(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電磁波検出器および電磁波検出器アレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 31/108 20060101AFI20240906BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20240906BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240906BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L31/10 C
H01L27/144 K
H01L27/146 A
G01J1/02 B
G01J1/02 Q
(21)【出願番号】P 2022532297
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009541
(87)【国際公開番号】W WO2021256016
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020102988
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 政彰
(72)【発明者】
【氏名】小川 新平
(72)【発明者】
【氏名】福島 昌一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 聡志
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0333196(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106784122(CN,A)
【文献】国際公開第2018/012076(WO,A1)
【文献】特開2016-025356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0175217(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0127155(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107342345(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 27/144-27/148
G01J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層と電気的に接続されている二次元材料層と、
前記半導体層を介さずに前記二次元材料層と電気的に接続されている第1電極部と、
前記半導体層を介して前記二次元材料層と電気的に接続されている第2電極部と、
強誘電体層とを備え、
前記二次元材料層は、前記半導体層と電気的に接続される第1部分と、前記第1電極部と接触している第2部分と、前記第1部分と第2部分との間を電気的に接続する第3部分とを含み、
前記第1部分は、トンネル絶縁層もしくは導電部材と接触しており前記トンネル絶縁層又は前記導電部材を介して前記半導体層と電気的に接続されており、または前記半導体層と接触しており、
前記第1部分は、前記第1電極部から隔てて配置されており、
前記第3部分は、前記半導体層及び前記第1電極部の各々から隔てて配置されており、かつ前記二次元材料層の延在方向において前記第1部分
と前記第2部分との間に配置されており、
前記強誘電体層は、前記二次元材料層の前記第1部分および前記第3部分の少なくともいずれかと接触している、または、前記二次元材料層と間隔を隔てて配置されておりかつ前記二次元材料層の少なくとも一部と重なるように配置されている、電磁波検出器。
【請求項2】
前記半導体層の一部と接しておりかつ前記半導体層の他の一部を開口する開口部が形成されている絶縁膜をさらに備え、
前記二次元材料層は、前記開口部において前記半導体層の他の一部と電気的に接続され、かつ前記開口部上から前記絶縁膜上にまで延在している、請求項1に記載の電磁波検出器。
【請求項3】
前記二次元材料層は、前記強誘電体層と接触している領域および前記半導体層と接触している領域を含み、
前記強誘電体層は、前記二次元材料層の前記強誘電体層と接触している領域および前記半導体層と接触している領域の少なくとも一方において前記二次元材料層の延在方向に対して垂直な方向の電界が生じるように設けられている、請求項1
又は2に記載の電磁波検出器。
【請求項4】
前記強誘電体層は、前記強誘電体層内の分極が変化したときに前記二次元材料層の抵抗値が変化するように、前記二次元材料層と間隔を隔てて配置されている、請求項1に記載の電磁波検出器。
【請求項5】
前記二次元材料層の少なくとも一部と前記強誘電体層との間を隔てる絶縁膜をさらに備える、請求項
4に記載の電磁波検出器。
【請求項6】
前記二次元材料層と前記強誘電体層との間を電気的に接続する接続導電体部をさらに備え、
前記強誘電体層は、前記接続導電体部を介して前記二次元材料層と電気的に接続されている、請求項
4に記載の電磁波検出器。
【請求項7】
前記強誘電体層は、前記二次元材料層の少なくとも前記第1部分と接触している、または前記二次元材料層と間隔を空けて配置されておりかつ前記二次元材料層の少なくとも前記第1部分と重なるように配置されている、請求項1
,2,4~
6のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項8】
前記強誘電体層は、前記二次元材料層の少なくとも前記第3部分と接触している、または前記二次元材料層と間隔を空けて配置されておりかつ前記二次元材料層の少なくとも前記第3部分と重なるように配置されている、請求項1
,2,4~
7のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項9】
前記強誘電体層は、前記二次元材料層のうち前記第1部分のみと接触している、請求項
7に記載の電磁波検出器。
【請求項10】
前記第1部分または前記導電部材は、前記半導体層とショットキー接合している、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項11】
平面視において、前記第1電極部は環状に形成されており、かつ前記第1部分は、前記第1電極部よりも内側に配置されている、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項12】
前記第1部分は、平面視における前記二次元材料層の端部を有する、請求項
7~
11のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項13】
前記強誘電体層は、前記二次元材料層に対して前記半導体層とは反対側に配置されている、請求項1~
12のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項14】
前記強誘電体層は、前記二次元材料層に対して前記半導体層側に配置されている、請求項1~
12のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項15】
前記強誘電体層と接触している第3電極部をさらに備える、請求項1~
14のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項16】
前記半導体層、前記二次元材料層、前記第1電極部、および前記第2電極部は、前記強誘電体層上に配置されている、請求項1~
15のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項17】
前記トンネル絶縁層の厚みは、検出対象とする電磁波が前記二次元材料層および前記強誘電体層に入射したときに、前記二次元材料層と前記半導体層との間にトンネル電流が生じるように設定されている、請求項1~
16のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項18】
前記強誘電体層の分極方向は、前記二次元材料層の延在方向に対して垂直な方向である、請求項1~
17のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項19】
前記二次元材料層と前記第1電極部との接続部分、および前記二次元材料層と前記半導体層との接続部分の少なくとも一方が、複数設けられている、請求項1~18のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項20】
前記強誘電体層は、第1強誘電体部分と第2強誘電体部分とを含み、
前記第1強誘電体部分を構成する材料の電磁波吸収波長は、前記第2強誘電体部分を構成する材料の電磁波吸収波長と異なる、請求項1~19のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項21】
前記強誘電体層は、第1強誘電体部分と第2強誘電体部分とを含み、
前記第1強誘電体部分および前記第2強誘電体部分の各々が前記二次元材料層の少なくとも一部と重なるように配置されており、
前記第1強誘電体部分を構成する材料の分極率は、前記第2強誘電体部分を構成する材料の分極率と異なる、請求項1~20のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項22】
前記半導体層は、第1導電型の第1半導体部分と、第2導電型の第2半導体部分とを含み、
前記二次元材料層は、前記第1半導体部分と電気的に接続されており、
前記第2電極部は、前記第2半導体部分を介して前記二次元材料層と電気的に接続されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項23】
前記二次元材料層は、前記第1半導体部分および前記第2半導体部分と電気的に接続されており、
前記第1半導体部分と電気的に接続されている第4電極部をさらに備える、請求項22に記載の電磁波検出器。
【請求項24】
前記二次元材料層は、乱層構造部分を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項25】
前記二次元材料層に接触するように配置された、1つ以上の導電体または接触層をさらに備える、請求項1~24のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項26】
前記二次元材料層の周囲には、空隙が形成されており、
前記二次元材料層は、前記空隙に面した表面を有している、請求項1~25のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項27】
前記二次元材料層は、遷移金属ダイカルコゲナイド、グラフェン、黒リン、シリセン、ゲルマネン、グラフェンナノリボンおよびボロフェンからなるグループから選択されるいずれかの材料を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項28】
前記第1電極部、前記二次元材料層、前記半導体層、および前記第2電極部が、前記第1電極部、前記二次元材料層、前記半導体層、および前記第2電極部の順に電気的に接続されており、
検出対象とする電磁波は、前記第1電極部と前記第2電極部との間を流れる電流値の変化として検出される、請求項1~27のいずれか1項に記載の電磁波検出器。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の電磁波検出器を複数備え、
前記複数の電磁波検出器が、第1方向および第2方向の少なくともいずれかに沿って並んで配置されている、電磁波検出器アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波検出器および電磁波検出器アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次世代の電磁波検出器に用いられる電磁波検出層の材料として、二次元材料層の一例である移動度が極めて高いグラフェンが知られている。グラフェンの吸収率は2.3%と低い。そのため、グラフェンを用いた電磁波検出器における高感度化手法が提案されている。たとえば、米国特許出願公開第2015/0243826号明細書(特許文献1)では、下記のような構造の検出器が提案されている。すなわち、上記特許文献1の検出器では、n型半導体層上に2つ以上の誘電体層が設けられている。2つの誘電体層上および当該2つの誘電体層の間に位置するn型半導体層の表面部分上にグラフェン層が形成されている。グラフェン層とn型半導体層とはショットキー接合している。グラフェン層の両端に接続されたソース・ドレイン電極が誘電体層上に配置されている。ゲート電極はn型半導体層と接続されている。ゲート電極とソース電極またはドレイン電極との間に電圧を印加した場合には、上記ショットキー接合により、OFF動作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0243826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゲート電極とソース電極またはドレイン電極との間に電圧を印加した状態は、検出器の感度は半導体層の量子効率に依存する。そのため、十分な光キャリアの増幅が出来ず、検出器の高感度化が困難である。
【0005】
本開示の主たる目的は、上記検出器と比べて検出感度が高い電磁波検出器および電磁波検出器アレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電磁波検出器は、半導体層と、半導体層と電気的に接続されている二次元材料層と、半導体層を介さずに二次元材料層と電気的に接続されている第1電極部と、半導体層を介して二次元材料層と電気的に接続されている第2電極部と、二次元材料層の少なくとも一部と接触している強誘電体層とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、上記検出器と比べて検出感度が高い電磁波検出器および電磁波検出器アレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図2】
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る電磁波検出器の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施の形態2に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図5】
図4の線分V-Vにおける断面模式図である。
【
図6】実施の形態2に係る電磁波検出器の第1変形例を示す断面模式図である。
【
図7】実施の形態2に係る電磁波検出器の第2変形例を示す断面模式図である。
【
図8】実施の形態3に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図9】
図8の線分IX-IXにおける断面模式図である。
【
図10】実施の形態4に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図12】実施の形態4に係る電磁波検出器の第1変形例を示す平面模式図である。
【
図13】
図12の線分XIII-XIIIにおける断面模式図である。
【
図14】実施の形態4に係る電磁波検出器の第2変形例を示す平面模式図である。
【
図16】実施の形態5に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図17】実施の形態5に係る電磁波検出器の変形例を示す平面模式図である
【
図18】
図17の線分XVIII-XVIIIにおける断面模式図である。
【
図19】実施の形態7に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図20】実施の形態8に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図21】実施の形態9に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図22】実施の形態10に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図23】
図22の線分XXIII-XXIIIにおける断面模式図である。
【
図24】
図22の線分XXIV-XXIVにおける断面模式図である。
【
図25】実施の形態10に係る電磁波検出器の第1変形例を示す平面模式図である。
【
図26】
図25の線分XXVI-XXVIにおける断面模式図である。
【
図27】実施の形態10に係る電磁波検出器の第2変形例を示す平面模式図である。
【
図28】
図27の線分XXVIII-XXVIIIにおける断面模式図である。
【
図29】実施の形態11に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図30】実施の形態11に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【
図31】実施の形態12に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図32】実施の形態12に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【
図33】実施の形態14に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図34】実施の形態15に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図35】実施の形態16に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図36】実施の形態16に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【
図37】実施の形態17に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【
図38】実施の形態18に係る電磁波検出器の平面模式図である。
【
図39】実施の形態18に係る電磁波検出器の変形例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
以下に説明する実施の形態において、図は模式的なものであり、機能又は構造を概念的に説明するものである。また、以下に説明する実施の形態により本開示が限定されるものではない。特記する場合を除いて、電磁波検出器の基本構成は全ての実施の形態において共通である。また、同一の符号を付したものは、上述のように同一又はこれに相当するものである。これは明細書の全文において共通する。
【0011】
以下に説明する実施の形態では、電磁波検出器について、可視光又は赤外光を検出する場合の構成を用いて説明するが、本開示はこれらに限定されない。以下に説明する実施の形態は、可視光または赤外光に加えて、例えば、X線、紫外光、近赤外光、テラヘルツ(THz)波、又は、マイクロ波などの電波を検出する検出器としても有効である。なお、本開示の実施の形態において、これらの光及び電波を総称して電磁波と記載する。
【0012】
また、本開示の実施の形態では、グラフェンとしてp型グラフェン又はn型グラフェンの用語が用いられる場合がある。以下の実施の形態では、真性状態のグラフェンよりも正孔が多いものをp型グラフェン、電子が多いものをn型グラフェンと呼ぶ。
【0013】
また、本開示の実施の形態では、二次元材料層の一例であるグラフェンに接触する部材の材料について、n型又はp型の用語が用いられる場合がある。ここでは、例えば、n型材料とは電子供与性を有する材料、p型材料とは電子求引性を有する材料を示す。また、分子全体において電荷に偏りが見られ、電子が支配的となるものをn型、正孔が支配的となるものをp型と呼ぶ場合もある。これらの材料としては、有機物及び無機物のいずれか一方又はそれらの混合物を用いることができる。
【0014】
また、金属表面と光との相互作用である表面プラズモン共鳴現象等のプラズモン共鳴現象、可視光域・近赤外光域以外での金属表面にかかる共鳴という意味での擬似表面プラズモン共鳴と呼ばれる現象、又は、波長以下の寸法の構造により特定の波長を操作するという意味でのメタマテリアル又はプラズモニックメタマテリアルと呼ばれる現象については、特にこれらを名称により区別せず、現象が及ぼす効果の面からは同等の扱いとする。ここでは、これらの共鳴を、表面プラズモン共鳴、プラズモン共鳴、又は、単に共鳴と呼ぶ。
【0015】
また、以下に説明する実施の形態では、二次元材料層の材料として、グラフェンを例に説明を行っているが、二次元材料層を構成する材料はグラフェンに限られない。たとえば、二次元材料層の材料としては、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD:Transition Metal Dichalcogenide)、黒リン(Black Phosphorus)、シリセン(シリコン原子による二次元ハニカム構造)、ゲルマネン(ゲルマニウム原子による二次元ハニカム構造)等の材料を適用することができる。遷移金属ダイカルコゲナイドとしては、たとえば、MoS2、WS2、WSe2等の遷移金属ダイカルコゲナイドが挙げられる。
【0016】
これらの材料は、グラフェンと類似の構造を有しており、原子を二次元面内に単層で配列することが可能な材料である。したがって、これらの材料を二次元材料層に適用した場合においても、二次元材料層にグラフェンを適用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
実施の形態1.
<電磁波検出器の構成>
図1は、実施の形態1に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図2は、
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
図1および
図2に示した電磁波検出器は、二次元材料層1と、第1電極部2aと、第2電極部2bと、絶縁膜3と、半導体層4と、強誘電体層5とを主に備える。強誘電体層5は電磁波検出器の検出対象とする電磁波の波長に感度を有している。強誘電体層5に検出対象とする波長を有する電磁波が照射されると、強誘電体層5において分極が変化する。
図1および
図2に示した電磁波検出器において、二次元材料層1および強誘電体層5は、強誘電体層5において分極が変化したときに、二次元材料層1の抵抗値が変化するように設けられている。
【0018】
半導体層4は、第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有している。
図1および
図2に示されるように、二次元材料層1、第1電極部2a、絶縁膜3、および強誘電体層5は、半導体層4の第1面上に配置されている。第2電極部2bは、半導体層4の第2面上に配置されている。以下では、第1面上において、二次元材料層1、第1電極部2a、絶縁膜3、および強誘電体層5の各々に対して半導体層4とは反対側に位置する部分を各々の上部とよび、二次元材料層1、第1電極部2a、絶縁膜3、および強誘電体層5の各々に対して半導体層4側に位置する部分を各々の下部とよぶ。
【0019】
半導体層4は、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料からなる。具体的には、半導体層4としては、不純物がドープされたシリコン基板などが用いられる。
【0020】
ここで、半導体層4は、多層構造であってもよく、pn接合フォトダイオードや、pinフォトダイオード、ショットキーフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードを用いてもよい。また、半導体層4としてフォトトランジスタを用いてもよい。
【0021】
半導体層4を構成する半導体材料として、上述のようにシリコン基板を例として説明したが、当該半導体層4を構成する材料として他の材料を用いてもよい。たとえば、半導体層4を構成する材料として、ゲルマニウム(Ge)、III-V族又はII-V族半導体などの化合物半導体、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)、インジウムアンチモン(InSb)、鉛セレン(PbSe)、鉛硫黄(PbS)、カドミウム硫黄(CdS)、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、ヒ化インジウム(InAs)、又は、量子井戸又は量子ドットを含む基板、TypeII超格子などの材料の単体又はそれらを組み合わせた材料を用いてもよい。
【0022】
本実施の形態に係る電磁波検出器においては、半導体層4および半導体層4の電気抵抗率が100Ω・cm以下になるように、半導体層4および半導体層4に不純物がドーピングされていることが好ましい。半導体層4および半導体層4が高濃度にドーピングされることで、キャリアの半導体層4および半導体層4中での移動速度(読み出し速度)が速くなる。この結果、電磁波検出器の応答速度が向上する。
【0023】
また、半導体層4の厚さT1は10μm以下とすることが好ましい。半導体層4の厚さT1を薄くすることで、キャリアの失活が少なくなる。
【0024】
図2に示されるように、第1電極部2aと第2電極部2bとの間には、バイアス電圧Vを印加するための電源回路が電気的に接続される。上記電源回路は、二次元材料層1に電圧Vを印加するための回路である。上記電源回路には、二次元材料層1での電流Iを検出するための図示しない電流計が接続される。
【0025】
絶縁膜3は、半導体層4の第1面上に配置されている。絶縁膜3は、半導体層4の第1面に接触している下部表面と、下部表面とは反対側に位置する上部表面とを有している。絶縁膜3には、半導体層4の第1面の一部を露出する開口部が形成されている。開口部は、上部表面から下部表面に達している。絶縁膜3の上部表面の少なくとも一部は、二次元材料層1の下部表面に接触している。言い換えると、絶縁膜3は、二次元材料層1の下部に配置されている。
【0026】
絶縁膜3としては、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜を用いることができる。なお、絶縁膜3を構成する材料は上述した酸化シリコンに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。たとえば、絶縁膜3を構成する材料として、オルトケイ酸テトラエチル、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、ボロンナイトライド、又は、シロキサン系のポリマー材料等を用いてもよい。例えば、ボロンナイトライドは原子配列がグラフェンと似ているため、グラフェンからなる二次元材料層1と接触しても電荷の移動度に悪影響を与えない。そのため、絶縁膜3が電子移動度などの二次元材料層1の性能を阻害することを抑制する観点から、ボロンナイトライドは絶縁膜3を構成する材料として好適である。
【0027】
また、絶縁膜3の厚さT2、すなわち絶縁膜3の下部表面と上部表面との間の距離は、第1電極部2aが半導体層4と絶縁されており、トンネル電流が生じなければ特に限定されない。また、絶縁膜3は二次元材料層1の下部に配置されていなくても良い。
【0028】
第1電極部2aは、絶縁膜3の上部表面上に配置されている。第1電極部2aは、絶縁膜3の開口部から離れた位置に配置されている。第1電極部2aは、絶縁膜3の上部表面と接触している下部表面と、該下部表面とは反対側に位置する上部表面と、上部表面と交差する方向に延びる側面とを有している。第2電極部2bは、半導体層4の第2面上に配置されている。第1電極部2aおよび第2電極部2bを構成する材料としては、導電体であれば任意の材料を用いることができる。たとえば、当該材料として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、又はパラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができる。また、第1電極部2aと絶縁膜3との間、又は、第2電極部2bと半導体層4との間に、図示しない密着層を形成してもよい。密着層は、第1電極部2aと絶縁膜3との密着性、または第2電極部2bと半導体層4との密着性を高めるものである。密着層を構成する材料としては、任意の材料を用いることができるが、たとえばクロム(Cr)またはチタン(Ti)などの金属材料を用いてもよい。
【0029】
また、
図2では第1電極部2aが二次元材料層1の下部に形成されているが、第1電極部2aは二次元材料層1の上部に形成されていてもよい。また、
図2では第2電極部2bが半導体層4の第2面の全面上に設けられているが、第2電極部2bは少なくとも半導体層4の一部と接触していれば良い。例えば、第2電極部2bは、半導体層4の第1面、第2面、および第1面と交差する方向に延びる側面のうちの一部と接触するように設けられていてもよい。このような電磁波検出器は、第2面側から入射した電磁波を検知可能となる。なお、
図2に示すように第2電極部2bが第2面の全面上に設けられている電磁波検出器は、検出対象とされる電磁波が第1面側からのみ入射する場合に、好適である。
図2に示される電磁波検出器では、第1面側から入射して強誘電体層5および半導体層4を透過した電磁波が第2電極部2bにより反射して再び強誘電体層5に到達するため、強誘電体層5における電磁波の吸収率が高められる。
【0030】
二次元材料層1は、第1電極部2a、絶縁膜3、および半導体層4上に配置されている。二次元材料層1は、絶縁膜3の開口部の内部から第1電極部2aにまで延在する。二次元材料層1の一部は、第1電極部2a上に配置されており、第1電極部2aと接触している。二次元材料層1の他の一部は、絶縁膜3の開口部の内部に配置されており、半導体層4と接触している。二次元材料層1は、強誘電体層5の下部に配置されており、強誘電体層5と接触している。二次元材料層1は、第1電極部2a、絶縁膜3、および半導体層4と、強誘電体層5との間に配置されている。
【0031】
具体的には、二次元材料層1は、半導体層4と電気的に接続されている第1部分と、第1電極部2aと電気的に接続されている第2部分と、第1部分と第2部分との間を電気的に接続する第3部分とを含む。
【0032】
第1部分は、絶縁膜3の開口部内において、半導体層4の第1面上に配置されている。第1部分は、強誘電体層5の下部に配置されている。第1部分は、半導体層4と強誘電体層5との間に配置されており、かつ半導体層4および強誘電体層5の各々と接触している。好ましくは、第1部分は、半導体層4とショットキー接合している。
【0033】
第2部分は、絶縁膜3の上部表面上に配置されている。第2部分の一部は、第1電極部2aの上部表面上に配置されている。第2部分の少なくとも一部は、強誘電体層5の下部に配置されている。第2部分は、第1電極部2aと強誘電体層5との間に配置されており、かつ第1電極部2aおよび強誘電体層5の各々と接触している。
【0034】
第3部分は、絶縁膜3の上部表面上および絶縁膜3の開口部の内周面上に配置されている。第3部分は、絶縁膜3と強誘電体層5との間に配置されており、かつ絶縁膜3および強誘電体層5の各々と接触している。言い換えると、絶縁膜3は、二次元材料層1の第3部分と半導体層4とを隔てている。
【0035】
二次元材料層1の上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分の各々の厚みは、例えば互いに等しい。二次元材料層1の上部表面には、上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分に起因した凹凸が形成されている。上記第1部分の上部表面と半導体層4の第1面との間の距離は、上記第2部分の上部表面と半導体層4の第1面との間の距離未満である。
【0036】
二次元材料層1は、強誘電体層5と接触している領域、および半導体層4と接触している領域とを含む。強誘電体層5は、二次元材料層1の強誘電体層5と接触している領域および半導体層4と接触している領域の少なくとも一方において二次元材料層1の延在方向に対して垂直な方向の電界が生じるように、設けられている。
【0037】
なお、
図2における二次元材料層1は、絶縁膜3の開口部の中央に対して第1電極部2a側(
図2の左側)からその反対側(
図2の右側)まで延在しているが、これに限られるものではない。
図2において二次元材料層1の第1電極部2aとは反対側に位置する端部(右端)は、絶縁膜3の開口部の中央に対して左側に配置されていてもよい。また、
図2における二次元材料層1は、絶縁膜3の開口部において半導体層4の第1面の一部を露出するように配置されているが、これに限られるものではない。二次元材料層1は、絶縁膜3の開口部において半導体層4の第1面の全体を覆うように配置されていてもよい。二次元材料層1の第1電極部2aとは反対側に位置する端部(右端)は、開口部に対して第1電極部2aとは反対側に位置する絶縁膜3上に配置されていてもよい。
【0038】
二次元材料層1は、例えば、単層のグラフェンを用いることができる。単層のグラフェンは二次元炭素結晶の単原子層である。また、単層のグラフェンは六角形状に配置された各連鎖に炭素原子を有している。また、二次元材料層1は、単層グラフェンが2層以上積層した多層グラフェンとして構成されていてもよい。また、二次元材料層1として、ノンドープのグラフェン、またはp型又はn型の不純物がドープされたグラフェンが用いられてもよい。
【0039】
二次元材料層1に多層グラフェンを用いた場合、二次元材料層1の光電変換効率が増加し、電磁波検出器の感度は高くなる。二次元材料層1として用いられる多層グラフェンは、任意の2層のグラフェンにおける六方格子の格子ベクトルの向きが一致しなくてもよく、一致してもよい。例えば、2層以上のグラフェンを積層することで、二次元材料層1においてバンドギャップが形成される。この結果、光電変換される電磁波の波長選択効果を持たせることが可能である。なお、二次元材料層1を構成する多層グラフェンにおける層数が増加すると、チャネル領域でのキャリアの移動度は低下する。一方、この場合には二次元材料層1が基板などの下地構造からのキャリア散乱の影響を受けにくくなり、結果的にノイズレベルが低下する。そのため、二次元材料層1として多層グラフェンを用いた電磁波検出器は、光吸収が増加し、電磁波の検出感度を高めることができる。
【0040】
また、二次元材料層1が第1電極部2aと接触している場合、第1電極部2aから二次元材料層1へキャリアがドープされる。例えば、第1電極部2aの材料として金(Au)を用いた場合、二次元材料層1とAuとの仕事関数の差から、第1電極部2a近傍の二次元材料層1に正孔がドープされる。この状態で電磁波検出器を電子伝導状態で駆動させると、第1電極部2aから二次元材料層1にドープされた正孔の影響により、二次元材料層1のチャネル領域内に流れる電子の移動度が低下し、二次元材料層1と第1電極部2aとのコンタクト抵抗が増加する。このコンタクト抵抗の増加により、電磁波検出器における電界効果による電子(キャリア)の移動度が低下し、電磁波検出器の性能低下が生じ得る。特に、二次元材料層1として単層グラフェンを用いた場合、第1電極部2aから注入されるキャリアのドープ量が大きい。そのため、電磁波検出器における上記電子の移動度の低下は、二次元材料層1として単層グラフェンを用いた場合に特に顕著である。したがって、二次元材料層1をすべて単層グラフェンにより形成した場合、電磁波検出器の性能が低下する恐れがあった。
【0041】
そこで、第1電極部2aからのキャリアがドープされやすい二次元材料層1の上記第1部分は、多層グラフェンにより構成されていてもよい。多層グラフェンは単層グラフェンに比べ、第1電極部2aからのキャリアドーピングが小さい。そのため、二次元材料層1と第1電極部2aとの間のコンタクト抵抗の増加を抑制することができる。この結果、電磁波検出器における上述した電子の移動度の低下を抑制することができ、電磁波検出器の性能を向上させることができる。
【0042】
また、二次元材料層1としてはナノリボン状のグラフェン(以下、グラフェンナノリボンとも呼ぶ)を用いることもできる。その場合、二次元材料層1としては、たとえばグラフェンナノリボン単体、複数のグラフェンナノリボンを積層した複合体、又は、グラフェンナノリボンが平面上に周期的に配列された構造体のいずれかを用いることができる。例えば、二次元材料層1として、グラフェンナノリボンが周期的に配置された構造体を用いる場合、グラフェンナノリボンにおいて、プラズモン共鳴を発生させることができる。この結果、電磁波検出器の感度を向上させることができる。ここで、グラフェンナノリボンが周期的に配列された構造は、グラフェンメタマテリアルと呼ばれることもある。したがって、二次元材料層1としてグラフェンメタマテリアルを用いた電磁波検出器においても、上述した効果を得ることができる。
【0043】
強誘電体層5は二次元材料層1上に配置されている。つまり、強誘電体層5は、二次元材料層1に対して、半導体層4とは反対側に配置されている。強誘電体層5は、二次元材料層1と接触している。強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分の各々の上部に配置されており、二次元材料層1の上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分の各々と接触している。
【0044】
具体的には、強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第1部分の上部に配置されており、上記第1部分と接触している第4部分と、二次元材料層1の上記第2部分の上部に配置されており、上記第2部分と接触している第5部分と、二次元材料層1の上記第3部分の上部に配置されており、上記第3部分と接触している第6部分とを有している。
【0045】
強誘電体層5の上記第4部分、上記第5部分、および上記第6部分の各々の厚みは、例えば互いに等しい。二次元材料層1の上部表面には、上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分に起因した凹凸が形成されている。上記第1部分の上部表面と半導体層4の第1面との間の距離は、上記第2部分の上部表面と半導体層4の第1面との間の距離未満である。
【0046】
強誘電体層5を構成する材料としては、検出波長に対して分極を生じる材料であれば任意の材料を用いることができる。強誘電体層5を構成する材料は、例えば、BaTiO3(チタン酸バリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、SBT(タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム)、BFO(ビスマスフェライト)、ZnO(酸化亜鉛)、HfO2(酸化ハフニウム)、および有機ポリマーであるポリフッ化ビニリデン系強誘電体(PVDF、P(VDF-TrFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)等)の少なくともいずれかを含む。また、強誘電体層5は、更に異なる強誘電体材料を積層、混合したものでもよい。
【0047】
なお、強誘電体層5を構成する材料は、上記強誘電体材料に限られるものではなく、焦電効果を奏する任意の焦電体であればよい。具体的には、強誘電体層5を構成する材料は、熱エネルギーの変化に対して分極変化が生じる任意の強誘電体であればよい。焦電効果において電磁波は単に熱源として作用するため、焦電効果には基本的に波長依存性はない。そのため、強誘電体層5は、広帯域の電磁波に感度を有する。
【0048】
好ましくは、強誘電体層5は、強誘電体層5における誘電分極の変化速度が可能な限り短くなるように設計されている。具体的には、強誘電体層5の厚さは二次元材料層1に分極変化を与えうることが可能である範囲で薄いことが好ましい。
【0049】
なお、上記電磁波検出器は、強誘電体層5と接触しており、かつ光照射により光誘起相転移が生じて物性(例えば温度)が変化するモット絶縁体をさらに備えていてもよい。
【0050】
また、強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第1部分、上記第2部分、および上記第3部分のうちの少なくともいずれかと重なるように配置されており、強誘電体層5内の分極が変化したときに、二次元材料層1の抵抗値が変化するように設けられていればよい。
【0051】
また、強誘電体層5の膜厚は、電磁波がグラフェン層1に照射された場合に、グラフェン層1になるべく大きな電界が印加される厚さが好ましい。また、強誘電体層5の分極方向は、特に制限されないが、好ましくは二次元材料層の平面方向に対して垂直方向である。
【0052】
また、二次元材料層1上には、図示しない保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、二次元材料層1、半導体層4、第1電極部2a、強誘電体層5の周りを覆うように設けられてもよい。保護膜を構成する材料としては任意の材料を用いることができるが、例えば、保護膜として酸化シリコンからなる絶縁膜を用いることができる。保護膜を構成する材料としては、酸化物又は窒化物等の絶縁体、たとえば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、ボロンナイトライドなどを用いてもよい。
【0053】
本実施の形態に係る電磁波検出器は、上記のような構成を備えている。
<電磁波検出器の製造方法>
図3は、実施の形態1に係る電磁波検出器の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1および
図2に示した電磁波検出器の製造方法を説明する。
【0054】
まず、
図3に示す準備工程(S1)を実施する。この工程(S1)では、たとえばシリコン等からなる平坦な基板である半導体層4を準備する。
【0055】
次に、電極形成工程(S2)を実施する。この工程(S2)では、半導体層4の裏面に第2電極部2bを形成する。具体的には、まず半導体層4の表面に保護膜を形成する。保護膜としてはたとえばレジストを用いる。この状態で、半導体層4の裏面に第2電極部2bを成膜する。第2電極部2bを構成する材料としては、たとえば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属を用いることができる。この時、半導体層4と第2電極部2bとの密着性を向上させるために、半導体層4の裏面に、第2電極部2bより先に密着層を形成してもよい。密着層の材料としては、たとえば銅(Cr)またはチタン(Ti)を用いることができる。なお、上記工程(S2)は半導体層4の表面が保護されている限り、工程(S3~7)より後に実施してもよい。
【0056】
次に、絶縁膜形成工程(S3)を実施する。この工程(S3)では、半導体層4の表面上に、絶縁膜3を形成する。絶縁膜3は、例えば半導体層4がシリコンの場合は、半導体層4において表面を部分的に熱酸化して形成される酸化シリコン(SiO2)でもよい。あるいは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法により、半導体層4の表面上に絶縁層を形成してもよい。
【0057】
次に、電極形成工程(S4)を実施する。この工程(S4)では、絶縁膜3上に第1電極部2aを形成する。第1電極部2aを構成する材料は、たとえば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属を用いる。この時、第1電極部2aと絶縁膜3との密着性を向上させるために、絶縁膜3と第1電極部2aとの間に密着層を形成してもよい。密着層を構成する材料としては、たとえばクロム(Cr)またはチタン(Ti)等を用いることができる。
【0058】
第1電極部2aの形成方法としては、たとえば以下のようなプロセスを用いることができる。まず、絶縁膜3の表面上に写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。レジストマスクには、第1電極部2aが形成されるべき領域に開口部が形成されている。その後、レジストマスク上に、第1電極部2aとなるべき金属などの膜を形成する。当該膜の形成には、蒸着法やスパッタリング法などを用いることができる。このとき、当該膜はレジストマスクの開口部の内部から当該レジストマスクの上部表面にまで延在するように形成される。その後、レジストマスクを当該膜の一部と共に除去することで、レジストマスクの開口部に配置されていた膜の他の一部が絶縁膜3の表面上に残存し、第1電極部2aとなる。上述した方法は、一般的にはリフトオフと呼ばれる方法である。
【0059】
第1電極部2aの形成方法として、他の方法を用いてもよい。たとえば、絶縁膜3の表面上に第1電極部2aとなるべき金属膜などの膜を先に成膜する。その後、フォトリソグラフィ法によって当該膜上にレジストマスクを形成する。レジストマスクは、第1電極部2aが形成されるべき領域を覆うように形成される一方、第1電極部2aが形成されるべき領域以外の領域には形成されない。その後、ウェットエッチングやドライエッチングにより、レジストマスクをマスクとして当該膜を部分的に除去する。この結果、レジストマスク下に膜の一部が残存する。この膜の一部が第1電極部2aとなる。その後、レジストマスクを除去する。このようにして、第1電極部2aを形成してもよい。
【0060】
次に、開口部形成工程(S5)を実施する。この工程(S5)では、絶縁膜3に開口部を形成する。具体的には、絶縁膜3上に写真製版またはEB描画などを用いてレジストマスクを形成する。レジストマスクには、絶縁膜3の開口部が形成されるべき領域に開口部が形成されている。その後、ウェットエッチングやドライエッチングにより、レジストマスクをマスクとして絶縁膜3を部分的に除去し、開口部を形成する。次にレジストマスクを除去する。なお、上記工程(S5)は工程(S4)より先に実施してもよい。
【0061】
次に、二次元材料層形成工程(S6)を実施する。この工程(S6)では、第1電極部2a、絶縁膜3および絶縁膜3の開口部内において露出する半導体層4の一部の全体を覆うように二次元材料層1を形成する。二次元材料層1を構成する材料は、例えばグラフェンなどの原子層材料や分子層材料を用いれば良い。二次元材料層1は、任意の方法により形成してもよい。たとえば、二次元材料層1をエピタキシャル成長によって形成しても良いし、予めCVD法を用いて形成した二次元材料層1を第1電極部2a、絶縁膜3および半導体層4の一部上に転写して貼り付けてもよい。あるいは、スクリーン印刷などを用いて二次元材料層1を形成してもよい。また、機械剥離などで剥離した二次元材料層1を上述した第1電極部2a等の上に転写してもよい。次に、写真製版などを用いて二次元材料層1の上にレジストマスクを形成する。レジストマスクは、二次元材料層1を残存させる領域を覆うように形成される一方、二次元材料層1を残存させない領域には形成されない。その後、レジストマスクをマスクとして用いて、酸素プラズマにより二次元材料層1をエッチングにより部分的に除去する。これにより、不要な二次元材料層の部分を除去し、
図1および
図2に示すような二次元材料層1を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0062】
次に、強誘電体層形成工程(S7)を実施する。この工程(S7)では、二次元材料層1上に強誘電体層5を形成する。強誘電体層5を形成する材料として、例えばBaTiO3(チタン酸バリウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、SBT(タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム)、BFO(ビスマスフェライト)、ZnO(酸化亜鉛)、HfO2(酸化ハフニウム)、有機ポリマーであるポリフッ化ビニリデン系強誘電体などを用いれば良い。また、強誘電体層5は、任意の方法により形成してもよい。たとえば、強誘電体層5がポリマー系材料からなる場合、スピンコート法などによりポリマー膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法を用いて加工する。他の材料の場合は、スパッタや蒸着、MODコート法などで成膜した後に、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする。また、レジストマスクをマスクとして用いて強誘電体材料を成膜した後に、レジストマスクを除去するリフトオフと呼ばれる方法を用いても良い。
【0063】
以上の工程(S1~S7)により、
図1および
図2に示した電磁波検出器が得られる。なお、上述した製造方法では第1電極部2aの上に二次元材料層1を形成したが、絶縁膜3上に予め二次元材料層1を形成し、当該二次元材料層1の一部上に重なるように第1電極部2aを形成してもよい。ただし、この構造を用いる場合は、第1電極部2aの形成時に、二次元材料層1に対してプロセスダメージを与えないように注意が必要である。たとえば、二次元材料層1において第1電極部2aが重ねて形成される領域以外を保護膜などで予め覆った状態で、第1電極部2aを形成する、といった対応が考えられる。
【0064】
<電磁波検出器の動作原理>
次に、本実施の形態に係る電磁波検出器の動作原理について説明する。
【0065】
まず、
図2に示すように、第1電極部2aと第2電極部2bとの間に、電圧Vを印加する電源回路が電気的に接続され、第1電極部2a、二次元材料層1、半導体層4、および第2電極部2bが、この記載順に電気的に接続される。次に、第1電極部2aおよび第2電極部2bの間に電圧Vが印加される。好ましくは、電圧Vは、二次元材料層1と半導体層4とのショットキー接合に対して逆バイアスとなるように設定される。電圧Vが印加されることにより、第1電極部2aと第2電極部2bとの間の電流経路の一部となる二次元材料層1には電流Iが流れる。電源回路には図示しない電流計が設置されており、当該電流計により二次元材料層1に流れる電流Iをモニターする。
【0066】
次に、強誘電体層5に電磁波が照射される。この場合、強誘電体層5の焦電効果により強誘電体層5の内部に誘電分極の変化が生じる。これにより、強誘電体層5における分極の変化は二次元材料層1に電界変化を与える。この結果、二次元材料層1に対して擬似的にゲート電圧が印加された状態となり、二次元材料層1内の抵抗値が変化する。これを光ゲート効果と呼ぶ。二次元材料層1における抵抗値の変化により、二次元材料層1に流れる光電流である電流Iが変化する。この電流Iの変化を検出することによって、電磁波検出器に照射された電磁波を検出することができる。
【0067】
また、たとえば半導体層4を構成する半導体層4がp型材料シリコンからなり、二次元材料層1がn型材料グラフェンからなる場合、二次元材料層1と半導体層4とはショットキー接合する。このとき、電圧Vを調整し、上記ショットキー接合に対して逆バイアスを印加することで、電流Iをゼロにすることができる。すなわち、本実施の形態に係る電磁波検出器ではOFF動作が可能となる。
【0068】
また、電磁波が強誘電体層5に照射されると、焦電効果により強誘電体層5の誘電分極が変化し、二次元材料層1のフェルミレベルが変調されて、二次元材料層1と半導体層4のエネルギー障壁が低下する。その結果、電磁波が照射された時にのみ、電流が半導体層4を流れ、電流Iが検出される。
【0069】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器は、上述のような二次元材料層1での電流の変化を検出する構成に限定されるわけではなく、例えば、第1電極部2aと第2電極部2bとの間に一定電流を流し、第1電極部2aと第2電極部2b間の電圧Vの変化(つまり二次元材料層1での電圧値の変化)を検出してもよい。
【0070】
また、同じ電磁波検出器を2つ以上用いて電磁波を検出してもよい。たとえば、同じ電磁波検出器を2つ以上準備する。1つの電磁波検出器を、電磁波が照射されない遮蔽された空間に配置する。他の電磁波検出器を、測定対象である電磁波が照射される空間に配置する。そして、電磁波が照射される他の電磁波検出器の電流I又は電圧Vと、遮蔽された空間に配置された電磁波検出器の電流I又は電圧Vとの差分を検出する。このようにして、電磁波を検出してもよい。
【0071】
<電磁波検出器の動作>
次に、
図1および
図2に示した電磁波検出器の具体的な動作について説明する。ここでは、半導体層4としてp型シリコンを用い、二次元材料層1としてグラフェンを用い、強誘電体層5としてニオブ酸リチウムを用いた場合について説明する。
【0072】
図2に示すように、二次元材料層1と半導体層4とのショットキー接合に対して逆バイアスとなるように電圧を印加すると、二次元材料層1と半導体層4との接合界面の近傍には空乏層が形成される。電磁波検出器の検出波長の範囲は、ニオブ酸リチウムの吸収波長に応じて決定される。
【0073】
検出波長の電磁波が強誘電体層5に入射すると、焦電効果により強誘電体層5において誘電分極の変化が発生する。強誘電体層5における分極変化により、二次元材料層1において電界変化が生じる。これは前述した光ゲート効果である。上述のように、二次元材料層1を構成するグラフェンは移動度が高く、わずかな電界変化に対して大きな変位電流を得ることが出来る。そのため、強誘電体層5の焦電効果により二次元材料層1のフェルミレベルは大きく変化し、半導体層4とのエネルギー障壁が低下する。これにより、第1電極部2aから二次元材料層1に電荷が注入される。さらに、半導体層4から取り出した光注入された電流電荷は、二次元材料層1において光ゲート効果により大きく増幅される。このため、本実施の形態に係る電磁波検出器では、量子効率100%を超える高感度化が可能となる。
【0074】
さらに、強誘電体層5の誘電分極の変化速度が可能な限り短く設計されていれば、電磁波が電磁波検出器に入射してから二次元材料層1において抵抗値の変化が生じるまでの時間が短くなる。このような電磁波検出器によれば、光ゲート効果による増幅の遅延が解消され、高速応答化が可能となる。
【0075】
<作用効果>
本実施の形態に係る電磁波検出器は、半導体層4と、半導体層4と電気的に接続されている二次元材料層1と、半導体層4を介さずに二次元材料層1と電気的に接続されている第1電極部2aと、半導体層4を介して二次元材料層1と電気的に接続されている第2電極部2bと、二次元材料層1の少なくとも一部と接触している強誘電体層5とを備える。
【0076】
上記電磁波検出器では、焦電効果によって強誘電体層5内の分極が変化したときに、二次元材料層1の抵抗値が変化し得る。その結果、上記光ゲート効果により、二次元材料層1の導電率が変調され、結果的に二次元材料層1において光電流を増幅できる。
【0077】
強誘電体層5における分極の変化に起因した二次元材料層1における電流変化量は、通常の半導体における電流変化量より大きくなる。特に、二次元材料層1では、通常の半導体と比較して、わずかな電位変化に対して大きな電流変化が生じる。例えば、二次元材料層1として単層のグラフェンを用いた場合、二次元材料層1の厚さは原子層1層分であって極めて薄い。また、単層のグラフェンにおける電子の移動度は大きい。この場合、二次元材料層1における電子の移動度及び厚さなどから算出される二次元材料層1での上記電流変化量は、通常の半導体における電流変化量の数百倍~数千倍程度となる。
【0078】
したがって、光ゲート効果を利用することで、二次元材料層1における検出電流の取り出し効率は大幅に向上する。このような光ゲート効果は、通常の半導体のような光電変換材料の量子効率を直接的に増強するのではなく、電磁波入射による電流変化を大きくする。そのため、等価的に電磁波入射による差分電流から算出した上記電磁波検出器の量子効率は100%を超えることができる。よって、本実施の形態に係る電磁波検出器による電磁波の検出感度は、従来の半導体電磁波検出器あるいは光ゲート効果を適用していないグラフェン電磁波検出器と比較して、高い。
【0079】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器は、半導体層4の一部と接しておりかつ半導体層4の他の一部を開口する開口部が形成されている絶縁膜3をさらに備える。二次元材料層1は、上記開口部において半導体層4の上記他の一部と電気的に接続され、具体的には半導体層4とショットキー接合している。二次元材料層1と半導体層4とがショットキー接合していることで、逆バイアス印加時には電流が流れず、電磁波検出器はOFF動作可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器では、上記二次元材料層1が絶縁膜3上に配置されている領域を有しているため、二次元材料層1が絶縁膜3上に配置されている領域を有していない場合と比べて、上記光ゲート効果による二次元材料層1の導電率がより大きく変調しやすい。
【0081】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器に電磁波が照射されたときの電流値Iの変化量は、強誘電体層5において発生する誘電分極による二次元材料層1の抵抗変化により発生する電流の変化量と、二次元材料層1と半導体層4のエネルギー障壁変化により発生する電流の変化量に加えて、二次元材料層1での光電変換により生じる光電流量を含む。つまり、本実施の形態に係る電磁波検出器では、電磁波の入射により、上述した光ゲート効果で生じた電流と、エネルギー障壁変化に伴う電流とに加え、二次元材料層1本来の光電変換効率に起因する光電流も検出できる。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係る電磁波検出器は、量子効率が100%以上となる好感度化と、OFF動作とを両立できる。
【0083】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器では、半導体層4にシリコンを用いる場合は、半導体層4中に読出回路を形成することが可能となる。これにより、素子の外部に回路を形成する必要なく信号の読出しが可能となる。
【0084】
実施の形態2.
<電磁波検出器の構成>
図4は、実施の形態2に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図5は、
図4の線分V-Vにおける断面模式図である。
図6は、実施の形態2に係る電磁波検出器の第1変形例を示す断面模式図である。
図7は、実施の形態2に係る電磁波検出器の第2変形例を示す断面模式図である。なお、
図5から
図7はいずれも
図4に対応する。
【0085】
図4に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5の配置が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図4に示した電磁波検出器では、強誘電体層5が二次元材料層1または絶縁膜3の下部に配置されている。
図5では、強誘電体層5は二次元材料層1の下部、半導体層4の上部に形成されている。
【0086】
図6に示した実施の形態2に係る電磁波検出器の第1変形例は、基本的には
図5に示した電磁波検出器と同様の構成を備えるが、強誘電体層5の配置が
図5に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図6に示した電磁波検出器では、強誘電体層5は、二次元材料層1の下部、絶縁膜3および半導体層4の上部に形成されている。
【0087】
図7に示した実施の形態2に係る電磁波検出器の第2変形例は、基本的には
図5に示した電磁波検出器と同様の構成を備えるが、強誘電体層5の配置が
図5に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図7に示した電磁波検出器では、強誘電体層5は、絶縁膜3の下部、半導体層4の上部に形成されている。絶縁膜3の下部において、強誘電体層5は二次元材料層1と接触している。ここで、強誘電体層5は二次元材料層1と半導体層4の接合界面に対して水平方向に分極変化が生じてもよい。その場合、電磁波照射により二次元材料層1と半導体層4のエネルギー障壁を変化させることができる。また、絶縁膜3と二次元材料層1の接合界面に対して垂直に分極変化が生じても良い。この場合、二次元材料層1の導電率が変化し、光ゲート効果を生じさせることができる。また、それぞれの方向に分極変化を生じさせても良い。このとき、強誘電体層5と二次元材料層1が接触していない場合は実施の形態5と同様の効果を得る。
【0088】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、強誘電体層5は二次元材料層1の下部または、絶縁膜3の下部に配置される。
【0089】
この場合、強誘電体層5は二次元材料層1の下部または、絶縁膜3の下部に配置されることで、二次元材料層1は強誘電体層5の成膜におけるプロセスダメージを無くすことができ、二次元材料層1の性能低下を防ぐことができるため、電磁波検出器を高感度化することができる。
【0090】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0091】
実施の形態3.
<電磁波検出器の構成>
図8は、実施の形態3に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図9は、
図8の線分IX-IXにおける断面模式図である。
【0092】
図8に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1、第1電極部2a、第2電極部2b、および半導体層4が強誘電体層5上に配置されている点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、強誘電体層5上の一部に半導体層4と第1電極部2aが設けられ、半導体層4上に第2電極部2bが設けられ、二次元材料層1は第1電極部2a上から強誘電体層5上を経由し半導体層4上にまで延在することを特徴とする。
【0093】
<作用効果>
上記電磁波検出器は強誘電体層5上に各層が形成されている。よって、強誘電体層5は、強誘電体結晶基板として構成され得る。このような強誘電体層5は、強誘電体結晶基板として構成されていない強誘電体層5と比べて、結晶性が高く、また厚くできる。このような強誘電体層5において電磁波照射により生じる分極の変化率は、強誘電体結晶基板として構成されていない強誘電体層5と比べて高いため、電磁波検出器の感度が向上する。また、実施の形態1に係る電磁波検出器では、二次元材料層1上に強誘電体層5を成膜する際に、二次元材料層1はプロセスダメージを受けるおそれがある。これに対し、実施の形態3に係る電磁波検出器では、二次元材料層1は上記プロセスダメージを受けないため、二次元材料層1の性能低下を防ぐことができるため、電磁波検出器を高感度化することができる。
【0094】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0095】
実施の形態4.
<電磁波検出器の構成>
図10は、実施の形態4に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図11は、
図10の線分XI-XIにおける断面模式図である。
図12は、実施の形態4に係る電磁波検出器の第1変形例を示す平面模式図である。
図13は、
図12の線分XIII-XIIIにおける断面模式図である。
図14は、実施の形態4に係る電磁波検出器の第2変形例を示す平面模式図である。
図15は、
図14の線分XV-XVにおける断面模式図である。
【0096】
図10に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5の配置が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図10に示した電磁波検出器では、強誘電体層5は二次元材料層1と半導体層4の接合面の上部にのみ配置されている。言い換えると、強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第1部分のみと重なるように配置されており、かつ上記第1部分のみと接触している。
【0097】
図12に示した実施の形態4に係る電磁波検出器の第1変形例では、強誘電体層5は絶縁膜3上の二次元材料層1の上部にのみ配置されている。言い換えると、強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第2部分および上記第3部分のみと重なるように配置されており、かつ上記第2部分および上記第3部分のみと接触している。
【0098】
図14に示した実施の形態4に係る電磁波検出器の第2変形例では、強誘電体層5は二次元材料層1の一部に配置されている。言い換えると、強誘電体層5は、二次元材料層1の上記第3部分のみと重なるように配置されており、かつ上記第3部分のみと接触している。
【0099】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、強誘電体層5は二次元材料層1と半導体層4の接合面の上部に配置されている。この場合、強誘電体層5に電磁波が入射したとき、強誘電体層5の分極変化により二次元材料層1と半導体層4のエネルギー障壁を変化させることができ、電磁波検出器を高感度化することができる。
【0100】
また、上記電磁波検出器の第1変形例において、強誘電体層5は絶縁膜3上の二次元材料層1の上部に配置されている。この場合、強誘電体層5に電磁波が入射したとき、強誘電体層5の分極変化により二次元材料層1の導電率が変調され、電磁波検出器を高感度化することができる。
【0101】
また、上記電磁波検出器の第2変形例において、強誘電体層5は二次元材料層1の一部に配置されている。この場合、強誘電体層5に電磁波が入射したとき、強誘電体層5が接触している領域の近傍において導電率の変調が生じる。これにより、二次元材料層1の任意の領域において導電率の変調が可能となる。
【0102】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0103】
実施の形態5.
<電磁波検出器の構成>
図16は、実施の形態5に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図16は
図1に対応する。
図17は、実施の形態5に係る電磁波検出器の第1変形例を示す平面模式図である。
図18は、
図17の線分XVIII-XVIIIにおける断面模式図である。
【0104】
図16に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5と二次元材料層1の間を隔てる絶縁膜3bを備えている点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器とは異なる。強誘電体層5は、二次元材料層1と直接接触しないようになっている。
【0105】
図17および
図18に示した電磁波検出器は、基本的には
図8および
図9に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5と二次元材料層1の間を隔てる絶縁膜3bを備えている点で、
図8および
図9に示した電磁波検出器とは異なる。言い換えると、
図17および
図18に示した電磁波検出器は、基本的には
図16に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1、第1電極部2a、第2電極部2b、半導体層4、および絶縁膜3bが強誘電体層5上に配置されている点で、
図16に示した電磁波検出器とは異なる。
【0106】
絶縁膜3bの厚さは、強誘電体層5の焦電効果による電界変化を遮蔽せずに二次元材料層1に与えることができる厚さであることが好ましい。
【0107】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、強誘電体層5と二次元材料層1の間に絶縁膜3bが配置されている。
【0108】
強誘電体層5と二次元材料層1の間に絶縁膜3bを挿入することで、強誘電体層5が二次元材料層1と直接接触しないようになっている。強誘電体層5は二次元材料層1と直接接触した場合、強誘電体層5の自発分極と二次元材料層1との間で電荷のやり取りが行われるため、光応答が小さくなる。また、強誘電体層5と二次元材料層1が接触した場合は、ヒステリシスが生じ、電磁波検出器の応答速度が低下する可能性がある。絶縁膜3bを挿入することで、これらの効果を抑制することができる。また絶縁膜3bを挿入した場合においても、強誘電体層5の焦電効果による電界変化を二次元材料層1に与えることができる。
【0109】
また、絶縁膜3bが検出波長の電磁波を吸収して発熱する場合、絶縁膜3bの発熱により強誘電体層5に熱エネルギーを与えることで分極変化を増加させることができ、電磁波検出器を高感度化することができる。
【0110】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0111】
実施の形態6.
<電磁波検出器の構成>
実施の形態1に係る電磁波検出器においては、平面視における二次元材料層1の端部の位置は特に限定されるものではないが、本実施の形態である電磁波検出器においては、二次元材料層1の上記第1部分が平面視における二次元材料層1の端部を有している。本実施の形態に係る電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1の端部は半導体層4上に配置されている。
【0112】
言い換えると、平面視における二次元材料層1の端部は、絶縁膜3の開口部内に配置されている。二次元材料層1の上記端部は、例えば二次元材料層1の長手方向における端部である。
【0113】
平面視における二次元材料層1の端部の形状は、例えば矩形状であるが、三角形状、または櫛形形状などであってもよい。また、二次元材料層1の上記第1部分は半導体層4と電気的に接続されている複数の端部を有していてもよい。また、二次元材料層1の上記第1部分は、平面視における二次元材料層1の端部の一部のみを有していてもよい。例えば、平面視における二次元材料層1の端部は、絶縁膜3の開口部内に配置されている部分と、絶縁膜3上に配置されている部分とを有していてもよい。
【0114】
また、二次元材料層1の上記端部はグラフェンナノリボンであっても良い。この場合、グラフェンナノリボンはバンドギャップを有するため、グラフェンナノリボンと半導体部分との接合領域においてショットキー接合が形成されるため、暗電流を低減し、電磁波検出器の感度を向上させることができる。
【0115】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、二次元材料層1の端部は、半導体層4上に存在する。この場合、二次元材料層1と半導体部分の接合領域がショットキー接合となる。この結果、二次元材料層1と半導体部分を逆バイアスで動作させることで、電磁波検出器の暗電流を低減し、感度を向上させることができる。また、二次元材料層1と半導体部分を順バイアスで動作させることで、取り出す光電流を増幅して感度を向上することができる。
【0116】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0117】
実施の形態7.
<電磁波検出器の構成>
図19は、実施の形態7に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図19は
図1に対応する。
【0118】
図19に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、半導体層4と二次元材料層1との接続部の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図19に示した電磁波検出器は、二次元材料層1と半導体層4との間に配置されたトンネル絶縁層6をさらに備える。
【0119】
トンネル絶縁層6は、絶縁膜3の開口部の内部に配置されている。トンネル絶縁層6の厚みは、検出対象とする電磁波が二次元材料層1および強誘電体層5に入射したときに、二次元材料層1と半導体層4との間にトンネル電流が生じるように設定されている。トンネル絶縁層6の厚みは、例えば1nm以上10nm以下である。トンネル絶縁層6を構成する材料は、電気的絶縁性を有する任意の材料であればよいが、たとえば、アルミナおよび酸化ハフニウムなどの金属酸化物、または酸化シリコンおよび窒化シリコンなどの半導体を含む酸化物、ならびにボロンナイトライドなどの窒化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。トンネル絶縁層6の作製方法としては任意の方法を用いることができる。たとえば、トンネル絶縁層6は、ALD(Atomic Layer Deposition)法、真空蒸着法、スパッタ法などを用いて作製しても良い。あるいは、トンネル絶縁層6を、半導体層4の表面を酸化または窒化することにより形成しても良い。あるいは、トンネル絶縁層6として半導体層4の表面に形成される自然酸化膜を用いても良い。
【0120】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0121】
<作用効果>
上記電磁波検出器はトンネル絶縁層6を備える。トンネル絶縁層6は、二次元材料層1と半導体層4との間に配置される。トンネル絶縁層6は、二次元材料層1と半導体層4との間にトンネル電流を形成することが可能な厚さを有する。この場合、トンネル絶縁層6の膜厚を半導体層4から二次元材料層1へトンネル注入が生じる程度の厚さとすることで、注入効率が改善させることにより二次元材料層1に大きな光電流が注入され、電磁波検出器の感度を向上させることができる。また、トンネル絶縁層6により半導体層4と二次元材料層1との接合界面での漏れ電流を抑制することで、暗電流を低減することができる。
【0122】
実施の形態8.
<電磁波検出器の構成>
図20は、実施の形態8に係る電磁波検出器の断面模式図である。なお
図20は
図1に対応する。
【0123】
図20に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図20に示した電磁波検出器は、強誘電体層5と接触しており、かつ強誘電体層5に対して二次元材料層1とは反対側に配置されている第3電極部2cをさらに備える。第3電極部2cは、強誘電体層5の上部に配置されている。第3電極部2cは強誘電体層5の表面と電気的に接続され、第3電極部2cと第1電極部2aまたは第2電極部2bの間には電圧Vが印加される。
【0124】
電磁波が強誘電体層5に対して第3電極部2c側から入射する場合には、第3電極部2cは、電磁波検出器が検出する電磁波の波長において高い透過率を示すことが好ましい。
【0125】
ここで、第3電極部2cは二次元材料層1とは反対側に配置されているが、強誘電体層5に接触していればよく、他の構成においても適用可能である。なお、第3電極部2cから電圧を印加する方向は二次元材料層1の延在方向に対して垂直方向となることが好ましい。本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0126】
<作用効果>
上記電磁波検出器は、第3電極部2cを備える。第3電極部2cは、強誘電体層5と電気的に接続する。この場合、第3電極部2cに電圧を印加することが可能となり、強誘電体層5の分極を制御することが可能となる。
図20では第1電極部2aと同一の電圧を印加しているが、別の電圧を印加してもよい。強誘電体層5の分極を制御することで、電磁波照射による分極変化を制御可能となり、電磁波照射により二次元材料層1と半導体層4のエネルギー障壁を効率的に低下させることができるため、電磁波検出器の感度が向上する。
【0127】
実施の形態9.
<電磁波検出器の構成>
図21は、実施の形態9に係る電磁波検出器の断面模式図である。なお
図21は
図1に対応する。
【0128】
図21に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1と半導体層4との接続部の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図21に示した電磁波検出器は、二次元材料層1と半導体層4との間を電気的に接続する接続導電体部2dをさらに備える。
【0129】
接続導電体部2dは、絶縁膜3の開口部の内部に配置されている。平面視において、接続導電体部2dは、二次元材料層1および半導体層4の各々と重なるように配置されており、かつ二次元材料層1および半導体層4の各々と接触している。接続導電体部2dの下面は半導体層4の上面と接触している。接続導電体部2dの上面は、二次元材料層1の下面と接触している。好ましくは、接続導電体部2dの上面の位置は絶縁膜3の上面の位置と実質的に同じである。言い換えると、好ましくは、接続導電体部2dの厚みは、絶縁膜3の厚みと等しい。この場合、二次元材料層1は、絶縁膜3の上面から接続導電体部2dの上面上にまで、屈曲することなく平面状に延びている。
【0130】
電磁波が強誘電体層5に対して接続導電体部2d側から入射する場合には、接続導電体部2dは、電磁波検出器が検出する電磁波の波長において高い透過率を示すことが好ましい。
【0131】
ここで、本実施の形態に係る電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0132】
<作用効果>
上記電磁波検出器は、接続導電体部2dを備える。接続導電体部2dは、半導体層4と二次元材料層1とを電気的に接続する。この場合、二次元材料層1と半導体層4との間に接続導電体部2dが設けられることにより、二次元材料層1と半導体層4との間のコンタクト抵抗を低減することが出来る。また、接続導電体部2dと半導体層4とがショットキー接合となり、暗電流を低減することが出来る。
【0133】
また、接続導電体部2dの厚みと絶縁膜3の厚みとを実質的に同じにする、つまり接続導電体部2dの上面の位置を絶縁膜3の上面の位置と実質的に同じにすることが好ましい。この場合、二次元材料層1が折れ曲がることなく水平に形成されるため、二次元材料層1でのキャリアの移動度が向上する。光ゲート効果は移動度に比例するため、電磁波検出器の感度が向上する。
【0134】
実施の形態10.
<電磁波検出器の構成>
図22は、実施の形態10に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図23は、
図22の線分XXIII-XXIIIにおける断面模式図である。
図24は、
図22の線分XXIV-XXIVにおける断面模式図である。
図25は、実施の形態10に係る電磁波検出器の第1変形例を示す平面模式図である。
図26は
図25の線分XXVI-XXVIにおける断面模式図である。
図27は、実施の形態10に係る電磁波検出器の第2変形例を示す平面模式図である。
図28は、
図27の線分XXVIII-XXVIIIにおける断面模式図である。
【0135】
図22に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1および絶縁膜3の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図22に示した電磁波検出器は、二次元材料層1と半導体層4との接続部分が複数設けられている点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0136】
図22に示した電磁波検出器では、絶縁膜3において開口部として複数の開口部が形成されている。二次元材料層1が複数の開口部の各々の内部にまで延在しかつ当該複数の開口部の各々の内部において半導体層4と電気的に接続されている。絶縁膜3には、複数の開口部として、第1開口、第2開口および第3開口が形成されている。第1開口、第2開口および第3開口は互いに間隔を隔てて配置されている。第1開口、第2開口および第3開口はそれぞれ絶縁膜3を貫通し、底部において半導体層4の表面が露出している。二次元材料層1は絶縁膜3の上部表面上から第1開口、第2開口および第3開口の内部にまで延在している。二次元材料層1は第1開口、第2開口および第3開口の底部において半導体層4と接触している。
【0137】
上記のように、絶縁膜3に複数の開口部を設け、二次元材料層1と半導体層4との接触領域を増加させることで、半導体層4から二次元材料層1に流れる電流を分散させることができる。そのため、二次元材料層1が強誘電体層5を介して電界変化の影響を受ける領域を広げることができる。
【0138】
例えば、本実施の形態を用いた電磁波検出器を一つの画素とする場合を考える。たとえば、
図22に示した電磁波検出器を平面形状が四角形状である1つの画素とする。
図22~
図24において電磁波が強誘電体層5に対して第1電極部2a側から入射する場合、強誘電体層5に入射する電磁波の減衰を少なくするためには、第1電極部2aの面積を可能な限り小さくすることが好ましい。そのため、
図22および
図23に示すように第1電極部2aは画素の四隅のうちの1つの隅に配置される。そして、
図22~
図24に示すように他の3つの隅には絶縁膜3の第1開口、第2開口および第3開口が配置される。このようにすれば、第1電極部2aによる電磁波の減衰を最小限に抑えつつ、二次元材料層1と強誘電体層5との接触面積を増加させることができる。この結果、二次元材料層1において強誘電体層5からの電界変化の影響を受ける領域を広げ、電磁波検出器を高感度化することができる。なお、第1電極部2aおよび絶縁膜3の開口部の面積は可能な限り小さい方が好ましい。
【0139】
図22~
図24では半導体層4との接続部分が複数設けられているが、
図27および
図28に示すように二次元材料層1と第1電極部2aとの接続部分が複数設けられてもよい。複数の第1電極部2aの各々は、例えば上記画素の四隅のうちの2以上の隅に配置される。なお、複数の第1電極部2aの各々は、絶縁膜3上であれば他の位置に配置されてもよい。
【0140】
また、二次元材料層1と半導体層4との接続部分および二次元材料層1と第1電極部2aとの接続部分のそれぞれが、複数設けられてもよい。例えば、二次元材料層1と半導体層4との接続部分および二次元材料層1と第1電極部2aとの接続部分のそれぞれが、上記画素の四隅のうちの2の隅に配置されてもよい。
【0141】
図25および
図26に示した電磁波検出器は、基本的には
図22に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、第1電極部2aおよび絶縁膜3の構成が
図22に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図25に示した電磁波検出器では、第1電極部2aが環状に形成されており、二次元材料層1の上記第1部分が第1電極部2aよりも内側に配置されている。第1電極部2aは、例えば上記画素の外周部に配置されている。絶縁膜3の開口部は、第1電極部2aよりも内側に配置されており、例えば上記画素の中央に配置されている。第1電極部2aは、絶縁膜3の開口部の外周を囲むように、絶縁膜3の上部表面上に配置されている。
図25に示した電磁波検出器では、
図22に示す電磁波検出器と比べて、二次元材料層1を介して半導体層4から取り出される光電流が増加するため、検出感度は高い。なお、第1電極部2aの幅は、電磁波の減衰を抑制するため、可能な限り細くすることが好ましい。二次元材料層1は、絶縁膜3の開口部および第1電極部2aと部分的に重なると共に、半導体層4の平面形状とほぼ重なる領域に配置されてもよい。
【0142】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0143】
<作用効果>
図22~
図24、
図27に示される電磁波検出器では、二次元の材料層1と半導体層4との接続部分および二次元材料層1と第1電極部2aとの接続部分の少なくともいずれかが複数設けられている。
【0144】
二次元の材料層1と半導体層4との接続部分および二次元材料層1と第1電極部2aとの接続部分の少なくともいずれかが複数設けられていることにより、二次元材料層1を経て半導体層4と第1電極部2aとの間を流れる電流は、二次元材料層1において局所的に流れず、分散して流れる。その結果、
図22~
図24、
図27に示される電磁波検出器では、各接続部分が1つのみ設けられている場合と比べて、強誘電体層5における分極の変化に起因して二次元材料層1において電流が変化し得る領域が広くなるため、検出感度が高い。
【0145】
図25および
図26に示される電磁波検出器では、第1電極部2aが環状に形成されており、二次元材料層1の上記第1部分が第1電極部2aよりも内側に配置されている。この場合、第1電極部2aによる電磁波の減衰を最小限に抑えつつ、二次元材料層1において半導体層4からの電界変化の影響を受ける領域を広げることができる。この結果、電磁波検出器を高感度化することが出来る。
【0146】
実施の形態11.
<電磁波検出器の構成>
図29は、実施の形態11に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図30は、実施の形態11に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【0147】
図29に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、半導体層4の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図29に示した電磁波検出器は、半導体層4が半導体層4a(第1半導体部分)および半導体層4b(第2半導体部分)を含む点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0148】
図29に示すように、半導体層4は、例えば半導体層4aおよび4bにて構成されている。なお、半導体層4は、3以上の半導体層を含んでいてもよい。半導体層4aは、絶縁膜3の上記開口部において露出しており、二次元材料層1を介して第1電極部2aと電気的に接続されている。半導体層4aは、例えば二次元材料層1および絶縁膜3と接触している。半導体層4bは、例えば半導体層4aに対して二次元材料層1とは反対側に配置されており、第2電極部2bと電気的に接続されている。なお、半導体層4aおよび半導体層4bは、
図29においては積層しているが、これに限られるものではない。
【0149】
半導体層4aの導電型は、半導体層4bの導電型とは異なる。例えば半導体層4aの導電型がn型、半導体層4bの導電型がp型である。これにより、半導体層4はダイオードを構成する。半導体層4は、例えば強誘電体層5とは異なる波長に感度を有するフォトダイオードを構成する。
【0150】
また、
図30に示した電磁波検出器は、基本的には
図29に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、半導体層4b(第2半導体部分)と電気的に接続されている第2電極部2baに加え、半導体層4a(第1半導体部分)と電気的に接続されている第4電極部をさらに備える点で、
図29に示した電磁波検出器と異なっている。
【0151】
二次元材料層1は、半導体層4aおよび半導体層4bと電気的に接続されている。半導体層4aと半導体層4bとの界面は、絶縁膜3の上記開口部内に配置されている。半導体層4aは、例えば二次元材料層1および第4電極部2bbと接触している。半導体層4bは、例えば、第2電極部2bに加え、二次元材料層1および絶縁膜3と接触している。
【0152】
図30に示すように、第2電極部2baと第4電極部2bbの間には電圧V2が印加される。このとき、電圧V2を逆バイアスで印加することで、半導体層4aと半導体層4bの界面には空乏層が形成されるため、二次元材料層1と半導体層4aおよび半導体層4bの界面には空乏層が形成される。
【0153】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0154】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、半導体層4は半導体層4aおよび半導体層4bにより構成されている。半導体層4aおよび半導体層4bがpn接合を形成することで、暗電流を低減できる。また、半導体層4aおよびは半導体層4bが強誘電体層5とは異なる波長に感度を有するフォトダイオードを構成することにより、強誘電体層5と上記フォトダイオードとにより広帯域の波長の検出が可能となる。
【0155】
実施の形態12.
<電磁波検出器の構成>
図31は、実施の形態12に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図32は、実施の形態12に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【0156】
図31に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図31に示した電磁波検出器は、強誘電体層5が強誘電体層5a(第1強誘電体部分)および強誘電体層5b(第2強誘電体部分)を含む点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0157】
上述のように、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bの各々を構成する材料は、熱エネルギーの変化に対して分極変化が生じる任意の強誘電体であればよいが、好ましくは電磁波の吸収波長が互いに異なる。
【0158】
図31に示すように、強誘電体層5は、例えば強誘電体層5aおよび強誘電体層5bにて構成されている。なお、強誘電体層5は、3以上の強誘電体層を含んでいてもよい。強誘電体層5aは、強誘電体層5bに対して二次元材料層1側に配置されており、二次元材料層1と接触している。強誘電体層5bは、強誘電体層5aと接触しているが、二次元材料層1とは接触していない。なお、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bは、
図31においては積層しているが、これに限られるものではない。
【0159】
図32に示した電磁波検出器は、基本的には
図31に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、強誘電体層5の構成が
図31に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図32に示した電磁波検出器は、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bが二次元材料層1と接触している点で、
図31に示した電磁波検出器と異なっている。
【0160】
強誘電体層5aは、二次元材料層1の上記第1部分と重なるように配置されている。強誘電体層5bは、二次元材料層1の上記第2部分および上記第3部分と重なるように配置されている。強誘電体層5aおよび強誘電体層5bの各々を構成する材料の分極率は、互いに異なる。好ましくは、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bの各々を構成する材料の分極率は、二次元材料層1の各領域におけるフェルミレベルが最適となるように、設計される。例えば、強誘電体層5aを構成する材料の分極率は、強誘電体層5bを構成する材料の分極率と比べて、高く設定される。
【0161】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、強誘電体層5は強誘電体層5aおよび強誘電体層5bを含む。
図31に示した電磁波検出器では、強誘電体層5aおよびは強誘電体層5bの電磁波の吸収波長が互いに異なることにより、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bの各々を構成する材料の電磁波の吸収波長が互いに等しい場合と比べて、広帯域の波長の検出が可能となる。
図32に示した電磁波検出器では、強誘電体層5aおよび強誘電体層5bの各々を構成する材料の分極率が互いに異なるため、二次元材料層1の各領域におけるフェルミレベルが最適となるように、設計され得る。二次元材料層1の各領域におけるフェルミレベルが最適に設計されることで、電磁波検出器の高性能化が図られる。
【0162】
実施の形態13.
<電磁波検出器の構成>
本実施の形態に係る電磁波検出器では、二次元材料層1が乱層構造部分を含む点が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0163】
上記電磁波検出器では、二次元材料層1においてチャネル領域に対応する領域が乱層構造部分となっている。ここで、乱層構造とは、グラフェンが複数積層された領域であって、積層されたグラフェン同士の格子が不整合な状態で積層された構造を意味する。なお、二次元材料層1の全体が乱層構造であってもよいし、一部のみが乱層構造となっていてもよい。
【0164】
乱層構造部分の作製方法としては任意の方法を用いることができる。たとえば、CVD法で作製した単層のグラフェンを複数回転写し、多層グラフェンを積層することで乱層構造部分を形成してもよい。また、グラフェン上に、エタノールまたはメタンなどを炭素源としてCVD法によりグラフェンを成長して乱層構造部分を形成しても良い。二次元材料層1において絶縁膜3との接触領域を乱層構造とすることで、二次元材料層1におけるキャリアの移動度が向上する。ここで、通常の積層グラフェンは、A-B積層と呼ばれ、積層したグラフェン同士の格子が整合した状態で積層される。しかし、CVD法により作製したグラフェンは多結晶であり、グラフェン上に更にグラフェンを複数回転写した場合、またはCVD法を用いて下地のグラフェン上にグラフェンを積層した場合は、積層されたグラフェン同士の格子が不整合な状態である乱層構造となる。
【0165】
乱層構造のグラフェンは、層間の相互作用の影響が少なく、単層グラフェンと同等の性質を持つ。さらに、二次元材料層1は下地となる絶縁膜3でのキャリア散乱の影響を受けて移動度が低下する。しかし、乱層構造のグラフェンは絶縁膜3と接触するグラフェンはキャリア散乱の影響を受けるが、当該グラフェン上に乱層構造で積層された上層のグラフェンは、下地の絶縁膜3のキャリア散乱の影響を受けにくくなる。また、乱層構造のグラフェンでは、層間の相互作用の影響が少ないため、導電率も向上する。以上より、乱層構造のグラフェンではキャリアの移動度を向上させることができる。この結果、電磁波検出器の感度を向上させることができる。
【0166】
また、乱層構造のグラフェンは絶縁膜3上に存在する二次元材料層1の部分のみに適用しても良い。たとえば、二次元材料層1において半導体層4との接触領域や第1電極部2aとの接触領域については乱層構造ではないグラフェン、たとえば単層のグラフェンを用いてもよい。この場合、第1電極部2aおよび半導体層4と二次元材料層1とのコンタクト抵抗を増大させることなく、二次元材料層1に対する絶縁膜3のキャリア散乱の影響を抑制することが出来る。
【0167】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0168】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、二次元材料層1は、乱層構造を含む。この場合、二次元材料層1におけるキャリアの移動度を向上させることができる。この結果、電磁波検出器の感度を向上させることができる。
【0169】
実施の形態14.
<電磁波検出器の構成>
図33は、実施の形態14に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【0170】
図33に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1上の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図33に示した電磁波検出器では、二次元材料層1の上部表面上に少なくとも1つ以上の導電体7が形成されている点が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。二次元材料層1の上部表面上には、複数の導電体7が配置されている。複数の導電体7は互いに間隔を隔てて配置されている。導電体7はフローティング電極である。以下、具体的に説明する。
【0171】
図33に示すように、本実施の形態に係る電磁波検出器は、二次元材料層1上にフローティング電極としての導電体7を設けている。導電体7を構成する材料は導電体であれば任意の材料を用いることができる。たとえば、導電体7の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、又は、パラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができる。ここで、導電体7は、電源回路等に接続されておらず、フローティングとなっている。
【0172】
導電体7は、第1電極部2aと半導体層4との間に位置する二次元材料層1上に設けられている。複数の導電体7は、一次元、又は、二次元の周期構造を有する。たとえば、一次元の周期構造の例として、
図33の紙面上の水平方向又は紙面の奥行き方向に複数の導電体7が互いに間隔を隔てて(周期的に)配列された構造を採用し得る。また、二次元の周期構造の例として、電磁波検出器の平面視において、正方格子又は三角格子等の格子点に対応する位置に導電体7が配列された構造を採用し得る。また、電磁波検出器の平面視において、各導電体7の平面形状は、円形状、三角形状、四角形状、多角形状、又は、楕円形状等の任意の形状であってもよい。また、導電体7の平面視における配置は、上述した周期的な対称性を有する配列だけに限られず、平面視において非対称性を有する配列であってもよい。ここで、導電体7を形成する具体的な方法は、任意の方法を採用し得るが、例えば、実施の形態1で説明した第1電極部2aの製造方法と同様の方法を用いてもよい。
【0173】
本実施の形態に係る電磁波検出器では、二次元材料層1の上にフローティング電極である導電体7を設けている。そのため、強誘電体層5において電磁波の照射により発生した表面キャリアが、複数の導電体7の間を行き来できるようになり、その結果光キャリアの寿命が長くなる。これにより、電磁波検出器の感度を高めることができる。
【0174】
また、複数の導電体7を一次元の周期的な構造を構成する配置し、導電体7の材料を表面プラズモン共鳴が生じる材料とすることにより、照射される電磁波によって導電体7に偏光依存性が生じる。この結果、特定の偏光の電磁波だけを電磁波検出器の半導体層4に照射させることができる。この場合、本実施の形態に係る電磁波検出器は、特定の偏光のみを検出することができる。
【0175】
また、複数の導電体7を二次元の周期的な構造を構成するように配置し、導電体7の材料を表面プラズモン共鳴が生じる材料とすることにより、複数の導電体7によって特定の波長の電磁波を共鳴させることができる。この場合、特定の波長を有する電磁波だけを電磁波検出器で検出することができる。この場合、本実施の形態に係る電磁波検出器は、特定の波長の電磁波のみを高感度に検出することができる。
【0176】
また、複数の導電体7を平面視において非対称な配置となるように形成した場合、複数の導電体7を一次元の周期的な構造する場合と同様、照射される電磁波に対して導電体7に偏光依存性が生じる。この結果、特定の偏光の電磁波だけを半導体層4に照射させることができる。この場合、本実施の形態に係る電磁波検出器は、特定の偏光のみを検出することができる。
【0177】
また、上記電磁波検出器は、二次元材料層1の下に導電体7が配置されていてもよい。このような構成によっても、
図33に示した電磁波検出器と同様にの効果を得ることができる。さらに、この場合、導電体7の形成時に二次元材料層1にダメージを与えないため、二次元材料層1でのキャリアの移動度の低下を抑制できる。
【0178】
また、二次元材料層1に凹凸部を形成してもよい。この場合、二次元材料層1の凹凸部は、上述した複数の導電体7と同様、周期的な構造又は非対称な構造としてもよい。この場合、複数の導電体7を形成した場合と同様の効果を得ることができる。
【0179】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0180】
<作用効果>
上記電磁波検出器は、1つ以上の導電体7をさらに備える。1つ以上の導電体7は、二次元材料層1に接触するように配置される。この場合、二次元材料層1における光キャリアの寿命が長くなる。この結果、電磁波検出器の感度を高めることができる。
【0181】
実施の形態15.
<電磁波検出器の構成>
図34は、実施の形態15に係る電磁波検出器の断面模式図である。
【0182】
図34に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1上の構成が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図34に示した電磁波検出器では、二次元材料層1の上部表面上に少なくとも1つ以上の接触層8が形成されている点が
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。以下、具体的に説明する。
【0183】
図34に示す電磁波検出器では、二次元材料層1上に接触層8が設けられている。接触層8は、二次元材料層1と接触することで、二次元材料層1に正孔又は電子を供給することが可能な材料により構成されている。接触層8により二次元材料層1に任意に正孔又は電子をドーピングすることができる。
【0184】
接触層8としては、例えば、ポジ型フォトレジストと呼ばれる、キノンジアジト基を有する感光剤とノボラック樹脂とを含有する組成物を用いることができる。また、接触層8を構成する材料としては、例えば、極性基を有する材料を用いることができる。例えば、当該材料の一例である電子求引基を有する材料は、二次元材料層1の電子密度を減少させる効果を持つ。また、当該材料の一例である電子供与基を有する材料は、二次元材料層1の電子密度を増加させる効果を持つ。電子求引基を有する材料としては、例えば、ハロゲン、ニトリル、カルボキシル基、又は、カルボニル基等を有する材料が挙げられる。また、電子供与基を有する材料としては、例えば、アルキル基、アルコール、アミノ基、又は、ヒドロキシル基等を有する材料が挙げられる。また、上記以外にも極性基によって分子全体において電荷の偏りが生じる材料も、接触層8の材料として用いることができる。
【0185】
また、有機物、金属、半導体、絶縁体、2次元材料、又は、これら材料のいずれかの混合物においても、分子内で電荷の偏りが生じて極性を生じる材料であれば、接触層8の材料として用いることができる。ここで、無機物からなる接触層8と二次元材料層1とを接触させた場合、二次元材料層1がドーピングされる導電型は、二次元材料層1の仕事関数よりも接触層8の仕事関数が大きい場合はp型、小さい場合はn型である。それに対して、接触層8が有機物の場合、当該接触層8を構成する材料である有機物が明確な仕事関数を有していない。そのため、二次元材料層1に対してn型ドープになるのか、p型ドープになるのかは、接触層8に用いる有機物の分子の極性によって、接触層8の材料の極性基を判断することが好ましい。
【0186】
例えば、接触層8として、ポジ型フォトレジストと呼ばれる、キノンジアジト基を有する感光剤とノボラック樹脂とを含有する組成物を用いる場合、二次元材料層1においてフォトリソグラフィ工程によりレジストを形成した領域がp型二次元材料層領域となる。これにより、二次元材料層1の表面上に接触するマスク形成処理が不要となる。この結果、二次元材料層1に対するプロセスダメージの低減及びプロセスの簡素化が可能となる。
【0187】
本実施の形態に係る電磁波検出器は、二次元材料層1の上に接触層8を形成している。上述した通り、接触層8の材料として、例えば、電子求引基を有する材料、又は、電子供与基を有する材料を用いることで、二次元材料層1の状態(導電型)を意図的にn型又はp型とすることができる。この場合、第1電極部2aおよび半導体層4および強誘電体層5の分極からのキャリアドーピングの影響を考慮せず、二次元材料層1のキャリアドーピングを制御することができる。この結果、電磁波検出器の性能を向上させることができる。
【0188】
また、接触層8を、二次元材料層1の上部表面における第1電極部2a側または半導体層4側のどちらか一方にのみ形成することで、二次元材料層1中に電荷密度の勾配が形成される。この結果、二次元材料層1中のキャリアの移動度が向上し、電磁波検出器を高感度化することが出来る。
【0189】
また、二次元材料層1上に複数の接触層8を形成してもよい。接触層8の数は3以上であってもよく、任意の数とすることができる。複数の接触層8を第1電極部2aと半導体層4との間に位置する二次元材料層1上に形成してもよい。その場合、複数の接触層8の材料は、同じ材料でも異なる材料でもよい。
【0190】
また、本実施の形態に係る電磁波検出器において、接触層8の膜厚は、電磁波が二次元材料層1に照射された場合に、光電変換を行うことができるよう十分薄い方が好ましい。一方、接触層8から二次元材料層1にキャリアがドーピングされる程度の厚さを有するように接触層8を形成することが好ましい。接触層8は、分子又は電子などのキャリアが二次元材料層1に導入されれば任意の構成としても良い。たとえば、二次元材料層1を溶液に浸漬させて、分子レベルで二次元材料層1にキャリアを供給することで、固体の接触層8を二次元材料層1上に形成しないで、二次元材料層1にキャリアをドーピングしてもよい。
【0191】
また、接触層8の材料として、上述した材料以外にも、極性変換を生じる材料を用いてもよい。その場合、接触層8が極性変換すると、変換の際に生じた電子又は正孔が、二次元材料層1に供給される。そのため、接触層8が接触している二次元材料層1の部分に電子又は正孔のドーピングが生じる。そのため、接触層8を取り除いても、接触層8と接触していた二次元材料層1の当該部分は、電子又は正孔がドーピングされたままの状態となる。したがって、接触層8として、極性変換を生じる材料を用いた場合、一定の時間が経過した後に接触層8を二次元材料層1上から取り除いてもよい。この場合、接触層8が存在している場合より二次元材料層1の開口部面積が増加する。このため、電磁波検出器の検出感度を向上させることができる。ここで、極性変換とは、極性基が化学的に変換する現象であり、例えば、電子求引基が電子供与基に変化する、または電子供与基が電子求引基に変化する、または極性基が非極性基に変化する、または非極性基が極性基に変化する、といった現象を意味する。
【0192】
また、接触層8が電磁波照射によって極性変換を生じる材料により形成されてもよい。この場合、特定の電磁波の波長において極性変換を生じる材料を接触層8の材料として選択することで、特定の電磁波の波長の電磁波照射時のみ接触層8で極性変換を生じさせ、二次元材料層1へのドーピングを行うことができる。この結果、二次元材料層1に流入する光電流を増大させることができる。
【0193】
また、電磁波照射によって酸化還元反応を生じる材料を接触層8の材料として用いてもよい。この場合、酸化還元反応時に生じる電子又は正孔を二次元材料層1にドーピングすることができる。
【0194】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0195】
<作用効果>
上記電磁波検出器は、二次元材料層1に接触する接触層8を備える。接触層8は、二次元材料層1に正孔または電子を供給する。この場合、第1電極部2aおよび半導体層4からのキャリアドーピングの影響を考慮せず、二次元材料層1のキャリアドーピングを制御することができる。この結果、電磁波検出器の性能を向上させることができる。
【0196】
実施の形態16.
<電磁波検出器の構成>
図35は、実施の形態16に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図36は、実施の形態16に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
図35に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1の周囲に空隙9が形成されている点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0197】
図35に示すように、二次元材料層1と絶縁膜3との間に空隙9が設けられている。二次元材料層1は、空隙9に面した表面を有している。つまり、二次元材料層1において、実施の形態1に係る電磁波検出器とは異なり、絶縁膜3と接触していない。このとき、開口部において半導体層4の上部表面は第1電極部2aの上部表面と同一の高さであることが好ましい。二次元材料層1は、第1電極部2a上から半導体層4上にまで延在している。二次元材料層1の下に位置する空隙9は、第1電極部2aと開口部との間に位置する。なお、絶縁膜3と二次元材料層1との間に空隙9が設けられていれば、他の構成を採用してもよい。
【0198】
図36に示した電磁波検出器は、基本的には
図35に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1の構造が
図35に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図36に示した電磁波検出器では、二次元材料層1と強誘電体層5の間に空隙9が形成されている。
【0199】
図36に示すように、二次元材料層1と強誘電体層5との間に空隙9が設けられている。つまり、二次元材料層1において、実施の形態1に係る電磁波検出器とは異なり、強誘電体層5と接触していない。電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化は第1電極部2aまたは半導体層4を介して二次元材料層1に電界変化を生じさせる。このとき、強誘電体層5の分極方向は二次元材料層1の面と平行方向であっても良い。また、空隙9を介して電界変化を生じさせても良い。このとき、強誘電体層5の分極方向は二次元材料層1の面と垂直方向であっても良い。また、半導体層4の上部表面は第1電極部2aの上部表面と同一の高さであることが好ましい。二次元材料層1は、第1電極部2a上から半導体層4上にまで延在している。二次元材料層1の下に位置する空隙9は、第1電極部2aと半導体層4との間に位置する。なお、二次元材料層1と強誘電体層5の間に空隙9が設けられていれば、他の構成を採用してもよい。
【0200】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0201】
<作用効果>
上記電磁波検出器において、二次元材料層1の上部または下部の少なくとも一方に空隙9が形成されている。この場合、絶縁膜3または強誘電体層5と二次元材料層1との接触に伴うキャリアの散乱の影響を無くすことができる。この結果、二次元材料層1におけるキャリアの移動度の低下を抑制することができる。したがって、電磁波検出器の感度を向上させることができる。なお、光ゲート効果は、二次元材料層1の下部に空隙9が生じていても作用することが可能である。
【0202】
実施の形態17.
<電磁波検出器の構成>
図37は、実施の形態17に係る電磁波検出器の断面模式図である。
図37に示した電磁波検出器は、基本的には
図1および
図2に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、二次元材料層1と強誘電体層5との間を電気的に接続する接続導電体部2eをさらに備え、強誘電体層5が接続導電体部2eを介して二次元材料層1と接続されている点で、
図1および
図2に示した電磁波検出器と異なっている。
【0203】
強誘電体層5は、電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化が二次元材料層1と接続導電体部2eとの接合界面に対して垂直な方向に生じるように、設けられている。この場合、上記分極変化により強誘電体層5に生じた電荷は、接続導電体部2eを介して二次元材料層1に注入される。
【0204】
図37に示される接続導電体部2eおよび強誘電体層5は、二次元材料層1の上部に配置されている。なお、接続導電体部2eおよび強誘電体層5は、二次元材料層1の下部に配置されていてもよい。この場合、接続導電体部2eは、例えば強誘電体層5の上部に配置されている。強誘電体層5は、電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化が半導体層4の第1面に対して垂直な方向に生じるように、設けられている。
【0205】
接続導電体部2eおよび強誘電体層5は、第1面に沿っておりかつ二次元材料層1の延在方向と直交する方向において、二次元材料層1と並んで配置されていてもよい。この場合、好ましくは、強誘電体層5は、電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化が二次元材料層1の二次元面に沿った方向に生じるように、設けられている。言い換えると、強誘電体層5は、電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化が半導体層4の第1面に沿った方向に生じるように、設けられている。
【0206】
<作用効果>
二次元材料層1および強誘電体層5の表面抵抗は高い。そのため、強誘電体層5が接続導電体部2eを介さずに二次元材料層1に接続されている場合には、強誘電体層5において分極変化によって生じた電荷は二次元材料層1に注入されない。これに対し、本実施の形態に係る電磁波検出器では、強誘電体層5が接続導電体部2eを介して二次元材料層1と接続されている。そのため、強誘電体層5において電磁波照射に伴う分極変化によって生じた電荷は、接続導電体部2eを介して二次元材料層1に注入され得る。その結果、本実施の形態に係る電磁波検出器では、強誘電体層5が接続導電体部2eを介さずに二次元材料層1に接続されている電磁波検出器と比べて、二次元材料層1の導電率が効率的に変調され得る。
【0207】
なお、接続導電体部2eおよび強誘電体層5が二次元材料層1の上部に配置されている場合、当該電磁波検出器の製造方法では、接続導電体部2eおよび強誘電体層5を形成する工程は、二次元材料層1を形成する工程の後に行われる。そのため、二次元材料層1が、接続導電体部2eおよび強誘電体層5を形成する工程によってプロセスダメージを受けるおそれがある。
【0208】
これに対し、接続導電体部2eおよび強誘電体層5が二次元材料層1の下部に配置されている場合、当該電磁波検出器の製造方法では、接続導電体部2eおよび強誘電体層5を形成する工程は、二次元材料層1を形成する工程の前に行われる。そのため、二次元材料層1が、接続導電体部2eおよび強誘電体層5を形成する工程によってプロセスダメージを受けるおそれがない。その結果、上記プロセスダメージに伴う二次元材料層1の性能低下、さらには電磁波検出器の検出感度の低下が防止され得る。
【0209】
接続導電体部2eおよび強誘電体層5が、第1面に沿っておりかつ二次元材料層1の延在方向と直交する方向において、二次元材料層1と並んで配置されている場合、強誘電体層5は、電磁波照射により生じる強誘電体層5の分極変化が二次元材料層1の二次元面に沿った方向に生じるように、設けられているのが好ましい。二次元材料層1の二次元面に沿った方向の電気抵抗は、二次元材料層1の二次元面に垂直な方向の電気抵抗よりも低い。そのため、強誘電体層5の分極変化が二次元材料層1の二次元面に沿った方向に生じるように設けられている場合には、強誘電体層5の分極変化が二次元材料層1の二次元面に垂直な方向に生じるように設けられている場合と比べて、強誘電体層5において電磁波照射に伴う分極変化によって生じた電荷が、接続導電体部2eを介して二次元材料層1に効率的に注入され得る。
【0210】
ここで、本実施の形態である電磁波検出器の構成は、他の実施の形態にも適用することができる。
【0211】
実施の形態18.
<電磁波検出器の構成>
図38は、実施の形態18に係る電磁波検出器の平面模式図である。
図39は、実施の形態18に係る電磁波検出器の変形例を示す断面模式図である。
【0212】
図38に示した電磁波検出器は、電磁波検出器集合体であって、検出素子として実施の形態1~実施の形態12のいずれかに係る電磁波検出器100を複数有している。たとえば、電磁波検出器100として実施の形態1に係る電磁波検出器を用いてもよい。
図38では、電磁波検出器100が二次元方向にアレイ状に配置されている。なお、複数の電磁波検出器100は、一次元方向に並ぶように配置されていてもよい。以下、具体的に説明する。
【0213】
図38に示すように、本実施の形態に係る電磁波検出器では、電磁波検出器100が、2×2のアレイ状に配置されている。ただし、配置される電磁波検出器100の数はこれに限定されない。たとえば、複数の電磁波検出器100を3以上×3以上のアレイ状に配置してもよい。また、本実施の形態では、二次元に周期的に複数の電磁波検出器100を配列したが、複数の電磁波検出器100をある方向に沿って周期的に配列しても構わない。また、複数の電磁波検出器100の配置は周期的ではなく、異なる間隔で配置してもよい。
【0214】
また、複数の電磁波検出器100をアレイ状に配置する際は、それぞれの電磁波検出器100が分離出来てさえいれば、第2電極部2bは共通電極としてもよい。第2電極部2bを共通電極とすることで、各電磁波検出器100において第2電極部2bが独立している構成よりも、画素の配線を少なくすることが出来る。この結果、電磁波検出器集合体を高解像度化することが可能となる。
【0215】
このように複数の電磁波検出器100を用いた電磁波検出器集合体は、アレイ状に複数の電磁波検出器100を配列することで画像センサとしても使用できる。
【0216】
ここで、本実施の形態では、実施の形態1に係る電磁波検出器100を複数有する電磁波検出器集合体を例に説明したが、実施の形態1に係る電磁波検出器の代わりに、他の実施の形態に係る電磁波検出器を用いてもよい。
【0217】
図39に示した電磁波検出器は、電磁波検出器集合体であって、基本的には
図38に示した電磁波検出器と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、複数の電磁波検出器として種類の異なる電磁波検出器200、201,202,203を用いている点が
図38に示した電磁波検出器と異なっている。すなわち、
図39に示した電磁波検出器では、互いに異なる種類の電磁波検出器200,201,202,203がアレイ状(マトリックス状)に配置されている。
【0218】
図39では、電磁波検出器200,201,202,203が2×2のマトリックス状に配置されているが、配置される電磁波検出器の数はこれに限定されない。また、本実施の形態では、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を二次元に周期的に配列したが、一次元に周期的に配列してもよい。また、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を周期的ではなく異なる間隔で配置してもよい。
【0219】
図39に示した電磁波検出器集合体では、実施の形態1~16のいずれかに係る、種類の異なる電磁波検出器200,201,202,203を、一次元又は二次元のアレイ状に配置することで、画像センサとしての機能を持たせることができる。例えば、電磁波検出器200,201,202,203として、それぞれ検出波長の異なる電磁波検出器を用いてもよい。具体的には、実施の形態1~16のいずれかに係る電磁波検出器からそれぞれ異なる検出波長選択性を有する電磁波検出器を準備し、アレイ状に並べてもよい。この場合、電磁波検出器集合体は、少なくとも2つ以上の異なる波長の電磁波を検出することができる。
【0220】
このように異なる検出波長を有する電磁波検出器200,201,202,203をアレイ状に配置することにより、可視光域で用いるイメージセンサと同様に、たとえば紫外光、赤外光、テラヘルツ波、電波の波長域などの任意の波長域において、電磁波の波長を識別できる。この結果、たとえば波長の相違を色の相違として示した、カラー化した画像を得ることができる。
【0221】
また、電磁波検出器を構成する半導体層4や強誘電体層5の構成材料として、検出波長の異なる材料を用いてもよい。たとえば、検出波長が可視光の波長である半導体材料と、検出波長が赤外線の波長である半導体材料とを上記構成材料として用いてもよい。この場合、例えば、当該電磁波検出器を車載センサに適用した時に、昼間は可視光画像用カメラとして電磁波検出器を使用できる。さらに、夜間は赤外線カメラとしても電磁波検出器を使用できる。このようにすれば、電磁波の検出波長によって、画像センサを有するカメラを使い分ける必要が無い。
【0222】
また、イメージセンサ以外の電磁波検出器の用途としては、たとえば少ない画素数でも、物体の位置検出を行うことが可能な位置検出用センサとして当該電磁波検出器を用いることができる。たとえば、電磁波検出器集合体の構造により、上記のように検出波長の異なる電磁波検出器200,201,202,203を用いれば、複数波長の電磁波の強度を検出する画像センサが得られる。これにより、従来、CMOSイメージセンサなどで必要であったカラーフィルタを用いることなく、複数の波長の電磁波を検出し、カラー画像を得ることができる。
【0223】
さらに、検出する偏光が異なる電磁波検出器200,201,202,203をアレイ化することにより、偏光識別イメージセンサを形成することもできる。例えば、検知する偏光角度が0°、90°、45°、135°である4つの画素を一単位として、当該一単位の電磁波検出器を複数配置することで偏光イメージングが可能になる。偏光識別イメージセンサによって、例えば、人工物と自然物の識別、材料識別、赤外波長域における同一温度物体の識別、物体間の境界の識別、又は、等価的な分解能の向上などが可能になる。
【0224】
以上より、上述のように構成された本実施の形態に係る電磁波検出器集合体は、広い波長域の電磁波を検出することができる。また、本実施の形態に係る電磁波検出器集合体は、異なる波長の電磁波を検出することができる。
【0225】
<作用効果>
上述した電磁検出器集合体は、複数の電磁波検出器を備える。複数の電磁波検出器200,201,202,203は種類の異なる電磁波検出器であってもよい。たとえば、複数の電磁波検出器200,201,202,203はそれぞれ検出波長が異なっていてもよい。この場合、異なる波長の電磁波を1つの電磁波検出器集合体により検出することができる。
【0226】
なお、上述した各実施の形態において、絶縁膜3、または接触層8、または半導体層4の材料として、電磁波の照射により特性が変化し、二次元材料層1に電位の変化を与える材料を用いてもよい。
【0227】
ここで、電磁波の照射により特性が変化し、二次元材料層1に電位の変化を与える材料としては、例えば、量子ドット、強誘電体材料、液晶材料、フラーレン、希土類酸化物、半導体材料、pn接合材料、金属-半導体接合材料、又は、金属-絶縁物-半導体接合材料等を用いることができる。例えば、強誘電体材料として、電磁波による分極効果(焦電効果)を有する強誘電体材料を用いる場合、電磁波の照射により、強誘電体材料に分極の変化が生じる。この結果、二次元材料層1に電位の変化を与えることができる。
【0228】
上述のように絶縁膜3などの材料として上記のような材料を用いる場合、絶縁膜3、または接触層8、または半導体層4は、電磁波の照射により特性が変化する。その結果、二次元材料層1に電位の変化を与えることができる。
【0229】
なお、電磁波の照射により特性が変化し、二次元材料層1に電位の変化を与える材料を絶縁膜3、または接触層8、または半導体層4に適用する例を説明したが、上述した各部材のうちの少なくとも一つ以上に、電磁波の照射により特性が変化し、二次元材料層1に電位の変化を与える材料を適用すればよい。例えば、接触層8に電磁波の照射により特性が変化し、二次元材料層1に電位の変化を与える材料を適用する場合、接触層8は、必ずしも二次元材料層1に直接接触している必要はない。たとえば、電位の変化を二次元材料層1に与えることができれば、絶縁膜等を介して、二次元材料層1の上面又は下面上に接触層8を設けてもよい。
【0230】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0231】
1 二次元材料層、2a 第1電極部、2b,2ba 第2電極部、2bb 第4電極部、2c 第3電極部、2d 接続導電体部、3,3b 絶縁膜、4,4a,4b 半導体層、5,5a,5b 強誘電体層、6 トンネル絶縁層、7 導電体、8 接触層、9 空隙、100,200,201,202,203 電磁波検出器。