(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】イミテーションレザーとして用いる層複合体、層複合体の製造方法、及び層複合体の使用方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20240906BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
D06N3/00
B32B9/02
(21)【出願番号】P 2021546471
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2019078455
(87)【国際公開番号】W WO2020079269
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】102018008307.2
(32)【優先日】2018-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521160823
【氏名又は名称】ヌヴィ リリーフ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NUVI RELEAF GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】リュスラー、ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】リュスラー、アンドレアス
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-173517(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210849(JP,U)
【文献】特開2012-025141(JP,A)
【文献】特表2009-525896(JP,A)
【文献】登録実用新案第3077608(JP,U)
【文献】特開平03-162944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00-7/06
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミテーションレザーとして使用する層複合体であって、
a)布地材料を含有するキャリア層と、
b)装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料、若しくはタンパク質材料、又はこれら材料の混合物を含有するカバー層と
を有し、前記装飾層
が前記キャリア層と前記カバー層との間に配置される層複合体において、
前記装飾層が、植物葉材料を含有する、又は、植物葉材料からなり、前記植物葉材料が発酵処理および/または化学処理された植物の葉、または、細かくされたその植物の葉の一部からなることを特徴とする層複合体。
【請求項2】
前記キャリア層が、
前記布地材料として不織布
、又は、織布を含有することを特徴とする、請求項1に記載の層複合体。
【請求項3】
前記装飾層の前記植物葉材料が、細かく粉砕したタバコ及び/又はタバコ粉末及び/又はタバコの切断片であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の層複合体。
【請求項4】
前記カバー層が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアミド(PA)、ポリエステル
、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレア、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアセタール、ポリスチレン(PS)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、多糖類
、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレア、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(イミド)、ビスマレイミドトリアジン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、上記のポリマーの共重合体及び/又は混合物からなる群から選択されたプラスチック材料を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の層複合体。
【請求項5】
キャリア層とカバー層との間に配置された、1層以上の追加の装飾層を有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載の層複合体。
【請求項6】
1層以上の接着層を有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれかに記載の層複合体。
【請求項7】
A)発酵処理および/または化学処理された植物の葉、または、細かくされたその植物の葉の一部からなる植物葉材料を、キャリア層又はカバー層に対して張り付けることにより、装飾層を形成するステップと、
B)ステップA)においてキャリア層に前記装飾層が張り付けられた場合、プラスチック材料、ワックス材料、又はタンパク質材料、又はこれらの材料の混合物で作られたカバー層を前記装飾層に張り付け、ステップA)においてカバー層に前記装飾層が張り付けられた場合、キャリア層を張り付けるステップと、
を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の層複合体の製造方法。
【請求項8】
C)前記植物葉材料を前記キャリア層又は前記カバー層に張り付ける前に前記植物葉材料を水性の溶剤又は分散剤に分散させる方法ステップと、
D)
前記植物葉材料を分散させた前記水性の溶剤または分散剤を前記キャリア層又は前記カバー層に付けた後
、前記水性の溶剤又は分散剤を除去することにより、装飾層を形成する方法ステップと、を更に有し、
追加で:
E)前記層複合体の少なくとも2層同士をニードルパンチ及び/又は接着する方法ステップを
を更に有することを特徴とする、請求項
7に記載の層複合体の製造方法。
【請求項9】
布地の前記キャリア層に前記植物葉材料を張り付ける前に、前記植物葉材料及び/又は前記キャリア層に接着剤を張り付けることを特徴とする、請求項
7または8に記載の層複合体の製造方法。
【請求項10】
前記
層複合体の複数の層を共に押圧し、前記押圧が、トランスファープレスにより、及び/又は、温度を高くして行われることを特徴とする、請求項
7~9のいずれかに記載の層複合体の製造方法。
【請求項11】
前記水性の溶剤又は分散剤が、多糖類のバインダを含有することを特徴とする、請求項
7~10のいずれかに記載の層複合体の製造方法。
【請求項12】
前記水性の溶剤又は分散剤が、アルコールを含有することを特徴とする、請求項
7~11のいずれかに記載の層複合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~
6のいずれかに記載の層複合体を、衣類及びファッションアクセサリとして使用することを特徴とする層複合体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミテーションレザーとして用いる層複合体、層複合体の製造方法、及び層複合体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮革産業は、環境汚染の可能性が高い分野の一つである。なめしで使用される化学薬品、特に抗生物質、なめし剤、殺生物剤、及びホルムアルデヒドなどの揮発性有機化学薬品は、適切に使用されないと、環境に対して長期的な被害を及ぼす可能性がある。しかし、化学薬品をそれ相応に適切に使用するには、多くの費用と時間が必要となる。加えて、使用された物質が材料内に残留し、後の使用の際にのみ現れることがある。これは、末端消費者の健康上のリスクに関わってくる。更に、動物の皮を使用することに関する倫理的な問題もある。
【0003】
したがって、長い間、皮革を合成的に製造された材料に置き換える努力がなされてきている。これらの代用品は一般的に人工皮革と呼ばれる。これは、一般に、布地ベースのキャリアと、これに張り付けられた、例えばポリ塩化ビニル(PVC)やポリウレタン(PU)などのプラスチック層との複合体である。
【0004】
特許文献1には、紙製造方法によって製造された人工皮革が記載され、この人工皮革は、実質的に、ステープルファイバ、好ましくは合成繊維又は皮革繊維を比較的少量添加した非繊維性エラストマーのポリウレタンからなる。
【0005】
特許文献2は、略布状のキャリア層と、これに張り付けられた、より薄いバリア層と、バリア層上に設けられたカバー層とを有する皮革代用材料に関する。
【0006】
特許文献3は、布地のキャリア構造をもち、少なくとも1つのPU又はPVC製の層をもつ半透明の人工皮革に関する。この層複合体は、更に、表面にラッカー塗装が施されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許発明第1635546号明細書
【文献】独国特許出願公開第19937808号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015101331号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの方法で得られた人工皮革には、動物の皮革に勝る利点がいくつかある。PVC人工皮革は、価格と堅牢性の点で好都合であり、PU人工皮革は、繰り返し洗えるといった有利な材料特性を有する。人工皮革は連続した材料として得られるので、動物皮革と比べて所定の大きさへの切断が格段に容易でもある。また、労力を要するなめし工程が不要なため、製造工程が大幅に短くなる。さらに、人工皮革の製造者は、特定の動物皮革の市場入手性に縛られない。
【0009】
しかしながら、これまでに知られている人工皮革材料は、石油などの有限の化石資源から製造される生分解できない合成プラスチックにほぼ基づくものである。また、このような人工皮革材料は、一般に、溶剤や分散剤の残留物や可塑剤が残留しているため、健康に対する悪影響が全くないというわけではない。さらに、人工皮革では、動物皮革と同様の視覚的及び触覚的特性を達成できないことが多い。
【0010】
そこで、この背景に対して、本発明の目的は、合成皮革に匹敵する又はそれよりも優れた視覚的及び触覚的特性を有し、天然皮革及び/又は合成皮革よりも環境に優しい持続可能な方法で製造でき、少なくとも部分的に生分解可能な人口皮革で、イミテーションレザーとして用いる層複合体、層複合体を製造する方法、及び、層複合体の使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、
a)布地材料を含有するキャリア層と、
b)装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物を含有するカバー層と
を有し、装飾層が、布地のキャリア層とカバー層との間に配置され、装飾層が植物葉材料、好ましくはタバコを含有する、又は、植物葉材料、好ましくはタバコからなるイミテーションレザーとして用いる層複合体によって、本発明に従い達成される。
【0012】
本発明において「植物葉材料」とは、そのままの又は切り刻んだ状態の、未処理の葉又は処理済みの葉、特に、粉末状の葉のことである。「処理済みの葉」とは、発酵、特にアルコールを用いる化学的処理、又は乾燥によって保存された植物の葉又は細かくされたその植物の葉の一部分のことである。好適な実施形態では、植物葉材料は発酵されたものであり、すなわち、植物葉材料は、発酵過程を経て、乾燥葉を保存・使用可能な状態にしたものである。
【0013】
これに代えて又はこれに加えて、植物葉材料は、化学的処理を施すことができ、これは、水と、グリセロールなどの多価アルコールとの混合物を用いて行われるのが好ましい。その結果、植物葉材料は、弾性変形性を得ると共に、極限破壊強度、特に引張強度及び曲げ引張強度が高まる。また、植物葉材料は、さらに、層複合体において成熟過程も経ることができることが判明しており、これにより材料の変形性及び極限破壊強度が向上する。成熟過程は、少なくとも1週間、好ましくは2週間、より好ましくは1ヶ月、そして最も好ましくは2ヶ月の期間を有する。カバー層がワックス材料を含有する又はワックス材料からなる場合に特に、成熟過程によって特性が向上する。
【0014】
植物葉材料を含有する装飾層は、実質的に、層複合体における視覚的及び触覚的機能を担う。しかしながら、植物葉材料及びこれに張り付けられたカバー層によっては、装飾層は、層複合体に対して、触り心地の良さや魅力的な外観だけでなく、良い香りも与える。この効果は、複合体の個々の層同士を接着及び/又は押圧せずに、個々の層に対して部分的又は全体的にニードルパンチを施すことにより、特に強化することができる。その結果、層複合体の透過性が高まる。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、装飾層は、実質的に木材繊維を含まない。これは、本発明の枠組みの中において、木材繊維、すなわち例えば木の削りくず、大鋸屑、丸太や枝で作られた材料の割合が、5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0.1%未満であることを意味する。
【0016】
植物葉材料は、バラの葉、ブドウの葉、セイヨウバクチノキの葉、及びタバコからなる群から選択されるのが特に好ましい。植物葉材料は、タバコであるのが特に好ましい。好適な実施形態において、植物葉材料は、再構成タバコであってもよい。
【0017】
タバコには、その他の植物葉材料に勝る利点がいくつかある。タバコは、出発原料として、入手可能性が一年を通して非常に良好である。タバコの需要低下により、一般に、過剰生産となっているため、手頃な価格で購入可能である。さらに、タバコは、天然アルカロイド、特にニコチンを高い割合で含んでおり、これは、防虫剤として働く。結果として、ダニやその他の害虫を層複合体から遠ざけることができ、特に耐久性のあるイミテーションレザーを得ることができる。また、水と多価アルコールとの混合物による処理の後では特に、タバコ葉は、特に高い柔軟性及び引裂強度を有する。視覚的特性に加えて、その自然な匂いもまた、タバコをイミテーションレザーの装飾層に使用することを後押しするものとなる。これらの有利な特性は、発酵させたタバコの場合に特に顕著である。
【0018】
また、タバコは、水分調整特性も有するため、イミテーションレザーとして使用した場合、層複合体の装着快適度が高くなる。この効果は、層複合体が部分的又は全体的にニードルパンチされていて、材料の透過性が高くなっている場合に、特に顕著である。
【0019】
好適な実施形態において、植物葉材料は、合成染料又は好ましくは天然染料で染色されている。これによって、様々な動物皮革の種類の視覚的特性を模倣することができる。本発明の特に好適な実施形態において、染料は、部分的又は全体的に食品に用いても安全であり、そして/あるいは、生物学的栄養素として生物学的循環に戻すことができる物質、又は、技術的栄養素として技術的循環(完全循環型認定)に連続的にあり続けることができる物質からなる。
【0020】
キャリア層は、複合体の構造的強度をもたらし、特に層複合体の縫合時に良好な加工性を確保する。
【0021】
好適な実施形態において、布地のキャリア層は、不織布、織布、編んだ布、ネット、又はこれらの混合物からなる群から選択される材料を含有する又は材料からなる。
【0022】
不織布、織布、編んだ布、ネット、又はこれらの混合物は、繊維で構成される布地生地であるが、繊維の配置がそれぞれ異なる。
【0023】
本発明において不織布とは、繊維層を形成するように任意の形態で組み合わされて任意の形態で結合された、任意の種類及び任意の原料の、限られた長さの繊維、連続した繊維(フィラメント)、又は切断された糸で作られた生地を意味する。これは、製織、経編、編物、レース編み、組紐、タフティング商品の製造中などに生じる糸の編み込みや絡み合わせは含まない。この定義は、規格DIN EN ISO 9092に対応する。本発明における不織布という用語には、フェルト生地も含む。しかしながら、フィルムや紙は不織布に含まれない。
【0024】
不織布は、異方向性の不織布、すなわち繊維配向をもつものであることが好ましい。その結果、層複合体に異方性の機械的挙動が生じ、これにより引裂強度が高まる。
【0025】
本発明において織布とは、織布の表面上に見た場合にパターンに従ってちょうど又はおおよそ90°の角度で交差する経(経糸)と緯(緯糸)の2つの糸系からなる布地を意味する。これらの2つのシステムはそれぞれ、いくつかの種類の経糸又は緯糸(例えば地経糸、パイル経糸、及びフィリング(filling)経糸;地緯糸、母緯、及びフィリング緯糸)によって構成することができる。経糸は、織布の耳と平行に縦方向に延在し、緯糸は、布の端と平行に横方向に延在する。これらの糸は、主に摩擦ロックによって織布を形成するように結合される。織布を十分に滑らなくするために、経糸と緯糸とは、通常、比較的きつく織られていなくてはならない。このため、いくつかの例外を除き、織布は、密な外観も有する。この定義は、規格DIN 61100の第1部に対応する。
【0026】
本発明における織布及び不織布という用語は、タフティングされた布地材料も含む。タフティングとは、圧縮空気及び/又は電気によって駆動される機械を使って織布や不織布に糸を固定する処理である。
【0027】
本発明において、編んだ布とは、ステッチを形成することにより糸系から製造される布地生地を意味する。これは、かぎ針編みの生地及び棒針編みの生地の両方を含む。
【0028】
本発明の意義の範囲において、組紐とは、通常の、柔軟な材料の撚り糸を数本撚り合わせることを意味する。製織との違いは、組紐では、糸が、製品の主方向に対して直角に供給されないことである。
【0029】
不織布、織布、編んだ布、ネット、又はこれらの混合物の繊維は、天然繊維、人工繊維、又はこれらの混合物であり得る。
【0030】
この繊維は、植物由来又は動物由来の繊維、又は、天然ポリマーや天然原料に基づくポリマーで作られた人工繊維であることが好ましい。層複合体の天然成分の割合がこれにより高まり、これに対応して層複合体の持続可能性及び生分解性能が向上する。
【0031】
天然繊維は、種子繊維、靱皮繊維、葉繊維、及び動物繊維からなる群から選択されるのが好ましい。これらは、綿、動物の羊毛、動物の毛、絹糸、カポック、エイコン(akon)、ヤマモモ、竹繊維、セイヨウイラクサ、アサ、イタチジソ、ジュート、ボンテンカ、亜麻、カラムシ、ケナフ、ローゼル、サンヘンプ、イチビ、パング(pung)、トウゴマ、サイザルアサ、マニラアサ、クラワ、ファイブ(Fibe)、イストレ繊維、アレンガ、アフリック(Afrik)、エネケン、フィケ、ユリ科マオラン属の植物、アフリカハネガヤ、リュウゼツラン、ユッカ、ピタ、コイア、エニシダ、ホップ、ホタルイ属の植物、及び靱皮からなる群から選択されるのが特に好ましい。
【0032】
人工繊維は、天然ポリマーや天然原料に基づくポリマーから選択されるのが好ましい。これらは、ビスコース、モダル、リヨセル、キュプラ、セルロースアセテート、カゼイン繊維などのタンパク繊維、ポリラクチド、アルギン酸、キチン、バイオベースポリアミド、ポリエステル、及びポリイソプレンからなる群から選択されるのが特に好ましい。
【0033】
更なる実施形態において、人工繊維は、PETやPBTなどのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリ(メタ)アクリレート、モダクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリクロライド、PVC、エラステイン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ビニラール、ポリフェニルスルファイド、メラミン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリベンゾイミダゾール、及びポリベンゾオキサゾールからなる群から選択される合成ポリマーで作られる。
【0034】
好適な実施形態において、布地のキャリア層の厚さは、0.1~10mm、より好ましくは0.1~5mm、特に好ましくは0.1~2mm、最も好ましくは0.2~1mmである。
【0035】
好適な実施形態において、キャリア層の単位面積当たりの質量(坪量)は、50~200g/m2、より好ましくは65~130g/m2、特に好ましくは80~120g/m2、最も好ましくは90~110m2である。単位面積当たりの質量が低いと、特に軽量の層複合体を製造することができる。
【0036】
好適な実施形態において、装飾層の植物葉材料は、細かく粉砕したタバコ及び/又はタバコ粉末及び/又はタバコの切断片であり、この植物葉材料は、多糖類によって装飾層内に拘束されているのが好ましい。本発明の好適な実施形態において、装飾層を形成する前に、グリセロールなどの多価アルコールを含有する又は多価アルコールからなる溶剤や分散剤中に、多糖類を溶解又は懸濁させる。
【0037】
別の好適な実施形態において、植物の葉、及び/又は切断片、及び/又は円錐花序が、装飾層の植物葉材料である。このような装飾層は、層複合体に対して、特に自然で上質の外観を与えるため、仕上げ層とも呼ばれる。ワニ革やヘビ革などの動物皮革の場合のように、このような装飾層は、層複合体に対して、独特かつ一貫して構造の異なる鮮やかな外観を与える。複合体の視覚的及び触覚的特性を特に良好なものとするために、本発明の好適な実施形態において、葉は、重なるように配置される。これにより、装飾層に、異なる厚さの部分ができる。この層複合体の「凹凸」により、特に自然なイミテーションレザーであるという印象をユーザに与える。
【0038】
更に好適な実施形態において、装飾層の植物葉材料は、再構成タバコである。本発明において再構成タバコとは、プレスされたタバコのくず、タバコ粉末、粉砕したタバコの葉及び/又は茎を、通常はセルロース及び多糖類の派生物質であるバインダと合わせて、或いは、硬化剤でコーティングした繊維状セルロースで作られたキャリア材料に付着させて、ほぼ均一な厚さ及び質の、平坦で連続したバンドを形成するように加工されたフィルムを意味する。水と、多価アルコール、特にグリセロールとの混合物で再構成タバコを処理することが特に有利であることが分かっている。
【0039】
再構成タバコは、購入価格が低く、特に入手可能性が高い点で有利である。さらに、再構成タバコを用いることにより特に均質な装飾層を製造することができる。これは、例えば特に均一な色合いが望まれている場合といった、層複合体のいくつかの用途において有利となり得る。
【0040】
好適な実施形態において、装飾層の厚さは、0.1~10mm、より好ましくは0.1~5mm、特に好ましくは0.1~2mm、最も好ましくは0.2~1mmである。
【0041】
好適な実施形態において、装飾層の単位面積当たりの質量(坪量)は、40~150g/m2、より好ましくは65~120g/m2、特に好ましくは70~100g/m2、最も好ましくは80~100m2である。単位面積当たりの質量が低いと、特に軽量の層複合体を製造することができる。
【0042】
層複合体のカバー層は、プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物を含有する又はこれらの材料、混合物からなる。その下に配置される装飾層を、水分、摩耗、及び/又は放射物などの外的影響から保護するのがカバー層の実質的な役割である。
【0043】
強度、耐水性、及び耐摩耗性の基準が高い場合には、プラスチック材料が好ましい。本発明によると、これは、天然由来又は合成由来の高分子からなる全ての生地を含む。
【0044】
好適な実施形態において、このプラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、特にポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレア、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアセタール、ポリスチレン(PS)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、多糖類、特にペクチンや寒天、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン酸塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレア、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(イミド)、ビスマレイミドトリアジン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、上記ポリマーの共重合体及び/又は混合物からなる群から選択される材料を含有する又は材料からなる。PE、PET、PU、及びPAが特に好ましい。
【0045】
プラスチックは、フィルムの形態で用いられるのが好ましい。本発明において、これは、層の厚さが5mm未満、好ましくは1mm未満のウェブ状に製造された平坦なプラスチック材料を意味する。
【0046】
感触、匂い、見た目の基準が高い場合には、タンパク質材料又はワックスで作られた装飾層が好ましい。
【0047】
本発明においてワックスとは、20℃で混練可能であり、固体乃至硬く脆い状態にあり、粗から微細にわたる結晶構造を有し、ガラス質ではなく半透明から不透明の色合いで、40℃超で分解することなく融解し、融点を少し上回るとやや液状になる、すなわち、若干の粘性をもち、粘度及び溶解度に関して温度依存性が高く、軽い圧力で研磨可能な天然の又は人工的に作られた物質を意味する。これは、Rompp Chemie Lexikon、第10版、1999 Georg Thieme Verlagによる定義に対応する。
【0048】
ワックスの場合、天然ワックスと、化学的に改質されたワックスと、合成ワックスとに区分することができる。本発明の好適な実施形態において、ワックス材料は、天然ワックス群から、特に好ましくは、植物ろう、特にカンデリラろう、カルナウバろう、木ろう、アフリカハネガヤろう、コルクろう、グアルマ(guaruma)ろう、米糠ろう、サトウキビろう、オーリクリーろう、モンタンろうの群から選択される。
【0049】
別の好適な実施形態において、天然ワックスは、動物ろう及び鉱ろうからなる群から、特に蜜ろう、セラックろう、鯨ろう、ラノリン(羊毛脂)、尾腺からの脂、セレシン、オゾケライト(地ろう)からなる群から選択される。
【0050】
天然のワックスは、石油ベースでないため、層複合体の持続可能性及び生分解性能に貢献するという利点をもたらす。
【0051】
別の実施形態において、ワックスは、化学的に改質されたワックス又は合成ワックスからなる群から、特に、モンタンエステルワックス、サゾールワックス、パラフィン、水素化ホホバワックス、ポリアルキレンワックス、ポリエチレングリコールワックスから選択される群から選択される。
【0052】
更なる好適な実施形態において、層複合体のカバー層は、タンパク質材料を含有する又はタンパク質材料からなる。これらのタンパク質は、植物由来であることが好ましい。ここでは、ルピナス、ダイズ、エンドウ、亜麻仁、小麦、トウモロコシ、及び/又は菜種に含まれるタンパク質が特に好ましい。
【0053】
更なる実施形態では、タンパク質は動物由来のものであり、ゼラチン、カゼイン、ホエイプロテイン、及び/又はこれらの派生物質が特に好ましい。
【0054】
タンパク質のカバー層の利点は、タンパク質の層を製造するコストが非常に低い点と、健康に対して無害であるという点である。また、この層は、有機溶剤を使用せずに、すなわち水性溶剤で処理することができる。また、更に強調すべきは、タンパク質のカバー層は、生分解可能で、かつ、自己粘着性又は粘着性を有する、再生可能な原料からなるということである。
【0055】
好適な実施形態において、カバー層の厚さは、5μm~1mm、より好ましくは10μm~0.5mm、特に好ましくは20μm~0.1mm、最も好ましくは50μm~0.1mmである。
【0056】
カバー層は、染料、紫外線フィルタ、バインダ、フィラーなどの添加物を更に含有してもよい。添加物及びフィラーの添加により、カバー層の特性、特に色、強度、製造コストを変化させることができる。
【0057】
添加物は、炭酸カルシウム、カルシウムや硫酸バリウム、二酸化チタンなどの化学的及び物理的紫外線フィルタ、水酸化アルミニウム、タルク、粘土、マイカ、カオリンや珪灰石などのシリケート、ガラス繊維、染料、シリカ、ガラス繊維及びガラスビーズ、並びにセルロース粉末、カーボンブラック、及びグラファイトからなる群から選択するのが好ましい。
【0058】
好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)植物葉材料からなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物からなるカバー層と
を有し、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0059】
更なる好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるカバー層と、
b)植物葉材料からなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物からなるカバー層と
を有する。
【0060】
更なる好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)植物葉材料を含有する装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物を含有するカバー層と
を有し、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0061】
別の好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)植物葉材料からなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物からなるカバー層と
からなり、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0062】
別の好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)タバコからなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物からなるカバー層と
を有し、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0063】
更なる好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)タバコからなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物を含有するカバー層と
を有する。
【0064】
更なる好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)タバコを含有する装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物を含有するカバー層と
を有し、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0065】
別の好適な実施形態において、層複合体は、
a)布地材料からなるキャリア層と、
b)タバコからなる装飾層と、
c)プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物からなるカバー層と
からなり、装飾層は、布地のキャリア層とカバー層との間に配置される。
【0066】
特に好適な実施形態において、層複合体は、亜麻不織布又は織布で作られたキャリア層と、植物材料のタバコで作られた装飾層と、プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、好ましくはポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、又は上記プラスチックの混合物で作られたカバー層とからなる。
【0067】
層複合体は、更に層を有してもよい。これらは、キャリア層、装飾層、接着層、及びカバー層からなる群から選択されるのが好ましい。層複合体は、キャリア層とカバー層との間に配置された1層以上の追加の装飾層を有するのが特に好ましい。好適な実施形態において、この追加の層は、キャリア層の両側に配置される。これに関連して、これらの層が、例えば第1のカバー層、第1の装飾層、キャリア層、第2の装飾層、及び第2のカバー層という層の順序でキャリア層に対して対称に配置されるのが特に好ましい。
【0068】
本発明の好適な実施形態において、層複合体は、更なる層として接着層のみを有する。別の好適な実施形態において、層複合体は、キャリア層、装飾層、及びカバー層以外には更なる層を有さない。
【0069】
好適な実施形態において、これらの追加の層のそれぞれの厚さは、0.1~10mm、より好ましくは0.5~8mm、特に好ましくは1~5mm、最も好ましくは2~4mmである。
【0070】
好適な実施形態において、追加の層の単位面積当たりの質量(坪量)は、50~200g/m2、より好ましくは65~130g/m2、特に好ましくは80~120g/m2、最も好ましくは90~110m2である。単位面積当たりの質量が低いと、特に軽量の層複合体を製造することができる。
【0071】
好適な実施形態において、層複合体は、1層以上の接着層を有してもよい。接着層の接着剤は、化学的硬化性であっても、物理的硬化性であっても、その両方であってもよい。
【0072】
接着層の接着剤は、シアノアクリレート、メチルメタクリレート、不飽和ポリエステル、分散接着剤、溶剤又は分散剤を含有するウェット接着剤、タンパク質ベースの接着剤、ホットメルト接着剤、プラスチゾル、エポキシ接着剤、ポリウレタン接着剤、シリコーン、樹脂、特にフェノール樹脂、ポリイミド、ポリスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニル、ゴム、及びビスマレイミドからなる群から選択されるのが好ましい。
【0073】
極めて環境に優しく材料を製造するには、タンパク質接着剤が特に好ましい。
【0074】
接着剤の硬化は、化学的硬化又は冷却による凝固によって生じさせるのが好ましい。結果として、使用する溶剤又は分散剤を少量にすることができる、或いは、溶剤又は分散剤を完全に不要にすることもできる。これは、特に持続可能であるだけでなく、一般に、処理時間及び層複合体における結合も、より良好となる。
【0075】
更なる有利な実施形態において、カバー層及び/又はキャリア層の1つ、いくつか、又は全ての強度、特に引張強度及び/又は曲げ引張強度は、少なくとも1層である装飾層の強度よりも高い。
【0076】
引張強度とは、そして引裂強度も同様、物体が耐え得る最大引張応力のことである。これは、引張試験によって測定することができる。
【0077】
曲げ引張強度は、屈曲による荷重を受けた際に物体が吸収できる最大引張応力のことを指す。これは、3点又は4点曲げ試験によって測定することができる。
【0078】
有利な実施形態において、カバー層及び/又はキャリア層の1つ、いくつか、又は全ての強度、特に引張強度及び/又は曲げ引張強度が、少なくとも1層である装飾層の強度よりも高いと、キャリア層及び/又はカバー層は、機械的荷重が加わった場合に生じる応力を吸収でき、この結果、少なくとも1つの装飾層が破損しない、又は、高荷重下でのみ破損し、外観を決定する層に不都合なひびが形成される。
【0079】
装飾層の弾性、そしてつまりその強度は、植物材料を発酵処理及び/又は化学的処理することにより高めることができる。発酵した葉を、水と、多価アルコール、特にグリセロールとの混合物で処理することが特に有利であることが分かっている。
【0080】
タバコ葉は、もともと水分調整特性に優れ、破損しにくいため、特に適している。
【0081】
本発明は、
A)キャリア層又はカバー層に植物葉材料を張り付けることにより、キャリア層又はカバー層の平面の好ましくは90%以上を覆う装飾層を形成するステップと、
B)ステップA)においてキャリア層に装飾層が張り付けられた場合、プラスチック材料、ワックス材料若しくはタンパク質材料、又はこれらの混合物で作られたカバー層を装飾層に張り付け、ステップA)においてカバー層に装飾層が張り付けられた場合、キャリア層を張り付けるステップと
を含む層複合体の製造方法も含む。
【0082】
本発明において、張り付けることは、層間に強固な接続を形成することを意味する。これは、例えば、接着、層の硬化、ニードルパンチ、又は3Dプリントで達成される。
【0083】
本発明の好適な実施形態では、製造方法において転写フィルムが用いられる。
【0084】
本発明の好適な実施形態において、ステップA)で植物葉材料がキャリア層に張り付けられ、ステップB)でカバー層が装飾層に張り付けられる。
【0085】
本発明の別の好適な実施形態において、ステップA)で植物葉材料がカバー層に張り付けられ、ステップB)でキャリア層が装飾層に張り付けられる。
【0086】
好適な実施形態において、例えばプラスチック膜などの硬化済みの層を装飾層に張り付けてもよい。これは、例えば、接着剤を装飾層及び/又はプラスチック膜に塗布して、プラスチック膜を装飾層の上に載せて、好ましくは層同士を加圧下で押圧することにより行うことができる。これに代えて及び/又はこれに加えて、カバー層を装飾層と共にニードルパンチしてもよい。
【0087】
この方法の特に好適な実施形態において、紙製品用のラミネート装置によってポリエチレン層が装飾層に接着される。
【0088】
本発明の別の実施形態において、カバー層を形成する未硬化の組成物を装飾層に付着させてもよい。例えば、装飾層上で硬化する1種以上のワックスを装飾層に付着させてもよい。
【0089】
組成物の硬化及びカバー層の形成は、温度、圧力、及び/又は放射を高めた影響下で行われてもよい。
【0090】
本発明の別の実施形態において、これらの層は、更にニードルパンチされる。層をニードルパンチすることには、例えば水蒸気などの気体の透過性が大幅に高まるといった利点がある。
【0091】
キャリア層が一般に連続ウェブとして供給されると、連続したプロセスで層複合体の製造を行うことができ、これには、動物皮革での製造における非連続的な方法を大幅に勝る利点がある。
【0092】
繊維分野において通常用いられるスクリーン印刷用のカバー層も、試験に成功した。これに関連して、捺染用の水性混合系から生成したカバー層が特に好ましい。水性混合系は、好ましくは80%以上の透明度を有する、及び/又は、顔料、接着促進剤、又はフィラーなどの更なる構成要素を含有する、水性のバインダ、特に合成樹脂分散バインダを有する。有機の溶剤や分散剤、フタル酸塩、ホルムアルデヒド、アルキルフェノール、及びアルキルフェノールエトキシレートを含まない水性混合系が特に好ましい。水性混合系は、ラベル表示が必要な成分を含まず、毒性がなく、皮膚に優しいことが好ましい。
【0093】
水性混合系は、装飾層に付着させた後、熱供給によって乾燥させ、150~160℃の温度で熱硬化させるのが好ましい。この硬化は、トランスファープレス、乾燥トンネル、ヒートガン、アイロン、プレスアイロン、又はオーブンを用いて行うことができる。上記の温度における硬化時間は、2~3分である。
【0094】
特に好ましい実施形態において、製造方法は、下記のように実施される。まず、キャリア層をローラによって搬送する。接着剤を、第1の領域に付着させる。続く領域で、接着剤でコーティングした植物葉を置く。これに続く領域で、植物葉を、加熱した光沢機や加圧ローラによって押圧する。更なる領域で、カバー層を付着させる。カバー層がフィルム状のプラスチック材料である場合には、加熱した光沢機を用いて接着させることができる。
【0095】
本発明の好適な実施形態において、上記方法は、
C)前記植物の材料が好ましくはタバコであり、前記植物葉材料を前記キャリア層又は前記カバー層に張り付ける前に、水性の溶剤又は分散剤に分散させるステップと、
D)その分散相をキャリア層又はカバー層に付けた後、好ましくは温度を上げて、及び/又は、圧力を下げて、分散相から水性の溶剤又は分散剤を除去することにより装飾層を形成するステップと、を更に有し、
任意で:
E)層複合体の少なくとも2層同士をニードルパンチ及び/又は接着するステップと
を更に有してもよい。
【0096】
好適な実施形態において、ステップA)からステップE)は、A)、B)、C)、D)、E)の順番で実施される。
【0097】
上記方法の好適な実施形態において、布地のキャリア層に植物葉材料を張り付ける前に、接着剤を植物葉材料及び/又はキャリア層に塗布する。これにより、キャリア層と装飾層とが、特に強固に結合される。
【0098】
上記方法の好適な実施形態において、複合体の層同士を加圧下で押圧し、この押圧は、トランスファープレスにおいて、及び/又は温度を高くして行われる。
【0099】
上記方法の好適な実施形態において、水性の溶剤又は分散剤は、多糖類、特に寒天、ペクチン、キサンタンガム、天然樹脂及び合成樹脂、ゼラチン、アルギン酸、キトサン、セルロースエーテル、加工でんぷん、粘質物、又はこれらの混合物からなる群から選択されるバインダを含有する。
【0100】
製造方法の間において、バインダは、分散相の粘度を高める働きをする。その結果、より良好に分散相をキャリア層に張り付けることができる。製造方法の後、装飾層に残るバインダは、植物葉材料との結合をより良好なものとする。この効果は、溶剤又は分散剤が、水と、多価アルコール、特にグリセロールとの混合物である場合に特に顕著である。
【0101】
したがって、上記方法の好適な実施形態において、水性の溶剤又は分散剤は、アルコール、好ましくはグリセロール、グリコール、ポリエチレングリコール、又はポリエチレンオキシドなどの多価アルコールを含有する。
【0102】
本発明は、更に、本発明に係る層複合体の様々な使用を含む。
【0103】
層複合体は、安定的で、動物の皮革よりも軽量で、傷つきにくく、撥水性がある。よって、衣類やファッションアクセサリ用の素材として好適に用いることができる。本発明において、衣類とは、人工的な被覆物として人間の身体に多かれ少なかれ近接して装着される全ての素材を指すものである。これは、特に帽子といった頭に被るものや、靴も含む。本発明において、ファッションアクセサリとは、衣類のアクセサリを意味する。これらは、好ましくは、ベルト、手袋、扇子、パラソル又は傘、バッグ、スカーフ、宝飾品、特に時計のバンドである。
【0104】
また、層複合体は、裏地や室内装飾材料としても使用できる。
【0105】
好適な実施形態において、層複合体のカバー層の可視波長範囲における透過率は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、そして最も好ましくは90%以上である。これにより、タバコの光学的特性を特によく際立たせることができる。
【0106】
更なる好適な実施形態において、布地キャリア層及びカバー層の両方の可視波長範囲における透過率は、30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、そして最も好ましくは80%以上である。その結果、背面から特に良好に光を照らすことができ、そのため、例えばランプシェードとしてや自動車の内装においてなど、照明分野における様々な用途に使用可能な層複合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0107】
本発明によれば、合成皮革に匹敵する又はそれよりも優れた視覚的及び触覚的特性を有し、天然皮革及び/又は合成皮革よりも環境に優しい持続可能な方法で製造でき、少なくとも部分的に生分解可能な人工皮革を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】キャリア層、接着層、装飾層、第2の接着層、第2の装飾層、及びカバー層をもつ層複合体の概略断面図。
【
図2】キャリア層、接着層、装飾層、第2の接着層、及びカバー層をもつ層複合体の概略断面図。
【
図3】キャリア層、接着層、装飾層、及びカバー層をもつ層複合体の概略断面図。
【
図4】キャリア層、接着層、装飾層、第2の接着層、第2の装飾層、及びカバー層をもつ層複合体の概略断面図。
【
図5b】
一例の装飾層のタバコ葉の配置パターン。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明に係る層複合体の具体的な実施形態と、製造例と、添付の図とを参照して、本発明を更に説明する。
【0110】
以下の実施形態において、層複合体は、それぞれのセルに記載の材料の層を有する。各層は、それぞれのセルに記載した材料を含有する又は材料からなる。
【0111】
表1では異なるキャリア層をもつ実施形態を例示している。
【0112】
【0113】
表2では異なる装飾層をもつ実施形態を例示している。
【0114】
【0115】
表3では異なるカバー層を持つ実施形態を例示している。
【0116】
【0117】
表4-1、表4-2、表4-3では追加の層をもつ実施形態を例示している。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
表5では再構成タバコで作られた装飾層を更にもつ実施形態を例示している。
【0122】
【0123】
表6ではキャリア層の両側に更に層をもつ実施形態(非対称)を例示している。
【0124】
【0125】
表7ではキャリア層の両側に更に層をもつ実施形態(対象)を例示している。
【0126】
【0127】
50gのバラの葉を、50mlのグレセロール/水の溶液に分散させ、溶剤又は分散剤を傾瀉した後に坪量100g/m2の亜麻不織布の表面の一領域に付着させる。水性の溶剤又は分散剤を50℃で空気乾燥させて除去することにより、均一の装飾層を得る。60℃に加熱した液状の蜜ろうをこれに付着させて冷却させることにより、均一のカバー層を生成する。
【0128】
図1は、キャリア層、接着層、装飾層、第2の接着層、第2の装飾層、及びカバー層を有する本発明に係る層複合体の層構造を示す。キャリア層1は、接着剤2によって、再構成タバコ3で作られた装飾層に接合する。タバコで作られた第2の装飾層5は、接着剤4によって、装飾層3及びカバー層7に接合する。装飾層5の植物葉材料同士は、接着剤によって接合する。
【0129】
図2は、キャリア層、接着剤、装飾層、第2の接着層、及びカバー層を有する本発明に係る層複合体の層構造を示す。キャリア層1は、接着剤2によって装飾層5に接合する。タバコで作られた装飾層5は、接着剤4によって、装飾層3及びカバー層7に接合する。装飾層5の植物葉材料同士は、接着剤によって接合する。
【0130】
図3は、キャリア層、接着層、装飾層、及びカバー層を有する本発明に係る層複合体の層構造を示す。キャリア層1は、接着剤2によって、装飾層5に接合する。タバコで作られた装飾層5は、接着剤4によって装飾層3及びカバー層7に接合する。装飾層5の植物葉材料同士は、接着剤によって接合する。
【0131】
図4は、キャリア層、接着層、装飾層、第2の接着層、第2の装飾層、及びカバー層を有する本発明に係る層複合体の層構造を示す。キャリア層1は、接着剤2によって、再構成タバコ3で作られた装飾層に接合する。タバコで作られた第2の装飾層5は、接着剤4によって装飾層3及びカバー層7に接合する。装飾層5の植物葉材料同士は、接着剤によって接合する。
【0132】
図5a及び
図5bは、タバコ葉の可能な配置パターンの例を示す。配置パターンは、キャリア層の平面の一方が、90%以上、特に好ましくは全面にわたって葉材料で覆われるようにするものである。
【符号の説明】
【0133】
1 キャリア層
2 接着剤
3 再構成タバコ
4 接着物質層
5 タバコ
6 接着層
7 カバー層