(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】癌および感染症を治療するためのPD-L1阻害剤および免疫調節剤としての大環状ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/54 20060101AFI20240906BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240906BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240906BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
C07K7/54
A61K38/10
A61P35/00
A61P37/04
C07K7/08
(21)【出願番号】P 2022541692
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2020061172
(87)【国際公開番号】W WO2021141682
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-09-22
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】スコラ,ポール マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョンシン
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519062(JP,A)
【文献】特表2017-536330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
C07K 1/00-19/00
DB等
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
R
xおよびR
yは、独立して、H、(C=O)(C=O)OR
1、(C=O)(C=O)NR
2R
3または(C=O)(C=O)R
4であるが、但し、R
xおよびR
yの少なくとも1つはHではない;
R
1は、H、C
1-C
3アルキルまたはアリールであり、該アリール基は0~4個のR
1aで置換されており;
R
1aは、H、ハロゲンまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
2は、HまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
3は、H、C
1-C
3アルキル、アリール、あるいは-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を含む単環式ヘテロシクリル基であり、0~4個のR
3aで置換されており;
R
3aは、H、ハロゲンまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
4は、Hであるか、あるいは0~2個のR
4aで置換された単環式ヘテロシクリル基(これは、-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を有する)であるか;あるいは、0~2個のR
4aで置換された二環式ヘテロシクリル基(これは、-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を有する)であり;
R
4aは、Hであるか、またはC
1-C
3アルキルであり;および
R
9は、Hであるか、またはC
1-C
3アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
R
xが、Hである、請求項1記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
R
yが、Hである、請求項1記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
R
9が、Hまたは-CH
3である、請求項1記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、免疫応答を増強、刺激および/または増加させるための、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、癌細胞の成長、増殖または転移を阻害するための、医薬組成物。
【請求項8】
癌が、黒色腫、腎細胞癌、扁平非小細胞性肺癌(NSCLC)、非扁平NSCLC、結腸直腸癌、去勢抵抗性前立腺癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、膵臓癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、食道癌、消化管癌、乳癌および造血器悪性腫瘍から選択される、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、感染症を治療するための、医薬組成物。
【請求項10】
感染症がウイルスを原因とする、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、敗血症ショックを治療するための、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、PD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断するための、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2020年1月6日に提出した米国仮出願番号第62/957,373に対する優先権を主張するものであって、その全てを参照により本明細書に組み込むものである。
【0002】
本発明は、PD-L1に結合して、PD-L1と、PD-1およびCD80の相互作用を阻害することができる大環状化合物を提供する。これらの大環状化合物は、インビトロの免疫調節効果を示すため、癌および感染症を含む種々の疾患を治療するための治療候補物質となる。
【背景技術】
【0003】
タンパク質プログラム細胞死1(PD-1)は、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAも含めた受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーである。PD-1は、活性化B細胞、T細胞および骨髄球性細胞上に発現される。
【0004】
PD-1タンパク質は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55kDa I型膜貫通型タンパク質である。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)および膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含む。PD-1は、CTLA-4と構造は類似するが、CD80 CD86(B7-2)結合に重要なMYPPYモチーフを欠く。PD-1に対する2個のリガンドであるPD-L1(B7-H1)およびPD-L2(b7-DC)が同定されている。PD-1を発現するT細胞の活性化は、PD-L1またはPD-L2を発現する細胞との相互作用により下方制御されることが示されている。PD-L1およびPD-L2のいずれも、PD-1に結合するB7タンパク質ファミリーメンバーであるが、他のCD28ファミリーメンバーとは結合しない。PD-L1リガンドは、多様なヒトの癌で豊富である。PD-1とPD-L1の相互作用は、腫瘍浸潤性リンパ球の減少、T細胞受容体仲介増殖の減少および癌細胞による免疫回避の減少をもたらす。免疫抑制は、PD-1とPD-L1の局所相互作用の阻害により逆転でき、PD-1とPD-L2の相互作用が同様に遮断されたとき、この効果は相加的である。
【0005】
PD-L1はまたCD80と相互作用することが示されている。発現する免疫細胞上でのPD-L1/CD80相互作用は、阻害的であることが示されている。この相互作用の阻止は、この阻害相互作用を抑止することが示されている。
【0006】
PD-1発現T細胞が、そのリガンドを発現する細胞と接触したとき、増殖、サイトカイン分泌および細胞毒性を含む抗原性刺激に対する応答における機能活性が減少する。PD-1/PD-L1またはPD-L2相互作用は、感染または腫瘍の回復期または自己の発達期の免疫応答を下方制御する。腫瘍疾患または慢性感染の間に起こるような慢性抗原刺激は、高レベルのPD-1を発現し、慢性抗原に対する活性に関して機能障害性のT細胞を生じる。これは、“T細胞疲弊”と呼ばれる。B細胞もPD-1/PD-リガンド抑制および“疲弊(exhaustion)”を示す。
【0007】
PD-L1に対する抗体を使用したPD-1/PD-L1結合の遮断は、多くの系におけるT細胞活性化を回復させ、増強させることが示されている。進行型癌を有する患者は、PD-L1に対するモノクローナル抗体での処置により利益を受ける。腫瘍および慢性感染の前臨床的動物モデルは、モノクローナル抗体によるPD-1/PD-L1経路の遮断が免疫応答を増強し、腫瘍拒絶または感染の抑制をもたらし得ることを示している。PD-1/PD-L1の遮断による抗腫瘍免疫治療は、多くの組織学的に異なる腫瘍に対する治療的免疫応答を増強できる。
【0008】
PD-1/PD-L1相互作用の妨害は、慢性感染を有する系におけるT細胞活性を増強できる。PD-L1の遮断は、慢性リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス感染マウスにおけるウイルスクリアランスの改善および免疫回復をもたらす。HIV-1に感染したヒト化マウスは、ウイルス血症に対する保護の増強およびCD4+T細胞のウイルス枯渇を示す。PD-L1に対するモノクローナル抗体によるPD-1/PD-L1の遮断は、HIV患者由来のT細胞に対するインビトロ抗原特異的機能性を回復できる。
【0009】
PD-L1/CD80相互作用の遮断は、免疫を刺激することが示されている。PD-L1/CD80相互作用の遮断により生じる免疫刺激は、さらなるPD-1/PD-L1またはPD-1/PD-L2相互作用の遮断との組み合わせにより増強することが示されている。
【0010】
免疫細胞表現型の変更は、敗血症性ショックにおける重要な因子であるとの仮説がある。これらは、PD-1およびPD-L1のレベル増加を含む。PD-1およびPD-L1レベルが上昇した敗血症性ショック患者からの細胞は、T細胞アポトーシスのレベル増加を示す。PD-L1に対する抗体は、免疫細胞アポトーシスのレベルを低減できる。さらに、PD-1発現を欠くマウスは、野生型マウスよりも敗血症性ショック症状に対して抵抗性である。抗体を使用したPD-L1の相互作用の遮断が、不適切な免疫応答を抑制できること、および疾患徴候を回復できることが研究により示されている。
【0011】
慢性抗原に対する増強した免疫学的応答に加えて、PD-1/PD-L1経路の遮断は、慢性感染の状況における治療的ワクチン接種を含むワクチン接種に対する応答の増強も示す。
【0012】
PD-1経路は、慢性感染性疾患および腫瘍疾患の間に慢性的な抗原刺激から生じるT細胞疲弊に重要な阻害剤分子である。PD-L1タンパク質の標的化によるPD-1/PD-L1相互作用の遮断は、インビトロおよびインビボでの抗原-特異的T細胞免疫機能を修復すること(例えば、腫瘍または慢性感染発症における予防接種に対する応答増強)が判っている。そのため、PD-L1と、PD-1またはCD80いずれかの相互作用を遮断する薬剤が望まれている。
【発明の概要】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、PD-1/PD-L1およびCD80/PD-L1タンパク質/タンパク質相互作用を阻害するため、それゆえに、癌および感染症を含む種々の疾患の改善に有用である新規大環状化合物を提供する。
【0014】
第一局面においては、本発明は、式(I):
【化1】
[式中、
R
xおよびR
yは、独立して、H、(C=O)(C=O)OR
1、(C=O)(C=O)NR
2R
3または(C=O)(C=O)R
4であるが、但し、R
xおよびR
yの少なくとも1つは、Hではない;
R
1は、H、C
1-C
3アルキルまたはアリールであり、該アリール基は、0~4つのR
1aで置換されており;
R
1aは、H、ハロゲンまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
2は、HまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
3は、H、C
1-C
3アルキル、アリール、あるいは-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を有する単環式ヘテロシクリル基であり、0~4個のR
3aで置換されており;
R
3aは、H、ハロゲンまたはC
1-C
3アルキルであり;
R
4は、H、0~2個のR
4aで置換された単環式ヘテロシクリル基(これは、-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を有する)、または0~2個のR
4aで置換された二環式ヘテロシクリル基(これは、-O-、-N-または-S-から選択される1以上のヘテロ原子を有する)であり;
R
4aは、HまたはC
1-C
3アルキルであり;および
R
9は、HまたはC
1-C
3アルキルである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
本発明の第一局面の第一実施形態は、RxがHである、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0016】
本発明の第一局面の第二実施形態は、RyがHである、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0017】
本発明の第一局面の第三実施形態は、R9が、Hまたは-CH3である、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、第一実施形態の範囲内の実施例化合物から選択される化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異性体または立体異性体を提供するものである。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、第一実施形態の範囲内の化合物の任意のサブセットリストから選択される化合物を提供するものである。
【0020】
第二局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、その必要のある対象において免疫応答を増強、刺激および/または上昇させる方法を提供する。
【0021】
第三局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を遮断する方法を提供するものである。
【0022】
第四局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、その必要のある対象において免疫応答を増強、刺激および/または上昇させる方法を提供する。第二局面の第一実施形態において、本方法は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する前、後または同時に別の薬剤をさらに投与することを特徴とする。第二実施形態において、別の薬剤は、殺菌剤、抗ウイルス剤、細胞毒性剤、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、HDAC阻害剤および免疫応答修飾剤から選択される。
【0023】
第五局面において、本発明は、対象において癌細胞の成長、増殖または転移を阻害する方法を提供するものであり、前記方法は、医薬的に許容される量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を、その必要のある対象に投与することを特徴とする。第三局面の第一実施形態において、癌は、メラノーマ、腎臓細胞癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸癌、性腺摘除-耐性前立腺癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、膵臓癌、頭頸部の扁平上皮癌、食道癌、胃腸管癌および乳癌、ならびに造血器悪性腫瘍から選択される。
【0024】
第六局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、その必要のある対象において感染症を治療する方法を提供する。第四局面の第一実施形態において、感染症は、ウイルスを原因とする。第二実施形態において、ウイルスは、HIV、肝炎A、肝炎B、肝炎C、ヘルペスウイルスおよびインフルエンザから選択される。
【0025】
第七局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、その必要のある対象において敗血症ショックを治療する方法を提供する。
【0026】
第八局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80との相互作用を遮断する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0027】
別段の記載が無い限り、満たされない原子価を有するあらゆる原子は、原子価を満たすために十分な水素原子を有すると考えられる。
【0028】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別の場合を示さない限り、複数形も含む。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「または」は、論理的な選言(即ち、および/または)であり、用語「いずれか」、「限り」、「代わりに」および同様の効果を持つ言葉などで明示的に示されない限り、排他的な選言を示さない。
【0030】
本明細書にて使用されるような「アルキル」は、例えば、1~12個の炭素原子、1~6個の炭素原子および1~4個の炭素原子を含む分枝および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびi-プロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルなど)およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチルおよび4-メチルペンチルなどを挙げることができる。「C」の後に数字が付く場合、その下付き文字は、特定の基が含有する炭素原子数をより具体的に定義している。例えば、「C1-4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基を示す。
【0031】
本明細書で使用される用語「アリール」は、芳香環を含む分子から、その芳香環に結合している水素を1つ取り除くことによって得られる原子の一群を意味する。アリール基の代表例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アリール環は、無置換であってもよいし、原子価が許す限り1つ以上の置換基を含んでいてもよい。
【0032】
本明細書にて使用されるような用語「フルオロアルキル」を含む「ハロアルキル」なる語は、1以上のフッ素原子で置換された分岐および直鎖の飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むことが意図される。例えば、「C1-4フルオロアルキル」は、1つ以上のフッ素原子で置換されたC1、C2、C3およびC4アルキル基を含むことを意図している。フルオロアルキル基の代表例としては、CF3およびCH2CF3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本明細書にて使用されるような「ハロ」および「ハロゲン」なる語は、F、Cl、Br、またはIをいう。
【0034】
本明細書で使用する用語「単環式ヘテロシクリル基」は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む5員環、6員環または7員環を示す。5員環は、0~2個の二重結合を有し、6員環および7員環は、0~3個の二重結合を有する。本開示のヘテロシクリル基は、基中の任意の置換可能な原子を介して親分子部分に結合している。単環式ヘテロシクリル基の例としては、フリル、イミダゾリル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピロリル、チアゾリル、チエニルおよびチオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0035】
本明細書にて使用されるような「二環式ヘテロシクリル基」は、4~6員の芳香族または非芳香族炭素環または別の単環式ヘテロシクリル基と縮合された単環式ヘテロシクリル基をいう。本発明のヘテロシクリル基は、その基中の任意の置換可能な原子を介して親分子部分と結合される。二環式ヘテロシクリル基の例には、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、例えば、ベンゾ[b]チオフェニル、ベンゾチアジアゾリル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、インダゾリルおよびピロロピリジルを包含するが、これらに限定するものではない。
【0036】
本明細書にて使用されるような用語「またはその医薬的に許容される塩」は、少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの化合物の塩またはその組み合わせをいう。例えば、「式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩」には、式(I)の化合物、2つの式(I)の化合物、式(I)の医薬的に許容される塩、式(I)の化合物および1以上の式(I)の化合物の医薬的に許容される塩および2つ以上の式(I)の化合物の医薬的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0037】
本明細書にて使用されるような「有害事象」または「AE」とは、好ましくない、一般には意図しない、非常に望ましくない、医学的治療の実施に付随する兆候(実験室での異常な知見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、治療に応答して、免疫系が活性化すること、または免疫系細胞(例えば、T細胞)が増殖することと関連付けることができる。薬剤治療は、1または複数のAEを伴う可能性があり、AEは、各々、同じまたは異なるレベルの重篤度を有する場合がある。「有害事象を改変しうる」方法についての言及は、異なる治療レジメンを用いることに関連した1または複数のAEの発生率および/または重篤度を減少させる治療レジメンを意味する。
【0038】
本明細書にて使用されるような、「過剰増殖性疾患」は、細胞増殖が正常なレベルよりも高い症状をいう。例えば、過剰増殖性疾患または障害として、悪性疾患(例えば、食道がん、大腸がん、胆がん)および非悪性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、良性過形成、および良性前立腺肥大)が挙げられる。
【0039】
「免疫応答」なる語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および可溶性巨大分子の作用であって、侵入病原体、病原体に感染した細胞または組織、がん細胞、あるいは自己免疫性または病理学的炎症の場合には正常なヒト細胞または組織の、選択的損傷、破壊または人体からの除去をもたらす作用をいう。
【0040】
「プログラムされたデスリガンド1(Programmed Death Ligand 1)」、「プログラムされた細胞死リガンド1」、「PD-L1」、「PDL1」、「hPD-L1」、「hPD-LI」および「B7-H1」は互換的に使用され、ヒトPD-L1の変異体、アイソフォーム、種相同体、およびPD-L1と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。PD-L1の完全な配列は、GENBANK(登録商標)Accession No. NP_054862の下で知ることができる。
【0041】
「プログラムされたデス1」、「プログラムされた細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「hPD-1」および「hPD-I」は、互換的に用いられ、ヒトPD-1の変異体、アイソフォーム、種相同体、およびPD-1と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。PD-1の完全な配列は、GENBANK(登録商標)Accession No.NP U64863の下で知ることができる。
【0042】
「治療する」なる語は、疾患、障害または症状を阻害すること、すなわちその進行を阻むこと;および(iii)疾患、障害、または症状を緩和すること、すなわち、該疾患、障害および/または症状、ならびに/あるいは該疾患、障害および/または症状に付随する徴候を退行させることをいう。
【0043】
本開示は本化合物に存在する原子のあらゆる同位体を包含するものとする。同位体は原子番号が同じであるが、質量数の異なるそれらの原子を包含する。一般例であって、限定されるものではないが、水素の同位体は、重水素および三重水素を包含する。炭素の同位体は、13Cおよび14Cを包含する。本発明の同位体で標識された化合物は、一般に、当業者に公知の慣用的技法により、または別のやり方で利用される非標識の試薬の代わりに同位体で適切に標識された試薬を用い、本明細書に記載の方法と類似する方法により調製され得る。かかる化合物は、例えば、生物学的活性を測定する際の標準物質および試薬として、様々な用途に関する可能性を示す。同位体が安定している場合には、かかる化合物は、生物学的、薬理学的または薬物動態学的特性を改変することが望ましい場合もある。
【0044】
本明細書に記載の事項のさらなる態様は、本願化合物を、リガンド結合アッセイの開発のために、あるいはインビボにおける吸着、代謝作用、分布、受容体の結合または占有、または化合物の配置をモニタリングするために放射性標識されたリガンドとして用いることである。例えば、本明細書に記載の大環状化合物は、放射活性な同位体を用いて製造し、得られる放射性標識された化合物を用いて結合アッセイを開発してもよく、あるいは代謝作用の研究のために使用されてもよい。あるいはまた、同じ目的のために、本明細書に記載の大環状化合物は、当業者に公知の方法を用いて、触媒性トリチウム化により放射性標識された形態に変換されてもよい。
【0045】
本開示の大環状化合物はまた、当業者に知られた方法を用いて、放射性トレーサーを加えることによりPET造影剤としても使用され得る。
【0046】
当業者であれば、アミノ酸が一般構造式:
【化2】
[式中、RおよびR’は本明細書中に記載されるとおりである]
で示される化合物を包含することが分かる。別段の指示のない限り、本明細書にて単独で、または他の基の一部として用いられるような「アミノ酸」なる語は、限定されないが、「α」炭素と称される同じ炭素に連結する、アミノ基とカルボキシル基を含み、ここでRおよび/またはR’は、水素を含む、天然または非天然の側鎖とすることができる。「α」炭素での「S」絶対配置は、通常、「L」または「天然」配置と称される。「R」および「R’」の両方の(プライム)置換基が水素である場合には、該アミノ酸はグリシンであり、キラルではない。
【0047】
具体的に指定されない場合、本明細書に記載のアミノ酸は、D-またはL-立体配置であり得、本開示の別の部分で記載されるように置換され得る。立体配置が指定されていない場合、本開示は、PD-1とPD-L1および/またはCD80とPD-L1との間の相互作用を阻害する能力を有するすべての立体異性体形態、またはその混合物を包含すると理解されるべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販品として入手可能な出発物質から合成的に製造されるか、あるいはエナンチオマー生成物の混合物の製造に続いて、ジアステレオマーの混合物への変換のような分離を行い、その後分離もしくは再結晶、クロマトグラフ法、またはキラルクロマトグラフィーカラム上でのエナンチオマーの直接分離によって製造されうる。特定の立体化学の出発化合物は、市販品として入手可能か、または当該技術分野で公知の技術によって製造および分割されうる。
【0048】
本開示のある化合物はまた、分離可能で異なる安定なコンフォメーション型でも存在しうる。非対称単結合についての制限された回転、例えば立体障害または環ひずみが原因のねじれの非対称(Torsional asymmetry)によって、異なった配座異性体の分離が可能となりうる。本開示には、これらの化合物の各配座異性体およびその混合物が含まれる。
【0049】
本開示の特定の化合物は、分子のプロトンがその分子内の異なる原子にシフトする現象によって生成される化合物である互変異性体として存在し得る。「互変異性体」という用語はまた、平衡状態で存在し、1つの異性体とは別の異性体に容易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。本明細書に記載される化合物の全ての互変異性体は、本開示の範囲に含まれる。
【0050】
本開示の医薬としての化合物は、1または複数の医薬的に許容される塩を包含しうる。「医薬的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いずれの望ましく無い毒性効果も与えない塩をいう(例えば、Berge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., 66:1-19(1977)を参照のこと)。かかる塩は、本明細書に記載の化合物の最終的な単離および精製の間に製造されるか、あるいは別途、適切な窒素原子を適切な酸に反応させること、または化合物の酸性基と適切な塩基を反応させることによって製造されうる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等などの非毒性の無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換のアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族酸および芳香族スルホン酸等などの非毒性の有機酸から得られる塩が挙げられる。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等などのアルカリまたはアルカリ土類金属より、ならびにN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等より得られる塩を包含する。
【0051】
本明細書に記載の治療剤の投与は、限定されることなく、治療上有効な量の治療剤の投与を包含する。本明細書にて使用されるような「治療上有効な量」なる語は、限定するものではないが、本明細書に記載のPD-1/PD-L1結合阻害剤を含む組成物を投与することで治療できる症状を治療するための治療剤の量をいう。その量は検出できる治療または改善効果を示すのに十分な量である。その効果は、例えば、限定されるものではなく、本明細書に列挙した症状の治療または予防を包含しうる。対象に対する正確な有効量は、その対象の大きさおよび健康状態、治療される症状の特性および程度、治療する医師の助言、投与するのに選択される治療剤または治療剤の組み合わせに依存するであろう。そのため、正確な有効量を前もって特定することは有用ではない。
【0052】
もう一つ別の態様において、本開示は、本発明の大環状化合物を用いて対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法に関する。本明細書において実証されるように、本開示の化合物は、PD-L1と結合し、PD-L1とPD-1との相互作用に干渉し、PD-L1の、PD-1との相互作用を遮断することが分かっている抗PD-1モノクローナル抗体との結合と競合し、CMV特異性のT細胞IFNγ分泌を強化し、HIV特異的T細胞IFNg分泌を強化する能力を有する。結果として、本開示の化合物は、免疫応答を修飾し、がんまたは感染病などの疾患を治療し、保護的自己免疫応答を刺激するか、あるいは(例えば、PD-L1遮断化合物と目的とする抗原を共投与することにより)抗原特異的免疫応答を刺激するのに有用である。
【0053】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、組成物、例えば、本発明の範囲内において記載された化合物を1つ含むか、または医薬的に許容される担体と一緒に製剤される医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、治療と組み合わせて、すなわち、別の薬剤と組み合わせても投与され得る。例えば、組み合わせ治療とは、少なくとも1種の別の抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせた大環状化合物を含み得る。組み合わせ治療で使用できる治療剤の例は、本発明の大環状化合物の使用についての章にさらに詳述する。
【0054】
本明細書で使用する「医薬的に許容される担体」は、生理学的に適合性である任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ある実施態様において、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与に適する(例えば、注射または点滴による)。投与経路によって、活性な化合物を、化合物を不活性化することができる酸およびその他の自然条件の作用から化合物を保護するための物質でコーティングすることができる。
【0055】
本開示の医薬組成物はまた、医薬的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。医薬的に許容される抗酸化剤の例として:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等などの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等などの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四作酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等などの金属キレート化剤が挙げられる。
【0056】
本開示の医薬組成物は、当該分野にて既知の1または複数の種々の方法を用い、1または複数の投与経路を介して投与され得る。当業者にとって明らかであるように、投与経路および/または方法は、所望する結果に応じて変化するであろう。本開示の大環状化合物について好ましい投与経路は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路、例えば、注射または点滴による投与を包含する。本明細書にて使用されるような「非経口投与」なる語は、腸内および局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心内膜、皮内、腹腔内、経皮、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨下の注射および点滴を包含する。
【0057】
注入可能な滅菌溶液は、活性な化合物を必要とされる量で、必要とあれば、上記の1の成分またはその組み合わせと一緒に適切な溶媒に配合した後、精密濾過の滅菌処理に付すことにより調製され得る。一般に、分散液は、活性な化合物を、基剤となる分散媒体および上記したそれらの成分から必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことにより調製される。滅菌注入可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、その好ましい製造方法は、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)であり、それにより活性成分の粉末に、その前に滅菌濾過に付した溶液からのさらに所望の成分を付加して生成させる。
【0058】
本開示の医薬組成物に利用され得る適切な水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等など)、および適切なその混合液、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることにより、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することにより、および界面活性剤を用いることにより維持され得る。
【0059】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の存在の防止は、上記の滅菌操作に供すること、および種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を配合することの両方を行うことにより保証され得る。糖類、塩化ナトリウム等などの等張剤を組成物に含めることも望ましい。さらに、注入可能な製剤形態の長期にわたる吸収作用は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収作用を遅らせる物質を配合することによりもたらされてもよい。
【0060】
医薬的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散液、および注入可能な滅菌溶液または分散液をその場で調製するための滅菌粉末を包含する。そのような媒体および薬剤を医薬的に活性な物質に用いることは当該分野にて公知である。任意の従来の媒体または薬剤は、該活性な化合物と不適合である場合を除き、本開示の医薬組成物にそれらを用いることが考慮される。補助的な活性な化合物も該組成物に配合され得る。
【0061】
治療用組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性を保持し、かつ安定でなければならない。該組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬剤濃度に適する別の規則的な構造体として処方され得る。担体は、溶媒、または、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物を含有する分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を用いることで、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することで、および界面活性剤を用いることで維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物に配合することが好ましい。注入可能な組成物の長期にわたる吸収作用は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを配合することによりもたらされ得る。
【0062】
あるいは、本開示の化合物は、非経口経路、例えば、局所的、表皮または粘膜による投与経路、例えば、鼻腔内、経口的、経腟、腸内、舌下または局所的に投与される。
【0063】
本明細書で検討される医薬組成物はいずれも、例えば、許容され、かつ適切ないずれかの経口製剤を介して経口的に送達され得る。経口製剤の典型例として、以下に限らないが、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性および油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードおよびソフトカプセル、液体カプセル、シロップおよびエリキシルが挙げられる。経口投与用の医薬組成物は、経口投与用の医薬組成物を製造する分野で公知のいずれかの方法に従って製造され得る。医薬的に飲みやすい製剤を提供するために、本発明に記載の医薬組成物は、甘味剤、香料、着色剤、粘滑剤、抗酸化剤、および防腐剤から選択される少なくとも1つの物質を包含し得る。
【0064】
錠剤は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの無毒で医薬的に許容される錠剤の製造に適切な添加剤を混合することで製造され得る。典型的な添加剤には、以下に限らないが、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムおよびリン酸ナトリウム)、造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチおよびアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドンおよびアラビアガム)ならびに滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルク)が挙げられる。さらに、錠剤は、被膜されて無くてもよいか、または不快な薬物の嫌な味をマスキングするため、またはその消化管での活性成分の崩壊および吸収を遅延させ、より長期間にわたって活性成分の効果を持続させるために、公知の技術で被膜されていてもよい。水可溶性味マスキング材料の典型例として、以下に限らないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。時間遅延材料の典型例として、以下に限らないが、エチルセルロースおよび酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0065】
ハードゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよびカオリン)と混合することにより製造され得る。
【0066】
ソフトゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水可溶性担体(例えば、ポリエチレングリコール)、および少なくとも1つの油性媒体(例えば、ピーナツ油、液体パラフィンおよびオリーブ油)と混合することで製造され得る。
【0067】
水性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水性懸濁液の製造に適切な添加剤を混合することにより製造され得る。水性懸濁液の製造に適切な添加剤としては、以下に限らないが、例えば、懸濁化剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガム)、分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、およびエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。また、水性懸濁液は、少なくとも1つの防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの香料および/または少なくとも1つの甘味剤(以下に限らないが、例えば、スクロース、サッカリンおよびアスパルテーム)が挙げられる。
【0068】
油性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油およびココナッツ油)、または鉱油(例えば、液体パラフィン))のいずれかに懸濁することにより製造され得る。また、油性懸濁液は、少なくとも1つの増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンおよびセチルアルコール)を包含し得る。飲みやすい油性懸濁液を提供するために、少なくとも1つの既に上記に記載した甘味剤、および/または少なくとも1つの香料が油性懸濁液に添加され得る。油性懸濁液は、さらに少なくとも1つの防腐剤(以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシアニソールおよびα-トコフェロール))を包含し得る。
【0069】
分散性粉末および顆粒は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの分散剤および/または湿潤剤、少なくとも1つの懸濁化剤、および/または少なくとも1つの防腐剤を混合することにより製造され得る。適切な分散剤、湿潤剤および懸濁化剤は、既に上記に記載されている。防腐剤の典型例として以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)が挙げられる。さらに、分散性粉末および顆粒はまた、少なくとも1つの賦形剤(以下に限らないが、例えば、甘味剤、香料および着色剤)を包含し得る。
【0070】
式(I)の少なくとも1つの化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩のエマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンとして製造され得る。式(I)の化合物を含むエマルジョンの油相は、既知の方法で既知の成分から構成されてもよい。該油相は、以下に限らないが、例えば、植物油(例えば、オリーブ油および落花生油)、鉱油(例えば、液体パラフィン)、およびその混合物により提供され得る。油相は、乳化剤のみを包含するものであってもよいが、少なくとも1つの乳化剤と脂肪または油、または脂肪および油の両方の混合物を包含することができる。適切な乳化剤には、以下に限らないが、例えば、天然に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、および部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。ある実施態様において、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪の両方を包含することも好ましい。併せて、乳化剤は、安定化剤と共に、または安定化剤不含にていわゆる乳化ワックスを作り上げ、およびそのワックスは、油および脂肪と共にクリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を作り上げる。エマルジョンはまた、甘味剤、香料、防腐剤および/または抗酸化剤を包含し得る。本発明の製剤に使用するのに適切な乳化剤およびエマルジョン安定化剤には、単体またはワックスと共にTween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル;または当該分野に公知の他の物質が挙げられる。
【0071】
活性な化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤のような、急速な放出から化合物を保護する担体と製剤できる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤を製造するための多くの方法が、特許となっており、また一般に当業者に知られている。例えば、Robinson, J.R., ed., Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Marcel Dekker, Inc., New York(1978)を参照のこと。
【0072】
治療用組成物を、当分野で知られる医療機器で投与し得る。例えば、一態様において、本発明の治療用組成物を、無針皮下注射器、例えば、米国特許番号5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に開示されているデバイスで投与できる。本発明に有用な周知のインプラントおよびモジュールは、制御された速度で薬剤を送出するための埋め込み型の微量注入ポンプを開示する米国特許番号4,487,603;皮膚を介する薬物の投与のための治療的デバイスを開示する米国特許番号4,486,194;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許番号4,447,233;連続的に薬物を送達するための可変流速埋め込み型注入装置を開示する米国特許番号4,447,224;複数のチャンバー部分を有する浸透性薬剤送達系を開示する米国特許番号4,439,196;および浸透性薬剤送達系を開示する米国特許番号4,475,196を含む。これらの特許は、引用により本明細書に包含させる。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールは当業者に知られている。
【0073】
ある態様において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分布を確実にするために製剤できる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療的化合物は、BBBを通過することを確実にするために(必要であれば)、例えば、リポソームに製剤できる。リポソームの製造方法に関しては、例えば、米国特許番号4,522,811、5,374,548および5,399,331を参照のこと。リポソームは、特異的細胞または臓器へ選択的に輸送される1個以上の部分を含むことができ、それにより標的化薬剤送達を増強する(例えば、Ranade, V.V., J. Clin. Pharmacol., 29:685(1989)参照)。標的化部分の例は、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許番号5,416,016参照);マンノシド(Umezawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 153:1038(1988));大環状化合物(Bloeman, P.G. et al., FEBS Lett., 357:140(1995); Owais, M. et al., Antimicrob. Agents Chemother., 39:180(1995));界面活性剤タンパク質A受容体(Briscoe et al., Am. J. Physiol., 1233:134(1995));p120(Schreier et al., J. Biol. Chem., 269:9090(1994))を含み、Keinanen, K. et al., FEBS Lett., 346:123(1994); Killion, J.J. et al., Immunomethods 4:273(1994)も参照されたい。
【0074】
合成方法
化合物は、当技術分野では公知の方法によって、例えば以下に記載された方法または当技術分野の技術の範囲内の変法によって製造することができる。いくつかの試薬および中間体は、当技術分野では既知である。その他の試薬および中間体は、容易に入手可能な材料を用いて、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。化合物の合成を説明するために使用される変数(例えば、番号が付いた「R」置換基)は、化合物の製造方法を説明するためにのみ意図されており、請求項または明細書の別のセクションで使用される変数と混同しないようにされたい。以下の方法は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0075】
スキームで使用される略語は、一般に当該技術分野で使用される慣例に従う。本明細書および実施例で使用される化学的略語は、以下のように定義される:「THF」はテトラヒドロフラン;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミド;「MeOH」はメタノール;「EtOH」はエタノール;「n-PrOH」は1-プロピルアルコールまたはプロパン-1-オール;「i-PrOH」は2-プロピルアルコールまたはプロパン-2-オール;「Ar」はアリール;「TFA」はトリフルオロ酢酸;「DMSO」はジメチルスルホキシド;「EtOAc」は酢酸エチル;「Et2O」はジエチルエーテル;「DMAP」は4-ジメチルアミノピリジン;「DCE」は1,2-ジクロロエタン;「ACN」はアセトニトリル;「DME」は1,2-ジメトキシエタン;「h」は時間;「rt」は室温または保持時間(文脈によって決まる);「min」は分;「HOBt」は1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;「HCTU」は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートまたはN,N,N',N'-テトラメチル-O-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ユーロニウムヘキサフルオロホスフェート;「HATU」は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートまたはN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド;「DIEA」および「iPrNEt2」はジイソプロピルエチルアミン;「Et3N」はトリエチルアミン。
【0076】
略語は以下のように定義される:「1×」は1回、「2×」は2回、「3×」は3回、「℃」は摂氏度、「eq」は等価または同等、「g」はグラム、「mg」はミリグラム、「L」はリットル、「mL」はミリリットル、「μL」はマイクロリットル、「N」は規定度、「M」はモル、「mmol」はミリモル、「min」は分、「h」は時間、「rt」は室温、「RT」は保持時間、「atm」は大気、「psi」は平方インチあたりポンド、「conc.」は濃縮物、「sat」または「sat'd」は飽和物、「MW」は分子量、「mp」は融点、「ee」はエナンチオマー過剰、「MS」または「Mass Spec」は質量分析、「ESI」はエレクトロスプレーイオン化質量分析、「HR」は高分解能、「HRMS」は高分解能質量分析、「LC」は液体クロマトグラフィー、「LCMS」は液体クロマトグラフィー質量分析法、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィー、「RP HPLC」は逆相高速液体クロマトグラフィー、「TLC」または「tlc」は薄層クロマトグラフィー、「NMR」は核磁気共鳴分光法、「1H」はプロトン、「δ」はデルタ、「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「q」はカルテット、「m」はマルチプレット、「br」はブロード、「Hz」はヘルツ、「α」、「β」、「R」、「S」、「E」および「Z」は、当業者に周知の立体化学の呼称である。
【0077】
BMT-001'構造は、下記の通りである:
【化3】
。
【0078】
BMT-002'構造は、下記の通りである:
【化4】
。
【0079】
1001および1002の構造体の製造:
BMT-001またはBMT-002(1eq.)およびシュウ酸ジフェニル(2~20eq.)/THFの溶液を、室温で、0.5~48時間撹拌した。全ての溶媒を真空で除去した後、残留物を分取HPLCで精製して、化合物1001を得た。また、この粗製1001は、精製せずに次の反応に使用することができる。
【化5】
【化6】
【0080】
請求項1の構造体を製造するための一般方法:
【0081】
Et3NまたはiPr2NEt(1~200eq)を、酸(1~20eq)、HCTUまたはHATUまたはHOBt(1~20eq)の、DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDME溶液に添加した。混合物を、室温で24時間撹拌した後、BMT-001またはBMT-002(1eq.)を添加した。その後、反応混合物を、室温~100℃で、0.5~48時間撹拌した後、この反応をメタノールまたは水でクエンチした。全ての溶媒を真空で除去した後、残留物を、分取HPLCで精製し、請求項1の化合物を得た。
【0082】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0083】
3001、3002および3003の製造:
ステップ1:BMT-001(1eq.)およびシュウ酸ジフェニル(2~20eq.)/THFまたはジオキサン溶液を、室温で0.5~48時間撹拌した。
【0084】
ステップ2:(ジアゾメチル)トリメチルシラン(エーテル中で2M、1~20eq)をステップ1の溶液に加えた後、MeOHまたはEtOH(ステップ1で用いた溶媒の1/4~1/3容量)を加えた。反応溶液を、室温で、0.5~48時間攪拌した。全ての溶媒を真空下で除去した後、残留物を分取HPLCで精製して、請求項1の化合物を得た。
【0085】
【0086】
イン・サイチュウで生成した1001から4001の製造:
ステップ1:BMT-001(1eq.)およびシュウ酸ジフェニル(2~20eq.)/THFまたはジオキサン溶液を、室温で0.5~48時間撹拌し、イン・サイチュウで1001を形成させた。
【0087】
ステップ2:K2CO3(2~20eq.)および[1,1'-ビフェニル]-4-オール(2~20eq.)を、ステップ1の溶液に添加した。反応溶液を、85℃で24時間攪拌した。その後、NaH(2~20eq.)を添加し、得られた溶液を85℃でさらに24時間加熱した。全ての溶媒を真空で除去した後、残留物を分取HPLCで精製して、4001の化合物を得た。
【0088】
【0089】
3001から5001の製造:
水/MeOH中の3001(1eq.)溶液に、K2CO3(1~20eq.)を添加した。混合物を、室温で24時間攪拌した。全ての溶媒を真空で除去した後、残留物を分取HPLCで精製して、5001の化合物を得た。
【0090】
【0091】
生物学的アッセイ
式(I)の化合物のPD-L1への結合能力を、PD-1/PD-L1均質時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイを用いて調べた。
【0092】
均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイ
PD-1とPD-L1の相互作用は、2つのタンパク質の細胞外ドメインの可溶性の精製した調製物を用いて評価することができる。PD-1およびPD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、検出タグを含む融合タンパク質として発現され、このタグは、PD-1では、免疫グロブリン(PD-1-Ig)のFc部分であり、PD-L1では、6ヒスチジンモチーフ(PD-L1-His)であった。全ての結合試験を、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンおよび0.05%(v/v)Tween-20を加えたdPBSからなるHTRFアッセイ緩衝液を用いて行った。h/PD-L1-His結合アッセイの場合、アッセイ緩衝液(4μl)中でPD-L1-His(最終10nM)と一緒に15分間予めインキュベートし、その後PD-1-Ig(最終20nM)/アッセイ緩衝液(1μl)を加えて、さらに15分間インキュベートした。HTRF検出を、ユーロピウムクリプタート標識抗Ig(最終1nM)およびアロフィコシアニン(APC)標識抗His(最終20nM)を用いて達成した。抗体を、HTRF検出緩衝液に希釈し、結合混合物の上に5μl分注した。反応混合物を30分間平衡化させ、得られるシグナル(665nm/620nmの比)を、EnVision蛍光光度計を用いて得た。追加の結合アッセイが、ヒトタンパク質PD-1-Ig/PD-L2-His(各々20および5nM)およびCD80-His/PD-L1-Ig(各々100および10nM)の間で確立された。
【0093】
組換えタンパク質:C末端にヒトイムノグロブリンG(Ig)エピトープタグ[hPD-1(25~67)-3S-IG]を含むヒトPD-1(25~167)およびC末端にHisエピトープタグ[hPD-L1(18~239)-TVMV-His]を含むヒトPD-L1(18~239)を、HEK293T細胞にて発現させて、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーで連続的に精製した。ヒトPD-L2-HisおよびCD80-Hisは、市販品を購入して得た。
【0094】
表1は、PD-1/PD-L1均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイで測定された本発明の代表的な実施例のIC
50値を列挙したものである。
【表1】
【0095】
式(I)の化合物は、PD-1/PD-L1相互作用の阻害剤としての活性を有するので、PD-1/PD-L1相互作用に関連する疾患または欠損の治療に使用することができる。PD-1/PD-L1相互作用の阻害を介して、本開示の化合物は、HIV、敗血症ショック、肝炎A、B、CまたはDおよび癌などの感染症を治療するため用いることができる。
【0096】
本発明の詳細な説明は、要約および要旨の項目ではなく、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図していると理解されたい。要約および要旨の項目は、本願の発明者らによって意図された本開示に関する全ての例示的な実施形態を示すわけではなく、1以上の例示的な実施形態を示し得るものであるので、いずれにしても本開示および添付の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【0097】
本開示は、特定の機能とその関係性に関する実施を説明する機能的な構成要素を用いて説明されている。これらの機能的な構成要素の範囲は、説明のために便宜上本明細書で任意に定義されている。特定の機能およびその関係が適切に実行される限り、別の範囲を定義することができる。
【0098】
特定の実施形態の前述の説明により、本開示の一般的な性質が十分に理解されるので、当技術分野の通常の知識を用いることにより、当業者は過度の実験をせずに、本開示の一般的概念から逸脱することなく、かかる特定の実施形態を容易に改変および/または様々な用途に適合させることができる。従って、そのような適応および改変は、本明細書に提示された教示およびガイダンスに基づいて、開示された実施形態の意味および等価物の範囲内にあることが意図される。本明細書の用語または語句は、教示およびガイダンスに照らして当業者によって解釈されるような説明を目的とするものであり、限定することを目的とするものではないことが理解されるであろう。
【0099】
本開示の範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の請求項およびその等価物によってのみ定義されるべきものである。