(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電気設備の汚損度測定方法、汚損度測定装置、汚損物質採取装置、および汚損物質採取装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G01N30/00 E
(21)【出願番号】P 2024535320
(86)(22)【出願日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2024006088
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】津上 友成
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇佑
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-060460(JP,A)
【文献】特開2012-63250(JP,A)
【文献】特開2002-202276(JP,A)
【文献】特開2014-38026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00,
G01N 1/04,
G01N 27/04,27/26,
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材と、
前記樹脂部材の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部
と、
前記汚損物質捕捉部を前記樹脂部材との間で密封するように配置された封止シートと、
前記汚損物質捕捉部を取り囲むように前記封止シートと前記樹脂部材との間に配置された接着層とを備え、
前記接着層は、前記封止シートおよび前記樹脂部材の少なくとも一方と剥離可能かつ再接着可能である、電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項2】
樹脂部材と、
前記樹脂部材の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部と、
前記汚損物質捕捉部が配置された前記樹脂部材を密封する第1の袋
とを備える
、電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項3】
前記汚損物質捕捉部が配置された前記樹脂部材とともに前記第1の袋に収容され、汚損物質を捕捉した後の前記汚損物質捕捉部が配置された前記樹脂部材を密封するための第2の袋をさらに備える、請求項
2に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項4】
前記樹脂部材は、シート状である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項5】
前記樹脂部材は、柱状であり、
前記汚損物質捕捉部は、前記樹脂部材の底面に配置される、請求項1から
3のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項6】
前記底面の反対側の上面に配置され、柱状の前記樹脂部材よりも径が細い持ち手部をさらに備える、請求項
5に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項7】
前記汚損物質捕捉部は、互いに離隔して前記樹脂部材に配置された第1捕捉部および第2捕捉部を含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電気設備の汚損物質採取装置によって採取された汚損物質から電気設備の汚損度を測定する汚損度測定装置。
【請求項9】
樹脂部材の一方側の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部を用いて、電気設備の表面の汚損物質を採取する工程と、
前記汚損物質を採取した後の前記汚損物質捕捉部を密封する工程と、
密封された前記汚損物質捕捉部を開封し、前記汚損物質捕捉部から前記汚損物質を抽出する工程と、
抽出された前記汚損物質を測定装置を用いて分析する工程とを含む、電気設備の汚損度測定方法。
【請求項10】
樹脂部材に溶媒吸収性高分子シートを配置する工程と、
一定面積あたり一定量の溶媒を前記溶媒吸収性高分子シートに含ませる工程と
、
前記溶媒を含んだ後の前記溶媒吸収性高分子シートを密封する工程とを備える、電気設備の汚損物質採取装置の製造方法。
【請求項11】
樹脂部材と、
前記樹脂部材の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部とを備え、
前記樹脂部材は、柱状であり、
前記汚損物質捕捉部は、前記樹脂部材の底面に配置される、電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項12】
前記底面の反対側の上面に配置され、柱状の前記樹脂部材よりも径が細い持ち手部をさらに備える、請求項11に記載の電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項13】
樹脂部材と、
前記樹脂部材の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部とを備え、
前記汚損物質捕捉部は、互いに離隔して前記樹脂部材に配置された第1捕捉部および第2捕捉部を含む、電気設備の汚損物質採取装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電気設備の汚損物質採取装置によって採取された汚損物質から電気設備の汚損度を測定する汚損度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気設備の汚損度測定方法、汚損度測定装置、汚損物質採取装置、および汚損物質採取装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば受配電設備、産業用電気機器などのような電気設備では、絶縁物の表面にイオンなどを含む導電性物質が付着して絶縁性が劣化することがある。したがって、イオンなどによる表面の汚損度を評価する技術が求められている。
【0003】
たとえば、特開2010-60460号公報(特許文献1)には、吸水性高分子シートを機器表面の測定面に貼付して水溶性汚損物質を採取し、採取された汚損物質が溶解する溶液の電導度または汚損物質の濃度を測定し、測定値を汚損度に変換する汚損度測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2010-60460号公報(特許文献1)に開示された方法では、汚損物質採取用のシートとは別に純水等を用意する必要があり、純水等をシートに含浸させるために、電気設備が設置されている現地で煩雑な作業が必要であった。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するものであって、操作が簡便化された電気設備の汚損度測定方法、汚損度測定装置、および汚損物質採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、電気設備の汚損物質採取装置に関する。電気設備の汚損物質採取装置は、樹脂部材と、樹脂部材の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部とを備える。
【0008】
本開示は、他の局面では、上記の電気設備の汚損物質採取装置によって採取された汚損物質から電気設備の汚損度を測定する汚損度測定装置に関する。
【0009】
本開示は、さらに他の局面では、電気設備の汚損度測定方法に関する。電気設備の汚損度測定方法は、樹脂部材の一方側の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部を用いて、電気設備の表面の汚損物質を採取する工程と、汚損物質を採取した後の汚損物質捕捉部を密封する工程と、密封された汚損物質捕捉部を開封し、汚損物質捕捉部から汚損物質を抽出する工程と、抽出された汚損物質を測定装置を用いて分析する工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電気設備の汚損度測定方法、汚損度測定装置、および汚損物質採取装置によれば、溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部を用いるので、現地での作業者の作業が簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した汚損度測定装置の断面図である。
【
図3】本実施の形態の汚損物質採取装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本実施の形態の汚損度測定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態2において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
【
図6】
図5に示した汚損度測定装置の断面図である。
【
図7】実施の形態3において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
【
図8】
図7に示した汚損度測定装置の断面図である。
【
図10】ツール本体の第1変形例の構成を示す図である。
【
図11】ツール本体の第2変形例の構成を示す図である。
【
図12】ツール本体の第3変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の変形例を含む実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
図2は、
図1に示した汚損度測定装置の断面図である。
【0014】
図1および
図2に示す汚損物質採取装置1は、汚損度測定装置またはその一部として記載するが、汚損度測定装置を使用する際の測定ツールまたは補助具のようなものであっても良い。
【0015】
汚損物質採取装置1は、一定量の溶媒を含浸させた溶媒吸収性高分子製の汚損物質捕捉部3と、汚損物質捕捉部3が貼り付けられた樹脂部材2と、汚損物質捕捉部3を封止するための封止シート4とを備える。封止シート4には、接着材層5が形成されている。溶媒吸収性高分子は、たとえば水を吸収する吸水性高分子を用いることができる。吸収する溶媒は、水以外(たとえばエタノール)であってもよい。
【0016】
樹脂部材2は、水を含んだ溶媒吸収性高分子が張り付けられた基材であり、
図1に示すように、たとえばフィルムまたはシートの形状であっても良い。
【0017】
また、封止シート4は、樹脂部材2から剥がし、汚損物質を採取した後に、樹脂部材2に再接着できることが望ましい。この場合、
図1に示すように接着層5は、剥離時に樹脂シート4側に付着し、樹脂部材2からは、剥がれることが望ましい。
【0018】
たとえば、受配電設備等の電気設備には、高い絶縁性能が要求される絶縁部材が用いられている。絶縁部材によって導体を支持しつつ他の部位を導体と電気的に絶縁することで、電気事故が防止される。しかしながら、電気設備の絶縁部材の表面が汚損されると、絶縁性能が低下する。
【0019】
絶縁部材には、樹脂などの有機物で構成された有機絶縁物と、磁器などの無機物で構成されたものが無機絶縁物とがある。これらの絶縁部材は、簡単には単品交換ができず、非修理系部品に属す箇所が多い。したがって、表面の汚損度を評価し、余寿命を推定することが行なわれる。
【0020】
汚損度の評価には、絶縁部材の表面に付着した汚損物質の種類および量を調べる必要がある。このために、従来は作業者が純水等の溶媒を綿布などにしみこませて、汚損物質を拭き取る作業が必要であった。
【0021】
実施の形態1に示した汚損物質採取装置1によれば、汚損物質捕捉部3には規定量の純水などの溶媒が予め含まれている。このため、電気設備の近辺で汚損物質捕捉部3に溶媒を含ませる作業が不要である。
【0022】
また、封止シート4で汚損物質捕捉部3が密封されているので、溶媒が使用前に蒸発してしまうことが防止される。
【0023】
ユーザーは、封止シート4を剥がし、剥き出しとなった溶媒吸収性高分子製の汚損物質捕捉部3を対象に押しつけることによって、汚損物質を容易に採取できる。この際に、接着層5が樹脂部材2からは剥がれ、封止シート4側に残ることにより、接着層5が汚損物質採取の邪魔にならず、また汚損物質の付着によって接着材層5の接着力が弱まることがない。
【0024】
さらに、封止シート4を剥離して汚損物質を採取した後に、封止シート4を再接着できるようにしておけば、移動中に汚損物質捕捉部3に他の物質が付着することが予防される。
【0025】
このようにすれば、たとえば、ユーザーが外部の評価会社に汚損度の評価を委託している場合などに、ユーザーと評価会社との間で汚損物質採取装置1を送付および返送する場合に便利である。
【0026】
図3は、本実施の形態の汚損物質採取装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3に示すように、まず、樹脂部材2であるフィルム(シート)に一定面積の溶媒吸収性高分子を貼付する(工程S1)。
【0027】
続いて、貼り付けた溶媒吸収性高分子に必要量(規定の量)の溶媒(例えば純水)を予め含浸させる(工程S2)。
【0028】
その後、溶媒を含浸させた溶媒吸収性高分子が貼り付けられた樹脂フィルム(シート)を封止シートなどで密封する(工程S3)。
【0029】
このようにして完成した汚損物質採取装置は、測定対象の電気設備の近くに移動させるのに容易で、開封すれば純水などの溶媒を準備せずに直ちに使用することができる。
【0030】
図4は、本実施の形態の汚損度測定方法を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、まず、汚損物質採取装置を開封し、電気設備の測定対象の表面に汚損物質捕捉部3を押しつけ、または貼り付けて、汚損物質捕捉部3に汚損物質を付着させる(工程S11)。
【0031】
続いて、汚損物質採取後の汚損物質採取装置を密封する(工程S12)。具体的には、封止シート4を樹脂部材2に再接着させることにより汚損物質捕捉部3を密封する。これにより、輸送中に他の物質が汚損物質捕捉部3に付着することが防止させる。
【0032】
以上の工程S11,S12は、ユーザーまたは委託された評価会社の作業者が、評価対象の電気設備の場所で行なう工程である。続く、工程S13,S14は、汚損物質を分析する測定装置の場所で、ユーザーまたは委託された評価会社の作業者が行なう工程である。
【0033】
工程S13では、密封された汚損物質採取装置を開封し、汚損物質捕捉部3から汚損物質を抽出する処理が行なわれる。たとえば、汚損物質捕捉部3を純水などの溶媒に浸漬させて、溶媒中に汚損物質を溶出させる。
【0034】
続いて、溶媒中に溶出した汚損物質を測定し、汚損度を評価する(工程S14)。工程S14で使用される測定装置は、種々の装置が考えられる。限定されないが、たとえば、液体クロマトグラフィー、電気伝導度測定装置などが測定装置として想定される。
【0035】
従来は、マイクロピペッター、純水注入導管、精製水を別途用意し、水をしみ込ませるという煩雑な作業を電気設備が設置された現地で行なう必要があった。それに対し、本実施の形態によれば、別途水をしみ込ませる作業は不要のため、ユーザーでも簡単に汚損物質の採取、汚損度の測定が可能となる。
【0036】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
図6は、
図5に示した汚損度測定装置の断面図である。
【0037】
図5および
図6に示す汚損物質採取装置10は、汚損度測定装置またはその一部として記載するが、汚損度測定装置を使用する際の測定ツールまたは補助具のようなものであっても良い。
【0038】
汚損物質採取装置10は、一定量の溶媒を含浸させた溶媒吸収性高分子製の汚損物質捕捉部3と、汚損物質捕捉部3が貼り付けられた樹脂部材12と、汚損物質捕捉部3を封止するための封止シート14とを備える。
【0039】
封止シート14は、4辺のうちの3辺に剥離可能な接着層15が配置されている。封止シート14の残りの1辺は、樹脂部材2と固着されている。たとえば、
図5に示した例では、樹脂部材12と封止シート14とは、一枚の樹脂フィルムを折り曲げたものである。ただし、このような構成には限定されず、2枚の樹脂フィルムの各一辺を剥がれないように接着または溶着したものであっても良い。
【0040】
このような構成とすれば、実施の形態1と同様な効果に加えて、封止シート14を樹脂部材12から剥がした後に、封止シート14を紛失したり、誤って廃棄したりすることが防止される。
【0041】
接着層15は、再接着可能であることが望ましいが、再接着できなくても有用である。たとえば、汚損物質捕捉部3に汚損物質を捕捉した後に他の物質が付着しないように保護するカバーとして封止シート14を使用できる。
【0042】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、封止シートの外周を樹脂部材に接着させることによって、水等の溶媒を含浸させた汚損物質捕捉部を密封した。これにより、溶媒が蒸発して溶媒が溶媒吸収性高分子から失われてしまうことを防止することができる。実施の形態3は、汚損物質捕捉部を密封するために、封止シートに替えて袋などを使用することにより、同様な効果を得る。
【0043】
図7は、実施の形態3において用いられる汚損度測定装置の構成を示す図である。
図8は、
図7に示した汚損度測定装置の断面図である。
【0044】
図7および
図8に示す汚損物質採取装置20は、汚損度測定装置またはその一部として記載するが、汚損度測定装置を使用する際の測定ツールまたは補助具のようなものであっても良い。
【0045】
汚損物質採取装置20は、一定量の溶媒を含浸させた溶媒吸収性高分子製の汚損物質捕捉部3と、汚損物質捕捉部3が貼り付けられた樹脂部材22とを備える。
【0046】
汚損物質採取装置20は、さらに、汚損物質捕捉部3を密封するための袋24を備える。袋24は、溶媒が蒸発しても透過させにくい材料で形成される。たとえば、袋24は、筒状の樹脂フィルムの中に樹脂部材22を配置した後に、筒状の樹脂フィルムの上側シート24Aと下側シート24Bとを両端部26,27において溶着または接着したものである。なお、筒状の樹脂フィルムでなくても、2枚の樹脂フィルムの間に樹脂部材22を挟み、樹脂部材22の周囲を取り囲むように、2枚の樹脂フィルムを溶着または接着したものであっても良い。
【0047】
袋24には、手で開封しやすいように、切りかけ部やギザギザ部を設けていてもよい。この場合、袋24を手で開封し、汚損物質捕捉部3に汚損物質を採取した後には、別途用意した密封袋にこれを保管する。
【0048】
なお、袋24が再封可能な樹脂チャックを有するものであれば、別途返送用の密封袋は不要である。また、
図7,
図8では密封する手段を袋としたが、これは必ずしも袋状である必要はない。たとえば、密封する手段は、密封性の高い樹脂製の箱(ケース)であっても良い。
【0049】
図9は、実施の形態3の変形例の断面図である。
図8に示した場合には、袋を開封した後、汚損物質採取後の樹脂部材22を保管するために、密封袋を別途用意する必要があった。
図9に示す汚損物質採取装置20Aでは、樹脂部材22とともに保管用の袋28が袋24に予め封入されている。これにより、密封袋を別途用意しなくても良い。
【0050】
袋28は、汚損物質採取後の樹脂部材22を中に封入後に、樹脂チャック、シール用接着剤などにより密封できることが好ましい。
【0051】
[汚損物質採取ツール本体の変形例]
汚損物質捕捉部3が貼り付けられた樹脂部材は、実施の形態1~3ではフィルムまたはシート状であったが、他の形状であっても良い。以下において、汚損物質捕捉部3が貼り付けられた樹脂部材をツール本体と呼ぶことにする。
【0052】
図10は、ツール本体の第1変形例の構成を示す図である。
図10に示す汚損物質採取装置30は、ツール本体32と、汚損物質捕捉部3とを備える。ツール本体32は、柱状の形状を有する樹脂部材であり、底面に汚損物質捕捉部3が貼り付けられている。ツール本体32は
図10では円柱形状であるが、角柱、多角形の柱の形状であっても良い。
【0053】
汚損物質捕捉部3については、実施の形態1~3と同じであるので、説明は繰り返さない。
【0054】
また、図示しないが、汚損物質採取装置30は、汚損物質捕捉部3を密封する構造を有している。たとえば、実施の形態1、2のように、ツール本体32の底面に封止シートを貼り付けたり、実施の形態3のようにツール本体32を封入する袋を用いたりして、汚損物質捕捉部3から水等の溶媒が蒸発するのを防ぐ。
【0055】
このように、シート状ではなく柱状等の持ちやすい形状のツール本体とすることによって、汚損物質捕捉部3を評価対象の電気設備の測定対象面に押し当てて汚損物質を採取する作業が容易となる。
【0056】
図11は、ツール本体の第2変形例の構成を示す図である。
図11に示す汚損物質採取装置40は、ツール本体42と、汚損物質捕捉部3と、持ち手部43とを備える。ツール本体42は、柱状の形状を有する樹脂部材であり、底面に汚損物質捕捉部3が貼り付けられている。ツール本体42は
図11では円柱形状であるが、角柱、多角形の柱の形状であっても良い。持ち手部43は
図11では円柱形状であるが、角柱、多角形の柱の形状であって、板状の形状であっても良い。
【0057】
汚損物質捕捉部3については、実施の形態1~3と同じであるので、説明は繰り返さない。
【0058】
また、図示しないが、汚損物質採取装置40は、汚損物質捕捉部3を密封する構造を有している。たとえば、実施の形態1、2のように、ツール本体42の底面に封止シートを用いたり、実施の形態3のように袋を用いたりして、汚損物質捕捉部3から水等の溶媒が蒸発するのを防ぐ。
【0059】
このように、シート状ではなく持ちやすい形状の持ち手をツール本体に取り付けることによって、狭いところ、手が届きにくいところにもアクセスしやすくなり、汚損物質捕捉部3を評価対象の電気設備の測定対象面に押し当てて汚損物質を採取する作業が容易となる。
【0060】
図12は、ツール本体の第3変形例の構成を示す図である。
図12に示す汚損物質採取装置50は、ツール本体52と、汚損物質捕捉部とを備える。汚損物質捕捉部は、第1捕捉部3Aと第2捕捉部3Bとを含む。ツール本体52は、どのような形状であっても良い。
図12ではツール本体52はシート状であるが、
図10に示すような円柱形状、角柱、多角形の柱の形状であっても良い。さらに
図11に示すように持ち手が取り付けられていても良い。
【0061】
ツール本体52には、汚損物質捕捉部である溶媒吸収性高分子シートが複数取り付けられている。これにより、一度に複数個所の汚損度を評価できる。
【0062】
たとえば、配電設備等に絶縁低下が懸念される測定場所が予め決まっている場合など、第1捕捉部3Aおよび第2捕捉部3Bの配置をこの測定場所に合わせて配置しておけば、測定が容易となり測定ミスを防止することができる。なお、捕捉部の数をさらに増やしても良い。
【0063】
[まとめ]
再び図面を参照して本開示について総括する。
【0064】
(第1項)
図1に示すように、本開示の電気設備の汚損物質採取装置1は、樹脂部材2と、樹脂部材2の第1の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部3とを備える。
【0065】
(第2項) 第1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置1は、汚損物質捕捉部3を樹脂部材2との間で密封するように配置された封止シート4と、汚損物質捕捉部3を取り囲むように封止シート4と樹脂部材2との間に配置された接着層5とをさらに備える。接着層5は、封止シート4および樹脂部材2の少なくとも一方と剥離可能かつ再接着可能である。
【0066】
(第3項) 第1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置20は、
図7、
図8に示すように、汚損物質捕捉部3が配置された樹脂部材22を密封する第1の袋24をさらに備える。
【0067】
(第4項) 第3項に記載の電気設備の汚損物質採取装置20Aは、
図9に示すように、汚損物質捕捉部3が配置された樹脂部材22とともに第1の袋24に収容され、汚損物質を捕捉した後の汚損物質捕捉部3が配置された樹脂部材22を密封するための第2の袋28をさらに備える。
【0068】
(第5項) 第1項から第4項のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置において、
図1,
図2、
図5-9に示すように、樹脂部材2,12,22は、シート状である。
【0069】
(第6項) 第1項から第4項のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置において、
図10に示すように、樹脂部材(ツール本体32)は柱状であり、汚損物質捕捉部3は、樹脂部材(ツール本体32)の底面に配置される。
【0070】
(第7項) 第6項に記載の電気設備の汚損物質採取装置は、
図11に示すように、樹脂部材(ツール本体42)の底面の反対側の上面に配置され、柱状の樹脂部材(ツール本体42)よりも径が細い(または断面積が小さい)持ち手部43をさらに備える。
【0071】
(第8項) 第1項から第4項のいずれか1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置において、
図12に示すように、汚損物質捕捉部3は、互いに離隔して樹脂部材に配置された第1捕捉部3Aおよび第2捕捉部3Bを含む。
【0072】
(第9項) 本開示は、他の局面では、第1項に記載の電気設備の汚損物質採取装置によって採取された汚損物質から電気設備の汚損度を測定する汚損度測定装置に関する。
【0073】
(第10項) 本開示は、さらに他の局面では、電気設備の汚損度測定方法に関する。汚損度測定方法は、
図4に示すように、樹脂部材の一方側の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部を用いて、電気設備の表面の汚損物質を採取する工程(S11)と、汚損物質を採取した後の汚損物質捕捉部を密封する(またはカバーで覆う)工程(S12)と、密封された汚損物質捕捉部を開封し(またはカバーを除き)、汚損物質捕捉部から汚損物質を抽出する工程(S13)と、抽出された汚損物質を測定装置を用いて分析する工程(S14)とを含む。
【0074】
(第11項) 本開示は、さらに他の局面では、電気設備の汚損物質採取装置の製造方法に関する。汚損物質採取装置の製造方法は、
図3に示すように、樹脂部材に溶媒吸収性高分子シートを配置する工程(S1)と、一定面積あたり一定量の溶媒を溶媒吸収性高分子シートに含ませる工程(S2)とを備える。
【0075】
(第12項) 第11項に記載の電気設備の汚損物質採取装置の製造方法は、溶媒を含んだ後の溶媒吸収性高分子シートを密封する工程(S3)をさらに備える。
【0076】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1,10,20,20A,30,40,50 汚損物質採取装置、2,12,22 樹脂部材、3 汚損物質捕捉部、3A 第1捕捉部、3B 第2捕捉部、4,14 封止シート、5,15 接着層、24,28 袋、24A 上側シート、24B 下側シート、26,27 両端部、32,42,52 ツール本体、43 持ち手部。
【要約】
汚損度測定方法は、樹脂部材の一方側の面に配置され、一定面積あたり一定量の溶媒と溶媒吸収性高分子とを含有する面状の汚損物質捕捉部を用いて、電気設備の表面の汚損物質を採取する工程(S11)と、汚損物質を採取した後の汚損物質捕捉部を密封する工程(S12)と、密封された汚損物質捕捉部を開封し、汚損物質捕捉部から汚損物質を抽出する工程(S13)と、抽出された汚損物質を測定装置を用いて分析する工程(S14)とを含む。