(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ペンタペプチドを有効成分として含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20240906BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240906BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240906BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240906BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240906BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240906BHJP
A61Q 15/00 20060101ALN20240906BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K8/64
A61P17/00
A61P25/02
A61P25/04
A61P29/02
A61P43/00 111
A61Q15/00
C07K7/06 ZNA
(21)【出願番号】P 2022576024
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2021007323
(87)【国際公開番号】W WO2021251789
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0071659
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0071660
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】リ ウンジ
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特許第7110405(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/067712(WO,A1)
【文献】特表2023-529465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/08
A61K 8/64
A61P 17/00
A61P 25/02
A61P 25/04
A61P 29/02
A61P 43/00
A61Q 15/00
C07K 7/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む、多汗症の予防又は治療用薬学的組成物
であって、前記多汗症から、脇部位で発生する多汗症は除外されるものである、薬学的組成物。
【請求項2】
前記多汗症は、局所多汗症及び全身多汗症を含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記多汗症は、顔、額、首、手
、及び足より構成された群から選択されるいずれか1つの皮膚部位に発生するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物を処理していない対照群に比べて汗の生成が45%から90%減少するものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む、多汗症の予防又は緩和、又は体臭抑制用組成物
であって、前記多汗症から、脇部位で発生する多汗症は除外されるものである、組成物。
【請求項6】
前記体臭は、汗腺分泌物がバクテリアにより分解されて発生する分解産物による悪臭である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記体臭は、脇、足、手、額、首、顔、又は頭皮部位から発生する悪臭である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む、多汗症の予防又は緩和、又は体臭抑制用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタペプチドを有効成分として含む組成物の過度な汗発生抑制用途、体臭抑制用途又は疼痛予防又は治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多汗症(hyperhidrosis)は、身体の温度調節に必要である以上に過度に非正常的に増加した発汗及び汗分泌を特徴とする皮膚障害を意味する。多汗症は、遺伝的原因又は身体的、情緒的ストレスにより発生し、全身又は身体の特定部位に局所的に現われることがある。過度な発汗が手のひら、足裏、顔、脇、頭皮などに局所的に現われる場合、これを1次又は局所多汗症という。全身又は2次多汗症は、通常、身体全体に係る。
【0003】
現在、多汗症を治療する方法には、汗抑制剤を用いる方法、汗腺を一時的に防ぐイオン移動法、発汗を刺激する神経を一時的に遮断させるためのボトックス療法(WO2010-078242)、及び内視鏡胸部交感神経切除術や汗腺を除去する手術的方法などがある。この中で、ボツリヌストキシンを用いて神経を一時的に遮断する方法の場合、その麻痺効果が平均6ヶ月間可逆的なので、このような処理にはボツリヌストキシンの繰り返し注射が必要であり、ボツリヌストキシンは患者の免疫系により認識され得る大きさを有するので、薬剤に対する免疫反応が誘発されることがある。よって、免疫反応を誘発しないより簡単かつ安定した分子構造を有するとともに、高い汗減少活性を有し、長い持続性及び少ない副作用を有する非侵襲的な治療を可能にする分子の開発が必要な実情である。
【0004】
一方、体臭は、汗腺から分泌される汗が微生物や細菌などにより分解される過程で発生するところ、全身に分布するエクリン汗腺(eccrine sweat gland)と脇などの体毛が多い部分に分布するアポクリン汗腺(apocrine sweat gland)などから分泌される汗に含まれている脂肪、タンパク質、皮脂及び汚染物などが微生物や細菌などにより分解される過程で、腋臭、足臭、頭臭など不快感を起こす体臭を発生させる。一般的に、体臭を制御するために、消臭、抗菌、マスキングなどの方法を用いているが、体臭を隠すために誤った香りを用いる場合には、却って悪臭を漂わせるようになり逆効果となり得る。また、消臭成分を皮膚に用いる場合、処理後、次の洗浄時まで一時的な効果のみを提供するだけで、洗浄の後には再処理しなければならないという煩わしさが存在する。
【0005】
そこで、本発明者達は、体臭の根本的な原因といえる過度な汗の発生を抑制することにより体臭を抑制することができる素材を開発するために鋭意努力した結果、本発明者達によって新たに合成されたペンタペプチドが安定した分子構造を有し、経皮を介して皮膚組織まで浸透して高い汗減少活性を示すので、多汗症の治療及び体臭の制御に有用に用いられ得ることを確認し、本発明を完成した。
【0006】
一方、疼痛は、多様な原因により発生し、疼痛が長時間持続するかその刺激が酷すぎる場合には、日常生活に支障が生じて不安と恐怖を感じたりもする。一般的に、疼痛は、発生部位により、頭痛、胸痛、腹痛、腰痛などと呼ばれ、発生メカニズムにより体性痛(somatic pain)、内臓痛(visceral pain)、神経障害性疼痛(neuropathic pain)、心因性疼痛(psychogenic pain)などに分けられ、時間的概念により急性疼痛と慢性疼痛に分けられる。臨床的に重要な意味を有する慢性疼痛は、明らかに疼痛を起こすだけの原因がないにもかかわらず、一般的に6ヶ月以上疼痛が持続することを訴えることをいう。慢性疼痛の大部分は、自発痛(spontaneou spain)、異痛症(allodynia)及び痛覚過敏(hyperalgesia)を特徴とする神経障害性疼痛の形態に発現され、軽微な温度変化や衣服による軽い接触などによっても酷い疼痛が誘発されるため、患者の日常生活に重大な支障をもたらし、既存の多様な治療法にもよく反応しないという特徴がある。
【0007】
現在、疼痛の治療には、神経遮断術などの侵襲的治療法や、多くの種類の薬物治療法(アヘン系薬物、神経系イオン通路活性度調節薬物、抗けいれん剤など)が応用されているが、前記薬物は、高容量で投与してこそその効果を示し、初期には効果があったとしても長期使用時に耐性が生じて効果がなくなる場合も頻繁である。また、胃腸管出血、胃膓障害、肝臓損傷などの副作用が生じることがある。
【0008】
そこで、既存の治療法の副作用を解消することができる新たな治療法としてボツリヌス毒素Aを用いる方法が紹介されている。Ranouxなどは、機械的異痛症を有した帯状疱疹後疼痛、手術後神経病性疼痛の患者を対象にボツリヌス毒素の皮内注射を施行した後、疼痛と異痛症の減少を報告し(Ranoux et al.,Annals of Neurology 64(3):274~283(2008))、Yuanなどは、糖尿病性神経痛の患者における疼痛の減少と睡眠障害の改善を報告した(Yuan et al.,Neurology 72:1473~1478(2009))。しかし、最近、胃薬を投与して比較したとき同じ効果を示したという報告も増加しているので、より多くの研究結果が必要である。
【0009】
一方、ボツリヌストキシンは、その効果が平均6ヶ月と可逆的なので、疼痛を治療するため繰り返し注射が必要であり、患者の免疫系によって認識され得る大きさを有するので、薬剤に対する免疫反応が誘発されることがある。よって、免疫反応を誘発せずに、より簡単かつ安定した分子構造を有するとともに、高い疼痛緩和活性を有し、長い持続性及び少ない副作用を有する非侵襲的な治療を可能とする分子の開発が必要な実情である。
【0010】
よって、本発明者達は、新たな疼痛治療剤を開発するために鋭意努力した結果、新たに合成したペンタペプチドが安定した分子構造を有し、経皮を介して皮膚組織まで浸透して高い疼痛抑制活性を示すので、疼痛治療に有用に用いられ得ることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、多汗症を予防又は治療するための薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の一目的は、多汗症の予防又は治療方法を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の一目的は、多汗症の予防又は治療に用いるためのペプチドを提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の一目的は、多汗症を予防又は緩和するか、体臭を抑制するための組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の一目的は、体臭を抑制する方法を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の一目的は、体臭の抑制に用いるためのペプチドを提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の一目的は、疼痛を緩和するための組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の一目的は、疼痛を予防又は治療するための薬学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明のまた他の一目的は、疼痛予防又は治療方法を提供することにある。
【0020】
本発明のまた他の一目的は、疼痛予防又は治療に用いるためのペプチドを提供することにある。
【0021】
本発明のまた他の一目的は、疼痛を緩和又は改善するための医薬部外品組成物を提供することにある。
【0022】
本発明のまた他の一目的は、疼痛を緩和又は改善するための化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このため、本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む多汗症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
本発明の他の一側面は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む多汗症の予防又は治療方法を提供する。
【0025】
本発明のまた他の一側面は、多汗症の予防又は治療に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0026】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む多汗症の予防又は緩和、又は体臭抑制用組成物を提供する。
【0027】
本発明のまた他の一側面は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む体臭抑制方法を提供する。
【0028】
本発明のまた他の一側面は、体臭抑制に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0029】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛緩和用組成物を提供する。
【0030】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0031】
本発明のまた他の一側面は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む疼痛の予防又は治療方法を提供する。
【0032】
本発明のまた他の一側面は、疼痛の予防又は治療に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0033】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0034】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛緩和用化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、経皮(皮膚)を介して皮膚組織の筋肉層まで吸収され、神経末端から神経伝達物質の非正常的な放出を抑制して汗の発生を減らすことができるので、塗るだけでも多汗症の症状を予防、緩和、改善又は治療する用途として用いられ得る。
【0036】
また、本発明の前記ペンタペプチドは、過度な汗生成を抑制することにより、体臭の発生原因を事前に遮断して半永久的に体臭抑制効果を提供することができる。
【0037】
本発明の配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、筋細胞における伝染性サイトカインの発現を抑制し、神経末端から疼痛伝達因子の放出を抑制して疼痛の発生及び伝達を抑制することができるので、疼痛を緩和、改善、予防又は治療する用途として用いられ得る。
【0038】
また、本発明のペンタペプチドは、経皮(皮膚)を介して皮膚組織の筋肉層まで吸収されるので、皮膚に適用する医薬品、医薬部外品及び化粧料の原料として用いられ得る。
【0039】
但し、本発明の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1a】KFLIKペプチドの熱安定性の評価結果を示した図である:45℃で長期保管時にペプチドの高温安定性を確認した結果を示したものである。
【
図1b】KFLIKペプチドの熱安定性の評価結果を示した図である:最大加温温度(121℃)でペプチドの高温安定性を確認した結果を示したものである。
【
図2a】神経細胞におけるKFLIKペプチド処理によるSNARE複合体の形成抑制効果を示した図である:SNARE複合体の形成可否をウェスタンブロットで確認した結果を示したものである。
【
図2b】神経細胞におけるKFLIKペプチド処理によるSNARE複合体の形成抑制効果を示した図である:SNARE複合体を構成するシンタキシン1aの分解程度を確認した結果を示したものである。
【
図3】神経細胞におけるKFLIKペプチド処理による神経伝達物質の放出抑制効果を示した図である。
【
図4】多汗症患者の手のひら部位において本発明のKFLIKペプチド処理による相対的な汗減少効果を示した図であり、Aは、ヨウ素デンプン実験の結果をイメージ写真で示したものであり、Bは、汗減少効果をImage J softwareを用いた強度(Intensity)分析結果で示したものである。
【
図5】多汗症患者の足裏部位において本発明のKFLIKペプチド処理による相対的な汗減少効果を示した図であり、Aは、ヨウ素デンプン実験の結果をイメージ写真で示したものであり、Bは、汗減少効果をImage J softwareを用いた強度分析結果で示したものである。
【
図6】多汗症患者の脇部位において本発明のKFLIKペプチド処理による相対的な汗減少効果を示した図であり、Aは、ヨウ素デンプン実験の結果をイメージ写真で示したものであり、Bは、汗減少効果をImage J softwareを用いた強度分析結果で示したものである。
【
図7】KFLIKペプチドに蛍光物質であるローダミンを付着して神経細胞内にKFLIKペプチドが浸透するのか確認した蛍光顕微鏡写真である:Aは、青色に染色された神経細胞の核と赤色のローダミン-ペンタペプチドが共存することを示したものであり、Bの青色は、DAPIで染色された神経細胞の核を示し、Cの赤色は、ローダミン-ペプチドを示す。
【
図8】実験動物の背中にローダミン-KFLIKペプチドを塗布した後、皮膚組織を採取して筋肉層までKFLIKペプチドが浸透するか確認した蛍光顕微鏡写真である:Aの青色は、DAPIで染色された細胞の核を示し、Bは、緑色のTrkBナーブファイバマーカーを示し、Cは、赤色のローダミン-ペンタペプチドを示し、Dの黄色は、筋肉層の神経細胞まで本発明のペンタペプチドが浸透したことを示したものである。
【
図9】本発明のKFLIKペプチドの体臭抑制効果を示した図であり、コリネバクテリウムの増殖抑制効果を分光光度計(spectrophotometer)を用いた吸光度測定結果で示したものである。P/Cは、陽性対照群であって1%のトリクロサン(triclosan)である。
【
図10a】筋細胞におけるKFLIKペプチド処理による伝染性サイトカインの発現抑制効果を示した図である:RT-PCRを行い、IL-1α、TNF-α、IL-1β及びCOX-2遺伝子のmRNA発現水準を確認した結果を示したものである。
【
図10b】筋細胞におけるKFLIKペプチド処理による伝染性サイトカインの発現抑制効果を示した図である:ウェスタンブロットを介してCOX-2、IL-1β、TNF-αタンパク質の発現水準を確認した結果を示したものである。
【
図11】神経細胞におけるKFLIKペプチド処理により疼痛伝達因子であるP物質(substance P)の放出が抑制される効果を示した図である。
【
図12a】人体効能評価を介して本発明のKFLIKペプチド処理による筋肉痛緩和効果を示した図である:疼痛評価尺度(Numeric rating scale,NRS)の測定を介して疼痛強度の平均値を算出した結果である。
【
図12b】人体効能評価を介して本発明のKFLIKペプチド処理による筋肉痛緩和効果を示した図である:KFLIKペプチド処理による疼痛軽減程度を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0042】
本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む多汗症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0043】
本明細書において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状又は環状の分子を意味する。前記ペプチドの作製は、本技術分野において公知の通常の生物学的又は化学的合成方法により達成されてよく、一例として、固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)のような方法により達成されてよい。
【0044】
本明細書において、用語「ペンタペプチド」は、5個のアミノ酸残基からなる線状分子を意味し、本発明のペンタペプチドは、具体的に、配列番号1のアミノ酸配列(KFLIK)から構成された線状ペプチド分子を意味する。
【0045】
前記「ペプチド」及び「ペンタペプチド」は、機能に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換又はこれらの組み合わせにより異なる配列を有するアミノ酸の変異体、又は断片であってよい。前記ペプチドの活性を全体的に変更させないアミノ酸交換は本技術分野に公知されている。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などに変形されてよい。したがって、本発明は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されたペンタペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチド及びその変異体、又はその活性断片を含む。前記実質的に同一のタンパク質とは、前記KFLIKのアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味するが、これに限定されず、75%以上のアミノ酸配列の相同性を有して同一の活性を有するならば本発明の範囲に含まれる。また、本発明のペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期又はペプチド安定性を増加させるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列を追加で含むことができる。
【0046】
また、より良い化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトラム)、減少した抗原性を獲得するために、本発明のペプチドのN-末端又はC-末端に保護基が結合されていてよい。例えば、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基又はポリエチレングリコール(PEG)であってよいが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させることができる成分であれば、制限なく含んでよい。前記「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する生体内(invivo)での安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も含む意味として用いられる。
【0047】
本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、SNARE複合体の形成を阻害して神経末端から神経伝達物質が過度に放出されることを抑制することにより多汗症を予防又は治療することができる。
【0048】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、多汗症が現れる皮膚部位における汗の発生を抑制する効果を示し、多汗症を予防又は緩和することができる。
【0049】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、経皮吸収を介して皮膚組織の筋肉層まで浸透するので、病変部位に塗るだけで多汗症の症状を改善又は緩和することができる。
【0050】
本発明における「多汗症」とは、身体を冷やすのに必要な程度を超えた過度かつ統制されていない発汗に特性化される疾病状態を意味するものであり、汗腺の機能亢進及びそのコリン性刺激の撹乱により過度に汗が分泌される疾患又は症状を意味する。本発明において、多汗症は、局所多汗症と全身多汗症を全て含み、例えば、顔、額、首、手、足、及び脇より構成された群から選択されるいずれか1つの皮膚部位に発生するものであってよいが、これらに限定されない。
【0051】
具体的な実施例において、本発明のペンタペプチドを含有する組成物を多汗症患者の一方の手のひら、足裏及び脇部位に塗布したとき、前記組成物を塗布していない反対方向の対照部位に比べて汗の生成が45%から90%減少することを確認した。
【0052】
本発明において、用語「予防」は、前記ペンタペプチドを含む組成物の投与で疼痛を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0053】
本発明において、用語「治療」は、前記ペンタペプチドを含む組成物の投与で疼痛が「緩和」又は「改善」されるか、よく変更される全ての行為を意味する。
【0054】
本発明による多汗症の予防又は治療用薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化されて用いることができ、剤形化のために薬学組成物の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。
【0055】
前記薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどを含むことができる。
【0056】
前記薬学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などを追加でさらに含むことができる。
【0057】
前記薬学的組成物は、目的する方法により経口投与するか非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間により異なるが、当業者により適宜選択されてよい。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含んだ要素及びその他医学分野によく知られている要素により決定されてよい。前記薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか他の肥満治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、又は順次に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与するのが重要であり、これは当業者により容易に決定され得る。
【0059】
前記薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用する薬物に応じて変わり得、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減してもよく、例えば、前記薬学的組成物を1日当たり、患者の体重1kg当たり約0.0001μgから500mg、好ましくは0.01μgから100mgで投与してもよい。
【0060】
他の側面において、本発明は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む多汗症の予防又は緩和、又は体臭抑制用組成物を提供する。
【0061】
本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、SNARE複合体の形成を阻害して神経末端から神経伝達物質が過度に放出されることを抑制することにより多汗症を予防又は治療することができ、過度な汗生成により発生する体臭を抑制することができる。
【0062】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、多汗症が現われる皮膚部位における汗の発生を抑制するという効果を示すので、多汗症を予防又は緩和することができ、過度な汗生成により発生する体臭を抑制することができる。
【0063】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、体臭誘発菌株の生長を阻害することにより、汗に含まれた物質が分解されて体臭が発生することを抑制することができる。
【0064】
前記ペプチド、ペンタペプチド及び多汗症の具体的な内容は、前述のとおりである。
【0065】
本明細書において、前記「体臭」は、汗腺分泌物、すなわち、汗とともに排出された脂肪、タンパク質、皮脂及び/又は老廃物がバクテリアにより分解されて発生する分解された産物の悪臭を意味し、具体的に、身体のうち汗が多く発生する身体部位、例えば、脇、足、手、額、首、顔、又は頭皮部位から発生する悪臭であり得る。
【0066】
本明細書において、前記「体臭抑制」は、汗腺分泌物が微生物により分解された産物による悪臭を防止するか又は体臭の原因である汗の発生を抑制することを意味する。具体的に、前記体臭抑制は、脇、足、手、額、首、顔又は頭皮部位における悪臭を防止するか、前記部位における汗生成を抑制することであってよく、より具体的に腋臭症を予防することであってよい。
【0067】
また他の側面において、本発明は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む多汗症の予防又は緩和、又は体臭抑制用化粧料組成物を提供する。
【0068】
前記化粧料組成物は、本技術分野において通常製造される任意の剤形に製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されてよいが、これらに制限されるものではない。
【0069】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、デオドラント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアエアロゾル、ポマード、ゲルなどの溶液、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、エアロゾルなどの多様な形態に製造されてよいが、これらに制限されるものではない。
【0070】
本発明の化粧料組成物は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドに加えて賦形剤、担体などのその他の添加剤を含むことができ、一般の皮膚化粧料に配合される普通の成分を必要なだけ適用して配合することが可能である。
【0071】
前記化粧料組成物の剤形の形態がペースト、クリーム又はゲルである場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などが用いられてよい。
【0072】
前記化粧料組成物の剤形の形態がパウダー又はスプレーである場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーが用いられてよく、特に、スプレーである場合は、追加でクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進体が含まれてよいが、これらに制限されるものではない。
【0073】
前記化粧料組成物の剤形の形態が溶液又は乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が用いられてよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0074】
前記化粧料組成物の剤形の形態が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチルソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁液剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、又はトラガカントなどが用いられてよい。
【0075】
前記化粧料組成物の剤形が界面-活性制含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0076】
前記化粧料組成物の剤形がヘアシャンプーである場合は、本発明のトロロックス-ペプチド結合体に増粘剤、界面活性剤、粘度調節剤、保湿剤、pH調節剤、防腐剤、エッセンシャルオイルなどのように、シャンプーを組成するためのベース成分が混合されてよい。前記増粘剤としてはCDEが用いられてよく、前記界面活性剤にはアニオン界面活性剤であるLESと、両方性界面活性剤であるココベタインが用いられてよく、前記粘度調節剤としてはポリクオーターが用いられてよく、前記保湿剤としてはグリセリンが用いられてよく、前記pH調節剤としてはクエン酸、水酸化ナトリウムが用いられてよい。前記防腐剤としてはグレープフルーツ抽出物などが用いられてよく、この他にもシダーウッド、ペパーミント、ローズマリーなどのエッセンシャルオイルとシルクアミノ酸、ペンタオール又はビタミンEが添加されてよい。
【0077】
前記化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として本発明の前記トロロックス-ペプチド結合体と担体成分の他に、化粧料組成物に通常用いられる成分、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤などをさらに含んでよいが、これらに制限されるものではない。
【0078】
また他の一側面において、本発明は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む多汗症の予防又は治療方法を提供する。
【0079】
また他の一側面において、本発明は、多汗症の予防又は治療に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0080】
また他の一側面において、本発明は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む体臭抑制方法を提供する。
【0081】
また他の一側面において、本発明は、体臭抑制に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0082】
前記「個体(subject)」は、ヒトを含むものであってよい。また、用語「個体(subject)」は、本願のペンタペプチドの投与を必要とする個体(subject in need thereof)であってよく、前記投与を必要とする個体は、多汗症又は体臭症に対して診断を受けた個体、多汗症又は体臭症関連の症状が発現された個体だけではなく、前記疾患や症状の発現を予防するか健康の改善のために投与を希望する個体を含むものであってよい。
【0083】
前記「投与」は、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明のペンタペプチドの投与経路は、目的組織に到達することができる限り、一般的な全ての経路を介して経口又は非経口投与されてよい。また、ペンタペプチドは、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置により投与されてよい。
【0084】
前述したように、本発明のペンタペプチドは、神経細胞でSNARE複合体の形成を阻害することにより神経伝達物質の過度な放出を抑制し、汗が過度に生成される部位に塗るだけでも筋肉層の神経細胞まで浸透して汗生成を抑制する効果に優れるため、多汗症の予防、改善、緩和又は治療又は体臭抑制を目的とする医薬品又は化粧料組成物の原料として用いられ得る。
【0085】
本発明のまた他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛緩和用組成物を提供する。
【0086】
本明細書において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状又は環状の分子を意味する。前記ペプチドの作製は、本技術分野において公知の通常の生物学的又は化学的合成方法により達成されてよく、一例として、固相合成技術(solid-phasesynthesistechniques)のような方法により達成されてよい。
【0087】
本明細書において、用語「ペンタペプチド」は、5個のアミノ酸残基からなる線状分子を意味し、本発明のペンタペプチドは、具体的に、配列番号1のアミノ酸配列(KFLIK)から構成された線状ペプチド分子を意味する。
【0088】
前記「ペプチド」及び「ペンタペプチド」は、機能に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換又はこれらの組み合わせにより異なる配列を有するアミノ酸の変異体、又は断片であってよい。前記ペプチドの活性を全体的に変更させないアミノ酸交換は本技術分野に公知されている。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などに変形されてよい。したがって、本発明は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されたペンタペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチド及びその変異体、又はその活性断片を含む。前記実質的に同一のタンパク質とは、前記KFLIKのアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味するが、これに限定されず、75%以上のアミノ酸配列の相同性を有して同一の活性を有するならば本発明の範囲に含まれる。また、本発明のペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期又はペプチド安定性を増加させるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列を追加で含むことができる。
【0089】
また、より良い化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトラム)、減少した抗原性を獲得するために、本発明のペプチドのN-末端又はC-末端に保護基が結合されていてよい。例えば、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基又はポリエチレングリコール(PEG)であってよいが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させることができる成分であれば、制限なく含んでよい。前記「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する生体内(invivo)での安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も含む意味として用いられる。
【0090】
本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、筋細胞で伝染性サイトカインの発現を抑制して炎症反応を抑制するので、微細裂傷などによる疼痛を予防又は治療することができる。
【0091】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、シナプスニューロンから分泌される疼痛伝達因子である物質P(substance P)の放出を抑制して疼痛の伝達を防止するので疼痛を予防又は治療することができる。
【0092】
また、本発明のKFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドは、経皮吸収を介して皮膚組織の筋肉層まで浸透するので、病変部位に塗るだけで疼痛を予防、緩和又は治療することができる。
【0093】
本発明において、「疼痛」は、疼痛受容体を有した特殊な神経に対する刺激により生ずる不快な感覚を意味し、本発明のペンタペプチドによりその感覚が緩和、予防又は治療される全ての症状を含む。本発明による疼痛は、急性又は慢性痛であり得る。
【0094】
本発明において、前記疼痛は、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚受容性疼痛及び心因性疼痛より構成された群から選択される1つ以上であってよく、例えば、痛覚受容性疼痛、炎症性疼痛などが複合的に作用する癌性疼痛(cancer pain)及び手術後疼痛(postoperative pain);神経病性疼痛に該当する三叉神経疼痛(trigeminal neuralgia pain)、特発性疼痛(idiopathic pain)及び糖尿性神経病性疼痛(diabetic neuropathic pain);及び内臓痛に該当する偏頭痛及び生理痛より構成された群から選択される1つ以上であってよいが、これに制限されない。
【0095】
また、本発明のペンタペプチドを含む組成物は、皮膚又は筋骨格系に発生する疼痛に適用することができ、例えば、糖尿神経病症(diabetic neuropathy)、糖尿末梢神経病症(diabetic peripheral neuropathy)、ウイルス感染による疼痛、侵害性疼痛(nociceptive pain)、顔面神経痛、帯状疱疹後疼痛(postherpetic neuralgia)、腰痛、ディスク、神経根病症(radiculopathy)、神経病症(neuropathy)、痛覚過敏症(hyperalgesia)、中枢神経感作(central sensitization)関連疼痛、異痛症(allodynia)、癌疼痛(cancerpain)、筋膜疼痛症侯群、手根管症侯群、肘部管症候群(尺骨神経病症)、ドケルバン症候群、回旋筋腱板症侯群、骨関節炎(osteoarthritis)、腱炎、腱滑膜炎、外側上腕骨炎、内側上腕骨炎、腱損傷、滑液包炎、靭帯炎症、テニスエルボー、ゴルフエルボー、膝関節痛、膝蓋腱炎、半月板軟骨損傷、指関節痛、手首腱炎、手首捻挫、足首捻挫、捻挫、繊維筋肉痛(fibromyalgia)、足底筋膜炎、炎症性関節炎、感染性関節炎、リュウマチ関節炎、退行性関節疼痛、五十肩(frozenshoulder)、通風、産後関節痛、骨髓炎、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、退行性脊椎障害、腰椎脊柱管狭窄症、大腿部疼痛(cruralgia)、捻挫、打撲傷、関節痛及び座骨神経痛(sciatica)から選択される1つ以上に伴う疼痛であってよい。
【0096】
具体的に、本発明によるペンタペプチドは、皮膚に塗るだけでも筋肉層まで到達し、皮膚を介して吸収されて優れた鎮痛効果を示すので、特に、皮膚又は皮膚と身近に位置している組織の疼痛、特に、皮下脂肪が薄い部位の周囲の疼痛にも効果的に作用することができる。例えば、膝、肘、指、肩、足首、足などの部位の捻挫、打撲傷、関節痛、腱炎、靭帯炎症、五十肩、回旋筋腱板症侯群などとテニスエルボー、ゴルフエルボー、ドケルバン症候群に伴う疼痛を効果的に予防、又は治療することができる。
【0097】
本発明の他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0098】
本発明において、用語「予防」は、前記ペンタペプチドを含む組成物の投与で疼痛を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0099】
本発明において、用語「治療」は、前記ペンタペプチドを含む組成物の投与で疼痛が「緩和」又は「改善」されるか、よく変更される全ての行為を意味する。
【0100】
本発明による疼痛の予防又は治療用薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤の剤形、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤形化されて用いることができ、剤形化のために薬学組成物の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。
【0101】
前記薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどを含むことができる。
【0102】
前記薬学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などを追加でさらに含むことができる。
【0103】
前記薬学的組成物は、目的とする方法により経口投与するか非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、又は局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間により異なるが、当業者により適宜選択されてよい。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含んだ要素及びその他医学分野によく知られている要素により決定されてよい。前記薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか他の疼痛治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、又は順次に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与するのが重要であり、これは、当業者により容易に決定され得る。
【0105】
前記薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用する薬物に応じて変わり得、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減してもよく、例えば、前記薬学的組成物を1日当たり、患者の体重1kg当たり約0.0001μgから500mg、好ましくは0.01μgから100mgで投与してもよい。
【0106】
本発明のまた他の一側面は、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0107】
前記ペプチド、ペンタペプチド及び疼痛の具体的な内容は、前述のとおりである。
【0108】
本発明の用語「医薬部外品」は、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置又は予防する目的で用いられる物品のうち、医薬品よりも作用が軽微な物品を意味するものであって、例えば、薬事法によると、医薬部外品とは、医薬品の用途に用いられる物品を除いたものであって、ヒト/動物の疾病の治療や予防に用いられる製品、人体に対する作用が軽微であるか直接作用しない製品などが含まれる。
【0109】
本発明の医薬部外品組成物は、ボディークレンザー、フォーム、石鹸、マスク、軟膏剤、クリーム、ローション、エッセンス及びスプレーより構成された群から選択される1つ以上に製造することができるが、これに制限されるものではない。また、前記組成物は、バンド、生理用ナプキンなどの形態に製造されてよいが、これらに制限されない。
【0110】
本発明のペンタペプチドを医薬部外品添加物として用いる場合、前記組成物をそのまま添加するか他の医薬部外品又は医薬部外品成分とともに用いることができ、通常の方法により適宜用いることができる。
【0111】
また他の側面において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛緩和用化粧料組成物を提供する。
【0112】
前記ペプチド、ペンタペプチド及び疼痛の具体的な内容は、前述のとおりである。
【0113】
前記化粧料組成物は、本技術分野において通常製造される任意の剤形に製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化されてよいが、これらに制限されるものではない。
【0114】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアエアロゾル、ポマード、ゲルなどの溶液、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、エアロゾルなどの多様な形態に製造されてよいが、これらに制限されるものではない。
【0115】
本発明の化粧料組成物は、KFLIKのアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドに加えて賦形剤、担体などのその他の添加剤を含むことができ、一般の皮膚化粧料に配合される普通の成分を必要なだけ適用して配合することが可能である。
【0116】
前記化粧料組成物の剤形の形態がペースト、クリーム又はゲルである場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などが用いられてよい。
【0117】
前記化粧料組成物の剤形の形態がパウダー又はスプレーである場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーが用いられてよく、特に、スプレーである場合は、追加でクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進体が含まれてよいが、これらに制限されるものではない。
【0118】
前記化粧料組成物の剤形の形態が溶液又は乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が用いられてよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0119】
前記化粧料組成物の剤形の形態が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチルソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁液剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、又はトラガカントなどが用いられてよい。
【0120】
前記化粧料組成物の剤形が界面-活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0121】
前記化粧料組成物の剤形がヘアシャンプーである場合は、本発明のペンタペプチド結合体に増粘剤、界面活性剤、粘度調節剤、保湿剤、pH調節剤、防腐剤、エッセンシャルオイルなどのように、シャンプーを組成するためのベース成分が混合されてよい。前記増粘剤としてはCDEが用いられてよく、前記界面活性剤にはアニオン界面活性剤であるLESと、両方性界面活性剤であるココベタインが用いられてよく、前記粘度調節剤としてはポリクオーターが用いられてよく、前記保湿剤としてはグリセリンが用いられてよく、前記pH調節剤としてはクエン酸、水酸化ナトリウムが用いられてよい。前記防腐剤としてはグレープフルーツ抽出物などが用いられてよく、この他にもシダーウッド、ペパーミント、ローズマリーなどのエッセンシャルオイルとシルクアミノ酸、ペンタオール又はビタミンEが添加されてよい。
【0122】
前記化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として本発明の前記ペンタペプチドと担体成分の他に、化粧料組成物に通常用いられる成分、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤などをさらに含んでよいが、これらに制限されるものではない。
【0123】
また他の一側面において、本発明は、個体(subject)に配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを投与する段階を含む疼痛の予防又は治療方法を提供する。
【0124】
また他の一側面において、本発明は、疼痛の予防又は治療に用いるための配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを提供する。
【0125】
また他の一側面において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛の予防又は改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0126】
また他の一側面において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペンタペプチドを有効成分として含む疼痛緩和用化粧料組成物を提供する。
【0127】
前記「個体(subject)」は、ヒトを含むものであってよい。また、用語「個体(subject)」は、本願のペンタペプチドの投与を必要とする個体(subject in need thereof)であってよく、前記投与を必要とする個体は、疼痛に対して診断を受けた個体、疼痛が発現された個体だけではなく、前記疾患や症状の発現を予防するか健康の改善のために投与を希望する個体を含むものであってよい。
【0128】
前記「投与」は、任意の適切な方法で患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達することができる限り、一般的な全ての経路を介して経口又は非経口投与されてよい。また、組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置により投与されてよい。
【0129】
前述したように、本発明のペンタペプチドは、筋細胞における伝染性サイトカインの発現を抑制することにより炎症反応による疼痛を抑制し、神経末端からP物質の放出を抑制して疼痛の伝達を防止し、皮膚に塗るだけでも筋肉層の神経細胞まで浸透して疼痛を抑制する効果に優れるため、疼痛の緩和、改善、予防又は治療を目的とする医薬品、医薬部外品又は化粧料組成物の原料として有用に用いられ得る。
【0130】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳細に説明する。
【0131】
但し、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]
新規のペンタペプチドの合成及び物性の確認
1-1.ペンタペプチドの合成
配列番号1で記載されるアミノ酸配列から構成される新規のペプチド配列「KFLIK」は、公知の方法を用いて製造した。分子量測定器を用いて前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの分子量を測定した結果、その分子量が647.4Daに該当することを確認した。
【0133】
1-2.長期保管時の高温安定性の評価
配列番号1のアミノ酸配列から構成された本発明のペプチドを1000ppmの濃度で滅菌蒸溜水に溶かし、45℃で7日、14日、28日、60日、75日間保管した後、HPLC分析を行った。
【0134】
その結果、
図1aに示したように、45℃の条件で最大観察日である75日間、本発明のペプチドが安定性を維持することを確認することができた。
【0135】
1-3.高温安定性の評価
本発明のペプチドを1000ppmの濃度で滅菌蒸溜水に溶かし、121℃で15分、30分間加温した後、HPLC分析を行った。
【0136】
その結果、
図1bに示したように、121℃で最大加温時間である30分間、本発明のペプチドが安定性を維持することを確認することができた。
【0137】
[実験例1]
神経細胞におけるSNARE複合体形成抑制の効果の確認
1-1.SNARE複合体形成抑制の効果の確認
本発明のペンタペプチドによる神経細胞における神経伝達物質の放出阻害の効果を確認するために、神経芽細胞種由来の細胞株(SH-SY5Y)を用いてSNARE複合体形成抑制の可否を確認した。
【0138】
具体的に、SH-SY5Y細胞を3×105細胞/ウェルの密度で6-ウェルプレートに接種し、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した後、培地を無血清培地に交替した。その後、10μM、50μM、100μM濃度のペンタペプチドを6-ウェルプレートに処理し、陽性対照群としては0.2μMのボツリヌス毒素タイプC軽鎖(BoNT/CLC)を処理して培養した。24時間が経過した後、細胞を収集して溶解物を確保し、シンタキシン1a抗体(synapticsystems,Germany)に対するウェスタンブロットを行った。
【0139】
その結果、[
図2a]に示したように、本発明のペンタペプチドを処理すると、ボツリヌス毒素を処理した陽性対照群と類似にSNARE複合体の形成が抑制された。
【0140】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、SNARE複合体が形成されることを抑制し、シナプス小胞がシナプス前膜と融合されることを防止することにより、神経伝達物質の放出を阻害する効果があることが分かる。
【0141】
1-2.シンタキシン1aタンパク質分解の効果の確認
本発明のペンタペプチドによる神経細胞における神経伝達物質の放出阻害の効果を確認するために、本発明のペンタペプチドがt-SNAREを構成するシンタキシン1aタンパク質に対する分解能があるのか確認した。
【0142】
具体的に、実験群は、組換えシンタキシン1aタンパク質(Novus biologicals,USA)1μgと20μM、100μM、200μM濃度の本発明のペンタペプチドを反応緩衝液(50mM HEPES,40mM2-ME,20μM ZnCl2,pH7.4)に処理し、陰性対照群(Control)は、組換えシンタキシン1aタンパク質のみ処理した。37℃の条件で4時間反応させた後、シンタキシン1a抗体(synapticsystems,Germany)を用いてウェスタンブロットを行った。
【0143】
その結果、[
図2b]に示したように、本発明のペンタペプチドを処理すると、組換えシンタキシン1aタンパク質のバンドが濃度依存的に減少することを確認した。
【0144】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、シンタキシン1aタンパク質を分解し、SNARE複合体が形成されないようにすることにより神経伝達物質の放出を阻害する効果があることが分かる。
【0145】
[実験例2]
神経細胞における神経伝達物質の放出阻害の効果の確認
本発明のペンタペプチドによる神経細胞における神経伝達物質の放出阻害の効果を確認するために、神経芽細胞種由来の細胞株(SH-SY5Y)を用いて神経伝達物質であるアセチルコリン(acetylcholine)の分泌量を測定した。
【0146】
具体的に、SH-SY5Y細胞をディッシュに注入し、37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した後、培地を無血清培地に交替して48時間培養した。その後、1μM、10μM、50μM濃度のペンタペプチドをディッシュに処理し、陽性対照群としては50nMのテタヌス(tetanus)をディッシュに処理して培養した。一定時間が経過した後、ニコチン(NIC)と塩化カリウム(KCl)を処理してアセチルコリンの放出を誘導した。その後、培地に含まれているアセチルコリンの分泌量をアセチルコリン分析キットを用いて測定した。
【0147】
その結果、[
図3]に示したように、ニコチン(NIC)と塩化カリウム(KCl)のみを処理した群では、何も処理していない対照群に比べてアセチルコリンの放出量が増加したが、本発明のペンタペプチドを処理した群ではいずれも有意にアセチルコリンの放出が抑制された。
【0148】
[実験例3]
人体効能評価を介したペンタペプチドの多汗症抑制の効果の確認
本発明によるペンタペプチドが実際に手のひら、足裏及び脇の汗分泌を抑制する効果を示すのか確認するために、片栗粉とヨウ素を用いて汗が分泌される程度をイメージとして撮影し、Image J softwareを用いた強度分析を進めた。
【0149】
具体的に、局所多汗症(手のひら、足裏、脇)を有する実験対象者10名を対象に汗分泌の程度に対する人体効能評価を実施した。本発明のペンタペプチドが2000ppm含有された溶液をメソローラを用いて実験者の一方方向の手のひら、足裏又は脇に塗布した。このとき、反対方向の手のひら、足裏、脇は対照群として定め、対照群の場合、ペンタペプチドが含有された溶液の代わりにPBSをメソローラで塗布した。充分に吸収させて自然乾燥した後、同一の部位に滅菌ガーゼパッドでヨウ素溶液を塗って自然乾燥させた。ヨウ素溶液が完全に乾燥したとき、綿でヨウ素が塗布された領域の上にトウモロコシデンプンをまんべんなく塗布してデンプン層を形成した。汗が分泌される場合、ヨウ素とデンプンが溶けながら青磁色に色変化が起こるようになるので、対象者の手のひら、足裏又は脇で時間による色変化を観察した。イメージ撮影後、Image J softwareを用いた強度分析を進めた。
【0150】
その結果、[
図4]を介して、本発明のペンタペプチドを含むローションを塗った被験者の手で分泌される汗の量が約74%減少することを確認した。また、[
図5]を介して、本発明のペンタペプチドを含むローションを塗った被験者の足裏から分泌される汗の量が約58%減少することを確認し、[
図6]を介して、本発明のペンタペプチドを含むローションを塗った被験者の脇から分泌される汗の量が約88%減少することを確認した。
【0151】
これを介して、本発明のペンタペプチドが多汗症を有する患者において、皮膚に塗るだけでも発汗の減少及び過度な汗生成の防止において治療的効果を提供することができ、これにより体臭の発生を根本的に遮断する効果を提供することができることが分かる。
【0152】
[実験例4]
細胞内又は皮膚組織浸透様相の確認
4-1.ローダミン-ペンタペプチド接合体の製造
本発明のペプチドの細胞内浸透可否又は組織浸透様相を確認するため、蛍光物質が接合されたローダミン-ペンタペプチド接合体を製造した。先ず、100mMの重炭酸ナトリウム(pH9.0)を用いて10mg/mlのペンタペプチド溶液を製造し、ジメチルホルムアミドを用いて1mg/ml NHS-ローダミン(Thermo Scientific,46406)溶液を製造した。製造された溶液をペンタペプチド:NHS-ローダミン=1:10(モル比)となるように混合した。遮光後、インバーティングしながら常温で1時間反応させ、反応物を透析した後、LC/MSで接合可否を確認した。
【0153】
4-2.細胞内浸透の確認
本発明のペンタペプチドが神経細胞内に浸透するか確認するため、SH-SY5Y細胞を3×105細胞/ウェルの密度で6-ウェルプレートに接種した。37℃、5%のCO2インキュベーターで24時間培養した後、培地を無血清培地に交替した。ローダミン-ペプチド接合体を濃度別に4時間処理した後、4%のパラホルムアルデヒドを処理して細胞を固定し、DAPI染色キット(Invitrogen,USA)を用いて核を染色した。蛍光顕微鏡を介して細胞内ペプチド浸透可否を観察した。青色は、DAPIで染色された細胞の核を示し、赤色は、「ローダミン-ペンタペプチド」接合体を示す。
【0154】
その結果、[
図7]に示したように、青色と赤色が共存することから、本発明のペンタペプチドが神経細胞内に浸透したことを確認した。
【0155】
4-3.組織浸透の確認
7週齢SDラットの背の部位を除毛した後、ローダミン-ペンタペプチドを塗布してから1時間後、分析のためにラットを犠牲にした。塗布部位の皮膚組織を採取し、ホルマリン固定を1日間行った。固定された組織を用いてパラフィンブロックを作ってセクションした後、神経細胞マーカーであるTrkB Ab(Cell signaling,USA)を用いて免疫組織化学の染色を行った。その後、DAPI染色キット(Invitrogen,USA)を用いて核染色を行った。蛍光顕微鏡を介して組織内のペプチド浸透様相を観察した。青色は、DAPIで染色された細胞の核を示し、赤色は、ローダミン-ペンタペプチド接合体を示し、緑色は、TrkB(ナーブファイバマーカー)を示す。
【0156】
その結果、[
図8]に示したように、本発明のペンタペプチドが皮膚組織の筋肉層まで浸透したことを確認し、神経細胞マーカーと共存(co-localization)することを確認した。
【0157】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、神経細胞内に浸透可能であり、経皮吸収を介して皮膚組織の筋肉層まで浸透され、筋肉層で神経細胞マーカーとも共存するので、SNARE複合体の形成に関与して神経伝達物質の過多放出により引き起こされる汗分泌を抑制する効果、及び汗分泌による体臭の発生を元から遮断する効果を示し得ることが分かる。
【0158】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、神経細胞内に浸透可能であり、経皮吸収を介して皮膚組織の筋肉層まで浸透され、筋肉層で神経細胞マーカーとも共存するので、筋肉細胞における伝染性サイトカインの発現及び神経末端における疼痛伝達因子放出の抑制に関与し、疼痛の発生及び伝達を抑制する効果を示し得ることが分かる。
【0159】
[実験例5]
体臭誘発菌株を用いたペンタペプチドの体臭抑制の効果の確認
汗に含まれた物質を分解させて悪臭を誘発する代表的な悪臭原因菌と知られているコリネバクテリウムを用いて本発明のペンタペプチドの抗菌効果を確認した。
【0160】
具体的に、体臭を誘発する菌株としてコリネバクテリウムキセロシス(Corynebacterium xerosis,C.xerosis,KCTC9105)を韓国生命工学研究院の生物資源センターから購入して用いた。菌株をブレインハートインフュージョン(brain heart infusion(Difco,USA))培地に接種し、37℃のインキュベーターで2日間培養した。培養された菌株に同一の培地を添加し、106CFU/mlの濃度に希釈した希釈液を試験用菌液として用いた。96well plateに前記試験用菌液を100μLずつ分株した後、ペンタペプチドを濃度別に処理した。陽性対照群は、ペンタペプチドの代わりに1%のトリクロサン(triclosan)を添加した。48時間培養した後、600nmで吸光度を分光光度計で測定し、悪臭原因菌の増殖抑制の効果を確認した。
【0161】
その結果、[
図9]に示したように、本発明のペンタペプチドを処理すると、体臭誘発菌株の増殖が明らかに抑制されることを確認した。特に、ペンタペプチドを1mg、2mg処理した群では、陽性対照群と同等な水準まで抗菌効果に優れていることを確認した。
【0162】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、体臭誘発菌株の増殖を抑制することにより、汗が出ながら発生する特有の体臭を効果的に抑制することができることが分かる。
【0163】
[実験例6]
筋細胞におけるペンタペプチド処理による伝染性サイトカイン放出抑制の効果の確認
6-1.伝染性サイトカイン遺伝子の発現水準の確認
本発明のペンタペプチドによる疼痛改善の効果を確認するため、マウス筋芽細胞(myoblast)を用いて炎症関連のサイトカインの発現の様相を確認した。伝染性サイトカインは、神経病症の疼痛に関与し、神経損傷後にTNF-αなどの伝染性サイトカインが発現されると、炎症反応が触発されて疼痛が引き起こされる。
【0164】
具体的に、マウス筋芽細胞であるC2C12細胞を2×105cells/wellの密度で6-ウェルプレートに接種した後、DMEM(10%PBS)培地で3日間培養した。細胞がプレートの70~80%程度まで育った状態で分化培地(DMEM、5% horse serum)に交替した後、3日間培養した。その後、分化培地(DMEM,2% horse serum)に交替した後に4日間培養させ、筋芽細胞から筋管(myotube)に分化を誘導した。それから、無血清培地に交替して2時間培養し、1μM、10μM、100μM濃度のペンタペプチドを1時間前処理した。その後、20nMのTNF-αを処理し、24時間培養して炎症反応を誘導した。
【0165】
その後、細胞を回収してRNAを分離した後、cDNA合成キット(Intron、Korea)を用いてcDNAを合成した。合成されたcDNA、PCRプレミックス(Intron,Korea)及びIL-1α、TNF-α、IL-1β及びCOX-2プライマーを用いて重合酵素連鎖反応を行い、増幅されたPCR産物をアガロースゲルに電気泳動し、DNAバンドを確認して前記遺伝子のmRNA発現の程度を比べた。このときに用いられたプライマー配列は、[表1]に提示されたとおりである。
【0166】
【0167】
その結果、[
図10a]に示したように、TNF-αを処理して筋管に炎症を誘導した場合、無処理群(control)に比べてIL-1α、IL-1β、COX-2、TNF-αのmRNA発現量、すなわち、伝染性サイトカインが顕著に増加することを確認した。しかし、本発明のペンタペプチド1μM処理群及び10μM処理群の場合、増加した伝染性サイトカインの発現が減少することを確認した。
【0168】
6-2.伝染性サイトカインタンパク質の発現水準の確認
一方、炎症性サイトカインタンパク質の発現量を確認するため、2-1で回収した細胞のうち一部に対しては、(W.B.)cell lysate分離後にタンパク質を定量し、サンプルバッファーと混合してサンプルを準備した。SDS-PAGE及びニトロセルロース膜に展開して5%のスキームミルクでブロッキングした。COX-2抗体(Cell Signaling Technology,USA)、IL-1β抗体(Cell Signaling Technology,USA)、TNF-α抗体(Cell Signaling Technology,USA)を1次的にバインディングさせた後、2次抗体の結合を進めた。ECL溶液を処理した後、ターゲットタンパク質の発現の水準を観察した。
【0169】
その結果、[
図10b]に示したように、TNF-αを処理して筋管に炎症を誘導した場合、無処理群(control)に比べてCOX-2、IL-1β、TNF-αのタンパク質発現の水準、すなわち、伝染性サイトカインタンパク質の量が顕著に増加することを確認した。しかし、本発明のペンタペプチド処理群の場合、増加した伝染性サイトカインの発現が濃度依存的に減少することを確認した。
【0170】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、筋管におけるIL-1α、IL-1β、COX-2、TNF-αの発現、すなわち、伝染性サイトカインの発現をmRNAレベル及びタンパク質レベルでいずれも減少させる効果を示すので、疼痛の予防又は治療物質として有用に用いられ得ることが分かる。
【0171】
[実験例7]
神経細胞における神経伝達物質の放出抑制効果の確認
本発明のペンタペプチドによる疼痛改善効果を確認するため、マウス神経細胞を用いてシナプスにおけるP物質(substance P)の放出の程度を確認した。P物質は、末梢からの疼痛を中枢に伝達するので、物質Pの放出が抑制されると疼痛緩和の効果を示し得る。
【0172】
具体的に、6週齢ラットの脊髓から後筋神経節(dorsal root ganglion,DRG)を分離して洗浄した後、神経細胞を分離した。分離された神経細胞を24ウェル-プレートに分けて接種してから、1日間培養した後、類似分裂抑制剤を神経細胞が培養される培地に混合し、純粋神経細胞のみを6日間培養させた。それから、栄養成分を追加するためにB-27培地(無血清、1%ペニシリン)に交替して24時間培養した後、1μM、10μM濃度のペンタペプチドを1時間前処理した。その後、100μMのカプサイシンを30分間処理してP物質の放出を誘導し、P物質の放出量をELISAで分析した。
【0173】
その結果、[
図11]に示したように、カプサイシンを処理すると、無処理対照群(control)に比べてP物質の放出が増加したが、本発明のペンタペプチド処理群の場合、増加したP物質の放出量が顕著に減少することを確認した。
【0174】
これを介して、本発明のペンタペプチドは、神経細胞におけるP物質の放出を抑制して疼痛信号の伝達を防止することにより、疼痛の予防又は治療物質として有用に用いられ得ることが分かる。
【0175】
[実験例8]
人体効能評価を介したペンタペプチドの疼痛緩和効果の確認
本発明によるペンタペプチドが実際に疼痛を抑制する効果を示すか確認するため、被験者20名を対象として遅発性筋肉痛を誘発した後、本発明のペンタペプチドが含有されたローションを疼痛部位に塗布して疼痛軽減程度に対する人体効能評価を実施した。
【0176】
具体的に、被験者達に遅発性筋肉痛(Delayed onset muscle soreness)を誘発するため、両足を骨盤の幅に広げて腰を真っ直ぐに伸ばして立てさせた後、踵を最大限に持ち上げて下ろす動作を2分間繰り返すようにし、3分間の休息を取るようにする運動を総3セット進めた。24時間後から疼痛部位に本発明のペンタペプチドが2000ppm含有された溶液を塗布した。その後、24時間、48時間、72時間後に歩く際に感じられる疼痛評価の尺度(Numeric rating scale,NRS)を自己測定した(0は疼痛なし、10は想像することができる最も酷い疼痛)。下記数式を用いて疼痛強度の平均値(Mean PID scores)を算出し、72時間の試験終了後、疼痛軽減の程度を被験者アンケートを介して確認した。
【0177】
[数式]
疼痛強度の差(PID)=本発明のペンタペプチド塗布後の疼痛強度-本発明のペンタペプチド塗布前の疼痛強度
【0178】
その結果、[
図12a]及び[
図12b]に示したように、運動24時間経過後に誘発された疼痛の程度が本発明のペンタペプチドを塗布した実験群で運動72時間後(ローション塗布の48時間後)に有意に改善されることを確認した。
【0179】
これを介して、本発明のペンタペプチドが、筋肉痛が誘発された患者の皮膚に塗るだけでも、疼痛の減少において治療的効果を提供し得ることが分かる。
【配列表】