IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7550828変形装置、露光装置、および物品の製造方法
<>
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図1
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図2
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図3
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図4
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図5
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図6
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図7
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図8
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図9
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図10
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図11
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図12
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図13
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図14
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図15
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図16
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図17
  • 特許-変形装置、露光装置、および物品の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】変形装置、露光装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022165717
(22)【出願日】2022-10-14
(65)【公開番号】P2024058387
(43)【公開日】2024-04-25
【審査請求日】2024-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春見 和之
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-058782(JP,A)
【文献】特開2011-119551(JP,A)
【文献】特開2013-236026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を変形させる変形装置であって、
前記物体における複数の箇所それぞれ保持する複数の可動部と、
前記物体の表面に対して垂直な方向に前記複数の可動部を移動させる複数の駆動部と、
前記複数の可動部のうち互いに隣り合う可動部一方に設けられた第1制限部材と、他方に設けられた第2制限部材と、を含む制限機構と、
前記複数の駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制限機構は、前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接することで、前記互いに隣り合う可動部の移動を制限する、ことを特徴とする変形装置。
【請求項2】
前記制限機構は、前記複数の箇所のうち互いに隣り合う箇所の変位差が許容範囲内になるように、前記互いに隣り合う可動部の移動を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項3】
前記許容範囲は、前記物体の破損を回避することができる前記変位差の範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の変形装置。
【請求項4】
前記第1制限部材は、前記他方に向かって前記一方から突出するように構成され、
前記第2制限部材は、前記一方に向かって前記他方から突出するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項5】
前記制限機構は、前記第2制限部材を挟み込むように前記一方に設けられた2つの第1制限部材を有し、前記第2制限部材の移動を2つの前記第1制限部材の間に制限するように構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の変形装置。
【請求項6】
前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接することを検知する第1検知部を更に備え、
前記制御部は、前記第1検知部により前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接したことが検知された場合に前記物体の変形が大きくならないように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項7】
前記第1検知部は、前記第1制限部材と前記第2制限部材との接触によって電気的に接続される信号線を含み、前記信号線を流れる信号に基づいて前記接触を検知する、ことを特徴とする請求項6に記載の変形装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1検知部により前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接したことが検知された場合に、前記物体の制御を停止する、ことを特徴とする請求項6に記載の変形装置。
【請求項9】
前記複数の可動部の各々は、各駆動部により前記物体の前記表面に平行な方向に駆動され第1構造体と、前記物体を保持し前記物体の前記表面に対して垂直な前記方向に移動可能な第2構造体と、記第1構造体の移動前記第2構造体の移動に変換するくさび機構とを含み、
前記制限機構は、前記第1構造体に対して設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項10】
前記複数の可動部の各々は、各駆動部により前記物体の前記表面に平行な方向に駆動され第1構造体と、前記物体を保持し前記物体の前記表面に対して垂直な前記方向に移動可能な第2構造体と、記第1構造体の移動前記第2構造体の移動に変換するくさび機構とを含み、
前記制限機構は、前記第2構造体に対して設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項11】
前記互いに隣り合う可動部の一方に設けられるスイッチを更に備え、
前記制御部は、前記スイッチが押下されることで、前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接していることを検知する、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項12】
前記スイッチは、前記互いに隣り合う箇所の変位差が許容範囲の限界に達したときに、前記互いに隣り合う可動部の他方が前記スイッチを押下するように配置される、ことを特徴とする請求項11に記載の変形装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記スイッチが押下された場合に前記物体の制御を停止する、ことを特徴とする請求項11に記載の変形装置。
【請求項14】
前記物体は、板状または線状の部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項15】
前記物体は、ガラスプレートである、ことを特徴とする請求項1に記載の変形装置。
【請求項16】
物体を変形させる変形装置であって、
前記物体における複数の箇所それぞれ保持する複数の可動部と、
前記物体の表面に対して垂直な方向に前記複数の可動部を移動させる複数の駆動部と、
前記複数の駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の箇所のうち互いに隣り合う第1箇所と第2箇所との変位差が許容範囲内になるように、前記複数の可動部のうち互いに隣り合う可動部の移動ソフトウェア制御により制限する、ことを特徴とする変形装置。
【請求項17】
前記複数の可動部の位置を検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、前記検出部で取得した結果に基づいて、前記隣り合う可動部の移動を制限する、ことを特徴とする請求項16に記載の変形装置。
【請求項18】
前記許容範囲は、前記物体の破損を回避することができる前記変位差の範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項16に記載の変形装置。
【請求項19】
前記複数の可動部の各々は、各駆動部により前記物体の前記表面に平行な方向に駆動され第1構造体と、前記物体を保持し前記物体の前記表面に対して垂直な前記方向に移動可能な第2構造体と、記第1構造体の移動前記第2構造体の移動に変換するくさび機構とを含む、ことを特徴とする請求項16に記載の変形装置。
【請求項20】
前記物体は、板状または線状の部材である、ことを特徴とする請求項16に記載の変形装置。
【請求項21】
前記物体は、ガラスプレートである、ことを特徴とする請求項16に記載の変形装置。
【請求項22】
基板を露光する露光装置であって、
原版のパターン像を前記基板に投影する投影光学系と、
物体を変形させる請求項1乃至21のいずれか1項に記載の変形装置と、
を備え、
前記変形装置によって変形される前記物体は、前記投影光学系に含まれる光学素子である、ことを特徴とする露光装置。
【請求項23】
請求項22に記載された露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を変形させる変形装置、それを用いた露光装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体における複数の箇所の各々を駆動して変位させることで当該物体を所望の形状に変形させる変形装置が知られている。変形装置の1つの例としては、天文分野で用いられる大型望遠鏡等に搭載される可変鏡装置が挙げられる。可変鏡装置は、光の反射面を有するミラーを多点で支え、アクチュエータにより各点を駆動して変位させることによりミラーを所望の形状に変形させるものであり、天文観測時における大気の揺らぎ等の影響を補正する補正光学系の構成要素として用いられる。特許文献1には、複数のアクチュエータを用いてミラーを変形させる可変形鏡が開示されている。
【0003】
また、変形装置の他の例として、半導体デバイス等を製造するための露光装置に搭載される光学補正装置が挙げられる。光学補正装置は、例えば、露光装置に設けられた光学素子を変形させることによって露光装置の光学特性を補正するものである。特許文献2には、複数のアクチュエータを用いて平行平面板ガラスを変形させることによって、投影光学系の収差や、基板に形成されているパターンの歪みなどによって生じうるオーバーレイ誤差を補正することが開示されている。特許文献3には、複数のアクチュエータを用いて、スリット状の照明光を規定するための可変ブレードを変形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-18290号公報
【文献】特開2013-236026号公報
【文献】特許第4581639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、可変鏡装置で変形されるミラーや光学補正装置で変形される光学素子などの物体(以下では、単に「物体」と表記することがある)は、脆性材料で構成され、大きな応力を与えると破損するという性質がある。つまり、アクチュエータを用いて物体を変形させる際、当該物体に生じる応力が破壊応力を超えてしまうと当該物体が破損しうる。通常、物体に生じる応力が破壊応力未満になるようにアクチュエータが制御されるが、この際にアクチュエータの制御エラーなどが生じると、意図せずに大きな変位が当該物体に加わり当該物体が破損することがある。そのため、制御エラーなどが生じた場合であっても物体の破損を防止するためのフェールセーフが設けられるとよい。
【0006】
特許文献1には、各アクチュエータについて可動端の移動可能な範囲(即ち、駆動ストローク)を個別に制限する機構が開示されている。しかしながら、各アクチュエータの駆動ストロークを個別に制限するだけでは、物体における複数の箇所のうち互いに隣り合う箇所同士の変位差によっては当該物体に過度が負荷が掛かり、当該物体が破損することがある。
【0007】
そこで、本発明は、物体を変形させる際の当該物体の破損を低減するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、物体を変形させる変形装置に係り、前記変形装置は、前記物体における複数の箇所をそれぞれ保持する複数の可動部と、前記物体の表面に対して垂直な方向に前記複数の可動部を移動させる複数の駆動部と、前記複数の可動部のうち互いに隣り合う可動部の一方に設けられた第1制限部材と、他方に設けられた第2制限部材と、を含む制限機構と、前記複数の駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制限機構は、前記第1制限部材と前記第2制限部材とが互いに当接することで、前記互いに隣り合う可動部の移動を制限する。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、物体を変形させる際の当該物体の破損を低減するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の変形装置の構成例を示す概略図
図2】第1実施形態の変位部の構成例を模式的に示す図
図3】第1実施形態の制限機構の構成例を説明するための図
図4】第1実施形態の制限機構を設けた効果を説明するための図
図5】第1実施形態の制限機構を設けた効果を説明するための図
図6】第2実施形態の変形装置の構成例を示す概略図
図7】第2実施形態の制限機構の構成例を説明するための図
図8】第2実施形態の制限機構の変形例を説明するための図
図9】第3実施形態の変位部の構成例を模式的に示す図
図10】第3実施形態の制限機構の構成例を説明するための図
図11】第3実施形態の制限機構の構成例を説明するための図
図12】第4実施形態の変形装置の構成例を示す概略図
図13】第4実施形態の変位部の構成例を模式的に示す図
図14】第4実施形態の変位部の構成例を模式的に示す図
図15】第5実施形態の変位部の構成例を模式的に示す図
図16】露光装置の構成例を模式的に示す図
図17】変形装置の課題を説明するための図
図18】変形装置の課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
はじめに、物体を変形させる変形装置の課題について図17図18を参照しながら説明する。図17は、物体としての平行平面板ガラスGを変形させる構成例を模式的に示す斜視図である。図中の矢印は、平行平面板ガラスGにおける複数の箇所の各々を駆動して変位させるアクチュエータACTを示している。つまり、図17は、各アクチュエータACTによって平行平面板ガラスGの各箇所を駆動して変位させる構成例を示している。この構成例は、例えば露光装置の投影光学系の光路中に配置され、光学系のディストーション補正などに用いられるものである。
【0014】
図18の上図は、平行平面板ガラスGを変形させる構成例(図17の構成例)を模式的に示す側面図(Y軸方向から見た図)である。図18の上図では、平行平面板ガラスGの一辺に配列された複数のアクチュエータACT1~ACT6が示されている。また、図18の下図は、複数のアクチュエータACT1~ACT6によって生成されうる平行平面板ガラスGの形状を示すグラフである。当該グラフは、各アクチュエータによって平行平面板ガラスGの各箇所を変位させたときの平行平面板ガラスGの面形状を示している。当該グラフでは、形状1(実線)および形状2(破線)の2種類の形状が示されている。
【0015】
平行平面板ガラスGは、脆性材料であり、平行平面板Gに生じる応力が破壊応力を超えると破損しうる。例えば、平行平面板ガラスGは、アクチュエータACT1~ACT6でそれぞれ変位が与えられる複数の箇所のうち互いに隣り合う箇所同士(以下では、単に「隣り合う箇所同士」と表記することがある)の変位差が許容範囲Rを超えてしまうと破損しうる。なお、隣り合う箇所同士の変位差の許容範囲Rは、グラフの下に点線矢印で示されている。
【0016】
隣り合う箇所同士の変位差を許容範囲R内に収める1つの方法としては、各アクチュエータの駆動ストローク自体を許容範囲R以下にするための機械的な制限を各アクチュエータに個別に設けることが挙げられる。しかしながら、この方法では、平行平面板ガラスGの変形可能範囲が狭まりうる。例えば、図18の下図に示されるように、必要な形状として形状1および形状2がある場合、これらの形状を実現するためには、アクチュエータの駆動ストローク(図中の「必要ストローク」)を許容範囲Rよりも大きくしなければならない箇所が生じうる。つまり、各アクチュエータの駆動ストローク自体を機械的に制限する場合、必要な形状である形状1および形状2を生成することが困難になりうる。そのため、平行平面板ガラスGの変形可能範囲を広げて形状1および形状2を実現するためには、各アクチュエータの駆動ストロークを許容範囲Rよりも大きくする必要がある。
【0017】
また、隣り合う箇所同士の変位差を許容範囲R内に収める他の方法としては、隣り合う箇所同士の変位差が許容範囲R内に収まるように各アクチュエータに制御的な制限を設けることが挙げられる。しかしながら、この方法では、各アクチュエータの制御エラー(例えば、駆動指令系のエラーや、制御系のエラー)が生じた場合、意図せずに大きな変位(負荷)が平行平面板ガラスGの各箇所に加わり、平行平面板ガラスGが破損することがある。
【0018】
そこで、本発明に係る変形装置では、物体における互いに隣り合う箇所同士の変位差を許容範囲内にするための制限機構が設けられる。許容範囲Rは、物体の破損を回避することができる変位差の範囲、換言すると、物体に生じる応力が当該物体の破壊応力以下となる変位差の範囲に設定されうる。なお、制限機構は、物体における互いに隣り合う箇所同士の変位差を規定値未満にする機構として理解されてもよい。この場合、規定値は、物体の破損を回避することができる変位差の限界値以下、換言すると、物体に生じる応力が当該物体の破壊応力以下となる変位差の限界値以下に設定されうる。
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態について説明する。以下の実施形態では、本発明に係る変形装置が変形する対象の物体として平行平面板ガラスを例示する。但し、当該物体は、平行平面板ガラスに限られず、任意の部材であってもよい。当該物体は、板状または線状に構成されたものでありうる。一例として、当該物体は、望遠鏡やリソグラフィ装置(露光装置を含む)等の特性を補正するための部材(ミラーやガラスプレート、可変ブレードなど)であってもよい。
【0020】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態の変形装置100の構成例を示す概略図である。本実施形態の変形装置100は、平行平面板ガラス120における複数の箇所をそれぞれ変位させることで平行平面板ガラス120を変形させる装置である。変形装置100は、例えば、半導体デバイスの製造に用いられるリソグラフィ装置や、天文分野で用いられる望遠鏡などの光学特性を補正するための光学補正装置として適用されうる。なお、本明細書および図面では、平行平面板ガラス120の面(上面)に垂直な方向をZ方向とするXYZ座標系で方向を示す。また、平行平面板ガラス120は、X方向に伸びる辺とY方向に伸びる辺とを有する矩形形状であるものとし、以下では単に「板ガラス120」と表記することがある。
【0021】
変形装置100は、板ガラス120における複数の変位対象箇所(作用点)をそれぞれZ方向に変位させる複数の変位部A101~A112を備える。本実施形態の場合、複数の変位部A101~A112は、図1に示すように、板ガラス120のうちX方向に伸び且つ互いに対して反対側の2つの辺に対して6個ずつ設けられる。具体的には、6個の変位部A101~A106が-Y方向側の辺に対してX方向に間隔をあけて配置されており、6個の変位部A107~A112が+Y方向側の辺に対してX方向に間隔をあけて配置されている。なお、本実施形態では、12個の変位部A101~A112が変形装置100に設けられているが、変位部の数は任意でありうる。
【0022】
また、変形装置100は、複数の変位部A101~A112を制御することにより板ガラス120の変形を制御する制御部CNTを備える。制御部CNTは、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサとメモリなどの記憶部とを含むコンピュータによって構成されうる。制御部CNTは、複数の変位部A101~A112の各々を個別に制御することにより、板ガラス120における複数の変位対象箇所の各々を個別にZ方向に変位させ、板ガラス120を所望の形状に変形させることができる。
【0023】
[変位部の構成例]
次に、複数の変位部A101~A112の各々の構成例について、図2を参照しながら説明する。複数の変位部A101~A112は同じ構成を有しており、図2には、1個の変位部130の構成例が模式的に示されている。図2は、1個の変位部130を+X方向側から見た図である。変位部130は、例えば、板ガラス120を保持する保持部HDと、保持部HDを駆動する駆動部DRとを備えうる。なお、図2では、板ガラス120の端部のみが示されている。
【0024】
保持部HDは、板ガラス120の変位対象箇所を保持する機構あり、例えば、Zスライド部131とクランプ部132とを含みうる。クランプ部132は、板ガラス120をクランプ(保持、把持)するための部材であり、Zスライド部131によって支持される。クランプ部132は、板ガラス120の変位対象箇所を上下方向(±Z方向)から挟み込むように配置され、板ガラス120の変位対象箇所に力を与えて変位させる作用点となる。Zスライド部131は、駆動部DRによってZ方向に駆動される可動部であり、板ガラス120の変位対象箇所にクランプ部132を介して接続される。Zスライド部131は、例えばベアリング、レールおよびスライダによって構成された直動ガイド機構を用いたZ直動ガイド136に搭載され、Z直動ガイド136によってガイドされてZ方向のみに移動することが可能となっている。
【0025】
駆動部DRは、保持部HD(Zスライド部131)をZ方向に駆動する機構(アクチュエータ)である。本実施形態では、駆動部DRは、ボールナット133と、ボールねじ134と、モータ135とによって構成されうる。ボールナット133は、Zスライド部131の内部に配置(挿入)されており、ボールネジ134は、モータ135によって回転駆動される。モータ135によってボールネジ134が回転駆動されることで、ボールネジ134に沿ってボールナット133をZ方向に移動させ、それに伴って、ボールナット133が内部に配置されたZスライド部131をZ方向に駆動することができる。モータ135およびZ直動ガイド136は、例えば変形装置100のフレームを構成する本体部137によって支持されている。ここで、本実施形態では、駆動部DRとして、ボールナット133とボールねじ134とモータ135とを含むアクチュエータを用いたが、それに限られず、例えばリニアモータやエアシリンダなどの他のアクチュエータが用いられてもよい。
【0026】
このように、複数の変位部A101~A112の各々は、保持部HDと駆動部DRとを含むように構成される。つまり、変形装置100は、板ガラス120における複数の変位対象箇所をそれぞれ保持する複数の保持部HD(即ち、複数のZスライド部131(可動部))と、複数の保持部HDをそれぞれ駆動して変位させる複数の駆動部DRとを備える。これにより、制御部CNTは、複数の駆動部DRの各々を個別に制御することにより、板ガラス120を所望の形状に変形することができる。
【0027】
ところで、板ガラス120に強制変位を与えて変形させる変形装置100では、前述したように、板ガラス120の隣り合う変位対象箇所の変位差によっては、局所的に板ガラス120が大きく変形しうる。この場合において、板ガラス120の破壊応力以上の応力が板ガラス120に生じると、板ガラス120が破損しうる。そこで、本実施形態の変形装置100は、制限機構LMを備える。制限機構LMは、板ガラス120の隣り合う変位対象箇所同士のZ方向の変位差が許容範囲R内になるように、互いに隣り合うZスライド部131同士(可動部同士)のZ方向の相対的な位置ずれを機械的に制限する機構である。制限機構LMは、互いに隣り合うZスライド部131同士がZ方向に所定の距離以上離れないように、当該互いに隣り合うZスライド部131同士のZ方向の相対位置を制限する機構として理解されてもよい。
【0028】
ここで、許容範囲Rは、前述したように、板ガラス120の破損を回避することができる変位差の範囲、換言すると、板ガラス120に生じる応力が当該板ガラス120の破壊応力以下となる変位差の範囲のことである。許容範囲Rは、例えば、実験やシミュレーション(例えば強度計算)などを用いて板ガラス120の破壊応力を事前に算出することによって事前に設定されうる。また、板ガラス120の隣り合う変位対象箇所とは、板ガラス120における複数の変位対象箇所のうち互いに隣り合う2つの変位対象箇所のことを示しており、以下では単に「隣り合う変位対象箇所」と表記することがある。
【0029】
[制限機構の構成例]
次に、制限機構LMの構成例について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の変形装置100を-Y方向側から見た図であり、複数の変位部A101~A112のうち板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた6個の変位部A101~A106を示している。なお、図3では、図を分かり易くするため、各変位部A101~A106におけるZスライド部131およびZ直動ガイド136のみを抜き出して示しており、駆動部HDなどの他の部品の図示を省略している。また、図3で示される制限機構LMは、図1図2では図示が省略されていただけである。
【0030】
制限機構LMは、互いに隣り合うZスライド部131(可動部)のうち一方に設けられた第1制限部材138(突き当り部)と、他方に設けられた第2制限部材139(突き当て部)とを有する。第1制限部材138は、当該他方に向かって当該一方から突出するように構成され、第2制限部材139は、当該一方に向かって当該他方から突出するように構成されうる。そして、第1制限部材138および第2制限部材139は、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界に達したときに互いに突き当たることによって、互いに隣り合うZスライド部131同士のZ方向の相対的な位置ずれを制限するように配置される。
【0031】
例えば、変位部A101~A102に着目すると、変位部A101~A102のZスライド部131同士の相対的な位置ずれを制限するための制限機構LMが、変位部A101のZスライド部131と変位部A102のZスライド部131との間に設けられる。当該制限機構LMでは、第1制限部材138が、変位部A101のZスライド部131における変位部A102側の側面に取り付けられ、第2制限部材139が、変位部A102のZスライド部131における変位部A101側の側面に取り付けられる。また、第1制限部材138は、第2制限部材139を上下方向(±Z方向)に挟むように2つ配置され、2つの第1制限部材138によって凹型の形状が形成される。そして、第2制限部材139は、凹型の形状に配置された2つの第1制限部材138の間に挿入されるとともに、第2制限部材139のZ方向の移動が2つの第1制限部材138の間に制限される。このような制限機構LMの構成により、変位部A101~A102によって変位される隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲R内になるように、変位部A101~A102のZスライド部131同士のZ方向の相対的な位置ずれを制限することができる。なお、変位部A102~A106の間、および、変位部A107~A112の間に設けられた制限機構LMについても、変位部A101~A102の間と同様の構成を有する。
【0032】
ここで、第1制限部材138および第2制限部材139は、各Zスライド部131の一部として理解されてもよい。この場合、複数のZスライド部131は、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界値に達したときに、互いに隣り合うZスライド部131同士が部分的に突き当たる(接触する)と解釈することができる。
【0033】
上述したように、本実施形態の変形装置100では、第1制限部材138と第2制限部材139とで構成された制限機構LMが設けられる。この制限機構LMにより、隣り合う変位対象箇所同士のZ方向の変位差が許容範囲R内に制限されるように、互いに隣り合うZスライド部131同士のZ方向の相対的な位置ずれが機械的に制限される。つまり、制限機構LMは、隣り合うZスライド部131同士の相対位置を制限するメカストッパとして機能する。このように制限機構LMによって隣り合うZスライド部131同士の相対位置が制限されるため、各駆動部DRの制御エラーが生じた場合や、故障などによって各駆動部DRが暴走した場合であっても、板ガラス120の破損を回避することができる。なお、制限機構LMの第1制限部材138および第2制限部材139は、駆動部DR(モータ135)が出力可能な最大の推力によって互いに衝突した場合であっても変形(破損)しない程度の十分な機械的強度および剛性を有しているとよい。
【0034】
[制限機構の効果]
次に、制限機構LMを設けることで得られる効果について、図4図5を参照しながら説明する。図4は、図3と同様に、本実施形態の変形装置100を-Y方向側から見た図であり、複数の変位部A101~A112のうち板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた6個の変位部A101~A106を示している。図4は、図3に示す状態に対し、隣り合うZスライド部131同士をZ方向にずらした状態を示している。具体的には、図4は、板ガラス120の中心位置の変位が変わらないように、変位部A101~A103のZスライド部131を下方向(-Z方向)に駆動し、変位部A104~A106のZスライド部131を上方向(+Z方向)に駆動した状態を示している。図4の例では、板ガラス120の隣り合う変位対象箇所同士が許容範囲Rの限界に達した状態である。一方、図5は、図4に示す状態から、変位部A101~A106におけるZスライド部131の位置関係を変えることなく全体的に下方向(-Z方向)に駆動した状態を示している。
【0035】
ここで注目すべきことは、各変位部A101~A106において、許容範囲Rより大きい駆動ストロークで駆動部DRによりZスライド部131をZ方向に駆動可能であることである。各変位部の駆動部DRの駆動ストローク(駆動可能範囲)を個別に制限することで板ガラス120の破損を回避する従来の方法では、図4図5に示されるように、板ガラス120の面形状の大きな変化を実現することは困難である。つまり、本実施形態の変形装置100は、各変位部の駆動部DRの駆動ストロークを十分大きくしつつも、隣り合う変位対象箇所同士の変位差に起因する板ガラス120の破損を回避(低減)することができる。
【0036】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で言及する事項以外は第1実施形態に従いうる。
【0037】
図6は、本実施形態の変形装置100を+Z方向から見た図である。本実施形態の変形装置100は、制限機構LMの第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知する検知部140を更に備える。検知部140は、信号線142(衝突信号ケーブル)によって第1制限部材138および第2制限部材139と電気的に接続されており、信号線142を流れる信号に基づいて第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知するように構成されうる。ここで、第1制限部材138および第2制限部材139が各Zスライド部131の一部として構成されている場合、検知部140は、複数のZスライド部131の部分的な接触を検知するものとして理解されてもよい。
【0038】
また、制御部CNTは、信号線143(駆動ケーブル)によって各変位部A101~A112の駆動部DRと電気的に接続されており、各変位部A101~A112の駆動部DRを制御する。制御部CNTは、信号線144(検知信号ケーブル)によって検知部140とも電気的に接続されており、検知部140での検知結果を取得する。本実施形態の場合、制御部CNTは、第1制限部材138と第2制限部材139との接触が検知部140で検知された場合、各変位部A101~A112(各駆動部DR)による板ガラス120の変形を停止(中止)する。
【0039】
図7は、本実施形態の変形装置100を-Y方向側から見た図であり、板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた6個の変位部A101~A106を示している。なお、図7では、図を分かり易くするため、本実施形態の説明で必要な構成要素のみを抜き出して示している。図7では、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素に対して同じ符号が付与されており、当該構成要素についての詳細な説明については省略する。
【0040】
本実施形態の変形装置100では、第1制限部材138および第2制限部材139はそれぞれ電極を有する。第1制限部材138の電極は、信号線142-1を介して検知部140に電気的に接続されている。第2制限部材139の電極は、信号線142-2を介して検知部140に電気的に接続されている。そして、第1制限部材138と第2制限部材139とが接触した場合に、電極同士も接触し、信号線142-1と信号線142-2とが電気的に接続される。検知部140は、信号線142-1と信号線142-2との電気的に接続により該信号線を流れる信号(例えば電流)に基づいて、第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知することができる。
【0041】
図7の例では、各変位部A101~A105に設けられた第1制限部材138の電極は、信号線142-1によって並列に検知部140に電気的に接続されている。各変位部A102~A106に設けられた第2制限部材139の電極は、信号線142-2によって並列に検知部140に電気的に接続されている。この場合、第1制限部材138と第2制限部材139とから成る組が複数構成され、当該複数の組のうちいずれかの組での第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知することができる。
【0042】
検知部140で第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知した場合、検知信号が信号線144を介して制御部CNTに送信される。この場合、制御部CNTは、検知信号の受信に応じて、各変位部A101~A112(各駆動部DR)を直ちに停止させる。このような構成により、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界値に達した場合に板ガラス120の変形を直ちに停止(中止)し、板ガラス120に局所的に大きな応力が掛かること、即ち、板ガラス120の破損を回避することができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、複数の第1制限部材138の各々と複数の第2制限部材139の各々に信号線(ケーブル)を接続し、当該信号線を検知部140まで実装をする必要がある。但し、第1制限部材138と第2制限部材139との接触の検知に応じて直ちに板ガラス120の変形が停止されるため、第1制限部材138および第2制限部材139の機械的強度は必要とされない。つまり、第1制限部材138および第2制限部材139は、第1実施形態と比べて小さくすることが可能となる。本実施形態の構成は、複数の変位部の配置が密な場合や、変形装置100の小型化が求められる場合に特に有効である。
【0044】
[変形例]
以下、第2実施形態の変形例について説明する。図8は、図7と同様に、本実施形態の変形装置100を-Y方向側から見た図であり、板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた6個の変位部A101~A106を示している。なお、図8では、図を分かり易くするため、本実施形態の説明で必要な構成要素のみを抜き出して示している。
【0045】
図8の例は、図7の例と比べて、信号線(ケーブル)の実装が異なる。図8の例では、各変位部A101~A105に設けられた第1制限部材138の電極は、信号線145によって直列に電気的に接続されている。各変位部A102~A106に設けられた第2制限部材139の電極は、信号線146によって直列に電気的に接続されている。このような構成では、2本の信号線145~146だけで第1制限部材138と第2制限部材139との接触を検知することができるため、構成(実装)がシンプルになるというメリットがある。
【0046】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で言及する事項以外は第1実施形態に従いうる。また、本実施形態は、第2実施形態を引き継いでもよい。
【0047】
本実施形態の変形装置100では、第1実施形態と比べて各変位部の構成が異なる。図9は、本実施形態における1個の変位部130’の構成例を模式的に示しており、1個の変位部130’を+X方向側から見た図である。なお、図9では、第1~第2実施形態と同様の機能を有する構成要素に対して同じ符号が付与されており、当該構成要素についての詳細な説明については省略する。
【0048】
本実施形態の変位部130’では、例えば、クランプ部132と、Yスライド部149aと、Zスライド部149bと、くさび直動ガイド147とが保持部HDに含まれうる。Yスライド部149aは、例えばベアリング、レールおよびスライダによって構成された直動ガイド機構を用いたY直動ガイド148に搭載され、Y直動ガイド148によってガイドされてY方向のみに移動することが可能となっている。Zスライド部149bは、例えばベアリング、レールおよびスライダによって構成された直動ガイド機構を用いたZ直動ガイド136に搭載され、Z直動ガイド136によってガイドされてZ方向のみに移動することが可能となっている。変位部130’は、Yスライド部149aをY方向に駆動すると、くさび構造によってZ方向に駆動方向が変換され、Zスライド部149bが上下方向(Z方向)に駆動するように構成される。これにより、クランプ部132を介してZスライド部149bによって保持された板ガラス120の変位対象箇所をZ方向に駆動して変位させることができる。
【0049】
クランプ部132は、板ガラス120をクランプするための部材であり、Zスライド部149bによって支持される。Yスライド部149aは、Y直動ガイド148によってガイドされてY方向(第1方向)に移動可能な構造体(第1構造体)であり、駆動部DRによって駆動される。Zスライド部149bは、Z直動ガイド136によってガイドされてZ方向(第2方向)に移動可能な構造体(第2構造体)である。Yスライド部149aの上面およびZスライド部149bの下面は、+Y方向に進むにつれて-Z方向に向かって傾斜した傾斜面(くさびの傾斜面)として形成されている。
【0050】
Yスライド部149aの上面とZスライド部149bの下面との間には、くさび直動ガイド147が配置されている。くさび直動ガイド147の下側はYスライド部149aの上面に接続され、くさび直動ガイド147の上側はZスライド部149bの下面に接続されている。くさび直動ガイド147は、傾斜面であるYスライド部149aの上面に沿って平行にZスライド部149bを直線的にガイドして摺動させる。Yスライド部149aがY方向に移動するとYスライド部149aとZスライド部149bとの間の傾斜面の重なり量が変化する。結果として、Yスライド部149aが駆動部DRによってY方向に駆動されると、それに伴って、Zスライド部149bがZ方向に駆動されることになる。つまり、Yスライド部149aおよびZスライド部149bに形成された傾斜面とくさび直動ガイド147により、Y方向へのYスライド部149aの移動をZ方向へのZスライド部149bの移動に変換する変換機構(くさび機構)が構成される。
【0051】
このような変換機構は、Y方向へのYスライド部149aの移動量(移動速度)に対してZ方向へのZスライド部149bの移動量(移動速度)が小さい場合に「減速機構」と呼ばれることがある。例えば、傾斜面の角度が15°程度であれば、Y方向の移動量に対してZ方向の移動量が1/4程度に縮小される。この場合、板ガラス120の変位対象箇所を駆動して変位させる際の分解能を向上させることができるとともに、駆動に必要な力も小さくすることができる。
【0052】
Yスライド部149aを駆動する駆動部DRは、第1実施形態と同様に、ボールナット133と、ボールねじ134と、モータ135とで構成されうる。ボールナット133は、Yスライド部149aの内部に配置(挿入)されており、ボールネジ134は、モータ135によって回転駆動される。モータ135によってボールネジ134が回転駆動されることで、ボールネジ134に沿ってボールナット133をY方向に移動させ、それに伴って、ボールナット133が内部に配置されたYスライド部149aをY方向に駆動することができる。また、本実施形態の駆動部DRには、ボールネジ134を回転自在にガイド(支持)する回転ガイドRGが設けられる。回転ガイドRGは、例えばボールベアリング等で構成されうる。ここで、本実施形態では、駆動部DRとして、ボールナット133とボールねじ134とモータ135とを含むアクチュエータを用いたが、それに限られず、例えばリニアモータやエアシリンダなどの他のアクチュエータが用いられてもよい。
【0053】
次に、制限機構LMの構成例について、図10を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の変形装置100を+Z方向から見た図であり、複数の変位部A101~A112のうち板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた3個の変位部A101~A103を抜き出して示している。なお、図10では、本実施形態の説明で必要な構成要素のみを抜き出して示している。
【0054】
前述した第1実施形態では、Z方向に移動可能なZスライド部131に対して制限機構LM(第1制限部材138、第2制限部材139)が取り付けられたが、本実施形態では、Y方向に移動可能なYスライド部149aに対して制限機構LMが取り付けられる。制限機構LMの構成は、基本的には第1実施形態で説明したとおりであるが、本実施形態の制限機構LMは、Y方向におけるYスライド部149a同士の相対的な位置ずれを制限するように取り付けられる。具体的には、第1制限部材138は、第2制限部材139を左右方向(±Y方向)に挟むように2つ配置され、2つの第1制限部材138によって凹型の形状が形成される。そして、第2制限部材139は、凹型の形状に配置された2つの第1制限部材138の間に挿入されるとともに、第2制限部材139のY方向の移動が2つの第1制限部材138の間に制限される。このような制限機構LMの構成により、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲R内になるように、Yスライド部149a同士のY方向の相対的な位置ずれを制限することができる。
【0055】
図11は、図10と同様に、本実施形態の変形装置100を+Z方向から見た図であり、3個の変位部A101~A103を抜き出して示している。図11は、図10に示す状態に対し、変位部A103のYスライド部149aを-Y方向に限界まで駆動した状態を示している。このとき、変位部A103に設けられた第2制限部材139が変位部A102に設けられた第1制限部材138に突き当たることで、変位部A102~A103のYスライド部149a同士の相対的な位置ずれが制限される。
【0056】
ここで、第1実施形態では、Z方向の駆動を制限する構成であったが、本実施形態では、Y方向の駆動を制限する構成である。本実施形態の構成によれば、駆動制限範囲が広くなり、制限範囲の設定精度が緩和されるというメリットがある。例えば、Z方向における位置ずれの制限を20μmに設定する場合、第1実施形態では、制限機構LMにおける第1制限部材138と第2制限部材139との隙間を±10μmに設定し、更に、それらの位置関係も高精度(1μm程度)に設定しなくてはいけない。それに対し、本実施形態では、変換機構ににおけるY方向の移動量に対するZ方向の移動量への縮小率が1/4であるとすると、制限機構LMにおける第1制限部材138と第2制限部材139との隙間を、第1実施形態の4倍である±40μmで設定すればよい。つまり、本実施形態の構成では、変位部130’の組立調整が容易になるというメリットがある。また、変換機構によってY方向の駆動力が拡大されてZ方向に伝わるため、Yスライド部149aを駆動するためのY方向の駆動力を小さくすることができる。結果として、制限機構LMにおいて第1制限部材138と第2制限部材139とが突き当たるときの力も小さくなるため、第1制限部材138および第2制限部材139の機械的強度および剛性を下げることができ、小型化が可能となるメリットもある。
【0057】
本実施形態では、Yスライド部149aに対してのみ制限機構LMを設ける構成を説明した。但し、それに限られず、Yスライド部149aに加えて、または代わりに、Zスライド部149bに対して制限機構LMを設けてもよい。
【0058】
<第4実施形態>
本発明に係る第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で言及する事項以外は第1実施形態に従いうる。また、本実施形態は、第2~第3実施形態を引き継いでもよい。
【0059】
図12は、本実施形態の変形装置100を-Y方向側から見た図であり、板ガラス120の-Y方向側の辺に対して設けられた3個の変位部A101~A103を抜き出して示している。なお、図12では、図を分かり易くするため、本実施形態の説明で必要な構成要素のみを抜き出して示している。図12では、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素に対して同じ符号が付与されており、当該構成要素についての詳細な説明については省略する。
【0060】
本実施形態の変形装置100は、図12に示されるように、スイッチ150a~150b(センサ)と検知部150(第2検知部)とを更に備える。各スイッチ150a~150bは、互いに隣り合うZスライド部131の一方に設けられ、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界に達したときに当該互いに隣り合うZスライド部131の他方に接触するように配置される。そして、検知部150は、各スイッチ150a~150bからの信号に基づいて、各スイッチ150a~150bへの当該他方の接触を検知する。
【0061】
変位部A101~A102に着目すると、スイッチ150aは、変位部A101のZスライド部131における変位部A102側の側面から突出した第1支持部材151に設けられている。第1支持部材151は、スイッチ150aを支持(保持)するための部材であり、前述した制限機構LMの第2制限部材139と同様の構成を有しうる。第1支持部材151は、変位部A101のZスライド部131の一部として理解されてもよい。スイッチ150aは、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界に達したときに、変位部A102のZスライド部131に設けられた第1制限部材138に接触するように第1支持部材151に配置される。そして、スイッチ150aは、内部に電気接点を有しており、第1制限部材138が接触してスイッチ150aが押されると電気の導通状態が変わることで、第1制限部材138が接触したことを示す信号を出力する。なお、第1制限部材138は、変位部A102のZスライド部131における変位部A101側の側面に取り付けられた部材であり、変位部A102のZスライド部131の一部として理解されてもよい。
【0062】
一方、スイッチ150bは、変位部A102のZスライド部131における変位部A101側の側面から突出した第2支持部材152に設けられている。第2支持部材152は、スイッチ150bを支持(保持)するための部材であり、前述した制限機構LMの第1制限部材138と同様の構成を有しうる。第2支持部材152は、変位部A102のZスライド部131の一部として理解されてもよい。スイッチ150bは、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界に達したときに、変位部A101のZスライド部131の第1支持部材151に接触するように第2支持部材152に配置される。そしてスイッチ150bは、内部に電気接点を有しており、第1支持部材151が接触してスイッチ150bが押されると電気の導通状態が変わることで、第1支持部材151が接触したことを示す信号を出力する。
【0063】
検知部150は、スイッチ150a~150bからの信号に基づいて、スイッチ150aへの第1制限部材138の接触、または、スイッチ150bへの第1支持部材151の接触を検知する。検知部150により各スイッチ150a~150bへの接触を検知した場合、検知信号が検知部150から制御部CNTに送信される。制御部CNTは、検知信号の受信に応じて、各変位部A101~A112(各駆動部DR)による板ガラス120の変形を直ちに停止(中止)させる。このような構成により、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界値に達した場合に板ガラス120の変形を直ちに停止(中止)し、板ガラス120に局所的に大きな応力が掛かること、即ち、板ガラス120の破損を回避することができる。
【0064】
また、複数の変位部A101~A112において互いに隣り合うZスライド部131ごとにスイッチ150a~150bが設けられている。そのため、検知部150は、どこの隣り合うZスライド部131でスイッチ150a~150bへの接触が検知されたのかを判別(判断)することが可能となる。したがって、駆動を停止すべき変位部を選別し、その変位部の駆動部DRのみを停止させることも可能となる。また、接触を検知したのちに復帰をする場合に、どの変位部の駆動部DRをどの方向に駆動させればよいかの判断が容易となるメリットもある。
【0065】
本実施形態では、各スイッチ150a~150bとして、内部に電気接点を持ったスイッチを使用する例を説明したが、例えばフォトインタラプタなどの他の種類のスイッチを使用しても同様の効果を得ることができる。高精度な位置決めを要する精密光学装置などにおいては、フォトインタラプタなどの発熱をするスイッチを用いると熱歪による位置ずれがエラーの原因となるため、発熱しない電気接点を持った用いる方がよい場合もある。
【0066】
各スイッチ150a~150bとしては、一般にノーマリークローズのスイッチを採用するとよい。ノーマリーオープンのスイッチを採用した場合、何らかの影響で信号線が断線してしまったときに接触の検知ができないため、板ガラス120を破損してしまう可能性がある。一方、ノーマリークローズのスイッチを採用した場合、信号線が断線してしまったときに、接触を検知した状態と同じ状態に遷移する。そのため、駆動部DRを停止して板ガラス120の破損を低減することができる。
【0067】
ここで、本実施形態では、スイッチ150a~150bを使用する例を説明したが、Zスライド部131のZ方向の位置を検出するセンサ(検出部)を設けて、当該センサにより当該位置を常時モニター(検出)する構成であってもよい。この場合、制御部CNTは、センサの検出結果に基づいて、互いに隣り合うZスライド部131同士の相対的な位置ずれを常時計算し、当該位置ずれが所定値に達した場合に、駆動部DRによる板ガラス120の変形を停止しうる。この方式は、一般的に計算処理などがあるため、ソフトウェアで実現することになるが、バグがあった場合には機能しないため、安全性としては前述した実施形態の方式の方がよい。但し、組立調整が不要となるため、容易に実現できるといったメリットがある。なお、所定値は、例えば、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rの限界に達するときの当該位置ずれのことであり、実験やシミュレーションなどを用いて事前に設定されうる。
【0068】
図13は、ロータリエンコーダ153をセンサ(検出部)としてモータ135のモータ軸に設けた構成例を示している。この構成例では、制御部CNTは、ロータリエンコーダ153によるモータ135の回転角の検出結果を信号線154を介して取得し、当該検出結果に基づいて、Zスライド部131のZ方向の位置を取得(決定、算出)することができる。また、図14は、リニアエンコーダLEをセンサ(検出部)として設けた構成例を示している。リニアエンコーダLEは、スケール155とヘッド156とを含む。スケール155は、Zスライド部131に取り付けられる。ヘッド156は、本体部137に取り付けられる。この構成例では、制御部CNTは、リニアエンコーダLMによるZスライド部131のZ方向の位置の検出結果を信号線154を介して取得することができる。なお、Zスライド部131のZ方向の位置を検出する方法として、静電容量スイッチや光を用いた測距スイッチを用いても同様の効果を得ることができる。
【0069】
<第5実施形態>
本発明に係る第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で言及する事項以外は第1実施形態に従いうる。また、本実施形態は、第2~第4実施形態を引き継いでもよい。
【0070】
本実施形態の変形装置100では、制限機構LMとして、隣り合う変位対象箇所同士の変位差が許容範囲Rに収まるようにモータ135の回転量を制限する回転制限機構160が設けられうる。図15(a)は、1個の変位部に設けられる駆動部DR(ボールナット133、ボールネジ134、モータ135)の構成例を示している。本実施形態の駆動部DRに設けられる回転制限機構160は、一部に切欠部161aを有する円盤部材161と、ストッパ162とを含みうる。円盤部材161は、モータ135の回転軸に取り付けらる。ストッパ162は、円盤部材161の切欠部161aに配置(挿入)され、円盤部材161の回転量を制限する。この構成によっても、互いに隣り合うZスライド部131同士のZ方向の相対的な位置ずれを機械的に制限し、板ガラス120の破損を回避することができる。
【0071】
<露光装置の実施形態>
上記実施形態の変形装置100が搭載される装置の構成例について説明する。上記実施形態の変形装置100は、例えば、半導体デバイスの製造に用いられるリソグラフィ装置や天文分野で用いられる望遠鏡などの光学特性を補正するための光学補正装置として適用されうる。以下では、リソグラフィ装置の一種である露光装置に変形装置100を適用する例を説明する。
【0072】
図16は、露光装置200の構成例を示す模式図である。露光装置200は、半導体素子や液晶表示装置の製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板P上にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置200は、マスクM(原版)を通過した光で基板Pを露光することで、マスクMのパターンを基板P上に転写することができる。本実施形態の露光装置200は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(所謂、走査型露光装置)であるが、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式の露光装置であってもよい。
【0073】
露光装置200は、照明光学系201と、マスクステージ202と、投影光学系203と、基板ステージ204とを有する。照明光学系201は、光源(不図示)からの光をマスクMに照明する光学系であり、不図示のレンズ群やハエの目レンズ等から構成される。マスクMには、基板Pに形成すべきパターンが形成されている。マスクMは、マスクステージ202によって保持されており、基板Pは、基板ステージ204によって保持されている。マスクMと基板Pとは、投影光学系203を介して、光学的にほぼ共役な位置に配置されている。
【0074】
投影光学系203は、物体面に配置されたマスクMのパターン像を、像面に配置された基板P上に投影する光学系である。投影光学系203としては、反射系、屈折系、反射屈折系の光学系を適用することができる。本実施形態では、投影光学系203は、所定の投影倍率を有し、スリット光によりマスクMに形成されたパターンを基板P上に投影する。そして、マスクステージ202および基板ステージ204を投影光学系203の物体面と平行な方向に、投影光学系203の投影倍率に応じた速度比で走査する。これにより、マスクMのパターン像を基板P上に転写することができる。
【0075】
投影光学系203内の露光光路中には、上記実施形態の変形装置100が配置されている。変形装置100は、平行平面板ガラスを変形させるもので、基板P上に転写されるパターン像を補正するためのものである。例えば、変形装置100は、平行平面板ガラスを変形することにより、投影光学系203の収差などの結像特性を補正することができる。これにより、基板上にデバイスを形成する際に必要なパターンの重ね合わせ精度を向上させることが可能となる。また、下地となる基板Pに形成されたパターンが歪んでしまっている場合にも、その歪みの形状に合わせて転写パターン像を補正することも可能である。その結果、性能の良い電子デバイスや表示装置を実現することが可能となる。
【0076】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、潜像パターンが形成された基板を加工(現像)する工程と、加工された基板から物品を製造する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0077】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、少なくとも以下の変形装置、露光装置、および物品の製造方法を含む。
【0078】
(項目1)
物体を変形させる変形装置であって、
前記物体における複数の箇所にそれぞれ接続された複数の可動部と、
前記複数の可動部をそれぞれ駆動して変位させる複数の駆動部と、
前記複数の駆動部の各々を制御することにより前記物体の変形を制御する制御部と、
前記複数の箇所のうち互いに隣り合う箇所同士の変位差が許容範囲内になるように、前記複数の可動部のうち互いに隣り合う可動部同士の相対的な位置ずれを機械的に制限する制限機構と、
を備えることを特徴とする変形装置。
【0079】
(項目2)
前記許容範囲は、前記物体の破損を回避することができる前記変位差の範囲に設定されている、ことを特徴とする項目1に記載の変形装置。
【0080】
(項目3)
前記制限機構は、前記互いに隣り合う可動部のうち一方に設けられた第1制限部材と、他方に設けられた第2制限部材とを有し、
前記第1制限部材および前記第2制限部材は、前記変位差が前記許容範囲の限界に達したときに互いに突き当たることによって前記位置ずれを機械的に制限するように配置されている、ことを特徴とする項目1又は2に記載の変形装置。
【0081】
(項目4)
前記第1制限部材は、前記他方に向かって前記一方から突出するように構成され、
前記第2制限部材は、前記一方に向かって前記他方から突出するように構成されている、ことを特徴とする項目3に記載の変形装置。
【0082】
(項目5)
前記制限機構は、前記第2制限部材を挟み込むように前記一方に設けられた2つの第1制限部材を有し、前記第2制限部材の移動を2つの前記第1制限部材の間に制限するように構成されている、ことを特徴とする項目3又は4に記載の変形装置。
【0083】
(項目6)
前記第1制限部材と前記第2制限部材との接触を検知する第1検知部を更に備え、
前記制御部は、前記第1検知部により前記接触が検知された場合に前記物体の変形の制御を停止する、ことを特徴とする項目3乃至5のいずれか1項目に記載の変形装置。
【0084】
(項目7)
前記第1検知部は、前記第1制限部材と前記第2制限部材との接触によって電気的に接続される信号線を含み、前記信号線を流れる信号に基づいて前記接触を検知する、ことを特徴とする項目6に記載の変形装置。
【0085】
(項目8)
前記複数の可動部の各々は、各駆動部により駆動されて第1方向に移動可能な第1構造体と、前記物体に接続され且つ前記第1方向とは異なる第2方向に移動可能な第2構造体と、前記第1方向への前記第1構造体の移動を前記第2方向への前記第2構造体の移動に変換する変換機構とを含み、
前記制限機構は、前記第1構造体に対して設けられている、ことを特徴とする項目1乃至7のいずれか1項目に記載の変形装置。
【0086】
(項目9)
前記複数の可動部の各々は、各駆動部により駆動されて第1方向に移動可能な第1構造体と、前記物体に接続され且つ前記第1方向とは異なる第2方向に移動可能な第2構造体と、前記第1方向への前記第1構造体の移動を前記第2方向への前記第2構造体の移動に変換する変換機構とを含み、
前記制限機構は、前記第2構造体に対して設けられている、ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項目に記載の変形装置。
【0087】
(項目10)
物体を変形させる変形装置であって、
前記物体における複数の箇所にそれぞれ接続された複数の可動部と、
前記複数の可動部をそれぞれ駆動して変位させる複数の駆動部と、
前記複数の駆動部の各々を制御することにより前記物体の変形を制御する制御部と、
前記複数の可動部のうち互いに隣り合う可動部の一方に設けられるとともに、前記複数の箇所のうち互いに隣り合う箇所同士の変位差が許容範囲の限界に達したときに前記互いに隣り合う可動部の他方が接触するように配置されたスイッチと、
前記スイッチへの前記他方の接触を検知する第2検知部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2検知部で前記接触が検知された場合に前記物体の変形の制御を停止する、ことを特徴とする変形装置。
【0088】
(項目11)
前記物体は、板状または線状の部材である、ことを特徴とする項目1乃至10のいずれか1項目に記載の変形装置。
【0089】
(項目12)
前記物体は、ガラスプレートである、ことを特徴とする項目1乃至11のいずれか1項目に記載の変形装置。
【0090】
(項目13)
基板を露光する露光装置であって、
原版のパターン像を前記基板に投影する投影光学系と、
物体を変形させる項目1乃至12のいずれか1項目に記載の変形装置と、
を備え、
前記変形装置によって変形される前記物体は、前記投影光学系に含まれる光学素子である、ことを特徴とする露光装置。
【0091】
(項目14)
項目13に記載された露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する製造工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【0092】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0093】
100:変形装置、120:平行平面板ガラス、130:変位部、131:Zスライド部(可動部)、132:クランプ部、HD:保持部、DR:駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18