(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】空気調和装置管理システム、および空気調和装置管理方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/32 20180101AFI20240906BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20240906BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240906BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/56
F24F11/61
(21)【出願番号】P 2023565714
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044848
(87)【国際公開番号】W WO2023105608
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 瑞朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】坂邊 野花
(72)【発明者】
【氏名】立和名 涼平
(72)【発明者】
【氏名】上條 将広
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-277027(JP,A)
【文献】特開2020-193743(JP,A)
【文献】特開2019-196980(JP,A)
【文献】特開2002-349926(JP,A)
【文献】特開2018-194949(JP,A)
【文献】特開2020-144760(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034033(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/134943(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/212022(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0103260(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3348925(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/32
F24F 11/56
F24F 11/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置と、飛行体とを備える空気調和装置管理システムであって、
前記空気調和装置は、
自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部
を備え、
前記飛行体は、
提供された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、
取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行う測定部と
を備え
、
前記位置情報を識別情報と対応付けて記憶する管理装置を備え、
前記位置情報提供部は、前記識別情報を前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、送信された前記識別情報に対応付けられた前記位置情報を、前記飛行体に送信する、
空気調和装置管理システム。
【請求項2】
空気調和装置と、飛行体とを備える空気調和装置管理システムであって、
前記空気調和装置は、
自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部
と、
自装置の異常を検出する異常検出部と
を備え、
前記飛行体は、
提供された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、
取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行う測定部と
を備え、
前記位置情報提供部は、前記異常検出部が異常を検出すると、前記位置情報を提供する、
空気調和装置管理システム。
【請求項3】
空気調和装置と、飛行体と、管理装置とを備える空気調和装置管理システムであって、
前記空気調和装置は、
自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部
を備え、
前記飛行体は、
提供された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、
取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行う測定部と
を備え
、
前記測定部は、外気温または室内気温と、前記空気調和装置の吸い込み口付近の温度とを測定し、
前記管理装置は、前記測定部が測定した前記外気温または前記室内気温と前記吸い込み口付近の温度との温度差の絶対値が、予め決められた閾値未満あるいは以下でないとき、前記空気調和装置がショートサイクル状態にあると判定する、
空気調和装置管理システム。
【請求項4】
前記位置情報提供部は、測位システムにより検出した自装置の位置を前記位置情報として提供する
、請求項2または請求項3に記載の空気調和装置管理システム。
【請求項5】
前記位置情報提供部は
、自装置の位置を知らせるための電波を放出することで、前記位置情報を提供する、請求項1
から請求項3のいずれかの項に記載の空気調和装置管理システム。
【請求項6】
空気調和装置管理方法であって、
空気調和装置が、自装置の位置を示す位置情報を提供するステップと、
飛行体が、提供された前記位置情報を取得するステップと、
前記飛行体が、取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行うステップと
を有
し、
前記提供するステップにおいて、前記空気調和装置は、前記位置情報を識別情報と対応付けて記憶する管理装置に、前記識別情報を送信し、前記管理装置は、送信された前記識別情報に対応付けられた前記位置情報を、前記飛行体に送信する、
空気調和装置管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置管理システム、および空気調和装置管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機、ドローン、衛星から撮影された画像、インターネット上の地図サービスで提供される画像など、位置情報と関連付けられた景観の画像データから、空気調和装置の室外機を識別し、該室外機の設置位置を、画像データに関連付けられた位置情報に基づき特定する情報生成システムがある。さらに、この情報生成システムは、識別した室外機の画像を、劣化度合い、あるいは劣化の種類により区別して識別する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の情報生成システムにおいては、画像データから識別される空気調和装置に関する情報を生成するため、劣化具合などの測定結果として、どの空気調和装置に関する測定結果が得られるか分からないという問題がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたもので、特定の空気調和装置を測定することができる空気調和装置管理システム、および空気調和装置管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示は上述した課題を解決するためになされたもので、本開示の一態様は、空気調和装置と、飛行体とを備える空気調和装置管理システムであって、前記空気調和装置は、自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部を備え、前記飛行体は、提供された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行う測定部とを備える。
【0007】
また、本開示の他の態様は、上述の空気調和装置管理システムであって、前記空気調和装置は、自装置の異常を検出する異常検出部を備え、前記位置情報提供部は、前記異常検出部が異常を検出すると、前記位置情報を提供する。
【0008】
また、本開示の他の態様は、上述の空気調和装置管理システムであって、前記位置情報提供部は、測位システムにより検出した自装置の位置を前記位置情報として提供する、あるいは、自装置の位置を知らせるための電波を放出することで、前記位置情報を提供する。
【0009】
また、本開示の他の態様は、上述の空気調和装置管理システムであって、前記位置情報を識別情報と対応付けて記憶する管理装置を備え、前記位置情報提供部は、前記識別情報を前記管理装置に送信し、前記管理装置は、送信された前記識別情報に対応付けられた前記位置情報を、前記飛行体に送信する。
【0010】
また、本開示の他の態様は、上述の空気調和装置管理システムであって、前記測定部は、外気温または室内気温と、前記空気調和装置の吸い込み口付近の温度とを測定し、前記管理装置は、前記測定部が測定した前記外気温または前記室内気温と前記吸い込み口付近の温度との温度差の絶対値が、予め決められた閾値未満あるいは以下でないとき、前記空気調和装置がショートサイクル状態にあると判定する。
【0011】
また、本開示の他の態様は、空気調和装置管理方法であって、空気調和装置が、自装置の位置を示す位置情報を提供するステップと、飛行体が、提供された前記位置情報を取得するステップと、前記飛行体が、取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行うステップとを有する。
【0012】
また、本開示の他の態様は、空気調和装置であって、自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部を備える。
【0013】
また、本開示の他の態様は、管理装置であって、空気調和装置の位置情報を前記空気調和装置の識別情報と対応付けて記憶する記憶部と、前記空気調和装置から送信された前記識別情報に対応付けられた前記位置情報を、飛行体に送信する通信部と、を備える。
【0014】
また、本開示の他の態様は、飛行体であって、空気調和装置により提供された位置情報を取得する位置情報取得部と、取得した前記位置情報に基づき、前記空気調和装置に関する測定を行う測定部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示の空気調和装置管理システムは、特定の空気調和装置を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態における空気調和装置管理システム100の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】同実施形態における空気調和装置110の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】同実施形態における管理装置120の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】同実施形態における管理装置120の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】同実施形態における保守要員端末140の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】同実施形態における空気調和装置管理システム100の第1の動作例を示すシーケンス図である。
【
図7】同実施形態におけるショートサイクル状態の判定処理を説明するフローチャートである。
【
図8】同実施形態における保守要員端末140の第1の表示例を示す模式図である。
【
図9】同実施形態における空気調和装置管理システム100の第2の動作例を示すシーケンス図である。
【
図10】同実施形態における飛行経路の例を示す模式図である。
【
図11】同実施形態における飛行経路の例を示す模式図である。
【
図12】同実施形態における飛行経路の例を示す模式図である。
【
図13】同実施形態における飛行経路の例を示す模式図である。
【
図14】同実施形態における保守要員端末140の第2の表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態における空気調和装置管理システム100の構成を示す概略ブロック図である。空気調和装置管理システム100は、例えば、空気調和装置110の保守要員が空気調和装置110の異常発生時の点検、あるいは定期点検を行う際に使用される。空気調和装置管理システム100は、空気調和装置の空気調和装置管理システム100は、空気調和装置110、管理装置120、ドローン130、保守要員端末140を備える。インターネットなどのネットワーク150により、少なくとも管理装置120は、空気調和装置110、ドローン130、および保守要員端末140と、相互に通信可能に接続されている。なお、ネットワーク150により、管理装置120以外の装置同士も、通信可能に接続されていてもよい。また、空気調和装置管理システム100は、複数の空気調和装置110を備えていてもよいし、複数のドローン130を備えていてもよい。
【0018】
空気調和装置110は、室内の空気を冷房、または暖房する空気調和装置である。空気調和装置110は、室内に設置される室内機と、屋外に設置される室外機とから構成される。空気調和装置110は、空気調和装置110の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部を備える。
図1では、位置情報提供部は図示せず、その詳細は、後述する。なお、本実施形態では、該位置情報が示す空気調和装置110の位置は、空気調和装置110の室外機の位置である。しかし、該位置情報は、空気調和装置110の他の構成要素の位置を示してもよい。例えば、該位置情報は、空気調和装置110を構成し、屋内に設置される室内機の位置を示してもよい。
【0019】
管理装置120は、空気調和装置110およびドローン130を管理する。管理装置120は、空気調和装置110から、異常を示す情報または位置を示す情報を受け付けたり、ドローン130に、空気調和装置110の位置を示す位置情報を通知したりする。また、管理装置120は、ドローン130から受信した測定情報に基づき空気調和装置110の状態を判定し、判定結果を保守要員端末140に送信する。
【0020】
ドローン130は、自律飛行型のドローン(飛行体)である。ドローン130は、クアッドコプターであってもよいし、ヘリコプターであってもよいし、その他の方式により飛行するドローンであってもよい。ドローン130は、空気調和装置110により提供された位置情報を取得する位置情報取得部と、該位置情報に基づき、空気調和装置110に関する測定を行う測定部とを備える。
図1では、位置情報取得部および測定部は図示せず、その詳細は、後述する。
【0021】
保守要員端末140は、ノート型PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォンなどの可搬型の端末であってもよいし、デスクトップ型PCなどの据え置き型の端末であってもよい。保守要員端末140は、管理装置120から通知された空気調和装置110の状態を、画面表示などにより、保守要員に通知する。
【0022】
図2は、本実施形態における空気調和装置110の機能構成を示す概略ブロック図である。空気調和装置110は、冷凍サイクル部111、異常検出部112、GPS(Global Positioning System)部113、異常通知部114、スケジュール取得部115、ビーコン送信部116を備える。本実施形態では、空気調和装置110の位置情報提供部は、ビーコン送信部116と、GPS部113と、異常通知部114とから構成される。なお、空気調和装置110は、ビーコン送信部116と、GPS部113と、異常通知部114とのうち、一部のみを有し、位置情報提供部は該一部から構成されていてもよい。
【0023】
冷凍サイクル部111は、冷凍サイクルにより、室内の空気を、冷房運転時には冷やし、暖房運転時には温める。異常検出部112は、冷凍サイクル部111を含む空気調和装置110の異常を検出する。GPS部113は、例えばGPSなどの測位システムにより、空気調和装置110の位置を検出する。本実施形態では、GPS部113は、空気調和装置110の室外機の位置として、空気調和装置110の室外機の位置を検出するが、屋内用の測位システムにより、室内機の位置を検出してもよい。
【0024】
異常通知部114は、異常検出部112が検出した異常を示す情報(例えば、異常コード)を、管理装置120に送信する。このとき、異常通知部114は、異常を示す情報とともに、GPS部113が検出した空気調和装置110の位置を示す情報、および空気調和装置110の機体を識別する情報を送信する。スケジュール取得部115は、管理装置120から、ドローン130が、空気調和装置110に関する測定を行うスケジュールを示す情報を取得する。スケジュール取得部115は、取得した情報が示すスケジュールに従い、空気調和装置110に関する測定が行われる際に、空気調和装置110が、冷房、暖房などの運転を行うように、冷凍サイクル部111を制御してもよい。このとき、どのような運転を行うかは、季節によって予め決められていてもよいし、測定を行うスケジュールを示す情報に含まれていてもよい。
【0025】
ビーコン送信部116は、スケジュール取得部115が取得したスケジュールに従い、空気調和装置110の位置を知らせるための電波(ビーコン)を放出する。なお、ビーコン送信部116は、異常検出部112が異常を検出したとき、あるいは、異常通知部114が異常を通知したときに、一定時間の間、または、停止の指示があるまでの間、ビーコンを放出してもよい。停止の指示は、管理装置120から受けてもよいし、ドローン130から受けてもよい。また、ビーコンには、空気調和装置110の機体を識別する情報が含まれていてもよい。ビーコン送信部116が送信するビーコンは、ブルートゥース(登録商標)によるビーコン信号であってもよい。
【0026】
図3は、本実施形態における管理装置120の機能構成を示す概略ブロック図である。管理装置120は、異常取得部121、スケジュール部122、空気調和装置DB123(記憶部)、3DマップDB124、ドローン通信部125(通信部)、保守要員通知部126、データ解析部127を備える。異常取得部121は、空気調和装置110の異常通知部114が送信した異常を示す情報、空気調和装置110の位置を示す情報、および空気調和装置110の機体を識別する情報を、ネットワーク150を介して取得する。
【0027】
スケジュール部122は、ドローン130を飛行させて、空気調和装置110に関する測定を行わせる位置とスケジュールを決定する。例えば、異常取得部121が、空気調和装置110の異常を示す情報を取得すると、スケジュール部122は、異常を示す情報とともに取得した空気調和装置110の位置を示す情報と、3DマップDB124が記憶する3Dマップの情報とから、ドローン130の飛行経路と飛行スケジュールを決定する。なお、スケジュール部122は、異常を示す情報に基づき、ドローン130が測定する項目を決定し、飛行経路に含めてもよい。また、スケジュール部122は、空気調和装置110の定期点検の期日が近付くと、空気調和装置DB123が記憶する空気調和装置110の位置を示す情報と、3DマップDB124が記憶する3Dマップの情報とから、ドローン130の飛行経路と飛行スケジュールを決定する。このときの飛行経路と飛行スケジュールは、複数の空気調和装置110に関する測定を行うためのものであってもよい。また、飛行経路は、空気調和装置110に関する測定を行う位置を示す情報、すなわち空気調和装置110の位置情報を含む。また、スケジュール部122は、インターネット上の気象情報サービスなどから、現在の天候情報、将来の天候の予測情報を取得し、風速が閾値を超える、あるいは降水量が閾値を超える場合など、荒天時の飛行を避けるように、ドローン130の飛行スケジュールを決定してもよい。
【0028】
空気調和装置DB123は、空気調和装置110の機体を識別する情報に対応付けて、空気調和装置110の位置を示す情報、空気調和装置110の点検期日を示す情報などを記憶する。3DマップDB124は、空気調和装置110が設置されている建造物およびその周辺の3Dマップのデータを記憶している。ドローン通信部125は、ネットワーク150を介してドローン130と通信する。例えば、ドローン通信部125は、スケジュール部122が決定したドローン130の飛行経路と飛行スケジュールとを、ネットワーク150を介してドローン130に送信する。また、ドローン通信部125は、空気調和装置110に関する測定の結果を、ネットワーク150を介してドローン130から受信する。
【0029】
保守要員通知部126は、スケジュール部122が決定したドローン130の飛行経路と飛行スケジュール、データ解析部127による解析結果を、ネットワーク150を介して保守要員端末140に送信する。この送信は、電子メールにより行われてもよいし、その他のメッセージングサービスを用いて行われてもよい。
【0030】
データ解析部127は、ドローン通信部125が受信した空気調和装置110に関する測定の結果に基づき、空気調和装置110の状態を判定する。例えば、データ解析部127は、該測定の結果として、室外機の外観画像を用いて、室外機が破損しているか否かを判定したり、室外機の外気の吸い込み口が詰まっていないか否かなどを判定したりする。また、データ解析部127は、該測定の結果に基づき、空気調和装置110の室外機がショートサイクル状態にあるか否かを判定する。ここでショートサイクル状態とは、室外機が噴き出した空気を、温度が十分に外気温に近づかないうちに、室外機が吸い込んでしまう状態をいう。なお、室内機であれば、ショートサイクル状態は、室内機が噴き出した空気を、温度が十分に室内気温に近づかないうちに、室内機が吸い込んでしまう状態である。ショートサイクル状態にあるか否かについての判定方法の詳細は、後述する。
【0031】
図4は、本実施形態におけるドローン130の機能構成を示す概略ブロック図である。ドローン130は、モータ131、飛行制御部132、GPS受信部133、ビーコン受信部134、カメラ部135、サーマルカメラ部136、温度センサ部137、通信部138を備える。本実施形態では、ビーコン受信部134と、通信部138とが、位置情報取得部として機能する。また、カメラ部135と、サーマルカメラ部136と、温度センサ部137とが測定部として機能する。モータ131は、ドローン130を飛行させるためのローターを回転させる。飛行制御部132は、ドローン130の飛行を制御する。具体的には、飛行制御部132は、モータ131の回転を制御することで、管理装置120が決定したドローン130の飛行経路と飛行スケジュールに従い、ドローン130を飛行させる。
【0032】
GPS受信部133は、GPSなどの測位システムを用いて、ドローン130の現在位置を検出する。検出された現在位置は、飛行制御部132によるドローン130の飛行の制御に用いられる。ビーコン受信部134は、空気調和装置110のビーコン送信部116が放出したビーコンを受信し、該ビーコンに基づき空気調和装置110の位置を特定する。例えば、ビーコン受信部134は、指向性の強いアンテナを備え、ドローン130の向きを変えることでビーコンの到来方向を特定し、複数地点において特定した到来方向に基づき、空気調和装置110の位置を特定する。なお、ビーコン受信部134は、指向性の向きを変えられるアンテナを備え、指向性の向きを変えることでビーコンの到来方向を特定してもよい。また、ビーコン受信部134は、ビーコンに含まれる空気調和装置110の機体を識別する情報により、該ビーコンがいずれの空気調和装置110から送信されているかを判別してもよい。
【0033】
カメラ部135は、可視光による画像を取得する。カメラ部135は、空気調和装置110の室外機の外観を撮影し、通信部138を介して管理装置120に送信する。サーマルカメラ部136は、表面温度画像(サーマル画像)を取得する。サーマルカメラ部136は、空気調和装置110の室外機の表面温度画像を撮影し、通信部138を介して管理装置120に送信する。温度センサ部137は、ドローン130付近の気温を測定する。
【0034】
温度センサ部137は、外気温および空気調和装置110の室外機の吸い込み口付近の気温を測定し、それらを、通信部138を介して管理装置120に送信する。通信部138は、ネットワーク150を介して管理装置120と通信する。上述したように、飛行制御部132、カメラ部135、サーマルカメラ部136、温度センサ部137などドローン130を構成する各構成要素は、通信部138を介して管理装置120と通信する。
【0035】
図5は、本実施形態における保守要員端末140の機能構成を示す概略ブロック図である。保守要員端末140は、通信部141、制御部142、表示部143を備える。通信部141は、管理装置120からドローン130の飛行経路と飛行スケジュール、データ解析部127による解析結果などの情報を受信する。制御部142は、通信部141が受信した情報を、表示部143に表示させる。表示部143は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示デバイスを備え、制御部142に従い、表示を行う。
【0036】
図6は、本実施形態における空気調和装置管理システム100の第1の動作例を示すシーケンス図である。第1の動作例は、空気調和装置110で異常が検出され、該異常の確認のためにドローン130による測定を行う場合の動作例である。まず、空気調和装置110の異常検出部112が異常を検出すると、空気調和装置110の異常通知部114が、検出された異常を示す情報、および空気調和装置110の位置を示す情報を管理装置120に送信する(シーケンスSa1)。管理装置120の異常取得部121が、これらの情報を取得すると、管理装置120のスケジュール部122がドローン130の飛行経路と飛行スケジュールを決定する。スケジュール部122は、決定した飛行経路と飛行スケジュールを、ドローン通信部125を介してドローン130に送信する(シーケンスSa2)。また、スケジュール部122は、決定した飛行スケジュール、異常取得部121が取得した異常を示す情報、空気調和装置110の機体を識別する情報を、保守要員通知部126を介して保守要員端末140に送信する(シーケンスSa3)。また、スケジュール部122は、決定した飛行スケジュールを空気調和装置110に送信する(シーケンスSa4)。
【0037】
空気調和装置110のスケジュール取得部115が飛行スケジュールを受信すると、冷凍サイクル部111が運転を開始し、ビーコン送信部116がビーコンの送信を開始する(シーケンスSa5)。一方、ドローン130では、その通信部138が飛行経路と飛行スケジュールを受信すると、その飛行制御部132は、該飛行経路と飛行スケジュールに従って飛行するように、モータ131を制御する。ドローン130がビーコンを受信可能な範囲まで飛行してくると、そのビーコン受信部134が、ビーコンを受信し、空気調和装置110の位置を特定できるようになる。
【0038】
ドローン130が、ビーコンに従い、空気調和装置110の室外機に近づくとカメラ部135、サーマルカメラ部136、温度センサ部137のそれぞれは、室外機の外観画像、表面温度画像、気温(周辺の気温、吸い込み口付近の気温)を測定し、これらの測定結果を、通信部138を介して管理装置120に送信する(シーケンスSa6)。管理装置120のデータ解析部127は、ドローン通信部125を介して測定結果を受信すると、該測定結果に基づき、空気調和装置110の状態を判定する。データ解析部127は、判定した空気調和装置110の状態を、保守要員通知部126を介して保守要員端末140に送信する(シーケンスSa7)。保守要員端末140は、空気調和装置110の状態を受信すると、保守要員に通知するために、該状態を示す画像あるいは文字を表示部143に表示する。
【0039】
なお、シーケンスSa1において、空気調和装置110の位置を示す情報として、空気調和装置DB123に、位置を示す情報と対応づけて記憶されている識別情報が送信されるようにしてもよい。本実施形態では、該識別情報は、空気調和装置110の機体を識別する情報である。この場合、スケジュール部122は、機体を識別する情報と対応付けられている位置を示す情報を、空気調和装置DB123から読み出し、ドローン130の飛行経路と飛行スケジュールを決定する。
【0040】
また、シーケンスSa4において、飛行スケジュールを送信するとしたが、ドローン130の飛行スケジュールに従ったタイミングに、ビーコン送信と運転開始の指示が送信されるようにしてもよい。
【0041】
図7は、本実施形態におけるショートサイクル状態の判定処理を説明するフローチャートである。まず、ドローン130の温度センサ部137が、周辺温度Taを測定する(ステップS1)。周辺温度Taは、ドローン130が、空気調和装置110の室外機から予め決められた距離など、室外機の吸い込み口から十分に離れた距離にいるときに、温度センサ部137が測定した気温である。周辺温度Taを測定する位置は、スケジュール部122により決定され、飛行経路に含められていてもよいし、ビーコン受信部134による受信状態、カメラ部135による画像、あるいはサーマルカメラ部136による画像から、室外機までの距離を推定したドローン130によって、室外機から予め決められた距離になるように決定されてもよい。
【0042】
次に、ドローン130は、カメラ部135による画像、あるいはサーマルカメラ部136による画像から室外機の吸い込み口を検出し(ステップS2)、吸い込み口付近まで移動する。ドローン130の温度センサ部137は、吸い込み口付近で気温(温度Tb)を測定する(ステップS3)。ドローン130から送信された周辺温度Taと吸い込み口付近の温度Tbを取得したデータ解析部127は、これらの差の絶対値(|Ta-Tb|)が、予め決められた閾値Th未満であるか否かを判定する(ステップS4)。|Ta-Tb|が閾値Th未満であると判定したとき(ステップS4-YES)、データ解析部127は、空気調和装置110がショートサイクル状態ではないと判定する(ステップS5)。|Ta-Tb|が閾値Th未満ではないと判定したとき(ステップS4-NO)、データ解析部127は、空気調和装置110がショートサイクル状態であると判定する(ステップS6)。
【0043】
ここでは、ステップS2、S3において、ドローン130が、室外機の吸い込み口を検出し、吸い込み口付近に移動して、温度Tbを測定している。温度Tbの測定方法は、これ以外の方法であってもよい。例えば、データ解析部127が、サーマルカメラ部136が撮影した室外機のサーマル画像から吸い込み口を検出し、該サーマル画像が示す吸い込み口付近の温度(表面温度)を温度Tbとしてもよい。また、ステップS4において、データ解析部127は、|Ta-Tb|が閾値Th未満であるか否かを判定したが、|Ta-Tb|が閾値Th以下であるか否かを判定してもよい。
【0044】
図8は、本実施形態における保守要員端末140の第1の表示例を示す模式図である。
図8の例は、
図6のシーケンスSa3により、飛行スケジュール、異常を示す情報、空気調和装置110の機体を識別する情報を取得した保守要員端末140が表示する画像の例である。
図7では、地図上の室外機が設置されている位置に、吹き出しで「異常発生:機体番号11」、「異常コードxxx」、「ドローン到達予定 HH:MM」と表示されている。これにより、保守要員は、機体番号11の空気調和装置110に異常が発生したこと、異常の内容が異常コードxxxであること、ドローンが時刻HH:MMに到達して、測定する予定であることを把握できる。
【0045】
図9は、本実施形態における空気調和装置管理システム100の第2の動作例を示すシーケンス図である。第2の動作例は、空気調和装置110から異常を示す情報を受け取ってはいないが、保守要員が計画した点検、定期点検などのためにドローン130による測定を行う場合の動作例である。まず、保守要員が点検対象となる空気調和装置110を識別する情報を設定する、あるいはスケジュール部122が定期点検の点検対象となる空気調和装置110を検出すると、スケジュール部122が点検対象に応じたドローン130の飛行経路と飛行スケジュールを決定する。このときスケジュール部122は、空気調和装置110を識別する情報に対応付けられて空気調和装置DB123に記憶されている空気調和装置110の位置を示す情報、3DマップDB124が記憶する3Dマップの情報を使用する。スケジュール部122は、決定した飛行スケジュール、空気調和装置110の機体を識別する情報を、保守要員通知部126を介して保守要員端末140に送信する(シーケンスSb1)。また、スケジュール部122は、決定した飛行経路と飛行スケジュールを、ドローン通信部125を介してドローン130に送信する(シーケンスSb2)。また、スケジュール部122は、決定した飛行スケジュールを空気調和装置110に送信する(シーケンスSb3)。
【0046】
空気調和装置110のスケジュール取得部115が飛行スケジュールを受信すると、冷凍サイクル部111が運転を開始し、ビーコン送信部116がビーコンの送信を開始する(シーケンスSb4)。一方、ドローン130では、その通信部138が飛行経路と飛行スケジュールを受信すると、その飛行制御部132は、該飛行経路と飛行スケジュールに従って飛行するように、モータ131を制御する。ドローン130がビーコンを受信可能な範囲まで飛行してくると、そのビーコン受信部134が、ビーコンを受信し、空気調和装置110の位置を特定できるようになる。
【0047】
ドローン130が、ビーコンに従い、空気調和装置110の室外機に近づくとカメラ部135、サーマルカメラ部136、温度センサ部137のそれぞれは、室外機の外観画像、表面温度画像、気温(周辺の気温、吸い込み口付近の気温)を測定し、これらの測定結果を、通信部138を介して管理装置120に送信する(シーケンスSb5)。管理装置120のデータ解析部127は、ドローン通信部125を介して測定結果を受信すると、該測定結果に基づき、空気調和装置110の状態を判定する。データ解析部127は、判定した空気調和装置110の状態を、保守要員通知部126を介して保守要員端末140に送信する(シーケンスSb6)。保守要員端末140は、空気調和装置110の状態を受信すると、保守要員に通知するために、該状態を示す画像あるいは文字を表示部143に表示する。
【0048】
また、シーケンスSb3において、飛行スケジュールを送信するとしたが、ドローン130の飛行スケジュールに従ったタイミングに、ビーコン送信と運転開始の指示が送信されるようにしてもよい。
【0049】
図10、
図11、
図12、および
図13の各々は、本実施形態における飛行経路の例を示す模式図である。
図10に示す例では、スケジュール部122は、1つの建築物の壁面および屋上に設置された複数の室外機に関する測定を行うように、飛行経路を決定している。
図11に示す例では、スケジュール部122は、1つの建築物の屋上に設置された複数の室外機に関する測定を行うように、飛行経路を決定している。
図12に示す例では、スケジュール部122は、1つの建築物付近の地上に設置された複数の室外機に関する測定を行うように、飛行経路を決定している。
図13に示す例では、スケジュール部122は、複数の建築物に設置された複数の室外機に関する測定を行うように、飛行経路を決定している。
【0050】
図14は、本実施形態における保守要員端末140の第2の表示例を示す模式図である。
図14の例は、
図6のシーケンスSa7あるいは
図9のシーケンスSb6により、空気調和装置110の状態を取得した保守要員端末140が表示する画像の例である。
図14では、地図上の室外機が設置されている位置に、吹き出しで「異常発生:機体番号11」、「ショートサイクル状態」、「検出時刻:HH:MM」と表示されている。これにより、保守要員は、機体番号11の空気調和装置110がショートサイクル状態にあること、該状態がHH:MMに検出されたことを把握できる。
【0051】
なお、上述の実施形態において、ドローン130は、空気調和装置110の室外機に関する測定を行っているが、例えば、アリーナなど、大規模な屋内空間を有する施設に設置された空気調和装置110の室内機に関する測定を行ってもよい。その場合、GPS部113、ビーコン送信部116は、室内機に設置され、GPS部113には、構内用の測位システムが用いられる。また、ショートサイクル状態の判定の際には、温度Taとして、室内気温が用いられ、温度Tbとして、室内機の吸い込み口付近の温度が用いられる。
【0052】
このように、空気調和装置管理システム100は、空気調和装置110と、ドローン130とを備える。そして、空気調和装置110は、自装置の位置を示す位置情報を提供する位置情報提供部を備え、ドローン130は、提供された位置情報を取得する位置情報取得部と、取得した位置情報に基づき、空気調和装置110に関する測定を行う測定部とを備える。これにより、空気調和装置管理システム100は、異常が発生した空気調和装置、あるいは定期点検の対象となっている空気調和装置など、空気調和装置が自装置の位置を示す位置情報を提供し、ドローン130が該空気調和装置に関する測定を行うので、位置情報を提供している特定の空気調和装置を測定することができる。
【0053】
また、
図1における管理装置120、ドローン130、または保守要員端末140の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより管理装置120、ドローン130、または保守要員端末140を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSまたは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0054】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、DVD等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークまたは電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバまたはクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0055】
また、上述した
図2における空気調和装置110、または
図3におけるドローン130の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず、専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。ハイブリッド、モノリシックのいずれでも良い。一部は、ハードウェアにより、一部はソフトウェアにより機能を実現させても良い。
また、半導体技術の進歩により、LSIに代替する集積回路化等の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0056】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0057】
100 空気調和装置管理システム
110 空気調和装置
120 管理装置
130 ドローン
140 保守要員端末
150 ネットワーク
111 冷凍サイクル部
112 異常検出部
113 GPS部
114 異常通知部
115 スケジュール取得部
116 ビーコン送信部
121 異常取得部
122 スケジュール部
123 空気調和装置DB
124 3DマップDB
125 ドローン通信部
126 保守要員通知部
127 データ解析部
131 モータ
132 飛行制御部
133 GPS受信部
134 ビーコン受信部
135 カメラ部
136 サーマルカメラ部
137 温度センサ部
138 通信部
141 通信部
142 制御部
143 表示部