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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】微粒子を含む経口薄膜を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20240906BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240906BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240906BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240906BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240906BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 31/122 20060101ALN20240906BHJP
   A61K 31/192 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K45/00
A61K9/70
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/08
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/44
A61P21/04
A61P25/00
A61P27/02
A61K31/122
A61K31/192
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022567242
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021062098
(87)【国際公開番号】W WO2021224444
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】102020112422.8
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・バウアー
【審査官】関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0150786(US,A1)
【文献】特表2011-526888(JP,A)
【文献】特表2005-511522(JP,A)
【文献】特表2010-509905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/107
A61K 45/00
A61K 31/122
A61K 31/192
A61K 9/70
A61K 47/14
A61K 47/06
A61K 47/08
A61K 47/42
A61K 47/36
A61K 47/38
A61K 47/32
A61K 47/34
A61K 47/44
A61P 21/04
A61P 25/00
A61P 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含む経口薄膜を製造する方法であって、
a)疎水性ポリマー、疎水性医薬有効成分、および疎水性溶媒を含む溶液を製造する工程、
b1)親水性ポリマーを用意し、a)の溶媒と混和しない親水性溶媒を用意する工程、または
b2)親水性ポリマーおよびa)の溶媒と混和しない親水性溶媒を含む溶液を用意する工程、
c1)a)の溶液をb1)の親水性ポリマーと混合し、次いでa)の溶媒と混和しないb1)の親水性溶媒を添加してエマルションを得る工程、または
c2)a)の溶液とb2)の溶液を混合してエマルションを得る工程、ならびに
d)c1)またはc2)のエマルションを塗布し、乾燥させて、微粒子を含む経口薄膜を得る工程
を含み、
疎水性ポリマーは1以上のlogP値を有し、親水性ポリマーは負のlogP値を有する、方法。
【請求項2】
親水性溶媒は、水または水性溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疎水性溶媒は、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、液体アルカン、液体アルケン、芳香族化合物、カルボン酸エステル、エーテル、および/またはガソリンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
親水性ポリマーは、寒天、ゼラチンおよび他のゲル形成タンパク質、セルロースおよびその誘導体、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の植物ガム、プルラン、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール共重合体、シェラック、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトおよび/またはその共重合体、キトサン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび/またはその共重合体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
疎水性ポリマーは、ポリマーである酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、ポリ(メタ)アクリラート、酢酸フタル酸ヒプロメロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、コロホニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリ酢酸フタル酸ビニル、および/または硝酸セルロースを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
親水性ポリマーは、乾燥経口薄膜の総重量に対して30から99重量%を構成する量で添加されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
疎水性ポリマーは、乾燥経口薄膜の総重量に対して1から70重量%を構成する量で添加されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
疎水性医薬有効成分は、乾燥経口薄膜の総重量に対して0.01から20重量%を構成する量で添加されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
乳化剤および/またはpH調整剤は添加されないことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
着色剤、香味料、甘味料、矯味剤、賦活剤、保湿剤、保存料、および/または酸化防止剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤を、溶液a)に、および/または溶液b)に、および/またはエマルションc)に添加する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
疎水性医薬有効成分は、1を超えるlogPを有する医薬有効成分を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
乾燥エマルションが約20から約250g/m2の坪量を有するように、c)のエマルションを塗布し、乾燥させることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって得られる経口薄膜。
【請求項14】
請求項13に記載の、フリードライヒ失調症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、原発性進行性多発性硬化症、および/またはレーベル遺伝性視神経症の処置用の医薬としての経口薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含む経口薄膜を製造する方法、当該方法によって得られる経口薄膜、およびそのような経口薄膜の医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を含む経口薄膜は、通常、医薬有効成分を含有する微粒子を含有し、これらの微粒子は、ポリマーマトリクス中に包埋される。微粒子を含むこのポリマーマトリクスは、経口薄膜の投与後に溶解し、医薬有効成分を含む微粒子は、嚥下後に放出され、患者の胃および/または腸で吸収される。
【0003】
経口薄膜は、有効成分または香味料を含有する微粒子の形態の内部水不溶性固相を含む水溶性フィルムの形態で知られる。
【0004】
そのような膜を製造するため、疎水性ポリマーおよび医薬有効成分を含む微粒子は、通常、第2の方法工程で親水性ポリマーマトリクスに実質的に組み込まれるよう、例えば特許文献1に記載されるように製造され、分離される。
【0005】
しかし、そのような製造方法は、経口薄膜の製造に少なくとも2つの独立する方法工程が必要であるという欠点を有する。次に、個別に製造された微粒子は、比較的大きな粒径を有し、粒径を調整することも比較的難しい。疎水性ポリマーおよび医薬有効成分を含む微粒子の粒径が比較的大いと、有効成分の生体利用効率が低減されるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US2015/0064231A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の従来技術の欠点を克服することである。特に、微粒子を含む経口薄膜を製造する方法を提供することが本発明の目的であり、この方法によって、可能な限り単純かつ経済的に、可能な限り少ない工程で微粒子を含む経口薄膜を製造することができる。また、この方法によって製造される経口薄膜中の微粒子は、可能な限り小さい、好ましくは100μm未満、好ましくは50μm未満、好ましくは20μm未満、特に好ましくは10μm未満、特に一層好ましくは5μm未満の粒径を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、
a)疎水性ポリマー、疎水性医薬有効成分、および疎水性溶媒を含む溶液を製造する工程、
b1)親水性ポリマーを用意し、a)の溶媒と混和しない親水性溶媒を用意する工程、または
b2)親水性ポリマーおよびa)の溶媒と混和しない親水性溶媒を含む溶液を用意する工程、
c1)a)の溶液をb1)の親水性ポリマーと混合し、次いでa)の溶媒と混和しないb1)の親水性溶媒を添加してエマルションを得る工程、または
c2)a)の溶液とb2)の溶液を混合してエマルションを得る工程、ならびに
d)c1)またはc2)のエマルションを塗布し、乾燥させて、微粒子を含む経口薄膜を得る工程
を含む、請求項1にかかる方法によって対処される。
【0009】
本発明に従う一段階の方法では、微粒子は、既知の方法のように予め個別に製造されてポリマーマトリクス中に組み込まれるのではなく、親水性/疎水性の異なる2つの溶液を混合することに基づく製造方法によって製造される。溶液a)に含有される成分は、溶液b)もしくはb2)、またはb1)の溶媒の親水性環境中で小さな液滴を形成する。次いで、このように製造したエマルションを塗布し、乾燥させる。この乾燥過程において、相の分離状態は維持される。安定な固体または半固体微粒子が形成され、微粒子は、疎水性医薬有効物質だけでなく他の構成成分も含みうる。
【0010】
好ましくは、本発明にかかる方法は、
a)疎水性ポリマー、疎水性医薬有効成分、および疎水性溶媒を含む溶液を製造する工程、
b)親水性ポリマーを用意し、a)の溶媒と混和しない親水性溶媒を用意する工程、
c)a)の溶液をb)の親水性ポリマーと混合し、次いでa)の溶媒と混和しないb)の親水性溶媒を添加してエマルションを得る工程、ならびに
d)c)のエマルションを塗布し、乾燥させて、微粒子を含む経口薄膜を得る工程
を含む。
【0011】
好ましくは、本発明にかかる方法は、
a)疎水性ポリマー、疎水性医薬有効成分、および疎水性溶媒を含む溶液を製造する工程、
b)親水性ポリマーおよびa)の溶媒と混和しない親水性溶媒を含む溶液を用意する工程、
c)a)の溶液とb)の溶液を混合してエマルションを得る工程、ならびに
d)c)のエマルションを塗布し、乾燥させて、微粒子を含む経口薄膜を得る工程
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
有利には、疎水性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性医薬有効成分の放出を制御することができるよう選択される。例えば、胃の酸性環境で溶解しないが、塩基性のより強い腸の環境でのみ溶解するポリマーが選択される。
【0013】
「含む(comprise)」という用語は、「からなる(consisting of)」も意味しうる。
【0014】
「溶液」という用語は、「懸濁液」という用語も含む。
【0015】
本発明にかかる方法は、好ましくは、工程b)、b1)、またはb2)における溶媒が水または水性溶媒であることを特徴とする。
【0016】
水は、水性環境が存在する適用部位で溶解するよう意図される膜の形成に必要なポリマーを溶解させるため、溶媒として特に好ましい。また、2つの溶媒の混合を避けるため、極性の差は大きい必要があり、これは、2つの相の形成に必要とされる。
【0017】
好ましくは、疎水性溶媒は、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、液体アルカン、液体アルケン、芳香族化合物、カルボン酸エステル、エーテル、および/またはガソリンを含む。
【0018】
工程b)、b2)の溶液または工程b1)で用意される溶媒は、親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、ポリマーを水溶性にする極性および/または荷電基を含有するポリマーである。
【0019】
親水性ポリマーは、でん粉およびその誘導体、寒天、ゼラチンおよび他のゲル形成タンパク質、セルロースおよびその誘導体、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の植物ガム、プルランおよび他の二または多糖類、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール共重合体(例えば、BASFが提供するKollicoat IRの商品名で入手できる)、シェラック、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトおよび/またはその共重合体(例えば、BASFが提供するSoloplusの商品名で入手できる)、キトサン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む群から選択される。
【0020】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体および/またはその共重合体、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール共重合体(例えば、Kollicoat IRの商品名で入手できる)を含む。
【0021】
これらの親水性ポリマーは、乾燥させた際に、薬学的に許容される期間内に適用すると溶解して微粒子を放出する薄い安定な膜を形成するという利点を有する。これにより、微粒子または疎水性医薬有効成分を比較的速く利用できるという利点だけでなく、残留物のない投与という利点がもたらされる。
【0022】
工程a)における溶液は、少なくとも1つの疎水性ポリマーを含む。
【0023】
疎水性という用語は、極性媒体または非極性(無極性)媒体のいずれかを好む分子の特性を意味する。疎水性、すなわち分子の撥水特性は、化合物の非極性の増大と共に増大する。疎水性ポリマーは、相応の低い親水性を有する。
【0024】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの疎水性ポリマーは、約1を超える、好ましくは約1.5を超える、特に好ましくは約2を超えるlogP値を有する。
【0025】
n-オクタノール-水分配係数Kow(オクタノール/水分配係数といった表記も一般的であり、かつ正しい)は、n-オクタノールと水の2相系における化学物質の濃度比を示す、当業者に知られる無次元の分配係数であり、従って物質の疎水性または親水性の尺度である。logP値は、n-オクタノール-水分配係数Kowの10を底とする対数である。以下が成立し、
【数1】
式中、C Si=オクタノールリッチ相における化学物質の濃度、
Si=水リッチ相における化学物質の濃度である。
【0026】
owは、物質がn-オクタノールといった脂様溶媒により溶解し易い場合、1を超え、物質が水により溶解し易い場合1未満である。従って、logPは、親油性物質で正であり、親水性物質で負である。
【0027】
特に好ましい実施形態において、少なくとも1つの疎水性ポリマーは、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、ポリ(メタ)アクリラート、酢酸フタル酸ヒプロメロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、コロホニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリ酢酸フタル酸ビニル、および/または硝酸セルロースを含む。
【0028】
さらに好ましくは、本発明にかかる方法は、親水性ポリマーが、乾燥経口薄膜の総重量に対して30から99重量%、好ましくは35から90重量%を構成する量で添加されることを特徴とする。
【0029】
さらに好ましくは、本発明にかかる方法は、疎水性ポリマーが、乾燥経口薄膜の総重量に対して1から70重量%、好ましくは10から65重量%を構成する量で添加されることを特徴とする。
【0030】
さらに好ましくは、本発明にかかる方法は、疎水性医薬有効成分が、乾燥経口薄膜の総重量に対して0.01から40重量%、好ましくは5から30重量%を構成する量で添加されることを特徴とする。
【0031】
前述したように、好ましくは、疎水性医薬有効成分は、約1を超える、好ましくは約1.5を超える、特に好ましくは約2を超えるlogP値を有する疎水性有効成分を含む。
【0032】
「医薬有効成分」という用語は、問題となる医薬有効成分の全ての薬学的に許容される塩および溶媒和物も含む。
【0033】
疎水性有効成分は、好ましくは、疎水性微粒子中に実質的に存在する。「実質的に」という用語は、有効成分が、系内の有効成分の総量に対し85重量%を超える、好ましくは90重量%を超える、特に好ましくは95重量%を超えるかまたは99重量%を超える割合で経口薄膜の微粒子中に存在することを意味するよう理解される。
【0034】
特に一層好ましくは、疎水性医薬有効成分は、イデベノン、ウリプリスタル酢酸エステル、および/またはケトプロフェンを含む。
【0035】
イデベノンは、例えばSanthera PharmaceuticalsからRaxone(登録商標)の商品名で販売される、2-(10-ヒドロキシデシル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-シクロヘキサ-2,5-ジエン-1,4-ジオンを意味するよう理解される。
【0036】
ウリプリスタル酢酸エステルは、(8S,11S,13S,14R,17R)-17-アセトキシ-11-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオンを意味するよう理解される。
【0037】
ケトプロフェンは、(RS)-2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸を意味するよう理解される。
【0038】
さらに、香味料および/または精油も微粒子中に好ましく存在しうる。
【0039】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、乳化剤および/またはpH調整剤を添加しないことを特徴とし、得られる微粒子を含む経口薄膜中に乳化剤および/またはpH調整剤がいずれも存在しないという結果をもたらす。
【0040】
乳化剤は、エマルションの製造および安定化のための補助剤に使用される用語であり、狭義では表面活性物質または界面活性剤とも表現され、通常、油状からワックス状の物質としてだけでなく粉末状の物質としても存在する。
【0041】
緩衝効果を有し、そのため特定のpHに調整または特定のpHを維持する働きをする物質または物質の混合物は、全てpH調整剤であると考えられる。
【0042】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、着色剤、香味料、甘味料、矯味剤、賦活剤、保湿剤、保存料、および/または酸化防止剤を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤を、溶液a)および/もしくはb)もしくはb2)もしくはb1)の溶媒、ならびに/またはエマルションc)、c1)もしくはc2)に添加する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0043】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、各々の含有量が乾燥経口薄膜の総重量に対して0.01から25重量%となる量でこれらの添加剤が添加されることを特徴とする。
【0044】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、乾燥エマルションが約20から約250g/mの坪量を有するように、c)、c1)、またはc2)のエマルションを塗布し、乾燥させることを特徴とする。
【0045】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、乾燥エマルションの層が、好ましくは約10μmから約500μm、好ましくは約50μmから約300μmの厚さを有するようc)、c1)、またはc2)のエマルションを塗布し、乾燥させることを特徴とする。
【0046】
エマルションは、好ましくは、スキージで塗布される。
【0047】
代わりに、コーティングボックス(coating box)、螺旋状ドクターブレード、スロットノズル、またはローラ塗布機を塗布に使用することができる。
【0048】
塗布されたエマルションは、好ましくは、乾燥キャビネット内で、別法として人工気候室内で、好ましくは10分間、40℃から100℃までの好ましい温度範囲で乾燥させられる。
【0049】
本発明にかかる方法は、さらに好ましくは、c)、c1)、またはc2)のエマルションが攪拌されるか、そうでなければ混合されることを特徴とする。攪拌または混合の強さによって、微粒子の大きさに影響を与えることができる。原則として、攪拌または混合の強さが強いほど、結果として得られる微粒子は小さくなる。
【0050】
一実施形態において、エマルションの撹拌にタービン型撹拌機が使用される。適切なタービン型撹拌機は、例えば、IKA社またはHeidolph社から入手できる。
【0051】
代わりに、プロペラ型撹拌機、アンカー型撹拌機、溶解機、ホモジナイザ、コロイドミル、超音波ミキサ、またはマイクロフルイダイザを攪拌または混合に使用することができる。
【0052】
エマルションは、好ましくは、少なくとも15分間、最長で24時間、攪拌または混合される。
【0053】
エマルションは、好ましくは、少なくとも50rpm、最大で8000rpmの速度で攪拌または混合される。
【0054】
示されるエマルションは、好ましくは、4℃から50℃までの温度で攪拌または混合される。
【0055】
好ましくは、微粒子は、100μm未満、好ましくは50μm未満、好ましくは20μm未満、好ましくは10μm未満、特に一層好ましくは5μm未満または3μm未満の平均粒子径を有する。平均粒子径は、光学顕微鏡法で測定される。
【0056】
本発明は、前述の方法によって得られる微粒子を含む経口薄膜にさらに関する。
【0057】
本発明にかかる方法に関して記載された定義は、前述の方法によって得られる経口薄膜にも適用される。
【0058】
本方法によって得られる微粒子を含む経口薄膜は、特に、微粒子が100μm未満、好ましくは50μm未満、好ましくは20μm未満、好ましくは10μm未満、特に一層好ましくは5μm未満または3μm未満の平均粒子径を有することを特徴とする。平均粒子径は、光学顕微鏡法で測定される。
【0059】
そのような小さい微粒子の利点は、含有される疎水性医薬有効成分の生物学的利用能の増大にある。
【0060】
最後に、本発明は、医薬として、特にフリードライヒ失調症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、原発性進行性多発性硬化症、および/またはレーベル遺伝性視神経症の治療に使用される、前述の方法によって得られる微粒子を含む経口薄膜に関する。
【0061】
以下、非限定的な例によって本発明を説明する。
【実施例1】
【0062】
【表1】
【0063】
表1に従う組成物で作られる発明にかかる経口薄膜の製造において、ポリビニルアルコール68.85重量%を水中に溶解させた。
【0064】
同時に、酢酸コハク酸ヒプロメロース24.89重量%およびイデベノン6.24重量%を酢酸メチル中に溶解させた。
【0065】
次いで、ポリビニルアルコール溶液と酢酸コハク酸ヒプロメロースおよびイデベノンを含む溶液とを混合し、エマルションを得た。
【0066】
得られたエマルションを塗布し、乾燥させた。
【0067】
得られた経口薄膜は、疎水性微粒子が安定した分離相としてその中に存在する固体親水性ポリマーマトリクスを有する。微粒子は、(光学顕微鏡法で測定して)5μm未満の平均粒子径を有する。
【実施例2】
【0068】
【表2】
【0069】
表2に従う組成物で作られる発明にかかる経口薄膜を製造するため、ケトプロフェン10.00重量%を疎水性溶媒(酢酸メチル)15.00重量%中に溶解させた。これに、疎水性ポリマー(Eudragit Smartseal)3.80重量%を添加し、ケトプロフェンが溶解するまで混合物を攪拌した。
【0070】
この溶液に、表2に従って親水性ポリマー(Σ15.7%)を添加した。
【0071】
次いで、急速攪拌しながら45%の水を親水性溶媒として添加し、エマルションを得た。
【0072】
このエマルションに残りの成分を添加した。HPMC60SH50、イソマルト、サッカリン、およびスクラロースを順に添加した。別途、BHT、Miglyol、Span85、PS80、ミント香味料、およびオレンジ香味料を溶解させ、本体に滴加した。水1.314gで洗い流し、本体を2000rpmで5分間攪拌して脱気した。均一な乳白色のエマルションが形成された。得られたエマルションを塗布し、乾燥させた。
【0073】
得られた経口薄膜は、安定した分離相として疎水性微粒子が存在する固体親水性ポリマーマトリクスを有する。