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特許7551048サーバの冷却方法および再生可能エネルギー熱活用型データセンター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】サーバの冷却方法および再生可能エネルギー熱活用型データセンター
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240909BHJP
   F24F 3/052 20060101ALI20240909BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
G06F1/20 B
F24F3/052
G06F1/20 A
G06F1/20 C
G06F1/20 D
F24F5/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021215585
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023098531
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519006506
【氏名又は名称】Solution Creators株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 康晴
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/090850(WO,A1)
【文献】特開2010-002148(JP,A)
【文献】特開2002-198676(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
F24F 5/00
F24F 3/052
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバを収納するデータセンターの外壁を中空構造とし、当該中空壁の内部にサーバから排気される高温空気を流通させ、中空壁の外壁表面から外気に放熱を行い、周囲外気と熱交換を行うことで高温空気を冷却させ、冷却されたサーバ排気を送風ファンを用いて再びサーバ吸気部に還流させることで、データセンター外壁で放熱と冷却を行いながら、サーバ供給空気を循環供給し、
サーバ排気を流通させる中空壁の内側に、高温排気からの受熱を促進する受熱促進板と、中空壁の外側に低温外気への放熱を促進するとともに、サーバ供給空気の冷却を促進する冷却促進板を具備させ、中空壁内を流通するサーバ供給空気の冷却を促進させ、
データセンターの天井面を、外壁冷却促進板の方向に水、雪、または氷が落下するように傾斜させ、天井面に落ちた水、雪、または氷が前記外壁冷却促進板を流下するように構成することで、前記外壁冷却促進板における冷却効果をさらに促進させることを特徴とする、サーバ冷却方法
【請求項2】
サーバを収納するデータセンターの外壁を中空構造とし、当該中空壁の内部にサーバから排気される高温空気を流通させ、中空壁の外壁表面から外気に放熱を行い、周囲外気と熱交換を行うことで高温空気を冷却させ、冷却されたサーバ排気を送風ファンを用いて再びサーバ吸気部に還流させることで、データセンター外壁で放熱と冷却を行いながら、サーバ供給空気を循環供給し、
サーバ排気を流通させる中空壁の内側に、高温排気の冷却を促進するための冷媒循環配管と冷媒循環ポンプ、冷媒流量調整弁と冷媒タンクを具備させた冷却促進冷媒循環流路を構成し、高温のサーバ排気よりも温度の低い冷媒を中空壁内部で流通させてサーバ排気の冷却を促進し、
媒循環流路を内蔵させ、貯留と循環冷媒との間で熱交換を行って循環冷媒を冷却するタンクを具備させるとともに、データセンターの天井面を、前記のタンク内に水、 雪、または氷が流下して補水されるように構成することで、循環冷媒の冷却を促進することによって、中空壁内部でのサーバ排気の冷却を促進することを特徴とする、サーバ冷却方法
【請求項3】
サーバを収納するデータセンターの外壁を中空構造とし、当該中空壁の内部にサーバから排気される高温空気を流通させ、中空壁の外壁表面から外気に放熱を行い、周囲外気と熱交換を行うことで高温空気を冷却させ、冷却されたサーバ排気を送風ファンを用いて再びサーバ吸気部に還流させることで、データセンター外壁で放熱と冷却を行いながら、サーバ供給空気を循環供給し、
ーバ循環空気の流路上に具備される送風機か、サーバ排気冷却促進用の循環冷媒を循環させる循環ポンプか、サーバ排気促進用の循環冷媒を冷却するための第二の循環冷媒を循環させるための循環ポンプか、第二の循環冷媒を冷却させるための冷凍機か、サーバ排気冷却促進用の冷媒循環流量制御バルブか、サーバ排気冷却促進冷媒を冷却する第二の循環冷媒の循環流量制御バルブのいずれか一つ以上の駆動電力を賄うために、高温のサーバ排気が流通する中空壁内部の流路壁と、冷却された低温のサーバ吸気が流通する中空壁内部の流路壁との間に熱電発電モジュールを具備させ、前記熱電発電モジュールで得られる電力が駆動電力として供給されることを特徴とする、サーバ冷却方法
【請求項4】
請求項1~に記載のいずれか一つ以上の方法によって、データセンター内のサーバ冷却を行う、建物壁を介した再生可能エネルギー熱活用型データセンター
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物やコンテナ型のモジュール筐体内にサーバを収納してデジタルデータの処理を行う、データセンターにおけるサーバの冷却方法と、本方法を適用した、再生可能エネルギー熱活用型のデータセンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会のデジタル化が進展するなかで、様々な分野の情報がデジタル化されて演算処理され、これに伴って世界各地でデータセンターが整備・運用されて普及拡大が続いている。一方、データセンターは常時多量のデータ処理を行う際に、サーバの稼働と冷却に多量の電力を消費し、この電力消費に伴って多量の二酸化炭素が排出されることから、データセンターにおける冷房効率の向上や再生可能エネルギー熱の利用による冷房負荷の低減と、再生可能エネルギー起源の電力利用によるグリーン化が求められている。
【0003】
このうち、冷房効率の向上による省エネルギー化技術としては、サーバラックのそれぞれに複数の冷房室内機を配設し、サーバ前面とサーバ背面のそれぞれの扉との空間で給気ダクトと排気ダクトを構成し、室内機に冷媒を循環させて排気 ダクトを通過した高温排気を冷却して給気ダクトに供給する循環系統を構成する技術(特許文献1)や、サーバクラスタフレームに取り付けまたは着脱可能に取り付けるように構成されたチャンバに熱または加熱空気を収容し、これを排熱キャビネットに流すとともに、排熱キャビネット内に冷水や冷媒のような冷却流体を流通させる熱交換器を内蔵させることで、サーバを効率的に冷却する技術(特許文献2)が開示されている。
【0004】
また、例えば夏の日中など、一日のうちで電力使用量のピークを迎える時間帯の消費電力を抑制しながら、一日全体で安定したサーバ温度を維持するために、外気温が低い時間帯と高い時間帯に区別し、外気温が低い時間帯では換気装置を用いて外気を取り込んでサーバ収納室の冷却を行うとともに、冷媒を循環させてサーバ収納室の室温を調整する温度調整装置の冷媒を冷却しておき、外気温が高い時間帯では外気換気を停止して温度調整装置の冷媒循環によってサーバを冷却する技術(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-156509号公報
【文献】特表2021-530027号公報
【文献】特表2016-161271号公報
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の通り、特許文献1や特許文献2の従来技術によれば、サーバラックの周囲で空気を冷却して循環または流通させることによって効率的な冷房が可能となるほか、特許文献3の従来技術によれば、サーバ冷却時に外気温度が低い場合には、低温の外気を取り込んでサーバ冷却に利用するとともに、サーバ冷却負荷が高い時間帯における冷媒の冷却エネルギーも削減し、効率的な冷房が可能となるが、これらの技術には以下に示す5つの課題がある。
【0008】
まず従来技術では、いずれもサーバ収納室を構成する建物壁やコンテナ型のモジュール筐体壁を、サーバ高温排気の放熱や冷却に利用していないため、サーバ収納室の壁や壁周囲の空間およびサーバー室を構成する壁の外側の低温外気や、降雨・降雪による冷熱がサーバ冷却に有効活用されていないという課題がある。
【0009】
特にデータセンターの設置場所が豪雪地帯の場合、冬季にデータセンターの建物壁周囲に多量の積雪が発生するが、この積雪による雪氷熱を直接的にサーバ冷却に有効活用できないほか、建物壁周囲の積雪によってデータセンター内へのアクセスが困難となり、冬季トラブル発生時には、寒冷環境で負担が大きい除雪作業が必要となるといった課題もある。
【0010】
また、いずれの従来技術においても、サーバを積極的に冷却するためのサーバ供給空気や冷媒循環における冷媒冷却に関する具体的な方法が例示されておらず、特にサーバ供給空気や冷媒の冷却に要する電力消費と二酸化炭素の削減に資する、再生可能エネルギー熱の利用方法が具体的に示されていないため、雨水や雪氷および雪氷融雪水の冷熱をはじめ、太陽熱や地熱・温泉熱のほか、バイオマス発電時に得られる排熱をサーバ冷却に有効利用できていないという課題がある。
【0011】
さらに、低温外気をサーバ室内に取り込んでサーバ冷却を行う場合は、取り込む外気に含まれる湿度分や微量成分がサーバや通信機器といったICT機器や電気設備の内部に侵入し、ICT機器や電気設備の故障と劣化によりデータセンターの運営に支障をきたす課題がある。特に、海岸地域における塩分や地熱・温泉熱地域における硫化水素、中山間地域における霧発生時の水分取り込みによるサーバ室内の結露発生は、サーバ等に大きな損傷をもたらすため、こうした成分の侵入を抑制した外気利用での冷却策が必要となるが、こうした要件を満たす具体的なサーバ冷却策が明示されていない。
【0012】
また、サーバ冷却システムを構成する給気または換気ファンや冷媒循環のポンプ、冷媒の冷却を行う冷凍機などの電力消費機器や、サーバ給気の温湿度や循環冷媒の温度を測定して監視制御するためのセンサ類および監視制御システムの運用において、サーバー設置場所で得れる再生可能エネルギー電力を利用した駆動方法が明示されていないため、これらの機器を稼働させる際には外部からの電力受給が必要となって二酸化炭素の排出に繋がるほか、電力供給系統が停電した場合には、冷却システムが停止してサーバ冷却が行えず、データセンターを長期にわたって自立運用できなくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、データセンター周囲の外気や再生可能エネルギー熱と、データセンター周囲で得られる再生可能エネルギー電力を利用して、停電時にも長期自立的にサーバ冷却を可能とする、省エネルギー化と環境負荷を低減したサーバ冷却方法と、本技術を適用した、再生可能エネルギー熱活用型データセンターを提供することである。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
サーバを収納するデータセンターの外壁を中空構造とし、当該中空壁の内部にサーバから排気される高温空気を流通させ、中空壁の外壁表面から外気に放熱を行い、周囲外気と熱交換を行うことで高温空気を冷却させ、冷却されたサーバ排気を送風ファンを用いて再びサーバ吸気部に還流させることで、データセンター外壁で熱交換を行いながら、サーバ供給空気を循環供給することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、
請求項1のサーバ冷却方法において、サーバ排気を流通させる中空壁の内側に、高温排気からの受熱を促進する受熱促進板と、中空壁の外側に低温外気への放熱を促進するとともに、サーバ供給空気の冷却を促進する熱交換促進板を具備させ、中空壁内を流通するサーバ供給空気の熱交換を促進させることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、
請求項2のサーバ冷却方法において、データセンターの天井面を、請求項2に記載の外壁熱交換促進板の方向に雨水または積雪が落下するように傾斜させ、天井面に落ちた雨水や雪氷または雪氷融水が前記外壁熱交換促進板を流下するように構成することで、前記外壁熱交換促進板における冷却効果をさらに促進させることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、
請求項1のサーバ冷却方法において、サーバ排気を流通させる中空壁の内側に、高温排気の冷却を促進するための冷媒循環配管と冷媒循環ポンプ、冷媒流量調整弁と冷媒タンクを具備させた冷却促進冷媒循環流路を構成し、高温のサーバ排気よりも温度の低い冷媒を中空壁内部で流通させてサーバ排気の冷却を促進することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載のサーバ冷却方法において、冷媒循環流路を内蔵させ、貯留雨水と循環冷媒との間で熱交換を行って循環冷媒を冷却する雨水タンクを具備させるとともに、データセンターの天井面を、前記の雨水タンク内に雨水または雪氷融水が流下して補水されるように構成することで、循環冷媒の冷却を促進することによって、中空壁内部でのサーバ排気の冷却を促進することを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、
請求項4に記載のサーバ冷却方法において、サーバ排気冷却用の冷媒を冷却させるための第二の循環冷媒が循環する熱交換器を内蔵したサーバ冷却冷媒タンクを具備させるとともに、第二の循環冷媒が、太陽熱か、地熱蒸気か高温の温泉か、バイオマス燃焼熱によって加熱された蒸気または温水によって駆動する、吸収式冷凍機か吸着式冷凍機によって冷却されることで、サーバ排気の冷却を促進する冷媒の冷却が再生可能エネルギー熱によって促進され、中空壁内部でのサーバ排気冷却が促進されることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、
請求項1~6に記載のサーバ冷却方法において、サーバ循環空気の流路上に具備される送風機か、サーバ排気冷却促進用の循環冷媒を循環させる循環ポンプか、サーバ排気促進用の循環冷媒を冷却するための第二の循環冷媒を循環させるための循環ポンプか、第二の循環冷媒を冷却させるための冷凍機か、サーバ排気冷却促進用の冷媒循環流量制御バルブか、サーバ排気冷却促進冷媒を冷却する第二の循環冷媒の循環流量制御バルブのいずれか一つ以上の駆動電力を賄うために、データセンターの天井面に太陽光発電パネルが設置され、前記太陽光発電パネルで得られる電力が駆動電力として供給されることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、
請求項1~6に記載のサーバ冷却方法において、サーバ循環空気の流路上に具備される送風機か、サーバ排気冷却促進用の循環冷媒を循環させる循環ポンプか、サーバ排気促進用の循環冷媒を冷却するための第二の循環冷媒を循環させるための循環ポンプか、第二の循環冷媒を冷却させるための冷凍機か、サーバ排気冷却促進用の冷媒循環流量制御バルブか、サーバ排気冷却促進冷媒を冷却する第二の循環冷媒の循環流量制御バルブのいずれか一つ以上の駆動電力を賄うために、高温のサーバ排気が流通する中空壁内部の流路壁と、冷却された低温のサーバ吸気が流通する中空壁内部の流路壁との間に熱電発電モジュールを具備させ、前記熱電発電モジュールで得られる電力が駆動電力として供給されることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、
請求項1~8に記載のサーバ冷却方法において、サーバに供給する低温空気の温度と流量のいずれか、または両方を測定し、得られた測定データに基づいてサーバ供給空気送風ファンの回転数か、サーバ排気冷却促進用冷媒の循環ポンプ回転数か、冷媒循環量調整弁の開度のいずれか一つ以上を制御することで、サーバに供給する低温空気の温度または流量のいずれか、または両方を制御することを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、
請求項1~9に記載のサーバ冷却方法において、サーバに供給する低温空気の温度と流量のいずれか、または両方を測定し、得られた測定データに基づいてサーバ排気冷却促進用冷媒の温度を制御するための、第二の循環冷媒の循環ポンプ回転数か、第二の冷媒循環量調整弁の開度のいずれか一つ以上を制御することで、サーバ排気冷却促進用冷媒の温度を制御し、サーバに供給する低温空気の温度または流量のいずれか、または両方を制御することを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明は、
請求項1~8に記載のいずれか一つ以上の方法によって、データセンター内のサーバ冷却を行うとともに、請求項9または請求項10に記載のいずれか、または両方の方法によって、サーバ供給空気の温度と流量のいずれか、または両方を制御することでサーバ冷却を行う、再生可能エネルギー熱活用型のデータセンターであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、データセンターの周囲外気や雨水・雪氷を含む再生可能エネルギー熱を利用して効率よくサーバ冷却が行えるようになるとともに、電力系統で停電が発生した際にも長期にわたり自立的に、再生可能エネルギー熱を利用したサーバ冷却を継続することが可能となる。また、データセンターの建物壁またはモジュール筐体の外壁を有効活用することで、データセンターの室内空間を拡大し、スペースを有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る第1実施形態である、データセンターの周囲外気と太陽熱を併用した、再生可能エネルギー熱利用型データセンターを示す模式図である。
図2図1の再生可能エネルギー熱利用型データセンターにおける、モジュール筐体壁内への冷媒循環流路を天面から見て、モジュール筐体壁内での冷媒熱交換によるサーバ排気冷却状況を示す模式図である。
図3】本発明に係る第2実施形態である、データセンターの周囲外気と雨水および雪氷融水を併用した、再生可能エネルギー熱利用型データセンターを示す模式図である。
図4図3の再生可能エネルギー熱利用型データセンターにおける、モジュール筐体壁内への冷媒循環流路を天面から見て、モジュール筐体壁内での冷媒熱交換によるサーバ排気冷却状況を示す模式図である。
図5】本発明に係る第3実施形態である、データセンターの周囲外気と雪氷熱を併用した、再生可能エネルギー熱利用型データセンターを示す模式図である。
図6図5の再生可能エネルギー熱利用型データセンターにおける、モジュール筐体壁を天面から見て、筐体壁での熱交換によるサーバ排気冷却状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、本実施形態に限定されるものではない。
【0028】
(第1実施形態)
【0029】
まず本発明の第1実施形態に係る、再生可能エネルギー熱利用型データセンターについて、図1および図2に基づいて説明する。
【0030】
図1に示すように、このデータセンター1は、デジタルデータの演算処理を行うサーバSの高温排気の熱を、外壁周囲の外気に放熱させながら冷却する、中空矩形の熱交換壁2で囲まれたモジュール躯体で構成されているとともに、熱交換壁内を流下してサーバ排気を冷却する冷媒3が、冷媒循環量調整弁4によって循環流量が調整され、冷媒循環ポンプ5によって循環する、冷媒タンクつき冷媒循環システム6が併設され、さらに冷媒を太陽熱温水器7から得られる温水を熱源として駆動する吸着式冷凍機8が併設されていることで、多量のサーバ冷却熱が必要となる夏期の昼間時間帯などに、太陽熱を利用して得られる吸着式冷凍機から得られる冷水を利用して循環冷媒を冷却し、外気温度が高く熱交換壁2からサーバ排気の熱を放熱できない時間帯に、サーバ排気を強制冷却できるよう構成されている。
【0031】
ここで、サーバSを空気を閉鎖循環させながら熱交換して冷却する方法としては、サーバSから排気された高温排気が排気マニホールド9を通じて熱交換壁2の下部から上方にむけて排気され、複数の冷媒熱交換チューブ10と熱交換をしながら冷却されて上昇した後、サーバ供給空気の吸引送風ファン11によってサーバ上部で送付されて蛇腹管状の給気ダクト12を通じた後、サーバの吸気側マニホールド13を経て、各サーバの吸気口とを接続する蛇腹管状のサーバ給気分岐ダクト14を通じてサーバに冷却された空気が供給されることで、サーバ排気が熱交換壁2を介して放熱・冷却されながら循環供給される構成と なっており、外気を取り込まない閉鎖循環流路を形成させることで、外気取り込みによる 湿度上昇や結露のリスクと、海岸での塩分や温泉地での硫化水素取り込みによるリスクを大幅に軽減しながら、夏場の早朝夜間や秋冬の外気温度が低い時間帯において、サーバ排気の熱を周囲外気に効率よく放熱させるとともに、低温外気の冷熱を活用し、外壁面を介してサーバ給気を効率よく冷却できるように構成されている。
【0032】
なお、前述のサーバ給気マニホールド13や複数のサーバSを搭載したサーバラック15は、いずれも免振テーブル16の上に設置されるとともに、熱交換壁2との間を柔軟性のある蛇腹管状の排気ダクト分岐17と給気ダクト12で接続することで、地震発生時にも 冷却空気の循環システムを含むサーバラック全体が免振される構成となっている。
【0033】
また、データセンター内のサーバラック以外のエリアでは、サーバの騒音や放熱が、室内環境に悪影響を与えないよう、サーバラック全体が吸音断熱材で構成される防音断熱壁18で囲まれることにより、データセンター室内の静粛性が保たれ、給気マニホールド13の冷熱が放散されて冷房損失をもたらすことを回避しつつ、サーバ室内が冷え込むことがないよう、施工されている。
【0034】
さらに、このデータセンターを構成する屋根部分には太陽光発電パネル19が設置されるとともに、サーバ排気マニホールド9の熱交換壁内の露出壁面部分を、熱電発電素子を並べた熱電発電モジュール20で覆い、それぞれの発電出力がマルチ入力パワーコンディショナ21に接続された後に、蓄電システム22と、電力供給制御および温度監視制御システム23を介して、得られた電力を用いてサーバ供給空気の温度を測定するサーバ給気温度センサ24や、循環冷媒の温度を測定する冷媒温度センサ25に供給されて温度管理が行われるとともに、サーバ供給空気の吸引送風ファン11や冷媒循環ポンプ5および吸着式冷凍機8の駆動電力が供給されるほか、収集した温度情報に基づいて、サーバ供給空気の吸引送風ファンや冷媒循環ポンプの回転数を制御したり、吸着式冷凍機の冷熱出力を制御する電力供給制御および温度監視制御システム23の駆動電力が供給され、サーバ供給空気温度の低温維持管理が、再生可能エネルギー利用の最大化によって効率よく行えるよう、常時監視制御される構成となっている。
【0035】
ここで、具体的なサーバ供給空気温度の低温維持管理方法としては、例えば夏場の早朝夜間や秋冬の外気温が低い場合には、太陽光発電や熱電発電の電力でサーバ供給空気の吸引送風ファン11のみを駆動し、冷媒循環システムを運転せずに熱交換壁からの放熱や外気熱交換による冷却だけでサーバ供給空気を冷却し、温度が上昇した場合には吸引送風ファン11の回転数を上昇させることで、熱交換壁での放熱と冷却を促し、サーバ冷却を行い、消費エネルギーを最少化することが望ましい。
【0036】
ただし、吸引送風ファン11の回転数を最大にしてもサーバ供給空気温度が充分に冷却されない場合には、太陽光発電や熱電発電の電力を利用して冷媒循環ポンプ5を駆動して冷媒循環を行うことで、熱交換壁内でのサーバ排気冷却を促進することが可能となる。ここで、冷媒を冷却することなく循環させているだけでは、循環冷媒の温度が上昇してサーバ供給空気温度を継続的に冷却することが困難となるため、太陽熱温水により駆動する吸着式冷凍機も駆動させ、太陽熱を利用して冷媒を冷却したり、予め太陽熱を利用して吸着式冷凍機で貯水しておいた冷水タンクの水を利用して冷媒を冷却することで、夏の昼間時間帯等におけるサーバ供給空気の冷却も、再生可能エネルギー熱の利用で行えるようになる。
【0037】
ここで、太陽熱温水駆動型の吸着式冷凍機の運転や、吸着式冷凍機から得られる冷水の循環ポンプ26や、冷水循環量制御弁27の開度調整なども、前記の電力供給制御および温度監視制御システム23によって、サーバ供給空気の冷却維持が効率よく行えるよう、管理されることが望ましい。
【0038】
このような構成とすることにより、データセンターを稼働させる際の空調負荷を低減させるとともに、再生可能エネルギー熱利用によるサーバ冷却を可能とし、停電発生時も含めてサーバの自立的な冷却を維持することが可能となる。
(第2実施形態)
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る、データセンターの周囲外気と雨水および雪氷融水を併用した、再生可能エネルギー熱利用型データセンターを示す模式図について、図3および図4に基づいて説明する。
【0040】
図2に示すように、第2実施形態のシステムでは、サーバ供給空気を冷却するために循環する冷媒の冷却媒体として、雨水や雪氷融水を利用する点が、第1実施形態と異なっているが、その他の特徴は第1実施形態と同様である。
【0041】
すなわち本実施形態においては、天井面の太陽光発電パネル19を、雨水や雪氷融水を集水貯留する貯水タンク28に集水できるよう雨樋を配置し、雨水フィルタ29を介して除塵した水をタンクに貯水し、このタンク内の貯水を冷却媒体としてサーバ空気冷却用の循環媒体を冷却するように構成されている点が異なっている。なお、豪雨等により多量の雨水が発生して貯水タンクが満水になった場合には、タンク上部のオーバーフロー排水口30から温度の高い水が優先的に排水されるように構成されていることが望ましい。
【0042】
なお、本実施形態においては、図4に示す通り、雨水タンクは、個々の熱交換壁に対応させた独立型の貯水タンクを設置しているが、このように冷媒循環系や冷媒冷却系統は、個々の熱交換壁に対応させて独立させて設置しても良く、この場合には貯水タンクが大型化することによるコスト増大や地震発生時のスロッシングによる破損リスクを軽減することが可能となる。
(第3実施形態)
【0043】
次に、本発明の第3実施形態に係る、データセンターの周囲外気と雪氷熱を併用した、再生可能エネルギー熱利用型データセンターを示す模式図について、図5および図6に基づいて説明する。
【0044】
図5に示すように、第3実施形態のシステムでは、サーバ供給空気を冷却するための冷媒循環系統を構成せず、熱交換壁の内部にサーバ排気の高温熱を受熱してデータセンターの周囲外気に露出した放熱板にむけて熱伝導させる受熱伝導板31と、この受熱伝導板と熱交換壁を介して熱伝導接続され、サーバ排気の高温熱をデータセンターの周囲外気に放熱させる放熱促進板32とで構成されている点が他の実施形態と異なっているが、その他の構成は他の実施形態と同様である。
【0045】
なお、本構成においても、天井面を形成する太陽光パネルは、前記の放熱促進板側に雨水や雪氷融水が滴下し、放熱促進板を濡らしながら流下するよう傾斜させて配置させることが望ましい。また、放熱促進板は、外気通風による放熱や冷却を促進するために千鳥状の通風穴を加工したり、放熱面積を増大させるために凹凸加工を行っても良いが、これらは一般的な熱交換器における熱交換促進策を適用すれば良い。
【0046】
このような構成とすることで、降雨や雪氷の多い冷涼地や強風が吹く海外地域にデータセンターを設置する際には、冷媒循環システムや冷媒の冷却システムを設置することなく、簡素な構成で、冷涼地の低温外気に加え、現地での降水や冬季の積雪と周囲で融雪させたい残雪の利用も含めた雪氷熱を、サーバ冷却に効率よく利用できるようになる。
【0047】
以上のような構成とすることで、データセンターの周囲外気や設置場所における再生可能エネルギー熱や電力を利用して、電力系統の停電時も含めて効率よくサーバを冷却することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
なお本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、例えば図示した実施形態は、データセンターのサーバ冷却用途に限らず、農林水産物の低温保存など、再生可能エネルギー熱を利用した冷房保管庫のために適用しても良い。
【0049】
このように前記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・再生可能エネルギー熱利用型データセンター
2・・・・熱交換壁
3・・・・冷媒
4・・・・冷媒循環量調整弁
5・・・・冷媒循環ポンプ
6・・・・冷媒タンクつき冷媒循環システム
7・・・・太陽熱温水器
8・・・・吸着式冷凍機
9・・・・サーバ排気マニホールド
10・・・冷媒熱交換チューブ
11・・・サーバ給気送風ファン
12・・・サーバ給気ダクト
13・・・サーバ給気マニホールド
14・・・サーバ給気分岐ダクト
15・・・サーバラック
16・・・免振テーブル
17・・・サーバ排気分岐ダクト
18・・・防音断熱壁
19・・・太陽光発電パネル
20・・・熱電発電モジュール
21・・・マルチ入力パワーコンディショナ
22・・・蓄電システム
23・・・電力供給制御および温度監視制御システム
24・・・サーバ給気温度センサ
25・・・冷媒温度センサ
26・・・冷水循環ポンプ
27・・・冷水循環量制御弁
28・・・貯水タンク
29・・・雨水フィルタ
30・・・オーバーフロー排水口
31・・・受熱伝導板
32・・・放熱促進板
図1
図2
図3
図4
図5
図6