(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 B
(21)【出願番号】P 2023043528
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2020563213の分割
【原出願日】2019-12-20
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018242995
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022566(JP,A)
【文献】特開2012-000726(JP,A)
【文献】特開平11-203974(JP,A)
【文献】特開2018-083254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0069672(US,A1)
【文献】米国特許第5014793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B24B 21/00
B23D 45/16
B23B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機であって、
モータと、
バッテリの電力から前記モータを駆動するための駆動電力を生成して前記モータへ供給するように構成された駆動回路と、
前記バッテリの電力を前記駆動回路へ供給するように構成された給電ラインと、
前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成された操作部と、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第1のスイッチと、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第2のスイッチと、
コンピュータプログラムに従ってモータ制御処理を実行するように構成され、前記第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報及び前記第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受けるように構成された制御回路と、
を備え、
前記モータ制御処理は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力することと、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオン操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
を含
み、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチは、前記給電ラインを遮断しないように設けられている、
電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチはそれぞれ第1端子及び第2端子を備え、
前記第1のスイッチの前記第1端子及び前記第2のスイッチの前記第1端子はグランドラインに接続されており、
前記グランドラインは、前記バッテリの負極に電気的に接続されるように構成されている、
電動作業機。
【請求項3】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成された操作部と、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第1のスイッチと、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第2のスイッチと、
コンピュータプログラムに従ってモータ制御処理を実行するように構成され、前記第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報及び前記第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受けるように構成された制御回路と、
を備え、
前記モータ制御処理は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力することと、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオン操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
を含み、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチはそれぞれ第1端子及び第2端子を備え、
前記第1のスイッチの前記第1端子及び前記第2のスイッチの前記第1端子はグランドラインに接続されている、
電動作業機。
【請求項4】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成された操作部と、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第1のスイッチと、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第2のスイッチと、
コンピュータプログラムに従ってモータ制御処理を実行するように構成され、前記第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報及び前記第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受けるように構成された制御回路と、
を備え、
前記モータ制御処理は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力することと、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオン操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
を含み、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチはそれぞれ第1端子及び第2端子を備え、
前記電動作業機は、
前記第1のスイッチの前記第2端子に接続されていて、前記第1スイッチ情報を出力するように構成された第1回路と、
前記第2のスイッチの前記第2端子に接続されていて、前記第2スイッチ情報を出力するように構成された第2回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記第1回路から前記第1スイッチ情報を受け、前記第2回路から前記第2スイッチ情報を受けるように構成されており、
前記第1回路は、所定電圧値の電源電圧を第1抵抗器を介して前記第1のスイッチの前記第2端子に印加するように構成され、前記第1のスイッチの前記第2端子の電圧に応じた前記第1スイッチ情報を出力するように構成されており、
前記第2回路は、前記電源電圧を第2抵抗器を介して前記第2のスイッチの前記第2端子に印加するように構成され、前記第2のスイッチの前記第2端子の電圧に応じた前記第2スイッチ情報を出力するように構成されている、
電動作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記第1回路は、前記第1のスイッチの前記第2端子の電圧が入力されるように構成されたNOT回路を備え、前記NOT回路の出力電圧に応じた前記第1スイッチ情報を出力するように構成されている、
電動作業機。
【請求項6】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成された操作部と、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第1のスイッチと、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第2のスイッチと、
コンピュータプログラムに従ってモータ制御処理を実行するように構成され、前記第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報及び前記第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受けるように構成された制御回路と、
を備え、
前記モータ制御処理は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力することと、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオン操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
を含み、
前記制御回路は、前記操作部の操作状態を示す操作部情報を出力するように構成されており、
前記操作部情報は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示している場合は、前記操作部がオン操作されていることを示し、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報のうちの一方が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報のうちの他方が示している場合は、前記操作部がオフ操作されていることを示し、
前記電動作業機は、
バッテリを備えたバッテリパックを着脱可能に構成され、
前記制御回路から出力された前記操作部情報を前記バッテリパックへ出力するように構成されている、
電動作業機。
【請求項7】
電動作業機であって、
モータと、
前記電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成された操作部と、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第1のスイッチと、
前記操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成された第2のスイッチと、
コンピュータプログラムに従ってモータ制御処理を実行するように構成され、前記第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報及び前記第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受けるように構成された制御回路と、
を備え、
前記モータ制御処理は、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報及び前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記モータを駆動するための駆動指令を出力することと、
前記操作部がオン操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオフ操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
前記操作部がオフ操作されていることを前記第1スイッチ情報が示していて、且つ前記操作部がオン操作されていることを前記第2スイッチ情報が示していることに応じて、前記駆動指令の出力を停止することと、
を含み、
前記第1のスイッチは、ノーマリーオープン型及びノーマリークローズ型のうちのいずれか一方であり、
前記第2のスイッチは、前記ノーマリーオープン型及び前記ノーマリークローズ型のうちの前記第1のスイッチとは異なる他方である、
電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2018年12月26日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-242995号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-242995号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0003】
下記の特許文献1は、使用者によりオン又はオフされる操作スイッチと、制御回路と、駆動回路と、モータとを備えた電動工具を開示している。この電動工具では、制御回路は、操作スイッチがオンされたことを認識すると、駆動回路へ制御信号を出力する。駆動回路は、制御回路から入力される制御信号に基づいてモータを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば操作スイッチに異常が生じるなどして、使用者による操作スイッチの操作が制御回路に適正に伝わらなくなると、使用者の意図に反してモータが駆動又は停止される可能性がある。
【0006】
本開示の1つの局面は、使用者の操作が制御回路に適正に伝わらない異常が生じた場合にモータを適切に停止させることが可能な電動作業機を提供できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面における電動作業機は、モータと、操作部と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、制御回路とを備える。操作部は、電動作業機の使用者によってオン操作又はオフ操作されるように構成されている。第1のスイッチは、操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成されている。第2のスイッチは、操作部がオン操作又はオフ操作されることに応じてオン又はオフするように構成されている。
【0008】
制御回路は、コンピュータプログラムに従って(即ち、特定のプログラムに基づくソフトウェア処理によって)モータ制御処理を実行するように構成されている。制御回路は、第1のスイッチから第1のスイッチの状態を示す第1スイッチ情報を受ける。制御回路は、さらに、第1スイッチ情報とは別に、第2のスイッチから第2のスイッチの状態を示す第2スイッチ情報を受ける。モータ制御処理は、操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していることに応じて、モータを駆動するための駆動指令を出力することを含む。
【0009】
このように構成された電動作業機では、制御回路は、第1のスイッチ及び第2のスイッチの双方の状態に応じてモータ制御処理を実行する。具体的には、制御回路は、操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示している場合に、駆動指令を出力する。例えば操作部がオフ操作されている場合に、仮に、第1のスイッチに異常が生じて、第1スイッチ情報がオン操作を示しても、第2スイッチ情報がオフ操作を示していれば、駆動指令は出力されない。したがって、使用者の操作が制御回路に適切に伝わらない異常が生じた場合に、モータを適切に停止させることが可能となる。
【0010】
電動作業機は、さらに、駆動停止回路を備えていてもよい。駆動停止回路は、ハードウェア処理により動作するように構成されていてもよい。即ち、駆動停止回路により実行される動作は、ソフトウェア処理(ソフトウェア方式)によらず、ハードウェアで(ハードウェア方式またはハードワイヤード方式で)実現されてもよい。駆動停止回路は、第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報を受けてもよい。駆動停止回路は、第1スイッチ情報により示される第1のスイッチの状態、及び/または第2スイッチ情報により示される第2のスイッチの状態が、操作部がオフ操作されている状態に対応していることに応じて、制御回路から駆動指令が出力されていてもその駆動指令を無効化してモータを停止させるように構成されていてもよい。
【0011】
このように構成された電動作業機では、仮に、制御回路に異常が生じて、操作部がオフ操作されているにもかかわらず制御回路から駆動指令が出力されても、駆動停止回路によってモータが停止される。そのため、電動作業機の信頼性を向上することが可能となる。
【0012】
電動作業機は、さらに、駆動回路を備えていてもよい。駆動回路は、制御回路から駆動指令を受けるように構成されていてもよい。駆動回路は、駆動指令を受けることに応じてモータへ電力を供給してモータを駆動するように構成されていてもよい。駆動停止回路は、駆動回路への駆動指令を遮断することによってモータを停止するように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成された電動作業機では、駆動停止回路は、第1スイッチ情報及び/または第2スイッチ情報がオフ操作を示している場合に、モータを容易に停止させることができる。
【0014】
駆動停止回路は、停止信号出力回路と、遮断回路とを備えていてもよい。停止信号出力回路は、第1スイッチ情報により示される第1のスイッチの状態及び/または第2スイッチ情報により示される第2のスイッチの状態が、操作部がオフ操作されている状態に対応していることに応じて、停止信号を出力するように構成されていてもよい。遮断回路は、停止信号を受けるように構成され、停止信号を受けることに応じて駆動回路への駆動指令を遮断するように構成されていてもよい。
【0015】
このように構成された電動作業機では、第1スイッチ情報及び/または第2スイッチ情報がオフ操作を示している場合に、駆動回路への駆動指令の入力を容易に遮断することができ、これによりモータを容易に停止させることができる。
【0016】
制御回路は、停止信号出力回路からの停止信号を受けるように構成されていてもよい。
【0017】
このように構成された電動作業機では、制御回路は、例えば、モータ制御処理において、ハードウェア処理によって出力された停止信号を有効に利用することが可能となる。
【0018】
具体的には、制御回路は、(i)操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していて、且つ(ii)制御回路が停止信号を受けることに応じて、駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0019】
操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していて、且つ制御回路が停止信号を受けている場合、第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が、何らかの要因で、操作部の実際の操作状態を正しく示していない可能性がある。即ち、実際には操作部がオフ操作されているにもかかわらず、例えば、第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が共に、オン操作を示していている可能性がある。そのため、停止信号出力回路から停止信号が入力されている場合は駆動指令を出力しないようにすることで、電動作業機の信頼性を高めることが可能となる。
【0020】
制御回路は、操作部がオフ操作されていることを第1スイッチ情報及び/または第2スイッチ情報が示している一方で、制御回路が停止信号を受けていない状況においては、第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が、操作部のオン操作を示すように変化しても、駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0021】
操作部がオフ操作されていることを第1スイッチ情報及び/または第2スイッチ情報が示している一方で制御回路が停止信号を受けていない場合も、制御回路に入力される第1スイッチ情報及び/または第2スイッチ情報が、何らかの要因で、操作部の実際の操作状態を正しく示さなくなっている可能性がある。即ち、実際には操作部がオン操作されているにもかかわらず、例えば、第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が共にオフ操作を示していている可能性がある。そのため、このような場合も駆動指令を出力しないようにすることで、電動作業機の信頼性を高めることが可能となる。
【0022】
制御回路は、疑似オン信号を出力するように構成されていてもよい。電動作業機は、さらに、疑似オン回路を備えていてもよい。疑似オン回路は、疑似オン信号を受けるように構成されていてもよい。疑似オン回路は、疑似オン信号を受けることに応じて、操作部がオン操作されていることを示すように第1スイッチ情報を設定してもよい。
【0023】
制御回路は、第1の異常状態を示す第1情報を記憶してもよい。制御回路は、さらに、出力処理と、第1の記憶処理とを実行するように構成されていてもよい。出力処理は、操作部がオフ操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していることに応じて疑似オン信号を出力することを含んでいてもよい。第1の記憶処理は、出力処理により疑似オン信号を出力している間に制御回路が停止信号を受けないことに応じて第1情報を記憶することを含んでいてもよい。
【0024】
制御回路は、(i)操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していて、且つ(ii)制御回路に第1情報が記憶されていることに応じて、駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0025】
このように構成された電動作業機では、制御回路は、疑似オン信号を出力することによって、停止信号出力回路が適正に動作するか否かを確認することができる。即ち、第2スイッチ情報がオフ操作を示している一方で、第1スイッチ情報を疑似オン信号によって強制的にオン操作を示す情報に設定された場合、停止信号出力回路が適正に動作していれば、停止信号が出力されるはずである。この場合において、仮に停止信号が出力されない場合は、停止信号出力回路が適正に動作しなくなっている可能性がある。そこで、このような場合には制御回路は駆動指令を出力しないようにすることで、電動作業機の信頼性をより高めることが可能となる。
【0026】
制御回路は、第2の異常状態を示す第2情報を記憶してもよい。制御回路は、さらに、第2の記憶処理を実行するように構成されていてもよい。第2の記憶処理は、(i)制御回路が疑似オン信号を出力していて、且つ(ii)操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報が示していないことに応じて、第2情報を記憶することを含んでいてもよい。
【0027】
制御回路は、(i)操作部がオン操作されていることを第1スイッチ情報及び第2スイッチ情報が示していて、且つ(ii)制御回路に第2情報が記憶されていることに応じて、駆動指令を出力しないように構成されていてもよい。
【0028】
疑似オン信号が出力されたにもかかわらず第1スイッチ情報がオフ状態を示しているということは、疑似オン回路が適正に動作しないか、又はその他の何らかの異常が生じている可能がある。そこで、そのような場合には制御回路は駆動指令を出力しないようにすることで、電動作業機の信頼性をさらに高めることが可能となる。
【0029】
第1のスイッチは、操作部がオン操作されることに応じてオフしてもよい。第1のスイッチは、操作部がオフ操作されることに応じてオンしてもよい。一方、第2のスイッチは、操作部がオン操作されることに応じてオンしてもよい。第2のスイッチは、操作部がオフ操作されることに応じてオフしてもよい。
【0030】
つまり、操作部に対する操作に対して、第1のスイッチと第2のスイッチとが互いに逆の状態(即ち、一方がオンなら他方はオフ、一方がオフなら他方はオン)となるように構成されていてもよい。
【0031】
操作部は、操作部がオン操作されることに連動して操作部の操作量が変更されるように構成されていてもよい。電動作業機は、さらに、第2のスイッチを含む情報出力回路を備えていてもよい。情報出力回路は、第2スイッチ情報を出力してもよい。情報出力回路は、第2のスイッチがオンしている間は、操作量を示す情報を含む第2スイッチ情報を出力してもよい。制御回路は、第2スイッチ情報により示される操作量に応じた駆動指令を出力するように構成されていてもよい。
【0032】
このように構成された電動作業機では、使用者による操作部の操作量に応じてモータの駆動を制御することが可能となる。具体的には、例えば、操作量が大きいほどモータの回転速度が高くなるようにモータの駆動を制御することが可能であってもよい。
【0033】
第2スイッチ情報は、操作部の操作状態に応じた電圧によって示されていてもよい。より具体的には、情報出力回路は、第2のスイッチがオフすることに応じて、第2のスイッチのオフに対応するオフ電圧を第2スイッチ情報として出力してもよい。情報出力回路は、第2のスイッチがオフからオンに変化することに応じて、オフ電圧よりも低い初期オン電圧を第2スイッチ情報として出力してもよい。情報出力回路は、第2のスイッチがオンしている間、操作量に応じて前記電圧を初期オン電圧値から低下させるようにしてもよい。
【0034】
このように構成された電動作業機では、第2のスイッチがオフからオンに変化すると、第2スイッチ情報を示す電圧が、オフ電圧よりも低い初期オン電圧に低下する。そのため、制御回路は、第2のスイッチがオフされたことを的確に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】実施形態の電動作業機の電気的構成を示す説明図である。
【
図3】
図2に示す電動作業機の一部を詳細に示す説明図である。
【
図4】
図4Aはトリガ操作部が引き操作されていないときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図であり、
図4Bはトリガ操作部が最大操作量よりも少ない一定操作量だけ引き操作されたときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図であり、
図4Cはトリガ操作部が最大操作量引き操作されたときのトリガスイッチ部の状態を示す説明図である。
【
図5】自己診断の第1の実行例を示すタイムチャートである。
【
図6】自己診断の第2の実行例を示すタイムチャートである。
【
図7】自己診断の第3の実行例を示すタイムチャートである。
【
図9】S130のバッテリ状態処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】S160のモータ制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】S180の自己診断処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】S410の自己診断履歴読み出し処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】S420の自己診断実施処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】S430の自己診断履歴書き込み処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】トリガ検出機能診断処理を示すフローチャートである。
【
図16】トリガオフ検出チェック処理を示すフローチャートである。
【
図17】トリガオン検出チェック処理を示すフローチャートである。
【
図18】電動作業機の電気的構成の第1の変形例を示す説明図である。
【
図19】電動作業機の電気的構成の第2の変形例を示す説明図である。
【
図20】第2の変形例におけるA/D入力値Vad(第2トリガ情報ST2)の変化例を示す説明図である。
【
図21】第2の変形例におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
【
図22】電動作業機の電気的構成の第3の変形例を示す説明図である。
【
図23】第3の変形例におけるモータ制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1…電動作業機、3…本体部、20…トリガ操作部、21…モータ、22…モータ駆動回路、23…制御回路、24…CPU、25…メモリ、26…トリガスイッチ部、27…第1トリガスイッチ、28…第2トリガスイッチ、29…遮断スイッチ、30…主電源スイッチ、36…第1切替回路、37,47…スイッチ部、50…過電圧検出回路、60…過熱検出部、61…第1過熱検出回路、62…第2過熱検出回路、63…第3過熱検出回路、70…遮断ラッチ回路、80…トリガ検出回路。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
(1)電動作業機の外観
図1に示す電動作業機1は、例えば、充電式刈払機として構成されている。充電式刈払機は、例えば草や小径木などを刈り払うために用いられる。電動作業機1は、支持棹150と、ハンドル151と、カッタユニット160と、コントローラユニット165とを備える。
【0039】
支持棹150は、長尺円筒形状を備える。カッタユニット160は、支持棹150の第1端に設けられている。コントローラユニット165は、支持棹150の第2端に設けられている。
【0040】
カッタユニット160は、ハウジング161を備える。ハウジング161は、支持棹150の第1端に固定されている。ハウジング161は、後述するモータ21(
図2参照)を収容している。
【0041】
ハウジング161は、回転刃162を着脱可能に構成されている。
図1は、ハウジング161に回転刃162が装着された状態を示している。ハウジング161は、不図示の駆動機構が設けられている。駆動機構は、モータ21の回転を回転刃162に伝達する。モータ21が回転すると、モータ21の回転駆動力により回転刃162が回転する。
【0042】
コントローラユニット165は、ハウジング166を備えている。ハウジング166は、後述する制御回路23(
図2参照)を含む各種回路を収容している。ハウジング166は、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7を着脱可能に構成されている。
【0043】
ハンドル151は、支持棹150における長手方向の略中間部に設けられている。ハンドル151は、例えば、U字状に湾曲されたパイプを備える。ハンドル151の第1端は、第1グリップ152が設けられている。ハンドル151の第2端は、第2グリップ153が設けられている。第1グリップ152は、例えば電動作業機1の使用者の右手で把持される。第2グリップ153は、例えば使用者の左手で把持される。
【0044】
第1グリップ152は、トリガ操作部20が設けられている。トリガ操作部20は、使用者によって引き操作される。引き操作とは、使用者の指などによってトリガ操作部20を第1グリップ152側へ引く操作、換言すれば、トリガ操作部20を第1グリップ152へ押し込む操作である。
【0045】
トリガ操作部20は、不図示の弾性部材によって、引き操作方向とは逆の操作解除方向へ付勢されている。トリガ操作部20は、使用者に引き操作されていない非操作状態では、
図1に示すように、弾性部材の付勢力によってトリガ操作部20の大部分が第1グリップ152から突出している。トリガ操作部20は、トリガ操作部20が使用者により引き操作されると、弾性部材の付勢力に抗して引き操作方向(即ち第1グリップ152側)へ移動する。トリガ操作部20は、トリガ操作部20が引き操作方向へ移動することに応じて第1グリップ152内へ入っていく。
【0046】
第1グリップ152は、さらに、操作表示部170が設けられている。操作表示部170は、主電源スイッチ30と、表示パネル171とを備える。
【0047】
主電源スイッチ30は、使用者により操作される。後述する制御回路23は、主電源スイッチ30が操作されることに応じて、電動作業機1の主動作(主電源)をイネーブル(即ち、オンまたは有効化)又はディスエーブル(即ち、オフまたは無効化)する。
【0048】
本実施形態の主電源スイッチ30は、例えば、いわゆるモーメンタリスイッチであってもよい。モーメンタリスイッチは、使用者により押し操作されている間だけオンして使用者が押し操作を解除するとオフに復帰する。主電源スイッチ30がモーメンタリスイッチである場合、制御回路23は、主電源スイッチ30が押し戻し操作される度に、主動作を交互にイネーブル又はディスエーブルしてもよい。押し戻し操作は、主電源スイッチ30を押し操作すること及びその押し操作を解除することを含む。
【0049】
主電源スイッチ30はどのようなスイッチでもよい。主電源スイッチ30は、例えば、いわゆるオルタネートスイッチであってもよい。オルタネートスイッチは、使用者により押し操作される度にオンとオフとが交互に切り替わる。主電源スイッチ30がオルタネートスイッチである場合、制御回路23は、主電源スイッチ30がオンしている場合に主動作をイネーブルし、主電源スイッチ30がオフしている場合に主動作をディスエーブルしてもよい。主電源スイッチ30は、例えばスライド式のスイッチであってもよい。
【0050】
表示パネル171は、各種の情報が表示される。各種の情報は、例えば主動作がイネーブルされているか否かを示す情報、或いは電動作業機1の各種状態を示す情報などを含んでいてもよい。表示パネル171は、どのような表示装置を備えていてもよい。表示パネル171は、例えば、液晶ディスプレイ、LEDなどを備えていてもよい。
【0051】
(2)電動作業機の電気的構成
図2及び
図3を参照して、本実施形態の電動作業機1の電気的構成について説明する。
図3は、
図2の一部(
図2における、制御回路23の右側)を抜粋してより詳細に図示したものである。
図2に示すように、電動作業機1は、本体部3と、第1バッテリパック5と、第2バッテリパック7とを備える。
図2では、説明の便宜上、電動作業機1の各部に設けられた各種電気部品、各種回路などの集合体を、本体部3と称している。集合体は、モータ21、ハウジング166内の各種回路、トリガ操作部20及び操作表示部170を含む。
【0052】
第1バッテリパック5は、バッテリ11と、バッテリ異常検出回路12とを備える。バッテリ11は、例えば2次電池である。ただし、バッテリ11は、1次電池であってもよい。
【0053】
バッテリ異常検出回路12は、第1バッテリパック5を監視する。バッテリ異常検出回路12は、特定の放電指示期間中、第1バッテリパック5の異常を検出していない場合に、第1放電許可信号SA1を出力する。バッテリ異常検出回路12は、例えば、バッテリ11の状態を監視してもよい。より具体的には、バッテリ異常検出回路12は、例えば、バッテリ11の電圧値、バッテリ11から放電される電流の値及び/またはバッテリ11の温度に基づいて、バッテリ11が異常であるか否かを判断してもよい。バッテリ異常検出回路12は、バッテリ11が正常であると判断した場合、第1放電許可信号SA1を出力することによりバッテリ11が正常であることを示してもよい。バッテリ異常検出回路12は、バッテリ11が異常であると判断した場合、第1放電許可信号SA1を出力しないことによりバッテリ11が異常であることを示してもよい。
【0054】
第1バッテリパック5は、本体部3から、後述するトリガ検出情報ST0を受ける。特定の放電指示期間は、例えば、トリガ検出情報ST0の論理レベルがhighレベルである期間、即ち後述するトリガ操作部20がオン操作されている期間、であってもよい。
【0055】
第2バッテリパック7は、バッテリ16と、バッテリ異常検出回路17とを備える。第2バッテリパック7は、第1バッテリパック5と同様に構成されている。バッテリ異常検出回路17は、特定の放電指示期間中、第2バッテリパック7の異常を検出していない場合に、第2放電許可信号SA2を出力する。バッテリ異常検出回路17は、例えば、バッテリ16の状態を監視してもよい。より具体的には、バッテリ異常検出回路17は、例えば、バッテリ16の電圧値、バッテリ16から放電される電流の値及び/またはバッテリ16の温度に基づいて、バッテリ16が異常であるか否かを判断してもよい。バッテリ異常検出回路17は、バッテリ16が正常であると判断した場合、第2放電許可信号SA2を出力することによりバッテリ16が正常であることを示してもよい。バッテリ異常検出回路17は、バッテリ16が異常であると判断した場合、第2放電許可信号SA2を出力しないことによりバッテリ16が異常であることを示してもよい。
【0056】
図2及び
図3に示すように、本体部3は、トリガ操作部20と、モータ21と、モータ駆動回路22と、制御回路23と、主電源スイッチ30と、トリガスイッチ部26と、トリガ検出回路80と、過電圧検出回路50と、第1オフ検出回路39と、第2オフ検出回路49と、電流検出回路55と、過熱検出部60と、遮断ラッチ回路70と、表示パネル171とを備える。
【0057】
本体部3は、不図示の電源回路が設けられている。電源回路は、電動作業機1に装着されている第1バッテリパック5又は第2バッテリパック7からバッテリ電圧が供給される。電源回路は、バッテリ電圧に基づいて一定の電源電圧を生成し、その電源電圧を出力する。電源電圧は、不図示の制御電源ラインを介して、本体部3における各部へ供給される。当該各部は、電源回路から供給される電源電圧によって作動する。電源電圧の電圧値(以下、「電源電圧値Vc」と称する)はどのような値であってもよい。本実施形態では、電源電圧値Vcは例えば5Vである。
【0058】
電源回路は、例えば、主動作がイネーブルされていてもディスエーブルされていても、電源回路にバッテリ電圧が供給されている場合は電源電圧を出力してもよい。電源回路は、主動作がイネーブルされている間に電源電圧を出力してもよい。
【0059】
トリガスイッチ部26は、第1トリガスイッチ27と、第2トリガスイッチ28とを備える。第1トリガスイッチ27及び第2トリガスイッチ28は、トリガ操作部20が使用者により操作されることに連動してオン又はオフする。
【0060】
第1トリガスイッチ27は、例えば、ノーマリーオープン型のスイッチである。第2トリガスイッチ28は、例えば、ノーマリークローズ型のスイッチである。トリガ操作部20がオフ操作されている時は、第1トリガスイッチ27はオフし、第2トリガスイッチ28はオンする。トリガ操作部20がオン操作されている時は、第1トリガスイッチ27はオンして第2トリガスイッチ28はオフする。
【0061】
本体部3は、さらに、抵抗器R1と、抵抗器R2と、論理否定(NOT)回路85とを備える。第1トリガスイッチ27の第1端子は、グランドラインに接続されている。第1トリガスイッチ27の第2端子は、NOT回路85の入力端子に接続されている。第1トリガスイッチ27の第2端子は、さらに、抵抗器R1を介して制御電源ラインに接続されている。
【0062】
第2トリガスイッチ28の第1端子は、グランドラインに接続され、第2トリガスイッチ28の第2端子は、トリガ検出回路80を介して制御回路23に接続されている。第2トリガスイッチ28の第2端は、さらに、抵抗器R2を介して制御電源ラインに接続されている。
【0063】
NOT回路85は、第1トリガスイッチ27の第2端子の電圧が、二値信号として入力される。二値信号は、highレベルまたはlowレベルの論理レベルを示す信号である。NOT回路85は、入力された二値信号の論理レベルを反転させて出力する。
【0064】
トリガスイッチ部26のより具体的な構成について、
図4A~
図4Cを参照して説明する。トリガスイッチ部26は、スイッチボックス100と、プランジャ101と、第1トリガスイッチ27と、第2トリガスイッチ28とを備える。プランジャ101は、トリガ操作部20に連結され、トリガ操作部20に連動する。
【0065】
第1トリガスイッチ27は、第1接点121と、第2接点122と、支持バネ123とを備える。第1接点121は、例えば、グランドラインに接続されている。第2接点122は、例えば、NOT回路85に接続されている。第2接点122は、不図示の回転軸を中心に回転可能に構成されている。支持バネ123は、第2接点122を、第1接点121に当接する方向へ付勢する。
【0066】
第2トリガスイッチ28は、第1電極111と、第2電極112と、基板113と、ブラシ114とを備える。ブラシ114は導体を備える。第1電極111及び第2電極112は、基板113上に設けられている。ブラシ114は、プランジャ101に設けられている。ブラシ114は、プランジャ101と共に移動される。第1電極111は、例えば、グランドラインに接続されている。第2電極112は、例えば、トリガ検出回路80に接続されている。
【0067】
プランジャ101は、使用者によりトリガ操作部20が引き操作されることに応じて、
図4A~
図4Cにおける左方向、即ち前述の引き操作方向へ移動する。トリガ操作部20がオフ操作されている場合、プランジャ101は、不図示のバネの付勢力によって、
図4Aに示す位置に支持される。トリガ操作部20がオフ操作されていることは、使用者がトリガ操作部20に触れていないことを含む。トリガ操作部20がオフ操作されている場合、第2接点122は、プランジャ101によって、支持バネ123の付勢力に抗して、第1接点121から離れる方向へ回転移動されている。そのため、第1トリガスイッチ27はオフする。
【0068】
トリガ操作部20がオフ操作されている場合、第2トリガスイッチ28においては、第1電極111と第2電極112とが、ブラシ114を介して電気的に接続されている。そのため、第2トリガスイッチ28はオンする。
【0069】
使用者がトリガ操作部20を引き操作すると、プランジャ101が、スイッチボックス100の内部へ移動する。これに伴い、第2トリガスイッチ28においては、ブラシ114がスイッチボックス100の内部へ移動していく。第1トリガスイッチ27においては、プランジャ101が第2接点122から徐々に離れていき、これに伴い、第2接点122が、支持バネ123の付勢力によって、第1接点121に近づいていく。
【0070】
プランジャ101の引き操作方向への移動が進んでいくと、例えば、
図4Bに示すように、第2接点122が第1接点121に当接する。これにより第1トリガスイッチ27がオンする。プランジャ101の引き操作方向への移動がさらに進んでいくと、
図4Cに示すように、ブラシ114が第1電極111から離れる。これにより第2トリガスイッチ28がオフする。前述のオン操作は、
図4Cに例示するように、第1トリガスイッチ27がオンして第2トリガスイッチ28がオフするようにトリガ操作部20が引き操作されることを意味する。使用者がトリガ操作部20の引き操作を解除すると、プランジャ101は、前述の弾性部材の付勢力によって、トリガ操作部20と共に操作解除方向へ移動し、
図4Aに示す位置に戻る。
【0071】
トリガ検出回路80は、トリガ検出機能を備える。トリガ検出機能は、トリガスイッチ部26の状態に応じた情報を出力する機能である。具体的には、トリガ検出回路80は、第1トリガ情報ST1と、第2トリガ情報ST2と、トリガ判定情報STRとを出力する。
【0072】
トリガ検出回路80は、NOT回路85の出力信号を受ける。トリガ検出回路80は、さらに、第2トリガスイッチ28の第2端子の電圧と、制御回路23から出力される第1疑似信号SF1とを受ける。
【0073】
トリガ検出回路80に入力された、第2トリガスイッチ28の第2端子の電圧は、第2トリガ情報ST2として制御回路23へ出力される。制御回路23は、後述するトリガ検出機能診断を実行する際に第1疑似信号SF1を出力する。
【0074】
第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2、トリガ判定情報STR、トリガ検出回路80がNOT回路85から受ける信号、及び第1疑似信号SF1は、本実施形態では例えば二値信号である。
【0075】
第1トリガ情報ST1は、基本的には、第1トリガスイッチ27がオンされているか否かを示す。第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチ28がオンされているか否かを示す。論理レベルがLレベルの第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチ28がオンしていること、換言すればトリガ操作部20がオフ操作されていることを示す。論理レベルがHレベルの第2トリガ情報ST2は、第2トリガスイッチがオフしていること、換言すればトリガ操作部20がオン操作されていることを示す。
【0076】
トリガ検出回路80は、論理和(OR)回路81と、論理積(AND)回路82とを備える。OR回路81は、NOT回路85の出力信号と、第1疑似信号SF1とを受ける。
【0077】
第1疑似信号SF1は、詳しくは、論理レベルがhighレベルの信号である。つまり、第1疑似信号SF1が出力されることは、第1疑似信号SF1の論理レベルがhighレベルになることを意味する。逆に、第1疑似信号SF1の論理レベルがlowレベルであることは、第1疑似信号SF1が出力されていないことを意味する。このような、信号の論理レベルとその論理レベルが示す当該信号の出力状態との対応関係は、前述の第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2、後述する第3放電許可信号SA3、第4放電許可信号SA4、第1オフ検出信号SB1、第2オフ検出信号SB2、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32、第3過熱信号So33、第2疑似信号SF2、第3疑似信号SF31、第4疑似信号SF32、及び第5疑似信号SF33についても同様である。
【0078】
OR回路81は、入力された2つの信号の論理和を演算し、その演算結果を示す第1トリガ情報ST1を出力する。第1トリガ情報ST1は、制御回路23及びAND回路82に入力される。
【0079】
例えば、OR回路81に第1疑似信号SF1が入力されていない場合を想定する。この場合、第1トリガ情報ST1の論理レベルは、トリガ操作部20がオフ操作されることに応じてlowレベルとなり、トリガ操作部20がオン操作されることに応じてhighレベルとなる。第1トリガ情報ST1の論理レベル及び第2トリガ情報ST2の論理レベルがlowレベルであることは、トリガオフ状態であることを示す。トリガオフ状態では、トリガ操作部20がオフ操作されている。第1トリガ情報ST1の論理レベル及び第2トリガ情報ST2の論理レベルがhighレベルであることは、トリガオン状態を示す。トリガオン状態では、トリガ操作部20がオン操作されている。
【0080】
OR回路81に第1疑似信号SF1が入力されている場合は、トリガ操作部20の状態にかかわらず(即ち第1トリガスイッチ27の状態にかかわらず)第1トリガ情報ST1の論理レベルはhighレベルとなる。制御回路23は、OR回路81に第1疑似信号SF1を入力することにより、第1トリガ情報ST1を、トリガ操作部20がオン操作されている時と電気的に等価な状態に設定することができる。
【0081】
AND回路82は、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2とを受ける。AND回路82は、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2との論理積を演算し、その演算結果を示すトリガ判定情報STRを出力する。トリガ判定情報STRは、遮断ラッチ回路70に入力される。論理レベルがlowレベルのトリガ判定情報STRは、トリガオフ状態を示す。論理レベルがhighレベルのトリガ判定情報STRは、トリガオン状態を示す。
【0082】
モータ21は、モータ駆動回路22からモータ駆動電力が供給されることにより回転駆動される。モータ21が回転すると、モータ21の回転駆動力が駆動機構を介して出力ツール(
図2では不図示)へ伝達され、出力ツールが作動する。本実施形態のモータ21は、例えば、ブラシレスモータである。
【0083】
出力ツールは、本実施形態では例えば前述の回転刃162であるが、出力ツールは、どのようなものであってもよい。出力ツールは、例えば、ドリルビット、ドライバビット、回転砥石、円形のノコ刃、などの、回転することにより被加工物を加工できるものであってもよい。出力ツールは、電動作業機1に着脱可能であってもよい。あるいは、モータ21の回転は、直線運動に変換されて出力ツールへ伝達されてもよい。
【0084】
電動作業機1は、さらに、第1給電ライン91と、第2給電ライン92と、主給電ライン93とを備える。第1給電ライン91の第1端は、第1バッテリパック5に接続されている。第1給電ライン91の第1端は、バッテリ11の電圧が供給される。第1給電ライン91の第2端は、主給電ライン93の第1端に接続されている。
【0085】
第2給電ライン92の第1端は、第2バッテリパック7に接続されている。第2給電ライン92の第1端は、バッテリ16の電圧が供給される。第2給電ライン92の第2端は、主給電ライン93の第1端に接続されている。
【0086】
主給電ライン93の第2端は、モータ駆動回路22に接続されている。主給電ライン93とグランドラインとの間には、コンデンサC0が接続されている。
【0087】
バッテリ11の電力は、第1給電ライン91及び主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に供給される。バッテリ16の電力は、第2給電ライン92及び主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に供給される。
【0088】
モータ駆動回路22は、後述するように、バッテリ11の電力またはバッテリ16の電力が供給される。つまり、主給電ライン93は、バッテリ11の電圧またはバッテリ16の電圧が供給される。主給電ライン93に供給される、バッテリ11の電圧又はバッテリ16の電圧のことを、以下、「入力バッテリ電圧」と称する。
【0089】
第1給電ライン91は、第1充電抑制回路31と、第1切替回路36とが設けられている。
【0090】
第1切替回路36は、スイッチ部37と、AND回路38とを備える。スイッチ部37は、第1給電ライン91を導通又は遮断する。スイッチ部37がオンすると、第1給電ライン91における、スイッチ部37が設けられている部位が導通する。スイッチ部37がオフすると、第1給電ライン91における、スイッチ部37が設けられている部位が遮断され、バッテリ11からモータ21への電力の供給が遮断される。
【0091】
スイッチ部37は、AND回路38から出力される信号の論理レベルがhighレベルの場合にオンする。スイッチ部37は、AND回路38から出力される信号の論理レベルがlowレベルの場合にオフする。
【0092】
スイッチ部37は、どのように構成されていてもよい。本実施形態では、スイッチ部37は、例えば、nチャネルの金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備える。後述するスイッチ部32,42,47も、どのように構成されていてもよく、本実施形態では例えばnチャネルのMOSFETを備える。
【0093】
AND回路38は、3つの信号入力端子を備える。3つの信号入力端子は、第1放電許可信号SA1、制御回路23から出力される第3放電許可信号SA3、及び第2オフ検出信号SB2を受ける。第2オフ検出信号SB2は、第2オフ検出回路49から出力される。AND回路38は、信号入力端子に入力される信号の論理積を演算し、その演算結果を示す信号をスイッチ部37のゲートへ出力する。
【0094】
AND回路38は、第1放電許可信号SA1、第3放電許可信号SA3及び第2オフ検出信号SB2を受けている場合に、highレベルの信号を出力する。AND回路38は、第1放電許可信号SA1、第3放電許可信号SA3及び/または第2オフ検出信号SB2を受けていない場合は、lowレベルの信号を出力する。
【0095】
第2オフ検出回路49は、後述するように、第2充電抑制回路41のスイッチ部42及び第2切替回路46のスイッチ部47がオフしている場合に第2オフ検出信号SB2を出力する。スイッチ部42及び/またはスイッチ部47がオンすると、第2オフ検出信号SB2は出力されない。そのため、例えばスイッチ部47がオンすると、AND回路38に第2オフ検出信号SB2が入力されない。この場合、AND回路38の出力はlowレベルとなってスイッチ部37はオフする。これにより、スイッチ部37,47が同時にオンすることが抑制される。
【0096】
第1充電抑制回路31は、スイッチ部32と、同期整流回路33とを備える。スイッチ部32は、第1給電ライン91を導通又は遮断する。スイッチ部32がオンすると、第1給電ライン91における、スイッチ部32が設けられている部位が導通する。スイッチ部32がオフすると、第1給電ライン91における、スイッチ部32が設けられている部位が遮断される。スイッチ部32は、同期整流回路33によってオン又はオフされる。
【0097】
スイッチ部32のゲートは、同期整流回路33に接続されている。スイッチ部32のソースは、第1バッテリパック5に接続されると共に、同期整流回路33に接続されている。スイッチ部32のドレインは、スイッチ部37のドレインに接続されている。
【0098】
同期整流回路33は、スイッチ部32のソースとドレインの間の電圧に基づいて、スイッチ部32をオン又はオフする。具体的には、スイッチ部32のソース-ドレイン間に存在する寄生ダイオードに、第1バッテリパック5からの放電電流が流れると、同期整流回路33は、その放電電流を検知してスイッチ部32をオンする。同期整流回路33は、スイッチ部32をオンしている時に、第1バッテリパック5からの放電が停止されたこと、又は第1給電ライン91を介して第1バッテリパック5へ充電電流が供給されていること、を検知した場合は、スイッチ部32をオフする。このような構成により、本体部3からバッテリ11へ電流が流れると、スイッチ部32がオフしてその電流が遮断され、バッテリ11の充電が抑制又は防止される。同期整流回路33は、より具体的には、スイッチ部32のドレイン-ソース間の電圧値が所定の電圧値(例えば約30mV)となるように、スイッチ部32のゲート電圧を制御する。
【0099】
第2給電ライン92は、第2充電抑制回路41と、第2切替回路46とが設けられている。
【0100】
第2切替回路46は、スイッチ部47と、AND回路48とを備える。スイッチ部47は、第2給電ライン92を導通又は遮断する。スイッチ部47がオンすると、第2給電ライン92における、スイッチ部47が設けられている部位が導通する。スイッチ部47がオフすると、第2給電ライン92における、スイッチ部47が設けられている部位が遮断され、バッテリ16からモータ21への電力の供給が遮断される。
【0101】
スイッチ部47は、AND回路48から出力される信号の論理レベルがhighレベルの場合にオンする。スイッチ部47は、AND回路48から出力される信号の論理レベルがlowレベルの場合にオフする。
【0102】
AND回路48は、3つの信号入力端子を備える。AND回路48における信号入力端子は、第2放電許可信号SA2、第4放電許可信号SA4、及び第1オフ検出信号SB1を受ける。第1オフ検出信号SB1は、第1オフ検出回路39から出力される。AND回路48は、信号入力端子に入力される信号の論理積を演算し、その演算結果を示す信号をスイッチ部47のゲートへ出力する。
【0103】
AND回路48は、第2放電許可信号SA2、第4放電許可信号SA4及び第1オフ検出信号SB1を受けている場合に、highレベルの信号を出力する。AND回路48は、第2放電許可信号SA2、第4放電許可信号SA4及び/または第1オフ検出信号SB1が入力されていない場合は、lowレベルの信号を出力する。
【0104】
第1オフ検出回路39は、後述するように、第1充電抑制回路31のスイッチ部32及び第1切替回路36のスイッチ部37がオフしている場合に第1オフ検出信号SB1を出力する。スイッチ部32及び/またはスイッチ部37がオンすると、第1オフ検出信号SB1は出力されない。そのため、例えばスイッチ部37がオンすると、AND回路48に第1オフ検出信号SB1が入力されない。この場合、AND回路48の出力はlowレベルとなってスイッチ部47はオフする。これにより、スイッチ部37,47が同時にオンすることが抑制される。
【0105】
第2充電抑制回路41は、スイッチ部42と、同期整流回路43とを備える。スイッチ部42は、第2給電ライン92を導通又は遮断する。スイッチ部42がオンすると、第2給電ライン92における、スイッチ部42が設けられている部位が導通する。スイッチ部42がオフすると、第2給電ライン92における、スイッチ部42が設けられている部位が遮断される。スイッチ部42は、同期整流回路43によってオン又はオフされる。
【0106】
スイッチ部42のゲートは、同期整流回路43に接続されている。スイッチ部42のソースは、第2バッテリパック7に接続されると共に、同期整流回路43に接続されている。スイッチ部42のドレインは、スイッチ部47のドレインに接続されている。
【0107】
同期整流回路43は、スイッチ部42のソースとドレインの間の電圧に基づいて、スイッチ部42をオン又はオフする。具体的には、スイッチ部42のソース-ドレイン間に存在する寄生ダイオードに、第2バッテリパック7からの放電電流が流れると、同期整流回路43は、その放電電流を検知してスイッチ部42をオンする。同期整流回路43は、スイッチ部42をオンしている時に、第2バッテリパック7からの放電が停止されたこと、又は第2給電ライン92を介して第2バッテリパック7への充電電流が供給されていること、を検知した場合は、スイッチ部42をオフする。このような構成により、本体部3からバッテリ16へ電流が流れると、スイッチ部42がオフしてその電流が遮断され、バッテリ16の充電が抑制又は防止される。同期整流回路43は、より具体的には、スイッチ部42のドレイン-ソース間の電圧値が所定の電圧値(例えば約30mV)となるように、スイッチ部42のゲート電圧を制御する。
【0108】
第1オフ検出回路39は、第1給電ライン91における、第1充電抑制回路31と第1切替回路36との間の電圧が入力される。第1オフ検出回路39は、スイッチ部32及びスイッチ部37がオフしていることを検知する。第1オフ検出回路39は、スイッチ部32及びスイッチ部37がオフしている場合に、第1オフ検出信号SB1(highレベルの信号)を出力する。第1オフ検出回路39は、スイッチ部32及び/またはスイッチ部37がオンしている場合は、第1オフ検出信号SB1を出力しない。この場合、第1オフ検出回路39における第1オフ検出信号SB1の出力ポートはlowレベルとなる。
【0109】
第2オフ検出回路49は、第2給電ライン92における、第2充電抑制回路41と第2切替回路46との間の電圧が入力される。第2オフ検出回路49は、スイッチ部42及びスイッチ部47がオフしていることを検知する。第2オフ検出回路49は、スイッチ部42及びスイッチ部47がオフしている場合に、第2オフ検出信号SB2(highレベルの信号)を出力する。第2オフ検出回路49は、スイッチ部42及び/またはスイッチ部47がオンしている場合は、第2オフ検出信号SB2を出力しない。この場合、第2オフ検出回路49における第2オフ検出信号SB2の出力ポートはlowレベルとなる。
【0110】
モータ駆動回路22は、第1バッテリパック5又は第2バッテリパック7から供給される電力(以下、「バッテリ電力」と称する)を、前述のモータ駆動電力に変換して、モータ21へ供給する。モータ駆動電力は、例えば、三相電力である。
【0111】
具体的には、本実施形態のモータ駆動回路22は、例えば、不図示のインバータを含む。インバータは、互いに並列接続されたU相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアを含む。U相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアの各々は、互いに直列接続された2つの半導体スイッチング素子を備える。即ち、モータ駆動回路22は、6個の半導体スイッチング素子を備える。
【0112】
U相スイッチペア、V相スイッチペア及びW相スイッチペアは、モータ21に接続されている。U相スイッチペアは、モータ21へU相電圧を供給する。U相電圧は、U相スイッチペアにおける、互いに直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。V相スイッチペアは、モータ21へV相電圧を供給する。V相電圧は、V相スイッチペアにおける、互いに直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。W相スイッチペアは、モータ21へW相電圧を供給する。W相電圧は、W相スイッチペアにおける、互いに直列接続された2つの半導体スイッチング素子の接続点の電圧である。
【0113】
モータ駆動回路22は、駆動ライン90を介して制御回路23と接続されている。モータ駆動回路22は、制御回路23から、駆動ライン90を介してモータ駆動指令SDを受ける。モータ駆動回路22は、モータ駆動指令SDを受けると、6個の半導体スイッチング素子を、モータ駆動指令SDに従ってオン又はオフする。これにより、前述のU相電圧、V相電圧及びW相電圧を含むモータ駆動電力が生成される。
【0114】
駆動ライン90は、遮断スイッチ29が設けられている。遮断スイッチ29は、駆動ライン90を導通又は遮断する。遮断スイッチ29がオンすると、制御回路23から出力されたモータ駆動指令SDが遮断スイッチ29を介してモータ駆動回路22へ入力される。遮断スイッチ29がオフすると、制御回路23からモータ駆動回路22へのモータ駆動指令SDの伝送が遮断される。
【0115】
遮断スイッチ29は、遮断ラッチ回路70から出力される遮断情報SSに応じてオン又はオフする。遮断スイッチ29は、遮断情報SSの論理レベルがhighレベルである場合にオンする。遮断スイッチ29は、遮断情報SSの論理レベルがlowレベルである場合にオフする。highレベルの遮断情報SSは、指令許可を示す。lowレベルの遮断情報SSは、指令遮断を示す。
【0116】
遮断スイッチ29は、どのように構成されていてもよい。遮断スイッチ29は、例えば、MOSFETを備えていてもよい。
【0117】
過電圧検出回路50、電流検出回路55、及び過熱検出部60は、5つの異常状態を検出するために設けられている。5つの異常状態は、過電圧状態、過電流状態、U相過熱状態、V相過熱状態、及びW相過熱状態を含む。
【0118】
過電圧状態は、例えば、入力バッテリ電圧値が規定の正常電圧範囲よりも高い値になっている状態を示す。入力バッテリ電圧値は、主給電ライン93を介してモータ駆動回路22に供給される入力バッテリ電圧の値である。
【0119】
過電流状態は、例えば、モータ電流値が規定の正常電流範囲よりも高い値になっている状態を示す。モータ電流値は、モータ駆動回路22を介してモータ21に供給される電流の値である。
【0120】
U相過熱状態は、例えば、後述するU相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。V相過熱状態は、例えば、後述するV相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。W相過熱状態は、例えば、後述するW相温度が、規定の正常温度範囲よりも高い値になっている状態を示す。
【0121】
過電圧検出回路50、電流検出回路55、及び過熱検出部60は、後述するように、プログラム(コンピュータプログラム)に基づくソフトウェア処理ではなくハードウェア処理にて、対応する異常状態を検出する。
【0122】
過電圧検出回路50は、入力バッテリ電圧値を検出し、検出した入力バッテリ電圧値に基づく情報を出力する。具体的には、過電圧検出回路50は、電圧信号SVを出力する。電圧信号SVは、入力バッテリ電圧値を示すアナログ信号である。
【0123】
過電圧検出回路50は、さらに、過電圧状態を検出する機能を備える。具体的には、過電圧検出回路50は、入力バッテリ電圧値が、例えば第1電圧閾値以上の場合に、過電圧信号So1を出力する。過電圧信号So1は、過電圧状態が発生していることを示す。第1電圧閾値は、例えば、前述の正常電圧範囲よりも高い値であってもよい。
【0124】
過電圧検出回路50は、制御回路23から第2疑似信号SF2を受ける。制御回路23は、後述する過電圧保護機能診断を実行する際に、第2疑似信号SF2を出力する。
【0125】
過電圧検出回路50は、例えば、
図3に示すように構成されていてもよい。
図3に示すように、過電圧検出回路50は、コンパレータ51と、バッファ52と、抵抗器R3,R4と、コンデンサC1と、ダイオードD1とを備える。ダイオードD1のアノードは主給電ライン93に接続されている。ダイオードD1のカソードは抵抗器R3の第1端子に接続されている。抵抗器R3の第2端子は抵抗器R4の第1端子に接続されている。抵抗器R4の第2端子はグランドラインに接続されている。コンデンサC1の第1端子は、ダイオードD1のカソードに接続されている。コンデンサC1の第2端子は、グランドラインに接続されている。ダイオードD1及びコンデンサC1を含む回路は、いわゆるピークホールド回路として機能する。
【0126】
抵抗器R3と抵抗器R4の接続点の電圧(即ち抵抗器R4の第1端子の電圧)が、電圧信号SVとして制御回路23へ出力される。抵抗器R3と抵抗器R4の接続点の電圧は、さらに、コンパレータ51に入力される。コンパレータ51は、入力バッテリ電圧値が第1電圧閾値より低い場合は過電圧信号So1を出力せず、入力バッテリ電圧値が第1電圧閾値以上の場合に過電圧信号So1を出力するように構成されている。
【0127】
バッファ52は、第2疑似信号SF2を受ける。バッファ52の出力信号は、コンパレータ51に入力される。第2疑似信号SF2の電圧値は、過電圧検出回路50が正常であればコンパレータ91から過電圧信号So1を出力させることが可能な値である。コンパレータ51は、第2疑似信号SF2を受けることに応じて、過電圧信号So1を出力する。そのため、過電圧検出回路50が正常であれば、過電圧検出回路50は、実際には過電圧状態が発生していなくても、第2疑似信号SF2を受けることに応じて過電圧信号So1を出力する。第2疑似信号SF2は、疑似的に過電圧状態を発生させるための信号である。
【0128】
電流検出回路55はモータ電流値を検出し、検出したモータ電流値に基づく情報を出力する。具体的には、電流検出回路55は、電流信号SCを出力する。電流信号SCは、モータ電流値を示すアナログ信号である。
【0129】
電流検出回路55は、さらに、過電流状態を検出する機能を備える。具体的には、電流検出回路55は、モータ電流値が、例えば第1電流閾値以上の場合に、過電流信号So2を出力する。過電流信号So2は、過電流状態が発生していることを示す。第1電流閾値は、例えば、前述の正常電流範囲よりも高い値であってもよい。
【0130】
電流検出回路55は、例えば、
図3に示すように構成されていてもよい。
図3に示すように、電流検出回路55は、増幅回路57と、コンパレータ56と、抵抗器R5とを備える。抵抗器R5は、モータ電流が流れる通電経路に設けられ、モータ電流が流れる。よって、抵抗器R5の両端間には、モータ電流の値に応じた電圧が発生する。増幅回路57は、抵抗器R5の両端間の電圧を増幅する。
【0131】
増幅回路57により増幅された電圧は、電流信号SCとして制御回路23へ出力される。増幅回路57により増幅された電圧は、さらに、コンパレータ56に入力される。コンパレータ56は、モータ電流値が第1電流閾値より低い場合は過電流信号So2を出力しない。コンパレータ56は、モータ電流値が第1電流閾値以上の場合に過電流信号So2を出力する。
【0132】
過熱検出部60は、モータ駆動回路22の温度を検出する。過熱検出部60は、より具体的には、
図3に示すように、第1過熱検出回路61と、第2過熱検出回路62と、第3過熱検出回路63とを備える。
【0133】
第1過熱検出回路61は、モータ駆動回路22におけるU相スイッチペアの温度(以下、「U相温度」と称する)を検出する。U相温度は、具体的には、例えば、U相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。U相温度は、例えば、2つの半導体スイッチング素子のうち、オンする期間が相対的に長い方の温度であってもよい。
【0134】
第1過熱検出回路61は、検出したU相温度に基づく情報を出力する。具体的には、第1過熱検出回路61は、第1温度信号STM1を出力する。第1温度信号STM1は、U相温度を示すアナログ信号である。
【0135】
第1過熱検出回路61は、さらに、U相過熱状態を検出する機能を備える。具体的には、第1過熱検出回路61は、U相温度が、例えば第1U相温度閾値以上の場合に、第1過熱信号So31を出力する。第1過熱信号So31は、U相過熱状態が発生していることを示す。第1U相温度閾値は、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。
【0136】
第1過熱検出回路61は、制御回路23から第3疑似信号SF31を受ける。制御回路23は、後述する第1過熱保護機能診断を実行する際に、第3疑似信号SF31を出力する。
【0137】
第1過熱検出回路61は、例えば、
図3に示すように構成されていてもよい。
図3に示すように、第1過熱検出回路61は、温度検出素子66と、コンパレータ67と、スイッチ68と、抵抗器R6とを備える。温度検出素子66は、前述のU相温度を検出できるように、U相温度の検出対象又はその検出対象の近傍に設けられる。温度検出素子66は、本実施形態では例えば、負の抵抗温度特性を有するNTCサーミスタであってもよい。
【0138】
抵抗器R6の第1端子は制御電源ラインに接続されている。抵抗器R6の第2端子は温度検出素子66の第1端子に接続されている。温度検出素子66の第2端子はグランドラインに接続されている。スイッチ68の第1端子は、抵抗器R6と温度検出素子66との接続点(即ち温度検出素子66の第1端子)に接続されている。スイッチ68の第2端子は、グランドラインに接続されている。
【0139】
抵抗器R6と温度検出素子66との接続点の電圧は、第1温度信号STM1として制御回路23へ出力される。抵抗器R6と温度検出素子66との接続点の電圧は、さらに、コンパレータ67に入力される。コンパレータ67は、U相温度が第1U相温度閾値より低い場合は第1過熱信号So31を出力せず、U相温度が第1U相温度閾値以上の場合に第1過熱信号So31を出力するように構成されている。
【0140】
スイッチ68は、第1過熱検出回路61に第3疑似信号SF31が入力されていない通常時はオフしている。第1過熱検出回路61に第3疑似信号SF3が入力されている間は、スイッチ68はオンする。スイッチ68がオンすると、コンパレータ67に入力される電圧の値は略0Vとなる。この場合、第1過熱検出回路61が正常であれば、コンパレータ67から第1過熱信号So31が出力される。つまり、実際にはU相過熱状態が発生していなくても、第1過熱検出回路61に第3疑似信号SF31が入力されると、疑似的にU相過熱状態が発生する。
【0141】
第2過熱検出回路62及び第3過熱検出回路63は、本実施形態では、温度検出素子66が設けられる位置を除き、第1過熱検出回路61と同じように構成されている。
【0142】
第2過熱検出回路62は、モータ駆動回路22におけるV相スイッチペアの温度(以下、「V相温度」と称する)を検出する。V相温度は、例えば、U相温度と同じように、V相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。第2過熱検出回路62は、検出したV相温度を示すアナログの第2温度信号STM2を出力する。
【0143】
第2過熱検出回路62は、さらに、V相過熱状態を検出する機能を備える。具体的には、第2過熱検出回路62は、V相温度が、例えば第1V相温度閾値以上の場合に、第2過熱信号So32を出力する。第2過熱信号So32は、V相過熱状態が発生していることを示す。第1V相温度閾値は、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。
【0144】
第2過熱検出回路62は、制御回路23から第4疑似信号SF32を受ける。制御回路23は、後述する第2過熱保護機能診断を実行する際に、第4疑似信号SF32を出力する。第2過熱検出回路62に第4疑似信号SF32が入力されると、実際にはV相過熱状態が発生していなくても、疑似的にV相過熱状態が発生する。第2過熱検出回路62は、第4疑似信号SF2を受けると、第2過熱信号So32を出力する。
【0145】
第3過熱検出回路63は、モータ駆動回路22におけるW相スイッチペアの温度(以下、「W相温度」と称する)を検出する。W相温度は、具体的には、U相温度と同様に、例えば、W相スイッチペアに含まれる2つの半導体スイッチング素子のうちの1つの温度であってもよい。第3過熱検出回路63は、検出したW相温度を示すアナログの第3温度信号STM3を出力する。
【0146】
第3過熱検出回路63は、さらに、W相過熱状態を検出する機能を備える。具体的には、第3過熱検出回路63は、W相温度が、例えば第1W相温度閾値以上の場合に、第3過熱信号So33を出力する。第3過熱信号So33は、W相過熱状態が発生していることを示す。第1W相温度閾値は、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。
【0147】
第3過熱検出回路63は、制御回路23から第5疑似信号SF33を受ける。制御回路23は、後述する第3過熱保護機能診断を実行する際に、第5疑似信号SF33を出力する。第3過熱検出回路63に第5疑似信号SF33が入力されると、実際にはW相過熱状態が発生していなくても、疑似的にW相過熱状態が発生する。第3過熱検出回路63は、第5疑似信号SF3を受けると、第3過熱信号So33を出力する。
【0148】
第1U相温度閾値、第1V相温度閾値及び第1W相温度閾値のうちの少なくとも2つは等しくてもよい。第1U相温度閾値、第1V相温度閾値及び第1W相温度閾値は互いに異なっていてもよい。
【0149】
遮断ラッチ回路70は、トリガ判定情報STRを受ける。遮断ラッチ回路70は、さらに、過電圧信号So1と、過電流信号So2と、第1過熱信号So31と、第2過熱信号So32と、第3過熱信号So33とを受け得る。遮断ラッチ回路70は、これらの情報及び信号に基づいて、遮断情報SSを出力する。遮断ラッチ回路70は、さらに、異常検出情報Sorを出力することがある。
【0150】
遮断ラッチ回路70は、電動作業機1が駆動許可状態である場合に、指令許可を示すhighレベルの遮断情報SSを出力することにより、遮断スイッチ29をオンする。駆動許可状態は、モータ21を駆動させてもよい状態を意味する。遮断ラッチ回路70は、電動作業機1の状態が駆動禁止状態である場合に、指令遮断を示すlowレベルの遮断情報SSを出力することにより、遮断スイッチ29をオフする。駆動禁止状態は、モータ21を駆動させるべきではない状態を意味する。
【0151】
駆動許可状態は、本実施形態では、トリガ判定情報STRがトリガオン状態を示している状態、及び異常未検出状態を含む。異常未検出状態は、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32、及び第3過熱信号So33が入力されていない状態を示す。異常未検出状態は、換言すれば、前述の5つの異常状態のいずれも検出されていない状態を示す。
【0152】
駆動禁止状態は、本実施形態では、トリガ判定情報STRがトリガオフ状態を示している状態及び/または異常検出状態を含む。異常検出状態は、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び/または第3過熱信号So33が入力されている状態を示す。異常検出状態は、換言すれば、前述の5つの異常状態のうちの1つ以上が検出されている状態を示す。
【0153】
遮断ラッチ回路70は、さらに、遮断ラッチ機能を備える。遮断ラッチ機能は、電動作業機1が異常検出状態となることにより遮断スイッチ29がオフした後、電動作業機1が異常未検出状態に変化しても、少なくともトリガ操作部20が一旦オフ操作されるまでは遮断スイッチ29のオフを維持する機能である。遮断ラッチ回路70は、指令遮断を示す遮断情報SSを継続して出力することにより遮断スイッチ29のオフを維持する。
【0154】
遮断ラッチ回路70は、例えば、
図3に示すように構成されていてもよい。
図3に示すように、遮断ラッチ回路70は、第1フリップフロップ(FF)71と、OR回路72と、NOT回路73と、OR回路74と、第2FF75と、AND回路76と、抵抗器R7,R8と、コンデンサC2,C3とを備える。第1FF71及び第2FF75は、本実施形態では、例えばD型FFである。第1FF71及び第2FF75は、クロック入力端子とデータ入力端子と出力端子とを備える。第1FF71及び第2FF75は、クロック入力端子に入力される信号の立ち上がりエッジ(即ちlowレベルからhighレベルへの論理レベルの変化)が発生する度に、その時データ入力端子に入力されている信号の論理レベルと同じ論理レベルの信号を出力端子から出力する。第1FF71及び第2FF75は、立ち上がりエッジが発生した後、次に再び立ち上がりエッジが発生するまでは、データ入力端子に入力される信号の論理レベルが変化しても出力端子から出力する信号の論理レベルを維持する。
【0155】
OR回路72は、5つの入力端子を備える。5つの入力端子は、過電圧信号So1と、過電流信号So2と、第1過熱信号So31と、第2過熱信号So32と、第3過熱信号So33とが入力され得る。OR回路72は、5つの入力端子に入力される信号の論理和を演算し、その演算結果を出力する。
【0156】
トリガ判定情報STRは、第1FF71のクロック入力端子及びAND回路76に入力される。トリガ判定情報STRは、さらに、コンデンサC2を介してOR回路74に入力される。
【0157】
コンデンサC2とOR回路74との接続点と、グランドラインとの間に、抵抗器R8が接続されている。コンデンサC2及び抵抗器R8を含む回路は、トリガ判定情報STRを微分してOR回路74へ出力する微分回路として機能する。
【0158】
OR回路72の出力信号は、NOT回路73に入力されると共に、抵抗器R7を介してOR回路74に入力される。OR回路72の出力信号は、さらに、異常検出情報Sorとして制御回路23に入力される。
【0159】
抵抗器R7とOR回路74との接続点と、グランドラインとの間に、コンデンサC3が接続されている。抵抗器R7及びコンデンサC3を含む回路は、OR回路72の出力信号を積分してOR回路74へ出力する積分回路として機能する。OR回路74の出力信号は、第2FF75のクロック入力端子に入力される。
【0160】
NOT回路73の出力信号は、第1FF71のデータ入力端子及び第2FF75のデータ入力端子に入力される。第1FF71の出力信号及び第2FF75の出力信号は、AND回路76に入力される。
【0161】
このように構成された遮断ラッチ回路70は、例えば次のように動作する。例えば、電動作業機1が異常未検出状態であり、トリガ判定情報STRの論理レベルが、トリガオフ状態を示すlowレベルである状況を想定する。この状況では、AND回路76の出力信号はlowレベルである。つまりこの状況では、遮断情報SSは、指令遮断を示す。そのため、遮断スイッチ29はオフする。
【0162】
さらに、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び第3過熱信号So33がOR回路72に入力されていない状況を想定する。この状況では、第1FF71及び第2FF75のデータ入力端子の論理レベルは、highレベルである。
【0163】
このような状況から、トリガ判定情報STRの論理レベルがトリガオン状態を示すhighレベルに変化した状況を想定する。トリガ判定情報STRの論理レベルがhighレベルに変化すると、第1FF71及び第2FF75のクロック入力端子に入力される信号に立ち上がりエッジが発生する。そのため、第1FF71及び第2FF75の出力端子から出力される信号の論理レベルはhighレベルに変化する。これにより、AND回路76の出力信号がhighレベルに変化する。つまりこの場合、遮断情報SSは、指令許可を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29がオンする。
このように遮断ラッチ回路70から指令許可を示す遮断情報SSが出力されている状況から、過電圧信号So1、過電流信号So2、第1過熱信号So31、第2過熱信号So32及び/または第3過熱信号So33がOR回路72に入力された状況(即ち、電動作業機1が異常検出状態に変化した状況)を想定する。この状況では、第2FF75のデータ入力端子の論理レベルがlowレベルに変化する。第2FF75のデータ入力端子の論理レベルがlowレベルに変化した後、第2FF75のクロック入力端子の論理レベルがhighレベルに変化する。これにより、第2FF75の出力信号がlowレベルに変化し、AND回路76の出力信号がlowレベルに変化する。つまり、遮断情報SSが、指令遮断を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29がオフする。データ入力端子の論理レベルがlowレベルになるタイミングからクロック入力端子の論理レベルがhighレベルになるタイミングまでの時間差は、前述の積分回路の時定数に基づく。
【0164】
上記のように異常が生じたことにより指令遮断を示す遮断情報SSが出力されている状況から、異常が回復したことにより、OR回路72に入力されていたhighレベルの信号がlowレベルに変化した状況を想定する。この状況では、第1FF71及び第2FF75のデータ入力端子の論理レベルはhighレベルに変化する。ただし、トリガ判定情報STRがhighレベルに維持されている間は、第1FF71及び第2FF75の出力信号は変化せず、遮断情報SSは指令遮断を示す情報に維持される。そのため、遮断スイッチ29は、オフした状態に維持される。
【0165】
上記のように異常が回復した状況において、さらに、トリガ操作部20がオフ操作され、再びオン操作された状況を想定する。トリガ操作部20がオフ操作されると、第1FF71及び第2FF75のクロック入力端子の論理レベルがlowレベルに変化する。トリガ操作部20がオフ操作された後にトリガ操作部20が再びオン操作されると、第1FF71及び第2FF75のクロック入力端子の論理レベルがhighレベルに変化し、第1FF71及び第2FF75の出力信号がhighレベルに変化する。これにより、AND回路76の出力信号がhighレベルに変化し、遮断情報SSは指令許可を示す情報に変化する。そのため、遮断スイッチ29はオンする。
【0166】
このように、遮断ラッチ回路70は、ソフトウェア処理を行うことなく、ハードウェア処理にて、遮断情報SSを出力する機能及び遮断ラッチ機能を含む各種機能を実行する。
【0167】
制御回路23は、前述の電源回路から供給される電源電圧によって動作する。制御回路23は、CPU24及びメモリ25を含むマイクロコンピュータを備えている。メモリ25は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリを含んでもよい。メモリ25は、CPU24が電動作業機1の各種機能を達成するために読み込み、実行する各種プログラムやデータを記憶する。これら各種機能は、前述のようなソフトウェア処理に限るものではなく、その一部又は全部が、論理回路やアナログ回路等を含むハードウェアによって達成されてもよい。
【0168】
制御回路23は、第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2、トリガ判定情報STR、第1放電許可信号SA1、第2放電許可信号SA2、第1オフ検出信号SB1、第2オフ検出信号SB2、遮断情報SS、電圧信号SV、電流信号SC、第1温度信号STM1~第3温度信号STM3、及び異常検出情報Sorを受ける。制御回路23は、さらに、主電源スイッチ30から、使用者による主電源スイッチ30の操作を示す情報を受ける。
【0169】
制御回路23は、主電源スイッチ30から入力される情報に基づいて、電動作業機1の主動作をイネーブル又はディスエーブルする。制御回路23は、主電源スイッチ30が押し戻し操作される度に、主動作を交互にイネーブル又はディスエーブルする。制御回路23は、制御回路23に入力される上述の各情報及び各信号に基づいて、各種の機能を実行する。
【0170】
本実施形態の制御回路23は、主動作をイネーブルした後、主電源スイッチ30が操作されなくても、トリガ操作部20が引き操作されない状態が規定時間継続したら、主動作をディスエーブルする。
【0171】
制御回路23は、制御回路23が第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2を受けている場合、第3放電許可信号SA3または第4放電許可信号SA4を出力する。この場合、第1給電ライン91上のスイッチ部37又は第2給電ライン92上のスイッチ部47がオンする。
【0172】
制御回路23は、制御回路23が第1放電許可信号SA1を受けていて第2放電許可信号SA2を受けていない場合は、第3放電許可信号SA3を出力して第4放電許可信号SA4を出力しない。この場合、第1給電ライン91上のスイッチ部37がオンし、第2給電ライン92上のスイッチ部47はオフする。
【0173】
制御回路23は、制御回路23が第2放電許可信号SA2を受けていて第1放電許可信号SA1を受けていない場合は、第4放電許可信号SA4を出力して第3放電許可信号SA3を出力しない。この場合、第2給電ライン92上のスイッチ部47がオンし、第1給電ライン91上のスイッチ部37はオフする。
【0174】
制御回路23は、主動作がイネーブルされているイネーブリング期間中、トリガ操作部20がオン操作された場合、モータ駆動回路22へモータ駆動指令SDを出力することにより、モータ21を駆動する。
【0175】
制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2がトリガオン状態を示している(即ち論理レベルがhighレベルである)場合に、トリガ操作部20がオン操作されたと判断して、モータ駆動指令SDを出力する。制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び/または第2トリガ情報ST2がトリガオフ状態を示している(即ち論理レベルがlowレベルである)場合は、トリガ操作部20がオフ操作されたと判断して、モータ駆動指令SDを出力しない。
【0176】
制御回路23は、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7へ、トリガ検出情報ST0を出力する。トリガ検出情報ST0は、トリガ操作部20がオン操作されているか否かを示す。制御回路23は、トリガ操作部20がオフ操作されていると制御回路23が判断している場合は、論理レベルがlowレベルのトリガ検出情報ST0を出力する。論理レベルがlowレベルのトリガ検出情報ST0は、トリガ操作部20がオフ操作されていることを示す。制御回路23は、トリガ操作部20がオン操作されていると判断している場合は、論理レベルがhighレベルのトリガ検出情報ST0を出力する。論理レベルがhighレベルのトリガ検出情報ST0は、トリガ操作部20がオン操作されていることを示す。制御回路23に電源電圧が供給されず制御回路23が動作を停止している間は、トリガ検出情報ST0の論理レベルはlowレベルに維持される。
【0177】
制御回路23は、イネーブリング期間中、モータ駆動指令SDを出力した場合、モータ21を駆動したことを示すモータ駆動履歴をメモリ25に記憶する。
【0178】
制御回路23は、異常検出機能を備える。異常検出機能は、具体的には、過電圧検出機能、過電流検出機能及び過熱検出機能を備える。異常検出機能は、制御回路23において、CPU24が後述するメイン処理を実行することによって実行される。つまり、これらの異常検出機能は、ソフトウェアに基づいて実行される。
【0179】
過電圧検出機能は、前述の過電圧状態を検出する機能である。制御回路23は、過電圧検出回路50から受けた電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値に基づいて、過電圧状態を検出する。例えば、制御回路23は、入力バッテリ電圧値が第2電圧閾値以上である場合に、過電圧状態が発生していると判断してもよい。第2電圧閾値は、例えば、前述の正常電圧範囲よりも高い値であってもよい。第2電圧閾値は、例えば、第1電圧閾値と同じ値であってもよいし、第1電圧閾値より大きくてもよいし、第1電圧閾値より小さくてもよい。
【0180】
過電流検出機能は、前述の過電流状態を検出する機能である。制御回路23は、電流検出回路55から受けた電流信号SCが示すモータ電流値に基づいて、過電流状態を検出する。例えば、制御回路23は、モータ電流値が第2電流閾値以上である場合に、過電流状態が発生していると判断してもよい。第2電流閾値は、例えば、前述の正常電流範囲よりも高い値であってもよい。第2電流閾値は、例えば、第1電流閾値と同じ値であってもよいし、第1電流閾値より大きくてもよいし、第1電流閾値より小さくてもよい。
【0181】
過熱検出機能は、より具体的には、第1過熱検出機能、第2過熱検出機能及び第3過熱検出機能を備える。
【0182】
第1過熱検出機能は、前述のU相過熱状態を検出する機能である。制御回路23は、第1過熱検出回路61から受けた第1温度信号STM1が示すU相温度に基づいて、U相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、U相温度が第2U相温度閾値以上である場合に、U相過熱状態が発生していると判断してもよい。第2U相温度閾値は、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。第2U相温度閾値は、例えば、第1U相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1U相温度閾値より大きくてもよいし、第1U相温度閾値より小さくてもよい。
【0183】
第2過熱検出機能は、前述のV相過熱状態を検出する機能である。制御回路23は、第2過熱検出回路62から受けた第2温度信号STM2が示すV相温度に基づいて、V相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、V相温度が第2V相温度閾値以上である場合に、V相過熱状態が発生していると判断してもよい。第2V相温度閾値は、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。第2V相温度閾値は、例えば、第1V相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1V相温度閾値より大きくてもよいし、第1V相温度閾値より小さくてもよい。
【0184】
第3過熱検出機能は、前述のW相過熱状態を検出する機能である。制御回路23は、第3過熱検出回路63から受けた第3温度信号STM3が示すW相温度に基づいて、W相過熱状態を検出する。例えば、制御回路23は、W相温度が第2W相温度閾値以上である場合に、W相過熱状態が発生していると判断してもよい。第2W相温度閾値は、前述の正常温度範囲よりも高い値であってもよい。第2W相温度閾値は、例えば、第1W相温度閾値と同じ値であってもよいし、第1W相温度閾値より大きくてもよいし、第1W相温度閾値より小さくてもよい。
【0185】
第2U相温度閾値、第2V相温度閾値及び第2W相温度閾値は、同じ値であってもよいし、いずれか2つが同じ値であってもよいし、全て異なる値であってもよい。
【0186】
制御回路23は、モータ駆動指令SDを出力している間、強制停止機能を実行する。強制停止機能は、上述の異常検出機能によっていずれかの異常を検出することに応じて、トリガ操作部20がオン操作されていても、モータ駆動指令SDの出力を停止してモータ21を停止することを含む。強制停止機能は、異常駆動履歴をメモリ25に記憶することを含む。異常駆動履歴は、モータ駆動中に異常を検出したことを示す。
【0187】
(3)自己診断機能の説明
制御回路23は、自己診断機能を備える。自己診断機能は、複数の診断項目に対応した複数の自己診断を、規定順序に従って1つずつ、対応する診断タイミングで実行する機能である。
【0188】
本実施形態では、複数の診断項目は例えば第1診断項目、第2診断項目、第3診断項目、第4診断項目、第5診断項目及び第6診断項目を備える。第1診断項目は、トリガ検出機能診断である。第2診断項目は、給電ライン機能診断である。第3診断項目は、第1過熱保護機能診断である。第4診断項目は、第2過熱保護機能診断である。第5診断項目は、第3過熱保護機能診断である。第6診断項目は、過電圧保護機能診断である。
【0189】
各診断項目の自己診断を実行する規定順序は、どのような順序であってもよい。本実施形態の規定順序は、例えば、1番目が第1診断項目、2番目が第2診断項目、3番目が第3診断項目、4番目が第4診断項目、5番目が第5診断項目、6番目が第6診断項目、である。第6診断項目の次は、第1診断項目に戻り、第1診断項目から再び上記順序で診断が実行される。
【0190】
各診断項目の診断タイミングは、例えば、給電ライン機能診断の診断タイミングを除き、ディスエーブリングタイミングに対応する。ディスエーブリングタイミングは、主動作がディスエーブルされた時である。ディスエーブリングタイミングは、主動作がディスエーブルされた直後から一定時間経過するまでの間における任意のタイミングに対応してもよい。
【0191】
給電ライン機能診断を除く他の各診断項目の診断タイミングがディスエーブリングタイミングに設定されている理由の1つは、次の通りである。即ち、本実施形態の制御回路23は、自己診断の実行中にトリガ操作部20がオン操作されると自己診断を中断するように構成されている。トリガ操作部20がオン操作される可能性が低いタイミングで自己診断が実行されれば、自己診断が中断される可能性も低くなる。ディスエーブリングタイミングは、電動作業機1の使用者が、電動作業機1を用いた作業を終了したことを意思表示したタイミングに対応すると考えることができる。このタイミングからしばらくの間は、トリガ操作部20がオン操作される可能性は低いことが予想される。そこで、本実施形態では、給電ライン機能診断の診断タイミングを除き、各診断項目の診断タイミングがディスエーブリングタイミングに設定されている。
【0192】
制御回路23は、ディスエーブリングタイミングにおいて、直前イネーブリング期間中にモータ駆動履歴が記憶されなかった場合、又は直前イネーブリング期間中に異常駆動履歴が記憶された場合は、自己診断を実行しない。この場合、次の診断タイミングにおける診断項目は、今回実行しなかった診断項目に再び設定される。直前イネーブリング期間は、ディスエーブリングタイミングの直前のイネーブリング期間を意味する。直前イネーブリング期間中にモータ駆動履歴が記憶されなかったことは、直前イネーブリング期間中にモータ21が駆動されなかったことを意味する。直前イネーブリング期間中に異常駆動履歴が記憶されたことは、直前イネーブリング期間において、モータ21が駆動されているときに異常が検出されてモータ21が停止されたことを意味する。
【0193】
給電ライン機能診断の実行タイミングは、例えば、イネーブリングタイミングに対応する。イネーブリングタイミングは、主動作がイネーブルされた時である。イネーブリングタイミングは、主動作がイネーブルされた直後から一定時間経過するまでの間における任意のタイミングに対応してもよい。
【0194】
制御回路23は、診断項目毎に、自己診断を行った結果を示す自己診断履歴を、メモリ25に記憶する。具体的には、制御回路23は、診断の結果が異常を示すものであった場合は、自己診断履歴として異常判定を示す情報を記憶する。この場合、制御回路23は、次のイネーブリングタイミングにおいて、今回と同じ診断項目の自己診断を再び実行する。制御回路23は、診断の結果が正常を示すものであった場合は、自己診断履歴として正常判定を示す情報を記憶する。
【0195】
制御回路23は、診断が正常に完了せずに中断された場合は、今回と同じ診断項目の自己診断を、その中断後に最初に到来する、当該診断項目に対応した正規の診断タイミングで、再び実行する。
【0196】
トリガ検出機能診断においては、制御回路23は、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、トリガ検出回路80へ第1疑似信号SF1を出力することにより、第1トリガ情報ST1を疑似的にトリガオン状態を示す情報(即ちhighレベル)に設定する。
【0197】
制御回路23は、第1疑似信号SF1を出力している間、制御回路23が受ける第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSに基づいて、診断を実行する。トリガ検出機能診断が実行されるタイミングでは、主電源スイッチ30はオフしている。そのため、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常ならば、第1疑似信号SF1が出力されると、第1トリガ情報ST1はhighレベルとなり、第2トリガ情報ST2はlowレベルとなり、遮断情報SSはlowレベルとなる。
【0198】
制御回路23は、上記各情報が適正な情報である(即ち、第1トリガ情報ST1がhighレベル、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSがlowレベルである)場合、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0199】
制御回路23は、第1トリガ情報ST1が適正な情報ではない場合、トリガ検出回路80が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0200】
制御回路23は、遮断情報SSが適正な情報ではない場合、トリガ検出回路80又は遮断ラッチ回路70が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0201】
第2トリガ情報ST2が適正な情報ではない場合、制御回路23は、トリガ検出回路80が正常に動作しないと判断してもよいが、本実施形態では、診断を中断する。
【0202】
給電ライン機能診断においては、制御回路23は、第1切替回路36及び第2切替回路46が正常に動作するか否かを診断する。
【0203】
具体的には、制御回路23は、第1バッテリパック5から第1放電許可信号SA1を受けていない場合に、第3放電許可信号SA3を出力する。制御回路23は、第3放電許可信号SA3を出力している間に第1オフ検出回路39から第1オフ検出信号SB1を受けた場合(つまりスイッチ部32,37がオフしている場合)、第1切替回路36が正常であると判断する。制御回路23は、第3放電許可信号SA3を出力している間に第1オフ検出回路39から第1オフ検出信号SB1を受けなくなった場合は、第1切替回路36が正常ではないと判断する。
【0204】
制御回路23は、さらに、第2バッテリパック7から第2放電許可信号SA2を受けていない場合、第4放電許可信号SA4を出力する。制御回路23は、第4放電許可信号SA4を出力している間に第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2を受けた場合(つまりスイッチ部42,47がオフしている場合)、第2切替回路46が正常であると判断する。制御回路23は、第4放電許可信号SA4を出力している間に第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2を受けなくなった場合は、第2切替回路46が正常ではないと判断する。
【0205】
制御回路23は、給電ライン機能診断において、正常ではないとの判断を行わなかった場合は、自己診断結果が正常であると判定する。この場合、制御回路23は、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。制御回路23は、第1切替回路36及び第2切替回路46の何れか一方でも正常ではないと判断した場合は、自己診断結果が異常であると判定する。この場合、制御回路23は、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0206】
給電ライン機能診断の診断タイミングがイネーブリングタイミングに設定されている理由の1つは、次の通りである。例えばバッテリ異常検出回路12は、第1バッテリパック5の異常を検出していない場合、トリガ検出情報ST0に基づいて第1放電許可信号SA1を出力する。より具体的には、バッテリ異常検出回路12は、トリガ検出情報ST0に基づいてトリガ操作部20がオン操作されたことを認識することに応じて、その認識した時から一定期間、第1放電許可信号SA1を出力する。使用者による電動作業機1の使用状況によっては、トリガ操作部20がオン操作されてから一定期間が経過するよりも先に主動作がディスエーブルされる可能性がある。つまり、第1放電許可信号SA1が出力されている状態で主動作がディスエーブルされる可能性がある。この場合、第1放電許可信号SA1が出力されているため、給電ライン機能診断を適正に実行できない。一方、イネーブリングタイミングは、使用者がこれから電動作業機1を使用としている状態であって、第1放電許可信号SA1が出力されている可能性は低い。そこで、本実施形態では、給電ライン機能診断の診断タイミングがイネーブリングタイミングに設定されている。
【0207】
第1過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第1過熱検出回路61及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、第1過熱検出回路61へ第3疑似信号SF31を出力することにより、U相過熱状態を疑似的に発生させる。制御回路23は、第3疑似信号SF31を出力している間、制御回路23が受ける第1温度信号STM1及び異常検出情報Sorに基づいて、診断を実行する。
【0208】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度が、特定のU相閾値以上であって、且つ、異常検出情報Sorがhighレベルである場合、第1過熱検出回路61及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。U相閾値は、どのような値であってもよい。U相閾値は、例えば、前述の正常温度範囲よりも高い特定の値であってもよい。U相閾値は、例えば、前述の第1U相温度閾値又は第2U相温度閾値と同じ値であってもよい。
【0209】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度が、U相閾値より低い場合、第1過熱検出回路61が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0210】
制御回路23は、第1温度信号STM1が示すU相温度がU相閾値以上(即ち第1過熱検出回路61が正常)である一方で、異常検出情報Sorがlowレベルである場合は、遮断ラッチ回路70が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0211】
第2過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第2過熱検出回路62へ第4疑似信号SF32を出力する。そして、制御回路23は、第2温度信号STM2及び異常検出情報Sorに基づき、第1過熱保護機能診断と同じ要領で、第2過熱検出回路62及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。
【0212】
第3過熱保護機能診断においては、制御回路23は、第3過熱検出回路63へ第5疑似信号SF33を出力する。そして、制御回路23は、第3温度信号STM3及び異常検出情報Sorに基づき、第1過熱保護機能診断と同じ要領で、第3過熱検出回路63及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。
【0213】
過電圧保護機能診断においては、制御回路23は、過電圧検出回路50及び遮断ラッチ回路70が正常に動作するか否かを診断する。具体的には、制御回路23は、過電圧検出回路50へ第2疑似信号SF2を出力することにより、過電圧状態を疑似的に発生させる。制御回路23は、第2疑似信号SF2を出力している間、制御回路23が受ける電圧信号SV及び異常検出情報Sorに基づいて、診断を実行する。
【0214】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が、特定の電圧判定閾値以上であって、且つ、異常検出情報Sorがhighレベルである場合、過電圧検出回路50及び遮断ラッチ回路70が正常に動作すると判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が正常であると判定し、正常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。電圧判定閾値は、どのような値であってもよい。電圧判定閾値は、例えば、前述の正常電圧範囲よりも高い特定の値であってもよい。電圧判定閾値は、例えば、前述の第1電圧閾値又は第2電圧閾値と同じ値であってもよい。
【0215】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が電圧判定閾値より低い場合、過電圧検出回路50が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0216】
制御回路23は、電圧信号SVが示す入力バッテリ電圧値が電圧判定閾値以上(即ち過電圧検出回路50が正常)である一方で、異常検出情報Sorがlowレベルである場合は、過電圧検出回路50が正常に動作しないと判断する。この場合、制御回路23は、自己診断結果が異常であると判定し、異常判定を示す自己診断履歴をメモリ25に記憶する。
【0217】
(4)自己診断の実行例
次に、制御回路23による自己診断機能の実行例を、
図5~
図7を参照して説明する。
【0218】
まず、
図5に示す第1の実行例について説明する。第1の実行例は、毎回の自己診断の結果が正常である場合を示している。第1の実行例では、時刻t1以降で最初に実行すべき診断項目が第1診断項目に設定されている。
【0219】
第1の実行例では、時刻t1で主動作がイネーブルされる。第1診断項目の診断タイミングはディスエーブリングタイミングに対応するため、時刻t1では第1診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0220】
第1の実行例では、時刻t1で主動作がイネーブルされた後、モータ21が駆動されることなく時刻t2で主動作がディスエーブルされる。時刻t2は、第1診断項目の診断タイミングに対応する。しかし、時刻t2に対応する直前イネーブリング期間中にモータ21が駆動されなかったため、時刻t2では第1診断項目の自己診断は行われない。
【0221】
第1の実行例では、時刻t3で主動作がイネーブルされた後、時刻t4で主動作がディスエーブルされる。時刻t3から時刻t4までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。第1の実行例では、トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動される。時刻t4では、時刻t4が第1診断項目の診断タイミングでに対応することに基づき、第1診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t4で開始された第1診断項目の自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0222】
第1の実行例では、時刻t5で主動作がイネーブルされる。時刻t5では、次に実行すべき自己診断の診断項目(以下、「次診断項目」と称する)が第2診断項目であること、及びその第2診断項目の診断タイミングがイネーブリングタイミングに対応すること、に基づき、第2診断項目の自己診断が実行される。次診断項目が第2診断項目であることは、時刻t4で実行された第1診断項目の診断結果が正常であったことに基づく。第1の実行例は、時刻t5で開始された第2診断項目の自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0223】
第1の実行例では、時刻t6で主動作がディスエーブルされ、時刻t7で主動作がイネーブルされる。時刻t7においては、次診断項目は第3診断項目である。次診断項目が第3診断項目であることは、時刻t5で実行された第2診断項目の診断結果が正常であったことに基づく。第3診断項目の診断タイミングはディスエーブリングタイミングに対応する。そのため、時刻t7では第3診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0224】
第1の実行例では、時刻t8で主動作がディスエーブルされる。時刻t7から時刻t8までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が駆動される。ただし、第1の実行例では、モータ21が駆動されている間に異常検出機能によって異常が検出されたことにより、トリガ操作部20がオン操作されていることが無効化されてモータ21が停止される。
【0225】
時刻t8は、本来、次に実行すべき第3診断項目の診断タイミングに対応する。しかし、時刻t8に対応する直前イネーブリング期間において、前述のように異常が検出されたことによってモータ21が停止された。そのため、時刻t8では第3診断項目の自己診断は行われない。
【0226】
第1の実行例では、時刻t9で主動作がイネーブルされる。第3診断項目の診断タイミングはディスエーブリングタイミングに対応するため、時刻t9では第3診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0227】
第1の実行例では、時刻t10で主動作がディスエーブルされる。時刻t9から時刻t10までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。第1の実行例では、トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動された。時刻t10では、時刻t10が第3診断項目の診断タイミングに対応することに基づき、第3診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t10で開始された第3診断項目の自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0228】
第1の実行例では、時刻t11で主動作がイネーブルされる。時刻t11においては、次診断項目は第4診断項目である。次診断項目が第4診断項目であることは、時刻t10で実行された第3診断項目の診断結果が正常であったことに基づく。第4診断項目の診断タイミングはディスエーブリングタイミングに対応する。そのため、時刻t11では第4診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0229】
第1の実行例では、時刻t12で主動作がディスエーブルされる。時刻t11から時刻t12までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。第1の実行例では、トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動された。時刻t12では、時刻t12が第4診断項目の診断タイミングに対応することに基づき、第4診断項目の自己診断が実行される。第1の実行例は、時刻t12で開始された第4診断項目の自己診断で正常との結果が得られた例を示している。
【0230】
第1の実行例では、時刻t13で主動作がイネーブルされる。時刻t13においては、次診断項目は第5診断項目である。次診断項目が第5診断項目であることは、時刻t12で実行された第4診断項目の診断結果が正常であったことに基づく。第5診断項目の診断タイミングはディスエーブリングタイミングに対応する。そのため、時刻t13では第5診断項目の自己診断はまだ実行されない。
【0231】
次に、
図6に示す第2の実行例について説明する。第2の実行例は、異常との自己診断の結果が得られる場合を含む。第2の実行例では、時刻t21以降で最初に実行すべき診断項目が第1診断項目に設定されている。
【0232】
図6に示すように、第2の実行例では、時刻t21で主動作がイネーブルされ、時刻t22で主動作がディスエーブルされる。時刻t21から時刻t22までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動される。
【0233】
時刻t22では、時刻t22が第1診断項目の診断タイミングに対応することに基づき、第1診断項目の自己診断が実行される。第2の実行例は、時刻t22で開始された第1診断項目の自己診断で異常との結果が得られた例を示している。
【0234】
第2の実行例では、時刻t23で主動作がイネーブルされる。時刻t23においては、次診断項目は引き続き第1診断項目である。次診断項目が引き続き第1診断項目であることは、時刻t22で実行された前回の自己診断において第1診断項目の診断結果が異常であったことに基づく。
【0235】
第1診断項目の診断タイミングは、本来、ディスエーブリングタイミングに対応する。しかし、本実施形態では、前回の自己診断の結果が異常であったことに基づいて次に再び同じ診断項目の自己診断が行われる場合、その診断タイミングは、イネーブリングタイミングとなる。よって、時刻t23のイネーブリングタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t23で開始された第1診断項目の自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。この場合、
図6における時刻t23~t24に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されてもモータ21は駆動されない。
【0236】
第2の実行例では、時刻t24で主動作がディスエーブルされ、時刻t25で主動作がイネーブルされる。この場合も、時刻t23と同様、前回の第1診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t25のイネーブリングタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t25で開始された第1診断項目の自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。この場合、
図6における時刻t25~t26に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されてもモータ21は駆動されない。
【0237】
第2の実行例では、時刻t26で主動作がディスエーブルされ、時刻t27で主動作がイネーブルされる。この場合も、時刻t23、時刻t25と同様、前回の第1診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t27のイネーブリングタイミングで、第1診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t27で開始された自己診断で正常との結果が得られた例を示している。この場合、
図6における時刻t27~t28に例示するように、トリガ操作部20がオン操作されるとモータ21が駆動される。
【0238】
第2の実行例では、時刻t28で主動作がディスエーブルされ、時刻t29で主動作がイネーブルされる。時刻t29においては、次診断項目が第2診断項目であって、第2診断項目の診断タイミングがイネーブリングタイミングに対応することに基づき、第2診断項目の自己診断が実行される。次診断項目が第2診断項目であることは、時刻t27で実行された前回の自己診断において第1診断項目の診断結果が正常であったことに基づく。第2の実行例は、時刻t29で開始された自己診断で異常との結果が得られた例を示している。
【0239】
第2の実行例では、時刻t30で主動作がディスエーブルされ、時刻t31で主動作がイネーブルされる。時刻t31では、前回の自己診断において第2診断項目の診断結果が異常であったことに基づき、第2診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t31で開始された自己診断でも異常との結果が得られた例を示している。
【0240】
第2の実行例では、時刻t32で主動作がディスエーブルされ、時刻t33で主動作がイネーブルされる。この場合も、時刻t31と同様、前回の第2診断項目の自己診断結果が異常であったことに基づき、時刻t33のイネーブリングタイミングで、第2診断項目の自己診断が再び実行される。第2の実行例は、時刻t33で開始された自己診断では正常との結果が得られた例を示している。
【0241】
次に、
図7に示す第3の実行例について説明する。第3の実行例は、自己診断が中断される場合を含む。第3の実行例では、時刻t41以降で最初に実行すべき診断項目が第1診断項目に設定されている。
【0242】
第3の実行例において、時刻t41~時刻t47の間の動作は、
図5に示した第1の実行例の時刻t1~t7の間の動作と同様である。そのため、時刻t41~時刻t47の間の動作の説明を省略する。
【0243】
第3の実行例では、時刻t47で主動作がイネーブルされ、時刻t48で主動作がディスエーブルされる。時刻t47から時刻t48までの間における所定期間、トリガ操作部20がオン操作される。第3の実行例では、トリガ操作部20がオン操作されている間、モータ21が異常停止されることなく正常に駆動される。
【0244】
時刻t48では、時刻t48が第3診断項目の診断タイミングに対応することに基づき、第3診断項目の自己診断が実行される。第3の実行例は、時刻t48で開始された自己診断が正常に完了する前に中断された例を示している。制御回路23は、自己診断の実行中に中断条件が成立すると、自己診断を中断する。中断条件は、どのような条件を含んでいてもよい。中断条件は、例えば、トリガ操作部20がオン操作されると成立してもよい。
【0245】
第3の実行例では、時刻t49で主動作がイネーブルされる。本実施形態では、自己診断が中断された場合、次診断項目は引き続きその中断された診断項目に維持される。
【0246】
ただし、中断された後の次の診断タイミングは、自己診断結果が異常であった場合における次の診断タイミングとは異なる。具体的には、中断された後の次の診断タイミングは、診断項目に対応した規定の診断タイミングに対応する。
【0247】
そのため、時刻t49では第3診断項目の自己診断は実行されず、時刻t50のディスエーブリングタイミングで、第3診断項目の自己診断が実行される。第3の実行例は、時刻t50で開始された自己診断では正常との結果が得られた例を示している。
図7の時刻t49~t50に例示するように、前回の自己診断時にその自己診断が中断された場合は、次のイネーブリング期間においては、モータ21の駆動は制限されず、トリガ操作部20がオン操作されるとモータ21が駆動される。時刻t51以降の動作は、
図5に示した第1の実行例における時刻t11以降の動作と同じである。そのため、時刻t51以降の動作の説明を省略する。
【0248】
(5)メイン処理
次に、制御回路23が実行するメイン処理について、
図8~
図14を参照して説明する。制御回路23のCPU24は、所定の実行期間に、メモリ25に記憶されているメイン処理のプログラムに基づいてメイン処理を実行する。所定の実行期間は、例えば、主電源スイッチ30がオンしてから、主電源スイッチ30がオフしてその直後に後述するS180の自己診断処理が完了するまでの間であってもよい。
図5~
図7に例示した各実行例は、CPU24がメイン処理を実行することによって実行される。
【0249】
CPU24は、メイン処理を開始すると、S110で、前回S110からS120に移行したタイミングからタイムベースが経過したか否か判断する。タイムベースは、制御周期を意味する。制御周期は、どのような時間であってもよい。S110で、タイムベースが経過すると、本処理はS120に移行する。
【0250】
S120では、CPU24は、スイッチ操作検出処理を実行する。具体的には、CPU24は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて、電動作業機1の使用者によるトリガ操作部20の操作状態を検出する。CPU24は、検出した操作状態に応じたトリガ検出情報ST0を、制御回路23から第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7に出力する。
【0251】
S130では、CPU24は、バッテリ状態処理を実行する。バッテリ状態処理の詳細は、
図9に示す通りである。即ち、CPU24は、バッテリ状態処理に移行すると、S210で、バッテリ通信処理を実行する。具体的には、CPU24は、第1バッテリパック5及び第2バッテリパック7と特定のデータ通信を行う。バッテリ通信処理は、第1放電許可信号SA1を取得する処理、及び第2放電許可信号SA2を取得する処理を含む。
【0252】
S220では、CPU24は、放電許可設定処理を実行する。具体的には、CPU24は、S210のバッテリ通信処理にて第1放電許可信号SA1及び第2放電許可信号SA2が取得された場合は、制御回路23から第3放電許可信号SA3または第4放電許可信号SA4を出力する。S210のバッテリ通信処理にて第1放電許可信号SA1が取得されて第2放電許可信号SA2が取得されなかった場合は、CPU24は、制御回路23から第3放電許可信号SA3を出力する。S210のバッテリ通信処理にて第2放電許可信号SA2が取得されて第1放電許可信号SA1が取得されなかった場合は、CPU24は、制御回路23から第4放電許可信号SA4を出力する。制御回路23から第3放電許可信号SA3が出力された場合は、スイッチ部37がオンして、第1バッテリパック5からモータ駆動回路22へバッテリ電力が供給可能になる。制御回路23から第4放電許可信号SA4が出力された場合は、第2切替回路46のスイッチ部47がオンして、第2バッテリパック7からモータ駆動回路22へバッテリ電力が供給可能になる。S220の放電許可設定処理が終了すると、本処理はS140(
図8参照)に移行する。
【0253】
S140では、CPU24は、A-D変換処理を実行する。具体的には、CPU24は、不図示のA-D変換回路を制御して、そのA-D変換回路により、制御回路23に入力された各種のアナログ信号を、CPU24が処理可能なデジタル値にA-D変換させる。CPU24は、A-D変換回路により変換されたデジタル値を取得する。
【0254】
S150では、CPU24は、異常検出処理を実行する。具体的には、CPU24は、前述の異常検出機能を実行する。即ち、CPU24は、電圧信号SVに基づく過電圧検出機能、電流信号SCに基づく過電流検出機能、第1温度信号STM1に基づく第1過熱検出機能、第2温度信号STM2に基づく第2過熱検出機能、及び第3温度信号STM3に基づく第3過熱検出機能、を実行する。
【0255】
S160では、CPU24は、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理の詳細は、
図10に示す通りである。CPU24は、モータ制御処理に移行すると、S310で、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づき、トリガ操作部20がオン操作されているか否か判断する。
【0256】
トリガ操作部20がオフ操作されている場合は、本処理はS350に移行する。トリガ操作部20がオン操作されている場合は、本処理はS320に移行する。S320では、CPU24は、S150の異常検出処理において各検出機能のうちの1つ以上において異常が検出されたか否か判断する。異常検出処理において異常が検出された場合は、本処理はS350に移行する。異常検出処理において異常が検出されなかった場合は、CPU24は、さらに、遮断情報SSが指令許可を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令許可を示している場合は、CPU24は、電動作業機1に異常が発生していないと判断してS330に移行する。遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、CPU24は、電動作業機1に異常が発生していると判断してS350に移行する。
【0257】
S330では、CPU24は、後述する自己診断ステータスが「異常」に設定されているか否か判断する。自己診断ステータスが「異常」に設定されている場合は、本処理はS350に移行する。自己診断ステータスが「異常」に設定されていない場合は、本処理はS340に移行する。
【0258】
S340では、CPU24は、モータ駆動処理を実行する。具体的には、CPU24は、各種パラメータを演算する。各種パラメータは、CPU24がモータ駆動回路22を制御してモータ21を駆動するためにCPU24により用いられる。CPU24は、さらに、演算した各種パラメータに応じたモータ駆動指令SDをモータ駆動回路22へ出力することにより、モータ21を駆動する。S340の処理が行われた後は、本処理はS170(
図8参照)に移行する。
【0259】
S350では、CPU24は、モータ21にブレーキをかける必要があるか否か判断する。S350に移行したことは、モータ21を停止させる必要があることを意味する。S350~S370の処理は、モータ21を適正に停止させるための処理である。
【0260】
S350では、CPU24は、例えば、不図示の回転センサから入力される回転信号に基づいて、モータ21にブレーキをかける必要があるか否か判断する。回転信号は、モータ21の回転状態を示す。例えば、モータ21が規定速度以上で回転しているときに、モータ21にブレーキをかける必要がある。モータ21にブレーキをかける必要がある場合は、本処理はS360に移行する。S360では、CPU24は、ブレーキフラグをセットする。これにより、ブレーキが実行される。具体的には、CPU24は、本メイン処理とは別に本メイン処理と並行して実行しているブレーキ処理において、ブレーキフラグがセットされていることに応じて、ブレーキを実行する。S360の処理が実行された後は本処理はS170に移行する。
【0261】
S350で、ブレーキをかける必要がない場合は、本処理はS370に移行する。例えば、モータ21が既に停止しているときに、ブレーキをかける必要がない。S370では、CPU24は、ブレーキフラグをクリアする。これにより、前述のブレーキ処理において、ブレーキフラグがクリアされていることに応じて、ブレーキが停止される。S370の処理が実行された後は本処理はS170に移行する。上述のように、モータ制御処理においては、S320で異常がないと判断され、且つS330で自己診断ステータスが「異常」に設定されていない場合に、S340に移行して、モータ駆動指令SDが出力される。一方、S320で異常が判断されるか、又はS330で自己診断ステータスが「異常」に設定されている場合は、モータ駆動指令SDは出力されず、モータ21は駆動されない。
【0262】
S170では、CPU24は、表示処理を実行する。具体的には、CPU24は、各種の情報を表示パネル171に表示する。
【0263】
S180では、CPU24は、自己診断処理を実行する。自己診断処理の詳細は、
図11に示す通りである。CPU24は、自己診断処理に移行すると、S410で、自己診断履歴読み出し処理を実行する。自己診断履歴読み出し処理の詳細は、
図12に示す通りである。
【0264】
CPU24は、自己診断履歴読み出し処理に移行すると、S510で、メモリ25に直近に書き込まれた自己診断履歴を既に読み出しているか否か判断する。メモリ25に直近に書き込まれた自己診断履歴は、前回実行した自己診断の結果を示す。自己診断履歴は、
図14に示す後述の自己診断履歴書き込み処理におけるS830又はS850においてメモリ25に書き込まれる。
【0265】
S510で、自己診断履歴がすでに読み出されている場合は、本処理はS420(
図11参照)に移行する。自己診断履歴がまだ読み出されていない場合は、本処理はS520に移行する。S520では、CPU24は、メモリ25から、直近のS830又はS850の処理でメモリ25に書き込んだ自己診断履歴を読み出す。
【0266】
S530では、CPU24は、S520で読み出した自己診断履歴が正常判定を示しているか否か判断する。S520で読み出した自己診断履歴が正常判定を示している場合は、本処理はS540に移行する。S540では、CPU24は、次診断項目(即ち、今回実行すべき自己診断の診断項目、換言すればこれから最先に実行すべき自己診断の診断項目)を、前述の規定順序における、前回実行した診断項目の次の診断項目に設定する。 S550では、CPU24は、自己診断ステータスを「未検査」に設定する。S550の処理が実行された後は、本処理はS420(
図11参照)に移行する。自己診断ステータスは、主動作がディスエーブルされる度又は主動作がイネーブルされる度に、規定の初期値にリセットされる。
【0267】
S530で、S520で読み出した自己診断履歴が正常判定を示す情報でなかった場合は、本処理はS560に移行する。S560では、CPU24は、S520で読み出した自己診断履歴が異常判定を示しているか否か判断する。S520で読み出した自己診断履歴が異常判定を示している場合は、本処理はS570に移行する。S570では、CPU24は、次診断項目を、今回読み出した自己診断履歴に対応した診断項目に設定する。即ち、CPU24は、次診断項目を、前回実行した自己診断と同じ診断項目に設定する。
【0268】
S580では、CPU24は、自己診断ステータスを「異常」に設定する。S580で自己診断ステータスが「異常」に設定された以後、自己診断ステータスが「異常」に設定されている状態が継続している間は、S330(
図10参照)で肯定判定されてモータ21は駆動されない。
【0269】
S590では、CPU24は、自己診断要求フラグをセットする。自己診断要求フラグは、主動作がディスエーブルされる度又は主動作がイネーブルされる度にクリアされる。S590の処理が実行された後は、本処理はS420(
図11参照)に移行する。
【0270】
S560で、読み出した自己診断履歴が異常判定を示していなかった場合は、本処理はS600に移行する。この場合、例えば、前回の自己診断実行時に自己診断履歴が正常に書き込まれなかったこと、或いは、そもそも自己診断履歴がまだ書き込まれていないこと、などが考えられる。そこで、S600では、CPU24は、次診断項目を、規定順序における初回(1番目)の診断項目に設定する。S610では、CPU24は、自己診断ステータスを「未検査」に設定する。S610の処理が実行された後は、本処理はS420(
図11参照)に移行する。
【0271】
S420では、CPU24は、自己診断実施処理を実行する。自己診断実施処理の詳細は、
図13に示す通りである。CPU24は、自己診断実施処理に移行すると、S710で、自己診断開始条件が成立したか否か判断する。
【0272】
自己診断開始条件は、次診断項目に対応した規定の診断タイミングによって異なる。即ち、規定の診断タイミングがイネーブリングタイミングに対応する診断項目(本実施形態では第2診断項目の給電ライン機能診断)の自己診断開始条件は、イネーブリングタイミングが到来した場合に成立する。メイン処理が開始されるのは主動作がイネーブルされた時である。そのため、メイン処理の開始後、次診断項目に対応した規定の診断タイミングがイネーブリングタイミングに対応する場合は、S710で、自己診断開始条件が成立したと判断される。
【0273】
規定の診断タイミングがディスエーブリングタイミングに対応する診断項目の自己診断開始条件は、次の(i)及び(ii)が満たされた場合に成立する。
(i)ディスエーブリングタイミングが到来したこと。
(ii)直前イネーブリング期間中にモータ駆動指令SDを出力しており(即ち、モータ21を駆動させており)、しかも、モータ21が異常停止されていないこと。
【0274】
上記(ii)については、前述のモータ駆動履歴及び異常駆動履歴に基づいて判断されてもよい。
【0275】
S710で、自己診断開始条件が成立していない場合は、本処理はS730に移行する。S710で、自己診断開始条件が成立している場合は、本処理はS720に移行する。S720では、CPU24は、自己診断要求フラグをセットする。
【0276】
S730では、CPU24は、自己診断要求フラグがセットされているか否か判断する。自己診断要求フラグがセットされていない場合は、本処理はS430(
図11参照)に移行する。自己診断要求フラグがセットされている場合は、本処理はS740に移行する。S740では、次診断項目の自己診断を実施する。
【0277】
S740で自己診断が実施されるのは、基本的には、次診断項目についてS710で自己診断開始条件が成立し、さらにS720で自己診断要求フラグがセットされた場合である。自己診断開始条件が成立していない場合はS740の自己診断は実施されない。ただし、前回の自己診断において異常判定されたことにより今回も再び同じ診断項目を自己診断する場合は、
図12のS590で自己診断要求フラグがセットされている。そのため、この場合は、自己診断開始条件が成立していなくても、S730で肯定判定されてS740で自己診断が実行される。S740における自己診断が終了した後は、本処理はS430(
図11参照)に移行する。
【0278】
S430では、CPU24は、自己診断履歴書き込み処理を実行する。自己診断履歴書き込み処理の詳細は、
図14に示す通りである。CPU24は、自己診断履歴書き込み処理に移行すると、S810で、今回の診断項目の自己診断が終了したか否か判断する。自己診断が何らかの要因で中断された場合は、CPU24は、自己診断履歴書き込み処理を終了して、S110(
図8参照)に移行する。
【0279】
S810で、今回の診断項目の自己診断が終了した場合は、本処理はS820に移行する。S820では、CPU24は、今回実行した自己診断の診断結果が正常であるか否か判断する。診断結果が正常である場合は、CPU24は、S830で、自己診断履歴をメモリ25に書き込む。具体的には、CPU24は、正常判定を示す情報を書き込む。S830では、CPU24はさらに、自己診断ステータスを例えば「検査済み」に設定する。これにより、S830の処理を実行した時点で主動作がディスエーブルされていない場合は、以後、S330の処理では否定判定され、S340の処理によってモータ21が駆動される。S830の処理が実行された後は、本処理はS110(
図8参照)に移行する。
【0280】
S820で、診断結果が正常ではない場合は、CPU24は、S840で、診断結果が異常であるか否か判断する。診断結果が異常でない場合は、何らかの要因で診断結果が正しく得られなかった可能性がある。そのため、診断結果が異常でない場合は、CPU24は、自己診断履歴を書き込むことなく、S110(
図8参照)に移行する。
【0281】
S820で、診断結果が異常である場合は、CPU24は、S850で、自己診断履歴をメモリ25に書き込む。具体的には、CPU24は、異常判定を示す情報を書き込む。S850では、CPU24はさらに、自己診断ステータスを「異常」に設定する。S850で自己診断ステータスが「異常」に設定されると、以後、自己診断ステータスが「異常」に設定されている状態が継続している間は、S330(
図10参照)の処理で肯定判定され、モータ21は駆動されない。S850の処理が実行された後は、本処理はS110(
図8参照)に移行する。
【0282】
(6)トリガ検出機能診断処理
第1診断項目のトリガ検出機能診断は、
図15に示すトリガ検出機能診断処理を含む。CPU24は、
図13のS740において、設定されている次診断項目がトリガ検出機能診断である場合、
図15に示すトリガ検出機能診断処理を実行する。
【0283】
CPU24は、トリガ検出機能診断処理を開始すると、S1210で、第1疑似信号SF1(highレベルの二値信号)を出力する。S1220では、CPU24は、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、CPU24は、S1260の処理を実行する。S1260では、CPU24は、診断結果が異常であると判断して、自己診断ステータスを「異常」に設定し、トリガ検出機能診断処理を終了する。第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示している場合は、本処理はS1230に移行する。
【0284】
S1230では、CPU24は、第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示していない場合、トリガ検出回路80に異常が生じている可能性がある一方、使用者がトリガ操作部20をオン操作している可能性もある。そのため、第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、CPU24は、S1270で、現在実行中の第1診断項目のトリガ検出機能診断を中断する。
【0285】
S1230で、第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、本処理はS1240に移行する。S1240では、CPU24は、遮断情報SSが指令遮断を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令遮断を示していない場合、即ち指令許可を示している場合は、本処理はS1260に移行する。S1260では、CPU24は、診断結果が異常であると判断して、自己診断ステータスを「異常」に設定する。遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、本処理はS1250に移行する。S1250では、CPU24は、診断結果が正常であると判断して、自己診断ステータスを「正常」に設定し、トリガ検出機能診断処理を終了する。
【0286】
(7)トリガ検出機能の定期チェックについて
本実施形態の制御回路23(詳しくはCPU24)は、前述のメイン処理と並行して、
図16に示すトリガオフ検出チェック処理、及び
図17に示すトリガオン検出チェック処理を実行する。
【0287】
トリガオフ検出チェック処理は、トリガ操作部20がオフ操作されていることを第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて適正に認識できるか否かを確認するための処理である。
【0288】
トリガオン検出チェック処理は、トリガ操作部20がオン操作されていることを第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2に基づいて適正に認識できるか否かを確認するための処理である。
【0289】
トリガオフ検出チェック処理は、上記のメイン処理に含まれていてもよい。例えば、
図8のメイン処理において、制御回路23は、メイン処理の開始後にまずトリガオフ検出チェック処理を行い、その後にS110に移行してもよい。
【0290】
トリガオン検出チェック処理は、上記のメイン処理に含まれていてもよい。例えば、
図10のモータ制御処理において、制御回路23は、S330の処理よりも前に、トリガオン検出チェック処理を行うようにしてもよい。
【0291】
(7-1)トリガオフ検出チェック処理
制御回路23は、
図16に示すトリガオフ検出チェック処理を、例えば、主動作がイネーブルされる度に、そのイネーブルされた直後に実行する。制御回路23は、トリガオフ検出チェック処理を開始すると、S1010で、第1疑似信号SF1の出力を停止する。主動作がイネーブルされた直後は、基本的には、第1疑似信号SF1は出力されていない。そのため、S1010の処理は、実質的には、第1疑似信号SF1が出力されていない状態を維持する処理である。
【0292】
S1020では、制御回路23は、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、トリガ操作部20がオン操作された状態で主電源スイッチ30がオンした可能性がある。そのため、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、制御回路23は、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオフ操作を示すようになるまで、S1020の処理を繰り返す。
【0293】
S1020で、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、本処理はS1030に移行する。S1030では、制御回路23は、第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示していない場合は、本処理はS1020に移行する。第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオフ操作を示している場合は、本処理はS1040に移行する。
【0294】
S1040~S1060の処理は、前述の
図15のS1240~S1260と同じである。即ち、制御回路23は、遮断情報SSが指令遮断を示していない場合は、S1060で自己診断ステータスを「異常」に設定する。制御回路23は、遮断情報SSが指令遮断を示している場合は、S1050で自己診断ステータスを「正常」に設定する。
【0295】
(7-2)トリガオン検出チェック処理
制御回路23は、
図17に示すトリガオン検出チェック処理を、例えば、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2とに基づいてトリガ操作部20のオン操作を認識したときに実行する。
【0296】
制御回路23は、トリガオン検出チェック処理を開始すると、S1110で、
図16のS1010と同様に、第1疑似信号SF1の出力を停止する。S1120では、制御回路23は、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、制御回路23は、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示すようになるまで、S1120の処理を繰り返す。
【0297】
S1120で、第1トリガ情報ST1がトリガ操作部20のオン操作を示している場合は、本処理はS1130に移行する。S1130では、制御回路23は、第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオン操作を示しているか否か判断する。第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオン操作を示していない場合は、本処理はS1120に移行する。第2トリガ情報ST2がトリガ操作部20のオン操作を示している場合は、本処理はS1140に移行する。
【0298】
S1140では、制御回路23は、遮断情報SSが指令許可を示しているか否か判断する。遮断情報SSが指令許可を示していない場合、即ち指令遮断を示している場合は、本処理はS1160に移行する。S1160では、制御回路23は、自己診断ステータスを「異常」に設定する。遮断情報SSが指令許可を示している場合は、本処理はS1150に移行する。S1150では、制御回路23は、自己診断ステータスを「正常」に設定する。
【0299】
(8)実施形態の効果
以上説明した実施形態によれば、以下の(a)~(i)の効果を奏する。
【0300】
(a)制御回路23は、第1トリガスイッチ27及び第2トリガスイッチ28の双方の状態に応じてメイン処理を実行する。具体的には、制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2がトリガオン状態を示している場合に、モータ駆動指令SDを出力する。例えば、トリガ操作部20がオフ操作されている場合に、第1トリガスイッチ27に異常が生じて、第1トリガ情報ST1がトリガオン状態を示している状況を想定する。この場合、第2トリガ情報ST2がトリガオフ状態を示していれば、モータ駆動指令SDは出力されない。したがって、使用者によるトリガ操作部20の操作が制御回路23に適切に伝わらない異常が生じた場合にモータ21を適切に停止させることが可能となる。
【0301】
(b)本実施形態の電動作業機1は、制御回路23に加えて、さらに、ハードウェア処理により動作するように構成された回路を備えている。具体的には、制御回路23は、トリガ検出回路80及び遮断スイッチ29を備えている。
【0302】
トリガ検出回路80から出力されるトリガ判定情報STRが、トリガオフ状態を示す場合は、遮断スイッチ29が、制御回路23からモータ駆動回路22へのモータ駆動指令SDを遮断する。そのため、信頼性の高い電動作業機1を提供することが可能となる。
【0303】
(c)遮断スイッチ29は、遮断ラッチ回路70から入力される遮断情報SSに基づいてオン又はオフする。遮断スイッチ29は、モータ駆動指令SDが伝送される駆動ライン90に設けられ、駆動ライン90を導通又は遮断する。そのため、モータ駆動回路22へのモータ駆動指令SDの入力を容易に遮断することが可能となる。
【0304】
遮断情報SSは、トリガ判定情報STRが反映された情報である。より詳しくは、前述の5つの異常状態が発生していない場合においては、遮断情報SSは、トリガ判定情報STRと等価である。つまりこの場合、トリガ判定情報STRが遮断ラッチ回路70を経由して遮断スイッチ29に入力されるとみなせる。前述の5つの異常状態の少なくとも1つが発生した場合は、トリガ判定情報STRの内容にかかわらず遮断スイッチ29はオフすれる。そのため、トリガ判定情報STRがトリガオフ状態を示している場合には、遮断スイッチ29が適正にオフする。
【0305】
(d)遮断情報SSは、制御回路23にも入力される。そのため、制御回路23は、メイン処理において遮断情報SSを有効に利用することができる。
【0306】
(e)具体的には、制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び第2トリガ情報ST2が共にトリガオン状態を示していても、制御回路23に指令遮断を示す遮断情報SSが入力されている場合は、モータ駆動指令SDを出力しない。これにより、電動作業機1の信頼性を高めることが可能となる。
【0307】
(f)制御回路23は、第1トリガ情報ST1及び/または第2トリガ情報ST2がトリガオフ状態を示している一方で指令遮断を示す遮断情報SSが制御回路23に入力されていない状況においては、トリガ操作部20がオン操作されてもモータ駆動指令SDを出力しない。これにより、電動作業機1の信頼性を高めることが可能となる。
【0308】
(g)制御回路23は、第1疑似信号SF1を出力することによって、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70が適正に動作するか否かを診断することができる。つまり、制御回路23は、第1疑似信号SF1を出力する前の第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSと、第1疑似信号SF1を出力している時の第1トリガ情報ST1、第2トリガ情報ST2及び遮断情報SSとに基づいて、トリガ検出回路80及び/または遮断ラッチ回路70が適正に動作しているか否かを検出することが可能である。
これにより、電動作業機1の信頼性をより高めることが可能となる。
【0309】
(h)本実施形態では、第1トリガスイッチ27はノーマリーオープン型のスイッチである一方で、第2トリガスイッチ28はノーマリークローズ型のスイッチである。つまり、トリガ操作部20に対する操作に応じて、第1トリガスイッチ27と第2トリガスイッチ28とが互いに逆の状態になる。
【0310】
このような構成により、仮に、第1トリガスイッチ27の第2端と第2トリガスイッチ28の第2端が短絡した場合、第1トリガ情報ST1と第2トリガ情報ST2とは互いに論理レベルが逆になる。そのため、上記短絡が発生した場合にはモータ21の駆動が停止される。
【0311】
(i)本実施形態の電動作業機1は、第1診断項目~第6診断項目における診断対象の回路のうちの少なくとも1つによって達成される複数の機能を備える。電動作業機1は、前記複数の機能の各々に対応した、当該機能の誤作動を抑制するための二重の系統を備えている。
【0312】
例えば、電動作業機1は、トリガ操作部20がオン操作されることに応じてモータ21を駆動するモータ駆動機能を備えている。電動作業機1は、このモータ駆動機能に対応する第1の二重の系統を備えている。第1の二重の系統は、モータ21が意図せず回転することを抑制する。
【0313】
より具体的には、第1の二重の系統は、第1のモータ駆動系統と第2のモータ駆動系統とを含む。モータ21は、第1のモータ駆動系統と第2のモータ駆動系統とが共に正常である場合に、正常に駆動又は停止される。第1のモータ駆動系統は、トリガスイッチ部26からトリガ検出回路80及び制御回路23を経て駆動ライン90に至る系統を含む。即ち、第1のモータ駆動系統では、トリガ操作部20がオン操作されることに応じて制御回路23からモータ駆動指令SDが出力される。第2のモータ駆動系統は、トリガスイッチ部26からトリガ検出回路80、遮断ラッチ回路70を経て遮断スイッチ29へ至る系統を含む。即ち、第2のモータ駆動系統では、トリガ操作部20がオン操作されることに応じて、遮断ラッチ回路70から遮断スイッチ29へ、指令許可を示す遮断情報SSが出力される。
【0314】
第1のモータ駆動系統において、例えば、トリガ操作部20がオン操作されていないにもかかわらず制御回路23からモータ駆動指令SDが誤出力される異常が生じている状況を想定する。この場合、第2のモータ駆動系統が正常であれば、トリガ操作部20がオン操作されていない場合は遮断スイッチ29がオフするため、モータ21は駆動されない。逆に、第2のモータ駆動系統において、例えば、トリガ操作部20がオン操作されていないにもかかわらず遮断スイッチ29がオンする異常が生じている状況を想定する。この場合、第1のモータ駆動系統が正常であれば、トリガ操作部20がオン操作されていない場合は制御回路23からモータ駆動指令SDが出力されないため、モータ21は駆動されない。
【0315】
また例えば、電動作業機1は、第1切替回路36により第1給電ライン91を導通又は遮断する第1切替機能を備えている。電動作業機1は、第1切替機能に対応する第2の二重の系統を備えている。第2の二重の系統は、第1切替回路36のスイッチ部37が誤ってオンすることを抑制する。
【0316】
より具体的には、第2の二重の系統は、第1のオン許可系統と第2のオン許可系統とを含む。第1切替回路36のスイッチ部37は、第1のオン許可系統と第2のオン許可系統とが共に正常である場合に、正常にオンする。第1のオン許可系統は、第1放電許可信号SA1を制御回路23が受けることに応じて、制御回路23が、スイッチ部37をオンするために第3放電許可信号SA3を出力する系統を含む。制御回路23は、より詳しくは、第1放電許可信号SA1及び第2オフ検出信号SB2を受けることに応じて第3放電許可信号SA3を出力する。第2のオン許可系統は、第1放電許可信号SA1が制御回路23を介さずに第1切替回路36に入力される系統を含む。
【0317】
第1のオン許可系統において、例えば、制御回路23が第1放電許可信号SA1を受けていないにもかかわらず制御回路23から第3放電許可信号SA3が出力される異常が生じている状況を想定する。この場合、第2のオン許可系統が正常であれば、バッテリ異常検出回路12からAND回路38へlowレベルの信号が入力されることによって、スイッチ部37はオンしない。これにより、バッテリ11からモータ21への電力の供給は遮断され、モータ21はバッテリ11の電力によっては駆動されない。
【0318】
逆に、第2のオン許可系統において、例えば、バッテリ異常検出回路12から電動作業機1に第1放電許可信号SA1が入力されていないにもかかわらずAND回路38における第1放電許可信号SA1の入力端子がhighレベルになる異常が生じている状況を想定する。この場合、第1のオン許可系統が正常であれば、制御回路23は第3放電許可信号SA3を出力しないため、スイッチ部37はオンしない。
【0319】
電動作業機1は、第2切替回路46により第2給電ライン92を導通又は遮断する第2切替機能を備えている。電動作業機1は、第2切替機能に対応する第3の二重の系統を備えている。第3の二重の系統は、第2切替回路46のスイッチ部47が誤ってオンすることを抑制する。例えば、制御回路23が第2放電許可信号SA2を受けていないにもかかわらず制御回路23から第4放電許可信号SA4が出力される異常が生じている状況を想定する。この場合、バッテリ異常検出回路17からAND回路48へlowレベルの信号が適正に入力されれば、スイッチ部47はオンしない。これにより、バッテリ16からモータ21への電力の供給は遮断され、モータ21はバッテリ16の電力によっては駆動されない。
【0320】
電動作業機1は、さらに、第1切替機能に対応した第4の二重の系統を備えている。第4の二重の系統は、第1切替回路36のスイッチ部37が誤ってオンすることを抑制する。
【0321】
具体的には、第4の二重の系統は、第3のオン許可系統と第4のオン許可系統とを備える。スイッチ部37は、第3のオン許可系統と第4のオン許可系統とが共に正常である場合に、正常にオンする。第3のオン許可系統は、制御回路23が第2オフ検出信号SB2を受けることに応じて、制御回路23が、スイッチ部37をオンするために第3放電許可信号SA3を出力する系統を含む。制御回路23は、より詳しくは、第2オフ検出信号SB2及び第1放電許可信号SA1を受けることに応じて第3放電許可信号SA3を出力する。第4のオン許可系統は、第2オフ検出信号SB2が制御回路23を介さずに第1切替回路36に入力される系統を含む。
【0322】
第3のオン許可系統において、例えば、制御回路23に第2オフ検出信号SB2が出力されていないにもかかわらず制御回路23から第3放電許可信号SA3が出力されるような異常が生じている状況を想定する。この場合、第4のオン許可系統が正常であれば、スイッチ部37はオンしない。逆に、第4のオン許可系統において、例えば、第2オフ検出回路49から第2オフ検出信号SB2が出力されていないにもかかわらずAND回路38における第2オフ検出信号SB2の入力端子がhighレベルになるような異常が生じている状況を想定する。この場合、第3のオン許可系統が正常であれば、制御回路23は第3放電許可信号SA3を出力しないため、スイッチ部37はオンしない。
【0323】
また例えば、電動作業機1は、過電圧検出回路50による過電圧保護機能を備えている。電動作業機1は、この過電圧保護機能に対応した第5の二重の系統を備えている。第5の二重の系統は、過電圧状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させる。より具体的には、第5の二重の系統は、第1の過電圧保護系統と第2の過電圧保護系統とを含む。第1の過電圧保護系統は、過電圧信号So1に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフする系統を含む。第2の過電圧保護系統は、電圧信号SVに基づいて制御回路23が過電圧状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる系統を含む。
【0324】
また例えば、電動作業機1は、電流検出回路55による過電流保護機能を備えている。電動作業機1は、この過電流保護機能に対応した第6の二重の系統を備えている。第6の二重の系統は、過電流状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させる。より具体的には、第6の二重の系統は、第1の過電流保護系統と第2の過電流保護系統とを含む。第1の過電流保護系統は、過電流信号So2に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフする系統を含む。第2の過電流保護機能は、電流信号SCに基づいて制御回路23が過電流状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる系統を含む。
【0325】
また例えば、電動作業機1は、第1過熱検出回路61による第1過熱保護機能を備えている。電動作業機1は、この第1過熱保護機能に対応した第7の二重の系統を備えている。第7の二重の系統は、U相過熱状態が発生した場合にモータ21を適正に停止させる。より具体的には、第7の二重の系統は、第1の過熱保護系統と第2の過熱保護系統とを含む。第1の過熱保護系統は、第1過熱信号So31に応じて遮断ラッチ回路70が遮断スイッチ29をオフする系統を含む。第2の過熱保護系統は、第1温度信号STM1に基づいて制御回路23がU相過熱状態の発生を検出することに応じて制御回路23がモータ駆動指令SDを停止させる系統を含む。
【0326】
第2過熱検出回路62による第2過熱保護機能、及び第3過熱検出回路63による第3過熱保護機能の各々においても、第1過熱保護機能と同様に、2系統の保護系統が構築されている。
【0327】
本実施形態において、トリガ操作部20は本開示における操作部の一例に相当する。第1トリガスイッチ27は本開示における第1のスイッチの一例に相当する。第2トリガスイッチ28は本開示における第2のスイッチの一例に相当する。第1トリガ情報ST1は本開示における第1スイッチ情報の一例に相当する。第2トリガ情報ST2は本開示における第2スイッチ情報の一例に相当する。モータ駆動指令SDは本開示における駆動指令の一例に相当する。モータ駆動回路22は本開示における駆動回路の一例に相当する。トリガ検出回路80、遮断ラッチ回路70及び遮断スイッチ29は、本開示における駆動停止回路の一例に相当する。これらトリガ検出回路80、遮断ラッチ回路70及び遮断スイッチ29のうち、トリガ検出回路80及び遮断ラッチ回路70は、本開示における停止信号出力回路の一例に相当し、遮断スイッチ29は、本開示における遮断回路の一例に相当する。第1疑似信号SF1は本開示における疑似オン信号の一例に相当する。トリガ検出回路80におけるOR回路81は本開示における疑似オン回路の一例に相当する。
【0328】
図15におけるS1210の処理は本開示における出力処理の一例に相当する。
図15におけるS1260の処理は本開示における第1の記憶処理及び第2の記憶処理の一例に相当する。
【0329】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0330】
(1)上記実施形態では、第1トリガスイッチ27において、第1端子がグランドラインに接続されて第2端子が抵抗器を介して制御電源ラインに接続されている。そして、第2端子の電圧が第1トリガ情報ST1に反映されている。
【0331】
しかし、第1トリガスイッチ27の状態は、どのような方法で第1トリガ情報ST1に反映されてもよい。例えば、第1トリガスイッチ27の第1端子が、抵抗器を介して制御電源ラインに接続されていてもよい。第2トリガスイッチ28についても同様である。
【0332】
(2)NOT回路85及びOR回路81は、第2トリガスイッチ28の第2端に接続されていてもよい。
【0333】
(3)遮断スイッチ29は、どのようなスイッチであってもよい。遮断スイッチ29は、単一のスイッチであってもよいし、複数の素子を備えた回路によって構成されていてもよい。
【0334】
(4)トリガ検出回路80から出力されるトリガ判定情報STRは、遮断ラッチ回路70を介さずに遮断スイッチ29へ入力されてもよい。この場合、例えば、トリガ判定情報STRと遮断情報SSとの論理和を演算するOR回路が設けられてもよい。そのOR回路の出力信号が遮断スイッチ29に入力されてもよい。
【0335】
(5)第1トリガスイッチ27及び第2トリガスイッチ28は、いずれもノーマリークローズ型又はノーマリーオープン型のスイッチであってもよい。その場合、例えば、NOT回路85が省かれてもよい。
【0336】
(6)過電圧検出回路50、電流検出回路55、過熱検出部60、遮断ラッチ回路70及びトリガ検出回路80は、
図2,
図3に示した回路構成とは異なっていてもよい。
【0337】
(7)電動作業機1は電流検出回路55の自己診断機能を備えていてもよい。具体的には、制御回路23は、過電流状態を擬似的に発生させるための第6疑似信号を電流検出回路55へ出力する機能を備えていてもよい。電流検出回路55は、第6疑似信号を受けると、電流信号SCが過電流状態を示す信号となるように構成されていてもよい。このような構成により、制御回路23は、第6疑似信号を出力した時の電流信号SCに基づいて、電流検出回路55が正常に動作するか否かを診断することができる。
【0338】
(8)上記実施形態では、遮断情報SSと異常検出情報Sorとが個別に制御回路23へ入力されるが、
図18に示すように、遮断情報SSと異常検出情報Sorとの論理和が制御回路23へ入力されてもよい。具体的には、
図18に示すように、電動作業機1はOR回路95を備えてもよい。このOR回路95は、遮断情報SSと異常検出情報Sorとを受けてもよい。制御回路23は、遮断信号SS及び異常検出情報Sorを受けるのに代えて、OR回路95の出力信号を受けてもよい。
【0339】
(9)規定順序は、どのような順序であってもよい。診断項目毎に重みが設定されていてもよい。その場合、重みに応じて規定順序が決定されてもよい。より具体的には、重みが大きい診断項目ほど実行頻度が高くなるように規定順序が決定されてもよい。
【0340】
規定順序において、6種類の診断項目のうちの少なくとも1つが連続して配列されていてもよい。同じ1つの順に複数の診断項目が対応付けられてもよい。つまり、一度の診断タイミングで複数の診断項目の診断が順に又は並行して実行されてもよい。
【0341】
自己診断の実行順序は、規定順序に限らず、どのような順序であってもよい。例えば、ランダムに実行順序を決めてもよい。具体的には、例えば、電動作業機1は乱数発生器を備え、乱数発生器が発生する乱数に基づいて、次診断項目を決定してもよい。
【0342】
(10)本開示は、トリガ操作部20の操作量に応じてモータ21の駆動が制御されるように構成された電動作業機に対しても適用可能である。このように構成された電動作業機における本体部の一例を、第2の変形例として
図19に示す。
図19は、第2の変形例の本体部200のうち主に
図2に示した本体部3と異なる箇所を図示している。
図19において、
図2の本体部3と同じ構成要素については図示を省略している。即ち、
図19に示す本体部200は、
図2の本体部3と比較して、トリガ操作部20の操作状態を制御回路201及び遮断ラッチ回路70に伝達するための回路構成、及び制御回路201によるモータ制御処理の内容の一部が異なる。
【0343】
図19に示す本体部200において、トリガスイッチ部210は、第1トリガスイッチ211と、トリガ情報出力回路(以下「情報出力回路」と略称する)212とを備える。情報出力回路212は、第2トリガスイッチ212aと、可変抵抗器R11とを備える。トリガスイッチ部210は、さらに、第3トリガスイッチ213を備える。
【0344】
第1トリガスイッチ211、第2トリガスイッチ212a及び第3トリガスイッチ213は、トリガ操作部20が操作(例えば引き操作)されていない非操作状態ではオフされる。
図19は、その非操作状態におけるトリガスイッチ部210を示している。
【0345】
使用者によりトリガ操作部20の引き操作が開始された時、または引き操作が開始されてからトリガ操作部20が一定量引き操作されると、まず第2トリガスイッチ212aがオンする。第2トリガスイッチ212aがオンした後、トリガ操作部20がさらに一定量引き操作されると、次に第1トリガスイッチ211がオンする。第1トリガスイッチ211がオンした後、トリガ操作部20の引き操作がさらに進んで、規定の最大操作量まで引き操作されると、第3トリガスイッチ213がオンする。第2の変形例において、トリガ操作部20のオン操作は、第1トリガスイッチ211及び第2トリガスイッチ212aがオンするような引き操作を意味する。
【0346】
第1トリガスイッチ211の第1端子はグランドラインに接続されている。第1トリガスイッチ211の第2端子は、抵抗器R13を介して制御電源ラインに接続されると共にNOT回路204の入力端子に接続されている。
【0347】
本体部200は、さらに、分圧回路205を備える。分圧回路205は、抵抗器R14と抵抗器R15とを含む。分圧回路205は、電源電圧を分圧する。分圧回路205は、分圧した電圧(以下、「分圧電圧」と称する)をトリガスイッチ部210へ出力する。具体的には、抵抗器R14の第1端子は制御電源ラインに接続されている。抵抗器R14の第2端は抵抗器R15の第1端子に接続されている。抵抗器R15の第2端子はグランドラインに接続されている。抵抗器R14,R15の各々の抵抗値はどのような値であってもよい。例えば、抵抗器R14の抵抗値は470Ωまたはその近傍であってもよい。抵抗器R15の抵抗値は例えば1kΩまたはその近傍であってもよい。
【0348】
情報出力回路212において、可変抵抗器R11の第1端子には、分圧回路205からの分圧電圧が印加される。可変抵抗器R11の第2端子はグランドラインに接続されている。可変抵抗器R11の可動接点は、第2トリガスイッチ212aの第1端子に接続されている。第2トリガスイッチ212aの第2端子は第3トリガスイッチ213の第1端子に接続されている。第3トリガスイッチ213の第2端子はグランドラインに接続されている。第2トリガスイッチ212aの第2端子の電圧は、トリガ検出回路220を介して、第2トリガ情報ST2として制御回路201へ入力される。
【0349】
トリガ操作部20がオン操作されることにより第1トリガスイッチ211及び第2トリガスイッチ212aがオンした後、トリガ操作部20がさらに引き操作されると、その操作量に応じて可変抵抗器R11の可動接点が初期位置から末端位置まで移動する。第2トリガスイッチ212aがオンした直後は、可動接点は初期位置にある。このとき、可変抵抗器R11における第2端子と可動接点との間の抵抗値(以下「グランド側抵抗値」と称する)は、所定の初期値(例えば20kΩ)である。
【0350】
グランド側抵抗値は、可変抵抗器R11の可動接点が初期位置から末端位置へ移動することに応じて(即ちトリガ操作部20の引き操作の操作量が増加することに応じて)低下する。グランド側抵抗値が初期値から低下し始めるタイミングは、トリガ操作部20がオフ操作からオン操作に変化した直後であってもよいし、その変化した直後からさらにトリガ操作部20が一定量引き操作されたタイミングであってもよい。
【0351】
第2の変形例における第2トリガ情報ST2は、アナログの電圧信号を含む。この電圧信号は、第2スイッチング素子212aのオンまたはオフを示す。電圧信号はさらに、第2スイッチング素子212aがオンされている間における、トリガ操作部20の引き操作量(換言すればグランド側抵抗値に応じた情報)を示す。制御回路201は、A/D変換回路(不図示)を備える。制御回路201は、電圧信号を受けると、A/D変換回路によって電圧信号をデジタルデータに変換する。制御回路201のCPU202は、A/D変換回路により変換されたデータに基づいて各種制御を行う。以下の説明では、第2トリガ情報ST2のことを「A/D入力値Vad」と称する。
【0352】
本体部200において、トリガ検出回路220は、OR回路221と、伝達回路222と、AND回路223とを備える。伝達回路222は、スイッチング素子222a及び抵抗器R12を含む。
【0353】
OR回路221における第1の入力端子には、NOT回路204の出力信号が入力される。OR回路221における第2の入力端子は、制御回路201における、第1疑似信号SF1の出力端子に接続されている。OR回路221の出力信号は、第1トリガ情報ST1として制御回路201及びAND回路223に入力される。
【0354】
伝達回路222は、第2トリガスイッチ212aのオンまたはオフの状態をAND回路223へ伝達する。具体的には、第2トリガスイッチ212aがオフされている場合は、伝達回路222はlowレベルの伝達信号をAND回路223の第1の入力端子へ入力する。第2トリガスイッチ212aがオンされている場合は、伝達回路222はhighレベルの伝達信号をAND回路223の第1の入力端子へ入力する。lowレベルの伝達信号は、スイッチング素子222aがオフすることによって生成される。highレベルの伝達信号は、スイッチング素子222aがオンすることによって生成される。
【0355】
このような機能を達成するために、伝達回路222は、より具体的には次のように構成されている。即ち、スイッチング素子222aとして、例えばpチャネルMOSFETを備える。スイッチング素子222aのゲートは、第2トリガスイッチ212aの第2端子に接続されている。スイッチング素子222aのドレインは、制御電源ラインに接続されている。スイッチング素子222aのソースは、AND回路223の第1の入力端子に接続されている。抵抗器R12は、スイッチング素子222aのゲートとドレインの間に接続されている。抵抗器R12の抵抗値はどのような値であってもよい。抵抗器R12の抵抗値は例えば2.2MΩまたはその近傍であってもよい。
【0356】
AND回路223の第2の入力端子には、第1トリガ情報ST1が入力される。AND回路223の出力信号は、トリガ判定情報STRとして遮断ラッチ回路70に入力される。
【0357】
このように構成された本体部200では、A/D入力値Vadが、トリガ操作部20の操作状態に応じて
図20に例示するように変化する。即ち、トリガ操作部20が非操作状態の場合、即ちトリガ操作部20のストローク(引き操作量)が0の場合は、A/D入力値Vadは、所定のオフ電圧値Voffとなる。オフ電圧値Voffは、電源電圧値Vc(例えば5V)とほぼ等しい。つまりこの場合は、第2トリガスイッチ212aがオフされているため、電源電圧値Vcの電源電圧が抵抗器R12を介してA/D入力値Vadとして制御回路201に入力される。
【0358】
トリガ操作部20が引き操作されてストロークが増加していくと、前述の通りまず第2トリガスイッチ212aがオンする。第2トリガスイッチ212aがオンすると、A/D入力値Vadは、所定の第1オン電圧値Von1(例えば3.4V)に低下する。第2トリガスイッチ212aがオンした直後は、可変抵抗器R11のグランド側抵抗値が初期値であるため、第1オン電圧値Von1は分圧回路205からの分圧電圧の値にほぼ等しい。なお、第1オン電圧値Von1は本開示における初期オン電圧の値の一例に相当する。
【0359】
第2トリガスイッチ212aがオンした後、トリガ操作部20のストロークがさらに一定量増加すると、第1トリガスイッチ211がオンする。この時点、即ち、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1となっていて且つ第1トリガスイッチ211がオンした時点で、制御回路201は、トリガ操作部20がオン操作されたことを認識する。制御回路201は、トリガ操作部20がオン操作されたことを認識することに応じて、モータ21の駆動を開始する。
【0360】
第1トリガスイッチ211がオンした以後、トリガ操作部20のストロークが基準ストロークから最大ストロークへ増加することに応じて、可変抵抗器R11のグランド側抵抗値が低下していく。そのため、ストロークの増加に応じてA/D入力値Vadが低下していく。基準ストロークは、可変抵抗器R11の可動接点が初期位置から末端位置へ向けて移動を開始する直前のストロークに対応する。最大ストロークは前述の最大操作量に対応する。ストロークが最大ストロークに達する直前のA/D入力値Vadは、第2オン電圧値Von2となる。このときの可変抵抗器R11のグランド側抵抗値は例えば0Ωまたは0Ωに近い値である。ストロークが最大ストロークに達すると、第3トリガスイッチ213がオンすることにより、A/D入力値Vadは0Vとなる。第1トリガスイッチ211は、第2トリガスイッチ212aがオンされた後、トリガ操作部20の操作量が基準ストロークに達するまでの間における所定のストローク到達時にオンするように構成されている。
【0361】
制御回路201は、トリガ操作部20がオン操作されている間、A/D入力値Vadに応じてモータ21を制御する。具体的には、制御回路201は、例えば、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1のときにモータ21の回転速度が所定の最低回転速度となるように制御する。制御回路201は、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1から低下することに応じて、モータ21の回転速度を増加させていく。制御回路201は、A/D入力値Vadが第2オン電圧値Von2以下になることに応じて、モータ21の回転速度が所定の最高回転速度となるように制御する。
【0362】
なお、第3トリガスイッチ213は設けられていなくてもよい。ただし、第3トリガスイッチ213を設けることで、トリガ操作部20が最大ストロークまで引き操作された場合にA/D入力値Vadを確実に第2オン電圧値Von2以下に低下させる(つまりモータ21の回転速度を確実に最高回転速度に制御する)ことが可能となる。
【0363】
制御回路201は、CPU202とメモリ203とを備える。メモリ203は、
図2のメモリ25と基本的に同様のプログラム及びデータを記憶している。CPU202は、メモリ203に記憶されているモータ制御処理のプログラムを実行する。メモリ203に記憶されているモータ制御処理のプログラムは、メモリ25(
図2参照)に記憶されているモータ制御処理(
図10参照)のプログラムと一部異なる。メモリ203に記憶されているプログラムに従ってCPU202が実行するモータ制御処理について、
図21を参照して説明する。
【0364】
CPU202は、モータ制御処理を開始すると、S1410で、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1以下であるか否かを判断する。この処理は、換言すれば、第2トリガスイッチ212aがオンされているか否かを判断する処理である。
【0365】
A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1より高い場合は、本処理はS1460に進む。S1460~S1480の処理は、
図10におけるS350~S370の処理と同じである。
【0366】
S1410で、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1以下である場合(即ち第2トリガスイッチ212aがオンした場合)は、本処理はS1420に移行する。S1420では、第1トリガ情報ST1がhighレベルであるか否かを判断する。この処理は、換言すれば、第1トリガスイッチ211がオンされているか否かを判断する処理である。
【0367】
第1トリガ情報ST1がlowレベルである場合は、本処理はS1460に進む。第1トリガ情報ST1がhighレベルである場合(即ち第1トリガスイッチ211がオンした場合)は、本処理はS1430に移行する。CPU202は、S1410及びS1420で肯定判定されることによって、トリガ操作部20がオン操作されたことを認識し、S1430~S1440の処理を経てS1450のモータ駆動処理へと進む。なお、S1430~S1440の処理は、
図10におけるS320~S330の処理と同じである。
【0368】
S1450のモータ駆動処理は、
図10におけるS340とは一部異なる。具体的には、S1450では、A/D入力値Vadに応じた回転速度でモータ21を回転させるためのモータ駆動指令SDをモータ駆動回路22(
図19では不図示。
図2参照。)へ出力する。A/D入力値Vadと回転速度との対応関係は前述の通りである。
【0369】
(11)
図19~
図21に示した第2の変形例における制御回路201は、上記実施形態の制御回路23(
図2参照)と同様に、第1疑似信号SF1等を用いた自己診断機能を備えている。しかし、制御回路201は、そのような自己診断機能を必ずしも備えていなくてもよい。第1疑似信号SF1等を用いた自己診断機能を備えていない電動作業機の一例を、第3の変形例として
図22に示す。
【0370】
図22に示す本体部230では、
図19に示した第2の変形例の本体部200からNOT回路204が省かれている。さらに、本体部230は、トリガ検出回路240の構成及び制御回路231の処理内容の一部が本体部200とは異なる。
【0371】
図22に示すように、第3の変形例におけるトリガ検出回路240は、
図19のトリガ検出回路220と比較して、OR回路221が省かれる一方でNOT回路241が設けられている。第1トリガスイッチ211の第2端子の電圧は、トリガ検出回路240を介して第1トリガ情報ST1として制御回路231に入力される。第1トリガ情報ST1はさらにNOT回路241の入力端子に入力される。NOT回路241の出力信号は、AND回路223の第2の入力端子に入力される。
【0372】
このように構成された本体部230では、第1トリガスイッチ211がオフしている間は第1トリガ情報ST1はhighレベルとなる。第1トリガスイッチ211がオンすると第1トリガ情報ST1はlowレベルとなる。
【0373】
制御回路231は、CPU232とメモリ233とを備える。メモリ233には、
図19のメモリ203と基本的に同様のプログラム及びデータが記憶されている。ただし、メモリ233に記憶されているプログラムは、自己診断処理を実行しない点で、メモリ203(
図19参照)に記憶されているプログラムと異なる。さらに、メモリ233に記憶されているプログラムにおけるモータ制御処理の一部が、メモリ203に記憶されているモータ制御処理(
図21参照)と異なる。CPU232が実行する、メモリ233に記憶されているモータ制御処理について、
図23を参照して説明する。
【0374】
CPU232は、
図23のモータ制御処理を開始すると、S1310で、
図21のS1410と同様に、A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1以下であるか否か判断する。A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1より大きい場合はS1310の判断を繰り返す。A/D入力値Vadが第1オン電圧値Von1以下である場合は、本処理はS1320に移行する。
【0375】
S1320では、第1トリガ情報ST1がlowレベルであるか否かを判断する。この処理は、
図21のS1420と同じように、第1トリガスイッチ211がオンされているか否かを判断する処理である。
【0376】
第1トリガ情報ST1がhighレベルである場合は、本処理はS1310に移行する。第1トリガ情報ST1がlowレベルである場合(即ち第1トリガスイッチ211がオンした場合)は、本処理はS1330に移行する。S1330では、A/D入力値Vadに応じた回転速度でモータ21を回転させるためのモータ駆動指令SDをモータ駆動回路22へ出力する。
【0377】
第2の変形例及び第3の変形例において、第1トリガスイッチ211は、トリガ操作部20の操作に応じて第2トリガスイッチ212aよりも先にオンするように構成されていてもよい。または、第1トリガスイッチ211は、第2トリガスイッチ212aと同時にオンするように構成されていてもよい。
【0378】
(12)本開示のモータは、ブラシレスモータとは異なるモータであってもよい。本開示の電動作業機は、バッテリ電力によって駆動される電動作業機に限定されず、交流電力が入力されてその交流電力によって駆動される電動作業機であってもよい。
【0379】
(13)本開示の技術は、刈払機以外の園芸用の電動作業機、石工用、金工用、木工用の電動工具などの、各種の電動作業機に適用されてもよい。より具体的には、本開示は、例えば電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機などの各種電動作業機に適用されてもよい。
【0380】
(14)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって達成したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって達成したりしてもよい。複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって達成したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって達成したりしてもよい。上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。