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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】物体認識装置及び物体認識方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/66 20060101AFI20240906BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G01S13/66
G01S13/86
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024533358
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2022027363
(87)【国際公開番号】W WO2024013839
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩津 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 正憲
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-115678(JP,A)
【文献】特開2005-227184(JP,A)
【文献】特開2001-153947(JP,A)
【文献】特開2013-181909(JP,A)
【文献】特開2018-063130(JP,A)
【文献】特開2012-163495(JP,A)
【文献】国際公開第2021/240623(WO,A1)
【文献】特開2021-160662(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G06T 7/00- 7/90
G06V 1/00-20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を計測する時刻計測部と、
複数のセンサのそれぞれから物体の検知データを受信し、前記受信した検知データごとに前記時刻計測部によって計測された時刻を関連時刻として関連付けるデータ受信部と、
前記検知データに基づき、予測データを用いて設定された特定領域における検知データ密度を算出する受信データ処理部と、
前記データ受信部によって関連付けられた関連時刻に対応する前記物体の状態値を、1つ前の関連時刻の前記物体の状態値から予測し、予測結果を前記予測データとして生成する予測処理部と、
前記予測データ及び前記検知データが同一物体に基づくか否かの判定に用いられる判定領域に関して、前記検知データ密度に基づき前記判定領域の広さを表すパラメータを調整した調整後判定領域パラメータを生成する調整後判定領域パラメータ生成部と、
前記調整後判定領域パラメータが表す調整後判定領域の内部において、前記予測データと前記関連時刻に対応する前記検知データとの相関関係を表す相関データを生成する相関処理部と、
前記相関データに基づいて、前記物体の状態値を更新する更新処理部と、
を備える物体認識装置。
【請求項2】
前記調整後判定領域パラメータ生成部は、前記検知データ密度が検知データ密度下限値未満の場合は前記調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最大値とし、前記検知データ密度が検知データ密度上限値よりも大きい場合は前記調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最小値とし、前記検知データ密度が前記検知データ密度下限値から検知データ密度上限値までの範囲内では前記調整後判定領域パラメータを前記検知データ密度に対して比例的に減少させることを特徴とする請求項1に記載の物体認識装置。
【請求項3】
前記受信データ処理部は、前記検知データから算出された前記物体の対地速度に基づいて前記物体が静止物体と移動物体のいずれであるかを判定し、前記静止物体の場合と前記移動物体の場合において前記検知データ密度を別個に算出することを特徴とする請求項1または2に記載の物体認識装置。
【請求項4】
前記受信データ処理部は、前記検知データ密度を計算する際の前記特定領域を、前記検知データの位置、速度、及び加速度のいずれか1つ以上に基づいて決定することを特徴とする請求項1または2に記載の物体認識装置。
【請求項5】
前記受信データ処理部は、前記検知データ密度のフィルタ値を前記検知データ密度に再設定することを特徴とする請求項1または2に記載の物体認識装置。
【請求項6】
時刻を計測するステップと、
複数のセンサのそれぞれから物体の検知データを受信し、前記受信した検知データごとに計測された前記時刻を関連時刻として関連付けるステップと、
前記検知データに基づき特定領域における検知データ密度を算出するステップと、
関連時刻に対応する前記物体の状態値を、1つ前の関連時刻の前記物体の状態値から予測し、予測結果を予測データとして生成するステップと、
前記予測データ及び前記検知データが同一物体に基づくか否かの判定に用いられる判定領域に関して、前記検知データ密度に基づき前記特定領域の広さを表すパラメータを調整した調整後判定領域パラメータを生成するステップと、
前記調整後判定領域パラメータが表す調整後判定領域の内部において、前記予測データと前記関連時刻に対応する前記検知データとの相関関係を表す相関データを生成するステップと、
前記相関データに基づいて、前記物体の状態値を更新するステップと、
を備える物体認識方法。
【請求項7】
前記調整後判定領域パラメータを生成するステップは、前記検知データ密度が検知データ密度下限値未満の場合は前記調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最大値とし、前記検知データ密度が検知データ密度上限値よりも大きい場合は前記調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最小値とし、前記検知データ密度が前記検知データ密度下限値から検知データ密度上限値までの範囲内では前記調整後判定領域パラメータを前記検知データ密度に対して比例的に減少させることを特徴とする請求項6に記載の物体認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体認識装置及び物体認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセンサからそれぞれ受信した物体の検知データを用いて、物体を識別する、位置を推定する、あるいは追跡する等を行う物体認識装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された物体認識装置では、自車両に搭載したミリ波レーダ及び画像センサから取得した画像情報に基づいて、所定エリア内に存在する物体に関する情報を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2021/106197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の物体認識装置では、予測データと検知データが同一物体であることを判定(相関)する際に、センサの誤差及び検知点の位置を考慮して、相関範囲を調整している。しかしながら、予測データと検知データとの相関関係を表す相関データを計算する際に、予測データに近接した物体の状態値を持つ検知データが複数存在する場合、あるいは逆に物体の状態値を持つ検知データが一つも存在しない場合が発生する可能性がある。この結果、検知データが複数存在する場合は誤相関が発生するおそれがある一方、検知データが一つも存在しない場合は未相関が発生するおそれがあった。
【0006】
したがって、予測データもしくは検知データの精度によっては予測データと検知データとの相関関係を算出することが困難になる場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の物体認識装置では、かかる問題点について特に考慮はされていない。
【0007】
本開示は上記のような問題点を解消するためになされたもので、予測データと検知データとの相関関係が誤相関または未相関となることを防止して、物体の認識精度が高い物体認識装置及び物体認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る物体認識装置は、
時刻を計測する時刻計測部と、
複数のセンサのそれぞれから物体の検知データを受信し、前記受信した検知データごとに前記時刻計測部によって計測された時刻を関連時刻として関連付けるデータ受信部と、
前記検知データに基づき、予測データを用いて設定された特定領域における検知データ密度を算出する受信データ処理部と、
前記データ受信部によって関連付けられた関連時刻に対応する前記物体の状態値を、1つ前の関連時刻の前記物体の状態値から予測し、予測結果を前記予測データとして生成する予測処理部と、
前記予測データ及び前記検知データが同一物体に基づくか否かの判定に用いられる判定領域に関して、前記検知データ密度に基づき前記判定領域の広さを表すパラメータを調整した調整後判定領域パラメータを生成する調整後判定領域パラメータ生成部と、
前記調整後判定領域パラメータが表す調整後判定領域の内部において、前記予測データと前記関連時刻に対応する前記検知データとの相関関係を表す相関データを生成する相関処理部と、
前記相関データに基づいて、前記物体の状態値を更新する更新処理部と、
を備える。
【0009】
本開示に係る物体認識方法は、
時刻を計測するステップと、
複数のセンサのそれぞれから物体の検知データを受信し、前記受信した検知データごとに計測された前記時刻を関連時刻として関連付けるステップと、
前記検知データに基づき特定領域における検知データ密度を算出するステップと、
関連時刻に対応する前記物体の状態値を、1つ前の関連時刻の前記物体の状態値から予測し、予測結果を予測データとして生成するステップと、
前記予測データ及び前記検知データが同一物体に基づくか否かの判定に用いられる判定領域に関して、前記検知データ密度に基づき前記特定領域の広さを表すパラメータを調整した調整後判定領域パラメータを生成するステップと、
前記調整後判定領域パラメータが表す調整後判定領域の内部において、前記予測データと前記関連時刻に対応する前記検知データとの相関関係を表す相関データを生成するステップと、
前記相関データに基づいて、前記物体の状態値を更新するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る物体認識装置及び物体認識方法によれば、検知データ密度に基づき判定領域を調整するので、予測データと検知データとの誤相関または未相関を容易に防止することができるため、精度の高い物体認識が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る物体認識装置の構成を表すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る物体認識方法を表すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る物体認識方法による調整後判定領域パラメータの生成方法の一例を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る物体認識方法の特徴を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る物体認識方法の特徴を説明するための図である。
図6】実施の形態2に係る物体認識方法を表すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る物体認識装置のハードウエアの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る物体認識装置200の構成を表すブロック図である。
なお、以下の説明において、検知データ数に関する密度を、検知データ密度と呼ぶ。検知データ密度は、例えば、単位範囲を分母、単位範囲内の検知データ数を分子として定義して算出する。
【0013】
実施の形態1に係る物体認識装置200は、データ受信部101と、受信データ処理部102と、調整後判定領域パラメータ生成部103と、相関処理部104と、更新処理部105と、予測処理部106と、時刻計測部107と、を備える。データ受信部101には、物体認識装置200の外部に設置された複数のセンサ20及び車両情報センサ21が接続されている。また、更新処理部105には、物体認識装置200の外部に設置された表示部110が接続されている。
【0014】
<センサの構成>
自車両に設置された複数のセンサ20は、検知可能な検出範囲に存在する物体に関する情報を検知データとして取得する。取得された検知データは、物体認識装置200のデータ受信部101に送信される。検知データには、例えば検出対象である物体までの距離、物体の方位角または物体の相対速度等の物体の状態値に関する情報が含まれる。
【0015】
複数のセンサ20は、例えば図1に示すように、n個のセンサからなる。n個のセンサをそれぞれ、第1のセンサ20a、・・・、第nのセンサ20nと呼ぶ。
【0016】
複数のセンサ20は、物体から放射あるいは反射した光、電磁波などを受信して、信号処理または画像処理を適用して、物体までの距離、方位角、相対速度などを計測するセンサである。例えば、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ、赤外線センサ、光学カメラなどが複数のセンサ20の一例として挙げられる。
【0017】
複数のセンサ20を構成する第1のセンサ20a、・・・、第nのセンサ20nの自車両における搭載位置、物体を検出可能な範囲はそれぞれ既知であるとする。複数のセンサ20のそれぞれの搭載位置などは任意に設定できるが、本開示では、各センサで検出した物体の観測値を統合するため、複数のセンサ20のそれぞれの検知範囲は重複する、つまり共通部分が存在することが望ましい。
【0018】
また、複数のセンサ20の中で、少なくとも1つのセンサのみでは検出できない物体を他のセンサによって検出可能とするため、第1のセンサ20a、・・・、第nのセンサ20nは少なくとも2種類以上のセンサ方式で構成することが好適である。例えば、第1のセンサ20aをミリ波レーダ、第nのセンサ20nを光学カメラとして、第1のセンサ20aを自車両の前方バンパー部中央に、第nのセンサ20nを自車のルームミラー裏側にそれぞれ搭載して、自車両の前方を両センサの共通の検知範囲とすることが考えられる。なお、以下では、第1のセンサ20aによって検出されたデータを第1の検知データと表記し、第nのセンサ20nによって検出されたデータを第nの検知データと表記する。
【0019】
自車両に搭載された車両情報センサ21は、自車両の速度、車輪速、ステアリング角、ヨーレートなど、自車両の状態を計測するセンサである。あるいは、車両情報センサ21として、GPS(Global Positioning System)を用いて、自車両の緯度、経度、進行方向を計測するセンサとしても良い。車両情報センサ21が取得した自車両の情報を、まとめて自車両データと呼ぶ。
以上が、自車両に搭載された複数のセンサ20及び車両情報センサ21に関する説明である。
【0020】
<実施の形態1に係る物体認識装置の構成>
データ受信部101は、複数のセンサ20及び車両情報センサ21から、各センサの検知データ及び自車両データを受信する。また、データ受信部101は、受信したデータごとに、後述の時刻計測部107によって計測された共通時刻を関連時刻として関連付ける。データ受信部101は、関連時刻が関連付けられ、検出された物体の対地速度を含む検知データを、受信データ処理部102及び相関処理部104に出力する。
【0021】
受信データ処理部102は、受信した検知データに基づいて、特定領域30における検知データ密度を算出する。受信データ処理部102は、算出された検知データ密度を調整後判定領域パラメータ生成部103に出力する。ここで、特定領域30とは、例えば後述の予測データによって予測された物体の位置を中心として、予め設定された範囲、つまり領域を意味する。また、特定領域30における検知データ密度とは、特定領域30の内側に存在する検知データ数を特定領域の体積で除算することによって算出された密度を意味する。
【0022】
調整後判定領域パラメータ生成部103は、予測処理部106からの予測データによって予測される物体と、検知データに基づく物体が同一物体であるか否かを判定する際に必要となる判定領域に関するパラメータについて、検知データ密度に基づいて判定領域の広さを表すパラメータを調整することにより調整後判定領域パラメータを生成する。調整後判定領域パラメータ生成部103は、生成された調整後判定領域パラメータを相関処理部104に出力する。なお、調整後判定領域パラメータは調整後の判定領域、すなわち調整後判定領域32を表すパラメータである。
【0023】
相関処理部104は、調整後判定領域パラメータに基づいて決定された調整後判定領域32の内部において、関連時刻における検知データと1つ前の関連時刻における物体の状態値から予測された予測データとの対応関係、つまり相関関係の有無を決定し、検知データと予測データとの相関関係をまとめた相関データを生成する。相関処理部104は、相関データを更新処理部105に出力する。検知データと予測データとの相関関係の有無は、公知のSNN(Simple Nearest Neighbor)アルゴリズム、GNN(Global Nearest Neighbor)アルゴリズム、JPDA(Joint Probabilistic Data Association)アルゴリズム等を用いて判定される。
【0024】
更新処理部105は、相関データに基づいて物体の状態値を更新し、物体データとして、例えば表示部110に出力する。物体の状態値は、複数のセンサ20がそれぞれ検出する、例えば第1のセンサ20aによって検出された第1の検知データ、・・・、第nのセンサ20nによって検出された第nの検知データに含まれる物体の位置、速度、加速度、種別などの情報であり、これらの情報が相関データに基づいて更新される。物体の状態値は、例えば、最小二乗法、カルマンフィルタ、粒子フィルタなどを用いて、予め設定された動作周期で更新される。
【0025】
予測処理部106は、更新処理部105から出力された前回の関連時刻(1つ前の関連時刻)における物体データ、つまり物体の状態値を用いて、検知データに含まれる今回の関連時刻である受信時刻での物体の状態値を予測し、予測結果を予測データとして生成する。予測処理部106は、生成した予測データを相関処理部104に出力する。なお、この予測データに基づき、検知データ密度を算出する上で必要となる特定領域30が設定される。
【0026】
時刻計測部107は、物体認識装置200の時刻を計測する。なお、時刻計測部107によって計測された時刻を共通時刻と呼ぶ。物体認識装置200は、所定の動作周期で一定の動作を繰り返し実行する。例えば、現在の動作周期に対する過去の直近の動作周期を1つ前の動作周期と呼び、また、現在の関連時刻に対して、1つ前の動作周期における関連時刻を、1つ前の関連時刻と呼ぶ。
【0027】
<実施の形態1に係る物体認識方法>
以下、実施の形態1に係る物体認識方法について、図2を用いて説明する。物体認識装置200は、予め設定された動作周期で以下の一定の動作を繰り返し実行する。図2は、実施の形態1に係る物体認識方法における、1つの動作周期における動作を表すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS101において、データ受信部101は、例えば、複数のセンサ20を構成する第1のセンサ20a、・・・、第nのセンサ20nのうち、少なくとも1つのセンサから動作周期内に検知データを受信したか否かを判定する。
【0029】
ステップS101においてYesの場合、つまり少なくとも1つのセンサから動作周期内に検知データを受信した場合は、ステップS102の処理に進む。一方、ステップS101においてNoの場合、つまり動作周期内に検知データを受信しなかった場合は、この動作周期の処理を終了する。
【0030】
ステップS102において、予測処理部106は、1つ前の関連時刻において取得した物体データ(物体の状態値)に基づき、検知データに含まれる今回の関連時刻(現在の関連時刻)である受信時刻での物体の状態値を予測し、その予測結果を予測データとして生成する。
【0031】
ステップS103において、受信データ処理部102は、取得した検知データに基づいて、特定領域30における検知データ密度を計算する。特定領域30として、例えば予測データによって予測された物体の位置を中心とした一定の領域を用いることができる。特定領域30の一例として、予測データによる物体の位置を中心として、図4に示される座標において、縦方向に±1[m]、横方向に±1[m]、奥行き方向に±1[m]の範囲以内を特定領域30として設定すれば良い。特定領域30の内部に存在する検知データ数を特定領域30の体積で除算することにより検知データ密度が算出される。
【0032】
ステップS104において、調整後判定領域パラメータ生成部103は、予測処理部106からの予測データ、つまり予測される物体と、検知データに基づく物体が同一物体であるか否かを判定する際に必要となる判定領域を表すパラメータに関して、検知データ密度に基づいて判定領域の広さを表すパラメータを調整することにより調整後判定領域パラメータを生成する。調整後判定領域パラメータは判定領域と同様の物理量を用いるものとする。例えば、判定領域として位置空間を想定した場合には、相関範囲の幅、長さ、及び奥行きを調整する。検知データ密度に基づき判定領域の広さを表すパラメータを調整する具体的な方法は後述する。
【0033】
ステップS105において、相関処理部104は、データ受信部101から検知データを取得するとともに、予測処理部106から予測データを取得する。また、相関処理部104は、調整後判定領域パラメータ生成部103から調整後判定領域パラメータを取得する。調整後判定領域パラメータに基づいて決定された調整後判定領域の内部において、関連時刻における検知データと予測データとの対応関係、つまり相関関係を決定し、検知データと予測データとの対応関係をまとめた相関データを生成する。
【0034】
ステップS106において、更新処理部105は、相関データに基づいて物体の状態値を更新する。
以上が、実施の形態1に係る物体認識方法による1つの動作周期における一連の動作である。
【0035】
<調整後判定領域パラメータの生成方法>
図3は、調整後判定領域パラメータの生成方法の一例を説明する図である。図3の横軸は検知データ密度を、縦軸は調整後判定領域パラメータをそれぞれ表す。調整後判定領域パラメータには、最大値、つまり判定領域パラメータ最大値と、最小値、つまり判定領域パラメータ最小値が予め設定される。すなわち、調整後判定領域パラメータは、判定領域パラメータ最大値と判定領域パラメータ最小値の間の値となる。
【0036】
図3に示すように、検知データ密度が検知データ密度下限値未満の場合は、調整後判定領域パラメータは判定領域パラメータ最大値、つまり一定の値となる。検知データ密度が低い場合は、判定領域を広く設定して相関データが未相関となることを防止するが、あまりに判定領域を広く設定しすぎると、逆に誤相関が発生する可能性が増大するので、判定領域パラメータ最大値を設定して、調整後判定領域パラメータの上限としている。
【0037】
検知データ密度が検知データ密度上限値よりも大きい場合は、調整後判定領域パラメータは判定領域パラメータ最小値、つまり一定の値となる。検知データ密度が高い場合は、判定領域を狭く設定して相関データが誤相関となることを防止するが、あまりに判定領域を狭く設定しすぎると、逆に未相関が発生する可能性が増大するので、判定領域パラメータ最小値を設定して、調整後判定領域パラメータの下限としている。
【0038】
検知データ密度が検知データ密度下限値以上、検知データ密度上限値以下の範囲では、図3に示すように、調整後判定領域パラメータは検知データ密度に対して比例的に減少するように調整する。この範囲内では、検知データ密度が高くなるほど、判定領域を狭くしていく方が、誤相関を防止しやすくなるからである。
【0039】
以上をまとめると、調整後判定領域パラメータ生成部103は、検知データ密度が検知データ密度下限値未満の場合は調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最大値とし、検知データ密度が検知データ密度上限値よりも大きい場合は調整後判定領域パラメータを予め設定された判定領域パラメータ最小値とし、検知データ密度が検知データ密度下限値から検知データ密度上限値までの範囲内では調整後判定領域パラメータを検知データ密度に対して比例的に減少させるように調整する。
【0040】
<実施の形態1に係る物体認識装置及び物体認識方法の適用例>
実施の形態1に係る物体認識装置及び物体認識方法の特徴について、比較例と対比しながら説明する。図4及び図5は、実施の形態1に係る物体認識装置200を用いた物体認識方法の適用例を説明するための図である。図4及び図5は、位置空間を想定している。位置空間は、縦方向の軸を縦位置、横方向の軸を横位置、奥行き方向の軸を奥行き位置として表せられる。
【0041】
<適用例I>
図4において、左側には比較例による物体認識方法の動作を、右側には実施の形態1に係る物体認識方法の動作をそれぞれ表している。図4中の白抜き四角印は、1つ前の関連時刻における物体の状態値から予測された予測データ12を表し、白抜き丸印は検知データ10a、10bを表している。検知データ10aは予測データ12と同一物体に起因する検知データを表す。一方、検知データ10bは予測データ12とは異なる物体に起因する検知データを表す。なお、図4に示す一例では、位置以外の情報、例えば速度も考慮して相関を行うものとする。図4に示す一例では、予測データ12と検知データ10aが対応して更新データが演算されるのが正しい相関である。
【0042】
図4の左側に示した比較例では、判定領域は予測データ12によって予測される物体の位置を中心とした検知データ密度には依存しない、予め設定された一定の広さの領域である。つまり、実施の形態1に係る物体認識方法における特定領域と同一の領域を意味する。比較例では検知データ密度が高いため、判定領域の内部には予測データ12と相関関係のある検知データ10aが存在する一方、予測データ12とは相関関係のない検知データ10bも存在する。したがって、予測データ12と検知データ10aとの正しい相関関係が認識されず、予測データ12と検知データ10bとの間で誤って相関関係があるという、誤相関が発生する可能性がある。
【0043】
一方、図4の右側に示した実施の形態1に係る物体認識方法では、調整後判定領域パラメータ生成部103が判定領域の広さを表すパラメータを調整することにより調整後判定領域パラメータを生成して、調整後判定領域32を用いて予測データと検知データとの相関関係を決定する。図4に示される一例では、検知データ密度が高いため、調整後判定領域32は比較例による判定領域、つまり特定領域よりも相対的に狭く設定される。この結果、検知データ10bは調整後判定領域32の外側に位置するため、予測データ12と検知データ10aとの正しい相関関係を認識できる。つまり、実施の形態1に係る物体認識方法によると、比較例による物体認識方法と比べて誤相関が発生する可能性が激減する。
【0044】
<適用例II>
図5において、左側には比較例による物体認識方法の動作を、右側には実施の形態1に係る物体認識方法の動作をそれぞれ表している。図5中の白抜き四角印は1つ前の関連時刻における物体の状態値から予測された予測データ12を表し、白抜き丸印は検知データ10a、10bを表している。検知データ10aは予測データ12と同一物体に起因する検知データを表す。なお、図5に示す一例では、位置以外の情報、例えば速度も考慮して相関を行うものとする。図5に示す一例では、予測データ12と検知データ10aが対応して更新データが演算されるのが正しい相関である。
【0045】
図5の左側に示した比較例では、判定領域は予測データ12によって予測される物体の位置を中心とした検知データ密度には依存しない、予め設定された一定の広さの領域である。つまり、実施の形態1に係る物体認識方法における特定領域と同一の領域を意味する。比較例では検知データ密度が低いため、判定領域の内部には予測データ12と相関関係のある検知データ10aが存在しない。したがって、予測データ12と検知データ10aとの正しい相関関係が認識されず、未相関が発生する可能性がある。
【0046】
一方、図5の右側に示した実施の形態1に係る物体認識方法では、調整後判定領域パラメータ生成部103が判定領域の広さを表すパラメータを調整することにより調整後判定領域パラメータを生成して調整後判定領域32を用いて、予測データと検知データとの相関関係を決定する。図5に示される一例では検知データ密度が低いため、調整後判定領域32は比較例による判定領域、つまり特定領域よりも相対的に広く設定される。この結果、検知データ10aは調整後判定領域32の内側に位置するため、予測データ12と検知データ10aとの正しい相関関係を認識できる。つまり、実施の形態1に係る物体認識方法によると、比較例による物体認識方法と比べて未相関が発生する可能性が激減する。
【0047】
<実施の形態1の効果>
以上、実施の形態1に係る物体認識装置及び物体認識方法によれば、物体の予測データと検知データとの相関関係を決定するのに必要となる判定領域を、検知データ密度を用いて調整することが可能となるため、相関関係が誤った組み合わせとなること(誤相関)、または正しい検知データが判定領域外となること(未相関)をそれぞれ防止することが可能となる結果、精度の高い物体認識が可能になるという効果を奏する。
【0048】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る物体認識方法における、ある動作周期における動作を表すフローチャートである。実施の形態2に係る物体認識方法では、図2のフローチャートのステップS103に替えて、静止物体と移動物体とで別個に検知データ密度を計算するステップS203の処理を行う。静止物体と移動物体とでは検知データ密度が異なるので、検知データに基づいて生成される調整後判定領域パラメータも静止物体と移動物体とでは異なる値となる。対象物体が静止物体と移動物体のいずれであるかは、検知データから算出された速度または加速度に基づき判定する。物体の状態に応じて適切な検知データ密度を適用して相関関係を決定するので、より精度の高い物体認識が可能になるという効果を奏する。
【0049】
ステップS203における検知データ密度の計算に用いる特定領域30の調整には、上述した予測データの位置だけでなく、対象物体の速度及び加速度も用いることができる。速度を一例にとると、予測データから算出された速度に対して、縦方向に±3[km/h]、横方向に±3[km/h]、奥行き方向に±3[km/h]以内を特定領域30として、特定領域30の内側に存在する検知データ数から検知データ密度を計算する。これにより、複数の物理量に基づき調整後判定領域パラメータを設定することが可能となるため、単一物理量の場合よりも相関関係の精度をより高めることが可能になるという効果を奏する。
【0050】
さらに、図6のフローチャートのステップS102の後に、「検知物体の対地速度>閾値速度?」を判定するステップを追加して、判定結果がYesの場合は検知データ密度の計算対象に追加し、判定結果がNoの場合は閾値速度未満である検知物体の検知データ密度を計算対象から除外する処理を行っても良い。これにより、検知データ密度の計算負荷の軽減、及びガードレールのような大きな静止物体による相関関係の意図しない調整を防止することが可能となる効果を奏する。
【0051】
また、ステップS104の処理において、使用する検知データ密度を検知データ密度のフィルタ値としても良い。すなわち、受信データ処理部102は、検知データ密度のフィルタ値を検知データ密度に再設定する。例えば、ステップS104の前に、「L周期のフィルタ値を計算」するステップを追加する。フィルタ値の一例として、L周期(Lは1以上の整数)の移動平均値が挙げられる。かかる処理の追加により、突発的なノイズによる相関関係の意図しない調整を防止することができるという効果を奏する。
【0052】
なお、上述の実施の形態1による物体認識装置200の構成では、物体認識装置200は機能ブロックとして説明されているが、物体認識装置200を格納するハードウエアとしての構成の一例を図7に示す。ハードウエア800は、プロセッサ801と記憶装置802から構成される。記憶装置802は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。
【0053】
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備しても良い。プロセッサ801は、記憶装置802から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ801にプログラムが入力される。また、プロセッサ801は、演算結果等のデータを記憶装置802の揮発性記憶装置に出力しても良いし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存しても良い。
【0054】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0055】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0056】
10a、10b 検知データ、12 予測データ、20 複数のセンサ、20a 第1のセンサ、20n 第nのセンサ、21 車両情報センサ、30 特定領域、32 調整後判定領域、101 データ受信部、102 受信データ処理部、103 調整後判定領域パラメータ生成部、104 相関処理部、105 更新処理部、106 予測処理部、107 時刻計測部、110 表示部、200 物体認識装置、800 ハードウエア、801 プロセッサ、802 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7