(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】尿道カテーテル用のグリッパスリーブ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A61M25/01
(21)【出願番号】P 2022564743
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 US2021027517
(87)【国際公開番号】W WO2021221919
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-29
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522370470
【氏名又は名称】キュア メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】パルマー ティモシー エー.
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511122(JP,A)
【文献】特開2017-060803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/038717(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/352321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道カテーテルを取り扱うための把持用スリーブであって、
内側表面又は外側表面にテクスチャを有する一対の柔軟で平坦な材料シートであって、各々がそれらの間に長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、並置された長手方向エッジで共に接着されて、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張され得るスリーブを形成する、材料シートを備え、前記長手方向エッジは前記遠位端の直前に丸みを帯びた部分へ移行し、
前記材料シートは、前記長手方向エッジの近位部分に沿って接着され、一方、前記長手方向エッジの遠位部分の少なくとも一部は、前記遠位端まで接着されず、前記スリーブは、使用者の前記尿道カテーテルの取り扱いを補助するために、前記尿道カテーテルの周囲に配置され、第1のシートの前記遠位端は、第2のシートの前記遠位端よりも短く終端している、把持用スリーブ。
【請求項2】
前記材料シートの両方が、前記近位端から延在する長方形の近位部分と、前記遠位端で終端するテーパー状の遠位部分とを有し、各シートの前記テーパー状の遠位部分が、前記遠位端の直前の前記丸みを帯びた部分につながる細長い一定のテーパー状の領域を含む、請求項1に記載の把持用スリーブ。
【請求項3】
前記材料シートが、前記長方形の近位部分に沿って共に接着され、一方、前記テーパー状の遠位部分は、前記遠位端に至るまで接着されていない、請求項
2に記載の把持用スリーブ。
【請求項4】
前記第1のシートの前記遠位端が前記第2のシートの前記遠位端より1~3mm短く終端する、請求項1に記載の把持用スリーブ。
【請求項5】
前記材料シートそれぞれの前記遠位端の全体が、不連続な角がなく丸みを帯びている、請求項1に記載の把持用スリーブ。
【請求項6】
尿道カテーテルを取り扱うための把持用スリーブであって、
内側表面又は外側表面にテクスチャを有する一対の柔軟で平坦な材料シートであって、各々がそれらの間に長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、長手方向エッジで共に接着されて、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張され得るスリーブを形成する、材料シートを備え、前記材料シートは前記長手方向エッジの近位部分に沿って接着され
、前記長手方向エッジの遠位部
分は、前記遠位端まで接着されて
おらず、
前記スリーブは、使用者の前記尿道カテーテルの取り扱いを補助するために、前記尿道カテーテルの周囲に配置され、第1のシートの前記遠位端は、第2のシートの前記遠位端よりも短く終端している、把持用スリーブ。
【請求項7】
前記材料シートの両方が、前記近位端から延在する長方形の前記近位部分と、前記遠位端で終端するテーパー状の前記遠位部分とを有し、前記材料シートそれぞれの前記テーパー状の前記遠位部分が、前記遠位端の直前の丸みを帯びた部分へとつながる
細長い一定のテーパー状の領域を含む、請求項
6に記載の把持用スリーブ。
【請求項8】
前記材料シートの両方が、
前記近位端から延在する長方形の前記近位部分と、前記遠位端で終端するテーパー状の前記遠位部分とを有し、各シートのテーパー状の前記遠位部分は、前記近位部分から前記遠位端へと一定にテーパー状である、請求項
6に記載の把持用スリーブ。
【請求項9】
前記材料シートの両方が、
前記近位端から前記遠位端まで一定のテーパー状に狭くなっている、請求項
6に記載の把持用スリーブ。
【請求項10】
前記材料シートそれぞれの前記遠位端の全体が、不連続な角のない丸みを帯びている、請求項
6に記載の把持用スリーブ。
【請求項11】
前記材料シートが両方とも長方形である、請求項
6に記載の把持用スリーブ。
【請求項12】
尿道カテーテルを取り扱うための把持用スリーブであって、
内側表面又は外側表面にテクスチャを有する一対の柔軟で平坦な材料シートであって、各々がそれらの間に長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、長手方向エッジで共に接着されて、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張され得るスリーブを形成し、
前記遠位端の前記材料シート
が第1のシートの前記遠位端が第2のシートの前記遠位端よりも短く終端するようにオフセットされた、前記材料シートを含
み、
前記スリーブは、使用者の前記尿道カテーテルの取り扱いを補助するために前記尿道カテーテルの周囲に配置された、把持用スリーブ。
【請求項13】
前記第1のシートの前記遠位端が前記第2のシートの前記遠位端より1~3mm短く終端している、請求項
12に記載の把持用スリーブ。
【請求項14】
前記材料シートそれぞれの前記遠位端の全体が、不連続な角のない丸みを帯びている、請求項
12に記載の把持用スリーブ。
【請求項15】
前記材料シートの両方が、前記近位端から延在する長方形の近位部分と、前記遠位端で終端するテーパー状の遠位部分とを有し、各シートの前記テーパー状の遠位部分が、前記遠位端の直前に丸みを帯びた部分へと移行する細長い一定のテーパー状の領域を含む、請求項
12に記載の把持用スリーブ。
【請求項16】
前記材料シートが両方とも前記近位端から前記遠位端まで一定のテーパー状に狭くなっている、請求項
12に記載の把持用スリーブ。
【請求項17】
前記材料シートが両方とも長方形である、請求項
12に記載の把持用スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、間欠式尿道カテーテルに関し、より詳細には、潤滑された間欠式尿道カテーテルを手動で前進させるために使用される改良された把持用スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
間欠式カテーテルは、典型的には、尿失禁に罹患している患者によって、又は随意排尿をすることができない個人によって使用される。我々の移動性の高い文化において、1日又はそれ以上にわたって家を離れる自由を有する能力は、生活の重要な部分である。この必要性に対処するために、患者が自己カテーテル法を行うことを可能にする使い捨てカテーテルが開発されており、間欠式尿道カテーテルと呼ばれる。
【0003】
ほとんどの間欠式尿道カテーテルは、尿道への導入及び尿道を通る前進を容易にするために、何らかの方法で潤滑される。潤滑の2つの主な技術は、カテーテルの外部にジェルを自動的又は手動で塗布すること、又は密封されたカテーテルパッケージ内の水袋(water sachet)を壊してカテーテル上の親水性表面コーティングをアクティブにすることである。親水性カテーテルには、カテーテルの表面に結合するポリマーコーティングが施されている。ポリマーコーティングは、水に浸されると、水を吸収してカテーテルに結合し、滑らかで非常に滑りやすくなる。
【0004】
カテーテルがどのように潤滑されるにせよ、パッケージから取り出されると、滑らかになり、取り扱いが困難になる。カテーテルの丸みを帯びた先端は尿道に挿入されなければならず、間欠式(intermittent)カテーテルの使用者の器用さは限られていることが多い。例えば、脊椎損傷で手足が部分的に麻痺し、手指の使用が制限される場合にも、尿道カテーテルが必要になることがある。尿道カテーテルを操作するためのプロセスは、特に無菌状態を維持する必要性に鑑みると多少の困難があり、潤滑されたカテーテルを把持して尿道に挿入することは、完全に機能する使用者であっても、極めて困難である。
【0005】
この問題に対する様々な解決策が、当該技術分野において開発されている。例えば、米国特許9,884,127(Gustavsson)は、カテーテルを覆って嵌合し、カテーテルに触れることなくカテーテルを前後に移動させるハンドルとして使用される外部リブを有する、エラストマー管状挿入補助具を開示する(例えば、
図3b参照)。挿入補助具は、患者がカテーテルを前方にインチングし(寸動させ)ている間、カテーテル上で前後に摺動する。しかしながら、この成形設計は、比較的複雑であり、したがって、1日に複数回使用され、使い捨てである製品としては法外に高価である。
【0006】
米国特許7,476,223(McBride)は、カテーテルの長さに沿って移動可能なように配置された管状カフ40を有する別の尿道カテーテルセットを開示している(
図2参照)。カフ40は、プラスチックバッグの構造によく似た、溶着された長手方向エッジを有する、前端がテーパー状の(tapered、先細りの)平坦に圧縮されたプラスチックシーティングチューブである。これは、製造コストが低く、パッケージ内部での保管を容易にする薄型であるという利点を有する。しかしながら、カフ40は、特に男性使用者において不快感を生じることがあり、広く採用されることに限界がある。
【0007】
親水性尿道カテーテルを手動で操作するためのいくつかの解決策が当技術分野において公知であるが、より快適で、したがって受け入れられる把持用カフ又は把持用スリーブの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本願発明の実施形態は、尿道カテーテルを取り扱うための改良されたスリーブを提供しようとするものである。本出願は、尿道カテーテルの使用をはるかに容易にし、特に不快適さを低減するいくつかの特徴を提供する。
【0009】
一実施形態では、尿道カテーテルを取り扱うためのスリーブは、一対の柔軟で(flexible、可撓性のある)平坦な材料シート(平板)を備え、それぞれがそれらの間の長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、長手方向エッジで互いに接着(bonded、結合)されてスリーブを形成し、スリーブは、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張されてもよい。材料シートはそれぞれ、近位端から延在する長方形(矩形)の近位部分と、遠位端で終端するテーパー状の遠位部分とを有する。各シートのテーパー状の遠位部分は、遠位端の直前で丸みを帯びた部分に移行(transitions)する細長い一定のテーパー状の領域(section)を含む。
【0010】
両方の材料シートは、同一であってもよく、又は材料シートは、異なる長さを有してもよく、又はシートは、第1のシートの遠位端が第2のシートの遠位端よりも短い状態で、互いに対してオフセットされてもよい。例えば、第1のシートの遠位端は、第2のシートの遠位端よりも1~3mm短く終端する。材料シートは、望ましくは、近位部分に沿った長手方向エッジで接着され、一方、遠位端を含むテーパー状の遠位部分の少なくとも一部は接着されない。一構成では、材料シートの各々の遠位端全体は、不連続な(discrete,離散的)角を伴わずに丸みを帯びている。好ましくは、材料シートはそれぞれ内側表面又は外側表面にテクスチャを有する。
【0011】
尿道カテーテルを取り扱うためのスリーブの他の実施形態は、一対の柔軟で平坦な材料シートを含み、それぞれのシートがそれらの間の長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、平行な長手方向エッジでともに接着されてスリーブを形成し、スリーブは、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張されてもよい。材料シートは、近位部分に沿って長手方向エッジで接着されるが、遠位端を含む遠位部分の少なくとも一部は接着されない。材料シートは、近位端から延在する長方形(方形、矩形、rectangular)の近位部分と、遠位端で終端するテーパー状の遠位部分とを有し得る。
【0012】
尿道カテーテルを取り扱うためのスリーブのさらなる実施形態は、一対の柔軟で平坦な材料シートを含み、それぞれのシートがそれらの間の長手方向軸を規定する近位端及び遠位端を有し、長手方向エッジでともに接着されてスリーブを形成し、スリーブは、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状形状に拡張されてもよい。材料シートは、第1のシートの遠位端が、第2のシートの遠位端よりも短く終端する、異なる長さ又はオフセット端を有する。材料シートは、近位端から延在する長方形の近位部分と、遠位端で終端するテーパー状の遠位部分とを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】外側包装、把持用スリーブを有するカテーテル、及び水袋を含む、従来技術の間欠式尿道カテーテルパッケージアセンブリの分解図である。
【
図1B】把持用スリーブを有する従来技術の尿道カテーテルの遠位端の拡大斜視図である。
【
図2】男性の外部尿道開口部への挿入直前における従来技術の尿道カテーテル及び把持用スリーブの前進を示す図である。
【
図3】本出願の尿道カテーテル及び把持用スリーブを男性の外部尿道開口部に向かって前進させる様子を示す図である。
【
図4】
図3において使用中に示されるような例示的な把持用スリーブの上面図である。
【
図5】本出願の把持用スリーブの第2の実施形態の上面図である。
【
図6A】本出願の把持用スリーブの第3の実施形態の上面図である。
【
図6B】尿道カテーテルを取り囲む把持用スリーブの斜視図である。
【
図7A】本出願の把持用スリーブの第4の実施形態の上面図である。
【
図7B】尿道カテーテルを取り囲む把持用スリーブの斜視図である。
【
図8A】使用時に2つの把持用スリーブを尿道カテーテルの上に有する尿道カテーテルを示す図である。
【
図8B】使用時に2つの把持用スリーブを尿道カテーテルの上に有する尿道カテーテルを示す図である。
【
図9】出荷のために尿道カテーテル上に入れ子にされた2つの把持用スリーブの例示的な構成を示す図である。
【
図10A】尿道カテーテル上のデュアル把持用スリーブの代替的な組み合わせを示す図である。
【
図10B】尿道カテーテル上のデュアル把持用スリーブの代替的な組み合わせを示す図である。
【
図10C】尿道カテーテル上のデュアル把持用スリーブの代替的な組み合わせを示す図である。
【
図11A】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【
図11B】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【
図11C】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【
図11D】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【
図11E】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【
図11F】例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願は、間欠式尿道カテーテルと共に使用するための改良された把持用カフ又は把持用スリーブを提供する。親水性カテーテルは、親水性コーティングが水和して滑りやすくなると、使用者がカテーテルを供給するのを支援するために、スリーブ状のグリッピングデバイスを使用することが多い。使用者は、典型的には、グリッピングデバイスを使用してカテーテルチューブを掴み、次いで、カテーテルを前方に押動し、それを尿道の中に挿入することができる。これは、より大きい摩擦を提供し、潤滑されたカテーテルに触れることから継承される混乱を回避する。さらに、グリッピングデバイスは、使用者の手とカテーテルとの間に衛生障壁を提供し、感染につながり得る尿道への細菌の移動を回避するのに役立つ。
【0015】
背景技術で述べたように、既存のカテーテルの取扱い、又はグリッピングカフ又はスリーブは、不快感を生じさせる可能性がある。具体的には、患者によっては、把持用スリーブ(gripping sleeve)の前部の鋭い角部が、皮膚と接触したときに患者の皮膚を刺激するという不満がある。本明細書に記載の改良された把持用スリーブは、男性用に設計されたカテーテルに特に有益であるが、同じ原理を女性が使用するためのカテーテルに容易に組み込むことができることを理解されたい。
【0016】
図1Aは、外側包装22と、その上を摺動可能な把持用スリーブ28を有するカテーテル24と、水袋26とを含む、従来技術の間欠式尿道カテーテルパッケージアセンブリ20を分解して示す図である。包装されると、水袋26と共に把持用スリーブ28を有するカテーテル24は、外側包装22内に無菌状態で収容される。図示の実施形態では、従来技術の尿道カテーテルパッケージアセンブリ20は、米国カリフォルニア州ニューポートビーチのCure Medical,LLCから入手可能な男性用親水性Cure Catheter(登録商標)である。
【0017】
男性用のHydrophilic Cure Catheter(登録商標)の外側包装22は、薄いポリエチレンのような柔軟な水不透過性材料の単純な管状スリーブ包装である。好ましい実施形態では、
図1Aに示される外側包装22の前面は不透明であり、その上に、使用のための製品封入説明書及びサイズ(例えば、12Fr)等のいくつかの表示がされている。後面(図示せず)は、内容物を容易に見ることができるように透明であってもよい。男性用のカテーテルは、典型的には、12~18インチの長さの範囲であり、したがって、外側包装22は、わずかに長くなっている。
【0018】
図1Aに示されるカテーテル24は、その外側に高分子親水性コーティングを施したカテーテルチューブ30を有し、前端又は遠位端で丸みを帯びた遠位先端32に終端している。丸みを帯びた遠位先端32に隣接して1つ以上の排液開口部34が形成される。エラストマー漏斗36は、カテーテルチューブ30の後部又は近位端に取り付けられる。
【0019】
使用時に、滅菌包装22を開封する前に、使用者は、浄水で充填された水袋26を圧搾又は屈曲させ、袋を破裂させ、包装内及びカテーテルチューブ30の周囲に水を分配させる。これは、カテーテルチューブ30上の親水性コーティングを活性化し、したがって、それを潤滑性にする。使用者は、典型的には、バンドエイドを開くのと同様に、前面及び後面を形成する2枚の材料シートを引き裂くことによって、滅菌包装22を開く。使用者は、カテーテル24を、滑りにくい漏斗36で取り扱うことができ、また、典型的にはカテーテルチューブ30の遠位端の近くに都合よく配置される把持用スリーブ28を掴むことによって取り扱うことができる。カテーテルチューブ30の操作、特に遠位先端32を狙うことによる操作により、カテーテルを尿道に挿入することができる。
【0020】
図1Bは、カテーテルチューブ30上に把持用スリーブ28を有する従来技術の尿道カテーテル24の遠位端の拡大斜視図である。男性用のHydrophilic Cure Catheter(登録商標)の把持用スリーブ28は、摩擦の質を高め、したがって使用者のグリップを強化するテクスチャ加工された内面40を有する。2つの排液開口部34は、遠位先端32に隣接して軸方向に離間して示されている。好ましい実施形態では、排液開口部34は、使用者にとってより快適なように、カテーテルチューブ30の壁の中に凹んでいる、丸みを帯びたエッジを有する。
【0021】
把持用スリーブ28の構造は、
図1Bに明確に示されている。特に、スリーブは、それらの並置された長手方向エッジ44の全体に沿って共に接着(例えば、熱溶着)される柔軟な材料42の2つの同一の平坦なシートから構成される。柔軟な材料シート42は、スリーブ28の前端46及び後端48において分離されたままであり、その中を摺動移動するために、尿道カテーテル24を緩く受け入れる大きさの管状形状を形成する。把持用スリーブ28は、前端46に向かってわずかに狭くなるテーパー状の領域50をさらに含むが、そうでなければ、
図1Aに最もよく表されているように、一定の横方向寸法を有する。
【0022】
図1Bの拡大図は、並置された長手方向エッジ44に沿って形成された溶着された継ぎ目を示す。これらの継ぎ目は、把持用スリーブ28の前端46において、比較的鋭利な角52で終端する。これらの角52は、以下で説明するように、尿道の外側開口部と接触する場合、患者に不快感を生じさせる傾向がある。
【0023】
図2は、男性の陰茎56の外部尿道開口部54に挿入する直前の従来技術の尿道カテーテル24及び把持用スリーブ28の前進を示す。典型的には、使用者は、把持用スリーブ28を片手で持ち、遠位カテーテル先端32を尿道開口部54の近くで操作し、次いで、典型的には後部漏斗36(
図1A)を持つ他方の手を使用してカテーテルチューブ30を前進させる。遠位先端32を首尾よく尿道開口部54に入るように向けるプロセスは、使用者が先端を保持する把持用スリーブ28を開口部に近接させる必要がある。一部の患者は、スリーブ28の前部の鋭利な角52が、皮膚と接触するときに患者の皮膚を刺激すると訴えている。しばしば、これは、敏感な領域である使用者の陰茎56の尿道口である。鋭利な角52は、スリーブ28の遠位端まで延在する溶着側面44の剛性によって補強される。そのような不快感を数回経験すると、自然な行動結果として、はるかに注意深くなり、カテーテル挿入プロセスに時間がかかるようになる。極端な場合には、使用者は、スリーブを使用せず、カテーテルに素手で触れることを選択することがある。
【0024】
この不快感を緩和し、プロセスを容易にするために、本願は、鋭い角をなくす前端を有し、場合によっては、従来のスリーブよりも柔軟な、いくつかの異なるカテーテル把持用スリーブを提示する。
【0025】
例えば、
図3は、本出願の尿道カテーテル24及び把持用スリーブ60が男性の外部尿道開口部54に向かって前進することを示す。尿道カテーテル24は、従来技術と同様に構成されることが望ましく、したがって、同様の要素には同様の番号が付される。
【0026】
図4は、近位端64から遠位端68に隣接するテーパー状の部分(portion)66まで延在する略管状の本体62を含む例示的な把持用スリーブ60の上面図である。前述のように、管状本体62は、望ましくは、摩擦を増加させるように内側表面又は外側表面70にテクスチャを有する、ポリエチレン等の材料の同じ柔軟なストリップの対から形成される。テクスチャリングは、シートの内側表面又は外側表面にあってもよく、おそらく一方の内側表面及び他方の外側表面にあってもよい。理想的には、テクスチャリングは、内側表面及び外側表面の両方にあるが、製造上の制約により、どちらか一方に限定される。テクスチャリングは、典型的には、加熱されたローレット又はクロスハッチローラーによって、材料の大きなブランクの片面に形成され、次いで、シートのサイズ及び形状に切断されて、管状本体62の各側を形成する。あるいは、より効率的なプロセスとして、2つのブランクは、個々のスリーブシートを形成する前又は後に互いに接着され、両方の外側にテクスチャリングが、付加される。
【0027】
ストリップの並置された長手方向エッジ72は、熱溶着などを用いて共に接着されてスリーブ60を形成し、これは、尿道カテーテルを緩く受け入れる大きさの管状本体62へと拡張され得る。以下に説明するように、隣接する長手方向エッジ72の全長が接着されてもよく、又は遠位テーパー状の部分66の一部又は全部を接着しないまま、平行な長手方向部分のみが接着されてもよい。また、遠位テーパー状の部分66は、横向きの遠位端68で終端するより短い丸みを帯びた部分76に移行する細長い一定のテーパー状の領域74を含むことにも留意されたい。
【0028】
図3を参照すると、把持用スリーブ60を用いたカテーテル24の前進は、通常通りに行われる。このプロセスにおいて使用者が把持用スリーブ60を陰茎56と接触させると、遠位端68及び丸みを帯びた部分76に至る比較的浅い角部が最初に接触することになる。従来技術のスリーブにおける鋭い90°の角52の排除により、使用者に対する不快感が大幅に低減される。具体的には、丸みを帯びた部分76と横方向に向いた遠位端68との交差は、60°以下の夾角を有する角を形成し得る。さらに、以下の特定の実施形態で明らかなように、スリーブ60の管状本体62を構成するスリーブは、テーパー状の部分66に取り付けられないままであってもよい。これは、遠位端68まで延在したであろう溶着された継ぎ目がなくなり、容易に曲がる、使用者が感じないような比較的柔軟な2つのフラップが残される。
【0029】
再び
図4を参照すると、特定の例示的な寸法が示されている。理解されるように、これらの寸法は、ガイドラインのみであり、相対的なサイズを示すために提供され、それぞれ最大20%変動し得る。例示的な全長Lは、80±5mmであり、例示的な全幅Wは、近位端64において22±1である。テーパー状の部分66の長さL
tは、全長Lの30~40%が望ましく、例えば27mmである。例えば、短い丸みを帯びた部分76は、7mmの長さL
tを有してもよく、より長い徐々にテーパー状の部分74は、20mmの長さL
tを有してもよい。テーパー状の部分66の狭い端部における幅W
tは、望ましくは全幅の55~75%であり、例えば13~15mmである。
【0030】
図5は、本出願の把持用スリーブ80の第2の実施形態の上面平面図である。この把持用スリーブ80は、従来技術の把持用スリーブ28と同じ形状を有し、平行かつ長手方向に配向された側面86を有する近位端84で始まる近位部分82と、遠位端90で終端するテーパー状の遠位部分88とを有する。この実施形態では、テーパー状の遠位部分88は、遠位端90に向かって一定に狭まるテーパーを有する。テーパー状の遠位部分88と遠位端90との交差部は鋭い角92を形成するが、把持用スリーブ80を構成する2つの材料ストリップは、近位部分82の側面86に沿ってのみ共に接着され、テーパー状の遠位部分88において離間したままである。接着の欠如は、遠位端90に隣接して少なくとも約1~3mmが離間されており、テーパー状の部分88の全長に沿っていなくてもよいことに留意されたい。
【0031】
これは、遠位端90に2つの比較的緩いフラップを残し、それらは容易に曲がり、例えば陰茎56に接触しても男性使用者に不快感を生じさせない。また、本明細書に記載される改良された把持用スリーブの利点は、女性による使用のためにカテーテルに組み込まれた場合にも同様に実現される。
【0032】
図6Aは、本出願の把持用スリーブ100の第3の実施形態の上面図であり、
図6Bは、尿道カテーテル24を取り囲む把持用スリーブの斜視図である。先の把持用スリーブとよく似て、把持用スリーブ100は、管状に互いに連結された柔軟な材料の2つのストリップの取り付けによって形成され、平行かつ長手方向に配向された側面106を有する近位端104で始まる近位部分102と、遠位端110で終わる遠位テーパー部分108とを有する。先の実施形態とは対照的に、遠位端110全体は、テーパー部分108の両側の端部から丸みを帯びている。これは、いかなる不連続な角も軽減し、スリーブ100と尿道開口部54を取り囲む領域との間の不注意な接触による患者の不快感を大幅に低減する。
【0033】
図6Bを参照すると、スリーブ100は、カテーテル24の遠位端の近くに示されている。このバージョンでは、テーパー部分108及び遠位端110を含むスリーブ100の遠位部分は、互いに切り離され、したがって、2つの緩いフラップ112を形成する。上記で説明したように、材料のストリップは、平行かつ長手方向に配向された側面106に沿った継ぎ目においてのみ互いに接着される。したがって、遠位端110における2つの緩いフラップ112は、それらが使用者の陰茎56と不注意に接触する場合、構造的抵抗及び付随する不快感をほとんど示さない。
【0034】
図7Aは、本願の把持用スリーブ120の第4実施形態の上面図である。前と同様に、把持用スリーブ120は、管状に連結された柔軟な材料の2つのストリップからなり、平行かつ長手方向に配向された側面126を有する近位端124で始まる近位部分122、及びテーパー状の遠位部分128を形成する。先の実施形態とは対照的に、柔軟な材料の2つのストリップは同一でなくてもよく、第1のストリップは第2のストリップよりも短く、その結果、第1の遠位端130は第2の遠位端132の手前で終端する。代替として、ストリップは、同じサイズであるが、各端部においてオフセットされ得る。
【0035】
例えば、第1の遠位端130は、1~3mm、好ましくは2mmだけ第2の遠位端132の手前で終端する。図示の実施形態では、第1のストリップは第2のストリップの上に配置されるが、この構成は逆にすることができる。テーパー状の遠位部分128は、
図4に示す把持用スリーブ60と同様に成形され、細長い一定のテーパー状の領域134が、遠位端130、132で終端するより短い丸みを帯びた部分136につながる。把持用スリーブ120を形成する材料の2つのストリップは、望ましくは、テーパー状の遠位部分128に沿ったそれらの側面126に沿って接続されないが、以下で説明するように、代替的に溶着されてもよい。
【0036】
図7Bは、尿道カテーテル24を取り囲む把持用スリーブ120の斜視図である。スリーブ120の遠位端は、2つの遠位端130、132で終端する2つの分離したフラップを形成することが容易に明らかである。分離したフラップの非常に柔軟な性質及び遠位端130、132におけるスリーブの形状により、スリーブ120が使用中に不注意で陰茎に接触しても、使用者はほとんど構造的抵抗を経験しない。軟質で柔軟な材料の1つの薄いシートのみが使用者に触れることができる。
【0037】
従来技術のスリーブでは、2枚のシートの間の溶着線は鋭い角を形成したが、
図7A/7Bに示す2枚のシートが共に溶着されたままであっても、オフセット端部130及び132はその領域における溶着を排除する。すなわち、柔軟な材料の2つのストリップの並置されたエッジ部は、より短い遠位端130の終端まで接着され得る。さらに、テーパーリングされた半円形の前面輪郭は、力を偏向させるようにさらに作用する。さらに別の実施形態(図示せず)では、スリーブ120は、丸みを帯びた部分136のないテーパー状の遠位部分128の直線(一定の)テーパーを有してよく、より短い遠位端130の終端まで接着されてもよい。第2の遠位端132の遠位角が鋭利であるにもかかわらず、遠位角における2つのシート間の接着の欠如は、剛性をかなり低下させる。
【0038】
本出願の別の態様は、1つのカテーテルパッケージのための2つの把持用スリーブの提供である。2つの把持用スリーブを有することにより、使用者はカテーテルを尿道内に「インチワーム(inchworm)」することができる。2つのスリーブを互いに近づけて合流させることができ、次いで、カテーテルを他方のスリーブを通して摺動させながら一方のスリーブをグリッピングして動かすことによってカテーテルを前進させる。これは、近位漏斗からカテーテルを単にグリッピングし押すことに勝る利点を提供する。
【0039】
図8A及び
図8Bは、使用時に尿道カテーテル上に2つの把持用スリーブ60を有する尿道カテーテル24を示す。これらの図において、把持用スリーブ60は、
図3~4に関して示され、説明された把持用スリーブ60と同様に構成される。最初に、使用者は、カテーテル24の遠位先端に近接する第1の手で前方スリーブ60を掴み、そこからある距離にある第2の手で後方スリーブ60を掴む。
図8Bは、カテーテル24を前進させるための第1の手及び前方スリーブに対する第2の手の前進を示す。図示されていないが、次いで、使用者は、前方スリーブ60を保持しながら、後方スリーブをカテーテル上にスライドさせてさらに移動させる。
【0040】
図9は、出荷のために尿道カテーテル24の上に入れ子にされた2つの把持用スリーブ60の例示的な構成を示す。すなわち、後方スリーブをカテーテル24の近位漏斗上で摺動させることができ、前方スリーブを後方スリーブ上で部分的に摺動させることができる。これは、使いやすさのためにカテーテル24の清浄な(すなわち、潤滑されていない)端部に2つのスリーブ60を好都合に配置する。
【0041】
図10A~
図10Cは、いくつかの可能な順列を示すための、尿道カテーテル上のデュアル把持用スリーブの代替的な組み合わせである。
図10Aの第1の実施形態では、2つのスリーブ120は同一であり、この場合、スリーブは、
図7A及び
図7Bに関して示され、説明される。
図10Bでは、スリーブは異なり、本出願のスリーブ120は前方端部にあり、従来技術のスリーブ28は後方端部にある。なぜなら、前方スリーブ120は、使用者と潜在的に接触するものであるからであって、向上した快適性の利点が提供され、後部スリーブ28がどのような形態をとるかは無関係である。最後に、
図10Cは、カテーテル24上に2つの従来技術のスリーブ28を有するバージョンである。この実施形態は、本明細書に記載される改良された把持用スリーブの快適さを提供しないが、1つのカテーテル上に2つの把持用スリーブを有することの利点が、従来のスリーブであっても存在することを示すために含まれる。
【0042】
図11A~
図11Fは、例示的な把持用スリーブの代替的な形状及び構成の上面図である。尿道カテーテル分野において把持用スリーブの標準的な形状は、
図1Aに示されている通りであり、これは、近位長方形領域及びテーパー状の遠位領域50を有する。テーパー状の遠位領域50は、アセンブリを共に保つために、把持用スリーブ28が近位漏斗36の上を完全に摺動してしまうのを防止するように提供される。しかしながら、把持用スリーブの他の形状も可能である。
【0043】
例えば、
図11Aは、好ましくは内側にテクスチャ加工された柔軟な材料の2つの同一の長方形シートの並置によって形成された把持用スリーブ150を示す。材料シートの長手方向側面は、上述したように1~3mm程度の長さであり得る遠位又は前方部分152を除いて互いに接着される。2つの材料シートは遠位端で接着されないので、患者に刺激を引き起こすことがある鋭い接着角部を提示しない。
【0044】
図11Bは、長手方向サイドエッジ部に沿って接着された柔軟な材料の2枚のシートで形成された別の概ね長方形の把持用スリーブ160を示す。上述の特定の実施形態と同様に、把持用スリーブ160の遠位角162は丸みを帯びている。丸みを帯びた角162は、共に接着されてもよく、又は2つのシートは、丸みを帯びた角60の曲率の始まりまで、それらの真っ直ぐな長手方向エッジに沿って接着されてもよい。
【0045】
図11Cは、長手方向側エッジ部に沿って互いに接着され、柔軟な材料の2つのオフセットシートによって形成された、さらに別の長方形の把持用スリーブ170を示す。上部シート172は、底部シート174の上で近位方向にオフセットされる。これは、把持用スリーブ170の遠位端に底部シート174だけの短い距離を残し、これは、高度に柔軟で、したがって、刺激のない遠位角を使用者に提示する。
【0046】
図11Dは、その長い真っ直ぐな側エッジ部の一部に沿って互いに接着された柔軟な材料の2つの同一のシートによって形成された、その遠位端の近位端においてより大きい幅を有する、完全にテーパー状の把持用スリーブ180を示す。
図11Aの把持用スリーブ150とよく似ており、遠位又は前方部分182に沿った側エッジ部は、患者に不快感を引き起こす鋭い接着角を回避するために、取り付けられないままである。
【0047】
図11Eは、その近位端及び遠位端においてより大きい柔軟な材料の同一のシートによって形成された、別の完全にテーパー状の把持用スリーブ190を示す。遠位角192は、患者への不快感を低減するために、再び丸みを帯びている。前と同様であって、角192は、接着されてもされなくてもよい。
【0048】
最後に、
図11Fは、互いに接着されたオフセットされた柔軟なシースを有する別の完全にテーパー状の把持用スリーブ200を示す。上部シート202は、底部シート204の上で近位方向にオフセットされる。2つのシート202及び204は、それらの並置された直線側エッジに沿ってともに接着される。底部シート204の小部分は、示されるように前方に延在し、使用者への刺激を低減する非常に柔らかく、しなやか遠位角を提示する。
【0049】
本明細書を通じて、示される実施形態及び例は、開示又は請求される装置及び手順に対する限定ではなく、例示と見なされるべきである。本明細書で提示される例の多くは、方法行為又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせられ得ることを理解されたい。一実施形態に関連してのみ論じられる行為、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図しない。