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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/02 20060101AFI20240906BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F01D11/02
F01D9/02 102
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022565112
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038576
(87)【国際公開番号】W WO2022113570
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020195481
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 篤
(72)【発明者】
【氏名】小西 英治
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-110812(JP,A)
【文献】特開2018-138764(JP,A)
【文献】特開平11-022410(JP,A)
【文献】特公昭49-009522(JP,B1)
【文献】特開平11-303604(JP,A)
【文献】特開平04-104401(JP,A)
【文献】特開平10-331601(JP,A)
【文献】国際公開第2015/015858(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/015859(WO,A1)
【文献】特開2016-113966(JP,A)
【文献】特開2019-044678(JP,A)
【文献】特開2018-035783(JP,A)
【文献】特開2013-194720(JP,A)
【文献】特開2019-035384(JP,A)
【文献】特開2013-124561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、
前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口していることで、前記噴出口から噴出される作動流体が、前記一対のシールフィンのうちの上流側のシールフィンにおける下流側を向く面、前記ロータの外周面、前記一対のシールフィンのうちの下流側のシールフィンの上流側を向く面、及び前記ノズル内周部材の内周面を順次旋回する渦の旋回力を助長するタービン。
【請求項2】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されているタービン。
【請求項3】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項4】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項5】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、
前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されているタービン。
【請求項6】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、
前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項7】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、
前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項8】
前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されている請求項1、5~7のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項9】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されているタービン。
【請求項10】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項11】
軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、
該ロータを覆うケーシングと、
該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、
前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、
該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、
該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、
を有し、
前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、
前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されているタービン。
【請求項12】
前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されている請求項9から11のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項13】
前記吸込部は、前記静翼本体の負圧面における後縁側に偏った位置に形成され、径方向の全域にわたって延びている後縁側吸込口を有する請求項1から12のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項14】
前記吸込部は、前記静翼本体の負圧面における前縁側に偏った位置に形成され、径方向内側の部分、及び外側の部分の少なくとも一方に位置する前縁側吸込口を有する請求項1から13のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項15】
前記前縁側吸込口は、径方向の全域にわたって延びている請求項14に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに関する。
本願は、2020年11月25日に日本に出願された特願2020-195481号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービンは、軸線回りに回転するロータと、このロータを外周側から覆うケーシングと、ケーシングの内周側に設けられた複数の静翼段と、を主に備えている(下記特許文献1参照)。ロータは、軸線に沿って延びるロータ本体と、ロータ本体の外周面に配列された複数の動翼段と、を有している。静翼段と動翼段は軸線方向に交互に配列されている。静翼段は周方向に配列された複数の静翼を有する。同様に、動翼段は周方向に配列された複数の動翼を有する。外部から導かれた流体は、静翼段によって流れ方向が変更された後、動翼段に流れ込む。これにより、動翼段を通じて蒸気のエネルギーが回転力に変換され、ロータが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-138764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静翼の周囲を蒸気が通過する際、蒸気がもつ粘性に伴って、流速の小さい境界層と呼ばれる流れの層が形成されることが知られている。この境界層が発達するとエネルギー損失が生じてしまう。その結果、蒸気タービンの効率が低下する虞がある。さらに、静翼シールフィンとロータとの間を流れる蒸気の流れ(漏れ流れ)を低減してタービン効率を向上させたいという要請も存在する。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに効率が向上した蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口していることで、前記噴出口から噴出される作動流体が、前記一対のシールフィンのうちの上流側のシールフィンにおける下流側を向く面、前記ロータの外周面、前記一対のシールフィンのうちの下流側のシールフィンの上流側を向く面、及び前記ノズル内周部材の内周面を順次旋回する渦の旋回力を助長する。
開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記吸込部は、前記静翼本体の前縁よりも負圧面側に形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されている
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記ノズル内周部材の内周面における前記軸線方向に隣り合う一対の前記シールフィンの間に形成されており、前記噴出口は、一対の前記シールフィンのうち前記軸線方向一方側のシールフィン側に偏った位置で前記径方向の内側に向かって開口しており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、
を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されている。
本開示に係る蒸気タービンは、軸線回りに回転可能なロータ本体、及び該ロータ本体の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼を有するロータと、該ロータを覆うケーシングと、該ケーシングの内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼と、を備え、前記静翼は、前記軸線に対する径方向に延びるとともに、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部が表面に形成された静翼本体と、該静翼本体の径方向内側に設けられたノズル内周部材と、該ノズル内周部材の内周面から径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィンと、を有し、前記ノズル内周部材、及び前記シールフィンにおける前記軸線方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部から導かれた作動流体を噴出する噴出口が形成されており、前記噴出口は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、さらに効率が向上した蒸気タービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンの構成を示す模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る静翼の斜視図である。
図4】本開示の第一実施形態に係るシールフィンの拡大断面図である。
図5】本開示の第一実施形態に係る静翼の第一変形例を示す斜視図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る静翼の第二変形例を示す斜視図である。
図7】本開示の第一実施形態に係る静翼の第三変形例を示す斜視図である。
図8】本開示の第二実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大断面図である。
図9】本開示の第三実施形態に係る蒸気タービンの要部拡大断面図である。
図10】本開示の第三実施形態に係る蒸気タービンの第一変形例を示す要部拡大断面図である。
図11】本開示の第三実施形態に係る蒸気タービンの第二変形例を示す要部拡大断面図である。
図12】本開示の第三実施形態に係る蒸気タービンの第三変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
(蒸気タービンの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る蒸気タービン1(タービン)について、図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、蒸気タービン1は、ロータ2と、ケーシング3と、静翼段9と、ジャーナル軸受4と、スラスト軸受5と、を備えている。
【0010】
ロータ2は、軸線Acに沿って延びるロータ本体6と、このロータ本体6の外周面上で軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数の動翼段7と、を有している。ロータ本体6の軸線Ac方向における両端部にはそれぞれ1つずつのジャーナル軸受4が設けられている。ジャーナル軸受4は、ロータ本体6による径方向への荷重を支持しつつ、当該ロータ本体6を軸線Ac回りに回転可能に支持する。ロータ本体6の軸線Ac方向一方側には1つのスラスト軸受5が設けられている。スラスト軸受5は、ロータ本体6による軸線Ac方向への荷重を支持する。
【0011】
それぞれの動翼段7は、ロータ本体6の外周面に沿って周方向に配列された複数の動翼8を有している。各動翼8は、径方向から見て、軸線Ac方向一方側を前縁とし、他方側を後縁とする翼型の断面形状を有している。
【0012】
ケーシング3は、上記のロータ2を外側から覆う筒状をなしている。ケーシング3の内周面には、軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数の静翼段9が設けられている。これら静翼段9は、動翼段7と軸線Ac方向に交互に配列されている。より具体的には、各動翼段7の軸線Ac方向一方側に1つずつの静翼段9が設けられている。それぞれの静翼段9は、ケーシング3の内周面に沿って周方向に配列された複数の静翼10を有する。静翼10は、径方向から見て、軸線Ac方向一方側を前縁とし、他方側を後縁とする翼型の断面形状を有している。
【0013】
ケーシング3の軸線Ac方向一方側には、外部で生成された蒸気を導くための蒸気供給口40が設けられている。蒸気供給口40を通じてケーシング3内に導かれた蒸気は、上述の静翼段9によって流れ方向が変更された後、動翼段7に衝突する。これにより、動翼段7を介してロータ2に軸線Ac回りの回転エネルギーが与えられる。さらに、ケーシング3の軸線Ac方向他方側には、当該ケーシング3の内部を通過した蒸気を排出するための蒸気排出口50が設けられている。以下の説明では、蒸気排出口50から見て蒸気供給口40が位置する側(つまり、軸線Ac方向一方側)を単に「上流側」と呼び、その反対側を単に「下流側」と呼ぶことがある。
【0014】
(静翼の構成)
次いで、図2図3を参照して、静翼10の詳細な構成について説明する。図2に示すように、静翼10は、ノズル外周部材31と、静翼本体11と、ノズル内周部材12と、静翼シールフィン13(シールフィン)と、を有している。
【0015】
ノズル外周部材31は、ケーシング3の内周面3Sに取り付けられている。ノズル外周部材31は、軸線Acを中心とする環状をなしている。静翼本体11は、ノズル外周部材31から径方向内側に向かって延びている。つまり、ノズル外周部材31は、周方向に配列された複数の静翼本体11を径方向外側から支持している。
【0016】
図3に示すように、静翼本体11の上流側の端縁は前縁11Lとされ、下流側の端縁は後縁11Tとされている。前縁11Lと後縁11Tを結ぶ曲線(つまり、翼型断面における中心を通る線)はキャンバーラインCLとされている。このキャンバーラインCLを境界として周方向一方側を向く面は正圧面11Aとされ、他方側を向く面は負圧面11Bとされている。正圧面11Aは、周方向他方側に向かって曲面状に凹んでいる。正圧面11Aは、蒸気の流れ方向における上流側を向いている。負圧面11Bは、周方向他方側に向かって曲面状に突出している。負圧面11Bは、蒸気の流れ方向における下流側を向いている。
【0017】
負圧面11Bには、静翼本体11の周囲を流れる蒸気(作動流体)の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部20が形成されている。吸込部20は、前縁11L側に偏った位置に形成された一対の前縁側吸込口21と、後縁11T側に偏った位置に形成された1つの後縁側吸込口22と、を有している。
【0018】
前縁側吸込口21は、径方向を長手方向とする長方形の開口である。なお、前縁側吸込口21は、円形や楕円形であってもよい。一対の前縁側吸込口21は、径方向に互いに離間している。一方の前縁側吸込口21は負圧面11Bにおける径方向外側の端部近傍に形成され、他方の前縁側吸込口21は径方向内側の端部近傍に形成されている。また、静翼本体11の径方向端部から前縁側吸込口21までの距離は、これら一対の前縁側吸込口21同士の間の距離よりも小さい。さらに、一対の前縁側吸込口21の軸線Ac方向における位置は互いに同一である。ここで言う「同一」とは実質的な同一の位置を指すものであり、設計上の公差や製造上の誤差は許容される。以下の説明においても同様である。なお、一対の前縁側吸込口21の軸線Ac方向における位置が互いに異なっている構成を採ることも可能である。
【0019】
後縁側吸込口22は、径方向を長手方向とする長方形の開口である。後縁側吸込口22は、上記の前縁側吸込口21とは異なり、負圧面11Bにおける径方向のほぼ全域にわたって延びている。つまり、後縁側吸込口22は、径方向における寸法が前縁側吸込口21よりも大きい。後縁側吸込口22の径方向外側の端部の径方向位置は、一方(径方向外側)の前縁側吸込口21の径方向外側の端部の径方向位置と同一である。また、後縁側吸込口22の径方向内側の端部の径方向位置は、他方(径方向内側)の前縁側吸込口21の径方向内側の端部の径方向位置と同一である。
【0020】
静翼本体11の内部は中空とされており、上述した吸込部20(前縁側吸込口21、及び後縁側吸込口22)はこの中空部を介して、後述する噴出口Hに連通している。より具体的には、静翼本体11の内部には流体が流通する流路が形成されており、吸込部20はこの流路を通じて噴出口Hに連通している。
【0021】
静翼本体11の径方向内側には、ノズル内周部材12が設けられている。ノズル内周部材12は、軸線Acを中心とする環状をなし、周方向に配列された複数の静翼本体11を径方向内側から支持している。
【0022】
ノズル内周部材12の内周面12Sは、ロータ本体6の外周面6Sと径方向に間隔をあけて対向している。内周面12S上には、複数の静翼シールフィン13が設けられている。本実施形態では一例として3つの静翼シールフィン13が軸線Ac方向に間隔をあけて配列されている。なお、静翼シールフィン13の数は3つに限定されず、4つ以上であってもよい。それぞれの静翼シールフィン13は、内周面12Sから径方向内側に向かって突出するとともに周方向に延びる円環状をなしている。静翼シールフィン13は、径方向外側から内側に向かうに従って軸線Ac方向の寸法が次第に小さくなることでテーパ状の断面形状を有している。静翼シールフィン13の径方向内側の端部とロータ本体6の外周面6Sとの間には一定の隙間(クリアランス)が形成されている。
【0023】
次いで、図4を参照して静翼シールフィン13の詳細な構成について説明する。図4に示すように、本実施形態では3つの静翼シールフィン13のうち、最も上流側に位置する静翼シールフィン13を第一シールフィン13Aとし、最も下流側に位置する静翼シールフィン13を第三シールフィン13Cとする。さらに、これら第一シールフィン13Aと第三シールフィン13Cとの間に位置する静翼シールフィン13を第二シールフィン13Bとする。
【0024】
これら3つの静翼シールフィン13のうち、第二シールフィン13Bの先端(径方向内側の端部)には、上述した吸込部20に連通する噴出口Hが形成されている。つまり、詳しくは図示しないが、第二シールフィン13Bの内部には、吸込部20と噴出口Hとを連通させる流路が形成されている。ここで、各静翼シールフィン13同士の間に形成される空間Sでは、蒸気の主流(つまり、静翼本体11の周囲を流れる蒸気の流れ)が静翼シールフィン13自体によって阻まれるため、静翼本体11の周囲よりも静圧が低くなる。つまり、当該空間Sと静翼本体11の周囲との間には圧力差が発生する。これにより、上述の吸込部20から噴出口Hに向かって、静翼本体11の周囲の蒸気の一部が吸い込まれる。吸い込まれた蒸気Aは、噴出口Hから噴流Jとなって空間S内に噴き出す。
【0025】
(動翼の構成)
図2に示すように、動翼8は、ディスク61と、動翼本体81と、外側シュラウド82と、動翼シールフィン83と、を有している。ディスク61は、軸線Acを中心とする環状をなし、ロータ本体6の外周面6Sに取り付けられている。ディスク61の外周側には、複数の動翼本体81が設けられている。これら動翼本体81は周方向に間隔をあけて配列されている。詳しくは図示しないが、それぞれの動翼本体81は、径方向から見て翼型の断面形状を有している。動翼本体81の径方向外側には外側シュラウド82が設けられている。外側シュラウド82は、軸線Acを中心とする環状をなし、複数の動翼本体81を径方向外側から支持している。
【0026】
外側シュラウド82の外周面82Sには、軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数の動翼シールフィン83が設けられている。動翼シールフィン83は、外側シュラウド82と内周面3Sとの間に流れ込む蒸気の流れ(漏れ流れ)を抑制する。本実施形態では一例として4つの動翼シールフィン83が設けられている。なお、動翼シールフィン83の数は4つに限定されず、3つ以下や5つ以上であってもよい。それぞれの動翼シールフィン83は、外周面82Sから径方向外側に向かって突出するとともに周方向に延びる環状をなしている。動翼シールフィン83は、径方向内側から外側に向かうに従って軸線Ac方向の寸法が次第に小さくなることでテーパ状の断面形状を有している。動翼シールフィン83の先端(径方向外側の端部)とケーシング3の内周面3Sとの間には一定の隙間(クリアランス)が形成されている。
【0027】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る蒸気タービン1の動作について説明する。蒸気タービン1を運転するに当たっては、外部のボイラ等で生成された高温高圧の蒸気を蒸気供給口40からケーシング3内に供給する。ケーシング3内に供給された蒸気の大部分は、上流側から下流側に向かって流れる中途で静翼段9、及び動翼段7に交互に接触する。静翼段9は蒸気の流れ方向を変更し、動翼段7への流入角度を適正化する。動翼段7に蒸気が流れ込むことで当該動翼段7を介してロータ2に回転力が与えられる。これにより、ロータ2が軸線Ac回りに回転する。ロータ2の回転エネルギーは、例えば軸端に接続された発電機(不図示)を駆動するために用いられる。最も下流側の動翼段7を通過した蒸気は、蒸気排出口50を通じて外部の復水器等(不図示)に導かれる。
【0028】
ところで、静翼本体11の周囲を蒸気が通過する際、蒸気の粘性に伴って、流速の小さい境界層と呼ばれる流れの層が静翼本体11の表面に形成されることが知られている。境界層は特に静翼本体11の負圧面11Bにおける後縁11T側で顕著に発生する。また、静翼本体11の前縁11L付近では、径方向の両端部を起点とする二次流れとしての渦が形成されやすい。これらの事象が生じることで蒸気の円滑な流れが阻害され、蒸気タービン1の効率が低下する虞がある。さらに、上述した静翼シールフィン13とロータ本体6の外周面6Sとの間を流れる蒸気の流れ(漏れ流れ)を低減してタービン効率を向上させたいという要請も存在する。
【0029】
そこで、本実施形態では、上述した吸込部20を通じて境界層、及び二次流れを吸い込み、噴出口Hから噴流Jとして静翼シールフィン13同士の間の空間Sに供給する構成を採っている。静翼シールフィン13によって囲まれた領域(空間S)では、蒸気の主流が流れる領域(主流路)に比べて静圧が低い。この圧力差に基づいて、静翼本体11の表面に形成された吸込部20から噴出口Hに向かう流れが形成される。この流れに乗って境界層や二次流れとしての蒸気が吸込部20から吸い込まれる。吸込部20から吸い込まれた蒸気は、噴出口Hを通じて静翼シールフィン13同士の間の空間Sに噴き出す。これにより、静翼本体11の表面に形成される境界層や二次流れが低減される。その結果、静翼本体11の周囲におけるエネルギー損失が抑制され、蒸気タービン1の効率をさらに向上させることが可能となる。
【0030】
さらに、静翼本体11の負圧面11B側では特に境界層や二次流れが形成されやすい傾向にある。上記構成によれば、吸込部20は静翼本体11の前縁11Lよりも負圧面11B側に形成されている。これにより、境界層や二次流れをより効果的に吸い込むことができ、エネルギー損失をさらに低減することができる。また、この構成によれば、吸込部20としての開口部が負圧面11Bのみに限定して形成されていることから、例えば正圧面11Aにも同様の開口部を形成した場合に比べて、静翼本体11の強度低下を回避することもできる。
【0031】
加えて、負圧面11Bにおける後縁11T側に偏った位置では特に境界層が発達しやすい傾向にある。上記構成によれば、このように境界層が発達しやすい位置に後縁側吸込口22が形成されている。この後縁側吸込口22を通じて境界層が吸い込まれるため、蒸気の流れが負圧面11Bに対して密接に付着した状態となる。これにより、蒸気の流れが円滑化され、蒸気タービン1のエネルギー損失をより一層低減することができる。
【0032】
さらに加えて、負圧面11Bにおける前縁11L側の径方向内側、及び外側の領域では特に二次流れとしての渦が発生しやすい傾向にある。上記構成によれば、このように二次流れが発生しやすい位置に前縁側吸込口21が形成されている。この前縁側吸込口21を通じて二次流れが吸い込まれるため、蒸気の流れが負圧面11Bに対してさらに密接に付着した状態となる。その結果、蒸気タービン1のエネルギー損失をさらに抑えることができる。
【0033】
ここで、図4に示すように、空間S内では、静翼シールフィン13とロータ本体6の外周面6Sとの間のクリアランスCから流れ込んだ漏れ流れによって渦Vが形成されている。渦Vは、外周面6Sに沿って上流側から下流側に流れた後、下流側の静翼シールフィン13に沿って径方向外側に向きを変え、さらにノズル内周部材12の内周面12Sに沿って再び上流側に向かって流れる。
【0034】
上記構成では、軸線Ac方向の一方側から数えて2番目の第二シールフィン13Bの径方向内側の端部に噴出口Hが形成されている。噴出口Hから噴き出される噴流JによってクリアランスCを流れる漏れ流れが阻害され、当該漏れ流れに対して縮流効果を与えることができる。さらに、上述した渦Vに対して、噴流Jによってさらなる旋回力が与えられる。渦Vが発達することによって、空間S内に流れ込む漏れ流れの流量をより一層低減することが可能となる。このように、静翼シールフィン13によるシール性能が向上することで、蒸気タービン1の効率をさらに向上させることができる。
【0035】
[第一実施形態の変形例]
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を加えることが可能である。例えば、上記第一実施形態では、前縁側吸込口21が径方向に離間して一対設けられている構成について説明した。しかしながら、第一変形例として図5に示すように、径方向の全域にわたって延びる1つのみの前縁側吸込口21Bを形成することも可能である。この構成によれば、径方向の全域にわたって前縁側吸込口21が形成されていることから、より広い範囲で二次流れを効率的に吸い込むことができる。
【0036】
さらに、第二変形例として図6に示すように、前縁側吸込口21を形成せず、後縁側吸込口22のみを形成する構成を採ることも可能である。この構成によれば、前縁側吸込口21が形成されていない分だけ静翼本体11に形成される開口部が削減できることから、境界層の低減を図りつつ静翼本体11の強度低下を最小限に抑えることができる。
【0037】
加えて、第三変形例として図7に示すように、後縁側吸込口22を形成せずに、前縁側吸込口21のみを形成する構成を採ることも可能である。この構成によれば、二次流れと境界層とを前縁側吸込口21によって同時に吸い込み、低減することができる。また、この場合も静翼本体11に形成される開口部が削減できることから、二次流れと境界層の低減を図りつつ静翼本体11の強度低下を最小限に抑えることができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本開示の第二実施形態について、図8を参照して説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図8に示すように、本実施形態では、噴出口H1が形成される位置が第一実施形態とは異なっている。
【0039】
噴出口H1は、ノズル内周部材12の内周面12S上に開口している。より詳細には、噴出口H1は、第一シールフィン13Aと第二シールフィン13Bとの間の空間Sに向かって開口している。さらに具体的には、噴出口H1は、軸線Ac方向において、空間Sにおける第一シールフィン13A側に偏った位置に形成されている。つまり、空間S内で形成される渦Vの流れ方向に沿って噴流Jが形成されることで、渦Vの旋回力を助長することが可能とされている。この噴出口H1は、第一実施形態で説明した吸込部20に対して流路Fを通じて連通している。流路Fはノズル内周部材12を径方向に貫通している。
【0040】
上記構成によれば、隣り合う静翼シールフィン13同士の間の領域(空間S)に、ノズル内周部材12の内周面12Sに形成された噴出口H1を通じて蒸気を供給することができる。特に、本実施形態では噴出口H1は、軸線Ac方向において、空間Sにおける第一シールフィン13A側に偏った位置に形成されている。これにより、当該空間S内における渦Vの形成が促進されるとともに、その旋回力を高めることができる。この渦Vが発達することによって空間S内に流れ込む漏れ流れの流量が低減され、蒸気タービン1の効率をさらに高めることができる。
【0041】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を加えることが可能である。例えば、噴出口H1の位置は上記の内周面12Sに限定されず、ノズル内周部材12、及び複数の静翼シールフィン13のうち、第一シールフィン13Aよりも下流側の部分であればいかなる位置にも噴出口H1を形成することが可能である。つまり、設計や仕様に応じて、第二シールフィン13Bと第三シールフィン13Cの間の内周面12Sに噴出口H1を形成することも可能である。また、第三シールフィン13C自体に第一実施形態と同様の噴出口Hを併せて形成することも可能である。さらに、第三シールフィン13Cのみに噴出口Hを形成する構成を採ることも可能である。
【0042】
[第三実施形態]
続いて、本開示の第三実施形態について、図9を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図9に示すように、本実施形態では、静翼シールフィン13(第二シールフィン13B)における噴出口H2の形成される位置が第一実施形態とは異なっている。第一実施形態では静翼シールフィン13の先端に噴出口Hが形成されているのに対して、本実施形態では当該静翼シールフィン13における下流側を向く面(下流面13D)に噴出口H2が形成されている。言い換えれば、噴出口H2は、静翼シールフィン13の先端13T(つまり、径方向内側の端部)よりも径方向外側の位置に形成されている。また、静翼シールフィン13の基端13R(つまり、径方向外側の端部)から噴出口H2までの距離は、先端13Tから噴出口H2までの距離よりも大きい。つまり、噴出口H2は、基端13Rよりも先端13T側に近接する位置に形成されている。また、噴出口H2は、噴流Jを径方向内側に向かって噴出できるようにその開口方向が設定されている。
【0043】
上記構成によれば、隣り合う静翼シールフィン13同士の間の領域(空間S:第一実施形態と同様)に、静翼シールフィン13の下流面13Dに形成された噴出口H2を通じて噴流Jとしての蒸気を供給することができる。これにより、当該空間S内における渦の形成が促進される。特に、噴出口H2は、静翼シールフィン13の先端13T(つまり、径方向内側の端部)よりも径方向外側の位置に形成されている。これにより、例えば先端13Tに噴出口H2を形成した場合に比べて、噴流Jを渦の流れにさらになじませることができる。つまり、噴流Jによって渦の旋回力をより一層高め、当該渦を発達させることができる。渦が発達することによって上述のクリアランスCを流れる漏れ流れが低減され、蒸気タービン1の効率をさらに高めることができる。
【0044】
[第三実施形態の変形例]
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を加えることが可能である。例えば、第三実施形態の第一変形例として図10に示すように、下流側に向かって噴流Jを噴き出すように噴出口H3の開口方向を設定することも可能である。また、第二変形例として図11に示すように、下流側に噴流Jを噴き出す噴出口H4を基端13R側に近接した位置に形成することも可能である。なお、噴出口H3(H4)の開口方向は、下流側を向く方向成分を含んでいればよく、例えば図12に示すように、下流側に向かうに従って径方向内側に向かって噴流Jが形成されるように開口方向が設定されていてもよい。また、下流側に向かうに従って径方向外側に向かって噴流Jが形成されるように開口方向が設定されていてもよい。これらの構成によれば、渦の形成を促進できることに加えて、空間S内に流れ込む漏れ流れの流量自体をさらに低減することが可能となる。その結果、蒸気タービン1の効率をより一層向上させることができる。
【0045】
[各実施形態に共通する変形例]
なお、以上の各実施形態では、蒸気タービン1を例に静翼10の構成について説明した。しかしながら、静翼10に相当する構成(吸込部20、及び噴出口H,H1,H2,H3,H4)の適用対象は蒸気タービン1に限定されず、ガスタービンのタービン部にこれを適用することも可能である。
【0046】
[付記]
各実施形態に記載の蒸気タービン1は、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る蒸気タービン1は、軸線Ac回りに回転可能なロータ本体6、及び該ロータ本体6の外周面6Sに沿って周方向に配列された複数の動翼8を有するロータ2と、該ロータ2を覆うケーシング3と、該ケーシング3の内周面3Sに沿って周方向に配列された複数の静翼10と、を備え、前記静翼10は、前記軸線Acに対する径方向に延びるとともに、前記軸線Ac方向の一方側から他方側に向かって流れる作動流体の少なくとも一部を吸い込み可能な吸込部20が表面に形成された静翼本体11と、該静翼本体11の径方向内側に設けられたノズル内周部材12と、該ノズル内周部材12の内周面12Sから径方向内側に向かって突出するとともに、前記軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数のシールフィン(静翼シールフィン13)と、を有し、前記ノズル内周部材12、及び前記シールフィンにおける前記軸線Ac方向の最も一方側の前記シールフィンよりも他方側の部分には、前記吸込部20から導かれた作動流体を噴出する噴出口Hが形成されている。
【0048】
複数のシールフィン(静翼シールフィン13)によって囲まれた領域では、蒸気の主流が流れる領域(主流路)に比べて静圧が低い。この圧力差に基づいて、静翼本体11の表面に形成された吸込部20から噴出口Hに向かって作動流体の一部が吸い込まれる。これにより、静翼本体11の表面に形成される境界層や二次流れを吸い込むことができる。その結果、静翼本体11の周囲でエネルギー損失の発生を抑制することができる。
【0049】
(2)第2の態様に係る蒸気タービン1では、前記吸込部20は、前記静翼本体11の前縁11Lよりも負圧面11B側に形成されてもよい。
【0050】
負圧面11B側では特に境界層や二次流れが形成されやすい傾向にある。上記構成によれば、吸込部20は静翼本体11の前縁11Lよりも負圧面11B側に形成されている。これにより、境界層や二次流れをより効果的に吸い込むことができ、エネルギー損失をさらに低減することができる。
【0051】
(3)第3の態様に係る蒸気タービン1では、前記吸込部20は、前記静翼本体11の負圧面11Bにおける後縁11T側に偏った位置に形成され、径方向の全域にわたって延びている後縁側吸込口22を有してもよい。
【0052】
負圧面11Bにおける後縁11T側に偏った位置では特に境界層が発達しやすい傾向にある。上記構成によれば、このように境界層が発達しやすい位置に後縁側吸込口22が形成されている。この後縁側吸込口22を通じて境界層が吸い込まれるため、エネルギー損失をより一層低減することができる。
【0053】
(4)第4の態様に係る蒸気タービン1では、前記吸込部20は、前記静翼本体11の負圧面11Bにおける前縁11L側に偏った位置に形成され、径方向内側の部分、及び外側の部分の少なくとも一方に位置する前縁側吸込口21を有してもよい。
【0054】
負圧面11Bにおける前縁11L側の径方向内側、及び外側の領域では特に二次流れとしての渦が発生しやすい傾向にある。上記構成によれば、このように二次流れが発生しやすい位置に前縁側吸込口21が形成されている。この前縁側吸込口21を通じて二次流れが吸い込まれるため、エネルギー損失をさらに抑えることができる。
【0055】
(5)第5の態様に係る蒸気タービン1では、前記前縁側吸込口21は、径方向の全域にわたって延びてもよい。
【0056】
上記構成によれば、径方向の全域にわたって前縁側吸込口21が形成されていることから、より広い範囲で二次流れを効率的に吸い込むことができる。
【0057】
(6)第6の態様に係る蒸気タービン1では、前記噴出口H1は、前記ノズル内周部材12の内周面12Sに形成されてもよい。
【0058】
上記構成によれば、隣り合うシールフィン(静翼シールフィン13)同士の間の領域(空間S)に、ノズル内周部材12の内周面12Sに形成された噴出口H1を通じて作動流体を供給することができる。これにより、当該領域内における渦の形成を促進することができる。この渦が発達することによって漏れ流れの流通が低減され、蒸気タービン1の効率をさらに高めることができる。
【0059】
(7)第7の態様に係る蒸気タービン1では、前記噴出口Hは、前記複数のシールフィン(静翼シールフィン13)のうち、前記軸線Ac方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの径方向内側の端部に形成されてもよい。
【0060】
上記構成によれば、軸線Ac方向の一方側から数えて2番目のシールフィンの径方向内側の端部に噴出口Hが形成されている。これにより、当該シールフィンとロータ本体6との間に形成されるクリアランスを流れる漏れ流れに対して縮流効果を与えることができる。その結果、当該漏れ流れが低減され、蒸気タービン1の効率をさらに向上させることができる。
【0061】
(8)第8の態様に係る蒸気タービン1では、前記噴出口H2は、前記複数のシールフィン(静翼シールフィン13)のうち、前記軸線Ac方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィンの前記軸線Ac方向の他方側を向く面に形成され、径方向内側に向かって作動流体を噴出するように構成されてもよい。
【0062】
上記構成によれば、隣り合うシールフィン同士の間の領域(空間S)に、シールフィンの下流側を向く面に形成された噴出口H2を通じて作動流体を供給することができる。これにより、当該領域内における渦の形成を促進することができる。この渦が発達することによって漏れ流れが低減され、蒸気タービン1の効率をさらに高めることができる。
【0063】
(9)第9の態様に係る蒸気タービン1では、前記噴出口H3は、前記複数のシールフィンのうち、前記軸線Ac方向の一方側から数えて2番目以降の前記シールフィン(静翼シールフィン13)の前記軸線Ac方向の他方側を向く面に形成され、前記軸線Ac方向の他方側に向かう方向成分を伴って作動流体を噴出するように構成されてもよい。
【0064】
上記構成によれば、隣り合うシールフィン同士の間の領域(空間S)に、シールフィンの下流側を向く面に形成された噴出口H3を通じて作動流体を供給することができる。特に、作動流体は噴出口H3から下流側に向かう方向成分を伴って噴出される。これにより、当該領域内を通過する漏れ流れをさらに低減することができる。その結果、蒸気タービン1の効率をさらに高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示によれば、さらに効率が向上した蒸気タービンを提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 蒸気タービン
2 ロータ
3 ケーシング
3S 内周面
4 ジャーナル軸受
5 スラスト軸受
6 ロータ本体
6S 外周面
7 動翼段
8 動翼
9 静翼段
10 静翼
11 静翼本体
11A 正圧面
11B 負圧面
11L 前縁
11T 後縁
12 ノズル内周部材
12S 内周面
13 静翼シールフィン
13A 第一シールフィン
13B 第二シールフィン
13C 第三シールフィン
13D 下流面
13R 基端
13T 先端
20 吸込部
21,21B 前縁側吸込口
22 後縁側吸込口
31 ノズル外周部材
40 蒸気供給口
50 蒸気排出口
61 ディスク
81 動翼本体
82 外側シュラウド
82S 外周面
83 動翼シールフィン
Ac 軸線
C クリアランス
CL キャンバーライン
F 流路
H,H1,H2,H3,H4 噴出口
J 噴流
S 空間
V 渦
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12