(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】投射システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/08 20060101AFI20240906BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240906BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G01B11/08 Z
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
(21)【出願番号】P 2023568946
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047933
(87)【国際公開番号】W WO2023119570
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森江 崇正
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187065(JP,A)
【文献】特開2017-92795(JP,A)
【文献】特開2008-211409(JP,A)
【文献】特開2018-180125(JP,A)
【文献】特開平10-122863(JP,A)
【文献】特開2010-112875(JP,A)
【文献】特開2011-247810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G03B 21/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を設置する設置面に向けて投射画像を投射する投射装置
と、前記投射装置と通信可能であって、カメラが設けられた端末とを備える投射システムであって、
前記投射装置は、
前記投射装置から前記設置面までの距離を測定する測定部と、
前記設置面に向けて前記投射画像を投射する
とともに、前記設置面に投射された前記投射画像のサイズを示すサイズ情報とを投射する投射部と、
前記投射部と前記設置面との間に配置されるレンズと、
前記距離と前記投射部の位置と前記レンズの位置とに基づき、
前記サイズ情報を算出する算出部とを
含み、
前記端末は、
前記投射部が投射する方向に沿った、前記投射部の位置および前記レンズの位置の少なくとも一方を変更する指示を与えるための指示入力を受け付ける入力部を含み、
前記指示入力を前記投射装置に送信し、
前記投射装置は、
前記指示入力に基づき前記投射部の位置および前記レンズの位置の少なくとも一方を変更する変更部と、
前記端末に前記サイズ情報を送信する送信部とをさらに含み、
前記端末は、前記カメラで撮影した撮影画像とともに、当該撮影画像を撮影したときの前記サイズ情報を記憶する、
投射システム。
【請求項2】
前記投射画像は、円形の画像と、正方形の画像とを含み、
前記サイズ情報は、前記円形の画像の直径と、前記正方形の画像の一辺の長さとを含む、
請求項1に記載の
投射システム。
【請求項3】
前記端末は、前記サイズ情報を前記撮影画像のファイル名に含めて当該撮影画像を記憶する、
請求項1に記載の投射システム。
【請求項4】
前記端末は、前記サイズ情報を前記撮影画像のプロパティ情報に含めて当該撮影画像を記憶する、
請求項1に記載の投射システム。
【請求項5】
前記端末は、
前記撮影画像を表示する表示
部をさらに
含み、
前記表示部は、前記指示入力を促す表示を行
う、
請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の投射システム。
【請求項6】
前記端末は、前記撮影画像を前記投射装置に送信し、
前記投射装置は、
前記撮影画像に含まれる前記対象物の輪郭および前記投射画像の輪郭を抽出し、
前記対象物の輪郭と前記投射画像の輪郭とが重なるように、前記変更部に前記投射部の位置および前記レンズの位置の変更させる、
請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の投射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の設備として、たとえば、天井には、照明、空調、防災設備等の機器が配置される。こういった既存の機器をリプレイスするような場合、設置されている機器の寸法等の計測が必要となり、当該建物において現場調査が実施される。現場調査においては、機器幅や天井の高さの計測が行われるとともに、機器の設置状態をカメラで撮影する。
【0003】
天井に設置された機器の計測作業が行われる場合、作業員が脚立に登り作業が行われる。このような計測作業中には、脚立から作業員が転落したり金属製スケールによる切創などの虞がある。一方、対象物の寸法を簡易に測定するための装置として、特開2007-205915号公報(特許文献1)に記載の投射装置が提案されている。この投射装置では、ものさし画像を対象物に向けて投写し、ものさし画像と対象物を見比べることで対象物の寸法を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、作業員が作業しにくい天井等の設置面に対象物が設置されている場合、作業における安全性の確保が求められる。また、対象物のサイズの測定時には、計測器の使用、サイズの読み上げ、筆記具でのサイズの記録、カメラによる撮影と連動する作業といった一連の作業が行われる。その際、筆記具やカメラへの持ち替え時間や手書きによる記録ミスが発生することがある。さらに、現場調査においては、調査結果の記録および整理をするための作業の一時中断や、調査後の情報整理に多くの時間を要している。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、作業の安全性を確保しつつ、効率的かつ正確に対象物のサイズを計測することができる投射装置および投射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る投射装置は、対象物を設置する設置面に向けて投射画像を投射する装置である。投射装置は、測定部と、投射部と、レンズと、変更部と、算出部(たとえば、CPU)とを備える。測定部は、投射装置から設置面までの距離を測定する。投射部は、設置面に向けて投射画像を投射する。レンズは、投射部と設置面との間に配置される。変更部は、投射部が投射する方向に沿った、投射部の位置およびレンズの位置の少なくとも一方を変更する。算出部は、距離と投射部の位置とレンズの位置とに基づき、設置面に投射された投射画像のサイズを示すサイズ情報を算出する。
【0008】
前述の投射装置は、制御部をさらに備える。制御部は、算出部と通信インターフェイスとを含む。通信インターフェイスは、端末と通信可能である。
【0009】
本開示に係る投射システムは、投射装置と、端末とを備える。端末は、投射装置と通信可能である。端末は、カメラを備える。投射装置は、サイズ情報を端末に送信する。端末は、カメラで撮影した撮影画像とともに、当該撮影画像を撮影したときのサイズ情報を記憶する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、作業の安全性を確保しつつ、効率的かつ正確に対象物のサイズを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る投射システムによる対象物のサイズ測定を説明するための図である。
【
図2】投射システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】従来の測定方法による対象物のサイズ測定を説明するための図である。
【
図5】投射部およびレンズの位置と投射画像のサイズとの関係を説明するための図である。
【
図7A】投射画像の調整について説明するための図である。
【
図7B】投射画像の調整について説明するための図である。
【
図7C】投射画像の調整について説明するための図である。
【
図8】端末での表示例について説明するための図である。
【
図9】端末での表示例について説明するための図である。
【
図10】メイン処理(投射装置)のフローチャートである。
【
図11】メイン処理(端末)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
[投射システム1]
図1は、本実施の形態に係る投射システム1による対象物31のサイズ測定を説明するための図である。投射システム1は、投射装置100と、端末200とを備える。
【0014】
投射装置100は、対象物31を設置する設置面(天井)35に向けて投射画像70(
図6A~
図6C,
図7A~
図7Cの投射画像70a~70f)を投射する装置である。端末200は、作業者40が使用する端末であって、投射装置100と通信可能である。端末200は、たとえば、Bluetooth(登録商標)あるいは無線LAN(Local Area Network)などの無線通信によって投射装置100と接続するように構成する。
【0015】
図1に示すように、投射装置100は、床36に設置して使用する。本例では、投射装置100から対象物31を設置した設置面(天井)35までは、距離H、離れている。本例では、対象物31は円形の照明機器であり、その直径はサイズXである。
【0016】
詳細は、
図4以降を用いて説明するが、本実施の形態においては、投射装置100は、対象物31と一致させるように投射画像70を投射する。投射画像70は、投射装置100が備える投射部123およびレンズ122のいずれか一方または両方の位置を調整することによって、その大きさを調整可能である。
【0017】
作業者40は、既存の機器をリプレイスするための現地調査において、端末200を用いて対象物31および投射された投射画像70を撮影する。本実施の形態においては、端末200で対象物31および投射画像70撮影した際に、同時に対象物31のサイズXが自動的に記録されるように構成されている。以下、詳細に説明する。
【0018】
図2は、投射システム1のハードウェア構成の一例を示す図である。投射装置100は、制御部110と、投射部123と、変更部124と、レンズ122と、測定部121とを備える。投射部123、変更部124、レンズ122および測定部121については後述する。
【0019】
制御部110は、算出部としてCPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、送信部として通信インターフェイス115とを備える。
【0020】
CPU111は、投射装置100全体を総括的に制御する。CPU111は、ROM112に格納されているプログラムをRAM113に展開して実行する。ROM112は、投射装置100の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM113は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。通信インターフェイス115は、端末200と通信するためのインターフェイスである。
【0021】
端末200は、CPU211と、ROM212と、RAM213と、記憶部214と、通信インターフェイス215と、カメラ216と、入力部220と、表示部221とを備える。
【0022】
CPU211は、端末200全体を総括的に制御する。CPU211は、ROM212に格納されているプログラムをRAM213に展開して実行する。ROM212は、端末200の処理手順が記されたプログラムを格納する。RAM213は、CPU211がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0023】
通信インターフェイス215は、投射装置100と通信するためのインターフェイスである。記憶部214は、不揮発性の記憶装置である。記憶部114は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等であってもよい。
【0024】
入力部220は、ユーザからの入力を受け付ける。入力部220は、たとえば、タッチパネルであり、キーボード、マウスであってもよい。表示部221は、各種情報の表示を行う。表示部221は、たとえば、液晶表示器、ディスプレイである。端末200は、たとえば、スマートフォンであり、ノートパソコン、タブレット端末等であってもよい。
【0025】
[従来の測定方法]
ここで、比較のため、現地調査における一般的な測定方法について説明する。
図3は、従来の測定方法による対象物31のサイズ測定を説明するための図である。
【0026】
図1と同様に、
図3においても、天井(設置面)35に設置された対象物(照明装置)31のサイズXを測定しようとしている。天井35まで距離があるため、作業者40は、床36に脚立44を設置している。
【0027】
作業者40は、脚立44を登った状態で作業をする。作業者40は、この状態で対象物31にスケール42をあてて、対象物31のサイズXを計測する。このような計測作業中には、脚立から作業者40が転落したり金属製のスケール42による切創などの虞がある。
【0028】
また、対象物31のサイズの測定時には、計測器(スケール42)の使用、サイズの読み上げ、筆記具でのサイズの記録、カメラによる撮影と連動する作業といった一連の作業が行われる。その際、筆記具やカメラへの持ち替え時間や手書きによる記録ミスが発生することがある。さらに、現場調査においては、調査結果の記録および整理をするための作業の一時中断や、調査後の情報整理に多くの時間を要している。
【0029】
本実施の形態における投射装置100を用いた場合、
図1のような構成となるため、脚立44やスケール42を用いる必要がなく、また、手書きによりサイズXを記録する必要がなくなる。
【0030】
[投射装置100]
次に、投射装置100の内部構成について説明する。
図4は、投射装置100の一例を示す図である。投射装置100の内部には、測定部121、レンズ122、投射部123等が配置されている。
【0031】
測定部121は、たとえば、レーザ距離計である。測定部121は、投射装置100(投射装置100の上面)から設置面(天井)35までの距離H(
図1参照)を測定する。投射部123は、設置面(天井)35に向けて投射画像70を投射する。レンズ122は、投射部123と設置面35との間に配置されている。
【0032】
図示しないが、変更部124は、投射部123が投射画像を投射する方向(「投射方向」とも称する)に沿った、投射部123の位置およびレンズ122の位置の少なくとも一方を変更する駆動装置である。
【0033】
投射装置100を床36に設置した場合、測定部121から出力されるレーザの出力方向は床36および天井(設置面)35に対して垂直方向である。そして、投射装置100を床36に設置した場合の投射装置100の上面の位置から天井35までの距離が距離Hである。
【0034】
また、投射部123の投射方向と測定部121のレーザの出力方向は同じである。ここで、距離aは、投射方向に沿った、投射部123の出力位置からレンズ122の中央位置までの距離である。距離bは、投射方向に沿った、レンズ122の中央位置から投射装置100の上面の位置までの距離である。
【0035】
図5は、投射部123およびレンズ122の位置と投射画像70のサイズとの関係を説明するための図である。焦点61は、レンズ122の焦点であって、投射方向に沿った投射装置100の上面に位置する。
【0036】
上述のように、投射部123の出力位置(光源の出力位置)からレンズ122の中央位置までの距離が距離aであり、レンズ122の中央位置から投射装置100の上面の位置までの距離が距離bであり、投射装置100の上面から投射画像70が投射される天井35までの距離が距離Hである。
【0037】
ここで、サイズcは、投射部123の出力位置における投射画像のサイズである。本例では、円形の画像が出力されるため、サイズcは、円形画像の直径を示す。これに対して、サイズXは、天井(設置面)35において投射された投射画像70のサイズ(直径)である。
【0038】
投射部123は、後述する
図6A~
図6Cに示した円形または正方形の画像等を生成し、天井(設置面)35に対して投射する。あるいは、投射部123は、単に光を発する円形の光源であってもよい。この場合、サイズcは光源の直径である。
【0039】
ここで、レンズの公式から、c:a=X:(H+b)の関係が成立する。このため、投射画像70のサイズX=(H+b)×c/aとなる。変更部124によって、投射部123やレンズ122の位置を変更した場合、距離a,bが変化する。これにより、投射画像70のサイズXが変化する。
【0040】
そして、投射画像70のCPU111は、距離Hと投射部123の位置とレンズ122の位置とに基づき、設置面35に投射された投射画像70のサイズを示すサイズ情報を算出する。具体的には、CPU111は、サイズ情報として、サイズX=(H+b)×c/aを算出する。
【0041】
[投射画像70]
次に、投射画像70および対象物31について説明する。
図6A~
図6Cは、投射画像70の一例を示す図である。
図7A~
図7Cは、投射画像70の調整について説明するための図である。投射画像70は、
図6A~
図6C,
図7A~
図7Cに示す投射画像70a~70fを含む。
【0042】
本実施の形態においては、投射画像70は、円形の画像(投射画像70a,b,d~f)と、正方形の画像(投射画像70c)とを含む。サイズ情報は、円形の画像の直径と、正方形の画像の一辺の長さとを含む。投射部123は、設置面35に向けて投射画像70とともにサイズ情報を投射する。これにより、作業者40は、直感的に投射画像70のサイズを把握することができる。
【0043】
たとえば、投射画像70は、
図6Aに示すような円形の投射画像70aであってもよい。投射画像70aは、任意の色(たとえば黄色)の円形画像であってもよいし、円の縁(輪郭)のみで構成された画像であってもよい。
【0044】
投射画像70は、
図6Bに示すような円形の投射画像70bであってもよい。投射画像70bは投射画像70aと同一の画像であるが、投射画像70bが投射される際に、円の直径を示す画像も同時に投射される。本例では、両端に矢印が付された円の直径を示す画像が投射されるとともに、円の直径が「X」mmであることを示す画像「ΦXmm」が投射される。矢印の画像および直径を示す画像も含めて、「投射画像」と称してもよい。
【0045】
投射画像70は、
図6Cに示すような正方形の投射画像70cであってもよい。投射画像70cは、任意の色(たとえば黄色)の正方形画像であってもよいし、正方形の縁(輪郭)のみで構成された画像であってもよい。
【0046】
投射画像70cが投射される際に、正方形の一辺を示す画像も同時に投射される。本例では、両端に矢印が付された正方形の一辺を示す画像が投射されるとともに、正方形の一辺が「X」mmであることを示す画像「Xmm」が投射されている。
【0047】
なお、投射画像70の形状は、上記に限らず、長方形、多角形、楕円形等、任意の形状であってもよい。また、対象物31と同一または類似した形状になるように、投射画像70の形状が選択可能に構成されるようにしてもよい。
【0048】
図7Aに示すように、対象物31に対して投射画像70dを投射したとする。対象物31は、円形の照明機器であり、その直径は「x2」mmである。これに対して、投射画像70dも同じく円形であるが、その直径は、「x2」mmより小さい「x1」mmである。
【0049】
このため、対象物31に対して投射画像70dを投射した場合、対象物31よりも投射画像70dの方が小さくなる。
【0050】
これに対して、直径が「x2」mmである投射画像70eを投射した場合が
図7Bの例であり、直径が「x2」mmより大きい「x3」mmである投射画像70fを投射した場合が
図7Cの例である。
【0051】
図7Cの例では対象物31よりも投射画像70fの方が大きくなっているが、
図7Bの例では対象物31のサイズと投射画像70eのサイズが一致している。
【0052】
投射画像70を投射した結果、
図7Aあるいは
図7Cのように対象物31とサイズが一致しない場合には、作業者40の指示により、変更部124に投射部123の位置およびレンズ122の位置を変更させる。そして、その結果、
図7Bのように、投射画像70と対象物31とでサイズが一致した場合、X=(H+b)×c/aの式により算出されたサイズXが対象物31のサイズとなる。
【0053】
[端末200での表示例]
図8,
図9は、端末200での表示例について説明するための図である。本例において、端末200はスマートフォンであり、端末200には投射システム1に使用する専用のアプリケーションソフトウェア(以下、「専用アプリ」と称する)が事前にインストールされているものとする。
【0054】
端末200上で使用する専用アプリは、カメラ216にアクセス可能であるとともに、投射装置100と通信可能である。専用アプリでは、カメラ216から取り込んだ撮影画像の表示、サイズXの変更、撮影画像の保存等の作業を行うことができる。
【0055】
図8では、専用アプリ起動後の、端末200の表示部221での表示画面が示されている。本例では、表示部221は、カメラ216の撮影画像を表示する。作業者40は、設置面(天井)35に設置された対象物31にカメラ216を向けている状態である。
【0056】
本例では、
図7Aと同じく、対象物31に対して投射画像70dを投射しているものとする。つまり、直径がx2mmの円形の照明機器である対象物31に対して、x1mm(<x2mm)である投射画像70を投射している状態である。
【0057】
入力部220は、変更部124に指示を与えるための指示入力を受け付ける。本例において、入力部220は、表示部221におけるタッチパネルにより構成される。具体的には、表示部221の画面下部に表示された、「投射部位置」の上部の「上矢印」ボタンおよび下部の「下矢印」ボタン(これらを「投射部位置」ボタンと総称する)、「レンズ位置」の上部の「上矢印」ボタンおよび下部の「下矢印」ボタン(これらを「レンズ位置」ボタンと総称する)、「自動」ボタン、「撮影」ボタン、「終了」ボタンにより入力部220が構成されている。
【0058】
投射部位置の上矢印ボタンが押下されると、天井方向に所定量、投射部123が移動する(
図4,5参照)。これにより、距離aが所定量短くなる。一方、投射部位置の下矢印ボタンが押下されると、天井方向とは反対方向に所定量、投射部123が移動する(
図4,5参照)。これにより、距離aが所定量長くなる。
【0059】
レンズ位置の上矢印ボタンが押下されると、天井方向に所定量、レンズ122が移動する(
図4,5参照)。これにより、距離bが所定量短くなるとともに、距離aが所定量長くなる。一方、レンズ位置の下矢印ボタンが押下されると、天井方向とは反対方向に所定量、レンズ122が移動する。これにより、距離bが所定量長くなるとともに、距離aが所定量短くなる。
【0060】
このように、投射部位置ボタンおよび投射部位置ボタンのいずれか一方、あるいは両方が操作されることにより、a,bが変化することで、サイズX(X=(H+b)×c/a)が変化する。これにより、作業者40は、対象物31と投射画像70とが一致するように調整可能である。
【0061】
「自動」ボタンが押下されると、投射部位置ボタンおよび投射部位置ボタンを使用することなく、対象物31と投射画像70とが一致するように、投射部123の位置およびレンズ122の位置が自動的に調整される。「撮影」ボタンが押下されると、撮影画像が保存される。「終了」ボタンが押下されると、専用アプリが終了する。
【0062】
また、表示部221は、指示入力を促す表示を行う。撮影画像の上部には、投射画像70のサイズが対象物31のサイズに一致するように「投射部位置」ボタンおよび「レンズ位置」ボタンの操作(指示入力)を促す表示として、「投射画像に対象物を一致させて撮影してください」が表示される。また、表示部221には、現在の投射画像の直径が「x1mm」であることが表示されている。
【0063】
以下、フローチャートを用いて、投射システム1の処理の流れを説明する。
図10は、メイン処理(投射装置)のフローチャートである。
図11は、メイン処理(端末)のフローチャートである。
図12は、撮影処理のフローチャートである。
【0064】
メイン処理(投射装置)は、たとえば、投射装置100の電源を投入したときに起動してもよい。メイン処理(端末)は、端末200において、専用アプリを起動したときに起動してもよい。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0065】
まず、投射装置100側の処理について説明する。
図10に示すように、メイン処理(投射装置)が開始すると、投射装置100の測定部121は、S101において、投射装置100から設置面35までの距離Hを測定し(
図1参照)、処理をS102に進める。
【0066】
ここで、測定時には、設置面35に対象物31が設置されていない場合も想定される。設置面35には、対象物31を取り付けるための穴部が構成されていることがある。この場合、対象物31が取り付けられる予定の位置(穴部)に対して、測定部121を用いて距離を測定した場合、実際の距離よりも距離Hが長くなってしまう。このような場合には、穴部を避けた周辺の位置に対して、距離Hを測定するようにする。
【0067】
CPU111は、S102において、端末200から指示入力を受信したか否かを判定する。これは、後述するS206に対応する処理であって、「指示入力」は、
図8における投射部位置ボタンまたは投射部位置ボタンの操作による入力である。
【0068】
CPU111は、端末200から指示入力を受信したと判定した場合(S102においてYES)は、処理をS103に進める。一方、CPU111は、端末200から指示入力を受信したと判定しなかった場合(S102においてNO)は、処理をS104に進める。
【0069】
CPU111は、S103において、指示入力に基づき、変更部124に投射部123の位置およびレンズ122の位置を変更させ、処理をS104に進める。投射部123に対する指示入力があった場合、投射部123と接続された駆動装置(変更部124)を駆動し、投射部123を所定量移動させる。レンズ122のに対する指示入力があった場合、レンズ122と接続された駆動装置(変更部124)を駆動し、レンズ122を所定量移動させる。その結果、距離a,bが変化する。
【0070】
CPU111は、S104において、端末200から撮影画像を受信したか否かを判定する。これは、後述するS208に対応する処理であって、
図8において説明した「自動」ボタンが押下された場合に行われる処理である。
【0071】
CPU111は、端末200から撮影画像を受信したと判定した場合(S104においてYES)は、処理をS105に進める。一方、CPU111は、端末200から撮影画像を受信したと判定しなかった場合(S104においてNO)は、処理をS107に進める。
【0072】
CPU111は、S105において、撮影画像に含まれる対象物31の輪郭および投射画像70の輪郭を抽出し、処理をS106に進める。
図8の例においては、撮影画像は、対象物31と投射画像70とが撮影された画像である。撮影画像には、直径x2の対象物31と、これに重なった直径x1の投射画像70が含まれている。
【0073】
CPU111は、対象物31に対応する画像を抽出し、当該画像に対して対象物31の輪郭のみが抽出されるように画像処理を行う(対象物31と天井35との境界(エッジ)を抽出する)。同様に、CPU111は、投射画像70に対応する画像を抽出し、当該画像に対して投射画像70の輪郭のみが抽出されるように画像処理を行う(投射画像70と対象物31との境界(エッジ)を抽出する)。
【0074】
CPU111は、S106において、対象物31の輪郭と投射画像70の輪郭とが重なるように、変更部124に投射部123の位置およびレンズ122の位置を変更させ、処理をS107に進める。
【0075】
たとえば、本例のように、対象物31の直径よりも投射画像70の直径(サイズX)の方が小さい場合は、投射画像70の直径(サイズX)が大きくなるように投射部123の位置およびレンズ122の位置が変更される。この場合、サイズX=(H+b)×c/aの式から、サイズXが大きくなるように距離bと距離aとを調整すればよい。あるいは、距離bのみを大きくする、または、距離aのみ小さくすることでサイズXを大きくすることもできる。
【0076】
この場合、対象物31の輪郭の直径および投射画像70の輪郭の直径の比から、対象物31の輪郭と投射画像70の輪郭とが重なるように、距離a,bを算出することも可能である。あるいは、投射部123・レンズ122の位置を変えながら、端末200からリアルタイムで撮影画像を連続的に取得し、対象物31の輪郭と投射画像70の輪郭とが重なったときに投射部123・レンズ122の位置を停止させればよい。
【0077】
なお、対象物31の輪郭と投射画像70の輪郭とが重なったときとは、撮影画像において、両者の輪郭が一致したときに限らず、対象物31の輪郭の直径と投射画像70の輪郭の直径とが一致したとき(2つの円の中心位置がずれていてもよい)、あるいは、両者の直径の差が所定範囲内であるときであってもよい。また、両者の輪郭が厳密に重なる必要はなく、対象物31の輪郭内部の面積と、投射画像70の輪郭内部の面積とが一致したとき(あるいは、両者の面積の差が所定範囲内であるとき)に、両者の輪郭が重なったものとみなしてもよい。また、対象物31の位置と投射画像70の位置とが大きくずれている場合、端末200の画面上に、作業者40に対して投射装置100の位置を調整するように促す表示を行ってもよい。
【0078】
CPU111は、S107において、サイズc、距離a,b,Hを取得し、処理をS108に進める。サイズcは、投射部123から出力される際の投射画像のサイズ(
図4,5参照)であって、予め定められた値である。距離Hは、S101で測定された値である。距離a,bは、作業者による投射部位置ボタンまたは投射部位置ボタンの操作、または、自動ボタンの操作により変更される値である。
【0079】
CPU111は、S108において、サイズXを「X=(H+b)×c/a」の式により算出し、処理をS109に進める。CPU111は、S109において、投射画像およびサイズ情報を生成し、処理をS110に進める。
【0080】
上述の例では、自動調整あるいは作業者40により調整された結果として、サイズX=x2になったとする。この場合、CPU111は、投射画像を生成するとともに、算出されたサイズX(たとえば、「x2mm」)をサイズ情報に設定する。
【0081】
CPU111は、S110において、設置面35に向けて投射画像とともにサイズ情報を投射し、処理をS111に進める。本例では、
図7Bの例と同様に、対象物31と同じサイズの投射画像70dが投射される。それとともに、両端に矢印が付された直径を示す画像が投射されるとともに、画像「X2mm」が投射される。
【0082】
CPU111(通信インターフェイス115)は、S111において、サイズ情報(本例では、「X2mm」)を端末に送信し、処理をS102に戻す。これにより、CPU111は、S102~S111の処理を繰り返し実行する。なお、S102~S111の処理は、所定時間(たとえば、10msec)ごとに実行されるようにしてもよい。
【0083】
次に、端末200側の処理について説明する。
図11に示すように、メイン処理(端末)が開始すると、CPU211は、S201において、カメラ216から撮影画像を取得し、処理をS202に進める。
【0084】
CPU211は、S202において、投射装置100からサイズ情報を取得し、処理をS203に進める。サイズ情報は、投射装置100から周期的に送信(S111)されるため、変更部124によるサイズ情報の変更は、ほぼリアルタイムで端末200側でも更新される。
【0085】
CPU211は、S203において、入力部220への入力を促すメッセージを生成し、処理をS204に進める。たとえば、
図8で示したように、メッセージ「投射画像を対象物に一致させて撮影してください」を生成する。CPU211は、S204において、表示画面を生成して表示(
図8参照)し、処理をS205に進める。
【0086】
CPU211は、S205において、「投射部位置」または「レンズ位置」を変更する指示入力があったか否かを判定する。具体的には、
図8で説明した投射部位置ボタンの操作があったときに、「投射部位置」を変更する指示入力があったと判定される。また、レンズ位置ボタンの操作があったときに、「レンズ位置」を変更する指示入力があったと判定される。
【0087】
CPU211は、「投射部位置」または「レンズ位置」を変更する指示入力があったと判定した場合(S205においてYES)は、処理をS206に進める。一方、CPU211は、「投射部位置」または「レンズ位置」を変更する指示入力があったと判定しなかった場合(S205においてNO)は、処理をS207に進める。
【0088】
CPU211は、S206において、指示入力を投射装置100に送信し、処理をS207に進める。投射装置100側では、S102,S103において指示入力の受信時の処理が行われる。
【0089】
CPU211は、S207において、「自動」ボタン(
図8参照)の押下があったか否かを判定する。CPU211は、「自動」ボタンの押下があったと判定した場合(S207においてYES)は、処理をS208に進める。一方、CPU211は、「自動」ボタンの押下があったと判定しなかった場合(S207においてNO)は、処理をS209に進める。
【0090】
CPU211は、S208において、撮影画像を投射装置100に送信し、処理をS209に進める。投射装置100側では、S104~S106において撮影画像の受信時の処理が行われる。
【0091】
CPU211は、S209において、「撮影」ボタンの押下(
図8参照)があったか否かを判定する。CPU211は、「撮影」ボタンの押下があったと判定した場合(S209においてYES)は、処理をS210に進める。一方、CPU211は、「撮影」ボタンの押下があったと判定しなかった場合(S209においてNO)は、処理をS201に戻す。
【0092】
CPU211は、S210において、撮影処理を実行し、処理をS201に戻す。撮影処理をS201に戻すことで、CPU211は、S201~S210の処理を繰り返し実行する。なお、S201~S210の処理は、所定時間(たとえば、10msec)ごとに実行されるようにしてもよい。
【0093】
図12に示すように、撮影処理が開始すると、CPU211は、S221において、サイズ情報を含む撮影画像変更部のファイル名を生成し、処理をS222に進める。
【0094】
以下、
図9の例に基づき説明する。
図9は、撮影ボタン押下後の画面を示している。本例において、作業者40は、投射画像70の直径と対象物31の直径とが「x2mm」で一致した状態で撮影ボタンを押下している。この場合、サイズ情報=x2mm(投射画像70の直径)である。
【0095】
撮影画像のファイル名は、たとえば、「image」+[通し番号]+[サイズ情報]で構成される。通し番号として、撮影順に、「001」、「002」、「003」・・・と番号が付与される。サイズ情報として、直径がx2mmである場合、「Φx2mm」がファイル名として付与される。本例では、ファイル名「image001Φx2mm.jpg」が生成されている。
【0096】
CPU211は、S222において、サイズ情報を含む撮影画像のプロパティ情報を生成し、処理をS223に進める。
図9の例では、撮影画像のプロパティ情報として、大きさ(ファイルサイズ)「1200×1600」、名前(ファイル名)「image001Φx2mm.jpg」、作成日時(撮影日時)「2021/12/01 14:00」、サイズ情報として「コメント」に「対象物直径:x2mm」などの情報が生成されている。
【0097】
CPU211は、S223において、サイズ情報を含むサブファイルを生成し、処理をS224に進める。
図9の例では、ファイル「image001Φx2mm.jpg」に対応するサブファイルとして、CSVファイル「image001.csv」を生成している。
【0098】
本CSVファイルには、上記プロパティ情報と同様の内容が記載される。具体的には、本CSVファイルには、1行目に、「名前」、「image001Φx2mm.jpg」、2行目に、「作成日時」、「2021/12/01 14:00」、3行目に、「対象物直径」、「x2mm」などの情報が記載される。
【0099】
CPU211は、S224において、撮影画像およびサブファイルを保存し、撮影処理を終了する。これにより、端末200は、サイズ情報を撮影画像のファイル名に含め、また、サイズ情報を撮影画像のプロパティ情報に含めて当該撮影画像を記憶する。なお、端末200は、上記いずれかの情報をファイル名に含めて記憶する構成であってもよい。
【0100】
なお、「自動」ボタンが押下された結果、対象物31のサイズと投射画像70のサイズとが一致した場合は、「撮影」ボタンを押下しなくても、自動的に撮影処理を実行するようにしてもよい。これにより、作業者40が「自動」ボタンが押下するだけで、自動的にサイズ情報も含めた撮影画像が保存されることになる。
【0101】
以上説明したように、本実施の形態においては、投射装置100は、対象物31を設置する設置面(天井)35に向けて投射画像70(投射画像70a~70f)を投射する装置である。測定部121は、投射装置100から設置面35までの距離を測定する。投射部123は、設置面35に向けて投射画像70を投射する。変更部124は、投射部123が投射する方向に沿った、投射部123の位置およびレンズ122の位置の少なくとも一方を変更する。CPU111は、距離と投射部123の位置とレンズ122の位置とに基づき、設置面35に投射された投射画像70のサイズを示すサイズ情報を算出する。
【0102】
このように、上記構成によれば、脚立や金属製スケールを使用しないため、現場作業の安全を確保することができる。その上で、任意のサイズの画像を設置面(天井)35に投射可能とし、対象物31のサイズと投射画像70のサイズを揃えることで、対象物31のサイズを容易に計測することができる。また、現在設置されている対象物31(機器)と異なる機器を設置予定である場合、設置予定の機器のサイズに合わせて投射画像を投射することができる。これにより、新たに設置される機器の設置後のサイズが分かるように画像を撮影することもできる。さらに、投射装置100が算出したサイズ情報を利用することで、手書きによるサイズの記録ミスを防止することができるとともに、作業を効率化することができる。
【0103】
また、表示部221は、撮影画像を表示するとともに、指示入力を促す表示を行う。投射装置100は、指示入力に基づき、変更部124に投射部123の位置およびレンズ122の位置を変更させる。このようにすることで、作業者40は、端末200の画面を見ながら投射部123およびレンズ122の位置を調整することができ、端末200の操作のみで対象物31のサイズを計測することができる。
【0104】
投射装置100は、撮影画像に含まれる対象物31の輪郭および投射画像70の輪郭を抽出する。投射装置100は、対象物31の輪郭と投射画像70の輪郭とが重なるように、変更部124に投射部123の位置およびレンズ122の位置を変更させる。このようにすることで、作業者40は、投射部123およびレンズ122の位置を調整することなく、端末200の操作のみで対象物31のサイズを計測することができる。
【0105】
また、投射装置100は、サイズ情報を端末200に送信し、端末200は、カメラ216で撮影した撮影画像とともに、当該撮影画像を撮影したときのサイズ情報を記憶している。このように、投射装置100と端末200と連動させて、画像の撮影とサイズ情報の記録を一体化させることで、手書きによる記録ミスを防止するとともに、作業の効率化および現場調査後の情報整理時間を削減することができる。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態のように構成することで、作業の安全性を確保しつつ、効率的かつ正確に対象物のサイズを計測することができる。
【0107】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
1 投射システム、31 対象物、35 天井(設置面)、36 床、40 作業者、42 スケール、44 脚立、61 焦点、70,70a~70f 投射画像、100 投射装置、110 制御部、111,211 CPU、112,212 ROM、113,213 RAM、115,215 通信インターフェイス、121 測定部、122 レンズ、123 投射部、124 変更部、200 端末、214 記憶部、216 カメラ、220 入力部、221 表示部、a 距離、b 距離、c サイズ、H 距離、X サイズ。