(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H01L23/46 C
(21)【出願番号】P 2023506981
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009704
(87)【国際公開番号】W WO2022196411
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021041268
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉見 雄太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】白形 雄二
(72)【発明者】
【氏名】矢原 寛之
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-356261(JP,A)
【文献】特開2014-160707(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188246(WO,A1)
【文献】実開平7-18451(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が接合された基板と、
前記基板に対して前記半導体素子とは反対側に配置された被接合面を含む熱拡散板と、
前記基板と前記熱拡散板との間において前記基板と前記熱拡散板とを接合している接合部材とを備え、
前記熱拡散板には、前記被接合面から凹む溝が設けられており、
前記熱拡散板の前記溝は、前記接合部材から露出した部分を含んでおり、
前記基板は、第1面と、前記第1面に対して前記半導体素子とは反対側に配置された第2面と、前記第1面と前記第2面とを貫通するビアホールとを有し、
前記基板に垂直な方向から見て、前記溝は前記ビアホールと重なる位置に設けられている、半導体装置。
【請求項2】
半導体素子と、
前記半導体素子が接合された基板と、
前記基板に対して前記半導体素子とは反対側に配置された被接合面を含む熱拡散板と、
前記基板と前記熱拡散板との間において前記基板と前記熱拡散板とを接合している接合部材とを備え、
前記熱拡散板には、前記被接合面から凹む溝が設けられており、
前記熱拡散板の前記溝は、前記接合部材から露出した部分を含んでおり、
前記熱拡散板は、前記被接合面とは前記接合部材の反対側に配置された対向面とを含み、
前記溝は、前記対向面から前記被接合面に向かって小さくなるように構成された幅を有している、半導体装置。
【請求項3】
前記基板と前記熱拡散板とが前記接合部材を挟み込む方向から見て、前記熱拡散板は、前記半導体素子よりも大きく、
前記挟み込む方向において、前記半導体素子は、前記熱拡散板に重なっている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記溝は、第1溝部と、第2溝部とを含んでおり、
前記第1溝部および前記第2溝部の各々は、前記接合部材から露出した部分を含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1溝部および前記第2溝部は、互いに交差している、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1溝部および前記第2溝部は、互いに間隔を空けて配置されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記被接合面は、前記半導体素子が重ねられた積層領域を含み、
前記溝は、第1端と、第2端とを含み、
前記溝の前記第1端は、前記接合部材から露出しており、
前記溝の前記第2端は、前記積層領域の中心と前記第1端との間に配置されており、
前記被接合面の前記積層領域の前記中心は、前記接合部材によって前記基板に接合されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記溝は、第1端と、第2端とを含み、
前記第1端および前記第2端の各々は、前記接合部材から露出している、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記溝の前記第1端は、前記熱拡散板の端部に設けられている、請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記熱拡散板には、貫通孔が設けられており、
前記貫通孔は、前記接合部材が前記被接合面に重ねられた方向に沿って前記熱拡散板を貫通しており、
前記熱拡散板には、前記重ねられた方向に沿って前記接合部材に重なるように前記貫通孔が設けられている、請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
接続部材をさらに備え、
前記基板の前記第1面には前記半導体素子が前記接続部材によって接合されており、
前記ビアホールは、前記基板と前記熱拡散板とが前記接合部材を挟み込む方向から見て前記接続部材と重なっている、請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記熱拡散板は、前記被接合面とは前記接合部材の反対側に配置された対向面とを含み、
前記溝は、前記対向面から前記被接合面に向かって大きくなるように構成された幅を有している、請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の前記半導体装置を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車載または車両用の電力変換装置に用いられる半導体装置は、多くの機能、高い出力および薄い形状を有する傾向にある。これに伴い、半導体装置に実装されている電子部品の単位体積当たりの発熱量は、上昇している。このため、放熱性を有する半導体装置が望まれている。
【0003】
例えば、特開平11-345921号公報(特許文献1)に記載の半導体装置は、構成素子(半導体素子)と、プリント基板(基板)と、はんだである接着層(接合部材)と、熱伝導プレート(熱拡散板)とを含んでいる。構成素子は、プリント基板に接合されている。熱伝導プレートは、プリント基板に対して構成素子とは反対側に配置されている。このため、構成素子から生じた熱は、プリント基板、接着層および熱伝導プレートの順に通って放散される。プリント基板と熱伝導プレートとは、接着層によってはんだ付けされている。はんだ付けのために接着層が溶融した際に、溶融した接着層からフラックスが蒸発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載の半導体装置では、熱伝導プレートが接着層に密着している。このため、熱伝導プレートは、接着層から蒸発したフラックスが半導体装置の外部に排出されることを妨げている。よって、プリント基板と熱伝導プレートとが接合された後に、蒸発したフラックスが接着層の内部に残留することにより、ボイドが接着層に発生する。ボイドが接着層に発生した場合、接着層の熱抵抗が増加するため、半導体装置の放熱性が低下する。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合部材中のボイドを低減することができる半導体装置および電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の半導体装置は、半導体素子と、基板と、熱拡散板と、接合部材とを備えている。基板には、半導体素子が接合されている。熱拡散板は、被接合面を含んでいる。被接合面は、基板に対して半導体素子とは反対側に配置されている。接合部材は、基板と熱拡散板との間において基板と熱拡散板とを接合している。熱拡散板には、被接合面から凹む溝が設けられている。熱拡散板の溝は、接合部材から露出した部分を含んでいる。基板は、第1面と、第1面に対して半導体素子とは反対側に配置された第2面と、第1面と第2面とを貫通するビアホールとを有している。基板に垂直な方向から見て、溝はビアホールと重なる位置に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の半導体装置によれば、熱拡散板の溝は、接合部材から露出した部分を含んでいる。このため、基板と熱拡散板との接合時において接合部材から蒸発したフラックスは、熱拡散板の溝を通って半導体装置の外部に排出される。よって、接合部材中のボイドを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体装置を含む電力変換装置の構成を概略的に示す回路図である。
【
図5A】実施の形態1に係る半導体装置を含む電力変換装置の主回路の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る半導体装置がリフロー炉に投入される様子を概略的に示す上面図である。
【
図7】実施の形態1に係る半導体装置の基板と熱拡散板とが接合部材によって接合されている様子を概略的に示す断面図である。
【
図8】実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図9】実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図10】実施の形態2に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図11】実施の形態2に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図12】実施の形態2の第1の変形例に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図13】実施の形態2の第2の変形例に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図14】実施の形態3に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図15】実施の形態3に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図16】実施の形態4に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図17】実施の形態4の変形例に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図18】実施の形態5に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図20】実施の形態6に係る半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図21】実施の形態6に係る半導体装置の熱拡散板の構成を概略的に示す上面図である。
【
図22】実施の形態6に係る半導体装置の基板と熱拡散板とが接合部材によって接合されている様子を概略的に示す断面図である。
【
図23】実施の形態7に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図24】
図23のXXIV-XXIV線に沿った断面図である。
【
図25】実施の形態7に係る半導体装置の溝の構成を変更した断面図である。
【
図26】実施の形態7に係る半導体装置の溝の構成を変更した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
図1~
図5を用いて、実施の形態1に係る半導体装置100の構成を説明する。本実施の形態に係る半導体装置100は、ハイブリッドカー、電気自動車等に搭載される電力変換装置に用いられてもよい。
【0012】
図1に示されるように、半導体装置100は、半導体素子1と、基板2と、熱拡散板3と、接合部材J1とを含んでいる。本実施の形態の半導体装置100は、放熱部材5と、冷却体6と、接続部材J2とをさらに含んでいる。本実施の形態において、半導体素子1、接続部材J2、基板2、接合部材J1、熱拡散板3、放熱部材5および冷却体6は、順に積層されている。
【0013】
半導体素子1は、発熱する電子部品である。半導体装置100は、半導体素子1から生じた熱が基板2、熱拡散板3、放熱部材5および冷却体6を通って放散されるように構成されている。半導体素子1は、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)または絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体チップである。半導体チップは、樹脂によって封止されたパッケージとして構成されていてもよい。
【0014】
基板2には、半導体素子1が接合されている。基板2と熱拡散板3とが接合部材J1を挟み込む方向(Z軸方向DR3)から見て、熱拡散板3は、半導体素子1よりも大きい。挟み込む方向(Z軸方向DR3)において、半導体素子1は、熱拡散板3に重なっている。
【0015】
本実施の形態において、基板2と熱拡散板3とが接合部材J1を挟み込む方向は、Z軸方向DR3である。リード11が半導体素子1から突出する方向は、Y軸方向DR2である。Y軸方向DR2およびZ軸方向DR3の各々に交差する方向は、X軸方向DR1である。
【0016】
基板2は、例えば、プリント基板である。基板2は、第1面21と、第2面22とを含んでいる。基板2の第1面21には、半導体素子1が接続部材J2によって接合されている。基板2の第2面22は、第1面21に対して半導体素子1とは反対側に配置されている。基板2の第2面22は、接合部材J1によって熱拡散板3に接合されている。
【0017】
基板2には、第1面21と第2面22とを貫通するビアホールVHが設けられている。ビアホールVHは、Z軸方向DR3に沿って設けられている。本実施の形態において、ビアホールVHは、複数のホール部V1を含んでいる。Z軸方向DR3から見て、接続部材J2は、複数のホール部V1に重なっている。複数のホール部V1は、互いに間隔を空けて配置されている。
【0018】
ビアホールVHの孔部の内壁面上には銅などの導体膜が形成されている。導体膜は、たとえば銀フィラーを混入させた導電性接着剤またははんだにより当該孔部内が充填されたものであってもよい。このように導電性接着剤などを充填させることにより形成されたビアホールVHは、中空よりも熱伝導性の高い導電性部材からなる領域をより大きくすることができるため、いっそう放熱性の向上に寄与することができる。
【0019】
基板2は、非貫通領域20を含んでいてもよい。非貫通領域20には、ビアホールVHが設けられていない。
図1では、非貫通領域20の外形は、破線によって示されている。非貫通領域20には、例えば、電極12が配置されている。半導体素子1のリード11は、非貫通領域20において電極12に電気的に接続されている。
【0020】
図2に示されるように、本実施の形態において、基板2は、複数の絶縁層25と、第1導体層26と、第2導体層27と、複数の第3導体層28とを含んでいる。複数の絶縁層25は、例えば、平板形状を有している。複数の絶縁層25の上面視における形状は、例えば、矩形である。絶縁層25の材料は、例えば、混合されたガラス繊維およびエポキシ樹脂である。また、絶縁層25の材料は、これに限られず、混合されたアラミド樹脂およびエポキシ樹脂であってもよい。
【0021】
第1導体層26および第2導体層27は、複数の絶縁層25を挟み込んでいる。基板2の第1面21は、第1導体層26に設けられている。基板2の第2面22は、第2導体層27に設けられている。複数の第3導体層28の各々は、複数の絶縁層25の各々の間にそれぞれ配置されている。このため、複数の第3導体層28の各々は、第1導体層26および第2導体層27から間隔を空けて配置されている。複数の絶縁層25、第1導体層26、第2導体層27および複数の第3導体層28の各々は、互いに平行に配置されていてもよい。
【0022】
第1導体層26、第2導体層27および複数の第3導体層28の材料は、例えば、銅(Cu)等の高い熱伝導性を有する金属である。第1導体層26、第2導体層27および複数の第3導体層28の厚みは、例えば、100μmである。本実施の形態において、基板2は、2つの第3導体層28を含んでいるが、第3導体層28の数はこれに限られない。
【0023】
熱拡散板3は、接合部材J1によって基板2の第2面22に接合されている。熱拡散板3は、基板2とで接合部材J1を挟み込んでいる。熱拡散板3は、被接合面31と、対向面32とを含んでいる。被接合面31は、基板2に対して半導体素子1とは反対側に配置されている。被接合面31は、接合部材J1によって基板2に接合されている。対向面32は、被接合面31とは接合部材J1の反対側に配置されている。対向面32は、被接合面31と対向している。対向面32には、放熱部材5が接合されている。
【0024】
熱拡散板3には、被接合面31から凹む溝4が設けられている。溝4が被接合面31から凹む方向(深さ方向)は、接合部材J1が被接合面31に重ねられた方向(Z軸方向DR3)に沿っている。
【0025】
本実施の形態において、溝4の幅は、被接合面31から対向面32に向かう方向(Z軸方向DR3)に沿って均一である。溝4の深さは、熱拡散板3を貫通しない限り、適宜に決められてもよい。
【0026】
図1および
図3に示されるように、熱拡散板3の溝4は、接合部材J1から露出した部分を含んでいる。このため、熱拡散板3の溝4は、半導体装置100の外部に連通している。
図1では、プリント基板と熱拡散板3の長さは同一であるが、本来は、後に示す
図5Aのように、プリント基板の長さが熱拡散板3の長さよりも長いため、熱拡散板3の基板側の表面が外部に露出しない。
【0027】
図3に示されるように、溝4は、第1端E1と、第2端E2とを含んでいる。第1端E1および第2端E2は、溝4の長手方向の両端である。本実施の形態において、溝4の第1端E1および第2端E2は、熱拡散板3の端部に設けられている。第1端E1および第2端E2の各々は、接合部材J1から露出している。このため、熱拡散板3の溝4は、熱拡散板3の側方において接合部材J1から露出している。
【0028】
熱拡散板3の材料は、例えば、銅(Cu)である。このため、熱拡散板3は、例えば、銅板である。なお、熱拡散板3はこれに限られず、例えば、表面に銅(Cu)等の金属膜が形成された酸化アルミニウム(Al2O3)であってもよい。また、熱拡散板3は、銅(Cu)合金、アルミニウム(Al)合金またはマグネシウム(Mg)合金の金属板にニッケル(Ni)、金(Au)またはスズ(Sn)等のめっきが施された金属材料によって形成されていてもよい。
【0029】
熱拡散板3の厚みは、例えば、0.1mmである。熱拡散板3の厚みが0.1mm以上である場合、熱拡散板3の熱伝導性(放熱性)および強度の両方が向上する。なお、熱拡散板3の厚みは0.1mm未満であってもよい。
【0030】
接合部材J1は、基板2と熱拡散板3との間において基板2と熱拡散板3とを接合している。接続部材J2は、半導体素子1と基板2との間において半導体素子1と基板2とを接合している。接合部材J1および接続部材J2は、例えば、はんだである。接合部材J1および接続部材J2は、例えば、銀(Ag)ペーストおよびニッケル(Ni)ペースト等の導電性接着剤であってもよい。
【0031】
接合部材J1および接続部材J2は、加熱されることで溶融するように構成されている。接合部材J1は、基板2と熱拡散板3とを接合するように構成されている。接続部材J2は、半導体素子1と基板2とを接合するように構成されている。フラックスは、接合部材J1が溶融することで蒸発する。フラックスは、接続部材J2が溶融することで蒸発する。
【0032】
放熱部材5は、基板2とで熱拡散板3を挟み込んでいる。放熱部材5は、例えば、銅(Cu)等の金属板である。冷却体6は、熱拡散板3とで放熱部材5を挟み込んでいる。冷却体6は、例えば、半導体装置100の筐体であってもよい。冷却体6は、ヒートパイプまたは放熱フィン等であってもよい。
【0033】
図4では、半導体素子1の外形が破線によって示されている。
図4に示されるように、Z軸方向DR3から見て、半導体素子1の幅は、溝4の幅よりも大きい。Z軸方向DR3において、半導体素子1は、溝4に重なっている。溝4の上面視における面積は、積層領域10の面積の50%以下であることが望ましい。
【0034】
次に、
図5および
図5Aを用いて、実施の形態1に係る半導体装置100を含む電力変換装置200の構成を説明する。
【0035】
電力変換装置200は、インバータ回路210と、トランス回路220と、整流回路230と、平滑回路240と、制御回路250とを含んでいる。本実施の形態に係る半導体装置100(
図1参照)は、例えば、インバータ回路210および整流回路230に適用されている。このため、電力変換装置200は、半導体装置100(
図1参照)を含んでいる。半導体装置100は電力変換装置200の一部である。
図5Aは、電力変換装置200の構成を概略的に示す斜視図である。
図5Aにおいて破線で囲まれた部分Iは、
図1の部分である。
【0036】
インバータ回路210は、半導体素子1である第1スイッチング素子211と、第2スイッチング素子212と、第3スイッチング素子213と、第4スイッチング素子214とを含んでいる。直列に接続された第1スイッチング素子211および3スイッチング素子は、直列に接続された第2スイッチング素子212および第4スイッチング素子214と並列に接続されている。第1スイッチング素子211、第2スイッチング素子212、第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の各々は、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor field effect Transistor)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。第1スイッチング素子211、第2スイッチング素子212、第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の各々の材料は、例えば、珪素(Si)、炭化珪素(SiC)または窒化ガリウム(GaN)である。
【0037】
トランス回路220は、第1コイル装置221を含んでいる。第1コイル装置221は、トランスとして構成されている。第1コイル装置221は、第1コイル2221と、第2コイル2222とを含んでいる。第1コイル2221は、インバータ回路210と接続されている1次側コイル導体である。すなわち、第1コイル2221は、高電圧側巻線である。第2コイル2222は、整流回路230と接続されている2次側コイル導体である。すなわち、第2コイル2222は、低電圧側巻線である。
【0038】
整流回路230は、第1ダイオード231と、第2ダイオード232と、第3ダイオード233と、第4ダイオード234とを含んでいる。直列に接続された第1ダイオード231および第3ダイオード233は、直列に接続された第2ダイオード232および第4ダイオード234と並列に接続されている。第1ダイオード231、第2ダイオード232、第3ダイオード233および第4ダイオード234の各々の材料は、例えば、珪素(Si)、炭化珪素(SiC)または窒化ガリウム(GaN)である。
【0039】
平滑回路240は、第2コイル装置241と、第1コンデンサ242とを含んでいる。第2コイル装置241は、平滑コイルとして構成されている。
【0040】
制御回路250は、インバータ回路210を制御するための制御信号をインバータ回路210に出力するように構成されている。インバータ回路210は、入力された電圧を変換して出力するように構成されている。
【0041】
電力変換装置200は、第3コイル装置260と、第4コイル装置270と、第2コンデンサ280とをさらに含んでいる。第3コイル装置260および第2コンデンサ280は、インバータ回路210の前段に配置されている。第3コイル装置260は、平滑コイルとして構成されている。第4コイル装置270は、インバータ回路210とトランス回路220との間に配置されている。より具体的には、第4コイル装置270は、第1スイッチング素子211および第3スイッチング素子213と第1コイルとの間に配置されている。
【0042】
電力変換装置200には、例えば、100V以上600V以下の直流電圧が入力されるように構成されている。電力変換装置200は、例えば、12V以上600V以下の直流電圧を出力するように構成されている。具体的には、電力変換装置200の入力端子291に入力された直流電圧は、インバータ回路210によって第1の交流電圧に変換される。トランス回路220は、第1の交流電圧を第1の交流電圧よりも低い電圧値を有する第2の交流電圧に変換するように構成されている。整流回路230は、第2の交流電圧を整流するように構成されている。平滑回路240は、整流回路230から出力された電圧を平滑するように構成されている。電力変換装置200は、平滑回路240から出力された直流電圧を出力端子292から出力するように構成されている。入力された直流電圧Viの電圧値は、出力された直流電圧Voの電圧値よりも大きくてもよい。
【0043】
次に、
図3、
図6および
図7を用いて、実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法を説明する。
【0044】
半導体装置100の製造方法は、準備される工程と、接合される工程とを含んでいる。準備される工程では、
図3に示されるように、半導体素子1と、基板2と、熱拡散板3と、接合部材J1とが準備される。本実施の形態において、準備される工程では、放熱部材5と、冷却体6と、接続部材J2とがさらに準備される。
【0045】
図6および
図7に示されるように、接合される工程では、基板2と熱拡散板3の被接合面31とに挟み込まれた状態の接合部材J1が加熱されることで、溶融した接合部材J1によって基板2と熱拡散板3の被接合面31とが接合される。基板2と熱拡散板3の被接合面31とに挟み込まれた状態の接合部材J1は、熱拡散板3の溝4の底部から間隔を空けて配置されている。また、接合される工程では、基板2に対して熱拡散板3とは反対側において半導体素子1(
図3参照)が基板2に接合される。具体的には、半導体素子1(
図3参照)と基板2とに挟み込まれた状態の接続部材J2(
図3参照)が加熱されることで、溶融した接続部材J2(
図3参照)によって基板2と半導体素子1(
図3参照)とが接合される。
【0046】
図7に示されるように、より詳細には、接合される工程において、基板2の第2面22の図示されない配線パターン上にペースト状の接合部材J1が塗布される。なお、基板2の第2面22が重力方向に沿って上側に配置される。塗布されたペースト状の接合部材J1を基板2とで挟み込むように熱拡散板3が配置される。続いて、基板2、熱拡散板3および接合部材J1がリフロー炉RF(
図6参照)に投入されることで加熱される。これにより、溶融した接合部材J1によって基板2および熱拡散板3が接合される。なお、溶融した接合部材J1からフラックスが蒸発する。溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスは、熱拡散板3の溝4およびビアホールVHを通って半導体装置100の外部に排出される。
図7では、フラックスが半導体装置100から排出される向きは、白抜き矢印によって図示されている。
【0047】
図3に示されるように、続いて、熱拡散板3が接合された基板2が裏返される。これにより、基板2の第1面21が重力方向に沿って上側に配置される。基板2の第1面21にペースト状の接続部材J2が塗布される。塗布されたペースト状の接続部材J2上に半導体素子1が配置される。続いて、半導体素子1、基板2、熱拡散板3、接合部材J1および接続部材J2がリフロー炉RF(
図6参照)によって加熱される。これにより、溶融した接続部材J2によって半導体素子1および半導体素子1が接合される。なお、溶融した接続部材J2からはフラックスが蒸発する。続いて、放熱部材5が熱拡散板3に接合される。また、冷却体6が放熱部材5に接合される。
【0048】
なお、基板2と熱拡散板3との接合後においては、溝4の内部の一部に接合部材J1が入り込んでいてもよいし、溝4の内部に接合部材J1が入り込んでいなくてもよい。
【0049】
次に、
図8および
図9を用いて、実施の形態1の変形例に係る半導体装置100の構成を説明する。
【0050】
図8および
図9に示されるように、実施の形態1の変形例に係る半導体装置100の熱拡散板3の溝4の第1端E1および第2端E2は、熱拡散板3の端部よりも内側に配置されている。言い換えると、溝4の第1端E1および第2端E2は、熱拡散板3の端部に配置されてない。接合部材J1は、溝4の第1端E1および第2端E2よりも内側に配置されている。このため、接合部材J1は、熱拡散板3の端部に達していない。
【0051】
続いて、本実施の形態の作用効果を比較例に係る半導体装置と比較しながら説明する。なお、比較例に係る半導体装置は、特に言及しない限り本実施の形態に係る半導体装置100と同様の構成を有している。
【0052】
比較例に係る半導体装置では、被接合面31に溝4が設けられていない。このため、接合部材J1の溶融時において、熱拡散板3は、接合部材J1に密着している。よって、溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスは、接合部材J1の内部に留まる。これにより、接合部材J1の溶融後において、接合部材J1の内部にボイドが生じる。仮に接合部材J1の内部にボイドが留まった場合、ボイドによって接合部材J1の熱抵抗が増加する。このため、半導体素子1の放熱性がボイドによって低下する。
【0053】
これに対して、本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図1に示されるように、熱拡散板3の溝4は、接合部材J1から露出した部分を含んでいる。このため、基板2と熱拡散板3との接合時において溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスは、熱拡散板3の溝4を通って半導体装置100の外部に排出される。よって、接合部材J1の内部にボイドが生じることを抑制することができる。したがって、接合部材J1中のボイドを低減することができる。
【0054】
接合部材J1中のボイドを低減することができるため、ボイドによって接合部材J1の熱抵抗が増加することを抑制することができる。このため、半導体素子1の放熱性がボイドによって低下することを抑制することができる。
【0055】
より詳細には、半導体素子1から生じた熱は、主にZ軸方向DR3に沿って、接続部材J2、基板2、接合部材J1および熱拡散板3の順に伝導する。このため、半導体素子1から生じた熱は、接合部材J1の厚さ方向(Z軸方向DR3)に沿って伝導する。接合部材J1中のボイドを低減することができるため、接合部材J1の厚さ方向に沿った熱抵抗がボイドによって低下することを抑制することができる。よって、半導体素子1から生じた熱が接合部材J1の厚さ方向(Z軸方向DR3)に沿って容易に伝導する。したがって、半導体素子1から生じた熱は、容易に放散される。
【0056】
図1に示されるように、基板2と熱拡散板3とが接合部材J1を挟み込む方向(Z軸方向DR3)から見て、熱拡散板3は、半導体素子1よりも大きい。挟み込む方向(Z軸方向DR3)において、半導体素子1は、熱拡散板3に重なっている。このため、半導体素子1から生じた熱は、半導体素子1に重ねられた熱拡散板3を通って放散される。よって、半導体素子1の放熱性がさらに向上する。
【0057】
図3に示されるように、溝4の第1端E1および第2端E2の各々は、接合部材J1から露出している。このため、溝4の第1端E1および第2端E2の一方が接合部材J1から露出しかつ他方が接合部材J1から露出していない場合よりも、フラックスは溝4を通って半導体装置100の外部に容易に排出される。よって、接合部材J1中のボイドをさらに低減することができる。
【0058】
図3に示されるように、溝4の第1端E1は、熱拡散板3の端部に設けられている。このため、溝4の第1端E1は、熱拡散板3の端部から半導体装置100の外部に露出している。よって、溝4の第1端E1が半導体装置100の端部に露出していない場合よりも、溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスが第1端E1を通って半導体装置100の外部に排出されやすい。よって、接合部材J1中のボイドをさらに低減することができる。
【0059】
実施の形態2.
次に、
図10~
図13を用いて、実施の形態2に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0060】
図10に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3の溝4は、第1溝部41と、第2溝部42とを含んでいる。第1溝部41および第2溝部42の各々は、接合部材J1から露出した部分を含んでいる。本実施の形態において、
図10および
図11に示されるように、第1溝部41の第1端E11(E1)および第2端E12(E2)の各々は、接合部材J1から露出している。また、第2溝部42の第1端E21(E1)および第2端E22(E2)の各々は、接合部材J1から露出している。
【0061】
図11に示されるように、第1溝部41および第2溝部42は、互いに間隔を空けて配置されている。言い換えると、第1溝部41および第2溝部42は、互いに交差していない。第1溝部41および第2溝部42は、互いに平行に配置されていてもよい。第1溝部41および第2溝部42の各々は、X軸方向DR1に沿って延在していてもよい。
図12に示されるように、第1溝部41および第2溝部42は、Y軸方向DR2に沿って延在していてもよい。
図13に示されるように、第1溝部41および第2溝部42は、X軸方向DR1およびY軸方向DR2の各々に対して斜めに延在していてもよい。
【0062】
なお、図示されないが、溝部の数は、2つに限られない。また、第1溝部41の第1端E11(E1)および第2端E12(E2)ならびに第2溝部42の第1端E21(E1)および第2端E22(E2)の各々が接合部材J1から露出しているが、接合部材J1から露出した部分はこれに限られない。例えば、第1溝部41の第1端E11(E1)および第2溝部42の第1端E21(E1)が露出しかつ第1溝部41の第2端E12(E2)および第2溝部42の第2端E22(E2)が露出していなくてもよい。
【0063】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図10に示されるように、第1溝部41および第2溝部42の各々は、接合部材J1から露出した部分を含んでいる。このため、溝4が1つの溝部からなる場合(
図1参照)よりも、接合部材J1と溝4とが向かい合う面積を大きくすることができる。よって、溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスがさらに溝4を通って半導体装置100の外部に排出される。したがって、接合部材J1中のボイドをさらに低減することができる。
【0064】
図11に示されるように、第1溝部41および第2溝部42は、互いに間隔を空けて配置されている。このため、第1溝部41および第2溝部42が互いに交差している場合よりも、熱拡散板3は簡易な形状を有している。よって、熱拡散板3を容易に製造することができるため、半導体装置100の製造コストを低減できる。
【0065】
実施の形態3.
次に、
図14および
図15を用いて、実施の形態3に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態2と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態2と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0066】
図14および
図15に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3の第1溝部41および第2溝部42は、互いに交差している。第1溝部41および第2溝部42は、例えば、十字状に配置されている。本実施の形態において、第1溝部41は、X軸方向DR1に沿って延伸している。第2溝部42は、Y軸方向DR2に沿って延伸している。望ましくは、半導体素子1が熱拡散板3に重ねられた方向(Z軸方向DR3)から見て、第1溝部41および第2溝部42の交差部は、半導体素子1に重なっている。さらに望ましくは、半導体素子1が熱拡散板3に重ねられた方向(Z軸方向DR3)から見て、第1溝部41および第2溝部42の交差部は、半導体素子1の中心に重なっている。
【0067】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図15に示されるように、第1溝部41および第2溝部42は、互いに交差している。このため、第1溝部41および第2溝部42の接合部材J1から露出した部分は、互いに異なる方向に沿って接合部材J1(
図14参照)から露出している。よって、接合部材J1(
図14参照)から蒸発したフラックスを第1溝部41および第2溝部42が互いに露出している方向に沿って半導体装置100の外部に排出することができる。すなわち、接合部材J1(
図14参照)から蒸発したフラックスを複数の方向(例えば、X軸方向DR1およびY軸方向DR2)に沿って半導体装置100の外部に排出させることができる。これにより、第1溝部41および第2溝部42が平行に配置されている場合よりも、溝4の接合部材J1から露出した部分の先(半導体装置100の外部)にフラックスが滞留することを抑制することができる。
【0068】
実施の形態4.
次に、
図16および
図17を用いて、実施の形態4に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0069】
図16に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100(
図1参照)の熱拡散板3の被接合面31は、積層領域10を含んでいる。積層領域10には、半導体素子1が重ねられている。積層領域10には、Z軸方向DR3に沿って半導体素子1が重ねられている。
【0070】
溝4の第1端E1は、接合部材J1(
図1参照)から露出している。溝4の第2端E2は、被接合面31の積層領域10の中心C1と第1端E1との間に配置されている。言い換えると、被接合面31の積層領域10の中心C1には、溝4が設けられていない。被接合面31の積層領域10の中心C1は、接合部材J1(
図1参照)によって基板2(
図1参照)に接合されている。
【0071】
図16では、溝4は、第1溝部41、第2溝部42、第3溝部43および第4溝部44を含んでいる。第1溝部41と第2溝部42とは、互いに直交するように設けられている。第3溝部43と第4溝部44とは、互いに直交するように設けられている。第1溝部41と第3溝部43とは、X軸方向DR1に沿って間を空けて並べられている。第2溝部42と第4溝部44とは、Y軸方向DR2に沿って間を空けて並べられている。第1溝部41~第4溝部44の各々の第1端E11(E1)~E41(E1)は、接合部材J1(
図1参照)から露出している。第1溝部41~第4溝部44の第2端E12(E2)~E42(E2)の各々は、被接合面31の積層領域10の中心C1と第1端E11(E1)~E41(E1)との間にそれぞれ配置されている。
【0072】
図17では、溝4は、第1溝部41~第8溝部48を含んでいる。第1溝部41~第8溝部48は、放射状に配置されている。第1溝部41~第8溝部48の各々の第1端E11(E1)~E81(E1)は、接合部材J1(
図1参照)から露出している。第1溝部41~第8溝部48の第2端E12(E2)~E82(E2)の各々は、被接合面31の積層領域10の中心C1と第1端E11(E1)~E81(E1)との間にそれぞれ配置されている。
【0073】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図16に示されるように、被接合面31の積層領域10の中心C1は、接合部材J1(
図1参照)によって基板2(
図1参照)に接合されている。このため、被接合面31の積層領域10の中心C1には、溝4が設けられていない。溝4の内部には空気層が形成されているため、仮に被接合面31の積層領域10の中心C1に溝4が設けられていた場合、半導体素子1の放熱性が空気層によって低下する。本実施の形態では、被接合面31の積層領域10の中心C1に溝4が設けられていないため、半導体素子1の放熱性が溝4の空気層によって低下することを抑制することができる。言い換えると、熱拡散板3の熱抵抗が溝4の空気層によって増加することを抑制することができる。
【0074】
実施の形態5.
次に、
図18および
図19を用いて、実施の形態5に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0075】
図18および
図19に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3の溝4は、対向面32から被接合面31に向かって小さくなるように構成された幅を有している。
図19に示されるように、溝4は、底部45と、第1側面46と、第2側面47とを含んでいる。底部45は、接合部材J1と向かい合っている。第1側面46および第2側面47の各々は、被接合面31と底部45とを接続している。第1側面46と第2側面47との間隔は、対向面32から被接合面31に向かって小さくなるように構成されている。
【0076】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図18に示されるように、溝4は、対向面32から被接合面31に向かって小さくなるように構成された幅を有している。このため、基板2と熱拡散板3とがリフロー炉RF(
図6参照)によって接合される際に、溶融した接合部材J1が溝4の中に入り込むことを抑制することができる。言い換えると、溶融した接合部材J1によって溝4が塞がることを抑制することができる。仮に溝4が溶融した接合部材J1によって塞がった場合、フラックスが溝4を通って半導体装置100の外部に排出されることが妨げられる。本実施の形態では、接合部材J1によって溝4が塞がることを抑制することができるため、フラックスが溝4を通って半導体装置100の外部に排出されることが妨げられることを抑制することができる。
【0077】
実施の形態6.
次に、
図20~
図22を用いて、実施の形態6に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態6は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0078】
図20に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3には、貫通孔THが設けられている。貫通孔THは、接合部材J1が被接合面31に重ねられた方向(Z軸方向DR3)に沿って熱拡散板3を貫通している。拡散板3には、重ねられた方向(DR3)に沿って接合部材J1に重なるように貫通孔THが設けられている。貫通孔THは、被接合面31および凹部の少なくともいずれかに設けられている。
【0079】
貫通孔THの直径は、ビアホールVHの直径よりも小さい。貫通孔THの直径は、リフロー炉RF(
図6参照)によって溶融した接合部材J1が入り込まない直径であれば、適宜に決められてもよい。
【0080】
図21に示されるように、貫通孔THは、複数の第1貫通部T1と、複数の第2貫通部T2とを含んでいてもよい。複数の第1貫通部T1および複数の第2貫通部T2の各々は、接合部材J1が被接合面31に重ねられた方向(Z軸方向DR3)に沿って熱拡散板3を貫通している。複数の第1貫通部T1は、溝4に連通している。複数の第2貫通部T2は、被接合面31に連通している。
【0081】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図20に示されるように、貫通孔THは、接合部材J1が被接合面31に重ねられた方向(Z軸方向DR3)に沿って熱拡散板3を貫通している。このため、リフロー炉RF(
図6参照)によって基板2と熱拡散板3とが接合される際に、
図22に示されるように、溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスは、溝4に加えて、貫通孔THも通って半導体装置100の外部に排出される。これにより、リフロー炉RF(
図6参照)によって基板2と熱拡散板3とが接合される際に、溶融した接合部材J1から蒸発したフラックスが半導体装置100の外部にさらに排出される。よって、接合部材J1中のボイドをさらに低減することができる。
【0082】
実施の形態7.
次に、
図23および
図24を用いて、実施の形態7に係る半導体装置100の構成を説明する。実施の形態7は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、製造方法および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0083】
図23および
図24に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3の溝4は、対向面32から被接合面31に向かって大きくなるように構成された幅を有している。
図24に示されるように、溝4は、底部45と、第1側面46と、第2側面47とを含んでいる。底部45は、接合部材J1と向かい合っている。第1側面46および第2側面47の各々は、被接合面31と底部45とを接続している。第1側面46と第2側面47との間隔は、被接合面31から対向面32に向かって小さくなるように構成されている。
【0084】
次に溝4を製造するための加工方法について説明する。
溝4の加工方法には、特に制限はなく、実施の形態1~7のどの形状においても、プレス打ち抜き加工、エッチング加工、ワイヤー放電加工(ワイヤーカット)、レーザー加工等の加工方法で製造できる。
【0085】
また、溝4は、
図25のように台形の形状、または、
図26のように半円状の形状でも、
図24と同様の効果を得ることができる。
【0086】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る半導体装置100によれば、
図23~
図26に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置100の熱拡散板3の溝4は、対向面32から被接合面31に向かって大きくなるように構成された幅を有している。このため、基板2と熱拡散板3とがリフロー炉RF(
図6参照)によって接合される際に、溶融した接合部材J1が溝4の中に入りやすくすることができる。言い換えると、溶融した接合部材J1によって溝4が塞がり、溝4が全て接合部材J1で埋められる。仮にフラックスが溝4を通って半導体装置100の外部に排出された後、溝4が溶融した接合部材J1によって塞がった場合、空気層であった溝4は接合部材J1で埋められ、溝4の熱抵抗を低減することができる。よって半導体装置100の放熱性を向上することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体素子、2 基板、3 熱拡散板、4 溝、10 接合領域、31 被接合面、32 対向面、41 第1溝部、42 第2溝部、100 半導体装置、200 電力変換装置、C1 中心、E1 第1端、E2 第2端、J1 接合部材、TH 貫通孔。