(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ポリアミド並びに対応するポリマー組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20240906BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2021566957
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2020062781
(87)【国際公開番号】W WO2020229318
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-06
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フロレス, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/172717(WO,A1)
【文献】特開2004-277445(JP,A)
【文献】特開2014-105315(JP,A)
【文献】特開2010-285553(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02727951(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/056692(WO,A1)
【文献】特開2018-178117(JP,A)
【文献】特開昭60-028423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ジアミン成分(A)であって、
-
35モル%~95モル%のC
4~C
12脂肪族ジアミンと、
- 5モル%~
65モル%のビス(アミノアルキル)シクロヘキサンと、
を含有し、これらのモル%が前記ジアミン成分中の
全ジアミンの総モル数に対するものであるジアミン成分(A);並びに
- ジカルボン酸成分(B)であって、
- 30モル%~99モル%のテレフタル酸と、
- 1モル%~70モル%の
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と、
を含有し、これらのモル%が前記ジカルボン酸成分中の
全ジカルボン酸の総モル数に対するものであるジカルボン酸成分(B);
を含有する反応混合物中のモノマーの重縮合により誘導されるポリアミド(PA)。
【請求項2】
前記C
4~C
12脂肪族ジアミンが、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、及び1,12-ジアミノドデカンからなる群から選択さ
れる、請求項1に記載のポリアミド(PA)。
【請求項3】
前記C
4
~C
12
脂肪族ジアミンが、1,6-ジアミノヘキサンである、請求項1に記載のポリアミド(PA)。
【請求項4】
前記ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである、請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項5】
前記ジカルボン酸成分が、C
4~C
12の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸からなる群から選択される追加のジカルボン酸を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項6】
- C
4~C
12脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸[HOOC-(CH
2)
2-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH
2)
3-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH
3)
2-(CH
2)
2-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH
2)
4-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH
3)-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH
2)
5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH
2)
6-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH
2)
7-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH
2)
8-COOH]、1,12-ドデカン二酸[HOOC-(CH
2)
10-COOH]からなる群から選択され;
- 前記芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸(IA
)、ナフタレンジカルボン
酸、4,4’ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択され;
- 前記脂環式ジカルボン酸が、シクロプロパン-1,2-ジカルボン酸、1-メチルシクロプロパン-1,2-ジカルボン酸、シクロブタン-1,2-ジカルボン酸
、1,3-アダマンタンジカルボン酸からなる群から選択される;
請求項5に記載のポリアミド(PA)。
【請求項7】
20℃/分の加熱速度を使用してASTM D3418に従って測定される、少なくとも30J/gの融解熱(「ΔH
f」)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項8】
ASTM D3418に従って測定される少なくとも145℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項9】
ASTM D3418に従って測定される少なくとも295℃の溶融温度(「Tm」)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法であって、前記反応混合物中で、少なくとも前記C
4~C
12の脂肪族ジアミンと、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンと、テレフタル酸と、シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させてポリアミド(PA)を形成することを含む、方法。
【請求項11】
- 請求項1~9のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)と、
- 補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
を含む、ポリマー組成物(C)。
【請求項12】
前記ポリマー組成物(C)の総重量を基準として10重量%~60重量%のガラス繊維又は炭素繊維を含む、請求項11に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項13】
40重量%~70重量%の前記ポリアミド(PA)を含む、請求項11又は12に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項14】
携帯用電子デバイス物品又は構成部品、電気部品、電子部品、自動車部品、食品に接触する構成要素、配管構成要素
、オイル及びガス関係の構成要素、繊維強化熱可塑性複合材料又は3D印刷物品である、請求項11~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項15】
携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールからなる群から選択される携帯用電子デバイスの物品又は構成部品である、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月7日に出願された国際特許出願第PCT/EP2020/062781号の、米国特許法に基づく米国国内段階への移行である。本出願は、2019年5月14日に出願された米国仮出願第62/847409号及び2019年9月23日に出願された欧州特許出願第19198924.3号に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高い熱性能を有するポリアミドに関する。本発明は、更に、ポリアミドを含むポリマー組成物、及びポリアミド又はポリマー組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
熱性能(ガラス転移温度(「Tg」)、溶融温度(「Tm」)、及び結晶化度(「ΔHf」))は、ポリアミドを望ましく使用できる用途状況を決定する重要な要素である。半芳香族ポリアミドは、その比較的高い溶融温度(「Tm」)及び結晶化度(「ΔHf」)のため、多くの関心を集めている。従来のポリアミドのTgは一般的には150℃未満であり、これは従来の用途状況には十分である。しかしながら、新規な用途や市場では、ポリアミドは更に厳しい熱条件にさらされ、150℃以上のTgを要する。脂環式の繰り返し単位を半芳香族ポリアミドへ導入することにより、得られるポリアミドのTgを上げることに成功したものの、これはTmとΔHfを望ましくないほど低下させるか、場合によっては、ポリアミドのTmを370℃まで増加させるという代償を伴う。前者の場合、ポリアミドは低温用途に限定され、アモルファスポリアミドに近い特性を有する。後者の場合、少なくとも一部には溶融加工温度及び保持時間におけるポリマーの分解に起因して、ポリアミドに対して適切な溶融加工を行うことができない。したがって、幅広い用途状況において使用するために十分高いTg及びTm、望ましくは溶融加工するために十分低いTm、並びに射出成形サイクル時間を短縮するために及び高温機械特性、耐薬品性、熱たわみ温度などを改善するために望ましい十分に高いΔHfを有するポリアミドを開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、(1)20モル%~95モル%のC4~C12脂肪族ジアミンと5モル%~80モル%のビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとを含有し、これらのモル%がジアミン成分中の全ジアミンの総モル数に対するものであるジアミン成分(A);並びに(2)30モル%~99モル%のテレフタル酸と1モル%~70モル%のシクロヘキサンジカルボン酸とを含有し、これらのモル%がジカルボン酸成分中の全ジカルボン酸の総モル数に対するものであるジカルボン酸成分(B);を含有する反応混合物中のモノマーの重縮合により誘導されるポリアミド(PA)に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、20℃/分の加熱速度を使用してASTM D3418に従って測定される、少なくとも30J/gの融解熱(「ΔHf」)を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定される少なくとも145℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定される少なくとも295℃の溶融温度(「Tm」)を有する。
【0006】
第2の態様では、本発明は、ポリアミド(PA)の製造方法に関し、この方法は、ポリアミド(PA)を形成するために、反応混合物中で、少なくともC4~C12の脂肪族ジアミンと、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンと、テレフタル酸と、シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させることを含む。
【0007】
第3の態様では、本発明は、ポリアミド(PA)と、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含有するポリマー組成物(C)に関する。
【0008】
第4の態様では、本発明は、ポリマー組成物(C)を含む物品に関し、この物品は、携帯用電子デバイス物品又は構成部品、電気部品、電子部品、自動車部品、食品に接触する構成要素、配管構成要素、並びにオイル及びガス関係の構成要素、連続繊維強化熱可塑性複合材料、又は3D印刷物品である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、(1)20モル%~95モル%のC4~C12脂肪族ジアミンと5モル%~80モル%のビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとを含有し、これらのモル%がジアミン成分中の全ジアミンモノマーの総モル数に対するものであるジアミン成分(A);並びに30モル%~99モル%のテレフタル酸と1モル%~70モル%のシクロヘキサンジカルボン酸とを含有し、これらのモル%がジカルボン酸成分中の全ジカルボン酸モノマーの総モル数に対するものであるジカルボン酸成分(B);を含有する反応混合物中のモノマーの重縮合により誘導されるポリアミド(PA)について記述される。驚くべきことに、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとシクロヘキサンジカルボン酸との特定の組み合わせにより、ポリアミド(PA)が、シクロヘキサンジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸に置き換えられた類似のポリアミドに対して、全体として改善された熱性能を有することが発見された。本明細書に記載のポリアミドは、少なくとも145℃のガラス転移温度(「Tg」)、少なくとも295℃の溶融温度(「Tm」)、及び少なくとも30J/gの溶融熱(「ΔHf」)を有する。
【0010】
本出願において、任意の説明は、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、またそれらと交換可能である。要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はそのリストから選択されるとされる場合、本出願で明確に企図される関連実施形態では、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明確に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、そのようなリストから省略され得;終点による数値範囲の本明細書におけるあらゆる列挙は、列挙された範囲内に含まれる全ての数値、並びに範囲の終点及び同等のものが含まれることが理解されるべきである。
【0011】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で用いる場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖、及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、無置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1つ以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に適合性であり、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0012】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル、又はナフチル基を意味する。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり、例えばシクロ芳香族基及び2つのC1~C6基(例えば、メチル又はエチル)から構成され得る。アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O又はSも含み得、この場合、「ヘテロアリール」と呼ばれることもあり;これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族系に縮合され得る。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、無置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1~C6アルコキシ、スルホ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1つ以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に適合性を有し、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0013】
ジアミン成分(A)
ジアミン成分(A)成分は、20モル%~95モル%のC4~C12脂肪族ジアミン及び5モル%~80モル%のビス(アミノアルキル)シクロヘキサンを含む、反応混合物中の全てのジアミンを含む。ジアミン成分(A)中のモノマーの濃度に言及する場合、濃度は、別段の明記がない限り、ジアミン成分(A)中の全てのジアミンの総モル数に対するものであることが理解される。
【0014】
いくつかの実施形態では、C4~C12脂肪族ジアミンは、下記式で表される:
H2N-R1-NH2,(1)
(式中、R
1
は、C4~C12アルキル基、好ましくはC6~C10アルキル基である)。いくつかの実施形態では、R
1
は-(CH
2
)-
m
であり、式中のmは4~12、好ましくは5~11、最も好ましくは6である。いくつかの実施形態では、C4~C12脂肪族ジアミンは、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(又は1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、及び1,12-ジアミノドデカンからなる群から選択される。好ましくは、C4~C12脂肪族ジアミンは、1,6-ジアミノヘキサン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、及び1,10-ジアミノデカンからなる群から選択される。好ましくは、C4~C12脂肪族ジアミンは、C
6
~C
10
脂肪族ジアミン又はC5~C9脂肪族ジアミンである。最も好ましくは、C4~C12脂肪族ジアミンは1,6-ジアミノヘキサンである。
【0015】
いくつかの実施形態では、C
4
~C
12
脂肪族ジアミンの濃度は、25モル%~95モル%、30モル%~95モル%、35モル%~95モル%、40モル%~95モル%、45モル%~95モル%、又は50モル%~95モル%である。いくつかの実施形態では、C
4
~C
12
脂肪族ジアミンの濃度は、20モル%~90モル%、25モル%~90モル%、30モル%~90モル%、35モル%~90モル%、40モル%~90モル%、45モル%~90モル%、又は50モル%~90モル%である。
【0016】
ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンは、下記式で表される:
【化1】
(式中、R
2及びR
3はC
1~C
10アルキルから独立して選択され;R
iは、各位置において、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、及び四級アンモニウムからなる群から選択され;iは0~10の整数である)。
アミノアルキル基は、メタ位(1,3-)又はパラ位(1,4-)に相対的に配置される。好ましくは、iは0であり、R
2及びR
3は共に-CH
2-である。最も好ましくは、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンは、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,4-BAC」)から選択される。当然、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンはシス配座であってもトランス配座であってもよい。したがって、ジアミン成分(A)は、シス-ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンのみ、トランス-ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンのみ、又はシス-とトランス-のビス(アミノアルキル)シクロヘキサンの混合物を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンの濃度は、5モル%~75モル%、5モル%~70モル%、5モル%~65モル%、5モル%~60モル%、5モル%~55モル%、又は5モル%~50モル%である。いくつかの実施形態では、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンの濃度は、10モル%~75モル%、10モル%~70モル%、10モル%~65モル%、10モル%~60モル%、10モル%~55モル%、又は10モル%~50モル%である。
【0018】
上で述べたように、いくつかの実施形態において、ジアミン成分(A)は、1種以上の追加のジアミンを含む。追加のジアミンは、C4~C12脂肪族ジアミンとは異なり、且つビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとは異なる。いくつかの実施形態では、1種、複数種、又は全ての追加のジアミンは、式(1)によって表され、それぞれ互いに異なり、且つC4~C12脂肪族ジアミンとは異なる。いくつかの実施形態では、それぞれの追加のジアミンは、1,2ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン、及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンからなる群から選択される。このカテゴリーには、イソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタンなどの脂環式ジアミンも含まれる。いくつかの実施形態では、ジアミン成分は、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサン以外の脂環式ジアミンを含まない。本明細書において、モノマー(例えばビス(アミノアルキル)シクロヘキサン)を含まないということは、対応する成分(例えばジアミン成分(A))中のモノマーの濃度が1モル%未満、好ましくは0.5モル%未満、より好ましくは0.1モル%未満、更に好ましくは0.05モル%未満、最も好ましくは0.01モル%未満であることを意味する。
【0019】
ジカルボン酸成分(B)
ジカルボン酸成分(B)には、30モル%~99モル%のテレフタル酸と1モル%~70モル%のシクロヘキサンジカルボン酸とを含む、反応混合物中の全てのジカルボン酸が含まれる。ジカルボン酸成分(B)中のモノマーの濃度に言及される場合、濃度は、別段の明記がない限り、ジカルボン酸成分(A)中の全てのジカルボン酸のモル数に対するものであることが理解されるであろう。
【0020】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸の濃度は、30モル%~99モル%、40モル%~99モル%、45モル%~99モル%、50モル%~99モル%である。いくつかの実施形態では、テレフタル酸の濃度は、35モル%~97モル%、40モル%~97モル%、45モル%~97モル%、50モル%~97モル%である。
【0021】
シクロヘキサンジカルボン酸は、下記式で表される:
【化2】
(式中、R
jは、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、及び四級アンモニウムからなる群から選択され;jは0~10の整数である)。明示的な-COOH基は、メタ位(1,3-)又はパラ位(1,4-)、好ましくはパラ位に相対的に配置される。好ましくは、シクロヘキサンジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)(jは0である)である。当然、シクロヘキサンジカルボン酸は、シス配座であってもトランス配座であってもよい。したがって、ジカルボン酸成分(B)は、シス-シクロヘキサンジカルボン酸のみ、トランス-シクロヘキサンジカルボン酸のみ、又はシス-とトランス-のシクロヘキサンジカルボン酸の混合物を含むことができる。
【0022】
シクロヘキサンジカルボン酸の濃度は1モル%~70モル%である。いくつかの実施形態では、シクロヘキサンジカルボン酸の濃度は、1モル%~65モル%、1モル%~60モル%、1モル%~55モル%、又は1モル%~50モル%である。
【0023】
上で述べたように、いくつかの実施形態において、ジカルボン酸成分(B)は、1種以上の追加のジカルボン酸を含む。それぞれの追加のジカルボン酸は互いに異なり、テレフタル酸及びシクロヘキサンジカルボン酸とは異なる。いくつかの実施形態では、1種、複数種、又は全ての追加のジカルボン酸が式(3)で表され、それぞれ互いに異なり、シクロヘキサンジカルボン酸とは異なる。
【0024】
いくつかの実施形態では、1以上の追加のジカルボン酸は、C4~C12の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸からなる群から独立して選択される。望ましいC4~C10脂肪族ジカルボン酸の例としては、限定するものではないが、コハク酸[HOOC-(CH2)2-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH2)3-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH3)2-(CH2)2-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH2)4-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-CH2-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH2)5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH2)6-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH2)7-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH2)8-COOH]、1,12-ドデカン二酸[HOOC-(CH2)10-COOH]が挙げられる。
【0025】
望ましい芳香族ジカルボン酸の例としては、限定するものではないが、イソフタル酸(IA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0026】
望ましい脂環式ジカルボン酸の例としては、限定するものではないが、シクロプロパン-1,2-ジカルボン酸、1-メチルシクロプロパン-1,2-ジカルボン酸、シクロブタン-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸が挙げられる。
【0027】
ポリアミド(PA)が1種以上の追加のジカルボン酸を含むいくつかの実施形態では、1種以上の追加のジカルボン酸の総濃度は20モル%以下である。
【0028】
ポリアミド(PA)
上述したジアミン成分及びジカルボン酸成分の中のモノマーの重縮合から形成されるポリアミド(PA)は、それぞれ以下の式で表される繰り返し単位R
PA1~R
PA4を含む:
【化3】
(式中、R
1~R
3、R
i、R
j、i及びjは、上記で定義した通りである)の化合物から選択される。当業者であれば、繰り返し単位R
PA1がC
4~C
12脂肪族ジアミンとテレフタル酸との重縮合から形成され、繰り返し単位R
PA2がC
4~C
12脂肪族ジアミンとシクロヘキサンジカルボン酸との重縮合から形成され、繰り返し単位R
PA3がビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとテレフタル酸との重縮合から形成され、繰り返し単位R
PA4がビス(アミノアルキル)シクロヘキサンとシクロヘキサンジカルボン酸との重縮合から形成されることを認識するであろう。好ましくは、R
PA2及びR
PA4は、それぞれ、以下の式で表される
(式中、R
1
~R
3
、R
i
、R
j
、i及びjは、上記で定義した通りである):
【化4】
【0029】
いくつかの実施形態では、R1は-(CH2)-mであり、式中のmは4~12、好ましくは5~11、最も好ましくは6である。加えて、又は代わりに、いくつかの実施形態では、R2及びR3は共に-CH2-であり、i及びjは共にゼロである。好ましくは、式(4)~(9)の全てにおいて、R1は-(CH2)6-であり、R2及びR3は共に-CH2-であり、i及びjは共にゼロである。
【0030】
いくつかの実施形態において、ポリアミド(PA)中の繰り返し単位RPA1~RPA4の合計濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも97モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.5モル%である。繰り返し単位のモル%に言及される場合、濃度は、別段の明記がない限り、示されたポリマー中の繰り返し単位の総数に対するものであることが理解されるであろう。
【0031】
ポリアミド(PA)は半結晶性のポリアミドである。本明細書において、半結晶性ポリアミドは、少なくとも5ジュール毎グラム(「J/g」)の融解熱(「ΔHf」)を有するポリアミドである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリアミド(PA)は、少なくとも30J/g、又は少なくとも35J/gのΔHfを有する。追加的又は代わりに、いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、60J/g以下又は55J/g以下のΔHfを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、30J/g~60J/g又は35J/g~60J/g、30J/g~55J/g、又は35J/g~55J/gのΔHfを有する。ΔHfは、20℃/分の加熱速度を使用してASTM D3418に従って測定することができる。
【0032】
ポリアミド(PA)は、少なくとも145℃、好ましくは少なくとも150℃のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、190℃以下、180℃以下、又は170℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、145℃~190℃、145℃~180℃、145℃~170℃、150℃~190℃、150℃~180℃、又は150℃~170℃のTgを有する。Tgは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0033】
ポリアミド(PA)は、少なくとも295℃、好ましくは少なくとも300℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、360℃以下、350℃以下、又は340℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、295℃~360℃、295℃~350℃、295℃~340℃、300℃~360℃、300℃~350℃、又は300℃~340℃のTmを有する。Tmは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0034】
本発明のポリアミド(PA)は、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル、4,000~30,000g/モル、又は5,000g/モル~20,000g/モルの範囲の数平均分子量(「Mn」)を有し得る。数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0035】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に合わせられた任意の従来の方法によって調製することができる。好ましくは、本発明のポリアミド(PA)は、60重量%未満、好ましくは50重量%未満の水の存在下で、少なくともTm+10℃の温度(Tmはポリアミド(PA)の融解温度である)までモノマーを反応させることによって(加熱することによって)調製され、ここでの重量%は反応混合物の総重量に対するものである。
【0036】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、例えばモノマー及びコモノマーの水溶液の熱重縮合(重縮合又は縮合とも呼ばれる)によって調製することができる。一実施形態では、ポリアミド(PA)は、反応混合物中で、少なくともC4~C12脂肪族ジアミンと、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンと、テレフタル酸と、シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させることによって形成される。いくつかの実施形態では、反応混合物中のジアミンの総モル数は、反応混合物中のジカルボン酸の総モル数と実質的に等モルである。本明細書において、実質的に等モルとは、示されたモル数の±15%である値を意味する。例えば、反応混合物中のジアミン及びジカルボン酸の濃度との関係において、反応混合物中のジアミンの総モル数は、反応混合物中のジカルボン酸の総モル数の±15%である。反応混合物は、鎖制限剤を含んでいてもよく、これはアミン部位又はカルボン酸部位と反応することができる一官能性分子であり、ポリアミド(PA)の分子量を制御するために使用される。例えば、鎖制限剤は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及び/又はベンジルアミンであってもよい。触媒も使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属次亜リン酸塩、及びフェニルホスフィン酸である。ホスファイトなどの、安定剤も使用され得る。
【0037】
ポリマー組成物(C)
ポリマー組成物(C)は、上述した本発明のポリアミド(PA)を含む。
【0038】
ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%超、35重量%超、40重量%超、又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0039】
ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、又は60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0040】
ポリアミド(PA)は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として35~70重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0041】
組成物(C)は、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、酸化防止剤、及び他の加工助剤からなる群から選択される1種の成分も含み得る。
【0042】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又は充填剤とも呼ばれる)が本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状の補強剤から選択することができる。繊維補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50の、長さと、最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、補強繊維(例えばガラス繊維又は炭素繊維)は3mm~50mmの平均長さを有する。いくつかのそのような実施形態では、補強繊維は、3mm~10mm、3mm~8mm、3mm~6mm、又は3mm~5mmの平均長さを有する。代替の実施形態では、補強繊維は、10mm~50mm、10mm~45mm、10mm~35mm、10mm~30mm、10mm~25mm、又は15mm~25mmの平均長さを有する。補強繊維の平均長さは、ポリマー組成物(C)に組み込まれる前の補強繊維の平均長さとして理解することができ、或いはポリマー組成物(C)中の補強繊維の平均長さとして理解することができる。
【0043】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0044】
繊維充填剤の中でも、ガラス繊維が好ましく;これらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのチャプター5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドであるA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維充填剤から選択される。充填剤は、より好ましくは、高温の用途に耐えられる補強繊維である。
【0045】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0046】
補強充填剤は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0047】
本発明の組成物(C)は、強化剤も含み得る。強化剤は、一般に低Tgのポリマーであり、例えば室温未満、0℃未満又は更に-25℃未満のTgを有する。その低いTgの結果として、強化剤は、典型的には、室温でエラストマー性である。強化剤は、官能化されたポリマー主鎖であり得る。
【0048】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0049】
強化剤が官能化されている場合、主鎖の官能化は、官能基を含むモノマーの共重合又は更なる成分を用いたポリマー主鎖のグラフト化に由来することができる。
【0050】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0051】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0052】
ポリマー組成物(C)は、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤など、当技術分野で一般に使用されている他の従来の添加剤も含み得る。
【0053】
ポリマー組成物(C)は、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミド(PA)と異なるポリアミドも含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、より一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と、脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物の間の重縮合によって得られるポリアミドなど、半結晶性又はアモルファスのポリアミドを挙げることができる。
【0054】
ポリマー組成物(C)の調製
本発明は、更に、上で詳述されたような組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、ポリアミド(PA)と、特定の成分、例えば充填剤、強化剤、安定化剤、及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法に関する。
【0055】
任意の溶融ブレンディング方法が、本発明との関連でポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー、又はバンバリーミキサー等の溶融ミキサーに供給することができ、添加するステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部がまず添加され、次いで十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維及び連続繊維)を示す場合、補強された組成物を調製するために延伸押出成形又は引抜成形が用いられ得る。
【0056】
物品及び用途
本発明は、また、本発明のポリアミド(PA)を含む物品、及び上記のコポリマー組成物(C)を含む物品にも関する。
【0057】
物品は、特に、携帯用電子デバイス、LEDパッケージング、オイル及びガス関係の構成要素、食品に接触する構成要素(食品フィルム及びケーシングを含むが、これらに限定されない)、電気部品及び電子部品(コンピュータ用電源装置の構成要素、データシステム及びオフィス機器、並びに表面実装技術と互換性のあるコネクタ及び接点を含むが、これらに限定されない)、医療機器の構成要素、建設関係の構成要素(冷却及び加熱システム用のパイプ、コネクタ、マニホールド、及びバルブ;ボイラー及びメーターの構成要素;ガスシステムのパイプ及び付属品;並びにミニサーキットブレーカー用の電気保護装置、コンタクタ、スイッチ、及びソケットを含むが、これらに限定されない)、産業用構成部品、配管構成部品(パイプ、バルブ、付属品、マニホールド、シャワータップ、及びシャワーバルブを含むが、これらに限定されない)、自動車部品、及び航空宇宙用構成部品(船内キャビン構成要素を含むが、これらに限定されない)において使用することができる。
【0058】
本物品は、例えば、携帯用電子デバイス構成部品であり得る。本明細書で用いる場合、「携帯用電子デバイス」は、様々な場所で便利に運ばれ且つ使用されることを意図される電子デバイスを意味する。携帯用電子デバイスとしては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0059】
携帯用電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び本組成物(C)を含み得る。この場合、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。携帯用電子デバイス構成部品は、また、アンテナハウジングであり得る。携帯用電子デバイス構成部品の更なる例としては、限定するものではないが、マイクロスピーカー、マイクロスイッチ、マイクロレシーバー、コネクタ、カメラモジュール、バックハウジング、バッテリーカバー、シャーシ、及びフレームが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、携帯用電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部分は、ポリマー組成物(C)上に配置される。それに加えて又はその代わりに、無線アンテナの少なくとも一部をポリマー組成物(C)からずらす(例えば接触させない)ことができる。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、携帯用電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品のものであることができる。いくつかの実施形態では、携帯用電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0061】
オイル及びガス関係の構成要素の例としては、限定するものではないが、コンプレッサーリング、ポペット、バックアップシールリング、電気コネクタ、ラビリンスシール、モーターエンドプレート、ベアリング、ブッシング、サックロッドガイド、及びダウンホールチューブが挙げられる。
【0062】
自動車部品の例としては、限定するものではないが、熱管理システムの構成要素(限定するものではないが、サーモスタットハウジング、水入口/出口バルブ、水ポンプ、水ポンプインペラ、並びにヒーターコア及びエンドキャップなど)、空気管理システム構成要素(限定するものではないが、ターボチャージャーアクチュエータ、ターボチャージャーバイパスバルブ、ターボチャージャーホース、EGRバルブ、CACハウジング、排気ガス再循環システム、電子制御スロットルバルブ、及び熱風ダクトなど)、トランスミッション構成要素及びローンチ装置構成要素(限定するものではないが、デュアルクラッチトランスミッション、自動マニュアルトランスミッション、連続可変トランスミッション、自動トランスミッション、トルクコンバーター、デュアルマスフライホイール、パワーテイクオフ、クラッチシリンダー、シールリング、スラストワッシャー、スラストベアリング、ニードルベアリング、及びチェックボールなど)、自動車用電子部品、自動車用照明部品(限定するものではないが、モーターエンドキャップ、センサー、ECUハウジング、ボビン及びソレノイド、コネクタ、回路保護/リレー、アクチュエータハウジング、Liイオンバッテリーシステム、並びにヒューズボックスなど)、トラクションモーターとパワーエレクトロニクス構成要素(限定するものではないが、バッテリーパックなど)、燃料及び選択的触媒還元(「SCR」)システム(限定するものではないが、SCRモジュールのハウジング及びコネクタ、SCRモジュールのハウジング及びコネクタ、燃料フランジ、ロールオーバーバルブ、クイックコネクト、フィルターハウジング、燃料レール、燃料供給モジュール、燃料ホース、燃料ポンプ、燃料インジェクターOリング、及び燃料ホースなど)、流体システム構成要素(例えば燃料システム構成要素)(限定するものではないが、入口及び出口バルブ、並びに流体ポンプ構成要素など)、内部構成要素(例えばダッシュボード構成要素、ディスプレイ構成要素、及びシート構成要素など)、並びに構造及び軽量化構成要素(例えばギア及びベアリング、サンルーフ、ブラケット及びマウント、電気式バッテリーハウジング、熱管理構成要素、ブレーキシステム要素、並びにポンプ及びEGRシステム)が挙げられる。
【0063】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)及びそれらから調製された物品は、単層又は多層物品において、包装用途向けのガスバリア材料としても使用され得る。
【0064】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)、及びそれらから製造された物品は、自動車用途、例えば空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系、ビーム及び構造支持体、パン及びカバーにおいて使用することもできる。
【0065】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、熱可塑性樹脂に適応した任意のプロセス、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形又は圧縮成形によって成形することができる。ポリアミド(PA)及びポリマー組成物(C)は、ハイブリッド構造を構築するために予め形成された形状をオーバーモールドする際にも使用することができる。
【0066】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、例えばフィラメントの形態にある材料の押出の工程を含むプロセスによって、又は材料のレーザー焼結の工程を含むプロセス(この場合は材料は粉末形態である)によって、印刷することができる。
【0067】
本発明は、付加製造システムにより3次元(3D)物体を製造する方法であって、
- 本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む方法にも関する。
【0068】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、それ故、3D印刷のプロセス、例えば、熱溶解積層法(FDM)としても知られる、溶融フィラメント製造法に使用されるスレッド又はフィラメントの形態にあることもできる。
【0069】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、また、3D印刷のプロセス、例えば選択的レーザー焼結法(SLS)に使用される、粉末、例えば実質的に球形の粉末の形態にあることができる。
【0070】
ポリアミド(PA)、組成物(C)及び物品の使用
本発明は、上で記載されたような、携帯用電子デバイス構成部品を製造するための上記のポリアミド(PA)、組成物(C)又は物品の使用に関する。
【0071】
本発明は、また、物体を3D印刷するための上記のポリアミド(PA)又は組成物(C)の使用に関する。
【0072】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0073】
本実施例は、ポリアミドの合成、熱性能を実証する。
【0074】
サンプルを形成するために使用した原材料は以下に示す通りである:
- ヘキサメチレンジアミン(70重量%、Ascend Performance Materialsより)
- 1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(Mitsubishi Gas Chemical Companyより)
- テレフタル酸(Flint Hills Resourcesより)
- 1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(Eastman Chemical Companyより)
- イソフタル酸(Flint Hills Resourcesより)
- アジピン酸(Invistaより)
- 2,6-ナフタレンジカルボン酸(Indoramaより)
- ビ安息香酸(Sigma Aldrichより)
- 5-ヒドロキシイソフタル酸(Sigma Aldrichより)
- 酢酸(Sigma Aldrichより)
- リン酸(Sigma Aldrichより)
【0075】
ポリアミドの合成
この実施例は、ポリアミドの合成を示す。
【0076】
全てのポリアミドは、圧力調整弁を装着した留出物ラインを備えたオートクレーブ反応器において類似の方法に従って調製した。一例として、ポリアミドE1の調製において、反応器に、179.3gの70%ヘキサメチレンジアミン、102.4gの1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、266.4gのテレフタル酸、30.7gの1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、206gの脱イオン水、2.2gの氷酢酸、及び0.2gのリン酸を入れた。反応器を密閉し、窒素でパージし、260℃に加熱した。内圧を120psigに維持するために、発生した蒸気をゆっくりと放出した。温度を320℃に上げた。反応混合物を320℃に保持し、反応圧力を大気圧まで低下させた。更に20分間保持した後、ポリマーを反応器から取り出した。
【0077】
以下のプロセスを使用して、大量のポリアミドを調製した(一例として、ここではポリアミドCE9の調製である)。撹拌されているバッチ式容器に、12.25kgの脱イオン水、28.7kgの70%ヘキサメチレンジアミンからなるジアミン成分、及び19.3kgのテレフタル酸と8.3kgのイソフタル酸とからなるジカルボン酸成分を入れた。反応器に、13.1gのリン酸及び252gの氷酢酸も入れた。上記混合物を150℃で加熱することによって塩溶液を得た。内容物を、約180psig及び220℃に維持されている反応器ゾーンに連続的にポンプ移送し、次いで300℃に維持されている高圧ゾーンに、その後350℃に加熱されている100psigの管状反応器を通してポンプ輸送した。溶融物は、前方真空ベントを備えた二軸スクリュー押出機に供給した。完成したポリマーをストランドダイを通して水浴に押し出し、細かく刻んでペレットにした。
【0078】
サンプルパラメータを表1に示す。表1において、HMDAはヘキサメチレンジアミンを指し、TAはテレフタル酸を指し、IAはイソフタル酸を指し、AAはアジピン酸を指し、NDAは2,6-ナフタレンジカルボン酸を指し、BBAは4,4’-ビフェニルジカルボン酸を指し、HIAは5-ヒドロキシイソフタル酸を指す。
【0079】
【0080】
熱性能
熱性能を実証するために、Tm、Tg、及びΔHfを上記の通りに測定した。熱試験の結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
表2を参照すると、脂環式ジカルボン酸が組み込まれたサンプルは、芳香族ジカルボン酸を含むサンプルと比較して、全体として大幅に改善された熱性能を有していた。特に、本発明による各サンプルであるE1~E7は、少なくとも145℃のTg、少なくとも295℃のTm、及び少なくとも30J/gのΔHfを有する。他方で、CE7以外の各比較例(CE)は、Tg、Tm、及びΔHfのうちの少なくとも1つがそれぞれ145℃、295℃、及び30J/g未満である。CE7に関しては、Tmは360℃を大幅に上回っており、劣化させずに溶融加工(例えば射出成形)することはできない。
【0083】
更に、E1をCE3及びCE4と比較すると、予想外にも、1,4-CHDAが組み込まれたポリアミドが、1,4-CHDAを芳香族ジカルボン酸に置き換えた対応するポリアミドと比較して、全体として改善された熱性能を有することを示している。例えば、E1(1,4-CHDAを含む)は、145℃を超えるTg、295℃を超えるTm、及び30J/gを超えるΔHfを有していた。他方で、CE3(NDAを含む)及びCE4(BBAを含む)は共に295℃未満のTmを有していた。別の例として、E1と同様に、E5(1,4-CHDAを含む)は、145℃を超えるTg、295℃を超えるTm、及び30J/gを超えるΔHfを有していた。他方で、CE5(NDAを含む)は、145℃未満のTg及び295℃未満のTmを有しており、CE6(HIAを含む)は30J/g未満のΔHfを有していた。これらの実施例は、ビス(アミノアルキル)シクロヘキサンを使用すると、驚くべきことに、得られるポリアミドが、CHDAを芳香族ジカルボン酸に置き換えた対応するポリアミドと比較して、全体として改善された熱性能を有することを示している。
【0084】
上記の実施形態は、例示的であり、限定的でないことが意図される。更なる実施形態は、本発明の概念内である。加えて、本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形式上及び詳細になされ得ることを認める。上記の文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反している主題はまったく援用されないように限定される。