(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示制御方法、及び表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/06 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G08G5/06 A
(21)【出願番号】P 2024540541
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2022031522
(87)【国際公開番号】W WO2024042574
(87)【国際公開日】2024-02-29
【審査請求日】2024-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】皆川 純
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-317200(JP,A)
【文献】特開2005-339392(JP,A)
【文献】特開平09-282600(JP,A)
【文献】特開2001-357500(JP,A)
【文献】米国特許第9132913(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0012737(US,A1)
【文献】米国特許第9534922(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システムの表示制御装置であって、
前記複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得する走行路構造データ取得部と、
前記複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管理装置から前記管制情報を取得する管制情報取得部と、
前記走行路構造データと前記管制情報とに基づいて、前記複数の移動体の移動経路を示す複数の予測トラジェクトリを推定する予測トラジェクトリ推定部と、
前記複数の予測トラジェクトリから、前記複数の移動体のうちから監視対象として選択された移動体である第1の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、前記第1の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の関連する予測トラジェクトリとを取得する予測トラジェクトリ取得部と、
前記走行路構造データ、前記第1の予測トラジェクトリ、及び前記複数の関連する予測トラジェクトリに基づいて、前記複数の関連する移動体から、前記第1の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる異常接近の期間を有する移動体である第2の移動体を推定する異常接近推定部と、
前記第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を前記始点又は前記終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、前記2次元座標系において前記第1の予測トラジェクトリを表す線と、前記異常接近の期間にあるときの前記第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを表示装置に表示させる表示制御部と、
前記表示装置に前記第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、前記表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線が前記異常接近領域に重ならないように、前記第1の予測トラジェクトリを修正するトラジェクトリ修正部と、
を有することを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記表示部品は、前記表示装置に表示されている前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線に重なり、前記異常接近領域に重ならない点状部品である
ことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示部品は、前記異常接近領域の前記時刻の範囲よりも時間的に早い時刻の位置に表示される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記トラジェクトリ修正部は、前記表示装置に表示されている前記表示部品を前記第2の座標軸の方向に移動させるユーザ入力操作があった場合、前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線のうちの前記表示部品より時間的に後の部分を前記表示部品の移動方向に移動させることで更新後の予測トラジェクトリを生成する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記更新後の予測トラジェクトリを表す線は、
前記表示部品より時間的に前の範囲内における線分である第1の部分と、
前記表示部品より時間的に後の範囲内における線分である第3の部分と、
前記第1の部分と前記第3の部分とを繋ぐ線分である第2の部分と
を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記異常接近は、前記複数の走行路のうちの交差する第1の走行路と第2の走行路との交差点における、前記第1の走行路を走行する前記第1の移動体と前記第2の走行路を走行する前記第2の移動体との間で発生する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記異常接近は、前記複数の走行路のうちの1つの走行路において、互いに同じ方向に走行する前記第1の移動体と前記第2の移動体との間で発生する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記異常接近は、前記複数の走行路のうちの1つの走行路において、互いに近づく方向であって互いに逆方向に走行する前記第1の移動体と前記第2の移動体との間で発生する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記異常接近推定部は、前記管理装置から取得された前記複数の走行路における大気の視程に関する情報、前記管理装置から取得された前記複数の走行路における風向及び風速に関する情報、及び前記管理装置から取得された前記第1の移動体の大きさに関する情報のうちの1つ以上の情報に基づいて、前記基準値を変更する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記走行路構造データを記憶する記憶装置を更に有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記表示部品を移動させる入力情報を入力するためにユーザによって操作される入力装置を更に有する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記複数の移動体は、航空機、又は車両、又は航空機及び車両の両方、を含み、
前記複数の走行路は、空港における誘導路及び滑走路を含む
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示制御装置。
【請求項13】
複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システムの表示制御装置、によって実施される表示制御方法であって、
前記複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得するステップと、
前記複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管理装置から前記管制情報を取得するステップと、
前記走行路構造データと前記管制情報とに基づいて、前記複数の移動体の移動経路を示す複数の予測トラジェクトリを推定するステップと、
前記複数の予測トラジェクトリから、前記複数の移動体のうちから監視対象として選択された移動体である第1の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、前記第1の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の関連する予測トラジェクトリとを取得するステップと、
前記走行路構造データ、前記第1の予測トラジェクトリ、及び前記複数の関連する予測トラジェクトリに基づいて、前記複数の関連する移動体から、前記第1の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる異常接近の期間を有する移動体である第2の移動体を推定するステップと、
前記第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を前記始点又は前記終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、前記2次元座標系において前記第1の予測トラジェクトリを表す線と、前記異常接近の期間にあるときの前記第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを表示装置に表示させるステップと、
前記表示装置に前記第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、前記表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線が前記異常接近領域に重ならないように、前記第1の予測トラジェクトリを修正するステップと、
を有することを特徴とする表示制御方法。
【請求項14】
複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システムの表示制御装置に、
前記複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得するステップと、
前記複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管理装置から前記管制情報を取得するステップと、
前記走行路構造データと前記管制情報とに基づいて、前記複数の移動体の移動経路を示す複数の予測トラジェクトリを推定するステップと、
前記複数の予測トラジェクトリから、前記複数の移動体のうちから監視対象として選択された移動体である第1の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、前記第1の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の関連する予測トラジェクトリとを取得するステップと、
前記走行路構造データ、前記第1の予測トラジェクトリ、及び前記複数の関連する予測トラジェクトリに基づいて、前記複数の関連する移動体から、前記第1の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる異常接近の期間を有する移動体である第2の移動体を推定するステップと、
前記第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を前記始点又は前記終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、前記2次元座標系において前記第1の予測トラジェクトリを表す線と、前記異常接近の期間にあるときの前記第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを表示装置に表示させるステップと、
前記表示装置に前記第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、前記表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線が前記異常接近領域に重ならないように、前記第1の予測トラジェクトリを修正するステップと、
を実行させることを特徴とする表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置、表示制御方法、及び表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港において地上を走行する移動体(例えば、航空機、車両、など)の移動経路を、時間を表す座標軸と位置を表す座標軸とからなる2次元平面に表示する表示手段を備えた管制情報表示システムの提案がある。例えば、特許文献1を参照。選択された移動体において注意を払う必要が生じる状況は、他の移動体が、選択された移動体の進路の一部を共有する状況である。進路の共有の仕方には、選択された移動体の進路を構成する誘導路と他の移動体の進路を構成する誘導路とが交差点で交差する場合と、選択された移動体と他の移動体とが共通の誘導路を同一方向又は逆方向に進行する場合とがある。このため、特許文献1のシステムでは、選択された移動体の走行状況を示す2次元平面と他の移動体の走行状況を示す他の2次元平面とが互いに交わるように、つまり、2つの移動体の走行状況を3次元的に表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-350445号公報(例えば、請求項1及び2、段落0038~0039、
図4~
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2つの移動体の走行状況を3次元的に表示した表示形態の場合には、表示手段を見る管制官は、移動体同士の異常接近を予測し、異常接近(衝突を含む)を回避するためのトラジェクトリの修正を容易に行うことができない。
【0005】
本開示の目的は、移動体同士の異常接近を予測し、異常接近を回避するための予測トラジェクトリの修正を容易に行うことを可能にする表示制御装置、表示制御方法、及び表示制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示制御装置は、複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システムの装置であって、前記複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得する走行路構造データ取得部と、前記複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管理装置から前記管制情報を取得する管制情報取得部と、前記走行路構造データと前記管制情報とに基づいて、前記複数の移動体の移動経路を示す複数の予測トラジェクトリを推定する予測トラジェクトリ推定部と、前記複数の予測トラジェクトリから、前記複数の移動体のうちから監視対象として選択された移動体である第1の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、前記第1の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の関連する予測トラジェクトリとを取得する予測トラジェクトリ取得部と、前記走行路構造データ、前記第1の予測トラジェクトリ、及び前記複数の関連する予測トラジェクトリに基づいて、前記複数の関連する移動体から、前記第1の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる異常接近の期間を有する移動体である第2の移動体を推定する異常接近推定部と、前記第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を前記始点又は前記終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、前記2次元座標系において前記第1の予測トラジェクトリを表す線と、前記異常接近の期間にあるときの前記第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを表示装置に表示させる表示制御部と、前記表示装置に前記第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、前記表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線が前記異常接近領域に重ならないように、前記第1の予測トラジェクトリを修正するトラジェクトリ修正部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本開示の表示制御方法は、複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システムの表示制御装置、によって実施される方法であって、前記複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得するステップと、前記複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管理装置から前記管制情報を取得するステップと、前記走行路構造データと前記管制情報とに基づいて、前記複数の移動体の移動経路を示す複数の予測トラジェクトリを推定するステップと、前記複数の予測トラジェクトリから、前記複数の移動体のうちから監視対象として選択された移動体である第1の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、前記第1の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の関連する予測トラジェクトリとを取得するステップと、前記走行路構造データ、前記第1の予測トラジェクトリ、及び前記複数の関連する予測トラジェクトリに基づいて、前記複数の関連する移動体から、前記第1の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる異常接近の期間を有する移動体である第2の移動体を推定するステップと、前記第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を前記始点又は前記終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、前記2次元座標系において前記第1の予測トラジェクトリを表す線と、前記異常接近の期間にあるときの前記第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを表示装置に表示させるステップと、前記表示装置に前記第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、前記表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に前記第1の予測トラジェクトリを表す前記線が前記異常接近領域に重ならないように、前記第1の予測トラジェクトリを修正するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、移動体同士の異常接近を予測し、異常接近を回避するための予測トラジェクトリの修正を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る表示制御装置及び管制システムの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る表示制御装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る表示制御装置の表示動作を示すフローチャートである。
【
図4】空港の走行路である滑走路及び誘導路の例を示す平面図である。
【
図5】(A)は、選択中の航空機の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。(B)は、選択中の航空機の予測トラジェクトリの例を位置の座標軸と時刻の座標軸とからなる2次元座標系に表す図である。
【
図6】(A)は、関連する航空機の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。(B)は、関連する航空機の予測トラジェクトリの例を位置の座標軸と時刻の座標軸とからなる2次元座標系に表す図である。
【
図7】(A)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが同じ誘導路を互いに近づく方向に進む状況における、予測トラジェクトリの例を示す平面図である。(B)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが異常接近する位置を2次元座標系に示す例を示す図である。
【
図8】(A)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが同じ誘導路を互いに近づく方向に走行し始めた例を示す平面図である。(B)は、
図8(A)のヘッドオン発生時における表示装置の表示例を示す図である。
【
図9】(A)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが同じ誘導路を互いに近づく方向に走行して、関連する航空機が選択中の航空機の異常接近範囲内に入った状況である異常接近状況を示す平面図である。(B)は、
図9(A)の異常接近状況の発生時における表示装置の表示例を示す図である。
【
図10】(A)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが交差点で異常接近(この例では、衝突のおそれ)する例を示す平面図である。(B)は、
図10(A)の異常接近の発生時における2次元座標系と強調表示部品の例とを表す図である。
【
図11】
図10(B)の異常接近(この例では、交差点における衝突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
【
図12】(A)は、選択中の航空機の予測トラジェクトリの例と関連する航空機の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。(B)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが同じ誘導路を同じ方向に走行する例を示す平面図である。
【
図13】
図12(B)の異常接近(この例では、追突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
【
図14】(A)は、選択中の航空機の予測トラジェクトリの例と関連する航空機の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。(B)は、選択中の航空機とそれに関連する航空機とが同じ誘導路を同じ方向に走行する例を示す平面図である。
【
図15】
図14(B)の異常接近(この例では、追突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
【
図16】実施の形態に係る表示制御装置の描画処理を示すフローチャートである。
【
図17】(A)から(D)は、実施の形態に係る表示制御装置によるトラジェクトリの修正時のダイアグラム画面を示す図である。
【
図18】実施の形態に係る表示制御装置のトラジェクトリの修正処理を示すフローチャートである。
【
図19】(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図(その1)である。
【
図20】(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図(その2)である。
【
図21】(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図である。
【
図22】(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る表示制御装置、表示制御方法、及び表示制御プログラムを、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、実施の形態を適宜組み合わせること及び各実施の形態を適宜変更することが可能である。
【0011】
図1は、実施の形態に係る表示制御装置10の構成を概略的に示す機能ブロック図である。表示制御装置10は、実施の形態に係る表示制御方法を実施することができる装置である。表示制御装置10は、例えば、実施の形態に係る表示制御プログラムを実行するコンピュータである。
【0012】
表示制御装置10は、地上の複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システム1の一部である。管制システム1は、管理装置としての管制情報管理装置30と、画像を表示する液晶モニタなどの表示装置40とを有している。管制システム1は、例えば、複数の移動体としての複数の航空機に指示を送信する空港管制システムである。複数の走行路は、例えば、空港の滑走路及び誘導路である。一般に、空港の管制システムは、飛行中の航空機と地上走行中の航空機とを管制の対象とする。しかし、本開示の管制システム1が指示を送信する移動体は、地上を走行する移動体(着陸時及び離陸時において車輪が滑走路に接していない状態にあり且つ滑走路上を飛行して移動している航空機も含む)である。移動体は、航空機に限定されず、自動車などの車両であってもよい。また、移動体は、航空機及び車両の両方を含んでもよい。
【0013】
管制情報管理装置30は、移動体追跡・識別部31と、運行管理部32と、センサ情報取得部33とを有している。移動体追跡・識別部31は、複数の移動体の位置を追跡し、複数の移動体の各々を識別する。運行管理部32は、複数の移動体の運行時間と複数の移動体の各々の移動開始点(すなわち、始点)から目的地(すなわち、終点)までの運行経路とを含む運行管理情報を管理する。センサ情報取得部33は、移動体を検知するセンサから移動体の検知情報を受け取る。
【0014】
表示制御装置10は、走行路構造データ取得部12と、管制情報取得部13と、予測トラジェクトリ推定部14と、予測トラジェクトリ取得部15と、異常接近推定部16と、表示制御部17と、入力装置18と、トラジェクトリ修正部19とを有している。
【0015】
走行路構造データ取得部12は、記憶装置11から複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得する。走行路構造データは、例えば、走行路の地図データである。具体的には、走行路構造データ取得部12は、不揮発性メモリなどの記憶装置11に格納されている走行路の構造(例えば、誘導路の長さなど)を読み出し、異常接近推定部16へ与える。
図1では、記憶装置11は、表示制御装置10の一部として表されているが、記憶装置11は、表示制御装置10と通信可能な外部の記憶装置であってもよい。
【0016】
管制情報取得部13は、複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管制情報管理装置30から管制情報を取得する。具体的には、管制情報取得部13は、管制情報管理装置30によって管理されている移動体の現在位置及び運行管理情報などを取得する。
【0017】
予測トラジェクトリ推定部14は、走行路構造データと管制情報とに基づいて、複数の移動体の移動経路を示す予測トラジェクトリ(例えば、地上を走行する移動体の予定軌道)を推定する。具体的には、予測トラジェクトリ推定部14は、管制情報取得部13から得られた移動体の現在位置及び運行管理情報を基に、移動体の予測トラジェクトリと現在位置とを推定する。予測トラジェクトリは、着陸時及び離陸時において車輪が滑走路に接していない状態にあり且つ滑走路上を飛行して移動している航空機の軌道も含む。
【0018】
予測トラジェクトリ取得部15は、推定された予測トラジェクトリから、複数の移動体のうちの監視対象として選択された移動体(「選択中の移動体」又は「第1の移動体」ともいう。)の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、選択中の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の第2の予測トラジェクトリとを取得する。具体的には、予測トラジェクトリ取得部15は、予測トラジェクトリ推定部14によって計算された移動体の予測トラジェクトリ(予測軌道)を読み出し、異常接近推定部16へ与える。
【0019】
異常接近推定部16は、走行路構造データ、第1の予測トラジェクトリ、及び複数の第2の予測トラジェクトリに基づいて、複数の関連する移動体から、選択中の移動体からの距離が予め定められた基準値(すなわち、閾値)以下になる期間を有する移動体である異常接近の移動体を推定し、異常接近の期間にあるときの移動体(「異常接近の移動体」又は「第2の移動体」ともいう。)の位置を推定する。具体的には、異常接近推定部16は、入力装置18から得られる選択中の移動体を参照し、その移動体の異常接近領域を推定する。推定された異常接近領域は、表示制御部17に与えることで、ダイアグラム上に強調表示部品として重畳表示させる。異常接近領域は、走行路構造データ取得部12から得られる移動体の走行路の構造(例えば、誘導路の長さなど)と予測トラジェクトリ取得部15から得られた移動体の予測トラジェクトリとに基づいて計算する。
【0020】
異常接近推定部16は、管制情報管理装置30から複数の走行路における大気の視程(目標の形を肉眼で確かめられる最大距離)に関する情報(例えば、視程計の計測値)を取得し、予め定められた基準値を、取得した視程に基づいて変更してもよい。例えば、霧、雨、雪などの大気の状態によって視程が短いほど、基準値を長くすることで、基準値の適正化が図れる。また、異常接近推定部16は、管制情報管理装置30から複数の走行路における風向及び風速に関する情報(例えば、風向計、風速計の計測値)を取得し、予め定められた基準値を、風向及び風速に基づいて変更してもよい。例えば、風向が追い風で風速が速いほど、基準値を長くすることで、基準値の適正化が図れる。さらに、異常接近推定部16は、管制情報管理装置30から選択中の移動体の大きさ及び異常接近の移動体の大きさに関する情報(例えば、航空機に関するデータ、カメラ映像の解析によって得られた移動体の大きさ情報及び移動体間の距離情報、など)を取得し、予め定められた基準値を、選択中の移動体の大きさ及び異常接近の移動体の大きさに基づいて変更してもよい。例えば、選択中の移動体の大きさが大きい(すなわち、重量が重いほど)ほど、また、異常接近の移動体の大きさが大きいほど、停止までに要する距離である制動距離が長いため、基準値を長くすることで、基準値の適正化が図れる。これは、大きい移動体ほど重量が重く、停止までに要する距離である制動距離が長いからである。
【0021】
表示制御部17は、第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を始点からの距離(例えば、単位は[m]であり、終点からの距離であってもよい)で表す第1の座標軸と時刻(例えば、基準時刻t0からの経過時間であり、例えば、単位は[s])を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、2次元座標系において第1の予測トラジェクトリを表す線とを、表示装置40に表示させる。具体的に言えば、本実施の形態では、表示制御部17は、第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を始点又は終点からの距離で表す第1の座標軸と時刻を表す第2の座標軸とからなる2次元座標系と、2次元座標系において第1の予測トラジェクトリを表す線と、異常接近の期間にあるときの第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域とを、表示装置40に表示させる。2次元座標系と予測トラジェクトリを表す線とを、ダイアグラムとも呼ぶ。ダイアグラムは、入力装置18から入力された管制官(すなわち、システムのユーザ)の選択情報を参照し表示される。また、表示制御部17は、異常接近の期間にあるときの異常接近の移動体の位置を2次元座標系において表す強調表示部品を、表示装置40に表示させる。強調表示部品は、ダイアグラムに重畳して表示される。具体的には、表示制御部17は、移動体を示す図形、地図、強調表示部品などを表示装置40に表示させる。強調表示部品は、例えば、予め決められた図形(例えば、丸、四角、星、など)を、予め決められた色(例えば、黄色、橙色、赤色、など)で塗りつぶしたものである。強調表示部品は、点滅による輝度の変化、色の変化、及び形状の変化、並びに、これらの変化のうちの2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
【0022】
入力装置18は、管制官からの入力を受け付ける操作入力部である。入力装置18は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力用のマイク、などである。管制官からの入力は、例えば、表示する移動体のトラジェクトリなどを選択する操作である。入力装置18は、管制官からの入力を入力データとして、表示制御部17へ与える。
【0023】
トラジェクトリ修正部19は、表示装置40に第1の予測トラジェクトリを更新するための表示部品を表示させ、表示部品を移動させる入力情報を受け取った場合に第1の予測トラジェクトリを表す線が異常接近領域に重ならないように、第1の予測トラジェクトリを修正する。ここで、表示部品は、例えば、表示装置40に表示されている第1の予測トラジェクトリを表す線に重なり、異常接近領域に重ならない点状部品である。点状部品は、例えば、後述の
図19(A)などに示される。表示部品は、異常接近領域の時刻の範囲よりも時間的に早い時刻の位置に表示される。トラジェクトリ修正部19は、表示装置40に表示されている表示部品を第2の座標軸の方向に移動させるユーザ入力操作があった場合(例えば、入力装置18による操作)、第1の予測トラジェクトリを表す線のうちの表示部品より時間的に後の部分を表示部品の移動方向に移動させることで更新後の予測トラジェクトリを生成する。
【0024】
図2は、表示制御装置10のハードウェア構成の例を示す図である。
図2に示されるように、表示制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ101と、揮発性の記憶装置であるメモリ102と、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)などの不揮発性記憶装置103と、インタフェ-ス104とを有している。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの半導体メモリである。不揮発性記憶装置103は、
図1に示される記憶装置11と同じものであってもよい。
【0025】
表示制御装置10の各機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよく、又はメモリ102に格納されるプログラムを実行するプロセッサ101であってもよい。プロセッサ101は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、及びDSP(Digital Signal Processor)のいずれであってもよい。
【0026】
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらのうちのいずれかを組み合わせたものである。
【0027】
処理回路がプロセッサ101である場合、表示制御装置10によって実行される表示制御プログラムは、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。表示制御プログラムは、ネットワークを経由して又は記録媒体から表示制御装置10にインストールされる。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ102に格納される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶された表示制御プログラムを読み出して実行することにより、
図1に示される各部の機能を実現することができる。
【0028】
なお、表示制御装置10は、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらのうちのいずれかの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0029】
図3は、表示制御装置10の表示動作を示すフローチャートである。
図3は、複数の走行路を走行する複数の移動体に指示を送信する管制システム1の表示制御装置10、によって実施される実施の形態に係る表示制御方法を示している。
【0030】
先ず、表示制御装置10は、複数の走行路の構造を示す走行路構造データを取得し(ステップS1)、複数の移動体の位置及び運行予定を含む管制情報を管理する管制情報管理装置30から管制情報を取得する(ステップS2)。ステップS1とS2とは逆の順番で実行されてもよく、或いは、並列的に実行されてもよい。
【0031】
表示制御装置10は、走行路構造データと管制情報とに基づいて、複数の移動体の移動経路を示す予測トラジェクトリを推定する(ステップS3)。
【0032】
表示制御装置10は、推定された予測トラジェクトリから、複数の移動体のうちの監視対象として選択中の移動体の移動経路を示す第1の予測トラジェクトリと、選択中の移動体以外の移動体である複数の関連する移動体の移動経路を示す複数の第2の予測トラジェクトリとを取得する(ステップS4)。
【0033】
表示制御装置10は、走行路構造データ、第1の予測トラジェクトリ、及び複数の第2の予測トラジェクトリに基づいて、複数の関連する移動体から、選択中の移動体からの距離が予め定められた基準値以下になる期間を有する移動体である異常接近の移動体を推定し、異常接近の期間にあるときの異常接近の移動体の位置を推定する(ステップS5)。
【0034】
異常接近の移動体がある場合(ステップS6においてYES)には、表示制御装置10は、第1の予測トラジェクトリの始点から終点までの位置を始点からの距離で表す第1の座標軸(例えば、横軸)と時刻を表す第2の座標軸(例えば、縦軸)とからなる2次元座標系と、2次元座標系において第1の予測トラジェクトリを表す線(例えば、直線又は曲線)とを、表示装置40に表示させ(ステップS7)。異常接近の期間にあるときの異常接近の移動体の位置を2次元座標系において表す強調表示部品を、表示装置40に表示させる(ステップS8)。異常接近の移動体がない場合(ステップS6においてNO)には、表示制御装置10は、実施の形態に係る表示制御方法の実施を終了する。
【0035】
図4は、空港の走行路である滑走路201~203及び誘導路204の例を示す平面図である。滑走路201~203は、航空機の離陸及び着陸に使用される。誘導路204は、移動体としての航空機の地上走行用の通路であり、主に、駐機場と滑走路との間の移動に使用される。
【0036】
図5(A)は、選択中の航空機TGT01の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。
図5(B)は、選択中の航空機TGT01の予測トラジェクトリの例を位置の座標軸と時刻の座標軸とからなる2次元座標系に表す図である。
図5(A)には、誘導路211と、これに平行な誘導路212と、誘導路211及び212の両方に交差する誘導路213とが示されている。誘導路211と誘導路213との交差点には、符号Iaが付されている。誘導路212と誘導路213との交差点には、符号Ibが付されている。
図5(A)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行する例が示されている。
図5(B)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1(時刻t0)から、交差点Ia、Ib(時刻t11、t12)を順に経由して、目的地である終点D1(時刻t13)まで地上走行する例の予測トラジェクトリ(予測軌道)が、2次元座標系に直線で示されている。なお、時刻t11、t12、t13は、時刻t0からの経過時間を表す。予測トラジェクトリは、直線に限定されず、曲線、又は曲線と直線の組み合わせ、又は傾きの異なる複数の直線の組み合わせなどであってもよい。なお、
図5(B)には、予測トラジェクトリと、これに重ねて表示される航空機TGT01の位置を示すマーク(ここでは、四角マーク)が示されている。
【0037】
図6(A)は、選択中の航空機TGT01に関連する航空機TGT02の予測トラジェクトリの例を示す平面図である。
図6(B)は、航空機TGT02の予測トラジェクトリの例を位置の座標軸と時刻の座標軸とからなる2次元座標系に表す図である。
図6(A)には、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2から、交差点Ib、Iaを順に経由して、目的地である終点D2まで地上走行する例が示されている。
図6(B)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P2(時刻t0)から、交差点Ib、Ia(時刻t21、t22)を順に経由して、目的地である終点D2(時刻t23)まで地上走行する例が、2次元座標系に直線で示されている。なお、時刻t21、t22、t23は、時刻t0からの経過時間を示す。予測トラジェクトリは、直線に限定されず、曲線、又は曲線と直線の組み合わせ、又は勾配の異なる複数の直線の組み合わせなどであってもよい。なお、
図6(B)には、予測トラジェクトリと、これに重ねて表示される航空機TGT02の位置を示すマーク(ここでは、三角マーク)が示されている。
【0038】
図7(A)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02とが同じ誘導路213を互いに近づく方向に進む状況(ヘッドオン発生時、すなわち、正面衝突が発生しうる状況)における、予測トラジェクトリの例を示す平面図である。
図7(B)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02とが異常接近する位置を2次元座標系に示す例を示す図である。
【0039】
図8(A)は、選択中の航空機TGT01とそれに関連する航空機TGT02とが同じ誘導路213を互いに近づく方向に走行し始めた例を示す平面図である。
図8(B)は、
図8(A)のヘッドオン発生時における表示装置40の表示例を示す図である。
図8(B)に示されるように、同じ誘導路213を互いに近づく方向に走行し始めた2台の航空機TGT01、TGT02がある場合には、正面衝突が発生しうる領域であるヘッドオン領域223(誘導路213のうちの交差点IaとIbとの間の区間を含む領域)を、ヘッドオン領域223を示す色(例えば、予め決められた色)で塗りつぶす強調領域とする。強調領域は観察者の注意を惹くように強調表示された領域である。強調領域の表示方法は、色の塗りつぶしに限定されず、色の変化、輝度の変化、模様の変化、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの方法であってもよい。
【0040】
図9(A)は、選択中の航空機TGT01とそれに関連する航空機TGT02とが同じ誘導路213を互いに近づく方向に走行して、航空機TGT02が航空機TGT01の異常接近範囲222内に入った状況である異常接近状況を示す平面図である。
図9(B)は、
図9(A)の異常接近状況の発生時における表示装置40の表示例を示す図である。
図9(B)に示されるように、同じ誘導路213を互いに近づく方向に走行する2つの航空機があり、航空機TGT02が航空機TGT01の異常接近範囲222内に入った場合、表示制御装置10は、ヘッドオン領域223の表示に加えて、異常接近の発生時における選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02の位置に強調表示部品221を、表示させる。
図8(B)は、
図3におけるステップS8の状態に対応する。
【0041】
図10(A)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02との予測トラジェクトリを示す平面図である。
図10(B)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02とが交差点で異常接近(この例では、衝突のおそれ)が発生する例を示す平面図である。
図11は、
図10(B)の異常接近(この例では、交差点における衝突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
図10(A)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行する例が示されている。また、
図10(A)には、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2から、交差点Ib、Iaを順に経由して、目的地である終点D2まで地上走行する例が示されている。
図11には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1(時刻t0)から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行する例が、2次元座標系に直線で示されている。
図11に示されるように、異常接近の発生時における選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02の位置に、強調表示部品221を、表示装置40に表示させる。
図11は、
図3におけるステップS8の状態に対応する。
【0042】
図12(A)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02との予測トラジェクトリを示す平面図である。
図12(B)は、選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02とが誘導路212で異常接近(この例では、追突のおそれ)が発生している例を示す平面図である。
図13は、
図12(B)の異常接近(この例では、交差点における衝突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
図12(A)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行する例が示されている。また、
図12(B)には、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2から、交差点Ib、Iaを順に経由して、目的地である終点D2まで地上走行する例が示されている。
図13には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1(時刻t0)から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行する例が、2次元座標系に直線で示されている。
図13に示されるように、異常接近の発生時における選択中の航空機TGT01と関連する航空機TGT02の位置に、強調表示部品221を、表示装置40に表示させる。
図13は、
図3におけるステップS8の状態に対応する。
【0043】
図14(A)は、選択中の航空機TGT02とそれに関連する航空機TGT01との予測トラジェクトリを示す平面図である。
図14(B)は、選択中の航空機TGT02とそれに関連する航空機TGT01とが誘導路212で異常接近(この例では、追突のおそれ)が発生している例を示す平面図である。
図15は、
図14(B)の異常接近(この例では、追突のおそれ)の発生時における表示例を示す図である。
図14(A)には、航空機TGT01が、移動の開始位置である始点P1から、交差点Ia、Ibを順に経由して、目的地である終点D1まで地上走行し、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2から、交差点Ibを直進して目的地である終点D2まで地上走行する例が示されている。また、
図14(B)には、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2から、交差点Ibを経由して、目的地である終点D2まで地上走行する例が示されている。
図15には、航空機TGT02が、移動の開始位置である始点P2(時刻t0)から、交差点Ibを経由して、目的地である終点D2まで地上走行する例が、2次元座標系に直線で示されている。
図15に示されるように、異常接近の発生時における選択中の航空機TGT02と関連する航空機TGT01の位置に、強調表示部品221を、表示装置40に表示させる。
図15は、
図3におけるステップS8の状態に対応する。
【0044】
図16は、実施の形態に係る表示制御装置10の描画処理を示すフローチャートである。先ず、表示制御装置10は、選択中の航空機の位置を、選択中の航空機の予測トラジェクトリと取得した走行路構造データとから求める(ステップS11)。次に、表示制御装置10は、選択中の航空機に関連する航空機の位置を、関連する航空機の予測トラジェクトリと取得した走行路構造データとから求める(ステップS12)。ステップS11とS12とは逆の順番で実行されてもよく、或いは、並列的に実行されてもよい。
【0045】
表示制御装置10は、選択中の航空機とそれに関連する航空機との間の距離を求め(ステップS13)、求めた距離が予め定められた基準値(すなわち、閾値)以下であるかどうかを判断する(ステップS14)。求めた距離が予め定められた閾値より長い場合(ステップS14においてNO)、処理はステップS11に戻る。求めた距離が予め定められた閾値以下である場合(ステップS14においてYES)、処理はステップS15に進む。
【0046】
ステップS15では、表示制御装置10は、選択中の航空機の位置を含む微小領域を異常接近(例えば、交差点における衝突、追突、正面衝突のおそれ)を示す色で塗りつぶす。微小領域は、例えば、予め定められたサイズ及び形状の領域である。微小領域のサイズは、例えば、縦方向及び横方向のそれぞれの画素数で指定される。微小領域の形状は、例えば、四角形、円形、楕円形、三角形、などである。ステップS11~S15の処理によって、1つの関連する航空機についての1つの微小領域に、異常接近を表示するための色、輝度、模様、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせが付されてもよい。
【0047】
次に、表示制御装置10は、選択中の航空機が前回通過した交差点Iaと次に通過する交差点Ibとを推定する(ステップS16)。次に、表示制御装置10は、選択中の航空機に関連する航空機が前回通過した交差点Icと次に通過する交差点Idとを推定する(ステップS17)。表示制御装置10は、Ia=Id且つIb=Icであるか否かを判断する(ステップS18)。
【0048】
Ia=Id且つIb=Icの要件を満たさない場合(ステップS18においてNO)には、処理はステップS16に戻る。Ia=Id且つIb=Icの要件を満たす場合(ステップS18においてYES)には、処理はステップS19に進む。ステップS19では、表示制御装置10は、選択中の航空機とそれに関連する航空機との間にヘッドオンが発生していると判断し、ヘッドオン領域を予め決められた色で塗りつぶす。
【0049】
図16のステップS11からS19の処理は、関連する航空機のすべてについて行う。また、この処理は、ダイアグラムにおけるすべての位置について行われる。言い換えれば、
図16のステップS11からS15の処理によって、異常接近の位置を含む1つの微小領域が色塗りされ、ステップS16からS19の処理によって、ヘッドオンの位置を含む1つの微小領域が色塗りされる。
【0050】
本実施の形態においては、選択中の移動体とそれに関連する移動体との間の異常接近の発生を、2次元座標系における予測トラジェクトリと強調表示部品221とヘッドオン領域223(ヘッドオン発生時)とを用いて表示している。このように2次元的な表示を用いた場合には、管制官は、異常接近の発生、異常接近の位置、異常接近の種類(交差、追突、又はヘッドオンのいずれであるか)を把握しやすくなる。
【0051】
また、選択中の移動体と複数の関連する移動体の異常接近の有無を同時に表示することにより、移動体に設定されているトラジェクトリが安全であるか否かを同時に把握することができる。
【0052】
次に、ダイアグラム画面を用いたトラジェクトリの修正について説明する。
図17(A)から(D)は、実施の形態に係る表示制御装置10によるトラジェクトリの修正時のダイアグラム画面を示す図である。
【0053】
図17(A)は、表示制御部17が、航空機DEP001の第1の予測トラジェクトリの始点(時刻=0)から終点までの間の位置を始点又は終点からの距離で表す第1の座標軸(横軸)と時刻を表す第2の座標軸(縦軸)とからなる2次元座標系と、この2次元座標系において第1の予測トラジェクトリを表す線(図では、直線)301と、異常接近の期間にあるときの第2の移動体の位置及び時刻の範囲を表す異常接近領域302とを表示装置40に表示させたダイアグラム画面を示す。
【0054】
図17(B)は、トラジェクトリ修正部19が、航空機DEP001の第1の予測トラジェクトリを表す線301上にカーソル303を移動させる入力情報を受け取った場合に、第1の予測トラジェクトリを表す線301上に重なり、異常接近領域302に重ならない点状部品(すなわち、表示部品)である“つまみ304”が異常接近領域302より時間的に前の位置に表示された状態を示す。カーソル303を移動させる入力情報は、例えば、マウス等の操作又はタッチパネルにおけるタッチ操作などのユーザ操作によって入力される。ただし、異常接近領域302より時間的に前の位置にカーソル303が自動的に表示させることも可能である。
【0055】
図17(C)は、ユーザ操作によって“つまみ304”が時間軸方向(正方向)に移動された場合に、トラジェクトリ修正部19が、航空機DEP001の第1の予測トラジェクトリを表す線301のうちの“つまみ304”より時間的に後の部分を“つまみ304”の移動方向(図における上方)に“つまみ304”の移動距離と同じ距離だけ移動させることで修正後の予測トラジェクトリが生成された状態を示している。
【0056】
図17(D)は、“つまみ304”が時間軸方向(正方向)に移動された後の修正後の予測トラジェクトリを表す線301を示している。修正後の予測トラジェクトリを表す線301は、“つまみ304”より時間的に前の範囲内における線分である第1の部分301aと、“つまみ304”より時間的に後の範囲内における線分である第3の部分301cと、第1の部分301aと第3の部分301cとを繋ぐ線分である第2の部分301bとから構成されている。
【0057】
“つまみ304”によって予測トラジェクトリを修正しない場合には、
図17(B)に示されるように、線301に従って移動する移動体である航空機DEP001は、他の移動体との間の異常接近(衝突を含む)が発生する異常接近領域302を通過する。しかし、“つまみ304”によって予測トラジェクトリを修正した場合には、
図17(D)に示されるように、線301に従って移動する移動体である航空機DEP001は、第2の部分301bの時間が経過するまで停止しているので、異常接近領域302を通過しない。
【0058】
図18は、実施の形態に係る表示制御装置10のトラジェクトリの修正処理を示すフローチャートである。ステップS21において、トラジェクトリ(直線)上にカーソル303が置かれると、
図17(A)に示されるように、“つまみ304”が表示される。
【0059】
次のステップS22において、トラジェクトリ修正部19は、カーソル303のドラッグが開始され、“つまみ304”を時間軸方向に移動させると、
図17(C)に示されるように、トラジェクトリの“つまみ304”より時間的に後の部分(すなわち、第3の部分301c)を、“つまみ304”の移動に伴ってシフトさせる。
【0060】
次のステップS23において、トラジェクトリ修正部19は、カーソル303のドラッグが終了すると、そのときの停止位置と時間を記録し、
図17(D)に示されるように、トラジェクトリを固定する。
【0061】
次のステップS24において、トラジェクトリ修正部19は、修正後のトラジェクトリを予測トラジェクトリ取得部15に与える。
【0062】
図19(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図(その1)である。
図20(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図(その2)である。例えば、ユーザ操作によって、
図19(A)のシークバー311を時間軸にそって移動させて
図20(A)の位置に置くと、
図19(B)及び
図20(B)のシチュエーション画面に示されるように、移動体401は、その始点(破線の六角形で示される位置)から交差点の手前の位置(実線の六角形で示される位置)まで移動し、移動体402は、その始点(破線の三角形で示される位置)から交差点の手前の位置(実線の三角形で示される位置)まで移動する。このように、ユーザ操作(例えば、カーソルの移動)によって、ダイアグラム画面のシークバー311を移動させることで、シークバー311が示す時刻における、移動体401、402の位置をシチュエーション画面上で移動させることができる。
【0063】
図21(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の例を示す図である。トラジェクトリの修正を行わない場合には、
図21(B)の交差点403で移動体401と402が衝突するおそれがあった。しかし、
図21(A)に示されるように、“つまみ304”を上方に移動させてトラジェクトリの修正を行うことによって、移動体401が“つまみ304”のシフトの量に応じた時間だけ待機するので、
図21(B)のシチュエーション画面に示されるように、交差点403における移動体401と402との衝突は発生しない。
【0064】
図22(A)及び(B)は、トラジェクトリの修正時のダイアグラム画面及びシチュエーション画面の他の例を示す図である。
図19(A)のダイアグラム画面では、トラジェクトリを表す線301上にカーソルを置いたときに、“つまみ304”が表示される例を説明したが、トラジェクトリを修正するために使用される“つまみ”を予め決められた位置(例えば、走行路が交差する位置の手前の位置に対応するダイアグラム画面上の位置)に、表示してもよい。
図22(A)では、
図22(B)の位置401a、401b、401cに対応する位置に“つまみ304a、304b、304c”をそれぞれ表示している。
【0065】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、ダイアグラム画面に表示されるトラジェクトリを修正するための“つまみ”(表示部品)をマウス又はタッチパネルなどによって操作することで、移動体の停止位置と停止時間を設定することができる。つまり、本実施の形態では、移動体の異常接近(衝突を含む)を回避するための操作を、2次元座標系のダイアグラム画面上で行うことができるので、異常接近領域を避けるためのルート設定を、トラジェクトリを示す直線が危険領域に重ならないように停止時間及び停止位置を設定するという直観的な方法で、行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、ダイアグラム画面に表示されるトラジェクトリを修正するための“つまみ”(表示部品)を自動的に、例えば、学習装置によって生成された学習モデルを用いて動作するAI(人工知能)によって、行うことで、移動体の停止位置と停止時間を設定することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 管制システム、 10 表示制御装置、 11 記憶装置、 12 走行路構造データ取得部、 13 管制情報取得部、 14 予測トラジェクトリ推定部、 15 予測トラジェクトリ取得部、 16 異常接近推定部、 17 表示制御部、 18 入力装置、 19 トラジェクトリ修正部、 30 管制情報管理装置(管理装置)、 40 表示装置、 201~203 滑走路(走行路)、 204 誘導路(走行路)、221 強調表示部品、 302 異常接近領域、 223 ヘッドオン領域(強調領域)、 301 トラジェクトリ(予測トラジェクトリ)を表す線、 303 カーソル、 304、304a~304c つまみ(表示部品)、 401、402 移動体。