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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02M3/28 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023509951
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013484
(87)【国際公開番号】W WO2022208644
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 尚之
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268908(US,A1)
【文献】特開2011-167064(JP,A)
【文献】XIAOFENG, Sun et al.,Interleaved Boost-Integrated LLC Resonant Converter With Fixed-Frequency PWM Control for Renewable Energy Generation Applications,IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,Vol.30, No.8,米国,IEEE,2014年09月16日,pp.4312-4326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続端子および第2の接続端子を有する第1の電力端子と、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを結ぶ第1の経路に設けられ、前記第1の接続端子と第1のノードとの間に設けられた第1のスイッチング素子と、前記第1のノードと第2のノードとの間に設けられた第2のスイッチング素子と、前記第2のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第3のスイッチング素子とを有する第1のアームと、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを結ぶ第2の経路に設けられ、前記第1の接続端子と第3のノードとの間に設けられた第4のスイッチング素子と、前記第3のノードと第4のノードとの間に設けられた第5のスイッチング素子と、前記第4のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第6のスイッチング素子とを有する第2のアームと、
前記第2のノードと第5のノードとの間に設けられた第1のインダクタと、
前記第4のノードと前記第5のノードとの間に設けられた第2のインダクタと、
前記第5のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第1のキャパシタと、
前記第1のノードと前記第3のノードとを結ぶ経路に設けられた第1の巻線と、第2の巻線とを有する第1のトランスと、
前記第2の巻線に接続された複数の整流素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続され、第3の接続端子および第4の接続端子を有する第2の電力端子と、
前記第2の電力端子における電圧に基づいて、前記第1のアームおよび前記第2のアームにおけるスイッチング動作を制御する制御回路と
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記第1のノードと前記第3のノードとを結ぶ前記経路に設けられた共振インダクタおよび共振キャパシタをさらに備えた
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
第1の巻線および第2の巻線を有する第2のトランスを備え、
前記第2のトランスの前記第1の巻線は、前記第1のインダクタを含み、
前記第2のトランスの前記第2の巻線は、前記第2のインダクタを含む
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第2の電力端子における電圧に基づいて、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子、および前記第5のスイッチング素子の第1のオンデューティ比を変化させ、前記第3のスイッチング素子および前記第6のスイッチング素子の第2のオンデューティ比を維持するように、前記スイッチング動作を制御する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
第1の期間において、前記第3のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第1の期間の期間外における第2の期間において、前記第6のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第1の期間における前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のスイッチングタイミングを変化させ、前記第2の期間における前記第4のスイッチング素子および前記第5のスイッチング素子のスイッチングタイミングを変化させることにより、前記第1のオンデューティ比を変化させる
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記第2のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第1のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第3のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第3のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第2のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第1のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第1のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第3のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第2のスイッチング素子をオン状態にする
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
第1の接続端子および第2の接続端子を有する第1の電力端子と、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを結ぶ経路に設けられ、前記第1の接続端子と第1のノードとの間に設けられた第1のスイッチング素子と、前記第1のノードと第2のノードとの間に設けられた第2のスイッチング素子と、前記第2のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第3のスイッチング素子とを有するアームと、
前記第2のノードと第3のノードとの間に設けられたインダクタと、
前記第3のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第1のキャパシタと、
前記第1の接続端子と第4のノードとの間に設けられた第2のキャパシタと、
前記第4のノードと前記第2の接続端子との間に設けられた第3のキャパシタと、
前記第1のノードと前記第4のノードとを結ぶ経路に設けられた第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続された複数の整流素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続され、第3の接続端子および第4の接続端子を有する第2の電力端子と、
前記第2の電力端子における電圧に基づいて、前記アームにおけるスイッチング動作を制御する制御回路と
を備えた電力変換装置。
【請求項8】
前記第1のノードと前記第3のノードとを結ぶ前記経路に設けられた共振インダクタおよび共振キャパシタをさらに備えた
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記第2の電力端子における電圧に基づいて、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の第1のオンデューティ比を変化させ、前記第3のスイッチング素子の第2のオンデューティ比を維持するように、前記スイッチング動作を制御する
請求項7または請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御回路は、
第1の期間において、前記第3のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第1の期間における前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のスイッチングタイミングを変化させることにより、前記第1のオンデューティ比を変化させる
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御回路は、
前記第1のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第3のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第2のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第2のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第1のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第3のスイッチング素子をオン状態にし、
前記第3のスイッチング素子がオン状態である期間において、前記第2のスイッチング素子をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいて前記第1のスイッチング素子をオン状態にする
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置の前記第1の電力端子に接続された直流電源装置と
を備えた電力変換システム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を変換する電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、入力電圧を昇圧または降圧することにより電力を変換する。特許文献1には、トランスと、トランスの1次側に設けられた、3つのトランジスタを含むアームとを有し、入力された電圧を昇圧し、昇圧された電圧を変圧する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-187021号公報
【発明の概要】
【0004】
電力変換装置では、様々な入力電圧に基づいて動作できることが望まれており、広い入力電圧範囲を実現することが期待されている。
【0005】
入力電圧範囲を広くすることができる電力変換装置および電力変換システムを提供することが望ましい。
【0006】
本発明の一実施の形態に係る第1の電力変換装置は、第1の電力端子と、第1のアームと、第2のアームと、第1のインダクタと、第2のインダクタと、第1のキャパシタと、第1のトランスと、整流回路と、第2の電力端子と、制御回路とを備えている。第1の電力端子は、第1の接続端子および第2の接続端子を有するように構成される。第1のアームは、第1の接続端子と第2の接続端子とを結ぶ第1の経路に設けられ、第1の接続端子と第1のノードとの間に設けられた第1のスイッチング素子と、第1のノードと第2のノードとの間に設けられた第2のスイッチング素子と、第2のノードと第2の接続端子との間に設けられた第3のスイッチング素子とを有する。第2のアームは、第1の接続端子と第2の接続端子とを結ぶ第2の経路に設けられ、第1の接続端子と第3のノードとの間に設けられた第4のスイッチング素子と、第3のノードと第4のノードとの間に設けられた第5のスイッチング素子と、第4のノードと第2の接続端子との間に設けられた第6のスイッチング素子とを有する。第1のインダクタは、第2のノードと第5のノードとの間に設けられる。第2のインダクタは、第4のノードと第5のノードとの間に設けられる。第1のキャパシタは、第5のノードと第2の接続端子との間に設けられる。第1のトランスは、第1のノードと第3のノードとを結ぶ経路に設けられた第1の巻線と、第2の巻線とを有する。整流回路は、第2の巻線に接続された複数の整流素子を有する。第2の電力端子は、整流回路に接続され、第3の接続端子および第4の接続端子を有する。制御回路は、第2の電力端子における電圧に基づいて、第1のアームおよび第2のアームにおけるスイッチング動作を制御するように構成される。
【0007】
本発明の一実施の形態に係る第2の電力変換装置は、第1の電力端子と、アームと、インダクタと、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、第3のキャパシタと、トランスと、整流回路と、第2の電力端子と、制御回路とを備えている。第1の電力端子は、第1の接続端子および第2の接続端子を有するように構成される。アームは、第1の接続端子と第2の接続端子とを結ぶ第1の経路に設けられ、第1の接続端子と第1のノードとの間に設けられた第1のスイッチング素子と、第1のノードと第2のノードとの間に設けられた第2のスイッチング素子と、第2のノードと第2の接続端子との間に設けられた第3のスイッチング素子とを有する。インダクタは、第2のノードと第3のノードとの間に設けられる。第1のキャパシタは、第3のノードと第2の接続端子との間に設けられる。第2のキャパシタは、第1の接続端子と第4のノードとの間に設けられる。第3のキャパシタは、第4のノードと、第2の接続端子との間に設けられる。トランスは、第1のノードと第4のノードとを結ぶ経路に設けられた第1の巻線と、第2の巻線とを有する。整流回路は、第2の巻線に接続された複数の整流素子を有する。第2の電力端子は、整流回路に接続され、第3の接続端子および第4の接続端子を有する。制御回路は、第2の電力端子における電圧に基づいて、アームにおけるスイッチング動作を制御するように構成される。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る電力変換システムは、電力変換装置と、直流電源装置とを備えている。電力変換装置は、上記第1の電力変換装置または上記第2の電力変換装置である。直流電源装置は、電力変換装置の第1の電力端子に接続される。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置および電力変換システムによれば、入力電圧範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
図2図1に示した電力変換システムの一動作例を表すタイミング波形図である。
図3図1に示した電力変換システムの一動作例を表す他のタイミング波形図である。
図4A図1に示した電力変換システムにおける一動作状態を表す説明図である。
図4B図1に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図4C図1に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図4D図1に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図4E図1に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図4F図1に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図5】第1の実施の形態の変形例に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
図6図5に示した電力変換システムの一動作例を表すタイミング波形図である。
図7】第1の実施の形態の他の変形例に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
図8図7に示した電力変換システムの一動作例を表すタイミング波形図である。
図9】第1の実施の形態の他の変形例に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
図10図9に示した電力変換システムの一動作例を表すタイミング波形図である。
図11】第2の実施の形態に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
図12図11に示した電力変換システムの一動作例を表すタイミング波形図である。
図13A図11に示した電力変換システムにおける一動作状態を表す説明図である。
図13B図11に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図13C図11に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
図13D図11に示した電力変換システムにおける他の動作状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
【0012】
<第1の実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置を備えた電力変換システム1の一構成例を表すものである。電力変換システム1は、直流電源装置PDCと、電力変換装置10と、負荷装置LDとを備えている。電力変換システム1は、直流電源装置PDCから供給された電圧を降圧することにより電力を変換し、変換された電力を負荷装置LDに供給するように構成される。
【0013】
直流電源装置PDCは、直流電力を電力変換装置10に供給するように構成される。直流電源装置PDCは、例えばバッテリであってもよい。また、直流電源装置PDCは、バッテリおよびDC/DCコンバータを有し、DC/DCコンバータが、このバッテリから供給された直流電力を変換し、変換された直流電力を電力変換装置10に供給してもよい。
【0014】
電力変換装置10は、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧)を降圧することにより、電力を変換し、変換された電力を負荷装置LDに供給するように構成される。電力変換装置10は、2つのアームを有するインターリーブ型の回路である。電力変換装置10は、入力端子T11,T12と、入力キャパシタCinと、アーム11,12と、インダクタ13,14と、キャパシタ15と、共振インダクタLrと、共振キャパシタCrと、トランス20と、整流平滑回路17と、電圧センサ18と、制御回路19と、出力端子T21,T22とを有している。直流電源装置PDC、入力キャパシタCin、アーム11,12、インダクタ13,14、キャパシタ15、共振インダクタLr、および共振キャパシタCrは、電力変換システム1の1次側回路を構成し、整流平滑回路17および負荷装置LDは、電力変換システム1の2次側回路を構成する。
【0015】
入力端子T11,T12は、直流電源装置PDCから電力が供給されるように構成される。電力変換装置10の装置内において、入力端子T11は電圧線L11に接続され、入力端子T12は基準電圧線L12に接続される。
【0016】
入力キャパシタCinの一端は電圧線L11に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。
【0017】
アーム11は、電圧線L11と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられる。アーム11は、3つのトランジスタS1~S3を有する。アーム12は、電圧線L11と基準電圧線L12とを結ぶ、アーム11が設けられた経路とは異なる経路に設けられる。アーム12は、3つのトランジスタS4~S6を有する。トランジスタS1~S6は、ゲート信号G1~G6に基づいて、それぞれスイッチング動作を行うスイッチング素子である。トランジスタS1~S6のそれぞれは、例えばN型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いて構成される。トランジスタS1~S6のそれぞれは、寄生ダイオードDpを有している。例えば、トランジスタS1において、寄生ダイオードDpのアノードはトランジスタS1のソースに接続され、カソードはトランジスタS1のドレインに接続される。また、この図では、トランジスタS1の寄生キャパシタンスを示すキャパシタCpをも図示している。トランジスタS2~S6についても同様である。なお、この例では、N型の電界効果トランジスタを用いたが、スイッチング素子であればどのようなものを用いてもよい。
【0018】
トランジスタS1は、電圧線L11とノードN1との間に設けられ、オン状態になることによりノードN1を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタS1のドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号G1が供給され、ソースはノードN1に接続される。トランジスタS2は、ノードN1とノードN2との間に設けられ、オン状態になることによりノードN1をノードN2に接続するように構成される。トランジスタS2のドレインはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号G2が供給され、ソースはノードN2に接続される。トランジスタS3は、ノードN2と基準電圧線L12との間に設けられ、オン状態になることによりノードN2を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタS3のドレインはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号G3が供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN1は、トランジスタS1のソースとトランジスタS2のドレインとの接続点である。ノードN2は、トランジスタS2のソースとトランジスタS3のドレインとの接続点である。
【0019】
トランジスタS4は、電圧線L11とノードN3との間に設けられ、オン状態になることによりノードN3を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタS4のドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号G4が供給され、ソースはノードN3に接続される。トランジスタS5は、ノードN3とノードN4との間に設けられ、オン状態になることによりノードN3をノードN4に接続するように構成される。トランジスタS5のドレインはノードN3に接続され、ゲートにはゲート信号G5が供給され、ソースはノードN4に接続される。トランジスタS6は、ノードN4と基準電圧線L12との間に設けられ、オン状態になることによりノードN4を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタS6のドレインはノードN4に接続され、ゲートにはゲート信号G6が供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN3は、トランジスタS4のソースとトランジスタS5のドレインとの接続点である。ノードN4は、トランジスタS5のソースとトランジスタS6のドレインとの接続点である。
【0020】
インダクタ13の一端はアーム11のノードN2に接続され、他端はノードN5に接続される。インダクタ14の一端はアーム12のノードN4に接続され、他端はノードN5に接続される。キャパシタ15の一端はノードN5に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。
【0021】
共振インダクタLrの一端はアーム11のノードN1に接続され、他端はトランス20の巻線21(後述)の一端に接続される。共振キャパシタCrの一端はアーム12のノードN3に接続され、他端はトランス20の巻線21(後述)の他端に接続される。
【0022】
トランス20は、1次側回路と2次側回路とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続し、1次側回路から供給された交流電圧を、トランス20の変成比Nで変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給するように構成される。トランス20は、巻線21,22A,22Bを有している。巻線21の一端は共振インダクタLrの他端に接続され、他端は共振キャパシタCrの他端に接続される。巻線22Aの一端は整流平滑回路17のダイオードDA(後述)のカソードに接続され、他端は電圧線L21に接続される。巻線22Bの一端は電圧線L21に接続され、他端は整流平滑回路17のダイオードDB(後述)のカソードに接続される。
【0023】
整流平滑回路17は、トランス20の巻線22A,22Bから出力された交流電圧を整流することにより直流電圧を生成するように構成される。整流平滑回路17は、ダイオードDA,DBと、キャパシタCoutとを有している。ダイオードDAのアノードは基準電圧線L22に接続され、カソードはトランス20の巻線22Aの一端に接続される。ダイオードDBのアノードは基準電圧線L22に接続され、カソードはトランス20の巻線22Bの一端に接続される。キャパシタCoutの一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。
【0024】
電圧センサ18は、電圧線L21における電圧を検出するように構成される。電圧センサ18の一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。電圧センサ18は、基準電圧線L22における電圧を基準とした電圧線L21における電圧を、出力電圧Voutとして検出する。そして、電圧センサ18は、出力電圧Voutの検出結果を制御回路19に供給するようになっている。
【0025】
制御回路19は、電圧センサ18により検出された出力電圧Voutに基づいて、アーム11,12の動作を制御することにより、電力変換装置10の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路19は、出力電圧Voutに基づいてゲート信号G1~G6を生成し、このゲート信号G1~G6によりPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、電力変換装置10の動作を制御するようになっている。なお、この例では、電圧センサ18により検出された出力電圧Voutに基づいて、アーム11,12の動作を制御したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、制御回路19は、出力電圧Voutを推定し、推定された出力電圧Voutに基づいて、アーム11,12の動作を制御してもよい。具体的には、制御回路19は、例えば、トランス20の巻線21の両端間の電圧、および1次側回路から2次側回路への電力伝達のデューティ比(後述する交流電圧Vacのデューティ比)に基づいて、出力電圧Voutを推定することができる。また、制御回路19は、例えば、アーム11,12におけるスイッチング周波数、共振インダクタLrのインダクタンスおよび共振キャパシタCrのキャパシタンス、および共振インダクタLrの両端間の電圧に基づいて、出力電圧Voutを推定することができる。また、制御回路19は、例えば、アーム11,12におけるスイッチング周波数、共振インダクタLrのインダクタンスおよび共振キャパシタCrのキャパシタンス、および共振キャパシタCrの両端間の電圧に基づいて、出力電圧Voutを推定することができる。
【0026】
出力端子T21,T22は、電力変換装置10が生成した直流電力を負荷装置LDに供給するように構成される。電力変換装置10の装置内において、出力端子T21は電圧線L21に接続され、出力端子T22は基準電圧線L22に接続される。
【0027】
負荷装置LDは、電力変換装置10の負荷である。負荷装置LDは、例えば、定電流負荷であってもよい。
【0028】
この構成により、電力変換システム1では、直流電源装置PDCから供給された電圧を降圧することにより電力を変換し、変換された電力を負荷装置LDに供給するようになっている。
【0029】
ここで、入力端子T11,T12は、本開示における「第1の電力端子」の一具体例に対応する。入力端子T11は、本開示における「第1の接続端子」の一具体例に対応する。入力端子T12は、本開示における「第2の接続端子」の一具体例に対応する。アーム11は、本開示における「第1のアーム」の一具体例に対応する。アーム12は、本開示における「第2のアーム」の一具体例に対応する。トランジスタS1は、本開示における「第1のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS2は、本開示における「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS3は、本開示における「第3のスイッチング素子」の一具体例に対応する。ノードN1は、本開示における「第1のノード」の一具体例に対応する。ノードN2は、本開示における「第2のノード」の一具体例に対応する。トランジスタS4は、本開示における「第4のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS5は、本開示における「第5のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS6は、本開示における「第6のスイッチング素子」の一具体例に対応する。ノードN3は、本開示における「第3のノード」の一具体例に対応する。ノードN4は、本開示における「第4のノード」の一具体例に対応する。インダクタ13は、本開示における「第1のインダクタ」の一具体例に対応する。インダクタ14は、本開示における「第2のインダクタ」の一具体例に対応する。キャパシタ15は、本開示における「第1のキャパシタ」の一具体例に対応する。ノードN5は、本開示における「第5のノード」の一具体例に対応する。トランス20は、本開示における「第1のトランス」の一具体例に対応する。巻線21は、本開示における「第1の巻線」の一具体例に対応する。巻線22A、22Bは、本開示における「第2の巻線」の一具体例に対応する。整流平滑回路17は、本開示における「整流回路」の一具体例に対応する。ダイオードDA,DBは、本開示における「複数の整流素子」の一具体例に対応する。出力端子T21,T22は、本開示における「第2の電力端子」の一具体例に対応する。出力端子T21は、本開示における「第3の接続端子」の一具体例に対応する。出力端子T22は、本開示における「第4の接続端子」の一具体例に対応する。制御回路19は、本開示における「制御回路」の一具体例に対応する。直流電源装置PDCは、本開示における「直流電源装置」の一具体例に対応する。共振インダクタLrは、本開示における「共振インダクタ」の一具体例に対応する。共振キャパシタCrは、本開示における「共振キャパシタ」の一具体例に対応する。
【0030】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換システム1の動作および作用について説明する。
【0031】
(全体動作概要)
まず、図1,2を参照して、電力変換システム1の全体動作概要を説明する。アーム11,12のトランジスタS1~S6は、ゲート信号G1~G6に基づいてそれぞれスイッチング動作を行う。トランス20は、1次側回路から供給された交流電圧を、トランス20の変成比Rで変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給する。整流平滑回路17は、トランス20から供給された交流電圧に基づいて整流平滑動作を行う。電圧センサ18は、基準電圧線L22における電圧を基準とした電圧線L21における電圧を、出力電圧Voutとして検出する。制御回路19は、電圧センサ18により検出された出力電圧Voutに基づいて、アーム11,12の動作を制御することにより、電力変換装置10の動作を制御する。このようにして、電力変換システム1は、直流電源装置PDCから供給された電圧を降圧することにより電力を変換し、変換された電力を負荷装置LDに供給する。
【0032】
(詳細動作)
図2は、電力変換システム1の一動作例を表すものであり、(A)~(F)はゲート信号G1~G6の波形をそれぞれ示し、(G)はノードN3の電圧を基準としたノードN1の電圧(交流電圧Vac)の波形およびトランス20の巻線21の一端(ノードN1側)から他端(ノードN3側)に流れる電流(交流電流Iac)の波形を示し、(H)はノードN5からノードN2に向かってインダクタ13に流れる電流(インダクタ電流IL13)の波形およびノードN5からノードN4に向かってインダクタ14に流れる電流(インダクタ電流IL14)の波形を示す。図2(A)~(F)において、“ON”、“OFF”は、ゲート信号G1~G6が供給されるトランジスタS1~S6のオンオフ状態をそれぞれ示している。この例では、直流電源装置PDCは、電力変換装置10に100Vの直流電圧を供給する。
【0033】
電力変換システム1は、タイミングt1~t5の期間の動作を繰り返すことにより動作する。タイミングt1~t5の期間の長さは、スイッチング周期Tswである。タイミングt1~t5の期間は、タイミングt1~t2の期間P1、タイミングt2~t3の期間P2、タイミングt3~t4の期間P3、およびタイミングt4~t5の期間P4を含む。
【0034】
制御回路19は、出力電圧Voutに基づいてゲート信号G1~G6を生成し、このゲート信号G1~G6によりPWM制御を行うことにより、電力変換装置10の動作を制御する。
【0035】
タイミングt1において、制御回路19は、ゲート信号G1,G6を高レベルから低レベルに変化させる(図2(A),(F))。また、タイミングt1からデッドタイムTd(図示せず)だけ経過したタイミングで、制御回路19は、ゲート信号G3,G5を低レベルから高レベルに変化させる(図2(C),(E))。これにより、トランジスタS2~S5はオン状態になり、トランジスタS1,S6はオフ状態になる。
【0036】
タイミングt2において、制御回路19は、ゲート信号G2を高レベルから低レベルに変化させる(図2(B))。また、タイミングt2からデッドタイムTd(図示せず)だけ経過したタイミングで、制御回路19は、ゲート信号G1を低レベルから高レベルに変化させる(図2(A))。これにより、トランジスタS1,S3~S5はオン状態になり、トランジスタS2,S6はオフ状態になる。
【0037】
タイミングt3において、制御回路19は、ゲート信号G3,G4を高レベルから低レベルに変化させる(図2(C),(D))。また、タイミングt3からデッドタイムTd(図示せず)だけ経過したタイミングで、制御回路19は、ゲート信号G2,G6を低レベルから高レベルに変化させる(図2(B),(F))。これにより、トランジスタS1,S2,S5,S6はオン状態になり、トランジスタS3,S4はオフ状態になる。
【0038】
タイミングt4において、制御回路19は、ゲート信号G5を高レベルから低レベルに変化させる(図2(E))。また、タイミングt4からデッドタイムTd(図示せず)だけ経過したタイミングで、制御回路19は、ゲート信号G4を低レベルから高レベルに変化させる(図2(D))。これにより、トランジスタS1,S2,S4,S6はオン状態になり、トランジスタS3,S5はオフ状態になる。
【0039】
制御回路19は、出力電圧Voutに応じて、トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比を変化させるように、トランジスタS1~S6の動作を制御する。また、制御回路19は、トランジスタS3,S6のオンデューティ比を約50%に維持する。トランジスタS1のオンデューティ比は、スイッチング周期Tswに対応する時間における、トランジスタS1がオン状態である時間の時間比率である。トランジスタS2~S6についても同様である。この例では、直流電源装置PDCから供給される電圧(入力電圧Vin)は100Vであるので、ノードN5における電圧は、約50Vである。
【0040】
電力変換システム1では、図2(H)に示したように、インダクタ13,14に、インダクタ電流IL13,IL14が流れ、図2(G)に示したように、ノードN1とノードN3との間に交流電圧Vacが生じる。この例では、交流電圧Vacは、期間P2,P4では0Vであり、期間P1では約“-100V”(-Vinと同程度)であり、期間P3では約“100V”(Vinと同程度)である。そして、トランス20の巻線21に、図2(G)に示したように交流電流Iacが流れる。トランス20は、1次側回路から供給された交流信号を、トランス20の変成比Nで変換し、変換された交流信号を2次側回路に供給する。これにより、電力変換システム1では、2次側回路に電流が流れ、整流平滑回路17が整流平滑動作を行う。このようにして、電力変換システム1は、直流電圧を生成し、生成した直流電圧を負荷装置LDに供給する。
【0041】
制御回路19は、トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比を変化させる際、図2(A),(B)において矢印で示したように、タイミングt2付近におけるゲート信号G1,G2の遷移タイミングを変化させるとともに、図2(D),(E)において矢印で示したように、タイミングt4付近におけるゲート信号G4,G5の遷移タイミングを変化させる。具体的には、制御回路19は、タイミングt2付近における、ゲート信号G1が低レベルから高レベルに遷移する遷移タイミング、およびゲート信号G2が高レベルから低レベルに遷移する遷移タイミングを変化させる。また、制御回路19は、タイミングt4付近における、ゲート信号G4が低レベルから高レベルに遷移する遷移タイミング、およびゲート信号G5が高レベルから低レベルに遷移する遷移タイミングを変化させる。これにより、電力変換システム1は、図2(G)において矢印で示したように、タイミングt2付近における交流電圧Vacの遷移タイミング、およびタイミングt4付近における交流電圧Vacの遷移タイミングを変化させ、交流電圧Vacのデューティ比を変化させる。交流電圧Vacのデューティ比のデューティ比は、スイッチング周期Tswに対応する時間における、交流電圧Vacが0Vでない時間の時間比率である。その結果、電力変換システム1では、1次側回路から2次側回路に伝達される電力が変化する。制御回路19は、出力電圧Voutに応じてトランジスタS1,S2,S4,S5の遷移タイミングを変化させ、交流電圧Vacのデューティ比を変化させることにより、入力電圧Vinが変動した場合でも出力電圧Voutが一定になるように、電力変換システム1の動作を制御する。
【0042】
例えば、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)が一定である場合において、負荷装置LDに流れる負荷電流が増加した場合には、制御回路19は、共振条件を調節するために、スイッチング周期Tswを長くし、交流電圧Vacのデューティ比を一定に保つ。具体的には、制御回路19は、タイミングt1~t2の期間P1の長さ、タイミングt2~t3の期間P2の長さ、タイミングt3~t4の期間P3の長さ、およびタイミングt3~t5の期間P4の長さを、スイッチング周期Tswと同じ比率で長くする。これにより、電力変換システム1では、出力電圧Voutを維持することができる。
【0043】
また、例えば、負荷装置LDに流れる負荷電流が維持される場合において、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)が高くなる場合には、制御回路19は、スイッチング周期Tswを一定に保ち、入力電圧が高くなった分だけ、交流電圧Vacのデューティ比を低くするように制御する。具体的には、制御回路19は、期間P1,P3の長さを短くするとともに期間P2,P4の長さを長くする。これにより、電力変換システム1では、出力電圧Voutを維持することができる。
【0044】
以下に、タイミングt1~t5の期間における電力変換システム1の動作について、詳細に説明する。
【0045】
図3は、電力変換システム1の詳細動作を表すものであり、(A)はゲート信号G1~G6の波形を示し、(B)はノードN3の電圧を基準としたノードN1の電圧(交流電圧Vac)の波形およびトランス20の巻線21の一端から他端に流れる電流(交流電流Iac)の波形を示し、(C)はノードN5からノードN2に向かってインダクタ13に流れる電流(インダクタ電流IL13)の波形を示し、(D)はトランジスタS1のドレイン・ソース間の電圧Vds1の波形、トランジスタS1の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS1の波形、およびトランジスタS1の寄生ダイオードDpに流れる電流ID1の波形を示し、(E)はトランジスタS2のドレイン・ソース間の電圧Vds2の波形、トランジスタS2の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS2の波形、およびトランジスタS2の寄生ダイオードDpに流れる電流ID2の波形を示し、(F)はトランジスタS3のドレイン・ソース間の電圧Vds3の波形、トランジスタS3の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS3の波形、およびトランジスタS3の寄生ダイオードDpに流れる電流ID3の波形を示し、(G)はノードN5からノードN4に向かってインダクタ14に流れる電流(インダクタ電流IL14)の波形を示し、(H)はトランジスタS4のドレイン・ソース間の電圧Vds4の波形、トランジスタS4の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS4の波形、およびトランジスタS4の寄生ダイオードDpに流れる電流ID4の波形を示し、(H)はトランジスタS5のドレイン・ソース間の電圧Vds5の波形、トランジスタS5の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS5の波形、およびトランジスタS5の寄生ダイオードDpに流れる電流ID5の波形を示し、(I)はトランジスタS6のドレイン・ソース間の電圧Vds6の波形、トランジスタS6の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS6の波形、およびトランジスタS6の寄生ダイオードDpに流れる電流ID6の波形を示す。
【0046】
図4A~4Fは、6つの動作状態ST1~ST6における電力変換システム1の動作を表すものである。図4A~4Fでは、説明の便宜上、電力変換システム1をより簡略化して描いている。以下では、インダクタ13,14に流れる電流を電流I1とし、トランス20の巻線21に流れる電流をI2とし、直流電源装置PDCに流入しあるいは直流電源装置PDCから流出する電流をI3とし、2次側回路に流れる電流をI9とする。
【0047】
タイミングt1から始まる期間P1では、図2に示したように、トランジスタS3,S5はオフ状態からオン状態に変化し、トランジスタS1,S6はオン状態からオフ状態に変化し、トランジスタS2,S4はオン状態を維持する。この期間P1では、動作状態STは、まず動作状態ST1(図4A)になり、その後に動作状態ST2(図4B)になる。
【0048】
動作状態ST1(図4A)では、1次側回路において、電流I1が、ノードN2、インダクタ13、ノードN5、インダクタ14、ノードN4、トランジスタS5、ノードN3の順に流れる。電流I2は、ノードN3、共振キャパシタCr、トランス20の巻線21、共振インダクタLr、ノードN1、トランジスタS2、ノードN2の順に流れる。電流I3は、ノードN3、トランジスタS4、電圧線L11、直流電源装置PDC、基準電圧線L12、トランジスタS3、ノードN2の順に流れる。このように、インダクタ13,14に流れる電流I1は、トランスに流れる電流I2よりも多いので、直流電源装置PDCにエネルギーが回生されるように電流I3が流れる。
【0049】
トランジスタS3,S5では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G3,G5が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS3,S5の本体に電流が流れる(図3(A),(F),(I))。このように、トランジスタS3,S5は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム1では、効率を高めることができる。
【0050】
図3(F),(H)に示したように、電流IS3,IS4の電流の絶対値は徐々に減っていき、電流IS3,IS4は負から正に変化する。これにより、動作状態ST1(図4A)から動作状態ST2(図4B)に変化する。
【0051】
動作状態ST2では、1次側回路において、電流I1が、ノードN2、インダクタ13、ノードN5、インダクタ14、ノードN4、トランジスタS5、ノードN3の順に流れる。電流I2は、ノードN3、共振キャパシタCr、トランス20の巻線21、共振インダクタLr、ノードN1、トランジスタS2、ノードN2の順に流れる。電流I3は、ノードN2、トランジスタS3、基準電圧線L12、直流電源装置PDC、電圧線L11、トランジスタS4、ノードN3の順に流れる。すなわち、動作状態ST1から動作状態ST2に変化する前後では、電流I3の向きが反対向きになり、動作状態ST1における回生動作は終了する。2次側回路では、電流I9が、巻線22A、キャパシタCoutおよび負荷装置LD、ダイオードDA、巻線22Aの順に流れる。これにより、1次側回路から2次側回路に電力が伝達される。
【0052】
タイミングt2から始まる期間P2では、図2に示したように、トランジスタS1はオフ状態からオン状態になり、トランジスタS2はオン状態からオフ状態になり、トランジスタS3~S5はオン状態を維持し、トランジスタS6はオフ状態を維持する。この期間P2では、動作状態STは、動作状態ST3(図4C)になる。
【0053】
動作状態ST3では、1次側回路において、電流I1が、ノードN3、トランジスタS5、ノードN4、インダクタ14、ノードN5、インダクタ13、ノードN2の順に流れる。電流I2は、ノードN3、共振キャパシタCr、トランス20の巻線21、共振インダクタLr、ノードN1、トランジスタS1、電圧線L11の順に流れる。電流I3は、ノードN2、トランジスタS3、基準電圧線L12、直流電源装置PDC、電圧線L11、トランジスタS4、ノードN3の順に流れる。
【0054】
トランジスタS1では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G1が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS1の本体に電流が流れる(図3(A),(D))。このように、トランジスタS1は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム1では、効率を高めることができる。
【0055】
このように、共振回路(共振インダクタLrおよび共振キャパシタCr)を備えた構成では、この期間P2のうちの、共振回路に蓄えられたエネルギーが放出される期間において、動作状態ST2(図4B)と同様に、2次側回路に、電流I9が流れる。これにより、1次側回路から2次側回路に電力が伝達される。
【0056】
タイミングt3から始まる期間P3では、図2に示したように、トランジスタS2,S6はオフ状態からオン状態に変化し、トランジスタS3,S4はオン状態からオフ状態に変化し、トランジスタS1,S5はオン状態を維持する。この期間P3では、動作状態STは、まず動作状態ST4(図4D)になり、その後に動作状態ST5(図4E)になる。
【0057】
動作状態ST4(図4D)では、1次側回路において、電流I1が、ノードN4、インダクタ14、ノードN5、インダクタ13、ノードN2、トランジスタS2、ノードN1の順に流れる。電流I2は、ノードN1、共振インダクタLr、トランス20の巻線21、共振キャパシタCr、ノードN3、トランジスタS5、ノードN4の順に流れる。電流I3は、ノードN1、トランジスタS1、電圧線L11、直流電源装置PDC、基準電圧線L12、トランジスタS6、ノードN4の順に流れる。このように、インダクタ13,14に流れる電流I1は、トランスに流れる電流I2よりも多いので、直流電源装置PDCにエネルギーが回生されるように電流I3が流れる。
【0058】
トランジスタS2,S6では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G2,G6が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS2,S6の本体に電流が流れる(図3(A),(E),(J))。このように、トランジスタS2,S6は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム1では、効率を高めることができる。
【0059】
図3(D),(J)に示したように、電流IS1,IS6の電流の絶対値は徐々に減っていき、電流IS1,IS6は負から正に変化する。これにより、動作状態ST4(図4D)から動作状態ST5(図4E)に変化する。
【0060】
動作状態ST5では、1次側回路において、電流I1が、ノードN4、インダクタ14、ノードN5、インダクタ13、ノードN2、トランジスタS2、ノードN1の順に流れる。電流I2は、ノードN1、共振インダクタLr、トランス20の巻線21、共振キャパシタCr、ノードN3、トランジスタS5、ノードN4の順に流れる。電流I3は、ノードN4、トランジスタS6、基準電圧線L12、直流電源装置PDC、電圧線L11、トランジスタS1、ノードN1の順に流れる。すなわち、動作状態ST4から動作状態ST5に変化する前後では、電流I3の向きが反対向きになり、動作状態ST4における回生動作は終了する。2次側回路では、電流I9が、巻線22B、キャパシタCoutおよび負荷装置LD、ダイオードDB、巻線22Bの順に流れる。これにより、1次側回路から2次側回路に電力が伝達される。
【0061】
タイミングt4から始まる期間P4では、図2に示したように、トランジスタS4はオフ状態からオン状態になり、トランジスタS5はオン状態からオフ状態になり、トランジスタS1,S2,S6はオン状態を維持し、トランジスタS3はオフ状態を維持する。この期間P4では、動作状態STは、動作状態ST6(図4F)になる。
【0062】
動作状態ST6では、1次側回路において、電流I1が、ノードN1、トランジスタS2、ノードN2、インダクタ13、ノードN5、インダクタ14、ノードN4の順に流れる。電流I2は、ノードN1、共振インダクタLr、トランス20の巻線21、共振キャパシタCr、ノードN3、トランジスタS4、電圧線L11の順に流れる。電流I3は、ノードN4、トランジスタS6、基準電圧線L12、直流電源装置PDC、電圧線L11、トランジスタS1、ノードN1の順に流れる。
【0063】
トランジスタS4では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G4が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS4の本体に電流が流れる(図3(A),(H))。このように、トランジスタS4は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム1では、効率を高めることができる。
【0064】
このように、共振回路(共振インダクタLrおよび共振キャパシタCr)を備えた構成では、この期間P2のうちの、共振回路に蓄えられたエネルギーが放出される期間において、動作状態ST5(図4E)と同様に、2次側回路に、電流I9が流れる。これにより、1次側回路から2次側回路に電力が伝達される。
【0065】
このように、電力変換システム1では、アーム11,12と、インダクタ13,14と、キャパシタ15とを設けるようにした。アーム11は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第1の経路に設けられ、入力端子T11とノードN1との間に設けられたトランジスタS1と、ノードN1とノードN2との間に設けられたトランジスタS2と、ノードN2と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS3をと有するようにした。アーム12は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第2の経路に設けられ、入力端子T11とノードN3との間に設けられたトランジスタS4と、ノードN3とノードN4との間に設けられたトランジスタS5と、ノードN4と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS6をと有するようにした。インダクタ13は、ノードN2とノードN5との間に設けるようにした。インダクタ14は、ノードN4とノードN5との間に設けるようにした。キャパシタ15は、ノードN5と入力端子T12との間に設けるようにした。これにより、電力変換システム1は、図2に示したように動作することにより、交流電圧Vacのデューティ比を変化させ、1次側回路から2次側回路に伝達される電力を変化させる。
【0066】
具体的には、制御回路19は、出力電圧Voutに基づいて、トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比を変化させ、トランジスタS3,S6のオンデューティ比を維持するように、トランジスタS1~S6のスイッチング動作を制御することができる。例えば、制御回路19は、図2に示したように、トランジスタS3がオン状態である期間において、トランジスタS1がオフ状態からオン状態に変化するスイッチングタイミング、およびトランジスタS2がオン状態からオフ状態に変化するスイッチングタイミングを変化させる。また、制御回路19は、トランジスタS6がオン状態である期間において、トランジスタS4がオフ状態からオン状態に変化するスイッチングタイミング、およびトランジスタS5がオン状態からオフ状態に変化するスイッチングタイミングを変化させる。これにより、制御回路19は、トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比を変化させる。これにより、例えば、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)が高い場合には、トランジスタS2,S5のオンデューティ比を低くするとともにトランジスタS1,S4のオンデューティ比を高くすることにより、出力電圧Voutを維持することができる。また、例えば、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)が低い場合には、トランジスタS2,S5のオンデューティ比を高くするとともにトランジスタS1,S4のオンデューティ比を低くすることにより、出力電圧Voutを維持することができる。トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比は、例えば50%以上100%以下の範囲で設定される。これにより、電力変換システム1では、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0067】
また、電力変換システム1では、例えば、図2,3(A)に示したように、トランジスタS2がオン状態であるタイミングt1付近の期間において、トランジスタS1をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS3をオン状態にした。また、例えば、トランジスタS3がオン状態であるタイミングt2付近の期間において、トランジスタS2をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS1をオン状態にした。また、トランジスタS1がオン状態であるタイミングt3付近の期間において、トランジスタS3をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS2をオン状態にした。トランジスタS4~S6についても同様である。これにより、電力変換システム1では、トランジスタS1~S6がソフトスイッチングを行うことができるので、効率を高めることができる。
【0068】
[効果]
以上のように本実施の形態では、アーム11,12と、インダクタ13,14と、キャパシタ15とを設けるようにした。アーム11は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第1の経路に設けられ、入力端子T11とノードN1との間に設けられたトランジスタS1と、ノードN1とノードN2との間に設けられたトランジスタS2と、ノードN2と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS3をと有するようにした。アーム12は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第2の経路に設けられ、入力端子T11とノードN3との間に設けられたトランジスタS4と、ノードN3とノードN4との間に設けられたトランジスタS5と、ノードN4と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS6をと有するようにした。インダクタ13は、ノードN2とノードN5との間に設けるようにした。インダクタ14は、ノードN4とノードN5との間に設けるようにした。キャパシタ15は、ノードN5と入力端子T12との間に設けるようにした。これにより、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0069】
本実施の形態では、出力電圧に基づいて、トランジスタS1,S2,S4,S5のオンデューティ比を変化させ、トランジスタS3,S6のオンデューティ比を維持するようにしたので、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0070】
本実施の形態では、トランジスタS2がオン状態である期間において、トランジスタS1をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS3をオン状態にし、トランジスタS3がオン状態である期間において、トランジスタS2をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS1をオン状態にし、トランジスタS1がオン状態である期間において、トランジスタS3をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS2をオン状態にしたので、効率を高めることができる。
【0071】
[変形例1-1]
上記実施の形態では、インダクタ13およびインダクタ14を設けたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、図5に示す電力変換システム1Aのように、トランス30Aを設けてもよい。この電力変換システム1Aは、電力変換装置10Aを備えている。電力変換装置10Aは、トランス30Aを有している。トランス30Aは、巻線33,34を有している。巻線33の一端はアーム11のノードN2に接続され、他端はノードN5に接続される。巻線34の一端はノードN5に接続され、他端はアーム12のノードN4に接続される。巻線33は、上記第1の実施の形態に係るインダクタ13に対応し、巻線34は、上記第1の実施の形態に係るインダクタ14に対応する。図2(H)に示したように、インダクタ13に流れるインダクタ電流IL13、およびインダクタ14に流れるインダクタ電流IL14の大きさは、互いにほぼ同じであり、インダクタ電流IL13,IL14の極性は、互いに逆であるので、この変形例では、インダクタ13,14をトランス30Aに置き換えている。このように、2つのインダクタ13,14に代えてトランス30Aを用いることにより、回路を小型化することができる。ここで、トランス30Aは、本開示における「第2のトランス」の一具体例に対応する。
【0072】
図6は、この電力変換システム1Aの一動作例を表すものであり、(A)はノードN3の電圧を基準としたノードN1の電圧(交流電圧Vac)の波形およびトランス20の巻線21の一端(ノードN1側)から他端(ノードN3側)に流れる電流(交流電流Iac)の波形を示し、(B)はノードN5からノードN2に向かって巻線33に流れる電流(トランス電流IL33)の波形およびノードN5からノードN4に向かって巻線34に流れる電流(トランス電流IL34)の波形を示す。この例では、直流電源装置PDCは、電力変換装置10に100Vの直流電圧を供給する。この図6(A),(B)は、上記実施の形態に係る図2(G),(H)に対応する。電力変換システム1Aは、このように上記実施の形態に係る電力変換システム1と同様の動作を行うことができる。
【0073】
[変形例1-2]
上記実施の形態では、図1に示した整流平滑回路17を設けたが、これに限定されるものではない。以下に、いくつか例を挙げて詳細に説明する。
【0074】
図7は、本変形例に係る電力変換システム1Bの一構成例を表すものである。電力変換システム1Bは、電力変換装置10Bを備えている。電力変換装置10Bは、アーム11,12と、トランス20と、整流平滑回路17Bとを有している。トランス20の巻線21の一端はアーム11のノードN1に接続され、他端はアーム12のノードN3に接続される。巻線22Aの一端は整流平滑回路17BのダイオードDAのアノードに接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。巻線22Bの一端は基準電圧線L22に接続され、他端は整流平滑回路17BのダイオードDBのアノードに接続される。整流平滑回路17Bは、ダイオードDA,DBと、インダクタ33Bと、キャパシタCoutとを有している。ダイオードDAのアノードはトランス20の巻線22Aの一端に接続され、カソードはダイオードDBのカソードおよびインダクタ33Bの一端に接続される。ダイオードDBの一端はトランス20の巻線22Bの他端に接続され、カソードはダイオードDAのカソードおよびインダクタ33Bの一端に接続される。インダクタ33Bの一端はダイオードDA,DBのカソードに接続され、他端は電圧線L21に接続される。キャパシタCoutの一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。この例では、インダクタ33Bの一端をダイオードDA,DBのカソードに接続し、他端を電圧線L21に接続したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、インダクタ33Bの一端を巻線22Aの他端および巻線22Bの一端に接続し、他端を基準電圧線L22に接続してもよい。整流平滑回路17Bは、本開示における「整流回路」の一具体例に対応する。ダイオードDA,DBは、本開示における「複数の整流素子」の一具体例に対応する。
【0075】
この例では、共振回路(共振インダクタLrおよび共振キャパシタCr)を省いている。この構成では、負荷装置LDに流れる負荷電流が維持される場合において、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)が高くなる場合には、制御回路19は、スイッチング周期Tswを一定に保ち、入力電圧が高くなった分だけ、交流電圧Vacのデューティ比を低くするように制御する。具体的には、制御回路19は、期間P1,P3の長さを短くするとともに期間P2,P4の長さを長くする。これにより、電力変換システム1では、出力電圧Voutを維持することができる。
【0076】
図8は、電力変換システム1Bの一動作例を表すものである。この図8は、上記実施の形態に係る図3に対応する。電力変換システム1Bは、このように上記実施の形態に係る電力変換システム1と同様の動作を行うことができる。
【0077】
図9は、本変形例に係る電力変換システム1Cの一構成例を表すものである。電力変換システム1Cは、電力変換装置10Cを備えている。電力変換装置10Cは、トランス20Cと、整流平滑回路17Cとを有している。トランス20Cは、巻線21,22を有している。巻線21の一端は共振インダクタLrの他端に接続され、他端は共振キャパシタCrの他端に接続される。巻線22の一端は整流平滑回路17CのノードN6に接続され、他端は整流平滑回路17CのノードN7に接続される。整流平滑回路17Cは、ブリッジ型の回路であり、ダイオードD11~D14と、キャパシタCoutとを有している。ダイオードD11のアノードはノードN6に接続され、カソードは電圧線L21に接続される。ダイオードD12のアノードは基準電圧線L22に接続され、カソードはノードN6に接続される。ダイオードD13のアノードはノードN7に接続され、カソードは電圧線L21に接続される。ダイオードD14のアノードは基準電圧線L22に接続され、カソードはノードN7に接続される。キャパシタCoutの一端は電圧線L21に接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。トランス20Cは、本開示における「第1のトランス」の一具体例に対応する。整流平滑回路17Cは、本開示における「整流回路」の一具体例に対応する。ダイオードD11~D14は、本開示における「複数の整流素子」の一具体例に対応する。
【0078】
図10は、電力変換システム1Cの一動作例を表すものである。この図10は、上記実施の形態に係る図3に対応する。電力変換システム1Cは、このように上記実施の形態に係る電力変換システム1と同様の動作を行うことができる。
【0079】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい
【0080】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る電力変換システム2について説明する。上記第1の実施の形態では、2つのアーム11,12を設けたが、これに代えて、本実施の形態では、1つのアームを設けている。なお、上記第1の実施の形態に係る電力変換システム1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0081】
図11は、電力変換システム2の一構成例を表すものである。電力変換システム2は、直流電源装置PDCと、電力変換装置40と、負荷装置LDとを備えている。
【0082】
電力変換装置40は、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧)を降圧することにより、電力を変換し、変換された電力を負荷装置LDに供給するように構成される。電力変換装置40は、アーム11と、インダクタ13と、キャパシタ15,41,42と、を有する。すなわち、上記第1の実施の形態に係る電力変換装置10(図1)は2つのアーム11,12を有するようにしたが、本実施の形態に係る電力変換装置40は、1つのアーム11を有する。
【0083】
アーム11は、電圧線L11と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられる。アーム11は、3つのトランジスタS1~S3を有する。トランジスタS1~S3は、ゲート信号G1~G3に基づいて、それぞれスイッチング動作を行うように構成される。トランジスタS1~S3のそれぞれは、上記第1の実施の形態の場合と同様に、例えばN型の電界効果トランジスタを用いて構成される。
【0084】
トランジスタS1は、電圧線L11とノードN1との間に設けられ、オン状態になることによりノードN1を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタS1のドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号G1が供給され、ソースはノードN1に接続される。トランジスタS2は、ノードN1とノードN2との間に設けられ、オン状態になることによりノードN1をノードN2に接続するように構成される。トランジスタS2のドレインはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号G2が供給され、ソースはノードN2に接続される。トランジスタS3は、ノードN2と基準電圧線L12との間に設けられ、オン状態になることによりノードN2を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタS3のドレインはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号G3が供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。
【0085】
インダクタ13の一端はアーム11のノードN2に接続され、他端はノードN5に接続される。キャパシタ15の一端はノードN5に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。
【0086】
キャパシタ41の一端は電圧線L11に接続され、他端はノードN3に接続される。キャパシタ42の一端はノードN3に接続され、他端は基準電圧線L12に接続される。ノードN3は、キャパシタ41の他端とキャパシタ42の一端との接続点である。
【0087】
共振インダクタLrの一端はノードN3に接続され、他端はトランス20の巻線21の一端に接続される。共振キャパシタCrの一端はアーム11のノードN1に接続され、他端はトランス20の巻線21の他端に接続される。
【0088】
制御回路49は、電圧センサ18により検出された電圧outに基づいて、アーム11の動作を制御することにより、電力変換装置40の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路49は、出力電圧Voutに基づいてゲート信号G1~G3を生成し、このゲート信号G1~G3により、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧Vin)の変動に対してはPWM制御を行い、負荷電流の変動に対してはPFM(Pulse Frequency Modulation)制御を行うことにより、電力変換装置40の動作を制御するようになっている。
【0089】
ここで、アーム11は、本開示における「アーム」の一具体例に対応する。トランジスタS1は、本開示における「第1のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS2は、本開示における「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応する。トランジスタS3は、本開示における「第3のスイッチング素子」の一具体例に対応する。ノードN1は、本開示における「第1のノード」の一具体例に対応する。ノードN2は、本開示における「第2のノード」の一具体例に対応する。インダクタ13は、本開示における「インダクタ」の一具体例に対応する。キャパシタ15は、本開示における「第1のキャパシタ」の一具体例に対応する。ノードN5は、本開示における「第3のノード」の一具体例に対応する。キャパシタ41は、本開示における「第1のキャパシタ」の一具体例に対応する。キャパシタ42は、本開示における「第2のキャパシタ」の一具体例に対応する。ノードN3は、本開示における「第4のノード」の一具体例に対応する。トランス20は、本開示における「トランス」の一具体例に対応する。制御回路49は、本開示における「制御回路」の一具体例に対応する。
【0090】
図12は、電力変換システム2の詳細動作を表すものであり、(A)はゲート信号G1~G3の波形を示し、(B)はノードN1の電圧を基準としたノードN3の電圧(交流電圧Vac)の波形およびトランス20の巻線21の一端(ノードN1側)から他端(ノードN3側)に流れる電流(交流電流Iac)の波形を示し、(C)はノードN5からノードN2に向かってインダクタ13に流れる電流(インダクタ電流IL13)の波形を示し、(D)はトランジスタS1のドレイン・ソース間の電圧Vds1の波形、トランジスタS1の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS1の波形、およびトランジスタS1の寄生ダイオードDpに流れる電流ID1の波形を示し、(E)はトランジスタS2のドレイン・ソース間の電圧Vds2の波形、トランジスタS2の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS2の波形、およびトランジスタS2の寄生ダイオードDpに流れる電流ID2の波形を示し、(F)はトランジスタS3のドレイン・ソース間の電圧Vds3の波形、トランジスタS3の本体のドレインからソースに向かって流れる電流IS3の波形、およびトランジスタS3の寄生ダイオードDpに流れる電流ID3の波形を示す。
【0091】
図13A~13Dは、4つの動作状態ST11~ST14における電力変換システム2の動作を表すものである。
【0092】
タイミングt41から始まる期間P11では、図12(A)に示したように、トランジスタS2はオフ状態からオン状態に変化し、トランジスタS3はオン状態からオフ状態に変化し、トランジスタS1はオン状態を維持する。この期間P11では、動作状態STは、まず動作状態ST11(図13A)になり、その後に動作状態ST12(図13B)になる。
【0093】
動作状態ST11(図13A)では、1次側回路において、電流I1が、基準電圧線L12、キャパシタ15、ノードN5、インダクタ13、ノードN2、トランジスタS2、ノードN1の順に流れる。電流I2は、ノードN1、共振キャパシタCr、トランス20の巻線21、共振インダクタLr、ノードN3の順に流れる。電流I3は、ノードN3、キャパシタ41、電圧線L11の順に流れるとともに、ノードN3、キャパシタ42、基準電圧線L12の順に流れる。電流I4は、電圧線L11、トランジスタS1、ノードN1の順に流れる。
【0094】
トランジスタS2では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G2が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS2の本体に電流が流れる(図12(A),(E))。このように、トランジスタS2は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム2では、効率を高めることができる。
【0095】
図12(E)に示したように、電流IS2の電流の絶対値は徐々に減っていき、電流IS2は負から正に変化する。これにより、動作状態ST11(図13A)から動作状態ST12(図13B)に変化する。
【0096】
動作状態ST12では、1次側回路において、電流I1が、ノードN1、トランジスタS2、ノードN2、インダクタ13、ノードN5、キャパシタ15、基準電圧線L12の順に流れる。電流I2は、ノードN1、共振キャパシタCr、トランス20の巻線21、共振インダクタLr、ノードN3の順に流れる。電流I3は、ノードN3、キャパシタ41、電圧線L11の順に流れるとともに、ノードN3、キャパシタ42、基準電圧線L12の順に流れる。電流I4は、電圧線L11、トランジスタS1、ノードN1の順に流れる。すなわち、動作状態ST12では、動作状態ST11と比べて、電流I1の向きが反対向きになる。
【0097】
タイミングt42から始まる期間P12では、図12に示したように、トランジスタS3はオフ状態からオン状態になり、トランジスタS1はオン状態からオフ状態になり、トランジスタS2はオン状態を維持する。この期間P12では、動作状態STは、動作状態ST13(図13C)になる。
【0098】
動作状態ST13では、1次側回路において、電流I1が、ノードN1、トランジスタS2、ノードN2、インダクタ13、ノードN5、キャパシタ15、基準電圧線L12の順に流れる。電流I2は、ノードN3、共振インダクタLr、トランス20の巻線21、共振キャパシタCr、ノードN1の順に流れる。電流I3は、基準電圧線L12、直流電源装置PDC、電圧線L11、キャパシタ41、ノードN3の順に流れるとともに、基準電圧線L12、キャパシタ42、ノードN3の順に流れる。電流I5は、基準電圧線L12、トランジスタS3、ノードN2の順に流れる。
【0099】
トランジスタS3では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G3が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS3の本体に電流が流れる(図12(A),(F))。このように、トランジスタS3は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム2では、効率を高めることができる。
【0100】
タイミングt43から始まる期間P13では、図12に示したように、トランジスタS1はオフ状態からオン状態に変化し、トランジスタS2はオン状態からオフ状態に変化し、トランジスタS3はオン状態を維持する。この期間P13では、動作状態STは、動作状態ST14(図13D)になる。
【0101】
動作状態ST14では、1次側回路において、電流I1が、基準電圧線L12、キャパシタ15、ノードN5、インダクタ13、ノードN2、トランジスタS3、基準電圧線L12の順に流れる。電流I2は、ノードN3、共振インダクタLr、トランス20の巻線21、共振キャパシタCr、ノードN1の順に流れる。電流I3は、電圧線L11、キャパシタ41、ノードN3の順に流れるとともに、基準電圧線L12、キャパシタ42、ノードN3の順に流れる。電流I4は、ノードN1、トランジスタS1、電圧線L11の順に流れる。
【0102】
トランジスタS1では、デッドタイムTdの期間には寄生ダイオードDpに電流が流れ、ゲート信号G1が低レベルから高レベルに変化した後に、トランジスタS1の本体に電流が流れる(図12(A),(D))。このように、トランジスタS1は、ドレイン・ソース間の電圧が小さい状態でオフ状態からオン状態に変化することができるので、いわゆるソフトスイッチングを実現することができる。その結果、電力変換システム2では、効率を高めることができる。
【0103】
制御回路49は、出力電圧Voutに応じて、トランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させるように、トランジスタS1,S2の動作を制御する。また、制御回路49は、トランジスタS3のオンデューティ比を約50%に維持する。
【0104】
制御回路49は、トランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させる際、タイミングt43付近における、ゲート信号G1が低レベルから高レベルに遷移する遷移タイミング、およびゲート信号G2が高レベルから低レベルに遷移する遷移タイミングを変化させる。これにより、電力変換システム2は、第1の実施の形態の場合(図2)と同様に、タイミングt43付近における交流電圧Vacの遷移タイミングを変化させ、交流電圧Vacのデューティ比を変化させる。交流電圧Vacのデューティ比は、スイッチング周期Tswに対応する時間における、交流電圧Vac(図14(B))が正である時間(期間P12の時間)の時間比率である。その結果、電力変換システム2では、1次側回路から2次側回路に伝達される電力が変化する。制御回路49は、出力電圧Voutに応じてトランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させることにより、入力電圧Vinが変動した場合でも出力電圧Voutが一定になるように、電力変換システム2の動作を制御する。
【0105】
このように、電力変換システム2では、アーム11と、インダクタ13と、キャパシタ15,41,42とを設けるようにした。アーム11は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第1の経路に設けられ、入力端子T11とノードN1との間に設けられたトランジスタS1と、ノードN1とノードN2との間に設けられたトランジスタS2と、ノードN2と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS3をと有するようにした。インダクタ13は、ノードN2とノードN5との間に設けるようにした。キャパシタ15は、ノードN5と入力端子T12との間に設けるようにした。キャパシタ41は、入力端子T11とノードN3との間に設けるようにした。キャパシタ42は、ノードN3と入力端子T12との間に設けるようにした。これにより、電力変換システム2は、第1の実施の形態の場合と同様に交流電圧Vacのデューティ比を変化させ、1次側回路から2次側回路に伝達される電力を変化させる。
【0106】
具体的には、制御回路49は、出力電圧Voutに基づいて、トランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させ、トランジスタS3のオンデューティ比を維持するように、トランジスタS1~S3のスイッチング動作を制御することができる。例えば、制御回路49は、図12に示したように、トランジスタS3がオン状態である期間における、トランジスタS1,S2のスイッチングタイミングを変化させることにより、トランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させる。これにより、例えば、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧)が高い場合には、トランジスタS1のオンデューティ比を高くするとともにトランジスタS2のオンデューティ比を低くすることにより、出力電圧Voutを維持することができる。また、例えば、直流電源装置PDCから供給された電圧(入力電圧)が低い場合には、トランジスタS1のオンデューティ比を低くするとともにトランジスタS2のオンデューティ比を高くすることにより、出力電圧Voutを維持することができる。トランジスタS1,S2のオンデューティ比は、例えば50%以上100%以下の範囲で設定される。これにより、電力変換システム2では、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0107】
また、電力変換システム2では、例えば、図12(A)に示したように、トランジスタS1がオン状態であるタイミングt41付近の期間において、トランジスタS3をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS2をオン状態にした。また、例えば、トランジスタS2がオン状態であるタイミングt42付近の期間において、トランジスタS1をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS3をオン状態にした。また、トランジスタS3がオン状態であるタイミングt43付近の期間において、トランジスタS2をオフ状態にしたタイミングからデッドタイムTdが経過したタイミングにおいてトランジスタS1をオン状態にした。これにより、電力変換システム2では、トランジスタS1~S3がソフトスイッチングを行うことができるので、効率を高めることができる。
【0108】
また、電力変換システム2では、第1の実施の形態に係る電力変換システム1(図1)に比べ、アームの数を減らすことによりトランジスタの数を減らすことができるので、回路をシンプルにすることができる。
【0109】
以上のように本実施の形態では、アーム11と、インダクタ13と、キャパシタ15,41,42とを設けるようにした。アーム11は、入力端子T11と入力端子T12とを結ぶ第1の経路に設けられ、入力端子T11とノードN1との間に設けられたトランジスタS1と、ノードN1とノードN2との間に設けられたトランジスタS2と、ノードN2と入力端子T12との間に設けられたトランジスタS3をと有するようにした。インダクタ13は、ノードN2とノードN5との間に設けるようにした。キャパシタ15は、ノードN5と入力端子T12との間に設けるようにした。キャパシタ41は、入力端子T11とノードN3との間に設けるようにした。キャパシタ42は、ノードN3と入力端子T12との間に設けるようにした。これにより、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0110】
本実施の形態では、出力電圧に基づいて、トランジスタS1,S2のオンデューティ比を変化させ、トランジスタS3のオンデューティ比を維持するようにしたので、入力電圧範囲を広くすることができる。
【0111】
本実施の形態では、トランジスタS1がオン状態である期間において、トランジスタS3をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS2をオン状態にしし、トランジスタS2がオン状態である期間において、トランジスタS1をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS3をオン状態にしし、トランジスタS3がオン状態である期間において、トランジスタS2をオフ状態にしたタイミングから所定の時間が経過したタイミングにおいてトランジスタS1をオン状態にしたので、効率を高めることができる。
【0112】
[変形例2]
上記実施の形態に係る電力変換システム2に、上記第1の実施の形態の変形例1-2を適用してもよい。
【0113】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0114】
例えば、上記実施の形態では、整流平滑回路17では、ダイオードDA,DBを整流素子として用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、トランジスタを整流素子として用いてもよい。この場合には、このトランジスタをオンオフさせることにより、いわゆる同期整流を行うことができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D