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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】アルミニウムシェルを含む調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A47J36/02 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021569389
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020064010
(87)【国際公開番号】W WO2020234322
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】1905455
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローレン オービン
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025868(JP,A)
【文献】特開2012-213810(JP,A)
【文献】特開2001-321269(JP,A)
【文献】特開2015-147067(JP,A)
【文献】特開平09-220627(JP,A)
【文献】特開昭48-098966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0159601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁(21)と、底壁(21)の周囲に立ち上がる側壁(31)とを有する金属シェル(2)を含む調理器具(1)であって、前記底壁(21)が、食品を調理することを意図された内面(211)と、熱源に近接して配置することを意図された外面(212)とを有し、前記調理器具(1)が誘導加熱に対応するように、金属インサート(4)が前記外面(212)に直接取り付けられており、前記金属インサート(4)が強磁性材料から製造されており、前記金属シェル(2)が、6000シリーズの深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートであり、前記金属シェル(2)が6082アルミニウム合金シートであること、および前記底壁(21)が前記側壁(31)の少なくとも2倍の厚さを有することを特徴とする、調理器具(1)。
【請求項2】
底壁(21)と、底壁(21)の周囲に立ち上がる側壁(31)とを有する金属シェル(2)を含む調理器具(1)であって、前記底壁(21)が、食品を調理することを意図された内面(211)と、熱源に近接して配置することを意図された外面(212)とを有し、前記調理器具(1)が誘導加熱に対応するように、金属インサート(4)が前記外面(212)に直接取り付けられており、前記金属インサート(4)が強磁性材料から製造されており、前記金属シェル(2)が、5000シリーズの深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートであり、前記金属シェル(2)が5083アルミニウム合金シートであること、および前記底壁(21)が側壁(31)の少なくとも2倍の厚さを有することを特徴とする、調理器具(1)。
【請求項3】
前記底壁(21)が、好ましくは前記側壁(31)の厚さの少なくとも2.5倍を超える厚さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の調理器具。
【請求項4】
前記底壁(21)が、前記側壁(31)の厚さの15倍以下の厚さを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項5】
前記底壁(21)が、前記側壁(31)の厚さの13.5倍以下の厚さを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項6】
前記内面(211)が、PTFEまたはセラミックまたはゾル-ゲルコーティングで部分的または全体的にコーティングされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項7】
前記外面(212)が、エナメルまたはPTFEまたはセラミックまたはゾル-ゲルコーティングで部分的または全体的にコーティングされていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項8】
前記金属インサートが、グリッドにより形成されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項9】
前記金属シェル(2)が、0.5未満の直径/高さ比を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項10】
前記金属シェル(2)が、0.3未満の直径/高さ比を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項11】
前記金属シェル(2)が、0.5~0.1の直径/高さ比を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項12】
前記金属シェル(2)が、0.3~0.1の直径/高さ比を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の調理器具。
【請求項13】
請求項1または請求項1に従属している場合の請求項3~12のいずれか一項に記載の調理器具を製造する方法であって、
- 6000シリーズの6082アルミニウム合金シートを供給するステップと、
- 任意選択的に、金属インサート(4)を前記外面(212)に取り付けるステップと、
- 前記シートを前記金属シェル(2)形状に深絞りまたはフローフォーミング加工するステップと、
- 任意選択的に、前記内面(211)上に、PTFEまたはセラミックまたはゾル-ゲルコーティングを部分的または全体的に塗布するステップと、
- 任意選択的に、前記外面(212)上に、エナメル、PTFE、セラミックまたはゾル-ゲルコーティングを部分的または全体的に塗布するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1または請求項1に従属している場合の請求項3~12のいずれか一項に記載の調理器具の予熱時間を改善するための、6000シリーズの6082深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートの形態の金属シェル(2)の使用。
【請求項15】
請求項2または請求項2に従属している場合の請求項3~12のいずれか一項に記載の調理器具を製造する方法であって、
- 5000シリーズの5083アルミニウム合金シートを供給するステップと、
- 任意選択的に、金属インサート(4)を前記外面(212)に取り付けるステップと、
- 前記シートを前記金属シェル(2)形状に深絞りまたはフローフォーミング加工するステップと、
- 任意選択的に、前記内面(211)上に、PTFEまたはセラミックまたはゾル-ゲルコーティングを部分的または全体的に塗布するステップと、
- 任意選択的に、前記外面(212)上に、エナメル、PTFE、セラミックまたはゾル-ゲルコーティングを部分的または全体的に塗布するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項2または請求項2に従属している場合の請求項3~12のいずれか一項に記載の調理器具の予熱時間を改善するための、5000シリーズの5083深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートの形態の金属シェル(2)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートから製造された調理器具または調理容器の技術分野に関する。調理容器は、一般に、調理用ホブ(電気ホットプレート、誘導加熱プレート、燃料バーナーなど)に配置することを目的とした底部を備え、前記底部は、底部の周囲に立ち上がる側壁によって囲まれている。底部の上面は、食品用の調理面を形成する。底部の下面は、加熱面を形成する。
【0002】
本発明は、特に、しかし排他的にではなく、フライパン型の調理容器に関する。フライパン型の調理容器は、幅または直径よりも短い高さにより定義することができる。一般に、そのような調理容器の幅または直径は、それらの高さの数倍となる。
【背景技術】
【0003】
調理の分野におけるアルミニウム合金の使用は、何年もの間知られている。アルミニウムの良好な熱伝導率が、アルミニウム合金の本体を有する調理容器の製造の検討を可能にする。
【0004】
アルミニウム合金の本体を有する調理容器において、側壁が冷却フィンとして働き、底部の周辺部の加熱を制限する一因となる。その結果、底部、特に加熱面の中心と周辺部との間で、温度差が生ずる。
【0005】
調理容器に使用される材料の配分は、底部厚さ/側壁厚さ比で表すことができる。アルミニウム合金調理容器の通常の慣行において、この底部厚さ/側壁厚さ比は、特に深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートから製造された調理容器の場合、1.8を超えない。直径28cmのフライパンは、5.1mmの底部厚さおよび2.9mmの側壁厚さを有し、すなわち1.76の比を有する。
【0006】
調理容器の品質を評価するための主要な基準の1つは、調理の均一性である。調理の均一性とは、調理容器の底部に食品が配置されているかどうかに関係なく、食品を均一に調理する調理容器の能力を指す。
【0007】
深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートから製造されたアルミニウム合金調理容器の1つの欠点は、側壁によって引き起こされる温度変化に対する調理面の感度にある。予熱中、調理面に有意な温度差が、例えば、調理面の最も高温の場所で180℃、および調理面の最も低温の場所で120℃未満という温度で、観察されることがある。これらの温度差は、調理容器で調理される食品の調理の均一性を低下させる一因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、器具の重量の増加を制限しながらその均一性および予熱特性を改善するために、その熱的役割に応じた材料の配分を有する調理容器を製造することである。
【0009】
本発明の目的は、深絞りまたはフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートから製造されたアルミニウム合金のシェルを含む調理容器を提案することであり、調理容器の大部分で過度の上昇を引き起こすことなく、調理面の温度の均一性が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、底壁と底壁の周囲に立ち上がる側壁とを有する、金属シェルを含む調理器具により達成され、前記底壁は、食品を調理することを意図された内面と、熱源に近接して配置することを意図された外面とを有し、前記シェルは、深絞りまたはフローフォーミング加工の、6000シリーズの6082アルミニウム合金シート、もしくは5000シリーズの5754合金、もしくは5000シリーズの5083合金である。
【0011】
この目的は、底壁と底壁の周囲に立ち上がる側壁とを有する、金属シェルを含む調理器具で達成され、前記底壁は、食品を調理することを意図された内面と、熱源に近接して配置することを意図された外面とを有し、前記シェルは、深絞りまたはフローフォーミング加工の、6000シリーズの6082アルミニウム合金シートである。
【0012】
この目的は、底壁と底壁の周囲に立ち上がる側壁とを有する、金属シェルを含む調理器具により達成され、前記底壁は、食品を調理することを意図された内面と、熱源に近接して配置することを意図された外面とを有し、前記シェルは、深絞りまたはフローフォーミング加工の、5000シリーズの5083合金である。
【0013】
調理の分野におけるアルミニウム合金の使用は、何年もの間知られている。しかし、通常の合金グレード(Al 1050、Al 1200、Al 3003、Al 4006)は、弱い機械的強度特性を有する。
【0014】
使用する合金は、食品グレードの基準に準拠している必要があることに注意しなければならない(Znの含有量<0.25%およびCuの含有量<0.6%)。
【0015】
質量を減らし、予熱時間の増加を抑制しながら調理の均一性を向上させるために、6000シリーズの6082合金を使用することで、調理容器の設計を再考することが可能となる。この合金は高い弾性限界を有し、調理容器の製造に通常使用されるアルミニウム合金よりも硬いため、この優れた機械的強度により、調理容器の側壁の厚さのさらなる低減を検討することを可能にする。
【0016】
6000シリーズ(アルミニウムマグネシウムシリコン)
このシリーズの合金元素は、マグネシウム(Mg)およびシリコン(Si)である。この合金群は、産業上非常に重要である。形状に広く使用されている。
【0017】
それらは、焼きなまし状態での変形(主にスピニング、スタンピング)および冷間成形に非常に適する。それらの機械的特性は平均的であり、2000および7000合金のものよりも劣っている。これらの特性は、シリコンを加えることによって高めることができ、硬化析出物Mg2Siを与える。それらは、特に大気腐食に対して、優れた耐食性を有する。それらは簡単に溶接(アーク溶接またはろう付け)される。
【0018】
それらは2つのグループに分けることができる:
- 第1のグループ。その組成は、より高いマグネシウムおよびシリコン含有量を有する(たとえば6061、6082)。それらは、構造用途(フレーミング、パイロンなど)だけでなく、航空学(電気接続、車載電子ハウジングなど)にも使用される。;
- 少ないシリコン含有量の第2のカテゴリー。結果として、機械的特性が弱くなる。これは6060の場合であり、高速スピニングは可能だが、より弱い機械的特性を有する。それは、例えば装飾および調度品、そして金属建具に使用される。
【0019】
以前はAlmelecと呼ばれていた、6101にも注意すべきである。この合金は、導電体としての適合性から非常に広く使用されていた。特に、フランスにおいて、中高圧線の製造に使用された。
【0020】
【表1】
【0021】
濃度は重量パーセントである。
【0022】
質量を減らし、かつ予熱時間の増加を抑制しながら調理の均一性を向上させるために、5000シリーズの5754合金を使用することで、調理容器の設計を再考することが可能となる。この合金は、6000シリーズの6082アルミニウム合金よりも硬く、この優れた機械的強度により、調理容器の側壁の厚さのさらなる低減を検討することを可能にする。
【0023】
【表2】
【0024】
質量を減らし、かつ予熱時間の増加を抑制しながら調理の均一性を向上させるために、5000シリーズの5083合金を使用することで、調理容器の設計を再考することが可能となる。この合金は、5000シリーズの5754アルミニウム合金よりも硬く、このより優れた機械的強度により、調理容器の側壁の厚さのさらなる低減を検討することを可能にする。
【0025】
【表3】
【0026】
5000シリーズ(マグネシウムアルミニウム)
合金元素はマグネシウム(最大5%)である。これらは加工硬化合金である。
これらの合金は、マグネシウム含有量に伴い増加する平均的な機械的特性を有する。これらの特性はまた、加工硬化の量とともに増加する。
【0027】
マグネシウム含有量が増えると、この適合性は低下するが、変形に対する良好な適合性を有する。それらは溶接において優れた性能を持ち、その結果ボイラーメーカー溶接に使用される。また、低温での優れた性能も有する。それらは優れた腐食性能を有し、それが海洋用途での使用を説明する。
【0028】
それらは、造艦、輸送、および化学産業で使用される。
【0029】
【表4】
【0030】
濃度は重量パーセントである。
【0031】
好ましくは、底壁は、側壁の厚さの少なくとも2倍、好ましくは側壁の厚さの少なくとも2.5倍を超える厚さを有する。
【0032】
好ましくは、底壁は、側壁の厚さの15倍以下、好ましくは側壁の厚さの13.5倍以下の厚さを有する。
【0033】
好ましくは、シェルは、0.5未満、好ましくは0.3未満の直径/高さ比を有する。
【0034】
好ましくは、シェルは、0.5~0.1、好ましくは0.3~0.1の直径/高さ比を有する。
【0035】
必要に応じて、内面を、特にPTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングで部分的または全体的にコーティングすることができる。
【0036】
必要に応じて、外面を、特にエナメル、PTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングで部分的または全体的にコーティングすることができる。
【0037】
必要に応じて、誘導加熱プレート上で調理容器を加熱できるようにするために、調理容器の底部の直下、外面側に、金属インサートを取り付けることができる。
【0038】
好ましくは、金属インサートはグリッドによって形成される。
【0039】
このグリッドは、好ましくは合金シートを形成する前に、スタンピング、例えばコールドスタンピングによって構成することができる。その厚さは、0.3~1mm、好ましくは約0.6mmである。グリッドの穴は、2~4mm、好ましくは約3mmの直径を有することができる。
【0040】
好ましくは、金属インサートは、強磁性材料から製造される。
【0041】
金属インサートは、本発明による調理器具を誘導加熱に対応するものにする。
【0042】
本発明のまた別の目的は、調理器具の金属シェルの製造用の、6000シリーズの6082アルミニウム合金に関する。
【0043】
本発明のまた別の目的は、調理器具の金属シェルの製造用の、5000シリーズの5754アルミニウム合金に関する。
【0044】
本発明のまた別の目的は、調理器具の金属シェルの製造用の、5000シリーズの5083アルミニウム合金に関する。
【0045】
本発明のまた別の目的は、本発明による調理器具を製造する方法に関し、以下のステップ:
- 6000シリーズの6082アルミニウム合金シート、5000シリーズの5754合金、または5000シリーズの5083合金を供給するステップと、
- 任意選択的に、金属インサートを外面に取り付けるステップと、
- 前記シートをシェル形状に深絞りまたはフローフォーミング加工するステップと、
- 任意選択的に、内面上に部分的または全体的にPTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
- 任意選択的に、外面上に部分的または全体的に、エナメル、PTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
を含む。
【0046】
本発明のまた別の目的は、本発明による調理器具を製造する方法に関し、以下のステップ:
- 6000シリーズの6082アルミニウム合金シートを提供するステップと、
- 任意選択的に、金属インサートを外面に取り付けるステップと、
- 前記シートをシェル形状に深絞りまたはフローフォーミング加工するステップと、
- 任意選択的に、内面上に部分的または全体的にPTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
- 任意選択的に、外面上に部分的または全体的に、エナメル、PTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
を含む。
【0047】
本発明のまた別の目的は、本発明による調理器具を製造する方法に関し、以下のステップ:
- 5000シリーズの5083アルミニウム合金シートを提供するステップと、
- 任意選択的に、金属インサートを外面に取り付けるステップと、
- 前記シートをシェル形状に深絞りまたはフローフォーミング加工するステップと、
- 任意選択的に、内面に部分的または全体的にPTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
- 任意選択的に、外面に部分的または全体的に、エナメル、PTFE、セラミック、またはゾル-ゲルコーティングを塗布するステップと、
を含む。
【0048】
本発明のまた別の目的は、調理器具の予熱時間を改善するための、深絞りまたはフローフォーミング加工の6000シリーズの6082アルミニウム合金シートの形態の金属シェルの使用に関する。
【0049】
本発明のまた別の目的は、調理器具の予熱時間を改善するための、深絞りまたはフローフォーミング加工の5000シリーズの5754アルミニウム合金シートの形態の金属シェルの使用に関する。
【0050】
本発明のまた別の目的は、調理器具の予熱時間を改善するための、深絞りまたはフローフォーミング加工の5000シリーズの5083アルミニウム合金シートの形態の金属シェルの使用に関する。
【0051】
使用される手段は、底壁の厚さの増加、および側壁の厚さの減少からなり、その結果、底壁/側壁厚さ比が最大化される。ここでの難しさは、理想的には、(特に側壁にハンドルを取り付ける点で)機械的強度の要件を満たしながら、その熱的役割に基づいて材料を配分することである。
【0052】
これらの構造の実現には、特定の変形方法が使用されるわけではない。誘導加熱に対応する底部を構成するための深絞り、フローフォーミング加工、またはスタンピング操作中に使用されるパラメータは、得るべき新しい厚さに明らかに適合させる必要がある。たとえば、グリッドを挿入するためのスタンピング力は、たとえば、新しい合金が提供するであろう、グリッドの貫通に対するより大きな抵抗を相殺するために、大幅に上方修正されるであろう。
【0053】
本発明は、あらゆる制限なく受け取られるべきであり、添付の図に示される例示的な実施形態の研究からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、従来技術による調理器具の例示的な実施形態の断面の概略図である。
図2図2は、本発明による調理器具の例示的な実施形態の断面の概略図である。
図3図3は、従来技術による調理器具の代替的実施形態の断面の部分概略図である。
図4図4は、図3に示す調理器具の底部に挿入された金属インサートを表したものである。
図5図5は、本発明による調理器具の代替的実施形態の断面の部分概略図である。
図6図6は、図5に示す調理器具の底部に挿入された金属インサートを表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1および図2は、金属シェル2’、2を含み、底壁21'、21と、底壁21'、21の周囲に立ち上がる側壁31'、31とを有する、調理器具1'、1を図示する。シェル2’、2はフローフォーミング加工のアルミニウム合金シートである。代替として、シェル2’、2は深絞りアルミニウム合金シートにすることができる。底壁21'、21は、食品を調理することを意図された内面211'、211と、熱源に近接して配置することを意図された外面212'、212とを有する。必要に応じて、内面211'、211は、コーティング、例えば、PTFEコーティング、またはセラミックコーティング、またはゾル-ゲルコーティングで、部分的または全体的にコーティングされてもよい。必要に応じて、外面212'、212は、コーティング、例えば、PTFEコーティング、またはセラミックコーティング、またはゾル-ゲルコーティングで部分的または全体的にコーティングされてもよい。必要に応じて、調理器具1'、1は、シェル2'、2に取り付けられたハンドル(図1および図2には示されていない)を備えてもよい。
【0056】
図3および図5に示される代替的実施形態によれば、調理器具1'、1は、シェル2'2に取り付けられたハンドル5'、5'を備える。さらに、金属インサート4'、4は、底壁21'、21の外面212'、212に直接取り付けられる。図4および図6は、図3および図5に示されている調理器具1’、1に存在する金属インサート4’、4を示す。金属インサート4’、4はグリッドによって形成される。金属インサート4’、4は、誘導加熱に対応する調理器具1’、1を得るために、強磁性材料、特にフェライト系ステンレス鋼から製造することができる。金属インサートの厚さは、例えば、0.6mmのオーダーである。
【0057】
図1図3および図4に示される従来技術の調理器具において、シェル2'は、28cmの直径を有する、4000シリーズの4006アルミニウム合金シートである。底壁21'は、約4.5mmのオーダーの厚さを有する。側壁31'は3mmのオーダーの厚さを有し、前記側壁の厚さは、シェル2'の外縁より下で測定された最小の厚さに対応する。底壁21'の厚さと側壁31'の厚さとの比は、1.5のオーダーである。
【0058】
図2図5および図6に図示される本発明による調理器具において、シェル2は、28cmの直径を有する、6000シリーズの6082アルミニウム合金シートである。シェル2の高さは55mmのオーダーであり、すなわち、0.2オーダーの高さ/直径比である。底壁21は、約6mmのオーダーの厚さを有する。側壁31は2mmのオーダーの厚さを有し、前記側壁の厚さは、シェル2の外縁の下で測定された最小の厚さに対応する。底壁21の厚さと側壁31の厚さとの比は3のオーダーである。代替として、シェルは、5000シリーズの5754アルミニウム合金シートまたは5000シリーズの5083アルミニウム合金シートとすることができる。代替として、シェルは、他の直径、および/または他の高さ、および/または他の厚さの底壁21、および/または他の厚さの側壁31を有することができる。
【実施例
【0059】
試験は、2つの6082合金プロトタイプ(PR21およびPR22)(直径28cmのフライパン、6082合金から製造、図5の代替的実施形態に対応、側壁の厚さ2mm、底壁の厚さ6mm、側壁の高さ55mm、底部の直径225mm、および直径225mmの透かし彫りのステンレス鋼グリッドを有する、図6に示す)を用いて実施した。
【0060】
使用した参照調理器具は、PO28GCBV Expertiseフライパン(直径28cmのフライパン、Grand Chef Edge pourer、4006合金から製造、図3の代替的実施形態に対応、側壁の厚さ3mm、底壁の厚さ4.5mm、側壁の高さ55mm、底部の直径210mm、および直径205mmの透かし彫りのステンレス鋼グリッドを有する、図4に示す)である。
【0061】
2つのグリッドは同じ中央部分を有し、直径の違いは透かし彫りでない外輪に関係する。
【0062】
予熱試験
予熱試験は誘導ホブで実施した。
【0063】
予熱試験は、空のフライパンを加熱手段に配置することからなる。器具のポイントの1つが180℃に達すると、均一性の基準を定量化するために、底部の2つのポイント間の最大温度差を測定する。予熱時間は、1つのポイントが180℃に達するのに必要な時間に対応する。
【0064】
【表5】
【0065】
底壁/側壁比の増加は、調理器具の重量を減らしながら、調理器具の均一性を改善することに留意されたい。
【0066】
卵白試験
卵白試験は、いくつかの誘導ホブ(以下の表に記載されている特性)で実施した。
【0067】
この調理試験は、150gの卵白の凝固がフライパンの調理面の100%に広がるのに必要な時間を測定することからなる。これを行うために、溶いた卵白を冷たいフライパンに注ぐ。加熱手段を起動する。次に、調理を停止し、卵白の凝固していない部分を水ですすいだ後、凝固の割合を観察する。卵白が完全に凝固するまで、調理時間を10秒ずつ増やしながら、この操作を繰り返す。
【0068】
標準に対する厚さの比の増加は、調理器具の重量を減らしながら、この調理時間を顕著に短縮することを可能にする。
【0069】
【表6】
【0070】
他の試験は、2つの5754合金プロトタイプおよび2つの5083合金プロトタイプ(直径28cmのフライパン、図5の代替的実施形態に対応、側壁の厚さ1.9mmまたは1mm、底壁の厚さ4.5mmまたは8mm、側壁の高さ55mm、底部の直径225mm、および直径205mmの透かし彫りのステンレス鋼グリッドを有する、図4に示す)を使用して実施した。
【0071】
使用した参照調理器具もまた、PO28GCBV Expertiseフライパン(直径28cmのフライパン、Grand Chef Edge pourer、4006合金から製造、図3の代替的実施形態に対応、側壁の厚さ3mm、底壁の厚さ4.5mm、側壁の高さ55mm、底部の直径210mm、および直径205mmの透かし彫りのステンレス鋼グリッドを有する、図4に示す)である。
【0072】
予熱試験
予熱試験は、平均出力が2200Wではなく2000Wのオーダーであったことを除いて、前の試験と同じ条件下、誘導ホブで実施した。
【0073】
【表7】
【0074】
所与の合金について、底壁/側壁比の増加が調理器具の加熱均一性を改善することに留意されたい。5000シリーズの合金では、より高い底壁/側壁比を使用することにより、参照の調理器具よりも優れた加熱均一性が得られることにもまた留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6