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特許7550806非接触給電用コイルおよび非接触給電用可変径コイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】非接触給電用コイルおよび非接触給電用可変径コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240906BHJP
   H01F 29/02 20060101ALI20240906BHJP
   H01F 29/06 20060101ALI20240906BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240906BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20240906BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240906BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F29/02 W
H01F29/06
H02J50/12
H02J50/90
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022019543
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2023117061
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓磨
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/122003(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/140917(WO,A1)
【文献】特開2019-169553(JP,A)
【文献】実公昭34-019920(JP,Y2)
【文献】特開2004-266718(JP,A)
【文献】特開昭63-116412(JP,A)
【文献】特開昭64-032602(JP,A)
【文献】実開昭56-154127(JP,U)
【文献】実開昭51-160140(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0129434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0085649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 21/00-21/12
H01F 29/00-29/06
H02J 50/10-50/12
H02J 50/90
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く導線と、
前記導線におけるいずれかの第1位置で前記導線に接触し、前記導線を第1端子に接続する第1接点と、
前記第1位置よりもN周だけ外側の位置で前記導線に接触し、前記導線を第2端子に接続する第2接点と、
前記第1接点および前記第2接点を周方向に移動させる回転駆動機構と、
を備えることを特徴とする非接触給電用コイル。
【請求項2】
周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く導線と、
前記導線におけるいずれかの第1位置で前記導線に接触し、前記導線を第1端子に接続する第1接点と、
前記第1位置よりもN周だけ外側の位置で前記導線に接触し、前記導線を第2端子に接続する第2接点と、
前記第1接点および前記第2接点を前記導線の径方向に移動させる径方向駆動機構と、
を備えることを特徴とする非接触給電用コイル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非接触給電用コイルであって、
基板を備え、
前記導線は、基板の平坦な面に形成された溝に形成されていることを特徴とする非接触給電用コイル。
【請求項4】
周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように、渦巻き形状を描く導線と、
前記導線が所定周回するごとに設けられた複数のスイッチとを備え、
前記導線は、
各前記スイッチが設けられる位置に一対の切断端を形成するギャップを有し、
複数の前記スイッチのうちの1つである内側スイッチは、
前記一対の切断端のうち外側に向かう一方を第1端子に接続し、
複数の前記スイッチのうち、前記内側スイッチよりも一定周回だけ外側にある外側スイッチは、
内側に向かう他方を第2端子に接続し、
複数の前記スイッチから前記内側スイッチおよび前記外側スイッチが選択され、
前記第1端子と前記第2端子との間の実効コイルのコイル径が可変とされたことを特徴とする非接触給電用可変径コイル。
【請求項5】
請求項に記載の非接触給電用可変径コイルであって、
前記導線における前記内側スイッチと前記外側スイッチとの間の区間に他の前記スイッチがある場合には、他の前記スイッチは、前記一対の切断端を接続した状態となることを特徴とする非接触給電用可変径コイル。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の非接触給電用可変径コイルであって、
基板を備え、
前記導線は、基板の平坦な面に形成された溝に形成されていることを特徴とする非接触給電用可変径コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電用コイルに関し、特に、渦巻き形状のコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電装置につき広く研究開発が行われている。非接触給電装置(送電装置)は、受電装置に配線接続されない状態で受電装置に電力を供給する。非接触給電装置には、共振回路の共鳴によって受電装置に電力を供給する磁気共鳴方式のものがある。非接触給電装置は送電コイルを備え、受電装置は受電コイルを備えている。この方式では、送電コイル側に形成された共振回路と、受電コイル側に形成された共振回路との共鳴によって、非接触給電装置から受電装置に電力が供給される。
【0003】
受電装置としては、携帯情報端末、電気自動車等、非接触給電装置から離れた位置に配置される装置がある。一般にこれらの装置は、繰り返し充放電が可能なバッテリ(二次電池)を備えており、バッテリが非接触給電装置によって充電される。充電の際には受電装置が非接触給電装置の所定の位置に配置され、非接触給電装置から受電装置のバッテリに充電電力が供給される。
【0004】
以下の特許文献1には、磁気共鳴方式による非接触給電装置に関する記載がある。また、特許文献2に記載されているように、非接触給電装置に設けられた共振回路の可変コンデンサの静電容量を調整し、携帯情報端末等の受電装置に伝送される電力の低下を防ぐ技術が考えられている。特許文献2には、さらに、中継用共振器を用いて、非接触給電装置から受電装置に電力を供給する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3には、複数の直列LC回路を備え、複数の直列LC回路から1つを選択したもの、または複数を選択して直列接続したものによって、非接触給電を行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-110471号公報
【文献】特開2015-164398号公報
【文献】特開2017-5772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触給電装置では、非接触給電装置と受電装置との間の距離や、非接触給電装置から見た受電装置の方向または姿勢等の位置関係によって受電装置に供給される電力が異なることがある。例えば、磁気共鳴方式の非接触給電装置では、非接触給電装置と受電装置との位置関係によって共振周波数が変化し、受電装置に供給される電力が変化してしまう場合がある。また、共振周波数の変化の他、送電コイルや受電コイルの大きさによって、受電装置に供給される電力が異なることもある。非接触給電装置と受電装置との位置関係や、送電コイルまたは受電コイルの大きさによっては、電力伝送効率が低下することがある。
【0008】
本発明は、非接触給電装置から受電装置への電力伝送効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く導線と、前記導線におけるいずれかの第1位置で前記導線に接触し、前記導線を第1端子に接続する第1接点と、前記第1位置よりもN周だけ外側の位置で前記導線に接触し、前記導線を第2端子に接続する第2接点と、前記第1接点および前記第2接点を周方向に移動させる回転駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く導線と、前記導線におけるいずれかの第1位置で前記導線に接触し、前記導線を第1端子に接続する第1接点と、前記第1位置よりもN周だけ外側の位置で前記導線に接触し、前記導線を第2端子に接続する第2接点と、前記第1接点および前記第2接点を前記導線の径方向に移動させる径方向駆動機構と、を備えることを特徴とする。望ましくは、基板を備え、前記導線は、基板の平坦な面に形成された溝に形成されている。
【0011】
また、本発明は、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように、渦巻き形状を描く導線と、前記導線が所定周回するごとに設けられた複数のスイッチとを備え、前記導線は、各前記スイッチが設けられる位置に一対の切断端を形成するギャップを有し、複数の前記スイッチのうちの1つである内側スイッチは、前記一対の切断端のうち外側に向かう一方を第1端子に接続し、複数の前記スイッチのうち、前記内側スイッチよりも一定周回だけ外側にある外側スイッチは、内側に向かう他方を第2端子に接続し、複数の前記スイッチから前記内側スイッチおよび前記外側スイッチが選択され、前記第1端子と前記第2端子との間の実効コイルのコイル径が可変とされたことを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記導線における前記内側スイッチと前記外側スイッチとの間の区間に他の前記スイッチがある場合には、他の前記スイッチは、前記一対の切断端を接続した状態となる。
【0013】
望ましくは、基板を備え、前記導線は、基板の平坦な面に形成された溝に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非接触給電装置から受電装置への電力伝送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】非接触給電システムの構成を示す図である。
図2】第1実施例に係る可変径コイルを示す図である。
図3】第1の構成例に係る接触部を示す図である。
図4】第2の構成例に係る接触部を示す図である。
図5】第2実施例に係る可変径コイルを示す図である。
図6】渦巻き導線のうち2周回する区間に対して設けられた3つのループ選択スイッチの構成を模式的に示す図である。
図7】半径とインダクタンスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。本明細書における上下左右等の用語は、図面における方向を示す。方向を示すこれらの用語は、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係る非接触給電システム100の構成が示されている。非接触給電システム100は、送電装置(非接触給電装置)1および受電装置2を備えている。送電装置1から受電装置2へは非接触で電力が供給され、受電装置2は、負荷回路36に電力を供給する。受電装置2が送電装置1から取得し負荷回路36に供給する電力を示す供給電力情報は、受電装置2から送電装置1に無線送信される。送電装置1は、供給電力情報に基づいて、送電装置1の状態を制御し、送電装置1から受電装置2に供給される電力を調整する。
【0018】
非接触給電システム100の動作について具体的に説明する。送電装置1は、電源回路10、マッチング回路12、可変径コイル14、送電側無線部16および制御部18を備えている。電源回路10は、制御部18による制御に従って、マッチング回路12を介して可変径コイル14に電力を供給する。マッチング回路12は、制御部18による制御に従って電源回路10と可変径コイル14との間のインピーダンス整合状態を調整する。可変径コイル14は、マッチング回路12が備える容量性素子と共に、送電側の共振回路(送電側共振回路)を構成する。
【0019】
受電装置2は、受電コイル30、受電回路32、受電側無線部34を備えている。受電コイル30は、受電回路32が備える容量性素子と共に受電側の共振回路(受電側共振回路)を構成する。
【0020】
可変径コイル14および受電コイル30は、磁界によって、あるいは電磁波によって結合する。可変径コイル14および受電コイル30が結合することで、送電側共振回路と受電側共振回路が共鳴し、送電側共振回路から受電側共振回路へ非接触給電が行われる。受電回路32は、受電コイル30から電力を取得し、負荷回路36に出力する。
【0021】
受電回路32は、負荷回路36に供給される電力を測定し、負荷回路36への供給電力を示す供給電力値を受電側無線部34に出力する。受電側無線部34は、供給電力値を含む供給電力情報を、送電側無線部16に無線送信する。送電側無線部16は、供給電力情報を受信し、制御部18に出力する。
【0022】
制御部18は、供給電力情報に含まれる供給電力値に基づいて、マッチング回路12および可変径コイル14の状態を調整する。制御部18は、例えば、供給電力値が所定の電力閾値を超えるように、マッチング回路12および可変径コイル14の状態を調整する。マッチング回路12は、可変コンデンサ、可変インダクタ等の可変定数素子を備えてよい。制御部18は、供給電力値に基づいて可変定数素子の定数を調整してよい。
【0023】
可変径コイル14は、後述するように、平坦な面を周回する半径(コイル径)が可変となっている。制御部18は、例えば、供給電力値が電力閾値を超えるように、コイル径を調整してよい。
【0024】
図2には、第1実施例に係る可変径コイル14-1が示されている。可変径コイル14-1は、基板40、渦巻き導線42および接触部44を備えている。基板40には、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く溝43が形成されている。渦巻き導線42は、溝43の表面に形成され、溝43と同様、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く。渦巻き導線42の内側の端には内側導体48が形成され、渦巻き導線42の外側には外側導体50が形成されている。内側導体48は、溝43の内側の端に結合する中心凹み49の表面に形成されてよい。中心凹み49は、溝43が描く渦巻き形状の中心において、略円形状に凹んだ領域であってよい。外側導体50は、溝43の外側の端に結合する外側溝51の表面に形成されてよい。外側溝51は、溝43の外側を1周回してよい。
【0025】
図3には、接触部44の第1の構成例として、接触部44Aが、基板40、溝43および渦巻き導線42と共に示されている。接触部44Aは、案内棒52、第1端子58、第1導線60、第2端子62、第2導線64および可動部66を備えている。可動部66は、可動部筐体67、第1接点54および第2接点56を備えている。第1接点54および第2接点56は、可動部筐体67の下方に突出する導体によって形成されている。可動部筐体67には、第1接点54および第2接点56が、渦巻き導線42の径方向に一定の間隔を隔てて固定されている。
【0026】
第1接点54は、渦巻き導線42におけるいずれかの第1位置で渦巻き導線42に接触する。第1接点54は第1導線60を介して第1端子58に接続されており、渦巻き導線42を第1端子58に接続する。第2接点56は、第1位置よりもN周だけの外側の第2位置で渦巻き導線42に接触する。第2接点56は第2導線64を介して第2端子62に接続されており、渦巻き導線42を第2端子62に接続する。
【0027】
図3に示されている例では、N=2であり、第1接点54と第2接点56の間隔は、渦巻き導線42の2ピッチ分の間隔である。
【0028】
案内棒52の一端は、溝43の渦巻き形状の中心部に設けられた回転駆動機構68に結合されている。案内棒52は、回転駆動機構68から、溝43の渦巻き形状の径方向外側(r軸正方向)に向かって延びている。案内棒52は、回転駆動機構68との結合部を中心とし、その長手方向を動径方向として、基板40の表面に沿って周方向(方位角θ方向)に回転自在となっている。
【0029】
第1導線60および第2導線64は、案内棒52の内部に設けられており、その長手方向に沿って延びている。第1導線60の径方向内側の一端は第1端子58に接続され、第2導線64の径方向内側の一端は第2端子62に接続されている。第1導線60および第2導線64のそれぞれの他端は開放されていてよい。
【0030】
可動部66は、可動部筐体67を案内棒52に沿って移動させる径方向駆動機構74を備えてよい。第1接点54に接続された導線は、案内棒52の内部で第1導線60に摺動自在に接触している。第2接点56に接続された導線は、案内棒52の内部で第2導線64に摺動自在に接触している。案内棒52が周方向に移動すると共に、第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42においてNピッチだけ離れた2箇所の位置に接触するように径方向に可動部66が移動する。第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42においてNピッチだけ離れた2箇所の位置を、渦巻き導線42に接触しながら径方向に摺動する。
【0031】
なお、周方向に移動する力を回転駆動機構68が第1接点54および第2接点56に与えることで、径方向に移動する力が溝43から第1接点54および第2接点56に与えられ、これによって第1接点54および第2接点56が径方向に移動する場合には、径方向駆動機構74は設けられなくてもよい。
【0032】
図3に示されている例では、案内棒52が周方向に移動すると共に、第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42において2ピッチだけ離れた2箇所の位置に接触するように径方向に可動部66が移動する。第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42において2ピッチだけ離れた2箇所の位置を、渦巻き導線42に接触しながら径方向に摺動する。
【0033】
第1接点54および第2接点56が、それぞれ、第1導線60および第2導線64との電気的接続を維持しながら周方向に摺動すると共に、第1接点54および第2接点56を備える可動部66は径方向に移動する。これによって、第1端子58から第1導線60を通って第1接点54に至り、渦巻き導線42におけるNピッチ離れた2つの位置のうちの一方の位置(第1位置)に至る電流経路が形成される。さらに、第1位置から渦巻き導線42を外側に向かってN周回した位置にある他方の位置(第2位置)に至る電流経路が形成される。さらに、第2位置に接触する第2接点56から第2導線64を通って第2端子62に至る電流経路が形成される。
【0034】
すなわち、第1端子58と第2端子62との間には、渦巻き導線42のうち、第1位置から渦巻き導線42を外側に向かってN周回した第2位置に至るまでの区間が接続される。図3に示されている例では、第1端子58と第2端子62との間には、渦巻き導線42のうち、2周回した区間が接続される。
【0035】
可動部66が径方向に移動することで、渦巻き導線42のうち電流が流れる区間、すなわち、渦巻き導線42が実効的にコイルとして動作する実効コイルの径が変化する。制御部18(図1)は、回転駆動機構68を制御して案内棒52を周方向に移動させると共に、径方向駆動機構74を制御して可動部66を径方向に移動させる。また、径方向駆動機構74が設けられていない場合には、制御部18(図1)は、回転駆動機構68を制御して案内棒52を周方向に移動させる。これによって、第1端子58と第2端子62との間に接続される実効コイルの径が調整される。
【0036】
上記では、可動部66を渦巻き導線42の周方向に移動させつつ、渦巻き導線42の径方向に移動させることで、第1接点54および第2接点56を渦巻き導線42に沿って摺動させる実施形態が示された。このように、第1接点54および第2接点56が渦巻き導線42に沿って摺動するのではなく、第1接点54および第2接点56が、渦巻き導線42を横切る構成が採用されてもよい。この場合、可動部66は、第1接点54および第2接点56を上下方向に移動自在としながらも、下方に付勢する機構を備えてもよい。すなわち、第1接点54および第2接点56は、上方に押下されたときに、下方に押し戻す力を発生させる付勢機構に取り付けられてよい。また、第1接点54および第2接点56のそれぞれは、径方向かつ上下方向に広がる平面内での形状が下方に丸みを帯びて突出した形状を有してもよい。これによって、第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42を横切る方向に、1ピッチずつ径方向に移動自在となる。
【0037】
図4には、第2の構成例に係る接触部44Bが、基板40、溝43および渦巻き導線42と共に示されている。接触部44Bは、図3に示された接触部44Aに対し、案内棒52をスリット付き搬送部材70に置き換えた点と、図3に示された可動部66に対し、可動部72の形状をスリット付き搬送部材70に適合させた点が異なっている。スリット付き搬送部材70は、径方向を長手方向とする略直方体状の部材に、上面から下面に切り込まれ径方向に延びるスリット71が設けられたものである。可動部72は、スリット付き搬送部材70のスリット71に係合しており、スリット71に沿って径方向に移動自在である。
【0038】
スリット付き搬送部材70の一端は、基板40に形成された溝43の渦巻き形状の中心部に設けられた回転駆動機構68に結合されている。スリット付き搬送部材70は、回転駆動機構68から、溝43の渦巻き形状の径方向外側(r軸正方向)に向かって延びている。スリット付き搬送部材70は、回転駆動機構68との結合部を中心とし、その長手方向を動径方向として、基板40の表面に沿って周方向(方位角θ方向)に回転自在となっている。
【0039】
第1導線60および第2導線64は、スリット付き搬送部材70の内部に設けられており、その長手方向に沿って延びている。第1導線60の径方向内側の一端は第1端子58に接続され、第2導線64の径方向内側の一端は第2端子62に接続されている。第1導線60および第2導線64のそれぞれの他端は開放されてよい。
【0040】
第1接点54に接続された導線は、スリット付き搬送部材70の内部において第1導線60に摺動自在に接触している。第2接点56に接続された導線は、スリット付き搬送部材70の内部において第2導線64に摺動自在に接触している。スリット付き搬送部材70が周方向に移動すると共に、第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42においてNピッチだけ離れた2箇所の位置に接触するように径方向に可動部72が移動する。第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42においてNピッチだけ離れた2箇所の位置を、渦巻き導線42に接触しながら径方向に摺動する。
【0041】
可動部72は、自らを径方向に移動させる径方向駆動機構74を備えてもよい。周方向に移動する力を回転駆動機構68が第1接点54および第2接点56に与えることで、径方向に移動する力が溝43から第1接点54および第2接点56に与えられ、これによって第1接点54および第2接点56が径方向に移動する場合には、径方向駆動機構74は設けられなくてもよい。
【0042】
図3に示された接触部44Aと同様の原理によって、第1端子58と第2端子62との間には、渦巻き導線42のうち、第1位置から渦巻き導線42を外側に向かってN周回した第2位置に至るまでの区間が接続される。図4に示されている例では、第1端子58と第2端子62との間には、渦巻き導線42のうち、2周回した区間が接続される。
【0043】
第1接点54および第2接点56が、それぞれ、第1導線60および第2導線64に接触しながら周方向に摺動すると共に、第1接点54および第2接点56を備える可動部72は径方向に移動する。これによって、渦巻き導線42のうち電流が流れる区間、すなわち、渦巻き導線42が実効的にコイルとして動作する実効コイルの径が変化する。
【0044】
上記では、可動部72を渦巻き導線45の周方向に移動させつつ、渦巻き導線45の径方向に移動させることで、第1接点54および第2接点56を渦巻き導線45に沿って摺動させる実施形態が示された。このように、第1接点54および第2接点56が渦巻き導線45に沿って摺動するのではなく、第1接点54および第2接点56が、渦巻き導線45を横切る構成が採用されてもよい。この場合、可動部72は、第1接点54および第2接点56を上下方向に移動自在としながらも、下方に付勢する機構を備えてもよい。すなわち、第1接点54および第2接点56は、上方に押下されたときに、下方に押し戻す力を発生させる付勢機構に取り付けられてよい。また、第1接点54および第2接点56のそれぞれは、径方向かつ上下方向に広がる平面内での形状が下方に丸みを帯びて突出した形状を有してもよい。これによって、第1接点54および第2接点56は、渦巻き導線42を横切る方向に、1ピッチずつ径方向に移動自在となる。
【0045】
図5には、第2実施例に係る可変径コイル14-2が示されている。可変径コイル14-2は、基板40、渦巻き導線45およびスイッチユニット80を備えている。基板40には、周回するごとに1ピッチだけ外側にずれるように渦巻き形状を描く溝43が形成されている。渦巻き導線45は、溝43の表面に形成されている。渦巻き導線45の内側の端には内側導体48が形成され、渦巻き導線45の外側には外側導体50が形成されている。可変径コイル14-2における渦巻き導線45は、1周回する位置ごとにギャップGが形成されている点が、図2に示された可変径コイル14-1の渦巻き導線42と異なっている。ここでギャップとは、渦巻き導線45が切断され、切断によって形成される一対の切断端が対向している構造をいう。図5に示されている例では、溝43が描く渦巻き形状の中心から径方向外側に向かう直線上に、各ピッチごとにギャップGが形成されている。
【0046】
スイッチユニット80は、各ギャップGに対して設けられたループ選択スイッチSWと、第1パターン導線82および第2パターン導線84を備えている。図6には、渦巻き導線45のうち2周回する区間に対して設けられた3つのループ選択スイッチSW(j-1)、SW(j)およびSW(j+1)の構成が模式的に示されている。各ループ選択スイッチSWは、制御部18(図1)によって制御される。
【0047】
ループ選択スイッチSW(J)は、内側から数えて第J周目の区間における第J位置に形成されたギャップGに設けられている。ここで、Jは整数j-1、jまたはj+1である。各ループ選択スイッチSW(J)は接点T1、接点T2、接点TM、第1切片S1および第2切片S2を備えている。接点T1は一対の切断端のうちの外側に向かう側の一端に接続され、接点T2は一対の切断端のうちの内側に向かう側の他端に接続されている。接点TMは、渦巻き導線45から絶縁された位置に設けられている。
【0048】
第1パターン導線82および第2パターン導線84は、基板40の内層または裏面に設けられてよい。第1パターン導線82および第2パターン導線84は、渦巻き導線45に形成された複数のギャップGが配列された方向と同一方向に平行に延びている。第1パターン導線82の径方向外側の一端には第1端子58が接続され、第2パターン導線84の径方向外側の一端には第2端子62が接続されている。第1パターン導線82および第2パターン導線84のそれぞれの径方向内側の他端は開放されてよい。
【0049】
ループ選択スイッチSW(J)の第1切片S1の一端は接点T1に接続され、他端は接点TMまたは第1パターン導線82の一方に選択的に接触する。図6に示されている例では、ループ選択スイッチSW(j-1)の第1切片S1の他端は第1パターン導線82に接触している。第1パターン導線82には、第1パターン導線82から基板40の表面に至るスルーホールが設けられてもよい。この場合、ループ選択スイッチSW(j-1)の第1切片S1の他端は、第1パターン導線82に接続されたスルーホールに接触する。また、ループ選択スイッチSW(j)の第1切片S1の他端は接点TMに接触している。
【0050】
ループ選択スイッチSW(J)の第2切片S2の一端は接点T2に接続され、他端は接点TMまたは第2パターン導線84の一方に選択的に接触する。図6に示されている例では、ループ選択スイッチSW(j+1)の第2切片S2の他端は第2パターン導線84に接触している。第2パターン導線84には、第2パターン導線84から基板40の表面に至るスルーホールが設けられてもよい。この場合、ループ選択スイッチSW(j+1)の第2切片S2の他端は、第2パターン導線84に接続されたスルーホールに接触する。また、ループ選択スイッチSW(j)の第2切片S2の他端は接点TMに接触している。
【0051】
ループ選択スイッチSW(j-1)~SW(j+1)のそれぞれの第1切片S1および第2切片S2が、図6に示された状態となることで、次のような電流経路が形成される。すなわち、第1端子58から第1パターン導線82を通って渦巻き導線45の第j-1位置に至り、第j-1位置から渦巻き導線45を外側に向かって2周回した位置にある第j+1位置に至る電流経路が形成される。さらに、第j+1位置から第2パターン導線84を通って第2端子62に至る電流経路が形成される。
【0052】
すなわち、第1端子58と第2端子62との間には、渦巻き導線45のうち、第j-1位置から渦巻き導線45を外側に向かって2周回した第j+1位置に至るまでの区間が接続される。
【0053】
渦巻き導線45が、内側の一端から外側に向かってK周し、外側の他端に至る場合、jは1~K-1のうちのいずれかの整数であってよい。jの値が小さい程、第1端子58と第2端子62との間に接続される実効コイルの径は小さくなり、jの値が大きい程、第1端子58と第2端子62との間に接続される実効コイルの径は大きくなる。
【0054】
上記では、2周の実効コイルが形成される動作例が示された。この動作例では、ループ選択スイッチSW(j-1)の第1切片S1の他端が第1パターン導線82に接触し、第2切片S2の他端が接点TMに接触する。また、ループ選択スイッチSW(j)の第1切片S1および第2切片S2のそれぞれの他端が、接点TMに接触する。さらに、ループ選択スイッチSW(j+1)の第1切片S1の他端が接点TMに接触し、第2切片S2の他端が第2パターン導線84に接触する。
【0055】
可変径コイル14-2では、Mを3以上の整数として、M周の実効コイルが形成されてもよい。この場合、ループ選択スイッチSW(j-1)の第1切片S1の他端が第1パターン導線82に接触し、第2切片S2の他端が接点TMに接触する。また、ループ選択スイッチSW(j)~SW(j+M-2)の第1切片S1および第2切片S2のそれぞれの他端が、接点TMに接触する。さらに、ループ選択スイッチSW(j+M-1)の第1切片S1の他端が接点TMに接触し、第2切片S2の他端が第2パターン導線84に接触する。
【0056】
また、可変径コイル14-2では、1周の実効コイルが形成されてもよい。この場合、ループ選択スイッチSW(j-1)の第1切片S1の他端が第1パターン導線82に接触し、第2切片S2の他端が接点TMに接触する。また、ループ選択スイッチSW(j)の第1切片S1の他端が接点TMに接触し、第2切片S2の他端が第2パターン導線84に接触する。
【0057】
このように、可変径コイル14-2では、複数のループ選択スイッチのうちの1つである内側スイッチは、一対の切断端のうち外側に向かう一方を第1端子58に接続する。また、複数のループ選択スイッチのうち内側スイッチよりも外側にある外側スイッチは、一対の切断端のうち内側に向かう一方を第2端子62に接続する。また、渦巻き導線45における内側スイッチと外側スイッチとの間の区間にある他のループ選択スイッチは、一対の切断端を接続した状態となる。
【0058】
上記では、各周回ごとにギャップGおよびループ選択スイッチSWが設けられた構成が示された。ギャップGおよびループ選択スイッチSWは、最も内側の周回区間と最も外側の周回区間に設けられる他、所定周回ごとに設けられてもよい。
【0059】
図7には、可変径コイル14-1および14-2における渦巻き導線42および45の周回数を12周とした場合において、渦巻き導線のうち2周回分の区間を実効コイルとしたときの半径とインダクタンスとの関係が示されている。実効コイルに流れる電流が一定であるという条件の下では、実効コイルの半径が大きくなる程、発生する磁束が大きくなるため、インダクタンスが大きくなる。
【0060】
上記では、可変径コイル14-1および14-2が、送電装置1における送電コイルとして用いられる実施形態が示された。可変径コイル14-1および14-2は、受電装置2における受電コイル30として用いられてもよい。この場合、受電装置2では、受信された電力が所定の電力閾値を超えるように、可動部(66,72)の径方向または周方向の位置を調整することで、実効コイルの径が調整されてもよい。また、図1に示されている受電コイル30と受電回路32との間に可変定数素子を備えるマッチング回路が挿入されている場合には、受信された電力が所定の電力閾値を超えるように可変定数素子の素子定数が調整されてもよい。このように、可変径コイル14-1および14-2は、非接触給電システムにおける非接触給電用コイルとして、すなわち、送電コイルおよび受電コイルのいずれとしても用いられてよい。
【0061】
上記の各実施形態に係る可変径コイル14によれば、可変径コイル14からの距離が異なる様々な受電装置2の状態についても、コイル径を適切な大きさとしつつ、可変径コイル14と電源回路10との間のマッチング状態が適切な状態となる。これによって、送電装置1から受電装置2への電力伝送効率が向上する。
【符号の説明】
【0062】
1 送電装置、2 受電装置、10 電源回路、12 マッチング回路、14,14-1,14-2 可変径コイル、16 送電側無線部、18 制御部、30 受電コイル、32 受電回路、34 受電側無線部、36 負荷回路、40 基板、42,45 渦巻き導線、43 溝、44 接触部、48 内側導体、49 中心凹み、50 外側導体、51 外側溝、52 案内棒、54 第1接点、56 第2接点、58 第1端子、60 第1導線、62 第2端子、64 第2導線、66,72 可動部、67 可動部筐体、68 回転駆動機構、70 スリット付き搬送部材、71 スリット、74 径方向駆動機構、80 スイッチユニット、82 第1パターン導線、84 第2パターン導線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7