(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】異常時対応教示システム、異常時対応教示方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
(21)【出願番号】P 2022561292
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2021031714
(87)【国際公開番号】W WO2022102211
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2020188660
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 克幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 裕史
(72)【発明者】
【氏名】小島 知之
(72)【発明者】
【氏名】関根 奏
(72)【発明者】
【氏名】藤村 大輝
(72)【発明者】
【氏名】安威 俊重
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 学
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-152912(JP,A)
【文献】特開平08-202444(JP,A)
【文献】特開2012-137934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の運転中に計測された運転パラメータを取得する運転パラメータ取得部と、
前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得する診断情報取得部と、
前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析する要因分析部と、
前記要因分析部が分析した前記要因に対する処置作業を指示する処置作業指示情報を出力する処置作業指示部と、
前記処置作業の完了の入力を受け付ける処置作業完了受付部と、
全ての前記処置作業が完了したときに、前記装置の再起動の準備が完了したことを通知する再起動準備完了通知部と、
を備える異常時対応教示システム。
【請求項2】
前記装置について実行された点検や工事の実績を示す点検工事情報を取得する点検工事情報取得部、
をさらに備え、
前記要因分析部は、前記運転パラメータと、前記診断情報と、前記点検工事情報とを、前記FTAに入力して、前記要因を分析する、
請求項1に記載の異常時対応教示システム。
【請求項3】
前記処置作業指示部が、
作業の安全を確保する隔離用弁の操作を指示する隔離弁指示情報と、
前記隔離用弁によって隔離された位置に存在する部品に対する作業手順および前記部品と前記部品の位置情報を指示する作業指示情報と、
前記装置の再起動条件を満たすための復旧用弁の操作を指示する復旧弁指示情報と、を出力する、
請求項1または請求項2に記載の異常時対応教示システム。
【請求項4】
装置の運転中に計測された運転パラメータを取得する運転パラメータ取得部と、
前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得する診断情報取得部と、
前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析する要因分析部と、
前記要因分析部が分析した前記要因に対する処置作業を指示する処置作業指示情報を出力する処置作業指示部と、
を備え
、
前記処置作業指示部が、
作業の安全を確保する隔離用弁の操作を指示する隔離弁指示情報と、
前記隔離用弁によって隔離された位置に存在する部品に対する作業手順および前記部品と前記部品の位置情報を指示する作業指示情報と、
前記装置の再起動条件を満たすための復旧用弁の操作を指示する復旧弁指示情報と、を出力する、
異常時対応教示システム。
【請求項5】
前記要因分析部による分析結果を、前記FTAのフォルトツリーとともに出力する分析結果出力部、
をさらに備える請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の異常時対応教示システム。
【請求項6】
装置の運転中に計測された運転パラメータを取得し、
前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、
前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析し、
前記要因に対応した処置作業を指示する処置作業指示情報を出力
し、
前記処置作業の完了の入力を受け付け、
全ての前記処置作業が完了したときに、前記装置の再起動の準備が完了したことを通知する、
異常時対応教示方法。
【請求項7】
コンピュータに、
装置の運転中に計測された運転パラメータを取得し、
前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、
前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析
し、
前記要因に対応した処置作業を指示する処置作業指示情報を出力し、
前記処置作業の完了の入力を受け付け、
全ての前記処置作業が完了したときに、前記装置の再起動の準備が完了したことを通知する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常時対応教示システム、異常時対応教示方法およびプログラムに関する。本開示は、2020年11月12日に、日本に出願された特願2020-188660号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントで異常が発生すると、監視員は、異常発生時にセンサによって計測された計測値と、フォルトツリーとを突き合わせて、異常の原因を推定する作業を行ってきた。特許文献1には、そのような状況でフォルトツリーの表示を好適に行う技術について開示されている。
【0003】
特許文献2には、プラントに設けられた複数のセンサから取得したデータに基づいて、プラントの異常を検知し、検知した異常と関連付けられた保守履歴情報を結びつけることにより、発生した異常に対して実施すべき診断、処置を明らかにし、サービス員への作業指示を行う異常診断システムが開示されている。この異常診断システムは、異常の診断結果とともに診断フローを示したFTAをサービス員へ提示する。サービス員は、異常診断システムによる診断結果をFTAと照らし合わせて診断作業を進めることによって、速やかに適切な対応策を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平03-213891号公報
【文献】特開2012-137934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサが計測したデータとFTAを突き合わせて異常の原因を推定する作業は、作業コストが高く、高精度に要因を推定する為には多大な時間を要する。すると、異常発生時の対処に遅れが生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決することのできる異常時対応教示システム、異常時対応教示方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、異常時対応教示システムは、装置の運転中に計測された運転パラメータを取得する運転パラメータ取得部と、前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得する診断情報取得部と、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析する要因分析部と、前記要因分析部が分析した前記要因に対する処置作業を指示する処置作業指示情報を出力する処置作業指示部と、前記処置作業の完了の入力を受け付ける処置作業完了受付部と、全ての前記処置作業が完了したときに、再起動の準備が完了したことを通知する再起動準備完了通知部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によれば、異常時対応教示方法は、装置の運転中に計測された運転パラメータを取得し、前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析し、前記要因に対応した処置作業を指示する処置作業指示情報を出力し、さらに、前記処置作業の完了の入力を受け付け、全ての前記処置作業が完了したときに、前記装置の再起動の準備が完了したことを通知する。
【0010】
本開示の一態様によれば、プログラムは、コンピュータに、装置の運転中に計測された運転パラメータを取得し、前記装置の起動前に診断システムにより実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析し、前記要因に対応した処置作業を指示する処置作業指示情報を出力し、さらに、前記処置作業の完了の入力を受け付け、全ての前記処置作業が完了したときに、前記装置の再起動の準備が完了したことを通知する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記した異常時対応教示システム、異常要因推定方法、異常時対応教示方法およびプログラムによれば、プラント等で異常が発生したときに、その異常の要因を高精度且つ短時間に推定することができる。本開示の異常時対応教示方法によれば、プラント等で異常が発生したときに、その異常への対処方法を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る異常時対応教示システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るフォルトツリーの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るフォルトツリーの判断条件の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るフォルトツリーに基づく分析結果の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る処置作業指示情報の通知例を示す図である。
【
図6A】実施形態に係る処置作業指示情報の一例について説明する第1の図である。
【
図6B】実施形態に係る処置作業指示情報の一例について説明する第1の図である。
【
図7】実施形態に係る異常時対応教示システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る異常時対応教示システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、実施形態に係る異常時対応教示システムについて、
図1~
図8を参照しながら詳しく説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る異常時対応教示システムの一例を示すブロック図である。
復旧管理システム1は、異常時対応教示システム10と、プラント20と、診断システム30と、端末装置40とを含む。異常時対応教示システム10は、プラント20と、診断システム30と、端末装置40と、通信可能に接続されている。
プラント20は、復旧管理対象のプラントである。プラント20には、多数のセンサ21が設けられている。プラント20は、制御装置22を備えている。センサ21は、計測した計測値(運転パラメータ)を異常時対応教示システム10へ出力する。制御装置22は、センサ21が計測した運転パラメータを取得し、プラント20の運転状態を判断し、その判断結果を異常時対応教示システム10へ出力する。例えば、制御装置22は、運転パラメータが閾値を超過すると警報信号を出力し、さらに、プラントを停止しなければならない値となるとトリップ信号を出力する。
【0014】
診断システム30は、プラント20の起動前に、プラント20が備える機器の動作確認を行い、その結果を診断情報として異常時対応教示システム10へ出力する。例えば、診断システム30は、プラント20が備える弁に対し、弁の開度を閉から開、開から閉へと、開度をステップ状に変化させる指示信号を出力し、その指示信号に対する弁の動作結果を診断する。例えば、弁には、開度を検知できるセンサが取り付けられており、診断システム30は、センサが検知した開度を取得する。例えば、弁の動作が全く正常な場合、診断システム30は、弁の動作は「正常」であると診断し、正常を示す値を異常時対応教示システム10へ出力する。弁の動作は異常では無いが、問題が無いといえない場合(例えば、開度指令に対する開動作に遅れが生じる等)、診断システム30は、弁の動作は、「ほぼ正常」であると診断し、ほぼ正常であることを示す値を異常時対応教示システム10へ出力する。例えば、弁の動作が異常な場合、診断システム30は、弁の動作は、「異常」であると診断し、異常であることを示す値を異常時対応教示システム10へ出力する。
【0015】
異常時対応教示システム10は、プラント20が警報信号やトリップ信号を出力したときに、運転パラメータ、診断システム30による診断情報などに基づいて、トリップ信号等の原因となった異常要因を推定し、その異常要因への処置作業を教示する。異常時対応教示システム10は、運転データ取得部11と、診断情報取得部12と、点検工事情報取得部13と、要因分析部14と、分析結果出力部15と、処置作業指示部16と、処置作業完了受付部17と、再起動準備完了通知部18と、記憶部19と、を備える。
【0016】
運転データ取得部11は、プラント20が出力した最新の運転データを取得する。運転データは、センサ21が計測した運転パラメータ、制御装置22が出力した警報信号、トリップ信号を含む。警報信号やトリップ信号は、異常要因を推定し処置作業を教示する処理のトリガとなる。運転パラメータは、異常要因を判断するために用いられる。
【0017】
診断情報取得部12は、プラント20の起動前に診断システム30が実施した動作診断の診断結果(診断情報)を取得する。診断システム30によって動作が「異常」と診断されれば、その異常に対処してからプラント20は起動される。診断システム30によって「正常」又は「ほぼ正常」と診断された場合には、プラント20は起動され、その後、プラント20が異常により停止すると、診断システム30による診断結果が、異常要因の推定に活用される。例えば、診断システム30によって「正常」と診断された場合、異常要因の推定において、「正常」と診断された機器の動作に関する項目を異常要因の候補から除くことができる。診断システム30によって「ほぼ正常」と診断された場合、異常要因の推定において、「ほぼ正常」と診断された機器に関する項目を、異常要因の可能性が高い候補からは除き、可能性は低いが異常要因である可能性を完全に否定しきれない対象として扱うことができる。
【0018】
点検工事情報取得部13は、プラント20に対して行われた点検、工事の有無やその直後の動作確認結果などを含む点検工事情報を取得する。例えば、定期点検において、プラント20が備える機器や部品を分解したり、運転中は閉じておく弁を開いたりしたとする。定期点検が終わって、分解した機器を組み立てて元に戻すときに作業ミスがあったり、定期点検後に弁を元の状態に戻し忘れたりすると、そのことが、定期点検後のプラント20の運転において、トリップ等の要因となる可能性がある。このように、機器の分解等を伴う点検や工事は、異常の原因となり得る。点検工事情報取得部13は、異常要因の推定にあたり、点検や工事が影響した可能性を判断するため、プラント20の起動前における点検や工事の有無を示す点検工事情報を取得する。
【0019】
要因分析部14は、プラント20から警報信号やトリップ信号を取得すると、センサ21が計測した運転パラメータと、診断システム30が出力した診断情報と、点検工事情報と、をFTA(Fault Tree Analysis)に入力し、警報信号やトリップ信号の元となったプラント20の異常要因を分析する。FTAに入力するとは、FTAで用いるフォルトツリーの各分岐や各要素に設定された判断条件に、運転パラメータ、診断情報、点検工事情報を当てはめてその判断条件を満たすか否かの判断を行うことをいう。例えば、要因分析部14は、センサデータ等をFTAに入力し、ツリーの頂上から判断条件を確認しながら順に辿っていくことによって異常要因を推定する。
【0020】
分析結果出力部15は、要因分析部14が推定した異常要因を出力する。
処置作業指示部16は、要因分析部14が推定した異常要因への処置作業を特定し、処置作業の実施を指示する処置作業指示を端末装置40へ送信する。処置作業とは、プラント20の異常要因を取り除き、プラント20を再起動可能にするため作業である。
【0021】
処置作業完了受付部17は、処置作業の完了を示す情報を取得する。例えば、作業員は、指示された処置作業が完了すると、端末装置40へ処置作業の完了を入力する。端末装置40は、処置作業の完了が入力されると、処置作業の完了を異常時対応教示システム10へ通知し、処置作業完了受付部17がこの通知を取得する。
再起動準備完了通知部18は、プラント20が再起動可能となったことを、端末装置40やプラント20の運転員が運転監視を行っている制御室へ通知する。再起動準備完了通知部18は、全ての処置作業が完了すると、プラント20が再起動可能となったと判断する。
記憶部19は、運転データ取得部11が取得した運転データ、診断情報取得部12が取得した診断情報、点検工事情報取得部13が取得した点検工事情報、警報信号やトリップ信号の原因となった事象ごとのフォルトツリー、異常要因と対応付けられた処置作業の情報などを記憶する。
【0022】
端末装置40は、例えば、プラント20の運転員が所持する携帯端末である。端末装置40は、異常時対応教示システム10から通知された処置作業を表示する。運転員は、端末装置40に表示された情報に基づいて作業を行い、プラント20の異常に対処する。処置作業が完了すると、端末装置40に処置作業の完了を入力する。
【0023】
次に
図2~
図3を用いて異常要因の推定方法について説明する。
図2にフォルトツリーの一例を示す。
図2は、ガスタービンのトリップを引き起こす種々の事象のうち燃焼器の失火によるトリップについて、その要因を分析した結果得られるフォルトツリーの一部を示したものである。例えば、燃焼器の失火は、燃空比不良や火炎伝播不良(要素1)などによって発生する。例えば、燃空比不良は、着火燃料の流量不適性や着火時の空気流量の不適性が原因で発生する(要素2)。例えば、着火燃料の流量不適性は、燃料流量を調節する流調弁の不良、燃料ガス系統の不良などによって発生する(要素3)。例えば、流調弁の不良は、流調弁の動作不良や定検時に操作した弁の復旧作業の誤りなどによって発生する(要素4)。
図2の例では、フォルトツリーを辿って、要素4のレベルまで事象を分析できると、燃焼器の失火によるトリップの原因を特定できたことになる。要因分析部14は、運転パラメータ、診断情報、点検工事情報を用いて、これらのデータによって特定される要素4を探索する。記憶部19には、フォルトツリーと共に、ツリー上の各分岐の判断に用いる判断条件が設定されていて、要因分析部14は、この判断条件に基づいて、異常要因を分析する。
【0024】
図3に要素4を特定するための判断条件の一例を示す。表中、〇が付された項目は、異常要因を特定する判断に用いられる項目であることを示す。例えば、弁動作不良の場合、流調弁に対する診断情報と、着火時の流調弁に対する開度指令と開度指令に対する運転パラメータ1(例えば、流調弁の下流で燃料流量を計測する流量センサや、燃料圧力を計測する圧力センサなどの計測値)が示す応答の差によって異常の有無を判断する。例えば、診断情報が「ほぼ正常」で、流調弁に対する開度指令と応答の差が所定値以上であれば、要因分析部14は、異常要因は、弁動作不良の可能性が高い(〇)と判断する。又は、流調弁に対する開度指令と応答の差が正常であっても診断情報が「ほぼ正常」であれば、要因分析部14は、弁動作不良の可能性を排除できない(△)と判断する。診断情報が「正常」で、流調弁に対する開度指令と応答の差が所定値以内であれば、要因分析部14は、異常要因が弁動作不良である可能性は低い(×)と判断する。
【0025】
例えば、定期点検時の弁復旧間違いの場合、点検工事情報と、燃料系統の弁に対する診断情報とに基づいて、異常の有無を判断する。例えば、診断情報が「正常」で、点検工事情報が「無し」の場合、要因分析部14は、異常要因が、定期点検時の弁復旧間違いである可能性は低い(×)と判断する。例えば、診断情報が「正常」、点検工事情報が「有り」の場合、弁動作不良の可能性が高い(〇)などと判断する。
【0026】
同様に、燃料ガス置換不良の場合、要因分析部14は、点検工事情報に基づいて、燃料ガス置換不良が燃焼器失火トリップの要因である可能性を判断する。IGV(Inlet Guide Vane)動作不良の場合、要因分析部14は、運転パラメータ2に基づいて、IGV動作不良が燃焼器失火トリップの要因である可能性を判断する。
図3には、要素4の判断条件の一例を示したが、記憶部19には、要素1~3に関する判断条件が設定されていてもよい。
【0027】
一般に異常発生時の運転パラメータをフォルトツリーに照らし合わせて、監視員が手動で、フォルトツリーの各要素の消し込みを行い、異常要因を推定する作業が行われている。これに対し、本実施形態では、予め定められた各要素の判断条件と運転パラメータ等に基づいて、要因分析部14が、自動的に各要素が異常要因である可能性を判断する。これにより、要因推定の作業コスト、異常要因の推定に要する時間を低減することができる。本実施形態では、運転パラメータに加えて、診断情報と点検工事情報を用いた判断を行う。これにより、運転パラメータでは判断できない異常要因についてもその可能性を推定することができる(例えば、
図3の「定検時の弁復旧間違い」、「燃料ガス置換不良」)。例えば、
図3の「弁動作不良」の場合のように運転パラメータによって判断することが可能であっても、診断情報を併せて用いることによって、より細やかな判断を行うことができる。このように本実施形態によれば、異常要因の推定精度を向上することができる。
【0028】
次に
図4~
図5を用いて異常要因の分析結果の表示例および異常要因に対する処置作業を指示する処理について説明する。
図4に要因分析部14が、運転パラメータと、診断情報と、点検工事情報と、各要素の判断条件と、に基づいてフォルトツリーの消し込みを行った結果を示す。異常要因の可能性が高いと判断された要因には〇が付され、異常要因の可能性があると判断された要因には△が付され、異常要因の可能性が低いと判断された要因には×が付されている。記憶部19には、フォルトツリーに定義された異常要因を示す各要素と対応付けて、適切な処置作業が予め登録されている。例えば、分析結果出力部15は、
図4に例示するようにフォルトツリーと、要因分析部14による異常要因の分析結果と、処置作業とを対応付けて一覧表示した画像を表示装置等に出力してもよい。分析結果出力部15は、最も可能性が高いと考えられる異常要因(
図4の例では、燃料ガス置換不良)を最も目立つ態様で表示し、可能性があると判断された異常要因(
図4の例では、弁動作不良、燃焼筒異常)を、可能性が高いと考えられる異常要因とは異なる態様で表示し、可能性が低いと判断された異常要因をグレーアウトする等、可能性の大小に応じた表示を行ってもよい。これにより、監視員は、プラント20のトリップの異常要因とその可能性の大小、各異常要因に必要な処置作業を容易に把握することができる。
【0029】
処置作業指示部16は、要因分析部14による異常要因の分析結果と、記憶部19に登録された異常要因への処置作業とに基づいて、作業員に処置作業を指示する。例えば、処置作業指示部16は、要因分析部14によって、可能性があると判断された全ての異常要因(〇および△)について、対応する処置作業を特定し、異常要因および処置作業指示を端末装置40へ送信する。例えば、要因分析部14の判断結果が「ガス置換不足」であり、記憶部19には「ガス置換不足」の処置作業として「再着火」が登録されているとする。処置作業指示部16は、異常要因「ガス置換不足」とその処置作業「再着火」を端末装置40へ送信する。
図5に端末装置40へ送信された処置作業指示の一例を示す。
図5に示すように、端末装置40の表示画面には、「着火失敗(燃焼器失火トリップ)はガス置換不足の可能性が高いので着火作業を実施してください」とのメッセージが表示されている。作業員は、この表示を参照すると、着火作業を実施する。このとき、処置作業指示部16は、さらに着火作業の具体的な実施方法を教示する処置作業手順情報を送信してもよい。処置作業手順情報は、文章だけでなく、図、写真、動画などを含んでいてもよい。これにより、速やかに燃焼器の失火トリップの要因を確認し、取り除くことができる。このように、処置作業指示を行うことにより、作業員は、何を行うかが明確になり、速やかに異常要因を取り除き、プラント20を再起動できるようになる。
【0030】
図5に例示する処置作業指示は、着火作業の実施を文言にて指示するものである。処置作業指示部16は、文言だけではなく、図や動画を用いて、作業員へ処置作業を指示してもよい。
図6A,
図6Bにガスタービンの燃料系統の概略構成図を示す。燃料は、ガスタービンの運転中、紙面の左側から右側へ流れ、マニフォールドM1、M2から燃焼室へ供給される。燃料系統には、燃料流れ方向の上流側から順に隔離弁V1、ベント弁V2、遮断弁V3、ベント弁V4、遮断弁V5、圧調弁V6、流調弁V7および流調弁V8が設けられている。隔離弁V1とベント弁V2は、手動で開閉する弁である。
図6Aに示すように、ガスタービンの運転中には、隔離弁V1が開、ベント弁V2が閉とされている。これに対し、定検中には、
図6Bに示すように隔離弁V1が閉、ベント弁V2が開とされる。プラント20の起動前に定期点検が実施されており、プラント20に燃焼器の失火トリップが発生したとすると、点検工事情報「有り」が入力され、
図3、
図4を用いて説明したように、要因分析部14は、異常要因として「定検時の弁復旧間違い」の可能性あり(又は、可能性が高い)と推定する。すると、処置作業指示部16は、「定検時の弁復旧間違い」への対処として、例えば、「隔離弁V1とベント弁V2を確認」といった処置作業情報を端末装置40へ送信する。処置作業指示部16は、例えば、
図6Aを送信し、「隔離弁V1が開、ベント弁V2が閉となっていることを確認してください。」、「隔離弁V1が閉、ベント弁V2が開となっていれば、隔離弁V1を開、ベント弁V2を閉としてください。」等のメッセージを送信してもよい。さらに処置作業指示部16は、隔離弁V1およびベント弁V2の位置を案内したり、隔離弁V1を開いたり、ベント弁V2を閉じたりする作業手順を示した動画などを送信してもよい。これにより、経験の浅い作業員でも確実に処置作業を実施することができる。
【0031】
一般的な例として、処置作業において、作業の安全を確保するための隔離用弁を操作して、作業対象の機器や部品を隔離し、その機器や部品に対する点検や修理等を行って、さらに復旧用弁を操作してプラント20の再起動条件を満たすための状態を作り出し、最後に隔離用弁を元に戻すという一連の処置作業を行う場合を考える。このような場合、例えば、処置作業指示部16は、隔離用弁の操作を指示する隔離弁指示情報と、隔離用弁によって隔離された位置に存在する部品等に対する作業手順および部品と部品の位置情報を指示する作業指示情報と、復旧用弁の操作を指示する復旧弁指示情報と、作業順に出力してもよい。作業指示情報においては、作業対象の部品の近くに存在する間違い易い部品やその部品の位置情報などを併せて出力してもよい。このように作業手順や作業位置を詳細化した情報を提供することで、異常発生時の緊迫した状況下でも、作業員は、誤りなく、処置作業を実施することができる。
【0032】
(動作)
次に
図7を参照して異常時対応教示システム10の動作について説明する。
図7は、実施形態に係る異常時対応教示システムの動作の一例を示すフローチャートである。
前提としてプラント20の起動前であるとする。まず、運転員が、定期点検等を実施したか否かを示す点検工事情報を異常時対応教示システム10へ入力する。点検工事情報取得部13は、入力された点検工事情報を取得し、記憶部19に記録する(ステップS1)。次に、診断システム30の担当者が、プラント20の起動に先立ち、診断システム30を操作して、プラント20に備わる複数の機器の動作診断を行う。動作診断の結果は、診断システム30の表示装置等へ出力され、異常と診断されれば適切な対処が行われる。動作診断にて異常が発見されなかった場合、診断システム30は、診断を行った機器ごとの診断情報を異常時対応教示システム10へ出力する。診断情報取得部12は、診断情報を取得し、記憶部19に記録する(ステップS2)。次にプラント20の運転員の操作により、プラント20が起動を開始する(ステップS3)。プラント20が起動を開始すると、運転データ取得部11は、プラント20から運転パラメータを取得し、記憶部19に記録する(ステップS4)。運転パラメータには、プラント20のセンサ21が計測した運転パラメータ、制御装置22が出力した各種制御信号などが含まれる。その後もプラント20は運転を継続し、運転データ取得部11は、運転パラメータを取得し続ける。運転データ取得部11が、プラント20から警報信号やトリップ信号を取得すると(ステップS5;Yes)、異常時対応教示システム10は、異常要因の分析処理を開始する。まず、要因分析部14は、点検工事情報、機器ごとの診断情報、異常発生時前後の運転パラメータ、警報信号やトリップ信号が示す事象のFTAのフォルトツリー(
図2)、フォルトツリーの分岐や要素を判断する為の判断条件(
図3)を記憶部19から読み出す。次に要因分析部14は、フォルトツリーに基づいて異常要因を分析する(ステップS6)。要因分析部14は、点検工事情報、診断情報、運転パラメータと各要素の判断条件とに基づいて、判断条件に合致しない要素を消し込み、判断条件に合致する要素、つまり、異常要因を特定する。特定する異常要因は、1つでも複数でもよい。要因分析部14は、運転パラメータ等が判断条件に合致する程度に応じて、可能性が高い異常要因(
図4の〇)、可能性が中程度の異常要因(
図3の△)など可能性の大小に応じたランク付けを行ってもよい。次に、分析結果出力部15は、異常要因の分析結果を表示装置などに出力する(ステップS7)。例えば、分析結果出力部15は、
図4にて例示するようにフォルトツリーに対する消し込みの結果、残った異常要因を、その確度とともに表示してもよい。分析結果出力部15は、
図4にて例示するように異常要因に対応する処置作業をさらに表示してもよい。
【0033】
次に処置作業指示部16が、要因分析部14によって推定された異常要因に対応する処置作業を特定する(ステップS8)。処置作業指示部16は、記憶部19に予め登録された異常要因ごとに処置作業が設定された情報の中から、可能性あり(
図4の〇又は△)と推定された異常要因に対応する処置作業を読み出す。次に処置作業指示部16は、
図5にて例示したように、ステップS8で特定した処置作業の実施を指示する処置作業指示を端末装置40へ出力する(ステップS9)。作業員は、指示された処置作業を実行する。処置作業を実行すると、作業員は、処置作業の完了を端末装置40へ入力する。端末装置40は、処置作業の完了情報を異常時対応教示システム10へ送信する。異常時対応教示システム10では、処置作業完了受付部17が処置作業の完了情報を取得する(ステップS10)。又は、作業員が、端末装置40を使って処置作業完了後の作業対象箇所の写真や動画を撮影し、端末装置40がこれらの画像データを異常時対応教示システム10へ送信してもよい。異常時対応教示システム10は、画像データを取得する。運転員は、画像データの内容を確認し、処置作業が正しく実施されたかどうかを確認する。正しく実施されていることが確認できた場合、運転員は、処置作業が完了したことを異常時対応教示システム10へ入力する。処置作業完了受付部17は、処置作業の完了情報を取得する。処置作業完了受付部17は、処置作業指示部16が指示した処置作業に対する完了情報の取得状況を表示してもよい。これにより、復旧作業員は、異常への対処の進捗状況を確認することができる。処置作業完了受付部17が全ての処置作業指示に対する完了情報を取得すると、再起動準備完了通知部18は、プラント20の再起動準備が完了したことを、プラント20の起動を担当する運転員の端末装置40などへ通知する(ステップS11)。これにより、プラント20の再起動が可能になる。
【0034】
(効果)
以上説明したように、異常時対応教示システム10によれば、フォルトツリーを用いた異常要因の分析処理を自動的に行うことができる。運転パラメータだけではなく、診断情報や点検工事情報を用いて異常要因を推定するため、異常要因の推定精度を向上することができる。要因分析部14による異常要因の分析処理において、点検工事情報は必須ではない。例えば、フォルトツリーの判断条件に点検工事情報が含まれていない場合、点検工事情報を省略することができる。
推定した異常要因に対応する処置作業の情報を予め登録し、可能性ありと推定された異常要因とともにユーザ側へ提供することで、異常への対処を迅速に行うことができる。これにより、プラント20を速やかに正常な運転状態に回復させることができる。処置作業の完了情報を取得し管理することで、異常への処置が漏れなく行われたか否かを把握することができる。
全ての異常要因に対する処置作業が完了した段階で再起動準備完了通知を行うことで、再起動可能であることが担保された状態で、プラント20を再起動することができる。
【0035】
上記実施例では、ガスタービンを含むプラントを例に説明を行ったが、本実施形態の異常時対応教示システム10、異常要因推定方法、異常時対応教示方法およびプログラムの対象はこれに限定されず、蒸気タービン、ボイラ、コンプレッサ、過給機、エンジンなど、任意の機械、設備、装置に適用することができる。
【0036】
図8は、実施形態に係る異常時対応教示システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の異常時対応教示システム10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0037】
異常時対応教示システム10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。異常時対応教示システム10は、複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0038】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
<付記>
実施形態に記載の異常時対応教示システム10、異常要因推定方法、異常時対応教示方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る異常時対応教示システム10は、装置(プラント20)の運転中に計測された運転パラメータを取得する運転パラメータ取得部(運転データ取得部11)と、前記装置の起動前に実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得する診断情報取得部12と、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTA(フォルトツリー)に入力して、前記異常の要因を分析する要因分析部14と、備える。
これにより、FTAに基づいて異常要因を分析する作業を自動化し、異常要因の分析に要する時間を短縮することができる。運転パラメータと診断情報を用いて異常要因を分析するため、異常要因の分析精度を向上することができる。これらにより、プラントを速やかに正常な運転状態に戻すことができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る異常時対応教示システム10は、(1)の異常時対応教示システム10であって、前記装置について実行された点検や工事の実績を示す点検工事情報を取得する点検工事情報取得部13、をさらに備え、前記要因分析部14は、前記運転パラメータと、前記診断情報と、前記点検工事情報とを、前記FTAに入力して、前記要因を分析する。
異常要因の分析にさらに点検工事情報を用いることで、異常要因の分析精度をさらに向上することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る異常時対応教示システム10は、(1)~(2)の異常時対応教示システム10であって、前記要因分析部14が分析した前記要因に対する処置作業を指示する処置作業指示情報を出力する処置作業指示部16をさらに備える。
異常要因を確認したり、取り除いたりするための処置作業を提示することで、異常に対する処置を迅速に行うことができる。処置作業指示部16は、処置作業指示情報に加えて、処置作業の手順を示した処置作業手順情報を出力してもよい。
【0043】
(4)第4の態様に係る異常時対応教示システム10は、(3)の異常時対応教示システム10であって、前記処置作業指示部16が、作業の安全を確保する隔離用弁の操作を指示する隔離弁指示情報と、前記隔離用弁によって隔離された位置に存在する部品に対する作業手順および前記部品と前記部品の位置情報を指示する作業指示情報と、前記装置の再起動条件を満たすための復旧用弁の操作を指示する復旧弁指示情報とを出力する。
隔離用弁情報と、作業指示情報と、復旧弁指示情報とを出力することにより、作業の安全を確保するために隔離用弁を操作し、所定の部品などに対し点検作業などを行い、復旧弁を操作して再起動可能な状態を作り出して、隔離弁を元の状態に戻すという一連の処置作業について、経験の浅い作業員でも実施することができるようになる。
【0044】
(5)第5の態様に係る異常時対応教示システム10は、(3)~(4)の異常時対応教示システム10であって、前記処置作業の完了の入力を受け付ける処置作業完了受付部17と、全ての前記処置作業が完了したときに、再起動の準備が完了したことを通知する再起動準備完了通知部18と、をさらに備える。
処置作業完了受付部を備えることにより、処置作業の実施状況を把握することができる。再起動準備完了通知部を備えることにより、全ての処置作業が完了してから、プラント20の再起動を実行することができる。
【0045】
(6)第6の態様に係る異常時対応教示システム10は、(1)~(5)の異常時対応教示システム10であって、前記要因分析部14による分析結果を、前記FTAのフォルトツリーとともに出力する分析結果出力部15、をさらに備える。
フォルトツリーとともに分析結果を出力することにより、フォルトツリーで定義された異常要因のうち、どの異常要因が今回発生した異常の要因であり、どの異常要因が異常の要因では無いかをフォルトツリーの構造を参照しながら確認することができる。
【0046】
(7)第7の態様に係る異常要因推定方法は、装置(プラント20)の運転中に計測された運転パラメータを取得し、前記装置の起動前に実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析する。
【0047】
(8)第8の態様に係る異常時対応教示方法は、装置(プラント20)の運転中に計測された運転パラメータを取得し、前記装置の起動前に実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析し、前記要因に対応した処置作業を指示する処置作業指示情報を出力する。
【0048】
(9)第9の態様に係る異常時対応教示方法は、(8)の異常時対応教示方法であって、さらに、前記処置作業の完了の入力を受け付け、全ての前記処置作業が完了したときに、再起動の準備が完了したことを通知する。
【0049】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータに、装置(プラント20)の運転中に計測された運転パラメータを取得し、前記装置の起動前に実行された前記装置が備える機器の動作診断の結果を示す診断情報を取得し、前記装置に異常が発生した場合に、前記運転パラメータと、前記診断情報とを前記異常の要因を分析したFTAに入力して、前記異常の要因を分析する処理を実行させる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記した異常時対応教示システム、異常要因推定方法、異常時対応教示方法およびプログラムによれば、プラント等で異常が発生したときに、その異常の要因を高精度且つ短時間に推定することができる。本開示の異常時対応教示方法によれば、プラント等で異常が発生したときに、その異常への対処方法を把握することができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・復旧管理システム
10・・・異常時対応教示システム
11・・・運転データ取得部
12・・・診断情報取得部
13・・・点検工事情報取得部
14・・・要因分析部
15・・・分析結果出力部
16・・・処置作業指示部
17・・・処置作業完了受付部
18・・・再起動準備完了通知部
19・・・記憶部
20・・・プラント
30・・・診断システム
40・・・端末装置
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース