(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】マイクログリッド系統設備計画支援装置、支援システム、及び、マイクログリッド系統設備計画支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240906BHJP
【FI】
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2024519292
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2023001157
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】澤邉 剛志
(72)【発明者】
【氏名】河野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】安並 一浩
(72)【発明者】
【氏名】北村 聖一
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113779874(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03913555(EP,A1)
【文献】特開2001-069668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドの、電源設備を含む複数の系統設備に関する情報に基づいて、前記複数の系統設備を組み合わせた系統設備構成の候補を生成する設備構成候補生成部と、
前記候補に基づいて、前記候補の系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定する励磁突入電流量推定部と、
前記候補の前記励磁突入電流量と、前記候補の評価目的とに基づいて、前記候補の適切性を評価する判定部と
を備える、マイクログリッド系統設備計画支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクログリッド系統設備計画支援装置であって、
前記評価目的は、
前記候補のうちの増設予定の前記系統設備の増設時のイニシャルコストと、前記候補のうちの既設の前記系統設備及び前記増設予定の前記系統設備のランニングコストとを最小化する目的を含む、マイクログリッド系統設備計画支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマイクログリッド系統設備計画支援装置であって、
前記候補に基づいて、前記候補の系統立ち上げ過程で前記励磁突入電流量とは別に生じる電流量の変化を推定する電流過渡変化推定部をさらに備え、
前記判定部は、
前記候補の前記励磁突入電流量と、前記候補の前記電流量の変化と、前記候補の前記評価目的とに基づいて、前記候補の適切性を評価する、マイクログリッド系統設備計画支援装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のマイクログリッド系統設備計画支援装置であって、
前記判定部で評価された前記候補に基づいて、前記候補の運用方法を決定する系統運用方法決定部をさらに備える、マイクログリッド系統設備計画支援装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のマイクログリッド系統設備計画支援装置と、
前記判定部の評価結果を出力する出力部と
を備える、支援システム。
【請求項6】
設備構成候補生成部が、マイクログリッドの、電源設備を含む複数の系統設備に関する情報に基づいて、前記複数の系統設備を組み合わせた系統設備構成の候補を生成し、
励磁突入電流量推定部が、前記候補に基づいて、前記候補の系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定し、
判定部が、前記候補の前記励磁突入電流量と、前記候補の評価目的とに基づいて、前記候補の適切性を評価する、マイクログリッド系統設備計画支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクログリッド系統設備計画支援装置、支援システム、及び、マイクログリッド系統設備計画支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、激甚化する豪雨災害または地震等の自然災害によって、電力系統事故または大規模停電が発生することがあり、それに対して安定的な電力供給が実現できるように、電力系統のレジリエンス性の確保が求められている。また、脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電及び風力発電等の再生可能エネルギーまたは蓄電池を含む、分散型電源の導入が進められている。これらの分散型電源を活用して、一定のエリア内で電力を生産及び消費し、レジリエンス性の強化を図るマイクログリッドが、大規模かつ集中型である従来の電力システムから脱却する方式として注目されている。
【0003】
なお、レジリエンス性を確保すべき例として、停電からの早期復旧が挙げられる。従来の電力システムで大規模災害が発生した場合には、火力発電機等の系統に接続された大規模電源設備が系統から解列され、電力を供給する電源が喪失することが考えられる。これらの大規模電源設備は一度解列すると、再度接続するまでに大いに時間を要する。これに対して、マイクログリッドは、分散型電源を活用し、一定のエリア内に電力を供給することで、早期に停電状態から復旧することができる。
【0004】
マイクログリッドを構築する際には、系統の状態を適切に把握し考慮した上で、系統設備の設計計画を策定する必要がある。そこで、マイクログリッド系統設備の計画支援について様々な技術が提案されている。例えば特許文献1では、充放電設備の増設計画について負荷変動等を予測した上で、平常時の電圧違反及び過電流が生じないことを評価し、必要に応じて計画を修正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大規模停電等の緊急時に、蓄電池を含む電源設備を起動して、停電状態にあるマイクログリッドを立ち上げると、マイクログリッド系統内の変圧器に励磁突入電流量が流入する。この電流量が電源の容量を超える場合には、電源が停止して立ち上げに失敗することがある。そのため、マイクログリッドを構築する際には、系統設備内の変圧器に流入する励磁突入電流量を考慮した上で、新規電源設備の容量、並びに、励突抑制開閉器等の系統設備の設置箇所及び台数を決定する必要がある。
【0007】
しかしながら、従来技術では、停電状態からマイクログリッドを立ち上げる系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量が考慮していないという問題があった。また、従来技術では、コスト最小化のような評価目的に対して、適切な系統設備構成を決定できないという問題があった。
【0008】
そこで、本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ユーザが適切なマイクログリッド系統設備を決定可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置は、マイクログリッドの、電源設備を含む複数の系統設備に関する情報に基づいて、前記複数の系統設備を組み合わせた系統設備構成の候補を生成する設備構成候補生成部と、前記候補に基づいて、前記候補の系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定する励磁突入電流量推定部と、前記候補の前記励磁突入電流量と、前記候補の評価目的とに基づいて、前記候補の適切性を評価する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定し、励磁突入電流量と評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価するので、ユーザは、適切なマイクログリッド系統設備を決定することができる。
【0011】
本開示の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態2に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態3に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態3に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態1に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の機能構成を示すブロック図である。マイクログリッド系統設備計画支援装置1は、入力部2と、記憶部3と、設備構成候補生成部4と、励磁突入電流量推定部5と、判定部6と、出力部7とを備える。記憶部3は、系統設備DB31と、計算条件DB32と、計算結果DB33とを含む。なお、DBはデータベースの略称である。
【0014】
入力部2は、マイクログリッドの系統設備及び計算条件等のデータを受け付け、当該データを記憶部3に格納する。なお、マイクログリッドの系統設備は、例えば開閉器及び電源設備を含む。
【0015】
入力部2で受け付けるデータは、例えばマイクログリッドの系統設備についての、電力供給設備の系統設備構成と、増設予定の設備の単価と、既設及び増設予定の設備の保守費用と、設備寿命と、設備の特性とを含む。入力部2は、これらの情報を、設備情報として系統設備DB31に保存する。なお、系統設備構成は、例えば系統設備の電源容量等の設備容量及び接続関係の情報を含む。設備の特性は、例えば系統設備の入出力特性、入出力の上下限値、経年劣化に関する特性、及び、物理特性を含む。この設備の特性は、系統設備に含まれる変圧器についての、マイクログリッド系統立ち上げ時の励磁突入電流量のカタログ値または概算値を含んでもよい。
【0016】
また入力部2で受け付けるデータは、例えばマイクログリッドの系統設備についての、系統制約と、系統設備の予算上限と、設置箇所及び設置台数に関する制約とを含む。入力部2は、これらの情報を、設備計画作成条件として計算条件DB32に保存する。なお、系統制約は、例えば系統設備についての、ノード電圧の上下限値と、線路の電流許容量とを含む。
【0017】
設備構成候補生成部4は、マイクログリッドの複数の系統設備に関する情報に基づいて、複数の系統設備を組み合わせた系統設備構成の候補を、系統設備構成パターンとして生成し、当該系統設備構成パターンを計算結果DB33に保存する。マイクログリッドの複数の系統設備に関する情報は、系統設備DB31に保存された設備情報を含んでもよいし、系統設備DB31に保存された設備情報と、計算条件DB32に保存された設備計画作成条件とを含んでもよい。例えば設備構成候補生成部4は、マイクログリッドの複数の系統設備に関する情報に基づいて、増設予定の系統設備の容量及び設置箇所を組み合わせることによって、複数の系統設備構成パターンを生成する。
【0018】
なお、電力需要または再生可能エネルギー電源の発電量に対して、既設の電源容量と増設予定の電源容量との総和が過剰に大きくまたは小さくならないように、設備構成候補生成部4は、系統設備構成パターン内の増設予定の電源設備の電源容量を調整してもよい。例えば設備構成候補生成部4は、最大の電力需要量と、既設及び増設予定の電源容量の総和とを比較し、既設及び増設予定の電源容量の総和が最大の電力需要量の2倍以下となるように、系統設備構成パターン内の増設予定の電源設備の電源容量を調整してもよい。また、系統設備構成パターン生成時に判定可能な制約条件に関する情報が、計算条件DB32に保存されている場合は、設備構成候補生成部4は、それらの制約条件が満たされるように、系統設備構成パターン内の増設予定の電源設備の電源容量を調整してもよい。
【0019】
励磁突入電流量推定部5は、設備構成候補生成部4によって生成された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定し、当該励磁突入電流量を計算結果DB33に保存する。なお、系統設備構成パターンの系統立ち上げ時、つまりマイクログリッド系統立ち上げ時とは、系統が災害等の影響で停電した場合に、停電状態から電力供給を開始する時である。
【0020】
例えば、励磁突入電流量推定部5は、導入されている設備の特性及び接続関係を、複数の系統設備構成パターンのそれぞれに対して考慮することによって、マイクログリッド系統立ち上げ時に電源設備に生じる励磁突入電流量を推定してもよい。また例えば、励磁突入電流量推定部5は、系統設備の物理特性や接続関係に基づいて瞬時値シミュレーションを行うことによって系統立ち上げ時の励磁突入電流量を推定してもよい。また例えば、励磁突入電流量推定部5は、系統設備DB31に系統設備の開閉器について励磁突入電流量のカタログ値または概算値が保存されている場合には、それらの値に基づいて系統立ち上げ時の励磁突入電流量を推定してもよい。また例えば、励磁突入電流量推定部5は、平常時に系統設備の電源設備に流れる電流量を定数倍することによって系統立ち上げ時の励磁突入電流量を推定してもよいし、これら以外の方法で系統立ち上げ時の励磁突入電流量を推定してもよい。
【0021】
判定部6は、系統設備構成パターンの励磁突入電流量と、系統設備構成パターンの評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価し、それによって得られた評価結果を計算結果DB33に保存する。例えば、系統設備構成パターンの適切性の評価は、励磁突入電流量推定部5が推定した励磁突入電流量が系統設備の電源設備の電流許容量を下回るかという判定と、系統設備構成の評価目的に対する最適性の判定とを含む。
【0022】
本実施の形態1では、評価目的は、系統設備構成パターンのうちの増設予定の系統設備の増設時のイニシャルコストと、系統設備構成パターンのうちの既設の系統設備及び増設予定の系統設備のランニングコストとを最小化する目的である。この場合、判定部6は、系統設備構成の評価目的に対する系統設備構成パターンの最適性の判定として、イニシャルコストとランニングコストとを最小化する目的に対する系統設備構成パターンの最適性を判定してもよい。なお、評価目的は、これに限ったものではなく、例えば、ユーザ等が指定した、上記とは別の評価目的であってもよく、判定部6は、当該別の評価目的に対する系統設備構成パターンの最適性を判定してもよい。
【0023】
出力部7は、判定部6の評価結果を出力する。例えば、出力部7は、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンと、当該系統設備構成パターンについての、判定部6の評価結果と、設備容量及び設備の設置台数と、設備設置位置と、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じると推定された励磁突入電流量と、最適性を判定する際に使用した指標値とをユーザに出力して表示する。例えば、評価目的に対して最適な系統設備構成パターンだけが表示されてもいいし、最適な系統設備構成パターンと類似する複数の系統設備構成パターンも合わせて表示されてもよいし、全ての系統設備構成パターンが表示されてもよい。
【0024】
以上のような構成要素を備えるマイクログリッド系統設備計画支援装置1は、例えばコンピュータによって実現することができる。系統設備DB31、計算条件DB32、及び、計算結果DB33は、例えば、コンピュータが備えるハードディスクドライブやSSD(Solid State Drive)、メモリ上にデータが格納されることで構築されるデータベースで実現できる。設備構成候補生成部4、励磁突入電流量推定部5、及び、判定部6は、例えば、計算処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリとで実現できる。CPUが複数の計算コアを持つ場合は、励磁突入電流量推定部5や判定部6の計算を並列で実行することで、計算速度を高速化することができる。なお、設備構成候補生成部4、励磁突入電流量推定部5、及び、判定部6は、処理回路によって実現されてもよい。
【0025】
入力部2は、例えばマウス、キーボード、及び、タッチパネル等の入力機器を含み、系統設備DB31及び計算条件DB32にデータを入力する。出力部7は、例えばディスプレイモニタ及びプリンタ等の出力機器を含み、系統設備DB31、計算条件DB32、及び、計算結果DB33に保存したデータを出力する。
【0026】
<動作>
図2は、本実施の形態1に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の動作を示すフローチャートである。
【0027】
ステップS1にて、入力部2は、マイクログリッドの系統設備、電力需要及び再生可能エネルギー電源の発電量などの設備情報及び電源機器情報、並びに、計算条件等を含むデータを受け付け、当該データを記憶部3に格納する。
【0028】
入力部2で受け付けるデータは、例えばマイクログリッドの系統設備についての、電力供給設備の系統設備構成と、増設予定の設備の単価と、既設及び増設予定の設備の保守費用と、設備寿命と、設備の特性とを含む。入力部2は、これらの情報を、設備情報として系統設備DB31に保存する。
【0029】
なお、系統設備構成は、例えば系統設備内の既設の開閉器、電源設備、配電線、電柱、変圧器等の系統を構成する設備の設備容量と、物理特性と、接続関係との情報を含む。設備単価は、例えば系統設備内の増設予定の設備の単位量当たりの価格を含む。この設備単価は、設備の増設時に要する用地買収及び設置工事等の費用を含んでもよい。例えば、設備単価は、電源設備の場合に、5万円/kW、5万円/kWh、100万円/1台のような単価を含んでもよく、配電線の場合に、1万円/kmのような単価を含んでもよい。
【0030】
保守費用は、例えば系統設備内の既設及び増設予定の設備の単位量当たりの保守に要する価格を含む。例えば、保守費用は、電源設備の場合に、1万円/kW・年、50万円/台・年のような単価を含む。設備寿命は、例えば系統設備内の既設の設備の残寿命、及び、増設予定の設備の寿命を含む。設備の特性は、例えば系統設備の入出力特性、入出力の上下限値、経年劣化に関する特性、及び、物理特性を含む。この設備の特性は、系統設備に含まれる変圧器についての、マイクログリッド系統立ち上げ時の励磁突入電流量のカタログ値または概算値を含んでもよい。
【0031】
また入力部2で受け付けるデータは、例えばマイクログリッドの系統設備についての、系統制約と、系統設備の予算上限と、設置箇所に関する制約とを含む。入力部2は、これらの情報を、設備計画作成条件として計算条件DB32に保存する。なお、系統制約は、例えば系統設備についての、ノード電圧の上下限値と、線路の電流許容量とを含む。設置箇所に関する制約は、例えば系統設備内の増設予定の設備の設置箇所候補と、設備1台あたりに要する設置面積、設置高度及び傾斜角度上限等の地理的制約と、増設予定の台数の上限とを含む。
【0032】
ステップS2にて、設備構成候補生成部4は、ステップS1で保存された系統設備DB31の設備情報に基づいて、複数の系統設備を組み合わせることによって、系統設備構成パターンを生成し、計算結果DB33に保存する。系統設備構成パターンは、例えば再生可能エネルギー電源等の電源機器の容量、及び、設置位置と、変圧器等の設備容量、設置位置、及び、電流許容量とを含む。
【0033】
例えば、設備構成候補生成部4は、既設の系統設備構成に対してランダムな位置に開閉器等の系統設備を導入するシミュレーションを行うことで系統設備構成パターンを生成してもよい。また例えば、設備構成候補生成部4は、既設の系統設備構成に対して瞬時値シミュレーションを行い、励磁突入電流量が大きく対策が必要な箇所を抽出した上で系統設備構成パターンを生成してもよい。また例えば、設備構成候補生成部4は、系統設備DB31に系統設備の開閉器等について励磁突入電流量が保存されている場合には、当該励磁突入電流量に基づいて系統設備構成パターンを生成してもよい。なお、系統設備構成パターンの生成は上記に限ったものではない。例えば、系統設備構成パターン生成時に判定可能な制約条件に関する情報が、計算条件DB32に保存されている場合は、設備構成候補生成部4は、それらの制約条件が満たされるように、系統設備構成パターン内の増設予定の電源設備の電源容量を調整してもよい。
【0034】
ステップS3にて、励磁突入電流量推定部5は、設備構成候補生成部4によって生成された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定し、当該励磁突入電流量を計算結果DB33に保存する。
【0035】
例えば、励磁突入電流量推定部5は、系統設備構成パターンの系統設備の、系統設備DB31に保存された物理特性及び接続関係に基づいて、マイクログリッド系統立ち上げ時に電源設備に生じる励磁突入電流量を推定してもよい。また例えば、励磁突入電流量推定部5は、系統設備の物理特性や接続関係に基づいて瞬時値シミュレーションを行うことによって励磁突入電流量を推定してもよいし、平常時に系統設備の電源設備に流れる電流量を定数倍することによって励磁突入電流量を推定してもよい。また例えば、励磁突入電流量推定部5は、系統設備DB31に系統設備の開閉器について励磁突入電流量のカタログ値または概算値が保存されている場合には、それらの値に基づいて励磁突入電流量を推定してもよいし、これら以外の方法で励磁突入電流量を推定してもよい。
【0036】
ステップS4にて、判定部6は、励磁突入電流量推定部5が推定した励磁突入電流量が電源設備の電流許容量を下回るかという判定と、系統設備構成の評価目的に対する最適性の判定とを、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンに対して行うことよって、系統設備構成パターンの適切性を評価する。本実施の形態1では、評価目的は、系統設備構成パターンのうちの増設予定の系統設備の増設時のイニシャルコストと、系統設備構成パターンのうちの既設の系統設備及び増設予定の系統設備のランニングコストとを最小化する目的である。なお、評価目的はこれに限ったものではない。例えば評価目的は、電源設備の電流許容量と励磁突入電流量との差である許容量余裕量を最大化し、イニシャルコスト及びランニングコストの最小化する多目的であってもよい。
【0037】
次に、上記イニシャルコストと上記ランニングコストとを最小化する目的に対する系統設備構成パターンの最適性の判定の例について説明する。この場合の判定に用いる目的関数は、イニシャルコストとランニングコストとの和を最小化することを目的とする式(1)のように定式化できる。なお、C_initは、増設予定の系統設備にかかる機器のイニシャルコストの合計、C_runは、既設及び増設予定の系統設備の運用に生じるランニングコストの合計を表す。
【0038】
【0039】
増設予定の系統設備にかかる機器のイニシャルコスト(C_init)は、例えば、電源設備及び開閉器を含む系統設備の台数及び単価を用いた式(2)によって計算される。なお、n_gen[i]は電源設備iの増設予定台数、n_eq[j]は電源設備を除く系統設備jの増設予定台数、C_gen_init[i]は電源設備iの設備単価、C_eq_init[j]は電源設備を除く系統設備jの設備単価を表す。
【0040】
【0041】
設備単価は、系統設備の購入価格のほかに、系統設備設置時の人件費と、設置場所の用地取得代金とを含んでもよい。また、長期にわたるイニシャルコストを考える場合は、増設の初期に生じる設備投資だけではなく、運用途中の設備更新を考慮する項が式(2)に加えられることによって、運用途中の設備更新の費用が設備単価に加算されてもよい。
【0042】
既設及び増設予定の系統設備のランニングコスト(C_run)は、例えば、既設及び増設予定の系統設備の保守費用単価と、電力系統からの買電費用と、電源設備の発電にかかる費用とを用いた式(3)によって計算される。なお、C_gen_run[i,y]は年度yにおける電源設備iの保守費用単価、C_eq_run[j,y]は年度yにおける電源設備を除く系統設備jの保守費用単価、E_buy[t]は各時刻の買電電力量、E_gen[i,t]は各時刻の電源設備iの発電電力量、C_buy[t]は各時刻の買電電力単価、C_fuel[i,t]は各時刻の電源設備iの燃料購入費用を表す。
【0043】
【0044】
なお、C_fuel[i,t]は、燃料消費量によらず一定として定数であってもよいし、燃料消費量に応じて変化する関数として定義されてもよい。また、電源設備が再生可能エネルギー電源及び蓄電池である場合には、発電及び放電の燃料が実質的に必要でないため、燃料購入費用C_fuel[i,t]は0であってもよい。マイクログリッド系統で発電した電力の一部を売電することを考慮する場合は、電力販売費用に関する項が式(3)に加えられてもよい。
【0045】
式(2)及び式(3)に用いられる値、及び、その値と関連付けられた値には、満たすべき制約条件が設定される。以下、制約条件のいくつかの例について説明する。
【0046】
例えば、式(4)のように、系統立ち上げ時に励磁突入電流量が、設備の電流許容量を上回らないという条件が、制約条件として設定される。なお、I_ir[i,t]は各時刻の電源設備iに生じる励磁突入電流量の最大値、I_max[i]は電源設備iの電流許容量を表す。
【0047】
【0048】
例えば、式(5)のように、マイクログリッドにおいて消費される電力需要量が、電源設備の発電によって供給される電力量(=買電電力量+発電電力量)と一致するという条件が、制約条件として設定される。なお、E_dem[t]は各時刻の電力需要量を表す。
【0049】
【0050】
例えば、式(6)のように、系統からの買電電力量が、予め定められた上限値を超えないという条件が、制約条件として設定される。なお、E_buy_max[t]は系統からの買電電力量の上限値を表す。
【0051】
【0052】
例えば、式(7)のように、発電設備による発電量が、予め定められた運用範囲内に収まるという条件が、制約条件として設定される。なお、X[i,t]は各時刻の電源設備iの運転値(例えば燃料消費量及び発電量)、X_min[i]は各設備の運転値の下限値、X_max[i]は各設備の運転値の上限値を表す。
【0053】
【0054】
判定部6は、上記制約条件が可能な限り満たされる範囲で、目的関数が最適となるように(目的関数が式(1)である場合には目的関数が最小となるように)、数理計画法等の最適化手法を用いて設備計画を立案する。このような判定部6によれば、励磁突入電流量を考慮した設備計画の策定が可能である。
【0055】
なお、式の記載は省略するが、制約条件は上記に限ったものではない。例えば、系統設備の設置位置をユーザが指定する場合には、設置位置、及び、1地点に設置できる系統設備の台数の上限値等が、制約条件として設定されてもよい。また例えば、電源設備として蓄電池を設置する場合には、kW出力の上限値、及び、SOC(充電率)の上下限値等が、制約条件として設定されてもよい。また例えば、マイクログリッド系統で発電した電力の一部を売電することを考慮する場合には、電力販売量の上下限制約等が、制約条件として設定されてもよい。
【0056】
コストを最小化する目的に対する系統設備構成パターンの最適性を判定する場合には、判定部6は、生成した複数の系統設備構成パターンの全てに対して、式(1)のような目的関数の値を計算し、その値が最も小さい系統設備構成パターンを、最適な系統設備構成パターンとして判定してもよい。また例えば、判定部6は、タブーサーチまたは遺伝的アルゴリズム等の組み合わせ最適化手法を用いて、上記制約条件を満たすように、増設予定の系統設備の容量、台数、及び、設置位置等を計算して、最適な系統設備構成パターンを判定してもよい。また例えば、判定部6は、これら以外の方法を用いて最適な系統設備構成パターンを判定してもよい。
【0057】
判定部6は、推定した励磁突入電流量が電源設備の電流許容量を下回るかという判定結果と、系統設備構成パターンの最適性の判定結果とを、系統設備構成パターンの評価結果として計算結果DB33に保存する。この場合に、評価結果は、励磁突入電流量が電源設備等の制約条件を満たすかを表す真偽値と、系統設備構成パターンが最適か否かを表す真偽値と、最適性の判定に用いた目的関数の値とを含んでもよい。
【0058】
ステップS5にて、判定部6は、終了条件に基づいて、系統設備構成パターンの適切性の評価が完了したか否かを判定する。終了条件は、例えば、計算結果DB33に保存された複数の系統設備構成パターンの全てに対して適切性の評価を実施した場合に完了するという条件でもよいし、複数の系統設備構成パターンの目的関数の値を逐次的に計算し、目的関数の値が連続して変化しなかった場合に完了するという条件でもよいし、これら以外の条件でもよい。評価が完了したと判定された場合には処理がステップS6に進み、評価が完了していないと判定された場合には処理がステップS3に戻る。
【0059】
ステップS6にて、出力部7は、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンと、当該系統設備構成パターンについての、判定部6の評価結果と、設備容量及び設備の設置台数と、設備設置位置と、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じると推定された励磁突入電流量と、最適性を判定する際に使用した指標値とをユーザに出力して表示する。例えば、評価目的に対して最適な系統設備構成パターンだけが表示されてもいいし、最適な系統設備構成パターンと類似する複数の系統設備構成パターンも合わせて表示されてもよいし、全ての系統設備構成パターンが表示されてもよい。
【0060】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1によれば、系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定し、励磁突入電流量と評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価する。このような構成によれば、ユーザは、マイクログリッド系統立ち上げ時の励磁突入電流量が電源設備の電流許容量を上回らず、かつ、評価目的に対して適切な系統設備構成パターンを決定することができるので、適切なマイクログリッド系統設備を決定することができる。
【0061】
<実施の形態2>
実施の形態1では、ユーザは、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を考慮して、系統設備構成パターンを決定可能である。しかしながら実際には、マイクログリッド系統を立ち上げる際に、励磁突入電流量が生じるだけでなく、電源設備の発電によって時系列で変化する電流量が生じるが、実施の形態1では当該電流量は考慮していない。
【0062】
そこで本実施の形態2では、系統設備構成パターンの励磁突入電流量と、系統設備構成パターンの電源設備の発電による電流量の時系列変化と、系統設備構成パターンの評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価可能となっている。
【0063】
図3は、本実施の形態2に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の機能構成を示すブロック図である。
図3の機能構成は、
図1の機能構成に電流過渡変化推定部8が追加された構成と同様である。以下、本実施の形態2に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0064】
入力部2は、実施の形態1に係る入力部2と同様に、マイクログリッドの系統設備についての、電力供給設備の系統設備構成と、増設予定の設備の単価と、既設及び増設予定の設備の保守費用と、設備寿命と、設備の特性とを含むデータを、系統設備DB31に保存する。また入力部2は、実施の形態1に係る入力部2と同様に、マイクログリッドの系統設備についての、系統制約と、予算上限と、設置箇所に関する制約とを含むデータを、計算条件DB32に保存する。これに加えて、入力部2は、マイクログリッドの系統設備についての、電力需要の実績値及び将来の予測値と、再生可能エネルギー電源の発電量と、蓄電池の充放電スケジュールと、制御対象外の電源設備の運転スケジュールとを含む時系列データを、負荷発電DB34に保存する。
【0065】
電流過渡変化推定部8は、設備構成候補生成部4によって生成された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの系統立ち上げ過程で電源設備によって生じる電流量の時系列変化を推定し、当該電流量の変化を計算結果DB33に保存する。以下の説明では、系統設備構成パターンの系統立ち上げ過程で電源設備によって生じる電流量の時系列変化を「電流量変化」と記すこともある。
【0066】
例えば、電流過渡変化推定部8は、負荷発電DB34に保存されたデータ(つまり電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、及び、蓄電池の充放電スケジュール)と、導入されている設備の特性とを、複数の系統設備構成パターンのそれぞれに対して考慮することによって、電流量変化を推定してもよい。また例えば、電流過渡変化推定部8は、潮流計算または瞬時値シミュレーションを用いて電流量変化を推定してもよいし、これ以外の方法で電流量変化を推定してもよい。
【0067】
判定部6は、系統設備構成パターンの励磁突入電流量と、系統設備構成パターンの電流量変化と、系統設備構成パターンの評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価し、それによって得られた評価結果を計算結果DB33に保存する。例えば、系統設備構成パターンの適切性の評価は、合計電流量が系統設備の電源設備の電流許容量を下回るかという判定と、系統設備構成の評価目的に対する最適性の判定とを含む。
【0068】
なお、合算電流量は、励磁突入電流量推定部5が推定した励磁突入電流量と、電流過渡変化推定部8が推定した電流量変化とを合算して得られる電流量である。例えば、合計電流量は、電流量の時系列変化を考慮して、励磁突入電流量と電流量変化とを合算することで得られる電流量であってもよい。また例えば、合計電流量は、励磁突入電流量の最大値と、電流量変化の最大値とを合算することで得られる電流量であってもよいし、これ以外の方法で合算した電流量であってもよい。
【0069】
出力部7は、例えば、電流量変化をユーザに表示してもよい。
【0070】
<動作>
図4は、本実施の形態2に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図4の動作は、
図2の動作において、ステップS7の処理をステップS3とステップS4との間に追加し、ステップS1及びS4をステップS1a及びS4aに変更した動作と同様である。以下、
図4の動作に含まれる処理のうち、
図2の動作に含まれる処理と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0071】
ステップS1aにて、入力部2は、実施の形態1のステップS1の処理に加えて、マイクログリッドの系統設備についての、電力需要の実績値及び将来の予測値と、再生可能エネルギー電源の発電量と、蓄電池の充放電スケジュールと、制御対象外の電源設備の運転スケジュールとを含む時系列データを、負荷発電DB34に保存する。
【0072】
ステップS7にて、励磁突入電流量推定部5は、設備構成候補生成部4によって生成された系統設備構成パターンに基づいて電流量変化を推定し、当該電流量変化を計算結果DB33に保存する。例えば、電流過渡変化推定部8は、負荷発電DB34に保存されたデータと、導入されている設備の特性とを、複数の系統設備構成パターンに対して考慮することによって、電流量変化を推定してもよい。また例えば、電流過渡変化推定部8は、潮流計算または瞬時値シミュレーションを用いてマイクログリッド系統内の潮流変化を計算することによって電流量変化を推定してもよいし、これ以外の方法で電流量変化を推定してもよい。
【0073】
ステップS4aにて、判定部6は、合算電流量が電源設備の電流許容量を下回るかという判定と、系統設備構成の評価目的に対する最適性の判定とを、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンに対して行うことよって、系統設備構成パターンの適切性を評価する。例えば、合計電流量は、電流量の時系列変化を考慮して、励磁突入電流量と電流量変化とを合算することで得られる電流量であってもよい。また例えば、合計電流量は、励磁突入電流量の最大値と、電流量変化の最大値とを合算することで得られる電流量であってもよいし、これ以外の方法で合算した電流量であってもよい。なお、本実施の形態2に係るステップS4aの処理は、実施の形態1で説明したステップS4の処理において、励磁突入電流量の判定を合計電流量の判定に置き換えた処理と同様である。
【0074】
<実施の形態2のまとめ>
以上のような本実施の形態2に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1によれば、系統設備構成パターンの励磁突入電流量と、系統設備構成パターンの電流量変化と、系統設備構成パターンの評価目的とに基づいて、系統設備構成パターンの適切性を評価する。このような構成によれば、励磁突入電流量と電流変化とを並列的に考慮することができるので、系統立ち上げの過程で系統設備による発電が開始された場合においても、ユーザは、電源設備の電流許容量を超過しない適切な系統設備構成パターンを決定することができる。
【0075】
なお以上の説明では、系統設備構成パターンの系統立ち上げ過程で、励磁突入電流量とは別に生じる電流量の変化は、電源設備の発電による電流量の変化であるものとして説明したが、これに限ったものではない。系統設備構成パターンの系統立ち上げ過程で、励磁突入電流量とは別に生じる電流量の変化は、負荷の電力消費による電流量の変化であってもよいし、電源設備の発電及び負荷の電力消費による電流量の変化であってもよい。
【0076】
<実施の形態3>
実施の形態1,2では、ユーザは、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じる電流が電源設備の電流許容量を超過しない系統設備構成パターンを決定可能である。しかしながら、事故等の影響でマイクログリッド系統がブラックアウトした場合に、系統制約に反することなくマイクログリッド系統を立ち上げるための運用方法を、実施の形態1,2では決定できない。
【0077】
そこで本実施の形態3では、実施の形態2と同様に系統設備構成パターンを評価し、評価された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの運用方法を決定可能となっている。なお、以下では実施の形態2に実施の形態3を適用した場合について説明するが、実施の形態1に実施の形態3を適用した場合の説明も以下の説明と同様である。
【0078】
図5は、本実施の形態3に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の機能構成を示すブロック図である。
図5の機能構成は、
図3の機能構成に系統運用方法決定部9が追加された構成と同様である。以下、本実施の形態3に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0079】
入力部2は、実施の形態2と同様に、マイクログリッドの系統設備についての、電力供給設備の系統設備構成と、増設予定の設備の単価と、既設及び増設予定の設備の保守費用と、設備寿命と、設備の特性とを含むデータを、系統設備DB31に保存する。また、入力部2は、実施の形態2に係る入力部2と同様に、マイクログリッドの系統設備についての、系統制約と、予算上限と、設置箇所に関する制約とを含むデータを、計算条件DB32に保存する。また、入力部2は、マイクログリッド系統の立ち上げ時の系統設備の運用方法の複数の典型例を、運用パターンとして計算条件DB32に保存してもよい。
【0080】
系統運用方法決定部9は、判定部6で評価された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの運用方法を決定する。運用方法は、例えば、マイクログリッド系統立ち上げ時の手順として、負荷投入及び電源設備の起動の順序及びタイミングと、電源設備の出力の時系列変化とを含む。需要家が電源設備を持つ場合には、励磁突入電流量が主電源の電流許容量を超えないようにするために、運用方法は、例えば、需要家の電源設備を起動して主電源に生じる電流量を減少させ、主電源の電流許容上限に対する空き容量を増やしてから負荷を投入する手順を含む。
【0081】
系統運用方法決定部9は、判定部6で最適と判定された系統設備構成パターンに対してのみ運用方法を決定してもよいし、判定部6で評価された複数または全部の系統設備構成パターン対して運用方法を決定してもよい。例えば、計算条件DB32に複数の運用パターンが保存されている場合には、系統運用方法決定部9は、系統設備構成パターンの電力需要量、電源設備の出力量、及び、系統設備の地理的情報を含む系統情報に基づいて、複数の運用パターンの中から1つの運用パターンを選択することで運用方法を決定してもよい。また例えば、系統運用方法決定部9は、系統設備に与える影響を最小限に抑えるために、系統設備構成パターンの系統設備に生じる電流の最大値を最小化することを目的関数として、過電流が生じないことを制約条件とする最適化計算を行うことで運用方法である運用パターンを決定してもよい。また、系統運用方法決定部9は、これ以外の方法で運用パターンを決定してもよい。また、系統運用方法決定部9は、系統立ち上げ時の運用方法だけでなく、平常時の負荷及び電源設備の運用方法を決定してもよい。
【0082】
出力部7は、実施の形態2に係る出力部7と同様に、判定部6の評価結果を出力する。例えば、出力部7は、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンと、当該系統設備構成パターンについての、判定部6の評価結果と、設備容量及び設備の設置台数と、設備設置位置と、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じると推定された励磁突入電流量と、電流変化量と、最適性を判定する際に使用した指標値とをユーザに出力して表示する。
【0083】
また出力部7は、系統運用方法決定部9で決定された運用方法を出力する。例えば、出力部7は、判定部6で判定された系統設備構成パターンで系統設備を配置した場合の負荷の投入及び電源設備の起動の順序及びタイミングと、電源設備の出力の時系列変化の情報とをユーザに出力して表示する。例えば、評価目的に対して最適な系統設備構成パターンだけが表示されてもいいし、最適な系統設備構成パターンと類似する複数の系統設備構成パターンも合わせて表示されてもよいし、全ての系統設備構成パターンが表示されてもよい。
【0084】
<動作>
図6は、本実施の形態3に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1の動作を示すフローチャートである。
図6の動作は、
図4の動作において、ステップS8をステップS5とステップS6との間に追加し、ステップS6をステップS6aに変更した動作と同様である。以下、
図6の動作に含まれる処理のうち、
図4の動作に含まれる処理と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0085】
ステップS5で評価が完了したと判定された場合に、ステップS8が行われる。ステップS8にて、系統運用方法決定部9は、判定部6で評価された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの運用方法を決定し、計算結果DB33に保存する。運用方法は、マイクログリッド系統立ち上げ時の手順として、負荷投入及び電源設備の起動の順序及びタイミングと、電源設備の出力の時系列変化とを含む。
【0086】
例えば、計算条件DB32に複数の運用パターンが保存されている場合には、系統運用方法決定部9は、複数の運用パターンの系統規模及び電源設備の構成に基づいて、複数の運用パターンの中から1つの運用パターンを選択することで運用方法を決定してもよい。また例えば、系統運用方法決定部9は、系統設備に与える影響を最小限に抑えるために、系統設備構成パターンの系統設備に生じる電流の最大値を最小化することを目的関数として、過電流が生じないことを制約条件とする最適化計算を行うことで運用パターンを決定してもよい。また、系統運用方法決定部9は、これ以外の方法で運用パターンを決定してもよい。
【0087】
ステップS6aにて、出力部7は、実施の形態2と同様に、設備構成候補生成部4で生成された系統設備構成パターンと、当該系統設備構成パターンについての、判定部6の評価結果と、設備容量及び設備の設置台数と、設備設置位置と、マイクログリッド系統立ち上げ時に生じると推定された励磁突入電流量と、最適性を判定する際に使用した指標値とをユーザに出力して表示する。また出力部7は、系統運用方法決定部9で決定された系統立ち上げ時の運用方法のうち、判定部6で判定された系統設備構成パターンで系統設備を配置した場合の負荷の投入及び電源設備の起動の順序及びタイミングと、電源設備の出力の時系列変化の情報とをユーザに出力して表示する。例えば、評価目的に対して最適な系統設備構成パターンだけが表示されてもいいし、最適な系統設備構成パターンと類似する複数の系統設備構成パターンも合わせて表示されてもよいし、全ての系統設備構成パターンが表示されてもよい。
【0088】
<実施の形態3のまとめ>
以上のような本実施の形態3に係るマイクログリッド系統設備計画支援装置1によれば、判定部6で評価された系統設備構成パターンに基づいて、系統設備構成パターンの運用方法を決定する。このような構成によれば、事故等の影響でマイクログリッド系統がブラックアウトした場合に、系統制約に反することなくマイクログリッド系統を立ち上げることができる。
【0089】
<変形例>
以上では、マイクログリッド系統設備計画支援装置1は出力部7を備えたが、これに限ったものではない。例えば、支援システムが、出力部7が除かれたマイクログリッド系統設備計画支援装置1と、出力部7と実質的に同じ機能を有し、かつ、当該マイクログリッド系統設備計画支援装置1とネットワーク等を介して通信可能な出力部とを備えてもよい。
【0090】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0091】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が、想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0092】
4 設備構成候補生成部、5 励磁突入電流量推定部、6 判定部、8 電流過渡変化推定部、9 系統運用方法決定部。
【要約】
ユーザが適切なマイクログリッド系統設備を決定可能な技術を提供することを目的とする。マイクログリッド系統設備計画支援装置は、マイクログリッドの、電源設備を含む複数の系統設備に関する情報に基づいて、複数の系統設備を組み合わせた系統設備構成の候補を生成する設備構成候補生成部と、候補に基づいて、候補の系統立ち上げ時に生じる励磁突入電流量を推定する励磁突入電流量推定部と、候補の励磁突入電流量と、候補の評価目的とに基づいて、候補の適切性を評価する判定部とを備える。