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特許7551031転がり軸受の異常検出装置、及びロジスティック回帰モデルの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】転がり軸受の異常検出装置、及びロジスティック回帰モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20240906BHJP
【FI】
G01M13/045
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024510711
(86)(22)【出願日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2023035369
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新倉 脩平
(72)【発明者】
【氏名】木村 康樹
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特許第5943357(JP,B2)
【文献】特開2021-113689(JP,A)
【文献】特許第6450575(JP,B2)
【文献】特開2019-067197(JP,A)
【文献】特許第4607722(JP,B2)
【文献】特開2021-179192(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114739672(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 - 17/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
G02B 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受に設けられている加速度センサから取得した振動データから、オーバーオール値と、周波数波形における前記転がり軸受の損傷に起因する周波数のピーク高さとを算出し、前記オーバーオール値と前記ピーク高さとを含む複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、前記転がり軸受の内部に損傷が発生している確率である異常確率を算出する検出装置本体
を備え、
前記ロジスティック回帰モデルは、正常な状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである正常データと、損傷している状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである異常データとを含む複数のサンプルの学習データから、前記オーバーオール値と前記ピーク高さとを含む複数の指標を用いてロジスティック回帰分析を行うことにより生成されたロジスティック関数である転がり軸受の異常検出装置。
【請求項2】
前記複数の指標と前記複数の参照値とのそれぞれには、前記オーバーオール値と前記ピーク高さとを掛け合わせた値がさらに含まれている請求項1記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項3】
前記複数の指標と前記複数の参照値とのそれぞれには、前記転がり軸受の運転時間がさらに含まれている請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項4】
前記複数の指標と前記複数の参照値とのそれぞれには、前記転がり軸受の総回転数がさらに含まれている請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項5】
前記検出装置本体には、前記異常確率の閾値が設定されており、
前記検出装置本体は、算出した前記異常確率を前記閾値と比較することにより、前記転がり軸受の異常の有無を判定する請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項6】
前記検出装置本体は、
2種類以上の前記ロジスティック回帰モデルを用いて、同一の前記転がり軸受について、2つ以上の前記異常確率を算出し、
2つ以上の前記異常確率のそれぞれを前記閾値と比較し、
前記閾値以上となった前記異常確率の数に基づいて、前記転がり軸受の異常の有無を判定する請求項5記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項7】
前記検出装置本体は、
前記加速度センサから前記振動データを取得する振動データ取得部と、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データに対して、フィルタ処理を施すことにより、ノイズが除去されたデータであるノイズ除去データを生成するフィルタ処理部と、
前記ノイズ除去データから前記オーバーオール値を算出するオーバーオール値演算部と、
前記ノイズ除去データに対して包絡線処理を施し、フーリエ変換した周波数波形を出力するエンベロープ解析部と、
前記周波数波形から前記ピーク高さを算出するピーク高さ演算部と
を有している請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受の異常検出装置。
【請求項8】
正常な状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである正常データと、損傷している状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである異常データとを含む複数のサンプルの学習データを取得するステップ、
前記学習データを前記正常データと前記異常データとに2値分類するステップ、及び
前記2値分類された前記学習データから、複数の指標を選定してロジスティック回帰分析を行い、ロジスティック回帰モデルとして、転がり軸受の内部に損傷が発生している確率である異常確率を算出するためのロジスティック関数を導出するステップ
を含み、
前記複数の指標には、前記振動データにフィルタ処理を施して算出されるオーバーオール値と、転がり軸受の損傷に起因する周波数のピーク高さとが含まれており、
前記ピーク高さは、前記フィルタ処理が施されたデータに対してエンベロープ処理を施し周波数解析を行って得られる周波数波形から算出されるロジスティック回帰モデルの生成方法。
【請求項9】
前記複数の指標には、前記オーバーオール値と前記ピーク高さとを掛け合わせた値がさらに含まれている請求項記載のロジスティック回帰モデルの生成方法。
【請求項10】
前記複数の指標には、前記転がり軸受の運転時間がさらに含まれている請求項又は請求項に記載のロジスティック回帰モデルの生成方法。
【請求項11】
前記複数の指標には、前記転がり軸受の総回転数がさらに含まれている請求項又は請求項に記載のロジスティック回帰モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転がり軸受の異常検出装置、及びロジスティック回帰モデルの生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の状態監視方法では、対象物に設置されたセンサから取得した測定データに対してフィルタ処理が行われ、複数の特徴量が算出される。そして、複数の特徴量を学習データとして機械学習が行われることにより、対象物が異常であるか否かを判定するためのアルゴリズムが決定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-45484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の状態監視方法では、機械学習の学習データとして、対象物が正常であるときに取得された測定データのみが使用されている。このため、異常であると判定された時点で、対象物の損傷が進んでいる可能性がある。例えば、エレベータ巻上機の軸受のように、比較的低回転数で使用される転がり軸受では、損傷の初期には振動が小さく、異常と判定されず、異常が検出された時点で、損傷がかなり進んでいる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、転がり軸受の異常をより早期に検出することができる転がり軸受の異常検出装置、及びロジスティック回帰モデルの生成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る転がり軸受の異常検出装置は、転がり軸受に設けられている加速度センサから取得した振動データから、オーバーオール値と、周波数波形における転がり軸受の損傷に起因する周波数のピーク高さとを算出し、オーバーオール値とピーク高さとを含む複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、転がり軸受の内部に損傷が発生している確率である異常確率を算出する検出装置本体を備え、ロジスティック回帰モデルは、正常な状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである正常データと、損傷している状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである異常データとを含む複数のサンプルの学習データから、オーバーオール値とピーク高さとを含む複数の指標を用いてロジスティック回帰分析を行うことにより生成されたロジスティック関数である。
本開示に係るロジスティック回帰モデルの生成方法は、正常な状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである正常データと、損傷している状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである異常データとを含む複数のサンプルの学習データを取得するステップ、学習データを正常データと異常データとに2値分類するステップ、及び2値分類された学習データから、複数の指標を選定してロジスティック回帰分析を行い、ロジスティック回帰モデルとして、転がり軸受の内部に損傷が発生している確率である異常確率を算出するためのロジスティック関数を導出するステップを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、転がり軸受の異常をより早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による転がり軸受を示す構成図である。
図2図1の転がり軸受の異常検出装置を示すブロック図である。
図3図2のデータ取得部により取得された振動データの一例を示すグラフである。
図4図2のエンベロープ解析部によって出力された周波数波形の一例を示すグラフである。
図5図2のピーク高さ演算部におけるピーク高さの算出方法を示す説明図である。
図6図2の検出装置本体による転がり軸受の状態判定処理を示すフローチャートである。
図7図2の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図8】実施の形態1のモデル生成処理において用いられる学習データの一例を示す表である。
図9】実施の形態2の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図10】実施の形態3による転がり軸受の異常検出装置を示すブロック図である。
図11図10の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図12】実施の形態3のモデル生成処理において用いられる学習データの一例を示す表である。
図13】実施の形態4の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図14】実施の形態5の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図15】実施の形態6の検出装置本体によるモデル生成処理を示すフローチャートである。
図16】実施の形態7による転がり軸受の異常検出装置の要部を示すブロック図である。
図17】実施の形態1~7の検出装置本体の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。
図18】実施の形態1~7の検出装置本体の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による転がり軸受を示す構成図である。図において、転がり軸受11は、外輪12と、内輪13と、複数の転動体14とを有している。外輪12は、ハウジング15に組み込まれている。内輪13は、外輪12の内側に配置されている。
【0010】
複数の転動体14は、外輪12と内輪13との間に介在している。また、複数の転動体14は、内輪13の周方向に互いに等間隔をおいて配置されている。各転動体14としては、玉又はころが用いられている。
【0011】
内輪13は、回転軸16に装着されている。内輪13は、回転軸16の軸心を中心として、回転軸16とともに回転する。
【0012】
なお、実施の形態1の転がり軸受11は、内輪13が回転するタイプであるが、外輪12が回転するタイプであってもよい。
【0013】
内輪13の回転時には、転がり軸受11に振動が生じる。ハウジング15には、加速度センサ17が設けられている。加速度センサ17は、転がり軸受11の振動に応じた信号を発生する。
【0014】
図2は、図1の転がり軸受11の異常検出装置を示すブロック図である。異常検出装置20は、検出装置本体21と、モニタ22とを有している。
【0015】
検出装置本体21は、機能ブロックとして、振動データ取得部23と、フィルタ処理部24と、オーバーオール値演算部25と、エンベロープ解析部26と、ピーク高さ演算部27と、乗算部28と、モデル生成部29と、モデル記憶部30と、確率演算部31と、判定部32と、表示部33とを有している。
【0016】
振動データ取得部23は、回転軸16が一定速度で回転しているときに加速度センサ17から出力された振動データを取得する。
【0017】
図3は、振動データ取得部23により取得された振動データの一例を示すグラフである。図2は、転がり軸受11の振動加速度の時間変化を示している。
【0018】
フィルタ処理部24は、振動データ取得部23によって取得された振動データに対して、フィルタ処理を施すことにより、ノイズが除去されたデータであるノイズ除去データを生成する。フィルタ処理としては、バンドパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理、ハイパスフィルタ処理等が挙げられる。
【0019】
オーバーオール値演算部25は、フィルタ処理部24によって生成されたノイズ除去データから、オーバーオール値を算出する。オーバーオール値は、FFT(Fast Fourier Transform)解析後の全周波数帯の各周波数成分の大きさの総和である。
【0020】
摩耗などにより転がり軸受11の真円度が悪化した場合、及び転がり軸受11の内部に損傷が発生した場合、転がり軸受11の振動のオーバーオール値が上昇する。また、転がり軸受11の内部に損傷が発生して暫く経つと、損傷部の角が丸くなり、ピークが小さくなる状態が起こるが、オーバーオール値は大きいままであることが多い。
【0021】
エンベロープ解析部26は、フィルタ処理部24によって生成されたノイズ除去データに対して包絡線処理を施し、フーリエ変換した周波数波形を出力する。
【0022】
図4は、エンベロープ解析部26によって出力された周波数波形の一例を示すグラフである。図4に示すように、転がり軸受11の内部に損傷が発生している場合、軸受損傷周波数と、軸受損傷周波数を整数倍した周波数とにピークが発生する。軸受損傷周波数は、転がり軸受11の内部の損傷に起因する周波数であり、転がり軸受11の寸法、転動体14の数等によって決まる。
【0023】
ピーク高さ演算部27は、出力された周波数波形における軸受損傷周波数のピーク高さを算出する。
【0024】
図5は、ピーク高さ演算部27におけるピーク高さの算出方法を示す説明図である。転がり軸受11の内部に損傷が発生している場合、軸受損傷周波数にピークが発生する。また、サンプリング周波数によっては、軸受損傷周波数に近い周波数にピークが発生する場合もある。
【0025】
ピーク高さの算出においては、ピークが発生している周波数、即ちピーク周波数よりも低い側と高い側とにそれぞれ複数のサンプリング点が設定される。そして、ピーク周波数よりも低い側の複数のサンプリング点の中から、最下点(X1,Y1)が選定される。また、ピーク周波数よりも高い側の複数のサンプリング点の中からも、最下点(X2,Y2)が選定される。
【0026】
ピーク高さ演算部27は、最下点(X1,Y1)と最下点(X2,Y2)とを用いて、ピーク周波数の頂部(Xp,Yp)までの高さHを、以下3つの式のいずれかを用いて算出する。なお、A及びBは定数である。
【0027】
H=[(Yp-Y1)+(Yp-Y2)]/2
【0028】
H=A×[(Yp-Y1)+(Yp-Y2)]/2+B
【0029】
H= (Yp-Y1)-[ (Y2-Y1)/(X2-X1)]×(X2-X1)
【0030】
乗算部28は、オーバーオール値演算部25の出力値と、ピーク高さ演算部27の出力値とを掛け合わせた値、即ちオーバーオール値×ピーク高さの値を算出する。
【0031】
モデル生成部29は、正常データと異常データとを機械学習してロジスティック回帰モデルを生成する。機械学習は、例えば教師あり学習である。ロジスティック回帰モデルの生成方法の詳細についは、後述する。
【0032】
モデル記憶部30は、モデル生成部29によって生成されたロジスティック回帰モデルを記憶する。
【0033】
確率演算部31は、複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、転がり軸受11の異常確率を算出する。転がり軸受11の異常確率は、検査対象である転がり軸受11の内部に損傷が発生している確率である。実施の形態1の確率演算部31では、複数の参照値として、オーバーオール値とピーク高さとが用いられる。
【0034】
判定部32は、確率演算部31によって算出された異常確率を、異常確率の閾値と比較することにより、転がり軸受11の異常の有無を判定する。異常確率の閾値は、判定部32に予め設定されている。
【0035】
判定部32は、異常確率が閾値以上である場合、異常があると判定、即ち転がり軸受11に損傷が発生していると判定する。また、判定部32は、異常確率が閾値未満である場合、転がり軸受11が正常な状態であると判定する。
【0036】
表示部33は、判定部32による判定結果をモニタ22に表示する。また、表示部33は、確率演算部31によって算出された異常確率をモニタ22に表示してもよい。
【0037】
図6は、図2の検出装置本体21による転がり軸受11の状態判定処理を示すフローチャートである。検出装置本体21は、回転軸16が一定速度で回転しているときに状態判定処理を実行する。
【0038】
状態判定処理が開始されると、検出装置本体21は、ステップS101において、加速度センサ17から振動データを取得する。
【0039】
続いて、検出装置本体21は、ステップS102において、取得した振動データに対してフィルタ処理を施す。この後、検出装置本体21は、ステップS103において、オーバーオール値を算出する。
【0040】
次に、検出装置本体21は、ステップS104において、エンベロープ解析を実施し、フーリエ変換した周波数波形を得る。そして、検出装置本体21は、ステップS105において、ピーク高さを算出する。また、検出装置本体21は、ステップS106において、オーバーオール値×ピーク高さの値を算出する。
【0041】
この後、検出装置本体21は、ステップS107において、異常確率を算出する。そして、検出装置本体21は、ステップS108において、異常確率と閾値とを比較し、転がり軸受11の異常の有無を判定する。続いて、検出装置本体21は、ステップS109において、判定結果をモニタ22に表示し、状態判定処理を終了する。
【0042】
図7は、図2の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。モデル生成処理は、ロジスティック回帰モデルを生成する処理であ。検出装置本体21は、モデル生成処理を開始すると、ステップS201において、教師あり学習のための学習データを取得する。
【0043】
教師あり学習においては、複数のサンプルの学習データが用いられる。複数のサンプルには、正常な状態の複数の転がり軸受と、正常ではない状態、即ち損傷している状態の複数の転がり軸受とが含まれている。複数のサンプルの学習データには、正常データと、異常データとが含まれる。正常データは、正常な状態の複数の転がり軸受を回転させて得られる振動データである。異常データは、損傷している状態の複数の転がり軸受を回転して得られる振動データである。
【0044】
学習データを取得した後、検出装置本体21は、ステップS202において、正常データを「0」、異常データを「1」として、複数のサンプルの学習データを2値分類する。
【0045】
図8は、実施の形態1のモデル生成処理において用いられる学習データの一例を示す表である。図8では、2値分類後の学習データが示されている。
【0046】
実施の形態1の教師あり学習においては、各サンプルについて、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値とが入力データとされ、正常であるか否かの判定結果が出力データとされている。
【0047】
この後、検出装置本体21は、ステップS203において、ロジスティック回帰分析を行う。ロジスティック回帰分析は、複数の指標を用いて、2値の結果が起こる確率を予測する統計手法である。この例では、検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値とピーク高さとの2つを指標として選定する。
【0048】
そして、検出装置本体21は、ステップS204において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0049】
P=1/(1+e-z)
【0050】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3
【0051】
なお、A1、A2、及びA3は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0052】
ロジスティック関数Pの出力は、0から1の間の値であるため、転がり軸受11の振動データから算出した複数の参照値の値から、転がり軸受11の異常確率を求めることができる。
【0053】
実施の形態1におけるロジスティック回帰モデルの生成方法は、第1ステップ、第2ステップ、及び第3ステップを含んでいる。
【0054】
第1ステップは、正常データと異常データとを含む複数のサンプルの学習データを取得するステップである。第2ステップは、学習データを正常データと異常データとに2値分類するステップである。第3ステップは、2値分類された学習データから、複数の指標を選定してロジスティック回帰分析を行い、ロジスティック関数を導出するステップである。
【0055】
このような異常検出装置20では、検出装置本体21が、加速度センサ17から振動データを取得し、オーバーオール値とピーク高さとを算出する。また、検出装置本体21は、オーバーオール値とピーク高さとを含む複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、転がり軸受11の異常確率を算出する。
【0056】
このため、転がり軸受11の異常をより早期に検出することができる。また、転がり軸受11が、例えばエレベータ巻上機の軸受のように、比較的低回転数で使用される転がり軸受である場合も、転がり軸受11の異常をより早期に検出することができる。これにより、エレベータの運転休止期間を短縮することができる。
【0057】
また、検出装置本体21には、異常確率の閾値が設定されている。そして、検出装置本体21は、算出した異常確率を閾値と比較することにより、転がり軸受11の異常の有無を判定する。このため、転がり軸受11の異常をより速やかに検出することができる。
【0058】
また、振動データ取得部23は、加速度センサ17から振動データを取得する。フィルタ処理部24は、振動データ取得部23によって取得された振動データに対して、フィルタ処理を施すことにより、ノイズ除去データを生成する。オーバーオール値演算部25は、ノイズ除去データからオーバーオール値を算出する。エンベロープ解析部26は、ノイズ除去データに対して包絡線処理を施し、フーリエ変換した周波数波形を出力する。ピーク高さ演算部27は、エンベロープ解析部26により出力された周波数波形から、ピーク高さを算出する。
【0059】
このため、検出装置本体21により、オーバーオール値とピーク高さとを容易に算出することができる。
【0060】
また、ロジスティック回帰モデルの生成方法では、正常データと異常データとを含む複数のサンプルの学習データが取得され、学習データが正常データと異常データとに2値分類される。そして、2値分類された学習データから、複数の指標が選定されてロジスティック回帰分析が行われ、ロジスティック回帰モデルとして、異常確率を算出するためのロジスティック関数が導出される。
【0061】
このため、生成されたロジスティック回帰モデルを用いることにより、転がり軸受11の異常をより速やかに検出することができる。
【0062】
また、複数の指標には、オーバーオール値とピーク高さとが含まれている。そして、ピーク高さは、フィルタ処理が施されたデータに対してエンベロープ処理を施し周波数解析を行って得られる周波数波形から算出される。
【0063】
このため、より有効なロジスティック回帰モデルを容易に生成することができ、このロジスティック回帰モデルを用いることで、転がり軸受11の異常をより早期に検出することができる。
【0064】
なお、実施の形態1では、オーバーオール値×ピーク高さの値は、指標として選定されていないので、教師あり学習の入力データから除かれてもよい。また、実施の形態1では、オーバーオール値×ピーク高さの値は、参照値として用いられていないので、乗算部28は省略されてもよい。
【0065】
実施の形態2.
次に、図9は、実施の形態2の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。図9において、ステップS201及びステップS202の処理は、実施の形態1と同様である。
【0066】
実施の形態2の検出装置本体21は、複数のサンプルのデータを2値分類した後、ステップS205において、ロジスティック回帰分析を行う。実施の形態2の検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値、ピーク高さ、及びオーバーオール値とピーク高さとを掛け合わせた値の3つを指標として選定する。
【0067】
そして、検出装置本体21は、ステップS206において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0068】
P=1/(1+e-z)
【0069】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3×オーバーオール値×ピーク高さ+A4
【0070】
なお、A1、A2、A3、及びA4は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0071】
このように、実施の形態2における複数の指標には、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値とが含まれている。このため、実施の形態2における複数の参照値にも、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値とが含まれている。
【0072】
実施の形態2における他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0073】
このような異常検出装置20、及びロジスティック回帰モデルの生成方法では、複数の指標にオーバーオール値×ピーク高さの値が含まれている。このため、例えば、転がり軸受11の損傷により、オーバーオール値とピーク高さとのどちらか一方しか大きくならない場合においても、転がり軸受11の異常をより精度良く検出することができる。
【0074】
実施の形態3.
次に、図10は、実施の形態3による転がり軸受の異常検出装置を示すブロック図である。検出装置本体21は、図2と同様の構成に加えて、機能ブロックとして、運転データ取得部34と、総回転数演算部35とを有している。
【0075】
運転データ取得部34は、制御装置18から、転がり軸受11に関する運転データを取得する。運転データには、転がり軸受11の運転時間、転がり軸受11の回転数、転がり軸受11の運転パターン等が含まれる。例えば転がり軸受11がエレベータ巻上機の軸受である場合、制御装置18は、エレベータ巻上機を制御するエレベータ制御装置である。
【0076】
国際規格ISO218において、信頼度90%の基本定格寿命L10として規定されているように、転がり軸受11の状態を判定するためには、転がり軸受11の運転データも重要な要素である。
【0077】
総回転数演算部35は、運転データ取得部34によって取得された運転データに基づいて、転がり軸受11の総回転数、即ち回転軸16の総回転数を算出する。
【0078】
実施の形態3の確率演算部31は、複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、転がり軸受11の異常確率を算出する。複数の参照値としては、オーバーオール値演算部25、ピーク高さ演算部27、及び運転データ取得部34のそれぞれからの出力値が用いられている。
【0079】
図11は、図10の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。検出装置本体21は、モデル生成処理を開始すると、ステップS301において、学習データを取得する。
【0080】
学習データを取得した後、検出装置本体21は、ステップS302において、正常データを「0」、異常データを「1」として、複数のサンプルのデータを2値分類する。
【0081】
図12は、実施の形態3のモデル生成処理において用いられる学習データの一例を示す表である。図12では、2値分類後の学習データが示されている。
【0082】
実施の形態3の教師あり学習においては、各サンプルについて、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値と、総回転数と、運転時間とが入力データとされ、正常であるか否かの判定結果が出力データとされている。
【0083】
この後、検出装置本体21は、ステップS303において、ロジスティック回帰分析を行う。実施の形態3の検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値と、ピーク高さと、運転時間との3つを指標として選定する。
【0084】
そして、検出装置本体21は、ステップS304において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0085】
P=1/(1+e-z)
【0086】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3×運転時間+A4
【0087】
なお、A1、A2、A3、及びA4は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0088】
このように、実施の形態3における複数の指標には、オーバーオール値と、ピーク高さと、運転時間とが含まれている。このため、実施の形態3における複数の参照値にも、オーバーオール値と、ピーク高さと、転がり軸受11の運転時間とが含まれている。
【0089】
実施の形態3における他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0090】
このような異常検出装置20では、複数の指標及び複数の参照値のそれぞれに運転時間が含まれている。このため、転がり軸受11の異常をより精度良く検出することができる。
【0091】
また、ロジスティック回帰モデルの生成方法では、複数の指標に運転時間が含まれている。このため、生成されたロジスティック回帰モデルを用いることにより、転がり軸受11の異常をより精度良く検出することができる。
【0092】
なお、実施の形態3では、オーバーオール値×ピーク高さの値、及び総回転数は、指標として選定されていないので、教師あり学習の入力データから除かれてもよい。また、実施の形態3では、オーバーオール値×ピーク高さの値、及び総回転数は、参照値として用いられていないので、乗算部28及び総回転数演算部35はそれぞれ省略されてもよい。
【0093】
実施の形態4.
次に、図13は、実施の形態4の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。図13において、ステップS301及びステップS302の処理は、実施の形態3と同様である。
【0094】
実施の形態4の検出装置本体21は、複数のサンプルのデータを2値分類した後、ステップS305において、ロジスティック回帰分析を行う。実施の形態4の検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値、ピーク高さ、及び総回転数の3つを指標として選定する。
【0095】
そして、検出装置本体21は、ステップS306において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0096】
P=1/(1+e-z)
【0097】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3×総回転数+A4
【0098】
なお、A1、A2、A3、及びA4は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0099】
このように、実施の形態4における複数の指標には、オーバーオール値と、ピーク高さと、総回転数とが含まれている。このため、実施の形態4における複数の参照値にも、オーバーオール値と、ピーク高さと、転がり軸受11の総回転数とが含まれている。
【0100】
実施の形態4における他の構成及び動作は、実施の形態3と同様である。
【0101】
このような異常検出装置20では、複数の指標及び複数の参照値のそれぞれに総回転数が含まれている。このため、転がり軸受11の異常をより精度良く検出することができる。
【0102】
また、ロジスティック回帰モデルの生成方法では、複数の指標に総回転数が含まれている。このため、生成されたロジスティック回帰モデルを用いることにより、転がり軸受11の異常をより精度良く検出することができる。
【0103】
また、転がり軸受11の運転方法が、連続運転ではなく、加減速と停止とを含むプログラム運転である場合においても、転がり軸受11の異常をより正確に検出することができる。
【0104】
なお、実施の形態4では、オーバーオール値×ピーク高さの値、及び運転時間は、指標として選定されていないので、教師あり学習の入力データから除かれてもよい。また、実施の形態4では、オーバーオール値×ピーク高さの値は、参照値として用いられていないので、乗算部28は省略されてもよい。
【0105】
実施の形態5.
次に、図14は、実施の形態5の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。図14において、ステップS301及びステップS302の処理は、実施の形態3と同様である。
【0106】
実施の形態5の検出装置本体21は、複数のサンプルのデータを2値分類した後、ステップS307において、ロジスティック回帰分析を行う。実施の形態5の検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値、ピーク高さ、オーバーオール値とピーク高さとを掛け合わせた値、及び運転時間の4つを指標として選定する。
【0107】
そして、検出装置本体21は、ステップS308において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0108】
P=1/(1+e-z)
【0109】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3×オーバーオール値×ピーク高さ+A4×運転時間+A5
【0110】
なお、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0111】
このように、実施の形態5における複数の指標には、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値と、運転時間とが含まれている。このため、実施の形態4における複数の参照値にも、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値と、転がり軸受11の運転時間とが含まれている。
【0112】
実施の形態5における他の構成及び動作は、実施の形態3と同様である。
【0113】
このような異常検出装置20では、複数の指標及び複数の参照値のそれぞれに、オーバーオール値×ピーク高さの値と、運転時間とが含まれている。このため、転がり軸受11の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0114】
また、ロジスティック回帰モデルの生成方法では、複数の指標に、オーバーオール値×ピーク高さの値と、運転時間とが含まれている。このため、生成されたロジスティック回帰モデルを用いることにより、転がり軸受11の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0115】
なお、実施の形態5では、総回転数は、指標として選定されていないので、教師あり学習の入力データから除かれてもよい。また、実施の形態5では、総回転数は、参照値として用いられていないので、総回転数演算部35は省略されてもよい。
【0116】
実施の形態6.
次に、図15は、実施の形態6の検出装置本体21によるモデル生成処理を示すフローチャートである。図15において、ステップS301及びステップS302の処理は、実施の形態3と同様である。
【0117】
実施の形態6の検出装置本体21は、複数のサンプルのデータを2値分類した後、ステップS309において、ロジスティック回帰分析を行う。実施の形態6の検出装置本体21は、2値分類された学習データから、オーバーオール値、ピーク高さ、オーバーオール値とピーク高さとを掛け合わせた値、及び総回転数の4つを指標として選定する。
【0118】
そして、検出装置本体21は、ステップS310において、ロジスティック回帰モデルとして、以下のロジスティック関数Pを導出し、処理を終了する。
【0119】
P=1/(1+e-z)
【0120】
z=A1×オーバーオール値+A2×ピーク高さ+A3×オーバーオール値×ピーク高さ+A4×総回転数+A5
【0121】
なお、A1、A2、A3、A4、及びA5は、それぞれ定数であり、ロジスティック回帰分析により導出される。
【0122】
このように、実施の形態6における複数の指標には、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値と、総回転数とが含まれている。このため、実施の形態4における複数の参照値にも、オーバーオール値と、ピーク高さと、オーバーオール値×ピーク高さの値と、転がり軸受11の総回転数とが含まれている。
【0123】
実施の形態6における他の構成及び動作は、実施の形態3と同様である。
【0124】
このような異常検出装置20では、複数の指標及び複数の参照値のそれぞれに、オーバーオール値×ピーク高さの値と、総回転数とが含まれている。このため、転がり軸受11の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0125】
また、ロジスティック回帰モデルの生成方法では、複数の指標に、オーバーオール値×ピーク高さの値と、総回転数とが含まれている。このため、生成されたロジスティック回帰モデルを用いることにより、転がり軸受11の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0126】
なお、実施の形態1~6において、検出装置本体21は、異常確率の出力までを行い、出力された異常確率から利用者が異常の有無を判定してもよい。
【0127】
実施の形態7.
次に、図16は、実施の形態7による転がり軸受の異常検出装置の要部を示すブロック図である。実施の形態7では、モデル生成部29によって、2種類以上のロジスティック回帰モデルが生成される。そして、2種類以上のロジスティック回帰モデルが検出装置本体21に記憶されている。この例では、実施の形態1~6に示した6種類のロジスティック回帰モデルが検出装置本体21に記憶されている。
【0128】
確率演算部31は、2種類以上のロジスティック回帰モデルを用いて、同一の転がり軸受11について、2つ以上の異常確率を算出する。
【0129】
判定部32は、複数の異常確率のそれぞれを閾値、例えば50%と比較し、閾値以上となった異常確率の数に基づいて、転がり軸受11の異常の有無を判定する。
【0130】
例えば、閾値以上となった異常確率の数が、閾値未満であった異常確率の数以上であった場合、判定部32は、異常があると判定、即ち転がり軸受11に損傷が発生していると判定する。
【0131】
また、閾値以上となった異常確率の数が、閾値未満であった異常確率の数未満であった場合、判定部32は、転がり軸受11が正常な状態であると判定する。
【0132】
この例では、確率演算部31は、第1演算部31a、第2演算部31b、第3演算部31c、第4演算部31d、第5演算部31e、及び第6演算部31fを有している。
【0133】
第1演算部31aは、実施の形態1と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第1異常確率を算出する。第2演算部31bは、実施の形態2と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第2異常確率を算出する。第3演算部31cは、実施の形態3と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第3異常確率を算出する。
【0134】
第4演算部31dは、実施の形態4と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第4異常確率を算出する。第5演算部31eは、実施の形態5と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第5異常確率を算出する。第6演算部31fは、実施の形態6と同様のロジスティック回帰モデルを用いて、第6異常確率を算出する。
【0135】
実施の形態7における他の構成及び動作は、実施の形態1~6と同様である。
【0136】
このような異常検出装置20では、2つ以上の異常確率が算出され、閾値以上となった異常確率の数に基づいて、転がり軸受の異常の有無が判定される。このため、転がり軸受11の異常をさらに精度良く検出することができる。
【0137】
なお、実施の形態7において、ロジスティック回帰モデルの種類数は、6種類に限定されず、5種類以下、又は7種類以上であってもよい。
【0138】
また、実施の形態7において、判定部32における異常の有無の判定基準は、上記の例に限定されず、例えば、閾値以上となった異常確率が1つでもあった場合に、異常があると判定してもよい。また、全ての異常確率が閾値以上となった場合のみ、異常があると判定してもよい。
【0139】
また、実施の形態1~7において、ロジスティック回帰モデルの生成は、異常検出装置20とは別のモデル生成装置で行われてもよい。
【0140】
また、実施の形態1~7において、1台の機器、例えば1台のエレベータ巻上機に複数の転がり軸受が設けられている場合、異常検出装置20よる監視対象は、全ての転がり軸受ではなく、いずれか1つの転がり軸受だけであってもよい。
【0141】
また、実施の形態1~7において、転がり軸受11は、エレベータ巻上機の転がり軸受に限らない。
【0142】
また、実施の形態1~7の検出装置本体21の各機能は、処理回路によって実現される。図17は、実施の形態1~7の検出装置本体21の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。第1例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0143】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。また、検出装置本体21の各機能それぞれを個別の処理回路100で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路100で実現してもよい。
【0144】
また、図18は、実施の形態1~7の検出装置本体21の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。第2例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0145】
処理回路200では、検出装置本体21の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0146】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0147】
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0148】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0149】
11 転がり軸受、17 加速度センサ、20 異常検出装置、21 検出装置本体、23 振動データ取得部、24 フィルタ処理部、25 オーバーオール値演算部、26 エンベロープ解析部、27 ピーク高さ演算部。
【要約】
転がり軸受の異常検出装置は、検出装置本体を備えている。検出装置本体は、転がり軸受に設けられている加速度センサから取得した振動データから、オーバーオール値と、周波数波形における転がり軸受の損傷に起因する周波数のピーク高さとを算出する。また、検出装置本体は、オーバーオール値とピーク高さとを含む複数の参照値と、ロジスティック回帰モデルとに基づいて、転がり軸受の内部に損傷が発生している確率である異常確率を算出する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18