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特許7550988センサモジュールおよびセンサモジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】センサモジュールおよびセンサモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/04 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G01L9/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023531902
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2022025323
(87)【国際公開番号】W WO2023276884
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021106304
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 博志
(72)【発明者】
【氏名】武田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 貴光
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-373991(JP,A)
【文献】米国特許第4322707(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0129769(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0025776(US,A1)
【文献】特開平6-265427(JP,A)
【文献】特開昭59-3219(JP,A)
【文献】特開2016-161539(JP,A)
【文献】特開2004-132742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26,7/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域とを備えるダイアフラム部と、
前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、
少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備え、
前記導電体部には、前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部が設けられる
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサモジュールにおいて、
前記歪検出素子および前記導電体部は一体に形成され、環状とされている
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセンサモジュールにおいて、
前記第2領域は、被測定流体による歪量の影響が前記第1領域の1/10以下である
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のセンサモジュールにおいて、
前記抵抗値調整部は、前記導電体部において、前記第2領域に対応する位置に形成された溝部により構成される
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサモジュールにおいて、
前記ダイアフラム部に配置されAuにて形成される第1電極部と、前記第1電極部に積層されAuにて形成される第2電極部とを有する電極部を備え、
前記導電体部は、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させる連結部と、前記連結部から延設され前記連結部と前記第1電極部とを電気的に接続させる引き出し部とを有し、
前記第1電極部は、少なくとも一部が前記引き出し部に積層され、
前記第1電極部と前記引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率(原子パーセント)で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成される
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサモジュールにおいて、
前記第1電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きい
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項7】
請求項5に記載のセンサモジュールにおいて、
前記第2電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きい
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項8】
請求項1に記載のセンサモジュールにおいて、
前記ダイアフラム部に配置されAuにて形成される第3電極部を有する電極部を備え、
前記導電体部は、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させる連結部と、前記連結部から延設され前記連結部と前記第3電極部とを電気的に接続させる引き出し部とを有し、
前記第3電極部は、少なくとも一部が前記引き出し部に積層され、
前記第3電極部と前記引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率(原子パーセント)で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成される
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のセンサモジュールにおいて、
前記第3電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きい
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のセンサモジュールにおいて、
前記電極部の一部を露出させた状態で、前記電極部の一部に積層される保護膜を備え、
前記電極部の前記保護膜から露出された箇所は電極パッドとされ、
平面視で、前記引き出し部と前記電極パッドとは離間して配置される
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のセンサモジュールにおいて、
前記ダイアフラム部は、被測定流体による物理量が作用するダイアフラム本体部と、前記ダイアフラム本体部に積層される絶縁層と、を有し、
前記ダイアフラム本体部は、ロックウェル硬さが35以上の析出硬化ステンレス鋼により形成される
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載のセンサモジュールにおいて、
前記導電体部には、複数の前記抵抗値調整部と、複数の前記抵抗値調整部のうちの少なくとも一つの前記抵抗値調整部の一次側と二次側とを接続させることで、前記抵抗値調整部を電気的にバイパスさせるバイパス部と、が設けられる
ことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項13】
第1領域、および、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域を備えるダイアフラム部と、前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備えるセンサモジュールの製造方法であって、
前記ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部を設けるブリッジ回路調整工程を備える
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載のセンサモジュールの製造方法において、
前記ブリッジ回路調整工程において、前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、レーザートリミングにより溝部を形成する
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【請求項15】
第1領域、および、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域を備えるダイアフラム部と、前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備えるセンサモジュールの製造方法であって、
前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部を複数設ける抵抗値調整部形成工程と、
複数の前記抵抗値調整部のそれぞれの一次側と二次側とを接続させることで、前記抵抗値調整部を電気的にバイパスさせるバイパス部をそれぞれ形成するバイパス部形成工程と、
複数の前記バイパス部のうちの少なくとも一つの前記バイパス部を、電気的に切断することで、前記導電体部の抵抗値を調整するブリッジ回路調整工程と、を備える
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載のセンサモジュールの製造方法において、
前記導電体部の連結部から延設される引き出し部に第1電極部を積層させる第1電極部積層工程と、
前記引き出し部に対して前記第1電極部が積層された箇所を熱処理する熱処理工程と、
前記第1電極部に第2電極部を積層させる第2電極部積層工程と、を備える
ことを特徴とするセンサモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュールおよびセンサモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歪抵抗素子を用いた力学量センサが知られている(例えば、特許文献1など)。
特許文献1では、力学量の加わる金属基板の表面に多層絶縁層を配置し、当該多層絶縁層上に複数の歪抵抗素子を配置している。そして、複数の歪抵抗素子を導体で電気的に接続させることで、ブリッジ回路を構成している。これにより、金属基板に印加した力学量を歪抵抗素子の抵抗値の変化として検出できるように構成している。
【0003】
この際、特許文献1では、複数の歪抵抗素子の一部を力学量が加わる力学量感知部に配置し、その他の歪抵抗素子を力学量が加わらない力学量非感知部に配置するようにしている。そして、力学量非感知部に配置した歪抵抗素子をレーザートリミングして、歪抵抗素子の抵抗値を調整することにより、ブリッジ回路全体のバランスを調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-243472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の力学量センサでは、ブリッジ回路のバランスを調整するために、歪抵抗素子の一部を力学量が加わらない力学量非感知部に配置する必要がある。そのため、このような力学量非感知部に配置した歪検出素子は、力学量の検出に有効に活用できないので、配置した歪検出素子による検出精度を最大限得ることができないといった問題があった。
【0006】
本発明の目的は、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができるセンサモジュールおよびセンサモジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセンサモジュールは、第1領域と、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域とを備えるダイアフラム部と、前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備え、前記導電体部には、前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部が設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明では、複数の歪検出素子を電気的に接続させる導電体部の少なくとも一部が、歪検出素子が配置される第1領域よりも被測定流体による影響が小さい第2領域に配置される。具体的には、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含む第2領域に、導電体部の少なくとも一部が配置される。そして、導電体部には、第2領域に対応する位置に、導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部が設けられる。これにより、全ての歪検出素子を物理量の検出に有効に活用した上で、歪検出素子による物理量の検出精度に影響を与えることなく、複数の歪検出素子および導電体部により構成されるブリッジ回路の抵抗値を調整することができる。そのため、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0009】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記歪検出素子および前記導電体部は一体に形成され、環状とされていることが好ましい。
この構成では、歪検出素子および導電体部が一体に形成されているので、センサモジュールを製造する際に、一工程で歪検出素子および導電体部を形成することができる。そのため、センサモジュールの製造工程を簡略化することができる。
さらに、歪検出素子および導電体部が環状とされているので、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置に導電体部を配置できる長さを大きくすることができる。そのため、抵抗値調整部を設けることができる面積を大きくできるので、抵抗値調整部による抵抗値の調整量を大きくすることができる。
【0010】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記第2領域は、被測定流体による歪量の影響が前記第1領域の1/10以下であることが好ましい。
この構成では、抵抗値調整部が設けられる第2領域は、歪検出素子が配置される第1領域に対して、被測定流体による歪量の影響が1/10以下であるので、歪検出素子による物理量の検出精度に影響を与えることなく、抵抗値調整部を配置することができる。そのため、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0011】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記抵抗値調整部は、前記導電体部において、前記第2領域に対応する位置に形成された溝部により構成されることが好ましい。
この構成では、抵抗値調整部が溝部により構成されるので、簡素な構成でブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0012】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記ダイアフラム部に配置されAuにて形成される第1電極部と、前記第1電極部に積層されAuにて形成される第2電極部とを有する電極部を備え、前記導電体部は、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させる連結部と、前記連結部から延設され前記連結部と前記第1電極部とを電気的に接続させる引き出し部とを有し、前記第1電極部は、少なくとも一部が前記引き出し部に積層され、前記第1電極部と前記引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率(原子パーセント)で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成されることが好ましい。
この構成では、電極部の第1電極部は、導電体部の連結部から引き出される引き出し部に積層される。そして、第1電極部と引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成される。これにより、導電体部と電極部との接続を安定させることができる。そのため、電極部を介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0013】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記第1電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きいことが好ましい。
この構成では、第1電極部において、引き出し部に積層された箇所と、引き出し部に積層されない箇所とで生じる段差部で、引き出し部が露出してしまうことを抑制することができる。
【0014】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記第2電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きいことが好ましい。
この構成では、第1電極部の厚さを小さくすることができるので、第1電極部を形成するための材料を少なくすることができる。
【0015】
本発明のセンサモジュールは、前記ダイアフラム部に配置されAuにて形成される第3電極部を有する電極部を備え、前記導電体部は、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させる連結部と、前記連結部から延設され前記連結部と前記第3電極部とを電気的に接続させる引き出し部とを有し、前記第3電極部は、少なくとも一部が前記引き出し部に積層され、前記第3電極部と前記引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率(原子パーセント)で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成されることが好ましい。
この構成では、電極部の第3電極部は、導電体部の連結部から引き出される引き出し部に積層される。そして、第3電極部と引き出し部とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部が形成される。これにより、導電体部と電極部との接続を安定させることができる。そのため、電極部を介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0016】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記第3電極部の厚さは、前記引き出し部の厚さよりも大きいことが好ましい。
この構成では、第3電極部において、引き出し部に積層された箇所と、引き出し部に積層されない箇所とで生じる段差部で、引き出し部が露出してしまうことを抑制することができる。
【0017】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記電極部の一部を露出させた状態で、前記電極部の一部に積層される保護膜を備え、前記電極部の前記保護膜から露出された箇所は電極パッドとされ、平面視で、前記引き出し部と前記電極パッドとは離間して配置されることが好ましい。
この構成では、電極パッドと引き出し部とが離間して配置されるので、電極パッドに対する拡散部の影響を少なくすることができる。そのため、電極パッドと配線等との接続を確実にすることができる。
【0018】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記ダイアフラム部は、被測定流体による物理量が作用するダイアフラム本体部と、前記ダイアフラム本体部に積層される絶縁層と、を有し、前記ダイアフラム本体部は、ロックウェル硬さが35以上の析出硬化ステンレス鋼により形成されることが好ましい。
この構成では、ダイアフラム本体部が、ロックウェル硬さが35以上の析出硬化ステンレス鋼により形成されるので、ダイアフラム本体部の物理的・化学的特性を向上させることができる。
【0019】
本発明のセンサモジュールにおいて、前記導電体部には、複数の前記抵抗値調整部と、複数の前記抵抗値調整部のうちの少なくとも一つの前記抵抗値調整部の一次側と二次側とを接続させることで、前記抵抗値調整部を電気的にバイパスさせるバイパス部と、が設けられることが好ましい。
この構成では、複数の抵抗値調整部のうちの少なくとも一つの抵抗値調整部の、電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させることで、抵抗値調整部を電気的にバイパスさせるバイパス部が設けられるので、当該バイパス部を電気的に切断することで、ブリッジ回路の抵抗値を調整することができる。そのため、ブリッジ回路の抵抗値の調整を容易にすることができる。
【0020】
本発明のセンサモジュールの製造方法は、第1領域、および、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域を備えるダイアフラム部と、前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備えるセンサモジュールの製造方法であって、前記ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部を設けるブリッジ回路調整工程を備えることを特徴とする。
本発明では、前述と同様の効果を奏することができる。
さらに、この構成では、ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部を設けるので、ブリッジ回路のバランスを確実に調整することができる。
【0021】
本発明のセンサモジュールの製造方法において、前記ブリッジ回路調整工程において、
前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、レーザートリミングにより溝部を形成することが好ましい。
この構成では、ブリッジ回路調整工程において、レーザートリミングにより溝部を形成するので、ブリッジ回路のバランスを容易に調整することができる。
【0022】
本発明のセンサモジュールの製造方法は、第1領域、および、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量が0である位置を含み前記第1領域よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域を備えるダイアフラム部と、前記第1領域に配置される複数の歪検出素子と、少なくとも一部が前記第2領域に配置され、複数の前記歪検出素子を電気的に接続させてブリッジ回路を構成する導電体部と、を備えるセンサモジュールの製造方法であって、前記導電体部における前記第2領域に対応する位置に、前記導電体部の抵抗値を調整するための抵抗値調整部を複数設ける抵抗値調整部形成工程と、複数の前記抵抗値調整部のそれぞれの一次側と二次側とを接続させることで、前記抵抗値調整部を電気的にバイパスさせるバイパス部をそれぞれ形成するバイパス部形成工程と、複数の前記バイパス部のうちの少なくとも一つの前記バイパス部を、電気的に切断することで、前記導電体部の抵抗値を調整するブリッジ回路調整工程と、を備えることを特徴とする。
本発明では、前述と同様の効果を奏することができる。
さらに、この構成では、ブリッジ回路調整工程において、複数のバイパス部のうちの少なくとも一つのバイパス部を、電気的に切断することで、導電体部の抵抗値を調整するので、ブリッジ回路の抵抗値の調整を容易にすることができる。
【0023】
本発明のセンサモジュールの製造方法において、前記導電体部の連結部から延設される引き出し部に第1電極部を積層させる第1電極部積層工程と、前記引き出し部に対して前記第1電極部が積層された箇所を熱処理する熱処理工程と、前記第1電極部に第2電極部を積層させる第2電極部積層工程と、を備えることが好ましい。
この構成では、引き出し部に対して第1電極部が積層された箇所を熱処理した後、第1電極部に第2電極部を積層させるので、第2電極部に対する熱処理の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るセンサモジュールの概略を示す平面図。
図2】第1実施形態のセンサモジュールの要部を示す拡大平面図。
図3】第1実施形態の導電体部と電極部との接続状態を示す断面図。
図4】第1実施形態のダイアフラム部の変位を示す図。
図5】第2実施形態の導電体部と電極部との接続状態を示す断面図。
図6】第3実施形態の導電体部と電極部との接続状態を示す断面図。
図7】第4実施形態のセンサモジュールの概略を示す平面図。
図8】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
図9】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
図10】第4実施形態のセンサモジュールのブリッジ回路の回路図を示す図。
図11】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
図12】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
図13】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
図14】第4実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態のセンサモジュール1の概略を示す正面図である。本実施形態のセンサモジュール1は、被測定流体の圧力を検出可能に構成されている。
図1に示すように、センサモジュール1は、ダイアフラム部2と、歪検出素子3と、導電体部4と、電極部5と、保護膜6とを備える。
【0026】
[ダイアフラム部2]
ダイアフラム部2は、被測定流体からの圧力を受けて、変位する部材である。本実施形態では、ダイアフラム部2は、ダイアフラム本体部21と、筒状部22と、絶縁層23とを有する。
ダイアフラム本体部21は、平面視で円形状とされている、本実施形態では、ダイアフラム本体部21は、筒状部22と一体に構成され、ロックウェル硬さが35以上であって、物理的・化学的な耐久性が高い析出硬化ステンレス鋼により形成されている。そのため、ダイアフラム本体部21の物理的・化学的特性を高くすることができる。
【0027】
また、本実施形態では、ダイアフラム本体部21は、図1の2点鎖線で示す第1領域211と、当該第1領域211よりも被測定流体による物理量の影響が小さい第2領域212とを有する。具体的には、平面視で、ダイアフラム本体部21の中央部分の円形状の領域が第1領域211とされ、第1領域211の周囲の円環状の領域が第2領域212とされる。さらに、第2領域212の周囲の円環状の領域が第1領域211とされる。すなわち、ダイアフラム本体部21は、中心部から周縁部に向かって、第1領域211、第2領域212、および、第1領域211を有する。なお、第1領域211および第2領域212の詳細については、後述する。
【0028】
筒状部22は、円筒状に形成された部材であり、内周側に被測定流体が導入される。本実施形態では、前述したように、筒状部22はダイアフラム本体部21と一体に構成され、ロックウェル硬さが35以上であって、物理的・化学的な耐久性が高い析出硬化ステンレス鋼により形成されている。より、具体的には、筒状部22の一方の端部に、ダイアフラム本体部21が設けられている。これにより、被測定流体は、筒状部22の他方の端部側から導入され、筒状部22の一方の端部に設けられたダイアフラム本体部21に接触する。
【0029】
絶縁層23は、ダイアフラム本体部21の表面、つまり、ダイアフラム本体部21において、被測定流体と接触する面とは反対側の面に積層されている。本実施形態では、絶縁層23は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁部材により形成されており、ダイアフラム本体部21と歪検出素子3との間の導電を絶縁する。
【0030】
[歪検出素子3]
歪検出素子3は、ダイアフラム本体部21の変位に応じた歪量を検出する素子である。本実施形態では、歪検出素子3は、導電体部4と一体に構成され、一般式Cr100-x-yAl(ただし、x、yは原子比率であり、2<x<10、1≦y≦10である)で表される薄膜合金により形成される。なお、歪検出素子3および導電体部4は、例えば、蒸着、スパッタ、パターン印刷等により形成されていてもよい。
また、本実施形態では、歪検出素子3は、第1歪検出素子31と、第2歪検出素子32と、第3歪検出素子33と、第4歪検出素子34とを有する。
【0031】
本実施形態では、平面視において、第1歪検出素子31は12時方向に配置され、第2歪検出素子32は3時方向に配置され、第3歪検出素子33は6時方向に配置され、第4歪検出素子34は9時方向に配置される。すなわち、第1歪検出素子31と第3歪検出素子33とが対向する位置に配置され、第2歪検出素子32と第4歪検出素子34とが対向する位置に配置される。
【0032】
本実施形態では、第1歪検出素子31および第3歪検出素子33は、ダイアフラム本体部21において、第2領域212の内側の第1領域211に配置されている。また、第2歪検出素子32および第4歪検出素子34は、ダイアフラム本体部21において、第2領域212の外側の第1領域211に配置されている。そして、第1歪検出素子31、第2歪検出素子32、第3歪検出素子33、および、第4歪検出素子34は、導電体部4により電気的に接続されている。
【0033】
[導電体部4]
導電体部4は、前述したように、歪検出素子3と一体に構成され、各歪検出素子3を電気的に接続させる部材である。具体的には、導電体部4は、一般式Cr100-x-yAl(ただし、x、yは原子比率であり、2<x<10、1≦y≦10である)で表される薄膜合金により形成される。そして、本実施形態では、歪検出素子3および導電体部4が環状となるように形成されている。
また、本実施形態では、導電体部4は、連結部41と、引き出し部42とを有する。
【0034】
連結部41は、各歪検出素子3の間に配置され、各歪検出素子3を電気的に接続する部材である。具体的には、連結部41は、第1歪検出素子31と第2歪検出素子32との間、第2歪検出素子32と第3歪検出素子33との間、第3歪検出素子33と第4歪検出素子34との間、第4歪検出素子34と第1歪検出素子31との間に配置されている。これにより、各歪検出素子3および連結部41によりブリッジ回路が構成される。
【0035】
そして、本実施形態では、第1歪検出素子31と第2歪検出素子32との間、第2歪検出素子32と第3歪検出素子33との間、第3歪検出素子33と第4歪検出素子34との間、および、第4歪検出素子34と第1歪検出素子31との間に配置された連結部41には、第2領域212に対応する位置に抵抗値調整部43が形成されている。
【0036】
より具体的には、第1歪検出素子31と第2歪検出素子32との間に配置された連結部41において、第1歪検出素子31と引き出し部42との間、または、引き出し部42と第2歪検出素子32との間に、抵抗値調整部43が1つ設けられている。
同様に、第2歪検出素子32と第3歪検出素子33との間に配置された連結部41において、第2歪検出素子32と引き出し部42との間、または、引き出し部42と第3歪検出素子33の間に、抵抗値調整部43が1つ設けられている。
同様に、第3歪検出素子33と第4歪検出素子34との間に配置された連結部41において、第3歪検出素子33と引き出し部42との間、または、引き出し部42と第4歪検出素子34の間に、抵抗値調整部43が1つ設けられている。
同様に、第4歪検出素子34と第1歪検出素子31との間に配置された連結部41において、第4歪検出素子34と引き出し部42との間、または、引き出し部42と第1歪検出素子31の間に、抵抗値調整部43が1つ設けられている。
このように、本実施形態では、連結部41において、引き出し部42を挟んだ8箇所のうち、最大で4箇所に抵抗値調整部43が設けられている。
【0037】
図2は、センサモジュール1の要部を示す拡大平面図である。
図2に示すように、抵抗値調整部43は、導電体部4の連結部41において、第2領域212に対応する位置に形成された溝部431により構成される。本実施形態では、連結部41が延びる方向と交差する方向に対して、互い違いに4本の溝部431が形成されている。これにより、連結部41において電流が流れる面積が変わるので、連結部41の抵抗値が調整される。
なお、抵抗値調整部43は、上記構成に限られるものではなく、例えば、1本の溝部により構成されていてもよく、あるいは、5本以上の溝部により構成されていてもよい。さらに、複数の溝部が互い違いに形成されていなくてもよい。
また、抵抗値調整部43による抵抗値の調整方法については、後述する。
【0038】
図3は、導電体部4と電極部5との接続状態を示す断面図である。
図1図3に示すように、引き出し部42は、連結部41から電極部5に向かって延設されており、連結部41と電極部5とを電気的に接続させている。本実施形態では、4つ設けられた電極部5に向かって4つの引き出し部42が設けられている。なお、引き出し部42と電極部5との接続の詳細については、後述する。
【0039】
[電極部5]
電極部5は、歪検出素子3にて検出した信号を、センサモジュール1の外部に設けられた回路基板等に出力するための所謂端子部である。本実施形態では、電極部5は、Auにて形成されている。
また、本実施形態では、図3に示すように、電極部5は、第1電極部51と、第2電極部52とを有する。
【0040】
第1電極部51は、ダイアフラム部2の絶縁層23に配置されている。そして、当該第1電極部51に第2電極部52が積層されている。
ここで、本実施形態では、第1電極部51の端部の一部は、導電体部4の引き出し部42に積層されている。そして、本実施形態では、後述するように、第1電極部51と引き出し部42とは、熱処理により接続されている。そのため、第1電極部51と引き出し部42とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、第1電極部51と引き出し部42とが融合して拡散部7が形成されている。
【0041】
本実施形態では、拡散部7は、第1電極部51の主成分であるAuと、引き出し部42の主成分であるCrとの合金として構成されている。具体的には、拡散部7は、原子比率(原子パーセント)で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となるように構成されている。これにより、引き出し部42と第1電極部51との接続を安定させることができる。そのため、電極部5を介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0042】
また、図3に示すように、本実施形態では、第1電極部51は、引き出し部42よりも厚さが大きくなるように構成されている。
ここで、仮に、第1電極部51よりも引き出し部42の方が厚さが大きい場合、第1電極部51において、引き出し部42に積層された箇所と、引き出し部42に積層されない箇所とで生じる段差部511で、引き出し部42が露出するおそれがある。
これに対し、本実施形態では、第1電極部51は、引き出し部42よりも厚さが大きくなるように構成されているので、段差部511で、引き出し部42が露出してしまうことを抑制することができる。
【0043】
[保護膜6]
保護膜6は、電極部5の一部を除いて、ダイアフラム部2の略表面全体を覆うように円形状に積層されている。なお、図1では、保護膜6は、1点鎖線で囲まれた領域として示している。
本実施形態では、保護膜6は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁部材により形成されている。これにより、本実施形態では、イオン性の汚れ等による歪検出素子3の表面電荷への影響を抑制できる。つまり、イオン性の汚れ等によって各歪検出素子3間の電圧が変化して、検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
なお、保護膜6は、上記構成に限られるものではなく、例えば、絶縁性の樹脂により構成されていてもよい。また、保護膜6は、電極部5の一部を除いて、ダイアフラム部2の略表面全体を覆うように円形状に積層されることに限られるものではなく、例えば、各歪検出素子3を覆うように帯状に形成されていてもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、電極部5において、保護膜6から露出された箇所は、電極パッド8とされている。そして、図3に示すように、断面視で電極パッド8と引き出し部42とは、離間して配置されている。これにより、電極パッド8に対する拡散部7の影響を少なくすることができる。そのため、電極パッド8と配線等との接続を確実にすることができる。
【0045】
[センサモジュール1の製造方法]
次に、センサモジュール1の製造方法について説明する。
本実施形態のセンサモジュール1の製造方法は、絶縁層成膜工程と、パターン形成工程と、第1電極部積層工程と、熱処理工程と、第2電極部積層工程と、ブリッジ回路調整工程と、保護膜積層工程とを有する。
【0046】
[絶縁層成膜工程]
先ず、ロックウェル硬さ35以上の析出硬化ステンレス鋼により形成されたダイアフラム本体部21の表面にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等を成膜して絶縁層23を形成する。
なお、絶縁層成膜工程では、ダイアフラム本体部21の表面に、絶縁性のガラス等をコーティングさせてもよい。
【0047】
[パターン形成工程]
次に、絶縁層積層工程にて形成した絶縁層23の表面に、一般式Cr100-x-yAlxBy(ただし、x、yは原子比率であり、2<x<10、1≦y≦10である)で表される薄膜合金のパターンを形成することにより、歪検出素子3および導電体部4を形成する。
【0048】
[第1電極部積層工程]
次に、パターン印刷工程で形成した導電体部4の引き出し部42の端部に、Auにて形成された第1電極部51を積層させる。この際、第1電極部51の端部の一部が、引き出し部42の端部に積層するように、第1電極部51を形成する。
【0049】
[熱処理工程]
そして、引き出し部42の端部に対して、第1電極部51が積層された箇所を熱処理する。これにより、第1電極部51と引き出し部42とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部が融合して拡散部7が形成される。この際、当該拡散部7は、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となるように形成される。
【0050】
[第2電極部積層工程]
熱処理工程において、第1電極部51と引き出し部42とが積層された箇所を熱処理した後、第2電極部52を第1電極部51に積層させる。これにより、第2電極部52に対する熱処理の影響を抑制することができる。
【0051】
[ブリッジ回路調整工程]
次に、ブリッジ回路調整工程では、パターン印刷工程にて形成した歪検出素子3および導電体部4により構成されるブリッジ回路の抵抗値を調整する。具体的には、当該ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、第2領域212に対応する位置に配置された連結部41に、導電体部4の抵抗値を調整するための抵抗値調整部43を設ける。より具体的には、第2歪検出素子32と第3歪検出素子33との間に配置された連結部41、および、第4歪検出素子34と第1歪検出素子31との間に配置された連結部41に、レーザートリミングにより溝部431を形成することにより、抵抗値調整部43を形成する。これにより、ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、導電体部4の抵抗値を調整するための抵抗値調整部43を設けるので、ブリッジ回路のバランスを確実に調整することができる。さらに、レーザートリミングにより溝部431を形成するので、ブリッジ回路のバランスを容易に調整することができる。
【0052】
[保護膜積層工程]
最後に、電極部5の一部を除いて、ダイアフラム部2の略表面全体を覆うようにシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を成膜して保護膜6を形成する。
なお、保護膜積層工程では、ダイアフラム本体部21の表面に、絶縁性のガラスをコーティングさせてもよい。さらに、保護膜積層工程は、ブリッジ回路調整工程の前に行ってもよい。
【0053】
[第1領域211および第2領域212について]
図4は、ダイアフラム部2の変位を示す図である。具体的には、図4は、ダイアフラム部2の変位と、歪検出素子3および抵抗値調整部43の位置との関係を示す図である。
図4に示すように、ダイアフラム部2のダイアフラム本体部21は、被測定流体からの圧力を受けた場合に変位する、つまり、歪量εが増加する。この際、ダイアフラム本体部21は、中心部に最も大きな引張歪が生じる。そして、ダイアフラム本体部21は、中心部から周縁部に向かって、徐々に歪量εの影響が小さくなる。そして、ダイアフラム本体部21は、中心部と周縁部との中間地点で、歪量εがゼロになる。その後、ダイアフラム本体部21は、中間地点から周縁部に向かって、徐々に圧縮歪が生じる。
【0054】
ここで、本実施形態では、ダイアフラム本体部21の第1領域211は被測定流体による歪量εの影響が大きい箇所とされ、第2領域212は、被測定流体による歪量εの影響が小さい箇所とされている。具体的には、第2領域212は、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量εが0である位置を含み、かつ、歪量εの影響が第1領域211の最大値の箇所の1/10以下の領域とされている。すなわち、第1領域211において、歪量εの影響の最大値を100とした場合、第2領域212は、歪量εの影響が10以下の領域である。
本実施形態では、このような第2領域212に抵抗値調整部43が設けられるので、全ての歪検出素子3を物理量の検出に有効に活用した上で、歪検出素子3による物理量の検出精度に影響を与えることなく、抵抗値調整部43を配置することができる。そのため、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0055】
以上のような第1実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、複数の歪検出素子3を電気的に接続させる導電体部4の少なくとも一部が、歪検出素子3が配置される第1領域211よりも被測定流体による影響が小さい第2領域212に配置される。具体的には、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量εが0である位置を含む第2領域212に、導電体部4の少なくとも一部が配置される。そして、導電体部4には、第2領域212に対応する位置に、導電体部4の抵抗値を調整するための抵抗値調整部43が設けられる。これにより、全ての歪検出素子3を物理量の検出に有効に活用した上で、歪検出素子3による物理量の検出精度に影響を与えることなく、複数の歪検出素子3および導電体部4により構成されるブリッジ回路の抵抗値を調整することができる。そのため、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0056】
(2)本実施形態では、歪検出素子3および導電体部4が一体に形成されているので、センサモジュール1を製造する際に、一工程で歪検出素子3および導電体部4を形成することができる。そのため、センサモジュール1の製造工程を簡略化することができる。
さらに、歪検出素子3および導電体部4が環状とされているので、被測定流体による物理量の影響によって生じる歪量εが0である位置に導電体部4を配置できる長さを大きくすることができる。そのため、抵抗値調整部43を設けることができる面積を大きくできるので、抵抗値調整部43による抵抗値の調整量を大きくすることができる。
【0057】
(3)本実施形態では、抵抗値調整部43が設けられる第2領域212は、歪検出素子3が配置される第1領域211に対して、被測定流体による歪量εの影響が1/10以下であるので、歪検出素子3による物理量の検出精度に影響を与えることなく、抵抗値調整部43を配置することができる。そのため、検出精度の低下を抑制でき、かつ、ブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0058】
(4)本実施形態では、抵抗値調整部43が溝部431により構成されるので、簡素な構成でブリッジ回路のバランスを調整することができる。
【0059】
(5)本実施形態では、電極部5の第1電極部51は、導電体部4の連結部41から引き出される引き出し部42に積層される。そして、第1電極部51と引き出し部42とが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部7が形成される。これにより、導電体部4と電極部5との接続を安定させることができる。そのため、電極部5を介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0060】
(6)本実施形態では、第1電極部51の厚さは、引き出し部42の厚さよりも大きい。これにより、第1電極部51において、引き出し部42に積層された箇所と、引き出し部42に積層されない箇所とで生じる段差部511で、引き出し部42が露出してしまうことを抑制することができる。
【0061】
(7)本実施形態では、電極パッド8と引き出し部42とが離間して配置されるので、電極パッド8に対する拡散部7の影響を少なくすることができる。そのため、電極パッド8と配線等との接続を確実にすることができる。
【0062】
(8)本実施形態では、ダイアフラム本体部21がロックウェル硬さが35以上の析出硬化ステンレス鋼により形成されるので、ダイアフラム本体部21の物理的・化学的特性を向上させることができる。
【0063】
(9)本実施形態では、ブリッジ回路調整工程において、ブリッジ回路の抵抗バランスを測定しながら、導電体部4の抵抗値を調整するための抵抗値調整部43を設けるので、ブリッジ回路のバランスを確実に調整することができる。
【0064】
(10)本実施形態では、ブリッジ回路調整工程において、レーザートリミングにより溝部431を形成するので、ブリッジ回路のバランスを容易に調整することができる。
【0065】
(11)本実施形態では、引き出し部42に対して第1電極部51が積層された箇所を熱処理した後、第1電極部51に第2電極部52を積層させるので、第2電極部52に対する熱処理の影響を抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。
第2実施形態では、第2電極部52Aが引き出し部42Aよりも厚さが大きくされる点で第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図5は、第2実施形態のセンサモジュール1Aの導電体部4Aと電極部5Aとの接続状態を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、第1電極部51Aは、ダイアフラム部2の絶縁層23に配置されている。そして、当該第1電極部51Aに第2電極部52Aが積層されている。
また、前述した第1実施形態と同様に、第1電極部51Aの端部の一部は、導電体部4Aの引き出し部42Aに積層されており、第1電極部51Aと引き出し部42Aとが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には拡散部7Aが形成されている。
【0068】
そして、本実施形態では、第1電極部51Aは引き出し部42Aよりも厚さが小さくなるように構成され、第2電極部52Aは引き出し部42Aよりも厚さが大きくなるように構成される。これにより、第1電極部51Aの厚さを小さくすることができるので、第1電極部51Aを形成するための材料を少なくすることができる。
【0069】
本実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、拡散部7Aは、第1電極部51Aの主成分であるAuと、引き出し部42Aの主成分であるCrとの合金として構成されている。具体的には、拡散部7Aは、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となるように構成されている。これにより、引き出し部42Aと第1電極部51Aとの接続を安定させることができる。そのため、電極部5Aを介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、第2電極部52Aは、引き出し部42Aよりも厚さが大きくなるように構成されている。そのため、第2電極部52Aにおいて、引き出し部42Aに積層された箇所と、引き出し部42Aに積層されない箇所とで生じる段差部521Aで、引き出し部42Aが露出してしまうことを抑制することができる。
【0071】
以上のような第2実施形態では、次の効果を奏することができる。
(12)本実施形態では、第2電極部52Aの厚さは、引き出し部42Aの厚さよりも大きい。これにより、第1電極部51Aの厚さを小さくすることができるので、第1電極部51Aを形成するための材料を少なくすることができる。
【0072】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図面に基づいて説明する。
第3実施形態では、引き出し部42Bと第3電極部53Bとが接続される点で第1、2実施形態と異なる。なお、第3実施形態において、第1、2実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図6は、第3実施形態のセンサモジュール1Bの導電体部4Bと電極部5Bとの接続状態を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、第3電極部53Bが、ダイアフラム部2の絶縁層23に配置されている。すなわち、本実施形態では、電極部5Bは、単層の第3電極部53Bにより構成されている。
【0074】
そして、本実施形態では、第3電極部53Bの端部の一部が、導電体部4Bの引き出し部42Bに積層されている。そして、本実施形態では、第3電極部53Bと引き出し部42Bとは、熱処理により接続されている。そのため、第3電極部53Bと引き出し部42Bとが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、第3電極部53Bと引き出し部42Bとが融合して拡散部7Bが形成されている。
【0075】
本実施形態では、前述した第1、2実施形態と同様に、拡散部7Bは、第3電極部53Bの主成分であるAuと、引き出し部42Bの主成分であるCrとの合金として構成されている。具体的には、拡散部7Bは、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となるように構成されている。これにより、引き出し部42Bと第3電極部53Bとの接続を安定させることができる。そのため、電極部5Bを介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、第3電極部53Bは、引き出し部42Bよりも厚さが大きくなるように構成されている。そのため、第3電極部53Bにおいて、引き出し部42Bに積層された箇所と、引き出し部42Bに積層されない箇所とで生じる段差部531Bで、引き出し部42Bが露出してしまうことを抑制することができる。
【0077】
以上のような第3実施形態では、次の効果を奏することができる。
(13)本実施形態では、電極部5Bの第3電極部53Bは、導電体部4Bの引き出し部42Bに積層される。そして、第3電極部53Bと引き出し部42Bとが積層された箇所の深さ方向の少なくとも一部には、原子比率で、Au:60%より大きい、Cr:10%より大きい、となる拡散部7Bが形成される。これにより、導電体部4Bと電極部5Bとの接続を安定させることができる。そのため、電極部5Bを介して出力する信号の特性を安定させることができる。
【0078】
(14)本実施形態では、第3電極部53Bの厚さは、引き出し部42Bの厚さよりも大きい。これにより、第3電極部53Bにおいて、引き出し部42Bに積層された箇所と、引き出し部42Bに積層されない箇所とで生じる段差部531Bで、引き出し部42Bが露出してしまうことを抑制することができる。
【0079】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図面に基づいて説明する。
第4実施形態では、導電体部4Cには、複数の抵抗値調整部43Cのうちの少なくとも一つの抵抗値調整部43Cの、電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させることで、抵抗値調整部43Cを電気的にバイパスさせるバイパス部44Cが設けられる点で第1~3実施形態と異なる。なお、第4実施形態において、第1~3実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0080】
図7は、第4実施形態のセンサモジュール1Cの概略を示す平面図である。
図7に示すように、センサモジュール1Cは、ダイアフラム部2と、歪検出素子3と、導電体部4Cと、電極部5と、保護膜6と、電極パッド8とを備える。
【0081】
[導電体部4C]
導電体部4Cは、前述した第1~第3実施形態の導電体部4,4A,4Bと同様に、歪検出素子3と一体に構成され、各歪検出素子3を電気的に接続させる部材である。そして、本実施形態では、導電体部4Cは、連結部41Cと、引き出し部42Cと、抵抗値調整部43Cと、バイパス部44Cとを有する。なお、引き出し部42Cは、バイパス部44Cの一部を構成する。
【0082】
抵抗値調整部43Cは、前述した第1~第3実施形態と同様に、導電体部4Cの連結部41Cにおいて、第2領域212に対応する位置に形成された溝部により構成される。本実施形態では、抵抗値調整部43Cは、通電された際の抵抗値がそれぞれ異なる第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cを有する。これらの、第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cは、形成された溝部の本数が多いほど通電された際の抵抗値が大きくなるように構成されている。これにより、第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cを通電させた場合の補正量は、例えば、それぞれ10mV、20mV、40mV、80mVとされている。
この場合、第1抵抗値調整部431Cのみを通電させた場合の補正量は10mVとなり、第1抵抗値調整部431Cおよび第2抵抗値調整部432Cを通電させた場合の補正量は30mV(10mV+20mV)となる。また、第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、および、第3抵抗値調整部433Cを通電させた場合の補正量は70mV(10mV+20mV+40mV)となり、第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cを通電させた場合の補正量は150mV(10mV+20mV+40mV+80mV)となる。すなわち、本実施形態では、通電させる抵抗値調整部43Cの組み合わせにより、15パターンの補正量の補正を実施できるように構成されている。
なお、各抵抗値調整部431C,432C,433C,434Cによる補正は、プラス側の電圧値に限られるものではなく、例えば、マイナス側の電圧値であってもよい。
【0083】
バイパス部44Cは、抵抗値調整部43Cの電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させることで、抵抗値調整部43Cを電気的にバイパスさせるように構成されている。本実施形態では、バイパス部44Cは、第1バイパス部441C、第2バイパス部442C、第3バイパス部443C、および、第4バイパス部444Cを有する。
第1バイパス部441Cは、第1バイパス引き出し部451C、引き出し部42C、および、電極部5の一部(具体的には、第1バイパス引き出し部451Cと引き出し部42Cとの間の電極部5の部分)により構成され、第1抵抗値調整部431Cの電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させるように構成されている。第2バイパス部442Cは、第2バイパス引き出し部452C、引き出し部42C、および、電極部5の一部(具体的には、第2バイパス引き出し部452Cと引き出し部42Cとの間の電極部5の部分)により構成され、第2抵抗値調整部432Cの電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させるように構成されている。第3バイパス部443Cは、第3バイパス引き出し部453C、引き出し部42C、および、電極部5の一部(具体的には、第3バイパス引き出し部453Cと引き出し部42Cとの間の電極部5の部分)により構成され、第3抵抗値調整部433Cの電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させるように構成されている。第4バイパス部444Cは、第4バイパス引き出し部454C、引き出し部42C、および、電極部5の一部(具体的には、第4バイパス引き出し部454Cと引き出し部42Cとの間の電極部5の部分)により構成され、第4抵抗値調整部434Cの電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させるように構成されている。
【0084】
[センサモジュール1Cの製造方法]
次に、センサモジュール1Cの製造方法について説明する。
本実施形態のセンサモジュール1Cの製造方法は、絶縁層成膜工程と、パターン形成工程と、第1電極部積層工程と、熱処理工程と、第2電極部積層工程と、ブリッジ回路調整工程と、保護膜積層工程とを有する。なお、絶縁層成膜工程、第1電極部積層工程、熱処理工程、第2電極部積層工程、および、保護膜積層工程は、前述した第1実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0085】
[パターン形成工程]
本実施形態のパターン形成工程では、絶縁層積層工程にて形成した絶縁層23の表面に、一般式Cr100-x-yAlxBy(ただし、x、yは原子比率であり、2<x<10、1≦y≦10である)で表される薄膜合金のパターンを形成することにより、歪検出素子3および導電体部4Cを形成する。この際、本実施形態では、導電体部4Cを形成した後に、複数の抵抗値調整部43Cおよびバイパス部44Cを形成する。すなわち、パターン形成工程は、本発明の抵抗値調整部形成工程およびバイパス部形成工程の一例である。
【0086】
[ブリッジ回路調整工程]
図8図9は、本実施形態のブリッジ回路調整工程を示す図である。
図8に示すように、ブリッジ回路調整工程では、例えば、第1バイパス部441Cを電気的に切断する。具体的には、レーザートリミングにより、第1バイパス部441Cの第1バイパス引き出し部451Cを切断する。これにより、第1バイパス部441Cには通電されず、第1抵抗値調整部431Cに通電されるようになる。そのため、導電体部4Cの抵抗値を第1抵抗値調整部431Cにより調整することができる。
これに対し、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cは、第2バイパス部442C、第3バイパス部443C、および、第4バイパス部444Cによりバイパスされるので、抵抗値の調整は行われない。このため、図8に示す状態では、第1抵抗値調整部431Cのみによるブリッジ回路の抵抗値の補正、例えば、10mVの補正が行われることになる。
なお、第1バイパス部441Cを電気的に切断する際に、例えば、第1バイパス部441Cを構成する引き出し部42Cや電極部5をレーザートリミング等により切断してもよい。
【0087】
また、第1抵抗値調整部431Cによる補正ではブリッジ回路の抵抗値のバランス調整が十分ではない場合には、図9に示すように、例えば、第3バイパス部443Cの第3バイパス引き出し部453Cを電気的に切断する。これにより、第3バイパス部443Cには通電されず、第3抵抗値調整部433Cに通電されるようになる。そのため、導電体部4Cの抵抗値を第3抵抗値調整部433Cにより調整することができる。すなわち、図9に示す状態では、第1抵抗値調整部431Cおよび第3抵抗値調整部433Cによるブリッジ回路の抵抗値の補正、例えば、50mV(10mV+40mV)の補正が行われることになる。
このように、本実施形態では、必要に応じて、複数のバイパス部44Cのうちの少なくとも一つのバイパス部44Cを、レーザートリミング等により電気的に切断すれば、所望の補正量を得ることができるので、ブリッジ回路の抵抗値の調整を容易にすることができる。
さらに、レーザートリミング等により切断した引き出し部42Cの箇所でクラック等が進行したとしても、バイパス部44Cは既に切断されていて、ブリッジ回路の抵抗値に影響を及ぼすことはない。そのため、切断箇所に発生するクラックにより、出力電圧が変化してしまうことを防止できる。
なお、第3バイパス部443Cを電気的に切断する際に、例えば、第3バイパス部443Cを構成する引き出し部42Cや電極部5をレーザートリミング等により切断してもよい。
【0088】
さらに、詳細なブリッジ回路調整工程について説明する。
図10は、本実施形態のセンサモジュール1Cのブリッジ回路の回路図を示す図である。また、図11図14は、ブリッジ回路調整工程を示す図である。
図10に示すように、第1~第4歪検出素子31~34の抵抗値をそれぞれR1~R4とし、第1~第4抵抗値調整部431C~434Cの抵抗値をそれぞれr1~r4として説明する。そして、第1歪検出素子31および第2歪検出素子32に接続される電極パッド8をVout(+)、第2歪検出素子32および第3歪検出素子33に接続される電極パッド8をVin(+)、第3歪検出素子33および第4歪検出素子34に接続される電極パッド8をVout(-)、第4歪検出素子34および第1歪検出素子31に接続される電極パッド8をVin(-)となるように入力・出力電圧を設定すると、図10に示す経路a~hにおいて、Voutは以下の式(1)のように示すことができる。
【0089】
【数1】
【0090】
ここで、図11に示すように、経路fを構成する第3バイパス引き出し部453Cを切断すると、電流は図12に示すような経路で流れることになる。そうすると、第3歪検出素子33には第3抵抗値調整部433Cの抵抗が加算されるので、当該経路の抵抗値は、R3+r3となる。この場合のVout’は以下の式(2)のように示すことができる。
【0091】
【数2】
【0092】
この場合、式(2)のVout’は式(1)のVoutよりも大きくなるので、プラス側の補正を行うことができる。
【0093】
また、図13に示すように、経路eを構成する引き出し部42Cを切断すると、電流は図14に示すような経路で流れることになる。そうすると、第2歪検出素子32には第3抵抗値調整部433Cの抵抗が加算されるので、当該経路の抵抗値は、R2+r3となる。この場合のVout’’は以下の式(3)のように示すことができる。
【0094】
【数3】
【0095】
この場合、式(3)のVout’’は式(1)のVoutよりも小さくなるので、マイナス側の補正を行うことができる。
このように、本実施形態では、バイパス部44Cにおいて、第1~第4バイパス引き出し部451C~454C、および、引き出し部42Cのいずれかを切断することにより、プラス側またはマイナス側の補正を行うことができる。
【0096】
以上のような第4実施形態では、次の効果を奏することができる。
(15)本実施形態では、複数の抵抗値調整部43Cのうちの少なくとも一つの抵抗値調整部43Cの、電流の向きにおける一次側と二次側とを接続させることで、抵抗値調整部43Cを電気的にバイパスさせるバイパス部44Cが設けられるので、当該バイパス部44Cを電気的に切断することで、ブリッジ回路の抵抗値を調整することができる。そのため、ブリッジ回路の抵抗値の調整を容易にすることができる。
【0097】
[変形例]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0098】
前記各実施形態では、第2領域212は、被測定流体による歪量εの影響が第1領域211の1/10以下の領域であったが、これに限定されない。例えば、第2領域は、被測定流体による歪量の影響が第1領域の1/5以下の領域であってもよく、第1領域よりも被測定流体による歪量の影響が小さい領域であればよい。
【0099】
前記各実施形態では、抵抗値調整部43,43Cは、第2領域212に対応する位置に形成された溝部431により構成されていたが、これに限定されない。例えば、抵抗値調整部は、連結部に形成された切欠き部により構成されていてもよく、導電体部の抵抗値を調整可能な形状あればよい。
また、前記各実施形態では、抵抗値調整部43,43Cは連結部41,41Cに4つ設けられていたが、これに限定されない。例えば、連結部に抵抗値調整部が設けられる数は3つ以下であってもよい。また、連結部に抵抗値調整を5つ以上設けることで、より微細な補正をできるようにしてもよい。
【0100】
前記各実施形態では、ダイアフラム本体部21は、析出硬化ステンレス鋼により形成されていたが、これに限定されない。例えば、ダイアフラム本体部は、SUS304やSUS316等のステンレス鋼により形成されていてもよく、あるいは、セラミック等の材料により形成されていてもよい。
【0101】
前記各実施形態では、歪検出素子3および導電体部4,4A,4B,4Cは、一般式Cr100-x-yAl(ただし、x、yは原子比率であり、2<x<10、1≦y≦10である)で表される薄膜合金により形成されていたが、これに限定されない。例えば、歪検出素子および導電体部は、一般的な薄膜合金により形成されていてもよく、歪検出素子および導電体部を形成する素材の組成は、導電性であれば特に限定されない。
【0102】
前記各実施形態では、保護膜6は、電極部5の一部を除いて、ダイアフラム部2の略表面全体を覆うように円形状に積層されていたが、これに限定されない。例えば、保護膜は、歪検出素子や導電体部に対応する箇所に積層されていてもよく、歪検出素子および導電体部を覆うように積層されていればよい。さらに、保護膜が設けられない場合も本発明に含まれる。
【0103】
前記第1~第3実施形態では、歪検出素子3および導電体部4,4A,4Bは、パターン形成工程において同時に形成されていたが、これに限定されない。例えば、歪検出素子および導電体部は、別々に形成されていてもよい。
また、前記第4実施形態では、歪検出素子3、抵抗値調整部43C、および、バイパス部44Cは、パターン形成工程において同時に形成されていたが、これに限定されない。例えば、歪検出素子、抵抗値調整部、および、バイパス部は、別々に形成されていてもよい。
【0104】
前記第4実施形態では、第1抵抗値調整部431C、第2抵抗値調整部432C、第3抵抗値調整部433C、および、第4抵抗値調整部434Cは、それぞれ異なる抵抗値となるように構成されていたが、これに限定されない。例えば、第1抵抗値調整部、第2抵抗値調整部、第3抵抗値調整部、および、第4抵抗値調整部は、同じ抵抗値となるように構成されていてもよく、あるいは、これらのうちの2つが同じ抵抗値となるように構成されていてもよく、また、これらのうちの3つが同じ抵抗値となるように構成されていてもよい。さらに、第1抵抗値調整部、第2抵抗値調整部、第3抵抗値調整部、および、第4抵抗値調整部による補正量は、入力電圧や出力電圧等を考慮して、任意に設定することができる。
【0105】
前記各実施形態では、センサモジュール1,1A,1Bは、被測定流体の圧力を検出可能に構成されていたが、これに限定されない。例えば、本発明のセンサモジュールは、差圧や温度等の物理量を検出可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1,1A,1B,1C…センサモジュール、2…ダイアフラム部、3…歪検出素子、4,4A,4B,4C…導電体部、5,5A,5B…電極部、6…保護膜、7,7A,7B…拡散部、8…電極パッド、21…ダイアフラム本体部、22…筒状部、23…絶縁層、31…第1歪検出素子、32…第2歪検出素子、33…第3歪検出素子、34…第4歪検出素子、41,41C…連結部、42,42A,42B,42C…引き出し部、43,43C…抵抗値調整部、44C…バイパス部、51,51A…第1電極部、52,52A…第2電極部、53B…第3電極部、211…第1領域、212…第2領域、431…溝部、431C…第1抵抗値調整部、432C…第2抵抗値調整部、433C…第3抵抗値調整部、434C…第4抵抗値調整部、441C…第1バイパス部、442C…第2バイパス部、443C…第3バイパス部、444C…第4バイパス部、451C…第1バイパス引き出し部、452C…第2バイパス引き出し部、453C…第3バイパス引き出し部、454C…第4バイパス引き出し部、511…段差部、521A…段差部、531B…段差部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14