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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】循環装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240906BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240906BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240906BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240906BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240906BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C11/00
B05C5/00 101
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023055969
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2021543073の分割
【原出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2023080140
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2019159115
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂積 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉本 宏征
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-18845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 11/00
B05C 5/00
B41J 2/18
B41J 2/175
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出部に供給する液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部と前記液滴吐出部との間を連通し、前記貯留部に貯留された前記液体を前記液滴吐出部に流入させるための第1の流路と、
前記貯留部と前記液滴吐出部との間を連通し、前記液滴吐出部に流入した前記液体を前記貯留部に還流させるための第2の流路と、
前記貯留部と前記液滴吐出部との間を循環する前記液体の循環圧力を制御する制御部と、
前記液滴吐出部に作用する加速度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検出部により検出される前記液滴吐出部の位置情報に基づいた水頭圧を緩和するように、前記循環圧力を制御する循環装置。
【請求項2】
前記検出部が、前記液滴吐出部の傾きを検出し、前記制御部は、前記液滴吐出部の傾きによる水頭圧を緩和するように、前記循環圧力を制御する
請求項に記載の循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液滴吐出ヘッドが搭載されている。
【0003】
また、インクジェット方式の印刷装置では、動作異常を検出する技術や液滴吐出ヘッド内の圧力を制御する技術等が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56604号公報
【文献】特開2009-160828号公報
【文献】特開2012-96524号公報
【文献】特開2008-289983号公報
【発明の概要】
【0005】
実施形態の一態様に係る循環装置は、液滴吐出部に供給する液体を貯留する貯留部と、貯留部と液滴吐出部との間を連通し、貯留部に貯留された液体を液滴吐出部に流入させるための第1の流路と、貯留部と液滴吐出部との間を連通し、液滴吐出部に流入した液体を貯留部に還流させるための第2の流路と、を備え、貯留部と液滴吐出部との間を循環する液体の循環圧力を制御する循環装置である。かかる循環装置は、第1の弁部と、第2の弁部と、第1の圧力測定部と、第2の圧力測定部と、検出部と、制御部とを備える。第1の弁部は、第1の流路に介挿され、貯留部から液滴吐出部に送給される液体の流量を制御する。第2の弁部は、第2の流路に介挿され、液滴吐出部から貯留部に送給される液体の流量を制御する。第1の圧力測定部は、第1の流路を通じて、第1の弁部と液滴吐出部との間を流れる液体の流体圧力を供給圧力として測定する。第2の圧力測定部は、第2の流路を通じて、第2の弁部と液滴吐出部との間を流れる液体の流体圧力を回収圧力として測定する。検出部は、液滴吐出部に関する情報を検出する。制御部は、検出部により検出される情報に基づいて、第1の弁部及び第2の弁部を制御し、供給圧力及び回収圧力を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る液滴吐出システムの外観構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの外観構成を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの平面図である。
図4図4は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの内部の流路を模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係る循環装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る循環装置の循環機構を模式的に示す図である。
図7図7は、実施形態に係る第3圧力センサと第4圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
図8図8は、実施形態に係る循環制御モードの設定情報の概要を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図10図10は、実施形態に係る圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
図11図11は、実施形態に係る吐出孔の位置関係を模式的に示す図である。
図12図12は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図13図13は、実施形態に係る圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
図14図14は、実施形態に係る吐出孔の位置関係を模式的に示す図である。
図15図15は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図16図16は、実施形態に係る圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
図17図17は、実施形態に係る吐出孔の位置関係を模式的に示す図である。
図18図18は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図19図19は、実施形態に係る圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
図20図20は、実施形態に係る吐出孔の位置関係を模式的に示す図である。
図21図21は、実施形態に係る循環装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、変形例に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図23図23は、変形例に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図24図24は、変形例に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
図25図25は、変形例に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願が開示する循環装置の実施形態を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本願に係る発明が限定されるものではない。
【0008】
以下の実施形態では、本願が開示する循環装置が自在に動作するロボットアームに搭載され、かかる循環装置がインクジェット方式で液体を吐出する液滴吐出ヘッドに液体を供給する液滴吐出システムについて説明する。本願が開示する循環装置は、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタの他、インクジェット方式で液滴を吐出する各種装置に適用できる。
【0009】
<液滴吐出システムの外観構成例>
図1を用いて、実施形態に係るインクジェットシステムの外観構成について説明する。図1は、実施形態に係る液滴吐出システムの外観構成の一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、液滴吐出システム1は、ロボットアーム100と、循環装置200と、液滴吐出ヘッド300とを備える。
【0011】
ロボットアーム100は、例えば室内又は室外の水平な床面に載置される基台10に組み付けられる。ロボットアーム100は、アーム部110と、制御ユニット120とを有する。アーム部110は、曲げ伸ばし、及び回転自在に組み付けられた複数の部品により構成される。アーム部110は、制御ユニット120からの指令に従って、アーム部110の先端に搭載された液滴吐出ヘッド300の移動や、かかる液滴吐出ヘッド300の位置、姿勢、並びに角度の変更などを行うことができる。図1に例示するアーム部110は、液滴吐出ヘッド300にとって必要となる移動や、位置、姿勢、並びに角度などの変更が可能な自由度を備えていれば、図1に示す構成に特に限定されるものではない。
【0012】
制御ユニット120は、例えば、アーム部110に内蔵される。制御ユニット120は、アーム部110の動作を制御する指令をアーム部110を駆動させるアクチュエータ等に出力することにより、アーム部110の動作を制御する。制御ユニット120は、プロセッサ等の制御装置とメモリ等の記憶装置等を備える。制御ユニット120が備える記憶装置には、例えば、液滴吐出ヘッド300による作業の手順、作業時(液体吐出時)の移動方向、位置、姿勢、及び角度などのデータや、アーム部110の動作制御するための制御用のプログラムなどが記憶されている。制御装置は、記憶装置に記憶されたプログラム及びデータに基づいて、アーム部110の動作を制御する。
【0013】
ロボットアーム100は、アーム部110によって、例えば、アーム部110の先端に搭載された循環装置200及び液滴吐出ヘッド300を所定の回転軸に沿って移動させることにより、垂直方向(Z軸方向)に移動させることができる。これにより、循環装置200及び液滴吐出ヘッド300は、例えば、図1に示すように、対象物50の吹付面50SFに対して、液滴吐出ヘッド300の液体の吐出面30SFを平行に対面させた姿勢をとることができる。また、ロボットアーム100は、アーム部110によって、例えば、アーム部110の先端に組み付けられた循環装置200及び液滴吐出ヘッド300を所定の回転軸回りに回転させることができる。これにより、循環装置200及び液滴吐出ヘッド300は、例えば、長手方向の位置と短手方向の位置を入れ替えたり、上下の位置を反転させたりすることができる。
【0014】
循環装置200は、ロボットアーム100のアーム部110の先端部に設置される。循環装置200は、液滴吐出ヘッド300との間を循環する液体の循環圧力を制御しつつ、液滴吐出ヘッド300に液体を供給する。液滴吐出ヘッド300は、ロボットアーム100のアーム部110の先端部に設置された循環装置200に組み付けられる。液滴吐出ヘッド300は、対象物50に対して、液体を吐出する液滴吐出部として機能する。
【0015】
ところで、液滴吐出ヘッド300に供給される液体の循環圧力は、ロボットアーム100による液滴吐出ヘッド300の移動、並びに液滴吐出ヘッド300の位置、姿勢、及び角度などの変更の影響を受ける。この点を鑑み、本願は、液滴吐出ヘッド300に対する液体の循環圧力を適正に保つことができる循環装置200を提案する。
【0016】
<液滴吐出ヘッドの構成例>
図2図4を用いて、実施形態に係る液滴吐出ヘッド300について説明する。図2は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの外観構成を模式的に示す斜視図である。図3は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの平面図である。図4は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの内部の流路を模式的に示す図である。
【0017】
図2に示すように、液滴吐出ヘッド300は、箱型の部材310と略平板形状の部材320とを含む筐体を備えている。液滴吐出ヘッド300の筐体には、循環装置200からヘッド内部に液体を供給するための第1の流路RTと、ヘッド内部で回収された液体を循環装置200に送り出す返すための第2の流路RT2とが設置されている。
【0018】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド300は、供給リザーバ301と、供給マニホールド302と、回収マニホールド303と、回収リザーバ304と、素子305とを有している。
【0019】
供給リザーバ301は、液滴吐出ヘッド300の長手方向(Y軸方向)に伸びた細長い形状を有し、供給マニホールド302と繋がっている。供給リザーバ301は、内部に流路を有する。図4に示すように、第1の流路RTを通じて供給リザーバ301に供給され、供給リザーバ301の流路に貯留された液体は、供給マニホールド302へと送り出される。
【0020】
供給マニホールド302は、液滴吐出ヘッド300の短手方向(X軸方向)に回収リザーバ304の手前まで延伸した細長い形状を有する。供給マニホールド302は、供給リザーバ301が有する流路及び素子305に連通した流路を内部に有する。図4に示すように、供給リザーバ301から供給マニホールド302へと送り出された液体は、供給マニホールド302から素子305へと送り出される。
【0021】
回収マニホールド303は、液滴吐出ヘッド300の短手方向(X軸方向)に供給リザーバ301の手前まで延伸した細長い形状を有する。回収マニホールド303は、回収リザーバ304が有する流路及び素子305と連通した流路を内部に有する。図4に示すように、素子305から外部へ吐出されなかった液体は、回収マニホールド303へと送り出される。
【0022】
回収リザーバ304は、液滴吐出ヘッド300の長手方向(Y軸方向)に伸びた細長い形状を有し、回収マニホールド303と繋がっている。回収リザーバ304は、内部に流路を有する。図4に示すように、回収マニホールド303から回収リザーバ304に送り出され、回収リザーバ304の流路に貯留された液体は、第2の流路RTを通じて、タンク201へと送り返される。
【0023】
素子305は、吐出孔を有する。素子305は、例えば、図示しない圧力室で生成された負圧によって供給マニホールド302から液体を吸引し、吸引した液体を図示しない圧力室で生成された正圧によって吐出孔から対象物50に向かって吐出させる。
【0024】
<循環装置の構成例>
続いて、実施形態に係る循環装置200の構成例を説明する。図5は、実施形態に係る循環装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図6は、実施形態に係る循環装置の循環機構を模式的に示す図である。
【0025】
なお、図5は、実施形態に係る循環装置200の機能構成の一例を示すものであり、実施形態に係る循環装置200の各種機能を実現できる構成であれば、図5に示す例に特に限定される必要はない。また、図5は、実施形態に係る循環装置200が備える構成要素を機能ブロックで表しており、一般的なその他の構成要素についての記載を省略している。また、図5に示す循環装置200の各構成要素は機能概念的なものであり、図5に示す例に限定されるものではなく、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0026】
図5に示すように、循環装置200は、タンク201と、吐出ポンプ202と、吸引ポンプ203と、第1比例弁204と、第2比例弁205と、ヒーター206とを備える。また、循環装置200は、入出力インターフェイス207と、第1圧力センサ208と、第2圧力センサ209と、第3圧力センサ210と、第4圧力センサ211と、流量計212と、加速度センサ213とを備える。また、循環装置200は、ストレージ214と、プロセッサ215とを備える。
【0027】
また、図6に示すように、循環装置200は、第1の流路RTと、第2の流路RTとを備える。第1の流路RTは、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間を連通し、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド300の内部に流入させるための流路である。第2の流路RTは、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間を連通し、液滴吐出ヘッド300に流入した液体をタンク201に還流させるための流路である。第2の流路RTを通じて、液滴吐出ヘッド300から外部に吐出されずに、液滴吐出ヘッド300内で回収された液体はタンク201に送り返される。第1の流路RT及び第2の流路RTは、例えば、液体の成分との相互作用がない所定の材料で形成された配管により実装できる。かかる各部を有する循環装置200は、例えば、図6に示すように、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間を右回りに循環する液体の循環圧力を制御する。
【0028】
タンク201は、液滴吐出ヘッド300に供給される液体を貯留する。タンク201は、液滴吐出ヘッド300に供給する液体を貯留する貯留部として機能する。
【0029】
吐出ポンプ202は、第1の流路RTを通じて、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド300に送給する。吐出ポンプ202は、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド300に送り出すための正圧を発生させる。吐出ポンプ202は、例えば、予め設定された一定の供給圧力で、タンク201に貯留された液体を液滴吐出ヘッド300に送出できる。
【0030】
吸引ポンプ203は、第2の流路RTを通じて、液滴吐出ヘッド300において回収された液体をタンク201に送給する。吸引ポンプ203は、液滴吐出ヘッド300において回収された液体を吸引して、タンク201に送り返すための負圧を発生させる。吸引ポンプ203は、例えば、予め設定された一定の回収圧力で、液滴吐出ヘッド300から吸引した液体をタンク201に送出できる。
【0031】
吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203は、ギアポンプなどの回転ポンプや、ダイヤフラムポンプなど容積式ポンプにより実装できる。
【0032】
第1比例弁204は、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間の第1の流路RTに介挿され、液滴吐出ヘッド300に供給する液体の流量を比例制御する第1の弁部として機能する。第1比例弁204は、液体の流路断面積を0~100%の間で連続的に変更可能であり、液体の流量を所望の流量に制御する。例えば、第1比例弁204は、液体の流路断面積を小さくすることにより、液滴吐出ヘッド300に液体を供給する際の供給圧力を小さくできる。一方、第1比例弁204は、液体の流路断面積を大きくすることにより、液滴吐出ヘッド300に液体を供給する際の供給圧力を大きくできる。
【0033】
第2比例弁205は、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間の第2の流路RTに介挿され、液滴吐出ヘッド300からタンク201に送給される液体の流量を比例制御する第2の弁部として機能する。第2比例弁205は、第1比例弁204と同様に、液体の流路断面積を0~100%の間で連続的に変更可能であり、液体の流量を所望の流量に制御する。例えば、第2比例弁205は、液体の流路断面積を小さくすることにより、液滴吐出ヘッド300から液体を回収する際の回収圧力を小さくできる。一方、第2比例弁205は、液体の流路断面積を大きくすることにより、液滴吐出ヘッド300から液体を回収する際の回収圧力を大きくできる。
【0034】
第1比例弁204及び第2比例弁205は、電磁式の比例切換弁、又は空気式の比例切換弁により実装できる。
【0035】
ヒーター206は、第1の流路RT、或いは第1の流路RTに隣接して設けられ、第1の流路RT1を流れる液体を加温する。
【0036】
入出力インターフェイス207は、ロボットアーム100の制御ユニット120との間で、各種情報をやり取りする。入出力インターフェイス207は、例えば、制御ユニット120から液体の吐出開始を指示する信号、及び液体の吐出終了を指示する信号を受信できる。
【0037】
第1圧力センサ208は、吐出ポンプ202により、タンク201から液滴吐出ヘッド300に送給される液体の圧力を測定する。第1圧力センサ208は、循環装置200における液体の循環方向において吐出ポンプ202よりも下流側の流体圧力を測定する。第1圧力センサ208は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0038】
第2圧力センサ209は、吸引ポンプ203により液滴吐出ヘッド300から吸引され、タンク201に送給される液体の圧力を測定する。第2圧力センサ209は、循環装置200における液体の循環方向において吸引ポンプ203よりも上流側の流体圧力を測定する。第2圧力センサ209は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0039】
第3圧力センサ210は、第1の流路RTを通じて、第1比例弁204と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力を供給圧力として測定する第1の圧力測定部として機能する。第3圧力センサ210は、測定結果をプロセッサ215に送る。第4圧力センサ211は、第2の流路RTを通じて、第2比例弁205と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力を回収圧力として測定する第2の圧力測定部として機能する。第4圧力センサ211は、測定結果をプロセッサ215に送る。図7は、実施形態に係る第3圧力センサと第4圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。
【0040】
図7に示すように、第3圧力センサ210は、第1比例弁204を通過し、液滴吐出ヘッド300に流れ込む直前の液体の流体圧力を測定する。すなわち、第3圧力センサ210は、循環装置200における液体の循環方向において第1比例弁204よりも下流側の流体圧力を供給圧力:「Pin」として測定する。また、図7に示すように、第4圧力センサ211は、液滴吐出ヘッド300からタンク201へ向けて送り出された直後で、第2比例弁205を通過する前の液体の流体圧力を測定する。すなわち、第4圧力センサ211は、循環装置200における液体の循環方向において第2比例弁205よりも上流側の圧力を回収圧力:「Pout」として測定する。
【0041】
流量計212は、液滴吐出ヘッド300に供給される液体の流量を測定する。流量計212は、測定結果をプロセッサ215に送る。
【0042】
加速度センサ213は、液滴吐出ヘッド300に作用する加速度を測定する。加速度センサ213は、液滴吐出ヘッド300に関する情報を検出する検出部として機能する。加速度センサ213は、測定結果をプロセッサ215に送る。なお、循環装置200は、液滴吐出ヘッド300の移動や、液滴吐出ヘッド300の位置、姿勢、並びに角度などの変更を検出できるセンサであれば、加速度センサ213以外のセンサを備えてもよい。
【0043】
ストレージ214は、循環装置200の各種処理に必要なプログラム及びデータを記憶する。ストレージ214は、例えば、ポンプ制御データ格納部241及び循環制御モード設定格納部242を有する。
【0044】
ポンプ制御データ格納部241は、予め設定されるポンプ制御用のデータを記憶する。ポンプ制御用のデータには、例えば、吐出ポンプ202が液体を送り出す際に液体に印加する圧力(正圧)の目標値や、吸引ポンプ203が液体を吸引する際に液体に印加する圧力(負圧)のデータなどが含まれる。液滴吐出ヘッド300からの液体の吐出を考慮する場合、吐出ポンプ202の正圧には、例えば、液滴吐出ヘッド300に液体が供給される際の圧力よりも1.2~3倍程度高い値が目標値として予め設定される。これに対して、吸引ポンプ203の負圧には、液滴吐出ヘッド300に液体が供給される際の圧力よりも1.2~3倍程度低い値が目標値として予め設定される。
【0045】
循環制御モード設定格納部242は、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間の循環圧力を制御するための循環制御モードの設定情報を記憶する。図8は、実施形態に係る循環制御モードの設定情報の概要を示す図である。
【0046】
図8に示すように、循環制御モード設定格納部242に記憶される循環制御モードの設定情報は、循環制御モードの項目及び制御条件の項目を備え、かかる項目は相互に対応付けられている。循環制御モードの項目には、循環制御モードを示すモード番号が記憶されている。また、制御対象の項目には、制御条件が記憶される。循環制御モードは、液滴吐出ヘッド300から吐出する液体の使用目的や、液体の物性等に応じて使い分けられる。
【0047】
循環制御モードがモード1である場合、「流量一定」という制御条件が対応付けられている。ここで、流量は、タンク201から第1比例弁204を通じて液滴吐出ヘッド300に供給される液体の流量を示す。液滴吐出ヘッド300の姿勢等の変更に伴って、ヘッド内部を循環する液体に水頭圧が作用することにより、ヘッド内部を循環する液体の循環流量が変化し、ヘッドに対する液体の供給不足が発生する場合がある。そこで、ヘッド内部を循環する液体の循環流量を一定に保ち、ヘッドに対する液体の供給不足を補って安定した液体の吐出を行いたい場合、循環制御モードとしてモード1が利用され得る。
【0048】
また、循環制御モードがモード2である場合、「差圧一定」という制御条件が対応付けられている。ここで、差圧は、供給圧力として測定された第1比例弁204と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力と、回収圧力として測定された第2比例弁205と液滴吐出ヘッド300との間を流れる液体の流体圧力との圧力差を示す。供給圧力は、第3圧力センサ210による測定結果から得られる。回収圧力は、第4圧力センサ211による測定結果から得られる。液滴吐出ヘッド300の姿勢等の変更に伴って、ヘッド面内に水頭圧による圧力分布が生じ、メニスカスを適切に保持することができず、液体が過剰に吐出される吐出孔や液体の引き込みが発生する吐出孔などが発生し、液体の吐出が不安定となる場合がある。そこで、液滴吐出ヘッド300における面内の圧力分布を小さくし、メニスカスの保持性能を維持したい場合、循環制御モードとしてモード2が利用され得る。
【0049】
プロセッサ215は、ストレージ214に記憶されるプログラム及びデータ等に基づいて、循環装置200における各種処理を実行する。プロセッサ215は、ストレージ214に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、循環装置200の各部を制御するための各種機能を実現する。
【0050】
(ポンプの制御)
プロセッサ215は、第1圧力センサ208の測定結果及び第3圧力センサ210の測定結果に基づいて、吐出ポンプ202が液体を送り出す際に液体に印加する正圧を一定に保つように調整する。例えば、プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果から得られる液体の圧力よりも、第1圧力センサ208の測定結果の測定結果から得られる液体の圧力が1.2~3倍程度大きい圧力を保つように、吐出ポンプ202の正圧を調整する。
【0051】
また、プロセッサ215は、第2圧力センサ209及び第3圧力センサ210の測定結果に基づいて、吸引ポンプ203が液体を吸引する際に液体に印加する負圧を一定に保つように調整する。例えば、プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果から得られる液体の圧力よりも、第2圧力センサ209の測定結果の測定結果から得られる液体の圧力が1.2~3倍程度低い圧力を保つように、吸引ポンプ203の負圧を調整する。
【0052】
プロセッサ215は、吐出ポンプ202が液体に印加する正圧と、吸引ポンプ203が液体に印加する負圧との間の圧力差を一定に保つように調整することにより、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間で液体を循環させる。
【0053】
(比例弁の制御)
プロセッサ215は、加速度センサ213により検出される加速度に基づいて、第1比例弁204と第2比例弁205を制御し、供給圧力及び回収圧力を調整する。以下、図9図20を用いて、第1比例弁204及び第2比例弁205の制御方法について説明する。図9、12、15、18は、実施形態に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。図10、13、16、19は、実施形態に係る圧力センサの位置関係を模式的に示す図である。図11図14図17図20は、実施形態に係る吐出孔の位置関係を模式的に示す図である。
【0054】
図9図14を用いて、液体の循環方向に対し、マニホールド又はリザーバを流れる液体の上流側が向かって下側に位置する場合の制御について説明する。
【0055】
図9に示す液滴吐出ヘッド300は、液体の供給側を向かって左側に向け、液体の回収側を向かって右側に向けた状態で、液体の吐出面300SFを対象物50に対して平行に向かい合う姿勢をとっている(図1参照)。この場合、例えば、図9に示すように、液体の循環方向に対し、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側は、向かって下側に位置することになる。一方、液体の循環方向に対し、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の下流側は、向かって上側に位置することになる。このため、液滴吐出ヘッド300が図9に示す姿勢をとる場合、水頭圧の影響により、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力が高くなり、下流側の圧力が低くなることが予測される。そして、ヘッド内部を循環する液体に水頭圧が作用することにより、ヘッド内部を循環する液体の循環流量が変化することが予測される。
【0056】
そこで、プロセッサ215は、加速度センサ213により測定された加速度に基づいて、液滴吐出ヘッド300を循環する液体に作用しているものと予想される水頭圧の推定値を算出する。プロセッサ215は、以下の式(1)により、水頭圧の推定値を算出する。以下の式(1)において、「ρ」は、液体の密度を示し、「a」は液体に作用する加速度を示し、「h」は加速度が作用する方向における第3圧力センサ210の高さと第4圧力センサ211の高さとの差を示す。
【0057】
水頭圧の推定値=ρah・・・(1)
【0058】
また、上記式(1)による水頭圧の推定値の計算に用いる加速度:「a」には、加速度センサ213により測定された値を用いる。図9に示す姿勢で停止している液滴吐出ヘッド300には、重力加速度:「g」のみが作用する。このため、加速度センサ213により重力加速度:「g」のみが検出されることになる。よって、上記式(1)に用いる加速度:「a」には重力加速度:「g」が用いられる。また、循環制御モードがモード1である場合、上記式(1)の「h」には、図10に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図10に示すように、第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の双方に作用している重力加速度:「g」の方向における第3圧力センサ210の設置位置と第4圧力センサ211の設置位置との間の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づく第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の設置位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。プロセッサ15は、液滴吐出ヘッド300の動きや姿勢の変更に伴う第3圧力センサ210の設置位置と第4圧力センサ211の設置位置との間に生じる物理的な高低差を、液体による水柱の高さと見做すことにより、水頭圧の推定値を算出する。
【0059】
プロセッサ215は、循環制御モード設定格納部242に格納された循環制御モードの設定情報を確認し、以下の式(2)を用いて、供給圧力及び回収圧力を調整する。以下の式(2)において、「ΔP」は、供給圧力と回収圧力との差分である差圧を示し、「Pin」は供給圧力を示し、「Pout」は回収圧力を示し、「R」は液体の流体抵抗を示し、「U」は流量を示す。
【0060】
ΔP=Pin-Pout=R×U+ρah・・・(2)
【0061】
プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード1である場合、「流量一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。図9に示す例では、水頭圧の影響により、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力が高くなり、下流側の圧力が低くなることが予測される。「流量一定」という制御条件を満たすためには、水頭圧の影響を打ち消すように、供給圧力:「Pin」を上げて、回収圧力:「Pout」を下げる必要がある。プロセッサ215は、上記式(2)を用いて、「流量一定」という制御条件を満たす供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量をそれぞれ算出する。プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで供給圧力:「Pin」を上げるため、第1比例弁204の流路断面積を広げて、第1比例弁204を通過する液体の流量を増加させる。一方、プロセッサ215は、第4圧力センサ211の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで回収圧力:「Pout」を下げるため、第2比例弁205の流路断面積を狭めて、第2比例弁205を通過する液体の流量を減少させる。
【0062】
プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード2である場合、「差圧一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。まず、プロセッサ215は、上記式(1)を用いて、水頭圧を算出する。ここで、循環制御モードがモード2である場合、上記式(1)の「h」には、図11に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図11に示すように、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づく吐出孔351の穿設位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。プロセッサ15は、液滴吐出ヘッド300の動きや姿勢の変更に伴って吐出孔351間に生じる物理的な高低差を、液体による水柱の高さと見做すことにより、水頭圧の推定値を算出する。
【0063】
図9に示す例では、水頭圧の影響により、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力が高くなり、下流側の圧力が低くなることが予測される。そして、液滴吐出ヘッド300の姿勢等の変更に伴って、ヘッド面内に水頭圧による圧力分布が生じることが予測される。「差圧一定」という制御条件を満たすためには、水頭圧の影響を打ち消すように、供給圧力:「Pin」を下げて、回収圧力:「Pout」を上げる必要がある。プロセッサ215は、上記式(2)を用いて、「差圧一定」という制御条件を満たす供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量をそれぞれ算出する。プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで供給圧力:「Pin」を下げるため、第1比例弁204の流路断面積を狭めて、第1比例弁204を通過する液体の流量を減少させる。一方、プロセッサ215は、第4圧力センサ211の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで回収圧力:「Pout」を上げるため、第2比例弁205の流路断面積を広げて、第2比例弁205を通過する液体の流量を増加させる。
【0064】
プロセッサ215は、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量を、それぞれ水頭圧の推定値(ρgh)以下とすることができる。これにより、安定した液体の供給及び循環を実現できる。また、プロセッサ215は、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量を、それぞれ水頭圧の推定値(ρgh)の半分とすることができる。例えば、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量を、ヘッドの中央を「0」として、圧力の高い側を「-ρgh/2~0」の範囲で調整し、圧力の低い側を「0~ρgh/2」の範囲で調整する。例えば、供給圧力:「Pin」を上げる必要がある場合、水頭圧の推定値の半分に相当する「ρgh/2」だけ上げることができ、回収圧力:「Pout」を下げる必要がある場合、水頭圧の推定値の半分に相当する「ρgh/2」だけ下げることができる。これにより、ヘッド中央のメニスカス圧力を一定にコントロールして、ヘッド内部の液体の循環を安定させることができる。
【0065】
また、図12に示す液滴吐出ヘッド300は、液体の供給側を向かって下側に向け、液体の回収側を向かって上側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。図12に示す液滴吐出ヘッド300の姿勢は、図9に示す液滴吐出ヘッド300を右回りに90度回転させた姿勢に対応する。この場合、図12に示すように、液体の循環方向に対し、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側は、向かって下側に位置することになる。一方、液体の循環方向に対し、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の下流側は、向かって上側に位置することになる。このため、液滴吐出ヘッド300が図11に示す姿勢をとる場合、水頭圧の影響により、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力が高くなり、下流側の圧力が低くなることが予測される。
【0066】
そこで、プロセッサ215は、図12に示す場合も、図9に示す場合と同様に、上記式(1)を用いて水頭圧の推定値を算出する。図12に示す姿勢で停止している液滴吐出ヘッド300には、重力加速度:「g」のみが作用するので、加速度センサ213により重力加速度:「g」のみが検出されることになる。このため、上記式(1)に用いる加速度:「a」には重力加速度:「g」が用いられる。また、上記式(1)の「h」には、図13に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図13に示すように、第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の双方に作用している重力加速度:「g」の方向における第3圧力センサ210の位置と第4圧力センサ211の位置との間の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の設置位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。
【0067】
そして、プロセッサ215は、図12に示す場合も、図9に示す場合と同様に、循環制御モードに応じて、上記(2)を用いて供給圧力及び回収圧力を調整できる。プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード1である場合、「流量一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。
【0068】
また、プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード2である場合、上記式(1)を用いて、水頭圧を算出し、「差圧一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。ここで、プロセッサ215が水頭圧を算出する場合、上記式(1)の「h」には、図14に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図14に示すように、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される吐出孔351の穿設位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。プロセッサ15は、液滴吐出ヘッド300の動きや姿勢の変更に伴って吐出孔351間に生じる物理的な高低差を、液体による水柱の高さと見做すことにより、水頭圧の推定値を算出する。
【0069】
続いて、図15図20を用いて、液体の循環方向に対し、マニホールド又はリザーバを流れる液体の上流側が向かって上側に位置する場合の制御について説明する。
【0070】
図15に示す液滴吐出ヘッド300は、液体の供給側を向かって右側に向け、液体の回収側を向かって左側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。この場合、図15に示すように、液体の循環方向に対し、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側は、向かって上側に位置することになる。一方、液体の循環方向に対し、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の下流側は、向かって下側に位置することになる。このため、液滴吐出ヘッド300が図15に示す姿勢をとる場合、水頭圧の影響により、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力が低くなり、下流側の圧力が高くなることが予測される。
【0071】
そこで、プロセッサ215は、加速度センサ213により測定された加速度に基づいて、図15に示すタンク201と液滴吐出ヘッド300との間を循環する液体に作用しているものと予想される水頭圧の推定値を算出する。プロセッサ215は、上記式(1)により、水頭圧の推定値を算出する。
【0072】
図15に示す姿勢で停止している液滴吐出ヘッド300には、重力加速度:「g」のみが作用するので、加速度センサ213により重力加速度:「g」のみが検出されることになる。このため、上記式(1)に用いる加速度:「a」には重力加速度:「g」が用いられる。また、上記式(1)の「h」には、図16に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図16に示すように、第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の双方に作用している重力加速度:「g」の方向における第3圧力センサ210の位置と第4圧力センサ211の位置との間の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の設置位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。
【0073】
プロセッサ215は、循環制御モード設定格納部242に格納された循環制御モードの設定情報を確認し、循環制御モードの制御条件に基づいて、供給圧力及び回収圧力を調整する。プロセッサ215は、以下の式(3)を用いて、循環制御モードの制御条件を満たす供給圧力及び回収圧力の調整量を算出する。以下の式(3)において、「ΔP」は、供給圧力と回収圧力との差分である差圧を示し、「Pin」は供給圧力を示し、「Pout」は回収圧力を示し、「R」は液体の流体抵抗を示し、「U」は流量を示す。
【0074】
ΔP=Pin-Pout=R×U-ρah・・・(3)
【0075】
プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード1である場合、「流量一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。図15に示す例では、水頭圧の影響により、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力が低くなり、下流側の圧力が高くなることが予測される。そして、ヘッド内部を循環する液体に水頭圧が作用することにより、ヘッド内部を循環する液体の循環流量が変化することが予測される。「流量一定」という制御条件を満たすためには、水頭圧の影響を打ち消すように、供給圧力:「Pin」を下げて、回収圧力:「Pout」を上げる必要がある。プロセッサ215は、上記式(3)を用いて、「流量一定」という制御条件を満たす供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量をそれぞれ算出する。プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで供給圧力:「Pin」を下げるため、第1比例弁204の流路断面積を狭めて、第1比例弁204を通過する液体の流量を増加させる。一方、プロセッサ215は、第4圧力センサ211の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで回収圧力:「Pout」を上げるため、第2比例弁205の流路断面積を広げて、第2比例弁205を通過する液体の流量を減少させる。
【0076】
プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード2である場合、「差圧一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。プロセッサ215は、上記式(1)を用いて、水頭圧を算出する。ここで、上記式(1)の「h」には、図17に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図17に示すように、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される吐出孔351の穿設位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。プロセッサ15は、液滴吐出ヘッド300の動きや姿勢の変更に伴って吐出孔351間に生じる物理的な高低差を、液体による水柱の高さと見做すことにより、水頭圧の推定値を算出する。
【0077】
図15に示す例では、水頭圧の影響により、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力が低くなり、下流側の圧力が高くなることが予測される。そして、液滴吐出ヘッド300の姿勢等の変更に伴って、ヘッド面内に水頭圧による圧力分布が生じることが予測される。「差圧一定」という制御条件を満たすためには、水頭圧の影響を打ち消すように、供給圧力:「Pin」を上げて、回収圧力:「Pout」を下げる必要がある。プロセッサ215は、上記式(3)を用いて、「差圧一定」という制御条件を満たす供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」の調整量をそれぞれ算出する。プロセッサ215は、第3圧力センサ210の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで供給圧力:「Pin」を上げるため、第1比例弁204の流路断面積を広げて、第1比例弁204を通過する液体の流量を増加させる。一方、プロセッサ215は、第4圧力センサ211の測定結果を参照しつつ、調整量に基づく所望の圧力まで回収圧力:「Pout」を下げるため、第2比例弁205の流路断面積を狭めて、第2比例弁205を通過する液体の流量を減少させる。
【0078】
また、図18に示す液滴吐出ヘッド300は、液体の供給側を向かって上側に向け、液体の回収側を向かって下側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。図18に示す液滴吐出ヘッド300の姿勢は、図15に示す液滴吐出ヘッド300を右回りに90度回転させた姿勢に対応する。この場合、図18に示すように、液体の循環方向に対し、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側は、向かって上側に位置することになる。一方、液体の循環方向に対し、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の下流側は、向かって下側に位置することになる。このため、液滴吐出ヘッド300が図15に示す姿勢をとる場合、水頭圧の影響により、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力が低くなり、下流側の圧力が高くなることが予測される。
【0079】
そこで、プロセッサ215は、図18に示す場合も、図15に示す場合と同様に、上記式(1)を用いて水頭圧の推定値を算出する。図18に示す姿勢で停止している液滴吐出ヘッド300には、重力加速度:「g」のみが作用するので、加速度センサ213により重力加速度:「g」のみが検出されることになる。このため、上記式(1)に用いる加速度:「a」には重力加速度:「g」が用いられる。また、上記式(1)の「h」には、図19に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図19に示すように、第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の双方に作用している重力加速度:「g」の方向における第3圧力センサ210の位置と第4圧力センサ211の位置との間の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される第3圧力センサ210及び第4圧力センサ211の設置位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。
【0080】
そして、プロセッサ215は、図18に示す場合も、図15に示す場合と同様に、循環制御モードに応じて、上記(3)を用いて供給圧力及び回収圧力を調整できる。プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード1である場合、「流量一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。
【0081】
また、プロセッサ215は、循環制御モードの設定がモード2である場合、上記式(1)を用いて、水頭圧を算出し、「差圧一定」という制御条件を満足するように、供給圧力:「Pin」及び回収圧力:「Pout」をそれぞれ調整する。ここで、プロセッサ215が水頭圧を算出する場合、上記式(1)の「h」には、図20に示す高さ:「h」が用いられる。高さ:「h」は、図20に示すように、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差に相当する。高さ:「h」は、液滴吐出ヘッド300の設計に基づいて決定される吐出孔351の穿設位置と、加速度センサ213の検出結果に基づく液滴吐出ヘッド300の姿勢等とに基づいて算出される。プロセッサ15は、液滴吐出ヘッド300の動きや姿勢の変更に伴って吐出孔351間に生じる物理的な高低差を、液体による水柱の高さと見做すことにより、水頭圧の推定値を算出する。
【0082】
<循環装置の処理手順の例>
図21を用いて、実施形態に係る循環装置200の処理手順の一例を説明する。図21は、実施形態に係る循環装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。図21に示す処理は、プロセッサ215により実行される。図21に示す処理は、循環装置200の動作中に繰り返し実行される。
【0083】
図21に示すように、プロセッサ215は、水頭圧の推定値を算出する(ステップS101)。そして、プロセッサ215は、算出した水頭圧が閾値以上であるかを判定する(ステップS102)。すなわち、プロセッサ215は、液滴吐出ヘッド300を循環する液体の循環圧力に影響を与えるが予測される程度の水頭圧が発生しているか否かを判定する。なお、閾値は、循環装置200のオペレータにより予め設定される。
【0084】
プロセッサ215は、算出した水頭圧の推定値が閾値以上であると判定した場合(ステップS102;Yes)、循環制御モードを確認する(ステップS103)。
【0085】
そして、プロセッサ215は、循環制御モードに応じて、タンク201と液滴吐出ヘッド300との間を循環する液体の供給圧力及び回収圧力を調整して(ステップS104)、ステップS101の処理手順に戻る。
【0086】
また、プロセッサ215は、上述したステップS102において、算出した水頭圧の推定値が閾値未満であると判定した場合(ステップS102;No)、ステップS101の処理手順に戻る。
【0087】
<変形例>
図22図25を用いて、実施形態に係る循環装置200の変形例について説明する。図22図25は、変形例に係る液滴吐出ヘッドの姿勢の一例を模式的に示す図である。図22図25に示す液滴吐出ヘッド300は、移動している点が図9、12、15、18に示す液滴吐出ヘッド300とは相違する。
【0088】
図22に示す液滴吐出ヘッド300は、図9に示す場合と同じように、液体の供給側を向かって左側に向け、液体の回収側を向かって右側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。そして、図22に示す液滴吐出ヘッド300は、鉛直下向き(Z軸方向)に、例えば、加速度:「+α」で移動している点、すなわち加速度:「α」で加速しながら移動している点が図9に示す場合とは相違している。
【0089】
図22に示す場合、液滴吐出ヘッド300を循環する液体は、重力加速度:「g」に加えて、液滴吐出ヘッド300の移動の加速度:「α」が作用する水頭圧の影響を受ける。このため、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力がさらに高くなり、下流側の圧力がさらに低くなることが予測される。
【0090】
図23に示す液滴吐出ヘッド300は、図12に示す場合と同じように、液体の供給側を向かって下側に向け、液体の回収側を向かって上側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。そして、図23に示す液滴吐出ヘッド300は、鉛直下向き(Z軸方向)に、例えば、加速度:「+α」で移動している点、すなわち加速度:「α」で加速しながら移動している点が図12に示す場合とは相違している。
【0091】
図23に示す場合、液滴吐出ヘッド300を循環する液体は、重力加速度:「g」に加えて、液滴吐出ヘッド300の移動の加速度:「α」が作用する水頭圧の影響を受ける。このため、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力がさらに高くなり、下流側の圧力がさらに低くなることが予測される。
【0092】
図22及び図23に示す場合も、プロセッサ215は、上記式(1)を用いて、液滴吐出ヘッド300を循環する液体に作用しているものと予想される水頭圧の推定値を算出する。このとき、上記式(1)において、「a」は、重力加速度:「g」と移動の加速度:「α」との合成加速度となる。液滴吐出ヘッド300が移動する際の加速度は、加速度センサ213により検出される。また、循環制御モードがモード1である場合、上記式(1)における「h」は、合成加速度が作用する方向における第3圧力センサ210の設置位置と第4圧力センサ211の設置位置との間の高低差となる。また、循環制御モードがモード2である場合、上記式(1)における「h」は、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差となる。
【0093】
プロセッサ215は、水頭圧の推定値を算出後、図9及び図12に示す場合と同様に、循環制御モード設定格納部242に格納された循環制御モードの設定情報を確認し、循環制御モードの制御条件に基づいて、供給圧力及び回収圧力を調整する。プロセッサ215は、上記式(2)を用いて、循環制御モードの制御条件を満たす供給圧力及び回収圧力の調整量を算出できる。
【0094】
また、図24に示す液滴吐出ヘッド300は、図15と同じように、液体の供給側を向かって右側に向け、液体の回収側を向かって左側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。そして、図24に示す液滴吐出ヘッド300は、鉛直下向き(Z軸方向)に、例えば、加速度:「+β」で移動している点、すなわち加速度:「β」で加速しながら移動している点が図15に示す場合とは相違している。
【0095】
図24に示す場合、液滴吐出ヘッド300を循環する液体は、重力加速度:「g」に加えて、液滴吐出ヘッド300の移動の加速度:「β」が作用する水頭圧の影響を受ける。このため、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力がさらに低くなり、下流側の圧力がさらに高くなることが予測される。
【0096】
また、図25に示す液滴吐出ヘッド300は、図18と同じように、液体の供給側を向かって上側に向け、液体の回収側を向かって下側に向けた状態で、液体の吐出側を対象物50(図1参照)に対して平行に向かい合う姿勢をとっている。そして、図25に示す液滴吐出ヘッド300は、鉛直下向き(Z軸方向)に、例えば、加速度:「+β」で移動している点、すなわち加速度:「β」で加速しながら移動している点が図15に示す場合とは相違している。
【0097】
図25に示す場合、液滴吐出ヘッド300を循環する液体は、重力加速度:「g」に加えて、液滴吐出ヘッド300の移動の加速度:「β」が作用する水頭圧の影響を受ける。このため、供給リザーバ301及び回収リザーバ304を流れる液体の上流側の圧力がさらに低くなり、下流側の圧力がさらに高くなることが予測される。
【0098】
図24及び図25に示す場合も、プロセッサ215は、上記式(1)を用いて、液滴吐出ヘッド300を循環する液体に作用しているものと予想される水頭圧の推定値を算出できる。このとき、上記式(1)において、「a」は、重力加速度:「g」と移動の加速度:「β」との合成加速度となる。液滴吐出ヘッド300が移動する際の加速度は、加速度センサ213により検出される。また、循環制御モードがモード1である場合、上記式(1)における「h」は、合成加速度が作用する方向における第3圧力センサ210の設置位置と第4圧力センサ211の設置位置との間の高低差となる。また、循環制御モードがモード2である場合、上記式(1)における「h」は、液滴吐出ヘッド300に設けられた吐出孔351の高低差となる。
【0099】
プロセッサ215は、水頭圧の推定値を算出後、図15及び図18に示す場合と同様に、循環制御モード設定格納部242に格納された循環制御モードの設定情報を確認し、循環制御モードの制御条件に基づいて、供給圧力及び回収圧力を調整する。プロセッサ215は、上記式(3)を用いて、循環制御モードの制御条件を満たす供給圧力及び回収圧力の調整量を算出できる。
【0100】
また、図22に示す液滴吐出ヘッド300が鉛直下向きに減速しながら移動する場合、かかる移動により、液滴吐出ヘッド300を循環する液体には、重力加速度:「g」と対向する鉛直上向きの加速度が作用する。このため、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力、並びに下流側の圧力の大小は、液滴吐出ヘッド300に作用する移動の加速度と、重力加速度:「g」の大小関係によって決定される。例えば、移動の加速度が大きいほど、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力並びに下流側の圧力に対する水頭圧の影響は小さくなる。図23に示す液滴吐出ヘッド300が鉛直下向きに減速しながら移動する場合も同様である。
【0101】
また、図24に示す液滴吐出ヘッド300が鉛直下向きに減速しながら移動する場合、かかる移動により、液滴吐出ヘッド300を循環する液体には、重力加速度:「g」と対向する鉛直上向きの加速度が作用する。このため、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力、並びに下流側の圧力は、液滴吐出ヘッド300に作用する移動の加速度と、重力加速度:「g」の大小関係によって異なる圧力となる。例えば、移動の加速度が大きいほど、供給マニホールド302及び回収マニホールド303を流れる液体の上流側の圧力並びに下流側の圧力に対する水頭圧の影響は小さくなる。図25に示す液滴吐出ヘッド300が鉛直下向きに減速しながら移動する場合も同様である。
【0102】
また、液滴吐出ヘッド300が等速で移動する場合、液滴吐出ヘッド300を循環する液体には、重力加速度:「g」のみが作用するので、プロセッサ215は、重力加速度:「g」に基づく水頭圧の推定値を算出する。
【0103】
なお、上記の実施形態及び変形例では、第1比例弁204及び第2比例弁205の制御により、供給圧力及び回収圧力を調整する例を説明したが、吐出ポンプ202及び吸引ポンプ203の制御により、供給圧力及び回収圧力を調整してもよい。例えば、吐出ポンプ202が液体に印加する正圧の値を調整することにより、供給圧力を調整してもよい。また、吸引ポンプ203が液体に印加する負圧の値を調整することにより、回収圧力を調整してもよい。
【0104】
プロセッサ215は、加速度センサ213により検出された加速度に基づいて、第1比例弁204及び第2比例弁205を制御し、液滴吐出ヘッド300に液体が供給される際の供給圧力及び液滴吐出ヘッド300から液体が回収される際の回収圧力を調整する。例えば、プロセッサ215は、液滴吐出ヘッド300の姿勢の変更に伴い、液滴吐出ヘッド300を循環する液体が水頭圧の影響を受けても、水頭圧の影響を打ち消すように、液体の供給圧力及び回収圧力を調整できる。例えば、循環制御モードがモード1である場合、液滴吐出ヘッド300の姿勢の変更等に伴う液体の供給不足を補うため、流量一定となるように液体の供給圧力及び回収圧力を調整する。また、循環制御モードがモード2である場合、液滴吐出ヘッド300の姿勢の変更等に伴ってヘッド内に生じた圧力分布を小さくし、メニスカスの保持性能を維持するため、差圧一定となるように液体の供給圧力及び回収圧力を調整する。このように、実施形態に係る循環装置200によれば、液滴吐出ヘッド300を循環する液体の循環圧力が、液滴吐出ヘッド300の移動、並びに液滴吐出ヘッド300の位置、姿勢、及び角度などの変更の影響を受けても、循環圧力を適正に保つことができる。
【0105】
上記の実施形態及び変形例において、循環装置200は、液滴吐出ヘッド300を備えてもよい。また、循環装置200が液滴吐出ヘッド300に内蔵されてもよい。
【0106】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記の実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成により具現化されるべきである。
【符号の説明】
【0107】
1 液滴吐出システム
10 基台
50 対象物
100 ロボットアーム
110 アーム部
120 制御ユニット
200 循環装置
201 タンク
202 吐出ポンプ
203 吸引ポンプ
204 第1比例弁
205 第2比例弁
206 ヒーター
207 入出力インターフェイス
208 第1圧力センサ
209 第2圧力センサ
210 第3圧力センサ
211 第4圧力センサ
212 流量計
213 加速度センサ
214 ストレージ
215 プロセッサ
241 ポンプ制御データ格納部
242 循環制御モード設定格納部
300 液滴吐出ヘッド
301 供給リザーバ
302 供給マニホールド
303 回収マニホールド
304 回収リザーバ
305 素子
351 吐出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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