(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H01L23/50 R
(21)【出願番号】P 2023126396
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2019198563の分割
【原出願日】2019-10-31
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2019174862
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】高田 嘉久
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161149(JP,A)
【文献】特開2005-223045(JP,A)
【文献】米国特許第10199312(US,B1)
【文献】特開2019-140265(JP,A)
【文献】特開2016-219785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極と、
前記内部電極と電気的に接続する半導体素子と、
前記内部電極及び前記半導体素子を覆う樹脂と、を備え、
前記半導体素子は、
電極と、
前記電極の上の導電性接合層と、を備え、
前記内部電極は、
前記半導体素子がその導電性接合層によってフリップチップ接合により搭載された配線層と、
前記配線層の下であって、前記配線層に関して前記半導体素子の反対側に配置された第1導電層と、
前記第1導電層の上に配置され、前記第1導電層及び前記配線層の両方に電気的に接続された第2導電層と、を備え、
前記第2導電層の端部は、前記第1導電層の端部より横方向に10μm以上突出している半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電層は、
前記第1導電層の端部及び前記配線層の端部より前記横方向に突出する外側面を有する凸状の突出部を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電層の端部は、10~20μm突出している請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電層の底面と前記第2導電層の端部における底面との距離は、100μm以上である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電層は、前記第1導電層より厚い請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記配線層の端部は、前記第1導電層の材料及び前記第2導電層の材料で覆われている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1導電層の端部と物理的に接触している外部電極をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記外部電極は、前記第1導電層と接するNi層と、前記Ni層と重畳するAu層と、を有する請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2導電層の外側面は露出している請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記樹脂の外側面及び前記第2導電層の外側面は
、実質的にそろっている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記導電性接合層は、はんだ層を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記導電性接合層は、
Cu層を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1導電層は銅を含み、第2導電層は銅を含む請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記配線層は、チタン又は窒化タンタルを含む請求項
13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体素子が搭載される前記配線層の反対部は、前記樹脂によって覆われ、露出していない請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体装置
は、車載用のウエッタブルフランクパッケージ半導体装置に使用される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体装置
が搭載される回路基板上にはんだフィレットが形成された請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SONパッケージ(Small Outline Non-leaded package)及びQFNパッケージ(Quad Flat Non-leaded package)などのリードレスパッケージ型の半導体装置が存在する。リードレスパッケージ型の半導体装置は、半導体素子を封止した封止樹脂から外部接続用の端子が突出していないため、半導体装置の小型化及び薄型化に有利である。
【0003】
リードレスパッケージ型の半導体装置は、例えば、半導体素子と、リードフレームと、封止樹脂と、を備えており、リードフレームは、ダイパッド部及び複数のリード部を有する。ダイパッド部は、半導体素子を支持している。複数のリード部は、それぞれ、金属配線を介して半導体素子と電気的に接続され、半導体装置を電子機器などの回路基板に実装する際の上記外部接続用の端子である。封止樹脂は半導体素子を覆う。このような半導体装置の製造には、例えばMAP(Molded Array Packaging)方式が用いられる。当該MAP方式では、リードフレーム上で複数の半導体素子を封止樹脂により一括して封止した後に、ダイシングによって半導体素子を1つずつ備えた個片に切り分ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
[概要]
外部接続用の端子であるリードフレームが、例えば、銅からなる場合、銅が酸化してしまうことではんだ等の導電性接合材との密着不良が生じることがある。また、車載用途の場合、銅を厚く形成する必要があるが銅を厚くしすぎると支持部材が反ってしまい、封止樹脂との密着不良が生じることがある。このような密着不良は、半導体装置の歩留まりの低下及び動作不良の原因となる。
【0006】
本実施形態は、密着不良を抑制し、信頼性を確保した外部接続用の端子を備えた半導体装置を提供する。
【0007】
本実施形態の一態様は、内部電極と、内部電極と電気的に接続する半導体素子と、内部電極及び半導体素子を覆う樹脂と、を備え、半導体素子は、電極と、電極の上の導電性接合層と、を備え、内部電極は、半導体素子がその導電性接合層によってフリップチップ接合により搭載された配線層と、配線層の下であって、配線層に関して半導体素子の反対側に配置された第1導電層と、第1導電層の上に配置され、第1導電層及び配線層の両方に電気的に接続された第2導電層と、を備え、第2導電層の端部は、第1導電層の端部より横方向に10μm以上突出している半導体装置である。
【0008】
本実施形態によれば、密着不良を抑制し、信頼性を確保した外部接続用の端子を備えた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の一態様の半導体装置の平面模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の一態様の半導体装置の底面模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の一態様の半導体装置の側面模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す断面模式図の一部を拡大した断面模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、それぞれ(a)導電層を形成する工程、(b)樹脂を形成する工程、及び(c)樹脂を研削する工程である。
【
図7】
図7は、本実施形態の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、それぞれ(a)配線層を形成する工程、(b)半導体素子を形成する工程、及び(c)導電層を形成する工程である。
【
図8】
図8は、本実施形態の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、それぞれ(a)樹脂を形成する工程、及び(b)支持基材を切断する工程である。
【
図9】
図9は、本実施形態の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、それぞれ(a)支持基材を研削する工程、及び(b)導電性接合層を形成する工程である。
【
図11】
図11は、外部電極の接続面と樹脂裏面との位置関係を説明する図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の他の一態様の半導体装置の断面模式図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の他の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、支持基材を研削する工程である。
【
図14】
図14は、本実施形態の他の一態様の半導体装置の製造方法を説明する断面模式図であって、それぞれ(a)導電層12の一部、配線層14の一部、導電層16の一部、及び樹脂20の一部を除去する、及び(b)導電性接合層を形成する工程である。
【0010】
[詳細な説明]
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0013】
[1]内部電極と、前記内部電極と電気的に接続する半導体素子と、前記内部電極及び前記半導体素子を覆う樹脂と、を備え、前記半導体素子は、電極と、前記電極の上の導電性接合層と、を備え、前記内部電極は、前記半導体素子がその導電性接合層によってフリップチップ接合により搭載された配線層と、前記配線層の下であって、前記配線層に関して前記半導体素子の反対側に配置された第1導電層と、前記第1導電層の上に配置され、前記第1導電層及び前記配線層の両方に電気的に接続された第2導電層と、を備え、前記第2導電層の端部は、前記第1導電層の端部より横方向に10μm以上突出している半導体装置。
【0014】
[2]前記第2導電層は、凸状の突出部を有する[1]に記載の半導体装置。
【0015】
[3]前記第2導電層の端部は、10~20μm突出している[1]又は[2]に記載の半導体装置。
【0016】
[4]前記第1導電層の底面と前記第2導電層の端部における底面との距離は、100μm以上である[1]から[4]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0017】
[5]前記第2導電層は、前記第1導電層より厚い[1]から[4]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0018】
[6]前記第2導電層は、前記第1導電層より薄い[1]から[4]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0019】
[7]前記配線層の端部は、前記第1導電層の材料及び前記第2導電層の材料で覆われている[1]から[6]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0020】
[8]前記第1導電層の端部と物理的に接触している外部電極をさらに備える[1]から[7]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0021】
[9]前記外部電極は、前記第1導電層と接するNi層と、前記Ni層と重畳するAu層と、を有する[8]に記載の半導体装置。
【0022】
[10]前記第2導電層の外側面は露出している[1]から[9]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0023】
[11]前記樹脂の外側面及び前記第2導電層の外側面は、実質的にそろっている[1]から[10]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0024】
[12]前記導電性接合層は、はんだ層を有する[1]から[11]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0025】
[13]前記導電性接合層は、Cu層を有する[1]から[12]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0026】
[14]前記第1導電層は銅を含み、第2導電層は銅を含む[1]から[13]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0027】
[15]前記配線層は、チタン又は窒化タンタルを含む[14]に記載の半導体装置。
【0028】
[16]前記半導体素子が搭載される前記配線層の反対部は、前記樹脂によって覆われ、露出していない[1]から[15]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0029】
[17]前記半導体装置は、車載用のウエッタブルフランクパッケージ半導体装置に使用される[1]から[16]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0030】
[18]前記半導体装置が搭載される回路基板上にはんだフィレットが形成された[1]から[17]のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0031】
[第1実施形態]
本実施形態に係る半導体装置について図面を用いて説明する。
【0032】
図1~5は、本実施形態の一態様の半導体装置を示している。本実施形態の一態様の半導体装置は、内部電極2、外部電極18、樹脂20、導電性接合層22、半導体素子24、及び絶縁層41を備えている。
【0033】
図1は本実施形態の一態様の半導体装置の平面模式図、
図2は本実施形態の一態様の半導体装置の底面模式図、
図3は本実施形態の一態様の半導体装置の側面模式図、
図4は
図1のIV-IV線に沿う断面模式図、
図5は
図4に示す断面模式図の一部を拡大した断面模式図である。
【0034】
まず、本実施形態に係る半導体装置について
図1~5を用いて説明する。
【0035】
本実施形態に係る半導体装置は、端子と、当該端子と導電性接合層22を介して電気的に接続する半導体素子24と、当該端子及び半導体素子24を覆う樹脂20と、を備え、当該端子は、導電層12と、導電層12上の配線層14と、配線層14上の導電層16と、導電層12の底面及び側面、配線層14の側面、導電層16の側面の一部(側面16d)、及び導電層16の底面の一部(底面16c)と接する外部電極18と、を備える。なお、導電性接合層22は、配線層14上に接して設けられている。また、導電層12、配線層14、及び導電層16をまとめて内部電極2ともいう。
【0036】
なお、本明細書等では、外部電極を端子の一部として記載しているがこれに限られず、外部電極を端子の一部として含めない解釈をしてもよい。
【0037】
半導体装置は、様々な電子機器などの回路基板に実装されるパッケージである。半導体装置は、
図1及び
図2に示すように、矩形状である。本実施形態に係る半導体装置は、いわゆるSONパッケージ型である。
【0038】
半導体素子24は、半導体装置の機能中枢となる素子である。半導体素子24は、例えば、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路(IC:Integrated Circuit)である。また、半導体素子24は、LDO(Low Drop Out)などの電圧制御用素子、オペアンプなどの増幅用素子、ならびに、コンデンサ、トランジスタ、及びダイオードなどのディスクリート半導体素子であってもよい。半導体素子24は、矩形状である。半導体素子24は、内部電極2に搭載されている。半導体素子24は、絶縁層41と重畳する。半導体素子24は、FCB(Flip Chip Bonding)により搭載される。
【0039】
半導体素子24は、素子表面24a及び素子裏面24bを有する。素子表面24a及び素子裏面24bは、ともに平坦である。素子裏面24bには、
図5に示すように、複数の電極パッド13及び絶縁層41が形成されている。複数の電極パッド13は、それぞれ、矩形状である。各電極パッド13は、
図5に示すように、導電性接合層22の一部である導電性接合材44とシード層42からなり、導電性接合材44に接合される。各電極パッド13は、第1導電部131及び第2導電部132を含む。
【0040】
第1導電部131は、例えば、アルミニウムから構成される。第2導電部132は、互いに積層されたTi(チタン)層及びCu(銅)層から構成される。第2導電部132において、Cu層が第1導電部131に接する。電極パッド13において、第2導電部132を設けることで、アルミニウムからなる第1導電部131が導電性接合材44に浸透することを抑制することができる。
【0041】
絶縁層41は、素子裏面24bを覆うように形成される半導体素子24の保護膜である。絶縁層41は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される窒化シリコン層と、塗布により形成されるポリイミド樹脂層又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂層とが互いに積層されたものである。絶縁層41は、複数の部分において開口しており、当該開口している部分からそれぞれ電極パッド13が露出している。なお、電極パッド13の位置は、上記したものに限定されず、例えば、電極パッド13が絶縁層41内に埋没して素子裏面24bと接していてもよい。
【0042】
シード層42は、例えば、主成分がチタン又は窒化タンタルであり、厚さが100~800nmであるものを用いることができる。導電性接合材44は、シード層42と半導体素子24との間に介在する導電部材である。本実施形態においては、導電性接合材44は、シード層42に接する側からNi層、はんだ層、Ni層、Cu層の順に設けられて構成されている。はんだ層は、Sn(スズ)を含む合金からなる。このような合金は、例えば、Sn-Sb系合及びSn-Ag系合金などの鉛フリーはんだ、ならびに、鉛含有はんだなどが挙げられる。
【0043】
導電層12は、例えば、主成分が銅であり、厚さが20~50μmであるものを用いることができる。導電層12は、スパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。導電層12の側面12aは、外部電極18と接している。また、シード層上に導電層12を形成することもできる。当該シード層は、例えば、主成分がチタン又は窒化タンタルであり、厚さが100~800nmであるものを用いることができる。なお、導電層12及びシード層の材料、厚さ、及び形成方法は、上記したものに限定されない。
【0044】
配線層14は、導電層16のシード層として機能する。配線層14は、PVD法などにより形成することができる。配線層14は、例えば、主成分がチタン又は窒化タンタルであり、厚さが100~800nmである層と当該層上にさらにCu層を積層したものを用いることができる。なお、配線層14の材料、厚さ、及び形成方法は、上記したものに限定されない。
【0045】
導電層16は、例えば、主成分が銅であり、導電層12よりも厚く、厚さが40~100μmであるものを用いることができる。導電層16は、めっき法等により形成することができる。また、導電層16の材料は、導電層12の材料と同一であってもよい。
【0046】
また、導電層16の一方の端部は、導電層12の端部及び配線層14の端部より突出している。つまり、端子は、段差を有する構成となっている。このような構成は、導電層16の一部が突出している端部側の導電層12の側面12a、配線層14の側面、及び突出していない領域の導電層16の側面16d(以降、端面ともいう)が酸化等により凹凸になっても外部電極18が当該端面及び導電層16の端部における底面16cに接して形成されるため、はんだ等の導電性接合材との密着不良を抑制して信頼性を確保しつつ、端面が端子や当該端子を備える半導体装置の外部から視認されない構成となる。
【0047】
さらに、導電層16の上面16aは、外側面16bより粗い。導電層16の上面16aは、樹脂20で覆われるため平坦にする必要がなく、例えば、導電層16の上面16aの平均面粗さが2~5μmであると好ましい。導電層16の上面16aが粗い場合、樹脂20が導電層16の上面の微細な凹凸に入り込んで硬化することで密着性が向上する。なお、平均面粗さは、例えば、JIS B 0601:2013やISO 25178に準拠して求めることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る半導体装置において、導電層12の底面と導電層16の端部における底面との距離Dは100μm以上であり、当該Dは100~150μmであってもよい。さらに、本実施形態に係る半導体装置において、導電層16の突出している端部の幅Wは10μm以上であり、コスト面の観点から、10~20μmであることが好ましい。
【0049】
外部電極18は、導電層12、配線層14、及び導電層16と接して電気的に接続し、接続面18aが外部に露出する。外部電極18は、半導体装置を回路基板に実装する際に使用する端子として機能する。外部電極18は、めっき法などにより形成することができる。本実施形態に係る半導体装置において、外部電極18は、Ni層、Pd層、及びAu層から構成される。Ni層は、上記端面と接し、厚さは3μmである。導電層12及び導電層16の主成分が銅である場合、外部の装置と電気的に接続するために使用するはんだを直接接着すると銅とはんだが合金を形成し、ボイドが生じてしまう。銅とはんだとの合金化を抑制するためバリア層として機能するNi層を設けることが好ましい。Au層は、接続面18aとして外部に露出し、厚さは0.01~0.02μmである。Au層は、はんだとの密着性に優れているため好ましい。また、Pd層は、Ni層とAu層との間に位置し、厚さは0.01~0.02μmである。Pd層も銅とはんだとの合金化を抑制するためバリア層として機能するがNi層のみで銅とはんだとの合金化を十分に抑制できている場合、Pd層は設けなくてもよい。なお、外部電極18の材料、厚さ、及び形成方法は、上記したものに限定されない。
【0050】
樹脂20は、例えば、エポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂、及びポリイミド樹脂等を用いることができる。
図4に示すように、樹脂20は、本実施形態に係る半導体装置の構成要素である、導電層12、配線層14、及び導電層16を覆っている。
【0051】
樹脂20は、樹脂表面20c、樹脂裏面20d1、樹脂裏面20d2、樹脂界面20e、及び樹脂側面20fを有する。樹脂表面20c、樹脂裏面20d1、樹脂裏面20d2、及び樹脂界面20eは、ともに平坦である。なお、樹脂界面20eは、樹脂20a及び樹脂20bからなる界面である。
【0052】
ここで、本実施形態に係る半導体素子の製造方法について、
図6~9を用いて説明する。
【0053】
まず、
図6(a)に示すように、支持基材10を用意し、支持基材10上に導電層12を形成する。支持基材10は、例えば、ガラス基板、及びシリコン基板等を用いることができる。本実施形態において、支持基材10として、シリコン基板を用いる。導電層12は、銅を主成分とし、スパッタリング法により形成される。導電層12を形成する工程においては、まず、導電層12となる導電膜上にレジストをフォトリソグラフィによりパターン形成する。パターン形成したレジストを用いて導電層12となる導電膜の一部を除去して導電層12を形成する。その後、レジストを除去することで
図6(a)に示す導電層12が形成される。
【0054】
次に、
図6(b)に示すように、支持基材10及び導電層12を覆う樹脂20aを形成する。当該樹脂20aは、前述した樹脂20の一部に相当する。本実施形態における樹脂20aは、電気絶縁性を有する樹脂、例えば、エポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂、及びポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0055】
次に、
図6(c)に示すように、砥石等を用いて樹脂20aを研削して、導電層12の上面を露出させる。研削した樹脂20aの上面が後に形成する樹脂20bとの樹脂界面20eとなる。
【0056】
次に、
図7(a)に示すように、導電層12の上面全体及び研削された樹脂20aの上面(樹脂界面20e)の一部と接するように配線層14を形成する。本実施形態において、配線層14は、チタンを主成分とし、スパッタリング法により形成される。配線層14を形成する工程においては、まず、配線層14となる導電膜上にレジストをフォトリソグラフィによりパターン形成する。パターン形成したレジストを用いて配線層14となる導電膜の一部を除去して配線層14を形成する。その後、レジストを除去することで
図7(a)に示す配線層14が形成される。
【0057】
次に、
図7(b)に示すように、配線層14上に導電性接合層22を形成する。本実施形態において、導電性接合層22は、前述したようにシード層と導電性接合材からなる。
導電性接合層22中のシード層は、例えば、主成分がチタン又は窒化タンタルであり、厚さが100~800nmであるものを用いることができる。導電性接合層22中の導電性接合材は、Ni層及び当該Ni層に接するSn-Sb系合又はSn-Ag系合金などの鉛フリーはんだ層からなり、メッキ法により形成される。導電性接合層22を形成する工程においては、まず、導電性接合層22となる導電膜上にレジストをフォトリソグラフィによりパターン形成する。パターン形成したレジストを用いて導電性接合層22となる導電膜の一部を除去して導電性接合層22を形成する。その後、レジストを除去することで
図7(b)に示す導電性接合層22が形成される。
【0058】
次に、導電性接合層22に接する半導体素子24を搭載する。半導体素子24の素子裏面24bが導電性接合層22と接する。本実施形態において、半導体素子24を搭載する工程は、FCBにより行う。半導体素子24の電極パッド13にフラックスを塗布した後、フリップチップボンダーを用いて、半導体素子24を配線層14に対向させた状態で導電性接合層22に仮付けする。このとき、導電性接合層22は、配線層14と半導体素子24との双方に挟まれた状態となる。次に、リフローにより導電性接合層22を溶融させた後、冷却により導電性接合層22を固化させることによって、半導体素子24の搭載が完了する。
【0059】
次に、
図7(c)に示すように、配線層14上に導電層16を形成する。本実施形態において、導電層16は、銅を主成分とし、めっき法により形成される。導電層16を形成する工程においては、まず、導電層16となる導電膜上にレジストをフォトリソグラフィによりパターン形成する。パターン形成したレジストを用いて導電層16となる導電膜の一部を除去して導電層16を形成する。その後、レジストを除去することで
図7(c)に示す導電層16が形成される。
【0060】
なお、
図7(c)に示す導電層16の側面は、導電層12の側面と概略そろっているがこれに限られない。後の工程において、導電層12の側面及び導電層16の側面に加工を施すため、導電層16の側面と導電層12の側面とは、そろっていなくてもよく、例えば、導電層16の一方の側面が導電層12と重畳しない構成(後述する導電層16の一部が突出している端部側の導電層16の外側面16bが導電層12の側面12aより突出する構成)であってもよい。
【0061】
なお、導電層16を形成する際、上面に微細な凹凸が形成されることがある。この微細な凹凸によって、後の工程で形成される樹脂20bに入り込んで硬化することで密着性が向上する。
【0062】
導電層12及び導電層16を分けて形成することで厚さが100μm以上の導電層を形成することができ、導電層を形成する際に支持基材10が反ることを抑制することができる。これにより、端子と樹脂との密着不良を抑制することができる。
【0063】
次に、
図8(a)に示すように、樹脂20a、配線層14、導電層16、導電性接合層22、及び半導体素子24を覆う樹脂20bを形成する。当該樹脂20bは、前述した樹脂20の一部に相当する。つまり、前述した樹脂20a及び当該樹脂20bを合わせたものが樹脂20に相当する。また、本工程において、樹脂界面20eが形成される。本実施形態における樹脂20bは、電気絶縁性を有する樹脂、例えば、エポキシ樹脂を主剤とした合成樹脂、及びポリイミド樹脂等を用いることができる。
【0064】
次に、
図8(b)に示すように、支持基材10を切削ブレード等によるサークルカットによって切断する。
【0065】
次に、
図9(a)に示すように、支持基材10を除去する。支持基材10は、例えば、砥石等により研削して除去することができる。なお、当該除去後に樹脂20上にダイシングテープ(図示せず)を張り付ける。
【0066】
次に、
図9(b)に示すように、導電層16の端部が導電層12の端部及び配線層14の端部より突出するように導電層12の一部、配線層14の一部、導電層16の一部、及び樹脂20の一部を除去する。当該除去には、ブレードダイシング等により行うことができる。なお、この際、ダイシングテープをブレードダイシング等により完全に切断しない。これにより、図示していないが樹脂が半導体素子ごとに個片化されても、ダイシングテープによって繋がっているため、バラバラにならない。
【0067】
次に、端子の端面(導電層16の一部が突出している端部側の導電層12の側面12a、配線層14の側面、及び突出していない領域の導電層16の側面16d)、及び導電層16の端部における底面16cに接する外部電極18を形成する。なお、外部電極18を形成する前に導電層12及び導電層16を0.5~3μmエッチングするため
図11に示すように外部電極18の接続面18aは、樹脂20の樹脂裏面20d1及び樹脂裏面20d2より下に位置し、かつ、外部に露出する。本実施形態において、外部電極18は、めっき法により形成される。具体的には、外部電極18は、Ni層、Pd層、及びAu層の順に各々を析出させる。
【0068】
以上の工程により、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。
【0069】
また、ブレードダイシングにより導電層12、配線層14、導電層16、及び樹脂20の一部を除去する際、
図4に示す領域30において、配線層14の材料である金属の硬度より小さい導電層12の材料および導電層16の材料である金属が延びて
図10に示すような配線層14の端部14aを覆う領域15が形成されることがある。
【0070】
本実施形態によれば、密着不良を抑制し、信頼性を確保した半導体装置を提供することができる。本実施形態のような構成にすることで、半導体装置の側面に形成された外部電極18と端子の端面との接触部分の距離Dを十分確保することができる。半導体装置を回路基板などに実装する際、はんだを用いるが、仮に距離Dを十分確保できなかった場合、はんだフィレットの形成が困難になる。本実施形態に係る半導体装置は、距離Dを十分確保することができているため、半導体装置を回路基板などに実装する際、はんだフィレットを容易に形成することができる。これにより、半導体装置の回路基板への実装強度を高めることができる。また、はんだの接続状態について外観検査を行い、半導体装置の良品判定を容易に行うことができる。これにより、半導体装置の歩留まりを向上させることができ、また、信頼性を向上させることができる。
【0071】
[第2実施形態]
本実施形態では、第1実施形態と異なる、半導体素子の製造方法について図面を用いて説明する。
【0072】
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。つまり、本実施形態において、特に言及していない部分は第1実施形態の説明を援用することができるものとする。
【0073】
本実施形態に係る半導体装置は、
図12に示すように、端子と、当該端子と導電性接合層22を介して電気的に接続する半導体素子24と、当該端子及び半導体素子24を覆う樹脂20と、を備え、当該端子は、導電層12と、導電層12上の配線層14と、配線層14上の導電層16と、導電層12の底面及び側面、配線層14の側面、導電層16の側面の一部(側面16d)、及び導電層16の底面の一部(底面16c)と接する外部電極18と、を備える。なお、導電性接合層22は、配線層14上に接して設けられている。また、導電層16の外側面16bは、露出しており、樹脂側面20fと外側面16bは概略そろっている。
【0074】
導電層16の外側面16bが露出し、樹脂側面20fと外側面16bは概略そろっていることにより、外観検査を行う際に樹脂20bが当該検査の妨げにならない。このため、半導体装置の良品判定をより容易に行うことができる。これにより、半導体装置の歩留まりを向上させることができ、また、信頼性を向上させることができる。
【0075】
ここで、本実施形態に係る半導体素子の製造方法について、
図13~14を用いて説明する。
【0076】
前述の実施形態1の
図6~
図8(a)に示す工程に従った後、
図13に示すように、支持基材10を除去する。支持基材10は、例えば、砥石等により研削して除去することができる。なお、当該除去後に樹脂20上にダイシングテープ(図示せず)を張り付ける。
【0077】
次に、
図14(a)に示すように、導電層16の端部が導電層12の端部及び配線層14の端部より突出するように導電層12の一部、配線層14の一部、導電層16の一部、及び樹脂20の一部を除去する。当該除去には、ブレードダイシング等により行うことができる。なお、この際、導電層16の外側面16bが露出するように樹脂20の一部を除去する。これにより、図示していないが樹脂が半導体素子ごとに個片化される。
【0078】
次に、
図14(b)に示すように、端子の端面(導電層16の一部が突出している端部側の導電層12の側面12a、配線層14の側面、及び突出していない領域の導電層16の側面16d)、及び導電層16の端部における底面16cに接する外部電極18を形成する。
【0079】
以上の工程により、本実施形態に係る半導体装置を製造することができる。
【0080】
また、第1実施形態と同様、ブレードダイシングにより
図10に示すような配線層14の端部14aを覆う領域15が形成されることがある。
【0081】
本実施形態によれば、密着不良を抑制し、信頼性を確保した半導体装置を提供することができる。本実施形態のような構成にすることで、半導体装置の側面に形成された外部電極18と端子の端面との接触部分の距離Dを十分確保することができる。半導体装置を回路基板などに実装する際、はんだを用いるが、仮に距離Dを十分確保できなかった場合、はんだフィレットの形成が困難になる。本実施形態に係る半導体装置は、距離Dを十分確保することができているため、半導体装置を回路基板などに実装する際、はんだフィレットを容易に形成することができる。これにより、半導体装置の回路基板への実装強度を高めることができる。導電層16の外側面16bが露出し、樹脂側面20fと外側面16bは概略そろっていることにより、外観検査を行う際に樹脂20bが当該検査の妨げにならない。このため、半導体装置の良品判定をより容易に行うことができる。これにより、半導体装置の歩留まりを向上させることができ、また、信頼性を向上させることができる。
【0082】
[その他の実施形態]
上記のように、いくつかの実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない、各実施形態のそれぞれを組み合わせた構成等様々な実施形態等を含む。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本実施形態に係る半導体装置は、車載機器、生活家電、及び医療機器、等の各種の分野において利用することができる。特に、本実施形態に半導体装置は、車載用のウエッタブルフランクパッケージに利用することができ、機能、性能、品質、信頼性、及び利便性を向上することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
2…内部電極、10…支持基材、12…導電層、12a…側面、13…電極パッド、14…配線層、15…領域、15a…導電層、16…導電層、16a…上面、16b…外側面、16c…底面、16d…側面、18…外部電極、18a…接続面、20…樹脂、20a…樹脂、20b…樹脂、20c…樹脂表面、20d1…樹脂裏面、20d2…樹脂裏面、20e…樹脂界面、20f…樹脂側面、22…導電性接合層、24…半導体素子、24a…素子表面、24b…素子裏面、30…領域、41…絶縁層、42…シード層、44…導電性接合材、131…第1導電部、132…第2導電部