(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システムにおける異物検出
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240906BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240906BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2022534463
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020084427
(87)【国際公開番号】W WO2021115913
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-12-01
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エトゥス ウイルヘルムス ゲラルダス マリア
(72)【発明者】
【氏名】リュロフス クラース ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】レーベンス パスカル レオナルト マリア テオドール
(72)【発明者】
【氏名】リエストラ フリソー
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009918(JP,A)
【文献】国際公開第2018/219793(WO,A1)
【文献】特開2006-230129(JP,A)
【文献】特開2015-192547(JP,A)
【文献】特開2012-249401(JP,A)
【文献】特開2016-019305(JP,A)
【文献】特開2014-225963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと、
ドライバ回路であって、
前記ドライバ回路は、前記送電コイルのための駆動信号を生成し、
前記ドライバ回路は、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成し、
前記ドライバ回路は、前記反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成する、ドライバ回路と、
直列に結合された第1の複数の平衡検出コイルであって、
前記第1の複数の平衡検出コイルは、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルを含み、
前記第1の検出コイルおよび前記第2の検出コイルは、前記送電コイルによって生成された電磁場によって前記第1の検出コイル内に誘導された第1の信号が、前記送電コイルによって生成された前記電磁場によって前記第2の検出コイル内に誘導された第2の信号によって相殺されるようにされる、第1の複数の平衡検出コイルと、
前記第1の複数の平衡検出コイルに結合される異物検出器回路であって、
前記異物検出器回路は、前記異物検出時間間隔中に異物検出を実行し、
前記異物検出器回路は、異物検出基準を満たす信号の特性に応答して異物を検出し、
前記信号は前記第1の複数の平衡検出コイルからである、異物検出器回路と、
トランスであって、
前記トランスは、一次巻線および二次巻線を有し、
前記二次巻線は前記第1の複数の平衡検出コイルと直列に結合されている、トランスと、
補償回路であって、
前記補償回路は、前記一次巻線に結合され、
前記補償回路は、前記一次巻線のための補償駆動信号を生成し、
前記補償駆動信号は、前記第1の複数の
平衡検出コイルの結合された電圧をオフセットする、補償回路とを備える、送電機。
【請求項2】
前記第1の複数の平衡検出コイルと前記二次巻線との間の抵抗は100オーム未満である、請求項1に記載の送電機。
【請求項3】
前記二次巻線は二次巻数を有し、
前記一次巻線は一次巻数を有し、
前記二次巻数は前記一次巻数よりも少なくとも10倍少ない、請求項1に記載の送電機。
【請求項4】
前記補償駆動信号は、補償周波数を有し、
前記駆動信号は、駆動周波数を有し、
前記補償周波数は、前記異物検出時間間隔中の前記駆動周波数と合致する、請求項1に記載の送電機。
【請求項5】
前記補償回路は、前記駆動信号のパラメータを動的に適合させ、
前記パラメータは、前記駆動信号の電圧振幅および位相のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の送電機。
【請求項6】
前記補償回路は、基準パラメータ値を決定するように、前記駆動信号の前記パラメータを変化させ、
前記基準パラメータ値は、前記二次巻線からの信号が最小振幅となるようにされ、
前記補償回路は、異物検出の実行時に前記駆動信号を前記基準パラメータ値に設定する、請求項5に記載の送電機。
【請求項7】
前記送電機は、
少なくとも2つの複数の平衡検出コイルであって、
前記少なくとも2つの複数の平衡検出コイルは、前記第1の複数の平衡検出コイルおよび少なくとも第2の複数の平衡検出コイルを含み、
前記第2の複数の平衡検出コイルは、第3の検出コイルおよび第4の検出コイルを含み、
前記第3の検出コイルおよび前記第4の検出コイルは、前記送電コイルによって生成された電磁場によって前記第
3の検出コイル内に誘導された信号が、前記送電コイルによって生成された前記電磁場によって前記第
4の検出コイル内に誘導された第2の信号によって相殺されるようにされる、少なくとも2つの複数の平衡検出コイルと、
前記少なくとも2つの複数の平衡検出コイルのうちの1つを直列結合を介して前記二次巻線に時間的に順に結合するスイッチ回路とをさらに備え、
前記補償回路は、前記第1の複数の又は前記第2の複数の平衡検出コイルが前記二次巻線に結合されているかに応じて、前記駆動信号に異なるパラメータ値を適用する、請求項1に記載の送電機。
【請求項8】
前記駆動信号は、前記異物検出時間間隔中に第1の周波数を、前記電力伝送時間間隔中に第2の周波数を有し、
前記第1の周波数は前記第2の周波数よりも少なくとも50%高い、請求項1に記載の送電機。
【請求項9】
前記駆動信号は、前記異物検出時間間隔中に第1の電圧振幅を、前記電力伝送時間間隔中に第2の電圧振幅を有し、
前記第1の電圧振幅は前記第2の電圧振幅の最大で50%である、請求項1に記載の送電機。
【請求項10】
前記駆動信号の電圧振幅は前記異物検出時間間隔の間一定である、請求項1に記載の送電機。
【請求項11】
送電機の動作方法であって、前記送電機は、
送電コイルと、
直列に結合された第1の複数の平衡検出コイルであって、
前記第1の複数の平衡検出コイルは、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルを含み、
前記第1の検出コイルおよび前記第2の検出コイルは、前記送電コイルによって生成された電磁場によって前記第1の検出コイル内に誘導された第1の信号が、前記送電コイルによって生成された前記電磁場によって前記第2の検出コイル内に誘導された第2の信号によって相殺されるようにされる、第1の複数の平衡検出コイルと、
一次巻線および二次巻線を有するトランスであって、
前記二次巻線は、前記第1の複数の平衡検出コイルと直列に結合されている、トランスとを備え、前記方法は、
前記送電コイルのための駆動信号を生成するステップであって、
反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成することと、
前記反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成することとを含む、生成するステップと、
異物検出基準を満たす信号の特性に応答して異物を検出するステップであって、前記信号は前記第1の複数の平衡検出コイルからである、検出するステップと、
前記一次巻線のための補償駆動信号を生成するステップであって、前記補償駆動信号は、前記第1の複数の
平衡検出コイルの結合された電圧をオフセットする、生成するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
送電コイルと、
ドライバ回路であって、
前記ドライバ回路は、前記送電コイルのための駆動信号を生成し、
前記ドライバ回路は、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成し、
前記ドライバ回路は、前記反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するように、前記送電コイルのための前記駆動信号を生成する、ドライバ回路と、
直列に結合された第1の複数の平衡検出コイルであって、
前記第1の複数の平衡検出コイルは、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルを含み、
前記第1の検出コイルおよび前記第2の検出コイルは、前記送電コイルによって生成された電磁場によって前記第1の検出コイル内に誘導された第1の信号が、前記送電コイルによって生成された前記電磁場によって前記第2の検出コイル内に誘導された第2の信号によって相殺されるようにされる、第1の複数の平衡検出コイルと、
二次巻線および一次巻線を有する第1のトランスであって、前記一次巻線は前記第1の複数の平衡検出コイルと直列に結合されている、第1のトランスと、
前記二次巻線に結合される異物検出器回路であって、
前記異物検出器回路は、前記異物検出時間間隔中に異物検出を実行し、
前記異物検出器回路は、異物検出基準を満たす信号の特性に応答して異物を検出し、
前記信号は前記二次巻線からである、異物検出器
回路とを備える、送電機。
【請求項13】
前記二次巻線には受動的に負荷が加えられる、請求項
12に記載の送電機。
【請求項14】
前記第1の複数の平衡検出コイルには受動的に負荷が加えられる、請求項
12に記載の送電機。
【請求項15】
共振回路を形成するように前記二次巻線に結合されている少なくとも第1の共振コンデンサをさらに備え、前記共振回路の共振周波数は、前記電磁試験信号の周波数と実質的に等しい周波数を有する、請求項
12に記載の送電機。
【請求項16】
前記送電機は少なくとも2つの複数の平衡検出コイルを備え、
前記少なくとも2つの複数の平衡検出コイルは、前記第1の複数の平衡検出コイルおよび少なくとも第2の複数の平衡検出コイルを含み、
前記第2の複数の平衡検出コイルは、第3の検出コイルおよび第4の検出コイルを含み、
前記第3の検出コイルおよび前記第4の検出コイルは、前記送電コイルによって生成された電磁場によって前記第
3の検出コイル内に誘導された信号が、前記送電コイルによって生成された前記電磁場によって前記第
4の検出コイル内に誘導された第2の信号によって相殺されるようにされ、
前記異物検出器回路は、前記第2の複数の平衡検出コイルからの出力信号に応答して異物検出を実行する、請求項
12に記載の送電機。
【請求項17】
前記送電機は、スイッチ回路をさらに備え、
前記スイッチ回路は、前記少なくとも2つの複数の平衡検出コイルのうちの少なくとも1つを直列結合を介して前記二次巻線に時間的に順に結合し、
前記異物検出器回路は、検出信号の特性に応答して前記異物検出を実行し、
前記検出信号は前記二次巻線からである、請求項
16に記載の送電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス電力伝送システムにおける異物検出に関し、特に、限定はされないが、例えば厨房機器などの高電力機器への誘導電力伝送を提供する送電機のための異物検出に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のほとんどの電気製品は、外部電源から電力を受け取るために専用の電気接点を必要とする。しかし、これは非実用的な場合が多く、ユーザがコネクタを物理的に挿入したり、または他の方法で物理的な電気的接触を確立することを要求する。通常は電力要件も大きく異なり、現在、ほとんどのデバイスが独自の専用電源を備えているので、通常のユーザは、それぞれが特定のデバイス専用の多数の異なる電源を所有する。内蔵バッテリを使用することで、使用中に電源に有線接続する必要がなくなる可能性があるが、バッテリの充電(または交換)が必要であることから、これは部分的な解決策に過ぎない。バッテリの使用はまた、デバイスの重量、および場合によってはコストやサイズを大きく増加させるおそれがある。
【0003】
大幅に改善されたユーザ体験を提供するために、電力が送電機内の送電インダクタから個々のデバイス内の受電コイルに誘導伝送されるワイヤレス電源を使用することが提案されている。
【0004】
磁気誘導による電力伝送はよく知られている概念であり、多くの場合、一次送電インダクタ/コイルと二次受電コイルとの間に密結合を有するトランスに適用される。一次送電コイルと二次受電コイルとを2つのデバイスに分けることにより、疎結合トランスの原理に基づき、これらの間のワイヤレス電力伝送が可能になる。
【0005】
このような構成は、ワイヤまたは物理的な電気的接続の確立を必要とすることなく、デバイスへのワイヤレス電力伝送を可能にする。実際、これは、単に送電コイルの隣にまたは上にデバイスを配置するだけで、デバイスの外部充電または給電を可能にし得る。例えば、送電デバイスは、給電のためにデバイスを単純に置くことができる水平面を有し得る。
【0006】
さらに、そのようなワイヤレス電力伝送構成は、送電デバイスが様々な受電デバイスとともに使用可能であるように有利に設計され得る。特に、Qi仕様と呼ばれるワイヤレス電力伝送手法が定義されており、現在もさらに開発されている。この技術は、Qi仕様を満たす送電デバイスを同じくQi仕様を満たす受電デバイスとともに使用することを可能にし、両デバイスは同じ製造業者からのものである必要はなく、また、互いに対して専用に設計されたものである必要もない。Qi規格はさらに、具体的な受電デバイスに対して(例えば、具体的な電力流出に応じて)動作を適合可能にするための機能を含む。
【0007】
Qi仕様はWireless Power Consortiumによって開発されており、詳細は、例えば同団体のウェブサイトhttp://www.wirelesspowerconsortium.com/index.htmlで見つけることができる。特に、定義された仕様書を見つけることができる。
【0008】
ワイヤレス電力伝送の潜在的な問題は、例えば、たまたま送電機の近くにある金属物体などに意図せずに電力が伝送される可能性があることである。例えば、硬貨、鍵、指輪などの異物が、受電機を支えるように構成された送電機の台の上にある場合、送電コイルによって生成された磁束により金属物体内に渦電流が導入され、物体が発熱する。温度上昇は非常に大きい可能性があり、非常に不都合である可能性がある。
【0009】
このような状況が発生するリスクを低減するために異物検出を導入することが提案されている。この異物検出では送電機が異物の存在を検出し、異物が検出されたときに送信電力を低減する、および/またはユーザ警告を生成することができる。例えば、Qiシステムは、異物を検出したり、異物を検出した場合に電力を低減したりする機能を含む。具体的には、Qi仕様バージョン1.2.1のセクション11では様々な異物検出方法が説明されている。
【0010】
そのような異物を検出するための1つの方法がWO2015018868A1に開示されている。WO2012127335には別の例が提供されており、未知の電力損失を求めることに基づく手法が開示されている。この手法では受電機と送電機の両方が電力を測定し、受電機は測定された受信電力を送電機に伝える。送電機によって送信された電力と受電機によって受信された電力との間に大きな差があることが送電機によって検出された場合、望ましくない異物が存在する可能性があり、安全上の理由から電力伝送が削減または中止され得る。この電力損失方法は、送電機および受電機が同期された正確な電力測定を行うことを必要とする。
【0011】
例えば、Qi電力伝送規格では、受電機は、例えば整流された電圧および電流を測定し、それらを乗算し、受電機の内部電力損失(例えば、整流器、受電コイル、受電機の金属部品などの損失)の推定値を加算することによって、受信電力を推定する。受電機は求められた受信電力を、例えば4秒ごとの最小頻度で送電機に報告する。
【0012】
送電機は、例えばインバータのDC入力電圧および電流を測定し、それらを乗算し、送電機の内部電力損失の推定値(例えば、インバータ、一次コイル、および送電機の金属部品内の推定電力損失など)を差し引くことによって結果を補正することによって、送信電力を推定する。
【0013】
送電機は送信電力から報告された受信電力を差し引くことにより、電力損失を推定できる。差が閾値を超える場合、送電機は異物内で散逸される電力が多すぎると見なし、電力伝送を終了し得る。
【0014】
あるいは、一次コイルおよび二次コイル、ならびに対応するキャパシタンスおよび抵抗によって形成される共振回路の品質またはQ値を測定することが提案されている。測定されたQ値の低下は異物の存在を示している可能性がある。多くの場合、この手法は電力伝送の前に使用される。
【0015】
実際には、Qi仕様に記載されている方法を使用して十分な検出精度を達成することは難しい傾向がある。具体的な現在の動作条件に関する多くの不確定性は、これを一層困難にする。
【0016】
例えば、ある特定の問題は、友好的な金属(すなわち、受電機または送電機を具現化するデバイスの金属部品)が存在する可能性である。なぜなら、これらの金属の磁気的および電気的特性は不明である可能性がある(そしてデバイスごとに異なる可能性がある)ため、補償するのは難しい可能性があるからである。
【0017】
さらに、金属異物内で散逸される電力が比較的少量であったとしても、望ましくない加熱が生じるおそれがある。したがって、送信電力と受信電力のわずかな電力の不一致も検出する必要があり、電力伝送の電力レベルが高くなるとこれは特に困難になる可能性がある。
【0018】
Q値低下の手法は、多くの場合において、金属物体の存在の検出感度がより高い可能性がある。しかし、それでも十分な精度が得られないおそれがあり、例えば、依然として友好的な金属の影響を受ける可能性がある。
【0019】
異物検出性能は、試験が実際に実行される際に存在する具体的な動作条件に依存する。例えば、Qi仕様に記載されているように、異物検出の測定が電力伝送初期設定プロセスの選択フェーズ中に実行される場合、送電機が測定のために供給する信号は、受電機の起動を防ぐのに十分小さくなければならない。しかし、そのような小さな信号の場合、通常は信号対雑音比が悪く、結果として測定の精度が低下する。
【0020】
別の問題は、異物検出は通常、非常に敏感な試験であり、試験が想定する動作条件およびシナリオが大きく変動する可能性がある環境において、異物の存在によって引き起こされる比較的小さな変化を検出することが望まれている。
【0021】
この問題は電力レベルが高くなると悪化する傾向があり、ワイヤレス電力の現在の開発のトレンドは、より高い電力レベルの伝送に向かう傾向がある。例えば、Wireless Power Consortiumは最大2000Wまたはそれ以上の高電力レベルをサポートすることを意図したコードレスキッチン(Cordless Kitchen)仕様を開発している。電力レベルが高い場合、異物が安全な温度を超えて昇温するのを防ぐために、異物検出アルゴリズムはより正確である必要がある。実際、温度上昇は絶対電力レベルによって与えられるため、電力レベルが高い場合、検出する必要のある相対的な電力損失は大幅に小さくなる可能性がある。
【0022】
WO2019053194では、異物内でのより小さな絶対電力レベルの散逸の検出を可能にするために、電力伝送中、受電機の負荷がオフであるタイムスロットの間に異物検出を稼動することが提案されている。しかし、切断スイッチは通常、追加の損失および/またはコストの増加をもたらすため、異物検出中に負荷を切断することは多くの高電力用途において問題を生じさせる可能性がある。また、例えば負荷が発熱体であり、送電機が、発熱体内に渦電流を直接生成する電磁場を生成することによって発熱体が加熱される場合など、多くの用途においてそのような切断を実施することは不可能である。
【0023】
また、電力レベルが高くなると異物検出の検出精度が益々重要になり、正確な測定法のための要件が益々厳しくなる。実際、低電力使用に適した異物検出法の多くは、高電力伝送用の検出には不適切である。
【0024】
異物検出のための現在の手法および測定技術は最適ではない傾向があり、シナリオや例によっては、最適なパフォーマンスが得られない可能性がある。特に、異物の存在が検出されなかったり、または異物が存在しないときに異物が誤検出される可能性がある。さらに、より正確な手法は複雑で費用がかかる傾向がある。
【0025】
したがって、改善された物体検出は有利であり、特に、柔軟性の向上、コストの削減、複雑さの低減、物体検出の向上、誤検出および検出漏れの減少、下位互換性、より高い電力レベルの伝送への適合性の向上、および/またはパフォーマンスの向上を可能にする手法は有利であろう。
【発明の概要】
【0026】
したがって、本発明は、上記欠点の1つまたは複数を単独で、または任意の組み合わせで好適に緩和、低減、または排除することを目的とする。
【0027】
本発明の一態様によれば、誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機が提供され、送電機は、送電コイルと、送電コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、ドライバは、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成し、また、反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成する、ドライバと、直列に結合された平衡検出コイルのセットであって、平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、平衡検出コイルのセットと、平衡検出コイルのセットに結合され、異物検出時間間隔中に異物検出を実行する異物検出器であって、異物検出器は、異物検出基準を満たす平衡検出コイルのセットからの信号の特性に応答して異物を検出する、異物検出器と、一次巻線および二次巻線を有するトランスであって、二次巻線は平衡検出コイルのセットと直列に結合されている、トランスと、一次巻線に結合され、一次巻線のための補償駆動信号を生成する補償回路であって、補償駆動信号は、検出コイルのセットの結合された電圧をオフセットする、補償回路とを備える。
【0028】
本発明は、多くの実施形態において改善された異物検出を提供し得る。多くのシナリオやシステムにおいて、より正確な異物検出が実現され得る。この手法は多くの実施形態で複雑さを低減し得る。具体的には、この手法は、高い電力レベルの電力伝送システムにおける異物検出を改善するのに特に適している可能性がある。
【0029】
この手法は、電力伝送フェーズ中の異物検出試験の精度および/または信頼性を向上させる可能性がある。多くの実施形態において、この手法は、異物検出試験の不確定性を低減することによって性能を改善し得る。
【0030】
この手法は多くの実施形態において、実施の不正確さ、例えば検出コイルの形状の不均衡およびばらつきなどによる影響の受け易さを低減し得る。
【0031】
本発明は、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。この手法は、平衡検出コイルを使用する場合の検出精度を向上させるための特に効率的な手法を提供する可能性がある。評価される信号を生成する第1のトランスとともに使用するのに非常に適している可能性があるが、そのようなトランスなしで使用することも可能である。
【0032】
補償手法は、特に、異物の位置推定を可能にし、かつ/または改善し得る。
【0033】
反復時間フレームの異物検出時間間隔は、具体的には、電力伝送信号のゼロ交差と一致するように/を含むように、と同期するように、または含むように時間設定され得る。補償駆動信号は、二次巻線が、第1の平衡検出コイルのセットの結合された電圧をオフセットする/少なくとも部分的に打ち消す信号を生成するように生成され得る。補償駆動信号は、異物が存在しない場合に、結合された電圧がオフセットされるように/少なくとも部分的に打ち消されるように生成され得る。
【0034】
多くの実施形態において、異物検出時間間隔の継続時間は、時間フレームの継続時間の5%、10%、または20%以下である。多くの実施形態において、異物検出時間間隔の継続時間は、時間フレームの70%、80%、または90%以上である。異物検出時間間隔の継続時間は多くのシナリオで5ミリ秒、10ミリ秒、または50ミリ秒以下であり得る。
【0035】
検出コイルが、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号が互いに相殺し合うように構成されているという点で、検出コイルは平衡化されている。2つの平衡検出コイルをまたぐ結合された電圧は、2つの平衡検出コイルのそれぞれの電圧のうちの最大のものよりも低い。補償は、2つの信号の少なくとも部分的なキャンセリングであり得る。
【0036】
二次巻線は一次巻線よりも巻数が少ない可能性がある。
【0037】
異物検出器は、検出コイルからの位相および/または振幅信号が閾値を超える場合に異物が検出されたと判定するように構成され得る。
【0038】
電磁試験信号は試験電磁場とも呼ばれ、これらの用語は同義であると考えることができる。検出コイル/巻線が直列に結合されているとは、検出コイル/巻線を流れる電流が同一であることを意味する。
【0039】
本発明の任意選択の特徴によれば、平衡検出コイルのセットと二次巻線との間の結合の結合された抵抗は100オーム未満である。
【0040】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。一部の実施形態では、平衡検出コイルのセットと二次巻線との間の結合の結合された抵抗は50、10、5、または1オーム未満である。抵抗は、(直列)結合/接続のインピーダンスの抵抗(実数)成分であってもよい。
【0041】
本発明の任意選択の特徴によれば、二次巻線の巻数は一次巻線の巻数よりも10倍以上少ない。
【0042】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0043】
本発明の任意選択の特徴によれば、補償回路は、異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数と合致する周波数を有する補償駆動信号を生成する。
【0044】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された補償を提供し、結果として改善および/または促進された異物検出を実現する可能性がある。
【0045】
本発明の任意選択の特徴によれば、補償回路は、駆動信号のパラメータを動的に適合させ、パラメータは、駆動信号の電圧振幅および位相のうちの少なくとも1つである。
【0046】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された補償を提供し、結果として改善および/または促進された異物検出が実現される可能性がある。
【0047】
本発明の任意選択の特徴によれば、補償回路は、駆動信号のパラメータを変化させて、第1の二次巻線からの信号が最小振幅となる基準パラメータ値を決定し、異物検出の実行時に駆動信号を基準パラメータ値に設定する。
【0048】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された補償を提供し、結果として改善および/または促進された異物検出を実現する可能性がある。
【0049】
本発明の任意選択の特徴によれば、装置は、複数の平衡検出コイルのセットを備え、複数の平衡検出コイルのセットは平衡検出コイルのセットおよび少なくとも第2の平衡検出コイルのセットを含み、第2の平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合い、装置はさらに、複数の平衡検出コイルセットのうちの1つを直列結合を介して二次巻線に時間的に順に結合するスイッチ回路を備え、補償回路は、どの平衡検出コイルのセットが二次巻線に結合されているかに応じて、駆動信号に異なるパラメータ値を適用する。
【0050】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された補償を提供し、結果として改善および/または促進された異物検出を実現する可能性がある。
【0051】
本発明の任意選択の特徴によれば、異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数よりも50%以上高い。
【0052】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。特に、受電機の負荷によって加えられる負荷の影響を低減し、離調をもたらし得る(例えば、共振負荷)。負荷の影響が減少すると、多くの実施形態において異物検出がより正確になり得る。
【0053】
一部の実施形態では、異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数よりも100%、場合によっては200%以上高い。
【0054】
本発明の任意選択の特徴によれば、異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の50%以下である。
【0055】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。特に、受電機の負荷によって加えられる負荷の影響を低減し、離調をもたらし得る(例えば、共振負荷)。負荷の影響が減少すると、多くの実施形態において異物検出がより正確になり得る。
【0056】
一部の実施形態では、異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の25%または10%以下である。
【0057】
本発明の任意選択の特徴によれば、駆動信号の電圧振幅は異物検出時間間隔の間一定である。
【0058】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0059】
本発明の一態様によれば、誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機の動作方法が提供され、送電機は、送電コイルと、直列に結合された平衡検出コイルのセットであって、平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、平衡検出コイルのセットと、一次巻線および二次巻線を有するトランスであって、二次巻線は平衡検出コイルのセットと直列に結合されている、トランスとを備え、方法は、送電コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、ドライバは、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成し、また、反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成する、ドライバと、平衡検出コイルのセットに結合され、異物検出時間間隔中に異物検出を実行する異物検出器であって、異物検出器は、異物検出基準を満たす平衡検出コイルのセットからの信号の特性に応答して異物を検出する、異物検出器と、一次巻線に結合され、一次巻線のための補償駆動信号を生成する補償回路であって、補償駆動信号は、検出コイルのセットの結合された電圧をオフセットする、補償回路とを備える。
【0060】
本発明の別の態様によれば、誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機が提供され、送電機は、送電コイルと、送電コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、ドライバは、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成し、また、反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成する、ドライバと、直列に結合された第1の平衡検出コイルのセットであって、第1の平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、第1の平衡検出コイルのセットと、第1の二次巻線および第1の一次巻線を有する第1のトランスであって、第1の一次巻線は第1の平衡検出コイルのセットと直列に結合されている、第1のトランスと、第1の二次巻線に結合され、異物検出時間間隔中に異物検出を実行する異物検出器であって、異物検出器は、異物検出基準を満たす第1の二次巻線からの信号の特性に応答して異物を検出する、異物検出器とを備える。
【0061】
この手法は多くの実施形態において改善された異物検出を提供し得る。多くのシナリオやシステムにおいて、より正確な異物検出が実現され得る。この手法は多くの実施形態で複雑さを低減し得る。具体的には、この手法は、高い電力レベルの電力伝送システムにおける異物検出を改善するのに特に適している可能性がある。
【0062】
この手法は、電力伝送フェーズ中の異物検出試験の精度および/または信頼性を向上させる可能性がある。多くの実施形態において、この手法は、異物検出試験の不確定性を低減することによって性能を改善し得る。
【0063】
この手法は多くの実施形態において、ノイズ、例えばドライバのスイッチング出力回路によって生成されるノイズなどによる影響の受け易さを下げる可能性がある。
【0064】
多くの実施形態において、異物検出時間間隔の継続時間は、時間フレームの継続時間の5%、10%、または20%以下である。多くの実施形態において、異物検出時間間隔の継続時間は、時間フレームの70%、80%、または90%以上である。異物検出時間間隔の継続時間は多くのシナリオで5ミリ秒、10ミリ秒、または50ミリ秒以下であり得る。
【0065】
検出コイルが、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号が互いに相殺し合うように構成されているという点で、検出コイルは平衡化されている。2つの平衡検出コイルをまたぐ結合された電圧は、2つの平衡検出コイルのそれぞれの電圧のうちの最大のものよりも低い。補償は、2つの信号の少なくとも部分的なキャンセリングであり得る。
【0066】
第1の一次巻線は第1の二次巻線よりも巻数が少ない可能性がある。第1のトランスは、第1の一次巻線のより低いインピーダンスから第2の一次巻線のより高いインピーダンスへのインピーダンス変換を実行するように構成され得る。
【0067】
異物検出器は、第1の二次巻線からの位相および/または振幅信号が閾値を超える場合に異物が検出されたと判定するように構成され得る。
【0068】
電磁試験信号は試験電磁場とも呼ばれ、これらの用語は同義であると考えることができる。検出コイル/巻線が直列に結合されているとは、検出コイル/巻線を流れる電流が同一であることを意味する。
【0069】
本発明の任意選択の特徴によれば、二次巻線には受動的に負荷が加えられる。
【0070】
二次巻線は、二次巻線に受動負荷を提供する負荷回路に接続されてもよい。二次巻線は、二次巻線に電力を供給しない回路に接続されてもよい。二次巻線内の信号/電圧/電流は、1つまたは複数の平衡検出コイルセット内に誘導された信号にのみ由来してもよい。
【0071】
本発明の任意選択の特徴によれば、平衡検出コイルのセットには受動的に負荷が加えられる。
【0072】
平衡検出コイルのセットは、平衡検出コイルのセットに受動負荷を提供する負荷回路に接続されてもよい。平衡検出コイルのセットは、平衡検出コイルのセットに電力を供給しない回路(第1のトランスを含む)に接続されてもよい。平衡検出コイル内の信号/電圧/電流は、1つまたは複数の平衡検出コイルセット内の誘導にのみ由来してもよい。
【0073】
異物検出器は、異物検出基準を満たす第1の二次巻線からの誘導信号の特性に応答して異物を検出するように構成されてもよい。ここで、この誘導信号は第1の平衡検出コイルセット内に誘導された信号である。
【0074】
送電機は、平衡検出コイルから異物検出器にエネルギーを伝達するように構成され得る。
【0075】
本発明の任意選択の特徴によれば、装置は、共振回路を形成するために第1の二次巻線に結合されている少なくとも第1の共振コンデンサをさらに備え、共振回路の共振周波数は、電磁試験信号の周波数と実質的に等しい周波数を有する。
【0076】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。特に、ノイズ感度を低下させ、異物検出評価のための測定を容易にする可能性がある。
【0077】
本発明の任意選択の特徴によれば、第1の平衡検出コイルのセットと第1の一次巻線との間の結合の結合された抵抗は100オーム未満である。
【0078】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。一部の実施形態では、第1の平衡検出コイルのセットと第1の一次巻線との間の結合の結合された抵抗は50、10、5、または1オーム未満である。抵抗は、(直列)結合/接続のインピーダンスの抵抗(実数)成分であってもよい。
【0079】
本発明の任意選択の特徴によれば、第1の二次巻線の巻数は第1の一次巻線の巻数よりも10倍以上多い。
【0080】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0081】
本発明の任意選択の特徴によれば、装置は複数の平衡検出コイルのセットを備え、複数の平衡検出コイルのセットは第1の平衡検出コイルのセットおよび少なくとも第2の平衡検出コイルのセットを含み、第2の平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合い、異物検出器は、少なくとも第2の平衡検出コイルのセットからの出力信号に応答して異物検出を実行する。
【0082】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0083】
本発明の任意選択の特徴によれば、装置は、複数の平衡検出コイルのうちの1つを直列結合を介して第1の一次巻線に時間的に順に結合するためのスイッチ回路をさらに備え、異物検出器は、第1の変流器に結合された複数の平衡検出コイルのうちの少なくとも2つの第1の二次巻線からの信号の特性に応答して異物検出を実行する。
【0084】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0085】
本発明の任意選択の特徴によれば、スイッチ回路は、連続する異物検出時間間隔間に、複数の平衡検出コイルの複数の異なる平衡検出コイルセットから第1の一次巻線への結合を切り替えるように構成される。
【0086】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0087】
本発明の任意選択の特徴によれば、スイッチ回路は、1つの異物検出時間間隔中に、複数の平衡検出コイルの複数の異なる平衡検出コイルセットから第1の一次巻線への結合を切り替えるように構成される。
【0088】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0089】
本発明の任意選択の特徴によれば、異物検出器は、第1のトランスに結合された複数の平衡検出コイルのうちの少なくとも2つの平衡検出コイルの第1の二次巻線からの信号の特性に応じて位置指標推定を求めるように構成される。
【0090】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて異物に関する追加情報を提供し得る。
【0091】
本発明の任意選択の特徴によれば、複数の平衡検出コイルのセットは送電コイル内に配置される。
【0092】
これは、多くの実施形態およびシナリオにおいて改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0093】
送電コイルおよび検出コイルは平面コイルであり、検出コイルによってカバーされる領域は送電コイルによってカバーされる領域内であり得る。検出コイルを通過する電磁試験信号の電磁場線は送電コイルも通過し得る。
【0094】
送電コイルは、複数の平衡検出コイルのセットを備え、複数の平衡検出コイルのセットは第1の平衡検出コイルのセットおよび少なくとも第2の平衡検出コイルのセットを含み、第2の平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合い、送電コイルはさらに、複数の平衡検出コイルセットのうちの1つを直列結合を介して第1の一次巻線に時間的に順に結合するスイッチ回路を備え、補償回路は、どの平衡検出コイルのセットが第1の一次巻線に結合されているかに応じて、駆動信号に異なるパラメータ値を適用する。
【0095】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された補償を提供し、結果として改善および/または促進された異物検出を実現する可能性がある。
【0096】
異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数よりも50%以上高い可能性がある。
【0097】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。特に、受電機の負荷によって加えられる負荷の影響を低減し、離調をもたらし得る(例えば、共振負荷)。負荷の影響が減少すると、多くの実施形態において異物検出がより正確になり得る。
【0098】
異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数よりも100%、場合によっては200%以上高い可能性がある。
【0099】
異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の50%以下である可能性がある。
【0100】
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。特に、受電機の負荷によって加えられる負荷の影響を低減し、離調をもたらし得る(例えば、共振負荷)。負荷の影響が減少すると、多くの実施形態において異物検出がより正確になり得る。
【0101】
異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅は、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の25%または10%以下である可能性がある。
【0102】
駆動信号の電圧振幅は、異物検出時間間隔の間一定である可能性がある。
これは、多くの実施形態において改善および/または容易化された異物検出を提供し得る。
【0103】
本発明の一態様によれば、誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機の動作方法が提供され、送電機は、送電コイルと、直列に結合された平衡検出コイルのセットであって、平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、平衡検出コイルのセットと、二次巻線および一次巻線を有するトランスであって、一次巻線は平衡検出コイルのセットと直列に結合されている、トランスとを備え、方法は、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために、および反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成するステップと、異物検出時間間隔中に異物検出を実行するステップであって、異物検出器は、異物検出基準を満たす二次巻線からの信号の特性に応答して異物を検出する、ステップとを含む。
【0104】
一部のシステムでは以下が提供され得る。
【0105】
誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機であって、送電機は、送電コイルと、送電コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、ドライバは、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成し、また、反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成する、ドライバと、直列に結合された平衡検出コイルのセットであって、平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、平衡検出コイルのセットと、平衡検出コイルのセットに結合され、異物検出時間間隔中に異物検出を実行する異物検出器であって、異物検出器は、異物検出基準を満たす平衡検出コイルのセットからの信号の特性に応答して異物を検出する、異物検出器とを備え、ドライバは、異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数が、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数より50%以上高いように、駆動信号を生成する、送電機である。
【0106】
誘導電力伝送信号を介して受電機にワイヤレスで電力を供給するための送電機であって、送電機は、送電コイルと、送電コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、ドライバは、反復時間フレームの少なくとも1つの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成し、また、反復時間フレームの少なくとも1つの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために送電コイルのための駆動信号を生成する、ドライバと、直列に結合された平衡検出コイルのセットであって、平衡検出コイルのセットは2つの検出コイルを含み、送電コイルによって生成された電磁場によって2つの検出コイル内に誘導された信号は互いに相殺し合う、平衡検出コイルのセットと、平衡検出コイルのセットに結合され、異物検出時間間隔中に異物検出を実行する異物検出器であって、異物検出器は、異物検出基準を満たす平衡検出コイルのセットからの信号の特性に応答して異物を検出する、異物検出器とを備え、ドライバは、異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅が、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の50%以下であるように、駆動信号を生成する、送電機である。
【0107】
本発明の上記および他の側面、特徴、および利点は、以下に記載される実施形態を参照しながら説明され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
以下、本発明の単なる例に過ぎない実施形態について、以下の図面を参照しながら説明する。
【0109】
【
図1】
図1は、本発明の一部の実施形態に係る電力伝送システムの要素の例を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図3】
図3は、送電機のためのハーフブリッジインバータの例を示す。
【
図4】
図4は、送電機のためのフルブリッジインバータの例を示す。
【
図5】
図5は、
図1のワイヤレス電力伝送システムのための時間フレームの例を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための検出コイルの例を示す。
【
図7】
図7は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための電磁場および検出コイルの例を示す。
【
図8】
図8は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための駆動信号の例を示す。
【
図9】
図9は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための駆動信号の例を示す。
【
図10】
図10は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図11】
図11は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図12】
図12は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図13】
図13は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための検出コイルの例を示す。
【
図14】
図14は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図15】
図15は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図16】
図16は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図17】
図17は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図18】
図18は、本発明の一部の実施形態に係る送電機のための信号の例を示す。
【
図19】
図19は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【
図20】
図20は、本発明の一部の実施形態に係る送電機の要素の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下の説明は、Qi仕様またはコードレスキッチン仕様から知られるような電力伝送手法を利用するワイヤレス電力伝送システムに適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てている。しかし、本発明はこの用途に限定されず、他の多くのワイヤレス電力伝送システムに適用できることが理解されよう。
【0111】
図1は、本発明の一部の実施形態に係る電力伝送システムの一例を示す。電力伝送システムは、送電コイル/インダクタ103を含む(またはこれに結合される)送電機101を備える。システムはさらに、受電コイル/インダクタ107を含む(またはこれに結合される)受電機105を備える。
【0112】
システムは、送電機101から受電機105に電力を誘導的に伝送し得る電磁電力伝送信号を供給する。具体的には、送電機101は、コイルまたはインダクタ103によって磁束として伝播される電磁信号を生成する。電力伝送信号は、通常、約20kHz~約500kHzの周波数を有し、Qi対応システムの場合はしばしば、通常、95kHz~205kHzの範囲内であり得る(または、例えば高電力キッチン用途の場合、周波数は通常、20kHz~80kHzの範囲内であり得る)。送電コイル103と受電コイル107とは疎結合されているので、受電コイル107は送電機101からの電力伝送信号(少なくともその一部)を拾う。したがって、送電コイル103から受電コイル107へのワイヤレス誘導結合を介して、送電機101から受電機105に電力が伝送される。電力伝送信号という用語は、主に、送電コイル103と受電コイル107との間の誘導信号/磁場(磁束信号)を指すのに使用されるが、同様に、送電コイル103に供給される、または受電コイル107によって拾われる電気信号を指すとものとして考えることもでき、これを指すのにも使用され得る。
【0113】
この例の受電機105は、具体的には受電コイル107を介して電力を受け取る受電機である。しかし、他の実施形態では、受電機105は金属要素、例えば金属発熱体を含み、その場合、電力伝送信号は渦電流を直接誘導し、よって金属要素を直接加熱する。
【0114】
システムは、相当な電力レベルを伝送するように構成され、具体的には、多くの実施形態において送電機は500mW、1W、5W、50W、100W、または500Wを超える電力レベルをサポートすることができる。例えば、Qi対応用途に関して、電力伝送は典型的には、低電力用途の場合は1~5Wの電力範囲内であり(基本電力プロファイル)、Qi仕様バージョン1.2の場合は最大15Wであり、動力工具、ラップトップ、ドローン、およびロボットなどの高電力用途の場合は最大100Wの範囲内であり、例えばキッチン用途などの非常に高い電力の用途の場合は100Wより高く、最大で1000Wより高い可能性がある。
【0115】
以下では、一般にQi仕様に従う(本明細書に記載の(または結果として生じる)変更や強化を除く)、またはWireless Power Consortium.によって開発されている高電力キッチン仕様に適した実施形態を具体的に参照しながら、送電機101および受電機105の動作を説明する。特に、送電機101および受電機105はQi仕様バージョン1.0、1.1または1.2の要素に従うか、またはこれらに実質的に対応し得る(本明細書に記載の(または結果として生じる)変更および強化を除いて)。
【0116】
ワイヤレス電力伝送システムにおいて、物体(典型的には、電力伝送信号から電力を抽出する導電性の要素であって、送電機101または受電機105の一部ではない、すなわち、電力伝送に関して意図しない、望ましくない、および/または干渉する要素)の存在は電力伝送中に非常に都合が悪い可能性がある。そのような望ましくない物体は、当該技術分野では異物と呼ばれる。
【0117】
異物は、動作に電力損失を加えることによって効率を低下させるだけでなく、電力伝送動作自体の質を低下させる可能性がある(例えば、電力伝送効率に干渉したり、(例えば電力伝送ループによって)直接制御されていない電力を抽出したりすることによって)。さらに、異物内での電流の誘導(具体的には、異物の金属部分内の渦電流)は、多くの場合は非常に望ましくない異物の加熱をもたらす可能性がある。
【0118】
このような状況に対処するために、Qiやコードレスキッチン仕様などのワイヤレス電力伝送システムは異物検出機能を備えている。具体的には、送電機は、異物が存在するか否かを検出しようとする機能を備えている。存在が検出された場合、送電機は、例えば電力伝送を終了するか、または伝送され得る電力の最大量を減らすことができる。
【0119】
異物検出は、受電器が電力伝送フェーズに入る前(例えば、電力伝送の初期設定中)に、または電力伝送フェーズ中に実行され得る。電力伝送フェーズ中の検出は、多くの場合、測定された送信電力と受信電力との比較に基づいており、一方、電力伝送フェーズ前に行われる検出は、多くの場合、例えば小さい測定信号を使用して送電コイルのQ値を測定することによって、反射インピーダンス(reflected impedance)の測定に基づいている。
【0120】
Qi仕様によって提案されている現在の手法は、(送信電力と報告された受信電力とを比較することによる)電力損失の検出、または出力共振回路の品質Qの低下の検出に基づいている。しかし、現在の使用では、これらの手法は多くの状況において最適ではない性能を提供することがわかっており、具体的には不正確な検出につながる可能性があり、異物の検出漏れ、および/または異物が存在しないにもかかわらず異物が検出される誤検知が発生する可能性がある。
【0121】
従来の異物検出は、送電機の特性、受電機の特性、および適用される試験条件などにおけるばらつきや不確定性など、異物検出が実行される具体的な動作条件やシナリオにおけるばらつきや不確定性のために最適ではない傾向がある。
【0122】
異物検出試験の課題の一例は、十分に信頼性の高い異物検出を実現するために十分に正確な測定を実行する必要があることである。これは、検出精度を高めるために、可能な限り強力な信号を生成したいと考えることにつながる可能性がある。しかし、それは受電機および存在する異物内での消費電力を増加させ得る。検出性能は適用される具体的な信号レベルの影響を受けやすい可能性があり、通常、矛盾する要求が存在する。
【0123】
図1のシステムは、異物検出におけるトレードオフを改善することを意図した異物検出法を使用する。この手法は多くの実施形態において改善された異物検出を提供し、具体的には、多くの実施形態において、より正確かつ/または信頼性の高い異物検出を提供し得る。この手法はまた、複雑性やリソース要件を下げることができる可能性がある。
【0124】
以下でより詳細に説明するように、この手法は電力伝送フェーズ中に時間分割法を利用する。異物検出および電力伝送は、例えば別々の時間間隔内で実行され、これによって両者間の干渉(特に、異物検出に対する電力伝送の影響)を大幅に低減することができる。
【0125】
以下、
図1のシステムについてより詳細に説明する。この例では、異物検出に使用される電磁電力伝送信号と電磁試験信号は同じコイルによって生成される。また、信号/場は異なる用語で呼ばれ、すなわち、電力伝送時間間隔中に生成される電磁信号/電磁場は電力伝送信号と呼ばれ、異物検出時間間隔中に生成される電磁信号/電磁場は電磁試験信号、または単に試験信号と呼ばれる。
【0126】
図2は、
図1の送電機101の要素をより詳細に示す。
【0127】
送電機101は、送電コイル103に供給される駆動信号を生成することができるドライバ201を含み、送電コイル103はこれを受けて電磁電力伝送信号を生成することによって、受電機105への電力伝送を提供する。電力伝送信号は、電力伝送フェーズの電力伝送時間間隔中に供給される。
【0128】
ドライバ201は、送電インダクタ103に供給される電流および電圧を生成する。ドライバ201は、典型的には、DC電圧から交流信号を生成するインバータの形態の駆動回路である。ドライバ201の出力は、典型的にはスイッチブリッジであり、スイッチブリッジのスイッチの適切なスイッチングによって駆動信号を生成する。
図3は、ハーフブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1およびS2は同時に閉じることがないように制御される。交互に、S2が開いている間にS1が閉じ、S1が開いている間にS2が閉じる。スイッチは所望の周波数で開閉され、それにより、出力において交流信号を生成する。典型的には、インバータの出力は共振コンデンサを介して送電インダクタに接続される。
図4はフルブリッジスイッチブリッジ/インバータを示す。スイッチS1およびS2は同時に閉じることがないように制御される。スイッチS3およびS4は同時に閉じることがないように制御される。交互に、S2およびS3が開いている間にスイッチS1およびS4が閉じられ、S1およびS4が開いている間にS2およびS3が閉じられ、これにより、出力において方形波信号が生成される。スイッチは所望の周波数で開閉される。
【0129】
送電機101は、所望の動作原理に従って送電機101の動作を制御するように構成された送電機コントローラ203をさらに備える。具体的には、送電機101は、Qi仕様またはコードレスキッチン仕様に従って電力制御を実行するために必要な多数の機能を含み得る。
【0130】
送電機コントローラ203は、特に、ドライバ201による駆動信号の生成を制御するように構成されており、具体的には、駆動信号の電力レベル、したがって生成される電力伝送信号のレベルを制御することができる。送電機コントローラ203は、電力制御フェーズ中に受電機105から受信された電力制御メッセージに応答して電力伝送信号の電力レベルを制御する電力ループコントローラを備える。
【0131】
図1のシステムは、異物検出におけるトレードオフを改善するように動作を適合させることを意図した異物検出法を使用する。この手法は多くの実施形態において改善された異物検出を提供し、具体的には、多くの実施形態において、より正確かつ/または信頼性の高い異物検出を提供し得る。この手法はまた、複雑性やリソース要件を下げることができる可能性がある。
【0132】
この例では、ドライバ201および送電コイル103は、受電機に電力を伝送するための電磁電力伝送信号と、異物検出に使用される電磁試験信号との両方を生成するように構成されている。送電機は、電力伝送フェーズ中、駆動信号について反復時間フレームを使用し、時間フレームは、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む。このような反復時間フレームの例を
図5に示す。電力伝送時間間隔はPTで示されており、異物検出時間間隔はDで示されている。この例では、各時間フレームFRMは1つの異物検出時間間隔および1つの電力伝送時間間隔のみで構成されており、各フレームにおいて両者は(および時間フレーム自体も)同じ持続時間を有する。しかし、他の実施形態では他の時間間隔(例えば、通信間隔)も時間フレームに含まれていてもよく、または複数の異物検出時間間隔および/もしくは電力伝送時間間隔が各時間フレームに含まれてもよいことが理解されよう。さらに、一部の実施形態では、互いに異なる時間間隔の持続時間が(および時間フレーム自体も)動的に変化してもよい。
【0133】
このように、この手法では異物検出と電力伝送が時間領域で分離されており、それにより電力伝送から異物検出への相互干渉が低減する。したがって、電力伝送の動作条件のばらつきに起因する変動性および不確定性を異物検出から隔離することができ、より信頼性が高く正確な異物検出が提供される。
【0134】
したがって、電力伝送フェーズでは、送電機は、時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送を実行するように構成される。具体的には、これらの時間間隔中、送電機101および受電機105は電力制御ループを稼動し得る(電力制御ループは電力伝送時間間隔内の通信に基づいていてもよく、または例えば、電力伝送時間間隔外の通信、例えば専用通信時間間隔内の通信に基づいていてもよい。例えば、各異物時間間隔は複数の交替する電力伝送時間間隔および通信時間間隔によって隔てられてもよい。したがって、伝送される電力のレベルは動的に変更され得る。電力伝送フェーズの時間フレームの異物検出時間間隔では、駆動信号の少なくとも1つのパラメータ、したがって電磁試験信号の少なくとも1つのパラメータが典型的には所定値に、または例えば、異物検出時間間隔の前に実行される適合動作中に決定された値に設定される。したがって、異物検出時間間隔においてパラメータが所定値に設定され得る(すなわち、異物検出時間間隔の前に決定された値であり、多くの場合は電力伝送フェーズの前に決定された値)。対照的に、電力伝送時間間隔中はパラメータがこの所定値に制約されない可能性がある。
【0135】
例えば、電力伝送時間間隔中、システムは、受電機からの電力制御メッセージに応答して電力伝送信号の電力レベルを変化させることを可能にする電力制御ループを稼動し得る。電力制御ループは、駆動信号/電力伝送信号の電流、電圧、および周波数のうちの少なくとも1つを制御/変更することができる。対照的に、電力伝送時間間隔中に電力制御ループによって変更されるパラメータは、異物検出時間間隔中、電力伝送フェーズの前に決定された電流、電圧、および/または周波数の所定値に設定され得る。
【0136】
多くの実施形態では、異物検出時間間隔中には駆動信号の一定の(通常はより低い)振幅(通常は電圧)が設定される。追加でまたは代わりに、異物検出時間間隔中の駆動信号には所定の周波数が設定され、これは通常、電力伝送時間間隔中の駆動信号よりも大幅に高い可能性がある。
【0137】
結果として、電力伝送時間間隔中に生成される電磁信号である電力伝送信号は、通常、異物検出時間間隔中に生成される電磁信号である電磁試験信号とは大きく異なる特性を有する。電力伝送時間間隔中に生成される電磁信号または電磁場は電力伝送信号と呼ばれ、異物検出時間間隔中に生成される電磁信号または電磁場は電磁試験信号、もしくは単に試験信号と呼ばれる。しかし、
図2のシステムでは、電力伝送時間間隔および異物検出時間間隔の両方で同じコイルから電磁信号が生成されており、電力伝送時間間隔および異物検出時間間隔の両方で同じドライバなど使用されていることが理解されよう。実際のところ、多くの実施形態において、試験信号への言及は異物検出時間間隔中の電力伝送信号と同等であると考えられ得る。
【0138】
送電機101は、異物検出試験を実行するように構成された、すなわち、生成された電磁場内に望ましくない導電性の要素が存在するようであるか否かを特に検出するように構成された異物検出器205を備える。
【0139】
したがって、異物検出が実行される間隔中、すなわち異物検出時間間隔中、異物検出器205は条件を評価して異物が存在すると考えられるか否かを決定する。異物検出時間間隔中、送電機101は電磁試験信号を生成し、異物検出は、この信号の特徴および特性の評価に基づく。
【0140】
このシステムでは、異物検出は、電磁試験信号によって誘導された平衡検出コイルのセット内の信号を検出することに基づく。平衡検出コイルのセットは、均一な磁場の存在下で、および送電コイル103によって生成された電磁場、例えば、具体的には電磁試験信号の存在下で互いを負の方向にオフセットするように構成された少なくとも2つの検出コイル207、209を含む。具体的には、送電機は、送電コイルによって生成された電磁場が(少なくとも部分的に)互いに相殺するように結合された第1の検出コイル207および第2の検出コイル209を含む。
【0141】
したがって、送電コイル103によって生成された電磁場は第1の検出コイル207内に信号を誘導し、第2の検出コイル209内に信号を誘導する。しかし、誘導電圧は互いに反対の極性を有するので、送電コイル103によって生成された電磁場に起因する検出コイル207、209の直列結合の電圧(振幅)は、送電コイル103によって生成された電磁場に起因する個々の検出コイル207、209のうちの少なくとも最大のもの、典型的にはいずれよりも低い。したがって、第1の検出コイル207および第2の検出コイル209は、送電コイル103によって生成された電磁場からの誘導電圧が少なくとも部分的に互いに打ち消し合うように結合される。
【0142】
検出コイルは、異物が存在しないときに電磁試験信号によって反対の信号が生成される少なくとも2つの巻線に対応するように構成される。したがって、反対の信号は少なくとも部分的に互いに打ち消し合う可能性があり、よって、検出コイル207、209の直列結合の両端の測定誘導信号のレベルは低減され、場合によっては実質的に打ち消される。これにより、異物検出に使用できる磁場強度を大幅に高めることができる。実際のところ、多くの実施形態および場合において、得られる誘導電圧は(理想的には)巻線間の磁束の差のみに起因し得る。巻線間のそのような差または非対称性は異物に起因する可能性があるので、多くの場合において磁場(したがって誘導信号)に対する異物の影響をより正確に測定することができる。
【0143】
検出コイル構成の一例が
図6に示されている。この例では、第1の検出コイル207は第1の巻線L1として形成されており、第2の検出コイル209は(逆)直列結合された第2の巻線L2として形成されている。したがって、2つの巻線の結合された電圧は、均一な電磁場に対して互いにオフセットする。この例では検出コイル207、209/巻線L1、L2は中心点に関して反対に、かつ対称に配置されている。さらに、これらの検出コイルは平面内に形成され、送電コイル103も同一平面(または少なくとも実質的に平行な平面)内に形成される。この例では検出コイル213は送電コイル103の内部に形成されている。さらに、検出コイル213は実質的に同じ外形を有し、実質的に同じ面積をカバーするように形成されている。
【0144】
結果として、2つの検出コイル213を通る磁束は実質的に同じであるが、反対方向である。結果として、2つの検出コイル207、209内の誘導電圧は実質的に同じであるが、逆の位相/極性を有し、2つの直列結合された検出コイル213の結合電圧は打ち消し合い、実質的にゼロになる。
【0145】
したがって、検出コイル207、209は、均一な場の存在下で、および/または他の物体が存在せず、送電コイル103によって生成された電磁場の存在するとき、誘導信号/電圧が互いに少なくとも部分的に打ち消し合い/相殺し合い、理想的には結合電圧がゼロになるように構成される。
【0146】
図2および
図6の構成は、2つの検出コイルのうちの第1の検出コイルの誘導信号が2つの検出コイルのうちの第2の検出コイルの誘導信号の反対の電圧を有するようなものである。2つの検出コイルの誘導信号は均一な磁場に対して逆の位相を有する。2つの検出コイル内の誘導信号は逆の位相を有する。誘導信号が反対の極性を有するように、2つの検出コイルは直列にかつ逆位相で結合されている。これらの特性は、均一な場、および送電コイル103によって生成される歪みのない場について存在する。
【0147】
しかし、金属異物の存在下では磁場は歪められ、通常、2つの検出コイル207、209の磁場の間に非対称性をもたらす。通常、金属異物の場合、生成された電磁試験信号は渦電流を誘導し、その結果、異物は、生成された電磁試験信号の電磁場に対して、結合された電磁場が歪むように電磁場を生成する。生成された非対称電磁場は、
図7に示されるように、第1の検出コイル207および第2の検出コイル209内に異なる信号を誘導する。したがって、異物が存在せず、2つの検出コイル207、209を通る磁束が対称であって、結合電圧が実質的にゼロになる状況とは対照的に、異物の存在は非対称性をもたらし、よって電圧をもたらす。2つの検出コイル207、209の誘導信号におけるこの差は、異物の存在を検出するために使用することができる。
【0148】
図2のシステムでは、検出コイルのペア207、209の結合電圧が直接測定され、異物検出を実行するために使用されるわけではない。そうではなく、両検出コイルは第1のトランス211と直列に結合され、検出コイル207、209を流れる電流は第1のトランス211の一次巻線にも流れる。したがって、検出コイル207、209および一次巻線は、検出コイル207、209内に誘導された電流が流れる直列回路の一部である。
【0149】
なお、トランスの一次巻線はソースから電力/エネルギーを引き出す巻線であり、二次巻線はエネルギーを負荷に供給する巻線であり、すなわち、一次巻線から二次巻線にエネルギーが伝送される。
【0150】
回路は他の構成要素および要素を含み得るが、この具体例では検出コイル207、209と一次巻線との間の結合は低抵抗である。検出コイル207、209と一次巻線との間の結合の合わせた抵抗はほとんどの実施形態において100オーム未満であり、多くの実施形態において50オーム、10オーム、もしくは5オーム未満であり、または多くの実施形態において1オーム未満でさえある。
図2に示されるように、多くの実施形態において、一次巻線は検出コイル207、209に直接結合され得る。
【0151】
この例では、第1のトランス211は変圧器ではなく変流器として実装されている。具体的には、第1のトランス211は、二次巻線の巻数が一次巻線の巻数よりも大幅に大きい巻数比を有するように構成されている。多くの実施形態では、二次巻線の巻数は、一次巻線の巻数の10倍、20倍、50倍、または100倍以上である。
【0152】
したがって、第1のトランス211は非常に大きなインピーダンス変換を提供し、二次巻線のインピーダンスが比較的高い場合であっても、一次巻線のインピーダンスは非常に低い可能性がある。したがって、第1のトランス211の一次巻線インピーダンスは非常に低い可能性があり、よって、低電圧および高電流をもたらし得る。さらに、検出コイル207、209への結合のインピーダンスは低いので、検出コイル207、209、第1のトランス211の一次巻線、およびこれらの間の結合によって形成される検出回路は全体として低いインピーダンスを有し、結果として低電圧および高電流となる。実際のところ、多くの状況において、検出コイル207、209内の電流は、送電コイル103からの磁場と反対の磁場を生成し、典型的には、電圧がゼロに非常に近く、大きな電流が流れる検出回路をもたらす。
【0153】
第1のトランス211の一次巻線のインピーダンスは、二次巻線のインピーダンスを、二次巻線と一次巻線との間の巻数比の二乗で割ったものに対応し得る。多くの実施形態において、一次インピーダンスはすべての周波数について1オーム、10オーム、または50オーム以下であるように構成され得る。したがって、多くの実施形態において、二次インピーダンスは1オーム、10オーム、または50オームに巻数比の二乗を掛けたもの以下であるように構成され得る。
【0154】
したがって、第1のトランス211は、検出コイル207、209に対して低インピーダンスを示すように結合されている。したがって、検出回路は本質的に電流測定回路になる。
【0155】
第1のトランス211の二次側は異物検出器205に結合されており、異物検出器205は、第1の二次巻線からの信号の特性に基づいて異物検出時間間隔中に異物検出を実行するように構成されている。信号が適切な異物検出基準を満たしている場合は異物が存在すると判定され、そうでない場合は異物が存在しないと判定される。具体的な異物検出基準は、個々の実施形態の具体的な優先事項および要件に依存し得る。多くの実施形態において、第1のトランス211の二次側での信号の振幅が閾値を超えることが要求され、例えば、二次巻線の電圧および/または電流の振幅が閾値を超えることが要求され得る。
【0156】
多くの実施形態において、二次巻線は、少なくとも部分的に容量性である負荷に結合され得る。
図2の例では、送電機は特に共振コンデンサ213を含む。共振コンデンサ213は第1の二次巻線に結合され、共振回路を形成する。共振コンデンサ213は、具体的には並列共振回路を形成するように結合されてもよい。
【0157】
共振コンデンサ213は、具体的には、異物検出時間間隔中の電磁試験信号/駆動信号の周波数に実質的に等しい(例えば、電磁試験信号の1%、2%、または5%以内)共振周波数を有する共振回路を形成するように構成され得る。したがって、共振回路は電磁試験信号に同調され、これによって検出振幅が改善され、例えば検出コイル207、209によって拾われるノイズおよび干渉が低減し得る。
【0158】
この具体例では、共振回路は二次巻線とともに、駆動信号/電磁試験信号周波数において特に高いインピーダンスを有する並列共振を形成する。これによって二次巻線の電圧が最大化およびフィルタリングされ、異物検出性能を向上させることができる。例えば、多くの実施形態において、異物検出器205は単純に共振回路の電圧の電圧振幅を比較し、この振幅が所与の閾値を超える場合に検出表示を生成することができる。多くの実施形態において、位相が予想基準位相から大きく異なる場合に異物が検出されていると指定されるような位相検出を実行することが有利である可能性がある。これは、生成される検出信号が略正弦波(対称)信号である現在の手法に特に適している。
【0159】
並列共振を二次巻線とともに形成する共振コンデンサ213を使用すると、共振周波数、すなわち電磁試験信号の周波数でインピーダンスが最も高くなる。さらに、品質Q(選択性)を(例えば、1~3の範囲で)制御可能にするために抵抗器が共振回路に並列に追加されてもよい。この場合、LCR並列組み合わせは、最大インピーダンスが制御されるバンドパスフィルタのように振る舞う。バンドパスフィルタリングにより、端子における電圧は略正弦波状になり得る。
【0160】
多くの実施形態において、共振周波数における二次インピーダンスは1オーム、10オーム、または50オームに巻数比の二乗を掛けたもの以下であるように構成され得る。
【0161】
平衡検出コイルとともに測定トランス(変流器)を使用する手法は、多くの場合において異物検出を改善し、送電機をより高い電力レベルで使用することを可能にする。さらに、これは複雑さを低減することを可能にし、コストの削減および全体的な性能の向上を実現する可能性がある。
【0162】
したがって、この手法は、いわゆる誘導平行とも呼ばれる平衡検出コイル207、209の1つまたは複数のセットを利用する異物検出を実装することができる。この具体例では2つの検出コイル207、209は互いに反対側に配置されており、また送電コイル103と同じ磁気平面内に配置されている。そのような誘導平衡が、送電コイル103によって生成された対称な検出電磁場にさらされるとき、検出コイル207、209の端子における電圧は理想的かつ理論的には実質的にゼロである。
【0163】
図7に示されるように誘導平衡の片側に金属片を置くと、検出電磁試験信号/場の密度が対称でなくなり、誘導平衡の端子において電圧が測定され得る。
【0164】
一般に、誘導平衡システムでは、コイルを通る磁場が対称である場合、検出コイル207、209の端子で測定される電圧はゼロに非常に近い。しかし、異物に起因する非対称性の場合でも電圧は非常に小さく、しばしば、例えば10mV程度である可能性がある。そのような小さい電圧を正確に測定および評価することは非常に困難である。これは、例えば高電力スイッチングインバータなどによってノイズが生成される送電機でよく見られるようなノイズの多い電磁環境では特にそうである。シールドを設けることで状況を改善できるが、ノイズが十分に少ない測定信号を生成することは依然として非常に困難である。
【0165】
これらの問題は、第1のトランス211が、1つまたは複数の誘導平衡の検出コイル207、209を流れる電流を効果的に測定する変流器として使用され得る、記載のシステムでは軽減され得る。システムは、測定されている電流による検出コイル207、209の低抵抗短絡を効果的に可能にし得る。
【0166】
この手法では、各検出コイル内に信号が誘導され、(異物が存在しないときは通常そうであるように)均一な磁場の場合、平衡検出コイルは互いに実質的に相殺し合う。検出コイル207、209の出力は第1のトランス211に結合される。したがって、(送電コイルによって生成された電磁場によって)検出コイル207、209内に信号が誘導され、生成された、平衡検出コイル207、209の出力をまたぐ(差)誘導信号は第1のトランス211の一次側に供給される。その後、二次信号において生じる信号が異物検出器205によって評価される。したがって、異物検出器205によって評価される信号は検出コイル207、209内に誘導された信号を表すものであり、具体的には相殺された差/和誘導信号である。
【0167】
このシステムでは、第1のトランス211の二次巻線には受動的に負荷がかけられる。二次巻線は、二次巻線に受動負荷を提供する負荷回路に接続されてもよい。二次巻線は、二次巻線に電力またはエネルギーを供給しない回路に接続されてもよい。二次巻線内の信号/電圧/電流は、1つまたは複数の平衡検出コイルセット内に誘導された信号にのみ由来してもよい。
【0168】
同様に、記載のシステムでは、平衡検出コイルのセットには受動的に負荷が加えられる。
【0169】
平衡検出コイルのセットは、平衡検出コイルのセットに受動負荷を提供する負荷回路に接続されてもよい。平衡検出コイルのセットは、平衡検出コイルのセットに電力を供給しない回路(第1のトランスを含む)に接続されてもよい。平衡検出コイル内の信号/電圧/電流は、1つまたは複数の平衡検出コイルセット内の誘導にのみ由来してもよい。
【0170】
異物検出器は、異物検出基準を満たす第1の二次巻線からの誘導信号の特性に応答して異物を検出するように構成されてもよい。ここで、この誘導信号は第1の平衡検出コイルセット内に誘導された信号である。
【0171】
多くの実施形態において、第1のトランス211の巻線間で交換される唯一のエネルギー/電力は、検出コイル207、209内の誘導に由来する。
【0172】
測定トランス、特に低インピーダンス/電流測定結合トランスを使用する手法は多くの利点を提供する可能性がある。
【0173】
実際に、トランスの使用は、システムが、ノイズが電磁的に結合される可能性のあるスプリアスまたは意図しないループを切断することを可能にする。実際のところ、実践における実装では、検出コイルを測定/異物検出回路に結合する必要があり、通常は非常に長いワイヤが必要になる。結果として、大きなワイヤループが形成され、支配的な磁場によってワイヤループ内に起電力電圧が誘導され得る。しかし、電力伝送システムの場合、高度な電磁ノイズおよび干渉が発生することが多く(例えば、駆動インバータのスイッチングにより、かなりの量の電磁ノイズが発生する傾向がある)、これがノイズとして検出/測定システムに結合される可能性がある。実際には、これは比較的感度の高い測定にかなりのノイズ成分を加え、性能を低下させるおそれがある。
【0174】
測定トランスを使用すると大きな接続ループを切断することができ、具体的には、ループを2つのより小さなループ、すなわち、第1のトランス211の一次側の検出ループと第1のトランス211の二次側の測定ループとに変換できる可能性がある。これにより、各ループの有効面積が減少するだけでなく、実践では設計/実装の自由度が高くなるため、最適化を改善してノイズの影響を減らすことができる。
【0175】
さらに、低一次インピーダンス/電流測定の手法は改善されたノイズ性能を提供し、異なるループ間のノイズ伝播を低減し得る。
【0176】
例えば、単に、検出コイル207、209をまたいで結合された直接測定抵抗器を使用し、この抵抗器の両端の電圧を測定するだけでは、十分な電圧を生成するのに比較的大きな抵抗器が必要になる。しかし、これは、高ノイズの起電力電圧が誘導され、検出信号に重なることも引き起こす。ノイズ信号は、検出ループおよび測定ループの両方で誘導されるノイズの影響を受け、これは検出性能を低下させるおそれがある。巻数比が低いトランスを使用する場合、同様の挙動が発生する可能性があり、具体的には、2つのループ間の密接な接続が維持される可能性があり、一方のループ内に誘導されたノイズが他方のループに影響を及ぼす可能性がある(例えば、測定ループ内のノイズが検出ループ内に非平衡を引き起こす)。
【0177】
巻数比が高い電流結合トランスを使用する場合、性能が向上する可能性がある。具体的には、一次側の電圧を低く保ちつつ、異物検出に高い検出電圧が提供され得る。さらに、検出ループで拾われたノイズは共振回路によってフィルタリングされ得るため、検出電圧への影響は少なくなる。
【0178】
測定ループによって拾われるノイズは、電圧が巻数比によって低減されるために検出ループの動作に非常に小さな影響しか与えず、したがって、あらゆる非平衡化効果を大幅に低減させる。この手法は、異物検出に検出電圧を供給しつつ、検出ループ内の電流を増加/最大化させることを可能にする。
【0179】
共振コンデンサを使用することで、具体的には並列共振回路を形成するために使用することで、測定/検出性能がさらに改善され得る。具体的には、効果的なフィルタリングによってノイズが低減され、適切な周波数でより正弦波状の信号が提供される結果、シグナルインテグリティが向上し、より正確な位相および/または振幅の検出が提供され得る。また、帯域外信号を減衰させるので、電磁テスト信号以外のソースによって引き起こされるノイズを減衰させる。
【0180】
上記のように、送電機は、駆動信号を制御して、異物検出時間間隔中と電力伝送時間間隔中とで異なるパラメータを示すように構成されている。これは、特に、受電機による電磁試験信号への負荷の効果および影響を低減するために利用され得る。
【0181】
例えば、能動的に開かれるスイッチを備えた受電機によって、短い異物検出時間間隔の間、受電機の負荷を切断することが提案されている。しかし、kWレベルのより高い電力レベルの場合は切断スイッチによって追加の損失が発生し、コストが増加するため、このソリューションは理想的ではない。一部の高電力用途では、例えば、負荷が、加熱を引き起こすために電力伝送信号によってその内部に渦電流が直接誘導される誘導加熱金属要素である場合などでは、そのようなスイッチングを実装することは単純に不可能である。
【0182】
電力伝送時間間隔に対する異物検出時間間隔中の駆動信号のパラメータの適合はこれに対処し、受電機の負荷が異物検出に及ぼす影響を軽減するために使用され得る。
【0183】
多くの実施形態において、ドライバ201は、電力伝送時間間隔中と比較して、異物検出時間間隔中の駆動信号の周波数を上げるように構成され、具体的には、電力伝送時間間隔中の駆動信号の周波数よりも50%以上高くなるように駆動信号周波数を設定するように構成される。したがって、ドライバ201は、電力伝送信号よりも大幅に高い周波数を有するように電磁試験信号を生成することができる。
【0184】
多くの場合、周波数を大幅に上げると検出が改善し、受電機の負荷の影響が減る可能性がある。例えば、送電機および受電機は両方とも、電力伝送のために形成された共振回路を有し、例えば、送電コイル103および受電コイル107は両方とも、(例えば、25kHzの共振周波数を有する)共振回路の一部であり得る。異物検出時間間隔中に駆動周波数を増加させると(例えば、50kHzに)、送電機共振回路が誘導モードで動作し、送電コイル103内の電流が減少する。さらに、システムは同調されなくなるため、受電コイル電流も減少する。これにより、送電機の電流がさらに減少する。全体的な効果は、部分的に切断された負荷から生じる効果に対応する。多くの実施形態において、ドライバ201は、電力伝送時間間隔中に対して、異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧を下げるように構成され、具体的には、電力伝送時間間隔中の駆動信号の電圧振幅の50%(または、しばしば25%、場合によっては10%)以下になるように、異物検出時間間隔中の駆動信号の電圧振幅を設定し得る。
【0185】
低下した電圧は、強度が低い電磁試験信号を生成し得るので、異物検出時間間隔中に生成される電磁場は電力伝送時間間隔中よりも低く、これに対応して、負荷によって加えられる負荷が減少する可能性がある。これは多くの場合において改善された検出を可能にする。一部の実施形態では、電圧の低下は、受電機負荷の切断をもたらす可能性があるため、有利であり得る。例えば、電圧があるレベルまで低下すると、整流器およびバッテリを含む受電機において整流器が導通するのに十分な誘導電圧が得られないため、受電機はバッテリによって駆動される。これにより、負荷は電磁試験信号から実質的に切り離され、異物検出性能が向上し得る。
【0186】
多くの実施形態において、ドライバ201は、異物検出時間間隔中、駆動信号の電圧振幅を一定に設定するように構成され得る。その結果、より均一な電磁試験信号が生成される可能性があり、これは平衡検出コイル207、209に基づく異物検出を改善する可能性がある。例えば、電圧振幅が時間変動する場合、検出信号は変動し、この変動を補償または考慮に入れることができない限り、検出精度は低下する。
【0187】
多くの実施形態において、ドライバ201は、異物検出時間間隔中、電力伝送時間間隔中の駆動信号よりも少なくとも50%低い一定の電圧振幅、および少なくとも50%高い周波数を有するように駆動信号を生成するように構成され得る。
【0188】
一例として、電力伝送時間間隔中、駆動信号は、ワイヤレス電力を高効率で伝送するために、送電機および受電機の両方の共振周波数に近い第1の動作周波数で生成される。
【0189】
異物検出時間間隔中、駆動信号の第1の動作周波数は、送電機および受電機の両方の共振周波数から遠ざけられ、第2のより高い動作周波数に変更される。駆動信号のこの第2のより高い動作周波数は、第1の動作周波数、すなわち電力伝送信号の周波数より少なくとも1.5倍高い所定値に固定され得る。
【0190】
さらに、駆動信号電圧Uinvは、電力伝送時間間隔中よりも低い一定の第2の振幅(例えば、異なる電圧源によって供給される)に変更される。
【0191】
第2のより高い動作周波数および第2のより低い一定の電圧振幅を有する駆動信号を用いることで、送電コイル103を流れる電流は大きく低減され、一定に保たれる。さらに、ドライバ電流はドライバ信号電圧より遅れているため、ドライバ201の出力におけるインバータはゼロ電圧スイッチングシナリオで動作するのことから、スイッチングノイズが大きく低減される。
【0192】
そのようなシナリオでの駆動信号振幅の例が
図8に示されている。図中、電力伝送時間間隔中の動作はモード1と示されており、異物検出時間間隔中の動作はモード2と示されている。この例では、例えばインバータが定電圧源から供給を受けているために、電力伝送時間間隔中も電圧振幅は一定である。
【0193】
図9は、電力伝送時間間隔中に電圧振幅が変更される対応する例を示す。これは、例えば、インバータが、整流された(しかし平滑化されていない)AC電圧によって供給されることによって実現され得る。AC信号のゼロ交差と同期され得る異物検出時間間隔中の供給電圧は、実質的に一定の電圧を供給する代わりの電源を介して供給される。そのような駆動信号を生成し得る回路の例が
図10に示されている。この回路では、出力インバータ回路(M1、M2、Cp1、Cp2)は整流されたAC主電源電圧によって駆動されるが、整流された電圧が、第2の供給回路(第2のUdc)によって供給される平滑コンデンサC3の所与の電圧(この例では48V)未満の場合はそうではない。この時間の間、インバータ回路は平滑コンデンサC3からD5を介して供給され、結果として実質的に一定の供給電圧が得られ、駆動信号の電圧振幅は一定になる。
【0194】
そのような例では、送電コイル103は、異物検出時間間隔中、異物検出のための実質的に一定の電磁場に対応する電磁試験信号を生成し、ここで、電磁試験信号は所定のより高い第2の動作周波数を有する。異物検出電磁場/電磁試験信号の振幅は、主に、ドライバ201の第2のより低い出力電圧によって決定される。この場合、受電機の切り離されていない負荷は送電機から効果的に離調されるため、電磁場/電磁試験信号への影響が小さくなる。
【0195】
実践では、検出コイル207、209は可能な限り同一になるように生成され、可能な限り相殺し合うように設計され得る。しかし、実践では、異物が存在しない場合であっても検出コイル207、209のパラメータ、および場合によっては電磁環境においていくらかの非対称性および差異がありがちであることが見出された。また、非対称性および不均衡性は多くの場合において、検出することが望まれる何らかの異物によって引き起こされる電圧と同程度の大きさを有する、検出コイル207、209をまたぐ結合電圧をもたらす可能性がある。したがって、平衡誘導/検出コイルを使用したとしても、多くの実施形態において検出性能が困難である、または理想的ではない可能性がある。
【0196】
図11は、
図2の送電機が、平衡検出コイル207、209の平衡動作における不完全性を補償するように構成された補償回路をさらに含む例を示す。補償回路は、具体的には、二次巻線(以下、補償二次巻線とも呼ばれる)を有するトランス(以下、補償トランス1101と呼ばれる)を含む。補償二次巻線は平衡検出コイルセット、すなわち検出コイル207、209と直列に結合される。
【0197】
一次巻線(以下、補償一次巻線とも呼ばれる)は、第2の一次巻線のための補償駆動信号を生成するように構成された補償回路1103に結合される。補償駆動信号は、検出コイル207、209の結合電圧をオフセットするように/少なくとも部分的に打ち消すように生成される。具体的には、補償駆動信号は、送電コイル103によって生成された歪みのない電磁試験場/信号からの誘導電圧をオフセットするように(少なくとも部分的に打ち消すように)生成される。したがって、異物が存在しない場合、検出コイル207、209をまたぐ結合電圧に対して、補償二次巻線および検出コイル207、209をまたぐ結合電圧を低減するために補償駆動信号が生成される。
【0198】
異物が存在しない場合、補償駆動信号を生成することで検出コイル207、209をまたぐ電圧がオフセットされてもよい。具体的には、
図11のシステムでは、補償二次巻線が、第1の検出コイル205および第2の検出コイル207をまたぐ結合電圧をオフセットする電圧(逆の位相/極性を有する)を生成するように、補償駆動信号が生成される。したがって、第1のトランス211(以下、測定トランス211とも呼ばれる)をまたぐ電圧は、補償トランス1101および生成された補償電圧によって低減される。
【0199】
また、2つの検出コイル内の誘導電圧(起電力)間の電圧差をオフセットする補償信号を生成すると、直列結合に流れる電流が減少するため、補償回路は電流補償/キャンセリング回路とも考えられる。
【0200】
補償回路1103は、補償一次巻線に結合され、補償駆動信号を生成する。その結果、補償二次巻線において補償信号が生成され、検出コイル207、209内に誘導される信号がオフセットされる(異物が存在しない場合)。補償信号は、駆動信号/電磁試験信号と同じ周波数を有するように、かつ検出コイル207、209の結合電圧と実質的に逆の位相を有するように生成される。したがって、第1の検出コイル205の電圧が第2の検出コイル207の電圧を上回る場合、補償信号/補償駆動信号は、第2の検出コイル207内に誘導される電圧と実質的に同じ位相であって、第1の検出コイル205内に誘導される電圧と逆の位相を有するように生成される。第2の検出コイル207の電圧が第1の検出コイル205の電圧を上回る場合、補償信号/補償駆動信号は、第1の検出コイル205内に誘導される電圧と実質的に同じ位相であって、第2の検出コイル207内に誘導される電圧と逆の位相を有するように生成される。
【0201】
図11のシステムでは、補償トランス1101は、一次巻線の巻数が二次巻線の巻数よりも大幅に大きい巻数比を有するように構成される。多くの実施形態では、一次巻線の巻数は、二次巻線の巻数の10倍、20倍、50倍、または100倍以上である。
【0202】
したがって、補償トランス1101は非常に大きなインピーダンス変換を提供し、一次巻線のインピーダンスが比較的高い場合であっても、二次巻線のインピーダンスは非常に低い可能性がある。したがって、二次巻線は、低インピーダンスに対応する低電圧および高電流の信号を生成し得る。したがって、補償手法は電流に焦点を当てた検出を維持し、非常に低いインピーダンスの検出ループをサポートする。
【0203】
回路は他の構成要素および要素を含み得るが、この具体例では検出コイル207、209と補償トランス1101の二次巻線との間の結合は低抵抗である。検出コイル207、209と二次巻線との間の結合の合わせた抵抗はほとんどの実施形態において100オーム未満であり、多くの実施形態において50オーム、10オーム、もしくは5オーム未満であり、または多くの実施形態において1オーム未満でさえある。
図11および
図12に示されるように、多くの実施形態において、二次巻線は検出コイル207、209に直接結合され得る。
【0204】
図11の手法では、補償駆動信号、したがって補償信号は、駆動信号と同じ周波数、よって電磁試験信号と同じ周波数を有するように生成される。位相および/または振幅は所望の補償を提供する値に設定されてもよい。
【0205】
一部の実施形態では、位相および/または振幅は所定の値を有し得る。例えば、製造または設計中に、生成された電磁試験信号に対する検出コイル207、209間の非対称性が(理論的分析および/または測定に基づいて)推定され、適切な補償駆動信号パラメータ値が決定され得る。その後、これらが異物検出時間間隔中に適用され得る。
【0206】
しかし、多くの実施形態において、補償回路1103は駆動信号のパラメータを動的に適合させるように構成されてもよく、具体的には、駆動信号の電圧振幅および/または位相を適合させるように構成されてもよい。
【0207】
これは多くの実施形態において補償/キャンセリングを改善する可能性がある。実際、検出コイル207、209が製造段階中に完璧に平衡化および/または完璧にキャラクタリゼーションされたとしても、電磁場、したがって誘導信号は具体的な環境にも依存し、特に、例えば使用される受電機器およびその正確な位置に依存して変化する傾向がある。したがって、補償を動的に適合させること、具体的には現在の電磁環境に合わせて較正することができると性能が大幅に向上する可能性がある。
【0208】
多くの実施形態において、補償回路1103は、駆動信号のパラメータ、具体的には位相または振幅を変化させて、補償二次巻線、第1の検出コイル205、および第2の検出コイル207をまたぐ結合電圧が最小となる基準パラメータ値を決定するように構成され得る。したがって、補償回路1103は様々な候補パラメータ値を評価し、現在のコンテキストにおいてキャンセリングが最適となる値を決定することができる。
【0209】
図11の具体例では、補償回路1103は具体的には、補償駆動信号の電圧および位相を変化させ、測定トランス211の二次巻線の出力信号を測定するように構成され得る。これにより、現在のシナリオ/コンテキストに適応する非常に効率的な適応型異物検出システムが得られる可能性がある。
【0210】
図11は、
図2のトランスベースの測定手法とともに補償回路1103を使用することを表しているが、この適用例に限定されないことが理解されよう。補償手法は、平衡検出コイルに基づく他の異物検出手法とともに使用されてもよい。例えば、
図12に示されるように、補償回路1103は、測定トランスを使用せず、検出コイル207、209からの補償後電圧を直接測定するシステムとともに使用されてもよい。
【0211】
平衡検出コイル207、209のための補償信号を供給する補償回路を使用する上記手法は、測定トランスとしての第1のトランス211とともに使用する場合に有利である。しかし、補償回路は平衡検出コイル207、209にとって一般に有利であり、この手法は使用される第1のトランス211に依存せず、または実際には使用されるいかなる測定トランスにも依存しない。この手法は、検出コイル207、209の出力がどのように測定されるかを問わず、多くの異なる実施形態で使用され得る。
【0212】
また、第1のトランス211を使用するシステムについて説明された特徴および特性はまた、そのような第1のトランス211が使用されない実施形態にとって適切であり得ることが理解されよう。例えば、上記機能、特徴、および特性は
図11のシステムおよび
図12のシステムのどちらにも当てはまる。例えば、
図2および
図11を参照して記載された周波数または電圧の変化は
図12のシステムにも適用可能である。
【0213】
補償は、検出コイル間および/またはこれらの周囲の環境の不均衡を緩和または軽減するのに有用である可能性がある。これにより多くのシナリオで性能が改善し、具体的にはより正確な異物検出が提供され得る。
【0214】
また、多くの実施形態において異物検出のための位置推定が可能になるか、または改善する可能性がある。具体的には、平衡検出コイルセットの2つの検出コイル内に誘導される信号間の非対称性を考えることによって異物位置指標推定が生成され得る。平衡検出コイルセットの出力信号の位相および/または極性は、異物が検出コイルのうちのどちらの近くに位置しているかを示し得る。例えば、送電機の表面上に異物がある場合、近接する検出コイルに特定の極性で起電力が誘導される可能性がある。したがって、平衡検出コイルセットからの出力信号の極性は、異物がどちらの検出コイルの近くに位置しているかを示し得る。補償は、異物が存在しないときに存在する不均衡を軽減し、それによって異物の影響のより正確な決定を可能にし、したがってより正確な位置推定を可能にし得る。それは、例えばより小さな不均衡の検出であり、それにより、例えば、特に、検出コイル間の重なり付近の改善された位置推定を可能にし得る。
【0215】
これまでに記載してきた例では、単一の平衡検出コイルセットのみを有する実施形態が説明されてきた。しかし、他の実施形態では複数の平衡検出コイルセットが使用されてもよく、異物検出は、これらの複数の平衡検出コイルセットのうちの1つまたは複数からの出力信号に基づいて異物検出を実行するように構成されてもよい。
【0216】
例えば、
図13に示されるように、送電機は3つの平衡検出コイルセットを含むように生成され、各セットは2つのくさび状コイルを含む。この例では、異物検出は、3つの平衡検出コイルペアのそれぞれからの出力信号を測定し、これらを使用して異物検出を実行することができる。使用される正確な基準は、個々の実施形態の優先事項および要件に依存する。複雑さの低い例として、複数の平衡検出コイルセットのうちの少なくとも1つが所与の閾値を超える信号を生成する場合に異物が検出されたと判定され得る。一部の実施形態では、例えば検出異物の位置推定を生成するために、異なる信号が評価および比較され得る。
【0217】
多くの実施形態において、
図13の例において実際にそうであるように、平衡検出コイルは送電コイル103内に配置されている。これは、通常、性能を改善し、特に、異なるコイルに対して均一な電磁試験信号/場を提供する可能性がある。
【0218】
多くの実施形態において、単一のトランスとともに複数の平衡検出コイルセットが使用される。具体的には、
図14に示されるように、送電機は、複数の平衡検出コイルセット1403(
図13にはそのうちの3つが示されている)に結合されたスイッチ回路1401を含み得る。
【0219】
この例では、スイッチ回路1401は、複数の平衡検出コイルセット1403の各セットと測定トランス211との間の結合を切り替えるように構成されている。具体的には、スイッチ回路1401は、複数の平衡検出コイルセット1403のうちの1つを測定トランス211の一次巻線に時間的に順に結合するように構成されている。結合は、検出コイルと一次巻線とが直列に結合されるように行われ、すなわち、1つのコイルを流れる電流は他のコイル/巻線を流れる電流と同じである。
【0220】
異物検出器205は、各スイッチ時間間隔中の測定トランス211の二次側の電圧を求め、すなわち、各平衡検出コイルセットの電圧が求められ、異物検出に使用され得る。したがって、時間的に順に測定が行われ、これらの測定に基づいて異物検出が決定され得る。
【0221】
さらに、上記したように、第1のトランスに結合された複数の平衡検出コイルのうちの少なくとも2つの平衡検出コイルの二次巻線からの信号の特性に応じて、異物の位置指標推定を求めるために信号が使用されてもよい。例えば、異物FOがコイルL1の上にある場合(
図13参照)、誘導平衡は崩れ、検出信号は、位相基準信号に対して特定の位相関係を有する信号がトランス211からの出力に現れる。同じ異物がコイルL2の上にある場合(
図13参照)、やはり誘導平衡は崩れるが、トランス211からの検出信号は位相基準信号とは逆の位相を示す。
【0222】
切り替えのタイミング、具体的には切り替えの頻度は実施形態ごとに異なる可能性があり、実際には1つの実施形態において動的に変化する可能性がある。
【0223】
一部の実施形態では、スイッチ回路1401は、連続する異物検出時間間隔の間に、複数の異なる平衡検出コイルセットからマッパー203の一次巻線への結合を切り替えるように構成され得る。
【0224】
具体的には、この手法は、各異物検出時間間隔において、そしてしばしば各フレームにおいて、1つの平衡検出コイルセットを順次測定し得る。これにより、継続時間が長くなり、より正確な測定が可能になる可能性がある。また、例えば電力伝送時間間隔中に比較的ゆっくりと実行され得る切り替えに課される要件を低減することが可能となり得る。
【0225】
他の実施形態では、スイッチ回路1401は、1つの異物検出時間間隔中に、複数の平衡検出コイルの複数の異なる平衡検出コイルセットから第1の一次巻線への結合を切り替えるように構成され得る。したがって、1つの異物検出時間間隔中に、複数の平衡検出コイルセットのうちの1つもしくは複数、またはすべてのセットが測定トランス211に結合され、二次巻線の信号が異物検出器205によって測定され得る。
【0226】
これは、より速く、より相関のある測定を提供し、一部の実施形態では、よりリアクティブなまたは改善された異物検出を可能にし得る。
【0227】
図15は、3つの平衡検出コイルセットを使用する場合でのスイッチ回路1401の原理の例を示す。この例では、3つのセットは3チャネルマルチプレクサを使用して順次スキャンされる。したがって、この手法では単一の測定トランス211のみが要求され、したがって1つの測定信号経路のみが必要であることにより、通常、位相および/または振幅測定誤差(オフセット、ドリフトなど)が回避される。
【0228】
図16は
図15に対応する例を示しているが、補償トランス1101が追加されている。したがって、測定トランス211および補償トランス1101は直列に結合され、複数の異なる平衡検出コイルセットの間で一緒に切り替えられる。そのようなシステムでは、補償回路1103は、各平衡検出コイルセットについて別々に基準パラメータ値を決定および保存し得る。そして、現在選択されている平衡検出コイルセットに適した基準パラメータ値を取り出し、これを生成された補償駆動信号に適用し得る。したがって、補償回路1103は、測定トランス211の一次巻線に結合されている平衡検出コイルセットに応じて、異なる補償駆動信号パラメータを適用することができる。これは、多くの実施形態において補償を大幅に改善し、結果として異物検出性能が改善され得る。
【0229】
したがって、この具体的手法は、誘導平衡測定システムからのオフセットを低減するか、または除去さえする可能性がある。構造公差やコイルのレイアウトなどに起因して、送電コイル103のアクティブ磁場領域内に異物が存在しない場合であっても、測定トランス211の二次巻線電圧「Ufod」は通常ゼロではない。このオフセット信号は、異物に起因する測定信号と同程度の大きさを有し得る。これは異物の検出を困難にし、また、同等に重要なことに、アクティブ磁場領域内の異物の位置を特定することが困難になる。
【0230】
図16の回路は、検出コイルL1~L6の共通ループ内にAC電圧Ucompを追加する。電圧Ucompは、具体的には、電力伝送信号と同じ周波数を有し、ドライバ201の駆動信号に対して特定の位相関係を有する。この位相関係は、どの平衡検出コイルセットが選択されているかに応じて変化する可能性がある。
【0231】
また、電圧Ucompは特定の振幅を有する。この振幅はどの平衡検出コイルセットが選択されているかに応じて異なり得る。
【0232】
電圧Ucompは、例えば、対称方形波に対応する波形を有し得るか、または、例えば多くの実施形態において正弦波または三角波であり得る。
【0233】
多くの実施形態において、補償電圧は方形波電圧として生成されてもよく、なぜなら、これは三角波状の補償電流をもたらすからである。送電コイル103は、通常、駆動周波数が共振周波数よりも高いために誘導モードで駆動される共振回路の一部である可能性があるため、これはコイルの電流と合致する。結果として、検出コイル207、209内に誘導された対応する信号は三角波形を有する。
【0234】
多くの実施形態において、駆動周波数較正手法を使用することで、周波数を適合させ、波形の整合性を改善することができる。したがって、一部の実施形態では、補償回路1103はまた、生成された補償駆動信号の周波数を適合させるように構成され得る。例えば、補償回路は周波数を変化させ、測定トランス211からの測定電圧が最小化される周波数を選択することができる。
【0235】
例えば、48kHzの補償信号の場合、(例えば)480kHzの搬送波を有するPWMクラスDのようなアンプを使用および調整することで、より高い分解能で所望の電圧形状が提供され得る。
【0236】
図16に示されている送電機を参照しながらこの手法の具体例を説明する。この送電機は多くの上記特徴を備える。
【0237】
そのようなシステムでは、送電機はまず、複数の異なる平衡検出コイルセットのオフセットを低減するか、または好ましくは除去するように補償システムを較正し得る。
【0238】
送電機はまず、較正のための初期パラメータを設定し得る。ドライバ201は、第2のより高い動作/駆動周波数を有する駆動信号を、例えば対称方形波として生成してもよい。この第2のより高い動作周波数は、測定トランス211、Ls1、および共振コンデンサC1のインダクタンスによって与えられる共振周波数に設定されてもよい。一部の実施形態では、適切な値は例えば48kHzであり得る。電圧振幅は例えば48Vなどの定電圧に設定されてもよい。
【0239】
次に、補償回路1103は、以下の手法を使用して、第1の平衡検出コイル(コイルL1、L2)のセットに適した補償信号を決定し得る。
【0240】
補償回路1103はまず、「チャネル選択」ポートを介して第1の検出コイルペアL1-L2を選択し得る。
【0241】
図18に示されるように、補償回路1103は「位相補償」および「振幅補償」信号を乗算器1701に送り得る。
【0242】
最初、「位相補償」信号は「位相基準」信号と同位相であり、「振幅補償」は比較的低いレベルに調整される。
【0243】
その後、補償回路1103は、360度の全範囲にわたる小さな刻みで「位相補償」信号の遅延を増加させ得る。オフセット電圧Ufod’が最小となる遅延値が補償回路1103に保存される。
【0244】
補償回路1103はこの保存された遅延値を使用し、信号「振幅補償」の振幅を小さな刻みで増加させる。そして、オフセット電圧が最小になる値が保存される。
【0245】
最適な遅延値および振幅値を見つける時間を短縮するために、ステップ4および5は逐次近似法を利用してもよい。
【0246】
保存された位相/遅延値および振幅値は、オフセット電圧Ufod’が最小となる設定、したがって、平衡検出コイル間の不均衡が最大限に補償される設定を反映する。次に、すべての平衡検出コイルセットについてこのプロセスが繰り返され得る。
【0247】
補償回路1103はマルチプレクサを次の平衡検出コイルセット(L3、L4)に切り替え、このプロセスを繰り返して、この平衡検出コイルセットの補償値を特定し得る。
【0248】
図19は乗算器1701の実施形態の例を示す。この例は、低電力ハーフブリッジインバータを中心に構築されたスイッチング乗算器を示す。低電力MOSFET Q1およびQ2は、
図18に示される対称駆動信号「位相補償」を使用して交替モードで駆動される。乗算器1701の瞬時出力電圧Ucomp(t)は次のように与えられる。
Ucomp(t)=Phase comp(t)*Ampl.comp
【0249】
コンデンサCBuf1およびCBuf2を用いて、電圧Ufod(t)のDC成分が除去されることにより、補償トランス1101はAC電圧によって駆動される。
【0250】
他の実施形態では、補償信号の位相/遅延および/または振幅を適合させるための他の手法が使用され得ることが理解されよう。
【0251】
(異物が存在しないことがわかっているときに実行される)初期較正の後、異物検出時間間隔中に異物検出が実行され得る。
【0252】
具体例として、異物検出器205は、3チャネルマルチプレクサを使用して3つの平衡検出コイルセットを順次スキャンすることができる。
図20には、上記のようなMOSFETを使用した可能な実装の例が示されている。スキャンは単一の異物検出時間間隔内で実行されてもよいし、または複数の異物検出時間間隔にわたって分割されてもよい。
【0253】
共振回路に起因して、信号Ufodは正弦波であり、アンプ1703によって増幅され、増幅された信号Ufod’を生成する。この信号は位相検出器1705および比較器1707に供給される。
図17では別々に示されているが、これらの機能は通常、補償回路1103の一部であると考えられることが理解されよう。
【0254】
位相検出器1705が、所定の値よりも高い、信号Ufod’と「位相基準」との間の位相差を検出した場合、異物が検出されたと判断され、補償回路1103は、例えばドライバ201をオフ状態に切り替えて電力伝送を終了することができる。
【0255】
信号Ufod’の振幅が所定の値「振幅基準」よりも高くなった場合、比較器1707は補償回路1103に制御信号を送る。この場合、異物が再び検出されたと判断され、補償回路1103はドライバ201をオフ状態に切り替えて電力伝送を終了することができる。
【0256】
明瞭さのために、上記の説明は、異なる機能的回路、ユニット、およびプロセッサに関連して本発明の実施形態を説明している。しかしながら、本発明を損なうことなく、異なる機能的回路、ユニット、またはプロセッサ間で、機能が適切に分配され得ることが理解されよう。例えば、複数の別々のプロセッサまたはコントローラによって実行されるように説明された機能が、同じプロセッサまたはコントローラによって実行されてもよい。したがって、特定の機能的ユニットまたは回路への言及は、厳密な論理的または物理的な構造または構成を示すものではなく、説明される機能を提供するための適切な手段への言及であると考えられたい。
【0257】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせを含む任意の適切な形態で実施することができる。本発明は、1つまたは複数のデータプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサ上で動作するコンピュータソフトウェアとして少なくとも部分的に実装されてもよい。本発明の実施形態の要素および構成要素は、任意の適切な態様で物理的、機能的、および論理的に実装され得る。実際には、機能は、単一のユニット、複数のユニット、または他の機能ユニットの一部として実装されてもよい。したがって、本発明は、単一のユニット内に実装されてもよく、または異なる複数のユニット、回路、およびプロセッサの間で物理的および機能的に分配されてもよい。
【0258】
いくつかの実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は明細書に記載される具体的形態に限定されない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、ある特徴が特定の実施形態に関連して記載されているように見えたとしても、当業者は、上記実施形態の様々な特徴が本発明に従って組み合わせられ得ることを認識するであろう。請求項において、備える、含む等の用語は他の要素またはステップの存在を排除するものではない。
【0259】
好ましい値への言及は、異物検出初期設定モードで決定された値であるということを超える制限を示唆するものではなく、すなわち、適合プロセスで決定されるという理由で好ましいことが理解されよう。好ましい値への言及は、例えば第1の値への言及の代わりとなり得る。
【0260】
さらに、個別に列挙されていたとしても、複数の手段、要素、回路、または方法ステップは、例えば、単一の回路、ユニット、またはプロセッサによって実施されてもよい。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれていたとしても、これらは好適に組み合わされ、異なる請求項に含まれていることは、特徴の組み合わせが実現不可能であるおよび/または有利でないことを意味するものではない。また、1つのクレームカテゴリー内にある特徴が含まれているからといって、特徴がこのカテゴリーに限定されるとは限らず、特徴は適宜、他のクレームカテゴリーに等しく適用され得る。1つの独立請求項の従属請求項内にある特徴が含まれているからといって、この独立請求項への限定が示唆されているわけではなく、特徴は他の独立請求項にも適宜適用可能である。さらに、請求項における特徴の順序は、特徴が作用すべき特定の順序を指すものではなく、特に、方法クレームにおける個々のステップの順序はステップをその順序で実行しなければならないことを意味しない。ステップは任意の適切な順序で実行され得る。また、単数形の表現は複数形を排除するものではない。したがって、単数形の表現は複数を排除するものではない。特許請求の範囲内の参照符号は明瞭さのための例に過ぎず、請求項の範囲を如何ようにも限定するものではない。