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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】反射鏡アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/18 20060101AFI20240906BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01Q19/18
H01Q15/14 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023574317
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010463
(87)【国際公開番号】W WO2023170845
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 泰弘
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0315395(US,A1)
【文献】特開2018-137743(JP,A)
【文献】特許第6198216(JP,B1)
【文献】国際公開第2010/041804(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/18
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された周波数帯域の電波を放射する一次放射器と、
平板状の誘電体板、及び、電波を反射する反射面となる前記誘電体板の表面に配列され、それぞれが入射された電波の反射波の位相を調整する複数の共振素子を有する主反射器と、
前記一次放射器から放射された電波が入射され、当該入射された電波を前記主反射器へ向けて反射する反射面を有し、前記反射面が、前記一次放射器から放射された前記周波数帯域の低い周波数の電波による前記一次放射器から前記主反射器の反射面までの経路長に対して、前記一次放射器から放射された前記周波数帯域の高い周波数の電波による前記一次放射器から前記主反射器の反射面までの経路長を長くする副反射器と、
を備えた反射鏡アンテナ装置。
【請求項2】
設定された周波数帯域の電波を放射する一次放射器と、
平板状の誘電体板、及び、電波を反射する反射面となる前記誘電体板の表面に配列され、それぞれが入射された電波の反射波の位相を調整する複数の共振素子を有する主反射器と、
前記一次放射器から放射された電波が入射され、当該入射された電波を前記主反射器へ向けて反射する反射面を有し、前記反射面が、前記一次放射器から放射された前記周波数帯域の低い周波数の電波の波長λと、前記主反射器に入射される低い周波数の電波による球面波の波面と前記誘電体板の表面との間の長さである経路長差dとの割合λ/dと、前記一次放射器から放射された前記周波数帯域の高い周波数の電波の波長λと、前記主反射器に入射される高い周波数の電波による球面波の波面と前記誘電体板の表面との間の長さである経路長差dとの割合λ/dを等しくする副反射器と、
を備えた反射鏡アンテナ装置。
【請求項3】
前記副反射器の反射面は、それぞれが、一端が開口し、他端に底を有する円錐台の形状をした反射穴を複数有する請求項1又は請求項2に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項4】
前記副反射器の反射面は、一端が開口し、他端に底を有する反射穴を複数有し、
各前記反射穴は、前記開口から前記底に向けて穴径が細くなる形状であり、前記開口に近い位置の穴径が入射された低い周波数の電波をカットオフする径に設定され、前記底に近い位置の穴径が入射された高い周波数の電波をカットオフする径に設定された、
請求項1又は請求項2に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項5】
前記副反射器の反射面は、一端が開口し、他端に底を有する反射穴を複数有し、
各前記反射穴は、前記開口した開口面の面積が前記底の面の面積より広い、
請求項1又は請求項2に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項6】
前記副反射器の反射面は、一端が開口し、他端に底を有する反射穴を複数有し、
各前記反射穴は、前記開口から前記底に向けてステップ状に小さくなる形状である請求項1又は請求項2に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項7】
前記副反射器における反射穴の開口に平行な断面の形状は円形である請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項8】
前記副反射器における反射穴の開口に平行な断面の形状は四辺形である請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項9】
前記一次放射器は、水平及び垂直偏波の電波を放射する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項10】
前記一次放射器はホーンアンテナである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項11】
前記複数の共振素子それぞれは、円形のリング形状である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項12】
前記複数の共振素子それぞれは、円形の形状である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【請求項13】
前記複数の共振素子それぞれは、矩形のリング形状である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の反射鏡アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一次放射器と平板状の反射器とを備える反射鏡アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信及びレーダのアンテナとして、構造が簡単な平板状の反射板を用いたリフレクトアレーが開発されている。
例えば、特許文献1には、平板状の反射板の表面に配列された共振素子の配置間隔を適正化してグレーティングローブの発生を防いだリフレクトアレーアンテナが示されている。
また、特許文献2には、反射板と一次放射器の位置を決定することで広帯域化を図ることのできるリフレクトアレーアンテナが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-92633号公報
【文献】特開2017-79460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2により、広帯域化を図る提案がなされているものの、設定周波数以外において発生する残留収差によって利得低下が生じ、ホーンアンテナからなる一次放射器と放物曲面状の反射板とを対向させたパラボラアンテナと比較して、依然、狭帯域な特性であり、更なる広帯域化が望まれている。
【0005】
本開示は上記した点に鑑みてなされたものであり、広い周波数帯域で高い開口能率をもつ反射鏡アンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る反射鏡アンテナ装置は、設定された周波数帯域の電波を放射する一次放射器と、平板状の誘電体板、及び、電波を反射する反射面となる誘電体板の表面に配列され、それぞれが入射された電波の反射波の位相を調整する複数の共振素子を有する主反射器と、一次放射器から放射された電波が入射され、当該入射された電波を主反射器へ向けて反射する反射面を有し、反射面が、一次放射器から放射された周波数帯域の低い周波数の電波による一次放射器から主反射器の反射面までの経路長に対して、一次放射器から放射された周波数帯域の高い周波数の電波による一次放射器から主反射器の反射面までの経路長を長くする副反射器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、一次放射器から主反射器の反射面までの経路長を調整するので、設定周波数以外の周波数に対しても、広い周波数帯域で高い開口能率を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置を横から見た構成図である。
図2】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における主反射器を示す側面図である。
図3】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における主反射器を示す正面図である。
図4】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の一例を示す平面図である。
図5】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の他の例を示す平面図である。
図6】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の他の例を示す平面図である。
図7】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の他の例を示す平面図である。
図8】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の他の例を示す平面図である。
図9】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における共振素子の他の例を示す平面図である。
図10】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における主反射器の他の例を示す側面図である。
図11】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における副反射器を示す斜視図である。
図12】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における副反射器の反射穴を示す断面図である。
図13】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における副反射器により生じる主反射器に対する一次放射器の虚像の位置を説明する図である。
図14】実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置における副反射器により生じる一次放射器の虚像の位置からの一次放射器から放射された電波による球面波の波面と経路長差を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置を図1から図14に基づいて説明する。
反射鏡アンテナ装置は、一次放射器1と主反射器2と副反射器3とを備える。
一次放射器1と主反射器2と副反射器3は、図1に示すように、中心軸CAが一致し、主反射器2と副反射器3の間に一次放射器1が配列された、鏡面系をセンターフィード方式とした反射鏡アンテナ装置である。
【0010】
なお、反射鏡アンテナ装置としてセンターフィード方式に限られるものではなく、一次放射器1が主反射器2に対してオフセットを形成する位置関係、又は、一次放射器1及び副反射器3が主反射器2に対してオフセットを形成する位置関係にあるオフセット鏡方式の反射鏡アンテナ装置でも良い。
また、主反射器2と副反射器3以外に、さらに反射板を備えた反射鏡アンテナ装置でも良い。
以下の説明では、センターフィード方式とした反射鏡アンテナ装置について説明する。
【0011】
一次放射器1は、低い周波数fから高い周波数fまでの広帯域における周波数の異なる複数の電波RWを副反射器3に向けて放射する。
低い周波数fは、一次放射器1から放射される電波の設定された周波数帯域の下端の周波数を示し、高い周波数fは、一次放射器1から放射される電波の設定された周波数帯域の上端の周波数を示す。
一次放射器1は水平及び垂直偏波の電波を放射する。一次放射器1はホーンアンテナである。
【0012】
主反射器2は、図1から図3に示すように、誘電体板21と、電波を反射する反射面となる誘電体板21の表面に配列された複数の共振素子22と、誘電体板21の裏面に設けられた金属板23を備える。
主反射器2は、いわゆる、平板状の反射板を用いたリフレクトアレーである。
誘電体板21は、図3に示すように円形の平板状である。
【0013】
各共振素子22は、入射される電波の反射波の位相(以下、反射位相という)を調整する。
各共振素子22は、図4に示すように円形のリング形状であり、誘電体板21の表面上の位置に応じた大きさ、つまり、誘電体板21の表面上の位置に応じた直径のリング形状である。
【0014】
なお、各共振素子22は、図5に示すように矩形パッチ型、図6に示すように円形パッチ型、図7に示すように矩形リング型、図8に示すように十字型、図9に示すように複数本で構成された矩形パッチ型など任意の形状でもよく、また、複数の形状を組み合わせた形状でもよい。
また、複数の共振素子22は誘電体板21の表面上における同一平面の1層に配置したものに限られるものではなく、図10に示すように、複数の共振素子22を2層に分けて配置してもよく、3層以上に配置したものでも良い。
【0015】
主反射器2による反射位相は、各共振素子22の形状及び大きさ、複数の共振素子22間の間隔、並びに誘電体板21の比誘電率及び肉厚により決定される。
主反射器2による反射位相は、誘電体板21の表面上の位置に応じた、一次放射器1から誘電体板21の表面である反射面までの経路長に依存、言い換えれば、主反射器2に入射される球面波の波面と誘電体板21の表面との間の長さである経路長差に依存する。
【0016】
従って、主反射器2は、誘電体板21の表面上の位置に応じて誘電体板21の表面に異なる形状及び大きさの共振素子22を配置することにより反射位相の値を制御でき、主反射器2の表面に入射した球面波を主反射器2の開口面上で平面波を実現するように、共振素子22の形状及び大きさを決定して球面波を主反射器2の開口面上で平面波になるように変換して反射する。
【0017】
実施の形態1では、一次放射器1から放射された中間周波数fの電波RWが副反射器3に反射されて主反射器2に入射される球面波を主反射器2の開口面上で平面波を実現するように、主反射器2における複数の共振素子22それぞれを誘電体板21の表面上の位置に応じた形状及び大きさに決定して誘電体板21の表面に配置している。
中間周波数fは一次放射器1から放射される高い周波数fと低い周波数fとの中間の値である。
【0018】
副反射器3は、一次放射器1から放射された電波の周波数に応じて、一次放射器1から主反射器2の反射面までの経路長を調整する電波経路長調整器を構成する。
副反射器3は一次放射器1から放射された電波を反射する反射面を有する。
副反射器3の反射面は、一次放射器1から放射された低い周波数fの電波RWによる一次放射器1から主反射器2の反射面までの経路長に対して、一次放射器1から放射された高い周波数fの電波RWによる一次放射器1から主反射器2の反射面までの経路長を長くする。
【0019】
副反射器3の反射面は、一次放射器1から、低い周波数fL、中間周波数f、高い周波数fそれぞれの電波RW、RW、RWが放射され、放射された電波RW、RW、RWが反射面に入射された場合、次式(1)を満足させるように、主反射器2に入射される電波RW、RW、RWによる球面波の波面と誘電体板21の表面との間の長さである経路長差を調整する機能を有する。
λ/d=λ/d=λ/d ・・・(1)
式(1)中、λ、λ、λは低い周波数fL、中間周波数f、高い周波数fそれぞれの電波RW、RW、RWの波長、d、dM、は低い周波数fL、中間周波数f、高い周波数fそれぞれの電波RW、RW、RWにおける球面波の波面と誘電体板21の表面との間の経路長差である。
【0020】
すなわち、副反射器3は、低い周波数fの電波RWの波長λと低い周波数fの電波RWにおける経路長差dとの割合λ/dと、中間周波数fの電波RWの波長λと中間周波数fの電波RWにおける経路長差dとの割合λ/dと、高い周波数fの電波RWの波長λと高い周波数fの電波RWにおける経路長差dとの割合λ/dを等しくするように、低い周波数fL、中間周波数f、高い周波数fそれぞれの電波RW、RW、RWにおける一次放射器1から誘電体板21の表面までの経路長を調整する。
【0021】
副反射器3は、図11及び図12に示すように、反射面に複数の反射穴31を有する。
複数の反射穴31はそれぞれ、図12に示すように、電波が入射される、一端が開口し、他端に底を有し、一端が開口した開口面から底の面に向けて連続的に径の大きさが変化する円錐台の形状である。
【0022】
なお、反射穴31の形状は、円錐台に限られるものではなく、一端が開口した開口面から底の面に向けて穴径が細くなる形状であればよく、開口面の面積が底面の面積より広い形状、開口から底面に向けてステップ状に小さくなる形状、開口から底面に向けて曲線状に小さくなる形状であってもよい。
【0023】
また、反射穴31の形状は、開口面に平行な断面の形状が円形に限られるものではなく、楕円形もしくは矩形又は正方形である四辺形であってもよい。四辺形である場合の穴径は、実施の形態1では四辺形のいずれか1辺の長さである。
以下、反射穴31の形状を円錐台として説明するが、他の形状にあっても同じであり、説明は省略する。
【0024】
副反射器3の反射面に形成された反射穴31は、図12に示すように、開口、つまり開口面に近い位置31の穴径が低い周波数fの電波RWをカットオフする径に設定され、底、つまり底面に近い位置31の穴径が高い周波数fの電波RWをカットオフする径に設定され、位置31と位置31の間の位置31 の穴径が中間周波数fの電波RWをカットオフする径に設定される。
【0025】
副反射器3の反射面に低い周波数fの電波RWが入射されると、位置31で低い周波数fの電波RWがカットオフされるため、低い周波数fの電波RWが位置31で反射される。
副反射器3の反射面に中間周波数fの電波RWが入射されると、位置31で中間周波数fの電波RWがカットオフされるため、中間周波数fの電波RWが位置31で反射される。
副反射器3の反射面に高い周波数fの電波RWが入射されると、位置31で高い周波数fの電波RWがカットオフされるため、高い周波数fの電波RWが位置31で反射される。
【0026】
副反射器3は、一次放射器1から放射される電波の周波数により、反射穴31における電波の反射位置を変えており、一次放射器1から放射される電波の周波数に応じて一次放射器1から主反射器2の誘電体板21の表面までの経路長を調整する。
すなわち、低い周波数fの電波RWによる経路長に対して、中間周波数fの電波RWによる経路長を長く、高い周波数fの電波RWによる経路長をさらに長くしている。
なお、低い周波数fと高い周波数fとの間の周波数として、中間周波数fを1つ代表的に示したが、中間の周波数として1つに限られるものではなく、複数の中間の周波数であってもよい。
【0027】
また、副反射器3は、一次放射器1から放射される電波の周波数に応じて一次放射器1から主反射器2の誘電体板21の表面までの経路長を調整するので、副反射器3により生じる主反射器2に対する一次放射器1の虚像の位置も周波数により変化する。
すなわち、図13に示すように、低い周波数fの電波RWを放射する一次放射器1の虚像の位置1が主反射器2に一番近く、順に、中間周波数fの電波RWを放射する一次放射器1の虚像の位置1、高い周波数fの電波RWを放射する一次放射器1の虚像の位置1と主反射器2から遠ざかる。
【0028】
主反射器2に一番近くにある虚像の位置1からの一次放射器1から放射される電波RWによる球面波の波面の曲率Cは、図14に示すように、大きく、経路長差dは長い。
主反射器2に一番遠くにある虚像の位置1からの一次放射器1から放射される電波RWによる球面波の波面の曲率Cは小さく、経路長差dは短い。
虚像の位置1と虚像の位置1との間にある虚像の位置1からの一次放射器1から放射される電波RWによる球面波の波面の曲率Cは、曲率Cと曲率Cとの間の大きさになり、経路長差dは経路長差dと経路長差dとの間の長さになる。
【0029】
従って、上式(1)を満足するように、経路長差d、d、dを調整することで、一次放射器1から放射される電波RWの周波数が変化したときの位相誤差が低減され、反射鏡アンテナ装置を広帯域化できる。
【0030】
すなわち、一次放射器1から放射された中間周波数fの電波RWが副反射器3に反射されて主反射器2に入射される球面波を主反射器2の開口面上で平面波になるように反射するように、主反射器2における複数の共振素子22それぞれを誘電体板21の表面上の位置に応じた形状及び大きさに決定して誘電体板21の表面に配置している。
従って、実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置では、上式(1)を満足するように副反射器3によって、主反射器2に至る電波の経路長を調整しているため、一次放射器1から放射された低い周波数fの電波RW及び高い周波数fの電波RWも副反射器3に反射されて主反射器2に入射される球面波は主反射器2の開口面上で平面波に変換されるように反射される。
【0031】
次に、実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置の動作について説明する。
まず、一次放射器1から中間周波数fの電波RWが放射された場合について説明する。
一次放射器1からの中間周波数fの電波RWは副反射器3の反射面に入射される。副反射器3の反射面に入射された中間周波数fの電波RWは、副反射器3の反射面に形成された反射穴31の位置31でカットオフされるため、反射穴31の位置31で反射される。
【0032】
反射穴31の位置31で反射された中間周波数fの電波RWは、主反射器2に入射され、主反射器2に入射された中間周波数fの電波RWは、主反射器2における複数の共振素子22により反射位相が調整され、主反射器2は、中間周波数fの電波RWの球面波を主反射器2の開口面上で平面波になるように変換して反射する。
【0033】
また、一次放射器1から低い周波数fの電波RWが放射されると、一次放射器1からの低い周波数fの電波RWは副反射器3の反射面に入射される。副反射器3の反射面に入射された低い周波数fの電波RWは、副反射器3の反射面に形成された反射穴31の位置31でカットオフされるため、反射穴31の位置31で反射される。
【0034】
反射穴31の位置31で反射された低い周波数fの電波RWは、主反射器2に入射される。低い周波数fの電波RWの波長λと経路長差dとの割合λ/dが上式(1)を満足しているので、主反射器2に入射された低い周波数fの電波RWは、主反射器2における複数の共振素子22により反射位相が調整されて低い周波数fの電波RWの球面波を主反射器2の開口面上で平面波になるように変換して反射される。
【0035】
さらに、一次放射器1から高い周波数fの電波RWが放射されると、一次放射器1からの高い周波数fの電波RWは副反射器3の反射面に入射される。副反射器3の反射面に入射された高い周波数fの電波RWは、副反射器3の反射面に形成された反射穴31の位置31でカットオフされるため、反射穴31の位置31で反射される。
【0036】
反射穴31の位置31で反射された高い周波数fの電波RWは、主反射器2に入射される。高い周波数fの電波RWの波長λと経路長差dとの割合λ/dが上式(1)を満足しているので、主反射器2に入射された高い周波数fの電波RWは、主反射器2における複数の共振素子22により反射位相が調整されて高い周波数fの電波RWの球面波を主反射器2の開口面上で平面波になるように変換して反射される。
【0037】
以上のように、実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置は、一次放射器1から放射された低い周波数fの電波RWによる一次放射器1から主反射器2の反射面までの経路長に対して、一次放射器1から放射された高い周波数fの電波RWによる一次放射器1から主反射器2の反射面までの経路長を長くする副反射器3を、一次放射器1と主反射器2との間に配置したので、広い周波数帯域で高い開口能率を持つことができる。
【0038】
また、実施の形態1に係る反射鏡アンテナ装置は、一次放射器1から放射された低い周波数fの電波RWの波長λと、主反射器2に入射される低い周波数fの電波RWによる球面波の波面と主反射器2における誘電体板21の表面との間の長さである経路長差dとの割合λ/dと、一次放射器1から放射された高い周波数fの電波RWの波長λと主反射器2に入射される高い周波数fの電波RWによる球面波の波面と誘電体板21の表面との間の長さである経路長差dとの割合λ/dを等しくする副反射器3を、一次放射器1と主反射器2との間に配置したので、広い周波数帯域で高い開口能率を持つことができる。
【0039】
また、副反射器3として、電波の経路長を調整するために、反射面に、一端が開口し、他端に底を有する反射穴を複数有するものとしたので、簡単な構成により副反射器3を構成することができる。
【0040】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示に係る反射鏡アンテナ装置は、一次放射器と平板状の反射器とを備えるリフレクトアレーアンテナに好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 一次放射器、2 主反射器、21 誘電体板、22 共振素子、23 金属板、3 副反射器、31 反射穴、f、f、f 周波数、λ、λ、λ、λ 波長、d、dM、 経路長差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14