(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20240906BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20240906BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20240906BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/72
F24F120:14
(21)【出願番号】P 2023579033
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2022039070
(87)【国際公開番号】W WO2024084648
(87)【国際公開日】2024-04-25
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】曲 佳
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼▲崎▼ 弘志
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017728(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087537(WO,A1)
【文献】特開2006-349240(JP,A)
【文献】特開平06-180139(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013014(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/234770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/64
F24F 11/72
F24F 120/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行う空調部と、
前記ユーザの生体情報を検出する生体情報検出部と、
前記ユーザの人体を検出する人体検出部と、
前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感
を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記人体の表面温度及び前記人体の周囲にある対象物の温度に基づいて、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感
を向上
させることのできる前記設定値
の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定すること
を特徴とする空気調和機。
【請求項2】
設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行う空調部と、
前記ユーザの生体情報を検出する生体情報検出部と、
前記ユーザの人体を検出する人体検出部と、
前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感
を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記人体の表面温度を判定して、前記表面温度に対応して、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感
を向上
させることのできる前記設定値
の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定すること
を特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記人体検出部は、前記空間における温度分布を示す熱画像を取得することにより、前記人体を検出し、
前記制御部は、前記熱画像から前記表面温度を判定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
過去において特定された前記嗜好を参考嗜好として記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記参考嗜好に対応して、前記設定値の予め定められた初期値から前記設定値を変更して、前記嗜好を特定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項5】
過去において特定された前記嗜好を、前記ユーザ毎に参考嗜好として示す嗜好情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、ユーザの認証を行い、前記嗜好情報を参照することで前記認証されたユーザに対応する参考嗜好を特定し、前記特定された参考嗜好に対応して予め定められた初期値から前記設定値を変更して、前記嗜好を特定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記空気調和機の運転状況が変化した場合には、前記特定された嗜好に応じて予め定められた値を前記設定値として、前記空調部を制御すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記空調部は、前記空間に気流を発生させ、
前記制御部は、前記特定された嗜好に応じて、前記気流を制御すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項8】
空調部が、設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行い、
生体情報検出部が、前記ユーザの生体情報を検出し、
人体検出部が、前記ユーザの人体を検出し、
制御部が、前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感
を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、
前記制御部が、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する空気調和方法であって、
前記制御部は、前記人体の表面温度及び前記人体の周囲にある対象物の温度に基づいて、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感
を向上
させることのできる前記設定値
の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定すること
を特徴とする空気調和方法。
【請求項9】
空調部が、設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行い、
生体情報検出部が、前記ユーザの生体情報を検出し、
人体検出部が、前記ユーザの人体を検出し、
制御部が、前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感
を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、
前記制御部が、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する空気調和方法であって、
前記制御部は、前記人体の表面温度を判定して、前記表面温度に対応して、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感
を向上
させることのできる前記設定値
の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定すること
を特徴とする空気調和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機及び空気調和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の制御方法として、空気調和機が空気の調和を行っている室内の温度及び気流が、常に、目標温度及び目標気流となるように制御する方法が一般的である。
しかしながら、近年では、ユーザの温冷感に合わせて空気調和機の運転を自動制御し、室内の温度及び気流を最適化する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、バイタルサイン測定デバイスの検出結果から、ユーザの温冷感を推定し、ユーザに快適な温冷感となるように、空気調和機の運転を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、推定される温冷感が同一であれば、同一の制御が空気調和機に行われる。
しかしながら、推定される温冷感が同一であったとしても、ユーザ毎に空調に関する嗜好は異なるはずである。そのため、従来の技術では、実際に空調が行われる空間に居るユーザの空調に関する嗜好に応じた制御を行うことができない。
【0006】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、空調が行われる空間に居るユーザの快適感が向上するように、空調を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る空気調和機は、設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行う空調部と、前記ユーザの生体情報を検出する生体情報検出部と、前記ユーザの人体を検出する人体検出部と、前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記人体の表面温度及び前記人体の周囲にある対象物の温度に基づいて、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感を向上させることのできる前記設定値の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定することを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様に係る空気調和方法は、空調部が、設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行い、生体情報検出部が、前記ユーザの生体情報を検出し、人体検出部が、前記ユーザの人体を検出し、制御部が、前記生体情報から前記ユーザの快適感を判定して、前記快適感を用いて前記ユーザの前記空調に関する嗜好を特定し、前記制御部が、前記特定された嗜好に応じて、前記空調を制御する空気調和方法であって、前記制御部は、前記人体の表面温度及び前記人体の周囲にある対象物の温度に基づいて、前記設定値の初期値を設定し、前記快適感を向上させることのできる前記設定値の探索を行い、前記空調部の運転状況及び前記探索の結果に応じて、前記嗜好を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一又は複数の態様によれば、空調が行われる空間に居るユーザの空調に関する嗜好に応じて、空調を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1~4に係る空気調和機の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1における室内機の要部構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1及び3における制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図4】(A)及び(B)は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1における空気調和機での動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2における室内機の要部構成を概略的に示すブロック図である。
【
図7】実施の形態2における制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図8】実施の形態3における室内機の要部構成を概略的に示すブロック図である。
【
図9】実施の形態4における室内機の要部構成を概略的に示すブロック図である。
【
図10】実施の形態4における制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る、冷凍サイクルを用いた空気調和機100の構成を概略的に示すブロック図である。
空気調和機100は、室外に設置される室外機101と、リモートコントローラ102と、室内に設置される室内機110とを備える。
【0012】
室外機101は、冷凍サイクルにおける室外側の動作を行う。
例えば、図示してはいないが、室外機101は、室外機101における特定の部分を駆動する駆動力を発生する電動機と、電動機を駆動する駆動装置と、電動機で発生された駆動力を受けて駆動する、圧縮機、室外機101側の熱交換器及び室外機101側の送風機等を含む室外空調部と、室内機110と通信を行う通信部とを備える。
【0013】
リモートコントローラ102は、各種指示の入力を受け付ける入力受付部として機能する。例えば、リモートコントローラ102は、空気調和機100の運転を開始する入力を受け付ける。
【0014】
図2は、実施の形態1における室内機110の要部構成を概略的に示すブロック図である。ここでは、実施の形態1に関係する部分のみが示されている。
室内機110は、バイタル検出部111と、第1の通信部112と、第2の通信部113と、環境検出部114と、空調部115と、制御部116とを備える。
【0015】
バイタル検出部111は、人の生体に関する状態を示す生体情報としてのバイタルを検出する生体情報検出部である。バイタル検出部111は、室内機110が設置されている空間に居るユーザのバイタルを検出する。バイタル検出部111は、例えば、ドップラーセンサ等のバイタルセンサにより構成することができる。
【0016】
第1の通信部112は、室外機101との間で通信を行う第1の通信I/F(InterFace)である。
第2の通信部113は、リモートコントローラ102との間で通信を行う第2の通信I/Fである。
【0017】
環境検出部114は、空気調和機100が設置されている環境に関する物理量を検出する。
ここでは、環境検出部114は、室内機110が設置されている空間、言い換えると、ユーザが居る空間の温度である室内温度を検出する。
【0018】
空調部115は、ユーザが居る空間の空調を行う。例えば、空調部115は、設定値に応じて、ユーザが居る空間の空調を行う。設定値は、制御部116により設定されるものとする。空調部115は、ユーザが居る空間の温度、湿度及び気流の少なくとも一つを制御することで、その空間の空調を行う。具体的には、空調部115は、室内機110側の熱交換器と、室内機110側の送風機と、その送風機から出力される空気の出力方向を変える風向板とを含む。
【0019】
制御部116は、室内機110での処理を制御する。
例えば、制御部116は、バイタルからユーザの快適感を判定して、その快適感からそのユーザの空調に関する嗜好を特定する。そして、制御部116は、特定された嗜好に応じて、空調を制御する。
ここで、制御部116は、ユーザの快適感が向上するように設定値を徐々に変更することで、そのユーザの空調に関する嗜好を特定する。
そして、実施の形態1では、制御部116は、空気調和機100の運転状況に対応して予め定められた初期値から設定値を変更して、ユーザの嗜好を特定する。
【0020】
例えば、空気調和機100の運転状況は、室内機110で検出される温度である室内温度と、空気調和機100の設定状態との少なくとも一つを含む。設定状態は、空気調和機100に設定された設定温度、空気調和機100に設定された設定湿度、及び、除湿、冷房又は暖房といった運転状態を含む。なお、運転状況に、室外機101で検出される温度である外気温度が含まれてもよい。
【0021】
なお、制御部116は、空気調和機100の運転状況が変化した場合には、特定された嗜好に応じて予め定められた値を設定値として、空調部115を制御する。
特に、実施の形態1では、制御部116は、室内機110からの気流を制御する。例えば、制御部116は、特定された嗜好に応じて、気流を制御する。
【0022】
図3は、制御部116の構成を概略的に示すブロック図である。
制御部116は、環境特定部117と、初期制御部118と、快適感判定部119と、嗜好探索部120と、嗜好特定部121とを備える。
【0023】
環境特定部117は、空気調和機100が設置されている空間における物理量を特定する。ここでは、環境特定部117は、室内機110が設置されている空間、言い換えると、ユーザが居る空間の温度である室内温度を特定する。例えば、環境特定部117は、環境検出部114で検出された室内温度を取得することにより、室内温度を特定する。検出された室内温度は、初期制御部118に与えられる。
【0024】
初期制御部118は、空気調和機100で空気の調和を開始する際に、空調部115に初期値を設定し、その初期値で空調部115に空調を行わせる。例えば、初期制御部118は、リモートコントローラ102から除湿、冷房又は暖房等の、空気の調和を開始する指示を受けた場合、又は、タイマー等により空気の調和を開始する場合等に、初期値を空調部115に設定する。
【0025】
快適感判定部119は、バイタル検出部111で検出されたバイタルから、室内機110が設置されている空間に居るユーザの快適感を判定する。快適感は、ユーザが快適と感じている度合いである。
【0026】
例えば、快適感判定部119は、バイタルと、ユーザの快適感とを対応付けた快適感判定情報としての判定テーブルを用いて、バイタルからユーザの快適感を判定してもよい。また、快適感判定部119は、バイタルからユーザの快適感を算出するための関数を用いて、バイタルからユーザの快適感を判定してもよい。そのような判定テーブル又は関数は、予め実験を行うことにより定められており、図示しない記憶部に記憶されているものとする。
【0027】
嗜好探索部120は、初期制御部118で設定された初期値から設定値を徐々に変更することで、快適感判定部119で判定される快適感が向上させることができる設定値を探索する。例えば、嗜好探索部120は、設定値をある方向に変更することで、快適感が増加する場合には、その方向への設定値の変更を続け、設定値をある方向に変更することで、快適感が減少する場合には、その方向への設定値の変更をやめる等のように、既存の探索アルゴリズムを使用して探索を行えばよい。
【0028】
そして、嗜好探索部120は、時間、回数又は快適感に対する閾値等の、探索の終了条件が満たされた場合には、探索の終了条件が満たされた際の設定値を探索結果として嗜好特定部121に与える。なお、探索結果である設定値を、好適設定値ともいう。
【0029】
嗜好特定部121は、嗜好探索部120からの探索結果で空調部115に動作を行わせるとともに、空気調和機100の運転状況及び探索結果の組み合わせに応じて、室内機110が設置されている空間に居るユーザの空気の調和に関する嗜好を特定する。
【0030】
そして、運転状況及び探索結果の組み合わせと、寒がり、普通及び暑がりといった、ユーザの空調に関する嗜好とを対応付ける嗜好対応情報である嗜好テーブルが予め定められており、嗜好特定部121は、その嗜好テーブルを用いて、その嗜好を特定する。
嗜好は、寒がり、普通及び暑がりの三つに限定されるものではなく、より多くの嗜好が設けられていてもよい。
また、「寒がり」、「普通」及び「暑がり」の各々の中に、複数の嗜好が含まれていてもよい。例えば、「寒がり」の中に、「強い寒がり」、「普通の寒がり」及び「弱い寒がり」といった嗜好が含まれていてもよい。
【0031】
嗜好特定部121は、ユーザの空調に関する嗜好を特定すると、特定された嗜好に応じて、空調を制御する。例えば、ユーザの空調に関する嗜好と、空気調和機100の運転状況と、空調の設定値とが予め対応付けられており、空気調和機100の運転状況が変化した場合には、嗜好特定部121は、ユーザの嗜好と、変化後の運転状況とに対応する設定値を用いることで、ユーザの嗜好に対応した空調となるように、空調部115を制御する。
【0032】
以上に記載された制御部116の一部又は全部は、例えば、
図4(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0033】
また、制御部116の一部又は全部は、例えば、
図4(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、制御部116は、処理回路網で構成することができる。
【0034】
バイタル検出部111と、快適感判定部119とを一つのセンサで構成することもできる。このような場合には、快適感判定部119を除いた制御部116が、
図4(A)又は(B)に示されているようにして構成することができる。
【0035】
図5は、実施の形態1における空気調和機100での動作を示すフローチャートである。
まず、リモートコントローラ102がユーザからの指示を受け付けること等により、ユーザにより空気調和機100の運転が開始されると(S10でYes)、制御部116は、ユーザからの指示に応じて、空調部115の運転を開始する(S11)。
【0036】
この際、初期制御部118は、空調部115に、ユーザからの指示に応じた初期値を設定する(S12)。これにより、空調部115は、初期値に従って、ユーザが居る空間の空調を開始する。
【0037】
次に、嗜好探索部120は、ユーザが快適と感じる設定値の探索を行う(S13)。
例えば、嗜好探索部120は、空調部115に設定されている設定値を変更することで、快適感判定部119で判定される快適感が向上するか否かにより、設定値の探索を行えばよい。
【0038】
次に、嗜好探索部120は、探索の終了条件が満たされたか否かを判断する(S14)。終了条件が満たされた場合(S14でYes)には、処理はステップS15に進む。
【0039】
ステップS15では、嗜好特定部121は、嗜好探索部120からの探索結果を受け取り、その探索結果で空調部115に動作を行わせるとともに、空気調和機100の運転状況及び探索結果の組み合わせに応じて、室内機110が設置されている空間に居るユーザの空気の調和に関する嗜好を特定する。
【0040】
以上により、空気調和機100は、ユーザの嗜好を特定することができる。これにより、例えば、ユーザの嗜好と、空気調和機100の運転状況と、空調の設定値とを対応付けておくことにより、ユーザが空気調和機100の設定温度を変更した場合等のように、空気調和機100の運転状況が変化した場合には、その運転状況及びユーザの嗜好に対応する設定値で空調部115に空調を行わせることができる。これにより、空気調和機100は、ユーザの嗜好に応じた空調を提供することができる。
【0041】
実施の形態2.
図1に示されているように、実施の形態2に係る空気調和機200は、室外機101と、リモートコントローラ102と、室内機210とを備える。
実施の形態2に係る空気調和機200の室外機101及びリモートコントローラ102は、実施の形態1に係る空気調和機100の室外機101及びリモートコントローラ102と同様である。
【0042】
図6は、実施の形態2における室内機210の要部構成を概略的に示すブロック図である。ここでは、実施の形態2に関係する部分のみが示されている。
室内機210は、バイタル検出部111と、第1の通信部112と、第2の通信部113と、環境検出部114と、空調部115と、制御部216と、人体検出部240とを備える。
【0043】
実施の形態2における室内機210のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115は、実施の形態1における室内機110のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115と同様である。
【0044】
人体検出部240は、室内機210が設置されている空間に居るユーザの人体を検出する。例えば、人体検出部240は、その空間の熱画像を取得する熱画像取得部としての赤外線センサで実現することができる。言い換えると、人体検出部240は、空間における温度分布を示す熱画像を取得することにより、ユーザの人体を検出する。
【0045】
制御部216は、室内機210での処理を制御する。
例えば、制御部216は、室内機210による空調を制御する。
実施の形態2では、制御部216は、検出された人体の表面温度を判定して、その表面温度に対応して予め定められた初期値から設定値を変更して、ユーザの嗜好を特定する。例えば、制御部216は、ユーザの快適感が向上するように、設定値を徐々に変更する。
【0046】
実施の形態2における初期値は、空気調和機200の運転状況と、検出された人体の表面温度との組み合わせにより定まるものとする。
なお、実施の形態2では、空気調和機200の運転状況に、ユーザの周囲にある対象物の温度である対象物温度が含まれる。
【0047】
図7は、制御部216の構成を概略的に示すブロック図である。
制御部216は、環境特定部217と、初期制御部218と、快適感判定部119と、嗜好探索部120と、嗜好特定部121と、表面温度特定部222とを備える。
実施の形態2における制御部216の快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121は、実施の形態1における制御部116の快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121と同様である。
【0048】
環境特定部217は、実施の形態1における環境特定部117と同様に、室内温度を特定するとともに、対象物温度も特定する。
例えば、環境特定部217は、人体検出部240で取得された熱画像から、その熱画像に含まれている人体の周囲にある壁及び床の少なくとも何れか一方の温度を、対象物温度として特定する。
【0049】
表面温度特定部222は、人体検出部240で検出された人体の表面温度を特定する。例えば、表面温度特定部222は、人体検出部240からの熱画像から、その熱画像に含まれている人体の表面温度を特定する。
【0050】
初期制御部218は、空気調和機200で空気の調和を開始する際に、空調部115に初期値を設定し、その初期値で空調部115に空調を行わせる。例えば、初期制御部218は、リモートコントローラ102から除湿、冷房又は暖房等の、空気の調和を開始する指示を受けた場合、又は、タイマー等により空気の調和を開始する場合等に、表面温度特定部222で特定された表面温度に基づいて、空調部115に初期値を設定する。
【0051】
例えば、初期制御部218は、冷房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値よりも高い場合には、ユーザに風が当たるように風向を設定する。そして、初期制御部218は、冷房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値以下である場合には、表面温度が低いほど、ユーザから風が遠ざかるように、風向を設定する。ここでの、閾値は、空気調和機100の運転状況に応じて、予め定められていればよい。
【0052】
また、初期制御部218は、暖房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値よりも低い場合には、ユーザに風が当たるように風向を設定する。そして、初期制御部218は、暖房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値以上である場合には、表面温度が高いほど、ユーザから風が遠ざかるように、風向を設定する。
【0053】
なお、初期制御部218は、以上のように風向を制御する代わりに、又は、風向の制御とともに、風量及び設定温度を変えてもよい。例えば、初期制御部218は、冷房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値よりも高い場合には、ユーザの設定値よりも、風量の強い、又は、設定温度の低い設定値を初期値として空調部115に設定してもよい。また、初期制御部218は、冷房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値以下である場合には、ユーザの設定値よりも、風量の弱い、又は、設定温度の高い設定値を初期値として空調部115に設定してもよい。
【0054】
同様に、初期制御部218は、暖房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値よりも低い場合には、ユーザの設定値よりも、風量の強い、又は、設定温度の高い設定値を初期値として空調部115に設定してもよい。また、初期制御部218は、暖房運転において、特定された表面温度が予め定められた閾値以上である場合には、ユーザの設定値よりも、風量の弱い、又は、設定温度の低い設定値を初期値として空調部115に設定してもよい。
【0055】
以上のように、実施の形態2によれば、ユーザの人体の表面温度により、空気調和機200の初期設定が定められるので、空気調和機200の初期の運転時から、ユーザは、快適な空調の提供を受けることができる。また、空気調和機200の初期の運転時から、ユーザが快適な空調の提供を受けることができるため、より短期間で、嗜好探索部120での探索結果を得ることができる。
【0056】
実施の形態3.
図1に示されているように、実施の形態3に係る空気調和機300は、室外機101と、リモートコントローラ102と、室内機310とを備える。
実施の形態3に係る空気調和機300の室外機101及びリモートコントローラ102は、実施の形態1に係る空気調和機100の室外機101及びリモートコントローラ102と同様である。
【0057】
図8は、実施の形態3における室内機310の要部構成を概略的に示すブロック図である。ここでは、実施の形態3に関係する部分のみが示されている。
室内機310は、バイタル検出部111と、第1の通信部112と、第2の通信部113と、環境検出部114と、空調部115と、制御部316と、記憶部341とを備える。
【0058】
実施の形態3における室内機310のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115は、実施の形態1における室内機110のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115と同様である。
【0059】
記憶部341は、制御部316で前回特定した、ユーザの嗜好を記憶する。
言い換えると、記憶部341は、過去において特定された、ユーザの空調に関する嗜好を参考嗜好として記憶する。
【0060】
制御部316は、室内機310での処理を制御する。
特に、制御部316は、室内機310が設置されている空間の空調を制御する。
また、制御部316は、記憶部341に記憶されている参考嗜好に対応して予め定められた初期値から設定値を変更して、ユーザの空調に関する嗜好を特定する。例えば、制御部316は、ユーザの快適感が向上するように、設定値を徐々に変更する。そして、制御部316は、このようにして特定した嗜好で、記憶部341に記憶されている参考嗜好を更新する。
【0061】
図3に示されているように、制御部316は、環境特定部117と、初期制御部318と、快適感判定部119と、嗜好探索部120と、嗜好特定部121とを備える。
実施の形態3における制御部316の環境特定部117、快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121は、実施の形態1における制御部116の環境特定部117、快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121と同様である。
【0062】
初期制御部318は、空気調和機300で空気の調和を開始する際に、空調部115に初期値を設定し、その初期値で空調部115に空調を行われる。例えば、初期制御部318は、リモートコントローラ102から除湿、冷房又は暖房等の、空気の調和を開始する指示を受けた場合、又は、タイマー等により空気の調和を開始する場合等に、記憶部341に記憶されてる嗜好に基づいて、空調部115に初期値を設定する。
【0063】
例えば、空気調和機300の運転状況と、ユーザの嗜好と、設定値とが予め対応付けられており、初期制御部318は、空気調和機300の運転状況に応じて、記憶部341に記憶されている嗜好に対応する設定値を特定し、特定された設定値を初期値として、空調部115に設定する。
【0064】
なお、以上に記載された記憶部341は、揮発性又は不揮発性のメモリにより実現することができる。
【0065】
以上のように、実施の形態3によれば、過去において特定された、ユーザの嗜好により、空気調和機300の初期設定が定められるので、空気調和機300の初期の運転時から、ユーザは、快適な空調の提供を受けることができる。また、空気調和機300の初期の運転時から、ユーザが快適な空調の提供を受けることができるため、より短期間で、嗜好探索部120での探索結果を得ることができる。
【0066】
実施の形態4.
図1に示されているように、実施の形態4に係る空気調和機400は、室外機101と、リモートコントローラ102と、室内機410とを備える。
実施の形態4に係る空気調和機400の室外機101及びリモートコントローラ102は、実施の形態1に係る空気調和機100の室外機101及びリモートコントローラ102と同様である。
【0067】
図9は、実施の形態4における室内機410の要部構成を概略的に示すブロック図である。ここでは、実施の形態4に関係する部分のみが示されている。
室内機410は、バイタル検出部111と、第1の通信部112と、第2の通信部113と、環境検出部114と、空調部115と、制御部416と、記憶部441とを備える。
【0068】
実施の形態4における室内機410のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115は、実施の形態1における室内機110のバイタル検出部111、第1の通信部112、第2の通信部113、環境検出部114及び空調部115と同様である。
【0069】
記憶部441は、制御部416で過去において特定されたユーザ毎の嗜好を記憶する。言い換えると、記憶部441は、過去において特定された、ユーザ毎の空調に関する嗜好を参考嗜好として記憶する。
具体的には、記憶部441は、ユーザと、そのユーザの参考嗜好とを対応付ける嗜好情報としての嗜好テーブルを記憶する。
【0070】
制御部416は、室内機410での処理を制御する。
特に、制御部416は、室内機410が設置されている空間の空調を制御する。
また、制御部416は、記憶部441に記憶されている嗜好テーブルから、認証されたユーザの参考嗜好を特定し、特定された参考嗜好に対応して予め定められた初期値から設定値を変更して、ユーザの空調に関する嗜好を特定する。例えば、制御部416は、ユーザの快適感が向上するように、設定値を徐々に変更する。そして、制御部416は、このようにして特定した嗜好で、記憶部441に記憶されている対応する参考嗜好を更新する。
【0071】
図10は、制御部416の構成を概略的に示すブロック図である。
制御部416は、環境特定部117と、初期制御部418と、快適感判定部119と、嗜好探索部120と、嗜好特定部121と、認証部423とを備える。
実施の形態4における制御部416の環境特定部117、快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121は、実施の形態1における制御部116の環境特定部117、快適感判定部119、嗜好探索部120及び嗜好特定部121と同様である。
【0072】
認証部423は、空気調和機400を利用するユーザの認証を行う。例えば、認証部423は、第2の通信部113を介して、リモートコントローラ102から、ユーザを識別するための識別情報であるユーザ識別情報を取得することにより、認証を行えばよい。ユーザ識別情報は、ユーザIDの他、ユーザの指紋等の生体情報であってもよい。
【0073】
また、認証部423は、環境検出部114から熱画像を取得して、その熱画像に基づいて、ユーザの認証を行ってもよい。
認証部423は、認証されたユーザのユーザ識別情報を初期制御部418に与える。
【0074】
初期制御部418は、空気調和機400で空気の調和を開始する際に、空調部115に初期値を設定し、その初期値で空調部115に空調を行われる。例えば、初期制御部418は、リモートコントローラ102から除湿、冷房又は暖房等の、空気の調和を開始する指示を受けた場合、又は、タイマー等により空気の調和を開始する場合等に、記憶部341に記憶されてる参考嗜好に基づいて、空調部115に初期値を設定する。
【0075】
例えば、初期制御部418は、認証部423からのユーザ識別情報で識別されるユーザに対応付けられている参考嗜好を、記憶部441に記憶されている嗜好テーブルを参照することで特定する。
空気調和機400の運転状況と、ユーザの参考嗜好と、設定値とが予め対応付けられており、初期制御部418は、空気調和機400の運転状況に応じて、特定された参考嗜好に対応する設定値を特定し、特定された設定値を初期値として、空調部115に設定する。
【0076】
なお、以上に記載された記憶部441は、揮発性又は不揮発性のメモリにより実現することができる。
【0077】
以上のように、実施の形態4によれば、過去において特定された、ユーザ毎の嗜好により、空気調和機400の初期設定が定められるので、空気調和機400の初期の運転時から、ユーザは、快適な空調の提供を受けることができる。また、空気調和機400の初期の運転時から、ユーザが快適な空調の提供を受けることができるため、より短期間で、嗜好探索部120での探索結果を得ることができる。
【0078】
以上に記載された実施の形態1~4では、室内機110~410に備えられている制御部116~416で、気流が制御されているが、実施の形態1~4は、このような例に限定されない。例えば、図示されていないが、室外機101に備えられている制御部により、気流が制御されてもよい。
【0079】
以上に記載された実施の形態1~4では、制御部116~416は、空調部115を制御することで、ユーザの快適感から、ユーザの嗜好を特定している。ここで、空気調和機100~400の設定温度又は設定湿度に関する設定値を変化させると、圧縮機等の制御が必要となり、余分な電力が消費される場合もある。このため、制御部116~416は、空調部115に含まれる図示しない気流発生部のみを制御することで、室内機110~410からの気流を制御して、ユーザの快適感から、ユーザの嗜好を特定して、その特定された嗜好に応じて、気流を制御することも可能である。言い換えると、設定温度及び設定湿度は変化させずに、ユーザの快適感から、ユーザの嗜好を特定することができる。ここで、気流発生部は、室内機110、210、310の送風機及び風向板により構成される機能部である。また、気流は、風向及び風量で制御されるものとする。
【符号の説明】
【0080】
100,200,300,400 空気調和機、 101 室外機、 102 リモートコントローラ、 110,210,310,410 室内機、 111 バイタル検出部、 112 第1の通信部、 113 第2の通信部、 115 空調部、 116,216,316,416 制御部、 118,218,318,418 初期制御部、 119 快適感判定部、 120 嗜好探索部、 121 嗜好特定部、 222 表面温度特定部、 423 認証部、 240 人体検出部、 341,441 記憶部。