(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】バイポーラプレート用の組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20240906BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20240906BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240906BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20240906BHJP
H01M 8/0226 20160101ALI20240906BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240906BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L27/16
C08K3/04
H01M8/0221
H01M8/0226
H01M8/0213
(21)【出願番号】P 2021540917
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2019075409
(87)【国際公開番号】W WO2020058507
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】521117492
【氏名又は名称】ホワイトセル アイゼンフート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Whitecell Eisenhuth GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビゼー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シャボー,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン,トルステン
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504577(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0129704(KR,A)
【文献】特開2002-234946(JP,A)
【文献】ANTUNES R.A.et al.,Investigation on the corrosion resistance of carbon-grafite-poly(vinylidene fluoride)composite bipolar plates for polymer electrolyte membrane fuel cells,International Journal of Hydrogen Energy,2011年,36(19),12474-12485,ISSN: 0360-3199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
H01M8
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フッ素化ポリマーを得るために、フッ素化ポリマ
ーを第1の導電性フィラーと溶融混合する工程と、
前記導電性フッ素化ポリマーを粉末に粉砕する工程と、
前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を第2の導電性フィラーと混合する工程と、
を含む組成物を製造する方法。
【請求項2】
前記第2の導電性フィラーがグラファイトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の導電性フィラーは、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンファイバー、及びそれらの混合物からなる群から選択さ
れる、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を前記第2の導電性フィラーと混合する工程は、前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を押出機で前記第2の導電性フィラーと混合する工程である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の導電性フィラーは、前記導電性フッ素化ポリマーの重量に基づいて、0.1重量%~35重量
%の量で存在する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性フッ素化ポリマーは、前記組成物の総重量中、10%~40
%の量で存在し、
そして前記第2の導電性フィラーは、前記組成物の総重量中、60%~90
%の量で存在する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性フッ素化ポリマーは、体積メジアン径Dv50が10μm~1mmの範囲の粉末に粉砕される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性フッ素化ポリマーは、100(s
-1)の剪断速度及び230℃で毛管レオメトリーによって測定される粘度が、3000(Pa・s)未
満である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で組成物を製造する工
程と、
前記組成物を圧縮成形する工程と、
を含むバイポーラプレートを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラプレート用の新たな組成物及びそのような組成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラプレートは、燃料電池やレドックス・フロー電池において用いられる。これらは構成材料に応じて、金属で形成されたバイポーラプレート、カーボンで形成されたバイポーラプレート、ポリマー/グラファイト複合材などのポリマー/カーボン複合材で形成されたバイポーラプレート、の3つのカテゴリーに分類される。
【0003】
ポリマー/カーボン複合バイポーラプレートは、とりわけ、製造コストが比較的低く、耐食性があり、脆弱性が低いため、特に興味深い。
【0004】
Del Rioらによる論文、New Polymer Bipolar Plates for Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cells: Synthesis and Characterization, Journal of Applied Polymer Science, vol.83, p.2817-2822 (2002)は、60重量%~100重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び0重量%~40重量%のカーボンブラックで形成されたバイポーラプレートを開示している。このバイポーラプレートは、2つの成分が内部ミキサーで混合された後、油圧プレスによって形成される。
【0005】
Stueblerらによる論文、Investigation of the properties of polymer composite bipolar plates in fuel cells, Journal of Plastics Technology, vol. 10, p. 68-89 (2014)は、15重量%のPVDF及び85重量%のグラファイトを含有するバイポーラプレートと、15重量%のPVDF、70重量%のグラファイト、及び15重量%のカーボンブラックを含有するバイポーラプレートとを開示している。このバイポーラプレートを製造するには、上記の成分を乾燥させてニーダーで混合し、混合物を油圧プレスで加熱する。
【0006】
Huangらによる文献、Compression moldable laminate composite bipolar plates for fuel cells, ANTEC 2004, p.1405-1409 (2004)は、グラファイト、ポリエステル(PET)及びグラスファイバーを含むコア層が、PVDF及びグラファイトの混合物で形成されたスキン層によって覆われた多層バイポーラプレートを開示している。Cunninghamらによる文献、Materials and processing methods used in the production of polymer composite bipolar plates for fuel cells, ANTEC 2006, p.1893-1897 (2006)は、グラファイト、PET、カーボンファイバー及びマイクログラスを含むコア層と、PVDF/グラファイト混合物で形成された外層とを備える多層バイポーラプレートを開示している。
【0007】
Altobelli Antunesらによる論文、Investigation on the corrosion resistance of carbon black-graphite-poly(vinylidene fluoride) composite bipolar plates for polymer electrolyte membrane fuel cells, International Journal of Hydrogen Energy, vol. 36, p.12474-12485 (2011)は、15重量%のPVDF、80重量%~85重量%のグラファイト、及び0重量%~5重量%のカーボンブラックを含み、以下の工程によって製造されるバイポーラプレートを開示している:粉末状の成分がブレンダーで混合され、混合物が油圧プレスで圧縮成形される。この工程のうち圧縮成形する工程では、PVDFにカーボンブラックを分散させるために十分な高さの剪断が生じないため、最終的なバイポーラプレートのグラファイト粒子に結合するPVDFの分離ドメインの形成を防ぐことはできない。
【0008】
フランス特許第3021811号明細書は、ラメラグラファイトと熱可塑性ポリマーを含む組成物が乾式ふるいにかけられて乾式混合され、型に堆積され、次いで熱圧着によって成形されるバイポーラプレートの製造工程を開示している。
【0009】
欧州特許第1466372号明細書と欧州特許第1207535号明細書は、プレスで押出し又は注入することでバイポーラプレートを製造できる、フルオロポリマー粒子で覆われたグラファイト薄片又はグラファイト粒子を含むミクロ複合粉末を開示している。この粉末は、上記の成分を含む水性エマルジョン又は分散液の共噴霧によって製造される。
【0010】
米国特許第4339322号明細書は、カーボンファイバーで強化されたグラファイトと熱可塑性フッ素化ポリマー(2.5:1~16:1の比率)の成形体からなるバイポーラ集電セパレータに関する。この集電体を製造するため、3つの成分の混合物がブレンドされ、次いでそれが型に注がれて圧縮される。
【0011】
米国特許第4214969号明細書では、グラファイト粒子とPVDF粒子の混合物をブレンダーで混合し、その混合粉末を金型で圧縮することによって、グラファイトと熱可塑性フッ素化ポリマーが2.5:1~16:1の比率で混合された成形体からなるバイポーラ集電セパレータが製造される。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0042496号明細書は、プラスチックと、グラファイトファイバーフィラーと、任意で選択されるグラファイト粉末フィラーとが溶融混合され、その溶融物がプレートに成形される、バイポーラプレート等の導電性ポリマー複合成形品の製造工程を開示している。ただし、この工程でPVDFを用いると、溶融状態である組成物の混合物は非常に粘性が高くなるため、実施が困難となる。
【0013】
米国特許第4098967号明細書では、細かく分離されたPVDFが40vol%~80vol%のガラス状炭素粒子と混合され、次いで圧縮成形されてバイポーラプレートの基板が形成される。
【0014】
高い熱伝導率と高い電気伝導率(面内伝導率及び/又は面貫通伝導率)の両方を備え、容易に加工できるバイポーラプレートを製造することを可能にする組成物が求められている。加えて、バイポーラプレートは良好な機械的特性を有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の目的は、以下の工程を含む組成物の製造方法を提供することである:
導電性フッ素化ポリマーを得るために、フッ素化ポリマー、好ましくはポリフッ化ビニリデンポリマーを第1の導電性フィラーと溶融混合する工程;
前記導電性フッ素化ポリマーを粉末に粉砕する工程;
前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を第2の導電性フィラーと混合する工程。
【0016】
実施形態によっては、前記第2の導電性フィラーはグラファイトである。
【0017】
実施形態によっては、前記第1の導電性フィラーは、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンファイバー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記第1の導電性フィラーはカーボンブラックである。
【0018】
実施形態によっては、前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を第2の導電性フィラーと混合する工程は、前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を押出機で第2の導電性フィラーと混合する工程である。
【0019】
実施形態によっては、前記第1の導電性フィラーは、前記導電性フッ素化ポリマーの重量に基づいて、0.1重量%~35重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2.5重量%~15重量%の量で存在する。
【0020】
実施形態によっては、前記導電性フッ素化ポリマーは、前記組成物の総重量中、10%~40%、好ましくは10%~30%、より好ましくは15%~25%の量で存在し、前記第2の導電性フィラーは、前記組成物の総重量中、60%~90%、好ましくは70%~90%、より好ましくは75%~85%の量で存在する。
【0021】
実施形態によっては、前記導電性フッ素化ポリマーは、体積メジアン径Dv50が10μm~1mmの範囲の粉末に粉砕される。
【0022】
実施形態によっては、前記フッ素化ポリマーは、100(s-1)の剪断速度及び230℃で毛管レオメトリーによって測定される粘度が、3000(Pa・s)未満、好ましくは1500(Pa・s)未満である。
【0023】
本発明の他の目的は、上記の方法によって得られる組成物を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、第2の導電性フィラーと導電性フッ素化ポリマーの粒子とを含み、前記導電性フッ素化ポリマーの粒子は、第1の導電性フィラーが分散されるフッ素化ポリマーマトリックスを含む組成物を提供することである。
【0025】
実施形態によっては、前記フッ素化ポリマーマトリックスはポリフッ化ビニリデンマトリックスであり、及び/又は前記第2の導電性フィラーはグラファイトであり、及び/又は前記第1の導電性フィラーは、導電性ポリマー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンファイバー、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはカーボンブラックである。
【0026】
実施形態によっては、前記第2の導電性フィラーは、組成物の総重量中、60%~90%、好ましくは70%~90%、より好ましくは75%~85%の量で存在し、前記第1の導電性フィラーは、組成物の総重量中、0.01%~14%、好ましくは0.1%~8%、より好ましくは0.25%~6%の量で存在する。
【0027】
実施形態によっては、前記フッ素化ポリマーは、100(s-1)の剪断速度及び230℃で毛管レオメトリーによって測定される粘度が、3000(Pa・s)未満、好ましくは1500(Pa・s)未満である。
【0028】
本発明の他の目的は、以下の工程を含むバイポーラプレートの製造方法を提供することである:
上記の方法で組成物を製造する工程、又は上記の組成物を提供する工程;
前記組成物を圧縮成形する工程。
【0029】
本発明の他の目的は、上記の方法で得られる、又は上記の組成物を含むバイポーラプレートを提供することである。
【0030】
本発明は、上記の要求を満たすことを可能にする。特に本発明は、以下の有利な特徴、即ち、高い面内伝導率、高い面貫通伝導率、高い熱伝導率、及び良好で適切な曲げ強度や圧縮強度等の機械的特性、のうち1つ又は好ましくはいくつかを有するバイポーラプレートを製造するために使用できる良好な加工特性を有する組成物を提供する。
【0031】
これは、導電性フィラーが分散されたフッ素化ポリマーを含むバインダーを使用することによって達成される。これにより、プレートの絶縁ドメインが減少し、例えばサンドブラストによるバイポーラプレート表面の後処理を回避できる。このサンドブラストは、バインダーがフッ素化ポリマーのみで構成される場合、圧縮成形による製造後に絶縁ポリマー層を除去するためにしばしば必要となる。
【0032】
本発明はまた、上記の利点を有する組成物を得ることを可能にする方法を提供する。
【0033】
実際、フッ素化ポリマーと第1の導電性フィラーとの溶融混合、及び別の工程における得られた混合物と第2の導電性フィラーとの混合によって、導電性フッ素化ポリマー、即ち、第1の導電性フィラーが分散されているフッ素化ポリマーをバインダーが含む複合バイポーラプレート用の組成物を達成することが可能になる。なお、導電性フッ素化ポリマーは容易に加工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明について、以下の説明に限定することなく、より詳細に説明する。
【0035】
特に明記しない限り、本願におけるパーセンテージは、重量パーセンテージである。
【0036】
(バイポーラプレート用組成物)
第1の態様では、本発明は、バイポーラプレートを製造するために適した組成物に関する。この組成物は、本明細書において「第2の導電性フィラー」と称される(好ましくは炭素ベースの)導電性フィラーの粒子と、本明細書において「第1の導電性フィラー」と称され、フッ素化ポリマーのマトリックスに分散された導電性フィラーを含む導電性フッ素化ポリマーの粒子と、の混合物を含む。
【0037】
前記組成物は粉末状であってもよく、その場合、前記導電性フッ素化ポリマーの粒子は、前記第2の導電性フィラーの粒子と単に混合して存在する。
【0038】
あるいは、前記組成物は固体のような凝集体であってもよく、その場合、前記第2の導電性フィラーの粒子は、前記導電性フッ素化ポリマーの粒子(又はドメイン)に結合している。前記組成物がバイポーラプレートに成形される場合、前記組成物はそのような凝集体である。
【0039】
フッ素化ポリマー中における第1の導電性フィラーの分散によって、フッ素化ポリマーを導電性とすることができる。フッ素化ポリマーは、そのようなポリマーのストランドの抵抗が106オーム未満の場合に導電性である。第1の導電性フィラーの充填量は、フッ素化ポリマーマトリックス全体のパーコレーション閾値に到達するようなものであることが好ましい。
【0040】
第2の導電性フィラー及びフッ素化ポリマー中に分散された第1の導電性フィラーは、平均サイズ、又はサイズ分布、及び/又は性質において、互いに異なることが好ましい。
【0041】
第2の導電性フィラーは、グラファイトであることが好適である。
【0042】
第2の導電性フィラーのDv50は、2500μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下であってもよい。実施形態によっては、第2の導電性フィラーのDv50は、10μm~50μm、又は50μm~100μm、又は100μm~150μm、又は150μm~200μm、又は200μm~250μm、又は250μm~300μm、又は300μm~350μm、又は350μm~400μm、又は400μm~450μm、又は450μm~500μm、又は500μm~600μm、又は600μm~700μm、又は700μm~800μm、又は800μm~900μm、又は900μm~1000μm、又は1000μm~1100μm、又は1100μm~1200μm、又は1200μm~1300μm、又は1300μm~1400μm、又は1400μm~1500μm、又は1500μm~1600μm、又は1600μm~1700μm、又は1700μm~1800μm、又は1900μm~2000μm、又は2000μm~2100μm、又は2100μm~2200μm、又は2200μm~2300μm、又は2300μm~2400μm、又は2400μm~2500μmである。
【0043】
Dv50は、粒子の累積サイズ分布の50パーセンタイル値(体積基準)における粒子サイズである。このパラメータは、レーザ粒度分布測定によって測定することができる。これは、本明細書に記載されている全てのDv50に適用される。
【0044】
組成物は、例えば、組成物の総重量中、60重量%~90重量%の第2の導電性フィラーを含んでもよい。実施形態によっては、組成物は、組成物の総重量中、60重量%~65重量%、又は65重量%~70重量%、又は70重量%~75重量%、又は75重量%~80重量%、又は80重量%~85重量%、又は85重量%~90重量%の第2の導電性フィラーを含む。
【0045】
導電性フッ素化ポリマーの粒子は、0.1μm~1mm、特に0.1μm~5μm、又は5μm~50μm、又は50μm~100μm、又は100μm~200μm、又は200μm~300μm、又は300μm~400μm、又は400μm~500μm、又は500μm~600μm、又は600μm~700μm、又は700μm~800μm、又は800μm~900μm、又は900μm~1mmのDv50を有してよい。
【0046】
フッ素化ポリマーに分散された第1の導電性フィラーは、導電性ポリマーであってもよい。適切な導電性ポリマーは、ポリアセチレンポリマー、ポリフェニレンビニレンポリマー、ポリチオフェンポリマー、ポリアニリンポリマー、ポリピロールポリマー、ポリフェニレンサルファイドポリマー、又はそれらの混合物である。あるいは、又は加えて、第1の導電性フィラーは、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンファイバー又はこれらの組み合わせの導電性カーボン粒子を含み得る。
【0047】
フッ素化ポリマーのマトリックスに分散された第1の導電性フィラーは、ASTM D3037に準拠して窒素下でBET法によって測定された比表面積が、0.1m2/g~2000m2/gであってもよく、好ましくは10m2/g~1000m2/gであってもよい。実施形態によっては、第1の導電性フィラーは、BET表面積が0.1m2/g~1m2/g、又は1m2/g~10m2/g、又は10m2/g~50m2/g、又は50m2/g~200m2/g、又は200m2/g~400m2/g、又は400m2/g~600m2/g、又は600m2/g~800m2/g、又は800m2/g~1000m2/g、又は1000m2/g~1200m2/g、又は1200m2/g~1400m2/g、又は1400m2/g~1600m2/g、又は1600m2/g~1800m2/g、又は1800m2/g~2000m2/gであってもよい。
【0048】
フッ素化ポリマーに分散された第1の導電性フィラーは、組成物の総重量中、0.01重量%~0.10重量%、0.10重量%~0.20重量%、0.20重量%~0.25重量%、0.25重量%~0.30重量%、0.30重量%~0.35重量%、0.35重量%~0.40重量%、0.40重量%~0.45重量%、0.45重量%~0.50重量%、0.50重量%~0.55重量%、0.55重量%~0.60重量%、0.60重量%~0.65重量%、0.65重量%~0.70重量%、0.70重量%~0.75重量%、0.75重量%~0.80重量%、0.80重量%~0.85重量%、0.85重量%~0.90重量%、0.90重量%~0.95重量%、0.95重量%~1重量%、1重量%~2重量%、2重量%~3重量%、3重量%~4重量%、4重量%~5重量%、5重量%~6重量%、6重量%~7重量%、7重量%~8重量%、8重量%~9重量%、9重量%~10重量%、10重量%~11重量%、11重量%~12重量%、12重量%~13重量%、13重量%~14重量%の量で組成物中に存在してもよい。
【0049】
フッ素化ポリマーは、その骨格内に、少なくとも一つのフッ素原子を含むビニルモノマー、少なくとも一つのフルオロアルキル基を含むビニルモノマー、及び少なくとも一つのフルオロアルコキシ基を含むビニルモノマーから選択されるモノマーから少なくとも一つのユニットを含んでもよい。例として、このモノマーは、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)又はパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、パーフルオロ(1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、化学式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2X(XはSO2F,CO2H,CH2OH,CH2OCN又はCH2OPO3H)の物質、化学式CF2=CFOCF2CF2SO2Fの物質、化学式F(CF2)nCH2OCF=CF2(nは1,2,3,4又は5)の物質、化学式R1CH2OCF=CF2(R1は水素又はF(CF2)mでmは1,2,3又は4)の物質、化学式R2OCF=CH2(R2はF(CF2)pでpは1,2,3又は4)の物質、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、3,3,3-トリフルオロプロペン又は2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンであってもよい。
【0050】
フッ素化ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーとしてもよい。フッ素化ポリマーはさらに、エチレンのような非フッ化モノマーからなるユニットを有してもよい。
【0051】
フッ素化ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンポリマーであることが好適である。
【0052】
前記ポリフッ化ビニリデンポリマーは、ホモポリマーであることが好ましい。
【0053】
実施形態によっては、前記ポリフッ化ビニリデンポリマーは、フッ化ビニリデンユニットと1つ又は複数の他のモノマーからなるユニットとを含むコポリマーであってもよい。他のモノマーの例としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)又はパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、パーフルオロ(1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、化学式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2X(XはSO2F,CO2H,CH2OH,CH2OCN又はCH2OPO3H)の物質、化学式CF2=CFOCF2CF2SO2Fの物質、化学式F(CF2)nCH2OCF=CF2(nは1,2,3,4又は5)の物質、化学式R’CH2OCF=CF2(R’は水素又はF(CF2)zでzは1,2,3又は4)の物質、化学式R”OCF=CH2(R”はF(CF2)zでzは1,2,3又は4)の物質、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、3,3,3-トリフルオロプロペン又は2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンがある。ヘキサフルオロプロピレンが好ましい。ポリフッ化ビニリデンコポリマーはさらに、エチレンモノマーからなるユニットを含んでもよい。ポリフッ化ビニリデンポリマーがコポリマーである場合、少なくとも50重量%、より好ましくは60重量%、さらにより好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%のフッ化ビニリデンユニットを含むことが好ましい。
【0054】
フッ素化ポリマーは、2つ以上の上記のポリマーの混合物であってもよい。
【0055】
組成物において、フッ素化ポリマーは、組成物の総重量中、6.5重量%~39.96重量%、好ましくは8重量%~39.6重量%、より好ましくは8.5重量%~39重量%の量であってもよい。実施形態によっては、フッ素化ポリマーは、前記組成物の総重量中、6.5重量%~10重量%、10重量%~15重量%、15重量%~20重量%、20重量%~25重量%、25重量%~30重量%、30重量%~35重量%、35重量%~39.96重量%の量であってもよい。
【0056】
フッ素化ポリマーは、100(s-1)の剪断速度及び230℃で、ASTM D3835に準拠して毛管レオメトリーによって測定された、3000(Pa・s)より低い、好ましくは1500(Pa・s)より低い粘度を有してもよい。例えば、前記フッ素化ポリマーは、100(s-1)の剪断速度及び230℃で、ASTM D3835に準拠して毛管レオメトリーによって測定された、2800(Pa・s)より低い、又は2500(Pa・s)より低い、又は2000(Pa・s)より低い、又は1800(Pa・s)より低い、又は1500(Pa・s)より低い、又は1200(Pa・s)より低い、又は1000(Pa・s)より低い粘度を有してもよい。
【0057】
(バイポーラプレート)
本発明はまた、凝集体で、上記の組成物を含むバイポーラプレートに関する。バイポーラプレートは、燃料電池やレドックス・フロー電池において単セル間の仕切りとして機能する板である。一般的に、バイポーラプレートは、数ミリメートル(通常は0.2~6mm)の厚さを有する平行六面体状であり、その各面にガス及び流体の循環のためのチャネルのネットワークを含む。その機能は通常、燃料電池にガス燃料を供給し、反応生成物を放出し、セルで生成された電流を集電することである。
【0058】
バイポーラプレートは、以下の特性のうち1つ以上、好ましくは全てを示すことが好適である;
0.01(Ω・cm)以下の面内抵抗率;
0.03(Ω・cm)以下の面貫通抵抗率;
10(W/(m・K))以上の熱伝導率;
25(N/mm2)以上の曲げ強度;
25(N/mm2)以上の圧縮強度。
【0059】
曲げ強度は、DIN EN ISO 178規格に準拠して測定される。圧縮強度は、ISO 604に準拠して測定される。熱伝導率は、DIN EN ISO 821のレーザフラッシュ法に準拠して測定される。面内抵抗率は、厚さ4mmに破砕された試料上に四探針プローブがセットアップされた試料を用いて測定される。面貫通抵抗率は、直径13mm、厚さ2mmに破砕された試料に二つの電極が取り付けられ、1(N/mm2)の接触圧力で測定される。
【0060】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、0.008(Ω・cm)以下、又は0.005(Ω・cm)以下、又は0.003(Ω・cm)以下の面内抵抗率を有する。
【0061】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、0.025(Ω・cm)以下、又は0.02(Ω・cm)以下、又は0.015(Ω・cm)以下の面貫通抵抗率を有する。
【0062】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、15(W/(m・K))以上、又は20(W/(m・K))以上の熱伝導率を有する。
【0063】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、30(N/mm2)以上、又は35(N/mm2)以上の曲げ強度を有する。
【0064】
(工程)
本発明の他の態様は、以下の工程を備える上記組成物の製造方法に関する:
前記導電性フッ素化ポリマーを得るために、前記フッ素化ポリマーを前記第1の導電性フィラーと溶融混合する工程;
前記導電性フッ素化ポリマーを粉末状に粉砕する工程;
前記導電性フッ素化ポリマーの粉末を前記第2の導電性フィラーと混合する工程。
【0065】
本方法では、第1の導電性フィラー、フッ素化ポリマー、及び第2の導電性フィラーは、バイポーラプレート用の組成物に関して上記の任意の又は好ましい特徴を有してもよい。
【0066】
本発明の方法は、導電性フッ素化ポリマーを得るために、フッ素化ポリマーを第1の導電性フィラーと溶融混合する工程を含む。この工程により、「導電性フッ素化ポリマー」と称する、フッ素化ポリマーと第1の導電性フィラーとの密接な混合物を製造することができる。第1の導電性フィラーは、フッ素化ポリマーに分散されていることが好ましい。
【0067】
溶融混合されるフッ素化ポリマーと第1の導電性フィラーは粉末状であることが好ましい。
【0068】
フッ素化ポリマーと溶融混合される第1の導電性フィラーは、ASTM D3037に準拠して窒素下でBET法によって測定されたBET表面積が、0.1m2/g~2000m2/gであってもよく、優先的には10m2/g~1000m2/gであってもよい。実施形態によっては、第1の導電性フィラーは、BET表面積が、0.1m2/g~1m2/g、又は1m2/g~10m2/g、又は10m2/g~50m2/g、又は50m2/g~200m2/g、又は200m2/g~400m2/g、又は400m2/g~600m2/g、又は600m2/g~800m2/g、又は800m2/g~1000m2/g、又は1000m2/g~1200m2/g、又は1200m2/g~1400m2/g、又は1400m2/g~1600m2/g、又は1600m2/g~1800m2/g、又は1800m2/g~2000m2/gであってもよい。好適な変形例では、溶融混合工程は、例えば、ニーダー又は二軸押出機を用いて押出しすることによって実施される。第1の導電性フィラーをフッ素化ポリマー内で良好に分散させるためには、高い剪断速度によって分散混合をもたらすスクリュプロファイルが好ましい。
【0069】
例として、フッ素化ポリマーと第1の導電性フィラーとを溶融混合するための従来の押出工程では、ポリマーペレットが、Tm+20℃及びTm+70℃(Tmはフッ素化ポリマーの溶融温度(℃)である)の範囲の温度まで加熱されたスクリュに沿って搬送されることによって溶融される。導電性フィラーは、分注ユニットで供給されることが好ましい。ペレットは、押出工程後、ストランドカット法又は水中ペレタイズにより得ることが好ましい。
【0070】
導電性フッ素化ポリマーは、導電性フッ素化ポリマーの重量に基づいて、0.1重量%~1重量%、又は1重量%~2.5重量%、又は2.5重量%~5重量%、又は5重量%~10重量%、又は10重量%~15重量%、又は15重量%~20重量%、又は20重量%~25重量%、又は25重量%~30重量%、又は30重量%~35重量%の第1の導電性フィラーを含んでもよい。
【0071】
導電性フッ素化ポリマーは、ペレット状にしてもよい。
【0072】
本発明はまた、導電性フッ素化ポリマーを粉末状に粉砕する工程を含む。この工程を実施するために、任意の粉砕技術、例えばハンマーミルを用いてもよい。実施形態によっては、粉砕する工程で回収される粉末は、0.1μm~1mmのDv50、特に0.1μm~5μm、又は5μm~50μm、又は50μm~100μm、又は100μm~200μm、又は200μm~300μm、又は300μm~400μm、又は400μm~500μm、又は500μm~600μm、又は600μm~700μm、又は700μm~800μm、又は800μm~900μm、又は900μm~1mmのDv50を有する。
【0073】
次いで、導電性フッ素化ポリマーの粉末と第2の導電性フィラーとが混合される。
【0074】
第2の導電性フィラーは粉末状であってもよい。第2の導電性フィラーのDv50は、2500μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下であってもよい。実施形態によっては、第2の導電性フィラーのDv50は、10μm~50μm、又は50μm~100μm、又は100μm~150μm、又は150μm~200μm、又は200μm~250μm、又は250μm~300μm、又は300μm~350μm、又は350μm~400μm、又は400μm~450μm、又は450μm~500μm、又は500μm~600μm、又は600μm~700μm、又は700μm~800μm、又は800μm~900μm、又は900μm~1000μm、又は1000μm~1100μm、又は1100μm~1200μm、又は1200μm~1300μm、又は1300μm~1400μm、又は1400μm~1500μm、又は1500μm~1600μm、又は1600μm~1700μm、又は1700μm~1800μm、又は1900μm~2000μm、又は2000μm~2100μm、又は2100μm~2200μm、又は2200μm~2300μm、又は2300μm~2400μm、又は2400μm~2500μmである。
【0075】
混合する工程は、例えば、導電性フッ素化ポリマーの粉末と第2の導電性フィラーとを混合することによって実施されてもよい。導電性フッ素化ポリマーの粉末と第2の導電性フィラーとの混合は、押出機、例えば二軸押出機によって実施されることが好適である。
【0076】
導電性フッ素化ポリマーは、バイポーラプレート用組成物の総重量中、10重量%~15重量%、又は15重量%~20重量%、又は20重量%~25重量%、又は25重量%~30重量%、又は30重量%~35重量%、又は35重量%~40重量%の量であることが好ましい。第2の導電性フィラーは、バイポーラプレート用組成物の総重量中、60重量%~65重量%、又は65重量%~70重量%、又は70重量%~75重量%、又は75重量%~80重量%、又は80重量%~85重量%、又は85重量%~90重量%の量であることが好ましい。
【0077】
本発明はまた、上記の工程によって製造されたバイポーラプレート用組成物に関する。
【0078】
本発明の他の態様は、以下の工程を含むバイポーラプレートの製造方法に関する:
上記の方法に従ってバイポーラプレート用組成物を製造する工程;
前記バイポーラプレート用組成物を圧縮成形する工程。
【0079】
圧縮成形されるバイポーラプレート用組成物は粉末状であることが好ましい。本発明による工程は、例えばディスクミルを用いて、バイポーラプレート用組成物を粉砕して粉末状にする工程を含んでもよい。
【0080】
バイポーラプレートを製造するための組成物の圧縮成形は、当業者にはよく知られている。例えば、圧縮成形工程は、以下の方法によって実施することができる。バイポーラプレート用組成物を金型、例えばステンレス鋼製の金型に入れ、この金型を閉じ、組成物を含む金型を200℃~350℃、好ましくは250℃~300℃の温度に加熱する。次いで、金型サイズが100000~150000mm2の金型に対して、300t~800t、好ましくは400t~600tの圧縮を行う。一般的には、金型サイズが130000mm2のときに500tの圧縮力がかかり、金型サイズが44000mm2のときに300tの圧縮力がかかる。その金型を50℃~120℃、好ましくは60℃~100℃まで冷却し、プレートを脱型する。
【0081】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、以下の特性のうち1つ以上、好ましくは全ての特定を示す:
0.01(Ω・cm)以下の面内抵抗率;
0.03(Ω・cm)以下の面貫通抵抗率;
10(W/(m・K))以上の熱伝導率;
25(N/mm2)以上の曲げ強度;
25(N/mm2)以上の圧縮強度。
【0082】
曲げ強度は、DIN EN ISO 178規格に準拠して測定される。圧縮強度は、ISO 604に準拠して測定される。熱伝導率は、DIN EN ISO 821のレーザフラッシュ法に準拠して測定される。面貫通抵抗率は、四探針プローブのセットアップを用いて測定される。
【0083】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、0.008(Ω・cm)以下、又は0.005(Ω・cm)以下、又は0.003(Ω・cm)以下の面内抵抗率を有する。
【0084】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、0.025(Ω・cm)以下、又は0.02(Ω・cm)以下、又は0.015(Ω・cm)以下の面貫通抵抗率を有する。
【0085】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、15(W/(m・K))以上、又は20(W/(m・K))以上の熱伝導率を有する。
【0086】
実施形態によっては、バイポーラプレートは、30(N/mm2)以上、又は35(N/mm2)以上の曲げ強度を有する。
【0087】
導電化されていないフッ素化ポリマーの粒子を用いた圧縮成形法により製造されたバイポーラプレートは、上記のようにして製造されたバイポーラプレート又は上記のような組成物からなるバイポーラプレートに比べて、絶縁性のフッ素化ポリマーからなる絶縁ドメインをはるかに多く含むことになる。
【実施例】
【0088】
以下の実施例では、本発明を限定することなく説明する。
【0089】
(原材料)
バイポーラプレートを製造するために使用される材料は、以下の通りである:
PVDF1:Arkema社によりKynar(登録商標)の商品名で商品化されたフッ化ビニリデンのホモポリマーであり、剪断速度100(s-1)及び230℃で毛管レオメトリーによって測定した粘度が300(Pa・s)であり、荷重2.16kg及び230℃で測定したメルトフローレートが30(g/10min)であることに特徴を有する;
PVDF2:Arkema社によりKynar(登録商標)の商品名で商品化されたフッ化ビニリデンのホモポリマーであり、剪断速度100(s-1)及び230℃で毛管レオメトリーによって測定した粘度が1900(Pa・s)であり、荷重3.8kg及び230℃で測定したメルトフローレートが15(g/10min)であることに特徴を有する;
第1の導電性フィラー:IMERY社により商品化され、ASTM D3037に準拠して窒素下で測定されたBET表面積が70m2/gである導電性カーボンブラック;
第2の導電性フィラー:IMERY社により商品化され、炭素含有率99%以上の純度を有する合成グラファイト。
【0090】
(導電性PVDF1の調製)
PVDF1に、導電性カーボンブラックを10重量%(PVDFとカーボンブラックの混合物の重量に基づく)配合したものを、BUSS社のニーダーを用いて溶融状態で混合した。
混合後、Mikropul D2Hハンマーミルでペレットを低温粉砕した。平均粒子径は、Dv50が150μmである特徴があった。
【0091】
(導電性PVDF2の抵抗測定)
非導電性PVDF1(即ち、導電性フィラーを含まないPVDF1)及び導電性PVDF1(即ち、上記のように10重量%の導電性カーボンを溶融混合したPVDF1)のストランドを、直径10mm、長さ30mmのダイを備えた毛管レオメトリー2000Goettfertを用いて、10(s-1)の剪断速度及び230℃で製造した。
【0092】
このようにして得られたストランドの抵抗を、SefelecのオームメータM1500Pを使用して、両者の電極間に10mmのギャップで10Vの電圧を印加することによって測定した。
【0093】
【0094】
(混合物の調製)
導電性PVDFの粉末を、80重量%のグラファイト(導電性PVDFとグラファイトの混合物の重量に基づく)と混合した。このプレ混合物を二軸押出機で混合した。押し出されたペレットをディスクミルで粉体に粉砕した。粒子径は500μmよりも小さかった。
【0095】
(バイポーラプレートの調製)
この粉末を130000mm2の大きさのステンレス鋼製金型のキャビティ内に充填し、ドクターブレードで平坦化した。金型を閉じ、少なくとも280℃まで加熱し、多くとも500tで圧縮しながら、金型を少なくとも80℃の脱型温度まで冷却した。金型を開き、原プレートを脱型した。
【0096】
導電性PVDF1の代わりにPVDF2をグラファイトと混合した(即ち、PVDF2を、導電性フィラーと予め溶融混合することなく、80重量%のグラファイトと直接混合した)ことを除き、比較例のバイポーラプレートを同様にして製造した。
【0097】
本発明によるバイポーラプレート及び比較例のバイポーラプレートについて、面内抵抗率及び面貫通抵抗率、曲げ強度及び圧縮強度、及び曲げ弾性率を評価した。
【0098】
(特性評価方法)
面内抵抗率は、ASP4点プローブを搭載したLoresta GP T600を用いて測定した。試料は4mmの一定の厚みになるように粉砕した。
【0099】
面貫通抵抗率は、直径13mm、厚さ2mmに粉砕した試料に2つの電極を設置し、1(N/mm2)の接触圧力で測定した。
【0100】
曲げ強度は、DIN EN ISO 178に準拠して測定した。
【0101】
圧縮強度は、ISO 604に準拠して測定した。
【0102】
曲げ弾性率は、DIN EN ISO 178に準拠して測定した。
【0103】
【0104】
本発明によるバイポーラプレートは、良好な曲げ強度及び圧縮強度を維持しながら、より低い面内抵抗率(即ち、より高い面内導電率)及びより低い面貫通抵抗率(即ち、より高い面貫通導電率)を示した。