に比べて、チャネル底部と接触面との間の局所最大幅に対するチャネル開口部の比は、最大で10%低下することが好ましい。
【0023】
同様に、本発明の部分は、以下
a)金属基材を有する物品を用意するステップ、および
b)パルス状レーザーを金属基材に照射するステップであって、照射を、少なくとも0.1kHzのパルス繰り返し周波数で、少なくとも2パルス、好ましくは少なくとも5パルス、さらに好ましくは2~2000パルス、より好ましくは5~100パルスを同じ部位に行い、使用されるレーザー照射が、400nm~30μmの範囲の波長を好ましくは有しており、パルスのパルス長さが、好ましくは、500ps~100sの範囲にある、ステップ
を含む、金属基材を有する本発明の物品を製造する方法である。
チャネルの生成に関すると、ステップb)に記載されているレーザー処理は、繰り返し行う必要があり、各場合において、処理される部位は、直前に処理された部位から規定距離の位置にあるのが好ましい(新しいチャネルを開始しない場合)。互いに対する個々の部位の向きは、後のチャネル配列を画定する。両部位間の距離は、スキャン方向でのパルス重なりによって説明することができ、焦点でのスポット径に依存する(レーザー技術に関する標準方法によって測定可能である)。
【0024】
本発明の方法の場合、焦点におけるスポット径は好ましくは-25%~90%であり、より好ましくは焦点のスポット径は10%~75%である(スポット径に関する負の数は、入射レーザー出力が存在しない場所の間にある領域を有する2つの位置を記載している)。平行チャネルは、第1のチャネルから規定された距離において、この線形処理の繰り返しによって生成される。この線形処理の距離は、チャネルの所望の密度、および個々チャネルの重ね合わせおよび被覆に依存する。
本発明によれば、使用されるレーザー照射が、400nm~30μm、好ましくは950nm~12μmの範囲の波長を有する、本発明の方法が好ましい。
同様に、パルス繰り返し周波数が、0.1kHz~4MHzの範囲、好ましくは10kHz~250kHzの範囲にある、本発明の方法がさらに好ましい。
本発明の方法において、パルスのパルス長さが、500ps~100sの範囲、さらに好ましくは1ns~100μsの範囲、より好ましくは5ns~10μsの範囲にあるのがさらに好ましい。これは、本発明の方法において、所望の構造体の形成に正の影響を及ぼす。
レーザービーム焦点における集電センサーによって試料位置で測定されたエネルギー密度は、0.1J/cm2~100J/cm2、より好ましくは1J/cm2~20J/cm2の範囲にあることが一般に好ましい。
【0025】
本発明の方法では、レーザースポットにおけるエネルギー分布は、ガウスプロファイル、またはフラットトッププロファイルまたはトップホットプロファイルを有することがさらに好ましい。
工程レジメ、それらの個々のいずれかまたは任意の組合せ、および非常に特にこれらの変形体のすべての組合せのすべてのこのような詳細は、本発明の物品が、特に信頼性高く、かつ特に良好な形状で製造され得るという効果を有する。
本発明によれば、ステップb)において、金属基材にCWまたはQCWレーザーが照射される本発明の方法であって、スポットサイズに対応する表面領域におけるレーザーパルスの局所滞留時間は、少なくとも5ns、好ましくは少なくとも25ns、さらに好ましくは40ns~2ms、より好ましくは50ns~500nsの範囲にある、本発明の方法が好ましい。
本発明の文脈において、ステップb)の繰り返しで、集合的に生成した細孔が、完全にまたは部分的に表面に開口したチャネルとなるように、本発明の方法におけるステップb)の後に、レーザーを移動させるのが好ましい。
このようにして、2つの隣接パルスの場所が、チャネル形成にまとめて関与するので、このような工程レジメが当然ながら望ましい。原理的に、レーザーを案内し、こうして個々の細孔が最初に形成され、これらの細孔は、新しい操作で後に一緒になって融合され、チャネルを形成するのが当然ながらやはり可能である。
同様に、好ましくは、好ましい実施形態では、本発明の部分は本発明の方法によって製造される、または製造可能な本発明の物品である。
【0026】
本発明の方法は、すべての金属材料に原理的に適用可能であり、但し、これらの金属材料は、レーザー照射下で融解相を形成することを条件とする。使用されるレーザー源において発光される波長は、制約はない。しかし、材料に熱的相互作用をもたらす波長およびパルス期間が好ましい。nsの範囲(≧1ns)以上のパルス期間での近IR(ファイバーまたはNd:YAGレーザー)または中IR範囲(CO2レーザー)のレーザーが特に好ましい。表面に入射するフルエンスは、メルトフロントを生成するのに十分に高くなければならない。パルス周波数は、2つのパルス間の時間が、メルトフロントの再固化に十分でないように選択されなければならない。
同様に、本発明の部分は、1つ(または複数の)チャネルが設けられた金属基材が、ファージ、抗生物質、ウイルス抑制剤、化学抑制剤、細胞増殖抑制剤、生体ガラスからなる群から好ましくは選択される、活性物質の貯蔵層として、
ならびに/または
細胞の栄養培地、好ましくは三リン酸カルシウム、グルコース、脂質、アミノ酸、タンパク質、ミネラルのための貯蔵層として、ならびに/または
細胞、好ましくはヒト細胞、好ましくはヒト幹細胞および/もしくは真菌および/もしくは胞子および/もしくは細菌のための生息地として、ならびに/または
オッセオインテグレーション、すなわち骨芽細胞の取込みを改善するため、または骨芽細胞との過成長を可能にするための基材として、
使用される、本発明の物品の使用である。
【0027】
本発明の物品の本発明の使用は、トライポロジーとして活性な物質、好ましくは摩擦を低下させるためのもの、例えば潤滑剤、とりわけ油、非金属性粒子、好ましくはP63/mmc空間群(空間群番号194)を有する結晶性物質の粒子、さらには好ましくは無機物質、さらに好ましくは、グラファイト、モリブデンジスルフィド、タングステンジスルフィド、それらのインターカレート化合物の群からのもの、ならびに/または油、タンパク質、ホルモンおよび/もしくは重金属イオンを吸収するための、貯蔵層として1つまたは複数のチャネルを備える金属基材の使用でもある。
【0028】
さらに、本発明の物品は、熱交換器の分野において使用され得る。
本発明の物品における特有の構造化のおかげで、金属のチャネルへの浸入が可能であるので、とりわけ金属化合物の場合、結合の改善の使用または凝集結合の生成にさらに好適である。
同様に、本発明の部分は、本発明により設けられるチャネル内へのまたはチャネルからの液体、ガスおよび/または固体の吸収ならびに時間遅延放出のための本発明の物品の使用である。
チャネル底部領域、すなわちチャネルの局所最大幅(5)とチャネル長さ(6)の積に基づく本発明のチャネルの吸収容量は、好ましくは≧0.0001cm3/cm2、さらに好ましくは≧0.001cm3/cm2、さらに好ましくは≧0.01cm3/cm2、より好ましくは≧0.1cm3/cm2である。
明確にするために記すと、チャネル体積の測定は、吸収された物質を秤量することによって分かる(吸収前および吸収後の重量差)。
同様に、本発明の部分は、チャネルを通って液体、分散体および/またはガスを輸送するための本発明の物品の使用である。これは、例えば、本発明の物品を液体、例えば水に部分的に浸漬し、チャネルの端部で対応する液体を出すことによって可能である。
【実施例
【0029】
(実施例1) 平坦Ti6Al4V基材にレーザー誘導されたチャネル構造における断面調製
工程条件/パラメーター:
材料:平坦Ti6Al4V基材(供給業者:Rocholl GmbH、Aglasterhausen、ドイツ)
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器(stamp optics)およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
発光波長:1064nm
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウス
焦点におけるスポット径:約107μm
目標出力:100%(100W)
パルス繰り返し周波数:200kHz
パルス長さ:199ns
基材におけるレーザーフルエンス:5.3J/cm2
位置あたりの直接的な連続レーザーパルスの数:25
完全レーザー処理の繰り返し数(サイクル数):1
個々のレーザー位置の間の事前重なり:50%。
線重なり:0%。
【0030】
分析:
方法:断面調製および光学顕微鏡法による特徴付け
調製:97mlのH2Oおよび3mlのHFの混合物によるエッチング
断面配向:レーザーが線で進行する方向に対して垂直(図5)および平行(図6)(チャネルの垂直配列または平行配列をもたらす)
結果:
記載されている工程パラメーターを用いて製造したTi6Al4V表面は、平行なチャネル構造を有しており、表面のチャネルは、一部が閉鎖されており、規則的な開口部を有する:
図5a)およびb)は、X方向、すなわち実施例1で製造された表面修飾基材の場合のレーザーの動く方向に垂直な断面の顕微鏡による特徴付けを示す。参照番号は、以下の意味を有する:
(1):最も微細な粒子のサイズ分布
(2):(1)と比べてより粗い粒子サイズ分布
(3):(1)および(2)と比べてより粗い粒子サイズ分布
(4):埋め込み化合物
(5):非修飾Ti6Al4V
【0031】
チャネル方向(図5a)およびb))に垂直な断面調製は、断面(A)の部位において局所的に閉鎖しているチャネル、および上方向(B)で被覆されているかまたはキーホール形状の開口部(C)を有するチャネルを示している。構造のこれらの形態は、使用された工程パラメーターと共にチャネルに沿って振れる。チャネルの縁部区域は、金属合金の基本構造(バルク材料)に比べて、変化した粒子サイズ分布を有する。チャネルの底部において、超微粒子サイズ分布(1)の相がまず存在し、その下に、粒子サイズの粗粒化の増大した分布(2)および(3)を有するさらなる相が2つ存在する。これは、特にTi6Al4Vの処理の場合、本発明のレーザー処理に特徴的なものであり、これによりその材料表面に構造体が形成される。
チャネル方向に平行な断面調製(図6)は、可視試料領域において、被覆部分領域(B)および開口部分領域(C)を有する、完全に透過性のチャネルであることを示している。
【0032】
(実施例2) レーザー相互作用区域および非影響バルク部(実施例1に対応する)の化学組成
実施例1に準拠して製造した修飾基材を、実施例1と同様の断面調製の後にエネルギー分散型x線分光法(EDX)によってさらに特徴付けた。熱影響部における、分割限界値(約1μm)以内の大きな領域にわたり、チタン、アルミニウムおよびバナジウムの元素濃度に差異は認められなかった。
本発明により実施されるチャネル構造体を生成するための原理は、再融解および急速固化に基づいており、いかなる用途にも基づかないことが、これからやはり結論付けることができる。
【0033】
(実施例3) ワイヤ表面周囲の処理およびレーザー設定の効果
工程条件/パラメーター:
材料:円形のTi6Al4Vワイヤ(供給業者:mahe medical GmbH(Tuttlingen、ドイツ))
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)およびf(160)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
1mmの直径を有する円形チタンワイヤ(Ti6Al4V)の処理は、120°(レーザーパラメーターL2の場合)または60°(レーザーパラメーターL17の場合)だけレーザー下で回転させて、各場合において、上部表面をレーザーにより処理した。スキャン方向は、ワイヤ高さに垂直であった。
【0034】
【表1】


分析:
方法:断面調製および光学顕微鏡法による特徴付け
調製:97mlのH2Oおよび3mlのHFの混合物によるエッチング
断面配向:レーザーが線で進行する方向に対して平行(チャネルの平行配列をもたらす)
結果:
記載されている工程パラメーターを用いて製造された円形ワイヤのTi6Al4V表面は、実施例1における観察に類似した平行なチャネル構造を有する。細孔深さおよび幅および開口部の直径などの構造パラメーターは、より小さな焦点直径の使用と共に低下する(パラメーターL2と比較したパラメーターL17)。
【0035】
(実施例4) 多孔質表面のロード
工程条件/パラメーター:
材料:2cmx2cmの平坦Ti6Al4V基材
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)およびf(160)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
【0036】
【表2】
【0037】
分析:
方法:水が浸入した表面の構造体の秤量
調製:水約10μlの液滴を試料上にピペット操作で加え、次に、この表面を糸くずのでない布と共に乾燥した。この目的に関すると、4パイルに折り畳んだキムワイプ布(Kimberly Clark 7552、Kimtech Science精密布)を5秒間、この表面に押し付けて、次に、これを新しいキムワイプ布で繰り返した。続いて、化学天秤を用いて、試料の質量の増加量を求めた。
結果:
細孔に吸収された水の量は、レーザー焦点直径および導入したフルエンスの関数として様々になる:
【表3】
【0038】
(実施例5) 親水性特性の改善
表面エネルギーは、局所的に、例えば細孔またはチャネルの内側および外側を含め、コーティングにより制御されて調整され得る。
例:二酸化チタン(TiO2)コーティング材料
金属チタンの反応性スパッタリングにより二酸化チタン層(TiO2)を堆積させる。ターボ/ドラッグポンプ(520l/s)の手助けで、低圧圧力反応器を1×10-5mbarの基本圧力まで排気する。続いて、120sccmの流速でアルゴンを反応器に入れ、こうして5×10-3mbarの圧力をこの反応器に確立する。チタン標的をフリースパッタリングする場合、2400Wの高周波数プラズマ出力(13.56MHz)を投入する。マグネトロンはそれ自体を反応器にフランジで取り付ける。約1分間のフリースパッタリングの後に、酸素9sccmをさらに反応器に入れる。この低い酸素流により、確実に、250mmの円形標的が非毒されず、かつ酸化チタンが基材表面に堆積する。10分間のスパッタリング時間の後に、厚さ約30nmのTiO2層が基材表面に堆積する。
二酸化チタンの化学組成を最適化するため、ガラス製基材を反応器中の様々な点に配置し、酸化チタン層の透過率を特徴付けた。図7は、基材-チタン標的距離の関数としての透過率を示している。470mmの距離の場合、チタンはTiO2に完全には酸化していないので、純粋なTiO2の計算される透過率から区別されるばらつきがあることが分かる。距離を565mmに増加すると、実質的に純粋なTiO2が、基材表面に堆積する。
親水性二酸化チタンを用いる、実施例1からの基材をコーティングする前および後に、明確に異なる湿潤特性が観察される。その後のTiO2層は、試料の小さな一部分しか何らかの水面に接触していない場合でさえも、試料表面を完全に濡れる。非常に強い毛管作用が生じており、これは、TiO2コーティングなしでは起こらない。
【0039】
(実施例6) 生体適合性の改善
本発明の物品の生体適合特性の改善は、金属チタンにより後にコーティングすることにより可能である。存在する毒性ナノ粒子のいずれもチタン層により結合されているか、または表面の粗さの変化が陽性効果をもたらす。
例:チタン
チタンは、アルゴン雰囲気中、非反応性スパッタリングによって堆積する。この目的に関すると、サイズ50×50×50cmの反応チャンバ(真空チャンバ)を1×10-5mbarまで排気し、次に、120sccmのアルゴンをこの反応器に入れる。圧力は、5×10-3mbarまで上昇する。選択したスパッタリング出力は2400Wである。チタン標的と基材との間の距離は、20cmである。2分間の処理時間の後、約100mmの厚さのチタン層が基材表面に成長した。Ti層の計算した透過スペクトルが、実験スペクトルに対応する場合、透過スペクトルによって層の厚さを確認することができる。
ナノ粒子を緩くするために適用したチタン層は、生体適合性を改善することができない。表面に大多数のナノ粒子を同様に有する、実施例1からの本発明により使用される金属基材の場合、生体適合性を改善することができる。これは、レーザー処理の特定の手順に起因し、このレーザー処理によって、ナノ粒子が強固に結合して、チタン層が良好な接着を有する。
【0040】
(実施例7) 鋼処理
基材:CrNi鋼
フルエンスが大きいほど、一次細孔サイズが大きくなり、熱影響部およびマイクロ構造体の変化が大きくなることが分かる。
【0041】
(実施例8) 基材としての鋼
工程条件/パラメーター:
材料:平坦1.4404鋼基材
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)およびf(160)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
【0042】
【表4】

【0043】
分析:
方法:断面調製および光学顕微鏡法による特徴付け
調製:V2Aエッチング液を用いるエッチング
断面配向:レーザーが線で進行する方向に対して平行(チャネルの平行配列をもたらす)
結果:
本発明により設けられる構造体(チャネル)の生成は、鋼表面において、信頼性高く可能である。レーザーフルエンスに応じて、結果は、細孔深さおよび幅、開口部の直径および熱影響部に関して異なる寸法となる。
【0044】
(実施例9) 鋼中のチャネル
以下のパラメーターによる、鋼(1.4301)に完全にまたは部分的に開口したチャネルの生成:
材料:平坦鋼(1.4301)基材
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
発光波長:1064nm
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウスプロファイル
焦点におけるスポット径:107μm
目標出力:100%(100W)
パルス繰り返し周波数:150kHz
パルス長さ:180ns
基材におけるレーザーフルエンス:7J/cm2
位置あたりの直接連続レーザー処理の数:20
完全レーザー処理の繰り返し数(サイクル数):1
個々のレーザー位置の間の事前重なり:25%。
線重なり:25%。
線スキャン:平行
結果:
平行チャネルは、(100+/-40)μmの最小深さ、(75+/-25)μmの幅、10cmの長さを有する。チャネルは部分開口しており、開口部の幅は、1μm未満と70+/-20μmとの間で様々である。
【0045】
(実施例10) 重なりチャネル
レーザースキャン法においてより大きな線重なり(例えば75%)によって、重なり断面を有する平行チャネルを形成する:
材料:平坦Ti6Al4V基材
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
発光波長:1064nm
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウスプロファイル
焦点におけるスポット径:107μm
目標出力:100%(100W)
パルス繰り返し周波数:100kHz
パルス長さ:129ns
基材におけるレーザーフルエンス:10.5J/cm2
位置あたりの直接連続レーザー処理の数:20
完全レーザー処理の繰り返し数(サイクル数):1
個々のレーザー位置の間の事前重なり:75%。
線重なり:75%。
線スキャン:平行
平行チャネルは、(400+-50)μmの最小深さ、(250+-100)μmの幅、10cmを超える長さを有する。チャネルは、部分被覆されている。
【0046】
(実施例11) 粒子サイズ分布
150μm+/-50μmの接触面の範囲の場合の本実施例では第1の熱影響部において、25μmの範囲の場合の本実施例では第2の熱影響部において、異なる粒子サイズ、および基材を以下に試験した(実施例1に類似した試料製造;図5a)およびb)を参照されたい):
材料:平坦Ti6Al4V基材
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
発光波長:1064nm
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウスプロファイル
焦点におけるスポット径:107μm
目標出力:100%(100W)
パルス繰り返し周波数:200kHz
パルス長さ:199ns
基材におけるレーザーフルエンス:5.3J/cm2
位置あたりの直接連続レーザー処理の数:25
完全レーザー処理の繰り返し数(サイクル数):1
個々のレーザー位置の間の事前重なり:50%。
線重なり:0%。
結果(図4に概略的に示されている領域)
【0047】
【表5】
【0048】
接触面に対して直角の断面を使用して測定。領域のFIB調製(焦点化イオンビーム;機器:Helios600、FEI;製造業者:FEI、Hillsboro、Oregon、米国)。STEMによる粒子サイズの分布(走査透過型電子顕微鏡;機器:Tecnai TF-20 S-Twin G2;製造業者:FEI、Hillsboro、Oregon、米国)、および粒子の重心における平均粒子径を決定することによる粒子の平均径の決定
【0049】
(実施例12) 抗細菌性コーティング
様々な活性成分に対して高い吸収容量を有する抗細菌性コーティングを開発した。活性成分は、コーティングされたインプラントを活性成分の溶液に単に浸漬することによって導入する。堆積したコーティングの放出は、30分間の幅にした。しかし、重要なことは、インプラントの挿入後、直ちに大用量で活性成分が放出されることである。
文献は、放出機能を有する貯蔵層に関する様々な手法を開示している。ここでは、簡単な陽極酸化により生成して、活性成分用の大きなレザーバーをもたらすことができる二酸化チタンナノチューブに特に関心が払う。しかし、ロード時間の長さが欠点である。正確なタイプのナノチューブによれば、時間あたり5サイクルのロードが必要である。
【0050】
プロファイル要件:
浸漬コーティングによる迅速ロード
迅速放出
インプラント表面積cm2あたり最低で160μmのゲンタマイシン硫酸塩の吸収容量
ゲンタマイシンは、光学的に検出するのが困難であるため、メチレンブルー色素を置き換え活性成分として選択した。放出時間および吸収容量を決定するため、OptikJena製のUV/Vis分光計を使用した。
ロード:
サイズ2×2cm2のレーザー構造化試料濃メチレンブルー溶液(30mg/ml)に5分間、浸漬する。続いて、反対側および4つの縁部をペーパータオルで拭う。試料表面自体を、さらなる色素が表面から現れなくなるまで、ペーパータオルで軽く叩く。
測定:
生理食塩水(水中のNaCl0.9質量%)を満たした、底部面積2.5x2.5cm2を有するキュベットを参照ビームおよびUV/Vis 分光計の試料用ビームを入れる。続いて、メチレンブルーを入れた試料を試料ビーム中のキュベットに導入する。ここで、試料用ビームを並べ、こうして、試料用ビームが試料表面の上2mmでキュベットにあたるようにする。620nmにおける吸収を2秒ごとに測定する。この測定は、30分後に終了する。
吸収量Aと濃度cとを相関付けるため、較正曲線を記録しなければならない。既知濃度のメチレンブルーを有する溶液を生成する(2.5μg/ml、5μg/ml、7.5μg/ml、10μg/ml、15μg/ml、20μg/ml、30μg/ml)。確認した吸収量を濃度に対してプロットする(図8)。得られた直線に線形あてはめを施す。実施例1と同じように製造した試料を用いた場合、吸収単位を試料面積1cm2あたりの濃度値に変換した後に図8に示されている較正線は、時間の関数として放出されたメチレンブルーの量の曲線進行となり、これを図9に示す。
【0051】
(実施例13) レーザー処理表面の化学組成
レーザー処理後の基材表面の化学組成の特徴付けのため、X線光電子分光法(XPS)による測定を行った。基材表面における直接測定と共に、低位変化も特徴付けた。この目的のため、2.8μmの表面をアルゴンイオンビーム(以下を参照されたい)により除去した。検出限界の範囲内で、純粋な金属チタンだけが、XPS精密スペクトルにおいて検出可能であった(使用したXPSシステムでは、453.43eVにTi 2p3/2ピークの結合エネルギー)。
材料:
材料:平坦Ti6Al4V基材(供給業者:Rocholl GmbH、Aglasterhausen、ドイツ)
レーザーパラメーター:
【0052】
【表6】
【0053】
分析:
空気に敏感な試料を取り扱うための上流でのアルゴングローブボックスを用いて、Thermo K-Alpha K1102システムによりXPS分析を行った。
測定パラメーター:
光電子0°の発射角度
単色光化Al Kα励起
スペクトル全体にパスエネルギー150eVおよび高いエネルギー解像線スペクトルに40eVを用いる一定アナライザーエネルギーモード(CAE)
分析面積:0.40mmΦ
アルゴンイオンスパッタリング源を使用して最上部層を除去した。スパッタリング速度は0.8nm/sであり、スパッタリング時間は3500s(除去の総量は2.8μm)とした。
【0054】
【表7】
【0055】
XPS結果の説明:
表面での直接的なXPS測定は、レーザー処理によってTi6Al4Vが精製されたことを示す。炭素含有量の低下および少量のSi、Mg、Ca、ZnおよびSの除去の両方がある。表面における酸素含有量の増加(酸化チタンの形成)がさらに明白である。
純粋な金属チタンだけが、精密Tiスペクトルにおいて明白である基材深さまで材料を除去(2.8μm)した後の、レーザー処理した表面の測定により、未処理参照と比べて、酸素および窒素の割合が明確に向上していることが示される。理論に拘泥されないが、チタンの精密スペクトルが、酸化チタンまたは窒化チタンの何らかの兆候を示さないので、これらの元素はチタンに結合して存在していないように明らかに見える。純粋な金属形態にのみXPSによってチタンが検出可能である、表面下領域において酸素および/または窒素に富んでいることは、チタンまたはチタン合金に関する本特許で説明されるレーザー処理に特徴的なものである。
【0056】
(実施例14)細胞成長特徴(生体適合性)
Ti6Al4V表面をK-ワイヤに作成し、前記表面は、その表面および内部で細胞の成長を促進する良好な能力を有する。この目的のために、レーザー方法の手助けで、本発明によるチャネル構造体を製造し、表面に二酸化チタンのスパッタリング層を設けた。二酸化チタンのスパッタリング層は(一般に、本発明によれば好ましい)は、追加的な抗細菌効果を実現するため、強固に埋包した銀粒子を含む。MG-63骨芽細胞を用いて細胞の特徴を試験し、次いで、走査型電子顕微鏡での特徴付けのため細胞により被覆された表面を調製した。
滑らかなTi6Al4V表面が、骨芽細胞の成長を促進する能力はたかが知れていることが文献から知られている。しかし、後者は、インプラントの安定なオッセオインテグレーションに必要であることが見出されている。
【0057】
使用した材料:
直径1mmを有する丸型ワイヤ(K-ワイヤ)Ti6Al4V(供給業者:mahe medical GmbH(Tuttlingen、ドイツ))
レーザー処理:
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
レーザー処理は、表6からのパラメーターL2を用いて行った。
この目的に関すると、ワイヤを毎回、レーザーの下で120°だけ3段階で回転させて、各場合において、上部の表面をレーザー処理した。スキャン方向は、縦のワイヤ方向に対して直角とした。
【0058】
プラズマコーティング:
金属チタンの反応性スパッタリングにより二酸化チタン層(TiO2)を堆積させた。125lの容量を有する低圧反応器をターボ/ドラッグポンプ(520l/s)の手助けで排気し、1×10-5mbarの基本圧にする。続いて、120sccmの流速でアルゴンを反応器に入れ、こうして8×10-3mbarの圧力をこの反応器に確立する。チタン標的をフリースパッタリングする場合、2400Wの高周波数プラズマ出力(13.56MHz)を投入する。マグネトロンはそれ自体を反応器にフランジで取り付ける。約1分間のフリースパッタリングの後に、酸素9sccmをさらに反応器に入れる。この低い酸素流により、確実に、250mmの円形標的は非毒されず、かつ酸化チタンが基材表面に堆積する。10分間のスパッタリング時間の後に、厚さ約30nmのTiO2層が基材表面に堆積する。
親水性二酸化チタンを用いるコーティング前および後に、明確に異なる湿潤特性を観察する。その後のTiO2層は、試料の小さな一部分しか水面に接触していない場合でさえも、試料表面を完全に濡らす。非常に強い毛管作用が生じており、これは、TiO2コーティングなしでは存在しない。
【0059】
細胞接着の試験:
I. 調製:第1の工程では、レーザー処理およびコーティングしたK-ワイヤをイソプロパノールで清浄した。続いて、K-ワイヤの切片を滅菌6ウェルマイクロタイタープレートに導入した。
II. 細胞コロニー形成および固定:2mlのMG-63細胞(86051601 Sigma、継代06)を1x106細胞/mLの濃度でK-ワイヤに播種し、37℃、5%CO2で24時間、インキュベートした。インキュベート後、培地を除去し、細胞を2mlのリン酸緩衝化塩溶液(PBS)を用いて2分間、洗浄した(2×)。PBSを除去して、2mlのグルタルアルデヒド溶液(H2O中2.5%、w/v)に置き換え、37℃で30分間、インキュベートした。グルタルアルデヒドを除去して、細胞を2mlのPBSにより10分間、洗浄(3×)した。
III. エタノール処理:細胞をリンス用エタノール濃度で処理した。30%、50%、70%、80%、90%および2x100%エタノール(ddH2O中、v/v)を用いて、10分間、室温(RT)で細胞をそれぞれインキュベートした。
IV. 脱水素化:HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を100%(v/v)エタノールと1:1で混合し、2mlを細胞に加えて、室温で30分間のインキュベートを行った。続いて、この溶液を100% HMDS(v/v)により置き換え、室温で30分間、再度インキュベートを行った。インキュベート後、溶液を除去して試料を室温で終夜、乾燥した。
V. SEMによる試料の特徴付け:続いて、K-ワイヤを試料ホルダーに固定し、SEM(モデル:Phenom XL、Thermo Fisher製)に導入した。画像化は二次電子モード(SEモード)で行った。
【0060】
観察:
本発明のアンダーカット溝構造に関連するコーティングの生体適合性により、表面での骨芽細胞の接着およびその表面のコロニー形成が可能となる。それに対応した処理表面のSEM画像は、骨芽細胞によるコロニー形成が成功していることを示している。レーザー構造体のひずみの上、間およびその中で、多数の骨芽細胞がはっきりと見えており、骨芽細胞が表面全体に広がり、沈着(depression)するまでに成長し、やはり部分的に表面を覆っている。形成された密な細胞ネットワークは、表面に接着してその表面で増殖する細胞の高い親和性を示唆し、その特徴的な拡散形態は、骨芽細胞の良好な生存を示している。細胞成長および細胞の相互成長を促進する能力は、安定なオッセオインテグレーションの基礎になると考えられる。
図10は、ロールブランクのチタン表面、および様々な時間での本発明のチタン表面での骨芽細胞のSEM画像を示す。
30分間のインキュベート後、細胞は球形状、および表面方向に細胞塊の中央部からの個々のフィロポディア(philopodia)点を最初に示している。4時間のインキュベート後、すべての方向にフィロポディア点。本発明の表面において、細胞は溝を埋める。数日後、フィロポディアのアンダーカット溝構造体への成長が観察される。細胞は、むき出しの参照シート表面で平坦な外観を有しているが、材料構造体内部に移動する手段を有さない。追加の二酸化チタンコーティングを使用するおよびこれを使用しない本発明のレーザー構造体は、コロニー形成細胞の幾何形状にいかなる光学的差異も示さない。
【0061】
一般に、本発明の基材の好ましい使用は、より好ましくは生体適合性を改善するコーティング剤、とりわけ二酸化チタンによりコーティングした後の、インプラントとしての使用であることが見出される。
【0062】
(実施例15) 接着剤
レーザー照射したおよびレーザー照射していないステンレス鋼試料(AISI 316L;MNo.1.4404)を接合し、その接合を重ねせん断試験により試験する。接合強度に及ぼすレーザー誘導溝構造の影響を試験する。
使用した材料:
316Lシートステンレス鋼;試料サイズ:100mm×25mm
【0063】
レーザー処理:
2つの異なるレーザーパラメーターを10の試料に各場合において適用し、これらを以下の表に列挙する(表9)。試料シートに局所(試料幅全体にわたり、長さ19mmを有するシートの一端で接合した領域)だけレーザー処理を行った。
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウス
焦点におけるスポット径:107μm
レーザー光学機器および処理される試料を吸引しながら、レーザー保護セル(アルミニウム)に入れた。粒子の再堆積を回避するため、レーザー処理中に、圧縮空気ノズル(45°の角度でマウント;試料表面に直接向ける)の補助で、45l(STP)/分(入り口圧力は8bar;20℃)の圧縮空気流を試料にさらにパージした。
【0064】
【表8】

さらに、レーザー処理後の試料の顕微鏡画像を生成した。どちらも本発明のアンダーカット溝構造体を示している。レーザー処理L1の後の表面は、L5との比較により、いくらか幅広い線および一層多数の交差点があることを示している。比較によって、L5は、その溝幅に関して、一層開口しており微細である。
【0065】
接着剤:
試験方法:DIN EN 1465に準拠した重ねせん断試験(試験室は、空調管理されていない)
接着剤:アラルダイト2011
硬化:室温で24時間+80℃で30分間
接合面積:約12.5mm×25mm
接着剤を2枚のシートの1枚に塗布した。続いて、第2の試験シートを上に置き、接合領域に500gの接触重量に付した。おもりをロードしている間に試料の傾転を防止するため、適切なサイズの洗浄器を試料上部に押し当てた。硬化後、試験片をDIN EN1465の規格に準拠して試験した:
【0066】
試験システム:Zwick BT1-FB020TN.D30
力変換器:20kN
試験速度10mm/分
使用した参照品は未処理であり、事前に化学的湿潤処理(超音波浴、10分間、室温、9:1の体積比のイソプロパノール/水混合物中で処理)したシートとした。未処理の試験片5つ、化学的に湿潤処理した試験片5つ、L1処理した試験片5つ、およびL5処理した試験片5つをこの方法で製造した。
【0067】
結果:
個々の測定(条件あたり5試料)の結果を使用して、平均値を形成した。対応する標準偏差と共に重ねせん断強度の照合を図11に見出すことができる。
図11は、アラルダイト2011で接合した後の重ねせん断強度を示す。
明白なことは、未処理試料または事前に化学的に湿潤処理した試料と比べて、レーザー処理(L1およびL5のどちらでも)の結果として、重ねせん断強度が明確に向上していることである。さらに、未処理試料および事前に化学的に湿潤処理した試料は、鋼との界面において完全な接着不具合を有する。レーザー処理試料は、接着剤内部での完全な接着不具合を有する。
このことから、本発明の基材の本発明の使用は、未処理基材に比べて、接合能を改善するよう働いていると推論することができる。
【0068】
(実施例16) 三リン酸カルシウム(TCP)の構造体への充填
TCPは、生存細胞により代謝され、したがって、栄養素媒体として、および表面での細胞の成長を改善するために働く。しかし、医療セクターにおいて使用するための必要条件は、個々の表面に対するTCP層の良好な結合である。粗い表面構造体の場合、TCP充填空隙に組織が成長するさらなる可能性がある。
使用した材料:
316Lステンレス鋼シート;試料寸法:20mm×20mm
レーザー処理:
試験あたり3つの試料を以下の表(表10)に列挙されているレーザーパラメーターで処理した。レーザー処理は、試料シートの全領域で行った。
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウス
焦点におけるスポット径:107μm
レーザー光学機器および処理される試料を抜き出しながら、レーザー保護セル(アルミニウム)に入れた。粒子の再堆積を回避するため、レーザー処理中に、圧縮空気ノズル(45°の角度でマウント;試料表面に直接向ける)の補助で、45.7l(STP)/分(入り口圧力は8bar;20℃)の圧縮空気流を試料にさらにパージした。
【0069】
【表9】

このパラメーターは、実施例15からのレーザーパラメーターL1に相当する。顕微鏡画像は、本発明のアンダーカット溝構造を示している。
【0070】
三リン酸カルシウムの充填:
上で製造したレーザー構造体の充填は、TCPナノ粒子を含有する分散液への浸漬工程で行った:
分散液:エタノール中、20.2質量%のTCP
TCP:CA-PAT-01-NP(American Elements(Los Angeles、米国)製)。
【0071】
懸濁液の生成:TCPをエタノールに加えた後、懸濁液を10分間、磁気撹拌器(室温)により混合し、次に、密閉ビーカー中の超音波浴に室温で10分間、導入した。浸漬工程により表面構造の充填は、ナノ粒子の再凝集または沈殿を回避するため、超音波浴(モデル:Ultrasonic300TH、VWR製)後、できる限り速やかに行う。
充填:新しく混合した懸濁液を、板ガラス皿に導入する。懸濁液により完全に被覆されるよう、十分な懸濁液を試料に導入する必要がある。次に、ピンセットを用いて懸濁液に試料を導入し、その中に30秒間、置く。同様に、ピンセットを用いて試料を取り出す。全工程の間、試料を水平位置にしなければならない。試料を10分間、空気雰囲気下で乾燥する。TCPを一層良好に固定するため、焼成工程を保護ガス雰囲気(アルゴン)中、高温オーブン中で行う(モデル:16-6、H.Dieckmann製)。焼結工程は、30K/分の加熱および冷却速度で行い、1050℃の最終温度で1分間、保持する。
【0072】
結果:
TCPを本発明のレーザー構造体に充填すると、レーザー構造体の底部(depression)に、TCPの一次インターカレーションがもたらされる。TCPの割れ目のネットワークは、比較的高い拡大下では明白であり、これは、焼成中の粒子の高密度化に起因する。溝構造におけるTCPのインターカレーションおよび固定は、重量測定によっても示され得る(図12)。
図12は、ノンアンダーカットレーザー構造体、およびL1によりレーザー照射してTCPを充填した鋼表面の非構造化シートの比面積質量変化を示している。斜めストライプ:充填および焼成後;水平線:6分間の超音波浴後;点々;さらに4分間の超音波浴後。示されているものは、3つの個々の測定値から計算した平均値および標準偏差である。
この目的のため、化学天秤(モデル:ME235S;Sartorius製)を使用した。この場合に使用した比較は、供給された状態の非構造化試料、およびL1の場合のものと類似した寸法を有するノンアンダーカットレーザー構造体(同様の溝)とした。TCPの固定化の強度は、充填および焼成工程、ならびに室温で超音波槽中、6分間またはさらに4分間(合計の処理時間は10分間)、試料を処理した後、この試料をイソプロパノールに導入することによって決定した。続いて、試料の質量を再度、求めた。図12は、レーザー照射したまたはレーザー照射されておらず、充填されていない表面の質量に関して、比面積質量変化を示している。本発明のアンダーカットレーザー構造体の場合、最初に吸収されたTCPの量は、非アンダーカットまたは非構造化参照表面の場合よりもかなり高いことは疑いもなく明白である。後者はまた、超音波浴中で10分後にほとんどすべての量のTCPを失う。したがって、本発明の構造体は、表面において明確に良好に結合したTCP層をもたらす。
【0073】
(実施例17) (超)疎水性表面特性の安定化
例えば、易清浄効果を実施するために超疎水性表面を使用する。このような表面の特長は、マイクロ構造化トポグラフィーおよび/またはナノ構造化トポグラフィーである。このような表面の実施に対する考えられる経路は、薄いプラズマポリマーコーティングであり、これにより、工程パラメーターの好適な選択を考慮すると、構造化表面がもたらされる。しかし、かなり微細な構造の結果として、超疎水性表面は、一般に、摩耗しやすい。試験は、これらの特性が、レーザーにより巨視的に構造化された表面への適用によって安定化され得る程度について行われる。
【0074】
使用した材料:
Al99.5;試料寸法:100mm×50mm
レーザー処理:
レーザー処理された変形体あたりの表11に列挙されているパラメーターを有する試料の1つを、その表面全体に処理を行った。
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウス
焦点におけるスポット径:107μm
【0075】
レーザー光学機器および処理される試料を抜き出しながら、レーザー保護セル(アルミニウム)に入れた。粒子の再堆積を回避するため、レーザー処理中に、圧縮空気ノズル(45°の角度でマウント;試料表面に直接向ける)の補助で、45.7l(STP)/分(入り口圧力は8bar;20℃)の圧縮空気流を試料にさらにパージした。
【0076】
【表10】
【0077】
Al99.5表面の処理は、平行したアンダーカットチャネルを含む本発明の表面構造をもたらす。図13は、この方法で製造した表面構造の顕微鏡画像を示している。
【0078】
図13は、上面図(左側)および側面図(右側)において、L14により製造した表面構造の顕微鏡画像を示している。
【0079】
プラズマ処理:
レーザー照射されていないおよびレーザー照射されている試料表面のどちらも、続いて、工業的な大気圧プラズマ源によりコーティングした。コーティングは、本明細書のこれ以降に指定されているプラント技術、および表12に記載されている工程パラメーターを用いて行った。全コーティング工程は、番号が昇順で適用される3つの個々のステップからなる:
プラズマ源:PFW10(製造業者:Plasmatreat、Steinhagen)
発生器タイプ:FG5001(製造業者:Plasmatreat、Steinhagen)
変換器:HTR12(製造業者:Plasmatreat、Steinhagen)
ノズルヘッドセット:IFAMタイプ21837(WO20000EP02401)(ステップ1およびステップ2の場合);IFAMタイプ24570(WO20000EP02401)(ステップ3の場合)
【0080】
【表11】
【0081】
プラズマコーティングの後に、試料を室温で少なくとも6時間、保管した後、さらに試験した。
【0082】
摩耗試験:
耐摩耗性は、TQC測定システム(モデル:摩耗試験器)を用いて試験した。これは、規定した負荷および速度で、試験布に固定してこれを有するダイを用いて表面を擦ることにより行った。試験は、以下のパラメーターを使用して行った:
試験媒体:ISOクロッキングクロス(製造業者:James Heal;ISO105-F09に準拠)
質量:500g
サイクル:10または20
速度:65サイクル/分
【0083】
接触角測定:
レーザー構造化してコーティングしたAl99.5試料と構造化せずコーティングしたAl99.5試料の両方を接触角測定機器により分析した。この場合、摩耗のない、および摩耗試験において10サイクル後または20サイクル後に測定するため、各場合において、個々の試験片を使用した。使用した湿潤媒体は蒸留水とした。この測定は、DIN55660-2に準拠して、輪郭分析システムを用いる完全自動化接触角測定機器である、Dataphysics OCA50を用いて行った。6μlの水滴を12μl/分の体積流量で適用し、漸進接触角を測定した。
【0084】
結果:
図14は、レーザー構造化Al99.5表面におけるプラズマポリマーコーティング(右側;L14)、および摩耗試験前、および10サイクルまたは20サイクルでの摩耗試験後に構造化されていないAl99.5表面(左側)の水接触角を示している。2つの個別の一連の測定を各表面に対して行った。
摩耗のない測定の場合、図14は、構造化していない表面の場合、約157°、およびL14による構造化試料の場合、約151°の水接触角となることを示している。この点では、このような高い接触角は、完全な定量的結論を行うことが可能となるほど十分な精度でもはや測定することができないことに留意すべきである。しかし、測定された接触角のレベルは、コーティングの超疎水特性を明確に示している。対照的に、純粋にレーザー処理した表面での接触角測定は、水滴の完全な湿潤(接触角は測定不能である)であること、およびしたがって超親水性湿潤特徴であることを示している。
【0085】
上記のクロッキングクロスを用いる表面の規定の摩耗により、非構造化表面の場合、10サイクル後でさえも、水接触角の約114°までの明確な低下がもたらされ、したがって、超疎水特性の低下ももたらす。この傾向は、20サイクル後、一層小さな角度になるまで続く。対照的に、L14とプラズマポリマーコーティングとの組合せによって、平均接触角141.5°は、10サイクルの摩耗後でも依然として検出可能である。このことはまた、20サイクルの摩耗後に、再度わずかに低下するが(138.6°まで)、非構造化表面の場合よりも依然としてかなり高い。機械的摩耗は、構造体の最上部でしか起こり得ないので、この効果は、本発明のチャネル構造への埋め込みに起因するコーティングの機械的安定化に寄与する。
比較すると、10サイクルの摩耗後の同一のプラズマコーティングと組み合わせたノンアンダーカットレーザー構造体は、137°の接触角を既に示す(150°の摩耗のない開始値を含む)。したがって、本発明のアンダーカットレーザー構造体へのコーティングは、非アンダーカット構造体よりも摩耗に対して高い安定性を有する。
したがって、本発明によれば、本発明の構造化を有さない基材と比べて、基材に塗布されるコーティング剤の安定化またはその特性のため、本発明の基材を使用することが好ましい。これは、非常に特に、超疎水特性および/または易清浄特性という疎水特性にとりわけ当てはまる。
【0086】
(実施例18) 表面の生物学的機能化
レーザー構造化チタン鋼およびステンレス鋼の生物学的機能化
開発の目的は、生物または材料単独で実現不能な生物学的システム/技術的システムの機能化をこうして発生させるため、生存している代謝活性細胞により修飾され得る生体適合性のレーザー構造化チタン鋼およびステンレス鋼の表面を製造することである。生体物質の導入は、細胞および栄養素溶液からなる懸濁液を接種することによって行われ、毛管作用により実施される。その後の細胞成長は、レーザー構造化材料の毛管システムにおいて全領域にわたり、および表面に細胞が広がるのを確実にする。毛管システムにおけるコロニー形成は、細胞を機械的摩擦から保護し、こうして、このシステムはこのような場合に再生成することができ、表面に生体フィルム/菌糸体を再度、生成することができる。この生体フィルム/菌糸体は、出発原料を疎水化し、大気圧条件下で安定な表面に潤滑フィルムを生成する。使用した細菌の遺伝的変化は、生存細胞の蛍光をもたらし、こうして、工程のモニタリングを行うことができる。
【0087】
文献では、これまでのところ、金属性表面における生物学的成長の回避に一層の焦点が置かれている。細菌の場合の生体フィルムの形成は、粗さの因子、表面トポグラフィーおよび表面変化にかなり大きく依存する。真菌の場合、対照的に、栄養素が十分に利用可能であることが成長に必要である。結果は、全く不均質となり、様々な構造化にとってコロニー形成の特徴に種特異的差異を有する。使用した技法は、対照的に、幅広い分類群(真菌、細菌)によるコロニー形成を可能にする表面を生成することができる。
【0088】
要件のプロファイル:
- 毛管現象による迅速なロード
- 使用される生物の迅速な成長速度
- 大気圧条件下で安定性の延長を伴う生体フィルム形成
- 工程モニタリングのための自家蛍光
- レーザー構造化生息地における大規模な領域にわたる生物の広がり
物質:
鋼:1.4301、1mmの厚さのシート
チタン:Ti6Al4V、1mmの厚さのシート
レーザー処理:
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
【0089】
レーザー処理は、表13からのパラメーターを用いて行った。
【表12】
【0090】
培養物:
細菌のシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(DSM番号50090)を使用する。これは、極性鞭毛を有する、グラム陰性のオキシダーゼ陽性のロッド形状細菌である。さらに、この適用は、アナフォルム(anamorphous)菌であるペニシリウム・シンプリシシムム(Penicillium simplicissimum)(DSM番号1078)を用いて行う。
【0091】
方法:
レーザー構造化空隙のロードの成功の評価、および生物学的適合性の確実性に関しては、蛍光色素(シュードモナス・フルオレッセンスの場合、DAPI、ペニシリウム・シンプリシシムムの場合アクリジンオレンジ)を使用して検出を行った。
細胞の生存は、生存染色/死滅染色により検出した(SYTO9色素およびヨウ化プロピジウム、緑色=生存細胞、赤色=死滅細胞)。明記されている技法はまた、レーザー構造化生息地における大規模な領域にわたり生物を検出して、その広がりを評価するために使用することができる。さらに、遺伝子修飾(Hanahan、1983年およびMandelおよびHiga、1970年;CaCl2方法による変換)を、工程モニタリングに使用する自家蛍光を引き起こすため、シュードモナス・フルオレッセンス細菌に行った。真菌ペニシリウム・シンプリシシムムの場合には、同様に、ポリエチレングリコール(PEG)方法(according to Yeltonら、1984年;BallanceおよびTurner、1985年およびLopesら、2004年)による変換を行い、こうして、この場合、潜在的蛍光により、明記した要求の観察がやはり可能である。変換後、蛍光顕微鏡は、この工程をモニタリングすることが可能にするのに十分である。AxioCam MRnおよびフィルターセット09;励起波長450~490nmおよびLP515nmの発光(Zeiss、Jena、ドイツ)を用いるAxio Imager A1蛍光顕微鏡で観察を行った。
【0092】
サイズ2x2cm2のレーザー構造化試料を、シュードモナス・フルオレッセンスおよびLB媒体[Carl Roth GmbH+Co.KG、Karlsruhe][100μl]/グルコース[50μl]混合物の溶液150μlに浸ける。細胞懸濁液は毛管力によりチャネルに吸収される。ペニシリウム・シンプリシシムムの場合、ロードを、液状のバレイショ抽出フルコースブロス[Carl Roth GmbH+Co.KG、Karlsruhe]を含む保存溶液の混合物150μを適用することによって行う。毛管作用は、空隙への細胞溶液の自動吸引をもたらす。
シュードモナス・フルオレッセンス生体フィルムによる表面およびペニシリウム・シンプリシシムム菌糸体による表面の疎水化は、起泡捕捉方法/静泡方法による接触角測定(Kruss DAS 100S)によって決定した。
蛍光顕微鏡で、120時間および24時間のインキュベート後のP・シンプリシシムムによるレーザー構造化空隙の進行したコロニー形成は疑いなく明白である。真菌は既に、基材の全領域を覆い、追加的にさらに広がっていることが明白である。したがって、P・シンプリシシムムは、生存しており、レーザー構造化生息地の全体にコロニー形成することが可能である。
【0093】
対応する実験もまた、形質変換した細菌のシュードモナス・フルオレッセンスを用いて行う。この場合もまた、4週間後の生存細胞によるレーザー構造化材料の高いコロニー形成が見出され、生存染色/死亡染色および形質転換細胞の蛍光により検出された。
【0094】
接触角測定(ステンレス鋼;L12)は、参照試料の場合、20°(±3°)の接触角を与えた。シュードモナス・フルオレッセンスの値は、14週間のインキュベート時間後に、61°(±3°)であった。P・シンプリシシムムの場合、80°(±3°)の値であることが分かった。インキュベート時間は、この場合、14日間(室温22℃±2℃)とした。疎水化は、生体フィルム/真菌の菌糸体の広がりに比例する。
【0095】
この実験の結果は、本発明の物品が、それぞれを未処理基材と比べると、真核細胞の結合特徴だけではなく、原核細胞の結合特徴に、とりわけ細菌生物および真菌の結合特徴の改善に使用することができることである。
【0096】
(実施例19) アルミニウム-アルミニウムコンポジットキャスト法
ダイキャスト法により、例えば、鋼またはアルミニウム、およびアルミニウム融解物に由来するアルミニウム構成成分のシートインサート間の機械的接合を生成することが可能である。シートインサートの金属酸化物の融解温度が高いために、凝集結合を達成するのは不可能であるため、界面層の機械的安定性はこの場合、低下する。したがって、キャスト法により組み込まれるシートインサートは、レーザー法によって本発明のアンダーカットチャネル構造体により構造化され、この場合、チャネル構造体への融解物の浸入により、アルミニウム製シートインサートとキャスト構成成分との間の凝集結合が実現する。最大接合強度は、重ねせん断試験によって確認される。
【0097】
使用した材料:
40mm×100mm×1.5mmの寸法を有するAlZnMgCu1.5鋳造合金のシートインサート
40mm×100mm×1.5mmの寸法を有する1.4301鋼製シートインサート
Silafont36 AlSi10MnMgダイキャスト合金
レーザー処理:
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)およびf(160)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
レーザースポットにおけるエネルギー分布:ガウス
焦点におけるスポット径:107μmおよび52μm
【0098】
レーザー光学機器および処理される試料を抜き出しながら、レーザー保護セル(アルミニウム)に入れる。
【表13】
【0099】
本発明のチャネル構造体は、2つの溝構造体からなるオルソゴナルスーパーポジションによって生成する。2段階工程の場合、パラメーターL13を用いて、融解物の流れ方向に対して直角に幅75μmのアンダーカット溝を最初に生成する(図15aを参照されたい)。この後に、パラメーターL14を用いて90°だけオフセットの構造化を続け、これにより、融解物の流れ方向に平行な、幅75μmの溝が生成する(図15bを参照されたい)。重ね合わせのために、流れ方向に平行な上側の溝の通路が先の構造化によって下で繋がる。図15c)は、図15a)およびb)からの構造体のオルソゴナルスーパーポジションを示す。
【0100】
図15は、レーザー法により製造したアルミニウム(AlZnMgCu1.5)のチャネル構造体の顕微鏡画像および模式図を示す。a:パラメーターL13による構造体(融解物の流れ方向に直角)、b:パラメーターL14による構造体(融解物の流れ方向に平行)
【0101】
コンポジットキャスト法
本発明のチャネル構造体を形成するよう、39.9mmx99mmx1.5mmの寸法を有するアルミニウム製シートインサートを、溶融物の流れ方向に対して直角にパラメーターL13により最初に、次に、融解物の流れ方向に対して平行にパラメーターL14により、その幅全体および2mmの高さにわたって構造化した(図15を参照されたい)。
本発明のチャネル構造体を形成するよう、39.9mmx99mmx1.5mmの寸法を有する鋼製シートインサートを、パラメーターL1s、L2s、L13sおよびL22sにより、最初にその幅全体および10mmの高さにわたって構造化した。
構造化シートインサートは、裁断速度40m/sおよび保持圧力750barを使用する、Buhler SC N66コールドチャンバダイキャストシステムによるキャスト法によって組み込んだ。アルミニウムの融解温度は740℃であった。急冷の後に、試料に170℃の温度で8時間、熱エージングをさらに施した。参照試料として働くキャスト構造化したむき出しのシートインサートを、Zwick-Roell Z020またはZ050試験システムでDIN EN1465への重ねせん断試験により試験した。試験は、この場合、20kNまたは50kNの負荷セルおよび10mm/分の試験速度で行った。重ねせん断用試料は、シートインサート(39.9mmx99mmx1.5mm)、および一方の側にキャスト構成成分の重なり部(40mmx98mmx10mm)からなる。この重なり部は、幅全体および40mmの長さにわたる。
結果:
5つの個々の測定の結果を使用して、平均値を形成した。対応する標準偏差を一緒にした重ねせん断強度の照合は、アルミニウム-アルミニウムコンポジットに関しては図16に、およびアルミニウム-鋼コンポジットに関しては図17に見出すことができる。
【0102】
図16は、様々な事前処理によるキャスト法により組み込みされたアルミニウム製シートインサートの重ねせん断強度を示す。
【0103】
図17は、様々な事前処理によるキャスト法により組み込みされた鋼製シートの重ねせん断強度を示す。
構造aおよびbのオルソゴナルスーパーポジションに起因するアルミニウム製シートインサートの場合、チャネル構造cを使用すると、未処理試料またはコランダムブラスト試料に比べると、重ねせん断強度の有意な向上を実現することが可能であることが疑いなく明白である。さらに、レーザー構造化によるインサートの事前処理は、ジンケート方法による事前処理によって凝集結合に比べて2倍の結合強度が可能である(Papis, K.; Hallstedt, B.; Loffler, J.; Uggowitzer, P.; Interface formation in aluminium-aluminium compound casting, Acta Materialia 56, 2008による)。回転したブランクの鋼表面と比較して、レーザーパラメーターL13sによる本発明のレーザー構造体は、キャストしたアルミニウムコンポジットでは、79±0.5MPa超で高い強度および小さな標準偏差となることを示している。
総合的に、本発明の物品は、本発明により想起された構造化を有さない基材に比べて、凝集結合の重ねせん断強度の改善に一般に使用することができることが見出される。これは、以下に限定されないが、ダイキャスト方法により生じた凝集結合にとりわけ当てはまる。
【0104】
(実施例20) 物質移動、マイクロスケール流体反応器
マイクロスケール流体反応器は、ミリメートル未満のスケールで化学反応を制御することが可能である。それらの反応器は、良好な反応速度および熱交換係数に関して優れている。本発明のアンダーカットチャネル構造体は、このようなマイクロスケール反応器に使用することができる。その結果、マイクロスケール反応器を金属表面に装備することが可能である。
【0105】
使用した材料:
1.4301鋼 - 10×10×0.1mmシート
レーザー処理:
レーザー:100W Nd:YAGレーザー(スタンプ光学機器およびf(330)f-シータレンズを備えるCL100タイプ(CleanLaser(Herzogenrath、ドイツ)製)
【0106】
レーザー光学機器および処理される試料を抜き出しながら、レーザー保護セル(アルミニウム)に入れた。粒子の再堆積を回避するため、レーザー処理中に、圧縮空気ノズル(45°の角度でマウント;試料表面に直接向ける)の補助で、45l(STP)/分(入り口圧力は8bar;20℃)の圧縮空気流を試料にさらにパージした
【0107】
レーザー処理は、パラメーターLA、LBおよびLCを用いて行った。
【表14】
【0108】
反応器設定:
図18は、本発明のアンダーカットチャネル構造体からなるマイクロ反応器の概略機器、ならびに個々の区域および例示的なチャネル断面図の顕微鏡画像を示している。
反応器の製造に関すると、本発明のアンダーカットチャネルは、最初に、2つの流入区域AおよびA*の形態のレーザーパラメーターLAを有する鋼表面にレーザー照射した。これらの流入区域は、反応剤を導入するよう働き、反応区域Bを介して互いに連結されている。この反応区域Bは、レーザーパラメーターLBにより表面に2サイクルで平行なアンダーカットチャネルを直角にレーザー照射することによって行い、こうして、チャネルは交差する。続いて、平行チャネルを介して、反応生成物の流出区域Cが、パラメーターLCにより表面にレーザー照射され、これにより、アンダーカットチャネルを介して、反応区域Bが繋がる。
【0109】
機能の証拠:
反応の証拠のために、水酸化ナトリウム溶液(水中の2質量%)および(0.1:6:24)の比のフルオレセイン-水-エタノール混合物を反応剤として使用した。これらの反応剤を、各場合において、各溶液の20μlの液滴3滴で流入区域AおよびA*の1つにピペット操作で加えた。反応は、UVランプを使用する蛍光検出によって検出し、始めは着色形態のフルオロセインは水酸化ナトリウム溶液と反応し、水およびナトリウムイオンが脱離して蛍光分子を与える。反応生成物に使用されるレザーバーは、流出区域Cの表面に押し込まれた、四重に折り畳んだ吸収布(Kimberly Clark7552、Kimtech Science 精密布)とした。
【0110】
観察および結果:
最初の反応剤は、流入区域AおよびA*のチャネルを1秒以内に濡らし、これは、チャネル開口部から観察することができる。
【0111】
図19は、流入区域AおよびA*を有するマイクロスケール反応器、フルオロセインと水酸化ナトリウム溶液との反応の証拠としての反応区域Bにおける白色蛍光、および区域Cでの吸収布への生成物の流れを示している。
図19は、約2秒後に反応区域Bにおけるチャネル開口部からの可視蛍光を証拠立てるものである。これは、反応区域B中で混合する2つの反応剤溶液の反応の証拠である。この蛍光は、反応区域に沿ったある量の流れの形態で目視可能である。約4秒後、反応生成物は、同様に蛍光を発する吸収布に到着する(時間は、実験のビデオ文書から測定する)。
この実験の結果は、本発明の部分としての本発明の物品はまた、化学反応の反応器として、または反応器の一部として使用することができることを示している。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕金属基材、および表面に完全にまたは部分的に開口している、金属基材中のチャネルを有する物品であって、チャネルの断面が、接触面に平行に、かつ表面に垂直な断面にある縦方向チャネル軸に対して直角で測定される、チャネル底部(7)と接触面(1)との間の局所最大幅(5)を有しており、チャネル表面の領域にある金属基材と比べて、改変された粒子サイズ構造を有する熱影響部が存在する、物品。
〔2〕接触面(1)の下の局所最大幅(5)が、≧0.5μmである、前記〔1〕に記載の物品。
〔3〕縦方向チャネル軸に対して直角で測定される局所最大幅(5)が、≧1μm、好ましくは≧5μm、より好ましくは≧25μmである、前記〔1〕または〔2〕に記載の物品。
〔4〕チャネルが、≦1:3、好ましくは≦1:10、より好ましくは≦1:100である、縦方向チャネル軸に対して直角で測定される局所最大幅(5)のチャネル長さに対するアスペクト比を有しており、かつ/またはチャネルが、≧3μm、好ましくは≧100μm、より好ましくは≧500μmの長さを有しており、チャネル長さが各場合において、物品表面に平行に測定される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の物品。
〔5〕接触面(5)に対して直角で測定すると、チャネルが、0.1μm~10000μm、好ましくは0.2μm~1000μm、より好ましくは0.5μm~500μmの範囲となる深さ(3)を有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の物品。
〔6〕チャネルの開口部が、縦方向チャネル軸に対して直角で接触面(5)において測定すると、0.05μm~2000μmの幅を有する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の物品。
〔7〕チャネルが、接触面に平行なチャネル内部の最大幅(5)により形成される面に対して、≧30%、好ましくは≧50%の範囲まで、および各場合において、さらに好ましくは≧70%、≧80%、≧90%、≧95%および≧99%の範囲まで被覆されている、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の物品。
〔8〕最大で1:2、より好ましくは最大で1:10の比の、金属基材に対するより小さな平均統計学的粒子サイズを有する、チャネルの開口部領域における第1の熱影響部、および0.1μm~3000μm、好ましくは0.2μm~1000μmの範囲、より好ましくは0.5μm~500μmの範囲の厚さを有するチャネルまたはセル断面の最低点の領域に第2の熱影響部を有する物品であって、チャネル断面における最低点から垂直方向の第2の熱影響部が、金属基材に比較して、好ましくは≦1:1.2、より好ましくは≦1:5となるより小さな平均統計学的粒子サイズ、および第1の熱影響部に比べて、好ましくは≧2:1.2となるより大きな平均統計学的粒子サイズを有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の物品。
〔9〕金属基材が、チタン、アルミニウム、バナジウム、マグネシウム、銅、銀、鉛、金、相互のまたはさらなる金属とのその合金、および鋼からなる群から選択される、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の物品。
〔10〕チャネル壁に沿う基材に比べて酸素に富む層であって、50nm、好ましくは500nmの深さで測定される酸素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる酸素に富む層、および/またはチャネル壁に沿う基材に比べて窒素に富む層であって、50nm、好ましくは500nmの深さにおいて測定される窒素富化が、スパッタリング後のXPSによって測定すると、最低で5%となる窒素に富む層を有する、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の物品。
〔11〕a)金属基材を有する物品を用意するステップ、および
b)パルス状レーザーを金属基材に照射するステップであって、照射を、少なくとも0.1kHzのパルス繰り返し周波数で、少なくとも2パルス、好ましくは少なくとも5パルス、さらに好ましくは2~2000パルス、より好ましくは5~100パルスを同じ部位に行い、使用されるレーザー照射が、400nm~30μmの範囲の波長を有しており、パルスのパルス長さが、500ps~100sの範囲にある、ステップ
を含む、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の金属基材を有する物品を製造する方法。
〔12〕使用されるレーザー照射が、950nm~12μmの範囲の波長を有する、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕パルス繰り返し周波数が、0.1kHz~4MHzの範囲、好ましくは10kHz~250kHzの範囲にある、前記〔11〕または〔12〕に記載の方法。
〔14〕パルスのパルス長さが、1ns~1μsの範囲にある、前記〔11〕~〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕レーザービーム焦点における集電センサーによる、試料位置で測定されたエネルギー密度が、0.1J/cm 2 ~100J/cm 2 、より好ましくは1J/cm 2 ~20J/cm 2 の範囲にある、前記〔11〕~〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕レーザースポットにおけるエネルギー分布が、ガウスプロファイルまたはフラットトッププロファイルまたはトップホットプロファイルを有する、前記〔11〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17〕ステップb)が、少なくとも0.01s~0.25μsの時間間隔で2~1000サイクルで行われる、前記〔11〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕ステップb)において、金属基材にCWまたはQCWレーザーが照射される方法であって、スポットサイズに対応する表面領域におけるレーザーパルスの局所滞留時間が、少なくとも5ns、好ましくは少なくとも25ns、さらに好ましくは40ns~2msの間、より好ましくは50ns~500nsの範囲にある、前記〔11〕~〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
〔19〕ステップb)の繰り返しで、集合的に生成した細孔が、完全にまたは部分的に表面に開口したチャネルとなるように、ステップb)の後にレーザーを移動させる、前記〔11〕~〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔20〕前記〔11〕~〔19〕のいずれか1項に記載の方法によって製造されるまたは製造可能な、金属基材および金属基材中のチャネルを有する物品。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19