(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電力変換システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240906BHJP
H02M 7/49 20070101ALI20240906BHJP
H04L 67/12 20220101ALI20240906BHJP
H04L 41/0677 20220101ALI20240906BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/49
H04L67/12
H04L41/0677
(21)【出願番号】P 2023509646
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2022031887
(87)【国際公開番号】W WO2024042639
(87)【国際公開日】2024-02-29
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】清水 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】新村 直人
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220495(JP,A)
【文献】特開2015-198458(JP,A)
【文献】特開2006-33475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H04L 12/28
H04L 12/42-12/46
H04L 41/00-43/55
H04L 67/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置を夫々含む複数の子局を制御する親局と前記複数の子局とを繋ぐデイジーチェーン通信路を備える電力変換システムであって、
前記複数の子局に係る各子局内の電力変換装置
に共通する負荷装置
になる電動機があり、前記各子局の属する特定の相ごとに前記各子局内の電力変換装置の出力側が直列接続されていて、前記各子局内の電力変換装置が前記電動機
の特定の相に電力を供給するように構成されている複数の子局であって、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替えて前記負荷装置に電力を夫々供給する複数の子局
を備え、
前記デイジーチェーン通信路は、
前記複数の子局のなかの隣接する子局同士が数珠つなぎに接続され、前記数珠つなぎの両端の子局が夫々親局に接続されることでループ状の通信路として構成されていて、前記複数の子局に係る各子局の電力変換装置を制御するための制御信号αと前記各子局の電力変換装置から電力を供給させる運転の運転許可信号βとのうちの前記制御信号αを送るための第1通信路と、前記運転許可信号βを送るための第2通信路との組を成し、
前記各子局は、
通信障害を検知すると、前記通信障害を検知した当該子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、さらに、前記制御信号αと前記運転許可信号βとを用いて前記複数の子局の中の他の子局を制御して、前記他の子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、
その後、前記複数の子局の中の一部又は全部の子局は、各電力変換装置からの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所を識別可能に規定されている故障個所に関する情報を、前記制御信号αを用いて前記親局に通知する
電力変換システム。
【請求項2】
前記複数の子局を制御する
ための前記制御信号
αを送り、前記親局と子局間及び各子局間の通信を利用して前記制御信号
αを転送させる親局を含み、
前記第1通信路と前記第2通信路は、互いに独立に利用可能である、
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記第1通信路と前記第2通信路は、
前記親局と子局間及び前記各子局間にそれぞれ設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記各子局は、
運転に支障がある異常を検出すると、又は「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、「停止」を示す運転許可信号βを次段に向けて出力する、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記親局を備え、
前記親局は、
前記運転許可信号βとして、前記各子局の中の第1子局に対して、「運転」又は「停止」を示す第1運転許可信号βを送出するための運転許可信号β送出ポートと、
前記第1子局よりも前記運転許可信号βの転送方向の下流に位置する前記各子局の中の第2子局から第2運転許可信号βを受信するための運転許可信号β受信ポートと、
を備えていて、
前記親局は、
「停止」を示す前記第2運転許可信号βを受信して、「停止」を示す前記第2運転許可信号βの受信に応じて「停止」を示す前記第1運転許可信号βを送信する、
請求項1又は請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記親局は、
さらに、前記第2子局に対して、前記制御信号αを送信するための制御信号α送出ポート
を備えていて、
前記制御信号αを用いて前記各子局の稼働状態を制御する
請求項5に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記親局は、
「停止」を示す前記第2運転許可信号βを受信すると、前記受信に応じて「停止」を示す前記第1運転許可信号βを前記運転許可信号β送出ポートから送信して、前記送信してからの所定期間内に前記第1運転許可信号βの「停止」を示す状態を維持して、
前記所定期間内に定められた検出用期間に、前記第1子局から受信した前記制御信号αに含まれた前記制御信号αの中継回数を予め定められた変換規則を用いて故障個所を識別する
請求項5に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記各子局は、
前記所定期間内に定められた検出用期間に、前記制御信号αの中継回数を含む前記制御信号αを夫々送信する、
請求項7に記載の電力変換システム。
【請求項9】
前記複数の子局に係る各子局内の電力変換装置に共通する負荷装置になる電動機があり、前記各子局の属する特定の相ごとに前記各子局内の電力変換装置の出力側が直列接続されていて、前記各子局内の電力変換装置が前記電動機の特定の相に電力を供給するように構成されていて、
親局と子局間及び各子局間の通信を利用して各子局内の電力変換装置を制御することで、各子局内の電力変換装置にそれぞれ接続される負荷装置に電力を供給し、前記供給にあたり、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替える電力変換システムの制御方法であって、
前記電力変換システムは、
前記親局から電力変換装置の制御を受ける複数の子局と、
前記親局と前記複数の子局を繋ぐデイジーチェーン通信路と、
を備え、
前記デイジーチェーン通信路は、
前記複数の子局のなかの隣接する子局同士が数珠つなぎに接続され、前記数珠つなぎの両端の子局が夫々親局に接続されることでループ状の通信路として構成されていて、
前記複数の子局に係る各子局の電力変換装置を制御するための制御信号αと前記各子局の電力変換装置から電力を供給させる運転の運転許可信号βとのうちの前記制御信号αを送るための第1通信路と、前記運転許可信号βを送るための第2通信路との組を成し、
前記各子局は、
通信障害を検知すると、前記通信障害を検知した当該子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、さらに、前記制御信号αと前記運転許可信号βとを用いて前記複数の子局の中の他の子局を制御して、前記他の子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、
その後、前記複数の子局は、各電力変換装置からの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所に関する情報を、前記制御信号αを用いて前記親局に通知する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルユニットに夫々インバータを備えるマルチセル型の電力変換システム(インバータ装置)がある。このような電力変換システムの各セルユニットのインバータには、その制御のための制御信号(単に、制御信号αと呼ぶ。)と、各セルユニットのインバータの運転が許可されている状態を示す運転許可信号(単に、運転許可信号βと呼ぶ。)とが、上位の制御装置(親局)からの通信によって供給されているものがある。
【0003】
電力変換システム内の一部又は全部のセルユニットを共通する通信系統に統合して、それぞれをデイジーチェーン接続することがある。一般に、デイジーチェーン接続された複数の装置を含むシステムは、障害発生個所から下流側に情報の伝達が困難になることがある。このような電力変換システムには、障害発生時に安全に停止することと、その障害箇所の特定が容易であることの双方が要求されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数の電力変換装置をデイジーチェーン接続にした通信系統の中で通信異常が生じた箇所を識別可能な電力変換システム及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力変換システムは、デイジーチェーン通信路と、複数の子局とを備える。前記デイジーチェーン通信路は、電力変換装置を夫々含む複数の子局を制御する親局と前記複数の子局とを繋ぐ。前記複数の子局に係る各子局内の電力変換装置に共通する負荷装置になる電動機があり、前記各子局の属する特定の相ごとに前記各子局内の電力変換装置の出力側が直列接続されていて、前記各子局内の電力変換装置が前記電動機の特定の相に電力を供給するように構成されている複数の子局であって、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替えて前記負荷装置に電力を夫々供給する。前記デイジーチェーン通信路は、前記複数の子局のなかの隣接する子局同士が数珠つなぎに接続され、前記数珠つなぎの両端の子局が夫々親局に接続されることでループ状の通信路として構成されていて、前記複数の子局に係る各子局の電力変換装置を制御するための制御信号αと前記各子局の電力変換装置から電力を供給させる運転の運転許可信号βとのうちの前記制御信号αを送るための第1通信路と、前記運転許可信号βを送るための第2通信路との組を成す。前記各子局は、通信障害を検知すると、前記通信障害を検知した当該子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、さらに、前記制御信号αと前記運転許可信号βとを用いて前記複数の子局の中の他の子局を制御して、前記他の子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、その後、前記複数の子局の中の一部又は全部の子局は、各電力変換装置からの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所を識別可能に規定されている故障個所に関する情報を、前記制御信号αを用いて前記親局に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の電力変換システムの一例を示す図。
【
図2B】実施形態のカスケード接続された複数のセルユニットの構成図。
【
図2C】実施形態のセルユニット内のセルユニット制御部の構成図。
【
図3】実施形態の電力変換システムの制御系の構成例を説明するための図。
【
図4A】制御信号αの経路のみが断線した場合について説明するための図。
【
図4B】制御信号αの経路のみが断線した場合について説明するための図。
【
図5A】運転許可信号βの経路のみが断線した場合について説明するための図。
【
図5B】運転許可信号βの経路のみが断線した場合について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電力変換システム及び制御方法を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。なお以下で参照する図面は、説明の便宜上、制御用のゲート配線などの図示が省略されている場合がある。
【0009】
実施形態の電力変換システムは、マルチセル型の電力変換システムを形成する。マルチセル型の電力変換システムは複数のセルユニットを備える。ここで、複数のセルユニット内の「正極P」と「負極N」について先に定義する。「正極P」とは、電力変換システム1が動作している場合に、セルユニット内で正電位となる部位を意味する。「負極N」とは、電力変換システム1が動作している場合に、セルユニット内で負電位となる部位を意味する。
【0010】
図1から
図5Bを参照して、実施形態の電力変換システム1について説明する。
図1は、実施形態の電力変換システム1の一例を示す図である。
図1では、電気回路系統を単線で示すとともに、開閉器などの図示を省略している。
電力変換システム1の電源側は、例えば遮断器を介して交流電源2に接続されている。電力変換システム1は、交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を所望の周波数・電圧の交流電力に変換して電動機3に供給する。電動機3は、例えば、3相型の誘導電動機であるが、これに限定されない。
【0011】
本実施形態では、電力変換システム1が複数のセルユニット6sを備える例について説明する。電力変換システム1は、例えば、入力変圧器5と、複数のセルユニット6sと、制御装置7と、電流センサAMとを備えている。
【0012】
入力変圧器5には、交流電源2から交流電力が供給される。入力変圧器5は、交流電源2から供給された交流電力の電圧(1次側電圧)を所望の2次側電圧に変圧するとともに、2次側電圧の交流電力を複数のセルユニット6sのそれぞれに供給する。入力変圧器5は、1次巻線と、互いに絶縁された複数群の巻き線(2次巻線)とを有する。1次巻線と2次巻線との間も絶縁されている。
【0013】
複数のセルユニット6sは、例えば、3台の負荷第1相のセルユニット6A1、6A2、6A3(図中の記載はU1、U2、U3。)、3台の負荷第2相のセルユニット6B1、6B1(図中の記載はV1、V2、V3。)、6B3及び3台の負荷第3相のセルユニット6C1、6C2、6C3(図中の記載はW1、W2、W3。)を含む。セルユニット6A1、6A2、6A3、6B1、6B1、6B3、6C1、6C2、6C3は、同一の回路構成を有し、これらを区別することなく説明する場合には、単にセルユニット6と呼ぶ。例えば、複数のセルユニット6sは、複数の子局の一例であり、セルユニット6は、子局の一例である。各セルユニット6は、入力変圧器5の2次巻線から供給されたそれぞれ3相の交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を所望の周波数・電圧の交流電力に変換して出力する。
【0014】
例えば、入力変圧器5の2次側第1群はセルユニット6A1の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第2群はセルユニットV1の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第3群はセルユニットW1の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第4群はセルユニット6A2の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第5群はセルユニット6B2の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第6群はセルユニット6C2の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第7群はセルユニット6A3の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第8群はセルユニット6B3の入力に接続されている。入力変圧器5の2次側第9群はセルユニット6C3の入力に接続されている。
【0015】
本実施形態では、セルユニット6A1、6A2、6A3は、表記の順番で、出力が互いに電気的に直列に接続されている。セルユニット6A3のセルユニット6A2と接続されない出力端子は、電動機3の第1相(U相)に接続されている。セルユニット6A1のセルユニット6A2と接続されない出力端子は中性点に接続される。本実施形態では、セルユニット6B1、6B2、6B3は、表記の順番で、出力が互いに電気的に直列に接続されている。セルユニット6B3のセルユニット6B2と接続されない出力端子は、電動機3の第2相(V相)に接続されている。セルユニット6B1のセルユニット6B2と接続されない出力端子は中性点に接続される。本実施形態では、セルユニット6C1、6B2、6B3は、表記の順番で、出力が互いに電気的に直列に接続されている。セルユニット6C3のセルユニット6C2と接続されない出力端子は、電動機3の第3相(W相)に接続されている。セルユニット6C1のセルユニット6C2と接続されない出力端子は中性点に接続される。これにより、電力変換システム1は、大容量の交流電力を電動機3に供給可能である。
【0016】
電流センサAM1と電流センサAM2は、電流センサAMの一例であり、電力変換システム1のインバータ13(
図2)と電動機3の間に流れる負荷電流(相電流)を検出する。なお、負荷電流の推定値を生成する構成を備えるシステムであれば、電流センサAMを省略してもよい。
【0017】
制御装置7は、各セルユニット6を制御する、又は保護する。制御装置7は、例えば、記憶部71と、稼働制御部72と、制御状態推定部73と、制動制御部74と、を備える。
【0018】
記憶部71は、複数のセルユニット6sの制御に関わる各種データを格納する。各種データには、例えば、デイジーチェーン接続されているセルユニット6の段数、制御信号α、制御許可信号βの受信値、送信値などが含まれる。
【0019】
稼働制御部72は、記憶部71に格納されているデータに基づき、各セルユニット6に含まれるスイッチング素子13S(
図2)を制御するための制御信号αを生成する。稼働制御部72は、生成した制御信号αを各セルユニット6に送ることで、各セルユニット6を制御する。稼働制御部72は、電動機3の制御状態を示す信号(例えば、回転数のフィードバック信号)を取得し、当該フィードバック信号に基づいて、各セルユニット6を制御してもよい。また、制御装置7は、他の装置から電動機3の制御指令信号を取得し、当該制御指令信号に基づいて、各セルユニット6を制御する。
【0020】
制御状態推定部73は、制御信号αの受信状態と、受信した制御信号αに含まれる情報と、受信した制御許可信号βが示す情報などに基づいて、電力変換システム1の稼働状態を推定する。これの詳細について後述する。
【0021】
制動制御部74は、電力変換システム1の稼働状態の推定結果に基づいて、各セルユニット6を制御して、制御状態に基づいて電動機3を制動させるように各部を制御する。例えば、制動制御部74は、各セルユニット6に対する制御信号が、無事に各セルユニット6に到達し得る状態にない場合に、各セルユニット6の稼働を制限することで電動機3を制動する。制動制御部74は、この制御のために、後述する制御信号αと運転許可信号βの状態を検出して、これに基づいて状態を推定し、後述する運転許可信号βを、各セルユニット6に送り、これを実現する。
【0022】
次に、セルユニット6について説明する。
図2Aは、実施形態のセルユニット6の構成図である。
図2Bは、実施形態のカスケード接続された複数のセルユニット6sの構成図である。
図2Cは、実施形態のセルユニット6内のセルユニット制御部6CUCの構成図である。
【0023】
セルユニット6は、例えば、単相セルインバータ6IVと、セルユニット制御部6CUCとを備える。
【0024】
単相セルインバータ6IVは、例えば単相交流出力型の逆変換器である。単相セルインバータ6IVは、例えばダイオードコンバータ12と、インバータ13と、平滑コンデンサ14と、抵抗15、16とを含む。ダイオードコンバータ12の直流出力とインバータ13の直流入力は、直流リンクを介して、互いに正極(P)同士、及び負極(N)極同士が電気的に接続される。平滑コンデンサ14は、直流リンクに設けられていて、平滑コンデンサ14の端子が直流リンクの正極と負極に電気的に接続されている。
【0025】
以下の説明では、セルユニット6A1を例示して、外部との接続関係を示しながらその一例について説明する。他のセルユニット6についても同様である。
【0026】
ダイオードコンバータ12は、3相交流入力型の順変換器であり、その入力部が入力変圧器5の2次側の一つの群に電気的に接続されている。ダイオードコンバータ12は、交流を整流することで、入力変圧器5から入力された交流電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ14は、変換後の直流電圧を平滑化する。
【0027】
インバータ13は、単相交流出力型の逆変換器である。インバータ13は、例えば、直流側の直流電力を交流電力に変換するスイッチング素子13Sとスイッチング素子13Sに逆並列に接続される逆接続ダイオード13Dとを備える。スイッチング素子13Sは、半導体スイッチング素子の一例である。インバータ13は、直流側がダイオードコンバータ12の直流出力に接続され、交流側が電動機3又は他のセルユニット6の出力と直列になるように接続されている。インバータ13は、例えば、変換後の交流電力を電動機3の第1相に出力する。
【0028】
なお、平滑コンデンサ14に蓄積された電荷を放電させるための図示されない抵抗が設けられていてもよい。
【0029】
セルユニット制御部6CUCは、制御装置7からの制御に基づいて、ダイオードコンバータ12及びインバータ13を構成するスイッチング素子を制御する信号を生成する。セルユニット制御部6CUC経由は、生成した信号を用いてダイオードコンバータ12及びインバータ13を構成するスイッチング素子を制御する。
【0030】
例えば、インバータ13は、内部の詳細な接続構成を省略するが、1又は複数のスイッチング素子を夫々備え、そのスイッチングによって電力を変換する。スイッチング素子の種類は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などであってよい。インバータ13は、制御により交流電力を生成するインバータとして機能して、その出力に接続された他のインバータと連携して、電動機3の巻線に電流を流す。
【0031】
例えば、各セルユニット6のセルユニット制御部6CUCは、上段からの制御信号αが一定時間途絶えたことを異常状態として識別する。この場合、まず自段の電力変換を停止して運転許可信号βとして「停止」を示す信号を上段へ送信する。
【0032】
図2Cに示すように、セルユニット61のセルユニット制御部61CUCは、外部からの信号を受けるポートとして、制御信号α受信ポートαIと、運転許可信号β受信ポートβIとを備え、外部に信号を出力するポートとして、制御信号α送出ポートαOと、運転許可信号β送出ポートβOと、ゲートパルス出力ポートGPOとを備える。
【0033】
セルユニット制御部61CUCは、さらに、処理ブロック101、102、111から115、121から123を備える。
【0034】
制御信号α受信ポートαIには、前段のセルユニット6又は制御装置7からの制御信号αが供給される。制御信号α受信ポートαIには、処理ブロック101、111と112の入力が接続されている。
【0035】
処理ブロック101は、制御信号αの中から制御指令を抽出して、これを制御目標にした制御の制御量を算出する。制御量の出力信号は、PWM制御などにより2値に変換されたパルスである。処理ブロック102(GB)は、処理ブロック122が出力するGBC信号によって、処理ブロック101が出力するパルスに対応するゲートパルスの出力を制限する。例えば、処理ブロック102は、GBC信号の倫理が論理1であるときに、ゲートパルスの出力を制限し、論理0であるときに、ゲートパルス出力ポートGPOからゲートパルスを出力する。
【0036】
処理ブロック111は、制御信号αの供給が所定時間途絶えたことを検出する。処理ブロック111は、制御信号αの供給が検出されている場合に論理0を出力し、制御信号αの供給が所定時間を超えて途絶えたことを検出すると論理1を出力する。処理ブロック111の出力は、処理ブロック121の第2入力と、処理ブロック112の制御入力と、処理ブロック114の入力とに接続されている。
【0037】
処理ブロック112は、制御信号αの中からCELL_NUMを抽出して、これを更新したCELL_NUMを生成し、制御信号α内のCELL_NUMを置換した信号を出力する。なお、制御信号αの供給が所定時間途絶えたことを示す論理1が、処理ブロック111から出力されている場合、値を0にしたCELL_NUMを出力する。
処理ブロック113は、処理ブロック112が出力するCELL_NUM、セルユニット制御部61CUC内の状態を示すモニタ用情報MONなどを取り込み、所定の基準に基づいて、取り込んだ各種信号を出力する。例えば、モニタ用情報MONには、後述するように、各セルユニット6のラッチ(例えば、後述する処理ブロック122)の状態及び運転許可信号βの送受信状況などが含まれる。運転許可制御信号βには、運転許可信号β受信ポートβIを介して入力されるものと、運転許可信号β送出ポートβOから出力されるもの(運転許可信号β受信ポートβ’という。)が含まれてよい。処理ブロック113の出力は、後段の処理ブロック115に供給される。
【0038】
処理ブロック114は、初期値として論理1を出力する。処理ブロック114は、制御信号αの供給が所定時間τを超えて途絶えたことによって論理1が供給されると論理0を出力する。処理ブロック114は、この後、さらに所定時間τが経過すると論理1を出力する。
【0039】
処理ブロック115は、出力制限回路を含む出力バッファー回路を含み、処理ブロック114から論理1が出力される場合に、処理ブロック113が出力する制御信号αを制御信号α送出ポートαOから出力させる。これに対して、処理ブロック115は、論理0が出力される場合には、制御信号α送出ポートαOからの出力を無信号にする。
【0040】
処理ブロック121は、運転許可信号β受信ポートβIを介して、運転許可制御信号βとして論理1が入力された場合に、かつ処理ブロック111によって論理0が出力される場合に、論理0を出力する。処理ブロック121の出力は、処理ブロック122の入力に接続されている。
【0041】
処理ブロック122は、ラッチを含む。処理ブロック123は、出力バッファー回路を含む。
【0042】
例えば、処理ブロック122は、例えば入力される信号の論理が論理0から論理1に遷移したことを検出して、その論理1を保持して出力するラッチである。処理ブロック122のラッチの状態は、制御装置7から制御信号αに含めて送信される「故障リセット信号」によりリセットされる。
上記の場合、処理ブロック122は、論理0を保持して出力する。処理ブロック122の出力は、処理ブロック102のGBC信号入力と、処理ブロック123の入力とに接続されている。これにより、処理ブロック122が論理0を出力しているので、処理ブロック102は、ゲートパルス出力ポートGPOを介してゲートパルスを出力する。また、上記の場合、処理ブロック123は、論理を反転して論理1の運転許可制御信号βを運転許可信号β送出ポートβOから出力する。この場合の制御状態は、「運転」を許可する状態になる。
【0043】
処理ブロック121は、運転許可制御信号βとして論理0が入力された場合(論理0に遷移した場合を含む。)に、又は処理ブロック111によって論理1が出力される場合に、出力の論理を論理0から論理1に遷移させる。これにより、処理ブロック122が上記の遷移を検出して論理1を出力する。この場合に、処理ブロック102は、ゲートパルスの出力を制限して、ゲートパルス出力ポートGPOからの信号を無信号にする。また、上記の場合、処理ブロック123は、論理を反転して論理0の運転許可制御信号βを運転許可信号β送出ポートβOから出力する。この場合の制御状態は、運転を制限する「停止」状態になる。
【0044】
各セルユニット6は、上記のように運転に支障がある異常を検出すると、「停止」を示す運転許可信号βを次段に向けて出力する。また、各セルユニット6は、その「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、「停止」を示す運転許可信号βを次段に向けて出力するように構成されている。
【0045】
なお、説明を簡略化するために、以下の説明において、各セルユニット制御部6CUCによる各種処理を、各セルユニット6の処理として説明することがある。
【0046】
制御装置7は、各セルユニット6の中のセルユニット63(第2子局)に対して、各セルユニット6の運転状態を制御するための制御信号αを送出するための制御信号α送出ポートと、各セルユニット6の中のセルユニット61(第1子局)から制御信号αを受信するための制御信号α受信ポートと、を備えている。
制御装置7は、運転許可信号βとして、各セルユニット6の中のセルユニット61(第1子局)に対して、「運転」又は「停止」を示す運転許可信号βを送出するための運転許可信号β送出ポートと、各セルユニット6の中のセルユニット63(第2子局)から運転許可信号βを受信するための運転許可信号β受信ポートと、を備えている。なお、各セルユニット6の中で、セルユニット63(第2子局)は、セルユニット61(第1子局)よりも運転許可信号βの転送方向の下流に位置することになる。
これらに関する説明を後述する。
【0047】
実施形態の電力変換システム1の構成例と正常時の状態:
図3を参照して、電力変換システム1の制御系の構成例について説明する。
図3は、実施形態の電力変換システム1の制御系の構成例を説明するための図である。
図3に示す系統には、制御装置7(セル制御用指令基板)と、3つのセルユニット6(61、62、63)と、制御系の信号を送るためのデイジーチェーン通信路8、9と、が含まれる。制御装置7のことを親局と呼び、セルユニット6のことを子局と呼ぶことがある。ここで示す範囲は、電動機3の相ごとに区分した中の電動機3のU相に対応する範囲を例示する。
【0048】
デイジーチェーン通信路8、9は、制御装置7と、複数のセルユニット6sとを繋ぐ。符号81から84は、デイジーチェーン通信路8を構成する接続媒体の一例である。実施形態の接続媒体81から84は、互いに絶縁されている。符号91から94は、デイジーチェーン通信路9を構成する接続媒体の一例である。実施形態の接続媒体91から94は、互いに絶縁されている。デイジーチェーン通信路8は、少なくとも片方向に通信できるように構成されている。デイジーチェーン通信路9は、少なくとも片方向に通信できるように構成されている。
【0049】
例えば、デイジーチェーン通信路8は、少なくとも制御信号αを送るように構成されている。
【0050】
例えば、制御装置7の制御信号α送出ポートには、接続媒体81の一端が接続され、接続媒体81の他端がセルユニット63の制御信号α受信ポートに接続される。セルユニット63の制御信号α送出ポートには、接続媒体82の一端が接続され、接続媒体82の他端がセルユニット62の制御信号α受信ポートに接続される。セルユニット62の制御信号α送出ポートには、接続媒体83の一端が接続され、接続媒体83の他端がセルユニット61の制御信号α受信ポートに接続される。セルユニット61の制御信号α送出ポートには、接続媒体84の一端が接続され、接続媒体84の他端が制御装置7の制御信号α受信ポートに接続される。
【0051】
デイジーチェーン通信路9は、少なくとも運転許可信号βを送るように構成されている。
【0052】
例えば、制御装置7の運転許可信号β送出ポートには、接続媒体91の一端が接続され、接続媒体91の他端がセルユニット61の運転許可信号β受信ポートに接続される。セルユニット61の運転許可信号β送出ポートには、接続媒体92の一端が接続され、接続媒体92の他端がセルユニット62の運転許可信号β受信ポートに接続される。セルユニット62の運転許可信号β送出ポートには、接続媒体93の一端が接続され、接続媒体93の他端がセルユニット63の運転許可信号β受信ポートに接続される。セルユニット63の運転許可信号β送出ポートには、接続媒体94の一端が接続され、接続媒体94の他端が制御装置7の運転許可信号β受信ポートに接続される。
【0053】
この制御信号αは、各セルユニット6の電力変換装置を制御するための制御信号を含む。運転許可信号βは、各セルユニット6の電力変換装置から電力を供給させる運転の運転許可信号を含む。
【0054】
デイジーチェーン通信路の組は、制御信号αと運転許可信号βとのうちの制御信号αを送るためのデイジーチェーン通信路8(第1通信路)と、制御信号αと運転許可信号βとのうちの運転許可信号βを送るためのデイジーチェーン通信路9(第2通信路)との組み合わせにより形成されている。
例えば、デイジーチェーン通信路8(第1通信路)は、少なくとも接続媒体81から84を含む。デイジーチェーン通信路8(第1通信路)には、接続媒体81から84に加えて、セルユニット61から63を含めてもよい。また、デイジーチェーン通信路9(第2通信路)は、少なくとも接続媒体91から94を含む。デイジーチェーン通信路9(第2通信路)には、接続媒体91から94に加えて、セルユニット61から63を含めてもよい。
【0055】
前述の通り、複数のセルユニット6sは、各セルユニット6内の単相セルインバータ6IV(電力変換装置)がそれぞれ電動機3(負荷装置)に接続されていて、電動機3に電力を供給するように構成されている。複数のセルユニット6sは、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替えて電動機3(負荷装置)に電力を夫々供給する。
例えば、各セルユニット6は、制御信号αを受信できない状況の通信障害を検知すると、通信障害を検知した当該セルユニット6の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、さらに、制御信号αと運転許可信号βとを用いて複数のセルユニット6sの中の他のセルユニット6を制御する。これにより、上記の他のセルユニット6sの電力変換装置の電力の供給を「停止」させる。その後、複数のセルユニット6sの中の一部又は全部のセルユニット6は、各電力変換装置からの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所を識別可能に規定されている故障個所に関する情報を、制御信号αを用いて制御装置7に通知する。
【0056】
電力変換システム1は、親局とセルユニット6間及び各セルユニット6間の通信を利用して各セルユニット6内の電力変換装置を制御することで、各セルユニット6内の電力変換装置にそれぞれ接続される負荷装置に電力を供給する。電力変換システム1は、その供給にあたり、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替える。
【0057】
複数のセルユニット6sは、直接的に又は間接的に、親局からの電力変換装置の制御指令を受ける。
【0058】
上記の通り、デイジーチェーン通信路8、9は、2つのデイジーチェーンの組からなる。デイジーチェーン通信路8を用いて通信する信号には、制御信号αが含まれていて、デイジーチェーン通信路9を用いて通信する信号には、運転許可信号βが含まれている。実施形態の各セルユニット6は、有線接続型の通信路によって通信系統ごとにデイジーチェーン接続されている。
【0059】
(制御信号αと運転許可信号βを用いた制御)
制御装置7は、デイジーチェーン通信路8、9を利用して、デイジーチェーン通信路に係る系統内の各セルユニット6に対して制御信号αと運転許可信号βとを送る。上記のデイジーチェーン通信路8、9は、互いに独立に利用可能である。第1通信路と第2通信路は、制御装置7とセルユニット6間及び各セルユニット6間にそれぞれ設けられている。
【0060】
例えば、運転許可信号βの信号の極性は、フェールセーフを目的として断線時に停止状態となるよう設定するとよい。デイジーチェーン通信路8、9を、光ファイバを利用する光通信路として構成する場合には、発光体が消灯している状態が、「停止」側になるように規定するとよい。
【0061】
各セルユニット6及び制御装置7は、運転に支障のある異常を検出した場合又は受信した運転許可信号βが「停止」である場合、次段への運転許可信号βとして「停止」を送出し、異常時の連動停止を実現する。
【0062】
本実施形態の運転許可信号βの伝達方向は、制御信号αの伝達方向とは逆方向である。デイジーチェーン通信路9は、運転許可信号βがその伝達方向に循環するように構成されている。以下の説明及び図では運転許可信号βの循環方向が制御信号αの逆としているが、同方向としても動作可能である。
【0063】
以下では説明の都合上、制御装置7の出力する制御信号αを直接受信するセルを最上段セルユニット、制御装置7に向けて制御信号αを返送するセルを最下段セルユニットと呼ぶ。最下段セルユニットは、第1子局の一例であり、最上段セルユニットは、第2子局の一例である。
図3における最上段セルユニットは、セルユニット63であり、最下段セルユニットは、セルユニット61である。
【0064】
(制御信号αを用いた制御と状態監視)
各配線区間を挟んで対向する1対のセルユニット6(子局)のうち、制御信号αの送信側のセルユニット6が識別している自己番号(以下、単にMYNUMと呼ぶ。)をセル段数カウントCELL_NUM(以下、単にCELL_NUMと呼ぶ。)として規定する。制御信号αの送信側のセルユニット6は、このCELL_NUMを制御信号αの中に含ませる。
【0065】
制御信号α中には、上記のCELL_NUMの値が、そのデータとして含まれている。各セルユニット6は上段から受信した制御信号αのCELL_NUMに1を加えた値(CELL_NUM++)を、自らの位置を相対的に識別するための識別情報としてMYNUMに定め、自らのMYNUMを下段に対するCELL_NUMとして送信する。CELL_NUMの値は、制御信号αがセルユニット6によって中継された回数に相当する。上記の関係を次の式(1)と次の式(2)に示す。この式では、右辺の演算結果を左辺の変数の値に設定することを示す。
【0066】
MYNUM=CELL_NUM+1 (1)
CELL_NUM=MYNUM (2)
【0067】
(全てのセルユニット6が停止した初期段階)
電力変換システム1は、全てのセルユニット6が停止した状態から、所定の起動手順に従い、全てのセルユニット6が稼働する状態にすることで、システムを稼働する状態にする。
図3に示す状態は、電力変換システム1内の全てのセルユニット6が稼働する状態を示す。
【0068】
例えば、親局にあたる制御装置7は、最上段セルユニットのセルユニット63に対して、初期値の0を(CELL_NUM=0)を送信する。各セルユニット6は、受信したCELL_NUMの値に1を加えて、CELL_NUMの値を更新する。
図3に示すように、最下段セルのセルユニット61は、CELL_NUMの値として3を出力する。
【0069】
また、制御装置7は、最下段セルユニットのセルユニット61からCELL_NUMを受信して、記憶部71に事前に記録されているデイジーチェーン中のセル段数との一致を確認する。制御装置7は、これが一致していれば、制御信号αのデイジーチェーン通信路8の中に故障がないと識別する。例えば、
図3に示すように、セルユニット6が3個であるから、制御信号αの中継回数が3になる。この値は、上記の通り最下段セルがCELL_NUMの値として出力する3に一致する。後述するように、障害が発生すると、この値が規定値の3から変化する。
【0070】
なお、上記のような正常時には、各セルユニット6は、制御信号αの受信が「正常」であることを夫々識別して、制御信号受信状態を示すフラグに「正常」を示す値をセットする(制御信号受信=「正常」)。このとき、各セルユニット6は、運転許可信号βの受信結果から「運転」が指定されていることを識別して、制御許可信号受信状態を示すフラグに「運転」を示す値をセットする(運転許可受信=「運転」)。
【0071】
以下、障害発生時の制御をいくつかのシナリオに分けて説明する。
【0072】
障害発生時の制御に係る第1シナリオ:
最初に、制御信号αの経路に障害が発生した場合の障害箇所の特定方法について説明する。
【0073】
図4Aと
図4Bを参照して、デイジーチェーンの中で、制御信号αの経路のみが断線した場合の故障箇所の特定方法について説明する。故障箇所の位置が異なると、一部の信号の状態が異なる場合がある。以下、例示する故障箇所の位置を変えながら、それぞれの場合について説明する。
【0074】
実施例1:
図4Aと
図4Bは、制御信号αの経路のみが断線した場合について説明するための図である。
図4Aと
図4Bに、実施例1としてセルユニット63とセルユニット62との間の制御信号αの伝送に障害が生じた場合を例示する。この場合の障害とは、伝送媒体の断線の他に、伝送媒体に信号を送信する送信回路の障害と、伝送媒体から信号を受信する受信回路の障害を含む。以下の説明では、これらの物理的な伝送路としての障害をまとめて、「断線」と呼ぶ。
【0075】
各セルユニット6は、上段からの制御信号αの異常状態を識別する。この異常状態を検出したセルユニット6は、まず自段の電力変換を停止して、さらに「停止」を示す運転許可信号βを上段へ送信する。制御信号αが連続的又は所定の期間内に1回以上送信されるように構成されている場合には、制御信号αが一定時間途絶えたことを異常状態として検出することができる。
【0076】
各セルユニット6は、上記の「断線」のように運転に支障がある異常を検出すると、単相セルインバータ6IVの出力を停止させること(「停止」)を示す運転許可信号βを、運転許可信号βの伝送方向の次段に向けて出力する。また、各セルユニット6は、その「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、同様に「停止」を示す運転許可信号βを、次段に向けて出力するように構成されている。運転許可信号βの伝送方向の次段は、制御信号αの伝送方向による上段にあたる。
【0077】
(STEP1)
次に、制御信号αの伝送に障害が発生した後の処置を、STEP1とSTEP2とに分けて説明する。
このSTEP1は、制御信号αの伝送に障害が発生時に、電力変換システム1における各セルユニット6を、安全に停止に導くための処理になる。
例えば、
図4Aに示すように、デイジーチェーン通信路8の接続媒体82の区間に断線等の伝送上の障害が発生して、セルユニット62においてセルユニット63からの制御信号αを識別できない状況が発生したと仮定する。
この場合、各セルユニット6の中でセルユニット62が、制御信号αが一定時間絶えたことを異常状態として検出して、上記の自段の電力変換を停止して、「停止」を示す運転許可信号βの上段への送信などの各処理を実行する。
【0078】
これを受けて、セルユニット63は、その「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、自段の電力変換を停止して、「停止」を示す運転許可信号βを、次段になる制御装置7に向けて出力する。
【0079】
制御装置7は、運転許可信号β受信ポートから、「停止」を示す運転許可信号β(第2運転許可信号β)を受信する。制御装置7は、「停止」を示す運転許可信号βの受信に応じて「停止」を示す運転許可信号β(第1運転許可信号β)を運転許可信号β送出ポートから送信する。制御装置7は、「停止」を示す運転許可信号βを循環させるように制御する。
【0080】
さらに、セルユニット62は、上記の異常を検出すると、通常時に次段に向けて出力していた制御信号αを一旦「通信停止」状態にする。このため、セルユニット61は、断線により制御信号αを消失したセルユニット62と同様に、制御信号αを受信できなくなる。セルユニット61は、これにより、セルユニット62と同様の処理を実施する。
【0081】
その結果、セルユニット61が制御信号αを送信しなくなることによって、制御装置7において制御信号αを受信できない状態(「制御信号通信断」)が生じる。制御装置7は、この状態を検出することで、上記の障害が発生したことを識別する。
【0082】
制御装置7は、運転許可信号β受信ポートから、「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、「停止」を示す運転許可信号βの受信に応じて「停止」を示す運転許可信号βを運転許可信号β送出ポートから送信する。これによって、各セルユニット6に対して停止させる。
【0083】
制御装置7が、運転許可信号β送出ポートから「停止」を示す第1運転許可信号βを送信したことにより、これが各セルユニット6に順次転送される。
【0084】
(STEP2)
このSTEP2は、制御信号αの伝送に障害が発生した個所を特定するための処理になる。
上記のSTEP1によって停止状態に導かれると、一旦制御信号αの送信を停止していた各セルユニット6は、所定の時間が経過したのち、「異常通知モード」に移行して、制御信号αの送信を再開する。
【0085】
これに伴い、セルユニット62は、下段に送る制御信号αにCELL_NUM=0とする情報を含めた異常通知を送信する。これは、正常時の値(CELL_NUM=2)とは異なり、正常時の制御装置7が送信する値と同じ値になっている。
【0086】
異常通知を受信して電力変換を停止していたセルユニット61も、電力変換の停止を継続しつつ、「異常通知モード」に移行する。
【0087】
この後、上記の通り「異常通知モード」に移行したセルユニット62から送信された制御信号αの受信が再開する。これにより、セルユニット61は、この制御信号αの受信再開を検出して「異常通知モード」を解除して「通常モード」に移行する。なお、セルユニット63が通常モードに移行しても、受信する運転許可信号βの「停止」状態が継続しているため、セルユニット61が変換した電力を出力することはない。各セルユニット6が受信する運転許可信号βは、「停止」状態が継続しているため、セルユニット61に限らず、各セルユニット6が電力を出力することはない。
【0088】
「通常モード」に戻ったセルユニット61は、前述の正常時と同様に、受信したCELL_NUMに1を加えた値をCELL_NUMとして下段へ送信する。セルユニット61の場合、セルユニット61の下段は、制御装置7になる。
【0089】
制御装置7は、最下段のセルユニット61からCELL_NUMを受信して、断線・故障箇所を特定する。
【0090】
断線・故障箇所が
図4Bに示す箇所(デイジーチェーン通信路8の接続媒体82の区間)の場合、制御装置7は、CELL_NUM=1を受信する。
先に示したように制御装置7が、CELL_NUM=0をセルユニット63に送信するように構成した場合、制御装置7が受信したCELL_NUMが正常時の値とは異なっていることで、障害が発生したことを検出する。
なお、制御装置7が受信したCELL_NUMの値は、セルユニット6の総段数から2を減じた値に一致する。制御装置7は、この関係に基づいて、障害が発生した位置として、セルユニット6の段数を識別するとよい。
【0091】
セルユニット6の個数が3個であり、セルユニット6の総段数が3段である。また、制御装置7が、最下段セルからCELL_NUMとして(セルユニット6の総段数-2)の値の「1」を受信しており、この場合、最上段から2段目のセルユニット6の受信側に断線又は故障の可能性があることを特定できる。
【0092】
なお、制御信号αの通信が再開されて、上記の障害箇所の位置を特定するための解析が可能な期間になったにもかかわらず、制御装置7が制御信号αを受信できない状態が継続している場合がある。この場合には、制御装置7は、セルユニット61と、制御装置7の制御信号α受信ポートとの間に発生している可能性があることを識別する。
【0093】
上記の障害発生個所とは異なる位置に障害が発生した場合について検討する。
【0094】
実施例2:
制御装置7は、最下段セルユニットからCELL_NUMとして(セルユニット6の総段数-1)の値の「2」を受信した場合、最上段のセルユニット(1段目のセルユニット)が0を出力していると推定される。これから、この場合の故障箇所は、制御装置7の送信部と最上段セルユニットの受信部の間であると識別できる。
【0095】
実施例3:
制御装置7は、最下段セルユニットからCELL_NUMとして(セルユニット6の総段数-3)の値「0」を受信した場合、この場合の故障箇所は上から3段目のセルユニットの受信部と2段目のセルユニットの間であると識別できる。
【0096】
実施例4:
制御装置7は、最下段セルユニットから制御信号αを受信できない場合、故障箇所は最下段セルユニットと、制御装置7の制御信号α受信ポート(受信部)との間であると識別できる。
【0097】
上記の手順に従うことで、制御信号αの経路に障害が発生した場合に、その障害箇所を特定することができる。
【0098】
障害発生の制御に係る第2シナリオ:
次に、運転許可信号βの経路に障害が発生した場合について説明する。
図5Aと
図5Bを参照して、運転許可信号βの経路のみが断線した場合の故障箇所の特定方法について説明する。
図5Aと
図5Bは、運転許可信号βの経路のみが断線した場合について説明するための図である。
【0099】
(STEP1)
次に、運転許可信号βの伝送に障害が発生した後の処置を、STEP1とSTEP2とに分けて説明する。
このSTEP1は、運転許可信号βの伝送に障害が発生時に、電力変換システム1における各セルユニット6を、安全に停止に導くための処理になる。
運転許可信号βの配線に断線が発生した場合には、「停止」を示す運転許可信号βを、断線障害を検出したセルユニット6が発出する。この「停止」を示す運転許可信号βは、各セルユニット6と制御装置7とによって順次転送される。これにより、各セルユニット6と制御装置7のループの作用で、「停止」状態を示す運転許可信号βが各セルユニット6と制御装置7に転送されて、それぞれ保持される。
例えば、各セルユニット6は、それぞれ内部にこの「停止」状態を保持する処理ブロック122(以下、単にラッチという。)を備える。制御装置7も各セルユニット6と同様に、その内部にこの「停止」状態を保持するラッチを備える。これにより、上記の障害が復旧されたとしても、それぞれのラッチによって、運転許可信号βの状態が「停止」状態に保持される。これにより、この状態が継続する。
【0100】
(STEP2)
上記の障害箇所の特定のために、制御装置7は、運転許可信号βの「停止」状態を解除して、運転を再開させるように制御する。
【0101】
制御信号αのデイジーチェーンによって制御信号αが正常に転送されることを前提にして、以下の手順で、運転許可信号βの「停止」状態の解除を試みるとよい。
例えば、制御装置7が「故障リセット信号」を発行して制御信号αを用いて伝送することによって、運転許可信号βの「停止」状態を保持する各セルユニット6のラッチがそれぞれ解除される。全ての運転許可信号βの「停止」状態が解除されたのち、運転を再開できる。
【0102】
制御装置7が「故障リセット信号」を、制御信号αを使って発行しても、運転許可信号βの「停止」状態を保持するラッチの状態を「停止」状態から解除できないことがある。このような場合には、運転許可信号βの配線の異常又は何れかのセルユニット6で故障検出状態が持続している可能性がある。上記の「故障リセット信号」は、各セルユニット6のラッチの状態を初期化させることに利用される。
【0103】
例えば、制御装置7は、制御信号αの転送を利用して停止命令及び各セルユニット6の「故障リセット信号」を送る。制御装置7は、これととともに、一定期間ラッチを無視して強制的に運転許可信号βを「運転」として送信する。
【0104】
各セルユニット6のラッチは、「故障リセット信号」及び運転許可信号βの「強制運転許可」を受けることにより、その状態がリセットされる。なお、各セルユニット6のラッチは、フェールセーフのために、状態を示すフラグに対し「セット」と「リセット」が指示されるとセットが優先になるように構成されている。例えば、故障検出が継続しているセルユニット6のラッチ及び運転許可信号βの出力は「停止」側に維持される。
【0105】
また、強制運転許可を終了させた時点で、運転許可信号βは、そのデイジーチェーンにより転送されて、上記のラッチによって再び「停止」状態に保持される。
【0106】
強制運転許可中及び強制運転許可を終了させた後に、各セルユニット6は、制御信号αのデイジーチェーンを用いて、制御装置7に、各セルユニット6のラッチの状態及び運転許可信号βの送受信状況を夫々送信する。これにより、制御装置7は、各セルユニット6の動作状況を判定して、この判定の結果に基づいて断線・故障箇所を特定できる。
【0107】
障害発生の制御に係る第3シナリオ:
次に、制御信号α及び運転許可信号βの両方の経路に障害が発生した場合について説明する。
【0108】
例えば、光ファイバーケーブルを用いて、制御信号αと運転許可信号βの配線を行う場合には、共通するケーブル内に、制御信号αと運転許可信号βに割り当てられた芯線の組が含まれている場合がある。このような光ファイバーケーブルに応力が加わると、その応力によって芯線が損傷することがある。
【0109】
上記の場合には、制御信号α用の芯線と運転許可信号β用の芯線の何れか一方に、又は両方に故障が生じることがある。制御信号α用の芯線と運転許可信号β用の芯線の何れか一方に故障が生じた場合は、上記の第1シナリオの場合と第2シナリオの場合に相当する。
【0110】
また、制御信号α用の芯線と運転許可信号β用の芯線の両方に故障が生じる場合は、光ファイバーケーブルの延伸方向の特定の位置を基準にした所定の範囲内に含まれる場合と、その延伸方向に互いに異なる位置になる場合がある。
制御信号α用の芯線が損傷する障害と運転許可信号β用の芯線が損傷する障害とが、光ファイバーケーブルの延伸方向の異なる位置で、障害復旧処理に要する時間よりも比較的短い期間に続けて発生する確率は、低いとみなすことができるが、0ではない。
【0111】
この第3シナリオでは、制御信号α用の芯線と運転許可信号β用の芯線の両方の場合について説明する。第3シナリオに対する処置として以下に例示する手順は、上記の第1シナリオと第2シナリオを順次実施するものである。この場合、障害が解消するまでの時間が、1か所に障害が発生した場合よりも長くなる。
ただし、上記の第1シナリオの障害復旧処理に要する時間と第2シナリオの障害復旧処理に要する時間とがそれぞれ十分に短ければ、それぞれの障害復旧処理を順に実施して、比較的短時間で両方の障害復旧処理を実施して解決する方法を選択しても、2か所の障害を解消させるまでの時間に、対比するほどの実質的な違いが生じない。
【0112】
このように、制御信号α用の芯線が損傷する障害と運転許可信号β用の芯線が損傷する障害とが同時期に発生した場合には、上記の手順に従って、先に制御信号αの断線位置を特定して、これを復旧させる。次に、制御信号αの断線が復旧した後に、以下の運転許可信号βのみに断線が生じた場合の手順に従って、運転許可信号βの断線を復旧させるとよい。
【0113】
なお、明らかに制御信号α及び運転許可信号βの何れの経路で障害が発生しているかが不明な場合を含めて、制御装置7は、固定的に、この第3のシナリオで示した手順の処理を実行するように構成してもよい。
【0114】
上記の実施形態によれば、電力変換システム1は、デイジーチェーン通信路8、9と、複数のセルユニット6sとを備える。
デイジーチェーン通信路8、9は、電力変換装置を夫々含む複数のセルユニット6sを制御する親局と複数のセルユニット6sとを繋ぐ。複数のセルユニット6sは、各子局内の電力変換装置にそれぞれ負荷装置が接続されていて、負荷装置に電力を供給するように構成されている複数のセルユニット6sであって、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替えて負荷装置に電力を夫々供給する。
【0115】
デイジーチェーン通信路8、9は、各セルユニット6の単相セルインバータ6IV(単相インバータ)を制御するための制御信号αと、各セルユニット6の単相セルインバータ6IVから電力を供給させる運転の運転許可信号βとのうちの制御信号αを送るための第1通信路と、運転許可信号βを送るための第2通信路との組を成す。各セルユニット6は、通信障害を検知すると、通信障害を検知した当該セルユニット6の単相セルインバータ6IVの電力の供給を「停止」させて、さらに、制御信号αと運転許可信号βとを用いて複数のセルユニット6sの中の他のセルユニット6を制御して、他のセルユニット6の単相セルインバータ6IVの電力の供給を「停止」させて、その後、複数のセルユニット6sの中の一部又は全部のセルユニット6は、各単相セルインバータ6IVからの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所に関する情報を、制御信号αを用いて親局に通知する。故障個所に関する情報の指標は、故障個所を識別可能に規定されている。これにより、電力変換システム1は、複数の電力変換装置をデイジーチェーン接続にした通信系統の中で通信異常が生じた箇所を識別可能である。
【0116】
例えば、制御装置7は、複数のセルユニット6sを制御する制御信号を送り、制御装置7とセルユニット6間及び各セルユニット6間の通信を利用して前記制御信号が転送させるようにしてもよい。この場合の第1通信路と第2通信路は、制御装置7とセルユニット6間及び各セルユニット6間にそれぞれ設けられているものであり、これらを互いに独立に利用可能にするとよい。このように構成された第1通信路と第2通信路は、互いの対称性を有するものでなくてもよい。
【0117】
各セルユニット6は、運転に支障がある異常を検出すると、又は「停止」を示す運転許可信号βを受信すると、「停止」を示す運転許可信号βを次段に向けて出力する。これによって、運転許可信号βを用いて、運転に支障がある異常が検出されたこと、「停止」を示す運転許可信号βを受信したことを、他のセルユニット6などに伝搬することができる。
【0118】
電力変換システム1が制御装置7を備えて構成する場合、制御装置7は、「停止」を示す第2運転許可信号βをセルユニット63から受信して、「停止」を示す第2運転許可信号βの受信に応じて「停止」を示す第1運転許可信号βをセルユニット61に送信するとよい。これにより、運転許可信号βの伝搬を循環させることが可能になる。
【0119】
制御装置7は、セルユニット63(第2子局)に対して制御信号αを送信するための制御信号α送出ポートαOを備えている。制御装置7は、制御信号αを用いて各セルユニット6の稼働状態を制御するとよい。
【0120】
制御装置7は、「停止」を示す第2運転許可信号βを受信すると、その受信に応じて「停止」を示す第1運転許可信号βを運転許可信号β送出ポートβOから送信する。制御装置7は、その第1運転許可信号βを送信してからの所定期間内に第1運転許可信号βの「停止」を示す状態を維持する。この所定期間内に検出用期間が定められていて、検出用期間に、セルユニット61から受信した制御信号αに制御信号αの中継回数が含まれている場合がある。制御装置7は、この場合に、制御信号αの中継回数を、予め定められた変換規則を用いて変換することで、この変換結果に基づいて故障個所を識別するとよい。
【0121】
各セルユニット6は、上記の所定期間内に定められた検出用期間に、制御信号αの中継回数を含む制御信号αを夫々送信する。これにより、制御装置7は、デイジーチェーン通信路8を利用した制御信号αの中継回数を識別することができ、その中継回数の変化から、断線などの故障が生じたことを識別できる。
【0122】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、電力変換システムは、デイジーチェーン通信路と、複数の子局とを備える。前記デイジーチェーン通信路は、電力変換装置を夫々含む複数の子局を制御する親局と前記複数の子局とを繋ぐ。前記複数の子局は、各子局内の電力変換装置にそれぞれ負荷装置が接続されていて、前記負荷装置に電力を供給するように構成されている複数の子局であって、電力変換装置から電力を供給するための「運転」と、該電力の供給を中断させるための「停止」とを切り替えて前記負荷装置に電力を夫々供給する。前記デイジーチェーン通信路は、前記複数の子局に係る各子局の電力変換装置を制御するための制御信号αと前記各子局の電力変換装置から電力を供給させる運転の運転許可信号βとのうちの前記制御信号αを送るための第1通信路と、前記運転許可信号βを送るための第2通信路との組を成す。前記各子局は、通信障害を検知すると、前記通信障害を検知した当該子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、さらに、前記制御信号αと前記運転許可信号βとを用いて前記複数の子局の中の他の子局を制御して、前記他の子局の電力変換装置の電力の供給を「停止」させて、その後、前記複数の子局の中の一部又は全部の子局は、各電力変換装置からの電力の供給が夫々「停止」されている状態で、故障個所を識別可能に規定されている故障個所に関する情報を、前記制御信号αを用いて前記親局に通知する。これにより、電力変換システムは、複数の電力変換装置をデイジーチェーン接続にした通信系統の中で通信異常が生じた箇所を識別することができる。
【0123】
以上説明した実施形態の電力変換システム1における制御装置7及びセルユニット制御部6CUCの各機能部の一部又は全部は、例えば、コンピュータの記憶部(メモリなど)に記憶されたプログラム(コンピュータプログラム、ソフトウェアコンポーネント)がコンピュータのプロセッサ(ハードウェアプロセッサ)によって実行されることで実現されるソフトウェア機能部である。なお、制御装置7及びセルユニット制御部6CUCの各機能部の一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなハードウェアによって実現されてもよく、或いはソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0124】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、実施形態の構成は、上記例に限定されない。例えば、各実施形態の構成は、互いに組み合わせて実施されてもよく、説明を省略した構成部分に適用することができる。例えば、上記の電動機3の第1相であるU相に関する説明は、電動機3の第2相のV相と第3相のW相に適用してよい。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0126】
なお、デイジーチェーン通信路8、9は、電気信号による通信路であっても、光信号による通信路であってよい。なお、実施形態では、接続媒体81から84と、接続媒体91から94とを、別体のものとして説明するが、例えば全2重通信を可能とするもの、より具体的には光通信方式の波長多重などを利用すれば、各区間の接続媒体をデイジーチェーン通信路8、9で共用することもできる。
【符号の説明】
【0127】
1…電力変換システム、3…電動機、6…セルユニット、6s…複数のセルユニット、IV…単相セルインバータ、6CUC…セルユニット制御部、7…制御装置、8、9…デイジーチェーン通信路