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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】蓄電システム及び系統制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240906BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023520578
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017675
(87)【国際公開番号】W WO2022239057
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩毅
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108193(JP,A)
【文献】特開2015-76907(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084688(WO,A1)
【文献】特開2020-68650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に連系される蓄電システムであって、
蓄電装置と、
前記蓄電装置及び前記電力系統の間に接続されて、前記蓄電装置及び前記電力系統の間で電力を融通するための電力変換器と、
前記電力変換器が前記蓄電装置の充放電に伴って前記電力系統に対して入出力する有効電力を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電力系統の周波数検出値を算出する周波数検出部と、
前記周波数検出部による前記周波数検出値から前記電力系統での周波数変動量を算出する周波数変動量演算部と、
前記周波数変動量に応じて、系統周波数を上昇するための有効電力の出力量又は、前記系統周波数を低下するための前記有効電力の入力量を示す指令値を生成する制御演算部と、
予め定められた前記電力系統の周波数基準値よりも前記周波数検出値が高い場合に、前記制御演算部が前記有効電力を出力するための前記指令値を生成したときに、前記指令値に従った前記有効電力の出力を制限するための制限部とを備え、
前記制限部は、前記周波数基準値よりも前記周波数検出値が低い場合に、前記制御演算部が前記有効電力を入力するための前記指令値を生成したときに、前記指令値に従った前記有効電力の入力を制限する、蓄電システム。
【請求項2】
前記制限部は、前記周波数基準値よりも前記周波数検出値が高い場合に、前記制御演算部が前記有効電力を出力するための前記指令値を生成したときに、前記電力変換器からの前記有効電力の出力を禁止する、請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制限部は、前記周波数基準値よりも前記周波数検出値が低い場合に、前記制御演算部前記有効電力を入力するための前記指令値を生成したときに、前記電力変換器への前記有効電力の入力を禁止する、請求項1記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記周波数検出部によって順次算出される前記周波数検出値から高周波成分が除去された周波数目標値を生成するフィルタ部を更に含み、
前記制限部は、前記周波数検出値が前記周波数基準値よりも高く、かつ、前記周波数検出値が前記周波数目標値よりも低いときに、前記電力変換器からの前記有効電力の出力を禁止する、請求項1又は2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記周波数検出部によって順次算出される前記周波数検出値から高周波成分が除去された周波数目標値を生成するフィルタ部を更に含み、
前記制限部は、前記周波数検出値が前記周波数基準値よりも低く、かつ、前記周波数検出値が前記周波数目標値よりも高いときに、前記電力変換器への前記有効電力の入力を禁止する、請求項1又は3に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記周波数検出部によって順次算出される前記周波数検出値から高周波成分が除去された周波数目標値を生成するフィルタ部を更に含み、
前記周波数変動量演算部は、前記フィルタ部が生成する前記周波数目標値から前記周波数検出部からの前記周波数検出値を減算することによって、前記周波数変動量を算出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記周波数検出部によって順次算出される前記周波数検出値の高周波成分が除去された周波数目標値を生成するフィルタ部を更に備え、
前記周波数変動量演算部は、
前記周波数検出値が前記周波数目標値より高い場合において、前記周波数目標値が前記周波数基準値より低いときには、前記周波数基準値から前記周波数検出値を減算することによって前記周波数変動量を算出する一方で、前記周波数目標値が前記周波数基準値以上であるときには、前記周波数目標値から前記周波数検出値を減算することによって前記周波数変動量を算出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記周波数検出部によって順次算出される前記周波数検出値の高周波成分が除去された周波数目標値を生成するフィルタ部を更に備え、
前記周波数変動量演算部は、
前記周波数検出値が前記周波数目標値より低い場合において、前記周波数目標値が前記周波数基準値より高いときには、前記周波数基準値から前記周波数検出値を減算することによって前記周波数変動量を算出する一方で、前記周波数目標値が前記周波数基準値以下であるときには、前記周波数目標値から前記周波数検出値を減算することによって前記周波数変動量を算出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
周波数の低下を示す前記周波数変動量の絶対値が第1の基準値よりも小さい場合、及び、周波数の上昇を示す前記周波数変動量の絶対値が第2の基準値よりも小さい場合には、前記制御演算部に入力される前記周波数変動量をクリアする不感帯判定部を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項10】
前記制御演算部は、周波数の低下を示す前記周波数変動量と第1のゲインとを用いて前記有効電力の出力量を制御するための前記指令値を生成する一方で、周波数の上昇を示す前記周波数変動量と第2のゲインとを用いて前記有効電力の入力量を制御するための前記指令値を生成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項11】
複数個の請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電システムと、
前記複数個の蓄電システムを制御するための集中型制御装置とを備え、
前記複数個の蓄電システムの各々は、前記集中型制御装置に対して前記蓄電装置の充放電制限に係る情報を出力する、系統制御システム。
【請求項12】
前記複数個の蓄電システムの各々において、前記制御装置は、
周波数の低下を示す前記周波数変動量の絶対値が第1の基準値よりも小さい場合、及び、周波数の上昇を示す前記周波数変動量の絶対値が第2の基準値よりも小さい場合には、前記制御演算部に入力される前記周波数変動量をクリアする不感帯判定部を更に含み、
前記集中型制御装置は、
前記複数個の前記蓄電システムの各々からの前記情報に基づき、前記複数個の蓄電システム全体から前記電力系統に出力可能な有効電力の減少に応じて各前記蓄電システムの前記第1の基準値を低下するとともに、前記複数個の蓄電システム全体での前記電力系統から入力可能な有効電力の減少に応じて各前記蓄電システムの前記第2の基準値を減少する、請求項11記載の系統制御システム。
【請求項13】
前記複数個の蓄電システムの各々において、前記制御装置に含まれる前記制御演算部は、周波数の低下を示す前記周波数変動量と第1のゲインとを用いて前記有効電力の出力量を制御するための前記指令値を生成する一方で、周波数の上昇を示す前記周波数変動量と第2のゲインとを用いて前記有効電力の入力量を制御するための前記指令値を生成し、
前記集中型制御装置は、
前記複数個の前記蓄電システムの各々からの前記情報に基づき、前記複数個の蓄電システム全体から前記電力系統に出力可能な有効電力の減少に応じて各前記蓄電システムの前記第1のゲインを増加するとともに、前記複数個の蓄電システム全体での前記電力系統から入力可能な有効電力の減少に応じて各前記蓄電システムの前記第2のゲインを増加する、請求項11記載の系統制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システム及び系統制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来にわたる再生可能エネルギの普及とともに、火力発電機の減少が想定され、電力系統の慣性は今後ますます低くなることが予想される。慣性の低い系統では、発電機側のトラブルや負荷変動に応じて、系統周波数が変動し易くなる。
【0003】
特許第6232899号公報(特許文献1)には、蓄電装置(電力貯蔵装置)の電力を用いた有効電力を電力系統に対して入出力することで、系統周波数の変動抑制補償を行う電力補償装置が提案されている。特許文献1には、系統周波数の変動抑制のための制御定数を、周波数偏差に基づいて変更することによって、蓄電装置の電力損失を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6232899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電力補償装置では、ハイパスフィルタを通過した周波数偏差にゲインが乗算されることで、有効電力指令値が算出される。即ち、有効電力指令値は、系統周波数の変動成分を抑制する様に設定される。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、ハイパスフィルタによって得られる周波数変動成分を補償できる一方で、系統周波数の検出値と、周波数基準値(例えば、60[Hz])との高低関係は有効電力に反映されていない。このため、上記周波数変動成分を抑制するための制御出力(有効電力)が、周波数基準値から遠ざかる方向に系統周波数が変化する様に設定される虞がある。
【0007】
例えば、系統周波数が、周波数基準値より高い状態から、周波数基準値を下回らない範囲で急峻に低下した場合、電力補償装置は系統周波数を上昇させる方向に有効電力を出力する。しかしながら、この様な有効電力の出力は、系統周波数が周波数基準値から遠ざかる方向に作用するので、系統を更に不安定化することが懸念される。
【0008】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、周波数基準値からの乖離を抑制して、周波数変動を抑制する系統周波数制御を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面では、電力系統に連系される蓄電システムが提供される。蓄電システムは、蓄電装置と、電力変換器と、制御装置とを備える。電力変換器は、蓄電装置及び電力系統の間に接続されて、蓄電装置及び電力系統の間で電力を融通する。制御装置は、電力変換器が蓄電装置の充放電に伴って電力系統に対して入出力する有効電力を制御する。制御装置は、周波数検出部と、周波数変動量演算部と、制御演算部と、制限部とを備える。周波数検出部は、記電力系統の周波数検出値を生成する。周波数変動量演算部は、周波数検出部による周波数検出値から電力系統での周波数変動量を算出する。前制御演算部は、周波数変動量に応じて、系統周波数を上昇するための有効電力の出力量、又は、系統周波数を低下するための有効電力の入力量を示す指令値を生成する。制限部は、予め定められた電力系統の周波数基準値よりも周波数検出値が高い場合に、制御演算部が有効電力の出力量を示す指令値を生成したときに、指令値に従った有効電力の出力を制限する。更に、制限部は、周波数基準値よりも周波数検出値が低い場合に、制御演算部が有効電力の入力量を示す指令値を生成したときに、指令値に従った有効電力の入力を制限する。
【0010】
本開示の他のある局面では、系統制御システムが提供される。系統制御システムは、複数個の上記の蓄電システムと、複数個の蓄電システムを制御するための集中型制御装置とを備える。複数個の蓄電システムの各々は、集中型制御装置に対して蓄電装置の充放電制限に係る情報を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、系統周波数を周波数基準値から遠ざける方向に電力変換器から入力又は出力される有効電力を制限して、周波数変動量を補償するための有効電力の入力量又は出力量が制御されるので、周波数基準値からの乖離を抑制して、周波数変動を抑制する系統周波数制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る蓄電システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示された制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る系統周波数制御を説明する機能ブロック図である。
図4図3に示された不感帯判定部による不感帯処理を説明するための概念図である。
図5図3に示された上下限値設定部の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る蓄電システムによる系統周波数制御の動作例を説明する第1の波形図である。
図7】実施の形態1に係る蓄電システムによる系統周波数制御の動作例を説明する第2の波形図である。
図8】実施の形態2に係る系統周波数制御を説明する機能ブロック図である。
図9図8に示された周波数変動量演算部による周波数偏差の算出理を説明するためのフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る蓄電システムによる系統周波数制御の動作例を説明する第1の波形図である。
図11】実施の形態2に係る蓄電システムによる系統周波数制御の動作例を説明する第2の波形図である。
図12】実施の形態2に係る蓄電システムによる系統周波数制御の動作例を説明する第3の波形図である。
図13】実施の形態3に係る系統制御システムの構成を示すブロック図である。
図14図13に示された集中型制御装置及び各蓄電システムの間で授受される情報の例を説明するブロック図である。
図15図13に示された集中型制御装置の動作を説明する第1のフローチャートである。
図16図13に示された集中型制御装置の動作を説明する第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
実施の形態1.
図1に示される様に、本実施の形態に係る蓄電システム10は、蓄電装置110と、電力変換器120と、電圧検出器130と、制御装置200とを備える。蓄電システム10は、電力線2を有する電力系統に連系される。例えば、電力線2は、送電線又は配電線である。尚、図1では、表記の簡略化のために、電力線2を1本の線で記載しているが、実際には、3相交流系統の各相に対応する電力線が設けられている。図1の例では、電力線2及び蓄電システム10の接続点からみて発電機側において、電力線2は、変圧器3と接続される。その反対側において、電力線2は、負荷(図示せず)と接続される。
【0015】
蓄電装置110は、電気エネルギを貯蔵するとともに、貯蔵した電気エネルギを放出することが可能な任意の装置によって構成することができる。蓄電装置110は、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池、又は、ニッケル水素電池等の蓄電池によって構成される。或いは、蓄電装置110は、重層キャパシタ、又は、リチウムイオンキャパシタ等の大容量キャパシタで構成することも可能であり、更には、蓄電池及びキャパシタの組み合わせによって構成することも可能である。又、蓄電装置110は、フライホイールの様に、電気エネルギを運動エネルギに変換して貯蔵するものであってもよい。
【0016】
電力変換器120は、電力線2及び蓄電装置110の間に接続され、交流を直流に変換する順変換、及び、直流を交流に変換する逆変換を行うことができる。より具体的には、電力変換器120は、電力線2を流れる交流電力を直流電力に変換して、この直流電力により蓄電装置110を充電する様に、順変換を行うことができる。逆に、電力変換器120は、蓄電装置110から放電された直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を電力線2に出力する様に、逆変換を行うことができる。この様な逆変換及び順変換によって、電力変換器120は、電力系統(電力線2)及び蓄電装置の間で電力を融通する。
【0017】
本実施の形態では、電力変換器120が入出力する有効電力Pcの極性について、上記逆変換によって電力変換器120から電力線2に出力される有効電力Pcを正値(Pc>0)とする一方で、上記順変換によって電力線2から電力変換器120に入力される有効電力Pcを負値(Pc<0)と定義する。
【0018】
電力変換器120は、複数の半導体スイッチング素子(図示せず)を含み、当該半導体スイッチング素子が制御装置200からのスイッチング制御信号に従ってオンオフ制御されることによって、上記順変換(Pc<0のとき)又は逆変換(Pc>0のとき)を実行する様に構成される。
【0019】
電力変換器120は、代表的には、自己消弧能力を有する半導体スイッチング素子によって構成された自励式変換器である。自励式変換器としては、例えば、2レベル方式又は3レベル方式のMMC(Modular Multilevel Converter)等を用いることができる。電力変換器120は、制御装置200からのスイッチング制御信号に従って動作することで、有効電力Pcを電力線2に対して入出力する様に構成される。
【0020】
或いは、電力変換器120は、サイリスタ等の自己消弧能力を有さない半導体スイッチング素子によって構成された他励式変換器であってもよい。電力変換器120は、順変換及び逆変換による有効電力Pcを制御可能であれば、その回路構成は特に限定されない。
【0021】
電圧検出器130は、蓄電システム10及び電力線2の接続点、即ち、蓄電装置110が電力線2と連系する地点の電圧を検出する。
【0022】
制御装置200は、電圧検出器130によって検出された電圧に基づいて系統周波数を算出し、算出された系統周波数の変動量を補填するための有効電力Pcが電力線2に対して入出力される様に、電力変換器120のスイッチング制御信号を生成する。制御装置200がこの様に電力変換器120を制御することによって、系統周波数の変動の原因となる電力の需給アンバランスを補償することができる。電力変換器120から制御装置200には、電力変換器120の動作状態に係る情報が入力される。
【0023】
図2には、制御装置200のハードウェア構成例が示される。代表的には、制御装置200は、所定のプログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0024】
例えば、図2に示される様に、制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)202と、メモリ204と、入出力(I/O)回路206とを含む様にコンピュータベースで構成される。CPU202、メモリ204及びI/O回路206は、バス205を経由して、相互にデータの授受が可能である。メモリ204の一部領域にはプログラムが予め格納されており、CPU202が当該プログラムを実行することで、後述する系統周波数補償制御を実行することができる。I/O回路206は、制御装置200の外部(例えば、電力変換器120及び電圧検出器130)との間で、信号及びデータを入出力する。
【0025】
或いは、図2の例とは異なり、制御装置200の少なくとも一部については、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路を用いて構成することが可能である。又、制御装置200の少なくとも一部について、アナログ回路によって構成することも可能である。この様に、後述する制御装置200の各機能ブロック図を構成する各ブロックの機能は、ソフトウェア処理及びハードウェア処理の少なくとも一方によって実現することができる。
【0026】
ここで、電力系統の問題点について説明する。
有効電力の需要と供給とのバランスが崩れた場合、一般には、発電機の持つ回転機の特性によって、その過不足分が補填される。例えば、有効電力の需要が供給を上回った場合、発電機の持つ回転機の回転エネルギを有効電力に変換して電力供給が行われるため、電力系統の周波数は徐々に減少する。この場合、一般的には、発電機の調速機系制御を用いて有効電力の需要と供給との差分が補填されるが、発電機の機械入力の応答には十秒以上の時間がかかることが多く、又、調速機系は、供給する有効電力に限界がある。このため、発電機の回転エネルギの活用によって、周波数変動を補償することには、応答性に限界がある。
【0027】
更に、再生可能エネルギを利用する分散電源が電力系統内に増加すると、相対的に発電機数が減少することが想定される。電力系統内の発電機数が少なくなると、回転機による慣性の減少によって、発電機全体での回転エネルギも減少するため、系統周波数はより急峻に変動し易くなる。この様な背景から、発電機の調速機系制御のみでは、系統周波数の変動を抑制することが困難となることが懸念される。
【0028】
又、送電線を流れる有効電力が大きく変化する場合として、一部の発電機が事故により脱落する状況が想定される。この様な状況下では、脱落した発電機からは有効電力が負荷に供給されなくなるので、相対的に有効電力の需要が供給を大きく上回ることが予想される。この結果、電力系統内の発電機の数が減少すると系統周波数は急峻に減少することが懸念されるが、系統周波数が減少すると、太陽光発電システムおよび風力発電システムなどの分散電源が解列される。これにより、分散電源からの有効電力の供給も減少することで、系統周波数の更なる低下が懸念される。
【0029】
この様な周波数変動を補償するために、図1に示された蓄電システム10の様に、有効電力を電力系統(電力線2)に供給、或いは、電力系統(電力線2)から有効電力を吸収することによる電力の融通によって、系統周波数制御を行うことが必要になる。
【0030】
図3には、実施の形態1に係る系統周波数制御を説明するための機能ブロック図が示される。
【0031】
制御装置200は、周波数算出部210と、高周波成分除去フィルタ220と、周波数変動量演算部230と、不感帯判定部240と、制御演算部250と、ダイナミックリミッタ260と、上下限値設定部270と、スイッチング制御部280とを含む。
【0032】
周波数算出部210は、電圧検出器130によって検出された、電力線2上の交流電圧波形から当該電圧の周波数である系統の周波数検出値fdetを算出する。周波数検出値fdetは、当該電圧波形の1周期又は複数周期毎に、順次算出される。
【0033】
高周波成分除去フィルタ220は、周波数算出部210が順次算出する周波数検出値fdetから高周波数成分を除去した周波数目標値ftrgを出力する。例えば、高周波成分除去フィルタ220は、数秒~数十秒の周期よりも短い周期の変動成分を除去する。代表的には、高周波成分除去フィルタ220は、LPF(Low Pass Filter)や移動平均フィルタによって構成することができる。
【0034】
周波数変動量演算部230は、高周波成分除去フィルタ220が出力する周波数目標値ftrgから周波数算出部210が出力した周波数検出値fdetを減算することによって、周波数変動量Δfを算出する(Δf=ftrg-fdet)。例えば、周波数検出値fdetが周波数目標値ftrgよりも低いときには、系統周波数を上昇するために周波数変動量Δf>0に設定されてもよい。
【0035】
不感帯判定部240は、周波数変動量演算部230からの周波数変動量Δfを受けて、制御演算部250に入力される、不感帯処理後の周波数変動量Δfcを出力する。
【0036】
図4には、不感帯判定部240による不感帯処理を説明するための概念図が示される。
図4に示される様に、不感帯判定部240は、不感帯上限値fzu(fzu>0)及び不感帯下限値-fzl(fzl>0)と、周波数変動量演算部230から出力された周波数変動量Δfとの比較に基づき、不感帯処理後の周波数変動量Δfcを出力する。
【0037】
具体的には、-fzl≦Δf≦fzuのときには、Δfc=0に設定される一方で、Δf>fzuのときには、Δfc=Δf-fzu、Δf<-fzlのときには、Δfc=Δf+fzlに設定される。即ち、fzuは「第1の基準値」の一実施例に対応し、fzは「第2の基準値」の一実施例に対応する。尚、不感帯判定部240の配置は省略することも可能である。この場合には、制御演算部250に入力される周波数変動量Δfc=Δfである。
【0038】
制御演算部250は、周波数変動量ΔfcにゲインKpを乗算することで、ベースとなる電力指令値Prefbを生成する(Prefb=Kp・Δfc)。或いは、ゲインKpは、周波数の低下を示す周波数変動量(Δfc>0)に用いられるゲインKp+と、周波数の上昇を示す周波数変動量(Δfc<0)に用いられるゲインKp-とを別個に設定することも可能である。この場合には、電力指令値Prefbは、下記の式(1),(2)によって算出される。
【0039】
Prefb=Kp+・Δfc(但し、Δfc>0) …(1)
Prefb=Kp-・Δfc(但し、Δfc<0) …(2)
制御演算部250から出力された電力指令値Prefbは、ダイナミックリミッタ260に入力される。上下限値設定部270は、周波数検出値fdet(周波数算出部210)、周波数目標値ftrg(高周波成分除去フィルタ220)、及び、予め定められた系統周波数の公称値に相当する周波数基準値fref(例えば、50[Hz]又は60[Hz])の高低関係に従って、放電を制限する有効電力上限値Prefmax(Prefmax≧0)及び充電を制限する有効電力下限値Prefmin(Prefmin≦0)を可変に設定する。
【0040】
ダイナミックリミッタ260は、制御演算部250から出力された電力指令値Prefbに対して、上下限値設定部270によって設定された有効電力上限値Prefmax及び有効電力下限値Prefminを用いたリミッタ処後の有効電力指令値Prefを出力する。
【0041】
ダイナミックリミッタ260は、Prefb>0の場合には、Prefb≦PrefmaxのときにはPref=Prefbに設定する一方で、Prefb>PrefmaxのときにはPref=Prefmaxに設定する。
【0042】
一方で、ダイナミックリミッタ260は、Prefb<0の場合には、Prefb≧PrefminのときにはPref=Prefbに設定する一方で、Prefb<PrefminのときにはPref=Prefminに設定する。
【0043】
スイッチング制御部280は、ダイナミックリミッタ260から出力された有効電力指令値Prefに従って、電力変換器120に含まれる複数の半導体スイッチング素子のオンオフを制御するためのスイッチング制御信号を生成する。電力変換器120が当該スイッチング制御信号に従って動作することにより、有効電力指令値Prefに従った有効電力Pcが、電力系統(電力線2)に対して入力又は入出力される。
【0044】
例えば、電力変換器120が自励式変換器の一例である三相インバータである場合には、有効電力指令値Prefが反映された各相の電圧指令値に従うPWM(Pulse Width Modulation)制御によって、上述のスイッチング制御信号が生成される。当該各相の電圧指令値は、有効電圧指令値及び無効電圧指令値を2相/3相変換することによって求められるが、有効電圧指令値は、有効電力指令値Prefから求められる有効電流指令値と、電力線2の電流検出値から演算される有効電流計測値との偏差に基づいて演算することができる。
【0045】
又、無効電圧指令値は、別途設定された無効電力指令値から演算される無効電流指令値と、電力線2の電流検出値から演算される無効電流計測値との偏差に基づいて演算することができる。本実施の形態では、説明を簡単にするために、無効電力指令値=0とする。或いは、公知の様に、系統電圧(実効値)の変動を抑制する様に、無効電力指令値を設定することができる。
【0046】
即ち、電力変換器120は、一般的には、無効電力及び有効電力の両方を制御することが可能であるが、本実施の形態では、系統周波数制御のための有効電力の制御に焦点を当てて説明している。
【0047】
本実施の形態では、周波数変動量Δfに基づく電力指令値Prefbに対する、ダイナミックリミッタ260のリミット処理によって、系統周波数(周波数検出値fdet)を周波数基準値frefから乖離させる方向の制御出力が禁止される。
【0048】
図5には、上下限値設定部270が有効電力上限値Prefmax及び有効電力下限値Prefminを設定する動作を説明するためのフローチャートが示される。
【0049】
図5(a)に示される様に、上下限値設定部270は、有効電力上限値Prefmax(Prefmax0)の設定のために、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110aにより、周波数検出値fdetが周波数基準値frefよりも高いか否かを判定するとともに、S120aにより、周波数変動量Δf>0であるか否か(即ち、周波数目標値ftrgが周波数検出値fdetよりも高いか否か)を判定する。
【0050】
上下限値設定部270は、fdet>frefである下で(S110aのYES判定時)、Δf>0(ftrg>fdet)であるときには(S120aのYES判定時)、S130aにより、系統周波数の上昇のための有効電力の出力を制限する様に、有効電力上限値Prefmaxを設定する。例えば、S130aでは、有効電力の出力(放電)を禁止するために、Prefmax=0に設定することができる。或いは、Prefmaxは、有効電力Pcの急激な変化を避ける目的で、前回の制御周期でPrefmaxが0で無かった場合には時間経過に対して一定のレートで0に近付ける様に設定することも可能である。即ち、S130aに例示した、Prefmax=0に固定する設定は、有効電力の出力制限の最も厳しい一態様に相当する。
【0051】
一方で、上記以外の場合(S110a又はS120aのNO判定時)には、S140aにより、上記の様な有効電力の出力制限を行うことなく、通常のリミット処理のために、電力変換器120の電力定格値Pt(Pt>0)を用いて、Prefmax=Ptに設定される。
【0052】
図5(b)に示される様に、上下限値設定部270は、有効電力下限値Prefmin(Prefmin0)の設定のために、S110bにより、周波数検出値fdetが周波数基準値frefよりも低いか否かを判定するとともに、S120bにより、周波数変動量Δf<0であるか否か(即ち、周波数目標値ftrgが周波数検出値fdetよりも低いか否か)を判定する。
【0053】
上下限値設定部270は、fdet<frefである下で(S110bのYES判定時)、Δf<0(ftrg<fdet)であるときには(S120bのYES判定時)、S130bにより、系統の周波数低下のための有効電力の入力を制限する様に、有効電力下限値Prefminを設定する。例えば、S130bでは、有効電力の入力(充電)を禁止するために、Prefmin=0に設定することができる。或いは、Prefminについても、時間経過に対して一定のレートで0に近付ける様に設定することも可能である。即ち、S130bに例示した、Prefmin=0に固定とする設定は、有効電力の入力制限の最も厳しい一態様に相当する。
【0054】
一方で、上記以外の場合(S110b又はS120bのNO判定時)には、S140bにより、上記の様な有効電力の入力制限を行うことなく、通常のリミット処理のために、上述の電力定格値Pt(Pt>0)を用いて、Prefmin=-Ptに設定される。
【0055】
この様に、周波数検出値fdetに対する、周波数基準値fref及び周波数目標値ftrgの高低関係が異なる場合、即ち、fref<fdet<ftrg、又は、ftrg<fdet<frefのいずれかが成立する場合には、Δf>0に対してPrefmax=0、又は、Δf<0に対して、Prefmin=0に設定される。
【0056】
図3に戻って、Δf>0に対してPrefmax=0に設定されると、ダイナミックリミッタ260は、Prefb>0であっても、Pref=0に設定する。これにより、Δf>0(ftrg>fdet)であっても、Pref>0に設定することで周波数検出値fdetが周波数基準値frefから遠ざかるときには、Pref=0に設定することができる。
【0057】
同様に、Δf<0に対してPrefmin=0に設定されると、ダイナミックリミッタ260は、Prefb<0であっても、Pref=0に設定する。これにより、Δf<0(fdet>ftrg)であっても、Pref<0に設定することで周波数検出値fdetが周波数基準値frefから遠ざかるときには、Pref=0に設定することができる。
【0058】
図6及び図7には、実施の形態1に係る蓄電システムの動作例を説明するための波形図が示される。
【0059】
図6には、周波数変動が生じた際における周波数検出値fdet及び周波数目標値ftrgの推移の一例が示される。図7には、図6に示された周波数変動に対して蓄電システムによる系統周波数制御を適用したときに、電力変換器120から電力線2に対して入出力される有効電力の波形例が示される。
【0060】
図6に示される様に、fdet>frefで安定した状態から、時刻t1において、急峻な外乱(例えば、負荷電力減少)によって周波数検出値fdetが上昇する。この様な周波数変動に対して、通常、電力系統では、発電機の調速機系が動作することで、系統周波数が安定化される。更に、時刻t2では、発電機の脱落等により電力系統へ供給される有効電力が減少することで、周波数検出値fdetが低下した後、発電機の調速機系によって、系統周波数が再び安定化される。
【0061】
調速機系の応答性はそれ程高くないため、本実施の形態では、図6に示される周波数変動に対して、蓄電システム10による系統周波数制御を適用することで、周波数変動への高速な対応を図る。図6中に示される様に、図3で算出される、高周波成分除去フィルタ220通過後の周波数目標値ftrgは、周波数検出値fdetの変化に応じて、時刻t1~t2の期間では徐々に上昇するとともに、時刻t2以降では低下に転じる。
【0062】
実施の形態1に係る系統周波数制御によれば、時刻t1以降では、fdet>ftrgのため、Δf<0となるので、図3において、Prefb<0に設定される。更に、fdet>frefでもあるので、周波数検出値fdetに対する、周波数基準値fref及び周波数目標値ftrgの高低関係は同一である。従って、ダイナミックリミッタ260によって充電が禁止(Pref=0)されることは無く、有効電力指令値Prefは負値(Pref<0)に設定される。
【0063】
これにより、図7に示される様に、時刻t1以降では、有効電力指令値Prefが負方向に設定されて、蓄電装置110を充電するように、蓄電システム10の電力変換器120はが動作する。時間経過に伴う周波数目標値ftrgの上昇に応じて、|Δf|が小さくなるのに応じて、充電方向の|Pref|及び|Pc|も減少する。この結果、電力線2から蓄電システム10へのエネルギ出力によって系統周波数を低下させる様に、蓄電システム10を動作させることができる。
【0064】
上述の様に、時刻t2以降、周波数検出値fdetが減少に転じることにより、周波数目標値ftrgは緩やかに低下する。従って、時刻t2以降では、ftrg>fdetとなる。これに応じて、Δf>0となるので、図3において、Prefb>0に設定されることなる。
【0065】
図7中には、実施の形態1(図3)において、ダイナミックリミッタ260及び上下限値設定部270を非配置として、周波数変動量Δf(Δf=ftrg-fdet)に比例して有効電力指令値Prefを設定したときの制御動作が、比較例として一点鎖線で示される。
【0066】
比較例では、時刻t2以降において、周波数検出値fdetが周波数基準値frefより高いにも関わらず、有効電力指令値Prefが正方向に設定されて、蓄電装置110が放電するように電力変換器120が動作することになる。この様な電力変換器120の動作は、系統周波数を上昇させる方向に作用する。従って、図6に例示された周波数変動に対して、比較例に係る系統周波制御を適用すると、時刻t2以降において、周波数検出値fdetを再び上昇させて周波数基準値frefから遠ざける様に、蓄電システム10が動作することが懸念される。
【0067】
これに対して、実施の形態1に係る系統周波数制御では、時刻t2以降でのftrg>fdet(Δf>0)の場面にて、fdet>frefであることから、図5(a)で説明した様に、Prefmax=0に設定されることにより、Pref>0(Δf>0)に対して、有効電力指令値Pref=0に設定することができる。これにより、図7中に実線で示される様に、時刻t2以降においても、Pc=0が維持される。これにより、時刻t2以降においても、周波数検出値fdetが周波数基準値frefから遠ざかる方向に、蓄電システムが動作することを回避できる。
【0068】
上述の特許文献1(特許第6232899号公報)によれば、ハイパスフィルタの出力を用いることで、本実施の形態における周波数変動量Δfと同等の周波数変動分を補償する制御が実現できる。しかしながら、特許文献1では、図6の例の様に、系統周波数が、周波数基準値より高い状態から、周波数基準値を下回らない範囲で急峻に低下した場合には、図7中に一点鎖線で示した様に、系統周波数(周波数検出値fdet)を周波数基準値frefから乖離させる様に、周波数制御が作用することが懸念される。
【0069】
これに対して実施の形態1の蓄電システムによれば、周波数検出値fdetに対する、周波数目標値ftrg及び周波数基準値frefの高低関係を考慮することで、周波数検出値fdetを周波数目標値ftrgに近付ける方向の有効電力の入出力であっても、周波数検出値fdetを周波数基準値frefから遠ざける方向に作用する場合には、当該有効電力の入出力が制限される。この結果、周波数基準値からの乖離を抑制して、周波数変動を抑制する系統周波数制御を実現することができる。
【0070】
実施の形態2.
実施の形態2に係る蓄電システムでは、実施の形態1と同様のシステム構成(図1)において、系統周波数制御が図8に示される機能ブロック図の内容に変更される。
【0071】
図8に示される様に、実施の形態2に係る蓄電システムでは、制御装置200は、周波数算出部210と、高周波成分除去フィルタ220と、周波数変動量演算部290と、不感帯判定部240と、制御演算部250と、ダイナミックリミッタ260と、上下限値設定部270と、図3に示されたスイッチング制御部280とを含む。即ち、実施の形態2では、実施の形態1の構成(図3)と比較すると、周波数変動量演算部230に代えて、周波数変動量演算部290が配置される点が異なる。
【0072】
周波数変動量演算部290は、周波数検出値fdet及び周波数目標値ftrgに加えて、周波数基準値frefを更に入力される。周波数変動量演算部290は、図9に示す制御処理によって、周波数変動量Δfを算出する。尚、実施の形態2においても、不感帯判定部240は省略可能であり、この場合には、周波数変動量演算部290から出力された周波数変動量ΔfがそのままΔfc=Δfとされて、制御演算部250へ入力される。
【0073】
図9に示される様に、周波数変動量演算部290は、S210により、周波数検出値fdet及び周波数目標値ftrgの高低を比較する。fdet>ftrgのとき(S210のYES判定時)には、S220により、fref>ftrgであるか否かが判定される。
【0074】
周波数変動量演算部290は、S210のNO判定時には(fdet≦ftrg)、S230により、fdet<ftrgであるか否かを判定し、fdet<ftrgであるときには(S230のYES判定時)、S240により、ftrg>frefであるか否かを更に判定する。
【0075】
fdet>ftrg、かつ、fref>ftrgのとき(S220のYES判定時)、又は、fdet<ftrg、かつ、ftrg>frefのとき(S240のYES判定時)には、周波数変動量演算部290は、S250により、周波数目標値ftrgに代えて、周波数基準値frefを用いて、周波数変動量Δfを算出する(Δf=fref-fdet)。
【0076】
fdet>ftrg、即ち、Δf<0の状態で、fref>ftrgであるときには、Δfに従って有効電力指令値Prefを設定すると(Pref<0)、当該有効電力指令値に従う有効電力Pc(Pc<0)は、周波数基準値frefから遠ざかる方向に周波数検出値fdetを低下させる様に作用する虞があることが理解される。具体的には、ftrg<fref<fdetの関係にあって、周波数基準値frefが周波数目標値ftrg及び周波数検出値fdetの間に位置するケースでは、周波数目標値ftrgに向けて周波数検出値fdetを変化させる様に制御を行うと、周波数検出値fdetが、周波数基準値frefを飛び越えて、周波数基準値frefから遠ざかる方向に低下する様に、有効電力が過剰に制御されることが懸念される。
【0077】
同様に、fdet<ftrg、即ち、Δf>0の状態で、ftrg>frefであるときには、Δfに従って有効電力指令値Prefを設定すると(Pref>0)、当該有効電力指令値に従う有効電力Pc(Pc>0)は、周波数基準値frefから遠ざかる方向に周波数検出値fdetを上昇させる様に作用する虞がある。具体的には、周波数基準値frefが周波数目標値ftrg及び周波数検出値fdetの間に位置するケースでは(fdet<fref<ftrg)、上記と同様に、周波数検出値fdetが、周波数基準値frefを飛び越えて、周波数基準値frefから遠ざかる方向に上昇する様に、有効電力が過剰に制御されることが懸念される。
【0078】
従って、上記の2ケース(S220又はS240のYES判定時)では、周波数基準値frefを用いて周波数変動量Δfを算出することによって、周波数基準値frefから遠ざかる方向に周波数検出値fdetを変化する様に作用する有効電力の入出力を抑制する。
【0079】
これに対して、fdet>ftrg(Δf<0)、かつ、fref≦ftrgのとき(S220のNO判定時)、又は、fdet<ftrg(Δf>0)、かつ、ftrg≦frefのとき(S240のNO判定時)には、周波数変動量演算部290は、S260により、実施の形態1と同様に、周波数目標値ftrgに基づいて周波数変動量Δfを算出する(Δf=ftrg-fdet)。
【0080】
尚、fdet=ftrgとなる周波数安定状態では、S210及びS230の両方がNO判定とされることにより、S260において、Δf=0に設定される。
【0081】
実施の形態1に係る系統周波数制御では、周波数検出値fdetと、周波数目標値ftrg及び周波数基準値frefとの高低関係が同じである場合には、Δf=ftrg-fdetに比例した有効電力Pcが入力又は出力される。しかしながら、上述の2ケースでは、(ftrg-fdet)に従って、有効電力指令値Pref(Prefb)を設定すると、有効電力の入出力が、過剰、或いは、逆アクションとなって、系統周波数(周波数検出値fdet)は周波数基準値frefから遠ざかる様に制御される虞がある。
【0082】
従って、実施の形態2では、実施の形態1において、ftrg>fdetに対する有効電力の出力(蓄電装置110の放電)、又は、ftrg<fdetに対する有効電力の入力(蓄電装置110の充電)が制限されない場合であっても、周波数基準値frefと周波数目標値ftrgとの高低関係を考慮して、周波数基準値frefから遠ざかる方向に周波数検出値fdetを変化する様な有効電力の入出力を防止する様に、周波数変動量Δfを算出することができる。
【0083】
図10図12には、実施の形態2に係る蓄電システムの動作例を説明するための波形図が示される。
【0084】
図10には、周波数検出値fdet及び周波数目標値ftrgの推移の他の例が示される。図10では、図6とは異なり、fdet>frefで安定した状態から、時刻taにおいて、急峻な外乱(例えば、負荷電力増加)によって周波数検出値fdetが低下する。周波数検出値fdetは、時刻tbにおいて周波数基準値frefまで低下した後、上述した発電機の調速機の動作によって、周波数基準値frefよりも低い領域で安定する様に推移している。この様な、周波数検出値fdetの推移に応じて、高周波成分除去フィルタ220が出力する周波数目標値ftrgも徐々に低下しており、時刻tc以降では、周波数目標値ftrgは、周波数基準値frefよりも低くなっている。この結果、時刻tb~tc間では、上述した、周波数基準値frefが周波数目標値ftrg及び周波数検出値fdetの間に位置する状態となる。
【0085】
図11及び図12には、図10に示された周波数変動に対して蓄電システムによる系統周波数制御を適用したときに、電力変換器120から電力線2に対して入出力される有効電力の波形例が示される。図11及び図12において、実施の形態2(図8)に従う有効電力指令値Prefの設定が実線で示されている。
【0086】
一方で、図11には、図7と同様の比較例による、有効電力指令値Prefの波形が一点鎖線で更に示される。即ち、一点鎖線では、ダイナミックリミッタ260及び上下限値設定部270を設けることなく、周波数目標値ftrgに基づく周波数変動量Δf(Δf=ftrg-fdet)に比例して設定された、有効電力指令値Prefの推移が示される。又、図12には、実施の形態1(図3)に従って設定された有効電力指令値Prefの推移が、点線で更に示されている。
【0087】
図11及び図12に示される様に、実施の形態2に係る系統周波数制御では、時刻ta~tbの間では、周波数検出値fdetと、周波数目標値ftrg及び周波数基準値frefのそれぞれとの間の高低関係が異なるので、実施の形態1と同様のダイナミックリミッタ260及び上下限値設定部270によって、fdet<ftrgに対する有効電力の出力(蓄電装置110の放電)が制限される。ここでは、時刻ta~tbでは、Prefmax=0(Pref=0)に設定されることで、Pc=0に制御される。
【0088】
更に、実施の形態2に係る系統周波数制御では、時刻tb~tcの期間では、ftrg>fdet(Δf>0)であるのに対して、ftrg>frefであるので、図9のS240がYES判定とされて、(fref-fdet)に比例する様に、有効電力指令値Prefが制御される。これにより、(ftrg-fdet)に従って有効電力指令値Pref(Pref>0)が過大に設定されることを回避することができる。
【0089】
時刻tc以降では、周波数目標値ftrgが周波数基準値frefよりも低下するので、Δf>0に対して、ftrg≦frefとなることから、図9のS240がNO判定とされて、Δf=ftrg-fdetに従って、蓄電システム10から電力線2に入出力される有効電力Pcが制御される。
【0090】
これに対して、図11に示される比較例に係る系統周波数制御では、周波数検出値fdetが低下を始める時刻ta以降では、周波数目標値ftrgに基づく周波数変動量Δf(Δf=ftrg-fdet)に比例して、有効電力指令値Prefが設定される。これにより、周波数基準値frefよりも高い周波数目標値ftrgに基づく周波数変動量Δfに従って有効電力が制御されることで、周波数基準値frefから遠ざかる方向に系統周波数(周波数検出値fdet)を上昇させる様に、蓄電システム10が動作することが懸念される。
【0091】
又、図12に点線で示された実施の形態1に係る系統周波数制御では、時刻ta~tbの期間では、実施の形態2と同様に、周波数目標値ftrg>周波数検出値fdet>周波数基準値frefの下で、有効電力の出力(蓄電装置110の放電)を制限して、Pc=0に制御することができる。しかしながら、周波数基準値frefが周波数目標値ftrg及び周波数検出値fdetの間に位置することになる時刻tb~tcの期間では、図11の比較例と同様に、周波数基準値frefよりも高い周波数目標値ftrgに基づく周波数変動量Δfに従って有効電力指令値Prefが制御される。この結果、周波数基準値frefから遠ざかる方向に系統周波数(周波数検出値fdet)を上昇させる様に、蓄電システム10が過剰な有効電力を出力することが懸念される。
【0092】
これに対して、実施の形態2に係る系統周波数制御では、周波数目標値ftrgに基づく周波数変動量Δf、及び、周波数基準値frefに基づく周波数変動量Δfを選択的に用いることで、系統周波数(周波数検出値fdet)を周波数基準値frefから遠ざける様に有効電力Pcが制御されることを防止できる。この結果、周波数基準値からの乖離の抑制効果を更に高めて、周波数変動を抑制する系統周波数制御を実現することができる。
【0093】
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1及び2に係る蓄電システムを集中制御する系統制御システムについて説明する。
【0094】
図13に示される様に、実施の形態3に係る系統制御システム5は、複数の電力線2によって構成される、電力系統の送電網4に対して接続される複数の蓄電システム10と、集中型制御装置20とを備える。蓄電システム10は、実施の形態1又は2で説明した系統周波数制御を実行することができる。
【0095】
集中型制御装置20についても、図2で説明した制御装置のハードウェア構成例と同様に、コンピュータベースで構成することができる。或いは、集中型制御装置20の少なくとも一部の機能については、ASIC、FPGA、又は、アナログ回路等を用いて構成することも可能である。
【0096】
集中型制御装置20は、有線通信又は無線通信によって、定期的に複数の蓄電システム10との間で情報を授受する様に構成される。例えば、電力変換器120の有効電力及び無効電力の入出力実績値等、並びに、蓄電装置110のSOC(State of Charge)及び満充電容量Qfl等が、定期的に、各蓄電システム10から集中型制御装置20に対して伝送される。
【0097】
一方で、集中型制御装置20から各蓄電システム10に対しては、充電許可指令、充電禁止指令、放電許可指令、及び、放電禁止指令等の各種指令を伝送することができる。或いは、各蓄電システム10側で、蓄電装置110の充電状態から充電の可否、及び、放電の可否を判断して、判断結果を示す情報が、各蓄電システム10から集中型制御装置20に伝送されてもよい。
【0098】
系統制御システム5によれば、複数の蓄電システム10の各々を用いて、周波数補償のために電力系統に対して入出力される有効電力が確保された上で、実施の形態1及び2で説明した系統周波数制御を実行することができる。これにより、実施の形態1及び2で説明した、系統周波数制御の補償能力を高めることができる。更に、集中型制御装置20を配置することで、各蓄電システム10における各蓄電装置110の充放電制限を反映して、複数の蓄電システム10による制御能力を向上することが可能である。
【0099】
図14に示される様に、実施の形態3に係る系統制御システムでは、各蓄電システム10から集中型制御装置20に対して伝送される情報は、蓄電装置110の充放電制限に係る情報を含む。例えば、当該情報は、当該蓄電システム10が、送電網4(電力線2)に対して出力可能な放電電力上限値Pdmax(Pdmax≧0)、及び、送電網4(電力線2)から入力可能な充電電力上限値Pcmax(Pcmax≧0)を含む。
【0100】
例えば、蓄電装置110のSOCが100(%)に近い蓄電システム10では、過充電状態を防止するために、Pcmax=0に設定して、蓄電装置110の充電を制限することができる。反対に、蓄電装置110のSOCが低下した蓄電システム10では、過放電状態を防止するために、Pdmax=0に設定して、蓄電装置110の放電を制限することができる。又、故障中、又は、点検中の蓄電システム10では、蓄電装置110の充電及び放電の両方が不能であるため、Pcmax=Pdmax=0に設定される。
【0101】
或いは、各蓄電システム10の放電電力上限値Pdmax及び充電電力上限値Pcmaxは、各蓄電システム10から伝送された情報(SOC,Qfl等)を用いて、集中型制御装置20側で設定することも可能である。
【0102】
図14に示される様に、実施の形態3に係る系統制御システムでは、集中型制御装置20から各蓄電システム10に対して伝送される情報は、実施の形態1又は2に係る系統周波数制御に用いられる制御パラメータ値を含む、制御パラメータ値は、不感帯判定部240で用いられる不感帯上限値fzu(fzu>0)及び不感帯下限値-fzl(fzl>0)と、制御演算部250で用いられるゲインKp+及びKp-(Kp+>0,Kp->0)との少なくとも一方を含む。
【0103】
集中型制御装置20は、各蓄電システム10の放電電力上限値Pdmax及び充電電力上限値Pcmaxを集計することで、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)の、送電網4(即ち、電力系統)に対する放電電力上限値ΣPdmaxと、充電電力上限値ΣPcmaxとを求めることができる。
【0104】
系統制御システム5を構成する複数の蓄電システム10のいずれかにおいて、放電が制限されて、当該蓄電システムの放電電力上限値Pdmaxが定格値よりも小さくなると、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)から送電網4に対して供給できる有効電力が減少する。従って、系統周波数の急峻な低下に応答して、系統制御システム5から電力系統に出力される有効電力も減少して、系統周波数の低下を迅速に抑制することが困難になることが懸念される。
【0105】
従って、実施の形態3に係る系統制御システム5では、蓄電システム10での放電制限の発生に対応するために、図15に示すフローチャートに従って各蓄電システム10の制御パラメータ値の可変制御を実行する。
【0106】
図15に示される様に、集中型制御装置20は、S310では、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)での放電能力が低下しているか否かを判定する。例えば、S310では、各蓄電システム10の放電電力上限値Pdmaxを集計することにより、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)が電力系統に対して出力可能な有効電力の合計値(絶対値)が、定格値(絶対値)よりも低下しているか否かが判定される。或いは、放電制限が生じている蓄電システム10の個数の集計により、簡易に判定を行うことも可能である。
【0107】
放電能力が低下していない場合(S310のNO判定時)には、S330により、制御パラメータ値、例えば、不感帯上限値fzu(fzu>0)及び不感帯下限値-fzl(fzl>0)と、ゲインKp+及びKp-は、デフォルト値に維持される。
【0108】
これに対して、集中型制御装置20は、放電能力が低下している場合(S310のYES判定時)には、S320により、放電増加側に制御パラメータ値を修正する。具体的には、正値の周波数変動量Δfに適用される不感帯を狭くするためにfzu(第1の値)を減少する修正(不感帯上限値fzuを0に近付ける修正)、及び、ゲインKp+を増加する補正との少なくとも一方が実行される。
【0109】
このような調整により、一部の蓄電システム10からの有効電力の出力が制限されても、正値の周波数変動量(Δf>0)が生成される、系統周波数の低下方向の変動発生時に、各蓄電システム10から電力系統へ迅速に有効電力を供給することが可能となる。
【0110】
尚、この際の制御パラメータ値の修正量、即ち、fzuの減少量及びゲインKp+の増加量については、放電能力の低下量に応じて可変に設定することが可能である。例えば、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)が電力系統に対して出力可能な有効電力の定格値に対する、有効電力上限値ΣPdmaxの低下量が大きい程、或いは、放電制限が生じている蓄電システム10の個数が多い程、上記修正量を大きくすることができる。
【0111】
同様に、系統制御システム5を構成する複数の蓄電システム10のいずれかにおいて充電が制限されて、当該蓄電システムの充電電力上限値Pcmax(Pcmax≧0)の絶対値が定格値よりも小さくなると、系統制御システム5が吸収できる有効電力が減少する。従って、系統周波数の急峻な上昇に応答して、送電網4(電力系統)から系統制御システム5に入力される有効電力も減少して、系統周波数の上昇を迅速に抑制することが困難になることが懸念される。
【0112】
従って、実施の形態3に係る系統制御システム5では、蓄電システム10での充電制限の発生に対応するために、図16に示すフローチャートに従って各蓄電システム10の制御パラメータ値の可変制御を実行する。
【0113】
図16に示される様に、集中型制御装置20は、S350では、系統制御システム5(複数の蓄電システム10全体)の充電能力が低下しているか否かを判定する。例えば、S350では、各蓄電システム10の充電電力上限値Pcmaxを集計することにより、系統制御システム5が入力可能な有効電力の合計値が、定格値よりも低下しているか否かが判定される。或いは、充電制限が生じている蓄電システム10の個数の集計により、簡易に判定を行うことも可能である。
【0114】
充電能力が低下していない場合(S350のNO判定時)には、S370により、制御パラメータ値、例えば、不感帯上限値fzu(fzu>0)及び不感帯下限値-fzl(fzl0)と、ゲインKp+及びKp-は、デフォルト値に維持される。
【0115】
これに対して、集中型制御装置20は、充電能力が低下している場合(S350のYES判定時)には、S360により、充電増加側に制御パラメータ値を修正する。具体的には、負値の周波数変動量Δfに適用される不感帯を狭くするためにfzlの値(第2の基準値)を減少する修正(即ち、不感帯下限値-fzlを0に近付ける修正)と、ゲインKp-を増加する修正との少なくとも一方が実行される。
【0116】
このような調整により、一部の蓄電システム10への有効電力の入力が制限されても、負値の周波数変動量(Δf<0)が生成される、系統周波数の上昇方向の変動発生時に、各蓄電システム10により迅速に有効電力を吸収することが可能となる。
【0117】
尚、この際の制御パラメータ値の修正量、即ち、fzlの減少量及びゲインKp-の増加量についても、充電能力の低下量に応じて可変に設定することが可能である。例えば、系統制御システム5が電力系統から入力可能な有効電力(絶対値)の定格値に対する、充電電力上限値ΣPcmaxの低下量が多い程、上記修正量を大きくすることができる。
【0118】
尚、制御演算部250において、Δfc>0及びΔfc<0の間で共通のゲインKpが用いられる場合には、不感帯上限値fzu及び不感帯下限値-fzlのみが、図15及び図16で説明した可変制御の対象となる。
【0119】
この様に、実施の形態3に係る系統制御システムによれば、複数の蓄電システム10の一部で充電制限又は放電制限が生じたときにも、周波数変動の発生に対して迅速に有効電力を入出力することにより、実施の形態1及び2で説明した周波数変動の抑制効果を確保することができる。
【0120】
尚、図13に示す系統制御システム5において、各蓄電システム10は、変圧器3の近傍において、送電網4の各フィーダに対応して設置されているが、蓄電システム10の設置個所は特に限定されない。又、送電網内のみならず、図示しない配電網内にも蓄電システム10を設置することが可能である。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示による技術的範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
2 電力線、3 変圧器、4 送電網、5 系統制御システム、10 蓄電システム、20 集中型制御装置、110 蓄電装置、120 電力変換器、130 電圧検出器、200 制御装置、202 CPU、204 メモリ、205 バス、206 I/O回路、210 周波数算出部、220 高周波成分除去フィルタ、230,290 周波数変動量演算部、240 不感帯判定部、250 制御演算部、260 ダイナミックリミッタ、270 上下限値設定部、280 スイッチング制御部、Kp ゲイン、Pc 有効電力、Pcmax 充電電力上限値、Pdmax 放電電力上限値、Pref 有効電力指令値、Prefb 電力指令値(ベース)、Prefmax 有効電力上限値、Pt 定格値、fdet 周波数検出値、fref 周波数基準値、ftrg 周波数目標値、fzl 不感帯下限値、fzu 不感帯上限値。
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