(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】バイアス回路、パワーオンリセット回路、及び、監視システム
(51)【国際特許分類】
H03K 17/22 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H03K17/22 Z
(21)【出願番号】P 2024510817
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015606
(87)【国際公開番号】W WO2023188023
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 友和
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0145739(US,A1)
【文献】米国特許第6759852(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0005740(US,A1)
【文献】特開平11-136110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のバイアス回路ユニットを備え、
前記バイアス回路ユニットは、
電源電圧を供給する電源ノードと第1ノードとの間に接続された第1抵抗素子と、
前記第1ノードとグランドとの間にダイオード接続された第1のN型トランジスタと、
前記電源ノードと接続されたドレインと、バイアス電圧を出力するための第2ノードと接続されたソースと、前記第1ノードと接続されたゲートとを有する第2のN型トランジスタと、
前記第2ノード及び第3ノードの間に接続される第2抵抗素子と、
前記第3ノード及び前記グランドとの間に接続されて電流源を構成する第3のN型トランジスタとを含む、バイアス回路。
【請求項2】
前記バイアス回路ユニットを複数段備え、
2段目以降の前記バイアス回路ユニットでは、前段の前記バイアス回路ユニットの前記第2ノードが前記電源ノードとされて、前記第1抵抗素子と、前記第2のN型トランジスタのドレインとが接続される、請求項1記載のバイアス回路。
【請求項3】
前記バイアス回路ユニットは2段備えられ、
2段目の前記バイアス回路ユニットでは、1段目の前記バイアス回路ユニットの前記第2ノードが前記電源ノードとされて、前記第1抵抗素子と、前記第2のN型トランジスタのドレインとが接続される、請求項2記載のバイアス回路。
【請求項4】
前記第1ノードに流れる電流をコピーするための第1直列回路と、
前記第2ノードに流れる電流をコピーするための第2直列回路と、
一定電圧を前記バイアス電圧として出力する出力段とを更に備え、
前記第1直列回路は、
前記電源ノード及び前記グランドの間に直列接続された、第1のP型トランジスタ、及び、前記第1のN型トランジスタとカレントミラーを構成する第4のN型トランジスタを含み、
前記第2直列回路は、
前記電源ノード及び前記グランドの間に直列接続された、前記第2抵抗素子と同等の電気抵抗値を有する第3抵抗素子、及び、前記第3のN型トランジスタとカレントミラーを構成する第5のN型トランジスタを含み、
前記出力段は、
前記電源ノードと前記一定電圧の出力ノードとの間に接続されて、前記第1のP型トランジスタとカレントミラーを構成する第2のP型トランジスタと、
前記グランドと接続されたドレインを有するとともに、前記第3ノードと接続されたゲートを有する第3のP型トランジスタと、
前記出力ノードと前記第3のP型トランジスタのソースとの間に接続されて、前記第1抵抗素子と同等の電気抵抗値を有する第4抵抗素子とを含む、請求項1記載のバイアス回路。
【請求項5】
前記バイアス回路ユニットが前記第2ノードに出力したバイアス電圧を増幅して出力ノードに出力するための増幅回路を更に備え、
前記増幅回路は、前記バイアス回路ユニットの前記第2ノードに流れるバイアス電流に比例した電流を供給されて動作する、請求項1記載のバイアス回路。
【請求項6】
前記バイアス回路は、
前記2段目のバイアス回路ユニットが前記第2ノードに出力した前記バイアス電圧を増幅して出力ノードに出力するための増幅回路を更に備え、
前記増幅回路は、
前記バイアス電圧と前記出力ノードの電圧との電圧差を増幅する差動増幅部と、
前記差動増幅部及び前記出力ノードに対して、前記2段目のバイアス回路ユニットの前記第2ノードに流れるバイアス電流に比例する電流を供給する電流供給部と、
前記差動増幅部の出力電圧に応じて、前記出力ノードから前記グランドに流れる電流量を制御する制御部とを含む、請求項3記載のバイアス回路。
【請求項7】
前記制御部は、
前記出力ノードと接続されたドレインと、前記グランドと接続されたソースと、前記差動増幅部の出力電圧が入力されるゲートとを有する第6のN型トランジスタと、
前記出力ノードと、前記第6のN型トランジスタのゲートとの間に接続されたキャパシタとを有する、請求項6記載のバイアス回路。
【請求項8】
前記第2のN型トランジスタは、ネイティブトランジスタで構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のバイアス回路。
【請求項9】
請求項1記載のバイアス回路と、
前記電源電圧が予め定められた電圧よりも低い状態から高い状態に遷移する際に制御信号の論理レベルを変化させる信号生成部とを備え、
前記信号生成部は、前記バイアス回路内の前記第2ノードを流れるバイアス電流に比例する電流によって抵抗素子で生じる電圧降下量に従って前記制御信号の論理レベルを設定する様に構成される、パワーオンリセット回路。
【請求項10】
請求項2記載のバイアス回路と、
前記電源電圧が予め定められた電圧よりも低い状態から高い状態に遷移する際に制御信号の論理レベルを変化させる信号生成部とを備え、
前記信号生成部は、最終段のバイアス回路ユニット内の前記第2ノードを流れるバイアス電流に比例する電流によって抵抗素子で生じる電圧降下量に従って前記制御信号の論理レベルを設定する様に構成される、パワーオンリセット回路。
【請求項11】
前記信号生成部は、
前記電源ノード及び第4ノードの間に接続された第4のP型トランジスタと、
前記第4ノード及び前記グランドの間に接続された、前記バイアス回路内の前記第3のN型トランジスタとカレントミラーを構成する第7のN型トランジスタと、
前記電源ノードと前記制御信号が生成される第5ノードとの間に接続されて、前記第4のP型トランジスタとカレントミラーを構成する第5のP型トランジスタとを有し、
前記第5ノードは、前記抵抗素子を介して前記グランドと接続される、請求項9又は10記載のパワーオンリセット回路。
【請求項12】
前記バイアス回路内の前記第2のN型トランジスタは、ネイティブトランジスタで構成される、請求項9~11のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項13】
監視システムであって、
請求項1~8のいずれか1項に記載のバイアス回路と、
電源配線に供給された電圧を前記監視システムの内部回路の動作電源電圧に変換する電力変換器とを備え、
前記内部回路は、
監視対象に設けられた検出器と、
前記検出器の出力信号に基づいて前記監視対象の異常状態を検知すると、当該異常状態の報知フラグを生成する信号処理を実行するための制御器と、
前記制御器が前記報知フラグを生成したときに、当該報知フラグを前記監視システムから出力するための通信機とを含み、
前記バイアス回路の前記電源ノードは、前記電源配線と接続され、
前記内部回路の少なくとも一部は、前記バイアス回路によって生成された前記バイアス電圧を用いて動作し、
前記電源配線に供給される電力の少なくとも一部は、エナジーハーベスト電源による発電電力である、監視システム。
【請求項14】
監視システムであって、
請求項5~7のいずれか1項に記載のバイアス回路と、
電源配線に供給された電圧を前記監視システムの内部回路の動作電源電圧に変換する電力変換器を備え、
前記内部回路は、
監視対象に設けられた検出器と、
前記検出器の出力信号に基づいて前記監視対象の異常状態を検知すると、当該異常状態の報知フラグを生成する信号処理を実行するための制御器と、
前記制御器が前記報知フラグを生成したときに、当該報知フラグを前記監視システムから出力するための通信機とを含み、
前記バイアス回路の前記電源ノードは、前記電源配線と接続され、
前記電源配線に供給される電力の少なくとも一部は、エナジーハーベスト電源による発電電力であり、
前記制御器は、前記バイアス回路の前記出力ノードから電源供給を受けて動作する、監視システム。
【請求項15】
監視システムであって、
請求項9~12のいずれか1項に記載のパワーオンリセット回路と、
電源配線に供給された電圧を前記監視システムの内部回路の動作電源電圧に変換する電力変換器を備え、
前記内部回路は、
監視対象に設けられた検出器と、
前記検出器の出力信号に基づいて前記監視対象の異常状態を検知すると、当該異常状態の報知フラグを生成する信号処理を実行するための制御器と、
前記制御器が前記報知フラグを生成したときに、当該報知フラグを前記監視システムから出力するための通信機とを含み、
前記パワーオンリセット回路の前記電源ノードは、前記電源配線と接続され、
前記内部回路の少なくとも一部は、前記パワーオンリセット回路が生成する前記制御信号の論理レベルの遷移に応じてリセット動作を実行する様に構成され、
前記電源配線に供給される電力の少なくとも一部は、エナジーハーベスト電源による発電電力である、監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイアス回路、並びに、それを備える、パワーオンリセット回路、及び、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが世界中で加速している。なかでも大きな転換期を迎え、低消費電力化、省消費電力化が期待される中、バッテリを用いないバッテリレス化技術やバッテリ寿命の延命のために、自然エネルギから創電する、エナジーハーベスト技術が注目を集めている。
【0003】
同時に、エナジーハーベスト技術で創電した電源電圧を用いて、従来以上に、人手をかけずに、見守る技術やセキュリティ技術、IoT(Internet of Things)技術と組み合わせて、ワイヤレスセンサネットワークの技術ニーズが高まってきている。こういったシステムを実現するためには、自然エネルギから創電する技術が重要になる。
【0004】
一般的なバッテリや電源プラグを用いた機器では、安定な電源電圧が供給されるため、電源電圧の立ち上がり特性もほぼ一定である。このため、急激な電源電圧変動に対して一定の考慮はするものの、基本的には、電源電圧は安定で、かつ、ほぼ一定ということを前提として回路及びシステムが設計されている。
【0005】
このため、国際公開第2016/063597号(特許文献1)に記載される様に、プロセスばらつきや温度変動に対して、一定の基準電圧を高精度に供給するためのバンドギャップリファレンス回路は、一定の電圧変動は考慮しているものの、基本的には、トランジスタが飽和領域で動作する電圧範囲での動作を前提として、フィードバック回路で構成される。
【0006】
特許文献1には、基準電圧を発生するとともに、基準電圧よりも電圧の立ち上がりが遅いノードの電圧である制御電圧を用いて電源電圧に応じた比較電圧を生成し、比較電圧と基準電圧との比較によって、パワーオンリセット信号を出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Sub-threshold Design for Ultra Low-Power Systems, Alice Wang, Springer, 2006, Page, 157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の回路構成は、一定以上のレベルの電源電圧を確実に得ることができ、かつ、起動するための時間が予め事前に想定できる場合には、フィードバック回路の構築により高精度に基準電圧を生成できる点で有用である。
【0010】
一方、上述したエナジーハーベスト技術では、自然エネルギから創電する。このため、例えば、ソーラーセル又は振動素子等のエナジーハーベスト電源の出力電圧は、0[V]から1.5[V]程度までの電圧上昇が10[ns]オーダーで発生する等、急峻に変化する。この様な急峻な電圧変動を生じる不安定な電源電圧に対して、特許文献1に記載される基準電圧の発生回路(バンドギャップリファレンス回路)が安定的かつ高速に動作することは困難である。
【0011】
フィードバック回路は、出力電圧を入力回路にフィードバックすることで高精度な電圧が発生できる。反面、フィードバック系が安定するまでの、ループの安定時間を設ける必要があるため、当該安定時間を経過するまでは、十分な安定した電圧や信号を発生させることが困難である。
【0012】
従って、エナジーハーベスト技術の適用により、電源電圧の変化が急峻で、ループ安定時間の経過よりも早く電源電圧が立ち上がる場合には、適切なタイミングで一定の基準電圧を発生することが困難となることが懸念される。
【0013】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、急峻に上昇する電源電圧の起動時において、高精度かつ高速に一定のバイアス電圧を発生するためのバイアス回路の構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある局面によれば、バイアス回路が提供される。バイアス回路は、第1抵抗素子、第1のN型トランジスタ、第2のN型トランジスタ、第2抵抗素子、及び、第3のN型トランジスタを含む、バイアス回路ユニットを少なくとも1個備える。第1抵抗素子は、電源電圧を供給する電源ノードと第1ノードとの間に接続される。第1のN型トランジスタは、第1ノードとグランドとの間にダイオード接続される。第2のN型トランジスタは、電源ノードと接続されたドレインと、バイアス電圧を出力するための第2ノードと接続されたソースと、第1ノードと接続されたゲートとを有する。第2抵抗素子は、第2ノード及び第3ノードの間に接続される。第3のN型トランジスタは、第3ノード及びグランドとの間に接続されて電流源を構成する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、電源電圧の起動時に、第1ノード及び第3ノードの電圧が第1のN型トランジスタ及び第3のN型トランジスタのしきい値電圧よりもそれぞれ上昇すると、第2ノードに、電源電圧に直接依存しないバイアス電圧及びバイアス電流を生成できるので、急峻に上昇する電源電圧の起動時において、フィードフォワード構成により、高精度かつ高速に一定のバイアス電圧を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に係るバイアス回路の構成を説明する回路図である。
【
図2】
図1に示されたバイアス回路の動作を説明する概念的な波形図である。
【
図3】実施の形態1の変形例1に係るバイアス回路の構成を説明する回路図である。
【
図4】実施の形態1の変形例2に係るバイアス回路の構成を説明する回路図である。
【
図5】実施の形態1の変形例3に係るバイアス回路の構成を説明する回路図である。
【
図6】実施の形態2に係るパワーオンリセット回路の構成を説明する回路図である。
【
図7】実施の形態2に係るパワーオンリセット回路の動作を説明する概念的な波形図である。
【
図8】実施の形態2の変形例に係るパワーオンリセット回路の構成を説明する回路図である。
【
図9】実施の形態3に係る監視システムの構成例を説明するブロック図である。
【
図10】実施の形態3の変形例に係るマイコンの電源系の構成例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るバイアス回路10aの構成を説明する回路図である。本実施の形態に係るバイアス回路は、予め定められた一定電圧をバイアス電圧として発生する。バイアス電圧は、例えば、同一システム内の他回路の動作、又は、特許文献1の様に、パワーオンリセット信号の生成に用いられる。
【0019】
図1に示される様に、バイアス回路10aは、電圧発生部5と、N型トランジスタNA1と、抵抗素子R1と、電流源を構成するN型トランジスタMN1とを備える。電圧発生部5は、抵抗素子R0及びダイオード接続されたN型トランジスタMN0を有する。
【0020】
以下に説明する様に、本実施の形態に係るバイアス回路は、
図1に示されたバイアス回路10aを基本ユニット(以下、「バイアス回路ユニット」と称する)として、少なくとも1個のバイアス回路ユニットを備える様に構成される。実施の形態1に係るバイアス回路10aは、最も基本的な構成として、1個のバイアス回路ユニットを備えるものである。
【0021】
電圧発生部5において、抵抗素子R0は、電源電圧AVDDを供給する電源ノードNPと、ノードN1の間に接続される。N型トランジスタMN0は、ノードN1と「グランド」に相当する接地ノードNGとの間に接続される。N型トランジスタMN0のゲートはノードN1と接続される。即ち、N型トランジスタMN0は、ソースが接地されるとともに、ダイオード接続されている。
【0022】
N型トランジスタNA1は、電源ノードNPと接続されたドレインと、ノードN2と接続されたソースと、電圧発生部5のノードN1と接続されたゲートとを有する。N型トランジスタNA1は、例えば、しきい値電圧が0[V]のネイティブトランジスタで構成される。
【0023】
抵抗素子R1は、ノードN2及びノードN3の間に接続される。抵抗素子R1は、トリミング等によって電気抵抗値を調整可能に構成されることが好ましい。尚、以下では、抵抗素子R0及びR1の電気抵抗値についても、R0及びR1と表記する。
【0024】
N型トランジスタMN1は、ノードN3と接続されたドレインと、接地ノードNGと接続されたソースを有する。更に、N型トランジスタMN1のゲートは、ノードN3と接続されており、
図1の例では、N型トランジスタMN1は、ソースが接地されるとともに、ダイオード接続されて、電流源として動作する。
【0025】
電圧発生部5において、電源電圧AVDDが0[V]から立ち上がる際には、N型トランジスタMN0のリーク電流によってノードN1の電圧VBN0が上昇する。電圧VBN0が、N型トランジスタMN0のしきい値電圧VTHMN0(例えば、0.8[V]程度)よりも高くなると、N型トランジスタMN0が飽和領域、又は、弱反転領域で動作し始める。これにより、N型トランジスタMN0のドレインと接続されたノードN1の電圧VBN0は、N型トランジスタMN1のしきい値電圧(例えば、0.8[V])程度となる。その後、電源電圧AVDDが更に上昇しても、抵抗素子R0の電圧降下量が増加する一方で、ノードN1の電圧VBN0の上昇は抑制されることになる。
【0026】
バイアス回路10aにおいて、電源電圧AVDDの上昇に応じて上昇する電圧VBN0(ノードN1)と、N型トランジスタNA1のゲートソース間電圧VGSNA1を用いると、N型トランジスタNA1(ネイティブトランジスタ)のソース電圧であるバイアス電圧VBP1との関係は、下記の式(1)で示される。
【0027】
VBP1=VBN0-VGSNA1 …(1)
N型トランジスタNA1がネイティブトランジスタで構成される場合には、ゲートソース間電圧VGSNA1は、ほぼ0[V]であるので、VBP1=VBN0とできる。
【0028】
図2は、
図1に示されたバイアス回路10aの動作を説明する概念的な波形図である。
図2には、電源ノードNPの電源電圧AVDDが、0からV2(例えば、数[V]程度)まで一定レートで上昇する際の、バイアス回路10aから出力されるバイアス電圧VBP1の波形例が符号101で示される。更に、比較例として、特許文献1の様な、フィードバック型の電圧発生回路によって発生されるバイアス電圧の波形例が符号102で示される。
【0029】
符号102に示される様に、フィードバック回路においては、出力電圧であるバイアス電圧を入力回路にフィードバックするので、バイアス電圧を高精度に維持できる。反面、フィードバック系が安定するまでの安定時間を設ける必要があり、当該ループの安定時間を経過するまでは、十分に安定したバイアス電圧を発生させることが困難である。例えば、オペアンプの位相補償容量をCとすると、バイアス電流IBIASに対して、安定時間は、最低でも(C/IBIAS)は必要である。
【0030】
このため、フィードバック回路によって発生されるバイアス電圧は、当該安定時間が経過する時刻tsまでは、定常的な一定電圧V1に整定しない。一方で、時刻ts以降では、フィードバック制御により、高精度にバイアス電圧をV1に一定化できることが期待できる。
【0031】
一方で、
図2に符号101で示される様に、バイアス回路10aからのバイアス電圧VBP1は、フィードバック系を構成することなく、電源電圧AVDDの上昇に応じて変化する。具体的には、時刻t1において、N型トランジスタMN0,MN1の特性によって決まる電圧V1まで上昇すると、時刻t1以降では、電源電圧AVDDが更に上昇してもV1近傍に維持されることになる。
【0032】
この様に、バイアス回路10aは、フィードフォワード構成によって、電源電圧AVDDに依存したバイアス電圧VBP1を生成することができる。フィードフォワード回路で構成することで、フィードバック回路で配置される位相補償器が不要となるので、高速な電源電圧の起動に対しても、バイアス電圧VBP1を高速に収束させることが可能である。
【0033】
又、バイアス回路10aの最低動作電圧は、N型トランジスタMN0又はMN1のしきい値電圧に相当するので、例えば、電源電圧AVDDが0.8[V]程度まで上昇すると、バイアス回路10aは、バイアス電圧VBP1を発生することができる。
【0034】
又、バイアス回路10aにおいて、ノードN2及び抵抗素子R1を流れるバイアス電流IREF1は、ノードN3の電圧VBN1を用いると、下記の式(2)で示すことができる。尚、VBN1は、N型トランジスタMN1のゲートソース間電圧VGSMN1に相当する。
【0035】
IREF1=(VBP1-VBN1)/R1 …(2)
N型トランジスタNA1がネイティブトランジスタの場合には、上述の通り、VBP1=VBN0となるので、式(2)は式(3)に変形できる。即ち、電源電圧AVDDに直接依存しない様に、バイアス電流IREF1を生成することができる。
【0036】
IREF1=(VBN0-VBN1)/R1 …(3)
尚、電圧発生部5内のノードN1の電圧VBN0は、非特許文献1に記載される様に、電源電圧AVDDに対して、(1/2)乗(即ち、√(AVDD))、又は、自然対数ln(AVDD)で変化する依存性を有する。従って、
図2の時刻t1以降では、電源電圧AVDDの変動に対して、バイアス電圧VBP1は、√(AVDD)、又は、ln(AVDD)のオーダーで変動することになる。このため、フィードバック回路を構成しないにもかかわらず、電源立上がり後の定常時における電源電圧AVDDの変動に対する、バイアス電圧VBP1の変動を抑制できることが理解される。
【0037】
以上説明した様に、実施の形態1に係るバイアス回路10aは、N型トランジスタMN0,MN1のしきい値電圧程度まで電源電圧AVDDが上昇すると速やかに動作を開始することができ、かつ、電源電圧AVDDの急激な変化に対しても、バイアス電圧VBP1をほぼ一定に維持することができる。特に、フィードフォワード構成のため、フィードバック回路における位相補償が不要であるため、バイアス電圧VBP1は、
図1の符号101に示す様な、電源立上げ時における高速な収束が可能である。
【0038】
尚、式(3)より、抵抗素子R1によってバイアス電流IREF1を微調整できるので、抵抗素子R1をトリミング等による可変抵抗素子で構成すれば、N型トランジスタMN0,MN1,NA1(ネイティブトランジスタ)の製造ばらつきに対応させて、バイアス電圧VBP1を微調整することが可能である。
【0039】
図1において、ノードN1、ノードN2、及び、ノードN3は、「第1ノード」、「第2ノード」及び「第3ノード」にそれぞれ対応し、抵抗素子R0及びR1は「第1抵抗素子」及び「第2抵抗素子」の一実施例に対応する。更に、N型トランジスタMN0は「第1のN型トランジスタ」、N型トランジスタNA1は「第2のN型トランジスタ」、N型トランジスタMN1は「第3のN型トランジスタ」の一実施例にそれぞれ対応する。
【0040】
実施の形態1の変形例1.
実施の形態1の変形例1では、バイアス回路ユニット(
図1のバイアス回路10a)を複数段多重接続した構成例を説明する。
【0041】
図3は、実施の形態1の変形例1に係るバイアス回路10bの構成を説明する回路図である。
【0042】
図3を参照して、バイアス回路10bは、実施の形態1に係るバイアス回路10aの後段に、バイアス回路ユニット11を更に備える。バイアス回路10aの構成は、
図1と同様であり、バイアス回路10aは、ノードN2にバイアス電圧VBP1を発生する。
【0043】
バイアス回路ユニット11は、バイアス回路10aの抵抗素子R0,R1、及び、N型トランジスタMN0,MN1,NA1(ネイティブトランジスタ)にそれぞれ対応する、抵抗素子R2,R3、及び、N型トランジスタMN2,MN3,NA2(ネイティブトランジスタ)を有する。
【0044】
抵抗素子R2は、ノードN2及びノードN1bの間に接続され、N型トランジスタMN2は、ノードN1bと接続されたドレインと、接地ノードNGと接続されたソースとを有する。N型トランジスタMN2は、ゲートがドレイン(ノードN1b)と接続されることで、ダイオード接続されている。
【0045】
又、N型トランジスタNA2(ネイティブトランジスタ)は、ノードN2と接続されたドレインと、ノードN2bと接続されたソースと、ノードN1bと接続されたゲートとを有する。抵抗素子R3は、ノードN2b及びノードN3bの間に接続される。N型トランジスタMN3は、ノードN3bと接続されたドレインと、接地ノードNGと接続されたソースとを有する。N型トランジスタMN3のゲートは、ドレイン(ノードN3b)と接続される。即ち、N型トランジスタMN2,MN3は、バイアス回路10aのN型トランジスタMN0,MN1と同様にダイオード接続される。
【0046】
この様に、バイアス回路ユニット11の抵抗素子R2,R3、及び、N型トランジスタMN2,MN3,NA2は、バイアス回路10aからバイアス電圧VBP1が出力されるノードN2と、接地ノードNGとの間に、バイアス回路10aでの抵抗素子R0,R1、及び、N型トランジスタMN0,MN1,NA1と同様の配置関係で接続される。即ち、バイアス回路10bは、バイアス回路10a相当のバイアス回路ユニットが2段接続された構成を有することが理解される。
【0047】
従って、バイアス回路ユニット11は、バイアス回路10aにおいて、電源電圧AVDDがバイアス回路10aからのバイアス電圧VBP1に置換された構成で動作する。実施の形態1の変形例1に係るバイアス回路10bは、バイアス回路ユニット11のノードN2bからバイアス電圧VBP2を出力する。ノードN1bには、バイアス電流IREF2が流れるとともに、ノードN2bには、バイアス電流IREF1と同様に、バイアス電流IREF3が生じる。
【0048】
実施の形態1で説明した様に、ノードN2の電圧VBP1は、電源電圧AVDDの変動に対して、√(AVDD)、又は、ln(VDD)のオーダーで変動する。更に、バイアス回路ユニット11において、ノードN2bの電圧VBP2は、ノードN2の電圧VBP1は、電圧VBP1の変動に対して、√(VBP1)、又は、ln(VBP1)のオーダーで変動する。この結果、バイアス回路10bから出力されるバイアス電圧VBP2は、電源電圧AVDDの変動に対しては、√(√(AVDD))、又は、ln(ln(AVDD))のオーダーで変動することが理解される。
【0049】
従って、実施の形態1の変形例1に係るバイアス回路10bによれば、
図1での時刻t1以降、即ち、電源立上がり後の定常時における、電源電圧AVDDの変動に対するバイアス電圧VBP2の変動を、実施の形態1と比較して抑制することができる。これにより、フィードフォワード回路の採用による電源立ち上げ時の高速な収束性の実現とともに、フィードバック回路を用いることなく、電源電圧AVDDの急激な変化に対するバイアス電圧VBP2の変動を抑制することができる。
【0050】
尚、
図3では、バイアス回路10aに相当するバイアス回路ユニットを2段接続する構成例を説明したが、当該バイアス回路ユニットを3以上の複数段に亘って多重接続する構成とすることも可能である。この場合には、2段目以降のバイアス回路ユニットでは、順次、前段のバイアス回路ユニットのノードN2が電源ノードNPとされて、抵抗素子R0及びN型トランジスタNA1のドレイン(
図1)が接続される。尚、段数が多い程、電源電圧AVDDの変動に対する電源電圧AVDDの変動は抑制される一方で、回路規模が増大する。
【0051】
実施の形態1の変形例2.
実施の形態1及びその変形例1では、電源電圧AVDDの変動に対するバイアス電圧の変動抑制効果について説明した。実施の形態1の変形例2では、電源電圧AVDDの変動に加えて、温度変動に対してもバイアス電圧の変動を抑制するための回路構成について説明する。
【0052】
図4は、実施の形態1の変形例2に係るバイアス回路10cの構成を説明する回路図である。
【0053】
図4を参照して、バイアス回路10cは、バイアス回路ユニット10Xと、電流コピーのための直列回路12a,12bと、一定電圧(バイアス電圧)の出力段12cとを備える。
【0054】
バイアス回路ユニット10Xは、実施の形態1に係るバイアス回路10aと同様に構成されて、抵抗素子R0,R1、及び、N型トランジスタMN0,MN1,NA1(ネイティブトランジスタ)を有する。
図1と同様に、N型トランジスタMN0は、ゲートがノードN1と接続されることで、ダイオード接続されるとともに、N型トランジスタNA1のゲートは、ノードN1と接続される。一方で、電流源を構成するためのN型トランジスタMN1のゲートは、ノードN3ではなく、後述する、直列回路12b内のN型トランジスタMNB0のゲートと接続される。
【0055】
図4では、ノードN1の電圧を
図1と同様にVBN0と表記する一方で、ノードN2の電圧をVA(
図1でのVBP1)、ノードN3の電圧をVB(
図1でのVBN1)と表記する。又、抵抗素子R0、ノードN1、及び、N型トランジスタMN0を流れる電流をI1と表記し、N型トランジスタNA1,MN1及びノードN2,N3を流れる電流をI2と表記する。
【0056】
直列回路12aは、電源ノードNP及び接地ノードNGの間に、ノードN4を介して直列接続される、P型トランジスタMP0及びN型トランジスタMNB1を有する。P型トランジスタMP0は、ゲートがノードN4と接続されることで、ダイオード接続される。N型トランジスタMNB1は、バイアス回路ユニット10XのN型トランジスタMN0とゲートが共通接続される。これにより、N型トランジスタMNB1及びMN0がカレントミラーを構成するので、直列回路12aにおいて、電源ノードNPから接地ノードNGへ電流I1が流れる。又、以下では、直列回路12aのノードN4の電圧を、VBP0と表記する。
【0057】
直列回路12bは、電源ノードNP及び接地ノードNGの間に、ノードN5を介して直列接続される、抵抗素子R2及びN型トランジスタMNB0を有する。抵抗素子R2は、バイアス回路ユニット10X内の抵抗素子R1と同等の電気抵抗値を有する。N型トランジスタMNB0は、ゲートがノードN5と接続されることで、ダイオード接続される。更に、N型トランジスタMNB0は、バイアス回路ユニット10XのN型トランジスタMN1とゲートが共通接続される。これにより、N型トランジスタMNB0及びMN1がカレントミラーを構成するので、直列回路12bにおいて、電源ノードNPから接地ノードNGへ電流I2が流れる。又、以下では、直列回路12bのノードN5の電圧を、VNBN0と表記する。
【0058】
出力段12cは、電源ノードNP及び間に直列接続される、P型トランジスタMPB1,MPB0、及び、抵抗素子R3を有する。P型トランジスタMPB1は、電源ノードNP及びノードN2xの間に接続される。P型トランジスタMPB0は、接地ノードNGと接続されたドレインとを有する。抵抗素子R3は、ノードN2xと、P型トランジスタMPB0のソースとの間に接続される。抵抗素子R3の電気抵抗値は、バイアス回路ユニット10X内の抵抗素子R0と同等である。バイアス回路10cは、ノードN2xに一定電圧(バイアス電圧)VBGRを生成する。
【0059】
P型トランジスタMPB1のゲートは、直列回路12aのP型トランジスタMP0のゲートと接続される。これにより、P型トランジスタMPB1及びMP0がカレントミラーを構成するので、出力段12cにおいて、電源ノードNPからノードN2xへ電流I1が流れる。P型トランジスタMPB0のゲートは、バイアス回路ユニット10XのノードN3(N型トランジスタMN1のドレイン)と接続される。
【0060】
次に、バイアス回路10cの回路動作を詳細に説明する。
電圧発生部5において、電流I1は、N型トランジスタMN0のゲートソース間電圧VGSMN0(VBN0=VGSMN0)及び抵抗素子R0の電気抵抗値(R0)を用いて、下記の式(4)で示される。
【0061】
I1=(AVDD-VGSMN0)/R0 …(4)
直列回路12bにおいて、電流I2は、N型トランジスタMNB0のゲートソース間電圧VGSMNB0(VNBN0=VGSMNB0)及び抵抗素子R2の電気抵抗値(R1)を用いて、下記の式(5)で示される。
【0062】
I2=(AVDD-VGSMNB0)/R1 …(5)
又、バイアス回路ユニット10Xにおいて、ノードN2の電圧VAは、ネイティブトランジスタで構成されたN型トランジスタNA1のしきい値電圧を0[V]とすると、抵抗素子R0の電気抵抗値(R0)を用いて下記の式(6)で示すことができる。同様に、ノードN3の電圧VBは、式(7)で示すことができる。
【0063】
VA=AVDD-I1×R0 …(6)
VB=VA-I2×R1 …(7)
式(4)~式(7)を整理すると、電圧VBは、式(8)で示すことができる。
【0064】
VB=VGSMNB0-I1×R0 …(8)
出力段12cにおいて、ノードN2xに生成されるバイアス電圧VBGRは、P型トランジスタMPB0のゲートソース間電圧VGSMPB0及び抵抗素子R3の電気抵抗値(R0)を用いて、下記の式(9)で示される。
【0065】
VBGR=VB+VGSMPB0+I1×R0 …(9)
式(8)及び式(9)から、バイアス電圧VBGRは、下記の式(10)で表すことができる。
【0066】
VBGR=VGSMNB0+VGSMPB0 …(10)
ここで、N型トランジスタMNB0(しきい値電圧VTHMNB0)及びP型トランジスタMPB0(しきい値電圧VTHMPB0)がサブスレッショルド領域で動作しているとすると、サブスレッショルド係数η、熱電圧VT、P型トランジスタMPB0及びN型トランジスタMNB0のゲート幅W及びゲート長Lの比K(K=W/L)を用いて、式(10)は、式(11)に変形することができる。尚、熱電圧VTは、ボルツマン定数k、温度T[K]、及び、電荷素量qを用いて、VT=k・T/qで示される。
【0067】
VBGR=VTHMNB0+VTHMPB0+η・VT・ln(K) …(11)
式(11)中において、(VTHMNB0+VTHMPB0)の項は、周囲温度(T)に対して、負の温度係数(CTAT:Complementary To Absolute Temperature)で変化することが知られている。即ち、∂VTHMNB0/∂T<0、かつ、∂VTHMPB0/∂T<0である。
【0068】
これに対して、式(11)中のη・VT・ln(K)の項は、周囲温度(T)に対して、正の温度係数(PTAT:Proportional To Absolute Temperature)で変化する。即ち、∂(η・VT・ln(K))/∂T>0である。従って、回路定数、代表的には、トランジスタのサイズ比率Kを調整することで、周囲温度の変化に対するバイアス電圧VBGRの変化を0、即ち、∂VBGR/∂T=0とすることができる。
【0069】
この様に、実施の形態1の変形例2に係るバイアス回路10cによれば、直列回路12a,12b及び出力段12cを更に配置することで、実施の形態1に係るバイアス回路の効果に加えて、周囲温度の変化に対するバイアス電圧の変動を抑制することが可能となる。尚、電源電圧AVDDの変動に対するバイアス回路10cのバイアス電圧の変動は、実施の形態1に係るバイアス回路10aと同等である。
【0070】
図4において、直列回路12a及び12bは、「第1直列回路」及び「第2直列回路」の一実施例にそれぞれ対応し、抵抗素子R2及びR3は「第3抵抗素子」及び「第4抵抗素子」の一実施例にそれぞれ対応する。更に、N型トランジスタMNB1は「第4のN型トランジスタ」、N型トランジスタMNB0は「第5のN型トランジスタ」、P型トランジスタMP0は「第1のP型トランジスタ」、P型トランジスタMPB1は「第2のP型トランジスタ」、P型トランジスタMPB0は「第3のP型トランジスタ」の一実施例にそれぞれ対応する。
【0071】
実施の形態1の変形例3.
実施の形態1の変形例3では、増幅回路を更に組み合わせることで、低インピーダンスの一定電圧を更に得ることが可能なバイアス回路について説明する。
【0072】
図5は、実施の形態1の変形例3に係るバイアス回路の構成を説明する回路図である。
図5を参照して、実施の形態1の変形例3に係るバイアス回路10dは、実施の形態1の変形例1に係るバイアス回路10bの後段に、電流供給部14、差動増幅部15、及び、制御部16を有する増幅回路20が接続された構成を有する。
【0073】
バイアス回路10bは、
図3で説明した様に、バイアス回路10a(バイアス回路ユニット)を複数段(ここでは2段)接続した構成となっており、ノードN2に、バイアス電圧VBP1を生成するとともに、ノードN2bにバイアス電圧VBP2を生成する。これらのバイアス電圧VBP1,VBP2は、バイアス回路10bの外部の他回路に対して出力されて、当該他回路の動作に用いることが可能である。
【0074】
差動増幅部15は、P型トランジスタMPL1,MPL4と、N型トランジスタMNL3,MNL4とを有する。差動増幅部15は、バイアス回路10aからバイアス電圧VBP1が出力されるノードN2を電源ノードNP*として動作する。即ち、差動増幅部15は、バイアス回路10bからのバイアス電圧及びバイアス電流の供給によって動作する。
【0075】
具体的には、差動対を形成するP型トランジスタMPL1及びMPL4は、ノードN11とノードN12との間、及び、ノードN11とノードN13との間にそれぞれ接続される。P型トランジスタMPL1のゲートは、増幅回路20の出力ノードN0と接続され、P型トランジスタMPL4のゲートには、バイアス回路10bのバイアス電圧VBP2が入力される。
【0076】
N型トランジスタMNL3及びMNL4は、ノードN12と接地ノードNGとの間、及び、ノードN13と接地ノードNGとの間にそれぞれ接続される。N型トランジスタMNL3及びMNL4のゲートは、ノードN12と接続される。
【0077】
制御部16は、位相補償キャパシタCC0及びN型トランジスタMNL2を有する。N型トランジスタMNL2は、出力ノードN0と接続されたドレインと、接地ノードNGと接続されたソースと、ノードN13と接続されたゲートとを有する。位相補償キャパシタCC0は、ノードN13(即ち、N型トランジスタMNL2のゲート)と、出力ノードN0との間に接続される。
【0078】
電流供給部14は、N型トランジスタMNL0と、P型トランジスタMPL0~MPL2とを有する。N型トランジスタMN0は、ノードN14及び接地ノードNGの間に接続されて、ノードN3b(バイアス回路10b)と接続されたゲートを有する。P型トランジスタMPL0は、電源ノードNP*(ノードN2)及びノードN14の間に接続される。
【0079】
P型トランジスタMPL1は、電源ノードNP*と、差動増幅部15のノードN11の間に接続される。P型トランジスタMPL2は、電源ノードNP*と、出力ノードN0との間に接続される。P型トランジスタMPL0~MPL2のゲートは、ノードN14に共通接続される。
【0080】
電流供給部14において、N型トランジスタMNL0は、バイアス回路10bのN型トランジスタMN3とカレントミラーを構成するので、ノードN14には、バイアス回路10bのノードN2bに生じる一定のバイアス電流IREF3に比例する電流が流れる。ここでは、カレントミラー比を1:1として説明するので、ノードN14には、ノードN2bと同等のバイアス電流IREF3が生じる。
【0081】
更に、P型トランジスタMPL0~MPL2がカレントミラー(ここでも、カレントミラー比1:1とする)を構成するので、ノードN11(即ち、差動増幅部15)及び出力ノードN0に対しても、バイアス電流IREF3が供給される。
【0082】
従って、差動増幅部15は、P型トランジスタMPL1を介して供給されるバイアス電流IREF3をテール電流とし、カレントミラーを構成するN型トランジスタMNL3,NML4を能動負荷とした、P型トランジスタMPL1及びMPL4を差動対とする差動増幅動作を実行する。これにより、差動増幅部15は、P型トランジスタMPL1及びMPL4のゲート電圧差、即ち、バイアス電圧VBP2と、出力ノードN0の電圧(VOUT)との電圧差を増幅した電圧をノードN13に出力する。
【0083】
制御部16は、P型トランジスタMPL2によってバイアス電流IREF3が供給される出力ノードN0から、ノードN13の電圧、即ち、差動増幅部15の出力に応じた電流を、N型トランジスタMNL2によって接地ノードNGに流出させる。これにより、制御部16は、出力ノードN0の電圧をバイアス電圧VBP2に維持しようと動作する。この結果、出力ノードN0には、バイアス回路10bが発生したバイアス電圧VBP2を増幅した、安定で低インピーダンスな出力電圧VOUTが生成されることになる。出力電圧VOUTは、他ブロック、他システム、又は、チップ外の任意の回路に対して供給可能である。
図5の構成において、N型トランジスタMNL2は「第6のN型トランジスタ」の一実施例に対応する。
【0084】
実施の形態1の変形例3に係るバイアス回路10dでは、実施の形態1及びその変形例1で説明した安定的なバイアス電圧VBP1,VBP2に加えて、バイアス電圧VBP2を増幅した低インピーダンスの出力電圧VOUTを更に外部出力することができる。
【0085】
この際に、増幅回路20は、電源電圧AVDDの高速な起動及び電圧変動に対して安定的である、バイアス回路10bのバイアス電圧VPB2を電源電圧として用いている。このため、出力電圧VOUTについても、電源電圧AVDDの高速な起動及び電圧変動に対する電圧変動を抑制することができる。
【0086】
又、増幅回路20の動作電流についても、電源電圧AVDDの変動と直接リンクしない、バイアス回路10bのバイアス電流IREF3に比例した電流を用いるので、差動増幅部15は非常に安定的に動作可能である。
【0087】
更に、電源電圧AVDDよりも低電圧で、かつ、安定的なバイアス電圧を電源電圧とすることにより、差動増幅部15を構成するトランジスタの耐圧を低下することができる。低耐圧のトランジスタを用いることで、更に、出力電圧VOUTの高精度化を図ることができる。
【0088】
尚、
図5の構成において、バイアス回路10bに代えて、バイアス回路10a,10cの後段、又は、バイアス回路ユニット(10a)が3段以上多段接されたバイアス回路の後段に、増幅回路20を接続する構成とすることも可能である。
【0089】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明したバイアス回路を用いたパワーオンリセット(POR)回路を説明する。
【0090】
図6は、実施の形態2に係るパワーオンリセット回路の構成例を示す回路図である。
図6を参照して、実施の形態2に係るパワーオンリセット回路50は、実施の形態1に係るバイアス回路10aと、信号生成部17とを備える。バイアス回路10aの構成及び動作は、実施の形態1と同様であり、ノードN2には、バイアス電圧VBP1が生成される。信号生成部17は、電源電圧AVDDが予め定められた電圧よりも低い状態から高い状態に遷移する際に、論理レベルが変化する信号VPOR1をノードN21に生成する。即ち、信号VPOR1は、電源電圧AVDDの立上がりに応じて、論理レベルが変化する。
【0091】
信号生成部17は、P型トランジスタMP5,MP6、N型トランジスタMN4、及び、抵抗素子R4を有する。P型トランジスタMP5は、電源ノードNP及びノードN20の間に接続され、N型トランジスタMN4は、ノードN20及び接地ノードNGの間に接続される。P型トランジスタMP6は、電源ノードNP及びノードN21の間に接続され、抵抗素子R4は、ノードN21及び接地ノードNGの間に接続される。
【0092】
P型トランジスタMP5及びMP6は、それぞれのゲートがノードN20と接続されることでカレントミラーを構成する。N型トランジスタMN4は、ゲートがノードN3と接続されることで、バイアス回路10a内のN型トランジスタMN1とカレントミラーを構成する。
【0093】
次に、パワーオンリセット回路50の回路動作について説明する。
バイアス回路10aのN型トランジスタMN0を流れる電流I0を用いて、下記の式(12)の回路方程式が成立する。又、電流I0については、N型トランジスタMN0のドレイン電流に相当するので、下記の式(13)も成立する。式(13)中のβは、トランジスタの利得係数であり、平均表面移動度μ、単位面積当たりのゲート容量Cox、及び、ゲート幅及びゲート長の比(W/L)を用いて、β=μ・Cox・(W/L)で示される。
【0094】
I0=(AVDD-VGSMN0)/R0 …(12)
I0=(1/2)・β・(VGSMN0-VTHMN0)2 …(13)
上記式(12)及び(13)から、VGSMN0は、√(AVDD)に比例することが理解されるため、定数Kを用いて、VGSMN0=K・√(AVDD)と示すことができる。
【0095】
次に、ノードN2を流れるバイアス電流IREF1については、下記の式(14)の回路方程式が成立する。
【0096】
IREF1=(VGSMN0-VGSMN1)/R1 …(14)
ここで、上述の様に、N型トランジスタMN1及びMN4がカレントミラーを構成し、P型トランジスタMP5及びMP6がカレントミラーを構成している。両者のカレントミラー比を1:1とすると、抵抗素子R4の電気抵抗値(R4)を用いて、ノードN21に生成される電圧VPOR1は、式(14)で示される。即ち、VPOR1は、バイアス電流IREF1に比例する電流IREF4によって抵抗素子R4で生じる電圧降下量に従って設定されることが理解される。
【0097】
VPOR1=IREF1×R4 …(15)
式(14)及び式(15)より、式(16)を得ることができる。
【0098】
VPOR1=(VGSMN0-VGSMN1)×(R4/R1) …(16)
式(16)において、VGSMN0=K・√(AVDD)と表し、K=1であるとすると、VGSMN1=0.5[V]、(R4/R1)=2としたとき、式(16)は、式(17)に変形される。
【0099】
VPOR1=2・(√(AVDD)-0.5) …(17)
式(17)より、√(AVDD)-0.5<0、即ち、AVDDが約0.7[V]より低いときには、VPOR1は接地電圧AGND(0[V])に設定される(即ち、論路ローレベルを出力)。これに対して、√(AVDD)-0.5>0、即ち、AVDDが約0.7[V]より高いときには、VPOR1=AVDDに設定される(即ち、論路ハイレベルを出力)。
【0100】
一方で、
図6に示されたパワーオンリセット回路50が動作できる最低動作電源電圧VOPmin1は、N型トランジスタNA1(ネイティブトランジスタ)のゲートソース間電圧VGSNA1、抵抗素子R1で生じる電圧降下(IREF1×R1)、及び、N型トランジスタMN1のゲートソース間電圧VGSMN1の和となる。即ち、電源電圧AVDDが、VOPmin1=(VGSNA1+IREF1×R1+VGSMN1)よりも高くなることで、回路動作が可能となる。N型トランジスタMN0,MN4及びP型トランジスタMP5,MP6は、AVDD<VOPmin1の領域でも動作できるためである。
【0101】
例えば、ネイティブトランジスタのゲートソース間電圧(VGSNA1)=0.1[V]、IREF1×R1=0.1[V]、エンハンスメントトランジスタのゲートソース間電圧(VGSMN1)=0.6[V]とすると、これらの総和である、VOPmin1=0.8[V]となる。
【0102】
パワーオンリセット回路50が動作するためには、電源電圧AVDDが、式(16)での√(AVDD)-0.5>0、及び、AVDD>VOPmin1の両方を満たす必要がある。
【0103】
図7には、パワーオンリセット回路50の動作を説明するための、電源電圧AVDDの立上がりに対するVPOR1の推移を示す概念的な波形図が点線で示されている。
【0104】
上述した様に、VPOR1は、電源電圧AVDDが、√(AVDD)-0.5>0、及び、AVDD>VOPmin1の両方を満たす領域、上記の例では、AVDD>0.8[V]の領域では、論理ハイレベル(VPOR1=AVDD)に設定される。
【0105】
一方で、AVDD<0.8[V]の領域では、VPOR1は、論理ローレベル(VPOR1=AGND=0[V])に設定される。
【0106】
従って、電源電圧AVDDが、0[V]から5.5[V]まで立ち上がる場合に、電源電圧AVDDが0.8[V]に達する時刻taまでは、VPOR1がローレベル(0[V])に設定される一方で、時刻ta以降では、VPOR1はハイレベル(AVDD)に設定されることになる。
【0107】
この様に、実施の形態2に係るパワーオンリセット回路によれば、フィードフォワード構成のバイアス回路10aの出力を用いて、電源電圧AVDDの起動に対応して論理レベルが変化するパワーオンリセット信号(VPOR1)を生成することができる。特に、信号生成部17が電源電圧AVDDの変動に対して安定的に維持されるバイアス電流IREF1に比例する電流を用いることで、電源電圧AVDDの急激な変動に対しても、確実にパワーオンリセット信号を発生することができる。
【0108】
図6の信号生成部17において、ノードN20は「第4ノード」に対応し、ノードN21は「第5ノード」に対応する。又、P型トランジスタMP5及びMP6は「第4のP型トランジスタ」及び「第5のP型トランジスタ」の一実施例にそれぞれ対応し、N型トランジスタMN4は「第7のN型トランジスタ」に対応する。又、VPOR1は「制御信号」の一実施例に相当する。
【0109】
実施の形態2の変形例.
図8は、実施の形態2の変形例に係るパワーオンリセット回路の構成例を示す回路図である。
【0110】
図8を参照して、実施の形態2の変形例に係るパワーオンリセット回路51は、実施の形態2に係るバイアス回路10bと、
図6と同様の信号生成部17とを備える。バイアス回路10bの構成及び動作は、実施の形態1の変形例1と同様であり、ノードN2には、バイアス電圧VBP1が生成されるとともに、ノードN2bには、バイアス電圧VBP2が生成される。
【0111】
信号生成部17は、ノードN2を電源ノードNP*として、電源電圧AVDDの立上がりに応じて論理レベルが変化する信号VPOR2をノードN21に生成する。即ち、
図8に示された信号生成部17は、P型トランジスタMP5,MP6のソースが、電源ノードNPではなく、ノードN2に相当する電源ノードNP*と接続される点で、
図6に示された信号生成部17と異なる。
図8の信号生成部17のこれ以外の構成は、
図6と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0112】
図8の構成では、バイアス電圧VBP1及びVBP2を生成する動作が再帰的に繰り返されるので、N型トランジスタMN2のゲートソース間電圧VGSMN2については、ノードN2bのバイアス電流IREF2及びノードN20の信号VPOR2を用いて、上述の式(12)~(13)と同様の式を立てることで、VGSMN0=K・(AVDD)
1/4で表すことができる。更に、式(17)と同様に、VPOR2について、下記の式(18)を得ることができる。即ち、VPOR2は、バイアス電流IREF2に比例する電流IREF5によって抵抗素子R4で生じる電圧降下量に従って設定されることが理解される。
【0113】
VPOR2=2・((AVDD)1/4-0.5) …(18)
従って、(AVDD)1/4-0.5<0、即ち、AVDDが、(0.5)1/4≒0.84[V]より低いときには、VPOR2は接地電圧AGND(0[V])に設定される(即ち、論路ローレベルを出力)。これに対して、(AVDD)1/4-0.5>0、即ち、AVDDが約0.84[V]より高いときには、VPOR2=VBP2に設定される(即ち、論路ハイレベルを出力)。
【0114】
又、
図8に示されたパワーオンリセット回路51が動作できる最低動作電源電圧VOPmin2は、N型トランジスタNA1及びNA2(ネイティブトランジスタ)のゲートソース間電圧VGSNA1及びVGSNA2、抵抗素子R3で生じる電圧降下(IREF3×R3)、及び、N型トランジスタMN3のゲートソース間電圧VGSMN3の和となる。即ち、電源電圧AVDDが、VOPmin2=(VGSNA1+VGSNA2+IREF3×R3+VGSMN3)よりも高くなることで、回路動作が可能となる。
【0115】
上述の様に、ネイティブトランジスタのゲートソース間電圧(VGSNA1,VGSNA2)=0.1[V]、IREF3×R3=0.1[V]、エンハンスメントトランジスタのゲートソース間電圧(VGSMN3)=0.6[V]とすると、これらの総和である、VOPmin2=0.9[V]となる。
【0116】
従って、パワーオンリセット回路51が動作するためには、電源電圧AVDDが、式(17)での(AVDD)1/4-0.5>0、及び、AVDD>VOPmin2の両方を満たす必要がある。
【0117】
再び
図7を参照して、パワーオンリセット回路51の動作を説明するための、電源電圧AVDDの立上がりに対するVPOR2の推移を示す概念的な波形図が、実線で示されている。
【0118】
VPOR2は、電源電圧AVDDが、AVDD)1/4-0.5>0、及び、AVDD>VOPmin2の両方を満たす領域、上記の例では、AVDD>0.9[V]の領域では、論理ハイレベル(VPOR2=VBP2=0.9[V])に設定される。
【0119】
一方で、AVDD<0.9[V]の領域では、VPOR2は、論理ローレベル(VPOR2=AGND=0[V])に設定される。
【0120】
従って、電源電圧AVDDが、0[V]から5.5[V]まで立ち上がる場合に、電源電圧AVDDが0.9[V]に達する時刻tbまでは、VPOR2がローレベル(0[V])に設定される一方で、時刻tb以降では、VPOR2はハイレベル(VBP2)に設定されることになる。
【0121】
この様に、実施の形態2の変形例に係るパワーオンリセット回路によれば、実施の形態2での効果に加えて、電源電圧AVDDの変動に対する変動量が抑制されたバイアス電圧VBP2を用いてパワーオンリセット信号(POR2)を生成することができる。この結果、電源電圧AVDDの急激な変動に対するパワーオンリセット信号の安定性を更に向上することができる。
【0122】
尚、実施の形態1及び2,並びに、それらの変形例において、N型トランジスタNA1,NA2はネイティブトランジスタで構成される例を説明したが、エンハンスメント型のトランジスタによって、N型トランジスタNA1,NA2を構成することも可能である。この場合には、N型トランジスタNA1,NA2のゲートソース間電圧が大きくなるので、バイアス電圧の生成が開始可能となる電源電圧AVDDのレベルが上昇する。即ち、
図2において、バイアス電圧が安定化されるタイミングが、時刻t1よりも後になってしまう。一方で、エンハンスメント型を用いることでN型トランジスタNA1,NA2の電流駆動力が上昇するので、ある程度の電流消費を伴ったバイアス電圧の供給が可能となる。
【0123】
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1及びその変形例で説明したバイアス回路の出力、又は、実施の形態2及びその変形例で説明したパワーオンリセット回路の出力を用いた、エナジーハーベスト技術で創電した電源電圧によって動作するシステムの構成例を説明する。
【0124】
災害時の支援装置、見守り装置、セキュリティ装置、送電線等の監視装置等、監視対象の万一の異常状態の発生をセンサ等によって検知する監視システムが用いられている。この様な、監視システムは、当該異常状態を検知するために、長期間継続的に動作することが必要であるため、動作電源の確保が課題となる。
【0125】
このため、自然エネルギ源を活用したエナジーハーベスト技術によって、動作電源を確保することが効率的である。又、監視対象の設置位置によっては、商用系統からの給電が困難な状況も想定され、この様なケースでも、エナジーハーベスト技術の適用が有望である。
【0126】
図9は、実施の形態3に係る監視システムの構成例を説明するブロック図である。
図9を参照して、監視システム100は、発電要素110と、電力管理回路120とを備える。電力管理回路120は、例えば、PMIC(Power Management Integrated Circuit)で構成することができる。電力管理回路120は、発電要素110からの電力を変換する電力変換器(DC-DCコンバータ)121と、電源制御部122とを含む。電力変換器121は、発電要素110からの電力による電源ラインNPLの電圧を、監視システム100を構成する内部回路の電源電圧(出力電圧VOUT)に変換する。内部回路には、人、建造物、電線等に代表される監視対象TRGに対して設けられる検出器140、マイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」と称する)150、通信機160、及び、他の回路群170が含まれる。電源制御部122は、電力変換器121の安定化制御、及び、蓄電要素115を用いた電力管理を実行する。
【0127】
検出器140は、監視対象TRGの状態を検出するためのセンサ群141を含む。センサ群141は、光を検知する光電センサ及びファイバセンサ、及び/又は、物体の位置を検出するための、近接センサ、超音波センサ、過電流式変位センサ等によって構成することができる。
【0128】
マイコン150は、監視システム100のコントローラとして機能し、センサ群141の検出信号を受ける。マイコン150は、センサ信号処理部151と、送信回路152とを有する。センサ信号処理部151は、センサ群141による検出値に基づき、監視対象TRGの異常状態を検知すると、当該異常状態の発生を報知するためのアラームフラグを生成する。送信回路152は、生成されたアラームフラグを通信機160に対して送信する。
【0129】
通常、マイコン150は、図示しないCPU(Central Processing Unit)がメモリ(図示せず)に格納されたプログラムを実行することで、予め定められた機能を実現する様に構成される。例えば、センサ信号処理部151の機能、及び、送信回路152の制御機能は、当該プログラムの実行によって実現することが可能である。
【0130】
尚、マイコン150は、センサ信号処理部151及び送信回路152による、アラームフラグの生成及び送信以外にも種々の機能を実行可能であり、これらの機能を実現するためのプログラム及び回路群(ハードウェア)を更に搭載しているものとする。
【0131】
通信機160は、マイコン150(送信回路152)からのアラームフラグを受信するための受信回路161と、無線通信ユニット162とを含む。無線通信ユニット162は、受信回路161がマイコン150からアラームフラグを受信すると、監視対象TRGに異常状態が発生したことを報知する信号を無線通信によって出力する。これにより、遠隔地に配置された監視対象TRGについても異常状態の発生を報知することが可能となる。
【0132】
次に、監視システム100の電源系について更に説明する。
発電要素110は、少なくとも1つの発電素子によって構成される。各発電素子は、自然エネルギを電力に変換する機能を有する。例えば、太陽光又は室内光からの光エネルギを電力に変換する太陽電池、車両等からの振動エネルギを電力に変換する圧電素子、エンジン、エアコン、又は、ビル配管等からの熱エネルギを電力に変換する熱電変換素子、及び、電波塔等からの電磁波エネルギを電力に変換するレクテナ等の少なくともいずれかによって、各発電素子を構成することができる。発電要素110による発電電力は、電源ラインNPLへ供給される。
【0133】
又、監視システム100には、キャパシタ及び/又はバッテリで構成される蓄電要素115が更に設けられてもよい。電源制御部122は、発電要素110から供給される入力電流Iinよりも、電力変換器121からの出力電流Ioutが小さい場合には、余剰電流Isrp(Isrp=Iin-Iout)で蓄電要素115を充電する様に、電力変換器121の動作を制御する。出力電流Ioutは、内部回路での消費電流の合計に相当する。
【0134】
これにより、発電要素110による発電電力が監視システム100の消費電力を上回る場合には、蓄電要素115を用いて余剰電力を蓄積することが可能である。一方で、発電要素110の発電電力が不足する場合(即ち、Iin<Ioutのとき)には、蓄電要素115からの電力を用いて、監視システム100の作動を確保することが可能となる。
【0135】
電力変換器(DC-DCコンバータ)121は、電源ラインNPLの直流電圧を、監視システム100の各回路の動作電源電圧に相当する出力電圧VOUTに変換する。電力管理回路120は、実施の形態1及びその変形例で説明したバイアス回路10(バイアス回路10a~10dを包括的に表記するもの)を含む。
【0136】
電力管理回路120では、バイアス回路10が生成したバイアス電圧を、出力電圧VOUTのフィードバック制御における目標電圧や目標電圧の分圧として用いることができる。或いは、当該バイアス電圧は、差動増幅回路等の種々の回路を動作させるための定電流源や定電圧源の制御に用いることができる。
【0137】
バイアス回路10(10a~10d)の電源ノードNPは、電源ラインNPLと接続されており、バイアス回路10の電源電圧AVDDは、エナジーハーベスト電源を用いて生成される。上述の様に、バイアス回路10は、エナジーハーベスト電源による急激に立ち上がる電源電圧AVDDに対しても、バイアス電圧を速やかに生成し、かつ、安定的に一定に維持することができる。
【0138】
従って、エナジーハーベスト電源による発電電力を用いる監視システム100においても、電力変換器121の出力電圧VOUTを安定化することができるので、監視システム100を安定的に継続動作させることが可能となる。
【0139】
又、マイコン150の内部にも、電源ノードNPが電源ラインNPLと接続されたバイアス回路10が配置されてもよい。これにより、マイコン150内の各回路において、エナジーハーベスト電源による電源電圧AVDDの立上がり時に、バイアス回路10によって速やかに生成され、かつ、安定的に維持されるバイアス電圧を用いることができるので、回路動作が安定化される。
【0140】
又、バイアス回路10に加えて、実施の形態2及びその変形例で説明したパワーオンリセット回路50,51を更に配置することも可能である。上述の様に、パワーオンリセット回路50,51は、実施の形態1及びその変形例に係るバイアス回路10の出力を用いて動作するので、急峻に立ち上がる電源電圧AVDDに対しても確実にパワーオンリセット信号を生成することができる。このため、発電要素110による発電が停止された状態から発電が開始されて電源電圧AVDDが立上がる際に、監視システム100内の回路において、確実に回路のリセット動作を実行することが可能になる。
【0141】
この様に、実施の形態3に係る監視システムでは、バイアス回路10(10a~10d)によって生成されたバイアス電圧、及び/又は、パワーオンリセット回路50,51によって生成されたパワーオンリセット信号を用いて内部の回路動作を行うことにより、エナジーハーベスト電源からの電源電圧AVDDによっても安定的に動作できる。即ち、バイアス回路10の導入により、エナジーハーベスト技術への適合性を向上することができる。
【0142】
これにより、バッテリ等の蓄電要素115の電力使用量が減少することで、発電要素110及び蓄電要素115の組み合わせによって、監視システム100の長時間の継続可動が可能となる。特に、監視対象TRGの設置個所によっては、設置可能なバッテリの容量やバッテリ交換頻度に制約が生じるケースが想定されるが、この様なケースに対しても、エナジーハーベスト技術の適用によって、監視システム100が長期間継続して動作することができる。
【0143】
図9の構成において、マイコン150については、電源電圧AVDDの立上がり時に早期に動作を開始するために、電源系を
図10に示す様に変形してもよい。
【0144】
図10は、実施の形態3の変形例に係るマイコンの電源系の構成例を説明するブロック図である。
【0145】
図10を参照して、マイコン150は、実施の形態1の変形例3に係るバイアス回路10dから動作電源電圧を供給される。
【0146】
バイアス回路10dは、
図5で説明した様に、実施の形態1及びその変形例に係るバイアス回路10a~10cの後段に、電流供給部14、差動増幅部15、及び、制御部16(
図4)によって構成される増幅回路20を接続することによって構成される。
【0147】
増幅回路20は、バイアス回路10a~10cから出力されたバイアス電圧を増幅した、低インピーダンスの出力電圧VOUTをノードNoに生成する。
図10では、センサ信号処理部151、送信回路152等のマイコン150内の電源電圧は、
図9の電力変換器(DC-DCコンバータ)121の出力電圧ではなく、バイアス回路10dの出力電圧(出力ノードN0)によって供給される。
【0148】
これにより、特に、電源電圧AVDDの立上がり時、即ち、発電要素110による発電が開始される際に、マイコン150の起動の早期化が期待できる。
【0149】
尚、以上で説明した複数の実施の形態及びその変形例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不整合や矛盾が生じない範囲内で、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている点についても、確認的に記載する。
【0150】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
5 電圧発生部、10,10a~10d バイアス回路、10X,11 バイアス回路ユニット、12a,12b 直列回路、12c 出力段、14 電流供給部、15 差動増幅部、16 制御部、17 信号生成部、20 増幅回路、50,51,52 パワーオンリセット回路、100 監視システム、101,102 符号、110 発電要素、115 蓄電要素、120 電力管理回路、121 電力変換器(DC-DCコンバータ)、122 電源制御部、140 検出器、141 センサ群、150 マイコン、151 センサ信号処理部、152 送信回路、160 通信機、161 受信回路、162 無線通信ユニット、170 回路群、AGND 接地電圧、AVDD 電源電圧、CC0 位相補償キャパシタ、IREF1,IREF2,IREF3 バイアス電流、N0 出力ノード、NG 接地ノード、NP 電源ノード、NPL 電源ライン、R0~R4 抵抗素子、TRG 監視対象、VOUT 出力電圧(増幅回路)、VPOR1,VPOR2 パワーオンリセット信号。