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特許7550787タンジェンシャルフロー濾過により低分子量ヘパリンを得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】タンジェンシャルフロー濾過により低分子量ヘパリンを得る方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/10 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
C08B37/10
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021559706
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 ES2020070263
(87)【国際公開番号】W WO2020216981
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P201930373
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(31)【優先権主張番号】202010078241.3
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519346804
【氏名又は名称】ラボラトリオス ファーマシューティコス ロヴィ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】フランコ ロドリゲス,ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】グティエロ アドゥリズ,イボン
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103936889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105985454(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102731683(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103214597(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103342761(CN,A)
【文献】特開2001-187802(JP,A)
【文献】特表2008-543987(JP,A)
【文献】米国特許第05767269(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.0~5.0kDaの平均分子量分布を有する低分子量ヘパリン(LMWH)を得る方法であって、
a)0.6~10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大4%w/vのヘパリン濃度を有する粗解重合ヘパリン溶液を提供するステップ、
b)最大25%w/vのヘパリン濃度を達成するために、公称カットオフが1kDaの膜を用いた水相タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による少なくとも1つの濃縮ステップを行うステップ、を含み、
ステップ(b)では、最大10%w/vのヘパリン濃度を達成するためのTFFによる第1の濃縮ステップと、10%~25%w/vのヘパリン濃度を達成するためのTFFによる第2の濃縮ステップが実行される、方法。
【請求項2】
前記第2の濃縮ステップが、12%~22%w/vのヘパリン濃度まで実行される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記ヘパリン溶液を清澄化するステップが実行される、請項1-のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの深層濾過ステップが実行される、請求項1-のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記深層濾過ステップが、1つだけのTFF濃縮ステップが実行される場合に前記TFF濃縮ステップの前に、2つ以上の前記TFF濃縮ステップが実行される場合に第1のTFF濃縮ステップの前に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記深層濾過ステップが、1つだけの前記TFF濃縮ステップが実行される場合に前記TFF濃縮ステップに続いて実行され、2つ以上のTFF濃縮ステップが実行される場合に前記第1のTFF濃縮ステップの前に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
水による透析濾過の少なくとも1つのステップが実行される、請求項1-のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記透析濾過ステップが、1つだけの前記TFF濃縮ステップが実行される場合に前記TFF濃縮ステップの前に、2つ以上の前記TFF濃縮ステップが実行される場合に前記第1のTFF濃縮ステップの前に実行される、請求項に記載のヘパリンを得るための方法。
【請求項9】
による処理の少なくとも1つのステップを含む、請求項1-のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記H処理ステップは、1つだけの前記TFF濃縮ステップが実行される場合に前記TFF濃縮ステップに続いて実行され、2つ以上のTFF濃縮ステップが実行される場合に前記第1のTFF濃縮ステップの前に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記H処理ステップは、1つだけの前記TFF濃縮ステップが実行される場合に前記TFF濃縮ステップの前に、2つ以上のTFF濃縮ステップが実行される場合に前記第1のTFF濃縮ステップの前に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
得られた濃縮物を凍結乾燥させるステップが実行される、請求項1-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記粗解重合ヘパリンが分画沈殿によって得られない、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法全体がヘパリンの分画沈殿を除外する、請求項1-13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
得られたLMWHの分子量(Mw)が、
という範囲にある、請求項1-14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
粗解重合ヘパリンの分子量(Mw)が、
という範囲にある、請求項1-15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
得られたLMWHの分子量(Mw)が、
という範囲にある、請求項1-14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
粗解重合ヘパリンの分子量(Mw)が、
という範囲にある、請求項1-14または17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による濃縮では、0.7~1kDaの膜を用いる、請求項1-18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
0.9~1kDaの膜が用いられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1kDaの膜が用いられる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記低分子量ヘパリン(LMWH)がエノキサパリンナトリウムである、請求項1-21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンジェンシャルフロー濾過による少なくとも1つの濃縮ステップを含む、特定の分子量分布を有する低分子量ヘパリンを得るための方法に関する。タンジェンシャルフロー濾過濃縮のほかに、本方法は、透析濾過または過酸化水素処理などの他のステップを含み得る。したがって、本発明は、製薬技術の分野に含まれ得る。
【背景技術】
【0002】
ヘパリンは、グリコサミノグリカンファミリーの多糖類であり、ウロン酸(L-イズロン酸またはD-グルクロン酸)とD-グルコサミンが交互に結合することで形成される。L-イズロン酸は、2-O-硫酸化されてもよく、D-グルコサミンは、N-硫酸化および/または6-O-硫酸化されてもよく、さらに少ない程度でN-アセチル化または3-O-硫酸化されてもよい。ヘパリンは、好ましくは、ナトリウム塩として使用されるが、他のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩としても使用でき、主に抗血栓薬や抗凝固薬として使用される。
【0003】
ヘパリンは、その分子量に応じて未分画ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)および超低分子量ヘパリン(VLMWH)に分類され得る。LMWHとVLMWHは、元のUFH分子を解重合して得られる。
【0004】
いかなる場合で、UFHならびに公知の解重合方法(酵素法、亜硝酸法、β-脱重合法など)で得られた様々なLMWHやVLMWHについて、現在の精製プロセスは、それらのオリゴ糖鎖をアルコール(主にメタノールとエタノール)、少ない程度でアセトンなどの他の溶媒で選択的に沈殿させることによって実行される。目的製品に含まれる水溶液の量に対して、数倍の量のアルコールが使用され、さらに一般的に数回の精製が必要であることを考慮すると、産業的な観点から、この精製方法は、その管理、保管およびリサイクルに関して発生するアルコール廃棄物の量という点で問題となる。
【0005】
したがって、廃棄物管理の観点から、アルコールの使用を必要としない他の精製代替手段がより興味深い。目的製品を含む水溶液を、適切な孔径の膜に対いして透析することは、代替手段であるが、大量の水に対して透析するという欠点があり、また、最適化されたラボスケールプロセスを産業スケールにまで拡大することは困難である。
【0006】
先行技術に鑑み、本発明よりはるかに複雑であるにもかかわらず、あるいはアルコール系溶媒の存在を伴うにもかかわらず、エノキサパリンナトリウムを得る方法は、数多く存在する。
【0007】
したがって、特許文献CN103342761には、アルコール溶媒の存在下で分解製品および低分子量の不純物を除去し製品の分子量および分子量分布を制御するという目的で、それぞれ8kDaと2kDaの膜による2回の連続限外濾過を含むエノキサパリンナトリウムを製造する方法が開示されている。精製された製品を得ると、それを凍結乾燥してエノキサパリンナトリウムを得る。この場合、この特許のプロセスから得られたエノキサパリンナトリウムの構造に収容できる溶媒および水分を除去するために、凍結乾燥が行われる。
【0008】
また、特許文献CN102050888には、1kDaの膜濃縮ステップおよびその後の凍結乾燥を有するアルコール溶媒の存在下でのエノキサパリンナトリウムの最終精製プロセスが開示され、製品の分子量および分子量分布は、さらに制御される。前の特許と同様に、この特許のプロセスから得られたエノキサパリンナトリウムの構造に収容できる溶媒および水分を除去するために、凍結乾燥が行われる。
【0009】
多糖類の製造および/または精製のための他のプロセスは、Laboratorios Farmaceuticos ROVI,S.A.のES2161615A1、FlengsrudのUS2009105194A1、HirshのUS5767269、Solazyme,Inc.のWO2010/111710A1、Michon,GriffinらのUS2007/0154492A1(「粗ブタ腸管粘膜ペプチドグリカンヘパリンからのヘパラン硫酸の単離および特徴付け」Carbohyd.Res.(1995),276,183-197)、およびCasuのUS5110918という先行技術に開示されている。これらのプロセスでは、解重合ヘパリンの分画沈殿が必要である。
【0010】
最も近い先行技術を考えると、注目すべきなのは、以前のすべての文献が、プロセスのある段階または別の段階でアルコールを使用するという欠点を有することであり、これは、環境への関心が高まっている現在では望ましくない。いくつかの文献では、タンジェンシャル濾過ステップの1つに、塩を有する緩衝材が使用されている。しかし、採用した孔径および先行技術文献で示されたパラメータによる分子量の制御は、特定のものではなく、得られたエノキサパリンナトリウムの特定の構造プロファイルを定義することができない。したがって、アルコールを使用しない、LMWHを得る簡略された効率的な方法を提供することが望まれ、これにより、連続的に実行できる方式で得られた製品のプロファイルを制御することもできる。
【発明の概要】
【0011】
代替手段として、本発明は、非アルコール性の透析濾過緩衝液を用いるタンジェンシャルフロー濾過(TFF)を利用し、これは、形成された製品における残留溶媒量を最小限に抑え、したがって、製品の純度プロファイルを向上させるため、先行技術に記載されている方法に比べて大きな利点がある。さらに、本明細書で設計された方法は、構造的な調整を必要とせずに得られた製品のプロファイリングを可能にするように、連続的に実行できる方法を提供する。分画沈殿物による精製を含む製造方法に比べて、この方法は、製造時間が最小限に抑えられ、その結果、コスト削減の改善および生産能力の向上が図られる。
【0012】
本発明のプロセスのいくつかの実施形態では、粗解重合ヘパリンは、ヘパリン解重合プロセスの製品である。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、解重合ヘパリンの分画沈殿を使用せず、特に、ヘパリンの解重合によって製造された解重合ヘパリンの分画沈殿を使用しない。さらに、本発明では、低分子量ヘパリンが、a)ヘパリンを解重合して粗解重合ヘパリンを形成するステップ、およびb)粗解重合ヘパリンをTFF(後述の膜を用いた濃縮および/または透析濾過)により、分画沈殿を使用せずに精製するステップ、という2つの主要なステップで製造される実施形態を考慮している。
【0013】
いくつかの実施形態では、解重合ヘパリンは、エノキサパリンナトリウムまたはベミパリンナトリウム、好ましくはエノキサパリンナトリウムである。
【0014】
本発明のプロセスのいくつかの実施形態では、粗エノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)は、ヘパリン解重合プロセスの製品である。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、エノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)の分画沈殿を使用せず、特に、ヘパリンの解重合によって製造されたエノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)の分画沈殿を使用しない。さらに、本発明では、エノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)が、a)ヘパリンを解重合して、分画沈殿を使用せずに粗エノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)を形成するステップ、およびb)粗エノキサパリンナトリウム(またはベミパリンナトリウム)をTFF(後述の膜を用いた濃縮および/または透析濾過)により、分画沈殿を使用せずに精製するステップ、という2つの主要なステップで製造される実施形態を考慮している。
【0015】
いくつかの実施形態では、エノキサパリンの分子量(Mw)は、以下の範囲内である。
【0016】
いくつかの実施形態では、ベミパリンの分子量(Mw)は、以下の範囲内である。
【0017】
本発明で採用した方法の実施を可能にするパラメータを制御するために、幅広い分子量の製品への使用を可能にする特定の孔径を有する特定の濾過膜を選択する。利用可能な膜は、一般に、公称カットオフが1kDa-1000kDa(または≦1kDa)の範囲である。公称分子量カットオフ(NMWCO)は、膜によって90%保持される溶質の最小分子量として定義され、かつ異なる分子量の成分の膜保持を評価して決定される(図6)。
【0018】
平均分子量がそれぞれ3600と4400DaのベミパリンナトリウムまたはエノキサパリンナトリウムなどのLMWHにおいて、孔径が大きくなると最低分子量のオリゴ糖鎖が失われるため、利用可能な膜の範囲は、公称カットオフが約1kDa以下のものに限られる。
【0019】
本発明の発明者らは、アルコールまたは他の有機溶媒や塩類で緩衝された媒体を使用せずに、TFFによる濃縮によって、LMWH、特に、エノキサパリンナトリウムおよびベミパリンナトリウムを得ることを可能にする方法を開発し、これにより、欧州薬局方(最新版)および米国薬局方(最新版)の本製品のモノグラフに記載されているパラメータに従って、先行文献に記載されているものよりも向上の純度、適切な品質属性を有する製品を得る。さらに、製品は、平均分子量プロファイルおよびオリゴ糖鎖分布が薬理学的応用に適している。
【0020】
第1の態様では、本発明は、約3.0~約5.0kDaの平均分子量分布を有する低分子量ヘパリン(LMWH)を得る方法に関し、
【0021】
a)約0.6~約10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大約4%w/vのヘパリン濃度を有する解重合ヘパリン溶液を提供するステップし、
【0022】
b)約1kDaの公称カットオフ膜を用いた水相タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による濃縮ステップを行って最大約25%w/vのヘパリン濃度を達成するステップ、を含む。
【0023】
好ましくは、ステップa)の溶液は、水溶液である。
【0024】
ステップa)におけるヘパリン濃度は、好ましくは約3%~約4%w/v、より好ましくは約3.5%~約4%w/v、さらに好ましくは約4%w/vである。
【0025】
好ましくは、タンジェンシャルフロー濾過による濃縮に使用される膜は、約0.7~約1kDa、より好ましくは約0.9~約1kDaの公称カットオフを有する。特定の実施形態では、約1kDaの公称カットオフを有する。
【0026】
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)ならびに本発明の方法の残りのステップ(清澄化、深層濾過、透析濾過、Hによる処理)は、アルコールや任意のその他の有機溶媒を使用せずに水相で行うことができる。
【0027】
ステップb)は、約25%w/vまでの最大ヘパリン濃度を達成するまで、約≦1kDaの公称カットオフ膜、例えば1、2または3を用いた水相タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による少なくとも1つの濃縮ステップを行うことを含み得る。
【0028】
ステップb)では、得られたヘパリン濃度は、少なくとも5%w/v、好ましくは少なくとも8%w/vであり得る。好ましくは、ステップb)において、少なくとも10%w/v、好ましくは約10%~約25%w/v、より好ましくは約10%~約22%w/v、さらに好ましくは約10%~約20%のヘパリン濃度が得られる。特定の実施形態では、ステップb)において、約10%~約22%w/vのヘパリン濃が得られる。
【0029】
一実施形態では、ステップb)において、TFFによる単一の濃縮ステップを行う。特定の実施形態では、ステップb)において、少なくとも10%w/v、好ましくは約10%~約22%w/v、より好ましくは約12%~約22%w/vのヘパリン濃度が得られるまで、TFFによる単一の濃縮ステップを行う。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、ステップb)において、少なくとも5%w/v、好ましくは少なくとも10%w/v、より好ましくは約5%~約15%w/vまたは約10%~約22%w/vのヘパリン濃度が得られるまで、TFFによる単一の濃縮ステップを行う。
【0031】
追加の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0032】
a)0.6~10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲、および約3%~約4%w/v、好ましくは4%w/vのヘパリン濃度を有する解重合ヘパリン溶液を提供することと、
【0033】
b)≦1kDaの公称カットオフ膜を用いた水相タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による単一の濃縮ステップを行って最大25%w/v、好ましくは約12%~約22%w/vのヘパリン濃度を達成することと、を含む。
【0034】
別の実施形態では、ステップb)は、TFFによる2つの濃縮ステップを含む。
【0035】
好ましい実施形態では、ステップ(b)において、TFFによって第1の濃縮を行って約4%~約10%w/v、好ましくは約5%~約10%w/vのヘパリン濃度を達成し、かつTFFによって第2の濃縮を行って約10%~約25%w/vのヘパリン濃度を達成する。より好ましい実施形態では、第2の濃縮ステップは、約12%~約25%w/v、より好ましくは約12%~約22%w/vのヘパリン濃度を達成する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、TFFによる濃縮は、約4%w/v~約12-22%w/v(または約10-25%w/v)で単一のステップで行われる。
【0037】
本発明のプロセスは、清澄化、深層濾過、水による透析濾過、過酸化水素による処理、または凍結乾燥などの1つ以上の追加のステップを含み得る。
【0038】
別の好ましい実施形態では、ステップ(a)のヘパリン溶液を清澄化する少なくとも1つのステップが行われる。
【0039】
別の好ましい実施形態では、TFF濃縮ステップのいずれか1つの前または後に、少なくとも1つの深層濾過ステップが行われる。例えば、(そのようなステップが1つだけ実行される場合)TFF濃縮ステップの前または後、またはステップbが2つ以上のそのようなステップを含む場合、第1のTFF濃縮ステップの前または後である。
【0040】
別の好ましい実施形態では、TFF濃縮ステップのいずれか1つの前または後に、少なくとも1つの透析濾過ステップが水で行われる。例えば、TFF濃縮ステップの前または後、あるいは、ステップb)が複数のそのようなステップを含む場合、第1のTFF濃縮ステップの前または後である。
【0041】
好ましい実施形態では、Hによる処理ステップは、TFF濃縮ステップの前に行われ、あるいは、ステップb)が複数のTFF濃縮ステップを含む場合、いずれか1つの濃縮ステップの前に行われる。例えば、ステップb)が2つのTFF濃縮ステップを含む場合、Hによる処理ステップは、第1の濃縮ステップの前、または第2の濃縮ステップの前に行われ得る。
【0042】
別の好ましい実施形態では、TFF濃縮ステップの前、または(ステップb)が複数のTFF濃縮ステップを含む場合)第1のTFF濃縮ステップの前、または前述のHによる処理ステップの前に、少なくとも1つの水による透析濾過ステップが行われる。
【0043】
別の好ましい実施形態では、ステップ(b)で得られた濃縮物を凍結乾燥させるステップが行われる。
【0044】
本発明では、「LMWH」とは、平均分子量が約8000Da未満のヘパリンを意味すると理解される。本発明の方法は、製造プロセスに関連する、一般的に低分子量(<500Da)の不純物を除去することを1つの目的とするが、使用可能な膜は、理想的には、オリゴ糖鎖を失わずに低分子量の不純物を除去できるように、LMWHの平均分子量よりも低いカットオフを有するため、限られている。好ましくは、採用した膜の公称カットオフは、得られる分子量によって異なるが、≦1kDaである。
【0045】
当業者であれば分かるように、TFFによる濃縮の様々なステップのうち、好ましくは、膜の洗浄および/または再生に必要なメンテナンスステップは、水、NaOHまたは任意のその他の製品を使用して、その明細書に従って実行される。
【0046】
本明細書は、本発明の特徴を組み合わせた1つ以上の実施形態を説明している。本発明の範囲は、ここで記載されている実施形態のみに限定されるものではない。本発明は、本文書に開示されている様々な態様や実施形態のすべての組み合わせやサブ組み合わせを含む。本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付図面を参照して明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
ここで添付され、かつ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示し、本明細書とともに、本発明の原理の説明にも寄与し、当業者であれば、本発明を再現して使用することができる。以下の図面は、説明のみのために使用され、本発明の全範囲を限定するものではない。
【0048】
図1】ノーマルフロー濾過とタンジェンシャルフロー濾過の比較模式図である。
図2】タンジェンシャル濾過プロセスの一般的な模式図である。
図3】濃縮と透析濾過プロセスの比較図である。
図4A】および
図4B】本発明による精製プロセスの模式図である。
図5A】-
図5D】平均分子量(図5A)と分子量分布(図5B:<2000kDa、図5C:>8000kDa、図5D:2000-8000kDa)の両方の変化を表す様々なグラフを含み、分子量分布は、第2の濃度では、再生液中の製品の公称濃度の10%~20%で直線的である。
図6】公称カットオフの定義である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明において、「タンジェンシャルフロー濾過」または「TFF」とは、濾過される溶液がフィルターの表面上を接線方向に通過し、これにより発生する圧力差によって孔径よりも小さい成分を通過させる(透過させる)ことを可能にする濾過技術として理解される。大きな成分は、フィルター上に保持され、かつ供給タンク(保持液)戻される。
【0050】
本発明において、「清澄化」とは、溶液中に存在する懸濁液中の粒子を除去するために行われる濾過、例えば、1-60ミクロン、好ましくは1-25ミクロンのフィルターによって行われる濾過として理解される。
【0051】
本発明では、「深層濾過」とは、粒子の保持を援助する多段階ラビリンス濾材を使用する濾過を意味すると理解される。溶解の濁度が減少するように、大きな粒子表面に保持され、かつ細かい粒子が内層に閉じ込められている濾材の内側に向かってそれらの経路に沿って流れがる。特定の実施形態では、濾過は、1-5ミクロン、好ましくは2-4ミクロンのフィルターで行われる。濾過は、水または緩衝液で行うことができる。
【0052】
本発明では、「濃縮」とは、保持された製品が透過液を除去することでその溶液中の濃度を高めるタンジェンシャル濾過ステップとして理解される(図3を参照)。
【0053】
本発明では、「透析濾過」とは、透過液が除去される間、溶液中の保持液の濃度が変化しないように、溶液に同じ水流量の緩衝液が供給されるタンジェンシャル濾過ステップとして理解される(図3を参照)。この場合、TFFによる濃縮に使用される膜を使用することができ、つまり、公称カットオフが約≦1kDa、好ましくは約0.7~約1kDa、より好ましくは約0.9~約1kDa、さらに好ましくは約1kDaの膜を使用することができる。
【0054】
一実施形態では、ヘパリン(解重合後)は、ヘパリンのナトリウム塩、例えば、エノキサパリンナトリウムまたはベミパリンナトリウムである。
【0055】
粗エノキサパリンナトリウムは、豚の腸管粘膜から得られたヘパリンのベンジルエステルをアルカリ(例えば、NaOH)で解重合することで得ることができる。
【0056】
1つの特定の実施形態では、エノキサパリンナトリウムの解重合後に得られる製品は、処理されないエノキサパリンナトリウムを含むことに加えて、ヘパリンのベンジルエステルのアルカリ性媒体中でのケン化に対応する不純物と、破断プロセス中に行われたpH調整に対応する塩とを含有する溶液に相当する。本発明の一実施形態によれば、TFFプロセスは、処理されないエノキサパリンナトリウム溶液に対して実行され、これによりこの溶液の濃縮は、一方では低分子量の不純物を除去し、他方では過酸化水素による漂白処理を実行するのに適切な濃度に達することを目的として実行される。代替的には、TFFによる濃縮ステップの前に、Hによる漂白処理を行うことが可能である。これらのステップは、粗製品(粗解重合ヘパリン)の分画沈殿を使用せずに実行することができる。
【0057】
代替的には、TFFによる濃縮ステップの前に、Hによる漂白処理を行うことが可能である。
【0058】
さらに、濃縮ステップの前または後に、低分子量不純物を完全に除去するために、透析濾過プロセス(選択可能)を実行できる。このステップの終了に、生成された生理食塩水の不純物を除去し、かつ溶液の平均分子量が監視される低分子量のオリゴ糖鎖の含有量を調整するために、任意で第2の濃縮を行い、最適値に達した後、凍結乾燥して適切な純度のエノキサパリンナトリウムを得る。
【0059】
したがって、1つの特定の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0060】
a)0.6~10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および約4%w/vのエノキサパリンナトリウムの濃度を有する解重合ヘパリン溶液を提供することと、
【0061】
b)最大約25%w/v、最大約10%w/v、または好ましくは約5%~約10%w/vのヘパリン濃度を得るまで、公称カットオフが1kDa以下の膜を用いた水相におけるTFFによる濃縮ステップを実行することと、
【0062】
c)任意で、ステップb)の前または後に、水(例えば、非緩衝水)を用いて透析濾過ステップを行うことと、
【0063】
d)ステップb)の前または後に、Hによる処理ステップを行うことと、
【0064】
e)任意で、最大25%w/v、好ましくは約12%~約25%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0065】
f)得られた製品に対して凍結乾燥ステップを行うことと、を含む。
【0066】
特定の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0067】
a)約0.6~約10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大4%w/vのエノキサパリンナトリウム濃度を有する解重合エノキサパリンナトリウム溶液を提供することと、
【0068】
b)最大約25%w/v、最大約10%w/v、または好ましくは約5%~約10%w/vのヘパリン濃度を得るまで、公称カットオフが1kDa以下の膜を用いた水相におけるTFFによる濃縮ステップを実行することと、
【0069】
c)ステップb)で得られた製品に対してHによる処理ステップを行うことと、
【0070】
d)最大25%w/v、好ましくは約12%~約25%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0071】
e)得られた製品に対して凍結乾燥ステップを行うことと、を含む。
【0072】
好ましくは、本発明のプロセスは、ステップb)の前に、清澄化および/または深層濾過ステップを含む。
【0073】
特定の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0074】
a)約0.6~約10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大4%w/vのエノキサパリンナトリウム濃度を有する解重合エノキサパリンナトリウム溶液を提供することと、
【0075】
b)最大約25%w/v、最大約10%w/v、または好ましくは約5%~約10%w/vのヘパリン濃度を得るまで、公称カットオフが1kDa以下の膜を用いた水相におけるTFFによる濃縮ステップを実行することと、
【0076】
c)ステップb)で得られた製品に対して水による透析濾過ステップを行うことと、
【0077】
d)ステップc)で得られた製品に対してHによる処理ステップを行うことと、
【0078】
e)任意で、ステップd)で得られた製品に対して深層濾過ステップを行うことと、
【0079】
f)最大25%w/v、好ましくは約12%~約25%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0080】
g)得られた製品に対して凍結乾燥ステップを行うことと、を含む。
【0081】
好ましくは、本発明のプロセスは、ステップb)の前に、清澄化および/または深層濾過ステップを含む。
【0082】
特定の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0083】
a)約0.6~10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大4%w/vのエノキサパリンナトリウム濃度を有する解重合エノキサパリンナトリウム溶液を提供することと、
【0084】
b)最大25%w/v、好ましくは約5%~約10%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0085】
c)ステップb)で得られた製品に対して深層濾過ステップを行うことと、
【0086】
d)ステップc)で得られた製品に対してHによる処理ステップを行うことと、
【0087】
e)最大25%w/v、好ましくは約12%~約25%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0088】
f)得られた生成物に対して凍結乾燥ステップを行うことと、を含む。
【0089】
好ましくは、本発明のプロセスは、ステップb)の前に、清澄化および/または深層濾過ステップを含む。
【0090】
特定の実施形態では、本発明のプロセスは、
【0091】
a)約0.6~10kDaのオリゴ糖鎖の分布範囲および最大4%w/vのエノキサパリンナトリウム濃度を有する解重合エノキサパリンナトリウム溶液を提供することと、
【0092】
b)ステップa)の溶液に対して水による透析濾過ステップを行うことと、
【0093】
c)ステップc)で得られた製品に対してHによる処理ステップを行うことと、
【0094】
d)最大約25%w/v、好ましくは約5%~約20%w/vのヘパリン濃度を達成するために、1kDa以下の公称カットオフ膜を用いた水相TFFによる単一の濃縮ステップを行うことと、
【0095】
e)得られた生成物に対して凍結乾燥ステップを行うことと、を含む。
【0096】
好ましくは、本発明のプロセスは、ステップb)の前に、清澄化および/または深層濾過ステップを含む。
【実施例
【0097】
以下の具体的な例は、本発明の性質を表したためのものである。これらの実施例は、例示のみを目的として含まれ、本明細書で請求された発明の制限として解釈されるものではない。分画沈殿を行わずにヘパリンを解重合することで、粗エノキサパリンナトリウムおよびベミパリンナトリウムを製造した。
【0098】
以下、実施例1、2、3、4および5で使用した出発製品である粗エノキサパリンナトリウムを得るためのプロセスを説明する。ヘパリンナトリウム10gを精製水に溶解し、撹拌下で塩化ベンゼトニウム溶液を加え、ベンゼトニウムヘパリネートを形成する。形成された製品を水で数回洗浄して、過剰な塩化物を除去し、最後に凍結乾燥によって製品を乾燥させる。ベンゼトニウムヘパリネートを塩化メチレンに溶解し、温度を調整する。塩化ベンジルを加えて反応させる。得られた製品は、ヘパリンベンジルエステルである。ヘパリンベンジルエステルを水に溶解し、水酸化ナトリウムを加える。反応終了後、溶液を中和し、得られた製品は、粗エノキサパリンナトリウムである。粗エノキサパリンナトリウムを得た後、後述の実施例を行った。
【実施例1】
【0099】
本発明の方法は、
【0100】
a)ヘパリン濃度が4%~10%w/vの製品を得るためのTFFによる第1の濃縮、
【0101】
b)透析濾過およびHによる処理、
【0102】
c)ヘパリン濃度が10%~20%w/vの製品を得るためのTFFによる第2の濃縮、という主なステップによって行われる。
【0103】
最初、製品濃度が40g/Lで、オリゴ糖鎖の分布が0.6~10kDaの粗エノキサパリンナトリウムを出発製品として使用した。この最初の製品は、3.0μmのClarigard(登録商標)フィルターで事前に濾過された。ヘパリン解重合プロセスの製品は、粗エノキサパリンナトリウムである。
【0104】
次に、エノキサパリンの濃度を4%~10%の値に高め、ならびに汚染物質(主に分子量<0.5kDaの塩や、以前の製造プロセスで製造した他の小さな製品)の濃度を下げるために、第1の濃縮ステップをTFFによって実行した。そのために、公称カットオフが1kDa以下の再生セルロース膜を使用した。濃縮ステップでは、透過液が別個の容器に流れる前に、3.25バールの膜間圧力(TMP)で約2005gの製品を投入し、システムを合計約15分間循環させた。
【0105】
濃縮間に、透過液量は、初期の9から最後の4.8LMH(L/m/h)(初期流量の53%)の範囲で、平均流量は、6.2LMHであった。VCF(体積濃度係数)=1.26X(P1)と、濃縮終了時の透過液体積(P2)との2つの透過液サンプルを回収した。また、濃縮終了時に保持された材料の量のサンプル(R1)、ならびに初期供給のサンプルを3.0μmのフィルターで予備濾過した後(B1)に採取した。濃度試験の主なデータを表1に示す。
【0106】
続いて、得られた製品を清澄化するために、精製水を用いて透析濾過ステップを行た。透析濾過中、透過液量は、初期の8.4から最後の2.4LMH(約29%)まで連続的に減少し、平均流量は、5.03LMHであった。3つの透過液サンプルを回収し、それぞれは、それぞれの透析後の終了での(それぞれD1、D2およびD3)であり、材料の量からものは、透析濾過終了に保持された(D5)である。透析濾過試験を実行する条件を表2に示す。
【0107】
透析濾過後に得られた約0.8Lの製品は、続いてHと化学反応した。
【0108】
TFFによる第2の濃縮ステップに進む前に、容器の底に溜まった粒子を除去するために、3.0μmのClarigard(登録商標)フィルターを再び使用して、追加の(選択可能な)清澄化ステップを実行した。
【0109】
次に、公称カットオフが1kDa以下のMillipore(登録商標)再生セルロース膜も使用して、10%~20%w/vのエノキサパリンの濃度に達成するために、TFFによる第2の濃縮ステップを実行した。
【0110】
濃縮中に、透過液量は、初期の3から最後の0.75LMH(25%)の範囲で、平均流量は、1.5LMHであった。VCF=1.34X(P3)と、濃縮終了時の透過液体積(P4)との2つの透過液サンプルを回収した。また、システムを低TMP(1.2bar)で10分間実行することで膜を脱分極した後、濃縮後に保持された材料の量のサンプル(R2)を採取した。
【0111】
以下の表3は、上述のプロセスで採取され欧州薬局方(EP)で定められた方法に従って分析されたサンプルの分子量を示す。
【0112】
上記表において目的製品のMW分画(2000Da未満、2000~8000Daおよび8000Da以上)の割合に示されるように、第1の濃縮ステップが製品のプロファイルに悪影響を与えない(サンプルP1およびP2に見られるように、透過液中のどの分画も損失しない)ことが分かる。
【0113】
透析濾過中に採取されたサンプルについては、D1、D2、D3およびD5は、以下を示す:
【0114】
-基本的には、透析濾過に沿って、透過液中の最大のMW分画は損失していない。
【0115】
-透過液中の最小と平均MWの分画には損失があるが、最大の損失は、常に最小分画に関連る。
【0116】
-最小分画および中分画の損失率は、それぞれ透析濾過に沿って減少している。
【0117】
-一般的に、(≦1kDaの膜のカットオフに応じて)最小分画および中高分画それぞれの透析濾過に沿って、若干の減少と濃縮が見られる。
【0118】
第2の濃縮ステップ終了時の瞬間的な透過液サンプルP3、P4およびサンプルR2の数は、以下を示す:
【0119】
-基本的に、このステップにわたって、透過液中の最高MW分画は、損失しない。
【0120】
-透過液中の最小および中MW分画には、損失があるが、最大の損失は、常に最小分画に関連する(透析濾過の場合と同様)。
【0121】
-この第2の濃縮ステップでは、中分画の損失率が増加する(透析濾過の場合と同様)。
【実施例2】
【0122】
本発明の方法は、
【0123】
a)ヘパリン濃度が4%~10%w/vの製品を得るためのTFFによる第1の濃縮、
【0124】
b)Hによる処理、
【0125】
c)ヘパリン濃度が10%~20%w/vの最終製品を得るためのTFFによる第2の濃縮、という主なステップによって行われる。
【0126】
約1936gの出発製品をタンクに移し、TMP=3.2barで10分間、5.1LMMのクロスフローでシステムを全循環させた。
【0127】
濃縮中、透過液量は、初期の9.6から最後の4.2LMH(44%)の範囲で、平均流量は、6LMHであった。VCF=1.43Xで瞬間的な透過液のサンプルを回収し(P5)、濃縮終了後に別の透過液のサンプルを回収し(P6)、最後に濃縮終了後、フィルターをTMP=0.6barで10分間全循環させた後の保持液(R3)のサンプルを回収した(膜の脱分極)。タンクに移す前に、出発溶液のサンプル(B2)を採取した。
【0128】
で処理した約794gの製品をタンクに移し、第2の濃縮ステップに進んだ。
【0129】
濃縮中に、透過液量は、初期の5.7から最後の0.9LMH(16.0%)の範囲で、平均流量は、LMHであった。VCF=1.33Xで1つの瞬間的な透過液のサンプル(P7)と濃縮終了時に透過液量の別の瞬間的な透過液のサンプル(P8)を回収した。また、システムを低TMP(0.8bar)で10分間実行することで膜を脱分極した後、濃縮終了時の保持液量のサンプル(R4)を回収した。
【0130】
表4は、上述のプロセスで採取したサンプルの分子量を、欧州薬局方(EP)で定められた方法に従って分析したものである。
【0131】
上記表の数値が示すように、第1の濃縮ステップは、製品のプロファイルに悪影響を与えない(サンプルP1およびP2の場合と同様に、透過液、サンプルP5およびP6中のどの分画も損失しない)ことが分かる。
【0132】
第2の濃縮ステップの終了時の透過液サンプルP7、P8および保持液量サンプルR4に関する数値は、以下を示す:
【0133】
-上記ステップでは、透過液中のMWの最大分画に損失がない。
【0134】
-透過液中の最小および中MW分画には損失があるが、最大の損失は、常に最小分画に関連する(第2の透析濾過試験の場合と同様)。
【0135】
-第2の濃縮では、中分画の損失率が増加する(プロセスの場合と同様)。
【0136】
最後に、保持溶液を凍結乾燥させて、乾燥エノキサパリンナトリウムを得る。
【実施例3】
【0137】
本発明の方法は、
【0138】
a)ヘパリン濃度が4%~10%w/vの生成物を得るためのTFFによる第1の濃縮、
【0139】
b)深層濾過、
【0140】
c)Hによる処理、
【0141】
d)ヘパリン濃度が10%~20%w/vの最終製品を得るためのTFによる第2の濃縮、という主なステップによって行われる。
【0142】
約2000gの出発製品(濁度>1000NTU)をタンクに移し、かつTMP=3.2barで15分間、5.2LMMのクロスフローでシステムを全循環させた。
【0143】
濃縮中に、透過液量は、初期の9.6から最後の3.9LMH(初期流量の41%)の範囲で、平均流量は、5.8LMHであった。VCF=1.43Xで透過液サンプルを回収し(P1’)、もう1つは、濃縮終了時に回収し(P2’)、さらにフィルターをTMP=0.7barで15分間全循環させた後に濃縮終了後の保持液(R1’)を回収した(膜の脱分極)。また、タンクに移す前に、初期供給(B1’)のサンプルを採取した。
【0144】
R1’溶液をMillistak+(登録商標)HCPro C0SPデプスフィルターに通し、濁度を0.57NTUまで下げ、続いてHで処理した。約0.8リットルの製品をHで処理した後にタンクに移し、第2の濃縮ステップを行った。
【0145】
この第2の濃縮は、初期公称濃度10%(それぞれサンプルR’3とP’3)から最終公称濃度20%(それぞれサンプルsR’12とP’12)まで、中間濃度の11、12、13、14、15、16、17、18および19%を経て、保持液と透過液の両方を順次分注して行われた。
【0146】
以下の表5は、上記プロセスで採取され欧州薬局方(EP)で定められた方法に従って分析されたサンプルの分子量を示す。
【0147】
平均分子量と分子量分布の両方の変化は、第2の濃縮中に、保持液中の製品の公称濃度の10%から20%まで直線的であり、これにより保持液の溶液中の製品の濃度の最終値を調整することで、エノキサパリンナトリウムを得るための特定の分子量プロファイルおよびオリゴ糖鎖の分布を定義することができる。この事実について、図5を参照する。最後に、保持溶液を凍結乾燥させて、乾燥エノキサパリンナトリウムを得る。
【実施例4】
【0148】
前述の実施例で得られた製品を分析して、その抗FXaおよび抗FIIa活性を決定した。得られた結果は、以下の通りである:

【0149】
この品質属性は、欧州薬局方と米国薬局方の両方でエノキサパリンナトリウムについて定義される範囲を適切に満たす。
【0150】
-抗FXa活性:90‐125IU/mg(乾燥物質)
【0151】
-抗FIIa活性:20.0‐35.0IU/mg(乾燥物質)
【0152】
-比率FXa/FIIa:3.3‐5.3
【実施例5】
【0153】
本発明の方法は、
【0154】
a)透析濾過、
【0155】
b)Hによる処理、
【0156】
c)ヘパリン濃度が4%~15%w/vの最終製品を得るためのTFFによる濃縮、という主なステップによって行われる。
【0157】
約3010gの出発製品をタンクに移し、TMP=4.9barで15分間、2.0LMMのクロスフローでシステムを全循環させた。
【0158】
透析濾過中、透過液量は、初期の17.7から最後の13.1LMHの範囲で、平均流量は、12.6LMHで、透析量は、6であった。各透析量のサンプルの後、透過液(DP1~DP6)と保持液(DR1~DR6)の両方を回収した。透過液をHで処理し、約2720gの処理済み製品をタンクに移した。
【0159】
濃縮中に、透過液量は、初期の12.7から最後の1.28LMH(89.9%減少)の範囲で、平均流量は、5.1LMHであった。濃縮は、4~15%で行われ、透過液サンプル(CP1~CP6)と保持液サンプル(CR1~CR6)の両方を10%から回収した。VCF=1.33Xで1つの瞬間的な透過液のサンプル(P7)と濃縮終了時に透過液量の別の瞬間的な透過液のサンプル(P8)を回収した。また、システムを低TMP(0.8bar)で10分間実行して膜を脱分極した後、濃縮終了時の保持液量のサンプル(R4)を回収した。
【0160】
以下の表6は、上記プロセスで採取され欧州薬局方(EP)で定められた方法に従って分析されたサンプルの分子量を示す。
【0161】
平均分子量と分子量分布の両方の変化は、保持液中の製品の公称濃度10%から15%まで直線的であり、これにより保持液の溶液中の製品の濃度の最終値を調整することで、エノキサパリンナトリウムを得るための特定の分子量プロファイルおよびオリゴ糖鎖の分布を定義することができる。保持液を凍結乾燥させて、乾燥エノキサパリンナトリウムを得る。
実施例6
【0162】
前述の実施例で得られた製品を分析して、その抗FXaおよび抗FIIa活性を決定した。得られた結果は、以下の通りである:
【0163】
前述の説明や実施例を考慮して、当業者であれば、過度な実験をすることなく、請求された本発明を実現するであろう。上記のことは、本発明の実施形態の製造ための特定のプロセスを説明する前述の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。これらの例に対するすべての参照は、説明するためのものに過ぎない。本実施例は、限定するためのものではなく、本発明によって考えられる多くの可能な実施形態の一部の例示に過ぎない。
【0164】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は、指定された値の±10%、±5%または±1%、好ましくは±10%を意味する。さらに、本文献で指定されるすべての範囲には、特に「約」という用語の定義に従って、範囲の限界とすべての整数および小数の値が含まれている。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6